説明

ポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のフォトパブリケーションプロセスに好適に用いられるポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に於いて、現像後の欠陥が少なく、且つ良好なプラズマエッチング耐性を有するパターンを形成し得るポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】連鎖移動剤の存在下でラジカル重合することにより得られた樹脂(A)を含有するポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のフォトパブリケーションプロセスに好適に用いられるポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。さらに詳しくは、KrFエキシマレーザー光、電子線、EUV光等を使用して高精細化したパターン形成しうるポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものであり、KrFエキシマレーザー光、電子線、EUV光を用いる半導体素子の微細加工に好適に用いることができるポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィによる微細加工が行われている。
KrFまたはArFエキシマレーザー光、電子線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィープロセスに適したレジストとしては高感度化の観点から主に酸触媒反応を利用した化学増幅型レジストが用いられており、ポジ型レジストにおいては主成分として、アリカリ現像液には不溶又は難溶性で、酸の作用によりアリカリ現像液に可溶となる性質を有するフェノール性ポリマー(以下、フェノール性酸分解性樹脂と略す)及び酸発生剤からなる化学増幅型レジスト組成物が有効に使用されている。
たとえば、特許文献1(米国特許第5561194号明細書)等には、フェノール性酸分解性樹脂としては、フェノール性樹脂の水酸基を部分的に酸分解性のアセタール基、ケタール基、カーボネート基、エーテル基などで保護した樹脂、酸分解性アクリレートモノマーを共重合したフェノール性酸分解性樹脂などが知られている。
しかしながら、アクリレートモノマーは、酸素原子を複数個有するために、アクリレートモノマーを有するポリマーからなるレジスト膜は、プラズマエッチング時の膜べりが起こりやすく、選択的なエッチングが困難な場合がある。
また、特許文献2(特開平7-209868号公報)等には、スチレンなどの非分解性モノマーを共重合する方法などが知られているが、スチレンなどのモノマーを共重合した場合には、疎水性が高くなりすぎるために、現像欠陥が発生しやすくなるといった新たな問題を生じる。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5561194号明細書
【特許文献2】特開平7-209868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、活性光線又は放射線、特に、KrFエキシマレーザー光、電子線あるいはEUV光を使用する半導体素子の微細加工における課題を解決することであり、アルカリ現像後の欠陥が少なく、且つ良好なプラズマエッチング耐性を有するパターンを形成し得るポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、上記課題が下記の構成によって達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
(1) 連鎖移動剤の存在下でラジカル重合することにより得られた樹脂(A)を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【0007】
(2) 樹脂(A)が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を有し、アルカリ現像液に不溶若しくは難溶性で、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる樹脂であることを特徴とする(1)に記載のポジ型レジスト組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
一般式(I)及び(II)に於いて、
1は、各々独立して水素原子又はメチル基を表す。
Aは、酸の作用により脱離する基を表す。
mは、1又は2を表す。
【0010】
(3) 連鎖移動剤が、直鎖、分岐若しくは環状のアルキルチオール化合物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のポジ型レジスト組成物。
【0011】
(4) 樹脂(A)が、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする(2)又は(3)に記載のポジ型レジスト組成物。
【0012】
【化2】

【0013】
一般式(III)に於いて、
1は、水素原子又はメチル基を表す。
2は、フェニル基又はシクロヘキシル基を表す。
nは、0〜2の整数を表す。
【0014】
(5) 一般式(I)で表される繰り返し単位が、下記一般式(I−a)で表されることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0015】
【化3】

【0016】
(6) 一般式(II)で表される繰り返し単位が、下記一般式(II−a)で表されることを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0017】
【化4】

【0018】
一般式(II−a)に於いて、
1は、水素原子又はメチル基を表す。
【0019】
(7) 連鎖移動剤の存在下でラジカル重合を行うことを特徴とするポジ型レジスト組成物用樹脂(A)の製造方法。
【0020】
(8) (1)〜(6)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物により、レジスト膜を形成し、露光、現像する工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
【0021】
以下、更に、本発明の好ましい実施の態様を挙げる。
【0022】
(9) 更に、有機塩基性化合物を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0023】
(10) 更に、界面活性剤を含有することを特徴とする上記(1)〜(6)及び(9)いずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0024】
(11) 更に、溶剤を含有することを特徴とする(1)〜(6)、(9)及び(10)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0025】
(12) 溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有することを特徴とする(11)に記載のポジ型レジスト組成物。
【0026】
(13) 溶剤として、更に、プロピレングリコールモノメチルエーテルを含有することを特徴とする(12)に記載のポジ型レジスト組成物。
【0027】
(14) (9)〜(13)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物により、レジスト膜を形成し、露光、現像する工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、現像後の欠陥が少なく、且つ良好なプラズマエッチング耐性を有するパターンを形成し得るポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に使用する化合物について詳細に説明する。
尚、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0030】
(A)連鎖移動剤の存在下でラジカル重合することにより得られた樹脂
本発明のポジ型レジスト組成物は、連鎖移動剤の存在下でラジカル重合することにより得られた樹脂(A)を含有する。
樹脂の重量平均分子量は、ラジカル重合時の連鎖移動剤、重合開始剤の使用量および重合温度等などによって調節することができ、たとえば、使用する重合開始剤の量を増減することで重量平均分子量の異なる樹脂を得ることができる。即ち、重合開始剤の量を増やすことで、系中で反応性の高いラジカル活性種の濃度が高くなり、停止反応が進行しやすくなることで重量平均分子量の低い樹脂を得ることが出来る。
しかしながら、このような方法によって樹脂の重量平均分子量を調整すると、特に低分子量樹脂のエッチング耐性が低下する。
停止反応は、ラジカル活性種同士の反応によって起こるが、この停止反応によって形成された化学結合は、通常のラジカル成長反応によって形成された化学結合と比較して化学的/物理的に不安定であり、この停止反応由来の結合が、プラズマエッチング時に乖離することで、ポリマー末端にラジカル活性種が再生され、このラジカル活性種を起点としてポリマーのラジカル分解反応が進行する。
【0031】
本発明に於いては、連鎖移動剤を用いることで、重合開始剤の量を増やすこと無く樹脂の重量平均分子量を調整することが出来る。その結果、樹脂中に含有される停止反応由来の結合の数は、連鎖移動剤を用いずに製造した樹脂中に含まれる数と比較して少なくすることが出来、その結果、エッチング耐性の低下を抑制することが出来る。
また、重合初期は、比較的低濃度な条件となるため停止反応が進行しにくく、現像欠陥性能にとって好ましくない超高分子量体が発生しやすくなる。しかしながら、連鎖移動剤を用いることで、前記超高分子量体の生成が抑制され、現像欠陥性能も良好となる。
【0032】
本発明に用いることが出来る連鎖移動剤としては、たとえば、置換基を有していても良い、炭素数1〜20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキルチオール化合物、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ハロゲンなどを有する炭素数6〜20のアリールチオール化合物、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基などを有する炭素数6〜20のアリールジスルフィド化合物などを挙げることが出来る。エッチング耐性の観点から、炭素数1〜20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキルチオール化合物が、化学的/物理的に安定であるために、より好ましい。
連鎖移動剤としては、具体的には、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、1−ペンタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、1−ヘキサンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール、p−トルエンチオール、m−トルエンチオール、o−トルエンチオール、ベンゼンチオール、ベンゾイルジスルフィド、ベンジルジスルフィド、ビス(p−ニトロベンゾイル)ジスルフィド、ジメチルチオカルバモイルジスルフィド、メルカプトメチル酢酸エステル、メルカプトエチル酢酸エステルなどを例示することが出来る。
【0033】
樹脂(A)は、アルカリ現像液に不溶若しくは難溶性で、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる樹脂であることが好ましく、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂であることがより好ましい。
アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボン酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
酸分解性基として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸の作用により脱離する基で置換した基である。
酸の作用により脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
本発明においては、酸分解性基は下記一般式(II)で表される繰り返し単位が含有するが、さらに他の繰り返し単位が含有していてもよい。
【0034】
樹脂(A)は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0035】
【化5】

【0036】
一般式(I)及び(II)に於いて、
1は、各々独立して水素原子又はメチル基を表す。
Aは、酸の作用により脱離する基を表す。
mは、1又は2を表す。
【0037】
一般式(I)で表される繰り返し単位の樹脂(A)における好ましい含有量は、樹脂(A)中のすべての繰り返し単位に対して、5〜75モル%、さらに好ましくは20〜70モル%である。
一般式(I)で表される繰り返し単位を上記範囲で含有することは、基板との接着性と解像度を両立する観点から好ましい。
【0038】
以下、一般式(I)で表される繰り返し単位の具体的な構造を例示するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0039】
【化6】

【0040】
一般式(I)で表される繰り返し単位は、下記式(I−a)で表される構造であることが特に好ましい。
【0041】
【化7】

【0042】
一般式(II)に於ける、Aの酸の作用により脱離する基は、炭素数4〜12の炭化水素基であることが好ましく、例えば、−C(R36)(R37)(R38)を挙げることができる。式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
Aの酸の作用により脱離する基は、t−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基、2−シクロヘキシル−2−プロピル基であることが好ましく、t−ブチル基で
あることがより好ましい。
Aの酸の作用により脱離する基は、さらに置換基を有していてもよい。更に有していてもよい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基などを挙げることが出来る。
【0043】
一般式(II)で表される繰り返し単位の樹脂(A)における好ましい含有量は、樹脂(A)中のすべての繰り返し単位に対して、5〜50モル%、さらに好ましくは10〜40モル%である。
一般式(II)で表される繰り返し単位の含有量を上記範囲とすることはアルカリ現像液に対する溶解速度とプラズマエッチング耐性を両立する観点から好ましい。
【0044】
以下、一般式(II)で表される繰り返し単位の具体的な構造を例示するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0045】
【化8】

【0046】
一般式(II)で表される繰り返し単位は、下記式(II−a)で表される構造であることが特に好ましい。
【0047】
【化9】

【0048】
樹脂(A)は、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有することが出来る。
【0049】
【化10】

【0050】
一般式(III)に於いて、
1は、水素又はメチル基を表す。
2は、フェニル基又はシクロヘキシル基を表す。
nは、0〜2の整数を表す。
【0051】
一般式(III)に於ける、R2のフェニル基、シクロヘキシル基は、更に、置換基を1個以上有していても良い。また、プラズマエッチング耐性の点から、R2としては、フェニル基が好ましい。
フェニル基、シクロヘキシル基が更に有していてもよい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基などを挙げることが出来る。特に好ましい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができる。
【0052】
一般式(III)で表される繰り返し単位の樹脂(A)における好ましい含有量は、樹脂(A)に対して、0〜50モル%、さらに好ましくは5〜40モル%、より好ましくは、10〜35モル%である。
一般式(III)で表される繰り返し単位を上記範囲とすることは、充分なプラズマエッチング耐性および溶解抑止効果による矩形な形状のパターンを得つつ、露光部の充分な溶解性を両立する上で好ましい。
【0053】
以下、一般式(III)で表される繰り返し単位の具体的な構造を例示するが、本発明は、この限定されるものではない。
【0054】
【化11】

【0055】
【化12】

【0056】
【化13】

【0057】
樹脂(A)、連鎖移動剤の存在下でラジカル重合することによって製造することができる。例えば、一般的合成方法としては、樹脂(A)の繰り返し単位に相当するモノマー、連鎖移動剤及び重合開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤に樹脂(A)の繰り返し単位に相当するモノマー、連鎖移動剤及び重合開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
【0058】
連鎖移動剤の使用量は、モノマーの全モル数に対し、0.1〜50モル%、好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは2.5〜10モル%の範囲で好適に使用される。
【0059】
重合開始剤は、一般にラジカル発生剤として用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を単独若しくは混合して用いることができる。
重合開始剤の使用量は、連鎖移動剤1モルに対して通常0.1〜120モル%、好ましくは1〜50モル%、より好ましくは10〜30モル%の範囲から選択される。
【0060】
反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド
などのアミド溶剤、さらには後述のエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明のポジ型レジスト組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明のポジ型レジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望の樹脂(A)を回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0061】
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、解像力、疎密依存性能の観点から5,000以上であることが好ましい。また樹脂(A)自体のアルカリに対する溶解速度、感度、欠陥発生の点から重量平均分子量(Mw)は50,000以下が好ましい。
分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.0であることが好ましく、より好ましくは1.0〜2.5、特に好ましくは、1.0〜2.0である。
【0062】
本発明のポジ型レジスト組成物において、樹脂(A)の組成物全体中の配合量は、全固形分中60〜99質量%が好ましく、より好ましくは80〜98質量%である。
また、本発明において、樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0063】
以下に樹脂(A)の構造を例示するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0064】
【化14】

【0065】
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明のポジ型レジスト組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を含有する。
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、
独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0066】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0067】
【化15】

【0068】
一般式(ZI)に於いて、
201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。
-は、非求核性アニオンを表す。
【0069】
-の非求核性アニオンとして、好ましくは、スルホン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF、PF、SbFなどが挙げられ、好ましくは炭素原子を有する有機アニオンである。
【0070】
好ましい有機アニオンとしては、下一般式(AN1)〜(AN3)に示す有機アニオンが挙げられる。
【0071】
【化16】

【0072】
一般式(AN1)〜(AN3)中、
Rc〜Rcは、それぞれ独立に、有機基を表す。
【0073】
一般式(AN1)〜(AN3)、Rc〜Rcにおける有機基として、炭素数1〜30のものがあげられ、好ましくは置換していてもよいアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。さらにはほかの結合しているアルキル基、アリール基と環構造を形成してもよい。Rd1は、水素原子、アルキル基を表し、結合しているアルキル基、アリール基と環構造を形成してもよい。
Rc〜Rcの有機基として、1位がフッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基が好ましい。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。Rcにおいて炭素原子を5個以上有する時、少なくとも1つの炭素原子は水素原子が全てフッ素原子で置換されているのではなく水素原子が残されていることが好ましく、水素原子の数がフッ素原子より多いことがより好ましい。炭素数5以上のパーフロロアルキル基を有さないことにより生態への毒性が軽減する。
【0074】
前記一般式(ZI)に於ける、R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
201〜R203のうちの2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
【0075】
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)及び(ZI−3)における対応する基を挙げることができる。
【0076】
尚、一般式(Z1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくともひとつが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくともひとつと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0077】
更に好ましい(Z1)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)及び(ZI−3)を挙げることができる。
【0078】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基は、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、
分岐又は環状のアルコキシ基であり、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0079】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、一般式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0080】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖、分岐のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシメチル基であることがより好ましい。
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
201〜R203としての2−オキソアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0081】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0082】
【化17】

【0083】
一般式(ZI−3)に於いて、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。R1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
X-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於ける、X-と同様のものである。
【0084】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個のアルキル基、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
1c〜R7cとしてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1c〜R5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0085】
Rx及びRyとしてのアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシメチル基であることがより好ましい。
Rx及びRyとしてのシクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのシクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることがより好ましい。
直鎖状、分岐状、環状2−オキソアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
Rx、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基である。
【0086】
前記一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピ
ル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。
204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207は、置換基を有していてもよい。R204〜R207が有していてもよい置換基
としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0087】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物を挙げることができる。
【0088】
【化18】

【0089】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
208は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は電子吸引性基を表す。R209として、好ましくは、アリール基である。R210として、好ましくは、電子吸引性基であり、より好ましくは、シアノ基又はフロロアルキル基である。
Aは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0090】
酸発生剤の具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
【0091】
【化19】

【0092】
【化20】

【0093】
【化21】

【0094】
【化22】

【0095】
酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を組みあわせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
酸発生剤の組成物中の含量は、ポジ型レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0096】
有機塩基性化合物
本発明のポジ型レジスト組成物は、有機塩基性化合物を含有することが好ましい。有機塩基性化合物は、好ましくはフェノールよりも塩基性の強い化合物である。有機塩基性化合物の分子量は、通常100〜900、好ましくは150〜800、より好ましくは200〜700である。また、特に含窒素塩基性化合物が好ましい。
好ましい含窒素塩基性化合物は、好ましい化学的環境として、下記式(CI)〜(CV)の構造を有する化合物である。式(CII)〜(CV)は、環構造の一部であってもよい。
【0097】
【化23】

【0098】
ここで、R250、R251及びR252は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜20)を表し、R251とR252は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0099】
上記アルキル基は、無置換であっても置換基を有するものであってもよく、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜6のアミノアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0100】
253、R254、R255及びR256は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜6個のアルキル基を表す。
【0101】
更に好ましい化合物は、一分子中に異なる化学的環境の窒素原子を2個以上有する含窒素塩基性化合物であり、特に好ましくは、置換もしくは未置換のアミノ基と窒素原子を含む環構造の両方を含む化合物もしくはアルキルアミノ基を有する化合物である。
【0102】
更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物から選ばれる少なくとも1種類の含窒素化合物を挙げることができる。
【0103】
アミン化合物は、1級、2級、3級のアミン化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアミン化合物が好ましい。アミン化合物は、3級アミン化合物であることがより好ましい。アミン化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。アミン化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0104】
アンモニウム塩化合物は、1級、2級、3級、4級のアンモニウム塩化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアンモニウム塩化合物が好ましい。アンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。アンモニウム塩化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ
以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。 アンモニウム塩化合物のアニオンとしては、ハロゲン原子、スルホネート、ボレート、フォスフェート等が挙げられるが、中でもハロゲン原子、スルホネートが好ましい。ハロゲン原子としてはクロライド、ブロマイド、アイオダイドが特に好ましく、スルホネートとしては、炭素数1〜20の有機スルホネートが特に好ましい。有機スルホネートとしては、炭素数1〜20のアルキルスルホネート、アリールスルホネートが挙げられる。アルキルスルホネートのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては例えばフッ素、塩素、臭素、アルコキシ基、アシル基、アリール基等が挙げられる。アルキルスルホネートとして、具体的にはメタンスルホネート、エタンスルホネート、ブタンスルホネート、ヘキサンスルホネート、オクタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。アリールスルホネートのアリール基としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が挙げられる。ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環は置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましい。直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基として、具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられる。他の置換基としては炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。
【0105】
フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物とは、アミン化合物又はアンモニウム塩化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、置換基を有していてもよい。フェノキシ基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。置換基の置換位は、2〜6位のいずれであってもよい。置換基の数は、1〜5の範囲で何れであってもよい。
【0106】
フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0107】
スルホン酸エステル基を有するアミン化合物、スルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物に於ける、スルホン酸エステル基としては、アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキル基スルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルのいずれであっても良く、アルキルスルホン酸エステルの場合に、アルキル基は、炭素数1〜20、シクロアルキルスルホン酸エステルの場合に、シクロアルキル基は、炭素数3〜20、アリールスルホン酸エステルの場合に、アリール基は、炭素数6〜12が好ましい。アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルは、置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基が好ましい。
【0108】
スルホン酸エステル基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0109】
好ましい有機塩基性化合物としては、グアニジン、アミノピリジン、アミノアルキルピリジン、アミノピロリジン、インダゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルフォリン、アミノアルキルモルフォリン等が挙げられる。これらは置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、アミノアリール基、アリールアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、水酸基、シアノ基などが挙げられる。
【0110】
特に好ましい有機塩基性化合物として、グアニジン、1,1−ジメチルグアニジン、1,1,3,3,−テトラメチルグアニジン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−ジエチルアミノピリジン、2−(アミノメチル)ピリジン、2−アミノ−3−メチルピリジン、2−アミノ−4−メチルピリジン、2−アミノ−5−メチルピリジン、2−アミノ−6−メチルピリジン、3−アミノエチルピリジン、4−アミノエチルピリジン、3−アミノピロリジン、ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペリジン、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ピペリジノピペリジン、2−イミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、ピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、5−アミノ−3−メチル−1−p−トリルピラゾール、ピラジン、2−(アミノメチル)−5−メチルピラジン、ピリミジン、2,4−ジアミノピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、N−アミノモルフォリン、N−(2−アミノエチル)モルフォリンなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0111】
また、テトラアルキルアンモニウム塩型の含窒素塩基性化合物も用いることができる。これらの中では、特に炭素数1〜8のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ-(n-ブチル)アンモニウムヒドロキシド等)が好ましい。これらの含窒素塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0112】
酸発生剤と有機塩基性化合物の組成物中の使用割合は、有機塩基性化合物/酸発生剤(モル比)=0.01〜10であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が10以下が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から0.01以上が好ましい。有機塩基性化合物/酸発生剤(モル比)は、より好ましくは0.05〜5、更に好ましくは0.1〜3である。
【0113】
界面活性剤
本発明においては、界面活性剤類を用いることができ、製膜性、パターンの密着性、現像欠陥低減等の観点から好ましい。
【0114】
界面活性剤の具体的としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリ
ステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352(新秋田化成(株)製)、メガファックF171,F173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラ−ドFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−382,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)やアクリル酸系もしくはメタクリル酸系(共)重合ポリフローNo.75,No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0115】
界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましい。
これらの界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同 5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0116】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
【0117】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)基など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0118】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、などを挙げることができる。
【0119】
界面活性剤の使用量は、ポジ型レジスト組成物全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
界面活性剤は、単独で添加してもよいし、また、いくつかの組み合わせで添加することもできる。
【0120】
溶剤
本発明のポジ型レジスト組成物は、上記各成分を溶解する溶剤に溶かして支持体上に塗布する。全レジスト成分の固形分濃度として、通常2〜30質量%とすることが好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等が好ましく、これらの溶媒を単独あるいは混合して使用しても良い。
溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有することが好ましい。また、さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルを含有することがより好ましい。
【0121】
その他添加剤
本発明のポジ型レジスト組成物には必要に応じて、さらに、光塩基発生剤などを含有させることができる。
【0122】
光塩基発生剤
本発明のポジ型レジスト組成物に添加できる光塩基発生剤としては、特開平4−151156号、同4−162040号、同5−197148号、同5−5995号、同6−194834号、同8−146608号、同10−83079号、欧州特許622682号に記載の化合物が挙げられ、具体的には、2−ニトロベンジルカルバメート、2,5−ジニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、N−シクロヘキシル−4−メチルフェニルスルホンアミド、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル−N−イソプロピルカーバメート等が好適に用いることができる。これらの光塩基発生剤は、レジスト形状などの改善を目的とし添加される。
【0123】
カルボン酸発生剤
活性光線又は放射線の照射により、カルボン酸を発生する化合物(以下、「カルボン酸発生剤」ともいう)を使用してもよい。
カルボン酸発生剤としては下記一般式(E)で表される化合物が好ましい。
【0124】
【化24】

【0125】
一般式(E)中、R21〜R23は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R24は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、Zは、イオウ原子又はヨウ素原子を表す。Zがイオウ原子である場合、pは1であり、ヨウ素原子である場合、pは0である。
【0126】
一般式(E)において、R21〜R23は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
アルキル基、シクロアルキル基又はアルケニル基が有してもよい置換基の例としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)等を挙げることができる。
アリール基が有してもよい置換基の例としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、ニトロ基、シアノ基、アルキル基(メチル基、エチル基、t-ブチル基、t-アミル基、オクチル基等)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)等を挙げることができる。
21〜R23は、各々独立に、好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基又は炭素数6〜24のアリール基であり、より好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、素数6〜18のアリール基であり、特に好ましくは炭素数6〜15のアリール基である。これらの基は各々置換基を有していてもよい。
【0127】
24は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。
アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基が有してもよい置換基の例としては、上記R21がアルキル基である場合の置換基の例として挙げたものと同じものが挙げられる。アリール基の置換基の例としては、上記R21がアリール基である場合の置換基の例として挙げたものと同じものが挙げられる。
24は、好ましくは、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基であり、より好ましくは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基であり、特に好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜15のアリール基である。これらの基は、各々置換基を有していてもよい。
【0128】
尚、式(E)のカチオン部の2つ以上が、単結合又は連結基(例えば、−S−、−O−など)により結合し、式(E)のカチオン部を複数有するカチオン構造を形成してもよい。
【0129】
カルボン酸発生剤の、本発明のポジ型レジスト組成物中の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0〜10質量%が好ましく、より好ましくは0〜5質量%、特に好ましく
は0〜3質量%である。またこれらの活性光線又は放射線の照射によりカルボン酸を発生する化合物は1種類を用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0130】
酸化防止剤
本発明のレジスト組成物は酸化防止剤を含有することができる。
酸化防止剤とは、有機材料が酸素の存在下で酸化されることを防ぐためのものである。
【0131】
酸化防止剤としては、一般に使用されているプラスチック等の酸化防止に効果があるものであれば特に限定するものではなく、例えば、フェノール系酸化防止剤、有機酸誘導体からなる酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、アミン− アルデヒド縮合物からなる酸化防止剤、アミン− ケトン縮合物からなる酸化防止剤等があげられる。なお、これらの酸化防止剤のうち、レジストの機能を低下させずに本発明の効果を発現させるためには、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤、有機酸誘導体からなる酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0132】
ここに、フェノール系酸化防止剤としては、置換フェノール類、例えば、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、2,6−ジ−第三−ブチルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−4−メチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−第三−ブチルフェノール、ブチル−ヒドロキシアニソール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチル−6−第三−ブチルフェノール、2−メチル−4,6−ジノニルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三−ブチル−アニリノ)2,4−ビス・オクチル−チオ−1,3,5−トリアジン、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三−ブチル−フェニル)プロピオネート、オクチル化フェノール、アラルキル置換フェノール類、アルキル化−p−クレゾール、ヒンダード・フェノール等があげられ、ビス,トリス,ポリフェノール類、例えば、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル、メチレン−ビス(ジメチル−4,6−フェノール) 、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン− ビス−(4−メチル−6−シクロヘキシル−フェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−第三−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン− ビス−(2,6−ジ−第三−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−アルファメチル−ベンジル−p−クレゾール)、メチレン架橋した多価アルキルフェノール、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチル−ジフェニルメタン、アルキル化ビスフェノール、ヒンダード−ビスフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(2−メチル4−ヒドロキシ−5−第三−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−第三−ブチル−4’− ヒドロキシフェニル) プロピオネート] メタン等があげられる。
【0133】
本発明で用いる酸化防止剤の好ましい具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルヒドロキノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、ノルジヒドログアヤレチック酸、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ラウリル、クエン酸イソプロピルなどが挙げられる。これらのうち2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルヒドロキノンが好ましく、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールまたは4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノールがより好ましい。
【0134】
酸化防止剤の含有量は、ポジ型レジスト組成物中に1ppm以上であることが好ましく、5ppm以上であることが更により好ましく、10ppm以上であることが更により好ましく、50ppm以上であることが更により好ましく、100ppm以上であることが更により好ましく、100〜10000ppmであることが特に好ましい。また、複数の酸化防止剤を混合して使用しても良い。
【0135】
製膜
本発明のポジ型レジスト組成物は、基板上に塗布され、薄膜を形成する。この塗布膜の膜厚は、0.05〜4.0μmが好ましい。
【0136】
レジストの下層に反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。前者は膜形成に真空蒸着装置、CVD装置、スパッタリング装置等の設備を必要とする。有機反射防止膜としては、例えば特公平7−69611号記載のジフェニルアミン誘導体とホルムアルデヒド変性メラミン樹脂との縮合体、アルカリ可溶性樹脂、吸光剤からなるものや、米国特許5294680号記載の無水マレイン酸共重合体とジアミン型吸光剤の反応物、特開平6−118631号記載の樹脂バインダーとメチロールメラミン系熱架橋剤を含有するもの、特開平6−118656号記載のカルボン酸基とエポキシ基と吸光基を同一分子内に有するアクリル樹脂型反射防止膜、特開平8−87115号記載のメチロールメラミンとベンゾフェノン系吸光剤からなるもの、特開平8−179509号記載のポリビニルアルコール樹脂に低分子吸光剤を添加したもの等が挙げられる。
また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
また、必要に応じて、レジストの上層に反射防止膜を用いることが出来る。
反射防止膜としては、たとえば、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AQUATAR−II、AQUATAR-III、AQUATAR-VIIなどが挙げられる。
【0137】
精密集積回路素子の製造などにおいてレジスト膜上へのパターン形成工程は、基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆基板、ガラス基板、ITO基板、石英/酸化クロム被覆基板等)上に、本発明のポジ型レジスト組成物を塗布し、レジスト膜を形成し、次にKrFエキシマレーザー光、電子線、EUV光などの活性光線又は放射線を照射し、加熱、現像、リンス、乾燥することにより良好なレジストパターンを形成することができる。
【0138】
現像において使用するアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノーアミン等のアルコ−ルアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液(通常0.1〜20質量%)を使用することができる。更に、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
これらの現像液の中で好ましくは第四級アンモニウム塩、更に好ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロオキシド、コリンである。
アルカリ現像液のpHは、通常10〜15である。
【実施例】
【0139】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0140】
合成例1(樹脂(A−7−1)の合成)
2Lフラスコにエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600gをいれ、100mL/minの流量で一時間窒素置換した。また、4−アセトキシスチレン97.3g(0.60mol)、t−ブチルメタクリレート42.7g(0.30mol)、ベンジルメタクリレート17.6g(0.10mol)、重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製)2.30g(0.01mol)、1-オクチルメルカプタン1.46g(0.01mol)をエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート200gに溶解し、得られた溶液を上記と同様に窒素置換した。
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの入った2Lフラスコを、内温が80℃になるまで昇温した後、さらに重合開始剤剤V−601 2.30g(0.01mol)を添加し、5分間攪拌した。その後、上記モノマー混合溶液を攪拌しながら6時間かけて滴下した。滴下後、2時間さらに加熱攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、ヘキサン3L中に滴下しポリマーを沈殿させた。ろ過した固体をアセトン500mlに溶解し、再度ヘキサン3L中に滴下、ろ過した固体を減圧乾燥して、4−アセトキシスチレン/t−ブチルメタクリレート/ベンジルメタクリレート共重合体149gを得た。
反応容器中に上記で得られた共重合体40.0g、メタノール40ml、1−メトキシ−2−プロパノール200ml、濃塩酸1.5mlを加え、80℃に加熱して5時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷し、蒸留水3L中に滴下した。ろ過した固体をアセトン200mlに溶解し、再度蒸留水3L中に滴下、ろ過した固体を減圧乾燥して樹脂(A−7−1)31.0gを得た。GPCによる重量平均分子量は8000、分子量分散度(Mw/Mn)は1.58であった。
【0141】
合成例2(樹脂(A−7−4)の合成)
重合開始剤V−601の添加量をそれぞれ9.2g(0.04mol)にし、1-オクチルメルカプタンを添加しなかった以外は合成例1と同様の操作で樹脂(A−7−4)30.5gを得た。
GPCによる重量平均分子量は8500、分子量分散度(Mw/Mn)は1.71であった。
【0142】
下記表1に示す条件で、樹脂を合成した。表1、樹脂の欄で、左から2つの文字は、樹脂の構造を表す。例えば、「A−1−1」とある樹脂は、先に例示した構造(A−1)を有する樹脂である。樹脂の組成比、重量平均分子量(Mw)、分子量分散度(Mw/Mn)を表1に示す。組成比(モル比)は、先に例示した樹脂の構造における繰り返し単位と左から順に対応する。
【0143】
【表1】

【0144】
以下、表1中の樹脂(Z−1)、(Z−2)の構造を示す。
【0145】
【化25】

【0146】
実施例1〜7及び比較例1〜4
〔レジスト組成物の調製〕
樹脂、酸発生剤、有機塩基性化合物及び界面活性剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)またはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)との混合溶剤(混合比率を表2に示す)に溶解させ、固形分濃度10.0質量%の溶液を調製した後、得られた溶液を0.1μm口径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、レジスト溶液を得た。
以下、表2に評価に使用したレジスト溶液を示す。ここで、各成分の添加量(質量%)は、溶剤を除いた固形分に対する質量%を意味する。
【0147】
〔評価〕
(残膜率(プラズマエッチング耐性))
HMDS処理をしたウエハー上に膜厚0.4μmのポジ型レジスト膜を形成した後、CF4(10mL/min)、O2(20mL/min)、Ar(1000mL/min)の混合ガスを用いて、温度23℃の条件で30秒間プラズマエッチングを行った。その後、レジスト膜の残膜量を測定し、元の膜厚0.4μmで除して100倍した値を残膜率(%)とした。残膜率が大きいほどプラズマエッチング耐性は良好である。
(欠陥)
マスクサイズ180nm、ピッチ360nmのマスクパターンで180nmのレジストパターンが得られる露光量で、0.18μmのパターンをウエハ面内78箇所露光した。この得られたパターン付きウエハをケーエルエー・テンコール(株)製KLA−2360により現像欠陥数を測定した。この際の検査面積は計205cm、ピクセルサイズ0.25μm、スレッシュホールド=30、検査光は可視光を用いた。得られた数値を検査面積で割った値を欠陥数(個/cm2)として評価した。
評価結果を、表2に示す。
【0148】
【表2】

【0149】
以下、表中の略号を示す。
【0150】
(有機塩基性化合物)
C−1: ジシクロヘキシルメチルアミン
C−2: 2,4,6−トリフェニルイミダゾール
C−3: テトラ−(n−ブチル)アンモニウムヒドロキシド
C−4:
【0151】
【化26】

【0152】
(界面活性剤)
D−1:フッ素系界面活性剤、メガファックF-176(大日本インキ化学工業(株)製)
D−2:フッ素/シリコン系界面活性剤、メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)
D−3:シリコン系界面活性剤、シロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)
【0153】
表2から、本発明のポジ型レジスト組成物は、現像欠陥が少なく、十分なプラズマエッチング耐性を有していることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連鎖移動剤の存在下でラジカル重合することにより得られた樹脂(A)を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【請求項2】
樹脂(A)が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を有し、アルカリ現像液に不溶若しくは難溶性で、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【化1】

一般式(I)及び(II)に於いて、
1は、各々独立して水素原子又はメチル基を表す。
Aは、酸の作用により脱離する基を表す。
mは、1又は2を表す。
【請求項3】
連鎖移動剤が、直鎖、分岐若しくは環状のアルキルチオール化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
樹脂(A)が、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のポジ型レジスト組成物。
【化2】

一般式(III)に於いて、
1は、水素原子又はメチル基を表す。
2は、フェニル基又はシクロヘキシル基を表す。
nは、0〜2の整数を表す。
【請求項5】
一般式(I)で表される繰り返し単位が、下記一般式(I−a)で表されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【化3】

【請求項6】
一般式(II)で表される繰り返し単位が、下記一般式(II−a)で表されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【化4】

一般式(II−a)に於いて、
1は、水素原子又はメチル基を表す。
【請求項7】
連鎖移動剤の存在下でラジカル重合を行うことを特徴とするポジ型レジスト組成物用樹脂(A)の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物により、レジスト膜を形成し、露光、現像する工程を有することを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2009−104040(P2009−104040A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277521(P2007−277521)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】