説明

ポジ型感光性樹脂組成物

【課題】濡れ性に優れ、かつポリマーまたは添加物の析出性を抑えたポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた耐熱性パターンの作製方法を提供する。
【解決手段】(A)PBO前駆体であるヒドロキシポリアミド、(B)感光性キノンジアジド化合物、及び(C)特定の構造を有するシリコン系界面活性剤(親水性シリコンオイル)を溶剤に溶解し、ポジ型感光性樹脂組成物を調製し、それを用いて耐熱性パターンを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などに用いられるポジ型感光性樹脂組成物、およびそれを用いた耐熱性パターンの作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の層間絶縁膜、表面保護膜として、優れた耐熱性と電気特性、機械特性などを併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。近年、半導体素子の更なる高集積化、大型化が進む中、封止樹脂パッケージの薄型化、小型化の要求に応えるためLOC(リード・オン・チップ)や半田リフローによる表面実装等の方式が採用され、これまで以上に微細加工性、機械特性、耐熱性等に優れたポリイミド樹脂が必要とされるようになってきた。
【0003】
これらの要求に対し、ポリイミド樹脂自身に感光性能を付与することで光による微細パターンの形成を容易にした感光性ポリイミド樹脂が開発・実用化され、広く用いられてきている。これらの技術の発展として、最近、アルカリ水溶液で現像ができるポジ型の感光性樹脂の研究がなされており、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3,特許文献4においてはヒドロキシポリアミドと感光性キノンジアジド化合物よりなるポジ型感光性樹脂が開示されている。これらは優れた耐熱性、電気特性、微細加工性をもち、ウェハーコート用途のみならず層間絶縁膜としての適用される可能性がある。
【0004】
このポジ型感光性樹脂組成物の現像メカニズムは次の通りである。未露光部の感光性キノンジアジド化合物がアルカリ性水溶液に不溶であるが、露光することにより感光性キノンジアジド化合物が化学変化を起こし、アルカリ性水溶液に可溶となる。この未露光部と露光部での溶解度の差を利用して未露光部のみの塗膜パターンの作成が可能となる。このような感光性樹脂組成物を半導体素子の表面保護膜として用いる際に、感光性樹脂組成物塗布のときに要求される項目として、シリコンウエハーの周辺部分(エッジ)の感光性樹脂組成物の除去性がある。半導体製造工程において、シリコンウエハーは専用のアームで搬送されるが、この時シリコンウエハー周囲に感光性樹脂組成物が残っていると、半導体を製造する装置を汚染するという問題がある。そのため、この工程においては、シリコンウエハー周囲部の感光性樹脂組成物を取り除くという工程(エッジカット)が行われる。
【0005】
代表的なエッジカットの方法は、スピンコート段階において周辺部のエッジリンスを行った後、ホットプレートで乾燥するという方法である。しかしこの方法ではしばしば、ホットプレートでの乾燥中に感光性樹脂組成物が周囲より後退しひけが発生するため、半導体製造過程において支障をきたすことになる。特許文献5において示されているように、ポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する感光性樹脂組成物をベースとしたポジ型感光性樹脂組成物もこの濡れ性には問題があることが知られている。これを改良するためにポジ型感光性樹脂組成物にレベリング剤を添加することが行われており、たとえば、特許文献6等ではフッ素系界面活性剤をレベリング剤として用いている。
【0006】
一方、従来の半導体素子製造用樹脂組成物は、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)という塩基性溶媒を使用していたため、プリベーク時の熱によりNMPがクリーンルーム内に拡散するため、フォトレジストによっては特性に影響を与えている。そのため、最近ではγ−ブチロラクトン等の非アミド系の溶媒を使用するものが増えているが、この系においては、γ−ブチロラクトンがNMPよりも溶解性において劣るため、析出の問題が起こることがあることが特許文献7等により知られている。同公報では、析出は特定の有機ケイ素化合物によりおこると主張されているが、必ずしも析出物やメカニズム
が同定されている訳ではない。
【0007】
また、組成物の成分の析出という問題については、特許文献8等で、条件により感光剤や添加剤が、特許文献9、特許文献10等で高感度化のために添加するフェノール類が析出しうることが知られており、感光性組成物の組成設計上の障害となっていた。また、このような組成物に、上記のフッ素系界面活性剤を加えても、析出の点では特に改善は見られなかった。
【0008】
以上述べたように、これまでに、高解像度のパターンが得られ、塗膜の良好な濡れ性と、組成物成分(ポリマーまたは添加物)の析出抑制を同時に満足させることができるポジ型感光性樹脂組成物は提供されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平01−046862号公報
【特許文献2】特開平08−269198号公報
【特許文献3】特開昭64−006947号公報
【特許文献4】特開平03−020743号公報
【特許文献5】特公平01−046862号公報
【特許文献6】特開平11−039810号公報
【特許文献7】特開平11−102069号公報
【特許文献8】特開平11−258695号公報
【特許文献9】特開平11−242338号公報
【特許文献10】特開平11−109620号公報
【特許文献11】特開昭60−223824号公報
【特許文献12】特開昭63−096162号公報
【特許文献13】特開平05−197153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高感度で現像時及びキュア後において高残膜率のパターンを得られ、濡れ性に優れ、かつポリマーまたは添加物の析出性を抑えたポジ型感光性樹脂組成物、およびそれを用いた耐熱性パターンの作製方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本願は、以下の発明を提供する。
(I)(A)下記一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有するヒドロキシポリアミド:100重量部、(B)感光性キノンジアジド化合物:5〜50重量部、(C)シリコン系界面活性剤:0.001〜5.0重量部、および(D)溶剤を必須成分として含有するポジ型感光性樹脂組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
[式中X1は、下記に示される四価の基である。
【化2】

(A1 は、単結合、−O−、−C(CF3 2 −、−CO−、−SO2 −である。)
【0014】
2は、下記に示される二価の基である。
【化3】

(A2は、単結合、−O−、−C(CF3 2 −、−CO−、−SO2 −である。)]
【0015】
II)上記(I)記載のポジ型感光性樹脂組成物を半導体素子上に塗布した後、プリベーク、露光、現像してパターニングし、その塗膜パターンを加熱硬化することを特徴とする耐熱性パターンの作製方法。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、本発明によれば、濡れ性に優れ、かつポリマーまたは添加物の析出性を抑えたポジ型感光性樹脂組成物が提供され、半導体素子等の表面保護膜、層間絶縁膜等に好適に用いられる。また、本発明の感光性樹脂組成物は、半導体用途のみならず、多層回路の層間絶縁やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜等の用途にも有用である。
【0017】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の(A)成分であるヒドロキシポリアミドは、ジカルボン酸を塩化チオニル等を用いて酸クロライド化し、ジヒドロキシジアミンと縮合させる方法や、ジカルボン酸とジヒドロキシジアミンをジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤により縮合する方法により得ることができる。(特許文献3、特許文献11、特許文献12、特許文献13等の記載参照)
このようにして得られたヒドロキシポリアミドを約300〜400℃で加熱すると脱水閉環し、ポリベンゾオキサゾールという耐熱性樹脂に変化する。
【0018】
上記ヒドロキシポリアミドを製造するために用いられるカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,3’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、3,4’−ジフェニルスルホン−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等が挙げられる。ここで用いるジカルボン酸は、1種類でも2種類以上の混合物でもかまわない。
【0019】
また、ヒドロキシポリアミドを製造するために用いられるジヒドロキシジアミンとしては、例えば、2,4−ジヒドロキシ−m−フェニレンジアミン、2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレンジアミン、4,6−ジアミノレゾルシノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニル、3,4’−ジアミノ−3’,4−ジヒドロキシジフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノ−3’,4−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,4’−ジアミノ−3’,4−ジヒドロキシジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−3’,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノ−3’,4−ジヒドロキシジフェニルスルフォン等が挙げられる。ここで用いるジヒドロキシジアミンは、1種類でも2種類以上の混合物でもかまわない。
【0020】
この際、ジヒドロキシジアミンの一部を、全ジアミンの40モル%を超えない範囲でフェノール性OH基を持たない芳香族またはシリコーンジアミンを使用することもできる。フェノール性OH基を持たないジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノ−トルエン、3,5−ジアミノ−トルエン、2,4−ジアミノ−トルエン、m−キシレン−2,5−ジアミン,p−キシレン−2,5−ジアミン、2,6−ジアミノ−ピリジン、2,5−ジアミノ−ピリジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ジアミノ−シクロヘキサン、ピペラジン、メチレン−ジアミン、エチレン−ジアミン、プロピレン−ジアミン、2,2−ジメチル−プロピレン−ジアミン、テトラメチレン−ジアミン、ペンタメチレン−ジアミン、ヘキサメチレン−ジアミン、2,5−ジメチル−ヘキサメチレン−ジアミン、3−メトキシ−ヘキサメチレン−ジアミン、ヘプタメチレン−ジアミン、2,5−ジメチル−ヘプタメチレン−ジアミン、3−メチル−ヘプタメチレン−ジアミン、4,4′−ジアミノ−ジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノ−ジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノ−ジフェニルエタン、3,3′−ジアミノ−ジフェニルエタン、4,4′−ジアミノ−ジフェニルメタン、3,3′−ジアミノ−ジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−ジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノ−ジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノ−ジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノ−ジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノ−ジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノ−ジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノ−ジフェニルエーテル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノ−ビフェニル、3,3′−ジメトキシ−ベンジジン、4,4′−ジアミノ−p−テルフェニル、3,3′−ジアミノ−p−テルフェニル、ビス(p−アミノ−シクロヘキシル)メタン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(2−メチル−4−アミノ−ペンチル)ベンゼン、p−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1,5−ジアミノ−ナフタレン、2,6−ジアミノ−ナフタレン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(γ−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(p−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(γ−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(γ−アミノプロピル)テトラフェニルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフォン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフォン、4,4′−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2′−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2′−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノ−3,3′,5,5′−テトラメチルジフェニルメタン、2,6−ジアミノ−4−カルボキシリックベンゼン(メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル)エステル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
また、これらのフェノール性OH基を持たないジアミンは、1種類でも2種類以上の混合物でもかまわない。全ジアミンのうち、フェノール性OH基を持たないジアミンのモル比が40%を超えると、本発明に用いられるヒドロキシポリアミドのアルカリ性現像液に対する親和性が著しく低下し、現像が実質的に不可能となるため好ましくない。ジカルボン酸とジヒドロキシジアミンの縮合の際、ジカルボン酸に対して、ジヒドロキシジアミンを小過剰量使用し、縮合する方法に引き続いて、特定の構造をもつ酸無水物等を利用してアミンの末端を酸アミド化することができる。
【0022】
このような酸アミドのために使用される化合物としては、例えば、フタル酸無水物、グルタル酸無水物、p−トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド、2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、ベンゾイルクロリド、無水フタル酸、4−メチルフタル酸無水物、4−クロロフタル酸無水物、無水コハク酸、2−ホルムアミドコハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、2,2−ジメチルコハク酸無水物、アセトキシコハク酸無水物、アセチルメルカプトコハク酸無水物、無水グルタル酸、3−メチルグルタル酸無水物、2,2−ジメチルグルタル酸無水物、3,3−ジメチルグルタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ジ−t−ブチルジカルボナート、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2−シクロペンタンジカルボン酸無水物、1,2−シクロブタンジカルボン酸無水物、1,2−シクロプロパンジカルボン酸無水物、1,1−シクロペンタンジアセトン無水物、デカリン−1,10−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−メチル−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3−ジカルボン酸無水物、オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられるがこれに限定されるものではない。この際、全アミン末端の少なくとも40モル%以上を酸アミド化する必要がある。この比率が40%を下回ると、ポジ型レジストとした場合の保存安定性、リソグラフィー特性が得られず好ましくない。
【0023】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の(B)成分である感光性キノンジアジド化合物は、一般にポジレジストに使用される、ポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォン酸エステルおよび/または1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルフォン酸エステルを含む感光性キノンジアジド化合物である。本発明に用いられる感光性キノンジアジド化合物は、常法に従ってキノンジアジドスルフォン酸化合物をクロルスルフォン酸でスルフォニルクロライドとし、得られたキノンジアジドスルフォニルクロライドと、ポリヒドロキシ化合物とを縮合反応させることにより得られる。
【0024】
例えば、ポリヒドロキシ化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルフォニルクロリドまたは1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォニルクロリドの所定量をジオキサン、アセトンまたはテトラヒドロフラン等の溶媒中において、トリエチルアミン等の塩基性触媒の存在下反応させてエステル化を行い、得られた生成物を水洗、乾燥することにより得ることができる。本発明で用いられる感光剤の母核(バラスト)となるポリヒドロキシ化合物の具体例としては、以下の化合物を挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらを使用する場合、1種類でも2種類以上の混合物でもかまわない。
【0025】
以下具体例を列挙する。
【化4】

【0026】
本発明で用いる感光剤の配合割合は、ヒドロキシポリアミド100重量部に対して、通常、5〜50重量部、好ましくは10〜25重量部である。この配合比率が少なすぎると十分な感度、残膜率が得られず、逆に配合比率が多すぎるとパターンの解像度が大幅に低下するだけでなく、フィルムの引っ張り伸び率が著しく低下する。本発明のポジ型感光性樹脂組成物においては、前記の成分(A),(B)に加えて(C)シリコン系界面活性剤を含有させることが重要である。界面活性剤をポジ型レジスト組成物に添加する技術としては、フッ素系の界面活性剤を用いる技術が知られており、濡れ性の向上、エッジリンス性の向上には効果がみられるが、ワニスの析出を完全に抑えることに関しては効果が薄か
った。しかし、シリコン系界面活性剤を用いた場合、濡れ性、析出抑制のすべてを満足させる性能が得られる。
【0027】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の(C)成分であるシリコン系界面活性剤とは、親水性シリコンオイルのことを意味し、この具体的な例としては、アルキル置換ポリシロキサンとして知られている非反応性オイルが挙げられ、この中には水に微溶なものから完全に溶けるものまで様々な溶解度のものが存在し、一般にアルキレンオキシドの添加量が多いほど親水性が高くなる。本発明においては、このようなシリコン系界面活性剤として、ジメチルシロキサンコポリマーのメチル基の一部がプロピル基を介在したアルキレンオキシ基に置換されたもの、すなわち、前記一般式(2)の構造を有するものが好適に用いられる。
【0028】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、必要に応じて従来感光性樹脂組成物の添加剤として用いられているフェノール類、染料、安定剤、基板との密着性を高めるための接着助剤等を添加することも可能である。このようなフェノール類としては、特に限定はないが、例えば、前記化4等の化合物が使用できる。また、染料としては、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン等が、接着助剤の例としては、アルキルイミダゾリン、酪酸、アルキル酸、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルメチルエーテル、t−ブチルノボラック、エポキシシラン、エポキシポリマー等、及び各種シランカップリング剤が挙げられる。
【0029】
本発明においてはこれらの成分を(D)溶剤に溶解し、ワニス状にして使用する。本発明に用いる溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられ、本発明においてはこれらを単独または混合して使用できる。これらのうちで、γ−ブチロラクトン等の非アミド系溶媒を用いると、化学増幅型フォトレジストに対する影響が少なくより好ましい。
【0030】
溶剤の量は特に限定されるものではないが、使用する感光性組成物の粘度が適正になるよう、通常100〜400重量部の範囲より好ましい量を選択する。本願は、上記のポジ型感光性樹脂組成物を半導体素子上に塗布した後、プリベーク、露光、現像してパターニングし、その塗膜パターンを加熱硬化することを特徴とする耐熱性パターンの作製方法も提供するが、具体的な方法としては、以下のように行われる。
【0031】
まず、上記のポジ型感光性樹脂組成物を基板、例えば、半導体装置、シリコンウェハー、セラミック基板、アルミ基板等にスピナーを用いた回転塗布やロールコーターによる塗布を行う。これをオーブンやホットプレートを用いて50〜140℃で乾燥し、マスクを介して、コンタクトアライナーやステッパーを用いて化学線の照射を行う。次に照射部を現像液で溶解除去し、引き続きリンス液によるリンスを行うことで所望のレリーフパターンを得る。現像方法としてはスプレー、パドル、ディップ、超音波等の方式が可能である。
【0032】
現像液として用いられるアルカリ水溶液は、アルカリ可溶性ポリマーを溶解除去するものであり、アルカリ化合物を溶解した水溶液である。このようなアルカリ化合物としては、無機アルカリ性化合物、有機アルカリ性化合物のいずれをも用いることができる。この
うち、無機アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニア等が使用できる。
【0033】
また、有機アルカリ化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミン等が使用できる。さらに、上記アルカリ水溶液に、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等の水溶性有機溶媒、界面活性剤、保存安定剤、樹脂の溶解抑止剤等を適量添加することができる。
現像後のリンスに用いられるリンス液としては、蒸留水、脱イオン水等が挙げられる。このようにして得られたレリーフパターンを加熱処理することにより、オキサゾール構造を有する耐熱性被膜パターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施の形態の具体的な例を説明する。
(1)ヒドロキシポリアミドの合成
[合成例1]
撹拌機、滴下ロート及び温度計を付した3Lセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)(700g)、3,3’ジアミノ−4,4’ジヒドロキシジフェニルヘキサフルオロプロパン(0.54モル、197.8g)、ピリジン(0.30モル、23.7g)を室温で混合攪拌し、これに4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド(0.45モル、132.8g)のジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)(420g)溶液を0〜20℃で加え、室温で3時間攪拌後、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物(0.54モル、83.3g)、ピリジン(1.32モル、104.4g)を加え、室温で15時間攪拌した。この際の反応率はポリマー分子内に残存するアミノ基を定量することから算出できる。反応率は99%であった。その後、上記反応液を5Lの水に高速攪拌下で滴下し重合体を分散析出させ、これを回収し、水洗、脱水後、真空乾燥によりヒドロキシポリアミド(P−1)を得た。
【0035】
[実施例1]
ヒドロキシポリアミド(P−1)100重量部、下記化5のナフトキノンジアジド15重量部、シリコン系界面活性剤(アヅマックス製DBE−224)0.05重量部をγ−ブチロラクトン160重量部に溶解した後、0.5μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過して感光性樹脂組成物(A−1)を調製した。
【0036】
【化5】

【0037】
(式中のY1、Y2、Y3
【化6】

または水素原子であり、Y1、Y2、Y3のエステル化率の合計は280%である。)
【0038】
(1)濡れ性評価
この組成物を、スピンコーター(D−Spin)にて、0.5%アミノプロピルトリエトキシシランのメタノール溶液を用いて200℃、20分で処理した5インチシリコンウェハーに、スピン塗布し、130℃、240秒間ホットプレートにてプリベークを行い、塗布後5μmの塗膜を形成した。膜厚は膜厚測定装置(ナノスペック)にて測定した。この塗膜の様子を観察したところ、塗布膜周囲でのひけが発生せず、面内で均一な塗膜が得られた。
(2)析出評価
上記感光性組成物において40℃において14日間静置し、析出するまでの時間を測定したところ、析出は見られなかった。
【0039】
[実施例2、3、4、5、6、7]
実施例1におけるシリコン系界面活性剤(アヅマックス製DBE−224)を、アヅマックス製DBE−621、DBE−712、DBE−814、DBE−821、DBP−732、DBP−534に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物(A−2、3、4、5、6、7)を調製した。
【0040】
(1)濡れ性評価
この組成物(A−2、3、4、5、6、7)を、それぞれスピンコーター(D−Spi
n)にて、0.5%アミノプロピルトリエトキシシランのメタノール溶液を用いて200℃、20分で処理した5インチシリコンウェハーに、スピン塗布し、130℃、240秒間ホットプレートにてプリベークを行い、塗布後5μmの塗膜を形成した。膜厚は膜厚測定装置(ナノスペック)にて測定した。この塗膜の様子を観察したところ、塗布膜周囲でのひけが発生せず、面内で均一な塗膜が得られた。
(2)析出評価
上記感光性組成物(A−2、3、4、5、6、7)をそれぞれ40℃において14日間静置し、析出するまでの時間を測定したところ、表1に示すように析出は見られなかった。
【0041】
【表1】

【0042】
[実施例9、10、11、12、13、14、15]
上記の感光性組成物(A−1、2、3、4、5、6、7)を、東京エレクトロン社製スピンコーター(MARK7)にて、0.5%アミノプロピルトリエトキシシランのメタノール溶液を用いて200℃、20分で処理した5インチシリコンウェハーに、スピン塗布し、130℃、240秒間ホットプレートにてプリベークを行い、塗布後5μmの塗膜を形成した。膜厚は大日本スクリーン社製膜厚測定装置(ラムダエース)にて測定した。
【0043】
この塗膜に、テストパターンつきレチクルを通して i−線(365nm)の露光波長を有するステッパー(ニコン製、NSR1755i7B)を用いて露光量を段階的に変化させて露光した。これをクラリアントジャパン社製アルカリ現像液(AZ300MIFデベロッパー2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)で23℃の条件下で、現像後膜厚が4μmとなるように現像時間を調整して現像を行いポジ型パターンを形成した。結果を以下の表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
[比較例1]
実施例1において、シリコン系界面活性剤(アヅマックス製DBE−224)を入れない
以外は、実施例1と同様にして組成物を調合した後、0.5μmのテフロンフィルターで濾過して感光性樹脂組成物を調製した。
(1)濡れ性評価
この組成物を、スピンコーター(D−Spin)にて、0.5%アミノプロピルトリエトキシシランのメタノール溶液を用いて200℃、20分で処理した5インチシリコンウェハーに、スピン塗布し、130℃、240秒間ホットプレートにてプリベークを行い、塗布後5μmの塗膜を形成する。膜厚は膜厚測定装置(ナノスペック)にて測定した。この塗膜の様子を観察したところ、エッジから約4mmのところで塗布膜が周囲より後退しひけが発生する現象が観察された。
(2)析出評価
上記感光性組成物において40℃において静置し、析出するまでの時間を測定したところ、40℃において6日間静置したところで析出がみられた。これを分離して赤外線吸収スペクトルを測定したところ、2300cm-1付近のところにアジド基の特性吸収が観測された。
【0046】
[比較例2]
実施例1において、シリコン系界面活性剤(アヅマックス製DBE−224)のかわりにフッ素系界面活性剤(大日本インキ製R−08)を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調合した後、0.5μmのテフロンフィルターで濾過して感光性樹脂組成物を調製した。
(1)濡れ性評価
この組成物を、スピンコーター(D−Spin)にて、0.5%アミノプロピルトリエトキシシランのメタノール溶液を用いて200℃、20分で処理した5インチシリコンウェハーに、スピン塗布し、130℃、240秒間ホットプレートにてプリベークを行い、塗布後5μmの塗膜を形成した。膜厚は膜厚測定装置(ナノスペック)にて測定した。この塗膜の様子を観察したところ、面内均一的な塗膜が得られた。
(2)析出評価
上記感光性組成物において40℃において14日間静置し、析出するまでの時間を測定したところ、40℃において10日間静置したところで析出がみられた。これを分離して赤外線吸収スペクトルを測定したところ、2300cm-1付近のところにアジド基の特性吸収が観測された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有するヒドロキシポリアミド:100重量部、(B)感光性キノンジアジド化合物:5〜50重量部、(C)シリコン系界面活性剤:0.001〜5.0重量部、および(D)溶剤を必須成分として含有するポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

[式中X1は、下記に示される四価の基である。
【化2】

(A1 は、単結合、−O−、−C(CF3 2 −、−CO−、−SO2 −である。)
2は、下記に示される二価の基である。
【化3】

(A2は、単結合、−O−、−C(CF3 2 −、−CO−、−SO2 −である。)]
【請求項2】
請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物を半導体素子上に塗布した後、プリベーク、露光、現像してパターニングし、その塗膜パターンを加熱硬化することを特徴とする耐熱性パターンの作製方法。

【公開番号】特開2010−164986(P2010−164986A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48724(P2010−48724)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【分割の表示】特願2000−292848(P2000−292848)の分割
【原出願日】平成12年9月26日(2000.9.26)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】