説明

ポジ型感光性組成物

【課題】高耐熱性、高透明性、耐クラック性、下地との密着性等に優れ、アルカリ水溶液で現像することにより得られるパターニングされた膜の形成に有用なポジ型感光性組成物を提供する。
【解決手段】特定の四官能のシルセスキオキサン化合物(A)、アルコキシル基数が異なる複数種のアルコキシシラン化合物によるシロキサンポリマー(B)、1,2−キノンジアジド化合物(C)、及び溶剤(D)を含有するポジ型感光性組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト分野等で利用可能なポジ型感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パターニングされた透明膜は、スペーサー、絶縁膜、保護膜等表示素子の多くの分野で使用されており、これまでに多くのポジ型感光性組成物がこの用途に提案されてきた(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
一般に、薄膜トランジスタ型液晶表示素子や固体撮像素子等の電子部品には、層状に配置される配線の間を絶縁するために絶縁膜が設けられている。絶縁膜を形成する材料としては、必要とするパターン形状の絶縁膜を得るための工程数が少ないポジ型感光性組成物が幅広く使用されている。ポジ型感光性組成物は、絶縁膜を形成する過程において広いプロセスマージンを有することが必要である。さらに、ポジ型感光性組成物を用いた絶縁膜や表示素子は、製造後工程において、溶剤、酸、アルカリ溶液等に浸漬等によって接触すること、及び熱処理されることがある。
【0004】
近年では、さらに形成した透明膜(パターン状透明膜)上に高温下で無機膜を形成する用途も存在する。この場合、形成される無機膜は化学蒸着、スパッタリング等の手段により形成される。これらの成膜法により良質な膜を得るためには、成膜工程において300℃以上の高温を必要とすることがある。つまり、これら無機膜の下地となる透明膜(パターン状透明膜)も高温に晒されることがある。無機膜の下地となる透明膜(パターン状透明膜)の耐熱性が不足すると、高温プロセス中に透明膜(パターン状透明膜)の熱分解により脱離ガスが発生し、その影響で良質の無機膜が得られない。また、熱劣化によって透明膜(パターン状透明膜)に着色が発生し、透明用途での使用が難しい。これらの理由により、300℃以上の高耐熱性を持つポジ型感光性組成物が求められている。
【0005】
これらの用途に供するポジ型感光性組成物として、いくつかの提案がなされており、例えばシロキサンポリマーとナフトキノン系感光剤を含有する材料や、シロキサンポリマーとイミド化合物、そしてナフトキノン系感光剤を混合した材料が提案されている(例えば、特許文献4、5参照。)。これらの材料による膜は、300℃以上の高温の成膜工程の条件下において、耐クラック性と高い透明性(透過率、透明度)、そして他の要求特性をすべて満たすことが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭51−34711号公報
【特許文献2】特開昭56−122031号公報
【特許文献3】特開平5−165214号公報
【特許文献4】特開2006−178436号公報
【特許文献5】特開2009−15285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、300℃以上でも耐クラック性を有し、透明性に優れる、パターニングされた透明膜(パターン状透明膜)を形成できるポジ型感光性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ケイ素化合物と1,2−キノンジアジド化合物と溶剤とを含有するポジ型感光性組成物において、前記ケイ素化合物に、特定のシルセスキオキサンと、特定のシロキサンポリマーとを用いることによって前記の課題を解決することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。本発明は以下の項を含む。
【0009】
[1] 下記一般式(I)で表される化合物(A)、アルコキシル基数の異なる二種類以上のアルコキシシラン化合物を含む原料の加水分解縮合により合成される、アルカリ可溶性を有するシロキサンポリマー(B)、1,2−キノンジアジド化合物(C)、及び上記(A)〜(C)を溶解する溶剤(D)を含有する感光性組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式(I)中、Rは独立して、水素、炭素数が1〜45のアルキル、炭素数が4〜8のシクロアルキル、又は、炭素数が6〜10の置換もしくは非置換のアリールを表し、Xは独立して、水素、−SiMe2H、−SiMe3、−SiMe2(CH23−OOCC(Me)=CH2、−SiMe2(CH23COOH、又は、下記式(II)で表わされる基を表し、前記Rにおける炭素数が1〜45のアルキル及び炭素数が4〜8のシクロアルキルは、それぞれ、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、また隣接しない−CH2−が−O−又は炭素数が5〜18のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記Rにおける置換アリールのベンゼン環において、ベンゼン環に結合している任意の水素は独立して炭素数が1〜10のアルキル、又はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0012】
【化2】

【0013】
[2] 前記一般式(I)で表される化合物(A)の含有量が、シロキサンポリマー(B)100重量部に対して1〜50重量部であることを特徴とする[1]に記載の感光性組成物。
【0014】
[3] 前記シロキサンポリマー(B)の重量平均分子量が、ポリスチレン換算で500〜100,000であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
【0015】
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の感光性組成物の塗膜の露光、現像、及び焼成によって形成されるパターン状透明膜。
【0016】
[5] [4]に記載のパターン状透明膜を有する表示素子。
【0017】
[6] 絶縁膜として前記パターン状透明膜を有する[5]に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、前述した特定のケイ素化合物(A)及び(B)と1,2−キノンジアジド化合物(C)と溶剤(D)とを含有することから、300〜350℃の焼成時の環境下に晒されても耐クラック性を有し、透明性に優れる、パターン状透明膜を形成できるポジ型感光性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の感光性組成物は、下記一般式(I)で表される化合物(A)、アルコキシル基数の異なる二種類以上のアルコキシシラン化合物を原料に含む加水分解縮合により合成されるシロキサンポリマー(B)、1,2−キノンジアジド化合物(C)、及び上記(A)〜(C)を溶解する溶剤(D)を含有する。
【0020】
【化3】

【0021】
1)一般式(I)で表される化合物(A)
前記一般式(I)中、Rは独立して、水素、炭素数が1〜45のアルキル、炭素数が4〜8のシクロアルキル、又は、炭素数6〜10の置換もしくは非置換のアリールを表す。前記Rにおける炭素数が1〜45のアルキル及び炭素数が4〜8のシクロアルキルは、それぞれ、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、また隣接しない−CH2−が−O−又は炭素数5〜18のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
【0022】
前記Rのアルキルは、耐熱性及び透明性の観点から、メチルであることが好ましい。また、前記Rのシクロアルキルは、耐熱性及び透明性の観点から、シクロヘキシルであることが好ましい。さらに前記Rのアリールは、耐熱性及び透明性の観点から、フェニルであることが好ましい。
【0023】
また、前記Rにおける置換アリールのベンゼン環において、ベンゼン環に結合している任意の水素は独立して炭素数が1〜10のアルキル、又はハロゲンで置き換えられてもよい。また置換アリールにおける置換基は、特に限定されないが、耐熱性及び透明性の観点からメチル、フッ素であることが好ましい。このような置換アリールとしては、例えば4−メチルフェニル、4−フルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、及び3,4,5−トリフルオロフェニルが挙げられる。
【0024】
好ましい前記Rとしては、例えばメチル、フェニルが挙げられる。
【0025】
また一般式(I)中、Xは独立して、水素、−SiMe2H、−SiMe3、−SiMe2(CH23−OOCC(Me)=CH2、−SiMe2(CH23COOH、又は、下記式(II)で表わされる基を表す。
【0026】
【化4】

【0027】
前記一般式(I)で表される化合物(A)は一種でも二種以上でもよい。一般式(I)で表される化合物(A)は、目的に応じて官能基の種類、数を選択することが可能であり、要求特性に応じて最適な化合物を選ぶことができる。また、一般式(I)で表される化合物(A)を組成物に添加することも可能であるし、又はシロキサンポリマー(B)と反応させて構造の一部に組み込むことも可能である。
【0028】
一般式(I)で表される化合物(A)は、国際公開第04/024741号パンフレット又は特開2006−182650号公報に記載の方法により容易に合成することができる。
【0029】
一般式(I)で表される化合物(A)は、分子レベルで構造が制御されており、他成分との相溶性にも優れ、該感光性組成物から透明膜(パターン状透明膜)を形成した際に、透明性(透過率、透明度)に優れ、また、表面荒れもなく、均一な性質の膜を得ることが可能である。
【0030】
本発明の感光性組成物における前記化合物(A)の含有量は、耐クラック性を十分に発現させる観点から、シロキサンポリマー(B)100重量部に対して1重量部以上であることが好ましく、5重量部以上であることがより好ましく、10重量部以上であることがさらに好ましい。また、前記化合物(A)の含有量は、現像性等の一般に要求される諸特性を十分に発現させる観点から、50重量部以下であることが好ましく、40重量部以下であることがより好ましく、30重量部以下であることがさらに好ましい。
【0031】
2)シロキサンポリマー(B)
シロキサンポリマー(B)は、アルコキシル基数の異なる二種類以上のアルコキシシラン化合物を含む原料の加水分解縮合により合成される化合物である。シロキサンポリマー(B)は一種でも二種以上でもよく、前記の加水分解縮合物の構造を有していればよいので他の反応による生成物であってもよいが、上記シロキサンポリマー(B)は、1〜4又はそれ以上のアルコキシル基をもつアルコキシシラン化合物より、アルコキシル基の数の異なる少なくとも二種類以上を用いて合成することができる。シロキサンポリマー(B)は、アルカリに対する所望の溶解速度を有するようにアルカリ可溶性が制御される必要がある。シロキサンポリマー(B)のアルカリ可溶性は、シロキサンポリマー(B)中のアルコキシル基の数とシロキサンポリマー(B)の分子量とによって調整することができる。このようなアルコキシル基数と分子量は、アルコキシル基数の異なる二種以上のアルコキシシラン化合物を原料に用いることによって調整することができる。また、二種類以上のアルコキシシラン化合物に加えて、シラノール化合物、又はジシロキサン、テトラシロキサン等のシロキサン化合物を使用することもできる。以下、加水分解縮合に用いることができる上記化合物をアルコキシシラン化合物類と呼ぶ。
【0032】
前記アルコキシシラン化合物類の具体例のうち、五つ以上のアルコキシル基数を有する五官能以上のアルコキシシラン化合物としては、例えばトリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートが挙げられる。また四つのアルコキシル基を有する四官能のアルコキシシラン化合物としては、例えば、オルト珪酸テトラブチル、オルト珪酸テ
トラプロピル、オルト珪酸テトライソプロピル、オルト珪酸テトラエチル、及びオルト珪酸テトラメチルが挙げられる。また三つのアルコキシル基を有する三官能のアルコキシシラン化合物としては、例えば、(3−ブロモプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、イソシアン酸−3−(トリエトキシシリル)プロピル、アクリル酸−3−(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸−3−(トリメトキシシリル)プロピル、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルクロリド、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、メタクリル酸−3−[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピル、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ベンジルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(p−トリル)シラン、トリエトキシメチルシラン、[ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル]トリエトキシシラン、トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシフルオロシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、及びトリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シランが挙げられる。
【0033】
また二つのアルコキシル基を有する二官能のアルコキシシラン化合物としては、例えば、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、及びジメトキシジ−p−トリルシランが挙げられる。また一つのアルコキシル基を有する単官能のアルコキシシラン化合物としては、例えば、エトキシトリエチルシラン、メトキシトリメチルシラン、及びトリメチルエトキシシランが挙げられる。
【0034】
さらにシラノール化合物としては、例えば、ジフェニルシランジオール、ジエチル(イソプロピル)シラノール、トリエチルシラノール、及びトリフェニルシラノールが挙げられる。またシロキサン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。
【0035】
これらのアルコキシシラン化合物類を用いたシロキサンポリマーは、初期の透明性が高く、かつ高温での焼成による透明性の劣化がほとんどなく、また現像時のアルカリ水溶液に対する溶解性が高く、すなわち現像性が高く、容易にパターン状透明膜が得られ、かつ耐溶剤性、高耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性を示し、さらには下地との密着性が高くなる。
【0036】
上記のアルコキシシラン化合物類におけるアルコキシシラン化合物は、官能基数の異な
る二種のみを用いても、二種以上混合して利用に供してもよい。
【0037】
上記具体例の中でも、オルト珪酸テトラエチル、オルト珪酸テトラメチル、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジエトキシジメチルしラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジエトキシシラン、エトキシトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、ジフェニルシランジオールは入手が容易であり、得られたパターン状透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性を高める観点から好ましい。
【0038】
シロキサンポリマー(B)はアルカリ可溶性を有する。本発明において、アルカリ可溶性とは、シロキサンポリマー(B)の溶液をスピンコートによって基板に塗布し、100℃で2分間加熱して形成される厚さ0.01〜100μmの被膜を、25℃の2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で5分間浸した後に純水ですすいだときに、前記被膜が残こらない程度にアルカリへ溶解する性質を言う。
【0039】
シロキサンポリマー(B)のアルカリ可溶性は、アルコキシシラン化合物の種類、及びアルコキシシラン化合物が有する基の疎水性とその数によって調整することができる。例えば、シロキサンポリマー(B)のアルカリ可溶性は、アルコキシル基数が三以上(三官能以上)のアルコキシシラン化合物を原料としてより多く用いることによって高めることができる。またシロキサンポリマー(B)のアルカリ可溶性は、アルコキシシラン化合物におけるアルコキシル基以外の基に疎水性の高い基を用いることによって抑制することができ、このような疎水基をアルコキシシラン化合物により多く持たせることによってより抑制することができる。このような疎水基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、及びフェニルが挙げられる。
【0040】
前記アルコキシシラン化合物は、二官能以下のアルコキシシラン化合物と三官能以上のアルコキシシラン化合物とを含むことが、シロキサンポリマーの分子量制御の観点、及びシロキサンポリマー(B)のアルカリ可溶性を十分に発現させる観点から好ましい。また、二官能のアルコキシシランを用いると、塗布した膜を露光、現像しパターンを得る際に、露光部の溶解性と未露光部の溶解性との差が大きくなり、すなわち、感度を上げることが可能である。
【0041】
シロキサンポリマー(B)の前記原料におけるアルコキシシラン化合物類の総量に対する二官能以下のアルコキシシラン化合物の含有量は、シロキサンポリマーの分子量の抑制と、パターニング時の感度向上との観点から、3〜15重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましく、7〜15重量%であることがさらに好ましい。
【0042】
シロキサンポリマー(B)の前記原料におけるアルコキシシラン化合物類の総量に対する三官能以上のアルコキシシラン化合物の含有量は、シロキサンポリマー(B)のアルカリ可溶性を十分に発現させる観点から、80〜97重量%であることが好ましく、85〜97重量%であることがより好ましい。
【0043】
シロキサンポリマー(B)の前記原料におけるアルコキシシラン化合物類の総量に対して、単官能のアルコキシシラン化合物の含有量は、シロキサンポリマーの分子量の抑制の観点から、0.1〜30重量%であることが好ましく、1〜20重量%であることがより好ましく、3〜10重量%であることがさらに好ましい。
【0044】
また、シロキサンポリマー(B)の前記原料におけるアルコキシシラン化合物類の総量に対して、二官能のアルコキシシラン化合物の含有量は、シロキサンポリマーの分子量の
抑制と、パターニング時の感度向上との観点から、0.1〜30重量%であることが好ましく、1〜15重量%であることがより好ましく、3〜10重量%であることがさらに好ましい。
【0045】
また、シロキサンポリマー(B)の前記原料におけるアルコキシシラン化合物類の総量に対して、三官能のアルコキシシラン化合物の含有量は、シロキサンポリマーの分子量増加と、アルカリ可溶性の付与との観点から、10〜60重量%であることが好ましく、15〜50重量%であることがより好ましく、20〜40重量%であることがさらに好ましい。
【0046】
また、シロキサンポリマー(B)の前記原料におけるアルコキシシラン化合物類の総量に対して、四官能のアルコキシシラン化合物の含有量は、シロキサンポリマーの分子量増加と、アルカリ可溶性の付与との観点から、10〜60重量%であることが好ましく、15〜50重量%であることがより好ましく、20〜40重量%であることがさらに好ましい。
【0047】
また、シロキサンポリマー(B)の前記原料におけるアルコキシシラン化合物類の総量に対して、五官能以上のアルコキシシラン化合物の含有量は、シロキサンポリマーの分子量の増加と、アルカリ可溶性の付与との観点から、0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることがさらに好ましい。
【0048】
3)シロキサンポリマー(B)の合成方法
シロキサンポリマー(B)の合成方法は特に制限されないが、上記アルコキシシラン化合物類を加水分解縮合させて作ることが可能である。加水分解には水と、酸又は塩基触媒を用いることができる。酸触媒としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、硫酸、塩酸、フッ酸、ホウ酸、リン酸、陽イオン交換樹脂等、また塩基触媒としてはアンモニア、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、陰イオン交換樹脂等が挙げられる。触媒の使用量は、特に限定されないが、一価の酸又は塩基として、前記アルコキシシラン化合物全量に対して10〜15重量%であることが好ましい。触媒は水溶液として用いることが好ましく、一価の酸又は塩基として、35〜45重量%の濃度で用いることができる。合成反応温度は特に限定されないが、通常50℃〜150℃の範囲である。合成反応時間も特に限定されないが、通常1〜48時間の範囲である。また、当該合成は、加圧、減圧又は大気圧のいずれの圧力下でも行うことができる。合成後は、シロキサンポリマーを安定化させるために、留去により低分子量成分を除去するのが好ましい。留去は減圧でも常圧でも可能で、常圧では留去温度は通常100℃〜200℃程度である。
【0049】
上記の合成反応に使用する溶剤は、原料として使用するアルコキシシラン化合物類、そして生成物が溶解する溶剤が好ましい。当該溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、及び3−エトキシプロピオン酸エチルが挙げられる。溶剤は、これらの一種であってもよいし、これらの二種以上の混合物であってもよい。
【0050】
シロキサンポリマー(B)は、ポリスチレンを標準としたGPC分析で求めた重量平均分子量が500〜100,000の範囲であると、露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒れにくくなり好ましい。さらに、重量平均分子量が1,500〜50,000の範囲であると、未露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒にくく、現像残渣も極めて少なくなるので、一層好ましい。同様の理由により、重量平均分子量が2,000〜20,000の範囲であると、特に一層好ましい。
【0051】
シロキサンポリマー(B)の重量平均分子量は、例えば、標準のポリスチレンには分子量が645〜132,900のポリスチレン(例えば、VARIAN Inc.製のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010−0102)、カラムにはPLgel MIXED−D(VARIAN Inc.製)を用い、移動相としてTHFを使用して測定することができる。またシロキサンポリマー(B)の重量平均分子量は、例えば二官能以下のアルコキシシランの含有率、加水分解率、触媒添加量によって調整することができる。
【0052】
3)1,2−キノンジアジド化合物(C)
1,2−キノンジアジド化合物(C)には、例えばレジスト分野において感光剤として使用される化合物を用いることができる。1,2−キノンジアジド化合物(C)は一種でも二種以上でもよい。1,2−キノンジアジド化合物(C)としては、例えば、フェノール化合物と1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、フェノール化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、フェノール化合物の水酸基をアミノ基に置き換えた化合物と1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸とのスルホンアミド、及び、フェノール化合物の水酸基をアミノ基に置き換えた化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのスルホンアミドが挙げられる。
【0053】
前記フェノール化合物としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、及び2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバンが挙げられる。
【0054】
1,2−キノンジアジド化合物(C)として、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸とのエステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸とのエステル、又は4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−
5−スルホン酸とのエステルを用いると、感光性組成物の透明性を高める観点から好ましい。
【0055】
また、本発明の感光性組成物において、1,2−キノンジアジド化合物(C)の含有量は、シロキサンポリマー(B)を100重量部に対し、5〜50重量部であることが好ましい。
【0056】
4)溶剤(D)
溶剤(D)は、前記の成分(A)〜(C)を溶解する成分であればよく、通常の有機溶剤のうちの一種でも二種以上でもよい。また溶剤(D)は、沸点が100℃〜300℃であることが好ましい。沸点が100℃〜300℃である溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、γ−ブチロラクトン、及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。これらは、前記の成分(A)〜(C)を溶解させる範囲であれば、単独で用いてもよく、二つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
前記溶剤(D)は、沸点が100〜300℃である前記の溶剤を20重量%以上含有する混合溶剤であってもよい。混合溶剤における、沸点が100〜300℃である溶剤以外の溶剤には、公知の溶剤の一又は二以上を用いることができる。
【0058】
前記溶剤(D)がプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸エチル及び酢酸ブチルからなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことは、本発明の感光性組成物の塗布均一性を高める観点からより好ましい。さらに、前記溶剤(D)がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチ
ル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸エチル、及び酢酸ブチルからなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことは、本発明の感光性組成物の塗布均一性を高める観点、及び人体への安全性の観点からより一層好ましい。
【0059】
溶剤(D)の含有量は、本発明の感光性組成物において、前記の成分(A)〜(C)を含む固形分の濃度が総量で5〜50重量%となる量であることが好ましい。
【0060】
5)その他の成分
本発明の感光性組成物は、本発明の効果が得られる範囲において、前述した成分(A)〜(D)以外の他の成分をさらに含有していてもよい。例えば本発明の感光性組成物には、解像度、塗布均一性、現像性、接着性を向上させるために各種の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、アクリル系、スチレン系、ポリエチレンイミン系又はウレタン系の高分子分散剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又はフッ素系の界面活性剤、シリコン系の塗布性向上剤、有機カルボン酸、フェノール化合物等のアルカリ溶解性促進剤、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系化合物等の酸化防止剤、カップリング剤等の密着性向上剤、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤、エポキシ化合物、メラミン化合物又はビスアジド化合物等の熱架橋剤、が挙げられる。
【0061】
5−1)高分子分散剤、界面活性剤、塗布性向上剤
前記高分子分散剤、界面活性剤、及び塗布性向上剤には、感光性組成物においてこれらの用途で用いられる成分を用いることができる。これらは一種でも二種以上でもよい。このような高分子分散剤、界面活性剤、及び塗布性向上剤としては、例えば、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(以上いずれも商標、共栄社化学工業株式会社製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK344、BYK346(以上いずれも商標、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(以上いずれも商標、信越化学工業株式会社製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(以上いずれも商標、セイミケミカル株式会社製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(以上いずれも商標、株式会社ネオス製)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(以上いずれも商標、三菱マテリアル株式会社製)、メガファックF−171、メガファックF−177、メガファックF−475、メガファックR−08、メガファックR−30(以上いずれも商標、DIC株式会社製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪
酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が挙げられる。
【0062】
これらの中でも、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、及びフルオロアルキルアミノスルホン酸塩等のフッ素系の界面活性剤、及び、BYK306、BYK344、BYK346、KP−341、KP−358、及びKP−368等のシリコン系塗布性向上剤からなる群から選ばれる少なくとも一種が前記添加剤に含まれることは、本発明の感光性組成物の塗布均一性を高める観点から好ましい。
【0063】
本発明の感光性組成物における前記高分子分散剤、界面活性剤、及び塗布性向上剤の含有量は、それぞれ、組成物の全体量100重量部に対して0.001〜0.1重量部であることが好ましい。
【0064】
5−2)有機カルボン酸
前記アルカリ溶解性促進剤には、有機カルボン酸を用いることができる。有機カルボン酸は一種でも二種以上でもよい。有機カルボン酸としては、多価カルボン酸が好ましく、このような多価カルボン酸としては、例えば無水トリメリット酸、無水フタル酸、及び4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物が挙げられる。これらの多価カルボン酸の中でも無水トリメリット酸が好ましい。
【0065】
本発明の感光性組成物に多価カルボン酸が添加されると、感光性組成物のアルカリ可溶性を高めることができる。また、多価カルボン酸のカルボキシルは、感光性組成物にエポキシが含まれる場合に、これらと反応して、耐熱性、耐薬品性をさらに向上させることができる。また、本発明の感光性組成物に前記多価カルボン酸が添加されると、保存時に1,2−キノンジアジド化合物(B)の分解が抑制され、感光性組成物の着色を防ぐ観点から好ましい。
【0066】
本発明の感光性組成物における前記有機カルボン酸の含有量は、シロキサンポリマー(B)100重量部に対し、1〜30重量部であることが好ましく、2〜20重量部であることがより好ましい。
【0067】
5−3)フェノール化合物
前記アルカリ溶解性促進剤には、フェノール化合物を用いることができる。フェノール化合物は一種でも二種以上でもよい。フェノール化合物としては、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−
テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、及び2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバンが挙げられる。これらのフェノール化合物の中でも、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールが好ましい。
【0068】
本発明の感光性組成物にフェノール化合物が添加されると、感光性組成物のアルカリ可溶性を高めることができる。また、フェノール化合物のフェノールは、感光性組成物にエポキシが含まれる場合に、これらと反応して、耐熱性、耐薬品性をさらに向上させることができる。
【0069】
本発明の感光性組成物におけるフェノール化合物の含有量は、シロキサンポリマー(B)100重量部に対し、1〜50重量部であることが好ましく、5〜20重量部であることがより好ましい。
【0070】
5−4)酸化防止剤
前記酸化防止剤には、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、及びイオウ系化合物の酸化防止剤を好適に用いることができる。酸化防止剤は一種でも二種以上でもよい。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物の酸化防止剤であることが耐候性の観点から好ましい。このような酸化防止剤としては、例えばIrganox1010、IrganoxFF、Irganox1035、Irganox1035FF、Irganox1076、Irganox1076FD、Irganox1076DWJ、Irganox1098、Irganox1135、Irganox1330、Irganox1726、Irganox1425 WL、Irganox1520L、Irganox245、Irganox245FF、Irganox245DWJ、Irganox259、Irganox3114、Irganox565、Irganox565DD、Irganox295(商品名;チバ・ジャパン株式会社製)、ADK STAB AO−20、ADK STAB AO−30、ADK STAB AO−50、ADK STAB AO−60、ADK STAB AO−70、及びADK STAB AO−80(商品名;株式会社ADEKA製)が挙げられる。この中でもIrganox1010がより好ましい。
【0071】
本発明の感光性組成物における酸化防止剤の含有量は、シロキサンポリマー(B)100重量部に対し、0.1〜15重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。
【0072】
5−5)密着性向上剤
前記密着性向上剤は、感光性組成物と基板との密着性を向上させるために使用される。密着性向上剤には、カップリング剤を好適に用いることができる。密着性向上剤は一種でも二種以上でもよい。前記カップリング剤には、シラン系、アルミニウム系又はチタネート系の化合物を用いることができる。このようなカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、及びテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートが挙げられる。これらの中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、密着性を向上させる効果が大きいため好ましい。
【0073】
本発明の感光性組成物における密着性向上剤の含有量は、シロキサンポリマー(B)100重量部に対し10重量部以下であることが好ましい。
【0074】
前記紫外線吸収剤には、アルコキシベンゾフェノン類等の、感光性組成物において紫外線吸収剤として用いられる成分を用いることができる。紫外線吸収剤は一種でも二種以上でもよい。このような紫外線吸収剤としては、例えばチヌビンP、チヌビン120、チヌビン144、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン571、チヌビン765(以上いずれも商標、チバ・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
【0075】
本発明の感光性組成物における紫外線吸収剤の含有量は、シロキサンポリマー(B)100重量部に対し、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
【0076】
前記熱架橋剤には、感光性組成物を材料とする成膜における加熱条件下で架橋反応を起こす成分を用いることができる。熱架橋剤は一種でも二種以上でもよい。熱架橋剤にはエポキシ化合物等の熱架橋剤を用いることができ、このような熱架橋剤としては、例えばエピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート190P、エピコート191P、エピコート1004、エピコート1256、YX8000(商品名;ジャパンエポキシレジン株式会社製)、アラルダイトCY177、アラルダイトCY184(商品名;チバ・ジャパン株式会社製)、セロキサイド2021P、EHPE−3150(商品名;ダイセル化学工業株式会社製)、テクモアVG3101L(商品名;株式会社プリンテック製))が挙げられる。
【0077】
本発明の感光性組成物における熱架橋剤の含有量は、シロキサンポリマー(B)100重量部に対し、1〜30重量部であることが好ましく、5〜15重量部であることがより好ましい。
【0078】
本発明の感光性組成物は、温度−30℃〜25℃の範囲で遮光して保存することが、感光性組成物の経時安定性の観点から好ましい。保存温度が−20℃〜10℃であれば、感光性組成物からの析出物の発生を防止する観点からより一層好ましい。
【0079】
本発明の感光性組成物は、透明の膜を形成するのに適しており、パターニングの際の解像度が比較的高いことから10μm以下の小さな穴の開いた絶縁膜を形成するのに最適である。ここで、絶縁膜とは、例えば、層状に配置される配線間を絶縁するために設ける膜(層間絶縁膜)等をいう。
【0080】
本発明のパターン状透明膜は、前述の本発明の感光性組成物の塗膜の露光、現像、及び焼成によって形成される。例えば、前記透明膜及び絶縁膜等の本発明のパターン状透明膜は、レジスト分野において膜を形成する通常の方法で形成することができ、例えば以下のようにして形成される。
【0081】
まず、本発明の感光性組成物をスピンコート、ロールコート、スリットコート等の公知の方法により、ガラス等の基板上に塗布する。基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス基板、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル、塩化ビニール、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂製シート、フィルム又は基板、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板、その他セラミック板、及び光電変換素子を有する半導体基板が挙げられる。これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の前処理を行うことができる。
【0082】
次に、基板上の感光性組成物の塗膜をホットプレート又はオーブンで乾燥する。通常、60〜120℃で1〜5分間乾燥する。乾燥した基板上の前記膜に、所望のパターン形状
の開口部を有するマスクを介して紫外線等の放射線を照射する。照射条件は、感光性組成物中の感光剤が1,2−キノンジアジド化合物(B)であることから、i線で5〜1,000mJ/cm2が適当である。紫外線の当たった部分の1,2−キノンジアジド化合物(B)はインデンカルボン酸となり速やかに現像液に溶解する。
【0083】
放射線照射後の膜は、アルカリ溶液等の現像液を用いて現像される。この現像により、前記膜における放射線が照射された部分は速やかに現像液に溶解する。現像方法は特に限定されず、ディップ現像、パドル現像、シャワー現像のいずれも用いることができる。
【0084】
前記現像液はアルカリ溶液が好ましい。アルカリ溶液に含まれるアルカリとしては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムが挙げられる。また、現像液としては、これらのアルカリの水溶液が好適に用いられる。すなわち、現像液としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、又は2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アルカリ類や、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等の無機アルカリ類の水溶液が挙げられる。
【0085】
現像液には現像残渣の低減やパターン形状の適性化を目的として、メタノール、エタノールや界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤には、例えばアニオン系、カチオン系、及びノニオン系から選択される界面活性剤を使用することができる。これらの中でも、特に、ノニオン系のポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加すると、解像度を高める観点から好ましい。
【0086】
前記現像された前記膜は、純水で十分洗浄される。その後、残存する感光剤の分解のために、再度放射線を基板上の膜の全面に照射することができる。例えば放射線が紫外線の場合は、100〜1,000mJ/cm2の強度で前記膜に照射される。放射線が再照射された基板上の前記膜は、最後に300〜350℃で10〜120分間焼成される。こうして、所望のパターニングされた透明膜を得ることができる。
【0087】
このようにして得られたパターン状透明膜は、パターン状絶縁膜として用いることもできる。絶縁膜に形成された穴の形状は、真上から見た場合、正方形、長方形、円形又は楕円形であることが好ましい。さらに、該絶縁膜上に透明電極を形成し、エッチングによりパターニングを行った後、配向処理を行う膜を形成させてもよい。該絶縁膜は、耐スパッタ性が高いため、透明電極を形成しても絶縁膜にしわが発生せず、高い透明性を保つことができる。
【0088】
本発明のパターン状透明膜は、液晶表示素子等の表示素子における所望の用途に応じた通常の厚さで形成することができる。本発明のパターン状透明膜の膜厚は、耐クラック性の十分な発現の観点から2μm以下であることが好ましく、前記の所望の用途の実現の観点から1μm以上であることが好ましい。パターン状透明膜の膜厚は、本発明の感光性組成物の粘度や本発明の感光性組成物における固形物の濃度によって調整することができる。
【0089】
本発明のパターン状透明膜は、前述したような300℃以上の高い温度で焼成することから、表示素子の種々の工程の条件に晒されたときの膜の物性の変化が抑制される。また、本発明のパターン状透明膜によれば、このような高温で焼成される無機系の膜において、高い透明性と高い耐クラック性を有する膜を、表示素子における通常の用途に十分用いることができる厚さで得ることができる。
【0090】
本発明のパターン状透明膜は、液晶等を用いる表示素子に用いられる。例えば前記表示素子は、上記のようにして本発明のパターン状透明膜が設けられた素子基板と、対向基板であるカラーフィルター基板とを、位置を合わせて圧着し、その後熱処理して組み合わせ、対向する基板の間に液晶を注入し、注入口を封止することによって製作される。
【0091】
又は、前記素子基板上に液晶を散布した後、素子基板を重ね合わせ、液晶が漏れないように密封することによっても製作することができ、前記表示素子はこのように製作された表示素子であってもよい。
【0092】
このようにして、本発明の感光性組成物で形成された、優れた耐熱性と透明性を有する絶縁膜を液晶表示素子に用いることができる。なお、本発明の表示素子に用いられる液晶、すなわち液晶化合物及び液晶組成物については特に限定されず、いずれの液晶化合物及び液晶組成物をも使用することができる。
【0093】
本発明の好ましい態様に係る感光性組成物は、例えば、パターニング透明膜及び絶縁膜に対して一般的に求められている高耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等の各種特性をさらに有する。
【0094】
また、本発明の好ましい態様に係る感光性組成物は、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性に優れていることから、当該感光性組成物を用いた透明膜、絶縁膜、及び表示素子等は、その製造後工程において300〜350℃の高温下に晒されても、又は溶剤、酸、アルカリ溶液等に浸漬、接触、熱処理等がなされても、膜に表面荒れが発生しにくい。その結果、本発明の好ましい態様に係る感光性組成物を用いた透明膜等の光の透過率が高まり、それを用いた表示素子等の製品の表示品位を高めることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0096】
[合成例1]共重合体(B1)の合成
シロキサンポリマー(B)である共重合体(B1)を以下のようにして合成した。
攪拌器付四つ口フラスコに、重合溶剤としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル、モノマーとしてテトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、及びフェニルトリエトキシシランを下記の重量で仕込み、さらにギ酸10.3gと水16.0gの混合溶液を滴下して加えた。その後、80℃で1時間加熱し、さらに低分子成分を1時間留去して除去し、さらに130℃で2時間留去してポリマー溶液を得た。留去で除去した低沸点成分は、合計76.3gであった。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 100.0g
オルト珪酸テトラエチル 34.8g
ジエトキシジメチルシラン 12.3g
フェニルトリエトキシシラン 40.0g
【0097】
ポリマー溶液を室温まで冷却し、共重合体(B1)溶液を得た。溶液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。共重合体(B1)の重量平均分子量は、分子量が645〜132,900のポリスチレン(VARIAN Inc.製のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010−0102)を標準のポリスチレンに用い、カラムにはPLgel MIXED−D(VARIAN Inc.製)を用い、移動相としてTHFを用い、カラム温度を35℃とし、示差屈折率検出器を用いて測定した。その結果、重量平均分子量は5,100であった。
【0098】
[合成例2]共重合体(B2)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、ギ酸10.3gと水14.6gの混合溶液を滴下し、重合を行った。合成例1と同様の処理を行い、ポリマー溶液を得た。留去で除去した低沸点成分は、合計72.3gであった。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 100.0g
オルト珪酸テトラエチル 34.8g
エトキシトリメチルシラン 6.0g
フェニルトリエトキシシラン 40.0g
【0099】
さらに、ポリマー溶液を室温まで冷却し、共重合体(B2)溶液を得た。得られた共重合体(B2)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は4,200であった。
【0100】
[合成例3]共重合体(B3)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、ギ酸9.6gと水15.0gの混合溶液を滴下し、重合を行った。合成例1と同様の処理を行い、ポリマー溶液を得た。留去で除去した低沸点成分は、合計72.4gであった。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 100.0g
オルト珪酸テトラエチル 34.8g
ジエトキシジメチルシラン 6.2g
フェニルトリエトキシシラン 40.0g
【0101】
さらに、ポリマー溶液を室温まで冷却し、共重合体(B3)溶液を得た。得られた共重合体(B3)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は4,200であった。
【0102】
[合成例4]共重合体(B4)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、ギ酸9.9gと水14.6gの混合溶液を滴下し、重合を行った。合成例1と同様の処理を行い、ポリマー溶液を得た。留去で除去した低沸点成分は、合計73.6gであった。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 100.0g
シクロヘキシルジメトキシメチルシラン 9.4g
オルト珪酸テトラエチル 34.8g
フェニルトリエトキシシラン 40.0g
【0103】
さらに、ポリマー溶液を室温まで冷却し、共重合体(B4)溶液を得た。得られた共重合体(B4)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は5,200であった。
【0104】
[合成例5]共重合体(B5)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、ギ酸7.4gと水18.7gの混合溶液を滴下し、重合を行った。合成例1と同様の処理を行い、ポリマー溶液を得た。留去で除去した低沸点成分は、合計63.6gであった。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 100.0g
オルト珪酸テトラエチル 40.0g
トリエトキシビニルシラン 15.2g
ジエトキシジフェニルシラン 3.3g
【0105】
さらに、ポリマー溶液を室温まで冷却し、共重合体(B5)溶液を得た。得られた共重
合体(B5)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は4,000であった。
【0106】
[合成例6]共重合体(B6)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、ギ酸7.7gと水11.2gの混合溶液を滴下し、重合を行った。合成例1と同様の処理を行い、ポリマー溶液を得た。留去で除去した低沸点成分は、合計63.3gであった。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 100.0g
オルト珪酸テトラエチル 21.6g
トリエトキシビニルシラン 7.8g
トリエトキシシラン 6.8g
フェニルトリエトキシシラン 20.0g
エトキシトリメチルシラン 2.0g
【0107】
さらに、ポリマー溶液を室温まで冷却し、共重合体(B6)溶液を得た。得られた共重合体(B6)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は6,000であった。
【0108】
[合成例7]共重合体(B7)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、ギ酸9.6gと水12.1gの混合溶液を滴下し、重合を行った。合成例1と同様の処理を行い、ポリマー溶液を得た。留去で除去した低沸点成分は、合計69.6gであった。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 100.0g
トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート 15.2g
トリエトキシビニルシラン 8.0g
トリエトキシシラン 6.8g
フェニルトリエトキシシラン 40.0g
エトキシトリメチルシラン 4.0g
【0109】
さらに、ポリマー溶液を室温まで冷却し、共重合体(B7)溶液を得た。得られた共重合体(B7)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は6,300であった。
【0110】
[実施例1]
[ポジ型感光性組成物の製造]
溶剤としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル、下記化合物(A1)、合成例1で得られた共重合体(B1)溶液、1,2−キノンジアジド化合物である4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライドとの縮合物(平均エステル化率58%、以下「PAD」ともいう)、添加剤としてフッ素系界面活性剤であるDIC株式会社製メガファックR−08(以下「R−08」と略す)を下記の重量で混合溶解し、ポジ型感光性組成物を得た。
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 0.66g
化合物(A1) 0.1g
共重合体(B1)溶液 2.00g
PAD 0.1g
R−08 0.0008g
【0111】
ここで、前記化合物(A1)は、前記一般式(I)において、すべてのRがフェニルであり、すべてのXが−SiMe2Hである化合物であり、国際公開第04/024741
号パンフレットに記載の方法により容易に合成することができる。
【0112】
[ポジ感光性組成物の評価方法]
1)パターン状透明膜の形成
ガラス基板上に実施例1で合成されたポジ型感光性組成物を500rpmで10秒間スピンコートし、100℃のホットプレート上で2分間乾燥した。この基板を空気中、ホールパターン形成用のマスクを介して、株式会社トプコン製プロキシミティー露光機TME−150PRC(光源は超高圧水銀灯)を使用し、波長カットフィルターを通して350nm以下の光をカットしてg、h、i線を取り出し、露光ギャップ100μmで露光した。露光量は、ウシオ電機株式会社製積算光量計UIT−102、受光器UVD−365PDで測定して100mJ/cm2とした。露光後のガラス基板を、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間ディップ現像し、露光部の組成物を除去した。現像後の基板を純水で60秒間洗ってから100℃のホットプレートで2分間乾燥した。この基板を前記露光機にてマスクを介さずに露光量300mJ/cm2で全面露光した後、オーブン中300℃で30分間ポストベイクし、膜厚約1.5μmのパターン状透明膜を形成した。膜厚はKLA−Tencor Japan株式会社製触針式膜厚計αステップ200を使用して測定した3箇所の測定の平均値とした。
【0113】
2)現像後の膜厚及び現像後残膜率
現像の前後で膜厚を測定した。現像後残膜率は次式から計算した。
(現像後膜厚/現像前膜厚)×100(%)
【0114】
3)解像度
上記1)で得られたポストベイク後のパターン状透明膜の基板を光学顕微鏡で1,000倍にて観察し、ホールパターンの底にガラスが露出しているマスクサイズを確認した。
【0115】
4)透明性
有限会社東京電色製TC−1800を使用し、透明膜を形成していないガラス基板をリファレンスとして波長400nmでの光透過率を測定した。
【0116】
8)耐熱性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を350℃のオーブンで30分間追加ベイクし、追加ベイクの前後において上記4)のように光透過率を測定し、ポストベイク後(追加ベイク前)の光透過率をT1とし、追加ベイク後の光透過率をT2とした。ポストベイク後から追加ベイク後の光透過率の低下が少ないほど良好と判定できる。また追加ベイクの前後で膜厚を測定し、膜厚の変化率を次式から計算した。
(追加ベイク後膜厚/ポストベイク後膜厚)×100(%)
【0117】
6)密着性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を碁盤目剥離試験(クロスカット試験)により評価した。評価は1mm角の碁盤目100個中におけるテープ剥離後の残存碁盤目数を表した。
【0118】
7)比誘電率
アジレントテクノロジー株式会社製LCRメーター(4284A)を使用し、透明膜の上下に電極を作製し、比誘電率測定を行った。評価は1kHzで行った。
【0119】
8)耐クラック性
上記1)で得られたポストベイク後の基板と、さらに350℃のオーブンで30分間追加ベイクした基板について、光学顕微鏡にて1,000倍にて観察し、膜のクラックの有
無を確認した。ポストベイク後、追加ベイク後のいずれにもクラックが発生しない場合○、ポストベイク後にクラックがないが追加ベイク後にクラックが発生した場合を×、ポストベイク後に既にクラックが発生した場合を××とする。
【0120】
実施例1で合成されたポジ型感光性組成物について、上記の評価方法によって得られた結果を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
[実施例2]
実施例1において用いられた共重合体(B1)溶液の代わりに、合成例2で得られた共重合体(B2)溶液を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0123】
[実施例3]
実施例1において用いられた共重合体(B1)溶液の代わりに、合成例3で得られた共重合体(B3)溶液を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0124】
[実施例4]
実施例1において用いられた共重合体(B1)溶液の代わりに、合成例4で得られた共重合体(B4)溶液を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0125】
[実施例5]
実施例1において用いられた共重合体(B1)溶液の代わりに、合成例5で得られた共重合体(B5)溶液を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0126】
[実施例6]
実施例1において用いられた共重合体(B1)溶液の代わりに、合成例6で得られた共重合体(B6)溶液を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0127】
[実施例7]
実施例1において用いられた共重合体(B1)溶液の代わりに、合成例7で得られた共重合体(B7)溶液を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0128】
[実施例8]
実施例1において用いられた化合物(A1)の代わりに、下記の化合物(A2)を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。ここで、前記化合物(A2)は、前記一般式(I)において、すべてのRがフェニルであり、すべてのXが水素である化合物であり、特開2006−182650号公報に記載の方法により容易に合成することができる。
【0129】
[比較例1]
化合物(A1)を除いた以外は実施例1と同様にポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表2に示す。
【0130】
【表2】

【0131】
[比較例2]
化合物(A1)を除いた以外は実施例4と同様にポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表2に示す。
【0132】
[比較例3]
化合物(A1)を除いた以外は実施例7と同様にポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の感光性組成物は、例えば、液晶表示素子に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物(A)、アルコキシル基数の異なる二種類以上のアルコキシシラン化合物を含む原料の加水分解縮合により合成される、アルカリ可溶性を有するシロキサンポリマー(B)、1,2−キノンジアジド化合物(C)、及び上記(A)〜(C)を溶解する溶剤(D)を含有する感光性組成物。
【化1】

(一般式(I)中、Rは独立して、水素、炭素数が1〜45のアルキル、炭素数が4〜8のシクロアルキル、又は、炭素数が6〜10の置換もしくは非置換のアリールを表し、
Xは独立して、水素、−SiMe2H、−SiMe3、−SiMe2(CH23−OOCC(Me)=CH2、−SiMe2(CH23COOH、又は、下記式(II)で表わされる基を表し、
前記Rにおける炭素数が1〜45のアルキル及び炭素数が4〜8のシクロアルキルは、それぞれ、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、また隣接しない−CH2−が−O−又は炭素数が5〜18のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、
前記Rにおける置換アリールのベンゼン環において、ベンゼン環に結合している任意の水素は独立して炭素数が1〜10のアルキル、又はハロゲンで置き換えられてもよい。)
【化2】

【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物(A)の含有量が、シロキサンポリマー(B)100重量部に対して1〜50重量部であることを特徴とする請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記シロキサンポリマー(B)の重量平均分子量が、ポリスチレン換算で500〜100,000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性組成物の塗膜の露光、現像、及び焼成によって形成されるパターン状透明膜。
【請求項5】
請求項4に記載のパターン状透明膜を有する表示素子。
【請求項6】
絶縁膜として前記パターン状透明膜を有する請求項5に記載の表示素子。

【公開番号】特開2011−22173(P2011−22173A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164417(P2009−164417)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】