説明

ポジ型感光性絶縁樹脂組成物及びその硬化物並びにそれを備える回路基板

【課題】解像性、密着性、熱衝撃性、電気絶縁性、パターニング性能、及び伸び等の諸特性に優れた層間絶縁膜、平坦化膜、表面保護膜、高密度実装基板用絶縁膜を形成しうる感光性絶縁樹脂組成物、及びその硬化物並びにその硬化物を備える回路基板を提供する。
【解決手段】本ポジ型感光性絶縁樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、キノンジアジド基を有する化合物と、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体に由来する構成成分を20〜90mol%有する粒子状の共重合体である架橋樹脂粒子と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の層間絶縁膜(パッシベーション膜等)、平坦化膜、表面保護膜(オーバーコート膜、パッシベーション膜等)、高密度実装基板用絶縁膜等に用いられる感光性絶縁樹脂組成物及びそれが硬化されてなる絶縁性の硬化物並びにそれを備える回路基板に関する。更に詳しくは、永久膜レジストとして解像性に優れていると共に、密着性、熱衝撃性、電気絶縁性、パターニング性能、及び伸び等の特性に優れた硬化物、及びそのような硬化物が得られるポジ型若しくはネガ型感光性絶縁樹脂組成物、並びにその硬化物を備える回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の半導体素子に用いられる層間絶縁膜、表面保護膜等には耐熱性、機械的特性等に優れているポリイミド系樹脂が広く使用されている。
また、生産性の向上、膜形成精度の向上等のために感光性を付与した感光性ポリイミド系樹脂の検討が種々なされている。例えば、ポリイミド前駆体にエステル結合或いはイオン結合により光架橋基を導入したネガ型のものが実用化されている。更に、ポジ型のものとしては、ポリイミド前駆体とオルソキノンジアジド化合物からなる組成物が記載されている(特許文献1及び2等参照)。しかしながら、ネガ型のものには解像性や膜形成に問題があり、ポジ型のものには耐熱性や電気絶縁性、基板への密着性等に問題がある。
その他にも多数の特許出願がなされているが、半導体素子の高集積化、薄型化等による要求特性を十分に満足するものとはいえない。更に、硬化後の膜減り(体積収縮率)や硬化時の多段階ベーク、雰囲気制御等の問題点を抱えており、工業的に実施する場合には使用しにくいという問題が指摘されている。
【0003】
一方、半導体素子の高集積化によって膜形成精度の向上を図るために、感光性を付与した感光性ポリイミド系樹脂が種々提案されている。例えば、特許文献3及び特許文献4には、それぞれ、ポリイミド前駆体にイオン結合により光架橋基を導入した感光性ポリイミド系樹脂を含有する組成物、及び、ポリイミド前駆体にエステル結合により光架橋基を導入した感光性ポリイミド系樹脂を含有する組成物が記載されている。
しかしながら、これらの組成物においては、イミド化するために閉環工程を必要としており、溶剤現像であるために解像性が十分でないという欠点があった。
また、特許文献5には、芳香族ポリイミド前駆体に多官能アクリル化合物を添加したネガ型タイプの感光性組成物が記載されているが、前記と同様な問題点が指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−5996号公報
【特許文献2】特開2000−98601号公報
【特許文献3】特開昭54−145794号公報
【特許文献4】特開平03−186847号公報
【特許文献5】特開平08−50354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決し、解像性、密着性、熱衝撃性、電気絶縁性、パターニング性能、及び伸び等の諸特性に優れた層間絶縁膜、平坦化膜、表面保護膜、高密度実装基板用絶縁膜を形成しうるポジ型若しくはネガ型感光性絶縁樹脂組成物を提供することを目的としている。更に、本発明はこのような感光性絶縁樹脂組成物を硬化させた硬化物(絶縁膜)及びその硬化物を備える回路基板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、優れた特性を有するポジ型感光性絶縁樹脂組成物及びネガ型感光性絶縁樹脂組成物を見出すに至った。
本発明は以下の通りである。
[1]アルカリ可溶性樹脂と、キノンジアジド基を有する化合物と、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体に由来する構成成分を20〜90mol%有する粒子状の共重合体である架橋樹脂粒子と、を含有することを特徴とするポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
[2]上記アルカリ可溶性樹脂が、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂である前記[1]に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
[3]更に、架橋剤を含有する前記[1]に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
[4]更に、分子中に少なくとも2つ以上のオキシラン環を有する化合物を含有する前記[1]に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
[5]上記ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体が、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、及びヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチルより選ばれる少なくとも1種である前記[1]に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
[6]上記架橋樹脂粒子が、上記ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体と、不飽和重合性基を2個以上有する架橋性単量体と、を共重合させたものである前記[1]に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
[7]上記架橋樹脂粒子の平均粒径が、50〜120nmである前記[1]に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
[8]前記[1]に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物が硬化されてなることを特徴とする硬化物。
[9]前記[8]に記載の硬化物を、層間絶縁膜又は平坦化膜として備えることを特徴とする回路基板。
[10]アルカリ可溶性樹脂と、架橋剤と、光感応性酸発生剤と、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体に由来する構成成分を20〜90mol%有する粒子状の共重合体である架橋樹脂粒子と、を含有することを特徴とするネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
[11]上記アルカリ可溶性樹脂が、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂である前記[10]に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
[12]更に、分子中に少なくとも2つ以上のオキシラン環を有する化合物を含有する前記[10]に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
[13]上記ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体が、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、及びヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチルより選ばれる少なくとも1種である前記[10]に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
[14]上記架橋樹脂粒子が、上記ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体と、不飽和重合性基を2個以上有する架橋性単量体と、を共重合させたものである前記[10]に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
[15]上記架橋樹脂粒子の平均粒径が、50〜120nmである前記[10]に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
[16]前記[10]に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物が硬化されてなることを特徴とする硬化物。
[17]前記[16]に記載の硬化物を、層間絶縁膜又は平坦化膜として備えることを特徴とする回路基板。
【発明の効果】
【0007】
本発明の感光性絶縁樹脂組成物は、分散性に優れる特定の架橋樹脂粒子を含有させることで、樹脂組成物中の架橋樹脂粒子の含有濃度を高く設定することができるため、パターン形成時の現像性や硬化後の絶縁膜の伸び、絶縁性に優れる。そして、この感光性絶縁樹脂組成物によれば、解像性、密着性、熱衝撃性、電気絶縁性、パターニング性能、伸び及び耐薬品性等の特性に優れた硬化物を得ることができる。従って、回路基板等の電子部品の表面保護膜(オーバーコート膜、パッシベーション膜等)、層間絶縁膜(パッシベーション膜等)、平坦化膜、高密度実装基板用絶縁膜等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】回路基板の断面を説明する模式図である。
【図2】回路基板の断面を説明する模式図である。
【図3】熱衝撃性評価用の基材の断面を説明する模式図である。
【図4】熱衝撃性評価用の基材を説明する模式図である。
【図5】電気絶縁性評価用の基材を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
【0010】
[1]ポジ型感光性絶縁樹脂組成物
本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、キノンジアジド基を有する化合物と、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体に由来する構成成分を20〜90mol%有する粒子状の共重合体である架橋樹脂粒子と、を含有する。
【0011】
〔1−1〕アルカリ可溶性樹脂
本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(以下、「アルカリ可溶性樹脂(A)」ともいう。)としては、例えば、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(以下、「フェノール樹脂」ともいう。)、カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、フェノール樹脂が好ましく用いられる。
【0012】
上記フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシスチレンの共重合体、フェノール−キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール−キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン縮合樹脂等が用いられる。これらのなかでも、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレンの共重合体が好ましく、特にビニル安息香酸/スチレンからなる共重合体、p−ヒドロキシスチレン/スチレンからなる共重合体、ポリヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン/スチレン/(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体、m−クレゾール/p−クレゾールからなるクレゾールノボラック樹脂等が好適に用いられる。
【0013】
上記ノボラック樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを触媒の存在下で縮合させることにより得ることができる。
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
また、上記アルデヒド類としてはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0014】
具体的なノボラック樹脂としては、例えば、フェノール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、フェノール−ナフトール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0015】
尚、これらのアルカリ可溶性樹脂(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
また、上記アルカリ可溶性樹脂(A)には、成分の一部としてフェノール性低分子化合物が含有されていてもよい。
上記フェノール性低分子化合物としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、4,6−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル]エタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。これらのフェノール性低分子化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
このフェノール性低分子化合物のアルカリ可溶性樹脂(A)中における含有割合は、アルカリ可溶性樹脂(A)を100重量%とした場合、40重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜30重量%である。
【0018】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量は、得られる絶縁膜の解像性、熱衝撃性、耐熱性、伸び等の観点から、2000以上であることが好ましく、より好ましくは2000〜50000程度である。
また、本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物中におけるアルカリ可溶性樹脂(A)の含有割合は、溶剤を除いた固形分全体を100重量%とした場合に、20〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜80重量%である。このアルカリ可溶性樹脂(A)の含有割合が20〜90重量%である場合には、ポジ型感光性絶縁樹脂組成物を用いて形成された膜がアルカリ水溶液による十分な現像性を有し、且つ硬化膜としての特性に優れているため好ましい。
【0019】
〔1−2〕キノンジアジド基を有する化合物
本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物におけるキノンジアジド基を有する化合物(以下、「キノンジアジド化合物(B)」ともいう。)とは、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物と、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル化合物である。
上記フェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物としては特に限定されないが、下記に示す構造の化合物が好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
〔一般式(1)において、X〜X10は、それぞれ相互に同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基である。尚、X〜Xのうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。また、Aは単結合、O、S、CH、C(CH、C(CF、C=O、又はSOである。〕
【0022】
【化2】

【0023】
〔一般式(2)において、X11〜X24は、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基である。尚、X11〜X15のうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。また、R〜Rは、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。〕
【0024】
【化3】

【0025】
〔一般式(3)において、X25〜X39は、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基である。尚、X25〜X29のうちの少なくとも1つ及びX30〜X34のうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。また、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。〕
【0026】
【化4】

【0027】
〔一般式(4)において、X40〜X58は、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基である。尚、X40〜X44のうちの少なくとも1つ、X45〜X49のうちの少なくとも1つ及びX50〜X54のうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。また、R〜Rは、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。〕
【0028】
【化5】

【0029】
〔一般式(5)において、X59〜X72は、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基である。尚、X59〜X62のうちの少なくとも1つ及びX63〜X67のうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。〕
【0030】
また、具体的なキノンジアジド化合物(B)としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、4,6−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル]エタン等と、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル化合物等が挙げられる。
尚、これらのキノンジアジド化合物(B)は、1種のみ含有されていてもよいし、2種以上が含有されていてもよい。
【0031】
また、キノンジアジド化合物(B)の配合量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、10〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは15〜30重量部である。このキノンジアジド化合物(B)の配合量が10重量部未満の場合、未露光部の残膜率が低下したり、マスクパターンに忠実な像が得られなかったりすることがある。一方、この配合量が50重量部を超える場合、パターン形状が劣化したり、硬化時に発泡してしまったりすることがある。
【0032】
〔1−3〕架橋樹脂粒子
本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物における「架橋樹脂粒子」(以下、「架橋樹脂粒子(C)」ともいう。)としては、通常、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体と、不飽和重合性基を2個以上有する架橋性単量体(以下、単に「架橋性単量体」ともいう。)と、を共重合させたものが用いられる。更には、他の単量体を更に重合させたものが好ましく用いられる。
【0033】
上記ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有不飽和化合物、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル等の不飽和酸化合物等が挙げられる。尚、これらのヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記架橋樹脂粒子(C)における上記ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体に由来する構成成分の含有割合は、架橋樹脂粒子(C)における単量体由来の全構成成分を100mol%とした場合に、JIS規格K0070の方法により測定した酸価、水酸基価より算出した値で20〜90mol%であり、好ましくは20〜70mol%、より好ましくは20〜50mol%である。このヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体に由来する構成成分の含有割合が20mol%未満である場合、アルカリ現像液に対する分散性を十分に得ることができず、パターニング性能が低下してしまう。一方、この含有割合が90mol%を超える場合、得られる硬化膜にクラックが発生したり、十分な伸びが得られなかったりすることがある。
【0035】
また、上記架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を複数有する化合物を挙げることができる。これらのなかでも、ジビニルベンゼンが好ましい。尚、これらの架橋性単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記架橋樹脂粒子(C)における上記架橋性単量体に由来する構成成分の含有割合は、架橋樹脂粒子(C)における単量体由来の全構成成分を100mol%とした場合に、1〜20mol%であることが好ましく、より好ましくは1〜10mol%である。この架橋性単量体に由来する構成成分の含有割合が1〜20mol%である場合、安定した粒子形状を得られることができるため好ましい。
【0037】
また、上記他の単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等のジエン化合物、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、クロトン酸ニトリル、ケイ皮酸ニトリル、イタコン酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル、フマル酸ジニトリル等の不飽和ニトリル化合物類、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、ケイ皮酸アミド等の不飽和アミド類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール等の芳香族ビニル化合物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、グリコールのジグリシジルエーテル等と(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等との反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレート及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアナートとの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和化合物等を挙げることができる。尚、これらの他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
これらの他の単量体のなかでも、ジエン化合物、スチレン、アクリロニトリルが好ましく、特にブタジエンが好ましい。
上記架橋樹脂粒子(C)における上記他の単量体に由来する構成成分の含有割合は、架橋樹脂粒子(C)における単量体由来の全構成成分を100mol%とした場合に、10〜80mol%であることが好ましく、より好ましくは30〜80mol%、更に好ましくは50〜80mol%である。この他の単量体に由来する構成成分の含有割合が10mol%未満である場合、十分な伸びが得られないことがある。一方、この含有割合が80mol%を超える場合、アルカリ現像液に対する分散性を十分に得ることができず、パターニング性能が低下してしまうことがある。
【0039】
尚、本発明においては、上記架橋樹脂粒子(C)を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
また、上記架橋樹脂粒子(C)を構成している共重合体のガラス転移温度(Tg)は、20℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは0℃以下である(尚、下限は通常、−70℃以上である)。この架橋樹脂粒子(C)のTgが20℃を超える場合、得られる硬化膜にクラックが発生したり、十分な伸びが得られなかったりすることがある。
【0041】
また、本発明における架橋樹脂粒子(C)は粒子状の共重合体であり、この架橋樹脂粒子(C)の平均粒径は、30〜500nmであることが好ましく、より好ましくは40〜200nm、更に好ましくは50〜120nmである。
この架橋樹脂粒子(C)の粒径のコントロール方法は特に限定されないが、例えば、乳化重合により架橋樹脂粒子を合成する場合、使用する乳化剤の量により乳化重合中のミセルの数を制御し、粒径をコントロールすることができる。
尚、本発明における架橋樹脂粒子(C)の平均粒径とは、大塚電子製の光散乱流動分布測定装置「LPA−3000」を用い、架橋樹脂粒子の分散液を常法に従って希釈して測定した値である。
【0042】
上記架橋樹脂粒子(C)の配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、1〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜150重量部、更に好ましくは1〜100重量部である。この架橋樹脂粒子(C)の配合量が1重量部未満の場合、得られる硬化膜にクラックが発生したり、十分な伸びが得られなかったりすることがある。一方、この配合量が200重量部を超える場合、現像した際に架橋樹脂粒子(C)の残渣が生じ、十分なパターニング性能が得られないことがある。
【0043】
〔1−4〕架橋剤
また、本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物には、架橋剤(以下、「架橋剤(D)」ともいう。)を含有させることができる。
上記架橋剤としては、前記アルカリ可溶性樹脂(A)と反応する架橋成分(硬化成分)として作用するものであれば、特に限定されない。この架橋剤(D)としては、例えば、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物、チイラン環含有化合物、オキセタニル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物(ブロック化されたものを含む)、アルデヒド基を有するフェノール化合物、メチロール基を有するフェノール化合物等を挙げることができ、特にo−ヒドロキシベンズアルデヒド、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール、ヘキサメトキシメチルメラミン等が好適に用いられる。
【0044】
上記分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物としては、例えば、(ポリ)メチロールメラミン、(ポリ)メチロールグリコールウリル、(ポリ)メチロールベンゾグアナミン、(ポリ)メチロールウレア等の窒素化合物中の活性メチロール基(CHOH基)の全部又は一部(少なくとも2つ)がアルキルエーテル化された化合物を挙げることができる。ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基又はブチル基が挙げられ、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アルキルエーテル化されていないメチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果オリゴマー成分が形成されていてもよい。具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等を用いることができる。尚、これらの架橋剤(D)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明における架橋剤(D)の配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜50重量部である。この架橋剤(D)の配合量が1重量部未満の場合、露光による硬化が不十分となったり、得られる硬化物の電気絶縁性が低下したりすることがある。一方、100重量部を超える場合、パターニング特性が低下したり、耐熱性が低下したりすることがある。
【0046】
〔1−5〕分子中に少なくとも2つ以上のオキシラン環を有する化合物
また、本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物には、解像性及び得られる硬化膜の耐薬品性をより向上させるために、分子中に少なくとも2つ以上のオキシラン環を有する化合物(以下、「オキシラン環含有化合物(E)」ともいう。)を含有させることができる。
上記オキシラン環含有化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール−キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール−キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール−ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が好適に用いられる。尚、これらのオキシラン環化合物(E)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本発明におけるオキシラン環含有化合物(E)の配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、1〜70重量部であることが好ましく、好ましくは3〜30重量部である。このオキシラン環含有化合物(E)の配合量が1〜70重量部である場合、解像性及び得られる硬化膜の耐薬品性をより向上させることができるため好ましい。
【0048】
〔1−6〕密着助剤
また、本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物には、基材との密着性を向上させるために、密着助剤(以下、「密着助剤(F)」ともいう。)を含有させることができる。
上記密着助剤(F)としては、例えば、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性置換基を有する官能性シランカップリング剤等が挙げられる。具体的には、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1,3,5−N−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらの密着助剤(F)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上記密着助剤(F)の配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、0.5〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8重量部である。この密着助剤(F)の配合量が0.5〜10重量部である場合には、保存安定性に優れ、且つ基材との良好な密着性を発現するため好ましい。
【0050】
〔1−7〕溶剤
また、本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物には、樹脂組成物の取り扱い性を向上させたり、粘度や保存安定性を調節したりするために溶剤(以下、「溶剤(G)」ともいう。)を含有させることができる。
上記溶剤(G)は、特に制限されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、ブチルカルビトール等のカルビトール類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクン等のラクトン類を挙げることができる。これらの溶剤(G)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
〔1−8〕他の添加剤
また、本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物には、必要に応じて他の添加剤(以下、「他の添加剤(H)」ともいう。)を本発明の特性を損なわない程度に含有させることができる。このような他の添加剤(H)としては、熱感応性酸発生剤、増感剤、レベリング剤・界面活性剤等が挙げられる。
上記熱感応性酸発生剤としては、加熱処理により酸を発生する化合物であれば特に限定されず、この発生した酸の触媒作用により架橋剤(D)中のアルキルエーテル基等の官能基とアルカリ可溶性樹脂(A)との反応が促進される。この熱感応性酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物等を挙げることができる。
【0052】
上記レベリング剤・界面活性剤は、樹脂組成物の塗布性を向上さるために通常添加される。このようなレベリング剤・界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステリアルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系レベリング剤・界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ)、メガファックF171、F172、F173(大日本インキ化学工業)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム)、アサヒガードAG710、サーフロンS−381、S−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106、サーフィノールE1004、KH−10、KH−20、KH−30、KH−40(旭硝子)、フタージェント 250、251、222F、FTX−218(ネオス)等のフッ素系レベリング剤・界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341、X−70−092、X−70−093(信越化学工業)、SH8400(東レ・ダウコーニング)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75、No.77、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業)が挙げられる。これらを単独或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
このレベリング剤・界面活性剤の配合量は、樹脂溶液中、通常50〜1000ppmが好ましく、より好ましくは100〜800ppmである。50ppm未満の場合は段差基板上への均一塗布性が悪化し、1000ppmを超える場合は現像時や硬化後の密着性が低下する。
【0054】
〔1−9〕調製方法
本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法により調製することができる。また、各成分を中に入れ完全に栓をしたサンプル瓶を、ウェーブローターの上で攪拌することによっても調製することができる。
【0055】
[2]硬化物(i)
本発明における硬化物(以下、「硬化物(i)」ともいう。)は、前記ポジ型感光性絶縁樹脂組成物が硬化されてなることを特徴とする。
前述の本発明にかかるポジ型感光性絶縁樹脂組成物は、解像性、密着性、熱衝撃性、電気絶縁性、パターニング性能、及び伸び等の諸特性に優れているため、その硬化物は、回路基板(半導体素子)、半導体パッケージ等の電子部品の表面保護膜、平坦化膜、層間絶縁膜、高密度実装基板用絶縁膜材料等として好適に使用することができる。特に、上記硬化物を、層間絶縁膜又は平坦化膜として備える回路基板とすることができる。
【0056】
本発明の硬化物(i)を形成するには、まず前述の本発明にかかるポジ型感光性絶縁樹脂組成物を支持体(樹脂付き銅箔、銅張り積層板や金属スパッタ膜を付けたシリコンウエハーやアルミナ基板等)に塗工し、乾燥して溶剤等を揮発させて塗膜を形成する。その後、所望のマスクパターンを介して露光し、次いで、アルカリ性現像液により現像して、露光部を溶解、除去することにより所望のパターンを得ることができる。更に、絶縁膜特性を発現させるために加熱処理を行うことにより、硬化膜を得ることができる。
【0057】
樹脂組成物を支持体に塗工する方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法等の塗布方法を用いることができる。また、塗布膜の厚さは、塗布手段、組成物溶液の固形分濃度や粘度を調節することにより、適宜制御することができる。
露光に用いられる放射線としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線ステッパー、i線ステッパー等の紫外線、電子線、レーザー光線等が挙げられる。また、露光量としては使用する光源や樹脂膜厚等によって適宜選定されるが、例えば、高圧水銀灯からの紫外線照射の場合、樹脂膜厚5〜50μmでは、1000〜20000J/m程度である。
【0058】
露光後、アルカリ性現像液により現像して、露光部を溶解、除去することによって所望のパターンを形成する。この場合の現像方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法等を挙げることができる。現像条件としては通常、20〜40℃で1〜10分程度である。
前記アルカリ性現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等のアルカリ性化合物を濃度が1〜10重量%程度になるように水に溶解したアルカリ性水溶液を挙げることができる。また、前記アルカリ性水溶液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性の有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。尚、アルカリ性現像液で現像した後は、水で洗浄し、乾燥する。
【0059】
更に、現像後に絶縁膜としての特性を十分に発現させるために、加熱処理を行うことによって硬化させることができる。このような硬化条件は特に制限されるものではないが、硬化物の用途に応じて、100〜250℃の温度で、30分〜10時間程度加熱し、組成物を硬化させることができる。また、硬化を十分に進行させたり、得られたパターン形状の変形を防止したりするために二段階で加熱することもでき、例えば、第一段階では、50〜100℃の温度で、10分〜2時間程度加熱し、更に100〜250℃の温度で、20分〜8時間程度加熱して硬化させることもできる。このような硬化条件であれば、加熱設備として一般的なオーブンや、赤外線炉等を使用することができる。
【0060】
本発明のポジ型感光性絶縁樹脂組成物を用いれば、図1及び図2に示すような回路基板(半導体素子)等の電子部品を形成することができる。即ち、基板1上に金属パッド2をパターン状に形成した後、上記樹脂組成物を用いて硬化絶縁膜3をパターン状に形成し、次いで、金属配線4をパターン状に形成すると、図1に示すような回路基板を得ることができる。また、更にこの上に上記樹脂組成物を用いて硬化絶縁膜5を形成すると、図2に示すような回路基板を得ることができる。
【0061】
[3]ネガ型感光性絶縁樹脂組成物
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、架橋剤と、光感応性酸発生剤と、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体に由来する構成成分を20〜90mol%有する粒子状の共重合体である架橋樹脂粒子と、を含有する。
【0062】
〔3−1〕アルカリ可溶性樹脂
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(以下、「アルカリ可溶性樹脂(I)」ともいう。)としては、前述のポジ型感光性絶縁樹脂組成物において説明した前記アルカリ可溶性樹脂(A)の説明をそのまま適用することができる。尚、このアルカリ可溶性樹脂(I)には、前記アルカリ可溶性樹脂(A)と同様に、前記フェノール性低分子化合物が含有されていてもよい。
また、本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物中におけるアルカリ可溶性樹脂(I)の含有割合は、溶剤を除いた固形分全体を100重量%とした場合に、20〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜80重量%である。このアルカリ可溶性樹脂(A)の含有割合が20〜90重量%である場合には、ネガ型感光性絶縁樹脂組成物を用いて形成された膜がアルカリ水溶液による十分な現像性を有しているため好ましい。
【0063】
〔3−2〕架橋剤
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物における「架橋剤」(以下、「架橋剤(J)」ともいう。)は、前記アルカリ可溶性樹脂(I)と反応する架橋成分(硬化成分)として作用するものであれば、特に限定されない。上記架橋剤(J)としては、前述のポジ型感光性絶縁樹脂組成物において説明した前記架橋剤(D)の説明をそのまま適用することができる。
また、本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物における架橋剤(J)の配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂(I)100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜50重量部である。この架橋剤(J)の配合量が1重量部未満の場合、露光による硬化が不十分となったり、パターニングが困難となったり、得られる硬化物の耐熱性が低下したりすることがある。一方、100重量部を超える場合、解像性が低下したり、電気絶縁性が低下したりすることがある。
【0064】
〔3−3〕光感応性酸発生剤
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物における「光感応性酸発生剤」(以下、「酸発生剤(K)」ともいう。)は、放射線等の照射により酸を発生する化合物であり、この酸の触媒作用により、架橋剤(J)中の官能基と前記アルカリ可溶性樹脂(I)とが脱アルコールを伴って反応し、ネガ型のパターンを形成することができる。
【0065】
上記酸発生剤(K)としては、例えば、下記一般式(6)で表されるs−トリアジン誘導体を挙げることができる。このs−トリアジン誘導体は、g線、h線、i線領域に広い吸収を持っており、他のトリアジン骨格を有する一般的な感放射線性酸発生剤に比べて酸発生効率が高く、残膜率の高い、絶縁性の硬化物を得ることができる。
【0066】
【化6】

〔式(6)において、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Yは酸素原子又は硫黄原子を示す。〕
【0067】
上記一般式(6)におけるRの炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、isoブチル基、secブチル基、tertブチル基を例示することができる。また、炭素数1〜4のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、secブトキシ基等を例示することができる。
また、このRとしては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0068】
また、上記一般式(6)において、ハロゲン原子を示すXは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましく、より好ましくは塩素原子である。
【0069】
上記一般式(6)で表される具体的なs−トリアジン誘導体としては、例えば、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(Y=O、R=H、X=Cl)、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(Y=O、R=CH、X=Cl)等が挙げられる。
【0070】
更に、上記酸発生剤(K)としては、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物等を挙げることができる。
【0071】
上記オニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。具体的には、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフリオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフリオロメタンスルホネート等を挙げることができる。
【0072】
上記ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物等を挙げることができる。具体的には、例えば、1,10−ジブロモ−n−デカン、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、スチリル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(ピペロニル)−s−トリアジン等のs−トリアジン誘導体を挙げることができる。
【0073】
上記ジアゾケトン化合物としては、例えば、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物等を挙げることができる。具体的には、例えば、フェノール類の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0074】
上記スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物及びこれらの化合物のα−ジアゾ化合物等を挙げることができる。具体的には、例えば、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタン等を挙げることができる。
【0075】
上記スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類等を挙げることができる。具体的には、例えば、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート等を挙げることができる。
【0076】
上記スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等を挙げることができる。
【0077】
上記ジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン等を挙げることができる。
【0078】
これらの酸発生剤(K)は、1種のみ含有されていてもよいし、2種以上が含有されていてもよい。
また、酸発生剤(K)の配合量は、本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物の感度、解像度、パターン形状等を確保する観点から、アルカリ可溶性樹脂(I)100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5重量部である。この酸発生剤(K)の配合量が0.1重量部未満の場合、露光による硬化が不十分となり、残膜率が低下することがある。一方、この配合量が10重量部を超える場合、放射線に対する透明性が低下し、パターン形状の劣化を招くことがある。
【0079】
〔3−4〕架橋樹脂粒子
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物における「架橋樹脂粒子」(以下、「架橋樹脂粒子(L)」ともいう。)としては、前述のポジ型感光性絶縁樹脂組成物において説明した前記架橋樹脂粒子(C)の説明をそのまま適用することができる。
また、上記架橋樹脂粒子(L)の配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂(I)100重量部に対して、1〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜150重量部、更に好ましくは1〜100重量部である。この架橋樹脂粒子(L)の配合量が1重量部未満の場合、得られる硬化膜にクラックが発生したり、十分な伸びが得られなかったりすることがある。一方、この配合量が200重量部を超える場合、現像した際に架橋樹脂粒子(L)の残渣が生じ、十分なパターニング性能が得られないことがある。
【0080】
〔3−5〕分子中に少なくとも2つ以上のオキシラン環を有する化合物
また、本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物には、解像性及び得られる硬化膜の耐薬品性をより向上させるために、分子中に少なくとも2つ以上のオキシラン環を有する化合物(以下、「オキシラン環含有化合物(M)」ともいう。)を含有させることができる。
上記オキシラン環含有化合物(M)としては、前述のポジ型感光性絶縁樹脂組成物において説明した前記オキシラン環含有化合物(E)の説明をそのまま適用することができる。
また、本発明におけるオキシラン環含有化合物(M)の配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂(I)100重量部に対して、1〜70重量部であることが好ましく、好ましくは3〜30重量部である。このオキシラン環含有化合物(M)の配合量が1〜70重量部である場合、解像性及び得られる硬化膜の耐薬品性をより向上させることができるため好ましい。
【0081】
〔3−6〕密着助剤
また、本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物には、基材との密着性を向上させるために、密着助剤(以下、「密着助剤(N)」ともいう。)を含有させることができる。
上記密着助剤(N)としては、前述のポジ型感光性絶縁樹脂組成物において説明した前記密着助剤(F)の説明をそのまま適用することができる。
また、上記密着助剤(N)の配合量は、前記アルカリ可溶性樹脂(I)100重量部に対して、0.5〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8重量部である。この密着助剤(N)の配合量が0.5〜10重量部である場合には、保存安定性に優れ、且つ基材との良好な密着性を発現するため好ましい。
【0082】
〔3−7〕溶剤
また、本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物には、樹脂組成物の取り扱い性を向上させたり、粘度や保存安定性を調節したりするために溶剤(以下、「溶剤(O)」ともいう。)を含有させることができる。
上記溶剤(O)としては、前述のポジ型感光性絶縁樹脂組成物において説明した前記溶剤(G)の説明をそのまま適用することができる。
【0083】
〔3−8〕他の添加剤
また、本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物には、必要に応じて他の添加剤(以下、「他の添加剤(P)」ともいう。)を本発明の特性を損なわない程度に含有させることができる。このような他の添加剤(P)としては、増感剤、レベリング剤・界面活性剤等が挙げられる。
【0084】
上記レベリング剤・界面活性剤は、樹脂組成物の塗布性を向上さるために通常添加される。このようなレベリング剤・界面活性剤としては、前述のポジ型感光性絶縁樹脂組成物の他の添加剤(H)において説明したレベリング剤・界面活性剤の説明をそのまま適用することができる。
このレベリング剤・界面活性剤の配合量は、樹脂溶液中、通常50〜1000ppmが好ましく、より好ましくは100〜800ppmである。50ppm未満の場合は段差基板上への均一塗布性が悪化し、1000ppmを超える場合は現像時や硬化後の密着性が低下する。
【0085】
〔3−9〕調製方法
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法により調製することができる。また、各成分を中に入れ完全に栓をしたサンプル瓶を、ウェーブローターの上で攪拌することによっても調製することができる。
【0086】
[4]硬化物(ii)
本発明における硬化物(以下、「硬化物(ii)」ともいう。)は、前記ネガ型感光性絶縁樹脂組成物が硬化されてなることを特徴とする。
前述の本発明にかかるネガ型感光性絶縁樹脂組成物は、解像性、密着性、熱衝撃性、電気絶縁性、パターニング性能、及び伸び等の諸特性に優れているため、その硬化物は、回路基板(半導体素子)、半導体パッケージ等の電子部品の表面保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜材料等として好適に使用することができる。特に、上記硬化物を、層間絶縁膜又は平坦化膜として備える回路基板とすることができる。
【0087】
本発明の硬化物(ii)を形成するには、まず前述の本発明にかかるネガ型感光性絶縁樹脂組成物を支持体(樹脂付き銅箔、銅張り積層板や金属スパッタ膜を付けたシリコンウエハーやアルミナ基板等)に塗工し、乾燥して溶剤等を揮発させて塗膜を形成する。その後、所望のマスクパターンを介して露光し、加熱処理(以下、この加熱処理を「PEB」ともいう。)を行い、アルカリ可溶性樹脂(I)と架橋剤(J)との反応を促進させる。次いで、アルカリ性現像液により現像して、未露光部を溶解、除去することにより所望のパターンを得ることができる。更に、絶縁膜特性を発現させるために加熱処理を行うことにより、硬化膜を得ることができる。
【0088】
樹脂組成物を支持体に塗工する方法としては、前述の塗布方法を用いることができる。
また、塗布膜の厚さは、塗布手段、組成物溶液の固形分濃度や粘度を調節することにより、適宜制御することができる。
露光に用いられる放射線としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線ステッパー、h線ステッパー、i線ステッパー等の紫外線や電子線、レーザー光線等が挙げられる。また、露光量としては使用する光源や樹脂膜厚等によって適宜選定されるが、例えば、高圧水銀灯からの紫外線照射の場合、樹脂膜厚10〜50μmでは、1000〜20000J/m程度である。
【0089】
露光後は、発生した酸によるアルカリ可溶性樹脂(I)と架橋剤(J)の硬化反応を促進させるために上記PEB処理を行う。PEB条件は樹脂組成物の配合量や使用膜厚等によって異なるが、通常、70〜150℃、好ましくは80〜120℃で、1〜60分程度である。その後、アルカリ性現像液により現像して、未露光部を溶解、除去することによって所望のパターンを形成する。この場合の現像方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法等を挙げることができる。現像条件としては通常、20〜40℃で1〜10分程度である。
【0090】
前記アルカリ性現像液としては、前述のアルカリ性水溶液を挙げることができる。また、前記アルカリ性水溶液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性の有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。尚、アルカリ性現像液で現像した後に水で洗浄し、乾燥させる。
【0091】
更に、現像後に絶縁膜としての特性を十分に発現させるために、加熱処理を行うことによって十分に硬化させることができる。このような硬化条件は特に制限されるものではないが、硬化物の用途に応じて、50〜250℃の温度で、30分〜10時間程度加熱し、組成物を硬化させることができる。また、硬化を十分に進行させたり、得られたパターン形状の変形を防止したりするために二段階で加熱することもでき、例えば、第一段階では、50〜120℃の温度で、5分〜2時間程度加熱し、更に80〜250℃の温度で、10分〜10時間程度加熱して硬化させることもできる。このような硬化条件であれば、加熱設備として一般的なオーブンや、赤外線炉等を使用することができる。
【0092】
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物を用いれば、前記ポジ型感光性絶縁樹脂組成物を用いた場合と同様に、図1及び図2に示すような回路基板等の電子部品を形成することができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0094】
<感光性絶縁樹脂組成物の調製及び評価>
[1−1]ポジ型感光性絶縁樹脂組成物の調製
実施例1
表1に示すとおり、[A]アルカリ可溶性樹脂(A−1)100重量部、[B]キノンジアジド化合物(B−1)20重量部、[C]架橋樹脂粒子(C−1)5重量部、及び[F]密着助剤(F−1)2.5重量部を[G]溶剤(G−1)145重量部に溶解することにより各ポジ型感光性絶縁樹脂組成物を調製した。
【0095】
実施例2〜10及び比較例1〜6
実施例1と同様にして、表1に示すとおり、[A]アルカリ可溶性樹脂、[B]キノンジアジド化合物、[C]架橋樹脂粒子、[D]架橋剤、[E]オキシラン環含有化合物、[F]密着助剤及び[H]他の添加剤を、[G]溶剤に溶解することにより各ポジ型感光性絶縁樹脂組成物を調製した。
【0096】
【表1】

【0097】
尚、表1に記載の組成は、以下のとおりである。
<[A]アルカリ可溶性樹脂>
A−1:ビニル安息香酸/スチレン=20/80(モル比)からなる共重合体、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=10,000
A−2:p−ヒドロキシスチレン/スチレン=80/20(モル比)からなる共重合体、Mw=10,000
A−3:ポリヒドロキシスチレン、Mw=10,000
A−4:p−ヒドロキシスチレン/スチレン/ヒドロキシブチルアクリレート=80/10/10(モル比)からなる共重合体、Mw=10,000
A−5:m−クレゾール/p−クレゾール=60/40(モル比)からなるクレゾールノボラック樹脂、Mw=6,500
<[B]キノンジアジド化合物>
B−1:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル]エタンと、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル化合物(2.0モル縮合物)
B−2:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンと、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル化合物(1.5モル縮合物)
【0098】
<[C]架橋樹脂粒子>
C−1:ブタジエン/ヒドロキシブチルメタクリレート/ジビニルベンゼン=65/33/2(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=−38℃、水酸基価=205mgKOH/g
C−2:ブタジエン/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=40/42/17/1(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=5℃、酸価=91mgKOH/g、水酸基価=318mgKOH/g
C−3:ブタジエン/スチレン/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=60/10/20/9/1(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=−25℃、酸価=60mgKOH/g、水酸基価=194mgKOH/g
C−4:ブタジエン/アクリロニトリル/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=50/20/17/12/1(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=−6℃、酸価=88mgKOH/g、水酸基価=213mgKOH/g
C−5:ブタジエン/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=78/20/2(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=−40℃、酸価=180mgKOH/g
C−6:ブタジエン/スチレン/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=63/22/5/8/2(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=−27℃、酸価=60mgKOH/g、水酸基価=98mgKOH/g
C−7:ブタジエン/アクリロニトリル/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=4/3/70/22/1(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=76℃、酸価=91mgKOH/g、水酸基価=383mgKOH/g
C−8:ブタジエン/メタクリル酸/ヒドロキシブチルメタクリレート/ジビニルベンゼン=63/10/26/1(mol%)、平均粒径=60nm、Tg=−30℃、酸価=66mgKOH/g、水酸基価=237mgKOH/g
C−9:ブタジエン/メタクリル酸/ヒドロキシブチルメタクリレート/ジビニルベンゼン=77/10/12/1(mol%)、平均粒径=60nm、Tg=−44℃、酸価=97mgKOH/g、水酸基価=179mgKOH/g
【0099】
<[D]架橋剤>
D−1:o−ヒドロキシベンズアルデヒド
D−2:2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール
D−3:ヘキサメトキシメチルメラミン〔(株)三和ケミカル製、商品名「ニカラックMW−390」〕
<[E]オキシラン環含有化合物>
E−1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名「EOCN−4600」〕
E−2:フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名「XD−1000」〕
E−3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート828」〕
E−4:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル〔共栄社化学製、商品名「エポライト100MF」〕
E−5:ノボラック型エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「EP−152」〕
<[F]密着助剤>
F−1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔日本ユニカー(株)製、商品名「A−187」〕
F−2:1,3,5−N−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート〔GE東芝シリコーン(株)製、商品名「Y−11597」〕
<[G]溶剤>
G−1:乳酸エチル
G−2:2−ヘプタノン
<[H]他の添加剤>
H−1:FTX−218(ネオス社製)
H−2:SH8400(東レ・ダウコーニング社製)
【0100】
[1−2]ポジ型感光性絶縁樹脂組成物の評価
上記実施例1〜10及び比較例1〜6の各ポジ型感光性絶縁樹脂組成物の特性を、下記の方法に従って評価した。その結果を表2に示す。
(1)解像性
6インチのシリコンウエハーにポジ型感光性絶縁樹脂組成物をスピンコートし、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、20μm厚の均一な樹脂塗膜を作製した。その後、アライナー(Karl Suss社製、「MA−100」)を用い、パターンマスクを介して高圧水銀灯からの紫外線を波長420nmにおける露光量が500mJ/cmとなるように露光した。次いで、ホットプレートで110℃、3分間加熱(PEB)し、2.38重量%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を用いて23℃で120秒間、浸漬現像した。そして、得られたパターンの最小寸法を解像度とした。
【0101】
(2)密着性
SiOをスパッタしたシリコンウエハーにポジ型感光性絶縁樹脂組成物を塗布し、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、10μm厚の均一な樹脂塗膜を作製した。その後、対流式オーブンを用いて190℃で1時間加熱して樹脂塗膜を硬化させて硬化膜を得た。次いで、この硬化膜をプレッシャークッカー試験装置〔タバイエスペック(株)社製、「EHS−221MD」〕で、温度121℃、湿度100%、圧力2.1気圧の条件下で168時間処理した。そして、試験前後での密着性をJIS K 5400に準拠してクロスカット試験(碁盤目テープ法)を行い、評価した。
【0102】
(3)熱衝撃性
図3及び図4に示すような基板6上にパターン状の銅箔7を有している熱衝撃性評価用の基材8にポジ型感光性絶縁樹脂組成物を塗布し、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、銅箔7上での厚さが10μmである樹脂塗膜を有する基材を作製した。その後、対流式オーブンを用いて190℃で1時間加熱して樹脂塗膜を硬化させて硬化膜を得た。この基材を冷熱衝撃試験器〔タバイエスペック(株)社製、「TSA−40L」〕で−65℃/30分〜150℃/30分を1サイクルとして耐性試験を行った。そして、硬化膜にクラック等の欠陥が発生するまでのサイクル数(100サイクル毎)を測定した。
【0103】
(4)絶縁性
図5に示すような基板9上にパターン状の銅箔10を有している絶縁性評価用の基材11にポジ型感光性絶縁樹脂組成物を塗布し、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、銅箔10上での厚さが10μmである樹脂塗膜を有する基材を作製した。その後、対流式オーブンを用いて190℃で1時間加熱して樹脂塗膜を硬化させて硬化膜を得た。この基材をマイグレーション評価システム〔タバイエスペック(株)社製、「AEI,EHS−221MD」〕に投入し、温度121℃、湿度85%、圧力1.2気圧、印可電圧5Vの条件で200時間処理した。その後、試験基材の抵抗値(Ω)を測定し、絶縁性を評価した。
【0104】
(5)パターニング性能
6インチのシリコンウエハーにポジ型感光性絶縁樹脂組成物をスピンコートし、ホットプレートを用いて110℃で5分間加熱し、20μm厚の均一な樹脂塗膜を作製した。その後、アライナー(Suss Microtec社製、「MA−100」)を用い、一辺が5μmの正方形の抜きパターンが多数配置されているマスクを介して、高圧水銀灯からの紫外線を波長350nmにおける露光量が8000J/mとなるように露光した。次いで、2.38重量%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を用いて23℃で180秒間、浸漬現像した。その後、超純水にて60秒間洗浄し、エアーにて風乾した。このようにして得られた正方形(5×5μm)の抜きパターンを走査電子顕微鏡〔(株)日立社製、「S4200」〕を用いて1500倍の倍率で表面を観察し、以下の基準で評価した。
○:良(架橋樹脂粒子由来の残渣なし)
×:不良(架橋樹脂粒子由来の残渣あり)
【0105】
(6)伸び(引張試験)
PETフィルムにポジ型感光性絶縁樹脂組成物を塗布し、対流式オーブンを用いて110℃で10分間加熱した。次いで、190℃で1時間加熱した後、PETフィルムから塗膜を剥離し、50μm厚の硬化フィルムを得た。この硬化フィルムを5mm幅のダンベルで打ち抜き、試験片を作製した。そして、セイコーインスツルメンツ(株)製の熱機械分析装置「TMA/SS6100」を用いて、JIS K7113(プラスチックの引張試験方法)に準じて、試験片の伸びを測定した。
【0106】
【表2】

【0107】
[1−3]ネガ型感光性絶縁樹脂組成物の調製
実施例11
表3に示すとおり、[I]アルカリ可溶性樹脂(I−1)100重量部、[J]架橋剤(J−1)15重量部、[K]酸発生剤(K−1)1重量部、[L]架橋樹脂粒子(L−1)5重量部、及び[N]密着助剤(N−1)2.5重量部を[O]溶剤(O−1)145重量部に溶解することにより各ネガ型感光性絶縁樹脂組成物を調製した。
【0108】
実施例12〜18及び比較例7〜11
実施例11と同様にして、表3に示すとおり、[I]アルカリ可溶性樹脂、[J]架橋剤、[K]酸発生剤、[L]架橋樹脂粒子、[M]オキシラン環含有化合物、[N]密着助剤及び[P]他の添加剤を、[O]溶剤に溶解することにより各ネガ型感光性絶縁樹脂組成物を調製した。
【0109】
【表3】

【0110】
尚、表3に記載の組成は、以下のとおりである。
<[I]アルカリ可溶性樹脂>
I−1:ビニル安息香酸/スチレン=20/80(モル比)からなる共重合体、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=10,000
I−2:p−ヒドロキシスチレン/スチレン=80/20(モル比)からなる共重合体、Mw=10,000
I−3:ポリヒドロキシスチレン、Mw=10,000
I−4:p−ヒドロキシスチレン/スチレン/ヒドロキシブチルアクリレート=80/10/10(モル比)からなる共重合体、Mw=10,000
I−5:m−クレゾール/p−クレゾール=60/40(モル比)からなるクレゾールノボラック樹脂、Mw=6,500
I−6:4,4’−{1−[4−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]フェニル]エチリデン}ビスフェノール(フェノール性低分子化合物)
<[J]架橋剤>
J−1:o−ヒドロキシベンズアルデヒド
J−2:2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール
J−3:ヘキサメトキシメチルメラミン〔(株)三和ケミカル製、商品名「ニカラックMW−390」〕
<[K]酸発生剤>
K−1:2−2[−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン〔三和ケミカル製、商品名「TFE−トリアジン」〕
K−2:2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン〔三和ケミカル製、商品名「TME−トリアジン」〕
【0111】
<[L]架橋樹脂粒子>
L−1:ブタジエン/ヒドロキシブチルメタクリレート/ジビニルベンゼン=65/33/2(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=−38℃、水酸基価=205mgKOH/g
L−2:ブタジエン/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=40/42/17/1(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=5℃、酸価=91mgKOH/g、水酸基価=318mgKOH/g
L−3:ブタジエン/スチレン/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=60/10/20/9/1(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=−25℃、酸価=60mgKOH/g、水酸基価=194mgKOH/g
L−4:ブタジエン/アクリロニトリル/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=50/20/17/12/1(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=−6℃、酸価=88mgKOH/g、水酸基価=213mgKOH/g
L−5:ブタジエン/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=78/20/2(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=−40℃、酸価=180mgKOH/g
L−6:ブタジエン/スチレン/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=63/22/5/8/2(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=−27℃、酸価=60mgKOH/g、水酸基価=98mgKOH/g
L−7:ブタジエン/アクリロニトリル/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=4/3/70/22/1(mol%)、平均粒径=65nm、Tg=76℃、酸価=91mgKOH/g、水酸基価=383mgKOH/g
L−8:ブタジエン/メタクリル酸/ヒドロキシブチルメタクリレート/ジビニルベンゼン=63/10/26/1(mol%)、平均粒径=70nm、Tg=−30℃、酸価=66mgKOH/g、水酸基価=237mgKOH/g
L−9:ブタジエン/メタクリル酸/ヒドロキシブチルメタクリレート/ジビニルベンゼン=77/10/12/1(mol%)、平均粒径=70nm、Tg=−44℃、酸価=97mgKOH/g、水酸基価=179mgKOH/g
【0112】
<[M]オキシラン環含有化合物>
M−1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名「EOCN−4600」〕
M−2:フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名「XD−1000」〕
M−3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート828」〕
M−4:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル〔共栄社化学製、商品名「エポライト100MF」〕
<[N]密着助剤>
N−1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔日本ユニカー(株)製、商品名「A−187」〕
N−2:1,3,5−N−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート〔GE東芝シリコーン(株)製、商品名「Y−11597」〕
<[O]溶剤>
O−1:乳酸エチル
O−2:2−ヘプタノン
<[P]他の添加剤>
P−1:FTX−218(ネオス社製)
P−2:SH8400(東レ・ダウコーニング社製)
【0113】
[1−4]ネガ型感光性絶縁樹脂組成物の評価
上記実施例11〜18及び比較例7〜11の各ネガ型感光性絶縁樹脂組成物の特性を、下記の方法に従って評価した。その結果を表4に示す。
(1)解像性
6インチのシリコンウエハーにネガ型感光性絶縁樹脂組成物をスピンコートし、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、20μm厚の均一な樹脂塗膜を作製した。その後、アライナー(Karl Suss社製、「MA−100」)を用い、パターンマスクを介して高圧水銀灯からの紫外線を波長420nmにおける露光量が500mJ/cmとなるように露光した。次いで、ホットプレートで110℃、3分間加熱(PEB)し、2.38重量%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を用いて23℃で120秒間、浸漬現像した。そして、得られたパターンの最小寸法を解像度とした。
【0114】
(2)密着性
SiOをスパッタしたシリコンウエハーにネガ型感光性絶縁樹脂組成物を塗布し、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、10μm厚の均一な樹脂塗膜を作製した。その後、対流式オーブンを用いて190℃で1時間加熱して樹脂塗膜を硬化させて硬化膜を得た。次いで、この硬化膜をプレッシャークッカー試験装置〔タバイエスペック(株)社製、「EHS−221MD」〕で、温度121℃、湿度100%、圧力2.1気圧の条件下で168時間処理した。そして、試験前後での密着性をJIS K 5400に準拠してクロスカット試験(碁盤目テープ法)を行い、評価した。
【0115】
(3)熱衝撃性
図3及び図4に示すような基板6上にパターン状の銅箔7を有している熱衝撃性評価用の基材8にネガ型感光性絶縁樹脂組成物を塗布し、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、銅箔7上での厚さが10μmである樹脂塗膜を有する基材を作製した。その後、アライナー(Karl Suss社製、「MA−100」)を用い、パターンマスクを介して高圧水銀灯からの紫外線を波長365nmにおける露光量が500mJ/cm2となるように露光した。次いで、ホットプレートで110℃、3分間加熱(PEB)し、対流式オーブンを用いて190℃で1時間加熱して樹脂塗膜を硬化させて硬化膜を得た。この基材を冷熱衝撃試験器〔タバイエスペック(株)社製、「TSA−40L」〕で−65℃/30分〜150℃/30分を1サイクルとして耐性試験を行った。そして、硬化膜にクラック等の欠陥が発生するまでのサイクル数(100サイクル毎)を測定した。
【0116】
(4)絶縁性
図5に示すような基板9上にパターン状の銅箔10を有している絶縁性評価用の基材11にネガ型感光性絶縁樹脂組成物を塗布し、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、銅箔10上での厚さが10μmである樹脂塗膜を有する基材を作製した。その後、アライナー(Karl Suss社製、「MA−100」)を用い、パターンマスクを介して高圧水銀灯からの紫外線を波長365nmにおける露光量が500mJ/cm2となるように露光した。次いで、ホットプレートで110℃、3分間加熱(PEB)し、対流式オーブンを用いて190℃で1時間加熱して樹脂塗膜を硬化させて硬化膜を得た。この基材をマイグレーション評価システム〔タバイエスペック(株)社製、「AEI,EHS−221MD」〕に投入し、温度121℃、湿度85%、圧力1.2気圧、印可電圧5Vの条件で200時間処理した。その後、試験基材の抵抗値(Ω)を測定し、絶縁性を評価した。
【0117】
(5)パターニング性能
6インチのシリコンウエハーにネガ型感光性絶縁樹脂組成物をスピンコートし、ホットプレートを用いて110℃で5分間加熱し、20μm厚の均一な樹脂塗膜を作製した。その後、アライナー(Suss Microtec社製、「MA−100」)を用い、一辺が5μmの正方形の抜きパターンが多数配置されているマスクを介して、高圧水銀灯からの紫外線を波長350nmにおける露光量が8000J/mとなるように露光した。次いで、2.38重量%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を用いて23℃で180秒間、浸漬現像した。その後、超純水にて60秒間洗浄し、エアーにて風乾した。このようにして得られた正方形(5×5μm)の抜きパターンを走査電子顕微鏡〔(株)日立社製、「S4200」〕を用いて1500倍の倍率で表面を観察し、以下の基準で評価した。
○:良(架橋樹脂粒子由来の残渣なし)
×:不良(架橋樹脂粒子由来の残渣あり)
【0118】
(6)伸び(引張試験)
PETフィルムにネガ型感光性絶縁樹脂組成物を塗布し、対流式オーブンを用いて110℃で10分間加熱した。次いで、アライナー(Karl Suss社製、「MA−100」)を用い、パターンマスクを介して高圧水銀灯からの紫外線を波長365nmにおける露光量が1,000mJ/cmとなるように露光し、ホットプレートで110℃、3分間加熱(PEB)した。その後、190℃で1時間加熱し、PETフィルムから塗膜を剥離し、50μm厚の硬化フィルムを得た。この硬化フィルムを5mm幅のダンベルで打ち抜き、試験片を作製した。そして、セイコーインスツルメンツ(株)製の熱機械分析装置「TMA/SS6100」を用いて、JIS K7113(プラスチックの引張試験方法)に準じて、試験片の伸びを測定した。
【0119】
【表4】

【符号の説明】
【0120】
1;基板、2;金属パッド、3;硬化絶縁膜、4;金属配線、5;硬化絶縁膜、6;基板、7;銅箔、8;熱衝撃性評価用の基材、9;基板、10;銅箔、11;絶縁性評価用の基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂と、キノンジアジド基を有する化合物と、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体に由来する構成成分を20〜90mol%有する粒子状の共重合体である架橋樹脂粒子と、を含有することを特徴とするポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項2】
上記アルカリ可溶性樹脂が、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂である請求項1に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
更に、架橋剤を含有する請求項1に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
更に、分子中に少なくとも2つ以上のオキシラン環を有する化合物を含有する請求項1に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項5】
上記ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体が、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、及びヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチルより選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項6】
上記架橋樹脂粒子が、上記ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体と、不飽和重合性基を2個以上有する架橋性単量体と、を共重合させたものである請求項1に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項7】
上記架橋樹脂粒子の平均粒径が、50〜120nmである請求項1に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のポジ型感光性絶縁樹脂組成物が硬化されてなることを特徴とする硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を、層間絶縁膜又は平坦化膜として備えることを特徴とする回路基板。
【請求項10】
アルカリ可溶性樹脂と、架橋剤と、光感応性酸発生剤と、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体に由来する構成成分を20〜90mol%有する粒子状の共重合体である架橋樹脂粒子と、を含有することを特徴とするネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項11】
上記アルカリ可溶性樹脂が、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂である請求項10に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項12】
更に、分子中に少なくとも2つ以上のオキシラン環を有する化合物を含有する請求項10に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項13】
上記ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体が、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、及びヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチルより選ばれる少なくとも1種である請求項10に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項14】
上記架橋樹脂粒子が、上記ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体と、不飽和重合性基を2個以上有する架橋性単量体と、を共重合させたものである請求項10に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項15】
上記架橋樹脂粒子の平均粒径が、50〜120nmである請求項10に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項16】
請求項10に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物が硬化されてなることを特徴とする硬化物。
【請求項17】
請求項16に記載の硬化物を、層間絶縁膜又は平坦化膜として備えることを特徴とする回路基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−29862(P2013−29862A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226233(P2012−226233)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2008−531998(P2008−531998)の分割
【原出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】