説明

ポリアミドを有するガソリン容器、及び溶着によるポリアミド体製造方法

【課題】低ガソリン透過量であり且つ低温耐衝撃性を有するポリアミド製ガソリン容器及びその製造方法の提供。
【解決手段】ポリアミドを有するガソリン容器であって、該容器を構成する全物質を100重量%とした場合、該容器中のポリアミド成分が51重量%以上であり、該容器のガソリン透過量が1.5g/m/日以下であり、該容器は、i)低温落下試験により該容器に破損又はクラックが生じない低温耐衝撃性、及びii)サイドインパクト試験により該容器に破損又はクラックが生じず、液漏れが生じない低温耐衝撃性を有する上記ガソリン容器により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドを有するガソリン容器、特に低ガソリン透過量であり且つ低温耐衝撃性を有するポリアミド製ガソリン容器に関する。
また、本発明は、該容器を含むポリアミド体の溶着による製造方法に関し、特に溶着の際にポリアミド製部材の一方又は双方に孔を設け該孔にポリアミド溶融体が流入、固化することにより部材同士の溶着を強化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2輪/ATV用燃料タンクとして、そのタンクの重量を軽減させるため及び/又はタンク設計の自由度を高めるために、プ ラスチック製の燃料タンクの研究・開発が近年、盛んに行われている。プラスチック製燃料タンクのうち、ポリアミド製燃料タンクの研究・開発も行われている。
【特許文献1】特開2005−298639号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ポリアミド製燃料タンクは、耐衝撃性が悪いという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、低ガソリン透過量であり且つ低温耐衝撃性を有するポリアミド製ガソリン容器を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記目的以外に、又は上記目的に加えて、ポリアミド体の溶着による製造方法、特に溶着の際にポリアミド製部材の一方又は双方に孔を設け該孔にポリアミド溶融体が流入、固化することにより部材同士の溶着を強化する上記方法を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、上記方法により低ガソリン透過量であり且つ低温耐衝撃性を有するポリアミド製ガソリン容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために、以下の発明を見出した。
<1> ポリアミドを有するガソリン容器であって、該容器を構成する全物質を100重量%とした場合、該容器中のポリアミド成分が51重量%以上、好ましくは61重量%以上、より好ましくは該容器がポリアミド成分のみからなり、該容器のガソリン透過量が1.5g/m/日以下、好ましくは1.0g/m/日以下、より好ましくは0.5g/m/日以下であり、該容器は、i)低温 落下試験により該容器に破損又はクラックが生じない低温耐衝撃性、及びii)サイドインパクト試験により該容器に破損又はクラックが生じず、液漏れが生じない低温耐衝撃性を有し、該i)低温 落下試験は、エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液を、該容器の容量を100容量%としたとき、該容器に90容量%入れ、該不凍液の温度を−40℃±2℃に 設定し、該容器を125cmの高さから自由落下させる試験であり、該ii)サイドインパクト試験は、エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液を、該容器の容量を100容量%としたとき、該容器に100容量%入れ、該不凍液の温度を−20℃±2℃に設定し、該容器に対して、先端直径が90mmである鋼製振り子衝撃体を荷重500N且つ衝撃エネルギーが455N・mとなるように、衝撃を加える試験である、上記ガソリン容器。
【0006】
<2> 上記<1>において、ガソリン容器がポリアミド製ブロー成形体からなり、該ポリアミド製ブロー成形体のを構成する全物質を100重量%とした場合、該容器中のポリアミド成分が51重量%以上、好ましくは61重量%以上、より好ましくは該容器がポリアミド成分のみからなるのがよい。
<3> 上記<1>又は<2>において、ガソリン容器は、ポリアミド製ブロー成形体とポリアミド製部材とを溶着させることにより得られるのがよい。
【0007】
<4> 上記<3>の溶着において、ポリアミド製ブロー成形体側の第1の溶着部位に第1の孔を設けるか、及び/又はポリアミド製部材側の第2の溶着 部位に第2の孔を設け、溶着の際に該第1及び/又は第2の孔にポリアミド製ブロー成形体の一部からなる第1の溶融体及び/又はポリアミド製部材の一部からなる第2の溶融体が流入、固化することにより、ポリアミド製ブロー成形体とポリアミド製部材との溶着が強化されるのがよい。
<5> 上記<1>〜<4>のいずれかにおいて、ポリアミド成分は6-ナイロン及び6,6-ナイロンからなる群から選ばれるのがよく、例えば上記<2>〜<4>において、ポリアミド製ブロー成形体のポリアミド及びポリアミド製部材のポリアミドは、同じであっても異なってもよく、6-ナイロン及び6,6-ナイロンからなる群から選ばれるのがよい。
【0008】
<6> ポリアミド製成形体にポリアミド製部材を溶着させてポリアミド体を得るポリアミド体製造方法であって、
a)ポリアミド製成形体を準備する工程;
b)上記a)とは別にポリアミド製部材を準備する工程;
c)ポリアミド製成形体とポリアミド製部材とを溶着させる溶着工程であって、ポリアミド製成形体側の第1の溶着部位に第1の孔を設けるか、及び/又はポリアミド製部材側の第2の溶着部位に第2の孔を設け、溶着の際に該第1及び/又は第2の孔にポリアミド製成形体の一部からなる第1の溶融体及び/又はポリアミド製部材の一部からなる第2の溶融体が流入、固化することにより、ポリアミド製成形体とポリアミド製部材との溶着が強化される溶着工程;
を有する、上記方法。
【0009】
<7> 上記<6>において、ポリアミド製成形体が、ポリアミド製ブロー成形体であるのがよい。
<8> 上記<6>又は<7>において、ポリアミド製成形体のポリアミド及び前記ポリアミド製部材のポリアミドは、同じであっても異なってもよく、6-ナイロン及び6,6-ナイロンからなる群から選ばれるのがよい。
<9> 上記<6>〜<8>のいずれかにおいて、ポリアミド体はガソリン容器であり、該容器を構成する全物質を100重量%とした場合、該容器中のポリアミド成分が51重量%以上、好ましくは61重量%以上、より好ましくは該容器がポリアミド成分のみからなり、且つ該容器のガソリン透過量が1.5g/m/日以下、好ましくは1.0g/m/日以下、より好ましくは0.5g/m/日以下であるのがよい。
【0010】
<10> 上記<6>〜<9>のいずれかにおいて、ポリアミド体はガソリン容器であり、該容器は、エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液を、該容器の容量を100容量%としたとき、該容器に90容量%入れ、該不凍液の温度を−40℃±2℃に設定し、該容器を125cmの高さから自由落下させる低温落下試験により、該容器に破損又はクラックが生じない低温耐衝撃性を有するのがよい。
<11> 上記<6>〜<10>のいずれかにおいて、ポリアミド体はガソリン容器であり、該容器は、エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液を、該容器の容量を100容量%としたとき、該容器に100容量%入れ、該不凍液の温度を−20℃±2℃に設定し、該容器に対して、先端直径が90mmである鋼製振り子衝撃体を荷重500N且つ衝撃エネルギーが455N・mとなるように、衝撃を加えるサイドインパクト試験により、該容器に破損又はクラックが生じず、液漏れが生じない低温耐衝撃性を有するのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、低ガソリン透過量であり且つ低温耐衝撃性を有するポリアミド製ガソリン容器を提供することができる。
また、本発明により、上記効果以外に、又は上記効果に加えて、ポリアミド体の溶着による製造方法、特に溶着の際にポリアミド製部材の一方又は双方に孔を設け該孔にポリアミド溶融体が流入、固化することにより部材同士の溶着を強化する上記方法を提供することができる。
さらに、本発明により、上記方法により低ガソリン透過量であり且つ低温耐衝撃性を有するポリアミド製ガソリン容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリアミド製ガソリン容器>
本発明は、低ガソリン透過量であり且つ低温耐衝撃性を有するポリアミド製ガソリン容器を提供する。
本発明のガソリン容器は、該容器を構成する全物質を100重量%とした場合、該容器中のポリアミド成分が51重量%以上、好ましくは61重量%以上、より好ましくは該容器がポリアミド成分のみからなるのがよい。
【0013】
また、容器がポリアミド製ブロー成形体からなり、該ポリアミド製ブロー成形体を構成する全物質を100重量%とした場合、該容器中のポリアミド成分が51重量%以上、好ましくは61重量%以上、より好ましくは該容器がポリアミド成分のみからなるのがよい。
【0014】
ブロー成形だけでは、ガソリン容器全体を作製できない場合、ガソリン容器は、ポリアミド製ブロー成形体とポリアミド製部材とを溶着させることにより得られるのがよい。例えば、ガソリン容器の本体部をポリアミド製ブロー成形体として得る一方、ガソリン容器の給油口部をポリアミド製部材として得て、それらを溶着してガソリン容器を得るのがよい。
溶着は、後に詳述するが、ポリアミド製ブロー成形体側の第1の溶着部位に第1の孔を設けるか、及び/又はポリアミド製部材側の第2の溶着 部位に第2の孔を設け、溶着の際に該第1及び/又は第2の孔にポリアミド製ブロー成形体の一部からなる第1の溶融体及び/又はポリアミド製部材の一部からなる第2の溶融体が流入、固化することにより、ポリアミド製ブロー成形体とポリアミド製部材との溶着が強化されるのがよい。
【0015】
上述のポリアミド成分は、6-ナイロン及び6,6-ナイロンからなる群から選ばれるのがよい。例えば、ポリアミド製ブロー成形体のポリアミド及びポリアミド製部材のポリアミドは、同じであっても異なってもよく、6-ナイロン及び6,6-ナイロンからなる群から選ばれるのがよい。
【0016】
本発明のガソリン容器のガソリン透過量は、1.5g/m/日以下、好ましくは1.0g/m/日以下、より好ましくは0.5g/m/日以下であるのがよい。
【0017】
本発明のガソリン容器は、i)低温落下試験により該容器に破損又はクラックが生じない低温耐衝撃性、及びii)サイド インパクト試験により該容器に破損又はクラックが生じず、液漏れが生じない低温耐衝撃性を有するのがよい。
【0018】
ここで、i)低温落下試験は、エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液を、該容器の容量を100容量%としたとき、該容器に90容量%入れ、該不凍液の温度を−40℃±2℃に設定し、該容器を125cmの高さから自由落下させる試験である。
また、ii)サイドインパクト試験は、エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液を、該容器の容量を100 容量%としたとき、該容器に100容量%入れ、該不凍液の温度を−20℃±2℃に設定し、該容器に対して、先端直径が90mmである鋼製振り子衝撃体を荷重500N且つ衝撃エネルギーが455N・mとなるように、衝撃を加える試験である。
【0019】
<ポリアミド体の製造方法>
上記ガソリン容器を含むポリアミド体は、以下の方法により製造することができる。
即ち、本発明は、ポリアミド製成形体にポリアミド製部材を溶着させてポリアミド体を得るポリアミド体製造方法を提供する。
本発明の方法は、
a)ポリアミド製成形体を準備する工程;
b)上記a)とは別にポリアミド製部材を準備する工程;
c)ポリアミド製成形体とポリアミド製部材とを溶着させる溶着工程であって、ポリアミド製成形体側の第1の溶着部位に第1の孔を設けるか、及び/又はポリアミド製部材側の第2の溶着部位に第2の孔を設け、溶着の際に該第1及び/又は第2の孔にポリアミド製成形体の一部からなる第1の溶融体及び/又はポリアミド製部材の一部からなる第2の溶融体が流入、固化することにより、ポリアミド製成形体とポリアミド製部材との溶着が強化される溶着工程;
を有することにより、ポリアミド体を得ることができる。
【0020】
なお、本明細書のポリアミド体の製造方法において、「ポリアミド製成形体」及び「ポリアミド製部材」の語は、溶着体と被溶着体とを区別するため、文言上、異なる表現を用いているに過ぎないことをここに注記する。
【0021】
a)のポリアミド製成形体は、ブロー成形により得られるのがよい。即ち、a)工程はブロー成形工程であるのがよい。ブロー 成形を用いると成形性がよく且つ強度が確保できる点でよい。
【0022】
b)のポリアミド製部材は、従来より公知の種々の手法により得ても良い。例えば、上記a)のポリアミド製成形体と 同様にブロー成形で得ても、射出成形により得てもよい。なお、ポリアミド製部材に寸法精度を求められる場合、例えば、上述したガソリン容器の本体部をポリアミド製成形体として用いる一方、該容器の給油口部をポリアミド製部材として用いる場合、該部材、即ち給油口部は、射出成形で得るのがよい。
【0023】
ポリアミド成分は、上述と同様、6-ナイロン及び6,6-ナイロンからなる群から選ばれるのがよい。
【0024】
c)工程は、溶着工程である。
図1を用いてこの工程を概説する。図1は、ポリアミド製成形体2とポリアミド製部材3とを溶着させてポリアミド体1を得る 工程を概説するための図である。なお、(a)は溶着工程前、(b)は溶着工程後を示し、(a’)は溶着工程前のポリアミド製部材3の上面図、(b’)は溶着工程後の ポリアミド体1のポリアミド製部材3側の上面図を示す。
【0025】
ポリアミド製成形体2は所望の形状を有する。なお、図1においては、後述の実施例においても用いた8L燃料タンク本体部の形状を有する(ただし、その全体は図示しない)。ポリアミド製成形体2、即ち燃料タンク本体部は、給油口取付け用平面部4を有する。該平面部4の略中心に、給油口取付け用円環状部4aを有する。
ポリアミド製部材3は、ポリアミド製成形体と溶着可能な、所望の形状を有する。図1を用いる説明において、ポリアミド製部材3は、略円筒状部5と略円環状部6とを有する給油口部の形状を有する。略円筒状5は、タンク用給油口として用いるために外側にねじが設けられてもよい。略円環状部6の円環部の外径は、給油口取付け用円環状部4aの円環部の外径とほぼ同寸法である。ポリアミド製部材3の略円環状部6には、複数の貫通孔7が設けられる。
【0026】
溶着工程により、矢印Aに示すように、ポリアミド製成形体2(燃料タンク本体部)とポリアミド製部材3(給油口部)とは溶着される。より具体的に説明すると、溶着の際、ポリアミド製部材3は、例えば矢印Bに示すように、回転させながら、ポリアミド製成形体2に押しつける。このとき、ポリアミド製成形体2の溶着面4aが溶融し、その一部がポリアミド製部材3の孔7に流入する。孔7に流入したポリアミド成分は固化し、且つその他の溶融ポリアミド成分も溶着面上で固化することにより、ポリアミド製成形体2とポリアミド製部材3とは溶着される。孔7にポリアミド成分が流入、固化することにより、孔7はほぼ 閉塞される。なお、図1(b)において、ポリアミド製成形体2とポリアミド製部材3との接着(溶着)箇所は、用いるポリアミド成分が双方とも同じであって、該 溶着条件を整えれば、ほとんど境目が観察されない状態とすることもできる。
【0027】
なお、図1は、本発明の製造方法を容易に理解するために、ポリアミド製部材側に貫通孔を設けたもので説明したが、孔は貫通孔であってもそうでなくてもよい。貫通孔である場合、溶融ポリアミド成分の流入・固化などの溶融度合いを確認できるため、及び/又はアミド成分が溶融する際に生じるガスを該貫通孔から逃すことができるために、溶着品質を向上させ、ひいては溶着強度を向上させることができる。
図1ではポリアミド製部材側だけに孔を設けたが、ポリアミド製成形体側だけに孔を設けても、ポリアミド製成形体と部材との双方に孔を設けてもよい。さらに、図1では、溶融する箇所がポリアミド製成形体側(4a)としたが、ポリアミド製部材3側であっても、双方であってもよい。
【0028】
本発明の製造方法により、一体成形が困難な形状を有するポリアミド製品であっても、容易に製造することができる。また、溶着部が強固であることから、ガソリン容器などのガソリン低透過性が求められる製品などの製法として本発明の方法を用いることができる。
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
<燃料タンク本体部のブロー成形>
6-ナイロン(宇部興産社製)を用いてブロー成形を行い、肉厚がほぼ均等であり且つ該肉厚が1mm以上の8L燃料タンク本体部A−1を得た。
<燃料タンク給油口部の成形>
本体部A−1とは別に、給油口部A−2を、インジェクションにより成形した。なお、得られた給油口部A−2は、それが本体部A−1と接着させる面に、φ1〜1.5mmの貫通孔を複数個設けた。
【0030】
<溶着による燃料タンクの製造>
本体部A−1と給油口部A−2とを溶着させた。即ち、上述及び図1で示したように、給油口部A−2を回転させながら、給油口部A−2側の溶着面を本体部A−1側の溶着面に押しつけて、摩擦熱により本体部A−1側の溶着面及び給油口部A−2側の溶着面を溶融させて、スピン溶着させ、給油口を有する燃料タンクC−1を得た。なお、溶着の際、溶融した6-ナイロンが、給油口部A−2の溶着面に設けられた複数の貫通孔に、流入することを確認した。また、これにより、本体部A−1及び給油口部A−2の外観損傷を最小限に抑えることができた。さらに、溶融した6-ナイロンの流入とその後の固化により、溶着工程の完了を容易に判断することができた。
なお、この工程により、溶融した6-ナイロンが流動する様子を目視できることから均一に6-ナイロンが流動しているかを判断できる。また、貫通孔は、6-ナイロンが溶融したときに発生するガスを逃がす役わりも兼ね備えることもわかった。これらのことから、給油口部A−2側の溶着面及び/又は本体部A−1側の溶着面に貫通孔を設けることにより、溶着 品質及び溶着強度の向上が図られることがわかる。
【0031】
<低温落下試験>
燃料タンクC−1について低温落下試験を行った。即ち、燃料タンクC−1のタンク容量を100容量%としたとき、 エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液の量が90容量%となるように、燃料タンクC−1に不凍液を入れた。該不凍液の温度を−40℃±2℃に設定し、該タンクを125cmの高さから自由落下させた。
この結果、燃料タンクC−1に破損又はクラックが生じないことを観察した。このことから、燃料タンクC−1は、低温落下試験についての低温耐衝撃性を有することがわかった。
【0032】
<低温サイドインパクト試験>
燃料タンクC−1についてSAE試験規格に準じて低温サイドインパクト試験を行った。即ち、燃料タンクC−1のタンク容量を100容量%としたとき、エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液の量が100容量%となるように、燃料タンクC−1に不凍液を入れた。該不凍液の温度を−20℃±2℃に設定した。車両への取り付けと同様の状態でタンクC−1を固定して、タンクの指定の場所に、先端直径が90mmである鋼製振り子衝撃体を荷重500N且つ衝撃エネルギーが455N・mとなるように、衝撃を加えた。
この結果、燃料タンクC−1に破損又はクラックが生じず、液漏れも生じなかった。また、タンクC−1の給油口が開放されることもなかった。このことから、燃料タンクC−1は、低温サイドインパクト試験についての低温耐衝撃性を有することがわかった。
【0033】
<燃料透過性測定>
燃料タンクC−1についてEPA法規に準じて、タンクからの初期透過量(g/m/日)の測定を行った。なお、テスト溶液は、トルエン45vol%、イソオクタン45vol%、エタノール10vol%の混合液体を使用した。混合液体を注入した燃料タンクC−1を、43±5℃雰囲気中で10週間予備貯蔵した後、28±2℃雰囲気で燃料透過性を調査した。測定は、2週間行い1日1回重量を電子天秤により測定した。
この結果、EPAの初期透過量は、透過量をタンク内表面積、経過日数で割ったものとして、1.5g/m/日以下であった。
【0034】
<溶着部強度測定>
実施例1とは別に、燃料タンクC−2を作製した。
燃料タンクC−2は、実施例1におけるスピン溶着の代わりに、ブロー成型時のインサート成形を用いて作製したものであった。
燃料タンクC−1及びC−2について、溶着部または接着部の強度を評価した。評価に際して、タンクの溶着部又は接着部の上下左右から幅10mmのテストピースを切り出し、該テストピースをオートグラフにて引張速度10mm/分で最大引張強度の測定をした。その結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1より、スピン溶着により溶着した燃料タンクC−1は、本体部A−1と給油口部A−2との溶着部ではなく母材部(本体部A−1又は給油口部A−2)が破壊されたことから、溶着強度が優れていることがわかる。また、燃料タンクC−1は、要求される安全性、信頼性を満たすことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の溶着によるポリアミド体の製造方法を概説する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドを有するガソリン容器であって、該容器を構成する全物質を100重量%とした場合、該容器中のポリアミド成分が51重量%以上であり、該容器のガソリン透過量が1.5g/m/日以下であり、該容器は、i)低温落下試験により該容器に破損又はクラックが生じない低温耐衝撃性、及びii)サイドインパクト試験により該容器に破損又はクラックが生じず、液漏れが生じない低温耐衝撃性を有し、該i)低温落下試験は、エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液を、該容器の容量を100容量%としたとき、該容器に90容量%入れ、該不凍液の温度を−40℃±2℃に 設定し、該容器を125cmの高さから自由落下させる試験であり、該ii)サイドインパクト試験は、エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液を、該容器の容量を100容量%としたとき、該容器に100容量%入れ、該不凍液の温度を−20℃±2℃に設定し、該容器に対して、先端直径が90mmである鋼製振り子衝撃体を荷重500N且つ衝撃エネルギーが455N・mとなるように、衝撃を加える試験である、上記ガソリン容器。
【請求項2】
前記ガソリン容器がポリアミド製ブロー成形体からなり、該ポリアミド製ブロー成形体を構成する全物質を100重量%とした場合、該容器中のポリアミド成分が51重量%以上である請求項1記載のガソリン容器。
【請求項3】
前記ガソリン容器は、前記ポリアミド製ブロー成形体とポリアミド製部材とを溶着させることにより得られる請求項1又は2記載のガソリン容器。
【請求項4】
前記溶着において、前記ポリアミド製ブロー成形体側の第1の溶着部位に第1の孔を設けるか、及び/又は前記ポリアミド製部材側の第2の 溶着部位に第2の孔を設け、溶着の際に該第1及び/又は第2の孔に前記ポリアミド製ブロー成形体の一部からなる第1の溶融体及び/又は前記ポリアミド製部材の一部からなる第2の溶融体が流入、固化することにより、前記ポリアミド製ブロー成形体と前記ポリアミド製部材との溶着が強化される請求項3記載のガソリン容器。
【請求項5】
前記ポリアミド製ブロー成形体のポリアミド及び前記ポリアミド製部材のポリアミドは、同じであっても異なってもよく、6-ナイロン及び6,6-ナイロンからなる群から選ばれる請求項2〜4のいずれか1項記載のガソリン容器。
【請求項6】
ポリアミド製成形体にポリアミド製部材を溶着させてポリアミド体を得るポリアミド体製造方法であって、
a)前記ポリアミド製成形体を準備する工程;
b)上記a)とは別に前記ポリアミド製部材を準備する工程;
c)前記ポリアミド製成形体と前記ポリアミド製部材とを溶着させる溶着工程であって、前記ポリアミド製成形体側の第1の溶着部位に第1の孔を設けるか、及び/又は前記ポリアミド製部材側の第2の溶着部位に第2の孔を設け、溶着の際に該第1及び/又は第2の孔に前記ポリアミド製成形体の一部からなる第1の溶融体及び/又は前記ポリアミド製部材の一部からなる第2の溶融体が流入、固化することにより、前記ポリアミド製成形体と前記ポリアミド製部材との溶着が 強化される溶着工程;
を有する、上記方法。
【請求項7】
ポリアミド製成形体が、ポリアミド製ブロー成形体である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアミド製成形体のポリアミド及び前記ポリアミド製部材のポリアミドは、同じであっても異なってもよく、6-ナイロン及び6,6-ナイロンからなる群から選ばれる請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記ポリアミド体はガソリン容器であり、該容器を構成する全物質を100重量%とした場合、該容器中のポリアミド成分が51重量%以上であり、且つ該容器のガソリン透過量が1.5g/m/日以下である請求項6〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記ポリアミド体はガソリン容器であり、該容器は、エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液を、該容器の 容量を100容量%としたとき、該容器に90容量%入れ、該不凍液の温度を−40℃±2℃に設定し、該容器を125cmの高さから自由落下させる低温落下試験により、該容器に破損又はクラックが生じない低温耐衝撃性を有する請求項6〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ポリアミド体はガソリン容器であり、該容器は、エチレングリコールの50%水溶液からなる不凍液を、該容器の 容量を100容量%としたとき、該容器に100容量%入れ、該不凍液の温度を−20℃±2℃に設定し、該容器に対して、先端直径が90mmである鋼製振り子衝撃体を荷重500N且つ衝撃エネルギーが455N・mとなるように、衝撃を加えるサイドインパクト試験により、該容器に破損又はクラックが生じず、液漏れが生じない低温耐衝撃性を有する請求項6〜10のいずれか1項記載の方法。


【図1】
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【公開番号】特開2008−254777(P2008−254777A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99568(P2007−99568)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000132932)株式会社タカギセイコー (29)
【Fターム(参考)】