説明

ポリアミド類の製造

ジアミンおよびジカルボン酸などのモノマーを押出機に加え、加熱しつつかつ、揮発性の副生成物を除去しつつ、これらの材料を押出機に通すことにより、ポリアミドモノマーからポリアミドを製造する。本方法は、単純で迅速であり、比較的複雑でないプロセス装置の使用を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリアミド類は、ポリアミドモノマーを押出機に導入し、内容物がポリアミドポリマーとして排出される前に、徐々に押出機内容物を高温まで加熱することによって高分子量に合成することができる。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド類は、繊維および、成形樹脂を含む無数の用途に毎年何千トンも使用されている商業の重要な品目である。これらのポリアミド類の多くは、ジアミンとジカルボン酸またはジエステル(通常はジカルボン酸)との反応を含む「従来の」縮合重合によって生産される。この反応において、ジカルボン酸が用いられる場合、副生成物は通常は水である。水が除去されるにつれて、生産されるポリアミドの分子量は増大する。これらの反応は、回分式および連続オートクレーブ/溶融重合装置などの多種多様な装置において、実施されてきた。生産されるポリアミドの分子量の最終的な調整は、場合により固相重合および/または押出機において実施されてきた。
【0003】
生産されるポリアミドの特性は、使用するモノマーに多分に依存している。このようにポリアミドは、アモルファスポリマー(室温より低い融点)から300℃を上回る融点を有するポリアミド類にまで及んでいる。通常、より高い融点のポリアミド類は、芳香環を含むモノマー単位(ジアミンおよび/またはジカルボン酸で)を有する。この反応によって生産される商業的なポリアミド類としては、1,6−ヘキサンジアミン(HMD)、1,4−ジアミノベンゼンまたは1,3−ジアミノベンゼンなどのジアミン、アジピン酸、テレフタル酸またはイソフタル酸などのジカルボン酸、あるいはそれらの混合物から製造されたナイロン6,6およびいわゆる(部分)芳香族ポリアミド類がある。部分芳香族ポリアミドは、ポリアミドの主鎖に含まれるフェニル環などの芳香環を有する。この種の芳香環は、1,4−ジアミノベンゼンまたは1,3−ジアミノベンゼンなどの単量体ジアミンおよび/またはテレフタル酸またはイソフタル酸などの単量体ジカルボン酸あるいはそれらのジエステルの一部であってもよい。しかしながら、部分芳香族ポリアミドにおいて、アミド基の間に芳香環を有するアミド基が存在する必要があり、アミド基の好ましくは少なくとも約10モルパーセント、より好ましくは少なくとも約20モルパーセントがアミド基の間に芳香環を有する。
【0004】
(すでに高分子の)ポリアミド類の分子量を、特定の条件下でポリアミドを押出機に通すことによって増大させることができることは公知である、たとえば(特許文献1)、(特許文献2)および米国特許公報(特許文献3)を参照されたい。これらの参考文献のいずれも、押出機の中でモノマーから開始する重合を記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第4,329,676号明細書
【特許文献2】特開平5−230204号公報
【特許文献3】米国特許第5,079,307号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.I.クロシュビッツ(J.I.Kroschwitz)ら、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、20巻、ジョンウィリーアンドサンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク(New York)、(1996)、1007〜1059頁
【非特許文献2】M.H.マック(M.H.Mack)、NPE’88、2巻、Conference Papers、131頁以下参照(1988)
【非特許文献3】M.H.マック(M.H.Mack)ら、Annual Technical Conference Society of Plastics Engineers 1987、136〜139頁(1987)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のモノマー組成物:
(a)ジアミン、およびジカルボン酸またはジエステル、
(b)ジアミン、ジカルボン酸もしくはジエステル、およびアミノカルボン酸もしくはアミノカルボン酸エステル、または
(c)アミノカルボン酸またはアミノカルボン酸エステル
のうちの1つを、押出機において高温で撹拌する工程を含む、ポリアミド類の製造方法であって、
但し、前記接触工程中に、水および/またはアルコール副生成物が前記押出機から除去される方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において一定の用語を用い、以下のように定義する。
【0009】
「モノマー組成物」とは本明細書において、ジアミン、ジカルボン酸またはアミノカルボン酸などの1つ以上のモノマー、ジアミンおよびジカルボン酸によって形成される塩であるいわゆるアミン「塩」ならびに平均重合度約3以下の、非常に低分子量のオリゴマーであるか、またはそれに由来する組成物であることを、意味するものとする。重合度を決定するために、1「モノマー」単位は、繰り返し単位に由来するジアミンおよびジカルボン酸、または、単一のアミノカルボン酸を含む。好ましくは、モノマー組成物は、1つまたは複数のモノマーそれ自体、ジアミン、ジカルボン酸、またはアミノカルボン酸および/またはジアミンおよびジカルボン酸によって形成される塩であるいわゆるアミン「塩」である。2つ以上のジアミンおよび/またはジカルボン酸および/またはアミノカルボン酸(またはカルボン酸エステル類)を、重合において使用し、コポリアミドを形成する。
【0010】
ポリアミドとは、繰返し単位の連結基の少なくとも80モルパーセント、より好ましくは、少なくとも約90モルパーセント、特に好ましくは少なくとも約95モルパーセントおよび非常に好ましくは基本的には全てが、アミド基であるポリマーを意味するものとする。存在してもよい他の連結基としては、エステル基、イミド基およびエーテル基がある。
【0011】
一般に本明細書において、モノマーに存在する置換基(特に官能基)は、ポリアミドを形成する反応を妨害すべきではなく、重合プロセスの間に、生成するポリアミドを分解(たとえば熱的に)すべきでもない。
【0012】
押出機とは、たとえば熱可塑性物質の溶融加工または食品の加工のために使用される通常の単軸押出機または2軸押出機の機能に類似している装置を意味する。本明細書において有用な押出機は、通常は以下の特徴のいくつかまたは全てを有するものである。
−それは、改良されたプラグフロー型反応器(管型反応器とも呼ばれることもある)として作用する。プラグフロー型反応器は、当該技術分野で周知であり、たとえば、参照により本明細書に援用される(非特許文献1)を参照されたい。プラグフロー型反応器において、たとえば反応が起こっている一方、成分は一端において管またはパイプに入り、ほとんど逆混合することなく他端へと流れる。一端からその他端まで流れるために必要な時間が、滞留時間である。押出機は、しばしば押出機の長さの範囲内で局部的な逆混合を起こすので、本発明の押出機は通常「改良された」プラグフロー型反応器である。
−それは、押出機の長手方向に1つまたは複数のベントを有し重合反応の間に形成された揮発性の副生成物を除去する。これらのベントは、いかなる圧力であってもよいが、通常は大気圧またはそれよりも低い。
−押出機の長手方向の異なる断面を、異なる温度まで加熱してもよい。
−それは、高い表面/体積比を有しており、この場合の表面は、外側の容器(押出機では通常バレルと呼ばれている)および撹拌器(通常の押出機のスクリューまたはニーダ)の表面積である。
−それは、急速に新しい表面を生成しまたは1種または複数の液体成分の表面を変化させる。このことは、成分は、押出機(バレルおよびスクリュー)の表面との実際の接触において、常に変化していることを意味する。
−それは排出端部に成分を押し通すのに十分な力と構造上の強さを有する。そして、この場合、ポリマーが形成される。
−それは出発成分の少なくとも一部を溶解し、および/またはいくつかの出発成分は溶融し、通常溶融状態で維持される。それが押出機(たとえばポリマーまたはオリゴマーの微粒子を形成するために)を出る前にオリゴマーまたはポリマーを凝固させる(固化させる)ことを要求されない限り、形成されるオリゴマーもポリマーも、押出機を出るまで溶融状態にある。このようにほとんどの場合、溶融重合が、起こっている。
−通常、スクリューまたはニーダなどの撹拌要素は、円運動で回転する。
−通常、押出機の長軸と直角をなす容器(バレル)の横断面は、円である(単軸押出機のように)かまたは、重なり合った円(2軸押出機のように)である。
【0013】
押出機の例(本明細書で使用している)としては、スターリング(Sterling)(登録商標)を含む種々の商標名としてデイビススタンダード社(Davis−Standard,LLC)、米国コネティカット州06379、ポーカタック(Pawcatuck,CT06379 USA)によって供給されているもの、コペリオンUSA(Coperion USA)、米国ニュージャージー州07446、ラムゼー(Ramsey,NJ 07446,USA)が商標名ワーナ−フライデラー(Werner−Pfleiderer)(登録商標)として供給しているもの、およびデイビススタンダード社(Davis−Standard,LLC)製のものなどの単軸押出機や、商標名バス(Buss)(登録商標)としてコペリオンUSA(Coperion USA)によって供給されるようなニーダがある。
【0014】
本明細書において言及されるように、押出機のスクリュー構成は、生産される生成物の分子量および/またはプロセスに必要な時間など、プロセスを制御するために(一部)用いてもよい。この種の変数は、(非特許文献2)および(非特許文献3)で説明されている。
【0015】
モノマーは、好ましくは押出機の後部において、またはその近くで、さまざまな方法で添加することができる。固体モノマーおよび/または液体モノマーは、それぞれ容積(好ましくは液体用)または重量(固体用、ロスインウエイトフィーダを用いるように)によって計量して押出機に供給することができる。または、予め混合した混合物(正しい比率で)を、添加することができる。当該技術分野で周知のように、ジアミンおよびジカルボン酸のモル量は、より高分子量ポリアミドを形成するためにほぼ同等でなければならない。しかしながら、押出機からの揮発によって、これらのうちの1つが選択的に失われる場合、最初にこの成分を過剰に加えることが、望ましい。単純な実験で、過剰の必要性と必要量を決定する。モノマーは、塩(上記参照)の形で加えることもできる。これらの形式のいずれかを使用して、モノマーはニートで、または、溶液で加えることができる、たとえば、塩は多くの例において水溶液として加えることができる。
【0016】
1つまたは複数のモノマーが押出機に入るにつれて、段階的に加熱され、しばしばさらに高温になり、押出機を通過するにつれて、ポリアミドに変換される。熱は、2つの目的を果たすことができる。より高い温度は、反応速度を増大させてポリアミドを形成する。相対的に高い融点を有するか、または、融点を有さず、高いガラス転移温度を有するポリアミド類の場合、より高い温度は、形成されるポリアミドが押出機内部で凝固することを防止する。このように、押出機バレル内のより高い温度が正当な理由のために要求されることが分かる。しかしながら、温度はそれがモノマーまたは生成したポリアミドの劣化を引き起こすほどに、高くすべきではない。この種の組成物の分解温度は周知であるので、あまりに高い温度を避けることは比較的容易である。特にプロセスの初期で、すなわち、モノマーがちょうど押出機に入れられるときに、プロセス材料の分子量は比較的低い、それで、相対的に言えば、高い温度ではいくぶん揮発性でもよい。温度は、この段階では、モノマーおよび/または比較的低分子量のオリゴマーの過剰な量が揮発するほど高くなってはならない。必要な温度および押出機の全体的な望ましい温度プロファイルは、直ちに実験で測定することができる。それは、使用されるモノマーおよび最終的なポリアミド(下記参照)の所望の分子量に従っていくぶん変化する。
【0017】
上記したように、ポリアミドの形成は、副生成物が水および/またはアルコールである縮合重合である。ポリアミドの形成を進行させるために、この副生成物は、反応の間(押出機を通り抜けて)、除去されなければならない。通常、これはベントポートによってなされ、押出機の長手方向にある1つまたは複数の「開口部」が、揮発性物質の流出を可能にする。これらのベントポートを、高い圧力、大気圧、または、大気圧より低い圧力で作動させることができる。通常ベントポートを、大気圧および/または大気圧より低い圧力で作動させ、そして、ベントポートを作動させる圧力が、ポリアミドがどれくらい急速に形成されるのか(圧力が低いほど反応は早い)、そして、どんな分子量が最終製品(下記参照)において達成されるのかについて、ある程度決定する。また、通常、さまざまなベントが操作される圧力が異なる場合、成分が押出機の後部(1種または複数の成分が添加される部位)から押出機の正面(生成物が現れる所)へと進むにつれて、種々のベントの圧力が減少する。いかなる特定のベントの圧力も、圧力が非常に低いために液体成分の相当な量が吹き飛ばされるかまたは、ベントまたはベントラインが泡立ったという状況になってはならない。再度簡単な実験で、有用な圧力を決定する。
【0018】
これらのベントには、ベントおよびベントラインが泡立つことを防止するために装置を備えることができ、ベントラインには、副生成物の水および/またはアルコールを捕集し、および/または処分する凝縮器または他の装置を装備していてもよい。
【0019】
最終的なポリアミドの分子量は、押出機の温度プロファイル、副生成物の除去効率および押出機の滞留時間に依存している。他の全ての因子が同等であるならば、滞留時間が長いほど得られるポリマーの分子量は高くなる。滞留時間は、押出機の長さ(より長いほど、滞留時間は長い)、運搬要素のピッチ(より短いピッチほど、より長くなる)、運搬装置の速度(rpm)(高rpmほど、より短くなる)、および、逆向きの要素または混練ブロックなどの存在(通常、より長くなる)の影響を受ける。
【0020】
蒸気ポートのより低い圧力(「より高真空」)は、通常分子量を増大させる。より高い効果的な表面(成分の)/体積比および/または新表面が形成される割合は、通常分子量を増大させる。ガス掃引も分子量増大のために使用してもよい、すなわち、ガスを押出機の空間に導入して、(通常近くの)ベントを介して除去する。通常、このガスは、窒素などの、不活性なものである。これらの要因の全ては、副生成物を除去する効率に影響を及ぼす。
【0021】
それらを利用できると仮定すると、より高い温度も、形成されるポリアミドの分子量を増大させる。縮合反応のための触媒の存在は、分子量を増大することもできる。しかしながら1つの好ましい形態において、このような(重合)触媒を、故意にプロセスに加えない。
【0022】
有用なジアミンとしては、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,12−ジアミノドデカン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、および1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンがある。有用なジカルボン酸としては、アジピン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸がある。有用なアミノカルボン酸としては、3−アミノ安息香酸および、4−アミノ安息香酸がある。上記ジアミンの1つまたは複数と上記ジカルボン酸(またはそれらのエステル類)の1つまたは複数とを結合させることができ、この組合せは必要に応じて1つまたは複数のアミノカルボン酸と結合させることができる。また、1つまたは複数のアミノカルボン酸も、単独で用いることができる。
【0023】
必要に応じて、非常に高い分子量を有するポリアミド類を、現在の製造方法によって提起される限界なしで調製することは可能である。ここで、より高分子量ポリアミド類の高い溶融粘度のため、重合装置は高い溶融粘度を処理することができない。
【0024】
この過程のための典型的滞留時間は、約30秒〜約5分であり、使用する原料、プロセス条件、装置およびポリアミドの所望の分子量に依存する。
【0025】
ポリアミド組成物に通常見出される他の材料を、プロセスの間に存在させてもよい。これらは、成分と共に、または押出機の下流で加えてもよい。しかしながら、それらが、重合が基本的に完結している押出機の出口の近くで加えられない限りは、これらの他の成分は、実質的に重合プロセスの妨害をしてはならない。これらの他の材料は、従来の(ポリアミド組成物用)量を加えてもよい。これらの材料としては、強化剤、充填材、顔料、酸化防止剤およびその他の安定剤、潤滑剤、可塑剤などの結晶核剤、および難燃剤がある。通常、重合を妨害せずに特に有用な材料としては、カーボンブラック、酸化チタン、ガラス繊維、ガラスフレーク、粉砕されたガラス繊維、炭素繊維、ポリエチレンワックス(潤滑剤としての最小量)、粘土、タルクおよびウォラストナイトがある。重合中に、これらのタイプの成分を添加し分散することによって、ポリアミドが形成された後に、別個の工程を必要とすることなくこれらのタイプの組成物を混合することができる。
【0026】
融点
融点はASTM方法D3418により測定した。融点は、融解吸熱量の極大と見なされる。融点は、10℃/分の加熱速度で、2回目の加熱時に測定される。
【0027】
分子量
溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを使用してゲル透過クロマトグラフィーによって測定した。
実施例において、特定の省略形を使用する。以下のようである。
DSC−示差走査熱分析
Mn−数平均分子量
Mw−重量平均分子量
【実施例】
【0028】
実施例1〜2
固体塩を、ポリアミド化のための出発原料として調製した。1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(20.6g)および20.6gの1,6−ジアミノヘキサンを110gの脱イオン水に溶解した。テレフタル酸(58.8g)を、撹拌しながらゆっくりと添加した。いくらか水を追加し、混合物を加熱して全ての固体を溶解した。溶液を室温まで冷却し、濾過して固体塩を捕集した。固体を、エタノールで洗浄し、乾燥した。合計37.7gを捕集した。塩の他のバッチを、同じ方法を使用して作製した。
【0029】
実施例1については、30gの塩と0.4gの1,6−ジアミノヘキサンとの混合物を作製した。実施例2については、固体塩を、単独で用いた。1,6−ジアミノヘキサンの塩が1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンの塩より溶解しにくいため、単離した固体には予想される50モルパーセントより高い1,6−ジアミノヘキサン含量を含有している。
【0030】
公称L:Dが25:1のプリズムモデル(Prism Model)TSE−16−TC 2軸押出機(プリズムエンジニアリング(Prism Engineering)、スタッフォードシャー(Staffordshire)、W5B 6PW、英国(England))において、重合を実施した。押出機の後部から、供給部が長さ約4.6cmであり、第1混合部が長さ約17.5cmであり、混練部が長さ約5.1cmであり、第2混合部が長さ約5.6cmであり、第2混練部が長さ約4.1cmであり、最終のスクリュー部が長さ約7.4cmである。生成物を、アルミニウム製皿に放出した。押出機のおよその自由内容積は、約10mLであった。第1番目の混合部の下流に混練要素を備え、そのプロセスは2つの大気圧のベントポートを経由して、プロセスからのいかなる揮発性物質をも捕捉するコールドトラップに開口した。押出機のフィードスロートを窒素ガスで覆い、局部排気装置でその区域からその窒素を排気した。押出機放出部は、窒素ガスで覆ったカバー内にあって、局部排気換気装置を備えている。押出機を出た生成物を、皿の水の中に落下させてポリアミドを凝固させた。320〜340℃の範囲のバレル温度で押出機を運転した。スクリューを100rpmで回転し、滞留時間は約1分であった。
【0031】
実施例1は、押出機のフィードスロートに充分に混合した混合物をゆっくり加えることによって開始した。蒸気は、ダイ部と、フィードスロート部とで押出機を出ているのを観察した。ダイ部で押出機を出た粘稠生成物は、若干のガス泡を有していた。実施例1の混合物を押出機に通し分離したあと、実施例2を開始した。実施例2については、新規な捕集皿を用いて、第2の混合物を押出機に加えた。蒸気が、再びフィードスロート部と、ダイ部とで出ているのを観察した。
【0032】
実施例1の生成物は303℃の融点を有し、実施例2の生成物の融点は341℃であった。溶融重合(押出機以外で)によって調製されるこのポリアミドの通常の融点は、約303℃である。実施例1の生成物は、Mn5160でありMw19,900であった。実施例2の生成物は、Mn5480でありMw16,860であった。
【0033】
実施例3
この実施例において、実施例1〜2において使用した押出機に、塩の水溶液を使用して供給した。テレフタル酸(143g)を、磁気撹拌棒の付いた1L瓶に計量し、脱イオン水(400g)を瓶に加えた。スラリーを撹拌し、47.5重量%の1,6−ジアミノヘキサン、47.5重量%の1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンおよび5重量%の水を含有する溶液108gを加えた。混合物を添加の間、加熱し、固体の全てを溶解させた。脱イオン水を50g追加して、ジアミン溶液にすすぎ入れた。溶液を50℃で温めて、全ての固体を溶解した状態に保ち、蠕動ポンプを使用して0.68kg/時で押出機に供給した。全てのバレル温度設定が340℃で、スクリューの回転が55rpmで押出機を、作動させた。生成物の融点は、DSCによる測定で291℃であった。25℃における0.5%m−クレゾール溶液中でのインヘレント粘度は、0.23であった。
【0034】
実施例4
この実施例は、公称モル組成6T/DT[65/35]を有する部分芳香族コポリアミドの調製を例示する(6Tは1,6−ジアミノヘキサンおよびテレフタル酸に由来する繰り返し単位の呼称であり、DTは1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンおよびテレフタル酸に由来する繰り返し単位の呼称である)。塩の35%溶液を、203gのテレフタル酸、650gの脱イオン水、42gの無水1,6−ジアミノヘキサン、並びに47.5重量%の1,6−ジアミノヘキサン、47.5重量%の1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンおよび5重量%の水を含む溶液108gを混合することによって水中に調製した。溶液を、塩形成反応による発熱で加熱し、全ての固体を溶解させた。溶液を、54℃に温めて全ての固体を溶解した状態に保ち蠕動ポンプを使用して押出機(実施例3において記載したように)に供給した。押出機を、温度320〜340℃、供給速度約0.7〜1.4kg/時、スクリュー回転55rpmで作動させた。DSCによって測定した生成物の融点は、320〜330℃の幅の広いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のモノマー組成物:
(a)ジアミン、およびジカルボン酸またはジエステル、
(b)ジアミン、ジカルボン酸またはジエステル、およびアミノカルボン酸またはアミノカルボン酸エステル、
(c)アミノカルボン酸またはアミノカルボン酸エステル、
のうちの1つを、押出機において高温で撹拌する工程を含む、ポリアミド類の製造方法であって、
但し、前記接触工程中に、水および/またはアルコール副生成物が前記押出機から除去されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポリアミドにおいて、少なくとも約95パーセントの連結基がアミド基であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記押出機が単軸押出機、2軸押出機またはニーダであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水および/またはアルコール副生成物がベントポートを通して除去されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ジアミンは、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,12−ジアミノドデカン、1,4−ジアミノベンゼン、および1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンの1つまたは複数を含み、および/または、前記ジカルボン酸またはジエステルは、アジピン酸、テレフタル酸もしくはイソフタル酸またはそれらのジエステルの1つまたは複数を含み、および/または、前記アミノカルボン酸またはアミノカルボン酸エステルは、3−アミノ安息香酸および4−アミノ安息香酸またはそれらのエステルの1つまたは複数を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
滞留時間が約30秒〜約5分であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
強化剤、充填材、顔料、酸化防止剤および/またはその他安定剤、潤滑剤、結晶核剤または難燃剤の1つまたは複数も存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
部分芳香族ポリアミドを製造することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ガスが、前記押出機の少なくとも一部で掃引され、および/または真空が、前記押出機の内容物の少なくとも一部に適用されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−501646(P2010−501646A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518327(P2009−518327)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/015326
【国際公開番号】WO2008/005415
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】