説明

ポリイミド樹脂の表面処理方法及び金属張積層体の製造方法

【課題】簡便な表面処理によりポリイミド樹脂層の接着力を飛躍的に向上させ、ファインピッチ形成に適した低粗度銅箔においても接着力を向上させることができるポリイミド樹脂層の表面処理方法と、高密度のプリント配線板に用いられる銅張積層板の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリイミド樹脂層の表面側の層を、 H2N-CH2-A-CH2-NH2 (式中、Aは2価の有機基を示し、且つAに含有される炭素原子の数は2〜18である)で表される少なくとも2つのアミノ基を官能基として有する有機処理剤で接触処理して表面接触処理層を形成する接触処理工程と、この表面接触処理層を加熱処理して、改質イミド化層を形成する改質イミド化層形成工程とを備えたポリイミド樹脂層の表面処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂の表面改質方法及び表面改質されたポリイミド樹脂層の上に金属層が積層する金属張積層体の製造方法に関する。より詳しくは、プリント配線基板に適したポリイミド樹脂層の表面処理方法及び金属張積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の電子回路には、絶縁材と導電材からなる積層板を回路加工したプリント配線板が使用されている。プリント配線板は、絶縁基板の表面(及び内部)に電気設計に基づく導体パターンを、導電性材料で形成固着したものであり、絶縁樹脂の種類によって、板状のリジットプリント配線板と、柔軟性に富んだフレキシブルプリント配線板とに大別される。フレキシブルプリント配線板は、常時屈曲を繰り返すような可動部では接続用必需部品となっている。また、フレキシブルプリント配線板は、電子機器内で折り曲げた状態で収納することも可能であるために、省スペース配線材料としても用いられる。フレキシブルプリント配線板の材料となるフレキシブル基板には、絶縁樹脂にはポリイミドエステルやポリイミド樹脂が多く用いられているが、使用量としては耐熱性のあるポリイミド樹脂が圧倒的に多い。一方、導電材には導電性の点から一般に銅箔が用いられている。
【0003】
フレキシブル基板には、ベースフィルム層(絶縁樹脂層の主層)、接着剤層、銅箔層の3層で構成される積層板と、接着剤を使用せずに、ベースフィルム層、銅箔層の2層で構成される積層板がある。2層フレキシブル基板は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの耐熱性の低い接着剤層を含まないので、信頼性が高く、回路全体の薄膜化が可能でありその使用量が増加している。一方、別の観点からすると、フレキシブル基板のベースフィルム層は、熱膨張係数が低いことがカールの発生を防止するために望まれているが、熱膨張係数が低いポリイミド樹脂は接着性が劣るため、接着剤を使用せずに全部をポリイミド樹脂とする場合は、良接着性のポリイミド樹脂層を接着面側に接着性付与層として設けることが必要であった。また、両面に銅箔層を有するフレキシブル基板も知られており、片面に銅箔層を有する片面フレキシブル基板を製造したのち、2枚のフレキシブル基板を重ね合わせて積層する方法又は片面フレキシブル基板に銅箔を重ね合わせて積層する方法などが知られている。この場合も、接着剤層を含まないフレキシブル基板が望まれている。
【0004】
近年、電子機器における高性能化、高機能化の要求が高まっており、それに伴って電子デバイスに使用される回路基板材料であるプリント配線板の高密度化が望まれている。プリント配線板を高密度化するためには、回路配線の幅と間隔を小さくする、すなわちファインピッチ化する必要がある。プリント配線板をファインピッチ化するためには、表面粗度の低い銅箔を使用することが望まれてきた。しかしながら、表面粗度の低い銅箔は、アンカー効果、すなわち絶縁樹脂層の銅箔表面の凸凹への食い込みが小さいため、機械的な接着強度が得られず、そのため絶縁樹脂に対する接着力が低くなるという問題があった。そこで、表面粗度の低い銅箔と絶縁樹脂との接着力を高めることが課題となっている。
【0005】
ベースフィルム層はカールの発生防止のため、熱膨張係数の低いポリイミド樹脂層であることが望まれるが、低熱膨張性と接着性との間には相反する関係がある。そこで、接着強度を向上させるため、従来、様々なポリイミドフィルムの表面改質技術が報告されている。その一例として、プラズマ処理による表面改質方法が挙げられる。例えば、特開平5−222219号公報(特許文献1)、特開平8−12779号公報(特許文献2)、特開平11−209488号公報(特許文献3)、特開2004−51712号公報(特許文献4)、特開2006−7518号公報(特許文献5)などで具体例が開示されている。しかしながら、これらの従来技術では、表面粗度の低い銅箔とポリイミド樹脂層との接着力は満足しうるものではないというのが現状である。
【0006】
また、コスト面で有利な湿式エッチングによる表面改質方法も注目されつつあるが、一般に、プラズマ処理のような乾式エッチングによる表面改質方法に比べて接着性向上効果が十分ではないため、この点の更なる改良が必要とされていた。このような湿式エッチングによる表面改質方法としては、例えば、特開平11−49880号公報(特許文献6)が挙げられる。特許文献6によれば、脂肪族第一級アミンを含む極性溶媒中で処理したポリイミドと金属との間にポリイミド接着剤を介して熱圧着する方法が開示されている。しかしながら、この方法は、ポリイミド接着剤層を設ける必要があり、絶縁樹脂層が厚くなるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平5−222219号公報
【特許文献2】特開平8−12779号公報
【特許文献3】特開平11−209488号公報
【特許文献4】特開2004−51712号公報
【特許文献5】特開2006−7518号公報
【特許文献6】特開平11−49880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリイミド樹脂層の表面を改質して接着性を向上させることを目的とする。また、ベースフィルム層として適する低熱膨張性のポリイミド樹脂層の表面を改質して接着性を向上させ、接着性付与層となる接着性ポリイミド樹脂層又は接着剤層の省略を可能とすることを目的とする。他の目的は、極薄の接着層を有する金属張積層板の製造方法を提供すると共に、プリント基板のファインピッチ化にも応える十分な接着強度を有する金属張積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明者等が検討を行ったところ、ポリイミド樹脂層の表面を特定の処理により改質すると、ポリイミド樹脂層の厚みも殆ど変化させることもなく、金属箔との接着強度も高い、改良されたポリイミド樹脂層が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリイミド樹脂層の表面側の層を下記式(1)
H2N-CH2-A-CH2-NH2 (1)
(ここで、Aは2価の有機基を示し、且つAに含有される炭素原子の数は2〜18である。)
で表される少なくとも2つのアミノ基を官能基として有する有機処理剤で接触処理して表面接触処理層を形成する接触処理工程と、該表面接触処理層を加熱処理して、改質イミド化層を形成する改質イミド化層形成工程とを備えたことを特徴とするポリイミド樹脂層の表面処理方法である。
【0011】
上記製造方法において、接触処理工程の前に、プラズマ処理してプラズマ処理層面を形成するプラズマ処理工程を備えると改質効果が向上する。
【0012】
また、本発明は、上記のいずれかの方法で得られる改質イミド化層を有するポリイミド樹脂層の表面に金属箔を重ね合わせ、熱圧着する圧着工程を備えたことを特徴とする金属張積層体の製造方法である。
【0013】
ここで、金属箔が、銅箔、銅合金又はステンレス箔であること、又は、金属箔と改質イミド化層がシランカップリング剤処理層を介して熱圧着することのいずれか1以上を満足することはより優れた金属張積層体を与える。
【0014】
更にまた、本発明は、上記のいずれかの方法で得られる改質イミド化層を有するポリイミド樹脂層の表面に、直接又は下地金属薄膜層を介して銅を蒸着させることにより銅薄膜層を形成する銅薄膜形成工程を備えたことを特徴とする金属張積層体の製造方法である。
【0015】
以下、本発明のポリイミド樹脂層の表面処理方法について説明し、次に本発明の金属張積層体の製造方法について説明をするが、共通部分は同時に説明する。なお、本発明でいう「ポリイミド樹脂層」とは、「ポリイミド樹脂フィルムからなる層」及び「ポリイミド樹脂層を有する積層体のポリイミド樹脂層」の両方を含む意味を有する。したがって、ポリイミド樹脂層は、積層体のポリイミド樹脂層である場合と、ポリイミド樹脂フィルムである場合とがある。
【0016】
本発明で用いられるポリイミド樹脂層は特に限定されるものではなく、ポリイミド樹脂からなるフィルム(又はシート)であってもよく、銅箔、ガラス板、樹脂フィルム等の基材に積層された状態のポリイミド樹脂層であってもよい。しかし、ポリイミド樹脂層の少なくとも片面は表面層として存在する。表面層の両方がポリイミド樹脂層である場合は、その一方又は両方の面を処理することができる。本発明で得られる表面処理されたポリイミド樹脂層は、ポリイミド樹脂層として、当初のポリイミド樹脂層(未改質のポリイミド樹脂層)と改質イミド化層の少なくとも2層を有する。なお、基材に積層されたポリイミド樹脂層の場合、基材とはポリイミド樹脂層が積層される樹脂シート又は金属箔等の材料をいう。
【0017】
ポリイミド樹脂層を形成するポリイミド樹脂としては、いわゆるポリイミド樹脂を含めて、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミドエステル、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド等の構造中にイミド基を有する耐熱性樹脂をいう。また、市販のポリイミド樹脂又はポリイミド樹脂フィルムも利用可能である。
【0018】
ポリイミド樹脂層の中でも、低接着性であって低熱膨張性のポリイミド樹脂層に対し、本発明の方法は好適である。具体的には、熱線膨張係数が1×10-6 〜30×10-6(1/K)、好ましくは1×10-6〜25×10-6(1/K)、より好ましくは15×10-6 〜25×10-6(1/K)である低熱膨張性のポリイミド樹脂層に適用すると大きな効果が得られる。しかし、上記熱線膨張係数を超えるポリイミド樹脂層にも適用可能である。
【0019】
ポリイミド樹脂層を構成するポリイミド樹脂としては、一般式(2)で現される構造単位を有するポリイミド樹脂が好ましい。一般式(2)において、Ar1は式(3)又は式(4)で表される4価の芳香族基を示し、Ar3は式(5)又は式(6)で表される2価の芳香族基を示し、R1は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、X及びYは独立に単結合又は炭素数1〜15の2価の炭化水素基、O、S、CO、SO2若しくはCONHから選ばれる2価の基を示し、nは独立に0〜4の整数を示す。qは構成単位の存在モル比を示し、0.1〜1.0、好ましくは0.5〜1.0の範囲である。
【0020】
【化1】

【0021】
上記構造単位は、単独重合体中に存在しても、共重合体の構造単位として存在してもよい。構造単位を複数有する共重合体である場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在してもよい。このような構造単位を有するポリイミド樹脂の中で、好適に利用できるポリイミド樹脂は非熱可塑性のポリイミド樹脂である。
【0022】
ポリイミド樹脂は、一般に、ジアミンと酸無水物とを反応させて製造されるので、ジアミンと酸無水物を説明することにより、ポリイミド樹脂の具体例が理解される。上記一般式(2)において、Ar3はジアミンの残基ということができ、Ar1は酸無水物の残基ということができるので、好ましいポリイミド樹脂をジアミンと酸無水物により説明する。しかし、これらの組合せによって得られるポリイミド樹脂に限定されない。
【0023】
ジアミンとしては、例えば、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジヒドロキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノベンズアニリド等が好ましく挙げられる。
【0024】
その他、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(4-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4''-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等を挙げることができる。
【0025】
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸無水物が好ましく挙げられる。
【0026】
その他、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等が好ましく挙げられる。また、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等を挙げることもできる。
【0027】
ジアミン、酸無水物はそれぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。また、上記以外のジアミン及び酸無水物を併用することもでき、この場合、上記以外のジアミン又は酸無水物の使用割合は90モル%以下、好ましくは50モル%以下とすることがよい。ジアミン及び酸無水物の種類や、2種以上のジアミン又は酸無水物を使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、ガラス転移点(Tg)等を制御することができる。
【0028】
ポリイミド樹脂層を製造する方法は特に限定されないが、例えば、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸の樹脂溶液を基材上に塗布した後に乾燥、イミド化して基材上にポリイミド樹脂層を形成せしめる方法がある。ポリアミック酸の樹脂溶液を基材上に塗布する方法としては特に制限されず、コンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
【0029】
また、乾燥、イミド化の方法も特に制限されず、例えば、80〜400℃の温度条件で1〜60分間加熱するといった熱処理が好適に採用される。このような熱処理を行うことで、ポリアミック酸の脱水閉環が進行するため、基材上にポリイミド樹脂層を形成させることができる。基材上にポリイミド樹脂層を形成させたポリイミド樹脂層はそのまま積層体として使用してもよく、剥がすなどしてフィルムとして使用してもよい。
【0030】
ポリイミド樹脂層は、単層のみから形成されるものでも複数層からなるものでもよい。ポリイミド樹脂層を複数層とする場合、異なる構成成分からなるポリイミド樹脂層の上に他のポリイミド樹脂を順次塗布して形成することができる。ポリイミド樹脂層が3層以上からなる場合、同一の構成のポリイミド樹脂を2回以上使用してもよい。層構造が最も簡単である単層は、工業的に有利に得ることができる。また、ポリイミド樹脂層の厚みは、3〜100μm、好ましくは3〜50μmの範囲にあることがよい。
【0031】
本発明のポリイミド樹脂層の表面処理方法では、接触処理工程及び改質イミド化層形成工程を備える。
【0032】
接触処理工程において、ポリイミド樹脂層の表面側の層を上記式(1)で表される少なくとも2つのアミノ基を官能基として有する有機処理剤(以下、アミノ化合物ともいう。)で処理して改質処理層を形成する。上記式(1)において、Aは2価の有機基を示し、且つAに含有される炭素原子の数は2〜18、好ましくは2〜11、より好ましくは4〜10である。Aは炭素原子と水素原子のみで構成される2価の有機基でもよく、あるいは窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はケイ素原子を含有する2価の有機基でもよい。本発明で使用する有機処理剤は末端メチレン基に結合するアミノ基を少なくとも2つ有する。シクロ環や芳香族環を形成する炭素に結合するアミノ基を有するが、末端メチレン基に結合するアミノ基を少なくとも2つ有しない化合物等では本発明の効果を奏しないか、少ない。
【0033】
Aが炭素原子と水素原子のみで構成される2価の有機基である場合、2価の有機基は、直鎖、枝分れ若しくはシクロ環を含むアルキレン基又はフェニレン基であることがよい。このような2価の有機基を有するアミノ化合物の具体例としては、例えば、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン等のジアミノアルカン類、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等のキシリレンジアミン類が挙げられる。
【0034】
Aが窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はケイ素原子を含有する2価の有機基である場合、このような2価の有機基を有する上記アミノ化合物の具体例を挙げれば、トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、ジエチレントリアミン、N−メチル−2,2’−ジアミノジエチルアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン等の窒素原子を含有するアミン類、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]−ウンデカン等の酸素原子を含有するアミン類、2,2’−チオビス(エチルアミン)等の硫黄原子を有するアミン類、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン等のケイ素原子を含有するアミン類がある。
【0035】
上記式(1)で表されるアミノ化合物のなかでも、Aが炭素原子と水素原子のみで構成される2価の炭化水素基又は窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を含有する2価の有機基であることが好ましい。これらの2価の基のなかでも、2価の炭化水素基、窒素原子を含有する2価の有機基、酸素原子を含有する2価の有機基、次いで硫黄原子を含有する2価の有機基の順に好ましい。そして、2価の炭化水素基のなかでも、ベンゼン環を含有する2価の有機基がよく、ベンゼン環を含有するアミノ化合物は金属箔との接着強度を向上する効果を得やすい。
【0036】
上記のアミノ化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用することもできる。また、上記式(1)で表されるアミノ化合物以外の他のアミノ化合物を併用することもでき、この場合、上記他のアミノ化合物は90モル%以下、好ましくは50モル%以下、より好ましくは20モル%以下とすることがよい。
【0037】
有機処理剤は、常温で液体又は固体であることが好ましく、その沸点は100℃以上、有利には150℃以上であることが好ましい。しかし、300〜400℃以上の温度では蒸気圧を有するか、分解して蒸発することがよい。固体である場合は、溶媒に溶解する必要がある。
【0038】
有機処理剤は、10〜40℃付近の常温で液体であれば、そのまま使用することも可能であるが、形成する改質処理層の厚みが均一でなくなる傾向や、有機処理剤が改質処理層上に層状に付着する量が多くなる傾向にあるので、溶媒で希釈した溶液として使用することが好ましい。溶媒としては、有機処理剤と混合するもの又は溶解するものであれば特に限定されないが、極性溶媒を使用することが有利である。極性溶媒としては、例えば、水又はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、若しくはアセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、あるいはN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の3級アミン類、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、好ましくはN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドがよい。これら1種又は2種以上併用して使用することができ、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の一部使用も可能である。溶媒の沸点は有機処理剤より低いこと、好ましくは200℃以下であることがよい。
【0039】
有機処理剤を含む溶液の濃度は、0.0001〜5M(0.0001〜5モル/L)好ましくは0.001〜2M、より好ましくは0.01〜1Mの濃度の溶液を使用することが適当である。
【0040】
有機処理剤で処理する方法は、ポリイミド樹脂層の表面側の層に有機処理剤又は有機処理剤の溶液が接することができる方法であれば、特に限定されず、公知の方法を利用することができるが、均一に接触させることが好ましい。例えば、浸漬法、スプレー法、刷毛塗りあるいは印刷法等を用いることができる。温度は0〜100℃、好ましくは10〜40℃の常温でよい。有利には、有機処理剤の溶液を10〜100μm程度の一定厚みに塗布することである。
【0041】
ポリイミド樹脂層の表面側の層に有機処理剤又は有機処理剤溶液を接触させて表面接触処理層を形成する接触処理工程を行う。この接触処理工程では有機処理剤又は有機処理剤溶液がポリイミド樹脂層の表面層の内部に含浸して表面接触処理層が形成される。表面接触処理層の厚みは、接触時間や温度によって調整することができるが、ポリイミド樹脂層厚みの1/100〜1/10程度が好ましく、別の観点からは0.1〜5μmの範囲が好ましい。
【0042】
次に、この表面接触処理層を加熱処理する。加熱処理は、有機処理剤とポリイミド樹脂との間に少なくとも一部の反応を生じさせてアミド基を生じさせること、そして、このアミド基がイミド化する温度に所定時間保持することにより行われる。有機処理剤の溶液を用いて接触処理工程を行う場合は、加熱処理工程の前段でこれを乾燥することが好ましい。
【0043】
アミド基を生じさせるための加熱処理の条件は、温度100〜200℃で1〜60分、好ましくは120℃〜180℃で2〜20分がよい。イミド化するための加熱処理の条件は、温度130〜420℃で1〜300分、好ましくは180〜380℃で3〜30分がよい。加熱処理においては、段階的に温度を上げて行うバッチ式でもよいし、連続的に温度を上げて行う連続硬化式でもよく、その方法は限定されない。また、アミド基を生じさせるための加熱処理及びイミド化するための加熱処理は連続的又は同時に行われてもよい。
【0044】
100〜200℃の温度では、有機処理剤のアミノ基がポリイミド樹脂層に(特に、表面に)存在するイミド基に求核置換反応して、アミド基を生じるアミド反応が主として生じると考えられる。その際、乾燥及び過剰の有機処理剤の一部が蒸発することが並列的に行われてもよい。更に、130℃以上の温度ではアミド基の一部がイミド基となるイミド化反応が並列的に生じてもよい。このイミド化反応は、通常300〜420℃で終了する。なお、未反応の有機処理剤があればその一部はアミド反応及びイミド化反応に関与し、一部は蒸発する。したがって、この加熱処理によってポリイミド樹脂の表層部がアミド化されることにより低分子量化し、その後、それをイミドする結果、ポリイミド樹脂層の接着性が向上すると考えられる。
【0045】
イミド化する際、上記のように加熱によるイミド化又は触媒を利用した化学的イミド化のうちどちらも可能であり、限定されないが、上記加熱によるイミド化が不十分である場合には、触媒による化学的イミド化を併用してもよい。
【0046】
本発明のポリイミド樹脂層の表面処理方法では、改質処理工程の前にプラズマ処理工程を備えてもよい。このプラズマ処理によるプラズマ処理層面を形成することによって、ポリイミド樹脂層の表面側の層を粗化させるか、又は表面側の層の化学構造を変化させることができる。これによって、該表面側の層の濡れ性が向上し、有機処理剤との親和性が高まるものと考えられる。このプラズマ処理が特に有利となる有機処理剤は、10〜40℃の常温で固体の態様を示すアミノ化合物(例えば、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等)が挙げられ、プラズマ処理工程を備えることで、改質イミド化層面を均一に形成することができる。
【0047】
プラズマとしては、例えば大気圧方式のプラズマ処理装置を用い、真空処理室内でアルゴン、ヘリウム、窒素又はこれらの混合ガスのプラズマを生成させる。この際の処理圧力は5,000〜200,000Paの範囲内、処理温度は10〜40℃の範囲内、高周波(あるいはマイクロ波)出力は50〜400Wの範囲内とすることが好ましい。
【0048】
本発明の金属張積層体の製造方法は、上記のいずれかの方法によって表面処理された改質イミド化層を有するポリイミド樹脂層を用意し、ポリイミド樹脂層の表面の改質イミド化層上に金属箔を重ね合わせ、熱圧着する圧着工程を備える。
【0049】
熱圧着する方法は特に制限されず、適宜公知の方法を採用することができる。金属箔を張り合わせる方法としては、通常のハイドロプレス、真空タイプのハイドロプレス、オートクレーブ加圧式真空プレス、連続式熱ラミネータ等を挙げることができる。金属箔を張り合わせる方法の中でも、十分なプレス圧力が得られ、残存揮発分の除去も容易に行え、更に金属箔の酸化を防止することができるという観点から真空ハイドロプレス、連続式熱ラミネータを用いることが好ましい。
【0050】
また、熱圧着は、150〜450℃の範囲内に加熱しながら金属箔をプレスすることが好ましい。より好ましくは150〜400℃の範囲内である。更に、好ましくは150〜380℃の範囲内である。別の観点からはポリイミド樹脂層又は改質イミド化層のガラス転移温度以上の温度であることがよい。また、プレス圧力については、使用するプレス機の種類にもよるが、通常、1〜50MPa程度が適当である。
【0051】
金属箔としては、銅箔、銅合金箔又はステンレス箔が適する。金属箔が銅箔である例としては、フレキシブル基板用途に用いる場合が挙げられる。
【0052】
この用途に用いられる場合の銅箔の好ましい厚みは3〜50μmの範囲であり、より好ましくは5〜30μmの範囲であるが、ファインピッチの要求される用途で用いられる銅張積層板には、薄い銅箔(銅を主成分とする銅合金箔を含む)が好適に用いられ、この場合、5〜20μmの範囲が適している。また、本発明の製造方法では表面粗度が小さい銅箔を用いても樹脂層に対する優れた接着性が得られることから、特に、表面粗度が小さい銅箔を用いる場合に適している。好ましい銅箔の表面粗度は、十点平均粗さで0.1〜3μmの範囲が適している。特に、ファインピッチの要求される用途で用いられる銅箔については、表面粗度は十点平均粗さで0.1〜1.0μmが適している。
【0053】
金属箔がステンレス箔である例としては、ハードディスクドライブに搭載されているサスペンション(以下、HDDサスペンション)用途に用いる場合が挙げられる。この用途として用いられる場合のステンレス箔の好ましい厚みは10〜100μmの範囲がよく、より好ましくは15〜70μmの範囲がよく、更に好ましくは15〜50μmの範囲がよい。
【0054】
金属箔は、改質イミド化層と接する面にシランカップリング剤処理が施されていてもよい。シランカップリング剤は、アミノ基又はメルカプト基等の官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、より好ましくはアミノ基を有するシランカップリング剤である。具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。この中でも、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランから選択される少なくとも1種であることがよい。特に、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び3−アミノプロピルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0055】
シランカップリング剤は極性溶媒の溶液として使用する。極性溶媒としては、水又は水を含有する極性有機溶媒が適する。極性有機溶媒としては、水との親和性を有する極性の液体であれば、特に限定されない。このような極性有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。シランカップリング剤溶液は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%、より好ましくは0.5〜1.0重量%濃度の溶液がよい。
【0056】
シランカップリング剤処理は、シランカップリング剤を含む極性溶媒の溶液が接触する方法であれば、特に限定されず、公知の方法を利用することができる。例えば、浸漬法、スプレー法、刷毛塗りあるいは印刷法等を用いることができる。温度は0〜100℃、好ましくは10〜40℃付近の常温でよい。また、浸漬時間は、浸漬法を適用する場合、10秒〜1時間、好ましくは30秒〜15分間処理することが有効である。処理後、乾燥する。乾燥方法は、特に限定されず、自然乾燥、エアガンによる吹きつけ乾燥、あるいはオーブンによる乾燥等を用いることができる。乾燥条件は、極性溶媒の種類にもよるが、10〜150℃で5秒〜60分間、好ましくは25〜150℃で10秒〜30分間、更に好ましくは30〜120℃で1分〜10分間である。
【0057】
本発明の金属張積層体の製造方法によって得られる積層体は、ポリイミド樹脂層の片面又は両面に金属箔を有する積層体である。片面に金属箔を有する積層体は、本発明のポリイミド樹脂層の表面処理方法によって得られた改質イミド化層の表面に金属箔を積層することにより得られる。表面処理ポリイミド樹脂層がガラス、樹脂フィルム等の基材に積層されている場合は、金属箔を積層する前又は積層した後に基材を剥離することがよい。基材が銅箔等の金属箔である場合は、このポリイミド樹脂層側に金属箔を積層することにより両面金属張積層体とすることができる。また、両面に金属箔を有する金属張積層体は、上記の方法の他、ポリイミドフィルムの両面に改質イミド化層を形成した後、この両面に金属箔を積層することにより得られる。更に、片面に金属箔を有する片面金属張積層体を製造したのち、少なくとも1枚の片面金属張積層体についてポリイミド樹脂層の表面側の層に上記の改質イミド化層を形成したのち、2枚の片面金属張積層体のポリイミド層を重ね合わせて熱圧着する方法によっても製造できる。
【0058】
本発明の金属張積層体の第二の製造方法は、上記表面処理方法により処理された改質イミド化層を有するポリイミド樹脂層を用意し、改質イミド化層の表面に直接又は下地金属薄膜層を介して銅を蒸着させることにより銅薄膜層を形成する銅薄膜形成工程を備える。
【0059】
この銅薄膜層の形成は、銅を蒸着することにより形成するが、この際、接着性をより向上させる下地金属薄膜層を改質イミド化層に設け、その上に銅薄膜層を設けてもよい。下地金属薄膜層としては、ニッケル、クロムやこれらの合金層がある。下地金属薄膜層を設ける場合、その厚みは銅薄膜層厚みの1/2以下、好ましくは1/5以下で、1〜50nm程度の厚みとすることがよい。この下地金属薄膜層も蒸着法により形成することが好ましい。
【0060】
銅薄膜層を形成するための蒸着法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法等を使用でき、特に、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法による銅薄膜層の形成条件については、例えば、アルゴンガスをスパッタガスとして使用し、圧力は好ましくは1×10-2〜1Pa、より好ましくは5×10-2〜5×10-1Paであり、スパッタ電力密度は、好ましくは1〜100Wcm-2、より好ましくは1〜50Wcm-2の条件で行う方法がよい。
【0061】
用いられる銅は一部に他の金属を含有する合金銅でも良い。蒸着により形成させる銅又は銅合金は好ましくは銅含有率が90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上のものである。銅が含有し得る金属としては、クロム、ジルコニウム、ニッケル、シリコン、亜鉛、ベリリウム等を挙げることができる。また、これらの金属が2種類以上含有される銅合金薄膜であってもよい。
【0062】
銅薄膜形成工程において形成される銅薄膜層の厚みは、0.001〜1.0μmの範囲であることがよく、好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.05〜0.5μm、更に好ましくは0.1〜0.5μmである。銅薄膜層を更に厚くする場合には、無電解めっき又は電解めっきによって、厚膜にしてもよい。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、簡便な表面処理によりポリイミド樹脂層の接着力を飛躍的に向上させることができる。ファインピッチ形成に適した低粗度銅箔においても接着力を向上させることができるため、低コストで、高密度のプリント配線板に用いられる銅張積層板の製造が可能となり、また、HDDサスペンション用途にも利用可能であるため、その工業的価値は高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種評価は下記によるものである。
【0065】
[接着強度の測定]
接着強度の測定は、得られた金属張積層体についてプレス機を用いて幅1mmの短冊状に切断し、室温で90°、1mmピール強度を、テンシロンテスター(東洋精機製作所社製)を用いて測定した。
【0066】
[線熱膨張係数の測定]
線熱膨張係数の測定は、サーモメカニカルアナライザー(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて255℃まで20℃/分の速度で昇温し、その温度で10分間保持した後、更に5℃/分の一定速度で冷却した。冷却時の240℃から100℃までの平均熱膨張係数を算出し、これを線熱膨張係数とした。
【0067】
次に、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。本発明はこれに限定されないことはもちろんである。
【0068】
作製例1
500mLのセパラブルフラスコの中において、撹拌しながら20.7gの4,4'-ジアミノ−2'−メトキシベンズアニリド(0.08モル)を343gのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させた。次に、その溶液を窒素気流中で28.5gの無水ピロメリット酸(0.13モル)及び10.3gの4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(0.05モル)を加えた。その後、約3時間撹拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミック酸溶液Aを得た。この得られたポリアミック酸溶液Aを基板上に塗布し、130℃で5分間乾燥し、その後、15分かけて360℃まで昇温させてイミド化を完了させ、基板を除去してポリイミドフィルムAを得た。得られたポリイミドフィルムAの熱線膨張係数を測定したところ、23×10-6/Kであった。なお、ポリイミドフィルムAの厚みは10μmであった。
【0069】
作製例2
作製例1で得られたポリイミドフィルムAをアルゴンガス7L/min、ヘリウムガス3L/min及び窒素ガス0.3L/minの混合気体が注入されている部屋に通し、常圧下で、印加圧力が3.2kV、出力200Wの電力を入力してプラズマ放電させ、30秒間、ポリイミドフィルムAの樹脂層側をプラズマ処理し、ポリイミドフィルムBを得た。
【0070】
作製例3
5gの3-アミノプロピルトリメトキシシラン、500gのメタノール及び2.5gの水を混合し、2時間撹拌することで、シランカップリング剤溶液を調製した。予め水洗したステンレス箔1(新日本製鐵株式会社製 SUS304 H−TA、厚み20μm、樹脂層側の表面粗度:十点平均粗さRz0.8μm)をシランカップリング剤溶液(液温約20℃)へ30秒間浸漬した後、一旦大気中に引き上げ、余分な液を落とした。次いで圧縮空気を約15秒間吹き付けて乾燥した。その後、110℃で30分間加熱処理を行い、シランカップリング剤処理のステンレス箔3を得た。
【0071】
作製例4
5gの3−アミノプロピルトリメトキシシラン、500gのメタノール及び2.5gの水を混合し、2時間撹拌することで、シランカップリング剤溶液を調整した。予め水洗した銅箔1(厚み18μm、樹脂層側の表面粗度:十点平均粗さRz0.8μm)をシランカップリング剤溶液(液温約20℃)へ30秒間浸漬した後、一旦大気中に引き上げ、余分な液を落とした。次いで圧縮空気を約15秒間吹き付けて乾燥した。その後、110℃で30分間加熱処理を行い、シランカップリング剤処理の銅箔4を得た。
【実施例1】
【0072】
10mLのN,N−ジメチルアセトアミドに1.36gのメタキシリレンジアミン(10mmol)を溶解した有機処理剤の溶液を作製した。この溶液を作製例2で得られたポリイミドフィルムBの上に50μmの厚みで塗布し、130℃で2分間加熱し、160℃まで昇温して乾燥した後、15分かけて360℃まで昇温させてイミド化を完了し、改質イミド化層を有するポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの改質イミド化層の表面にステンレス箔1を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機で、370℃、20MPa、1分の条件でプレスを行い、金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムとステンレス箔の接着強度は、0.6kN/mであった。
【実施例2】
【0073】
ステンレス箔1の代わりに、作製例3で得られたステンレス箔3を使用した以外は、実施例1と同様にして、金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムとステンレス箔の接着強度は、0.9kN/mであった。
【実施例3】
【0074】
ステンレス箔1の代わりに、銅箔2(三井金属製NS-VLP箔、銅箔厚み9μm、樹脂層側の表面粗度:0.8μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムと銅箔の接着強度は、0.9kN/mであった。
【実施例4】
【0075】
ステンレス箔1の代わりに、作製例4で得られた銅箔4を使用した以外は、実施例1と同様にして、金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムと銅箔の接着強度は、1.1kN/mであった。
【実施例5】
【0076】
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、パラキシリレンジアミン1.36g(10mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして、改質イミド化層を有するポリイミドフィルムを得て、次いで、金属張積層体を作製した。接着強度は、0.6kN/mであった。
【実施例6】
【0077】
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、パラキシリレンジアミン1.36g(10mmol)を使用し、並びにステンレス箔1の代わりに、作製例3で得られたステンレス箔3を使用した以外は、実施例1と同様にして、改質イミド化層を有するポリイミドフィルムを得て、次いで、金属張積層体を作製した。接着強度は、0.8kN/mであった。
【実施例7】
【0078】
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、トリス(2−アミノエチル)アミン1.46g(10mmol)を使用し、並びにポリイミドフィルムBの代わりに、作製例1で得られたポリイミドフィルムAを使用した以外は、実施例1と同様にして、改質イミド化層を有するポリイミドフィルムを得て、次いで、金属張積層体を作製した。接着強度は、0.5kN/mであった。
【実施例8】
【0079】
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、トリス(2−アミノエチル)アミン1.46g(10mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして、改質イミド化層を有するポリイミドフィルムを得て、次いで、金属張積層体を作製した。接着強度は、0.5kN/mであった。
【実施例9】
【0080】
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、トリス(2−アミノエチル)アミン1.46g(10mmol)を使用し、並びにステンレス箔1の代わりに、作製例3で得られたステンレス箔3を使用した以外は、実施例1と同様にして、改質イミド化層を有するポリイミドフィルムを得て、次いで、金属張積層体を作製した。接着強度は、0.6kN/mであった。
【実施例10】
【0081】
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、トリス(2−アミノエチル)アミン1.46g(10mmol)を使用し、ポリイミドフィルムBの代わりに、作製例1で得られたポリイミドフィルムAを使用し、並びにステンレス箔1の代わりに、ステンレス箔3を使用した以外は、実施例1と同様にして、改質イミド化層を有するポリイミドフィルムを得て、次いで、金属張積層体を作製した。接着強度は、0.6kN/mであった。
【実施例11】
【0082】
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン1.46g(10mmol)を使用し、ポリイミドフィルムBの代わりに、作製例1で得られたポリイミドフィルムAを使用し、並びにステンレス箔1の代わりに、ステンレス箔3を使用した以外は、実施例1と同様にして、改質イミド化層を有するポリイミドフィルムを得て、次いで、金属張積層体を作製した。接着強度は、0.6kN/mであった。
【実施例12】
【0083】
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルシロキサン2.48g(10mmol)を使用し、ポリイミドフィルムBの代わりに、作製例1で得られたポリイミドフィルムAを使用し、並びにステンレス箔1の代わりに、ステンレス箔3を使用した以外は、実施例1と同様にして、改質イミド化層を有するポリイミドフィルムを得て、次いで、金属張積層体を作製した。接着強度は、0.5kN/mであった。
【実施例13】
【0084】
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン2.00g(10mmol)を使用し、ポリイミドフィルムBの代わりに、作製例1で得られたポリイミドフィルムAを使用し、並びにステンレス箔1の代わりに、ステンレス箔3を使用した以外は、実施例1と同様にして、改質イミド化層を有するポリイミドフィルムを得て、次いで、金属張積層体を作製した。接着強度は、0.4kN/mであった。
【実施例14】
【0085】
10mLのN,N−ジメチルアセトアミドに1.36gのメタキシリレンジアミン(10mmol)を溶解した有機処理剤の溶液を作製し、この処理液を作製例2で得られたポリイミドフィルムBの上に50μmの厚みで塗布し、130℃で2分間加熱し、160℃まで昇温して乾燥した後、15分かけて360℃まで昇温させてイミド化を完了し、改質イミド化層を有するポリイミドフィルムを得た。得られた改質イミド化層を有するポリイミドフィルムの改質イミド化層の表面に銅原料が成膜されるように、RFマグネトロンスパッタリング装置にセットし、銅薄膜層を形成した。ポリイミドフィルムをセットした槽内は3×10-4Paまで減圧した後、アルゴンガスを導入し真空度を2×10-1Paとし、RF電源にてプラズマを発生した。このプラズマにてニッケル:クロムの合金層(比率8:2、99.9重量%、以下、ニクロム層又は第一スパッタリング層)が膜厚30nmとなるようにポリイミドフィルムへ成膜した。ニクロム層を成膜した後、同一雰囲気にて、このニクロム層上にさらにスパッタリングにより銅(99.99重量%)を0.2μm成膜して第二スパッタリング層を形成した。
【0086】
次いで、上記銅スパッタ膜(第二スパッタリング層)を電極として電解めっき浴にて8μm厚の銅めっき層を形成した。電解めっき浴としては、硫酸銅浴(硫酸銅100g/L、硫酸220g/L、塩素40mg/L、アノードは含りん銅)を使用し、電流密度2.0A/dm2にてめっき膜を形成した。めっき後には十分な蒸留水で洗浄し乾燥を行った。このようにして、ポリイミドフィルム/ニクロム層/銅スパッタ層/電解めっき銅層から構成される金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムと銅の接着力は、0.6kN/mであった。
【0087】
比較例1
作製例1で作製したポリイミドフィルムAの表面にステンレス箔1を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機で、370℃、20MPa、1分の条件でプレスを行い、金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムとステンレス箔の接着強度は、0.1kN/m未満であった。
【0088】
比較例2
作製例2で作製したポリイミドフィルムBの表面にステンレス箔1を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機で、370℃、20MPa、1分の条件でプレスを行い、金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムとステンレス箔の接着強度は、0.1kN/m未満であった。
【0089】
比較例3
作製例1で作製したポリイミドフィルムAの表面に銅箔2を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機で、370℃、20MPa、1分の条件でプレスを行い、金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムと銅箔の接着強度は、0.1kN/m未満であった。
【0090】
比較例4
作製例1で作製したポリイミドフィルムAの表面に作製例4で得られた銅箔4を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機で、370℃、20MPa、1分の条件でプレスを行い、金属張積層体を作製した。接着強度は、0.1kN/m未満であった。
【0091】
比較例5
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン2.10g(10mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして、表面処理されたポリイミドフィルム(改質イミド化層を有するポリイミドフィルムに対応する。以下の比較例において同じ。)を得て、次いで、金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムとステンレス箔の接着強度は、0.2kN/mであった。
【0092】
比較例6
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン1.12g(10mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして、表面処理されたポリイミドフィルムを得て、次いで、金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムとステンレス箔の接着強度は、0.2kN/mであった。
【0093】
比較例7
メタキシリレンジアミン1.36g(10mmol)の代わりに、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7を1.52g(10mmol)使用した以外は、実施例1と同様にして、表面処理されたポリイミドフィルムを得て、次いで、金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムとステンレス箔の接着強度は、0.1kN/mであった。
【0094】
比較例8
10mLのN,N−ジメチルアセトアミドに1.61gのエタノールアミン(10mmol)を溶解した有機処理剤の溶液を作製し、この処理液を作製例1で得られたポリイミドフィルムAの上に50μmの厚みで塗布し、130℃で2分間加熱し、160℃まで昇温して乾燥した後、15分かけて360℃まで昇温させて、表面処理されたポリイミドフィルムを得た。得られた表面処理したポリイミドフィルムの処理面にステンレス箔1を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機で、370℃、20MPa、1分の条件でプレスを行い、金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムとステンレス箔の接着強度は、0.1kN/m未満であった。
【0095】
比較例9
作製例1で得られたポリイミドフィルムAの表面に銅原料が成膜されるように、RFマグネトロンスパッタリング装置にセットし、銅薄膜層を形成した。ポリイミドフィルムAをセットした槽内は3×10-4Paまで減圧した後、アルゴンガスを導入し真空度を2×10-1Paとし、RF電源にてプラズマを発生した。このプラズマにてニッケル:クロムの合金層(比率8:2、99.9重量%、ニクロム層、第一スパッタリング層)が膜厚30nmとなるようにポリイミドフィルムへ成膜した。ニクロム層を成膜した後、同一雰囲気にて、このニクロム層上にさらにスパッタリングにより銅(99.99重量%)を0.2μm成膜して第二スパッタリング層を形成した。
【0096】
次いで、上記銅スパッタ膜(第二スパッタリング層)を電極として電解めっき浴にて8μm厚の銅めっき層を形成した。電解めっき浴としては、硫酸銅浴(硫酸銅100g/L、硫酸220g/L、塩素40mg/L、アノードは含りん銅)を使用し、電流密度2.0A/dm2にてめっき膜を形成した。めっき後には十分な蒸留水で洗浄し乾燥を行った。このようにして、ポリイミドフィルム/ニクロム層/銅スパッタ層/電解めっき銅層から構成される金属張積層体を作製した。ポリイミドフィルムと銅の接着力は、0.1kN/m未満であった。
【0097】
以上の結果をまとめて、表1に示す。なお、表中の記号は次の化合物を示す。
MXDA:メタキシリレンジアミン
PXDA:パラキシリレンジアミン
TAEA:トリス(2−アミノエチル)アミン
BAPEA:ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン
BAPTS:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルシロキサン
BAPPy:1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン
MBCHA:4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン
DABCO:1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7
EA:エタノールアミン
【0098】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂層の表面側の層を下記式(1)
H2N-CH2-A-CH2-NH2 (1)
(式中、Aは2価の有機基を示し、且つAに含有される炭素原子の数は2〜18である)
で表される少なくとも2つのアミノ基を官能基として有する有機処理剤で接触処理して表面接触処理層を形成する接触処理工程と、該表面接触処理層を加熱処理して、改質イミド化層を形成する改質イミド化層形成工程とを備えたことを特徴とするポリイミド樹脂層の表面処理方法。
【請求項2】
ポリイミド樹脂層が、ポリイミド樹脂フィルムからなる層又はポリイミド樹脂層を有する積層体のポリイミド樹脂層である請求項1に記載のポリイミド樹脂層の表面処理方法。
【請求項3】
ポリイミド樹脂層の表面側の層をプラズマ処理してプラズマ処理層面を形成するプラズマ処理工程を、接触処理工程の前に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂層の表面処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかのポリイミド樹脂層の表面処理方法で表面処理して得られる改質イミド化層が形成されたポリイミド樹脂層の表面に、金属箔を重ね合わせ、熱圧着する圧着工程を備えたことを特徴とする金属張積層体の製造方法。
【請求項5】
金属箔が、銅箔、銅合金又はステンレス箔であることを特徴とする請求項4記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項6】
金属箔と改質イミド化が形成されたポリイミド樹脂層の表面を、シランカップリング剤処理層を介して熱圧着することを特徴とする請求項4又は5記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかのポリイミド樹脂層の表面処理方法で表面処理して得られる改質イミド化層が形成されたポリイミド樹脂層の表面に、直接又は下地金属薄膜層を介して銅を蒸着することにより銅薄膜層を形成する銅薄膜形成工程を備えたことを特徴とする金属張積層体の製造方法。

【公開番号】特開2008−291063(P2008−291063A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135609(P2007−135609)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】