説明

ポリエステルの製造方法

【課題】 従来のポリエステルの製造における上述した問題を解決するためになされたものであって、溶融重縮合によって得られた非晶質のポリエステルのチップを結晶化、乾燥あるいは固相で重縮合させるに際して、チップ表面を予備結晶化後、赤外線放射装置によって結晶化した後、結晶化、乾燥あるいは固相重合に供することによって、チップが相互に付着し、また、チップが結晶化装置や乾燥装置に付着するのを防止しつつ、効率よくチップを結晶化、乾燥あるいは固相重合させて、高品質のポリエステルを低廉に製造する方法および吸湿したポリエステルから効率よく水を乾燥、除去するポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 溶融重縮合ポリエステルを、加熱処理して予備結晶化させ、次いで、赤外線放射装置によって結晶化することを特徴とするポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルの製造方法に関し、詳しくは、ポリエステルの製造において、溶融重縮合によって得られた非晶質のポリエステルを結晶化、乾燥あるいは固相で重縮合させる際に、一連の前処理を行なって、効率よく結晶化、乾燥あるいは固相重合させて、高品質のポリエステルを低廉に製造する方法および吸湿したポリエステルから効率よく水を乾燥、除去するポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略称することがある)などのポリエステルは、機械的性質及び化学的性質が共に優れているため、工業的価値が高く、繊維、フィルム、シ−ト、ボトルなどとして広く使用されている。
このようなポリエステルは、通常は、溶融重縮合後、チップ状に成形し、これをさらに固相重合させて、分子量を高め、環状エステルオリゴマーやアセトアルデヒドなどのアルデヒド類の含有量を低減した後、使用に供される。
【0003】
高分子量のポリエステルは、エステル交換反応工程あるいはエステル化反応工程、溶融重縮合反応工程および固相重合反応工程を経て製造される。しかしながら溶融重縮合反応工程で得られたポリエステルのチップは、非晶質であるため、そのまま固相重合反応工程に供するとブロッキングを生じることがある。このため、一般に固相重合反応工程の前には結晶化工程が設けられ、溶融重合反応工程を経たポリエステルを加熱し、結晶化させた後に固相重合反応工程に供している。この結晶化工程でのポリエステルの結晶化を迅速に行なおうとして急速に昇温したり、高温で加熱したりすると、系内でポリエステルチップがブロッキングまたは融着するため、これまで比較的緩やかな昇温条件がとられてきた。たとえば、150℃の熱風下で1時間処理後、195℃の窒素気流下で2.5時間処理して結晶化させる条件を採用する方法(例えば、特許文献1参照)が開示されている。これらの条件では結晶化に長時間を要し、製造コストが上昇するため好ましくない。
【0004】
また、固相重合でのチップの融着を防止するために、攪拌下に結晶化後、段階的に温度を上昇させて熱処理し固相重合する方法(例えば、特許文献2、3参照)が開示されているがポリエステルの融着防止や得られた固相重合ポリエステルの透明性の観点からは未だ不十分であり解決が望まれている。
また、水と接触処理したポリエステルに付着、吸収した水を除去する方法としては、遠心分離機、振動篩機、シモンカーター等の水切装置で水切りをし、ホッパー型の乾燥機に加熱気体を導入して乾燥させる方法、またはバッチ式乾燥機を用いて真空下または大気下で乾燥気体を通気させながら付着水分またはポリエステル中の含有水分を乾燥する方法、あるいは、水を吸収したポリエステルを揺動状態で流通気体と接触させて付着した水を除去する方法(例えば、特許文献4参照)が開示されているが、このような従来の乾燥方法では、乾燥時にしばしばポリエステルが着色するという問題、大量に吸水した溶融重縮合ポリエステルの乾燥では融着が激しく出来るだけ低温度での長時間乾燥を余儀なくされるなど経済的な乾燥が出来ないという問題があり、この点でも解決が望まれている。
【特許文献1】特開昭58−45229号公報
【特許文献2】特開平9−59363号公報
【特許文献3】特開平10−139873号公報
【特許文献4】特開平10−182811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のポリエステルの製造における上述した問題を解決するためになされたものであって、溶融重縮合によって得られた非晶質のポリエステルのチップを結晶化、乾燥あるいは固相で重縮合させるに際して、チップ表面を予備結晶化後、赤外線放射装置によって結晶化した後、乾燥あるいは固相重合に供することによって、チップが相互に付着し、また、チップが結晶化装置や乾燥装置に付着するのを防止しつつ、効率よくチップを結晶化、乾燥あるいは固相重合させて、高品質のポリエステルを低廉に製造する方法および吸湿したポリエステルから効率よく水を乾燥、除去するポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、溶融重縮合ポリエステルを、加熱処理して予備結晶化させ、次いで、赤外線放射装置によって結晶化することを特徴とするポリエステルの製造方法である。
また、本発明は、前記の赤外線放射装置によって結晶化させた溶融重縮合ポリエステルを固相重合することを特徴とするポリエステルの製造方法である。
【0007】
また、本発明は、溶融重縮合ポリエステルをチップ化し、ポリエステルチップ表面の結晶化度が5%以上になるように予備結晶化させ、次いで、赤外線放射装置によってポリエステルチップ全体の結晶化度が35〜65%になるように結晶化後、固相重合することを特徴とするポリエステルの製造方法である。
【0008】
この場合において、赤外線放射装置により結晶化されたポリエステルチップ表面の結晶化度とチップ内層の結晶化度の差が5%以下であることができる。
【0009】
この場合において、DSCにより測定される、前記の赤外線放射装置によって結晶化されたポリエステルのチップ内層の結晶融解熱とチップ表面の結晶融解熱の差が5(mJ/mg)以下であることができる。
【0010】
また、吸湿したポリエステルを、加熱処理して予備結晶化させ、次いで、赤外線放射装置によって処理して水を除去することを特徴とするポリエステルの製造方法である。
【0011】
この場合において、上記のポリエステルの製造方法によって得られた固相重合ポリエステルを水と接触処理後、赤外線放射装置によって処理して水を除去することができる。
【0012】
この場合において、共重合成分を1〜20モル%含むことができる。
【0013】
この場合において、ポリエステルがエチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステルであり、共重合成分として、ジエチレングリコールをグリコール成分中の1〜5モル%、および/または、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸をジカルボン酸成分中の1〜20モル%含むことができる。
【0014】
この場合において、ポリエステルがエチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステルであり、共重合成分として、ジエチレングリコールをグリコール成分中の1〜5モル%、および/または、1,3−トリメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、ビスフェノールAのアルキレングリコール付加物からなる群から選ばれる少なくとも一種のグリコールをグリコール成分中の1〜20モル%含むことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、ポリエステルの製造時の、結晶化工程や固相重合工程におけるポリエステルチップの融着を防止し、固相重合をきわめて効率的に実施する方法および水と接触処理したポリエステルから効率よく水を乾燥、除去するポリエステルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のポリエステルの製造方法の実施の形態を具体的に説明する。
すなわち、本発明に係るポリエステルは、ポリエステルの酸成分の75モル%以上およびグリコール成分の75モル%以上、好ましくは、酸成分の80モル%以上およびグリコール成分の80モル%以上、さらに好ましくは、酸成分の90モル%以上およびグリコール成分の90モル%以上、特に好ましくは、酸成分の93モル%以上およびグリコール成分の93モル%以上が、それぞれ、同一の酸成分および同一のグリコール成分であるポリエステルである。
【0017】
本発明に係るポリエステルを構成する主な酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニール−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0018】
また、本発明に係るポリエステルを構成する主なグリコール成分としては、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール等が挙げられる。
【0019】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としての酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、ジフェニール−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸、3−ヒドロキシ酪酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸、グリコール酸、リンゴ酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類などが挙げられる。
上記した5−スルホイソフタル酸は、スルホン酸が金属などとのスルホン酸塩構造となる化合物であってもよい。具体的には、金属イオンとして、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属、およびマグネシウムなどのアルカリ土類金属が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。ホスホニウム塩としては、トリ−n−ブチルデシルホスホニウム塩、トリ−n−ブチルオクタデシルホスホニウム塩、トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム塩、トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム塩、トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム塩、等があげられる。これは下記一般式で示される。
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、Aは芳香族基、X1、X2はエステル形成性官能基、R1、R2、R3、R4はアルキル基でそのうちの少なくとも1個は炭素数6以上20以下のアルキル基)
【0022】
その他、スルホテレフタル酸,4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸,5−〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体が挙げられる。これらもスルホン酸が金属やホスホニウム塩などとのスルホン酸塩構造となる化合物であってもよい。
【0023】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコールとしては、ジエチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ダイマーグリコール等の脂肪族グリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
その他、2−スルホ−1,4−ブタンジオ−ル,2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキサンジオ−ル等の金属やホスホニウム塩などとのスルホン酸塩構造となる化合物が挙げられる。また、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などが挙げられ、これらを有機樹脂に導入してからアンモニアなどで中和して使用することができる。
【0024】
さらに、前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトールを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0025】
本発明に係るポリエステルの好ましい一例は、主たる構成単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を80モル%以上含み、共重合成分としてイソフタル酸、1,4―シクロヘキサンジメタノールなどを含む共重合ポリエステルであり、特に好ましいくはエチレンテレフタレート単位を95モル%以上含むポリエステルである。
【0026】
これらポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称)、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−ジオキシエチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,3−プロピレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンシクロヘキシレンジカルボキシレート)共重合体などが挙げられる。
【0027】
また、本発明に係るポリエステルの好ましいその他の例としては、主たる構成単位が1,3−プロピレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくは1,3−プロピレンテレフタレート単位を80モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましいのは1,3−プロピレンテレフタレート単位を95モル%以上含むポリエステルである。
【0028】
これらポリエステルの例としては、ポリプロピレンテレフタレート(PTT)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,3−プロピレンイソフタレート)共重合体、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0029】
さらにまた本発明に係るポリエステルの好ましいその他の例としては、主たる構成単位がブチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはブチレンテレフタレート単位を80モル%以上含む共重合ポリエステルであり、特に好ましいくはブチレンテレフタレート単位を95モル%以上含むポリエステルである。
【0030】
これらポリエステルの例としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(ブチレンテレフタレート−ブチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(ブレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンテレフタレート−1,3−プロピレンテレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンテレフタレート−ブチレンシクロヘキシレンジカルボキシレート)共重合体などが挙げられる。
【0031】
また、本発明に係るポリエステルの好ましいその他の一例は、主たる構成単位がエチレン−2、6−ナフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2、6−ナフタレート単位を80モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2、6−ナフタレート単位を90モル%以上含むポリエステルである。
【0032】
これらポリエステルの例としては、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−ジオキシエチレン−2,6−ナフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0033】
また、本発明に係るポリエステルの好ましいその他の一例は、主たる構成単位が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくは1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位を80モル%以上含む共重合ポリエステルであり、特に好ましいくは1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位を90モル%以上含むポリエステルである。
【0034】
これらポリエステルの例としては、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0035】
また、本発明に係るポリエステルの好ましいその他の一例は、主たる構成単位が乳酸単位から構成されるポリエステルであり、さらに好ましくは乳酸単位を80モル%以上、特に好ましくは乳酸単位を90モル%以上含むポリエステルである。
【0036】
また、本発明に係るポリエステルの好ましいその他の一例は、主たる構成単位がグリコール酸単位から構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはグリコール酸単位を80モル%以上、特に好ましくはグリコール酸単位を90モル%以上含むポリエステルである。
【0037】
また、本発明に係るポリエステルの好ましいその他の一例は、主たる構成単位がコハク酸単位から構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはコハク酸単位を80モル%以上、特に好ましくはコハク酸単位を90モル%以上含むポリエステルである。
【0038】
本発明に係る溶融重縮合ポリエステルは、従来公知の溶融重縮合法によって製造することが出来る。溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また連続式反応装置から構成されていてもよい。
【0039】
以下に、ポリエチレンテレフタレート(PET)を例にして、本発明に係る溶融重縮合ポリエステルの好ましい連続式製造方法の一例について説明するが、これに限定されるものではない。即ち、テレフタル酸とエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しながらエステル化した後、重縮合触媒の存在下に減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコールを留去しながらエステル交換させた後、重縮合触媒の存在下に減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
【0040】
まず、エステル化反応により低重合体を製造する場合には、テレフタル酸またはそのエステル誘導体1モルに対して1.02〜2.0モル、好ましくは1.03〜1.6モルのエチレングリコールが含まれたスラリーを調整し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。
エステル化反応は、少なくとも2個のエステル化反応器を直列に連結した多段式装置を用いてエチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水またはアルコールを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は0.2〜3kg/cm2G、好ましくは0.5〜2kg/cm2Gである。最終段目のエステル化反応の温度は通常250〜280℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜1.5kg/cm2G、好ましくは0〜1.3kg/cm2Gである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配されることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜5000程度の低次縮合物が得られる。
上記エステル化反応は原料としてテレフタル酸を用いる場合は、テレフタル酸の酸としての触媒作用により無触媒でも反応させることができるが重縮合触媒の共存下に実施してもよい。
【0041】
また、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウムおよび炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施すると、ポリエチレンテレフタレートの主鎖中のジオキシエチレンテレフタレート成分単位の割合を比較的低水準(全ジオール成分に対して5モル%以下)に保持できるので好ましい。
【0042】
次に、エステル交換反応によって低重合体を製造する場合は、テレフタル酸ジメチル1モルに対して1.1〜2.0モル、好ましくは1.2〜1.5モルのエチレングリコールが含まれた溶液を調整し、これをエステル交換反応工程に連続的に供給する。
エステル交換反応は、1〜2個のエステル交換反応器を直列に連結した装置を用いてエチレングリコールが還留する条件下で、反応によって生成したメタノールを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル交換反応の温度は180〜250℃、好ましくは200〜240℃である。最終段目のエステル交換反応の温度は通常230〜270℃、好ましくは240〜265℃であり、エステル交換触媒として、Zn,Cd,Mg,Mn,Ca,Baなどの脂肪酸塩、炭酸塩やPb,Zn,Sb,Ge酸化物等を用いる。これらのエステル交換反応により分子量約200〜500程度の低次縮合物が得られる。
【0043】
前記の出発原料であるジメチルテレフタレート、テレフタル酸またはエチレングリコールとしては、パラキシレンから誘導されるバージンのジメチルテレフタレート、テレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したジメチルテレフタレート、テレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレートあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことは言うまでもない。
また、共重合成分である前記のその他のジカルボン酸やグルコールはエステル化反応工程またはエステル交換反応工程の任意の段階において必要量を添加することができる。
【0044】
次いで得られた低次縮合物は多段階の溶融縮重合工程に供給される。重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は500〜20Torr、好ましくは200〜30Torrで、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は10〜0.1Torr、好ましくは5〜0.5Torrである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される極限粘度の上昇の度合は滑らかに分配されることが好ましい。なお、重縮合反応には一段式重縮合装置を用いてもよい。
【0045】
重縮合反応は、重縮合触媒を用いて行う。重縮合触媒としては、Ge、Sb、Ti、SnまたはAlの化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が用いられることが好ましい。これらの化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコール溶液、エチレングリコールのスラリー等として反応系に添加される。
【0046】
Ge化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム粉末またはエチレングリコールのスラリー、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解した溶液またはこれにエチレングリコールを添加加熱処理した溶液等が使用されるが、特に本発明で用いるポリエステルを得るには二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解した溶液、またはこれにエチレングリコールを添加加熱した溶液を使用するのが好ましい。また、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等の化合物も用いることが出来る。これらの重縮合触媒はエステル化工程中に添加することができる。Ge化合物の使用量は、ポリエステル中のGe残存量として10〜150ppmの範囲になるように添加する。
【0047】
Sb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマ−中のSb残存量として、50〜300ppmの範囲になるように添加する。
【0048】
Ti化合物としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のテトラアルキルチタネートおよびそれらの部分加水分解物、酢酸チタン、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン、チタンハロゲン化物の加水分解物、シュウ化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸アンモニウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、チタンアセチルアセトナート、ヒドロキシ多価カルボン酸または含窒素多価カルボン酸とのチタン錯体物、チタンおよびケイ素あるいはジルコニウムからなる複合酸化物、チタンアルコキサイドとリン化合物の反応物、チタンアルコキサイドと芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応物にリン化合物を反応させて得た反応生成物等が挙げられる。Ti化合物の使用量は、ポリエステル中のTi残存量として0.1〜50ppmの範囲になるように添加する。
【0049】
Sn化合物としては、酸化スズ、塩化スズ、硫酸スズ、酢酸スズ、乳酸スズ、ジブチルスズオキサイドが挙げられる。Sn化合物の使用量は、ポリエステル中のSn残存量として10〜100ppmの範囲になるように添加する。
【0050】
Al化合物としては、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうち酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。Al化合物は、生成ポリマー中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0051】
重縮合触媒としてAl化合物を用いる場合は、リン化合物と併用することが好ましく、アルミニウム化合物およびリン化合物が予め溶媒中で混合された溶液またはスラリーとして用いることが好ましい。Al化合物の場合、より好ましいリン化合物は、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。これらのリン化合物を用いることで触媒活性の向上効果が見られるとともに、ポリエステルの熱安定性等の物性が改善する効果が見られる。これらの中でも、ホスホン酸系化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0052】
また、本発明に係るポリエステルの製造においては、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を必要に応じて併用してもよい。アルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ金属ないしその化合物の使用がより好ましい。アルカリ金属ないしその化合物を使用する場合、特にLi,Na,Kの使用が好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0053】
前記のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。
さらにまた、本発明に係るポリエステルは、ケイ素、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ガリウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、錫、ハフニウム、タリウム、タングステンからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含む金属化合物を含有してもよい。これらの金属化合物としては、これら元素の酢酸塩等の飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸塩などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸塩などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸塩などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸塩などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、アルコキサイド、アセチルアセトナ−ト等とのキレ−ト化合物があげられ、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液、エチレングリコ−ルのスラリ−等として反応系に添加される。これらの金属化合物は、前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加することができる。
【0054】
また、安定剤として、燐酸、ポリ燐酸やトリメチルフォスフェート等の燐酸エステル類、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物を使用するのが好ましい。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニールホスホン酸ジメチルエステル、フェニールホスホン酸ジエチルエステル、フェニールホスホン酸ジフェニールエステル等である。これらの安定剤はテレフタル酸とエチレングリコールのスラリー調合槽からエステル化反応工程中に添加することができる。P化合物は、生成ポリマ−中のP残存量として好ましくは5〜100ppmの範囲になるように添加する。
【0055】
前記のようにして得られた溶融重縮合ポリエステルは、溶融重縮合終了後に細孔から冷却水中に押出して水中でカットする方式、あるいは大気中に押出した後、直ちに冷却水で冷却しながらカットする方式によって柱状、球状、角状、や板状の形態にチップ化されるのが好ましい。
【0056】
上記溶融重縮合反応工程において製造されるポリエステルの極限粘度(IV)は特に制限はないが、最終溶融重縮合反応器から得られるポリエステルの固有粘度(IV)は、例えば、PETでは、通常0.35〜0.80デシリットル/グラム、好ましくは0.45〜0.75デシリットル/グラム、より好ましくは0.50〜0.75デシリットル/グラムである。
【0057】
また、本発明に係るポリエステルのチップの形状は、シリンダー型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は、通常1.0〜4mm、好ましくは1.0〜3.5mm、さらに好ましくは1.0〜3.0mmの範囲である。例えば、シリンダー型の場合は、長さは1.0〜4mm、径は1.0〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの平均重量(W)は5〜40mg/個の範囲が実用的である。また、固相重合速度を向上させたり、アルデヒド類の含有量をより効果的に低減させたりすることが必要な場合は、チップの平均重量(W)は1〜5mg/個にすることも好ましい。
【0058】
本発明において、前記の溶融重縮合ポリエステルを結晶化あるいは固相重合する場合には、ポリエステルチップを赤外線放射装置によって処理する前に予備結晶化を行なう。このペレットの予備結晶化方法としては、例えば、ペレットを横型の予備結晶化装置に供給して、攪拌下にペレットを移送しつつ、ペレットが融着し始める温度(即ち、ガラス転移点)よりも高い温度に加熱し、ペレットの表面を結晶化させる方法が挙げられ、また攪拌装置付縦型の予備結晶化装置による結晶化方法も採用可能である。予備結晶化装置には適宜の加熱手段が設けられている。例えば、装置の外周に沿ってジャケットを配設し、これに加熱したスチームや油を循環供給して、装置内を加熱する。この装置は、一方からポリエステルチップが供給され、他方から排出されるような連続式装置であることが好ましい。
【0059】
非晶質のペレットの予備結晶化のための加熱温度は、通常、110〜180℃の範囲である。予備結晶化のための装置内の滞留時間は、通常、5〜30分間程度であり、好ましくは、5〜15分程度である。この予備結晶化においては、予備結晶化装置に上記加熱温度に合わせた温度の不活性ガスを循環供給するのが好ましい。
予備結晶化したチップ表面の結晶化度は、5%以上が好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、最も好ましくは20%以上である。チップ表面の結晶化度が5%未満の場合は、次の赤外線放射装置による結晶化工程においてチップの融着が発生し好ましくない。予備結晶化後のチップの表面層の結晶化度を5%以上にするためには、前記の加熱温度及び滞留時間を適宜管理することが必要である。
【0060】
本発明において、次いで、赤外線放射装置を設置した横型の結晶化装置に供給して、攪拌下あるいは回転下にペレットを移送しつつ結晶化処理を行う。この際、加熱した不活性ガスを向流方向に流すことも可能である。この装置は、一方からポリエステルチップが供給され、他方から排出されるような連続式装置であることが好ましい。
【0061】
チップの温度は、前記予備結晶化のための加熱温度よりも高い温度であって、且つ、150〜230℃の範囲、好ましくは160〜220℃の範囲、さらに好ましくは170〜210℃の範囲、最も好ましくは175〜200℃の範囲の温度である。この予熱工程における滞留時間は、1分〜2時間程度であり、好ましくは2分〜1時間程度、さらに好ましくは3分〜30分程度、好ましくは5分〜20分程度である。本発明によれば、ペレットの結晶化をこのような条件で行なっても前記の予備結晶化において表面層が5%以上に結晶化しているのでペレット相互の融着が起こらない。
【0062】
赤外線放射装置によって結晶化したポリエステルチップの結晶化度は、35〜65%が好ましく、より好ましくは38〜62%、さらに好ましくは40〜58%、最も好ましくは45〜55%である。結晶化度の下限値未満のチップでは次の固相重合工程においてチップの融着が発生し好ましくない。また、チップの結晶化度が上限値を超える場合は固相重合工程における重合速度が遅くなり経済性が問題になる。
また、赤外線放射装置により結晶化されたポリエステルチップ表面の結晶化度とチップ内層の結晶化度の差は、5%以下が好ましく、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、最も好ましくは2%以下である。ポリエステルチップ表面の結晶化度とチップ内層の結晶化度の差が5%を超える場合は、固相重合ポリエステルチップの内外層の極限粘度の差が大きくなり問題である。
なお、結晶化度は下記の測定法の項で説明するようにチップの密度より求めることができる。
【0063】
また、DSCにより測定される、結晶化されたポリエステルのチップ内層の結晶融解熱とチップ表面の結晶融解熱の差は、好ましくは4(mJ/mg)以下、さらに好ましくは3(mJ/mg)以下であることが好ましい。チップ内層の結晶融解熱とチップ表面の結晶融解熱の差が5(mJ/mg)を超える場合は、固相重合ポリエステルのチップ内外層で成形時の溶融特性に差が生じるために透明性が均一な成形体を得られず問題である。
【0064】
また、結晶化されたポリエステルチップの融解熱は、例えば、PETの場合には、80(mJ/mg)以下、さらに好ましくは75(mJ/mg)以下、最も好ましくは70(mJ/mg)以下であることが好ましい。融解熱が80(mJ/mg)を超える場合は、溶融成形時の成形温度を高くしなければならず、アセトアルデヒドなどのアルデヒド含有量が高くなり、また色相も悪くなり問題である。また、融解熱の下限値は20(mJ/mg)であり、これ未満の場合は固相重合工程においてさらに結晶化が進むため、その際の結晶化発熱によりチップの融着が発生するので問題である。
【0065】
結晶化後のチップの結晶化度を35〜65%、チップ内層の結晶融解熱とチップ表面の結晶融解熱の差を5(mJ/mg)以下にするためには、前記の加熱温度及び滞留時間を適宜管理することが必要である。
【0066】
赤外線放射装置を設置した結晶化装置としては、例えば、一軸又は二軸のスクリュー又はパドルを有する横型加熱装置やスクリューコンベヤーを有する横型加熱装置などにおいて、赤外線照射装置をこれらの加熱装置のケーシングのポリエステルチップに面した側に設置した装置、あるいは、前記加熱装置の駆動用軸の表面の全面あるいは一部に設置した装置などを挙げることが出来る。
【0067】
従来から用いられてきた加熱不活性ガスによる対流型の結晶化設備や加熱体との接触による伝導型の結晶化設備による結晶化では、ポリエステルチップはその表面から加熱され、したがってチップの断面方向に温度勾配が生じ、表面層と内部層の結晶化度に大きな差が生じる。このため固相重合工程では表面層が過度に加熱されることになりチップ表面が軟化し、塊状物が生じるという問題やこの塊状物が劣化した異物の製品への混入という問題が発生する。固相重合で融着しない程度の結晶化度にまで上昇させようとすると結晶化時間が長くなり経済性が問題となる。
【0068】
一方、赤外線放射装置を用いる結晶化工程では、ポリエステルが赤外線を吸収して分子運動を起すために摩擦熱が発生してチップ内外層がほぼ均一に加熱結晶化されるのでチップ内外の結晶化度の差を少なくすることが可能となる。
【0069】
前記の結晶化装置に用いる赤外線放射装置の赤外線ヒーターからの赤外線の波長は3〜11μmの範囲であり、赤外線ヒーターのエネルギー分布が最大である波長が約7〜9μmの範囲であることが好ましい。
【0070】
また、赤外線放射装置を用いて得られた結晶化では、前記した従来の結晶化設備による結晶化よりも設備の機壁への融着量を少なくすることが出来、また結晶化設備における劣化した異物の製品への混入の問題も解決できる。
【0071】
本発明において、予備結晶化装置、結晶化装置などにおいて、装置内の水分等を除去するために、又はペレットを加熱するための熱源として、不活性ガスを装置に流通させることができるが、この場合において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素等が用いられ、これらの不活性ガスは、通常、装置の下流部から上流部に流通させる。不活性ガスの流通量は、通常、ペレットの単位質量当り、0.05〜10Nm3 /kgが好ましく、特に、0.2〜0.7Nm3 /kgが好ましい。
【0072】
また、結晶化工程の任意の段階で、乾燥工程や調湿工程と乾燥工程などを追加することが出来る。
乾燥工程では、横型または縦型の乾燥装置を用いて不活性ガスとの向流接触によって乾燥可能である。また、調湿工程と乾燥工程を付設する場合は、水にチップを浸漬するとか、水を噴霧するとか、種々の方法で0.05〜5.0重量%の含水率に調湿した後、60〜150℃の温度で乾燥することが出来る。
【0073】
このような工程では溶融重縮合ポリエステル中に存在するアセトアルデヒドなどの低沸点化合物の含有量を低減することが可能となり最終製品の品質向上に寄与する。
なお、前記の結晶化工程は、一段階で実施しても良いし、多段階に分けて行っても良い。
【0074】
また、前記の結晶化工程の後にもう一段チップ温度を上げるための予熱工程を追加することも可能である。これには予備結晶化装置と同じ装置が採用できる。この装置は、一方からポリエステルチップが供給され、他方から排出されるような連続式装置であることが好ましい。
【0075】
次いで、不活性ガス雰囲気下または減圧下に前記結晶化させた溶融重縮合ポリエステルプレポリマーに最適な温度に於いて、固相重合による極限粘度の増加が0.10デシリットル/グラム以上になるようにして固相重合を行う。例えば、PETの場合には、固相重合の温度としては、上限は215℃以下が好ましく、さらには210℃以下、特には208℃以下が好ましく、下限は190℃以上、好ましくは195℃以上であり、重合時間は1〜50時間、好ましくは5〜40時間、圧力は通常1kg/cm2-G 〜1Torr、好ましくは常圧〜1Torrの条件下で実施される。
【0076】
共重合ポリエステルの場合は、その融点により固相重合温度は適宜設定されるが、PETよりも低い温度で実施するのが好ましいことは言うまでも無い。
【0077】
固相重合反応工程は、通常、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で実施され、これらの不活性ガスの中では窒素ガスが好ましい。
【0078】
固相重合終了後は約30分以内、好ましくは20分以内、さらに好ましくは10分以内にチップ温度を約70℃以下、好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下にすることが好ましい。
【0079】
前記の予備結晶化から固相重合までの各工程は、1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また連続式反応装置から構成されていてもよい。
【0080】
固相重合反応工程を経て得られたポリエステルの極限粘度は、PETでは、0.50〜1.30デシリットル/グラム、好ましくは0.60〜1.20デシリットル/グラム、より好ましくは0.70〜0.90デシリットル/グラム、特に好ましくは0.72〜0.88デシリットル/グラムであり、チップの結晶化度は、35〜70%、好ましくは40〜65%、より好ましくは50〜60%の範囲である。
【0081】
また、主たる繰返し単位がエチレン−2,6−ナフタレートから成るポリエステル(PEN)の極限粘度は、0.40〜1.00 デシリットル/グラム、好ましくは0.42〜0.90デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.45〜0.80デシリットル/グラムである。
【0082】
また、主たる構成単位が1,3−プロピレンテレフタレ−トから成るポリエステル(PTT)の極限粘度は、0.50〜1.00デシリットル/グラム、好ましくは0.55〜0.90デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜0.85デシリットル/グラムである。
【0083】
また、本発明で得られるポリエステルの環状エステルオリゴマーの含有量は、前記ポリエステルの溶融重縮合ポリエステルプレポリマーが含有する環状エステルオリゴマーの含有量の70%以下、好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下、特に好ましくは35%以下であることが好ましい。ここで、ポリエステルは、一般に種々の重合度の環状エステルオリゴマーを含有しているが、本発明でいう環状エステルオリゴマーとは、ポリエステルが含有している環状エステルオリゴマーのうちで最も含有量が多い環状エステルオリゴマーを意味し、例えば、エチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステルの場合には環状3量体のことである。
ポリエチレンテレフタレートの環状三量体含有量は、0.7重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.45重量%以下、特に好ましくは0.4重量%以下である。
【0084】
また、溶融重縮合工程あるいは固相重合工程を経て得られたポリエステルの水との接触処理は、水中に浸ける方法やシャワーでチップ上に水をかける方法等により行なわれる。
水との接触処理を行う時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間であり、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0085】
以下に水処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行なうためには連続方式の方が好ましい。
水処理の方法が連続的に、又はバッチ的のいずれの場合であっても、処理槽から排出した処理水のすべて、あるいは殆どを工業排水としてしまうと、新しい水が多量に入用であるばかりでなく、排水量増大による環境への影響が懸念される。即ち、処理槽から排出した少なくとも一部の処理水を、水処理槽へ戻して再利用することにより、必要な水量を低減し、また排水量増大による環境への影響を低減することが出来、さらには水処理槽へ返される排水がある程度温度を保持していれば、処理水の加熱量も小さく出来るため、処理層から排出された処理水は水処理層へ戻して再利用されることが好ましい。また、水を再利用させることで処理層中の処理水の流量を上げることができ、結果としてポリエステルチップに付着したファインを洗い流すことができるため、ファイン除去効果も生まれる。
【0086】
ポリエステルのチップを連続的に水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的、あるいは断続的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、並流又は向流で水を連続供給して水処理させることができる。処理されたポリエステルチップは処理層の下部から継続的、あるいは断続的に抜き出す。
【0087】
ポリエステルチップをバッチ方式で水処理をする場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわち、バッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行なう。あるいは回転筒型の処理槽にポリエステルのチップを受け入れ、回転させながら水処理を行ない水との接触をさらに効率的にすることもできる。
この場合、ポリエステルチップは全量を処理槽内に投入、充填すると共に処理水を満たし、処理水は必要により継続的又は断続的に循環し、また、継続的又は断続的に一部の処理水を排出して新しい処理水を追加供給する。水処理後はポリエステルチップの全量を処理層から抜き出す。
【0088】
ポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエステル1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエステルと水蒸気とを接触させる。
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0089】
以下に粒状ポリエステルと水蒸気または水蒸気含有ガスとの接触処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
【0090】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。あるいは回転筒型の接触処理装置に粒状ポリエステルを受け入れ、回転させながら接触処理を行ない接触をさらに効率的にすることもできる。
【0091】
ポリエステルのチップを連続で水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエステルを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
【0092】
前記のように水又は水蒸気と接触処理したポリエステルチップには大量の水が付着吸収しており、このような大量の水が付着吸収したポリエステルは、振動篩機、シモンカーターなどの水切り装置で水切りし、乾燥工程へ移送する。当然のことながら水切り装置でポリエステルチップと分離された水は前記のファイン除去の装置へ送られ、再度水処理に用いることができる。
【0093】
本発明のポリエステルの製造方法では、例えば、前記のようにして水切りしたポリエステルなどのように水分を吸収したポリエステルは前記の赤外線放射装置によって処理することにより効率よく水を除去することができる。特に、水分率が0.2重量%以上の高水分率でチップの中心部まで同様の水分率のポリエステルの乾燥に最適な乾燥方法を提供する事が出来る。
【0094】
具体的には、固相重合工程に組み込まれた結晶化装置として使用される場合と同じように、赤外線放射装置を設置した横型の乾燥装置に供給して、攪拌下あるいは回転下にペレットを移送しつつ乾燥処理を行う。この際、加熱した不活性ガスを向流方向に流すことも可能である。この装置は、一方からポリエステルチップが供給され、他方から排出されるような連続式装置であることが好ましい。
【0095】
乾燥終了後は約30分以内、好ましくは20分以内、さらに好ましくは10分以内にチップ温度を約70℃以下、好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下にすることが好ましい。
【0096】
赤外線照射装置から排出されるポリエステルチップの温度は、160℃以下、好ましくは130℃以下、さらに好ましくは100℃以下の温度であることが好ましい。この滞留時間は、1分〜1時間程度であり、好ましくは、3分〜30分程度、さらに好ましくは3分〜15分程度である。
【0097】
前記の乾燥装置に用いる赤外線放射装置の赤外線ヒーターからの赤外線の波長は、1〜8μmの範囲であり、赤外線ヒーターのエネルギー分布が最大である波長が約2〜4μmの範囲であることが好ましい。
赤外線放射装置を設置した乾燥装置としては、例えば、一軸又は二軸のスクリュー又はパドルを有する横型加熱装置やスクリューコンベヤーを有する横型加熱装置などにおいて、赤外線照射装置をこれらの加熱装置のケーシングのポリエステルチップに面した側に設置した装置、あるいは、前記加熱装置の駆動用軸の表面の全面あるいは一部に設置した装置などを挙げることが出来る。
【0098】
また、本発明において、ポリエステルチップから乾燥装置内に揮散して来る水分等を除去するために、不活性ガスを装置に流通させることができるが、この場合において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素等が用いられ、これらの不活性ガスは、通常、装置の下流部から上流部に流通させる。不活性ガスの流通量は、通常、ペレットの単位質量当り、0.05〜10Nm3 /kgが好ましく、特に、0.2〜0.7Nm3 /kgが好ましい。
【0099】
溶融重縮合ポリエステルあるいはこれの水接触処理品の乾燥の場合は、ポリエステルチップ表面の結晶化度とチップ内層の結晶化度の差が5%以下となり、溶融成形時の溶融斑が少なくできるので、透明性に優れ、結晶性の均一な成形体を得ることが出来る。
なお、本発明における、主な特性値の測定法を以下に説明する。
【実施例】
【0100】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0101】
(2)ポリエステルのジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0102】
(3)ポリエステルの環状3量体の含有量(以下「CT含有量」という)
冷凍粉砕した試料300mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム30mlを加えて希釈する。これにメタノ−ル15mlを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミド10mlで定容とし、高速液体クロマトグラフ法により環状3量体を定量した。
【0103】
(4)ポリエステルのアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。ポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量は構成するポリエステルのアセトアルデヒド含有量から計算した加重平均値とした。
【0104】
(5)ポリエステルチップの密度(ρ)および結晶化度(CR)
硝酸カルシュウム/水溶液の密度勾配管で30℃におけるチップの密度(ρ)を測定した。
エチレンテレフタレート単位を80モル%以上含むポリエステルの場合は、下記の式より結晶化度を算出した。
CR = 100ρ(ρ―ρ)/ρ(ρ−ρ
ここで、ρ : チップの密度
ρa : 非晶密度(1.335g/cm
ρ: 結晶密度(1.455g/cm
チップ全体の測定は、チップ全体を試料とし、チップ表面層と中心層からミクロト−ムで厚さ約50ミリミクロンの試料をそれぞれ採取し表面層および内層の試料とした。
【0105】
(6)ポリエステルの結晶融解熱(Q)
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定した。
昇温速度20度C/分で昇温して吸熱ピークより求めた。
チップの平均結晶融解熱は、チップを冷凍粉砕した試料4mgを使用した。また、(5)と同様にチップ表面層とチップ内層からの試料各4mgについて融解熱を測定しその差を求めた。
【0106】
(7)チップの融着率
固相重合後のポリエステル100g中に2粒以上が融着しているチップを目視で選別し、その重量割合を融着率とした。
(8)水分率
三菱化学(株)の微量水分測定器(model:CA−06/VA−06)を使用し、230℃で10〜20分間の条件で、チップ1〜2gに熱処理を行い、チップ中に含まれる水分を揮発させて平衡水分率を測定した。
【0107】
(実施例1)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、高純度テレフタル酸(全酸成分の98.0モル%相当分)、イソフタル酸(全酸成分の2.0モル%)とエチレングリコールのスラリーおよび三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cmGで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、燐酸のエチレングリコール溶液を連続的に供給して、撹拌下、約260℃、0.05kg/cmGで所定の反応度まで反応を行った。このエステル化反応生成物を連続的に第1重合反応器に送り、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに第3重合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで1時間重合させた。得られた樹脂の極限粘度(IV)は0.55、DEG含有量は2.7モル%、結晶化度は約1%であった。
この樹脂を図1に示すように供給し、予備結晶化、結晶化、次いで固相重合を連続的に実施した。予備結晶化ではホソカワ社製の横型攪拌結晶化機で150℃で15分間結晶化してチップ表面の結晶化度を35%とし、次いでUPM社製の横型赤外線照射装置を設置した横型の結晶化機を用いてチップ温度が160℃になるように結晶化後、連続式固相重合反応塔に供給して210℃の窒素ガス雰囲気下で固相重合した。ブロッキングは発生せず順調にポリエステルを製造することが出来た。
なお、予備結晶化装置、結晶化装置、固相重合装置には加熱窒素ガスを流通させた。
赤外線放射装置の赤外線ヒーターからの赤外線の波長は、3〜11μmの範囲であり、赤外線ヒーターのエネルギー分布が最大である波長が7〜9μmの範囲であった。
結果を表1に示す。
なお、赤外線照射装置で結晶化後のチップの平均結晶融解熱は約35(mJ/mg)であった。
【0108】
(実施例2)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、高純度テレフタル酸(全酸成分の88.0モル%相当分)、イソフタル酸(全酸成分の12.0モル%)とエチレングリコール(のスラリーおよび三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cmGで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、燐酸のエチレングリコール溶液を連続的に供給して、撹拌下、約260℃、0.05kg/cmGで所定の反応度まで反応を行った。このエステル化反応生成物を連続的に第1重合反応器に送り、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに第3重合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで1時間重合させた。得られた樹脂の極限粘度(IV)は0.55、DEG含有量は2.7モル%、結晶化度は約1%であった。この樹脂を図1に示すように供給し、予備結晶化、結晶化、次いで固相重合を連続的に実施した。予備結晶化ではホソカワ社製の横型攪拌結晶化機で130℃で20分間結晶化してチップ表面の結晶化度を36%とし、次いでUPM社製の横型赤外線照射装置を設置した横型の結晶化機を用いてチップ温度が150℃になるように結晶化後、連続式固相重合反応塔に供給して210℃の窒素ガス雰囲気下で固相重合した。ブロッキングは発生せず順調にポリエステルを製造することが出来た。
なお、予備結晶化装置、結晶化装置、固相重合装置には加熱窒素ガスを流通させた。
赤外線放射装置の赤外線ヒーターからの赤外線の波長は、3〜11μmの範囲であり、赤外線ヒーターのエネルギー分布が最大である波長が7〜9μmの範囲であった。
結果を表1に示す。
なお、赤外線照射装置で結晶化後のチップの平均結晶融解熱は約25(mJ/mg)であった。
【0109】
(実施例3)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、高純度テレフタル酸(全酸成分の100.0モル%相当分)とエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールのスラリーおよび三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cmGで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、燐酸のエチレングリコール溶液を連続的に供給して、撹拌下、約260℃、0.05kg/cmGで所定の反応度まで反応を行った。このエステル化反応生成物を連続的に第1重合反応器に送り、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに第3重合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで1時間重合させた。得られた樹脂の極限粘度(IV)は0.55、1,4−シクロヘキサンジメタノールの含有量は5.0モル%、DEG含有量は2.0モル%、結晶化度は約1%であった。この樹脂を図1に示すように供給し、予備結晶化、結晶化、次いで固相重合を連続的に実施した。予備結晶化ではホソカワ社製の横型攪拌結晶化機で130℃で20分間結晶化してチップ表面の結晶化度を36%とし、次いでUPM社製の横型赤外線照射装置を設置した横型の結晶化機を用いてチップ温度が150℃になるように結晶化後、連続式固相重合反応塔に供給して210℃の窒素ガス雰囲気下で固相重合した。ブロッキングは発生せず順調にポリエステルを製造することが出来た。
なお、予備結晶化装置、結晶化装置、固相重合装置には加熱窒素ガスを流通させた。
赤外線放射装置の赤外線ヒーターからの赤外線の波長は、3〜11μmの範囲であり、赤外線ヒーターのエネルギー分布が最大である波長が7〜9μmの範囲であった。
結果を表1に示す。
なお、赤外線照射装置で結晶化後のチップの平均結晶融解熱は約25(mJ/mg)であった。
【0110】
(比較例1)
実施例1で用いた装置から予備結晶化装置を取り外し、実施例1の溶融重縮合ポリマーを直接、赤外線照射設備を設置した結晶化装置に供給しチップ温度が160℃になるように結晶化処理を実施したが、チップのブロッキングが発生し、チップの安定的な輸送が出来なくなった。したがって、その後の処理は中止した。
結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1で用いた装置から予備結晶化装置を取り外し、実施例2の溶融重縮合ポリマーを直接、赤外線照射設備を設置した結晶化装置に供給しチップ温度が150℃になるように結晶化処理を実施したが、チップのブロッキングが発生し、チップの安定的な輸送が出来なくなった。したがって、その後の処理は中止した。
結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1で用いた装置から予備結晶化装置を取り外し、実施例3の溶融重縮合ポリマーを直接、赤外線照射設備を設置した結晶化装置に供給しチップ温度が150℃になるように結晶化処理を実施したが、チップのブロッキングが発生し、チップの安定的な輸送が出来なくなった。したがって、その後の処理は中止した。
結果を表1に示す。
(比較例4)
結晶化装置として赤外線照射装置を設置していない縦型連続式結晶化装置を用いる以外は実施例1と同様にして210℃の窒素ガス雰囲気下で固相重合を行った。反応装置の概略は図2に示す。
結晶化温度は200℃とした。固相重合時にチップのブロッキングが発生し、順調なポリエステルの生産は困難であった。結果を表1に示す。
【0111】
(実施例4)
特許3444301号公報で用いた水処理乾燥装置に設置した熱風式乾燥機をUPM社製の横型赤外線照射装置付乾燥機に変更した水処理乾燥装置を用いて、実施例1記載の固相重合後のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称)チップを90℃で3時間水処理した後に、赤外線照射装置付乾燥機を用いてチップ温度が160℃になるようにして乾燥した所、1時間でレジン水分率が0.1wt%になり効率良く乾燥できた。赤外線放射装置の赤外線ヒーターからの赤外線の波長は、1〜8μmの範囲であり、赤外線ヒーターのエネルギー分布が最大である波長が2〜4μmの範囲であった。結果を表2に示す。
(比較例5)
実施例1記載で得られた、PETを特許3444301号公報に記載の水処理乾燥装置を用いて90℃で3時間水処理後乾燥を実施した所、5時間で水分率が0.1wt%となり長時間乾燥が必要であった。結果を表2に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明により、ポリエステルの製造時の、結晶化工程や固相重合工程におけるポリエステルチップの融着を防止し、固相重合や乾燥をきわめて効率的に実施する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施例1〜3で用いた装置
【0116】
【図2】比較例4で用いた装置
【符号の説明】
【0117】
1 : 予備結晶化設備
2 : 赤外線照射設備設置結晶化装置
3 : 固相重合塔
5 : 予備結晶化設備
6 : 縦型結晶化設備
7 : 固相重合塔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融重縮合ポリエステルを、加熱処理して予備結晶化させ、次いで、赤外線放射装置によって結晶化することを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記の赤外線放射装置によって結晶化させた溶融重縮合ポリエステルを固相重合することを特徴とする請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項3】
溶融重縮合ポリエステルをチップ化し、ポリエステルチップ表面の結晶化度が5%以上になるように予備結晶化させ、次いで、赤外線放射装置によってポリエステルチップ全体の結晶化度が35〜65%になるように結晶化後、固相重合することを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項4】
赤外線放射装置により結晶化されたポリエステルチップ表面の結晶化度とチップ内層の結晶化度の差が5%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
【請求項5】
DSCにより測定される、前記の赤外線放射装置によって結晶化されたポリエステルのチップ内層の結晶融解熱とチップ表面の結晶融解熱の差が5(mJ/mg)以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
【請求項6】
吸湿したポリエステルを、加熱処理して予備結晶化させ、次いで、赤外線放射装置によって処理して水を除去することを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項7】
請求項2または3のいずれかに記載のポリエステルの製造方法によって得られた固相重合ポリエステルを水と接触処理後、赤外線放射装置によって処理して水を除去することを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項8】
ポリエステルが共重合成分を1〜20モル%含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
【請求項9】
ポリエステルがエチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステルであり、共重合成分として、ジエチレングリコールをグリコール成分中の1〜5モル%、および/または、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸をジカルボン酸成分中の1〜20モル%含むことを特徴とする請求項8に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項10】
ポリエステルがエチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステルであり、共重合成分として、ジエチレングリコールをグリコール成分中の1〜5モル%、および/または、1,3−トリメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、ビスフェノールAのアルキレングリコール付加物からなる群から選ばれる少なくとも一種のグリコールをグリコール成分中の1〜20モル%含むことを特徴とする請求項8に記載のポリエステルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−231269(P2007−231269A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26855(P2007−26855)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】