説明

ポリエステル化粧板の製造方法

【課題】 環境を汚染する虞がなくて、平滑性に優れると共に耐擦傷性に優れたポリエステル化粧板を提供することである。
【解決手段】 化粧板用基材の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、前記化粧シート層上に不飽和ポリエステル樹脂を塗布し、次いで酸素遮断用フィルムを前記不飽和ポリエステル樹脂に当接して一体的に硬化させた後に、前記酸素遮断用フィルムを剥離してポリエステル樹脂層を形成したポリエステル化粧板において、前記不飽和ポリエステル樹脂が分子内に不飽和基を有するポリエステルと架橋剤としてのアクリレート単量体とからなり、前記ポリエステル樹脂層の平均表面粗さ(Ra)が0.3μm以下、鉛筆硬度が5H以上であることを特徴とするポリエステル化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種家具類、キッチン、あるいは、建築内装材等に使用されるポリエステル化粧板に関し、特に、環境を汚染する虞がなく、表面平滑性に優れると共に耐擦傷性に優れたポリエステル化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のポリエステル化粧板は、化粧板用基材上に、たとえば、木目等の印刷模様が形成された化粧紙を接着剤を介してロールプレス法にて貼着し、その上から不飽和ポリエステル樹脂を塗布して後に、この面を空気(酸素)遮断用フィルムで被覆し、不飽和ポリエステル樹脂が硬化後に前記空気(酸素)遮断用フィルムを剥離することにより製造される。
【0003】
一般に、不飽和ポリエステル樹脂は不飽和酸と飽和多塩基酸を併用して多価アルコールと反応して得られる分子内に不飽和基を有するポリエステルと架橋剤として働くビニルモノマーとの混合物であり、架橋性(重合性)に優れると共に入手し易く安価であるなどの理由から架橋剤としてスチレン単量体が一般的に用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載の発明は、不飽和ポリエステル樹脂中から出てくるスチレンモノマーの影響を受けることなくシリコン樹脂賦形型の耐用回数を向上させることを目的としているが、反応後に未反応物やダイマー、あるいは、トリマーとして残る虞があり、これが各種家具類、キッチン、あるいは、建築内装材等に使用されたポリエステル化粧板から経時的に空気中に放出されて、環境を汚染する可能性があり、このような虞のない不飽和ポリエステル樹脂からなるポリエステル化粧板が要望されるようになってきた。
【特許文献1】特開平6−99560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、環境を汚染する虞がなくて、平滑性に優れると共に耐擦傷性に優れたポリエステル化粧板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明は、化粧板用基材の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、前記化粧シート層上に不飽和ポリエステル樹脂を塗布し、次いで酸素遮断用フィルムを前記不飽和ポリエステル樹脂に当接して一体的に硬化させた後に、前記酸素遮断用フィルムを剥離してポリエステル樹脂層を形成したポリエステル化粧板において、前記不飽和ポリエステル樹脂が分子内に不飽和基を有するポリエステルと架橋剤としてのアクリレート単量体とからなり、前記ポリエステル樹脂層が
(1)平均表面粗さ(Ra):0.3μm以下
(2)硬 度:鉛筆硬度が5H以上
の特性を有することを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載のポリエステル化粧板において、前記アクリレート単量体が、多官能アクリレートを50質量%以上含有していることを特徴とするものである。このように構成することにより、表面平滑性と耐擦傷性に優れたポリエステル化粧板を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエステル化粧板は、架橋剤としてスチレンモノマーを用いない不飽和ポリエステル樹脂からなるために環境を汚染する虞がなくて、かつ、鉛筆硬度に優れると共に表面平滑性においても優れるという極めて顕著な効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳述する。
図1は本発明にかかるポリエステル化粧板の一実施例を図解的に示す層構成図であって、ポリエステル化粧板1は化粧板用基材2上に接着剤層3を介して化粧シート層4を積層し、該化粧シート層4上に不飽和ポリエステル樹脂を塗布し、次いで平均表面粗さが0.001〜0.03μmの酸素遮断用フィルムを前記不飽和ポリエステル樹脂に当接して一体的に硬化させた後に、前記酸素遮断用フィルムを剥離してポリエステル樹脂層5を形成したものである。前記ポリエステル樹脂層5は、分子内に不飽和基を有するポリエステルと架橋剤としての単官能および/ないし多官能アクリレート単量体とからなる不飽和ポリエステル樹脂で形成されたものであって、このような不飽和ポリエステル樹脂を用いることにより形成された前記ポリエステル樹脂層5は、スチレン系単量体を架橋剤として用いた不飽和ポリエステル樹脂で形成されたものにおいて危惧されたスチレンモノマーやダイマー、あるいは、トリマーの経時的な空気中への放出のない環境に優しいポリエステル化粧板とすることができると共に、光沢性や耐擦傷性に優れたポリエステル化粧板とすることができる。
【0010】
前記化粧板用基材2としては、合板、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボード等の木質系基材、珪酸カルシウム板、石綿スレート板、セメントスレート板等の無機系基材を適宜選択して用いることができる。
【0011】
また、前記化粧シート層4を構成する素材としては、坪量が30〜100g/m2の建材用プリント用紙、純白紙、あるいは、合成樹脂を混抄させて層間強度を強化した薄葉紙、酸化チタン等の不透明顔料を混抄したチタン紙等の紙質系素材、不織布等を用いることができ、上記材料の中でも、不飽和ポリエステル樹脂の含浸適性や化粧板用基材2の隠蔽の点からチタン紙が最も適当である。また、前記化粧シート層4は、たとえば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄等の印刷絵柄層(図示せず)が前記素材上に設けられた層であって、この印刷絵柄層(図示せず)はグラビア印刷法等の印刷手段により印刷インキにより形成される。前記印刷インキは、ビヒクルとしてニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、アルキッド系樹脂等の単独、あるいは、混合した樹脂が用いられ、この樹脂に有機または無機系顔料、染料、光輝性顔料等の着色剤、体質顔料、安定剤、可塑剤、溶剤等を適宜混合したものである。
【0012】
前記化粧板用基材2と前記化粧シート層4とは、前記接着剤層3によりロールプレスにより積層され、前記接着剤層3としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル−尿素系樹脂等の通常のエマルジョン型のものが適当であり、塗布量としては、前記化粧板用基材2の材質により適宜決めればよいものである。
【0013】
前記ポリエステル樹脂層5としては、分子内に不飽和基を有するポリエステルと単官能および/ないし多官能アクリレート単量体および重合開始剤、また、必要に応じて重合促進剤等を添加した不飽和ポリエステル樹脂で形成される。分子内に不飽和基を有するポリエステルは不飽和多塩基酸と多価アルコール、あるいは、不飽和多塩基酸と飽和多塩基酸を併用して多価アルコールと反応して得られるものである。
【0014】
前記不飽和多塩基酸の好ましいものを例示するならば、たとえば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸などのα,β−不飽和二塩基酸やジヒドロムコン酸等のβ,γ−不飽和二塩基酸を挙げることができる。これらの化合物は一種ないし二種以上用いることができる。
【0015】
また、前記飽和多塩基酸の好ましいものを例示するならば、たとえば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、または、これらのジアルキルエステル等を挙げることができる。これらの化合物は一種ないし二種以上用いることができる。
【0016】
また、多価アルコールとしては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイドないしプロピレンオキサイドないしブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加物等を挙げることができる。これらは一種ないし二種以上用いることができる。
【0017】
本発明で使用される分子内に不飽和基を有するポリエステルは、上記した酸成分と上記した多価アルコール成分とを周知の方法で縮合反応させて得られるものであり、酸成分と多価アルコール成分とのモル比は、酸成分/多価アルコール成分=0.9〜1.3が好ましい。また、前記ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、1200〜5000の範囲にあるものが好ましい。数平均分子量(Mn)が1200未満の場合は、樹脂硬化塗膜の機械的強度が低く、5000超の場合は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が高くなるために好ましくない。
【0018】
次に、本発明で使用される架橋剤について説明する。前記架橋剤としては、アクリレート単量体が好適であり、これを例示するならば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の単官能単量体、あるいは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能単量体を挙げることができる。これらの単量体は、一種ないし二種以上用いることができる。また、ポリエステル樹脂層5の表面平滑性を得ることと優れた耐擦傷性を得ることから、本発明に用いるアクリレート単量体の配合量は不飽和ポリエステル樹脂の樹脂分に対して60質量%以下であり、アクリレート単量体としては多官能アクリレートを50質量%以上含有し、かつ、二重結合当量、すなわち、重合性の二重結合1個当たりの分子量が50〜180の範囲、好ましくは80〜150の範囲の短鎖単量体が適当である。多官能アクリレートの含有量が50質量%未満では耐擦傷性に劣り、また、二重結合当量が50未満では表面平滑性や耐擦傷性に劣り、180超では重合体としたときの密度が粗になるために耐熱性に劣る。また、塗布適性や硬化速度等を考慮して単官能アクリレートを適宜用いてもよいものである。
【0019】
また、不飽和ポリエステル樹脂には、硬化速度を調整するために重合開始剤、重合促進剤、重合禁止剤等を使用することができる。
【0020】
また、不飽和ポリエステル樹脂に添加される重合開始剤としては、たとえば、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)、ベンゾイルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル開始剤等の周知のものから適宜選択して用いられる。また、重合促進剤としては、たとえば、ナフテン酸コバルト等のコバルト化合物、バナジウム化合物、マンガン化合物等の金属化合物、ジメチルニトリル等のアミン系化合物などを用いることができる。また、重合禁止剤としては、たとえば、ハイドロキノン、トリハイドロキノン、ベンゾキノン、トリハイドロベンゼン等を用いることができる。なお、上記したそれぞれの硬化速度調整剤は、併用してもよいものである。
【0021】
次に、酸素遮断用フィルムについて説明する。酸素遮断用フィルムは、不飽和ポリエステル樹脂を確実に硬化させると共に、硬化したポリエステル樹脂層5の表面を平滑にして光沢をもたせるために用いられるものである。これに用いるフィルムとしては、酸素遮断性に優れ、硬化したポリエステル樹脂層5と離型可能な材質であれば、特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂層5の表面平滑性を得るためには平均表面粗さ(Ra)として0.001〜0.03μmのフィルムで賦型するのが適当であり、これを考慮すると平均表面粗さ(Ra)が概ね0.02μm程度である二軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)が最適である。なお、平均表面粗さ(Ra)は、JIS−B−0601に準じて測定した値であり、平均表面粗さ(Ra)の下限値は0が好ましい値であるが、0に限りなく近いという意味で0.001μmと規定したものであり、本発明に用いる酸素遮断用フィルムはその平均表面粗さ(Ra)が0.03μm以下のものであれば、表面光沢に優れたポリエステル樹脂層5を得ることができる。また、前記酸素遮断用フィルムは必要に応じて一方の面ないし両面に離型処理を施してもよいものである。この理由としては、本発明においては、架橋剤としてアクリレート単量体を用いるために、前記酸素遮断用フィルムと前記ポリエステル樹脂層5との濡れがよくなり、剥離し難くなる虞があるからである。前記離型処理としては、たとえば、アクリルメラミン樹脂を塗布して乾燥・焼付けすればよいものである。
【0022】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0023】
6mm厚さのダイライト〔大建工業(株)製:商品名〕の一方の面全面にウレタン系2液硬化型接着剤〔中央理化工業(株)製:リカボンドBA−11L/BA−11B=100/2.5〕をロールコート法にてウエット状態で10g/尺2塗布し、予め一方の面にアクリル系インキで木目柄をグラビア印刷した80g/m2のチタン紙を木目柄が表出するようにラミネートロールにてウエットラミネートし、その後にホットプレス機(プレス温度100℃、プレス圧100Kg/cm2、プレス時間40秒)にてプレスすると共に冷却して後に、前記チタン紙上に表1のAの配合の不飽和ポリエステル樹脂組成物を200μm厚さに塗布し、この上に100μm厚さの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム〔帝人(株)製:平均表面粗さ(Ra):0.02μm〕を被覆し、ゴムロールで圧延、脱泡し、40℃で2時間加熱して不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させた後に前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して本発明のポリエステル化粧板を得た。
【0024】
[比較例1]
不飽和ポリエステル樹脂組成物を表1のBの配合のものを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例とするポリエステル化粧板を得た。
【0025】
【表1】

【0026】
上記で作製した実施例1、および、比較例1のポリエステル化粧板について、鉛筆硬度、表面粗さを評価すると共に、目視で蛍光灯の映り込み具合を評価し、その結果を表2に纏めて示した。
【0027】
【表2】

【0028】
表2からも明らかなように、実施例1のポリエステル化粧板は比較例1に比べて、鉛筆硬度に優れると共に平均表面粗さ(Ra)が小さくて表面平滑性に優れるために、蛍光灯のランプ形状を正確に見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかるポリエステル化粧板の一実施例を図解的に示す層構成図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ポリエステル化粧板
2 化粧板用基材
3 接着剤層
4 化粧シート層
5 ポリエステル樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧板用基材の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、前記化粧シート層上に不飽和ポリエステル樹脂を塗布し、次いで酸素遮断用フィルムを前記不飽和ポリエステル樹脂に当接して一体的に硬化させた後に、前記酸素遮断用フィルムを剥離してポリエステル樹脂層を形成したポリエステル化粧板において、前記不飽和ポリエステル樹脂が分子内に不飽和基を有するポリエステルと架橋剤としてのアクリレート単量体とからなり、前記ポリエステル樹脂層が下記の特性を有することを特徴とするポリエステル化粧板。
(1)平均表面粗さ(Ra):0.3μm以下
(2)硬 度:鉛筆硬度が5H以上
【請求項2】
前記アクリレート単量体が、多官能アクリレートを50質量%以上含有していることを特徴とする請求項1記載のポリエステル化粧板。

【図1】
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【公開番号】特開2009−51217(P2009−51217A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249419(P2008−249419)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【分割の表示】特願2003−121016(P2003−121016)の分割
【原出願日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】