説明

ポリオレフィンからの、コントロールされたフリーラジカルグラフティング

コントロールフリーラジカル反応を開始する官能性能力を有する新規なモノマー(ここでは“開始モノマー”)と、コントロールされたフリーラジカル重合反応からグラフト成分が由来する十分にコントロールされたポリエチレングラフトポリマーの形成のための、これらの開始モノマーを用いる新規なプロセスとが記載されている。前記開始モノマーは、所定時間、所定量の5-ノルボルネン-2-オールと水素化物若しくはアミンとを混合して混合物を調製し、前記混合物に所定量のアルキル若しくはアシルハロゲン化物を加えることで作製される。開始モノマーを用いたオレフィンの重合は、金属化合物の存在下で導かれ、ここで、該金属化合物は、VIII族に属する遷移金属錯体から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許出願10/377,491号(出願日2003年2月28日)、及び米国特許出願10/378,957号(出願日2003年3月3日)の一部継続出願であり、これらは、参照によって、そっくりそのままここにおいて組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般に、官能性の付与されたモノマーを備えたオレフィンの共重合に関し;特に、フリーラジカル開始剤で官能化された置換オレフィンのデザイン及び合成、エチレンとの共重合、そして、コントロールされたフリーラジカル重合経由の得られたエチレン共重合体からの商品モノマーのグラフティングに関する。
【背景技術】
【0003】
コントロールされた方法で、ポリオレフィン材料に極性官能基を組み込むことは、興味深いことであるが、残念なことに、たいていのポリオレフィンの開始剤システムは、極性基に敏感であり、そのようなものは、官能性の付与されたコモノマーの出現により、不活性化される[1]。ポリオレフィンの触媒反応に於ける最近の進歩は、官能性の許容範囲を改善したが、しかしながら、ほとんどの触媒は、官能化されたコモノマーの多くの量を組み込むことができず[2, 3]、より少ないもののみが、例えば、ブロック共重合体、テーパード共重合体及びテトラブロック共重合体等の高オーダーのポリマー構造を形成するのに用いられ得る重合反応を介して、安価な官能化された商品モノマーを組み込み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、商業的に関連のあるモノマーを用いたポリオレフィン物質に官能性を多く取り込むことに対するニーズを満たす。共重合に介在する疑似のリビング金属が用いられる場合には、これとリビングフリーラジカル技術によって提供されるコントロールは、官能化された商品モノマーのグラフト化された側鎖のポリエチレンのバックボーンを有するポリマー構造の広い範囲へのアクセスを許す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態に於いては、開始モノマーを製造するプロセスは、開示されており、所定時間、所定量の5-ノルボルネン-2-オールと水素化物又はアミンとを混合して混合物を調製することと;前記混合物に所定量のアルキル又はアシルハロゲン化物を添加することとを含んでいる。
【0006】
特別な実施形態に於いては、開始モノマーを製造するためのプロセスは、開示され、ここでは、所定量の5-ノルボルネン-2-オールが、水素化カリウム若しくはトリエチルアミンとともに混合され;N-(1-(4'-クロロメチル)フェニルエトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,5-トリメチル3-(1-(4'-クロロメチル)フェニルエトキシ)-4-フェニル-3-アザヘキサン、及び2-ブロモイソ酪酸臭化物からなる群から選ばれる、所定量のハロゲン化物を加える。
【0007】
一態様に於いては、前記プロセスによって調合されうる開始モノマーは、特に限定されるものではないが、5-ノルボルネン-2-イル4-(1-(1-(2,2,6,6-テトラメチルピペラジノキシ))エチル)ベンジルエーテル、5-ノルボルネン-2-イル4-(1-(3-(2,2,5-トリメチル4-フェニル-3-アザヘキソキシ))エチル)ベンジルエーテル、及び5-ノルボルネン-2-イル2-ブロモ-2-メチルプロピオン酸塩を含む。
【0008】
一実施形態に於いて、オレフィンの共重合のプロセスは、開示され、開始のモノマーとオレフィンを重合させることと;金属化合物の存在下で前記重合を実施することとを含んでおり、前記金属化合物が、VIII族に属する遷移金属錯体を含んでおり、その錯体が、2つの中性の金属錯体の組み合わせにより構成されており、その組み合わせが、一般式I-IVを有しており、
【化1】

ここで、
Mが、VIII族に属する遷移金属であり;
Aが、π-アリル、置換π-アリル、π-ベンジル、又は置換π-ベンジルであり;
Xが、N又はPであり;
Yが、O、CH2、又はSであり;
Lが、N又はP又は中性で2つの電子供与体配位子を形成しうる構造物であり;
L1が中性の単座配位子であり且つL2がモノアニオンの単座配位子であり、若しくは、ひとまとめにされたL1とL2がモノアニオンの二座配位子であり、前記モノアニオンの単座配位子又は前記モノアニオンの二座配位子が前記オレフィンに付加できるものであり;
Bが、共有結合により不飽和炭素とLとをつなぐブリッジであり;

R1、R2、R3A及びR3Bが、同一若しくは異なっており、それぞれ独立して水素、ヒドロカルビル基、又は官能基を有する置換ヒドロカルビルであり;
R3Bが、BがLに二重結合で結合されているときは存在しない。
【0009】
一態様に於いては、前記オレフィンは、式R5CH=CH2に示される化合物(ここで、R5は水素、ヒドロカルビル基、官能基を有するヒドロカルビル基);シクロペンテン;スチレン;ノルボルネン;極性オレフィン;置換シクロペンテン;置換スチレン;官能基を有する置換ノルボルネン誘導体;及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる。更に特別な態様では、R1及びR3が(2,6-ジイソプロピルフェニル)であり;R2がメチルであり;XとLが窒素であり;Yが酸素であり;Bが炭素であり;L1がCH2Phであり;そしてL2がPMe3である。
【0010】
更に他の一態様に於いては、前記金属錯体は、[N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-(2,6-ジイソプロピルフェニルイミノ)プロパンアミデート-κ2 N,O](η1-ベンジル)ニッケル(トリメチルホスフィン)と、ビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケルとの組み合わせを含む。
【0011】
上述の共重合プロセスによって調合された製品は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、若しくはテーパード共重合体である。
【0012】
また、更に他の一態様に於いては、上述の重合反応は、グラフトテトラブロック共重合体、グラフト末端官能性/ブロック共重合体、グラフトランダム共重合体、グラフトテーパード共重合体、若しくはグラフトテーパードテトラブロック共重合体を生成するように、不安定化されたn-ブチルアクリル酸塩の存在を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、いくつかの典型的なノルボルネン開始モノマーの化学構造を示す。
【図2】図2は、前記開始モノマーを用いて合成され得るいくつかのタイプの共重合体構造を示す。
【図3】図3は、前記開始モノマーを用いて合成され得るいくつかのタイプのグラフト共重合体構造を示す。
【図4】図4は、ゲル浸透クロマトグラフのオーバーレイのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のより完全な理解のために、添付の図面と併せて次の説明が参照される。
【0015】
ここでは、コントロールフリーラジカル反応を開始する官能性能力を有する新規なモノマー(ここでは“開始モノマー”)と、コントロールされたフリーラジカル重合反応からグラフト成分が由来する十分にコントロールされたポリエチレングラフトポリマーの形成のための、これらの開始モノマーを用いる新規なプロセスとが記載されている。
【0016】
すべての例は、標準グローブボックス及びSchlenk技術を用いて不活性雰囲気下で行われた。トルエン、THF、ヘキサン及びペンタンのような合成のための溶媒は、要求されるように、ベンゾフェノンケチルから蒸留された。すべての重合反応は、以前に述べられているように、ガラス反応器で行われた[5]。重合実行のためのトルエンは、ナトリウム/カリウム合金から蒸留された。ニッケルは、金属錯体のための遷移金属として選ばれた。
【0017】
L(7Pr2)Ni(CH2Ph)(PMe3)[L = N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-(2,6- ジイソプロピルフェニルイミノ)プロパンアミド][5]及びNi(COD)2[6]は、報告されているように合成され、重合での使用前に再結晶化により精製された。NMRスペクトルは、Varian Unity 400又は500分光計を用いて得られた。前記ポリマーの1H NMR及び13C NMRスペクトルは、約115℃での混合溶媒(C6D6/1,2,4-トリクロロベンゼン 1:4体積比)及び約120℃での混合溶媒(ポリエチレンポリマーのためのC6D6/o-ジクロロベンゼン 約7 % v/v、及び前記共重合体のための約9 % v/v)で得られた。GPC分析は、日本のMitsubishi Chemical Corporationで、約135℃でのo-ジクロロベンゼンで行われた。
【0018】
開始モノマーは、適切なアルキル若しくはアシルハロゲン化物への5-ノルボルネン-2-オールの求核付加反応により生成された。典型的なノルボルネンモノマーの構造は、図1に示されている。
【0019】
前記開始モノマーを合成するのに用いられ得る5-ノルボルネン-2-オール以外の置換オレフィンは、限定されるものではないが、エノール、ヒドロキシ置換スチレン若しくはヒドロキシ置換アクリル酸塩を含む。
【0020】
前記開始モノマーを合成するのに用いられ得るアルキル若しくはアシルハロゲン化物は、限定されるものではないが、N-(1-(4'-クロロメチル)フェニルエトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,5-トリメチル3-(1-(4'-クロロメチル)フェニルエトキシ)-4-フェニル-3-アザヘキサン[7]、及び2-ブロモイソ酪酸臭化物を含む。
【0021】
前記開始モノマーは、限定されるものではないが、テトラブロック共重合体、末端官能性/ブロック共重合体、ランダム共重合体、テーパード共重合体、及びテーパードテトラブロック共重合体を含む様々な共重合体構造を形成するのに用いられ得る(図2参照)。
【0022】
一実施形態では、これらのモノマーは、限定されるものではないが、グラフトテトラブロック共重合体、グラフト末端官能性/ブロック共重合体;グラフトランダム共重合体、グラフトテーパード共重合体、及びグラフトテーパードテトラブロック共重合体に対する様々なグラフトポリマー構造を形成するのに用いられ得る(図3参照)。
【0023】
グラフトポリマーを生成する方法は、コントロールされたフリーラジカル開始剤たる官能化されたノルボルネン(イニマー)の、エチレンとの該イニマーの共重合による、ポリエチレン内への混入の最初を含む。これは、Ni開始剤システムをコントロールする官能性、耐性及び構造物を用いることによって遂行される。第2ステップでは、それから、開始剤官能性を有し結果として生じたポリマーは、重合を開始し、グラフトポリマーをもたらし得る。
【0024】
例1
5-ノルボルネン-2-イル4-(1-(1-(2,2,6,6-テトラメチルピペラジノキシ))エチル)ベンジルエーテル(開始モノマー1)は、下記式に従って合成された。
【化2】

【0025】
前記合成は、不活性雰囲気下で実施された。5-ノルボルネン-2-オール溶液(THF100 ml中、0.500 g, 4.54 mmol)には、水素化カリウム(0.188 g, 4.70 mmol)が少量15分以上かき混ぜながら加えられた。30分後に、N-(1-(4'-クロロメチル)フェニルエトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン[7](THF30 mL中、1.27 g, 4.1 mmol)が5分以上加えられた。24時間室温でかき混ぜた後、この混合物はガラスろ過器でろ過され、得られたろ液は蒸発乾固された。この残留物は、エーテル(250 mL)に再び溶かされ、水(3x500 mL)で洗浄された。それから、この有機層は乾燥され、そして、この溶媒は真空内で除去され、1.45 gの粗製品を与えた。それから、該製品は、固定相としてEMDTM Silica Gel 60を使用するカラムクロマトグラフィーを用い、40:1で溶離し、それから20:1のヘキサン/エチルアセテートへ徐々に増加することにより精製されて、粘性淡黄色油として純製品1.15 g(73%の収率)を提供した。1H-NMR (200 MHz, CDCl3, 298 K): エンド異性体; δ 7.3-7.1 (m, 4H), 6.30 (m, 1 H), 6.01 (m, 1 H), 4.73 (q, 1 H), 4.43 (s, 2H), 4.18 (m, 1 H), 3.05 (m, 1 H), 2.73 (m, 1 H), 1.95 (m, 1 H), 1.60-0.70 (m, 21 H), 0.60 (br. s, 3H); エキソ異性体, δ 7.3-7.1 (m, 4H), 6.13 (m, 1 H), 5.86 (m, 1 H), 4.71 (q, 1 H), 4.43 (s, 2H), 3.45 (m, 1 H), 2.88 (m, 1 H), 2.73 (m, 1 H), 1.75-0.75 (m, 22H)1 0.63 (br. s, 3H)。
【0026】
例2
5-ノルボルネン-2-イル4-(1-(3-(2,2,5-トリメチル4-フェニル-3-アザヘキソキシ))エチル)ベンジルエーテル(開始モノマー2)は、下記式に従って合成された。
【化3】

【0027】
前記合成は、不活性雰囲気下で実施された。5-ノルボルネン-2-オール溶液(THF100 ml中、0.500 g, 4.54 mmol)には、水素化カリウム(0.188 g, 4.70 mmol)が少量15分以上かき混ぜながら加えられた。30分後に、2,2,5-トリメチル3-(1-(4'-クロロメチル)フェニルエトキシ)-4-フェニル-3-アザヘキサン[7]溶液(THF30 mL中、1.52 g, 4.06 mmol)が5分以上加えられた。24時間室温でかき混ぜた後、この混合物はガラスろ過器でろ過され、得られたろ液は蒸発乾固された。この残留物は、エーテル(250 mL)に再び溶かされ、水(3x500 mL)で洗浄された。それから、この有機層は乾燥され、そして、この溶媒は真空内で除去され、1.72 gの粗製品を与えた。それから、該製品は、固定相としてEMDTM Silica Gel 60を用いるカラムクロマトグラフィーを用い、40:1で溶離し、それから20:1のヘキサン/エチルアセテートへ徐々に増加することにより精製されて、粘性無色油として純製品1.39 g(76%の収率)を提供した。1H-NMR (200 MHz, CDCI3, 298 K): エンド異性体, δ 7.5-7.1 (m, 18H, どちらともジアステレオマー), 6.35 (m, 2H, どちらともジアステレオマー), 6.04 (m, 2H, どちらともジアステレオマー), 4.92 (q+q, 2H, どちらともジアステレオマー), 4.52 (s, 2H1 ジアステレオマー A), 4.47 (d, 2H, ジアステレオマー B), 4.22 (m, 2H, どちらともジアステレオマー), 3.42 (d, 1 H, ジアステレオマー B), 3.32 (d, 1H, ジアステレオマー A), 3.09 (m, 2H, どちらともジアステレオマー), 2.80 (m, 2H, どちらともジアステレオマー), 2.35 (m, 2H, どちらともジアステレオマー), 1.98 (m, 2H, どちらともジアステレオマー), 1.65-0.70 (m, 38H, どちらともジアステレオマー), 0.55 (d, 3H, ジアステレオマー B), 0.22 (d, 3H, ジアステレオマー A); エキソ異性体, δ 7.5-7.1 (m, 18H, どちらともジアステレオマー), 6.17 (m, 2H1 どちらともジアステレオマー), 5.90 (m, 2H1 どちらともジアステレオマー), 4.89 (q + q, 2H, どちらともジアステレオマー), 4.55 (s, 2H1 ジアステレオマー A), 4.49 (d, 2H, ジアステレオマー B), 3.59 (m, 2H, どちらともジアステレオマー), 3.41 (d, 1H, ジアステレオマー B), 3.29 (d, 1H, ジアステレオマー A), 2.93 (m, 2H, どちらともジアステレオマー), 2.80 (m, 2H, どちらともジアステレオマー), 2.33 (m, 2H, どちらともジアステレオマー), 1.80-0.70 (m, 4OH, どちらともジアステレオマー), 0.53 (d, 3H, ジアステレオマー B), 0.21 (d, 3H, ジアステレオマー A)。
【0028】
例3
5-ノルボルネン-2-イル2-ブロモ-2-メチルプロピオン酸塩(開始モノマー3)は、下記式に従って合成された。
【化4】

【0029】
THF400 mL中の5-ノルボルネン-2-オール(7.52 g, 68.2 mmol)及びトリエチルアミン(10.25 g, 101.3 mmol)の脱気溶液に、2-ブロモイソ酪酸臭化物溶液(THF50 mL中、20.62 g, 89.7 mmol)が、0℃において賢い滴下により加えられた。この反応は、ゆっくり温め且つ室温で12時間混ぜて行われた。それから、この反応混合物は、ろ過され、この溶媒は、真空内で取り除かれた。それから、得られた残留物は、エーテル(250 mL)に再び溶かされ、水で洗浄され、飽和したNaHCO3(300 mL)は、水(500 mL)に従った。この有機層は無水硫酸マグネシウムで乾燥され、そして、この溶媒は蒸発されて21.03 gの粗製品を与えた。それから、該製品は、固定相としてEMDTM Silica Gel 60を用いるカラムクロマトグラフィーを用い、10:1のヘキサン/エチルアセテートで溶離することにより精製され、粘性無色油として純製品15.9 g(90% 収率)を提供した。1H-NMR (200 MHz, CDCI3, 298 K): エンド及びエキソ異性体; δ 6.35 (m, 1 H, エンド), 6.28 (m, 1 H1 エキソ), 6.05-5.95 (m, 2H, エンド及びエキソ), 5.32 (m, 1 H, エンド), 4.73 (m, 1 H エキソ), 3.21 (m, 1H, エンド), 2.90 (m, 1 H1 エキソ), 2.93-2.83 (m, 2H, エンド及びエキソ), 2.16 (m, 1H, エンド), 1.97-1.24 (m. 8H エンド, 10H エキソ), -0.01 (m, 1 H, エンド)。
【0030】
例4
開始モノマー2とのエチレンのランダム共重合は、下記式に示す。
【化5】

【0031】
ランダム共重合は、次の方法で導かれた。オートクレーブ反応器 (100 mL)は、グローブボックス内に取り付けられ、トルエン溶液の最終的な体積が30 mLとなるように、[N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-(2,6-ジイソプロピルフェニルイミノ)プロパンアミデート-κ2 N,O](η1-ベンジル)ニッケル(トリメチルホスフィン)(15.8 mg, 25 μmol)、ビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケル(27.6 mg, 100 μmol)、及びトルエンを加えられた。トルエン中の開始モノマー2の50重量%溶液2.02 gは、初期濃度が開始モノマー2の追加で0.075 Mとなるように、追加のじょうごへ加えられた。前記反応器は、グローブボックス内で密閉された。前記反応器は、エチレンラインに取り付けられ、そのガスは、50 psiで追加のじょうごを通じて反応器内に連続的に供給された。加圧された反応混合物は、20+/-2 0Cで混ぜられた。30分後、前記エチレンが放出され、前記重合を抑えるためにメタノールが加えられた。沈殿したポリマーは、ろ過により集められ、真空下で一晩乾燥され、1.82 gもたらした。開始モノマー2の混入は、見られ、1H NMR(200MHz、CDCI3、250C)によれば6モル%であり、Mn = 27,402 g/mol、Mw = 47,508 g/mol、PDI = 1.72が、ポリスチレン標準からのポリスチレン万能補正との相対的な屈折率GPC分析によって算出された。
【0032】
例5
エチレン及び開始モノマー2のブロック共重合は、下記式に従って行われた。
【化6】

【0033】
オートクレーブ反応器 (100 mL)は、グローブボックス内に取り付けられ、トルエン溶液の最終的な体積が30 mLとなるように、[N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-(2,6-ジイソプロピルフェニルイミノ)プロパンアミデート- κ2 N,O](η1-ベンジル)ニッケル(トリメチル ホスフィン)(15.8 mg, 25 μmol)、ビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケル(27.6 mg, 100 μmol)、及びトルエンを加えられた。トルエン中の開始モノマー2の50wt%溶液2.02 gは、初期濃度が開始モノマー2の添加で0.075 Mとなるように、前記追加のじょうごに加えられた。前記反応器は、グローブボックス内で密閉された。前記反応器は、エチレンラインに取り付けられ、そのガスは、20+/-2℃の一定温度を保ちながら100psiで該反応器内に連続的に供給された。13分後、前記エチレンが追加のじょうごに接続され、共重合体のブロックを始めるように圧力が120 psiへ立ち上げられた。共重合の2分後、前記エチレンが放出され、該重合を抑えるためにメタノールが加えられた。沈殿したポリマーは、ろ過により集められ、真空下で一晩乾燥され、2.50 gもたらした。開始モノマー2の混入は、1H NMR (C6D6/1,2,4-トリクロロベンゼン、1150C)で検出限界以下であり、Mn = 56,754 g/mol、Mw = 90,169 g/mol、PDI = 1.55は、ポリスチレン標準からのポリスチレン万能補正との相対的な屈折率GPC分析により算出された。DSCで測定されたようにTm = 127 0C。
【0034】
例6
ポリ[エチレン-b-(エチレン-co-2)へのポリ(n-ブチルアクリル酸塩)鎖のグラフティングは、下記式に従って行われた。
【化7】

【0035】
丸底フラスコは、150 mgのブロック共重合体、2 mLの不安定化されたn-ブチルアクリル酸塩、20 mLのデカリンを加えられ、20分間アルゴンで脱気された。アルゴンの流入のもとで、前記丸底の内容物は、混ぜられ、125℃に加熱された。125℃での36時間後、前記フラスコの内容物は、200 mLのメタノールを有するビーカーに注がれて、ポリマーを沈殿した。該ポリマーは、ろ紙で集められ、50℃真空内で乾燥された。抽出溶媒としてのジクロロメタンを用いたソックスレー抽出による精製は、ポリマー混合物から低分子量の不純物を取り除いて、高分子量ポリマーのみを離した。DSCで測定されたようにTm = 127 0C。
【0036】
例5からのポリマー及び例6からのポリマーのゲル浸透クロマトグラフオーバーレイは、図4に示される。例5(グレー)では、Mn = 56,754 g/mol, Mw = 90,169 g/mol, PDI = 1.55であり、且つ例6では、Mn = 77,025 g/mol, Mw = 138,749 g/mol, PDI = 1.80であったが、それは、ポリスチレン標準からのポリスチレン万能補正との相対的な屈折率GPC分析(o-ジクロロベンゼン, 135 0C)により算出された。
【0037】
参考文献
次の出版物は、参照によりここで組み込まれている:
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7. Bothe, M.; Schmidt-Naake, G. Macromol. Rapid Commun. 2003, 24, 609.
【0038】
本発明は、好ましい実施形態に関連して記載されているが、当業者にとって容易に理解され得るように、本発明の原理及び範囲から逸脱しないで変更及び変化が利用可能であろうことは理解され得る。従って、そのような変更は、請求項の範囲内で実施され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)所定時間、所定量の5-ノルボルネン-2-オールを水素化物若しくはアミンとともに混合して混合物を調製することと、
(b)前記混合物に所定量のアルキル若しくはアシルハロゲン化物を加えることとを備えてなる、開始モノマーを製造するプロセス。
【請求項2】
前記水素化物が水素化カリウムである請求項1のプロセス。
【請求項3】
前記アミンがトリエチルアミンである請求項1のプロセス。
【請求項4】
前記ハロゲン化物が、N-(1-(4'-クロロメチル)フェニルエトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,5-トリメチル3-(1-(4'-クロロメチル)フェニルエトキシ)-4-フェニル-3-アザヘキサン、及び2-ブロモイソ酪酸臭化物からなる群から選ばれる化合物である請求項1のプロセス。
【請求項5】
前記請求項1のプロセスによって調合された製品。
【請求項6】
(a)開始モノマーでオレフィンを重合させることと;
(b)金属化合物の存在下で前記重合を実施することとを含んでおり、前記金属化合物は、VIII族に属する遷移金属錯体を含んでおり、その錯体は、2つの中性の金属錯体の組み合わせにより構成されており、その組み合わせは、下記一般式I-IVを有しており、
【化1】

ここで、
Mは、VIII族に属する遷移金属であり;
Aは、π-アリル、置換π-アリル、π-ベンジル、又は置換π-ベンジルであり;
Xは、N又はPであり;
Yは、O、CH2、又はSであり;
Lは、N又はP又は中性で2つの電子供与体配位子を形成しうる構造物であり;
L1は中性の単座配位子であり且つL2はモノアニオンの単座配位子であり、若しくは、ひとまとめにされたL1とL2はモノアニオンの二座配位子であり、前記モノアニオンの単座配位子又は前記モノアニオンの二座配位子は前記オレフィンに付加できるものであり;
Bは、共有結合により不飽和炭素とLとをつなぐブリッジであり;

R1、R2、R3A及びR3Bは、同一若しくは異なっており、それぞれ独立して水素、ヒドロカルビル基、又は官能基を有する置換ヒドロカルビルであり;
R3Bは、BがLに二重結合で結合されているときは存在しない、オレフィンの共重合のプロセス。
【請求項7】
前記オレフィンは、式R5CH=CH2に示される化合物(ここで、R5は水素、ヒドロカルビル基、官能基を有するヒドロカルビル基);シクロペンテン;スチレン;ノルボルネン;極性オレフィン;置換シクロペンテン;置換スチレン;官能基を有する置換ノルボルネン誘導体;及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる請求項6の方法。
【請求項8】
R1及びR3が(2,6 - ジイソプロピルフェニル);R2がメチル;X及びLが窒素;Yが酸素;Bが炭素;L1がCH2Ph;及びL2がPMe3である請求項6のプロセス。
【請求項9】
Mがニッケルである請求項6のプロセス。
【請求項10】
前記金属錯体が、[N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-(2,6-ジイソプロピルフェニルイミノ)プロパンアミデート-κ2 N,O](η1-ベンジル)ニッケル(トリメチルホスフィン)及びビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケルの組み合わせを含む請求項6のプロセス。
【請求項11】
前記開始モノマーが、5-ノルボルネン-2-イル4-(1-(1-(2,2,6,6-テトラメチルピペラジノキシ))エチル)ベンジルエーテル、5-ノルボルネン-2-イル4-(1-(3-(2,2,5-トリメチル4-フェニル-3-アザヘキソキシ))エチル)ベンジルエーテル、及び5-ノルボルネン-2-イル2-ブロモ-2-メチルプロピオン酸塩を含む群から選ばれる化合物である請求項6のプロセス。
【請求項12】
前記製品が、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又はテーパード共重合体である請求項6の方法で調合された製品。
【請求項13】
(a)開始のモノマーでオレフィンを重合させることと;
(b)金属化合物の存在下で前記重合を実施することとを含んでおり、前記金属化合物は、VIII族に属する遷移金属錯体を含んでおり、その錯体は、2つの中性の金属錯体の組み合わせにより構成されており、その組み合わせは、一般式I-IVを有しており、
【化2】

ここで、
Mは、VIII族に属する遷移金属であり;
Aは、π-アリル、置換π-アリル、π-ベンジル、又は置換π-ベンジルであり;
Xは、N又はPであり;
Yは、O、CH2、又はSであり;
Lは、N又はP又は中性で2つの電子供与体配位子を形成しうる構造物であり;
L1は中性の単座配位子であり且つL2はモノアニオンの単座配位子であり、若しくは、ひとまとめにされたL1とL2はモノアニオンの二座配位子であり、前記モノアニオンの単座配位子又は前記モノアニオンの二座配位子は前記オレフィンに付加できるものであり;
Bは、共有結合により不飽和炭素とLとをつなぐブリッジであり;

R1、R2、R3A及びR3Bは、同一若しくは異なっており、それぞれ独立して水素、ヒドロカルビル基、又は官能基を有する置換ヒドロカルビルであり;
R3Bは、BがLに二重結合で結合されているときは存在せず、
(c)安定化されたn-ブチルアクリル酸塩の存在下で前記重合を導くことを含むグラフト共重合体を作製するオレフィンの共重合のプロセス。
【請求項14】
製品が、グラフトテトラブロック共重合体、グラフト末端官能性/ブロック共重合体、グラフトランダム共重合体、グラフトテーパード共重合体、又はグラフトテーパードテトラブロック共重合体である請求項13のプロセスで調合された製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−516674(P2010−516674A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546364(P2009−546364)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/024965
【国際公開番号】WO2008/088494
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】