説明

ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法、およびポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルムの製造方法

【課題】分子量の高いポリオレフィンを用いて樹脂組成物を製造する場合に、均一に混練されたポリオレフィン系樹脂組成物を製造する方法を提供する
【解決手段】重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリオレフィン(成分A)と、重量平均分子量が500〜3000のポリオレフィンワックス(成分B)を、成分A/成分B=30/70〜90/10の重量比で混練した後、重量平均分子量が5〜80万のポリオレフィン(成分C)を加えてさらに混練するポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。前記ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法において、任意の時点でフィラーを添加して混練するポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法、およびポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルムは、衛生材料、医療用材料、電池セパレータ等、多種用途に使用されている。中でもリチウムイオン二次電池のセパレータとして用いられるポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルムには、高い強度が求められることから、超高分子量ポリオレフィンを用いたフィルムが使用されている。
【0003】
超高分子量ポリオレフィンを用いて多孔質フィルムを製造する方法としては、重量平均分子量が5×10以上の高分子量ポリオレフィンと、重量平均分子量が2×10以下の熱可塑性樹脂と、微粒子とを混練し、シート状に成形した後、該シートを延伸して多孔質フィルムを製造する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−69221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記した方法で均質な多孔質フィルムを長時間製造する場合には、混練条件を厳密に制御する必要があり、加工性のさらなる改良が求められている。
一般的に樹脂を加工する際は、樹脂の分子量分布が広い方が加工性がよいと言われている。一方で、分子量の異なる2種類以上の樹脂を混合して得られる、分子量分布の広い樹脂組成物を加工する場合には、混合する各成分の分子量の差が小さいほうが均一に混練しやすいとも言われている。そのため特許文献1に記載されているような、分子量50万以上の高分子量ポリオレフィンと分子量2000以下の熱可塑性樹脂を混練する場合には、これら2成分の分子量の中間程度の分子量のポリオレフィンを添加するほうが、均一に混練しやすいと考えられる。
しかしながら、分子量が50万以上の高分子量ポリオレフィンと、分子量が数千以下のポリオレフィンという分子量の大きく異なる2成分と、その間の分子量のポリオレフィンとを同時に混練しても、均一に混練することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、分子量の高いポリオレフィンを用いて樹脂組成物を製造する場合に、均一に混練されたポリオレフィン系樹脂組成物を製造する方法、該樹脂組成物を用いる多孔質フィルムおよび積層多孔質の製造方法、その方法で得られる多孔質フィルムまたは積層多孔質フィルムを含む電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、[1]〜[4]に係るものである。
[1]重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリオレフィン(成分A)と、重量平均分子量が500〜3000のポリオレフィンワックス(成分B)を、成分A/成分B=30/70〜90/10の重量比で混練した後、重量平均分子量が5〜80万のポリオレフィン(成分C)を加えてさらに混練するポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
[2]上記[1]のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法において、任意の時点でフィラーを添加して混練するポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
[3]上記[2]の方法で得られるポリオレフィン系樹脂組成物を用いてシートを製造した後、該シートを少なくとも一軸方向に延伸するポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルムの製造方法。
[4]上記[2]の方法で得られるポリオレフィン系樹脂組成物を用いてシートを製造した後、以下の2つの工程を経てポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルムを製造する方法。
(1)シートを少なくとも一軸方向に延伸する工程
(2)シートから無機フィラーを除去する工程
[5]上記[3]または[4]の方法で得られるポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルムに、無機フィラーを含む多孔質層を積層する積層多孔質フィルムの製造方法。
[6]上記[3]もしくは[4]の方法で得られるポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルム、または[5]の方法で得られる積層多孔質フィルムを含む電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分子量の高いポリオレフィンを用いて樹脂組成物を製造する場合に、均一に混練されたポリオレフィン系樹脂組成物を提供することができる。該組成物を用いることにより、多孔質フィルムや積層多孔質フィルムを提供することができ、さらにこれらフィルムを用いて電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリオレフィン(成分A)と、重量平均分子量が500〜3000のポリオレフィンワックス(成分B)を、成分A/成分B=30/70〜90/10の重量比で混練した後、重量平均分子量が5〜80万のポリオレフィン(成分C)を加えてさらに混練するポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法である。
【0010】
本発明では、まず、分子量100万以上の超高分子量ポリオレフィン(成分A)と分子量500〜3000のポリオレフィンワックス(成分B)を、成分A/成分B=30/70〜90/10、好ましくは40/60〜80/20の重量比で予め混練した後、分子量5〜80万のポリオレフィン(成分C)を加えてさらに混練して、ポリオレフィン系樹脂組成物を製造する。
【0011】
成分Aと成分Bを混練した後、成分Cを加えてさらに混練する方法としては、(1)成分Aと成分Bを混練して一度ペレット化したものと、成分Cとを混練する方法や、(2)成分Aと成分Bを混練する装置に、成分Cを加えて混練する装置をつなげて連続的に混練する方法や、(3)成分Aと成分Bを混練する装置の混練途中に成分Cをサイドフィードする方法などが挙げられる。
混練温度は、使用する樹脂の融点以上、熱分解開始温度以下が好ましい。混練温度が融点以上であると均一な混練が可能となり、熱分解開始温度以下であれば、混練中に樹脂の劣化が抑えることが可能となる。ただし樹脂の分子量を調整するために、熱分解開始温度以上で混練することもできる。融点はDSCで、熱分解開始温度はTG/DTAで測定することができる。
【0012】
本発明における成分Aである超高分子量ポリオレフィンとは、重量平均分子量が100万以上のポリオレフィンである。ポリオレフィン系樹脂組成物を用いて得られる多孔質フィルムの強度の点から、該ポリオレフィン系樹脂組成物を製造するために用いる樹脂成分の合計重量を100重量%とするとき、成分Aが5重量%以上含まれることが好ましい。超高分子量ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のモノマーを単独で重合して得られる重合体や、これらを2種類以上共重合して得られる共重合体が挙げられる。超高分子量ポリオレフィンは、エチレン単独重合体、またはエチレンと他の前記したモノマーとの共重合体であることが好ましい。2種類以上の超高分子量ポリオレフィンを用いてもよい。
【0013】
本発明におけるポリオレフィンワックス(成分B)は、重量平均分子量が500〜3000のポリオレフィンワックスである。ポリオレフィンワックスの重量平均分子量は、好ましくは500〜2500である。ポリオレフィンワックスとしては、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリプロピレン系重合体、4−メチルペンテン−1重合体、ポリ(ブテン−1)、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。超高分子量ポリオレフィンとの相溶性に優れるポリオレフィンワックスを選択することが好ましく、例えば超高分子量ポリオレフィンが超高分子量ポリエチレンである場合には、エチレン単独重合体またはエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリエチレンワックスを用いることが好ましい。2種類以上のポリオレフィンワックスを用いてもよい。
【0014】
本発明では、重量平均分子量が5〜80万、好ましくは8万〜50万のポリオレフィン(成分C)を用いる。成分Cとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のモノマーを単独で重合して得られる重合体や、これらを2種類以上共重合して得られる共重合体が挙げられる。成分A、成分Bとの相溶性に優れる成分Cを選択することが好ましく、例えば超高分子量ポリオレフィンが超高分子量ポリエチレンであり、ポリオレフィンワックスがポリエチレンワックスである場合には、エチレン単独重合体またはエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリエチレンを用いることが好ましい。成分Cとして、2種類以上のポリオレフィンを用いてもよい。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂組成物を製造するために用いる樹脂成分の合計重量を100重量%とするとき、成分Cの含有量は、40〜95重量%であることが好ましく、50〜90重量%以上であることがより好ましい。
【0016】
成分A、成分Bおよび成分Cのそれぞれの重量平均分子量は、一般的にGPC測定により求めることができる。
【0017】
成分A、成分Bおよび成分Cを混練して得られるポリオレフィン系樹脂組成物を用いて多孔質フィルムを製造する場合には、材料として、前記した各成分に加えてフィラーを用いることが好ましい。成分A、成分B、成分Cおよびフィラーを混練してシートを製造し、さらにそのシートを用いて延伸加工することで、簡便に多孔質フィルムを得ることができる。
成分A、成分B、成分Cおよびフィラーを用いてポリオレフィン系樹脂組成物を製造する方法としては、
(1)成分A、成分Bおよび成分Cを混練して得られた混練物に、フィラーを添加してさらに混練する方法
(2)成分Aと成分Bとフィラーとを混練した後、成分Cを添加して混練する方法
(3)成分Aと成分Bとを混練した混練物に、予め成分Cとフィラーとを混合した混合物を添加してさらに混練する方法
(4)成分Aと成分Bとフィラーとを混練した混練物に、予め成分Cとフィラーとを混合した混合物を添加してさらに混練する方法
が挙げられる。混練する回数が少ないので、上記(2)、(3)、(4)のいずれかの方法が好ましく、一度に混練するフィラーの量を減らせることから、(4)の方法が最も好ましい。
【0018】
フィラーとしては、一般的に充填剤と呼ばれる無機又は有機の微粒子を用いることができる。無機の微粒子としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、ガラス粉、酸化亜鉛などの微粒子を使用できる。有機の微粒子としては、公知の樹脂微粒子が用いられ、該樹脂としてスチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、アクリル酸メチルなどのモノマーを単独あるいは2種類以上重合して得られる重合体微粒子、メラミン、尿素などの重縮合樹脂微粒子が挙げられる。
【0019】
フィラー、成分A、成分Bおよび成分Cを含有するポリオレフィン系樹脂組成物を用いて多孔質フィルムを製造する場合には、フィルムを製造する工程が、フィラーを除去する工程を含むことが好ましい。すなわち、多孔質フィルムはフィラーを含まないことが好ましい。
フィラーを除去する場合には、前記樹脂組成物を用いてシートを製造し、該シートからフィラーを除去し、次いで延伸してもよいし、前記樹脂組成物を用いてシートを製造し、次いで延伸した後、フィラーを除去してもよい。
そのため、中性、酸性やアルカリ性などの水溶液で簡便に除去できるフィラーを用いることが好ましい。例えば前述の微粒子の中ではタルク、クレー、カオリン、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、シリカが挙げられる。これらの中でも炭酸カルシウムが好ましい。
【0020】
フィラーの平均粒径は、0.01〜3μmが好ましく、0.02〜1μmがより好ましく、0.05〜0.5μmが最も好ましい。平均粒径が3μm以下であるフィラーを用いると、突刺し強度に優れるフィルムを得ることができ、0.01μm以上であるフィラーを用いると、成分A、成分Bおよび成分Cの樹脂成分中で均一に分散しやすいため、均一に開孔した多孔質フィルムが得られる。
【0021】
フィラーは、成分A、成分Bおよび成分Cの樹脂成分中で分散しやすくするため、前記樹脂成分とフィラーとを界面で剥離しやすくするため、また外部からの水分の吸収を防ぐために、表面処理が施されたものを用いることが好ましい。表面処理剤としては例えば、ステアリン酸、ラウリル酸等の高級脂肪酸又はその金属塩が挙げられる。
【0022】
樹脂組成物におけるフィラーの含有量は、成分A、成分B及び成分Cの合計体積を100体積部とするとき、該合計体積100体積部に対して、好ましくは15〜150体積部であり、より好ましくは25〜100体積部である。15体積部以上であれば、延伸により十分に開孔し良好な多孔質フィルムを得ることができ、また150体積部以下であると樹脂比率が高いため突刺し強度に優れた多孔質フィルムを得ることができる。
【0023】
また本発明で用いる樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損じない範囲で一般に使用される添加剤(帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、増核剤など)を加えてもよい。
【0024】
成分A、成分Bおよび成分C、さらに任意でフィラーやその他の添加剤を混練する混練装置としては、高いせん断力を有する混練装置にて行なうことが好ましく、具体的には、ロール、バンバリミキサー、一軸押出機、二軸押出機などが挙げられる。
【0025】
樹脂組成物を用いてシートを成形する方法は、特に限定はされないが、インフレーション加工、カレンダー加工、Tダイ押出加工、スカイフ法等が挙げられる。樹脂混練物を混練装置から連続的にシート成形機に投入してもよく、混練した樹脂組成物を一旦ペレット化し、該ペレットをシート成形機に投入してもよい。
【0026】
樹脂組成物を成形して得られるシートを延伸して多孔質フィルムとする方法は、特に限定はされないが、テンター、ロール、オートグラフなどの公知の装置を用いて延伸して製造することができる。延伸は一軸方向でも二軸方向でもよく、また延伸を一段で行なっても、多段階に分けて行なってもよい。延伸倍率は2〜12倍が好ましく、4〜10倍がより好ましい。延伸温度は、通常超高分子量ポリオレフィンの軟化点以上融点以下の温度で行なわれ、超高分子量ポリオレフィンが超高分子量ポリエチレンである場合には、80℃〜120℃で行なうことが好ましい。このような温度で延伸を行なうことにより、延伸時にフィルムが破膜しにくく、かつ超高分子量ポリエチレンが溶融しにくいため、樹脂とフィラーの界面剥離によって生じた孔が閉孔しにくくなる。
また延伸の後に、孔の形態を安定化するために必要に応じて熱固定処理を行なってもよい。
【0027】
樹脂組成物を成形して得られるシートから、少なくとも一部のフィラーを除去した後、少なくとも一軸方向に延伸して多孔質フィルムを製造してもよい。あるいは、樹脂組成物を成形して得られるシートを少なくとも一軸方向に延伸した後、少なくとも一部のフィラーを除去して多孔質フィルムを製造してもよい。フィラーを除去する方法としては、シートまたは延伸後のフィルムを、フィラーを溶解可能な液体に浸漬する方法が挙げられる。
【0028】
前記したような方法で得られる多孔質フィルムの少なくとも片面に、多孔質の耐熱層を積層して積層多孔質フィルムを製造することができる。このような耐熱層を有する積層多孔質フィルムは、膜厚の均一性や耐熱性、強度、イオン透過性に優れ、またセパレータとして電池とした場合、過充電などで異常発熱が起きた際に、多孔質フィルムが溶融しても、該耐熱層が正極と負極が接触することを防ぎ安全性にも優れるため好ましい。
【0029】
耐熱層は、耐熱樹脂、または耐熱樹脂と無機フィラーから形成された層であり、耐熱樹脂と無機フィラーから形成された層であることが好ましい。
【0030】
前記耐熱層を構成する耐熱樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等の水溶性ポリマーや芳香族ポリアラミド(以下、「アラミド」ということがある)、芳香族ポリイミド(以下、「ポリイミド」ということがある)、芳香族ポリアミドイミドなどの含窒素芳香族系ポリマーが挙げられる。
【0031】
水溶性ポリマーとしてはポリビニルアルコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウムが好ましく、セルロースエーテルが更に好ましい。セルロースエーテルとしては具体的には、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCということがある)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアンエチルセルロース、オキシエチルセルロースなどが挙げられ、劣化しにくいCMCが最も好ましい。
【0032】
含窒素芳香族系ポリマーとしては、膜厚が均一で通気性に優れる多孔性の耐熱層を形成しやすいことからアラミドが好ましく、アラミドの中でもパラ配向芳香族ポリアミド(以下、「パラアラミド」ということがある)が最も好ましい。
【0033】
パラアラミドとは、パラ配向芳香族ジアミンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドの縮合重合により得られるものであり、アミド結合が芳香族環のパラ位またはそれに準じた配向位(例えば4,4’−ビフェニレン、1,5−ナフタレン、2,6−ナフタレン等のような反対方向に同軸または平行に伸びる配向位)で結合される繰り返し単位から実質的になるものである。具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロローパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合等のパラ配向型、またはパラ配向型に準じた構造を有するパラアラミドが例示される。
【0034】
耐熱層を設ける際には、通常耐熱樹脂を溶媒に溶かした塗工液を用いる。耐熱樹脂が水溶性ポリマーである場合、前記溶媒としては水を用いることができ、溶解性を損なわない程度に、アルコールを加えてもよい。パラアラミドである場合、前記溶媒としては、極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒を用いることができ、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチルウレアなどが挙げられる。
【0035】
耐熱樹脂としてパラアラミドを用いる場合、パラアラミドの溶媒への溶解性を改善する目的で、パラアラミド重合時にアルカリ金属、又はアルカリ土類金属の塩化物を添加することが好ましい。具体例としては、塩化リチウムまたは塩化カルシウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記塩化物の重合系への添加量としては、縮合重合で生成するアミド基1.0モル当たり0.5〜6.0モルが好ましく、1.0〜4.0モル
がより好ましい。塩化物が0.5モル以上であると、生成するパラアラミドの溶解性が十分となり、6.0モル以下であると塩化物が溶媒に溶け残ることがなくなるため好ましい。一般には、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩化物が2重量%以上でパラアラミドの溶解性が十分となる場合が多く、10重量%以下でアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩化物が極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒などの極性有機溶媒に溶け残ることなく完全に溶解する場合が多い。
【0036】
本発明において耐熱層を形成するために用いる塗工液は、無機フィラーとしてセラミックス粉末を含有することが特に好ましい。任意の耐熱樹脂濃度の溶液にセラミックス粉末が添加された塗工液を用いて耐熱層を形成することにより、膜厚が均一で、かつ微細な多孔質である耐熱層を形成することができる。またセラミックス粉末の添加量によって、透気度を制御することができる。本発明におけるセラミックス粉末は、多孔質フィルムの強度や耐熱層表面の平滑性の点より、一次粒子の平均粒子径が1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
セラミックス粉末の含有量は耐熱層中1重量%〜99重量%であることが好ましく、5重量%〜95重量%であることがより好ましい。1重量%以上であると、イオン透過性に優れ、99重量%以下であると膜強度に優れる。使用するセラミックス粉末の形状は、特に限定はなく、球状でもランダムな形状でも使用できる。
【0038】
本発明におけるセラミックス粉末としては、電気絶縁性の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物などからなるセラミックス粉末が挙げられ、例えばアルミナ、シリカ、二酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの粉末が好ましく用いられる。上記セラミックス粉末は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合してもよく、粒径の異なる同種あるいは異種のセラミックス粉末を任意に混合して用いることもできる。
【0039】
多孔質フィルムに耐熱層を積層する方法としては、別途製造した耐熱層を多孔質フィルムと積層する方法、多孔質フィルムの少なくとも片面に、耐熱樹脂と、任意でセラミックス粉末とを含有する塗工液を塗布して耐熱層を形成する方法などが挙げられるが、生産性の観点から塗工液を用いる方法が好ましい。このような方法としては、具体的には以下のような工程を含む方法が挙げられる。
(a)耐熱樹脂100重量部を含む極性有機溶媒溶液に、耐熱樹脂100重量部に対しセラミックス粉末を1〜8000重量部分散したスラリー状塗工液を調整する。
(b)該塗工液を多孔質フィルムの少なくとも片面に塗工し、塗工膜を形成する。
(c)溶媒を乾燥除去する、あるいは耐熱樹脂を溶解しない溶媒への浸漬などの手段で、前記塗工膜から耐熱樹脂を析出させた後乾燥する。
塗工液は、特開2001−316006号公報に記載の塗工装置及び特開2001−23602号公報に記載の方法により、多孔質フィルムへ連続的に塗工することが好ましい。
【0040】
本発明の多孔質フィルムは、使用温度での透過性に優れ、かつ使用温度を超えた場合には低温で速やかにシャットダウン可能であり、非水系電池用セパレータとして好適である。また本発明の多孔質フィルムに耐熱層を積層させた積層多孔質フィルムは、耐熱性、強度、イオン透過性に優れ、非水系電池用セパレータ、特にリチウム2次電池用セパレータとして好適に使用することができる。
【0041】
電池用セパレータとしては、熱をかけたときの収縮が少なく、安全性により優れることから、上記積層多孔質フィルムが好ましく用いられる。
【0042】
本発明の多孔質フィルムを電池用セパレータとして用いる場合、電解液の保持性と、フィルム強度およびシャットダウン性能の観点から、該多孔質フィルムの空隙率は、30〜80体積%が好ましく、さらに好ましくは40〜70体積%である。また、シャットダウン性、巻回時の電池短絡防止、電池の高電気容量化の観点から、多孔質フィルムの厚みは、5〜50μmが好ましく、より好ましくは10〜50μmが好ましく、さらに好ましくは10〜30μmである。多孔質フィルムの孔径としては0.1μm以下が好ましく、0.08μm以下がより好ましい。
【0043】
本発明の積層多孔質フィルムを電池用セパレータとして用いる場合、該積層多孔質フィルムのうち、多孔質フィルムの好ましい空隙率、孔径は上記の多孔質フィルムと同様である。ただし膜厚については、積層多孔質フィルム全体として5〜50μmが好ましく、より好ましくは、10〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。積層多孔質フィルムのうち、耐熱層の空隙率は、電解液の保持量および強度の観点から、30〜80体積%が好ましく、さらに好ましくは40〜70体積%である。耐熱層の膜厚は、加熱時の収縮抑制および電池にした際の負荷特性の観点から、0.5μm〜10μmが好ましく、さらに好ましくは1μm〜5μmである。
【0044】
本発明の電池は、本発明の多孔質フィルムまたは積層多孔質フィルムを電池用セパレータとして含む。以下に、本発明の電池がリチウム電池などの非水電解液二次電池である場合について、電池用セパレータ以外の構成要素について詳細に説明する。
【0045】
非水電解質溶液としては、例えばリチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解質溶液を用いることができる。リチウム塩としては、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiC(SO2CF33、Li210Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4などのうち1種または2種以上の混合物が挙げられる。リチウム塩として、これらの中でもフッ素を含むLiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、およびLiC(CF3SO23からなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0046】
非水電解質溶液で用いる有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、または上記の有機溶媒にフッ素置換基を導入したものを用いることができるが、通常はこれらのうちの2種以上を混合して用いる。
【0047】
これらの中でもカーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネート、または環状カーボネートとエーテル類の混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートの混合溶媒としては、動作温度範囲が広く、負荷特性に優れ、かつ負極の活物質として天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料を用いた場合でも分解しにくいことから、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。正極シートは、通常、正極活物質、導電材および結着剤を含む合剤を集電体上に担持したものを用いる。具体的には、該正極活物質として、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料を含み、導電材として炭素質材料を含み、結着剤として熱可塑性樹脂などを含むものを用いることができる。該リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料としては、V、Mn、Fe、Co、Niなどの遷移金属を少なくとも1種含むリチウム複合酸化物が挙げられる。中でも好ましくは、平均放電電位が高いという点で、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウムなどのα−NaFeO2型構造を母体とする層状リチウム複合酸化物、リチウムマンガンスピネルなどのスピネル型構造を母体とするリチウム複合酸化物が挙げられる。
【0048】
該リチウム複合酸化物は、種々の添加元素を含んでもよく、特にTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、InおよびSnからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属のモル数とニッケル酸リチウム中のNiのモル数との和に対して、前記の少なくとも1種の金属が0.1〜20モル%であるように該金属を含む複合ニッケル酸リチウムを用いると、高容量での使用におけるサイクル性が向上するので好ましい。
【0049】
該結着剤としての熱可塑性樹脂としては、ポリビニリデンフロライド、ビニリデンフロライドの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフロロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0050】
該導電材としての炭素質材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラックなどが挙げられる。導電材として、それぞれ単独で用いてもよいし、例えば人造黒鉛とカーボンブラックとを混合して用いるといった複合導電材系を用いてもよい。
【0051】
負極シートとしては、例えばリチウムイオンをドープ・脱ドーブ可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金などを用いることができる。リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体などの炭素質材料、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープ・脱ドープを行う酸化物、硫化物等のカルコゲン化合物が挙げられる。炭素質材料として、電位平坦性が高く、また平均放電電位が低いため正極と組み合わせた場合大きなエネルギー密度が得られるという点で、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料を主成分とする炭素質材料が好ましい。
【0052】
負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどを用いることができるが、特にリチウム二次電池においてはリチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工しやすいという点でCuが好ましい。該負極集電体に負極活物質を含む合剤を担持させる方法としては、加圧成型する方法、または溶媒などを用いてペースト化し集電体上に塗布乾燥後プレスするなどして圧着する方法が挙げられる。
【0053】
なお、本発明の電池の形状は、特に限定されるものではなく、ペーパー型、コイン型、円筒型、角形などのいずれであってもよい。
【実施例】
【0054】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(1)ポリオレフィン系樹脂組成物の引張り試験
ポリオレフィン系樹脂組成物を200℃でプレスし、約180μm厚のシートを得た。このシートを3Nの塩酸に一晩浸漬してフィラーを除去し、水洗後乾燥させることで多孔質シートを得た。得られた多孔質シートから測定用サンプルを得、該サンプルを室温及び110℃で400%/分の歪速度で延伸し、破断歪を測定した。
(2)膜厚
JISK7130に準拠してミツトヨ製VL-50Aにて測定を行った。
(3)突刺強度
多孔質フィルムを12mmΦのワッシャで固定し、ピンを200mm/minで突き刺したときの最大応力(gf)を該フィルムの突刺強度とした。ピンは、ピン径1mmΦ、先端0.5Rのものを使用した。
(4)透気度
東洋精機社製のガーレ式デンソメータを用いて測定を行った。
【0056】
実施例1
(混練条件1−1)
重量平均分子量約300万の超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学社製)を12.3g、重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞社製)12.3g、平均粒径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)39.6g、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.17重量%、(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05重量%を粉末のまま混合した後、ラボプラストミル(R-60H型)にて200℃、60rpmで3分間混練した。得られた混練物を、混練物Aとする。
(混練条件1−2)
重量平均分子量約50万のポリエチレン粉末(030S、三井化学社製)24.6g、平均粒径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)39.6g、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.17g、(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05gを、それぞれ粉末のまま混合した後、ラボプラストミル(R-60H型)にて200℃、60rpmで3分間混練した。得られた混練物を、混練物Bとする。
(混練条件2)
混練物Aを7.0gと、混練物Bを63.0gとを、ラボプラストミル(R-60H型)を用いて230℃、100rpmで3分間混練し、ポリオレフィン系樹脂組成物(1)を得た。
【0057】
実施例2
実施例1の混練条件2において、混練物Aを21.0g、混練物Bを49.0gとした以外は同様の条件で実施し、ポリオレフィン系樹脂組成物(2)を得た。
【0058】
実施例3
実施例1の混練条件2において、混練物Aを35.0g、混練物Bを35.0gとした以外は同様の条件で実施し、ポリオレフィン系樹脂組成物(3)を得た。
【0059】
実施例4
実施例1の混練条件1−1を、超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学社製)を17.2g、重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞社製)7.4gとし、同混練条件2において混練物Aを21.0g、混練物Bを49.0gとした以外は同様の条件で混練を実施し、ポリオレフィン系樹脂組成物(4)を得た。
【0060】
実施例5
実施例1の混練条件1−1を、超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学社製)を22.1g、重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞社製)2.5gとし、同混練条件2において混練物Aを21.0g、混練物Bを49.0gとした以外は同様の条件で混練を実施し、ポリオレフィン系樹脂組成物(5)を得た。
【0061】
実施例6
混練物Aを21.0g、重量平均分子量約50万の超高分子量ポリエチレン粉末(030S、三井化学社製)を18.7g、平均孔径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)30.1g、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.13g、(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.04gを、ラボプラストミル(R−60H型)を用いて230℃、100rpmで3分間混練し、ポリオレフィン系樹脂組成物(6)を得た。
【0062】
比較例1
重量平均分子量約300万の超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学社製)を3.7g、重量平均分子量約50万の超高分子量ポリエチレン粉末(030S、三井化学社製)を17.2g、重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞社製)3.7g、平均孔径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)39.6g、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.17重量%、(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05重量%を粉末のまま混合した後、ラボプラストミル(R-60H型)にて200℃、60rpmで3分間混練し、引き続き230℃、100rpmで3分間混練して、ポリオレフィン系樹脂組成物(7)を得た。
【0063】
実施例1〜5及び比較例1及び2の混練物を用いた引張り試験結果を表1にまとめた。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例7
前記ポリオレフィン系樹脂組成物(1)、(2)および(3)を、それぞれ200℃でプレスし、約180μm厚のシートを得た。得られたシートを3Nの塩酸に一晩浸漬してフィラーを除去し、水洗後乾燥して多孔質シートを得た。この多孔質シートを、東洋精機社製卓上二軸延伸機を用いて120℃で4×4倍に延伸し、多孔質フィルム(1)、(2)および(3)を得た。
【0066】
実施例8
パラアラミド(ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド))の合成
攪拌翼、温度計、窒素流入管及び粉体添加口を有する、3リットルのセパラブルフラスコを使用して、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の製造を行った。フラスコを十分乾燥し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2200gを仕込み、200℃で2時間真空乾燥した塩化カルシウム粉末151.07gを添加し、100℃に昇温して完全に溶解させた。室温に戻して、パラフェニレンジアミン、68.23gを添加し完全に溶解させた。この溶液を20℃±2℃に保ったまま、テレフタル酸ジクロライド、124.97gを10分割して約5分おきに添加した。その後も攪拌しながら、溶液を20℃±2℃に保ったまま1時間熟成した。1500メッシュのステンレス金網でろ過した。得られた溶液は、パラアラミド濃度6%であった。
塗工液の調整
先に重合したパラアラミド溶液100gをフラスコに秤取し、300gのNMPを添加し、パラアラミド濃度が1.5重量%の溶液に調製して60分間攪拌した。上記のパラアラミド濃度が1.5重量%の溶液に、アルミナC(日本アエロジル社製)を6g、アドバンスドアルミナAA−03(住友化学社製)を6g混合し、240分間攪拌した。得られた溶液を1000メッシュの金網でろ過し、その後酸化カルシウム0.73gを添加して240分間攪拌して中和を行い、減圧下で脱泡してスラリー上の塗工液を得た。
PE多孔質フィルムへの塗工
実施例7で得た多孔質フィルム(2)に、前記塗工液を130μm厚となるようにバーコーターで塗布した後、50℃70%RHのオーブンに15秒間入れ、多孔質フィルム上にアラミドを析出させた。得られたフィルムを金具で4辺固定し、70℃のオーブン内で10分乾燥させて、積層多孔質フィルム(2)を得た。
【0067】
実施例7で得た多孔質フィルム及び実施例8で得た積層多孔質フィルムの諸物性を、表2にまとめた。
【0068】
【表2】

【0069】
表1に示すように、実施例は110℃でも十分な引張り破断歪を示した。これは、シートを構成する各成分が均一に混練されていて、均質なシートが得られていることを表している。
また表2に示すように、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を用いて得られたシートを加工することにより、電池用セパレータとして好適な多孔質フィルム及び積層多孔質フィルムが得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリオレフィン(成分A)と、重量平均分子量が500〜3000のポリオレフィンワックス(成分B)を、成分A/成分B=30/70〜90/10の重量比で混練した後、重量平均分子量が5〜80万のポリオレフィン(成分C)を加えてさらに混練するポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法において、任意の時点でフィラーを添加して混練するポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法で得られるポリオレフィン系樹脂組成物を用いてシートを製造した後、該シートを少なくとも一軸方向に延伸するポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法で得られるポリオレフィン系樹脂組成物を用いてシートを製造した後、以下の2つの工程を経てポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルムを製造する方法。
(1)シートを少なくとも一軸方向に延伸する工程
(2)シートから無機フィラーを除去する工程
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の方法で得られるポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルムに、無機フィラーを含む多孔質の耐熱層を積層する積層多孔質フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項3もしくは請求項4に記載の方法で得られるポリオレフィン系樹脂製多孔質フィルム、または請求項5に記載の方法で得られる積層多孔質フィルムを含む電池。

【公開番号】特開2012−77220(P2012−77220A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224578(P2010−224578)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】