説明

ポリオール化合物およびそれを用いたポリウレタン組成物

【課題】本発明は、イソシアネート成分と反応させた場合に優れた力学的特性を有する三次元架橋されたポリウレタンを得ることができるポリオール化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、このポリオール化合物を用いたポリウレタン組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】メソゲン骨格と3個以上のアルコール性ヒドロキシ基とを有するポリオール化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール化合物およびそれを用いたポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリウレタン等の重合体の強度や靭性等の向上を目的として、重合体中にメソゲン骨格を導入する試みが盛んに行われている(特許文献1〜3参照。)。
例えば、特許文献1には、サーモトロピックな液晶性を有するとともに、耐熱性、耐変色性に優れることを目的とした、高分子液晶ポリウレタンが記載されている。具体的には、特許文献1には「メソゲン基を有するジオール成分とトランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネートとを重合させて成ることを特徴とする高分子液晶ポリウレタン」が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−258369号公報
【特許文献2】特開平5−170860号公報
【特許文献3】特開平5−306319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の高分子液晶ポリウレタンは、硬化剤としてヒドロキシ基を2個有するジオール成分が用いられているので線状の重合体となり、十分な強度や靭性が得られなかった。
【0005】
本発明は、イソシアネート成分と反応させた場合に優れた力学的特性を有する三次元架橋されたポリウレタンを得ることができるポリオール化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、このポリオール化合物を用いたポリウレタン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、メソゲン骨格と3個以上のアルコール性ヒドロキシ基とを有するポリオール化合物を、イソシアネート成分と反応させた場合、優れた力学的特性を有する三次元架橋されたポリウレタンを得ることができることを知見し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、下記(1)〜(10)を提供する。
(1)メソゲン骨格と3個以上のアルコール性ヒドロキシ基とを有するポリオール化合物。
(2)前記メソゲン骨格を2個以上有する上記(1)に記載のポリオール化合物。
(3)メソゲン骨格と2個以上のフェノール性ヒドロキシ基とを有する化合物(A)と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)とを反応させて得られる、上記(1)または(2)に記載のポリオール化合物。
(4)前記化合物(A)が、下記式(1)で表される化合物である上記(3)に記載のポリオール化合物。
【化5】


(式中、R1は、それぞれ独立に、主鎖を構成する元素が二重結合および/または三重結合を有する二価の有機基であり、R2は、それぞれ独立に、水素、アルキル基またはアルコキシ基である。)
(5)前記エポキシ樹脂(B)が、直鎖状エポキシ樹脂である上記(3)または(4)に記載のポリオール化合物。
(6)前記エポキシ樹脂(B)が、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂である上記(3)または(4)に記載のポリオール化合物。
【化6】


(式中、nは1〜20の整数である。)
(7)下記式(3)で表されるポリオール化合物。
【化7】

(式中、R1は、それぞれ独立に、主鎖を構成する元素が二重結合および/または三重結合を有する二価の有機基であり、R2は、それぞれ独立に、水素、アルキル基またはアルコキシ基であり、nは1〜20の整数であり、mは1〜10の整数である。)
(8)下記式(4)で表されるポリオール化合物。
【化8】

(式中、R1は、それぞれ独立に、主鎖を構成する元素が二重結合および/または三重結合を有する二価の有機基であり、R2は、それぞれ独立に、水素、アルキル基またはアルコキシ基であり、nは1〜20の整数であり、mは1〜10の整数である。)
(9)イソシアネート成分と、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリオール化合物とを含有するポリウレタン組成物。
(10)上記(9)に記載のポリウレタン組成物を硬化させて得られる、三次元架橋されたポリウレタン。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリオール化合物は、イソシアネート成分と反応させた場合に優れた力学的特性を有する三次元架橋されたポリウレタンを得ることができる。
また、本発明のポリウレタン組成物は、優れた力学的特性を有する三次元架橋されたポリウレタンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明のポリオール化合物(以下、「本発明の化合物」という。)は、メソゲン骨格と3個以上のアルコール性ヒドロキシ基とを有する化合物である。
【0010】
上記メソゲン骨格は、少なくとも2つの芳香族環を有し、液晶性を発現させる部位である。具体的には、例えば、メソゲン骨格は、下記式で表される構造を有する。
【0011】
【化9】

【0012】
ここで、pは0以上の整数である。Arは芳香族基であり、芳香族基としては芳香族環を有している基であれば特に限定されないが、具体的には、アリール基、アリーレン基等が挙げられる。R1は、主鎖を構成する元素が二重結合および/または三重結合を有する二価の有機基である。R1は、主鎖に二重結合および/または三重結合を含む二価の有機基であってもよい。R1としては、具体的には、下記式で表される基が好適に例示される。
【0013】
【化10】

【0014】
上記メソゲン骨格が有する芳香族環は、ベンゼン環および/またはナフタレン環であることが、メソゲン骨格の平面構造を保持しやすい点から好ましい。
【0015】
本発明の化合物は、メソゲン骨格を2個以上有することが、硬化物のメソゲン骨格濃度が高くなり物性が優れる点から好ましい。
【0016】
上記アルコール性ヒドロキシ基とは、芳香族環に直接結合していないヒドロキシ基を意味する。上記アルコール性ヒドロキシ基は、第二級炭素に結合したヒドロキシ基であることが好ましく、エポキシ基が開環して生じるヒドロキシ基がより好ましい。
【0017】
本発明の化合物としては、具体的には、例えば、メソゲン骨格と2個以上のフェノール性ヒドロキシ基とを有する化合物(A)と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)とを反応させて得られるものが好ましい。
【0018】
上記化合物(A)は、上記メソゲン骨格と2個以上のフェノール性ヒドロキシ基とを有する化合物である。フェノール性ヒドロキシ基とは、芳香族環に直接結合しているヒドロキシ基を意味する。
上記化合物(A)としては、具体的には、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0019】
【化11】

【0020】
式(1)中、R1は上記R1と同義である。R2はそれぞれ独立に水素、アルキル基またはアルコキシ基である。このアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。特に、メチル基、エチル基が、メソゲン骨格の平面構造を保持しやすい点からより好ましい。上記アルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がメソゲン骨格の平面構造を保持しやすい点からより好ましい。
【0021】
上記エポキシ樹脂(B)は、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ピロカテコール、レゾルシノール、クレゾールノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールF、ビキシレノール、ジヒドロキシナフタレン等の多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型;グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルエステル型;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸等のポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル型;アミノフェノール、アミノアルキルフェノール等から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル型;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル型;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン等から誘導されるグリシジルアミン型;さらにエポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレート等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記エポキシ樹脂(B)は、柔軟性に優れるという点から、直鎖状エポキシ樹脂が好ましく、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。
【0023】
【化12】

【0024】
式(2)中、nは1〜20の整数であり、好ましくは1〜10の整数である。
【0025】
本発明の化合物の製造の際に用いられる上記化合物(A)と上記エポキシ樹脂(B)との割合は、上記化合物(A)のフェノール性ヒドロキシ基と上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基とのモル比(OH/エポキシ基)が0.8〜1.2となる量であるのが好ましく、0.9〜1.1となる量であるのがより好ましい。これらの範囲であれば、低分子化合物の含有量が低下するため好ましい。
【0026】
上記化合物(A)および上記エポキシ樹脂(B)の反応においては、溶媒および触媒を用いるのが好ましい。
【0027】
溶媒としては、上記化合物(A)および上記エポキシ樹脂(B)に対して不活性であれば従来公知の各種の溶媒を用いることができる。
具体的には、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記触媒としては、具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等の第三級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物、第四級ホスホニウム塩等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の化合物としては、下記式(3)で表される化合物および下記式(4)で表される化合物が、それぞれ、好ましい態様の一つである。
【0030】
【化13】

【0031】
上記式(3)および(4)中、R1、R2およびnは上記と同義である。mは1〜10の整数である。溶融粘度に優れる点から1〜7の整数がより好ましく、1〜5の整数が更に好ましい。
【0032】
上記式(3)で表される化合物は、例えば、上記式(1)で表される化合物と上記式(2)で表される化合物とのモル比(式(1)の化合物/式(2)の化合物)が1未満、好ましくは0.90〜0.99となるように、上記式(1)で表される化合物と、上記式(2)で表される化合物と、溶媒と、触媒とを混合し、約80〜120℃で10〜12時間程度反応させて得ることができる。
【0033】
また、上記式(4)で表される化合物は、例えば、上記式(1)で表される化合物と上記式(2)で表される化合物とのモル比(式(1)の化合物/式(2)の化合物)が1より大きく、好ましくは1.01〜1.10となるようにし、それ以外は、上記式(3)で表される化合物と同様の方法で反応させて得ることができる。
【0034】
上述した本発明の化合物は、アルコール性ヒドロキシ基を3個以上有するので、イソシアネート成分と反応させた場合、三次元架橋されたポリウレタンを得ることができる。
また、本発明の化合物はメソゲン骨格を有するので、上記ポリウレタンにメソゲン骨格を導入できる。したがって、本発明の化合物を用いたポリウレタンは、硬化される際に分子が配向しやすくなり、硬化物中に液晶領域が生成し、この液晶領域がその配向性により化学結合によらない物理的架橋点となり得る。そのため、得られたポリウレタン(硬化物)は、力学的特性(特に、靭性)に優れる他、耐熱性に優れ、熱膨張係数や吸水率が低くなると考えられる。また、上記ポリウレタンは、硬化される際に電場または磁場をかけると、分子の配向性がより強くなるので上述した特性により優れると推定される。
【0035】
本発明の化合物の用途としては、上述したポリウレタン組成物の硬化剤の他に、樹脂の靭性改質材、タッキファイヤー等が挙げれられる。
【0036】
以下、本発明のポリウレタン組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)について説明する。
本発明の組成物は、イソシアネート成分と、上述した本発明のポリオール化合物とを含有するポリウレタン組成物である。
【0037】
本発明の組成物に用いられるイソシアネート成分は、少なくとも2つのイソシアネート基を末端に有する化合物であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のTDI;ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等のMDI;テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ノルボルナン骨格を有するジイソシアネート(NBDI)およびこれらの変成品等のポリイソシアネート化合物、ウレタンプレポリマー等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記イソシアネート成分としては、ポリオール化合物との反応が穏やかである点からウレタンプレポリマーが好ましい。
【0039】
上記ウレタンプレポリマーは、特に限定されず、例えば、ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを用いることができる。
【0040】
上記ウレタンプレポリマーに用いられるポリオール化合物は、炭化水素の複数個の水素をヒドロキシ基で置換したアルコール類である。例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を、分子中に活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物に付加重合させた生成物が挙げられる。
【0041】
上記活性水素含有化合物としては、例えば、多価アルコール類、アミン類、アルカノールアミン類、多価フェノール類等が挙げられる。
多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
アミン類としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
アルカノールアミン類としては、具体的には、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられる。
多価フェノール類としては、具体的には、例えば、レゾルシン、ビスフェノール類等が挙げられる。
【0042】
上記ポリオール化合物としては、具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール;ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール;アジペート系ポリオール;ラクトン系ポリオール;ヒマシ油等のポリエステル系ポリオール等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記ポリオール化合物は、平均分子量が1000〜10000程度であるのが好ましく、2000〜5000程度であるのがより好ましい。
【0044】
上記ウレタンプレポリマーに用いられるポリイソシアネート化合物としては、通常のポリウレタン樹脂の製造に用いられる種々のものを用いることができ、具体的には、例えば、上述したものが挙げられる。中でも、安価かつ入手が容易である点からTDIおよびMDIが好ましい。
【0045】
上記ウレタンプレポリマーの製造時におけるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを混合する割合は、ポリオール化合物のヒドロキシ基の数に対するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の数の比(NCO/OH)が、1.0以上であるのが好ましく、1.5〜2.0であるのがより好ましい。
【0046】
上記ウレタンプレポリマーの製造は、通常のウレタンプレポリマーと同様に、通常は、所定量比のポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物を混合し、常圧下、60〜100℃で、加熱撹拌することによって行うことができる。
【0047】
本発明の組成物において、上記イソシアネート成分が有するイソシアネート基と、上記本発明のポリオール化合物が有するアルコール性ヒドロキシ基とのモル比(NCO/OH)は、0.3〜1.5が好ましい。上記モル比がこの範囲であると、硬化不良を起こすことがなく、適度な可使時間が得られ、更に、得られる硬化物の伸び率にも優れる。これらの特性により優れる点から、上記モル比は0.8〜1.2が好ましく、0.9〜1.1がより好ましい。
【0048】
本発明の組成物は、更に、硬化触媒を含有することができる。
上記硬化触媒は、特に限定されないが、具体的には、例えば、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ等のスズカルボン酸塩類、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類、オクタン酸鉛、オクタン酸ビスマス等のオクタン酸金属塩等の金属触媒が挙げられる。
【0049】
このほかに、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン等のジアミン類、N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジプロピレントリアミン等のトリアミン類、N−メチルモルホリン、N,N′−ジメチルピペラジン、N−メチル−N′−(2−ジメチルアミノ)−エチルピペラジン等の環状アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N′−トリメチルアミノエチルエタノールアミン等のアルコールアミン類、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(3−ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類等のアミン系触媒、またはこれらの塩化合物も挙げられる。
【0050】
硬化触媒の含有量は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0051】
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損わない範囲で、充填剤、反応遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0052】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物が挙げられる。
【0053】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0054】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
【0055】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル(株)製)、ディスパロン(楠本化成(株)製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0057】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、一般的に、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0058】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、反応容器に上記の各必須成分と任意成分とを入れ、減圧下で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混練する方法を用いることができる。
【0059】
本発明の組成物は、上述したように、優れた力学的特性等を有する三次元架橋されたポリウレタンを得ることができる。
本発明の組成物は、上述した優れた特性を活かして広範な用途に用いられる。例えば、構造用接着剤、コーティング、塗料、電子部品用封止剤等として使用される。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<合成例>
(ポリオール化合物1の合成)
2L三口フラスコにテレフタルアルデヒド54.45g(0.406mol)、4−アミノ−m−クレゾール100g(0.812mol)、エタノール800ml、触媒として塩化亜鉛1gを加えた。その後、冷却管を取り付け80℃で5時間反応させた。得られた反応物を吸引濾過し、濾紙上に残った黄色結晶を20gのエタノールで5回洗浄した後、1H−NMR測定を行い、下記式(5)で表されるテレフタリリデン−ビス−(4−アミノ−3−メチルフェノール)を確認した。収率は87%だった。
下記式(5)で表される化合物の1H−NMRの帰属を以下に示す。
【0061】
1H−NMR(270MHz、DMSO−d6)δ(ppm):2.2−2.4(6H,CH3)、6.6−6.8(4H,ArH)、7.0−7.2(2H,ArH)、8.0−8.2(4H,ArH)、8.6−8.8(2H,CH)、9.2−9.4(2H,OH)
【0062】
【化14】

【0063】
式(5)中、R3は、それぞれ独立に、HまたはCH3を表す。ただし、同一のベンゼン環に結合する2つのR3は一方がHで、他方がCH3である。
【0064】
100mlナスフラスコに、得られたテレフタリリデン−ビス−(4−アミノ−3−メチルフェノール)16.68g(4.849×10-2mol)と、下記式(6)で表されるPPG型エポキシ樹脂(EX−920、ナガセケムテックス社製)18.634g(5.091×10-2mol)と、DMF25gと、DBU0.4gを加え、冷却管を取り付け100℃で6時間反応させた。
その後、100℃で溶媒を減圧留去し、粘調な褐色液体を得た。得られた褐色液体について1H−NMR測定を行い、下記式(7)で表されるポリオール化合物1を確認した。収率は80%だった。
ポリオール化合物1の1H−NMRの帰属を以下に示す。
【0065】
1H−NMR(270MHz、DMSO−d6)δ(ppm):0.8−1.2(12H,CH3)、2.2−2.4(6H,CH3)、3.0−3.8(12H,CH,CH2)、3.8−3.9(1H,CH)、3.9−4.0(2H,CH2)、6.8−7.0(4H,ArH)、7.1-7.3(2H,ArH)、8.0−8.2(4H,ArH)、8.5−8.7(2H,CH)
【0066】
また、ポリオール化合物1についてGPC測定を行い、ポリオール化合物1の重量平均分子量は4300であることが確認された。
【0067】
【化15】

【0068】
式(7)中、R3は、それぞれ独立に、HまたはCH3を表す。ただし、同一のベンゼン環に結合する2つのR3は一方がHで、他方がCH3である。qは、1〜10の整数である。
【0069】
<実施例1および比較例1>
下記第1表の各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、第1表に示される各組成物を得た。
得られた各組成物について下記の方法により引張試験を行った。
【0070】
(引張試験)
実施例1および比較例1の組成物を80℃、2時間硬化させた後、厚さ2mmのダンベル状(ダンベル状3号形)に切り出し試験片とした。JIS K6251−1993に準じて、100%モジュラス(M100)〔MPa〕、破断強度(TB)〔MPa〕、破断伸び(EB)〔%〕、応力−歪特性(S−S特性)を測定した。結果を第1表および図1に示す。図1は、実施例1および比較例1の組成物の応力−歪曲線(S−Sカーブ)である。
【0071】
【表1】

【0072】
第1表に示す各成分は、下記のとおりである。
・ウレタンプレポリマー:ポリプロピレンジオール(エクセノール1020、数平均分子量1000、旭硝子社製)1000gを減圧下110℃で8時間脱水した後、4,4′−MDI(コスモネートPH、三井武田ケミカル社製)をNCO/OHモル比が1.75となる量加え、窒素雰囲気下80℃で15時間撹拌して、得られたウレタンプレポリマー(NCO%=4.40)
・ポリプロピレントリオール(エクセノール1030、数平均分子量1000、旭ガラス社製)
【0073】
第1表に示す結果から明らかなように、実施例1の組成物は、比較例1の組成物に比べて、極めて優れたモジュラスおよび破断強度を有するポリウレタンが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、実施例1および比較例1の組成物の応力−歪曲線(S−Sカーブ)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソゲン骨格と3個以上のアルコール性ヒドロキシ基とを有するポリオール化合物。
【請求項2】
前記メソゲン骨格を2個以上有する請求項1に記載のポリオール化合物。
【請求項3】
メソゲン骨格と2個以上のフェノール性ヒドロキシ基とを有する化合物(A)と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)とを反応させて得られる、請求項1または2に記載のポリオール化合物。
【請求項4】
前記化合物(A)が、下記式(1)で表される化合物である請求項3に記載のポリオール化合物。
【化1】


(式中、R1は、それぞれ独立に、主鎖を構成する元素が二重結合および/または三重結合を有する二価の有機基であり、R2は、それぞれ独立に、水素、アルキル基またはアルコキシ基である。)
【請求項5】
前記エポキシ樹脂(B)が、直鎖状エポキシ樹脂である請求項3または4に記載のポリオール化合物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(B)が、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂である請求項3または4に記載のポリオール化合物。
【化2】


(式中、nは1〜20の整数である。)
【請求項7】
下記式(3)で表されるポリオール化合物。
【化3】

(式中、R1は、それぞれ独立に、主鎖を構成する元素が二重結合および/または三重結合を有する二価の有機基であり、R2は、それぞれ独立に、水素、アルキル基またはアルコキシ基であり、nは1〜20の整数であり、mは1〜10の整数である。)
【請求項8】
下記式(4)で表されるポリオール化合物。
【化4】

(式中、R1は、それぞれ独立に、主鎖を構成する元素が二重結合および/または三重結合を有する二価の有機基であり、R2は、それぞれ独立に、水素、アルキル基またはアルコキシ基であり、nは1〜20の整数であり、mは1〜10の整数である。)
【請求項9】
イソシアネート成分と、請求項1〜7のいずれかに記載のポリオール化合物とを含有するポリウレタン組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のポリウレタン組成物を硬化させて得られる、三次元架橋されたポリウレタン。

【図1】
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【公開番号】特開2006−316123(P2006−316123A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138137(P2005−138137)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】