説明

ポリカーボネートの製造方法

【課題】本発明の目的は、廃水のリサイクル中、塩素および水酸化ナトリウム溶液および可能であれば水素を生じる塩化ナトリウムの反応が最小エネルギー使用で進行し、従って、特に経済的であり、省資源の方法である、ポリカーボネート製造方法を提供することである。加えて、高純度および高収率で生成物を生じ、環境汚染および/または下水処理作業における廃水問題の低下を可能にする方法を提供することである。
【解決手段】ポリカーボネートを製造し、浸透膜蒸留を使用して電気分解のために塩化ナトリウム含有廃液相を濃縮し、要すればポリカーボネート製造プロセスのために電気分解によって得られる水酸化ナトリウム溶液を同時に希釈することによる処理廃液の少なくともいくらかを利用する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年6月4日提出のドイツ国特許出願第102009023940.5号の利益を主張し、この全体を有用な目的のために参照することによって本明細書中に組み込む。
【0002】
本発明は、ポリカーボネート相界面法からの塩化ナトリウム含有処理廃水の濃度を浸透蒸留(osmotic distillation)によって増加させる、ポリカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネートは、通常、連続法によって、ホスゲンを製造し、次のビスフェノールとホスゲンとのアルカリ金属および窒素触媒、連鎖停止剤、および任意に分枝剤の存在下における水性アルカリ相および有機溶媒の混合物中の、境界面における反応によって、製造される。
【化1】

【0004】
ポリカーボネートの、例えば相界面法(phase boundary process)による製造は原理的には文献に記述されている(例えば、Chemistry and Physics of Polycarbonates,Polymer Reivews,H.Schnell,第9巻,John Wiley and Sons,Inc.(1964),50/51頁参照。)。
【0005】
ポリカーボネートの製造では、二相界面法(two−phase boundary process)が長年にわたって実績がある。この方法は、光学的応用または医学的応用のための多くの使用分野、例えばデータキャリア(CD、DVD)における熱可塑性ポリカーボネートの製造を可能にしている。
【0006】
頻繁に、ポリカーボネートに重要と記述されている品質特性は、良好な熱安定性および低い黄変である。これまでポリカーボネートの製造中に生じる廃水の品質にあまり注意が払われてこなかった。特に、残留有機物、例えば残留フェノール、での廃水の汚染は、追加の廃水の処理(例えば下水処理場によるかもしくは残留有機物の酸化のためのオゾン分解による。)に重要である。ここで、多数の出願があるが、主に次の廃水処理方法は、例えば特開平08−245780、DE 19510063 A1、特開平03−292340、特開平03−292341および特開平02−147628に記述されているように、フェノール系化合物による汚染の低減という目的で記載されている。廃水の残留有機物、例えばビスフェノールもしくはフェノール、での汚染は、高い過剰ホスゲンで作業することによって低く抑えることができる。しかしながら、このことは経済的理由で望ましくない。
【0007】
低いホスゲン過剰でのポリカーボネートの製造では、全てのビスフェノールまたは全てのモノフェノールが最後まで反応せず、廃水に入り、廃水を汚染するリスクがある。加えて、表面活性フェノール性OH基がポリマー中に残るので、相分離および洗浄がより困難にされるリスクがある。結果として全ての水溶性不純物が有機相から抽出されるわけではない。このことは、結果として生成物の品質に悪影響を及ぼしうる。
【0008】
連続二相界面法と同時に先行技術による廃水の低い汚染による高品質のポリカーボネートの製造は、高いホスゲン過剰またはポリカーボネートの品質低下と関連する相分離問題もしくは次の廃水の処理によってはじめて可能になり、その結果としてこのプロセスの経済効率が低下することを更に強調しなければならない。
【0009】
しかしながら、これらの既知の方法では、これらの方法の排水中の、環境を汚染し、下水処理場の廃水問題の増加をもたらす高い残留フェノール値は、複雑な浄化操作を要求する。例えば、WO 03/070639 A1は、塩化メチレンで抽出することによる、排水中の有機不純物の除去を記述している。
【0010】
通常、塩化ナトリウム含有溶液は、溶媒および有機残留物が除かれ、次に廃棄される。
【0011】
更に、塩化ナトリウム含有廃水がEP 1200359 A1またはUS 6,340,736 Aに従うオゾン分解によって精製され、次にこの廃水が塩化ナトリウム電気分解において使用されることも知られている。この方法の欠点は、非常にコストのかかるオゾン分解である。
【0012】
EP 541114 A2によると、塩化ナトリウム含有廃水ストリームは水の完全除去に至るまで蒸発によって濃縮され、有機不純物と共に残る塩は熱処理され、その結果として有機成分が分解される。赤外線照射の使用が特に好ましい。この方法の欠点は、水を完全に蒸発させなければならないことであり、従って、この方法は、経済的に行われない。
【0013】
WO 03/070639によると、ポリカーボネートの製造由来の廃水は、抽出によって精製され、次に、塩化ナトリウム電気分解に供給される。しかしながら、ポリカーボネート製造の廃水から最大で14重量%の塩化ナトリウムしかNaCl電気分解にリサイクルされない。なぜなら、より多くのNaCl含有廃水の場合、NaCl含有廃水と共に電気分解に導入される水が塩化ナトリウム電気分解の水分バランスを平衡から外すからである。
【0014】
ポリカーボネートの製造において生じる塩化ナトリウム含有溶液の塩化ナトリウム含量は6〜10重量%である。従って、溶液中に存在する全ての塩化ナトリウムは決してNaCl電気分解において塩素と水酸化ナトリウム溶液にリサイクルされない。塩化ナトリウム濃度10重量%では、ナトリウム1molあたり水3.5molの水輸送を示す市販の常套のイオン交換膜を使用する標準塩化ナトリウム電気分解において、塩化ナトリウム含有溶液からの塩化ナトリウムの約13%の使用しか成功しない。約25重量%の飽和塩化ナトリウム溶液までの濃度の増加は、塩化ナトリウム含有溶液中に存在する塩化ナトリウムのリサイクル率38%をもたらす。塩化ナトリウム含有溶液の完全リサイクルは今のところ未知である。
【0015】
水をアルカリ金属塩化物含有廃水から除去することによる濃度の上昇方法は既知である。
【0016】
WO 01/38419によると、高濃縮塩化ナトリウム溶液が電解槽に供給されるように、塩化ナトリウム含有溶液の濃度を熱処理による蒸発によって増加させる。しかしながら、蒸発はエネルギー多消費型であり、コストがかかる。
【0017】
更に、例えば逆浸透または、特に好ましくは、膜蒸留もしくは膜接触器を使用してもよい(MELIN;RAUTENBACH,Membranverfahren[Membrane processes];SPRINGER,BERLIN,2003参照。)。この場合の欠点は、高い浸透圧に打ち勝つための高いエネルギー要求であり、この結果として、このプロセスは経済的に効率的でなくなる。
【0018】
上にまとめた方法は、全て、ポリカーボネート製造との組み合わせだけでは、低濃度(6〜10重量%)のNaCl溶液が電気分解に供給され、従って、NaClの再利用が限られた量でしか可能でないかまたは濃縮がエネルギー多消費型であり、費用がかかるという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記先行技術から開始して、本発明の目的は、廃水のリサイクル中、塩素および水酸化ナトリウム溶液および可能であれば水素を生じる塩化ナトリウムの反応が最小エネルギー使用で進行し、従って、特に経済的であり、省資源の方法である、ポリカーボネート製造方法を提供することである。加えて、高純度および高収率で生成物を生じ、環境汚染および/または下水処理作業における廃水問題の低下を可能にする方法を提供するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の目的は、上記方法において、ポリカーボネート製造からのNaCl溶液の浸透膜蒸留(osmotic membrane distillation)を使用する上流の濃度上昇によって塩化ナトリウム含有廃水相を電気分解に利用することで達成される。
【0021】
本発明の一態様は:
(a) 塩素を一酸化炭素と反応させることによってホスゲンを製造する工程;
(b) 工程(a)において生じられるホスゲンを水性アルカリ金属含有塩基の存在下において少なくとも1種類のビスフェノールと反応させてポリカーボネートおよびアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液を生じる工程;
(c) 工程(b)において生じられるポリカーボネートをアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液から分離し、ワークアップ(working up)する工程;
(e) 工程(c)の後に残るアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部を浸透膜蒸留によって蒸留して濃縮アルカリ金属塩化物含有溶液を得る工程;
(f) 工程(e)からのアルカリ金属塩化物含有溶液の少なくとも一部を電気化学的に酸化して塩素、アルカリ金属水酸化物溶液および、任意に水素を得る工程;
を包含する、ポリカーボネートの製造方法である。
【0022】
本発明の別の態様は、更に工程(d)において、工程(c)の後に残るアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液から溶媒残留物および、要すれば触媒残留物を分離し(d1)、次に生じる溶液を工程(e)の浸透膜蒸留に供給する工程を包含する上記方法である。
【0023】
本発明の別の態様は、アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液をスチームで抽出するかもしくはストリップし、および/または、次にこのアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液を吸着剤で処理する(d2)ことによって工程(d)を達成する、上記方法である。
【0024】
本発明の別の態様は、吸着剤(d2)が活性炭である、上記方法である。
【0025】
本発明の別の態様は、工程(e)における浸透膜蒸留がアルカリ金属水酸化物溶液を水アクセプターとして使用する、上記方法である。
【0026】
本発明の別の態様は、工程(e)における浸透膜蒸留を10〜100℃の範囲の温度において行う、上記方法である。
【0027】
本発明の別の態様は、工程(e)における浸透膜蒸留を20〜50℃の範囲の温度において行う、上記方法である。
【0028】
本発明の別の態様は、工程(e)における浸透膜蒸留を1.0〜1.4barの範囲の絶対圧力において行う、上記方法である。
【0029】
本発明の別の態様は、工程(e)における浸透膜蒸留を1.1〜1.2barの範囲の絶対圧力において行う、上記方法である。
【0030】
本発明の別の態様は、工程(e)の浸透膜蒸留を20〜150barの範囲の差圧において行う、上記方法である。
【0031】
本発明の別の態様は、工程(e)の浸透膜蒸留を30〜100barの範囲の差圧において行う、上記方法である。
【0032】
本発明の別の態様は、工程(e)の浸透膜蒸留がAccurel PP膜を使用する、上記方法である。
【0033】
本発明の別の態様は、工程(e)において得られるアルカリ金属塩化物含有溶液の少なくとも一部を、塩素、水酸化ナトリウム溶液および、要すれば水素を生成する膜電気分解のブラインサーキット(brine circuit)に添加する、上記方法である。
【0034】
本発明の別の態様は、工程(f)の電気分解においてアルカリ金属塩化物濃度を増加させるために追加のアルカリ金属塩化物をアルカリ金属塩化物含有溶液に添加する、上記方法である。
【0035】
本発明の別の態様は、(d1)において、吸着剤を用いる処理(d2)の前に、工程(c)における分離後に残るアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液のpHを8以下に調節する、上記方法である。
【0036】
本発明の別の態様は、少なくとも1種類のビスフェノールが一般式
HO−Z−OH
〔式中、Zは、炭素原子を6〜45個有する芳香族部分であり、前記芳香族部分が任意に1以上の芳香環を含み、任意に置換されていてもよく、任意に脂肪族部分または脂環式部分またはヘテロ原子をブリッジユニットとして含んでいてもよい。〕
のビスフェノールである、上記方法である。
【0037】
本発明の別の態様は、少なくとも1種類のビスフェノールが、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、ビス(ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、およびそれらのアルキル化、環アルキル化、および環ハロゲン化化合物からなる群から選択される、上記方法である。
【0038】
本発明の別の態様は、少なくとも1種類のビスフェノールが、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−フェニル)−2−プロピル]ベンゼン、2−ヒドロカルビル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−インドール−2−オン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−インドール−2−オン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−1H−インドール−2−オン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−1H−インドール−2−オン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルフタルイミジン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N−フェニル−フタルイミジン、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンからなる群から選択される、上記方法である。
【0039】
本発明の別の態様は、工程(c)が少なくとも下記副次工程:
(aa) 工程(b)において生成されるポリカーボネートを含有する有機相をアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液から分離する工程;および
(bb) 工程(aa)において得られる有機相を少なくとも1回洗浄する工程
を包含し、工程(bb)の洗浄相の少なくとも一部を、要すれば触媒残留物および/または有機溶媒残留物の分離後に、工程(b)における使用用のアルカリ金属水酸化物水溶液製造用の水の部分代用品として使用する、上記方法である。
【0040】
本発明の別の態様は、上記アルカリ金属塩化物含有廃水溶液のアルカリ金属がナトリウムである、上記方法である。
【0041】
アルカリ金属および窒素触媒の存在下における不活性溶媒または溶媒混合物中でのビスフェノールとホスゲンとの反応によるポリカーボネートの連続製造において、境界面に生じる塩化ナトリウム含有廃水排液からの塩化ナトリウムの改良されたリサイクルが達成されることがわかった。境界面に生じる塩化ナトリウム含有廃水溶液は、複雑な精製なしに、pHを8以下のpHに調整した後、活性炭を用いる単純な処理の後に浸透膜蒸留において直接濃縮され、塩素、水酸化ナトリウム溶液および要すれば水素を生じる、得られた塩化ナトリウムの電気化学的酸化が達成され、この塩素がホスゲンの生成にリサイクルされる。
【0042】
従って、本発明は、ポリカーボネートを製造し、生じる廃水相を利用する方法に関する。特に、この方法は、浸透膜蒸留による、下流のアルカリ金属塩化物電気分解における処理のための、ポリカーボネート製造プロセス中に生じるアルカリ金属塩化物含有廃水相の濃縮を包含する。このプロセスにおいて、要すれば、同時に、電気分解において生じられる水酸化ナトリウム溶液を希釈して、これを次にポリカーボネート法における出発材料として直接使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明によるポリカーボネートの製造方法のスキームである。
【0044】
本発明による方法は、少なくとも下記工程:
(a) 塩素を一酸化炭素と反応させることによってホスゲンを生成する工程、
(b) 工程(a)において生じられるホスゲンを、水性アルカリ金属含有塩基、特にナトリウム含有塩基、適切な場合窒素触媒、および適切な場合有機溶媒の存在下において少なくとも1種類のビスフェノールと反応させてポリカーボネートおよびアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液、特に塩化ナトリウム含有反応廃水溶液、を生じる工程、
(c) 工程(b)において生じられるポリカーボネートを分離し、ワークアップする工程、
(d) 適切な場合、工程(c)で残る溶媒残留物および、適切な場合、触媒残留物のアルカリ金属塩化物含有溶液からの、特に抽出または溶液をスチームでストリップすることによる、分離(d1)、および次の吸着剤、特に活性炭、を用いる処理(d2)、
(e) 工程(c)または(d)から残るアルカリ金属塩化物含有溶液の少なくともいくつかの浸透膜蒸留、
(f) 塩素、アルカリ金属水酸化物溶液および、適切な場合水素を生じる、工程(e)からのアルカリ金属塩化物含有溶液の少なくともいくつかの電気化学的酸化
を包含する。
【0045】
特に好ましい態様では、この方法は、副次工程(d1)の後で、吸着剤を用いる処理(d2)の前に、溶液を8以下、好ましくは6〜8のpHに調整することを特徴とする。
【0046】
別の特別な態様では、工程(f)に従って製造される塩素の少なくともいくつかを工程(a)に従うホスゲンの製造にリサイクルする。
【0047】
別の好ましい態様では、工程(f)によって製造されるアルカリ金属水酸化物溶液の少なくともいくつかを工程(e)による浸透膜蒸留における水アクセプターとして使用する。
【0048】
別の特に好ましい態様では、工程(e)によって得られる希アルカリ金属水酸化物溶液の少なくともいくらかを工程(b)によるポリカーボネートの製造にリサイクルする。
【0049】
工程(c)による分離後に得られるアルカリ金属塩化物含有溶液(反応廃水)は、要すれば工程(d)による溶媒残留物および、適切な場合触媒残留物の分離後に、単独で浸透膜蒸留に使用してもワークアップからの洗浄相との組み合わせ(全プロセスの廃水)で浸透膜蒸留に使用してもよく、好ましくは単独で使用する。
【0050】
好適なビスフェノールは、一般式
HO−Z−OH
〔式中、Zは、炭素原子を6〜45個有する芳香族部分であり、1個以上の芳香環を含んでいてもよく、置換されていてもよく、脂肪族部分または脂環式部分またはヘテロ原子をブリッジユニットとして含んでいてもよい。〕
のビスフェノールである。
【0051】
本発明による方法において使用されるそのような化合物の例は、ジヒドロキシジアリールアルカン、例えばヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、ビス(ヒドロキシフェニル)フタルイミジンおよび更にそれらのアルキル化、環アルキル化および環ハロゲン化化合物である。
【0052】
好ましいビスフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA、BPA)、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2−ヒドロカルビル−3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)フタルイミジン、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)−1−アリール−1H−インドール−2−オン、2,2−ビス(4−ヒドロキシアリール)−1−アリール−1H−インドール−2−オン、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0053】
特に好ましいビスフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA(BPA))、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2−ヒドロカルビル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−インドール−2−オン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−インドール−2−オン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−1H−インドール−2−オン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−1H−インドール−2−オン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルフタルイミジン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N−フェニルフタルイミジンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0054】
これらおよび別の好適なビスフェノールは、例えばUS 2970131 A、US 2991273 A、US 2999835 A、US 2999846 A、US 3028365 A、US 3062781 A、US 3148172 A、US 3271367 A、US 3275601 A、US 3271367 AおよびUS 4982014 A、ドイツ国公開公報DE 1570703 A、DE 2063050 A、DE 2036052 A、DE 2211956 A、DE 3832396 AおよびDE 3833953 A、フランス国特許文献FR 1561518、モノグラフH.Schnell著,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Interscience Publishers,ニューヨーク 1964年,28頁以降;102頁以降およびD.G.Legrand,J.T.Bendler著,Handbook of Polycarbonate Science and Technology,Marcel Dekker New York 2000,72頁以降に記述されている。
【0055】
ここで、本発明による方法が実質的にあらゆる既知のビスフェノールに使用されうることを強調しておく。
【0056】
好適な連鎖停止剤および分枝剤は文献で既知である。いくつかは、例えばDE 3833953 Aに記述されている。好ましい連鎖停止剤は、フェノール、クミルフェノール、イソオクチルフェノールおよびパラ−tert−ブチルフェノールである。
【0057】
好ましい分枝剤は、トリスフェノールおよびテトラフェノールおよび更に3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0058】
ビスフェノレートの生成に使用されるアルカリ金属は、下記系列:
Na、K、Li水酸化物
の水酸化物を有するアルカリ金属水酸化物溶液であり、適切な場合、アルカリ土類金属水酸化物を使用してもよい。水酸化ナトリウム溶液が好ましく、この新規の方法では、好ましくは10〜55重量%溶液として使用される。
【0059】
反応(b)に考慮される触媒は、二相界面層法(two−phase boundary layer method)によるポリカーボネートの製造に知られているあらゆる触媒であり、例えば第三級アミン、N−アルキルピペリジンまたはピリジンである。
【0060】
使用されるアミン触媒は、開鎖であっても環状であってもよく、トリエチルアミンおよびエチルピペリジンが特に好ましい。この触媒は、この新規の方法に、好ましくは1〜55重量%溶液として使用される。
【0061】
ホスゲンは、処理工程(b)において、液体状態で使用されても、ガス状態で使用されても、不活性溶媒中に溶解されて使用されてもよい。
【0062】
この新規の方法では、工程(b)では、好ましく用いられる不活性有機溶媒は、ポリカーボネートを約20℃の温度において少なくとも5重量%溶解することができるあらゆる既知の溶媒および更にその混合物である。例えばジクロロメタン、トルエン、様々なジクロロエタンおよびクロロプロパン化合物、クロロベンゼンおよびクロロトルエンが好ましい。好ましくは、ジクロロメタン、またはジクロロメタンとクロロベンゼンとの混合物が使用される。ジクロロメタンおよびジクロロメタンとモノクロロベンゼンとの20:80重量部〜75:25重量部の比の混合物が特に好ましい。
【0063】
反応全体にわたって、pHを9〜14、好ましくは9.5〜13.0にする。これは、一旦、開始時にビスフェノールを溶解するのに必要な量のアルカリ金属水酸化物溶液を使用し、更に、熱交換器の上流で、アルカリ金属水酸化物溶液の第1補給を行い、次にそこに管状リアクターの上流で、適切な場合、連鎖停止剤と共に、アルカリ金属水酸化物溶液の第2供給を行うことによって達成される。
【0064】
本発明による方法によって達成可能なポリカーボネートは、産業上で、既知の方法で所望の形態のボディまたはプレートおよびフィルムとして、例えば自動車分野または光学用途、光学および磁気光学記録媒体において使用されうる。
【0065】
工程(b)の反応プロファイルは、好ましくは連続的に、特に好ましくはプラグフローで、大きなバックミキシングなしに行われる。従って、これは、例えば管状リアクターにおいて達成されうる。2つの相(水相および有機相)の混合は、取り付けられるチューブオリフィス、スタティックミキサーおよび/または、例えばポンプによって行われうる。
【0066】
工程(b)による反応は、特に好ましくは2段階で行われる。
【0067】
好ましい方法の第1段階では、反応は、出発原料ホスゲン、不活性溶媒または溶媒混合物であって、好ましくはホスゲン用の溶媒の役割のみを果たすもの、および好ましくは既に予めアルカリ金属水酸化物溶液中に溶解されているビスフェノールを一緒にすることによって開始される。第1段階の滞留時間は、典型的には、2秒〜300秒であり、特に好ましくは4秒〜200秒である。第1段階のpHは、アルカリ金属水酸化物溶液/ビスフェノール/ホスゲンの比によって、pHが11.0〜12.0、好ましくは11.2〜11.8、特に好ましくは11.4〜11.6の範囲になるように調節される。第1段階の反応温度は、冷却によって、好ましくは40℃未満、特に好ましくは35℃未満に保持される。
【0068】
好ましい方法の第2段階では、ポリカーボネートを生じる反応が完了する。好ましい方法の滞留時間は、1分〜2時間、好ましくは2分〜1時間、とりわけ好ましくは3分〜30分間である。好ましい方法の第2段階では、pHの常時監視(連続法では、pHを好ましくは原理的に知られている方法によってオンラインで測定する。)およびアルカリ金属水酸化物溶液の添加による対応するpHの調節によって制御を行う。供給されるアルカリ金属水酸化物溶液の量は、特に第2処理段階における反応混合物のpHが7.5〜10.5、好ましくは8〜9.5、とりわけ好ましくは8.2〜9.3の範囲になるように調整する。第2段階の反応温度は、冷却によって、好ましくは50℃未満、特に好ましくは40℃未満、とりわけ好ましくは35℃未満に保持される。
【0069】
しかしながら、この出願に一般的にまたは好ましい範囲で記載されるパラメータまたは注釈は、それらの間で、すなわちそれぞれの範囲と好ましい範囲との間で、所望の通りに組み合わせてもよい。
【0070】
好ましい方法では、工程(b)において、ホスゲンを、ビスフェノールに対して1:2〜1:2.2のモル比で使用する。溶媒を、反応後にポリカーボネートが溶液の5〜60重量%、好ましくは溶液の20〜45重量%になるように添加する。
【0071】
触媒の濃度は、好ましくは使用されるビスフェノールに対して、0.0001mol〜0.1molである。
【0072】
反応(b)の後に、工程(c)において、好ましくはポリカーボネート含有有機層を、通常、水性液体で洗浄し、それぞれの洗浄操作後にできるだけ水性相から分離する。洗浄は、好ましくは、脱イオン水で行われる。ポリカーボネート溶液は、洗浄および洗液の分離後、通常、濁っている。洗液として、触媒を分離するために水性液体、例えば薄い鉱酸、例えばHClもしくはHPO、を使用し、更なる精製のために脱イオン水を使用する。洗液中のHClまたはHPOの濃度は、例えば0.5〜1.0重量%である。有機相を、好ましくは、例えば1回、好ましくは数回、洗浄する。
【0073】
洗液を有機相から分離するために使用される相分離装置は、分離容器、相分離器、遠心分離器または原理的に既知のコアレッサー、またはこれらの器具の組み合わせである。
【0074】
これは、このようにして、意外なことに、それから分離される溶媒を考慮せずに、99.85%以上の高純度のポリカーボネートを生じる。
【0075】
本発明による方法の好ましい態様では、工程(c)において分離される洗液は、適切な場合、触媒残留物および/または有機溶媒残留物の分離後に、本発明による方法に再利用される。
【0076】
工程(b)において生じられるポリカーボネートの工程(c)による分離およびワークアップは、好ましくは、少なくとも下記工程:
(aa) ポリカーボネート含有有機相と水性アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液とを分離する工程
(bb) 少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回、特に好ましくは5回、工程(aa)において得られるポリカーボネート含有有機相を洗浄し、それぞれの洗液を分離する工程
を包含する。
【0077】
適切な場合、工程(c)(bb)によって得られる洗液の少なくとも1つを、少なくとも1種類の塩基性化合物の添加によってpHを少なくとも9、好ましくは少なくとも10、特に好ましくは10〜11に調整することによって、触媒残留物および適切な場合有機溶媒残留物から分離すること、並びにこれを次の少なくとも1種類の不活性有機溶媒を用いる抽出、または好ましくは次のスチームを用いる溶液のストリッピングにさらすことが必要である。pHを調整するのに好適な塩基性化合物は、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物または炭酸塩である。上記塩基性化合物は、固体の形態で使用されてもその水性溶液の形態で使用されてもよい。好ましくはアルカリ金属水酸化物溶液、特に好ましくは水酸化ナトリウム溶液が使用される。工程(d1)では、更に、これらのpHを好ましくは上記化合物を使用して調整する。
【0078】
好ましくは、工程(c)(bb)からの洗液の少なくともいくらかを、製造用の、特に工程(b)用の水酸化ナトリウム溶液の濃度の調整用の水の部分代用品として使用してもよい。本発明による方法の好ましい態様では、工程(b)によるポリカーボネートの製造にリサイクルする前に、工程(e)および/または(f)によって製造されるアルカリ金属水酸化物溶液を希釈するために工程(c)(bb)からの洗液の少なくともいくらかを使用してもよい。
【0079】
工程(c)において分離される洗液を本発明による方法に再循環させる、本発明による方法の好ましい態様は、廃水放出を低減させるという追加の利点を提供する。
【0080】
ポリカーボネートの合成後に、ポリカーボネートを合成において使用される有機溶媒または溶媒混合物、例えば塩化メチレンもしくは塩化メチレン/クロロベンゼン、中の溶液の形態で分離する。
【0081】
高純度ポリカーボネートを得るために、溶媒を蒸発させる。蒸発は、複数のエバポレータ段階で行われうる。例えば、これは、溶媒をポリカーボネートから分離させる1以上の接続蒸留塔によって行われる。
【0082】
精製段階(c)は、例えば連続的に、蒸留におけるポット温度が150℃〜310℃、好ましくは160℃〜230℃になるように行われる。この蒸留を行うために用いられる圧力は、特に1〜1000mbar、好ましくは5〜100mbarである。
【0083】
そのように精製されるポリカーボネートは、非常に良好な生成物特性によって区別され、従って、次に形成される部品は、優れた品質で製造される。
【0084】
工程(c)による残留アルカリ金属塩化物含有溶液は、有利なことに、例えば蒸留またはスチームストリッピングによって、揮発性の高い有機不純物、例えば合成に使用される有機溶媒の残留物および適切な場合触媒の残留物、が除かれる。従って、高濃度の溶解塩化ナトリウム(5〜10重量%)および溶解炭酸ナトリウム(0.3〜1.5重量%)を有する廃水が残る。上記炭酸ナトリウムは、例えばホスゲンの加水分解によってポリカーボネート生成の副反応として生じられる。加えて、廃水は、有機化合物、例えばフェノール(例えば非置換フェノール、アルキルフェノール)で汚染されている。
【0085】
次に、予め精製された廃水の吸着剤での処理を好ましくは活性炭を使用して行う。
【0086】
好ましい方法によると、pHは、副次処理工程(d1)の後に吸着剤での処理(d2)前に塩酸または塩化水素を使用して低減される。好ましくは、pHは、8未満に、特に好ましくは4〜8に低減される。原理的に考えられるが本発明の方法に好ましくない、より安価な硫酸の使用は、pHの低減において硫酸ナトリウムの生成をもたらし、硫酸ナトリウムは次のアノライトサーキット(anolyte circuit)における電気分解において濃縮される。例えば製造業者の取扱説明書によるとイオン交換膜はアノライト中のある硫酸ナトリウム濃度以下でしか機能しないので、塩酸または塩化水素を使用する場合よりもより多くのアノライトを排出しなければならず、反応生成物は塩化ナトリウムを必要とする。
【0087】
好ましいプロセスの変形は、濃縮プロセスによってアルカリ金属塩化物含有廃水から水を除去することである。
【0088】
浸透蒸留によるNaCl溶液の濃度の増加は、特に、好ましい態様でNaCl電気分解によって生じるNaOH溶液を水アクセプターとして使用する場合に、省エネルギーである。このことは、特にポリカーボネート製造において、薄い水酸化ナトリウム溶液を使用する場合に有利であり、この場合、更に水酸化ナトリウム溶液を希釈するための水もまた節約できる。
【0089】
従って、電気分解(f)の前に工程(e)において水酸化ナトリウム溶液を水アクセプターとして使用する浸透蒸留によって(d)由来のアルカリ金属塩化物含有溶液の濃度を増加させることを特徴とする方法が特に好ましい。
【0090】
本発明による電解槽の運転と本発明による濃度上昇プロセスとの組み合わせによって、理論的に塩化ナトリウムを最大68%まで廃水から回収できる。このことは、塩化ナトリウム電気分解がホスゲンの生成に必要とされる塩素とポリカーボネートの生成に必要とされる水酸化ナトリウム溶液としか生成せず、他の用途のための塩素を生成しない場合に当てはまる。
【0091】
浸透蒸留は、膜を通るスチームの分子の拡散によって、適切な場合、クヌーセン拡散によって進行する。従って、拡散速度は、膜の両側の蒸気圧の差、および更に膜の多孔性、厚さおよび屈曲度(tortuosity)に依存する。
【0092】
効率的な濃度の増加を可能にするために、アルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、特に好ましくは水酸化ナトリウム、の濃縮溶液を水アクセプターとして使用するべきである。
【0093】
本発明による方法のために、耐薬品性材料、例えばポリプロピレン、を膜材料として使用すべきである。使用される膜は、好ましくは毛細管の長さが30〜6000μmであり、直径が0.01〜0.7μmである毛細管膜であるべきである。
【0094】
特に好適な膜は、親油性膜、例えばMembrana company製のAccurel PP 50/200、Accurel PP 50/280、Accurel PP 150/330、Accurel PP Q3/2またはAccurel S 6/2である。
【0095】
この方法は、好ましくは、温度10〜100℃、好ましくは20〜50℃において浸透蒸留が機能するような方法でなされる。使用される水酸化ナトリウム溶液の温度は、NaCl含有廃水の温度よりも高い。
【0096】
浸透蒸留は、絶対圧力1〜1.4barにおいて、好ましくは1.1〜1.2barの圧力において行われる。
【0097】
アルカリ金属塩化物溶液とアルカリ金属水酸化物溶液との圧力比は、特にアルカリ金属塩化物溶液の浸透圧がアルカリ金属水酸化物溶液の圧力よりも高くなるような方法で選択される。
【0098】
アルカリ金属塩化物溶液とアルカリ金属水酸化物溶液との間の差圧は、特に好ましい方法では20〜150bar、好ましくは30〜100barであるべきである。
【0099】
アルカリ金属塩化物電気分解プロセスを以下により詳細に記述する。以下の説明は、塩化ナトリウムの電気分解に関する一例と見なされる。なぜなら、上記方法は原則的にあらゆるアルカリ金属塩化物(特にLiCl、NaCl、KCl)が使用されうるからである。しかしながら、上記段階における塩化ナトリウムまたは水酸化ナトリウム溶液の使用がこのプロセスの好ましい態様である。
【0100】
通常、例えば塩化ナトリウム含有溶液の電気分解に、膜電気分解法(membrane electrolysis processes)を使用する(この関連で、Peter Schmittinger,CHLORINE,Wiley−VCH Verlag,2000参照。)。この場合、アノードを有するアノードチャンバーおよびカソードを有するカソードチャンバーからなる2室型電解槽を使用する。アノードチャンバーとカソードチャンバーは、イオン交換膜によって隔たれる。通常塩化ナトリウム濃度300g/L以上の塩化ナトリウム含有溶液をアノードチャンバーに導入する。アノードでは、塩化物イオンを塩素に酸化し、これを薄まった塩化ナトリウム含有溶液(約200g/L)と共にセルの外側に導く。ナトリウムイオンは、電場の影響下でイオン交換膜を通ってカソードチャンバーに移動する。この移動中、膜に依存して、ナトリウム1molにつき水3.5〜4molを伴う。結果としてアノライトは水が減少する。アノライトとは対照的に、カソード側では、水の水酸化物イオンと水素とへの電気分解のために、水が消費される。ナトリウムイオンと共にカソライトに入る水は、水酸化ナトリウム溶液濃度を流出液中31〜32重量%に保持するのに十分であり、これは取り込み濃度30重量%および電流密度4kA/mである。カソードチャンバーでは、水は電気化学的に還元され、水酸化物イオンと水素が生成される。
【0101】
代わりに、更に、酸素を電子と反応させて水酸化物イオンを生じ、水素を生成しないガス拡散電極をカソードとして使用してもよい。この水酸化物イオンは、イオン交換膜を通じてカソードチャンバーに入ったナトリウムイオンと共に水酸化ナトリウム溶液を生成する。通常、濃度30重量%の水酸化ナトリウム溶液をカソードチャンバーに供給し、濃度31〜32重量%の水酸化ナトリウム溶液を移動させる。本発明の目的は、できるだけ高濃度の水酸化ナトリウム溶液濃度を得ることである。なぜなら、通常、水酸化ナトリウム溶液は50重量%水酸化物溶液として貯蔵されたり輸送されたりするからである。しかしながら、市販の膜は、これまでのところ、32重量%よりも濃度の高い水酸化物溶液に対して安定でなく、従って、水酸化ナトリウム溶液は熱による蒸発によって濃縮しなければならない。
【0102】
塩化ナトリウム電気分解の場合、この塩化ナトリウム含有溶液によって追加の水がアノライトに導入されるが、膜を通じて水だけがカソライトに送り出される。カソライトに輸送されるよりも多くの水が塩化ナトリウム含有溶液によって導入されると、アノライトは塩化ナトリウムが減少し、電気分解を連続的に行えない。非常に低い塩化ナトリウム濃度では、酸素生成の副反応が開始する。
【0103】
最大量の塩化ナトリウム含有溶液を経済的に塩化ナトリウム電気分解に供給するために、膜を通じる水輸送を増加させることが有用である。これは、例えばUS 4,025,405 Aに記載されているような好適な膜の選択によって行われうる。水輸送の増加の効果は、そうでなければ通常である水酸化物溶液濃度を維持するための水添加を割愛できることである。
【0104】
US 3,773,634 Aによると、水酸化物溶液濃度31〜43重量%および塩化ナトリウム濃度120〜250g/Lを使用すると、膜を通る高い水輸送で電気分解が行われうる。
【0105】
両方の方法の欠点は、これらの方法の低い電流収量であり、このことは電気分解の経済効率を損なう。
【0106】
好ましい方法によると、塩化ナトリウム含有反応廃水は、相分離および抽出またはスチームを用いるストリッピングによる溶媒および適切な場合使用される触媒の除去の後、およびpHの調整後に、活性炭処理によって分離される(d2)。
【0107】
次に、このアルカリ金属塩化物含有廃水を浸透蒸留(e)に直接供給してもよい。
【0108】
ポリカーボネート製造の廃水中に存在する塩化ナトリウムの最大13%がNaCl電気分解に使用される先行技術(WO 03/70639 A)と比較して、本発明による方法を用いると、13%よりも多くの塩化ナトリウムが廃水から回収されうる。
【0109】
新規の方法は、更に、カソードで水素が発生せず、カソードが酸素を水酸化物イオンに還元するガス拡散電極によって置き換えられているアルカリ金属塩化物電気分解を使用しても行われうる。
【0110】
例えば組み込まれた位置(integrated site)で水素が化学反応に必要とされない場合、決まって生成される水素はなしで済む。この利点は、ガス拡散電極を使用する場合の低い電解電圧に起因する電気分解における省エネルギーである。
【0111】
ポリカーボネート製造由来の塩化ナトリウム含有溶液は、反応廃水である場合、通常、塩化ナトリウム含量は10重量%以下である。この反応廃水を洗液と組み合わせると、NaCl濃度は例えば約6重量%になる。電気分解が専らポリカーボネート製造用の塩素および水酸化ナトリウム溶液のみを供給する場合、この塩化ナトリウム含有廃水は電気分解で少量しか使用されない。例えば、通常のイオン交換膜および塩化ナトリウム電気分解の標準運転パラメータの場合、塩化ナトリウムを6重量%含むポリカーボネート廃水溶液の塩化ナトリウムのわずか約7%しか使用されない。NaCl電気分解の標準運転パラメータは、排水中のブライン濃度200〜240g/LおよびNaOH濃度31〜32重量%である。従って、生じる塩化ナトリウムの完全リサイクルは今まで不可能であった。水の熱蒸発による濃縮は今のところ経済的ではない。なぜなら、塩化ナトリウムは非常に安価な製品として入手可能だからである。
【0112】
塩化トリウム電気分解が専らポリカーボネート製造用の塩素および水酸化ナトリウム溶液のみを生じる場合、本発明による方法を使用して、10重量%の濃度において生じる排水由来の塩化ナトリウムの13%よりも著しく多くがリサイクルされうる。通常、塩化ナトリウム電気分解は、複数の塩素消費物を有する組み込まれたケミカルサイト(integrated chemical site)において運転され、従って、塩化ナトリウム含有溶液は全ての消費物からリサイクルに利用できない。塩化ナトリウム電気分解が専らポリカーボネート製造用の水酸化ナトリウム溶液および塩素のみを提供しなくてもよい場合、排水から再利用できる塩化ナトリウムの割合は増加する。
【0113】
この新規の方法の別の好ましい変形は、ポリカーボネート製造の排水の濃度を固体アルカリ金属塩化物によって増加させ、アルカリ金属塩化物電気分解に供給することである。これによってポリカーボネート廃水由来のアルカリ金属塩化物の50%よりも多くが再利用可能であった。
【0114】
しかしながら、このことは、塩素およびアルカリ金属水酸化物溶液がポリカーボネートの製造のみに使用されるわけではないことを意味する。
【0115】
特に好ましくは、pH7未満のアルカリ金属塩化物含有廃水を、電気分解(f)において使用するかまたは電気分解(f)に供給する。pHは、好ましくは塩酸を使用して調整されるが、気体の塩化水素を使用して調整してもよい。別の好ましい方法では、NaCl電気分解は、セルから到達するNaCl溶液のNaCl濃度が200g/L未満であるような方法で行われる。同時に、セルを出る水酸化物溶液の濃度は30重量%未満であってもよい。
【0116】
イオン交換膜を通じる水の輸送は、運転パラメータのみに依存するのではなく、使用される膜のタイプにも依存する。本発明による方法は、本発明よる塩化ナトリウム濃度および水酸化物溶液濃度の条件のもとでナトリウム1molあたり4.5molよりも多くの水が膜を通る水の輸送を可能にするイオン交換膜を利用する。
【0117】
電流密度は、この方法で膜表面積に基づいて計算され、特に2〜6kA/mである。特に好ましくは、比較的表面積の広いアノードを使用する。比較的表面積の広いアノードは、物理的表面積が投影表面積よりも非常に広いアノードを意味すると理解される。比較的表面積の広いアノードは、例えば、フォーム状のまたはフェルトのように構成されている電極である。このようにして、アノードにおいて、非常に広い電極表面積を提供し、局所電流密度を大きく低下させる。アノードの表面積は、好ましくは、電極の物理表面積ベースの局所電流密度が3kA/m以下になるように選択される。表面積が広く、局所電流密度が低ければ、より低いブライン中の塩化ナトリウム濃度を選択してもよくなり、リサイクルされる廃水由来の塩化ナトリウムの割合が高くなる。
【0118】
電気分解(f)前のアルカリ金属塩化物含有廃水のpHは、好ましくは7未満であるべきであり、特に好ましくは0.5〜6であるべきである。
【0119】
アルカリ金属塩化物電気分解は、セルから到達するアルカリ金属塩化物溶液のアルカリ金属塩化物濃度が塩化ナトリウム100〜280g/Lになり、および/またはセルから到達するアルカリ金属水酸化物溶液の濃度が13〜33重量%になるような方法で運転されるべきである。比較的低い電圧でセルの運転を可能にする濃度が特に好ましい。このために、セルから到達するアルカリ金属塩化物溶液の濃度は、好ましくはアルカリ金属塩化物110〜220g/Lであるべきであり、および/またはセルから到達するアルカリ金属水酸化物溶液の濃度は20〜30重量%になるべきである。
【0120】
電気分解において使用されるイオン交換膜のナトリウム1molあたりの水の輸送は、好ましくは4.0mol HO/ナトリウム1molよりも多く、特に好ましくは4.5〜6.5mol HO/ナトリウム1molであるべきである。
【0121】
この方法は、好ましくは、電気分解(f)が70〜100℃、好ましくは80〜95℃の温度において行われるような方法で稼働される。
【0122】
電気分解は、絶対圧力1〜1.4bar、好ましくは1.1〜1.2barにおいて稼働される。
【0123】
アノードチャンバーとカソードチャンバーとの圧力比は、特にカソードチャンバーの圧力がアノードチャンバーの圧力よりも高いように選択される。
【0124】
カソードチャンバーとアノードチャンバーとの差圧は、特に好ましい方法では、20〜150mbar、好ましくは30〜100mbarであるべきである。
【0125】
低いアルカリ金属塩化物濃度では、特別なアノードコーティングを使用してもよい。特に、アノードのコーティングは、酸化ルテニウムに加えて、更に元素の周期表の第7亜族および第8亜族の別の貴金属成分も含みうる。例えば、アノードコーティングは、パラジウム化合物でドープされていてもよい。ダイヤモンドベースのコーティングも同様に利用可能である。
【0126】
下記実施例は、本発明を制限することなく説明することを意図している。
【0127】
上記全ての参考文献を、有用な目的に関して全体を参照することによって本明細書中に組み込む。
【0128】
本発明を具体的に表現するある特定の構造体を示すが、根本的な本発明の概念の精神および範囲から逸脱せずに様々な変形および一部の組み換えが行われること、並びに本明細書中に示し、記載する特定の形態に限定されないことが当業者に明らかである。
【実施例】
【0129】
下記実施例は、生じる塩化ナトリウム含有溶液の浸透膜蒸留および電気分解による、ポリカーボネートの製造において生じる塩化ナトリウム含有廃水相の濃縮および電気分解によって得られる水酸化ナトリウム溶液の同時の希釈に関連する、本発明によるポリカーボネートの製造方法を説明することを意図している。
【0130】
実施例1
(a)ポリカーボネートの製造およびワークアップ
【0131】
ポンプ循環リアクター中に、ポンプの上流でT字形部品を通じてBPA15重量%およびBPA 1molあたり水酸化ナトリウム溶液2.1molを含むアルカリ性ビスフェノールA溶液24000kg/時間を計量添加し、更に別のT字形部品を通じて塩化メチレン50重量%とモノクロロベンゼン50重量%とからなる溶媒20400kg/時間に溶解されたホスゲン1848kg/時間を計量添加する。
【0132】
アルカリ度を維持するために、32重量%水酸化ナトリウム溶液360kg/時間を添加し、この反応混合物を、熱交換器および非撹拌ドゥエル容器(dwell time vessel)を経由させて、上記多量のストリームを添加するポンプに戻す。
【0133】
フロー計量添加によって、ポンプ循環速度を260m/時間にする。温度は36℃である。
【0134】
流入する原料と同じサイズの少量のエマルジョンを、BPAとホスゲンとの計量添加地点の上流で、別のポンプのドゥエル容器から供給し、ポンプで管状リアクターを通じて送り込む。このストリームに、水酸化ナトリウム溶液(32重量%)1050kg/時間および更に溶媒混合物536kgに溶解されたp−tert−ブチルフェノール134kg/時間を添加する。10分のドゥエル時間の後、N−エチルピペリジン18kg/時間を溶媒混合物(塩化メチレン50部とモノクロロベンゼン50部)中の4.8重量%溶液の形態で添加し、このエマルジョンを別のポンプによって別の管状リアクターを通じて送り込む。
【0135】
更に10分のドゥエル時間後、このエマルジョンを分離容器において分離し、ポリカーボネート溶液を既知の方法によって、例えば遠心分離技術によって、洗浄して電解質を除く。
【0136】
ポリカーボネート溶液を蒸発ユニットで濃縮し、脱蔵押出機(degassing extruder)において残留溶媒を除いた。
【0137】
下記分析データをポリカーボネートグラニュールに対して測定した:
YI =1.35(ASTM E 313の記載に準拠して測定)
ηrel =1.195(ISO 1628/4の記載に準拠して測定)
フェノール性OH =85ppm(フェノール性末端基をTiClで染色した後に紫外線分光法によって546nmにおいて測定)
【0138】
反応廃水は、ここでは洗浄相と組み合わせず、溶媒残留物および触媒をスチームでストリップすることによって除く。塩酸で中和し、活性炭で処理した後、反応廃水はNaCl 9.0重量%および遊離BPAおよびフェノール2ppm未満を含む(水相を、例えばPerkin−Elmer分光計で、紫外線分光法によって294nmで測定した。)。
【0139】
この反応廃水は、追加の精製をせずに浸透膜蒸留に供給できる。
【0140】
(b)浸透膜蒸留による塩化ナトリウム溶液(反応廃水)の濃度上昇
【0141】
膜表面積1mのモジュールにおいて浸透蒸留を室温において行った。Membrana製のAccurel PP 150/330型の膜を使用した。このモジュールに、(a)の9.0重量%塩化ナトリウム含有反応廃水溶液2.3Lをポンプで送り込み、水を受け取る相として31.0重量%水酸化ナトリウム溶液1Lを並流に計量添加した。210分後にこのセルから出る反応廃水溶液の濃度は、NaCl 18.0重量%であり、取り出されたNaOH溶液は16.0重量%に薄められていた。
【0142】
セルから出る濃縮反応廃水溶液は追加の精製なしに電気分解に供給してもよい。
【0143】
(c)浸透蒸留由来の塩化ナトリウム溶液の電気化学的酸化
【0144】
電気分解を、一例として、アノード表面積0.01mの実験室の電解槽中で行う。電流密度は4kA/mであり、カソード側の出口の温度は88℃、アノード側の出口の温度は89℃であった。ドイツ国在DENORA製の標準アノードおよびカソードコーティングを有する電解槽を使用した。DuPont製のNafion 982 WXイオン交換膜を使用した。電解電圧は3.02Vであった。アノードチャンバーを通じて質量流量1.0kg/時間でポンプで送り込むことによって塩化ナトリウム含有溶液を循環させた。アノードチャンバーに供給される溶液の濃度はNaCl 25重量%であった。アノードチャンバーから20重量%NaCl溶液が取り出された。アノードチャンバーから取り出されるNaCl溶液に、ポリカーボネート生成由来の18.0重量%濃縮反応廃水0.137kg/時間および固体塩化ナトリウム0.0641kg/時間を添加した。次にこの溶液をアノードチャンバーに戻した。この膜を通じる水の輸送は、ナトリウム1molあたり水3.5molであった。20.2重量%NaCl含有溶液0.008kg/時間に相当する、セルからのNaCl溶液の1%を廃棄した。
【0145】
カソード側では、質量流量1.107kg/時間でポンプで送り込むことによって水酸化ナトリウム溶液を循環させた。カソード側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度はNaOH30重量%であり、カソード側から取り出される水酸化ナトリウム溶液の濃度は31.9重量%NaOHであった。31.9重量%水酸化ナトリウム溶液0.187kg/時間を体積ストリームからから取り出し、残りに水0.0664kg/時間を補給し、カソードエレメントに再循環させた。反応塩化ナトリウムの27.8%がポリカーボネート反応廃水由来である。
【0146】
(d)浸透蒸留由来の希釈水酸化ナトリウム溶液のポリカーボネート生成へのリサイクル
【0147】
(b)由来の希釈水酸化ナトリウム溶液をポリカーボネート生成に供給する。(b)由来の16.0重量%水酸化ナトリウム溶液を脱イオン水で希釈することによって生成される6.5重量%水酸化ナトリウム溶液とビスフェノールとの混合物を、塩化メチレン/クロロベンゼンの溶媒混合物およびホスゲンと組み合わせ、実施例1(a)に記載の通り処理する。
【0148】
通常の32重量%水酸化ナトリウム溶液の代わりに16.0重量%水酸化ナトリウム溶液を使用することによって、脱イオン水25.5%を節約できる。
【0149】
実施例2
(a)ポリカーボネートの製造およびワークアップ
【0150】
反応廃水を洗浄相と組み合わせて全プロセスの廃水を生じ、溶媒残留物および触媒をスチームでストリップすることによって除くこと以外、実施例1(a)に記載の方法を行う。塩酸を用いる中和および活性炭を用いる処理の後、処理廃水全体は、NaCl 6.2重量%並びに遊離BPAおよびフェノール2ppm未満を含む(水相の294nmにおける紫外線分光法によって、例えばPerkin−Elmer分光器で、測定。)。この処理廃水全体は、追加の精製をせずに浸透膜蒸留に供給されうる。
【0151】
(b)浸透膜蒸留による塩化ナトリウム溶液(処理廃水全体)の濃縮
【0152】
浸透蒸留を、一例として膜表面積1mのモジュールにおいて、室温において行った。Membrana製のAccurel PP 150/330タイプの膜を使用した。このモジュールに塩化ナトリウム6.2重量%を含む(a)由来の処理廃水全体をポンプで流量19.5L/時間で送り込み、33重量%水酸化ナトリウム溶液13.0L/時間を水を受け取る相として並流で計量添加した。NaCl溶液の容積の大幅な減少のために、1Lを20分後に一旦補給する。75分後にこの電解槽から出る処理廃水溶液の濃度はNaCl15.2重量%であり、取り出されるNaOH溶液は16.6重量%に薄められた。
【0153】
電解槽から出る全体濃縮廃水は、追加の精製なしに電気分解に供給できる。
【0154】
(c)浸透蒸留からの塩化ナトリウム溶液の電気化学的酸化
【0155】
電気分解を、一例としてアノード表面積が0.01mの実験室の電解槽で行う。電流密度は4kA/mであり、カソード側の出口の温度は88℃、アノード側の出口の温度は89℃であった。ドイツ国在DENORA製の標準アノードおよびカソードコーティングを有する電解槽を使用した。DuPont Nafion 982 WXイオン交換膜を使用した。電解電圧は3.02Vであった。塩化ナトリウム含有溶液を、質量流量1.0kg/時間でアノードチャンバーにポンプで通した。アノードチャンバーに供給される溶液の濃度は、NaCl25重量%であった。アノードチャンバーから20重量%NaCl溶液が取り出される。アノードチャンバーから取り出されるNaCl溶液に、(b)のもとでの浸透膜蒸留由来の15.2重量%濃縮全体処理廃水0.132kg/時間および固体塩化ナトリウム0.0686kg/時間を添加した。
【0156】
次にこの溶液をアノードチャンバーに戻した。膜を通じる水の輸送は、ナトリウム1molあたり水3.5molであった。20.2重量%NaCl含有溶液0.008kg/時間に相当する、電解槽由来のNaCl溶液の1%を廃棄した。
【0157】
カソード側では、水酸化ナトリウム溶液を質量流量1.107kg/時間でポンプによって循環させた。カソード側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度はNaOH 30重量%であり、カソード側から取り出される水酸化ナトリウム溶液の濃度は31.9重量%NaOHであり、31.9重量%水酸化物溶液0.187kg/時間を容積ストリームから取り出し、残りに水0.0664kg/時間を補給し、カソードエレメントに再循環させた。
【0158】
反応させられる塩化ナトリウムの22.7%がポリカーボネート全体処理廃水に由来する。
【0159】
(d)浸透蒸留由来の希釈水酸化ナトリウム溶液のポリカーボネートの製造へのリサイクル
【0160】
(b)由来の希釈水酸化ナトリウム溶液をポリカーボネートの製造に供給する。(b)由来の16.6重量%水酸化ナトリウム溶液を脱イオン水で希釈することによって製造された6.5重量%水酸化ナトリウム溶液とビスフェノールとを、塩化メチレン/クロロベンゼンの溶媒混合物およびホスゲンと組み合わせ、実施例1(a)に記載の方法を行う。
【0161】
通常の32重量%水酸化ナトリウム溶液の代わりに水酸化ナトリウム溶液16.6重量%を使用することによって、脱イオン水を23.7%節約することができる。
【0162】
実施例3
(a)ポリカーボネートの製造およびワークアップ
【0163】
ここでは、実施例1(a)の記載のように得られるポリカーボネート製造由来の反応廃水を洗浄相と組み合わせず、溶媒残留物および触媒をスチームでストリップすることによって除く。塩酸を用いる中和及び活性炭を用いる処理の後に、反応廃水は、NaCl10重量%並びに遊離BPAおよびフェノール2ppm未満を含む(294nmにおける水相の、例えばPerkin−Elmer分光光度計における、紫外線分光法によって測定。)。この反応廃水は追加の精製なしに浸透膜蒸留に供給されうる。
【0164】
(b)浸透膜蒸留による塩化ナトリウム溶液(反応廃水)の濃度上昇
【0165】
(a)由来の反応廃水を実施例1(b)に記載した方法に従う浸透膜蒸留によって18.0重量%に濃縮し、ガス拡散電極を用いる電気分解に供給する。
【0166】
(c)ガス拡散電極を使用する浸透蒸留由来の塩化ナトリウム溶液の電気化学的酸化
【0167】
濃縮廃水は、実施例1(b)の品質と同等であった。DPCの製造に水素が必要とされないので、電気分解中の水素の生成は割愛してもよい。従って、ガス拡散電極を使用して電気分解を行った。電流密度は4kA/mであり、カソード側の出口の温度は88℃であり、アノード側の出口の温度は89℃であった。ドイツ国在DENORA製の標準アノードコーティングを有する電解槽を使用した。DuPont Nafion 982 WXイオン交換膜を使用した。電解電圧は2.11Vであった。アノードチャンバーに25重量%NaCl含有溶液0.8kg/時間を計量添加した。アノードチャンバーから取り出される溶液の塩化ナトリウム濃度はNaCl 19.8重量%であった。アノードチャンバーから取り出されるNaCl溶液に18.0重量%反応廃水0.180kg/時間および固体塩化ナトリウム0.0557kg/時間を添加した。次にこの溶液をアノードチャンバーに戻した。膜を通る水の輸送は、ナトリウム1molあたり水4.9molであった。
【0168】
カソード側では、水酸化ナトリウム溶液をポンプによって質量流量1.107kg/時間で送り出すことによって循環させた。カソード側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度は、NaOH 30.0重量%であり、カソード側から取り出される水酸化ナトリウム溶液の濃度はNaOH 31.0重量%であった。31.0重量%の水酸化物溶液0.192kg/時間を体積ストリームから取り出し、残りに水0.0345kg/時間を補給し、カソードエレメントに再循環させた。ポリカーボネート反応廃水由来の反応塩化ナトリウムの割合は36.9%であった。
【0169】
比較例4
(a)ポリカーボネートの製造およびワークアップ
【0170】
実施例3(a)に記載したように得られるポリカーボネート製造由来の反応廃水を、洗浄相と組み合わせず、溶媒残留物および触媒をスチームでストリップすることによって取り除く。塩酸を用いる中和および活性炭を用いる処理の後に、この反応廃水は、NaCl 10.0重量%並びに遊離BPAおよびフェノール2ppm未満を含む(294nmにおける水相の紫外線分光法によって、例えばPerkin−Elmer分光光度計において、測定。)。この反応廃水を濃縮せずに電気分解に直接使用する。
【0171】
(b)塩化ナトリウム溶液(反応廃水)の電気化学的酸化
【0172】
電気分解を一例としてアノード表面積0.01mの実験室の電解槽において行った。電流密度は4kA/mであり、カソード側の出口の温度は88℃、アノード側の出口の温度は89℃であった。ドイツ国在DENORA製の標準アノードおよびカソードコーティングを有する電解槽を使用した。DuPont NafionTM 982 20 WXイオン交換膜を使用した。電解電圧は3.02Vであった。塩化ナトリウム含有溶液をポンプで送り出すことによってアノードチャンバーを通じて質量流量1.0kg/時間において循環させた。アノードチャンバーに供給される溶液の濃度はNaCl 25重量%であった。アノードチャンバーから、20重量%NaCl溶液を取り出すことができた。アノードチャンバーから取り出されるNaCl溶液に、ポリカーボネート製造由来の10.0重量%反応廃水0.125kg/時間および固体塩化ナトリウム0.076kg/時間を添加した。次にこの溶液をアノードチャンバーに戻した。膜を通る水の輸送は、ナトリウム1molあたり水3.5molであった。電解槽から到達するNaCl溶液の1%を廃棄した。これは20.0重量%NaCl含有溶液0.008kg/時間に相当する。
【0173】
カソード側では、水酸化ナトリウム溶液を1.107kg/時間の質量流量において循環させた。カソード側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度はNaOH 30.0重量%であり、カソード側から取り出される水酸化ナトリウム溶液の濃度はNaOH 31.9重量%であった。31.9重量%水酸化物溶液0.188kg/時間を体積ストリームから取り出し、残りに水0.0664kg/時間を補給し、カソードエレメントに再循環させた。
【0174】
反応塩化ナトリウムの14.0%しかポリカーボネート反応廃水由来でなかった。
【0175】
比較例5
(a)ポリカーボネートの製造およびワークアップ
【0176】
比較例4の反応廃水を使用した。
【0177】
(b)ガス拡散電極を使用する塩化ナトリウム溶液(反応廃水)の電気化学的酸化
【0178】
ポリカーボネートの製造に水素が必要とされないので、電気分解における水素の生成は割愛してもよい。従って、ガス拡散電極を使用して電気分解を行った。電流密度は4kA/mであり、カソード側の出口の温度は88℃であり、アノード側の出口の温度は89℃であった。ドイツ国在DENORA製の標準アノードコーティングを有する電解槽を使用した。DuPont Nafion 982 WXイオン交換膜を使用した。電解電圧は2.11Vであった。25.0重量%NaCl溶液0.65kg/時間をアノードチャンバーに供給し、アノードチャンバーから取り出される溶液は18重量%NaClを含んでいた。アノードチャンバーから取り出されるNaCl溶液に、10.0重量%反応廃水0.163kg/時間および固体塩化ナトリウム0.0715kg/時間を添加した。次にこの溶液をアノードチャンバーに戻した。膜を通る水の輸送は、ナトリウム1molあたり水4.9mol%であった。
【0179】
カソード側では、水酸化ナトリウム溶液をポンプで送り出すことによって質量流量1.107kg/時間で循環させた。カソード側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度はNaOH 30.0重量%であり、カソード側から取り出される水酸化ナトリウム溶液の濃度はNaOH 31.0重量%であった。31.0重量%水酸化物溶液0.192kg/時間を容積ストリームから取り出し、残りに水0.0345kg/時間を補給し、カソードエレメントに再循環させた。
【0180】
ポリカーボネート反応廃水由来の反応塩化ナトリウムの割合は18.6%であった。
【0181】
これらの実施例は、塩化ナトリウムの非常に高いリサイクル率が浸透膜蒸留による濃縮後の電気分解におけるポリカーボネート製造プロセスの廃水溶液で達成されることを示す。アルカリ金属水酸化物溶液によって引き抜かれる水がポリカーボネート製造工程におけるアルカリ金属水酸化物溶液の製造において節約されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 塩素を一酸化炭素と反応させることによってホスゲンを生成する工程;
(b) 工程(a)において生成されるホスゲンを、塩基を含むアルカリ金属水溶液の存在下で少なくとも1種類のビスフェノールと反応させてポリカーボネートおよびアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液を生成する工程;
(c) 工程(b)において生成されるポリカーボネートをアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液から分離し、ワークアップする工程;
(e) 工程(c)の後に残るアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液の少なくとも一部を浸透膜蒸留によって蒸留して濃縮アルカリ金属塩化物含有溶液を得る工程;
(f) 工程(e)のアルカリ金属塩化物含有溶液の少なくとも一部を電気化学的に酸化して塩素、アルカリ金属水酸化物溶液、および任意に水素を得る工程;
を包含する、ポリカーボネートの製造方法。
【請求項2】
更に工程(d)において、工程(c)後に残るアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液から溶媒残留物および、要すれば、触媒残留物を分離し(d1)、次に生じる溶液を工程(e)の浸透膜蒸留に供給することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液をスチームで抽出するかまたはストリップし、および/または次に該アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液を吸着剤で処理する(d2)ことによって工程(d)を達成する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該吸着剤(d2)が活性炭である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(e)における浸透膜蒸留がアルカリ金属水酸化物溶液を水アクセプターとして使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
工程(e)における浸透膜蒸留を10〜100℃の範囲の温度において行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(e)における浸透膜蒸留を20〜50℃の範囲の温度において行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(e)における浸透膜蒸留を1.0〜1.4barの範囲の絶対圧力において行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(e)における浸透膜蒸留を1.1〜1.2barの範囲の絶対圧力において行う、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(e)における浸透膜蒸留を20〜150barの範囲の差圧において行う、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項(e)における浸透膜蒸留を30〜100barの範囲の差圧において行う、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(e)における浸透膜蒸留がAccurel PP膜を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(e)において得られるアルカリ金属塩化物含有溶液の少なくとも一部を、塩素、水酸化ナトリウム溶液および要すれば水素を生成する膜電解のブラインサーキットに添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(f)において電気分解においてアルカリ金属塩化物濃度を増加させるために追加のアルカリ金属塩化物をアルカリ金属塩化物含有溶液に添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
(d1)において、吸着剤を用いる処理(d2)の前に、工程(c)における分離後に残るアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液のpHを8以下に調節する、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
該少なくとも1種類のビスフェノールが一般式
HO−Z−OH
〔式中、Zは、炭素原子を6〜45個有する芳香族部分であり、該芳香族部分が任意に1以上の芳香環を含み、任意に置換されていてもよく、任意に脂肪族部分または脂環式部分またはヘテロ原子をブリッジユニットとして含んでいてもよい。〕
のビスフェノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
該少なくとも1種類のビスフェノールが、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、ビス(ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、およびそれらのアルキル化、環アルキル化および環ハロゲン化化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
該少なくとも1種類のビスフェノールが、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、2−ヒドロカルビル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−フタルイミジン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−インドール−2−オン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−インドール−2−オン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−1H−インドール−2−オン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−1−メチル−1H−インドール−2−オン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルフタルイミジン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N−フェニル−フタルイミジン、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
工程(c)が少なくとも下記副次工程:
(cc) 工程(b)において生成するポリカーボネートを含有する有機相をアルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液から分離する工程;および
(dd) 工程(aa)において得られる有機相を少なくとも1回洗浄する工程
を包含し、工程(bb)の洗浄相の少なくとも一部を、要すれば触媒残留物および/または有機溶媒残留物の分離後に、工程(b)における使用用のアルカリ金属水酸化物水溶液製造用の水の部分代用品として使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
該アルカリ金属塩化物含有反応廃水溶液のアルカリ金属塩化物のアルカリ金属がナトリウムである、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−12257(P2011−12257A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−128452(P2010−128452)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】