説明

ポリスチレン系樹脂押出発泡体及びその製造方法

【課題】 難燃性ポリスチレン系樹脂押出発泡体を、従来の難燃剤HBCDを使用せずに耐熱寸法安定性、難燃性、断熱性に優れる品質を付与する。
【解決手段】 押出ポリスチレン発泡体に関して、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ―2−メチルプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、クロロペンタブロモシクロヘキサン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲン系難燃剤と、含ハロゲンリン酸エステルの含有量を特定量とし、リン系安定剤および/またはヒンダードアミン系安定剤を含有させることにより、達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱寸法安定性、断熱性および難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂を押出機等にて加熱溶融し、次いで発泡剤を添加し、発泡に適当な温度に冷却し、これを低圧域に押出すことにより、ポリスチレン系樹脂発泡体を連続的に製造する方法は既に知られている。ポリスチレン系樹脂発泡板は、建材用途を中心に広く使用され、JIS A9511記載の押出ポリスチレンフォーム保温板の燃焼性規格を満たすために、難燃剤が添加される。
【0003】
従来、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の難燃剤としては、ヘキサシクロブロモドデカン(以下、HBCDと略する)が広く用いられてきた。HBCDは、他の難燃剤と比べて、燃焼時に熱分解により臭素ラジカルが発生しやすく、活性ラジカルのトラップ効果を発現しやすい。このため、比較的少量の添加で難燃効果が得られることから、好適に用いられてきた。しかし、HBCDは難分解性で生態に対して高蓄積性である化合物であることから、環境衛生上、好ましいものではなく、HBCD使用量の削減、及びHBCDに代わる難燃剤の開発が望まれている。そこで、HBCD以外の難燃剤を用いたポリスチレン系樹脂押出発泡板の検討がなされている。
【0004】
ポリスチレン系樹脂発泡体の発泡剤としては、従来、優れた断熱特性を得るために、フッ化炭化水素類や飽和炭化水素類が使用されてきている。しかし、近年、オゾン層破壊、地球温暖化、化学物質による大気や水質への影響、等の環境問題がクローズアップされ、例えば、塩化フッ化炭化水素類に関しては、オゾン層破壊物質として規制対象物質となり、その使用が困難な状況である。
【0005】
そして、環境適合性の高い、水、窒素、二酸化炭素のような発泡剤を使いこなす検討がなされているが、これらの物質はポリスチレン系樹脂への含浸性に乏しいため、補助的な発泡剤としての使用にとどまっている。そのため主発泡剤としては可燃性である飽和炭化水素類を多用することとなり、発泡体の難燃性を低下させるために、難燃性能が高くかつHBCDに代わる物質を見出すことが望まれてきた。
【0006】
HBCDに代わる難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)が開発されてきているが、HBCD以上の難燃性を有するまでには至っていない。そのため、トリフェニルホスフェートに代表されるようなリン酸エステルとの併用で高度な難燃性を付与することが試みられている(特許文献1)。しかしながら、トリフェニルホスフェートのようなリン酸エステル系難燃剤は融点が低く、可塑化作用のため発泡体の耐熱性を低下させ、且つ、分解温度が発泡板を製造する場合の押出機温度条件よりも低いために、加工時に分解してしまうといった恐れがある。
【0007】
他方、HBCDなどのハロゲン系難燃剤の難燃性を向上させる物質として、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートのような含ハロゲンリン酸エステルを併用することによって、JIS A9511の難燃性規格を満たす発泡板の製造がなされている。(特許文献2)。しかしながら、含ハロゲンリン酸エステルの併用によっても、耐熱性能に改善の余地があり、HBCD以外のハロゲン系難燃剤の併用系では、難燃性にも改善の余地を有していた。
【0008】
このように、HBCDを使用せず、発泡体の高い耐熱性、難燃性、断熱性、環境適合性をすべて満足させるポリスチレン系樹脂発泡体が望まれてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−137862号公報
【特許文献2】特開2003−342407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、難燃性ポリスチレン系樹脂押出発泡体が有する前記課題を解決するためになされたものであって、耐熱寸法安定性、および難燃性に優れるポリスチレン系樹脂押出発泡体および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題の解決のため鋭意研究の結果、ポリスチレン系樹脂および発泡剤を、押出機内にて溶融混練してなるポリスチレン系樹脂発泡体に、特定のハロゲン系難燃剤と含ハロゲンリン酸エステルとの含有量を特定し、かつ、ヒンダードアミン系安定剤および/またはリン系安定剤を含有させることにより、HBCDを含有せず、耐熱寸法安定性、および難燃性などの性能が優れることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
[1] ポリスチレン系樹脂および発泡剤を用いて押出発泡して得られるポリスチレン系樹脂発泡体であって、
ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、クロロペンタブロモシクロヘキサンおよびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートよりなる群から選ばれるハロゲン系難燃剤の少なくとも1種を0.1〜8重量部、および、含ハロゲンリン酸エステル0.1〜3重量部が含有され、かつ、リン系安定剤0.001〜0.3重量部および/またはヒンダードアミン系安定剤0.001〜0.3重量部が含有されることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂発泡体、
[2] 含ハロゲンリン酸エステルが、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートおよびトリス(ジクロロプロピル)ホスフェートよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、[1]記載のポリスチレン系樹脂発泡体、
[3] リン系安定剤が、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトまたはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトであり、かつ、ヒンダードアミン系安定剤が、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、または4−ヒドロキシ−1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピレリジンの脂肪族または芳香族カルボン酸エステルであることを特徴とする、[1]または[2]に記載のポリスチレン系樹脂発泡体、
[4] 発泡剤が、炭素数3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種、及び/または、他の発泡剤であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡体、
[5] 他の発泡剤が、水、二酸化炭素、窒素、炭素数2〜5のアルコール類、ジメチルエーテル、塩化メチルおよび塩化エチルよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡体、
[6] 他の発泡剤が、水を含むことを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡体、
[7] 発泡体を形成する気泡径が、主として、気泡径0.2mm以下の気泡と気泡径0.25〜1mmの気泡より構成されることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡体、
[8] 発泡体を形成する気泡の内、気泡径0.2mm以下の気泡が発泡体断面積あたり、5〜95%の占有面積率であることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡体、および
[9] ポリスチレン系樹脂および発泡剤を用いて押出発泡して得られるスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3―ジブロモ―2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3―ジブロモプロピルエーテル)、クロロペンタブロモシクロヘキサンおよびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートよりなる群から選ばれるハロゲン系難燃剤の少なくとも1種を0.1〜8重量部、および、含ハロゲンリン酸エステル0.1〜3重量部が含有され、かつ、リン系安定剤0.001〜0.3重量部化合物および/またはヒンダードアミン系安定剤0.001〜0.3重量部が含有されることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、環境適合性に優れた発泡剤、難燃剤を用い、耐熱寸法安定性、難燃性、断熱性に優れたポリスチレン系樹脂発泡体およびその製造方法が提供される。本発明のポリスチレン系発泡体は、その優れた耐熱寸法安定性、難燃性、断熱性の点から、種々の用途、特に建築用断熱材の用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で用いられるポリスチレン系樹脂は特に限定されるものではなく、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体あるいはその誘導体から得られるランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレンなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0015】
スチレンと共重合可能な単量体としては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体、ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物、ブダジエンなどのジエン系化合物あるいはその誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
スチレン系樹脂では、押出発泡成形性などの面からスチレンホモポリマー、スチレンアクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレンなどが好ましい。特に好ましくは、コスト面からスチレンホモポリマーである。
【0016】
ポリスチレン系樹脂の樹脂流動特性は、メルトフローレート(MFR)が1〜20g/10分であるポリスチレン系樹脂を使用することにより、押出機中で発泡剤を樹脂中に均一分散させることができ、押出発泡成形を安定化させ、生産安定性を改善することができる。スチレン系樹脂のMFRを制御することにより、また、発泡体の気泡径、さらには、気泡形状を調整することができる。そのため、スチレン系樹脂のMFRとしては、2〜15g/10分がより好ましく、2〜10g/10分がさらに好ましい。なお、本発明におけるスチレン系樹脂のMFRは、200℃および5kg荷重の条件にて、JIS K7210で規定される測定方法に準じて測定した値である。
【0017】
スチレン系樹脂のMFRが前記範囲を外れると、スチレン系樹脂が発泡剤を分散、吸収する機能が低下して、押出系内での圧力変動がみられ、得られる発泡体の断面プロファイルが一定せず、変動する傾向がある。さらにひどい場合には、ダイからガスが噴出する、発泡体中にボイドが生じる等、良好な発泡体が安定して得られなくなる場合がある。
本発明の製造方法にて使用されるスチレン系樹脂としては、MFRの条件を満たしていれば、市販されている樹脂(いわゆる、バージン樹脂)でも良いし、発泡体製造等に使用された後に再生押出機等を用いてリサイクルされた樹脂、市場で回収された食品トレーや魚箱のリサイクルした樹脂であっても構わない。
【0018】
本発明で用いられる発泡剤としては、炭素数3〜5の飽和炭化水素の少なくとも1種、および/または、他の発泡剤を使用することにより、優れた環境適合性を付与することができる。
【0019】
本発明で用いられる炭素数3〜5の飽和炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。 これらの炭素数3〜5の飽和炭化水素では、発泡性の点からプロパン、n−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましい。また、発泡体の断熱性能の点からn−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
【0020】
本発明では、他の発泡剤を用いることにより、発泡体製造時の可塑化効果や、得られる発泡体の寸法安定性を高める効果が得られ、押出圧力を低減し、安定的に発泡体の製造が可能となる。ただし、目的とする発泡倍率、難燃性等の発泡体の諸特性いかんによっては、その使用量などが制限される場合があり、押出発泡成形性などが充分でない場合がある。
【0021】
他の発泡剤としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル類、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキルなどの有機発泡剤、例えば水、二酸化炭素などの無機発泡剤、例えばアゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤などを用いることができる。また、地球温暖化係数の小さいフッ化炭化水素を用いても良い。これら他の発泡剤は、単独または2種以上混合して使用することができる。
【0022】
他の発泡剤の中では、発泡性、発泡体成形性などの点からは、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、塩化メチル、塩化エチルなどが好ましく、発泡剤の燃焼性、発泡体の難燃性あるいは後述する断熱性等の点からは、水、二酸化炭素が好ましい。これらの中では、可塑化効果と環境適合性の点からジメチルエーテルが、環境適合性、コストの点から水が特に好ましい。
【0023】
発泡剤を添加または注入する際の圧力は、特に制限するものではなく、溶融樹脂の圧力よりも高い圧力であればよい。
【0024】
本発明における発泡剤の使用量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、2〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。発泡剤の添加量が2重量部より少ない場合は、発泡倍率が低く、樹脂発泡体としての軽量、断熱などの特性が発揮されにくい場合があり、20重量部より多い場合には、過剰な発泡剤量の為、発泡体中にボイドなどの不良を生じる場合がある。
【0025】
本発明においては、その他の発泡剤として水を用いることにより、スチレン系樹脂押出発泡体中に、気泡径が概ね0.20mm以下の比較的気泡径の小さい気泡(以下、小気泡という)と、気泡径が概ね0.25mm〜1mm程度の比較的気泡径の大きな気泡(以下、大気泡という)が海島状に混在してなる特徴的な気泡構造を有する発泡体が得られ、得られる発泡体の断熱性能が向上させることができる。
【0026】
気泡径0.20mm以下の小気泡および気泡径0.25〜1mmの大気泡が混在してなる特定の気泡構造の発泡体においては、発泡体断面積あたりに占める小気泡の面積の割合(単位断面積あたりの占有面積率)(以下、小気泡面積率という)は、5〜95%が好ましく、10〜90%がより好ましく、20〜80%がさらに好ましく、25〜70%が特に好ましい。
【0027】
本発明において、発泡剤として水を用いる場合には、安定して押出発泡成形を行うために、吸水性物質を添加することが好ましい。本発明に用いられる吸水性物質のとしては、スメクタイト、ゼオライトなどの吸水性鉱物、親水性有機物質を使用することができる。スメクタイトとしては、例えば、天然ベントナイト、精製ベントナイト、有機化ベントナイト、ヘクトライト等が挙げられ、ゼオライトとしては、例えば、天然ゼオライト、人工ゼオライト、合成ゼオライト等が挙げられる。親水性有機物質としては、ポリアクリル酸塩系重合体、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール−アクリル酸塩系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリアクリロニトリル−メタクリル酸メチル−ブタジエン系共重合体、ポリエチレンオキサイド系共重合体およびこれらの誘導体、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、D−マンニトール、エリスリトール、ヘキサントリオール、キシリトール、D−キシロース、イノシトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、マンノース。他に、表面にシラノール基を有する無水シリカ(酸化ケイ素)などのように表面に水酸基を有する粒子径1000nm以下の微粉末等があげられる。
【0028】
本発明で用いられる吸水性物質の添加量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜3重量部がより好ましい。
【0029】
本発明のスチレン系樹脂発泡体は、特定のハロゲン系難燃剤および含ハロゲンリン酸エステルの含有量を制御することにより、可燃性の発泡剤を含有してなる発泡体であっても、HBCDを含有せずとも、高い難燃性と耐熱性、断熱性を有する発泡体を得ることができる。
【0030】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤としては、環境適合性、難燃性、耐熱性の観点から、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、クロロペンタブロモシクロヘキサン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが好ましい。これらハロゲン系難燃剤は、単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明における上記ハロゲン系難燃剤の含有量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜8重量部が好ましく、1〜6重量部がより好ましく、2〜5重量部が更に好ましい。ハロゲン系難燃剤の含有量が0.1重量部未満では、充分な難燃性が得られない傾向があり、8重量部を超えて含有させても、難燃性の向上は見られない傾向にあり、一方、発泡体の表面性、発泡体強度などを損なう傾向があるため望ましくない。
【0032】
本発明で用いられる含ハロゲンリン酸エステルとしては、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、等があげられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明における含ハロゲンリン酸エステルの含有量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜3重量部が好ましく、0.3〜2重量部がより好ましく、0.4〜1.5重量部がさらに好ましい。含ハロゲンリン酸エステルの含有量が0.1重量部未満では、本発明で使用するハロゲン系難燃剤との相乗効果が得られにくい傾向があり、3重量部を超えると、発泡体の成形性を損ったり、発泡体の耐熱性の低下を招く傾向がある。
かつ、融点が120℃以上の含ハロゲンリン酸エステル0.1〜3重量部含有させる。
融点が120℃未満では押出時の樹脂送り不良を招いたり、得られる発泡体の耐熱性の低下を招くことがある。
【0034】
本発明のスチレン系樹脂発泡体では、リン系安定剤および/またはヒンダードアミン系安定剤を使用することにより、発泡体の難燃性および耐熱性を向上させることができる。
本発明で用いられるリン系化合物としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデン−ビス(2−t−ブチル−5−メチルフェニル)ジホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4,−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビスステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、モノ(ジノニルフェニル)モノ−p−ノニルフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、テトラアルキル(C=12〜16)−4,4’−イソプロピリデン−(ビスフェニル)ジホスファイト、ヘキサトリデシル-1,1,3−トリス(3−t−ブチル−6−メチル−4オキシフェニル)−3−メチルプロパントリホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリスデシルホスファイトなどがあげられる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、押出安定性の点から、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトまたはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイトが好ましい。
【0035】
本発明におけるリン系安定剤の含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.001〜0.3重量部が好ましく、0.04〜0.2重量部がより好ましい。リン系安定剤の含有量が0.001重量部未満では、発泡体の難燃性や耐熱性が低下する傾向があり、0.3重量部を超えると、発泡体の難燃性や耐熱性が低下する傾向がある。
【0036】
本発明で用いられるヒンダードアミン系化合物としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、または4−ヒドロキシ−1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピレリジンの脂肪族または芳香族カルボン酸エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリリジニル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペイタメチル−4−ピペリジニル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどがあげられる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、難燃性に関して消炎を早める効果、および発泡体の耐熱性を損わない点から、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、または4−ヒドロキシ−1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピレリジンの脂肪族または芳香族カルボン酸エステルが好ましい。
【0037】
本発明におけるヒンダードアミン系安定剤の含有量はスチレン系樹脂100重量部に対して、0.001〜0.3重量部が好ましく、0.04〜0.2重量部がより好ましい。ヒンダードアミン系安定剤の含有量が0.001重量部未満では、難燃性がやや低下したり、発泡体の耐熱性が低下する傾向があり、0.38重量部を超えると、発泡体を形成する気泡径が、主として気泡径0.20mm以下の気泡と気泡径0.25〜1mmの気泡より構成される発泡体を得ることが難しくなる傾向がある。
【0038】
なお、リン系安定剤およびヒンダードアミン系安定剤を併用する場合、ヒンダードアミン系安定剤の含有量を小さくするほど、発泡体を形成する気泡径が、主として気泡径0.20mm以下の気泡と気泡径0.25〜1mmの気泡より構成され、断熱性が向上される発泡体を得やすくできることができるが、耐熱性を確保するには0.04〜0.1重量部程度含有することが好ましい。
【0039】
本発明においては、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、流動パラフィン、オレフィン系ワックスなどの加工助剤、界面活性剤、前記以外の難燃剤、酸化鉄、鉄錯体、ジフェニルアルカン、ジケトンなどの難燃調整剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を含有させることができる。
【0040】
前記以外の難燃剤としては、前記以外の臭素化ビスフェノールA、およびその誘導体、臭素化イソシアヌレート、イソシアヌル酸などの含窒素化合物、ホウ酸金属塩、酸化ホウ素などの含ホウ素化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムなどの水和物、トリフェニルホスフィンオキシド、リン酸ホウ素を混合して使用しても良い。
【0041】
本発明においては、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに、フェノール系抗酸化剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤,ラクトン系安定剤、ベンゾトリアゾール系安定剤などを含有することができる。
具体的な安定剤としては、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系安定剤が挙げられる。これらは、単独で使用しても良く、或いは併用して使用しても良い。
【0042】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法は、以下の工程を含む製造方法である。高温高圧化にて各種添加剤、発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂の溶融物を混合し、該混合物を発泡に適正な温度に冷却し、スリットダイを通して低圧領域に押出発泡させる。各種添加剤、発泡剤を混合する順番は特に限定されず、押出機にポリスチレン系樹脂とともに投入する方法や、ポリスチレン樹脂を溶融させた後、サイドフィーダーやポンプなどにより添加剤を混合する方法でも良い。また、あらかじめスチレン系樹脂に難燃剤、各種添加剤を混合したマスターペレットを作成した後、あらためて押出機に供給し加熱溶融させ、発泡剤を混合する方法としても良い。
【0043】
ポリスチレン系樹脂と発泡剤などの添加剤を加熱溶融混練する際の加熱温度、溶融混練時間および溶融混練手段については特に制限するものではない。加熱温度は、使用するスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、難燃剤などの影響も含め、樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、たとえば150〜250℃程度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間あたりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので一概には決定することができないが、スチレン系樹脂と発泡剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。また溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュー形状については、低剪断タイプのスクリューを用いる方が好ましい。
【0044】
また、発泡成形方法も特に制限されないが、例えば、スリットダイより圧力開放して得られた発泡体をスリットダイと密着または接して設置した成形金型および成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する一般的な方法を用いることができる。
【0045】
本発明の発泡体の厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、建材などの用途に使用される断熱材の場合、好ましい断熱性、曲げ強度および圧縮強度を付与せしめるためには、シートのような薄いものよりも、通常の板状物のように厚さのあるものが好ましく、通常10〜150mm、好ましくは20〜100mmである。
【0046】
本発明の発泡体の密度としては、軽量でかつ優れた断熱性および曲げ強度、圧縮強度を付与せしめるためには15〜50kg/mであることが好ましく、25〜40kg/mであるのがさらに好ましい。
【0047】
さらに、成形直後の発泡体を、次に内部が高温雰囲気に保たれた炉内を通過させて2次発泡させ、気泡形状を調整したり軽量化させたりすることもできる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例をあげて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
実施例および比較例において使用した原料は、次の通りである。
(A)スチレン系樹脂[PSジャパン(株)製、G9401(MFR=2.2g/10分)]
(B)ハロゲン系難燃剤
・テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)[第一工業製薬(株)製、ピロガードSR−130]
・テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)[第一工業製薬(株)製、ピロガードSR−720]
・トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート[日本化成(株)製、TAIC−6B]
・クロロペンタブロモシクロヘキサン[日精化学工業(株)製]
(C)リン系難燃剤
・トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート[大八化学(株)製、CR900]
・トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート[大八化学(株)製、CRP]
・トリキシレニルホスフェート[大八化学(株)製、TXP]
・トリフェニルホスフェート[味の素ファインテクノ(株)製、レオフィスTPP]
(D)リン系orヒンダートアミン系安定剤
・ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト[(株)ADEKA製、アデカスタブPEP−36]
・テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート[(株)ADEKA製、アデカスタブLA−57]
(E)発泡剤
・イソブタン[三井化学株式会社製]
・ノルマルブタン[岩谷産業株式会社製]
・水[水道水]
・ジメチルエーテル[三井化学株式会社製]
・二酸化炭素[岩谷産業株式会社製]
・エタノール[和光純薬株式会社製]
(F)その他添加剤
・タルク[林化成(株)製、タルカンパウダーPK−Z]
【0050】
なお、実施例および比較例における評価は、次の方法により行なった。
【0051】
(1)発泡体密度(kg/m
発泡体(厚み:約20〜120mm、幅:約910mm)の幅方向中心部にて、製品厚み×幅100mm×長さ100mmのサンプルを切り出し、23℃×50%RHの雰囲気で16時間以上養生後、各辺の寸法と重量を測定し、発泡体密度を、次の式に基づいて求め、単位をkg/mに換算して示した。
発泡体密度(g/cm)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm
【0052】
(2)小気泡面積率
押出発泡体について、気泡径0.20mm以下の気泡の発泡体断面積あたりの占有面積比を、以下のようにして求めた。ここで、気泡径0.20mm以下の気泡とは、円相当直径が0.25mm以下の気泡とする。
a)走査型電子顕微鏡にて30倍に拡大して発泡体の縦断面を写真撮影する。
b)撮影した写真の上にOHPシートを置き、その上に厚さ方向の径が6mmよりも大きい気泡(実寸法が0.25mmより大きい気泡に相当する)に対応する部分を黒インキで塗りつぶして写しとる( 一次処理) 。
c)画像処理装置に一次処理画像を取り込み、濃色部分と淡色部分を、即ち黒インキで塗られた部分か否かを識別する。
d)濃色部分のうち、直径6.0mm以下の円の面積に相当する部分、即ち、厚さ方向の径は長いが、面積的には直径6.0mm以下の円の面積にしかならない部分を淡色化して、濃色部分の補正を行う。
e)画像解析計算機能中の面積率を用い、画像全体に占める気泡径6.0mm以下(濃淡で分割した淡色部分)の面積比を次式により求める。
小気泡占有面積比(%)= (1−濃色部分の面積/ 画像全体の面積)×100
【0053】
(3)発泡体の80℃体積変化率
押出発泡後30日経過した発泡体に対して、発泡体(厚み:約20〜120mm、幅:約910mm)の幅方向中心部にて、製品厚み×幅300mm×長さ300mmの直方体サンプルを切り出し、23℃×50%RHの雰囲気で16時間以上養生後、押出方向、幅方向、厚み方向の各3方向の加熱前の寸法(LM、LT、LH)を測定し、次に80℃雰囲気に調整したドライオーブンの中に発泡体を入れて24時間発泡体を静置した後、23℃×50%RHの雰囲気下にて24時間保管した後、加熱後の押出方向、幅方向、厚み方向の3方向の寸法(LM、LT、LH)を測定した。
次式に従い、体積変化率Aを算出した。
【0054】
【数1】

【0055】
次の基準で評価した。
◎:Aの絶対値が2%以下。
○:Aの絶対値が2%を超え4%以下。
△:Aの絶対値が4%を超え8%以下。
×:Aの絶対値が8%を超える。
【0056】
(4)発泡体の酸素指数
得られた発泡体を150mm×10mm×10mmにカットしたものを、内温60℃のオーブンにて1週間加熱養生したサンプルを、JIS K7201−2に準拠して、酸素指数濃度を測定した。
【0057】
(5)発泡体の燃焼性
押出発泡後7日経過した発泡体に対して、JIS A9511(押出法ポリスチレンフォーム保温板)記載の方法に準じて、燃焼性を評価した。
○:「3秒以内に炎が消えて、残じんがなく、燃焼限界指示線を超えて燃焼しない」基準を満たす。
×:上記基準を満たさない。
【0058】
(6)酸素指数
得られた発泡体サンプルを150mm×10mm×10mmにカットしたものを、内温60℃のオーブンにて1週間加熱養生したサンプルを、JISK7201−2に準拠して、酸素指数濃度を測定した。
次の基準で評価した。
○:酸素指数が27%以上。
△:酸素指数が26%を超え27%以下。
×:酸素指数が26%以下。
【0059】
(7)発泡体の熱伝導率
押出発泡後30日経過した発泡体に対して、熱伝導率を、JIS A9511(押出法ポリスチレンフォーム保温板)記載の方法に準じて測定した。
【0060】
(実施例1)
[マスターペレットの作製]
表1に示されるハロゲン系難燃剤、含ハロゲンリン酸エステル、リン系安定剤およびヒンダードアミン系安定剤の添加量に対して10倍濃縮となるポリスチレン系樹脂によるマスターペレットを作製した。
すなわち、ポリスチレン系樹脂[PSジャパン(株)製、商品名:G9401(MFR=2.2g/10分)]100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤であるテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピル)エーテルを40重量部、含ハロゲンリン酸エステルであるトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートを5重量部、リン系安定剤であるビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを1.2重量部の混合物を、2軸押出機を用いて、マスターペレットを作製した。
[押出発泡]
ポリスチレン樹脂[G9401]90重量部に対して、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピル)エーテル4.0重量部となるよう上記マスターペレットを配合し、さらに、造核剤としてタルク0.5重量部および、ベントナイト0.5部、アエロジル0.1部をドライブレンドして樹脂混合物を得た。
得られた樹脂混合物を、単軸押出機(第一押出機)と単軸押出機(第二押出機)を直列に連結したタンデム型二段押出機へ、約1000kg/hrの割合で供給した。
第1押出機に供給した樹脂混合物を、約200℃に加熱して溶融混練し、発泡剤としてポリスチレン樹脂100重量部に対して、イソブタン4.0重量部およびジメチルエーテル2.0重量部を第1押出機の先端付近で樹脂中に圧入した。その後、第1押出機に連結された第2押出機の途中にて水(水道水)を0.7重量部圧入、混錬し、さらには冷却機で混練しながら冷却し、冷却機の先端に設けたスリットダイより発泡樹脂温度を約110〜140℃にて大気中へ押出発泡させ、スリットダイに接続した成形金型およびその下流側に設置した成形ロールにて板状に成形した。厚み約60mm×幅1000mmの断面形状の押出発泡板を得、表層部をカットして厚み50mmの発泡体サンプルを得た。
カットサンプルの発泡体は、密度が30kg/m、小気泡占有面積比が50%、発泡体熱伝導率が0.027W/mKであり、80℃の耐熱性、発泡体の酸素指数、燃焼性は良好であった。
【0061】
(実施例2〜13)
表1に示すように、各種配合剤の種類・添加量を変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を、表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
(比較例1〜11)
表2に示すように、各種配合剤の種類・添加量を変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を、表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
実施例1〜13と比較例1〜11を比較して明らかなように、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、クロロペンタブロモシクロヘキサン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種を0.1〜8重量部を含有し、かつ、融点が120℃以上の含ハロゲンリン酸エステル0.1〜3重量部含有させ、かつ、リン系安定剤0.001〜0.3重量部および/またはヒンダードアミン系安定剤0.001〜0.3重量部を含有させたことにより、耐熱寸法安定性、難燃性および断熱性が改善された押出発泡体を安定して得られることが判る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂および発泡剤を用いて押出発泡して得られるポリスチレン系樹脂発泡体であって、
ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、クロロペンタブロモシクロヘキサンおよびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種を0.1〜8重量部、および、含ハロゲンリン酸エステル0.1〜3重量部が含有され、かつ、リン系安定剤0.001〜0.3重量部および/またはヒンダードアミン系安定剤0.001〜0.3重量部が含有されることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂発泡体。
【請求項2】
含ハロゲンリン酸エステルが、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートおよびトリス(ジクロロプロピル)ホスフェートよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
【請求項3】
リン系安定剤がトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトまたはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトであり、ヒンダードアミン系安定剤が4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、または4−ヒドロキシ−1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピレリジンの脂肪族または芳香族カルボン酸エステルであることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
【請求項4】
発泡剤が、炭素数3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種、および/または、他の発泡剤であることを特徴とする、請求項1〜34のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
【請求項5】
他の発泡剤が、水、二酸化炭素、窒素、炭素数2〜5のアルコール類、ジメチルエーテル、塩化メチルおよび塩化エチルよりなる群から選ばれる少なくとも一種含むことを特徴とする、請求項4に記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項6】
他の発泡剤が、水を含むことを特徴とする、請求項5に記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
【請求項7】
発泡体を形成する気泡径が、主として、気泡径0.20mm以下の気泡と気泡径0.25〜1mmの気泡より構成されることを特徴とする、請求項6に記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
【請求項8】
発泡体を形成する気泡の内、気泡径0.20mm以下の気泡が発泡体断面積あたり、5〜95%の占有面積率を有することを特徴とする、請求項7に記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
【請求項9】
ポリスチレン系樹脂および発泡剤を用いて押出発泡して得られるスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、
ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、クロロペンタブロモシクロヘキサンおよびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種0.1〜8重量部、および含ハロゲンリン酸エステル0.1〜3重量部が含有され、かつ、リン系安定剤0.001〜0.3重量部および/またはヒンダードアミン系安定剤0.001〜0.3重量部が含有されることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2011−21060(P2011−21060A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164954(P2009−164954)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】