説明

ポリスチレン系樹脂粒子、その製造方法、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体

【課題】通常の発泡条件において、より高倍の発泡粒子及び発泡成形体を与えるポリスチレン系樹脂粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】不飽和アルコールとイソシアネート化合物との反応生成物である不飽和ウレタン化合物に由来する架橋成分で架橋されたポリスチレン系樹脂粒子であり、前記架橋成分が、前記ポリスチレン系樹脂粒子を形成するに使用されるスチレン系単量体100重量部に対し、0.5〜7重量部使用され、かつ形成された前記ポリスチレン系樹脂粒子の中心部より表層部に多く存在することを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂粒子、その製造方法、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体に関する。本発明によれば、通常の発泡条件において、より高倍の発泡粒子及び発泡成形体を与えるポリスチレン系樹脂粒子及びその製造方法、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン樹脂からなる発泡成形体は、優れた緩衝性、断熱性を有し、成形も容易であるため、包装材、断熱材として多く用いられている。
上記特性を活かすため、発泡成形体の高倍化が行われてきた。従来は高い発泡性能を付与する為に、可塑効果のある有機溶剤、可塑剤及び揮発性発泡剤を大量に添加する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−255947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記方法では予備発泡時に収縮が大きくなること、また成形時に収縮が大きくなり良品の生産性が低下する問題があった。
更に、得られた発泡成形体の強度は、前記の有機溶剤、可塑剤により低下する為に使用できる用途が限定されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、特定の架橋成分を含むポリスチレン系樹脂粒子が、その粒子を一般的な条件で発泡させることで、特定の架橋成分を含まないポリスチレン系樹脂粒子に比べて、高倍の発泡粒子及び発泡成形体を提供できることを意外にも見出すことで本発明に至った。
かくして本発明によれば、不飽和アルコールとイソシアネート化合物との反応生成物である不飽和ウレタン化合物に由来する架橋成分で架橋されたポリスチレン系樹脂粒子であり、
前記架橋成分が、前記ポリスチレン系樹脂粒子を形成するに使用されるスチレン系単量体100重量部に対し、0.5〜7重量部使用され、かつ形成された前記ポリスチレン系樹脂粒子の中心部より表層部に多く存在することを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子が提供される。
【0006】
また、本発明によれば、上記ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
水性媒体中で、種粒子に、スチレン系単量体及び不飽和アルコールとイソシアネート化合物との反応生成物である不飽和ウレタン化合物を含む単量体混合物を吸収させる工程と、
吸収させた後又は吸収させつつ前記単量体混合物の重合を行うことでポリスチレン系樹脂粒子を得る工程とを含み、
前記ポリスチレン系樹脂粒子は、その中心部より表層部に前記架橋成分が多く存在するように、その製造時にスチレン系単量体自体の重合転化率が70〜95%の間に、前記不飽和ウレタン化合物の添加を行って形成されることを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0007】
更に、本発明によれば、上記ポリスチレン系樹脂粒子と、発泡剤とを含む発泡性粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記発泡性樹脂粒子を、発泡させて得られた発泡粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記発泡粒子を、発泡成形させて得られた発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一般的な条件で発泡させることで、特定の架橋成分を含まないポリスチレン系樹脂粒子に比べて、高倍の発泡粒子及び発泡成形体を与える特定の架橋成分を含むポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)ポリスチレン系樹脂粒子
本発明のポリスチレン系樹脂粒子は、不飽和アルコールとイソシアネート化合物との反応生成物である不飽和ウレタン化合物に由来する架橋成分が、中心部より表層部に多く存在(偏在)している粒子である。このポリスチレン系樹脂粒子を発泡させると、架橋成分を含まないポリスチレン系樹脂粒子より高倍の発泡樹脂粒子を得ることができる。
(不飽和アルコールとイソシアネート化合物との反応生成物である不飽和ウレタン化合物に由来する架橋成分)
不飽和アルコールは、イソシアネート化合物と反応することでウレタン結合を形成しうるビニル基を有するアルコールであれば特に限定されない。例えば、不飽和アルコールとしては、炭素数2〜10のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルからなるアルコールが挙げられる。本明細書では、開環により水酸基を与えるグリシジル基のような環状エーテルも不飽和アルコールに含める。
【0010】
アルコールとしては、例えば、アリールグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、グリシジルアルコール等のグリシジル化合物、エタンジオール(エチレングリコール)、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の2価アルコール、グリセリン等の3価以上のアルコールが挙げられる。これらアルコールの内、グリセリン、グリシジル化合物等が好ましい。
多価アルコール中の少なくとも1つの水酸基は、(メタ)アクリル酸とエステル結合していることが好ましい。
具体的な不飽和アルコールとしては、グリセリンジメタクリレート、フェニルグリシジルジエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0011】
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシナネート等が挙げられる。これらイソシアネート化合物の内、脂肪族系の化合物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基が結合する炭素数が3〜8の化合物がより好ましい。
【0012】
上記架橋成分の含有量は、スチレン系単量体100重量部に対して、0.5〜7重量部である。0.5重量部未満では高発泡化の効果が得られないことがあり、7重量部より多い場合では発泡性が低下することがある。好ましい含有量は1〜5重量部である。
なお、ポリスチレン系樹脂粒子を構成する各成分の含有量は、ポリスチレン系樹脂粒子の製造に使用される各成分に対応する各単量体の使用量とほぼ一致している。
【0013】
(スチレン系単量体)
ポリスチレン系樹脂粒子は、上記架橋成分及びスチレン系単量体に由来する成分を含む樹脂から構成される。
スチレン系単量体としては、特に限定されず、公知のスチレン又はスチレン誘導体をいずれも使用できる。スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらスチレン系単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
【0014】
スチレン系単量体に由来する成分は、スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体に由来する成分を含んでいてもよい。ビニル系単量体としては、例えば、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら他の単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
【0015】
他の単量体を使用する場合、他の単量体に由来する成分の含有量は、スチレン系単量体が、他の単量体との合計に対して、主成分となる量(例えば、50重量%以上)であることが好ましい。
【0016】
(他の成分)
ポリスチレン系樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、結合防止剤、気泡調整剤、充填剤、滑剤、着色剤等の添加剤を添加してもよい。
(ポリスチレン系樹脂粒子の形状)
ポリスチレン系樹脂粒子の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、円柱状、立方体状、不定形状等が挙げられる。また、粒子径は、0.3〜1.5mmが好ましく、0.6〜1.2mmがより好ましい。
【0017】
(2)ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法
ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、中心部より表層部に架橋成分を多く存在させることができさえすれば、特に限定されない。例えば、水性懸濁液中で、種粒子(例えば、ポリスチレン系樹脂粒子)に、単量体混合物を吸収させる工程と、吸収させた後又は吸収させつつ単量体混合物の重合を行う工程とを含む、いわゆるシード重合法により製造することが簡便である。単量体混合物とは、上記不飽和ウレタン化合物、スチレン系単量体及び任意に他の単量体からなる混合物である。
なお、種粒子にポリスチレン系樹脂粒子を使用する場合、スチレン系単量体に由来する成分の含有量には、種粒子の量も含まれる。
【0018】
(種粒子)
種粒子製造用のスチレン系単量体としては、特に限定されず、公知のスチレン又はスチレン誘導体をいずれも使用できる。スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらスチレン系単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
【0019】
スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体を併用してもよい。ビニル系単量体としては、例えば、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら他の単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
他の単量体を使用する場合、他の単量体の使用量は、スチレン系単量体が、他の単量体との合計に対して、主成分となる量(例えば、50重量%以上)であることが好ましい。
また、種粒子は一部又は全部にポリスチレン系樹脂回収品を用いることができる。
【0020】
種粒子の平均粒子径は、作製するポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径等に応じて適宜調整できる。例えば、種粒子の平均粒子径は、ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径の40〜80%とすることができる。具体的には、平均粒子径が1.0mmのポリスチレン系樹脂粒子を作製する場合には、平均粒子径が0.4〜0.8mm程度の種粒子を用いることが好ましい。
種粒子の重量平均分子量は、特に限定されないが、15万〜70万が好ましく、更に好ましくは20万〜50万である。
種粒子は、特に限定されず、公知の方法により製造できる。例えば、懸濁重合法や、押出機で原料樹脂を溶融混練後、ストランド状に押し出し、所望の粒子径でカットする方法が挙げられる。
【0021】
種粒子は、懸濁重合法やカットする方法で得られた粒子に、水性媒体中で、スチレン系単量体を含浸・重合させることにより得られる粒子であってもよい。水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。この方法で用いられるスチレン系単量体の量は、粒子100重量部に対して、7.0〜100.0重量部の範囲とできる。7.0重量部未満の場合は成形時の耐熱性が低下することがあり、100.0重量部を超えると発泡性が低下することがある。
【0022】
スチレン系単量体としては、スチレン、又はスチレン誘導体が挙げられる。スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
スチレン系単量体の重合は、例えば、60〜150℃で、2〜20時間加熱することにより行うことができる。
【0023】
スチレン系単量体は、通常重合開始剤の存在下で重合する。重合開始剤は、通常スチレン系単量体と同時に懸濁重合法やカットする方法で得られた粒子に含浸させる。重合開始剤としては、従来からスチレン系単量体の重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられ、得られるポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mzや重量平均分子量Mwを調整して残存単量体を低減させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃にある異なった二種以上の重合開始剤を併用することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で用いても二種以上併用してもよい。重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100重量部に対して、例えば0.01〜2.00重量部の範囲である。
【0024】
更に、スチレン系単量体の小滴及び種粒子を水性媒体中に分散させるために、懸濁安定剤を用いてもよい。懸濁安定剤としては、従来からスチレン系単量体の懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。懸濁安定剤の使用量は、種粒子100重量部に対して、例えば0.1〜5.0重量部の範囲である。
【0025】
懸濁安定剤として難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤を併用するのが好ましい。このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩等のスルフォン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩;アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。界面活性剤の使用量は、懸濁安定剤100重量部に対して、例えば0.2〜20.0重量部の範囲である。
【0026】
(単量体混合物の吸収・重合工程)
水性媒体中で、種粒子に単量体混合物を吸収させる。また、単量体混合物の重合は、単量体混合物を吸収させた後に行ってもよく、吸収させつつ行ってもよい。重合によりポリスチレン系樹脂粒子が得られる。
ここで、不飽和ウレタン化合物は、スチレン系単量体自体の重合転化率が70〜95%の間に吸収されることが好ましい。この期間に不飽和ウレタン化合物を吸収させることで、以下で説明する、より高倍の発泡粒子及び発泡成形体を与えるポリスチレン系樹脂粒子を容易に得ることができる。不飽和ウレタン化合物は、スチレン系単量体自体の重合転化率が75〜85%の間に吸収されることがより好ましい。
ここで、重合転化率とは、スチレン系単量体の全量を100として、測定時点で既に重合したスチレン系単量体の割合を意味する。
【0027】
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。また、重合開始剤、懸濁安定剤及び界面活性剤を、上記項目(1)と同様、使用してもよい。また、単量体混合物の重合も、上記項目(1)と同様の条件で行うことができる。
吸収は、重合させつつ行わない場合、5〜80℃で、1〜30時間かけて行うことができる。
重合は、使用する単量体種、重合開始剤種、重合雰囲気種等により異なるが、例えば、60〜150℃の加熱を、1〜10時間維持することにより行うことができる。
【0028】
(3)発泡性粒子
発泡性粒子は、不飽和ウレタン化合物に由来する架橋成分及びスチレン系単量体に由来する成分を含んでいる。これら成分及びその量は、上記ポリスチレン系樹脂粒子の欄で説明した成分及びその量と同一である。更に、発泡性粒子は、発泡剤を含んでいる。
発泡性粒子は、ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることで得ることができる。
発泡剤の含浸は、重合させた後に行ってもよく、重合させつつ行ってもよい。
含浸は、それ自体公知の方法により行うことができる。例えば、重合中での含浸は、重合反応を密閉容器中で行い、容器中に発泡剤を圧入することにより行うことができる。重合終了後の含浸は、密閉容器中で、発泡剤を圧入することにより行われる。
【0029】
発泡剤は、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、プロパン、イソブタン、n−ブタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ペンタン等の炭素数5以下の脂肪族炭化水素等の発泡剤(物理型発泡剤)が挙げられる。この内、イソブタン、n−ブタン等のブタン系発泡剤が好ましい。
発泡剤の発泡性粒子中における含有量は、少ないと、所望の嵩倍数の発泡粒子及び倍数の発泡成形体を得られないことがあると共に、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が小さくなるため、発泡成形体の外観性が低下することがある。また、多いと、発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなるため、生産性が低下することがある。これらの観点から、含有量は2.5〜7.0重量%の範囲が好ましく、2.7〜6.0重量%の範囲がより好ましい。
なお、発泡性粒子中における発泡剤の含有量は、発泡性粒子を150℃の熱分解炉に入れ、この熱分解炉で発生した炭化水素量をクロマトグラフにて測定することで入手できる。
なお、発泡助剤を発泡剤と併用してもよい。
【0030】
ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤及び任意に発泡助剤を含浸させる際の温度は、低いと、ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤及び発泡助剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがあり、又、高いと、ポリスチレン系樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがある。よって、60〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。
【0031】
(3)発泡粒子
発泡粒子は、不飽和ウレタン化合物に由来する架橋成分及びスチレン系単量体に由来する成分を含んでいる。これら成分及びその量は、上記ポリスチレン系樹脂粒子の欄で説明した成分と同一である。
【0032】
また、発泡粒子は、中心部より表層部に架橋成分が多く存在する。この架橋成分の存在具合、及び架橋成分中に存在するウレタン結合が、架橋成分を含まない発泡粒子より、より高倍の発泡粒子を与える原因となっていると発明者等は考えている。より具体的には、表層部に架橋成分が多く存在することで、発泡時の表層部の気泡を維持した伸びが、架橋成分を含まない場合の伸びより高くできているためであると考えられる。
【0033】
発泡粒子の嵩倍数は、80〜120倍とすることができる。更に、架橋成分を含まない発泡粒子より、同一の発泡条件であれば、嵩倍数を1.2倍以上に向上できる。
発泡粒子の形状は、球状又は略球状であることが好ましい。また、平均粒子径は、0.8〜1.0mmであることが好ましい。
発泡性粒子は、公知の方法で発泡させることで発泡粒子とすることができる。発泡用の加熱媒体は水蒸気が好適に使用できる。
発泡粒子は、例えば、クッションの充填物としてそのまま使用できる。更に、発泡成形体製造用の原料としても使用できる。
【0034】
(4)発泡成形体
発泡成形体は、複数の上記発泡粒子の融着体からなる。上記発泡粒子は、架橋成分を含まない発泡粒子より、より高倍であるため、その発泡粒子から得られる発泡成形体もより高倍である。
発泡成形体は、例えば、発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、再び水蒸気等で加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで、製造できる。その際、発泡成形体の倍数は、例えば、金型内への発泡粒子の充填量を調製する等して調製できる。
発泡成形体は、自動車バンパー用芯材、自動車内部に装着される緩衝材等の車両衝突時のエネルギー吸収材、自動車室内の構造部材として有用である。また、自動車分野以外に、食品、住宅建材、電子部品等の輸送容器、各種工業資材の用途でも使用できる。特に、より高倍の発泡成形体であるという観点から、食品輸送容器の用途に使用することが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明の具体例を示すが、以下の実施例は本発明の例示にすぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。なお、以下において、特記しない限り、「部」及び「%」は重量基準である。
以下の実施例及び比較例における各種測定値は、次の測定方法により測定した。
【0036】
<平均粒子径>
試料約50gをロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)を用いて、篩目開き3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm、0.180mmのJIS標準篩で5分間分級する。篩網上の試料重量を測定し、その結果から得られた累積重量分布曲線を元にして累積重量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径として求める。
【0037】
<嵩倍数>
発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、発泡粒子の嵩密度を算出する。
発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)
嵩倍数は嵩密度の逆数である。
【0038】
<発泡成形体の倍数>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(kg/m3)を求める。
倍数は密度の逆数である。
【0039】
<発泡成形体融着率>
発泡成形体の中心に沿ってカッターナイフで深さ約5mmの切り込み線を入れる。この後、この切り込み線に沿って発泡成形体を手で二分割する。その破断面における発泡粒子について、100〜150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数える。結果を、式[(a)/((a)+(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とする。融着率70%以上を○、70%未満を×と評価する。
【0040】
<総合評価>
発泡性評価において、90倍の発泡成形体が得られ、且つ融着率が70%を超えるものを○とし、どちらか一方でも満たさないものは×とする。
【0041】
実施例1
(種粒子の製造)
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水40000g、懸濁安定剤として第三リン酸カルシウム100g及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム2.0gを供給し攪拌しながらスチレン40000g並びに重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド96.0g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート28.0gを添加した上で90℃に昇温して重合した。そして、この温度で6時間保持し、更に、125℃に昇温してから2時間後に冷却してポリスチレン系樹脂粒子(a)を得た。
前記ポリスチレン系樹脂粒子(a)を篩分けし、種粒子として粒子径0.5〜0.71mmのポリスチレン系樹脂粒子(b)を得た。
【0042】
(第1重合工程)
次に、内容量5リットルの攪拌機付き重合容器内に、水2000g、前記ポリスチレン系樹脂粒子(b)500g、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム6.0g及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム0.3gを供給して攪拌しながら72℃に昇温した。
次に、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド4.5g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.1gをスチレン210gに溶解させたものを前記5リットルの重合容器に供給してから、72℃で60分保持して反応液を得た。
【0043】
(第2重合工程)
60分経過後に反応液を102℃まで120分で昇温しつつ、かつスチレン1032gを120分で重合容器内にポンプで一定量ずつ供給した。
(第3重合工程)
反応液を102℃から110℃まで30分で昇温しつつ、かつスチレン198gとグリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学性UA−101H)60gの混合単量体を30分で重合容器内にポンプで一定量ずつ供給した。次いで、120℃に昇温して2時間経過後に冷却し、ポリスチレン系樹脂粒子(c)を得た。
【0044】
(揮発性発泡剤含浸)
続いて、別の内容量5リットルの攪拌機付き重合容器に、水2200g、ポリスチレン系樹脂粒子(c)1800g、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム6.0g及びドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム0.4gを供給して攪拌しながら70℃に昇温した。次に、発泡助剤としてシクロヘキサン27.0gを重合容器内に入れて密閉し100℃に昇温した。次に、揮発性発泡剤としてn−ブタン144gをポリスチレン系樹脂粒子(c)が入った重合容器内に圧入して3時間保持することで発泡性粒子を得た。保持後、30℃以下まで冷却した上で、発泡性粒子を重合容器内から取り出し、乾燥させた上で13℃の恒温室内に5日間放置した。
【0045】
(予備発泡)
ジンクステアレート及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドからなる表面処理剤で、発泡性粒子の表面を被覆処理した。処理後、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡装置にて嵩密度0.01g/cm3に発泡させた後、20℃で24時間熟成することで、予備発泡粒子を得た。
(発泡成形)
内寸300mm×400mm×30mmの直方体形状のキャビティを有する成形型を備えた発泡ビーズ自動成形機(積水工機製作所社製 商品名「エース3型」)のキャビティ内に上記予備発泡粒子を充填した。次いで、ゲージ圧0.07Mpaの水蒸気で15秒間加熱成形することで密度0.010g/cm3の発泡成形体を得た。次に、成形型のキャビティ内の発泡成形体を5秒間水冷した後、減圧下にて放冷(冷却工程)することで発泡成形体を取り出した。
得られた発泡成形体は収縮もなく、熱融着性の良好なものであった。
【0046】
実施例2
第3重合工程に使用するスチレン単量体を158g、グリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーを100gに変更したこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は収縮もなく、熱融着性の良好なものであった。
実施例3
第3重合工程に使用するスチレン単量体を158g、グリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーを100gに変更したこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は収縮もなく、熱融着性の良好なものであった。
【0047】
実施例4
第3重合工程に使用するグリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーに代わり、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート化合物(共栄社化学性AH600)を使用したこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は収縮もなく、熱融着性の良好なものであった。
【0048】
比較例1
第3重合工程に使用するスチレン単量体を158g、グリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーを100gに変更したこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。得られた発泡粒子は嵩倍数80倍(嵩密度0.0125g/cm3)と所望の倍数(90倍)まで発泡させることができなかった。この発泡粒子から得られた発泡成形体は成形時に収縮してしまった。
比較例2
第3重合工程に使用するスチレン単量体を158g、グリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーを100gに変更したこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。得られた発泡粒子は嵩倍数60倍(嵩密度0.017g/cm3)と所望の倍数(90倍)まで発泡させることができなかった。得られた発泡成形体は収縮もなく、熱融着性に劣るものであった。
実施例及び比較例の結果を表1にまとめて示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から、不飽和ウレタン化合物由来する架橋成分を特定量含み、架橋成分を中心部より表層部に多く含むポリスチレン系樹脂粒子から得られた実施例の発泡成形体は、架橋成分が少ない比較例1や多い比較例2に比べて、発泡条件が同一であれば、より高倍の発泡粒子及び発泡成形体が得られていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和アルコールとイソシアネート化合物との反応生成物である不飽和ウレタン化合物に由来する架橋成分で架橋されたポリスチレン系樹脂粒子であり、
前記架橋成分が、前記ポリスチレン系樹脂粒子を形成するに使用されるスチレン系単量体100重量部に対し、0.5〜7重量部使用されることを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記ポリスチレン系樹脂粒子は、その中心部より表層部に前記架橋成分が多く存在するように、その製造時にスチレン系単量体自体の重合転化率が70〜95%の間に、前記不飽和ウレタン化合物の添加を行って形成されている請求項1に記載のポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記架橋成分が、炭素数2〜10のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルからなるアルコールと、炭素数3〜8のジイソシアネート化合物との不飽和ウレタン化合物に由来する成分である請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記架橋成分が、グリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー及びフェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーから選択される不飽和ウレタン化合物に由来する請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
水性媒体中で、種粒子に、スチレン系単量体及び不飽和アルコールとイソシアネート化合物との反応生成物である不飽和ウレタン化合物を含む単量体混合物を吸収させる工程と、
吸収させた後又は吸収させつつ前記単量体混合物の重合を行うことでポリスチレン系樹脂粒子を得る工程とを含み、
前記ポリスチレン系樹脂粒子は、その中心部より表層部に前記架橋成分が多く存在するように、その製造時にスチレン系単量体自体の重合転化率が70〜95%の間に、前記不飽和ウレタン化合物の添加を行って形成されることを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂粒子と、発泡剤とを含む発泡性粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の発泡性樹脂粒子を、発泡させて得られた発泡粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の発泡粒子を、発泡成形させて得られた発泡成形体。

【公開番号】特開2012−201827(P2012−201827A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68639(P2011−68639)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】