説明

ポリプロピレン組成物、その製造方法、及びそれより製造された物品

本発明は、ポリプロピレン組成物、その製造方法、及びそれより製造された物品に関する。本発明によるポリプロピレン組成物は、少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、カップリング剤と、場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド生成物を含む。本発明によるポリプロピレン組成物は、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有する。本発明によるポリプロピレン組成物の製造方法は、(1)少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーとを、カップリング剤の存在下で反応溶融ブレンドする工程と;(2)それにより、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有するポリプロピレン組成物を製造する工程とを含む。本発明による物品は、少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、カップリング剤と、場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド生成物を含む、本発明のポリプロピレン組成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年3月30日に出願され、「ポリプロピレン組成物、その製造方法、及びそれより製造された物品」(POLYPROPYLENE COMPOSITION, A METHOD OF PRODUCING THE SAME, AND ARTICLES MADE THEREFROM)と題される米国仮特許出願第60/920,982号明細書の優先権を主張する非仮出願であり、この教示は、本明細書において以下に全体が再現されるかのように、参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリプロピレン組成物、その製造方法、及びそれより製造された物品に関する。
【背景技術】
【0003】
熱成形用途においてポリプロピレンポリマーが使用されることは一般に公知である。ポリプロピレンポリマーは、例えば押出プロセスによって、典型的にはシートに成形される。次に、熱成形プロセスによって、このシートから物品が作られる。一般に、熱成形プロセスは、軟化するまで又はたわみ始めるまでシートを加熱し、続いて真空、空気圧、及び/又は機械的な延伸補助の1つ以上を行って、加熱されたシートを、ダイと呼ばれることもある雌型中に延伸すること、雄型上に延伸すること、又は2つの金型を共に使用することで物品を形成し、形成された物品を冷却し、金型から取り出し、必要に応じて不要部分を切り落とすことを含む。熱成形プロセスは、例えば、自動車部品を作る際に使用することができる。このような自動車部品の多く、特に大型部品は、ポリマーが、適切な加工特性、例えば高溶融強度、並びに、最終製品特性、例えば特に低温における剛性及び靱性を有するのであれば、考え得るところでは熱成形プロセスによって製造することができる。
【0004】
米国特許第6,472,473号明細書には、カップリングしたプロピレンポリマー組成物、並びに場合により熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリマー、及びフィラーを含む射出成形された自動車用物品が開示されている。
【0005】
米国特許第6,734,253号明細書には、カップリングした耐衝撃性プロピレンコポリマーを含む組成物が開示されている。好ましくは、カップリングした耐衝撃性プロピレンコポリマーは、少なくとも9重量%の量でカップリングしたプロピレンコポリマーに存在するエラストマー相を有する。カップリングしたプロピレンコポリマーから形成された物品は、類似のカップリングしていない耐衝撃性プロピレンコポリマーから形成された物品と比較して改善され方向的にバランスのとれた衝撃特性を示し、類似のカップリングしていない耐衝撃性プロピレンコポリマーと比較して改善された延性−脆性遷移温度も示す。
【0006】
米国特許第6,300,419号明細書には、全組成物の重量を基準にして、示差走査熱量測定によって測定して、高結晶性プロピレンポリマーの重量を基準にして約62重量%以上の結晶相を有する約55〜約80重量部の高結晶性アイソタクチックプロピレンポリマーと;約20〜約45重量部の実質的に線状のエチレンポリマー、線状エチレンポリマー、又はそれらの組み合わせ(実質的に線状のエチレンポリマー及び線状エチレンポリマーは、約0.93g/cm未満の密度、約3.0未満の分子量分布Mw/Mn、及び30%を超える組成分布分岐指数(Composition Distribution Branch Index)を有することを特徴とする)と;0〜約50重量部のフィラーと;0〜約15重量部の追加のポリマーとを含む、プロピレンポリマー組成物が開示されている。
【0007】
米国特許第6,153,715号明細書には、核剤とプロピレン樹脂とで構成されるプロピレン樹脂組成物が開示されている。このプロピレン樹脂組成物のブロー成形によって、特に、バンパー、バンパービーム、シートバック、計器盤、又は類似の部品などの大型自動車用部品として有利に使用されるブロー成形物品が得られる。
【0008】
米国特許第5,414,027号明細書には、通常は固体で、高分子量で、非線状で、ゲルを実質的に含有しないプロピレンポリマー材料と、通常は固体で、高分子量で、線状のプロピレンポリマーに還元活性酸素環境中で高エネルギーを照射し、照射された材料をそのような環境中で特定の時間維持し、材料中のフリーラジカルを不活性化することによるそのようなポリマー材料の製造方法とが開示されている。
【0009】
米国特許出願公開第2005/0154136号明細書には、(1)重量基準で過半量の、(b)C〜C10α−オレフィンの長鎖分岐線状ホモポリマー又はコポリマーよりも多量の(a)C〜C10α−オレフィンの実質的に線状のホモポリマー又はコポリマーと、(2)重量基準で少量の架橋性エラストマーと、(3)C〜C10α−オレフィン単独の線状ホモポリマー又はコポリマーの溶融強度よりも組成物の溶融強度を増加させるのに十分な量であるが、α−オレフィン系ポリマーを実質的に分解させるのには不十分な量で存在する、少なくとも1種類の熱分解性フリーラジカル発生剤とを含む熱可塑性オレフィン(TPO)組成物が開示されている。このTPO組成物は、前記C〜C10α−オレフィンのホモポリマー又はコポリマーを溶融させるのに十分な温度で成分を溶融ブレンドし、前記発生剤を熱分解させることによって調製される。この熱可塑性オレフィンから物品が熱成形される。
【0010】
米国特許出願公開第2005/0070673号明細書には、カップリングしたプロピレンポリマー組成物を含む熱成形物品が開示されている。
【0011】
米国特許出願公開第2005/0176892号明細書には、(a)8〜70の間のPRRを有する少なくとも1種類のエチレン/α−オレフィンポリマーと、(b)少なくとも1種類のポリプロピレンポリマーとを含み、(a)/(b)の重量比が50超/50未満〜90/10である熱可塑性オレフィン系組成物が開示されている。この組成物は、押出成形、カレンダー加工、ブロー成形、発泡、及び熱成形のプロセスに使用され、自動車の計器盤のスキンなどの種々の物品が製造される。
【0012】
米国特許出願公開第2005/0209403号明細書には、(a)8〜70の間のPRRを有する少なくとも1種類のエチレン/α−オレフィンポリマーと、(b)4未満のPRRを有するポリエチレンホモポリマー及びα−オレフィンインターポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、並びにスチレン系/オレフィン系ブロックインターポリマーからなる群より選択される少なくとも1種類のポリオレフィンポリマーとを含み、(a)/(b)の重量比が50超/50未満〜90/10である、熱可塑性オレフィン系組成物が開示されている。この組成物は、押出成形、カレンダー加工、ブロー成形、発泡、及び熱成形のプロセスに使用され、自動車の計器盤のスキンなどの種々の物品が製造される。
【0013】
米国特許出願公開第2005/0272858号明細書には、5未満のMw/Mn、7g/10分未満のメルトフローレート、300,000psiを超える1%割線曲げ弾性率(secant flexural modulus)、及び2重量%未満のキシレン可溶成分を有する、ポリプロピレン樹脂が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
熱成形に適したポリプロピレン組成物の開発において研究努力が行われているにもかかわらず、適切な加工特性、例えば高溶融強度、並びに、改善された最終製品特性、例えば特に低温における剛性及び靱性を有するポリプロピレン組成物が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ポリプロピレン組成物、その製造方法、及びそれより製造された物品に関する。本発明によるポリプロピレン組成物は、少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、カップリング剤と、場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド(reactive melt blending)生成物を含む。本発明によるポリプロピレン組成物は、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有する。本発明によるポリプロピレン組成物の製造方法は、(1)少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーとを、カップリング剤の存在下で反応溶融ブレンドする工程と;(2)それによって、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有するポリプロピレン組成物を製造する工程とを含む。本発明による物品は、少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、カップリング剤と、場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド生成物を含む、本発明のポリプロピレン組成物を含む。
【0016】
本発明を説明する目的で、例示的な形態の図面を示すが、図示される厳密な配置及び方法に本発明が限定されるものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】10、15、及び20重量パーセントのエラストマーを含む本発明によるポリプロピレン組成物のメルトフローレートを、ポリプロピレン組成物の製造に使用されるカップリング剤の量の関数として示すグラフである。
【図2】10、15、及び20重量パーセントのエラストマーを含む本発明によるポリプロピレン組成物により23℃において吸収される全エネルギーを、1%割線弾性率の関数として示すグラフである。
【図3】10、15、及び20重量パーセントのエラストマーを含む本発明によるポリプロピレン組成物により0℃において吸収される全エネルギーを、1%割線弾性率の関数として示すグラフである。
【図4】本発明によるポリプロピレン組成物の延性破壊数を、本発明によるポリプロピレン組成物によって0℃において吸収される全エネルギーの関数として示すグラフである。
【図5】本発明により作製されたシートのたわみの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ポリプロピレン組成物、その製造方法、及びそれより製造された物品に関する。
【0019】
本発明によるポリプロピレン組成物は、少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、カップリング剤と、場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド生成物を含む。このポリプロピレン組成物は、核剤又は1種類以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0020】
本発明によるポリプロピレン組成物は、ASTM−D 376による測定で、23℃以下の範囲内の温度において吸収される全エネルギーによって測定して少なくとも20インチ・ポンドの範囲内の機器搭載ダーツ衝撃(instrumented dart impact)を有することができ;又は別の場合にはASTM−D 376による測定で、0℃以下の範囲内の温度において吸収される全エネルギーによって測定して少なくとも10インチ・ポンドの範囲内の機器搭載ダーツ衝撃を有することができ;又は別の場合にはASTM−D 376による測定で、−10℃以下の範囲内の温度において吸収される全エネルギーによって測定して少なくとも10インチ・ポンドの範囲内の機器搭載ダーツ衝撃を有することができ;又は別の場合にはASTM−D 376による測定で、−30℃以下の範囲内の温度において吸収される全エネルギーによって測定して少なくとも10インチ・ポンドの範囲内の機器搭載ダーツ衝撃を有することができ;又は別の場合にはASTM−D 376による測定で、−40℃以下の範囲内の温度において吸収される全エネルギーによって測定して少なくとも10インチ・ポンドの範囲内の機器搭載ダーツ衝撃を有することができる。ポリプロピレン組成物は、ASTM−D 790Aによる測定で少なくとも300,000psiの曲げ弾性率を有することができる。少なくとも300,000psiのすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、ポリプロピレン組成物は、ASTM−D 790Aによる測定で少なくとも400,000psiの曲げ弾性率を有することができ;又は別の場合には、ポリプロピレン組成物は、ASTM−D 790Aによる測定で少なくとも500,000psiの曲げ弾性率を有することができる。ポリプロピレン組成物は、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有することができる。1g/10分未満のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、ポリプロピレン組成物は、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して0.25〜0.65g/10分の範囲内のメルトフローレートを有することができる。
【0021】
高結晶性ポリプロピレン成分は、例えば、示差走査熱量測定(「DSC」)により測定して64%以上の%結晶化度を有することができる。64%以上のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、高結晶性ポリプロピレン成分は68%以上の%結晶化度を有することができ;又は別の場合には、高結晶性ポリプロピレン成分は70%以上の%結晶化度を有することができる。高結晶性ポリプロピレン成分は、例えば、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して35g/10分未満の範囲内のメルトフローレート(「MFR」)を有することができる。35g/10分未満のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、高結晶性ポリプロピレン成分は、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して10g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有することができ;又は別の場合には、高結晶性ポリプロピレン成分は、例えば、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して7g/10分未満のメルトフローレートを有することができ;又は別の場合には、高結晶性ポリプロピレン成分は、例えば、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して5g/10分未満のメルトフローレートを有することができる。高結晶性ポリプロピレン成分は、例えば、130℃を超える結晶化温度を有することができる。130℃を超えるすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、高結晶性ポリプロピレン成分は135℃を超える結晶化温度を有することができる。高結晶性ポリプロピレン成分は、例えば、95%を超えるアイソタクチックペンタッド/トリアッド割当(pentad/triad ration)を有することができる。95%を超えるすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、高結晶性ポリプロピレン成分は96%を超えるアイソタクチックペンタッド/トリアッド割当を有することができ;又は別の場合には、高結晶性ポリプロピレン成分は、例えば、97%を超えるアイソタクチックペンタッド/トリアッド割当を有することができる。ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の全重量を基準にして90重量パーセント未満の高結晶性ポリプロピレン成分を含むことができる。90重量%未満のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の全重量を基準にして50〜80重量パーセントの高結晶性ポリプロピレン成分を含むことができ;又は別の場合には、ポリプロピレン組成物は、例えば、ポリプロピレン組成物の全重量を基準にして50〜70重量パーセントの高結晶性ポリプロピレン成分を含むことができる。
【0022】
高結晶性ポリプロピレン成分は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンインターポリマー、及び約1〜約20重量%のエチレン又は4〜20個の炭素原子を有するα−オレフィンコモノマーを含有することができるポリプロピレンの反応コポリマーであってもよい。
【0023】
高結晶性ポリプロピレンインターポリマーは、ランダムコポリマー又はブロックコポリマー、或いはプロピレン系ターポリマーであってもよい。プロピレンと重合させる代表的なコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ユニデセン(1-unidecene)、1ドデセンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。高結晶性ポリプロピレンインターポリマーは、高結晶性ポリプロピレンインターポリマーの全重量を基準にして10重量パーセント未満の1種類以上のコモノマーを含むことができる。10重量%未満のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、高結晶性ポリプロピレンインターポリマーは、高結晶性ポリプロピレンインターポリマーの全重量を基準にして5重量パーセント未満の1種類以上のコモノマーを含むことができ;又は別の場合には、高結晶性ポリプロピレンインターポリマーは、高結晶性ポリプロピレンインターポリマーの全重量を基準にして2重量パーセント未満の1種類以上のコモノマーを含むことができる。
【0024】
高結晶性ポリプロピレン成分は、種々の方法によって調製することができ、例えば、1段階又は多段階で、重合方法、例えばスラリー重合、液体プール法(liquld pool process)、気相重合、バルク重合、溶液重合、又はそれらの組み合わせによって、メタロセン触媒又は、通常はチタンを含む固体遷移金属成分を含む触媒であるいわゆるチーグラー−ナッタ触媒を使用して、調製することができる。特に、遷移金属/固体成分として、チタントリコライド(titanium trichoride)の固体組成物であって、必須成分としてチタン、マグネシウム、及びハロゲンと;有機金属成分として有機アルミニウム化合物と;所望により電子供与体とを含有する固体組成物からなる触媒。好ましい電子供与体は、窒素原子、リン原子、硫黄原子、ケイ素原子、又はホウ素原子を含有する有機化合物であり、好ましくはこれらの原子を含有するケイ素化合物、エステル化合物、又はエーテル化合物である。高結晶性ポリプロピレン成分は、プロピレンを重合反応器中で適切な分子量制御剤を使用して触媒反応させることによって製造することができる。核剤を、反応終了後に、結晶形成を促進するために加えることができる。重合触媒は、高活性であり、高タクティックポリマーを生成可能であるべきである。反応器系は、反応塊から重合熱を除去できる必要があり、それによって反応の温度及び圧力を適切に制御することが可能となる。一般に、高結晶性ポリプロピレンはアイソタクチック型であるが、他の形態を使用することもできる(例えば、シンジオタクチック又はアタクチック)。本発明に使用される高結晶性ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー、又はプロピレンと、α−オレフィン、例えばC、又はC〜C20α−オレフィンとのプロピレンコポリマー、例えば、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーである。
【0025】
エラストマー成分は、例えば、任意のエラストマーであってもよい。エラストマーは、比較的小さな応力で大きな可逆変形が生じる材料として定義される。エラストマーは、典型的には、ポリマー鎖中に構造不規則性、非極性構造、又は可撓性単位を有することを特徴とする。エラストマーポリマーの1つは、例えば、応力を加えるとその緩和状態の長さの少なくとも2倍まで延伸することができ、応力を開放した後にはほぼ元の寸法及び形状に戻る。市販のエラストマーの一部の例としては、天然ゴム、ポリオレフィンエラストマー(POE)、塩素化ポリエチレン(CPE)、シリコーンゴム、スチレン/ブタジエン(SB)コポリマー、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)ターポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン(SEBS)ターポリマー、並びに水素化SBS又はSEBSが挙げられる。
【0026】
好ましいエラストマーはポリオレフィンエラストマーである。本発明における使用に適したポリオレフィンエラストマーは、重合形態で1つ以上のC〜C20α−オレフィンを含み、25℃未満、好ましくは0℃未満のガラス転移温度(T)を有する。Tは、ポリマー材料の物理的性質、例えば、機械的強度が急激な変化を示す温度又は温度範囲である。Tは示差走査熱量測定によって求めることができる。代表的なポリオレフィンエラストマーとしては、エチレン/α−オレフィンコポリマー及びターポリマー及びブロックコポリマー、エチレン−プロピレンジエンゴム、プロピレン−αオレフィンコポリマー、シリコンゴム、ブタジエン系ゴムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリオレフィンエラストマーとしては、例えばシングルサイト触媒又はメタロセン触媒を使用して製造されたエチレン/α−オレフィンコポリマーを挙げることができ、そのポリオレフィンエラストマー中のエチレンから誘導される単位は50重量パーセントを超え、α−オレフィンは少なくとも3つの炭素原子を有するオレフィンから選択され;又は別の場合には、α−オレフィンは少なくとも4つの炭素原子を有するオレフィンから選択され;又は別の場合には、α−オレフィンは4〜20個の炭素原子を有するオレフィンから選択され;又は別の場合には、α−オレフィンは4〜12個の炭素原子を有するオレフィンから選択され;又は別の場合には、α−オレフィンは4〜8個の炭素原子を有するオレフィンから選択される。代表的なα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサドデセン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、ジエチル−1−ブテン、トリメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジメチル−1−ペンテン、メチルエチル−1−ペンテン、ジエチル−1−ヘキセン、トリメチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ヘプテン、ジメチルオクテン、エチル−1−オクテン、メチル−1−ノネン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、及びビニルノルボルネンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。エラストマー成分は0.855〜0.980g/cmの範囲内の密度を有することができる。0.855〜0.980g/cmのすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、エラストマー成分は0.870〜0.940g/cmの範囲内の密度を有することができ;又は別の場合には、エラストマー成分は0.875〜0.940g/cmの範囲内の密度を有することができる。エラストマー成分は、例えば、0.1〜100g/10分の範囲内のメルトインデックス(I)を有することができる。0.1〜100g/10分のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、エラストマー成分は0.1〜30g/10分の範囲内のメルトインデックス(I)を有することができ;又は別の場合には、エラストマー成分は0.1〜10g/10分の範囲内のメルトインデックス(I)を有することができ;又は別の場合には、エラストマー成分は0.1〜2g/10分の範囲内のメルトインデックス(I)を有することができる。ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の重量を基準にして50重量パーセント未満のエラストマー成分を含むことができる。50重量パーセント未満のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の重量を基準にして20重量パーセント未満のエラストマー成分を含むことができ;又は別の場合には、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の重量を基準にして10〜20重量パーセントのエラストマー成分を含むことができる。
【0027】
一実施形態では、ポリオレフィンエラストマーは、1種類以上の実質的に線状のエチレンポリマー又は1種類以上の線状エチレンポリマー(S/LEP)、又はそれぞれの1種類以上の混合物である。実質的に線状のエチレンポリマー及び線状エチレンポリマーはどちらも周知である。実質的に線状のエチレンポリマー及びそれらの調製方法は、米国特許第5,272,236号明細書及び米国特許第5,278,272号明細書に十分に記載されており、線状エチレンポリマー及びそれらの調製方法は、米国特許第3,645,992号明細書、米国特許第4,937,299号明細書、米国特許第4,701,432号明細書、米国特許第4,937,301号明細書、米国特許第4,935,397号明細書、米国特許第5,055,438号明細書、欧州特許第129,368号明細書、欧州特許第260,999号明細書、及び国際公開第90/07526号パンフレットに十分に開示されており、これらの開示は参照として本明細書に組み込まれる。
【0028】
本明細書において使用される場合、カップリング剤という用語は、少なくとも2つの反応性基を含有する化合物であって、ポリマー鎖の脂肪族のCH、CH2、又はCH3基、並びに芳香族CH基の炭素水素結合中に挿入可能なカルベン基又はニトレン基を各反応性基が形成可能な化合物を意味する。これらの反応性基がともにポリマー鎖にカップリングすることができる。熱、音波エネルギー、放射線、又は他の化学活性化エネルギーを使用してカップリング剤を活性化させることが、カップリング剤がポリマー鎖のカップリングに有効となるためには必要となりうる。カルベン基を形成可能な反応性基を含有する化合物の例としては、例えば、ジアゾアルカン、ジェミナル置換メチレン基、及びメタロカルベンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ニトレン基を形成可能な反応性基を含有する化合物の例としては、ホスファゼンアジド、スルホニルアジド、ホルミルアジド、及びアジドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物100万部当たり200〜1000重量部のカップリング剤を含むことができる。200〜1000ppmのすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物100万部当たり400〜800重量部のカップリング剤を含むことができ;又は別の場合には、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物100万部当たり400〜600重量部のカップリング剤を含むことができる。代表的なカップリング剤としては、ポリ(スルホニルアジド)、及びビス(スルホニルアジド)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリ(スルホニルアジド)の例は国際公開第99/10424号パンフレットにさらに記載されている。代表的なポリ(スルホニルアジド)としては、1,5−ペンタンビス(スルホニルアジド)、1,8−オクタンビス(スルホニルアジド)、1,10−デカンビス(スルホニルアジド)、1,10−オクタデカンビス(スルホニルアジド)、1−オクチル−2,4,6−ベンゼントリス(スルホニルアジド)、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、1,6−ビス(4’−スルホンアジドフェニル)ヘキサン、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、及び平均で1〜8個の塩素原子と2〜5個のスルホニルアジド基とを1分子当たりに含有する塩素化脂肪族炭化水素の混合スルホニルアジド、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の場合には、代表的なポリ(スルホニルアジド)としては、オキシ−ビス(4−スルホニルアジドベンゼン)、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、4,4’−ビス(スルホニルアジド)ビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、及びビス(4−スルホニルアジドフェニル)メタン、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。カップリング剤は、例えば、ダイナミット・ノーブル(dynamit noble)より市販されている4,4’−ジフェニルオキシドビス−スルホニルアジドであってもよい。
【0029】
スルホニルアジドは市販されており、又はアジ化ナトリウムと対応するスルホニルクロライドとの反応によって簡便に調製されるが、種々の試薬(亜硝酸、四酸化二窒素、ニトロソニウムテトラフルオロボレート)を使用したスルホニルヒドラジンの酸化が使用されている。
【0030】
しかし、スルホニルアジド及びその他のアジドは衝撃に敏感な場合がある。アジドの製造中及び処理中、或いはアジドの輸送中又は取扱中に、アジドをフラグマタイズ(phlagmatize)したり、他の方法でアジドを反応から保護したりする必要がある場合がある。本明細書において使用される場合、フラグマタイズは、反応性化学物質を不活性又は反応性の低い化学物質と混合又は組み合わせることによって、化学物質又は化学種の衝撃感度を軽減させる方法を意味する。例えば、酸化防止剤及びカップリング剤を互いにブレンドして分子溶融物を形成することができ、この分子溶融物の形成によってカップリング剤をフラグマタイズすることができる。
【0031】
本明細書において使用される場合、分子溶融物という用語は、カップリング剤と、酸化防止剤とのブレンドを意味し、場合により他のポリマー添加剤も含有する。カップリング剤及び酸化防止剤は複合体を形成し、このニトレン基を形成する基に関連するラマンスペクトルは、カップリング剤単独のニトレン基を形成する基によって示されるラマンスペクトルと比較するとシフトする。
【0032】
本明細書において使用される場合、酸化防止剤という用語は、ポリマーの処理中に発生しうる酸化を最小限にするために使用することができる化合物の種類又は部類を意味する。酸化防止剤という用語は、酸化防止剤の化学的誘導体、例えばヒドロカルビルも含んでいる。酸化防止剤という用語は、カップリング剤と適切に組み合わせた場合に、互いに相互作用して、カップリング剤単独の場合とは異なるラマンスペクトルを示す複合体を形成する化合物をさらに含んでいる。好ましくは、酸化防止剤は、ホスファイト含有化合物や、+3酸化状態のリンを含有する化合物ではない。ホスファイト系酸化防止剤の一例はトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトであり、これはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・カンパニー(Ciba Specialty Chemicals Company)より商品名イルガフォス(Irgafos)(登録商標)168として市販されている。
【0033】
酸化防止剤の代表的な部類としては、炭素ラジカル及び/又は酸素ラジカルの捕捉剤として機能しうる化合物、例えば、フェノール系化合物及びそれらの誘導体、ヒンダードアミン、アミンヒドロキシド、チオエステル化合物、及びヒンダードフェノール系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、ラクトンを酸化防止剤として使用することもできる。分子溶融物は1種類以上の酸化防止剤を含有することができる。
【0034】
代表的なフェノール系酸化防止剤及び置換フェノール系酸化防止剤としては、2,2’−メチレンビス(6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール及び2,6−ジターシャリー−ブチル−4−メチルフェノールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
代表的なヒンダードフェノール系化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートが挙げられ、これはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・カンパニーより商品名イルガノックス(Irganox)(登録商標)1010として市販されているが、これに限定されるものではない。
【0036】
代表的なラクトンとしては、5,7−ビス(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2(3H)−ベンゾフラノンとo−キシレンとの反応生成物が挙げられ、これはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・カンパニーより商品名イルガノックス(登録商標)HP−136として市販されているが、これに限定されるものではない。
【0037】
分子溶融組成物は、酸化防止剤とカップリング剤とを含む。分子溶融物中に存在するカップリング剤及び酸化防止剤の少なくとも一部は複合体を形成し、この複合体は、ポリマーを修飾するためのカップリング剤の使用に悪影響を与えることはない。分子溶融物中のカップリング剤対酸化防止剤のモル比は1:10〜10:1であってもよい。1:10〜10:1すべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、カップリング剤対酸化防止剤のモル比は1:2〜8:1であってもよく;又は別の場合には、カップリング剤対酸化防止剤のモル比は1:1〜4:1であってもよい。分子溶融物は、分子溶融物の重量を基準にして99重量%未満のカップリング剤を含むことができる。99重量%未満のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、分子溶融物は、分子溶融物の重量を基準にして75重量%未満のカップリング剤を含むことができ;又は別の場合には、分子溶融物は、分子溶融物の重量を基準にして50重量%未満のカップリング剤を含むことができ;又は別の場合には、分子溶融物は、分子溶融物の重量を基準にして35重量%未満のカップリング剤を含むことができ;又は別の場合には、分子溶融物は、分子溶融物の重量を基準にして25重量%未満のカップリング剤を含むことができる。分子溶融物は、分子溶融物の重量を基準にして少なくとも1重量パーセントの酸化防止剤を含むことができる。少なくとも1重量%のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、分子溶融物は、分子溶融物の重量を基準にして少なくとも25重量パーセントの酸化防止剤を含むことができ;又は別の場合には、分子溶融物は、分子溶融物の重量を基準にして少なくとも50重量パーセントの酸化防止剤を含むことができ;又は別の場合には、分子溶融物は、分子溶融物の重量を基準にして少なくとも65重量パーセントの酸化防止剤を含むことができ;又は別の場合には、分子溶融物は、分子溶融物の重量を基準にして少なくとも75重量パーセントの酸化防止剤を含むことができる。
【0038】
分子溶融物は、カップリング剤と酸化防止剤との溶融ブレンドによって、共通の溶媒からのカップリング剤及び酸化防止剤との共沈によって、又は任意の他の従来方法によって形成することができる。分子溶融物は、任意の好都合な形態、すなわち固体又は液体として形成することができる。
【0039】
カップリング剤及び酸化防止剤に加えて、他の化合物が場合により分子溶融物中に存在することができる。好ましくは、この追加の化合物は、カップリング剤又は酸化防止剤のいずれとも不都合な反応を起こさず、分子溶融物の結晶化度を顕著に上昇させることもない。
【0040】
代表的な追加の化合物としては、内部滑剤、相溶化剤、離型剤、可塑剤、紫外線安定剤、触媒中和剤、それらの組み合わせ、及びそれらのブレンド物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
代表的な内部滑剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、カルシウムステアレート、及びグリセロールモノステアレート(GMS)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
代表的な相溶化剤としては、チタンジ(ジオクチルピロホスホセート)オキシアセテート、ジ(ジオクチルピロホスホセート)エチレンチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトラ(2,2ジアリルオキシメチル)ブチル、ジ(ジトリデシル)ホスフィオジルコネート、及びグリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
代表的な離型剤としては、オレアミド、ステアルアミド、亜鉛ステアレート、エルカ酸アミド、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−テトラスルフィド、及びビス(トリメチルシリル)尿素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
代表的な可塑剤としては、トリイソオクチルトリメリテート、エポキシ化ダイズ油、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、ジイソセシルアジペート(diisocecyl adipate)、トリエチルシトレート、ポリブテン、オレイルパリタミド(oleyl palitamide)、n−ステアリルエルカ酸アミド、及びジステアリルチオジプロピオネートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
代表的な紫外線安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、及びナトリウムジシクロヘキシルスルホスクシネートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
代表的な触媒中和剤としては、金属ステアレート(例えばカルシウムステアレート)、ハイドロタルサイト、カルシウムラクテート、及び金属酸化物、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
+3酸化状態のリンを含有する化合物を、カップリング剤との不都合な反応が起こらない限定された量で分子溶融物に加えることができる。
【0048】
フィラー成分は、有機フィラー又は無機フィラーであってもよい。代表的な無機フィラーとしては、タルク、マイカ、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、天然及び合成のクレー及びそれらの有機改質誘導体、シリケートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的な有機フィラーとしては、1,3,5−ベンゼントリ−カルボキシリック−(N−2−メチルシクロヘキシル)トリアミン及びフロリネイテッド(florinated)芳香族トリアミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。フィラーは繊維状、粒状、又は粉末の形態であってもよい。代表的な繊維状フィラーとしては、炭素繊維及びウィスカーが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのフィラーは、布、マット、切断された束、チョップドファイバー、フィラメント、又はウィスカーの形態であってもよい。代表的な粒状又は粉末のフィラーとしては、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラス粉末、モンモリロナイト、ベントナイト、カオリン、珪藻土、ドロマイト、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化スズ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫化モリブデン、オキシサルフェート、炭化ケイ素、アルミニウム粉末、金属粉末、軽石粉末、及び軽石バルーンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の重量を基準にして50重量パーセント未満のフィラーを含むことができる。50重量%未満のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の重量を基準にして40重量パーセント未満のフィラーを含むことができ;又は別の場合には、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の重量を基準にして20〜50重量パーセントのフィラーを含むことができる。
【0049】
核剤を本発明のポリプロピレン組成物中に混入させることもできる。核剤は、核形成作用を有する物質である。高結晶性ポリプロピレンの物理的性質を損なうことなく結晶核を迅速に誘導し、結晶化の開始に必要な過冷却の程度を減少させるのであれば、従来公知のあらゆる核剤が許容される。このような核剤の例としては、高融点ポリマー;有機カルボン酸又はその金属塩;芳香族スルホネート又はその金属塩;有機ホスフェート化合物又はそれらの金属塩;ジベンジリデンソルビトール又はその誘導体;ロジン酸の部分金属塩;無機粒子;イミド類;アミド類;キナクリドン類;キノン類;並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
核剤として機能する高融点ポリマーの例としては、ポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレン;ポリビニルシクロアルカン、例えばポリビニルシクロヘキサン又はポリビニルシクロペンタン;ポリ(3−メチルペンテン−1);ポリ(3−メチルブテン−1);及びポリアルケニルシランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。核剤として機能する金属塩の例としては、アルミニウムベンゾエート、アルミニウムp−t−ブチルベンゾエート、ナトリウムアジペート、ナトリウムチオフェンカルボキシレート、及びナトリウムピロールカルボキシレートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
核剤として機能する無機微粒子の例としては、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉末、アルミナ、シリカ、珪藻土、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉末、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、及び硫化モリブデンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの無機粒子は、単独で使用することもできるし、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0052】
有機リン酸の金属塩も代表的な核剤であり、これらは以下に示す化学式(1)又は(2)によって表される。
【化1】

上式中、Rは、酸素、硫黄、C〜C10炭化水素基を表し;R及びRのそれぞれは、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素又はC〜C10炭化水素基を表し;R及びRのいずれかの2つの基は結合して環構造を形成してもよく;Mは1〜3価の金属原子を表し;nは、両端の値を含めて1〜3の間の整数を表す。上式の具体例としては、ナトリウム2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’−エチリデンビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)ホスフェート、カルシウムビス[2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、カルシウムビス[2,2’−チオビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、カルシウムビス[2,2’−チオビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、マグネシウムビス[2,2’−チオビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、マグネシウムビス[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェニル)ホスフェート]、ナトリウム2,2’−ブチリデンビス(4,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’−ブチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’−t−オクチルメチレンビス(4,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’−t−オクチルメチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、カルシウムビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、マグネシウムビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、バリウムビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、ナトリウム2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム(4,4’−ジメチル−5,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−ビフェニル)ホスフェート、カルシウムビス[(4,4’−ジメチル−6,6−ジ−t−ブチル−2,2’−ビフェニル)ホスフェート]、ナトリウム2,2’−エチリデンビス(4−N−ブチル−6−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’−メチレンビス(4,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’−メチレンビス(4,6−ジエチルフェニル)ホスフェート、カリウム2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、カルシウムビス[2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、マグネシウムビス[2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、バリウムビス[2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、アルミニウムトリス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、アルミニウムトリス[2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、及び上記化合物を2種類以上含有する混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化2】

上式中、Rは、水素又はC〜C10炭化水素基を表し;Mは、1〜3価の金属原子を表し;nは、両端の値を含めて1〜3の間の整数を表す。上式の具体例としては、ナトリウムビス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウムビス(4−メチルフェニル)ホスフェート、ナトリウムビス(4−エチルフェニル)ホスフェート、ナトリウムビス(4−i−プロピルフェニル)ホスフェート、ナトリウムビス(4−t−オクチルフェニル)ホスフェート、カリウムビス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、カルシウムビス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、マグネシウムビス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、リチウムビス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウムビス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、及び上記化合物を2種類以上含有する混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
同様に核剤として好ましい有機化合物は、以下の式(3)で表される。
【化3】

上式中、Rは、水素又はC〜C10炭化水素基を表す。上式の具体例としては、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−メチル−ベンジリデンソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−エチル−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−i−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−s−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−t−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(2’,4’−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−クロロベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロロベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロロベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロロベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−クロロベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−クロロベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−クロロベンジリデン)ソルビトール、及び上記化合物を2種類以上含有する混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
他の核剤の例としては、芳香族又は脂肪族のカルボン酸の金属塩が挙げられる。例えば、核剤は、アルミニウムベンゾエート、アルミニウムp−t−ブチルベンゾエート、ナトリウムアジペート、ナトリウムチオフェンカルボキシレート、及びナトリウムピロールカルボキシレートであってもよい。
【0055】
上述の核剤は、高結晶性ポリプロピレン100重量部を基準にして0.001〜10重量部の範囲内の量で高結晶性ポリプロピレン中に混入することができる。高結晶性ポリプロピレン100重量部を基準にして0.001〜10重量部のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、核剤は、高結晶性ポリプロピレン100重量部を基準にして0.1〜3重量部の範囲内の量で高結晶性ポリプロピレン中に混入することができる。
【0056】
1種類以上の添加剤を、本発明のポリプロピレン組成物中に混入することもできる。このような添加剤としては、顔料、酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤、中和剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、ワックス、難燃剤、加工助剤、押出助剤、並びに当分野の技術の範囲内で組み合わせて又は単独で使用される他の添加剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。有効な量は、当分野において公知であり、組成物のパラメーター及びそれらがさらされる条件に依存する。
【0057】
本発明によるポリプロピレン組成物の製造方法は、(1)少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーとをカップリング剤の存在下で反応溶融ブレンドする工程と;(2)それによって、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有するポリプロピレン組成物を製造する工程とを含む。
【0058】
上記カップリング反応は、反応溶融ブレンドにより実施される。反応溶融ブレンドとしては、押出プロセス、或いは、高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーとをカップリング剤の存在下で混合し、少なくともカップリング剤と高結晶性ポリプロピレンとの間にカップリング反応を生じさせるのに十分なエネルギーを与えることが可能なあらゆる他の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。反応性ブレンドプロセスは、溶融ミキサー、例えばバーベンダー(Barbender)、バンバリー、又はファレル連続ミキサーなどの1つの容器中、或いはポリマー押出機で行うことができる。押出機という用語は、その最も広い意味を含むことを意図しており、ペレットを押出成形する装置及びシートを製造する押出機などの装置を含んでいる。同時押出によって多層シートを製造する押出機も本発明の範囲内である。
【0059】
製造中、高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーと、カップリング剤とを反応容器中、例えば押出機中に投入し、反応溶融ブレンドすることによって、本発明のポリプロピレン組成物が形成される。溶融したポリプロピレン組成物はペレット化することができ、又は直接シートに成形することもできる。高結晶性プロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーと、カップリング剤とは、約50℃〜約280℃の範囲内の温度プロファイルに曝露されうる。約50℃〜約280℃の範囲内のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、高結晶性プロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーと、カップリング剤とは約160℃〜約280℃の範囲内の温度プロファイルに曝露されることがあり;又は別の場合には、高結晶性プロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーと、カップリング剤とは約220℃〜約280℃の範囲内の温度プロファイルに曝露されることがある。
【0060】
別の場合には、高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーと、カップリング剤とが、反応混合物が通過する異なる温度プロファイルが可能な少なくとも2つのゾーン、例えば第1のゾーン及び第2のゾーンを有する反応容器中、例えば押出機中に投入される。第1のゾーンは、少なくとも高結晶性ポリプロピレン又はエラストマーのいずれかの高い方の軟化温度であり、好ましくはカップリング剤の分解温度より低い温度であると有利である場合があり、第2のゾーンは、溶融加工温度と呼ばれることもある、カップリング剤の分解に十分な温度であると有利である場合がある。高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーと、カップリング剤とは、第1のゾーン中で均一なブレンドを形成し、それによって第2のゾーン中のそれらのさらなる反応溶融ブレンドが容易になる。溶融したポリプロピレン組成物はペレット化することができ、又は直接シートに成形することもできる。
【0061】
本発明によるシートは、少なくとも1つの層が本発明のポリプロピレン組成物を含む、1つ以上の層を含むことができる。本発明のポリプロピレン組成物から、あらゆる従来のプロセスによって、例えばシート押出によって単層又は多層のシートを形成することができる。シートの厚さは、シートの形成及びシートから物品への成形に使用される設備によってのみ制限される。しかし、本発明のシートは、約0.5mm以上の厚さを有することができる。約0.5mm以上のすべての個別の値及び部分的範囲が本発明に含まれ、本明細書において開示され;例えば、本発明のシートは約3mm以上の厚さを有することができ;又は別の場合には、本発明のシートは3〜13mmの範囲内の厚さを有することができる。
【0062】
本発明のシートが2つ以上の層を含む場合、本発明のポリプロピレン組成物は1つ以上の層を構成することができる。言い換えると、本発明のポリプロピレン組成物は、ベース層、及び/又はキャップ層、及び/又はベース層とキャップ層との間の任意の層である。
【0063】
本発明による物品は、少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、カップリング剤と、場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド生成物を含む、ポリプロピレン組成物を含む。このような物品としては、レクリエーション用自動車、前端部、後端部、及びホイールウェル、全地形型車両の床、カヤック、クラス8大型トラックのウインドフェアリングなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明の成形物品は、従来の条件を使用し従来の機械を使用して、本発明のポリプロピレン組成物を含むシートを熱成形することによって製造することができる。多数の熱成形技術が使用されているが、すべては基本的には、加熱されたシートが、(1)適用された減圧の形態の空気及び/又は加圧空気によって、又は(2)機械的な延伸補助によって移動して、シートが金型中に押し付けられることで、所望の外形又は形状の物品が製造される、2つの単純なプロセスの変法である。多くの場合、これら2つのプロセスが組み合わせられることで、熱成形物品の多種多様な作製手順が得られる。例えば、本発明の範囲内の熱成形方法としては、ストレート成形、ドレープ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、プラグアシスト成形、プラグアシスト/リバースドロー成形、エアスリップ成形/プラグアシスト、エアスリップ成形、マッチツール成形(matched tool forming)、ツインシート成形などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
熱成形プロセスは、シートが軟化するまで又はたわみ始めるまでシートを加熱し、続いて真空、空気圧、及び/又は機械的な延伸補助の1つ以上を行って、加熱されたシートを、ダイと呼ばれることもある雌型中に延伸すること、雄型上に延伸すること、又は2つの金型を共に使用することで物品を形成し、形成された物品を冷却し、金型から取り出し、必要に応じて不要部分を切り落とすことを含む。
【0066】
本発明のポリプロピレン組成物のシートを熱成形するためのシート温度は約190℃以下であり;又は別の場合には約180℃以下であり;又はさらに別の場合には約175℃以下である。さらに、本発明のポリプロピレン組成物のシートを熱成形するためのシート温度は約160℃以上であり;又は別の場合には約165℃以上であり;又はさらに別の場合には約170℃以上である。
【0067】
許容される熱成形物品、特に深絞りを有する部分を有する大型物品を製造するためには、適切なポリマー溶融強度が必要となる。本発明のポリプロピレン組成物から作製されたシートは少なくとも1.5:1の延伸比を有し;又は別の場合には、本発明のポリプロピレン組成物から作製されたシートは少なくとも2:1の延伸比を有する。
【0068】
一実施形態では、本発明は、少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、カップリング剤と、場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド生成物を含むポリプロピレン組成物であって、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有するポリプロピレン組成物に関する。
【0069】
別の一実施形態において、図1を参照すると、本発明は、少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、ポリプロピレン組成物の全重量を基準にして少なくとも10重量パーセントのエラストマーと、カップリング剤としての4,4’−ジフェニルオキシドビス−スルホニルアジドと、場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド生成物を含むポリプロピレン組成物であって、(−0.0032X+1.7868)(式中、Xは、4,4’−ジフェニルオキシドビス−スルホニルアジドのppmの単位での量である)以下のメルトフローレートを有するポリプロピレン組成物に関する。
【0070】
別の一実施形態において、図1を参照すると、本発明は、少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、ポリプロピレン組成物の全重量を基準にして少なくとも50重量パーセントのエラストマーと、カップリング剤としての4,4’−ジフェニルオキシドビス−スルホニルアジドと、場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド生成物を含むポリプロピレン組成物であって、(−0.0031X+1.5613)(式中、Xは、4,4’−ジフェニルオキシドビス−スルホニルアジドのppmの単位での量である)以下のメルトフローレートを有するポリプロピレン組成物に関する。
【0071】
別の一実施形態において、図1を参照すると、本発明は、少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、ポリプロピレン組成物の全重量を基準にして少なくとも20重量パーセントのエラストマーと、カップリング剤としての4,4’−ジフェニルオキシドビス−スルホニルアジドと、場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド生成物を含むポリプロピレン組成物であって、(−0.0019X+1.127)(式中、Xは、4,4’−ジフェニルオキシドビス−スルホニルアジドのppmの単位での量である)以下のメルトフローレートを有するポリプロピレン組成物に関する。
【0072】
本発明による物品は、種々の方法によって製造することができる。このような方法は当業者には一般に公知である。このような方法としては、熱成形、回転成形、ブロー成形などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
試験方法
試験方法としては以下のものが挙げられる。
機器搭載ダーツ衝撃はASTM−D 376により求めた。
アイゾッド(Izod)衝撃は、ASTM−D 256により求めた。
曲げ弾性率はASTM−D 790Aにより求めた。
メルトフローレートは、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により求めた。
【0074】
メルトインデックス(I)は、190℃において2.16kgの荷重下でASTM D−1238−03により求めた。
【0075】
延性破壊数は、以下の手順により求めた。延性破壊数及び脆性破壊数は、以下の落下ダーツ衝撃試験により求めた。押出シートを切断して平坦な試験体を得た。これらのサンプルは80×80mmであり、約2〜3mmの範囲内の厚さを有した。シート面に対して直角にストライカーによってサンプルに衝撃を与えた。衝突時の速度を4.4+0.1m/sに設定し、これは985mmの落高で得られた。非周囲温度での試験の場合、サンプルを低温チャンバー中で少なくとも2時間保管した。一度に1つずつサンプルを取り出し、直ちに、できるだけ迅速に、好ましくはその温度のチャンバーから取り出してから5秒以内に試験を行った。
【0076】
脆性破壊数は、以下の手順により求めた。延性破壊数及び脆性破壊数は、以下の落下ダーツ衝撃試験により求めた。押出シートを切断して平坦な試験体を得た。これらのサンプルは80×80mmであり、約2〜3mmの範囲内の厚さを有した。シート面に対して直角にストライカーによってサンプルに衝撃を与えた。衝突時の速度を4.4+0.1m/sに設定し、これは985mmの落高で得られた。非周囲温度での試験の場合、サンプルを低温チャンバー中で少なくとも2時間保管した。一度に1つずつサンプルを取り出し、直ちに、できるだけ迅速に、好ましくはその温度のチャンバーから取り出してから5秒以内に試験を行った。
【実施例】
【0077】
以下の実施例によって本発明を説明するが、これらの実施例は本発明の範囲の限定を意図したものではない。本発明の実施例は、本発明によるポリプロピレン組成物が、適切な加工特性、例えば高溶融強度、並びに、改善された最終製品特性、例えば特に低温における剛性及び靱性を有することを示す。
【0078】
配合成分
ENR(商標)7380は、ザ・ダウ・ケミカルカンパニー(The Dow Chemical Company)より市販されるエチレン−ブテンコポリマーであり、ASTM−D 792によって求められた約0.870g/cmの密度、190℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238によって求められた<0.5dg/分のメルトインデックスを有する。
【0079】
インスパイア(Inspire)(登録商標)D−207は、ザ・ダウ・ケミカルカンパニーより入手可能な高結晶性ポリプロピレンホモポリマーであり、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238による測定で約2.1g/10分のメルトフローレートを有する。本発明において使用されるインスパイア(登録商標)D−207は添加剤である830ppm NA−11、500ppm I−1010、750ppm I−168、及び400ppm DHT4Aをさらに含んでおり、これらは本明細書においてさらに詳細に説明される。
【0080】
NA−11は、アムファイン・ケミカル・コーポレーション(Amfine Chemical Corp.)より市販される核剤である。
【0081】
イルガノックス(登録商標)1010(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)(I−1010)は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレイテッド(Ciba Specialty Chemicals,Inc.)より市販されるフェノール系酸化防止剤である。
【0082】
イルガフォス(登録商標)168(トリス(2,4−ジtert−ブチルフェニル)ホスフェート)(I−168)は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレイテッドより市販される加工安定剤である。
【0083】
ジェットフィル(JETFIL)700Cは、英国のリオ・ティントPLC(Rio Tinto PLC)より市販される鉱物タルクである。
【0084】
DHT4Aは、協和化学工業株式会社より市販される安定剤である。
【0085】
4,4’−ジフェニルオキシドビス−スルホニルアジド(BSA)は、ダイナミット・ノーベル(Dynamit Nobel)より市販されるカップリング剤である。
【0086】
反応溶融ブレンドプロセス及び設備
本発明による反応溶融ブレンドは、3つのダムを有し2.5インチ ファレル(Farrel)CP−250連続ミキサーを使用して行い、一軸スクリュー押出機及びストランドカッターに供給される。このミキサーには#7/15 ローターを取り付け、押出機には6孔(孔径3.5mm)ストランドダイを取り付けた。ファレルCP−250連続ミキサーの概要はさらに表IIIに開示している。
【0087】
反応溶融ブレンドプロセス中、表Iに示す配合成分をファレルCP−250連続ミキサー中に投入し、それぞれが存在する状態で溶融混合することによって本発明のポリプロピレン組成物、すなわち本発明の実施例E1〜E8を作製した。溶融したポリプロピレン組成物のストランドを、16インチ水浴と、十分な冷却及び乾燥が得られるように適合させたバーリン(Berlyn)エアナイフとでさらに処理した。これらのストランドを切断しシェール(Scheer)SGS 100Eペレタイザーでペレット化した。反応溶融ブレンド条件を表IVに示す。本発明の各実施例(E1〜E8)について、機器搭載ダーツ衝撃、アイゾッド衝撃、曲げ弾性率、メルトフローレート、延性破壊数、及び脆性破壊数を試験し、それらの結果を表IIに示している。
【0088】
シート製造プロセス及び設備
本発明のポリプロピレン組成物、すなわち本発明の実施例E1〜E8のシート押出は、多位置シートライン上で行った。主要シート押出設備は、長さ対直径比が30:1の直径2.5インチHPM押出機、マーグ・エクストレックス(Maag Extrex)(登録商標)36/36ギヤポンプ、及びカミルTGデータ収集及び制御システム(Camile TG Data Acquisition and Control System)を備えた。上記押出機は水冷能力を有した。この押出機は、鋳造青銅の電気作動ヒーターをさらに備えた。主押出機は、高性能ダブルウェーブスクリューを備えた。主押出機は、ベントを閉じて運転した。ベルリンガー(Beringer)EA−20スクリーンチェンジャーを押出機下流に配置することで、不純物を濾過し、押出機上のバック圧力を増加させた。40/60/80/125メッシュ構成のスクリーンパックをスクリーンチェンジャー内に配置した。ポリマー溶融物は、濾過された後、長さ25インチの移送ラインを通ってギヤポンプまで送られた。このギヤポンプは、押出機のサージをなくし、一定排出速度で送達する容積式装置であり、そのため均一なシート厚さで製造できる。主押出機によって、溶融ポリマーをクローレン・コーポレーション(Cloeren Corporation)製造の同時押出フィードブロックに送った。溶融ポリマーを、幅26インチのシート押出ダイに送った。この押出シートダイは、本体中に10個の温度制御ゾーンを備えた。押出速度は200lb/nであった。主押出機、ギヤポンプ、移送ライン、フィードブロック同時押出機、及び押出シートダイの温度設定は、表V及びVIにさらに開示した。
【0089】
熱成形プロセス及び設備
次に、シートサンプルを、ZMDインターナショナル・モデル(ZMD International Model)V223シャトル熱成形機上で熱成形した。各シートを、ZDM熱成形機のクランプフレーム中に配置し、4つすべての辺上にしっかりと取り付けた。次に、取り付けられたシートをZMD熱成形機の加熱ステーション中に割出し、そこでシートを石英赤外放射ヒーターによって加熱した。シートは赤外線によって加熱される。シート温度が上昇するにつれて、最初に、図5に概略的に示されるように、平坦なシートがその自重によってたわみ始める。たわみの量は、設備の構成によって制限され、最終的には最終部品の品質に制限される。
【0090】
オーブンの中央でシートのたわみを検出するように配置した赤外プロファイリングスキャナー(ライトカーテン)を使用して、クランプフレーム中の初期位置からのシートのたわみの垂直距離を測定した。初期位置の下方約2.25インチから、初期位置から約4.25インチまでシートがたわむのに要する時間を記録した。中央で測定したシートの垂直距離の変化を、その高さの変化に要する時間で割ることによって、たわみ速度を求めた。たわみが初期位置から約4.25インチに到達したときに、シートをオーブンから取り出し、次にシートを成形ステーションに移動させた。赤外パイロメーターを使用して、熱サイクルの終了時にシートの底部側のシート表面温度を測定した。加熱したシートをオーブンから取り出して成形ステーションに移動させた後、真空箱を下側からシートに接触させた。真空を適用してシートを真空箱中に引き込み、シートを予備延伸させた。予備延伸したシートの上面まで金型を下げ、真空を適用して、延伸されたシートを金型に引き込み、同時に、真空箱からは真空を解放した。部品が形成され、これを冷却した。次にクランプフレームから取り外した。
【0091】
熱成形評価の結果を表VIIに示す。加熱時間は、シートをオーブンに入れてから、シートが初期位置より4.25インチ下にたわむまでに要する時間とした。シートの加熱サイクルが完了し、オーブンから成形ステーション中に割出した後で、赤外パイロメーターを使用してシート中央の底部側から表面温度を測定した。たわみ時間は、シートが、選択した距離、この場合2.25から4.25までたわむのに要する時間とした。たわみ速度は、この垂直距離をたわみ時間で割った値とした。
【0092】
本発明は、本発明の意図及び本質的な特性から逸脱することなく他の形態で具体化することができ、従って、以上の明細書ではなく、本発明の範囲を示す添付の特許請求の範囲を参照すべきである。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン組成物であって、
少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと;
エラストマーと;
カップリング剤と;
場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド生成物を含み;
230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有する、ポリプロピレン組成物。
【請求項2】
230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して約0.25/10分〜約0.65g/10分の範囲内のメルトフローレートを有する、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項3】
ASTM−D 790Aにより測定して少なくとも300,000psiの曲げ弾性率を有する、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項4】
ASTM−D 790Aにより測定して少なくとも400,000psiの曲げ弾性率を有する、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項5】
前記エラストマーがエチレン/α−オレフィンコポリマーである、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項6】
前記α−オレフィンが、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテンからなる群より選択される、請求項5に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項7】
前記エラストマーがエチレン/1−ブテンである、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項8】
前記ポリプロピレン組成物の重量を基準にして10〜20重量パーセントの前記エラストマーを含む、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項9】
前記フィラーが有機フィラー又は無機フィラーである、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項10】
前記無機フィラーが、タルク、マイカ、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、天然及び合成のクレー及びそれらの有機改質誘導体、シリケートなどからなる群より選択される、請求項10に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項11】
前記カップリング剤が、1,5−ペンタンビス(スルホニルアジド)、1,8−オクタンビス(スルホニルアジド)、1,10−デカンビス(スルホニルアジド)、1,10−オクタデカンビス(スルホニルアジド)、1−オクチル−2,4,6−ベンゼントリス(スルホニルアジド)、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、1,6−ビス(4’−スルホンアジドフェニル)ヘキサン、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、オキシ−ビス(4−スルホニルアジドベンゼン)、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、4,4’−ビス(スルホニルアジド)ビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、ビス(4−スルホニルアジドフェニル)メタン、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項12】
前記高結晶性ポリプロピレン100万重量部当たり約200〜1000重量部の前記カップリング剤を含む、請求項11に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項13】
核剤をさらに含む、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項14】
ポリプロピレン組成物の製造方法であって、
少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーとを、カップリング剤の存在下で反応溶融ブレンドする工程と;
それによって、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有する前記ポリプロピレン組成物を製造する工程とを含む、製造方法。
【請求項15】
前記ポリプロピレン組成物が、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して約0.25/10分〜約0.65g/10分の範囲内のメルトフローレートを有する、請求項14に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項16】
前記ポリプロピレン組成物が、ASTM−D 790Aにより測定して少なくとも300,000psiの曲げ弾性率を有する、請求項14に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項17】
前記ポリプロピレン組成物が、ASTM−D 790Aにより測定して少なくとも400,000psiの曲げ弾性率を有する、請求項14に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項18】
前記エラストマーがエチレン/α−オレフィンコポリマーである、請求項14に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項19】
前記α−オレフィンが、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテンからなる群より選択される、請求項18に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項20】
前記エラストマーがエチレン/1−ブテンである、請求項14に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項21】
前記ポリプロピレン組成物の重量を基準にして10〜20重量パーセントの前記エラストマーを含む、請求項14に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項22】
前記フィラーが有機フィラー又は無機フィラーである、請求項14に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項23】
前記無機フィラーが、タルク、マイカ、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、天然及び合成のクレー及びそれらの有機改質誘導体、シリケートなどからなる群より選択される、請求項22に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項24】
前記カップリング剤が、1,5−ペンタンビス(スルホニルアジド)、1,8−オクタンビス(スルホニルアジド)、1,10−デカンビス(スルホニルアジド)、1,10−オクタデカンビス(スルホニルアジド)、1−オクチル−2,4,6−ベンゼントリス(スルホニルアジド)、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、1,6−ビス(4’−スルホンアジドフェニル)ヘキサン、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、オキシ−ビス(4−スルホニルアジドベンゼン)、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、4,4’−ビス(スルホニルアジド)ビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、ビス(4−スルホニルアジドフェニル)メタン、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項14に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項25】
前記ポリプロピレン組成物が、前記高結晶性ポリプロピレン100万重量部当たり約200〜1000重量部の前記カップリング剤を含む、請求項14に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項26】
前記ポリプロピレン組成物が核剤をさらに含む、請求項14に記載のポリプロピレン組成物の製造方法。
【請求項27】
ポリプロピレン組成物の熱成形性を改善する方法であって、
少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーとを、カップリング剤の存在下で反応溶融ブレンドする工程と;
それによって、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有する、改善された熱成形可能なポリプロピレン組成物を製造する工程とを含む、方法。
【請求項28】
ポリプロピレン組成物のブロー成形プロセスを改善する方法であって、
少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーとを、カップリング剤の存在下で反応溶融ブレンドする工程と;
それによって、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有する、改善されたポリプロピレン組成物を製造する工程とを含む、方法
【請求項29】
ポリプロピレン組成物の回転成形プロセスを改善する方法であって、
少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーとを、カップリング剤の存在下で反応溶融ブレンドする工程と;
それによって、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有する、改善されたポリプロピレン組成物を製造する工程とを含む、方法。
【請求項30】
少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと;
エラストマーと;
カップリング剤と;
場合によりフィラーとの反応溶融ブレンド生成物を含む、ポリプロピレン組成物を含む物品であって;
前記ポリプロピレン組成物が、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有する、物品。
【請求項31】
物品の製造方法であって、
少なくとも64%の結晶化度を有する高結晶性ポリプロピレンと、エラストマーと、場合によりフィラーとを、カップリング剤の存在下で反応溶融ブレンドする工程と;
それによって、230℃において2.16kgの荷重下でASTM−D 1238により測定して1g/10分未満の範囲内のメルトフローレートを有する改善されたポリプロピレン組成物を製造する工程と;
前記ポリプロピレン組成物から物品を形成する工程とを含む、方法。
【請求項32】
前記ポリプロピレン組成物が熱成形プロセスにより物品に成形される、請求項30に記載の物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−523762(P2010−523762A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502164(P2010−502164)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/055057
【国際公開番号】WO2008/121464
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】