説明

ポリペプチド配合物とその製造法、使用法、および分析法

本発明の実施の形態は、ポリペプチド配合物とその製造法、使用法、および分析法を含む。本発明の実施の形態は、安定化されたポリペプチド配合物、例えば、糖尿病の管理に用いるグルコースセンサに使用できる安定なグルコースオキシダーゼ配合物を含む。本発明のもう一つの実施の形態は、安定化されたポリペプチド配合物、例えば、糖尿病の治療に使用できる安定なインスリン配合物中における、非イオン界面活性剤濃度の測定法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、そのいずれの内容も本件に引用して援用する、米国特許出願第10/989,038号、米国特許出願第10/861,837号、および米国特許出願第10/273,767号に関連する。
【0002】
本発明は一般に、糖尿病の治療および管理などに用いられるポリペプチド配合物に関する。
【背景技術】
【0003】
最近の技術においては、診断と診療の両方で用いられる様々な生物活性を持つポリペプチド類が十分な量で利用できるようになってきた。しかし多くのポリペプチド類は、脱アミド化、凝集、変性など様々な化学的および物理的作用によって生物活性を失い易い。このため、組成物の同定と分析、およびこれらの試剤の安定化および/または安定性の評価に使用できる方法は、これらの利点を最大限に引き出すためには必須である。
【0004】
ポリペプチド配合物を、それが高温および/または機械的応力に曝されるデバイスで使用するには、その試剤が安定であることは特に重要である。例えば、安定なグルコースオキシダーゼ(GOx)配合物は、糖尿病の治療技術において、グルコース分析物センサおよび関連デバイスに用いられる。同様に連続注入装置では、治療剤を含む液体を、貯蔵容器から、一般に皮下、静脈内、または腹膜内補給部へポンプで送る。例えば、安定なインスリン配合物は、糖尿病の治療において、連続注入装置および関連デバイスに用いられる。このようなポリペプチド類から成る配合物は、使用前に長期間保存しておいても、また使用の際に患者の体温や運動に曝されてもその活性を保っていなければならない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施の形態は、ポリペプチド配合物とその製造法、使用法、および分析法を提示する。
【0006】
本発明の実施の形態の一つは、水溶液にクロマトグラフ分離工程を行い、次に、水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度を求めるため、蒸発光散乱法を用いてこの溶液を分析する、水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度測定法である。本発明のある実施の形態では、非イオン界面活性剤を水溶液から抽出後、クロマトグラフ分離工程の前に濃縮する。この方法では、クロマトグラフ分離工程に逆相クロマトグラフ法を含むことができる。必要に応じて、このクロマトグラフ分離工程は高圧(high pressure)液体クロマトグラフ法を含む。
【0007】
発明の関連する実施の形態は、まず、非イオン界面活性剤を水溶液から抽出してこれを濃縮し、次に、水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度を求めるため、蒸発光散乱検出器を接続した高速液体クロマトグラフを用いて、この濃縮抽出液を分析することによる、水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度測定法である。本発明のある実施の形態では、高速液体クロマトグラフは、水溶液の成分をその極性および/または無極性特性に基づいて分離するマトリックスを含むカラムを用いる。
【0008】
水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度を求めるこれらの方法のある実施の形態において、非イオン界面活性剤はポロキサマーである。必要に応じて、水溶液中の非イオン界面活性剤は、ポロキサマー171、トリトン(Triton)X−100、トリトンX−405、トリトンBRIJ−35、ツイーン(Tween)20、またはツイーン80である。この方法で分析する水溶液は、非イオン界面活性剤の他にも様々な成分を含むことができる。本発明のある実施の形態では、水溶液は薬学的に許容される組成物を含む。必要に応じて水溶液はインスリンなどの治療用ポリペプチドを含む。典型的に、水溶液中のこれらの非イオン界面活性剤の濃度は臨界ミセル濃度以下である。本発明のある実施の形態では、水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度は約0.1〜約100ppm(百万分率)、必要に応じて約1〜約20ppmである。
【0009】
本発明のもう一つの実施の形態は、約90〜約110KU/mlのグルコースオキシダーゼと、約0.12〜約0.15(w/v)%のソルビン酸カリウムと、約0.01Mのリン酸カリウム緩衝液とを含む、非常に安定なグルコースオキシダーゼ組成物である。本発明のこの実施の形態において、グルコースオキシダーゼはプラスチック製容器中で少なくとも6ヶ月間は安定である。ある実施の形態では、グルコースオキシダーゼの含有濃度は約100KU/mlである。典型的に、ソルビン酸カリウムの含有濃度は約0.15(w/v)%である。
【0010】
本発明の関連する実施の形態は、先ずグルコースオキシダーゼ希薄溶液を調製し、次にこのグルコースオキシダーゼ溶液を濃縮して、生成する濃縮溶液が、約90〜約110KU/mlの濃度のグルコースオキシダーゼと、0.12〜約0.18(w/v)%の濃度のソルビン酸カリウムと、約0.01Mの濃度のリン酸カリウム緩衝液とを含むようにした、プラスチック容器中で少なくとも6ヶ月間は安定なグルコースオキシダーゼ組成物の製造法である。本発明の実施の形態では、グルコースオキシダーゼ溶液を一般に、固相抽出などの方法、またはクロマトグラフ法などの方法で濃縮する。
【0011】
本発明のもう一つの関連する実施の形態は、哺乳動物の体内に埋込むためのグルコースセンサ装置の製造法であって、この製造法は、ベース層を準備する工程と、ベース層上に伝導層を形成する工程と、伝導層上に分析物感知層を形成する工程と、必要に応じて分析物感知層上にタンパク質層を形成する工程と、分析物感知層または必要に応じたタンパク質層の上に接着促進層を形成する工程と、接着促進層上に配置した分析物調節層を形成する工程と、次に、分析物調節層の少なくとも一部の上に配置したカバー層を形成する工程と、を含み、伝導層は作用電極を含み、分析物感知層は、約90〜約110KU/mlの濃度のグルコースオキシダーゼと、約0.12〜約0.18(w/v)%の濃度のソルビン酸カリウムと、約0.01Mの濃度のリン酸カリウム緩衝液とを含む組成物を用いて形成し、分析物調節層は、それを通る分析物の拡散を調節する組成物を含み、カバー層は、分析物調節層の少なくとも一部の上に開口部を含んでいる。本発明の更にもう一つの実施の形態は、この方法で製作したセンサである。
【0012】
本発明の実施の形態のその他の目的、特徴、および長所は、当業者には以下の詳細な記述より明らかとなろう。しかし、詳細な記述および具体例は本発明の実施の形態を示しているが、これは説明のためであって、限定するものではないことを理解されたい。本発明の意図から外れることなく、本発明の範囲内で多くの変更および変形を行うことができるが、このような変形も全て本発明に含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示されるこの反応には、水中における、グルコースオキシダーゼ(GOx)とグルコースと酸素が関与している。反応の還元側では、2つのプロトンと電子がβ−D−グルコースから酵素へ移動してd−グルコノラクトンが生じる。反応の酸化側では、酵素が分子状酸素で酸化されて、過酸化水素が生じる。次に、d−グルコノラクトンは水と反応してラクトン環が加水分解し、グルコン酸を生じる。本発明のある電気化学的センサでは、この反応より生じた過酸化水素は作用電極で酸化される(H22→2H++O2+2e-)。
【0014】
特に別に定義されなければ、使用されている全ての技術用語、表記、およびその他の科学用語または専門用語は、本発明のこれらの実施の形態の属する技術の当業者に一般的に理解されている意味を持つものとする。場合により、明瞭にするため、および/または参照を容易にするため、一般的に理解された意味を持つ用語を定義することがあるが、これらの定義の内容は、当該技術で一般的に理解されているものとかけ離れたものを示しているとは必ずしも解釈されるべきではない。記述または参照されている技術および方法の多くは良く理解されており、当業者により従来の方法体系を用いて一般的に採用されている。特に別途記載のない限り、適当であるため、市販のキットおよび試薬を用いる方法が、製造者の定めたプロトコルおよび/またはパラメータに従って一般に行われている。
【0015】
開示および請求されているような本発明の目的のため、以下の用語および略語は次の意味を持つ。
【0016】
“ポリペプチド”および“タンパク質”とは互換的に使用でき、所望の生物活性を持つ、天然、合成、および組換えポリペプチド類(例えば、インスリンポリペプチド類)を包含し、例えば、全長天然ポリペプチドと比較して、削除、置換、または変更されたアミノ酸配列を持つポリペプチド類とタンパク質、または生物学的に活性なそのフラグメントなどが挙げられる。
【0017】
“安定性”とは、インスリンおよびその類似物などのポリペプチド類の配合物の、物理的および化学的安定性を指す。タンパク質分子が凝集して、より高次のポリマー、更には沈殿物が生じることで、タンパク質配合物は物理的に不安定となる。“安定な”配合物とは、タンパク質の凝集が適度に制御され、時間と共に不都合なほどに大きくならないものである。本発明のある実施の形態において、ポリペプチド配合物は、凝集の程度が、開始物質に見られた凝集の約1、2、3、4、5、10、15、20、25、または30%以内であれば、一定の期間に亘って安定であるといえる。本発明のある実施の形態において、ポリペプチド配合物は、ポリペプチドの生物活性が、開始物質に見られた活性の少なくとも約99、95、90、85、80、75、70、65、60、55、または50%であれば、一定の期間に亘って安定であるといえる。物理的安定性は、試料の見かけの光の減衰(吸光度または光学濃度)の測定など、当該技術で公知の方法で評価することができる。このような光の減衰の測定値は配合物の濁り度に関係する。濁り度は、配合物中のタンパク質または錯体の凝集または沈殿によって生じる。当該技術では、物理的安定性を評価する他の方法も知られている。
【0018】
“モノマー系ヒトインスリン類似物”、“モノマー系インスリン類似物”、および“ヒトインスリン類似物”は当該技術において公知であって、一般にヒトインスリンの即効性類似物を指し、例えば、B28位のProが、Asp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換わり、またB29位がLysであり、あるいはProで置き換わったヒトインスリン;AlaB26ヒトインスリン、des(B28−B30)ヒトインスリン;および、des(B27)ヒトインスリンが挙げられる。このようなモノマー系インスリン類似物は、米国特許第5,514,646号、国際公開第99/64598号、国際公開第99/6459A2号、および国際公開第96/10417A1号に開示されている。ヒトインスリンの構造は、Nature 187,483(1960)に開示されている。ヒトインスリンの調査、開発、および組換え製品に関するレビューは、Science 219, 632-637 (1983)に示されている。更に、米国特許第4,652,525号(ラットインスリン)、および米国特許第4,431,740号(ヒトインスリン)を参照されたい。
【0019】
“投与する”とは、疾病または健康状態の治療のため、本発明の配合物をそれを必要とする患者の体内へ導入することを意味する。
【0020】
“連続注入装置”とは、長期に亘って非経口的に患者に液体を連続的に投与するデバイス、あるいは、液体投与時毎に新たに投与部位を設けることなく、長期に亘って非経口的に患者に液体を間欠的に投与するデバイスを指す。液体は1つ以上の治療薬を含むものである。デバイスは、注入前の液体を溜めておく貯蔵器と、ポンプと、カテーテル、またはポンプを挟んで貯蔵器と投与部位との間を繋ぐ管系と、ポンプを調節する制御素子とを含む。このデバイスは埋込むよう(一般に、皮下に)構成されている。このような場合、一般にインスリン貯蔵器は経皮的な再充填に適したものとする。デバイスを埋込むと、明らかに貯蔵器の内容物は体温となり、患者の体の動きの影響を受ける。
【0021】
“治療”とは、インスリン(または他のポリペプチド)の投与が必要な糖尿病または高血糖症などの病状を持つ患者、あるいは、その他の健康状態にある患者への、症状およびこれらの健康状態の合併症の治癒または緩和を目的とした、管理および処置を指す。治療には、症状または合併症の発症の予防、症状または合併症の緩和、あるいは、疾病、健康状態、または疾患の除去のための本発明の配合物の投与が含まれる。
【0022】
本発明のある実施の形態には治療用配合物が含まれる。治療用配合物は典型的にキャリアを含む。適当なキャリアとその配合物は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., 1980, Mack Publishing Co., edited by Osol et al. に記載されている。一般に、キャリアに適量の薬学的許容塩を加えて配合物を等張性とする。キャリアの例としては、塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられる。キャリアのpHは典型的に約5〜約8、より典型的には約7.4〜約7.8である。例えば投与経路や投与される活性試剤の濃度に応じて、特定のキャリアがより望ましいことは当業者には明らかであろう。キャリアは凍結乾燥配合物または水溶液の形であっても良い。許容可能なキャリア、賦形剤、または安定化剤は、典型的に、用量および使用した濃度において細胞および/またはレシピエントに対して無毒なもので、リン酸、クエン酸、およびその他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンなどの酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム=クロリド、ヘキサメトニウム(hexamethonium)=クロリド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン類、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基以下)のポリペプチド類;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸類;グルコース、マンノース、またはデキストリン類などの、単糖類、二糖類、およびその他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩を生成する対イオン類;および/または、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン/アニオン界面活性剤が挙げられる。
【0023】
“フェノール系防腐剤”とは典型的に、クロロクレゾール、m−クレゾール、フェノール、またはこれらの混合物などの、本技術で使用可能なフェノール系防腐剤を指す。
【0024】
“等張性試剤”は、生理学的に許容される化合物であり、配合物に適当な張性を与えて、配合物に触れている細胞膜を通過する実質的な水の流れを防ぐ化合物である。グリセリンなどの化合物が公知の濃度でこの目的のため一般的に用いられている。他の使用可能な等張性試剤としては、塩類(例えば、塩化ナトリウム)、デキストロース、およびラクトースが挙げられる。
【0025】
本発明の実施の形態は、以下の段落で詳細に検討する。
【0026】
I.水性ポリペプチド配合物中の非イオン界面活性剤濃度の測定法
ポロキサマー類などの非イオン界面活性剤は、タンパク質を材料とする配合物(例えば、治療用配合物)の賦形剤としてしばしば用いられ、優れた安定性を与えることができる。例えばポロキサマー171は、インスリン配合物(例えば、U400ヒト組換えインスリン配合物)の賦形剤として用いることができる。この場合、これらの種類の界面活性剤は典型的に、臨界ミセル濃度(CMC)以下、しばしばppmオーダーの濃度で使用される。このような配合物中でのポロキサマー171の濃度は典型的にトレースレベル(例えば、約10ppm)である。
【0027】
ポリペプチド配合物中の成分は通常、例えばバッチ間の一貫性を保つため、製造の際に試験する。しかしこれらの配合物に典型的に用いられる非イオン界面活性剤は反応性の化学官能基や発色団を含まないため、ppmの濃度での定量が難しい。標準的な方法は、メチレンブルー顕色や、バリウム錯体として沈殿させた後、重量測定で定量するものである。不都合なことに、タンパク質とペプチドの存在がしばしば界面活性剤の定量を妨害する。
【0028】
本発明の実施の形態は、生物活性を持つポリペプチド類の不安定化を防止するよう設計されたこのような配合物中の、1つ以上の非イオン界面活性剤の濃度を求める方法と材料を提示する。本発明の具体的な実施の形態は、インスリンとその類似物、特に変性し易くまた凝集体を生成し易いポリペプチドの安定化に関するものであるが、本発明は一般に全てのタンパク質とポリペプチド医薬品に有用である。本発明の実施での使用に適したポリペプチド配合物としては、例えば、インスリンとその類似物(例えば、LysB28ProB29ヒトインスリンおよびAspB28ヒトインスリン)、インターロイキン類(例えば、IL−2とその類似物)、β−インターフェロンを含むインターフェロン類(IFN−βとその類似物、例えば、IFN−βser17)(その内容を本件に引用して援用する、欧州特許第EPO185459B1号に記載のもの)、hGH、および溶液中で不安定化し易いその他のポリペプチド類が挙げられる。
【0029】
本発明の実施の形態は、ppmレベルの非イオン界面活性剤の定量法として、クロマトグラフに接続した蒸発光散乱検出器を用いた、信頼性が高く特徴的な方法を提示する。この方法は例えば、治療用タンパク質の存在下での、これらの化合物の濃度測定に用いることができる。実例的な実施の形態では、この方法は、抽出操作と、それに続く、水溶液中のポロキサマー171の含有量を求めるための高速液体クロマトグラフおよび蒸発光散乱分析を含むことができる。以下の実施例1は、例としてインスリン配合物中のppm濃度のポロキサマー171を定量する、代表的な手順を提示している。以下の実施例2は、実施例1のポロキサマー171の測定に用いた方法が、様々な非イオン界面活性剤の分析に使用できることを示している。
【0030】
本発明の実施の形態で分析可能な非イオン界面活性剤の一群はポロキサマー類である。ポロキサマー類は、界面活性剤、乳化剤、および薬学用賦形剤として広く使用されている。一部のポロキサマー類は、タンパク質安定剤(例えば、Izutsu et al.,Pharm. Res. 12, 1995, 838-843 を参照)、コーティング剤(例えば、 De Jaeghere et al., Mathiowitz, E. (Ed.), Encyclopedia of Controlled Drug Delivery, vol. 2. Wiley, New York, 1999, 641 664;および De Jaeghere et al., Proc. Int. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 26, 1999, 709-710 を参照)、微小球系の立体構造安定剤(例えば、Mehnert et al., Adv. Drug Del. Rev. 47, 2001, 165-196 を参照)、多剤耐性細胞のための感作物質(sensitizers)(例えば、Kabanov AV, Alakhov Crit Rev Ther Drug Carrier Syst. 2002;19(1):1-72 を参照)、および抗原性補強剤(例えば、R. Bomford, Immunology 44,1981, 187-192; R. Hunter et al., J. Immunol. 127 1981, 1244-1250; R.L. Hunter et al., J. Immunol. 133, 1984, 3167-3175; R.L. Hunter et al., Scand. J. Immunol. 23, 1986, 287-300; R. Hunter et al., Vaccine 9, 1991, 250-256; R.L. Hunter et al., AIDS Res. Hum. Retroviruses 10, 1994, pp. S95-S98; A.C. Allison et al., J. Immunol. Methods 95, 1986, 157-168; A.C. Allison et al., Semin. Immunol. 2, 1990, 369-374; N.E. Byars et al., Vaccine 5, 1987, 223-228; Y. Ke et al.,Cell Immunol. 176, 1997, 113-121; P. Millet et al., Vaccine 10, 1992, 547-550; および K. Takayama et al., Vaccine 9, 1991, 257-265 を参照)として用いられる。更にこれらをインスリン配合物に加えてインスリンが疎水性表面へ吸着するのを防ぎ、またインスリンの凝集を少なくして、インスリンの長期安定性を高める(例えば、Thurow H, Geisen K., Diabetologia, 27 (2), 1984, 212-8;および Walter HM et al.,Diabetes Res, 13(2), 1990, 75-7 を参照)。
【0031】
ポロキサマー類の検出および化学的特定については、静止(static)二次イオン質量スペクトル法(SSIMS)(例えば、D. Briggs, A. Brown, J.C. Vickerman, Handbook of Secondary Ion Mass Spectrometry, Wiley, New York, 1989 を参照)、X線光電子分光法(XPS)(例えば、P. D. Scholes et al., Journal of Controlled Release, Volume 59, Issue 3, 2 June 1999, 261-278 を参照)、ゲル浸透クロマトグラフ法(例えば、Q. Wang et al., Eur. Polym. J., Vol.. 29, No.5,1.993, 665-669 を参照)、サイズ排除クロマトグラフ法(例えば、B. Erlandsson et al., Journal of Pharmaceutical and Biomedical分析, 31, 2003, 845-858 を参照)、FT−ラマンおよびFTIR分光法(例えば、Confirmational structure of triblock copolymers by FT-Raman and FTIR spectroscopy, Journal of Colloid and Interface Science, 209, 1999, 368-373 を参照)などを用いたものが述べられている。タカツ(Takats)らは、ポロキサマー類を分析するための質量分析法を報告している(例えば、Z. Takats et al., Rapid Commun. Mass Spectrum, 15, 2001, 805-810 を参照)。干渉を受ける比色法も報告されている(例えば、B.M. Milwidsky, Detergent分析: a handbook for cost-effective quality control, George Godwin, London, 1982, 100 を参照)。非イオン界面活性剤とその代謝産物は、LC−MS(例えば、Antonio Di Corcia, Journal of Chromatography A, Volume 794, Issues 1-2, 23,1998,165-185;および K. Levsen et al., Journal of Chromatography A, Volume 323, Issue 1,17,1985,135-141 を参照)、液体クロマトグラフ−蛍光法(例えば、M. Zanette et al., Journal of Chromatography A, 756,1996,159-174 を参照)、テンサメトリー(A. Szymanski et al., Analyst, 121, 1996, 1897-1901)、および分光測光法(例えば、Toel et al., Talanta, Vol. 29, 1982, 103-106;および N. H. Anderson et al., Analyst, Vol. 107, 1982, 836-838 を参照)を用いて分析されている。
【0032】
ポロキサマー類および非イオン界面活性剤について公表されている分析法はいずれも干渉され易く、複雑で高価な装置類が必要である。本発明の実施の形態は、簡単な抽出法と、蒸発光散乱検出器を接続したHPLCとを組み合わせて用いることで、これらの問題点を解決した。本発明には多くの実施の形態がある。その一つは、水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度測定法であって、まず、水溶液をクロマトグラフ分離工程にかけ、次に、水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度が測定できる方法で、蒸発光散乱を用いてこの水溶液を分析するものである。“界面活性剤”とは、それを溶かした液体の表面張力が低下する物質を指し、“非イオン”(アニオン)とは、分子が水溶液中でイオン化しないタイプの化合物を指す。クロマトグラフ分離工程は、非イオン界面活性剤の濃度を求めるため、蒸発光散乱を利用できるまで十分に配合物中の非イオン界面活性剤を分ける分離工程と定義する。本発明の実施の形態において、クロマトグラフ分離工程は、液体を固定相に沿って、または固定相中を通すことで、水溶液中の化合物の混合物をその各々の成分に分離する工程を含む。このような分離工程において、液体中の混合物のある成分は、他の成分と異なるように固定相へ吸着または溶解する傾向がある。このため、いくつかの成分は、固定相との相互作用に応じて異なる速度で移動する。
【0033】
本発明のある実施の形態では、非イオン界面活性剤を水溶液から抽出した後、クロマトグラフ分離工程の前に濃縮する。本発明の例示的な実施の形態は、水溶液から非イオン界面活性剤を抽出し、この抽出液を濃縮した後に、水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度を求めるよう蒸発光散乱検出器を接続した高速液体クロマトグラフ法により、濃縮した非イオン界面活性剤を分析する、水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度の測定法である。この方法では、クロマトグラフ分離工程は逆相クロマトグラフ法を含んでいても良い。本発明のある実施の形態では、高速液体クロマトグラフは、水溶液の成分をその極性および/または非極性特性に基づいて分離するカラムマトリックスを使用する。必要に応じてこのようなマトリックスは、C8化合物を用いる。本発明の実施の形態は、異なる様々な配合物中の非イオン界面活性剤の濃度の分析に用いることができる。ある実施の形態では、水溶液は薬学的に許容可能な組成物である。本発明のもう一つの実施の形態では、水溶液は治療用のポリペプチド、例えばインスリンを含む。
【0034】
本発明の実施の形態は、対象化合物の選択的分離に高圧または高速液体クロマトグラフ法を用いる。液体クロマトグラフ法は、互いに接した2つの相、固相と液相を用いる方法である。典型的な液体クロマトグラフ装置は、5つの基本的なパーツである、送液ポンプ、注入器、カラム(固定相)、検出器、および記録装置(コンピュータ)から成る。高圧または高速液体クロマトグラフ法はよく知られており、用途の広いクロマトグラフ法の一つである(例えば、米国特許第4,045,343号、米国特許第4,116,837号、米国特許第5,977,297号、および米国特許第6,679,989号を参照)。
【0035】
本発明の実施の形態では、蒸発光散乱法を利用する。蒸発光散乱検出器(ELSD)は、揮発性液体の流れ(溶媒)に溶解した不揮発性溶質に対する感度の高い液体クロマトグラフ検出器である。ELSDは典型的に3段階で作動する。まず、圧縮空気または不活性ガス(窒素など)を噴射させるベンチュリ噴射で溶媒または溶媒/溶質溶液を霧化し、液滴の分散物とすることで溶媒の噴霧を行う。次に、霧化したスプレーを蒸発チャンバの下流方向へ送り装置の後方から排気を排出する、噴霧器ガス流の作用下(送風機を用いても良い)で、霧化スプレーを蒸発チャンバに通す。第3の段階は検出である。蒸発チャンバの底から、ガス流に対して垂直方向にコリメート光を装置内に通す。光源の反対側に光トラップを置いて装置筐体内側での内反射を除く。純溶媒が蒸発する場合には、その蒸気のみが光路を通過するため散乱される光の量は少なく、一定である。不揮発性溶質が存在すると粒子雲が生じ、これが光路を通過して光を散乱する。散乱光により、検出器に設けられた光電子増倍管または他の感光性デバイスから信号応答が発生する。検出される光の量は、溶質の濃度と粒度分布の両方に依存する。
【0036】
蒸発光散乱検出器(ELSD)は、化合物を定量するための高速液体クロマトグラフ法(HPLC)と組み合わせて用いると有用である。UV吸光度検出器とは異なり、ELSDの応答は被験化合物中の発色団の存在に左右されない。発色団は化合物毎に異なり、UV吸光度検出器は異なる発色団に対してそれぞれ対応する。このため、多様な化合物の分析にUV吸光度検出器を用いる場合には、不便なことに、多数の標準が必要である。更に、化学品リストに記載されている化合物の多くは発色団を持たないため、これらの化合物のUV吸光度による検出は難しい。前述の分析技術の欠点に関わる背景については更に、本件に引用して援用する、米国特許第5,670,054号を参照されたい。ELSDに関する情報は更に、米国特許第5,670,054号、米国特許第6,090,280号、および米国特許第6,122,055号、更に、Peterson et al.,"Validation of an HPLC Method for the Determination of Sodium in LY293111 Sodium, a Novel LTC Receptor Antagonist, Using Evaporative Light Scattering Detection," J. Liquid Chromatography, 18(2), pp. 331-338 (1995) 中にも見ることができる。
【0037】
本発明のある実施の形態において、水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度は臨界ミセル濃度以下である。本発明の関連する実施の形態では、水溶液の非イオン界面活性剤の濃度は約0.1〜約100ppm(百万分率)、必要に応じて約1〜約20ppmである。臨界ミセル濃度は、溶媒、界面活性剤、あるいは他の溶質を含む系の中や所定の物理的環境中でミセルが生成し始める濃度である。臨界ミセル濃度(CMC)は、平衡状態において認められるほどの量(全量の5%以上)のミセル状凝集体が最初に出現し始める脂質モノマー濃度とおおよそ定義することができる。
(数1)
nM1<=>Mn
【0038】
ミセルは、溶液(この場合は水)の飽和に十分なモノマーがあり、これが合体してミセルを形成する場合に生じる明瞭なモノマーの集合である。この点(臨界ミセル濃度)でモノマー濃度は平衡に達し、界面活性剤を更に加えると、この追加モノマーはミセルを形成する。この臨界濃度は公知の方法のいずれかで容易に測定される。最も一般的なものは、界面活性剤を溶解させた液体の表面張力の変化である。このため実際には、表面張力を測定する簡単な方法で溶液中にモノマーまたはミセルがあるかどうかが分かる。界面活性剤を用いて化学組成物を洗浄または分配する一般的な実施方法とメカニズムは、選択した界面活性剤の臨界ミセル濃度より高い使用希釈濃度で界面活性剤を用いることである。除去および濯ぐための洗浄において、ミセルはこの状態で汚れを可溶化、乳化、および取り除く能力を持つためである。臨界ミセル濃度以下では、界面活性剤分子はモノマーとしてのみ(つまり自由な独立した単位として)存在し、現実には洗浄に対し悪影響を及ぼすおそれがあることが以前より分かっている。
【0039】
本発明のある実施の形態において、配合物中の非イオン界面活性剤はポロキサマーである。“ポロキサマー”は、その技術において容認される意味に従って使用され、一般式 HO(C24O)a−(C36O)b−(C24O)cH (式中、a=c)を持つ、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン共重合体タイプの一連の非イオン界面活性剤を指す。そのそれぞれの化合物の分子量は約1,000〜16,000以上の範囲である。この語には、食品、薬品、または化粧品に用いられる製品をそれぞれ独自に識別するための数字を付けて使用される。ポロキサマー類は、界面活性剤、乳化剤、または安定剤である。その例示的な実施の形態の一つにおいて、ポロキサマーはポロキサマー171である。
【0040】
本発明のある実施の形態において、非イオン界面活性剤は、トリトン(登録商標)Xグループの界面活性剤に属する。トリトン(登録商標)X界面活性剤は、その濡れ性、洗浄力、非常に堅固な表面、金属洗浄性、および優れた乳化性能が認められる、用途の広い非イオン界面活性剤である。例示的な実施の形態の一つにおいて、非イオン界面活性剤は、4−オクチルフェノール=ポリエトキシラート、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、α−(4−オクチルフェニル)−ω−ヒドロキシとしても知られる、トリトンX−405である。もう一つの例示的な実施の形態では、非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテルとしても知られる、トリトンBRIJ−35である。BRIJ−35(ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル)は、HPLCで一般的に使用されている洗剤である。もう一つの例示的な実施の形態においては、非イオン界面活性剤は、アルキルアリールポリエーテルアルコールとしても知られる、トリトンX−100;オクチルフェノールエトキシラート;ポリオキシエチル化オクチルフェノール;α−[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−ω−ヒドロキシポリ(オキシ−1,2−エタンジイル);オクトキシノール(Octoxynol);トリトンX−100;トリトンX−102;エチレングリコールオクチルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル;p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール=エトキシラート;オクチルフェノキシポリエトキシエタノール;ポリエチレングリコールモノ[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]エーテル;ポリ(オキシエチレン)−p−tert−オクチルフェニルエーテル;POEオクチルフェノール;ポリオキシエチレン(10)オクチルフェノール;POE(10)オクチルフェノール;POE(10)オクチルフェニルエーテル; オクトキシノール10;POE(3)オクチルフェニルエーテル;オクトキシノール3;POE(30)オクチルフェニルエーテル;オクトキシノール30である。トリトンX−100の式は、C1422O(C24O)nであり、分子当たりのエチレンオキシド単位の平均数は約9〜10である。本発明のある実施の形態においては、非イオン界面活性剤は、ツイーン(Tween)シリーズに属する界面活性剤である。このような実施の形態の一つにおいて、非イオン界面活性剤は、ツイーン20(C5811426)であり、これはまた、ソルビタン=モノ−9−オクタデセノアート、ポリ(オキシ−1,1−エタンジイル)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウラート、Poe20ソルビタンモノラウラート、PSML、armotan pml−20、capmul、emsorb 6915、glycospere L−20、またはliposorb L−20としても知られる。もう一つのこのような実施の形態では非イオン界面活性剤はツイーン80であり、これはポリエチレン20ソルビタンモノオレアートとしても知られている。
【0041】
本発明の実施の形態は、ポリペプチドの不安定化(当該技術で公知の多くの手法で測定可能な現象)に関わる当該技術の問題に対して設計された配合物を含む。例えば、典型的な不安定なポリペプチドはIL−2であって、これは、凝集とメチオニン酸化と脱アミド化の少なくとも3つの経路で不安定化する(Kenney et al., "Parameters for the evaluation of IL-2 stability", Lymphokine Research (1986), 5, S23-S27)。貯蔵の間の物理的および化学的不安定化によるIL−2の変化を測定するには、いくつかの分析法が使用できる。C4カラムからのIL−2類の溶出にアセトニトリル勾配を応用する、RP−HPLC法(例えば、Kunitani et al., "Reversed-Phase chromatography of Interleukin-2 muteins", J. of Chromatography, (1986)359, 391-402 を参照)はこのような分析に適している。この方法では、主要なIL−2種はピークB、メチオニン酸化物(oxidative)種(主に酸化されたMet−104)はピークA、脱アミド化種(恐らくAsn88)はピークB’として検出され、他の未知種はこれらのピークの前後に溶出する。また、元々SEC−HPLCはモノマー系IL−2用に開発されたもので、200mMの硫酸アンモニウムとTosoHaas TSK G2000カラムとを用いるアイソクラチック溶出を利用している。IL−2は単一の種として溶出する。更に、インスリンまたはIL−2などの分子の生物活性の測定には、様々な in vitro バイオアッセイを用いることができる(例えば、HT−2細胞増殖の使用。またIL−2の生物活性の測定にMTTステインを用いることができる。Gillis et. al., J. Immuno. 120, 2027-2032 (1978); Watson, J. Exp. Med., 150, 1510-1519 (1979))。インスリンの安定性は、当該技術で述べられている様々な手法のいずれかを用いて測定できる(例えば、米国特許第6,737,401号を参照)。
【0042】
ポリペプチド配合物の試験に用いる記載の方法および材料は、酢酸、リン酸、およびクエン酸緩衝液化合物などの様々な緩衝性化合物を含む配合物の試験にも用いることができる。例えば、これらの方法で試験される配合物は、当該技術で公知の緩衝系(例えば、TRIS、HEPES、MOPS、PIPES、MES、MOPSO、TAPSO、POPSO、DIPSO、HEPPSO、CAPSO、AMPSOなど)などの緩衝系を含むことができる。このような場合、同等の緩衝性環境を生じる状況であれば似た性質を持つ緩衝性分子で置換できることが、当業者には理解される。
【0043】
ポリペプチド配合物の試験に用いる記載の方法および材料は、様々な他の一般的に使用される化合物、例えば、インスリンなどのポリペプチド類の安定に一般的に用いられている亜鉛およびフェノール系防腐剤を含む配合物の試験にも用いることができる。亜鉛およびフェノール系防腐剤はいずれも、安定で、すぐに解離して作用し始める錯体を得るために用いる。ヘキサマー(hexamer)錯体は、ヒトインスリン類似物のヘキサマー当たり2つの亜鉛イオンと、クロロクレゾール、m−クレゾール、フェノール、およびこれらの混合物から成る群より選ばれる少なくとも3分子のフェノール系防腐剤とから成る。約7〜約8のpHで適量のフェノール系防腐剤を含む希釈剤中にモノマー系インスリン類似物を溶解した後、亜鉛を加えると、可溶性モノマー系インスリン類似物はヘキサマー錯体に変わる。亜鉛は典型的に、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、および硫酸亜鉛など(但し、これらに限定しない)の亜鉛塩として添加する。当業者ならば、モノマー系インスリン類似物錯体の製造には、その他多くの亜鉛塩類も使用され、これらも本発明の一部であることに気づくであろう。典型的に、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、または塩化亜鉛は、商業的に容認されている方法に新たな化学イオンを付け加えないため、これらの化合物を用いる。
【0044】
この配合物には更に、グリセロールまたはグリセリンなどの等張性試剤を加えることができる。グリセリンを用いる場合、その濃度は、インスリン配合物に関して当該技術で知られている範囲、例えば約16mg/mlである。タンパク質中のメチオニン残基の酸化を効果的に防止する手段として、メチオニンも開示の薬学的配合物に加えることができる。更に、凍結−解凍および機械的剪断によって起こるポリペプチドの損傷を防ぐため、ポリソルベート80などの非イオン界面活性剤を加えても良い。また、組成物を更に安定させるため、EDTAや他の公知の金属イオン除去剤(多くの酸化反応に触媒作用を及ぼすことが知られる)を加えても良い。その他の添加剤、例えば、ツイーン20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウラート)、ツイーン40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミタート)、ツイーン80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体)、およびPEG(ポリエチレングリコール)などの薬学的に許容される可溶化剤等を、必要に応じて配合物に加えても良い。
【0045】
本発明の実施の形態で用いられるインスリンおよびインスリン類似物は、標準的な溶液法、固相法、半合成法、および組換えDNA法など、様々な公知の技術のいずれかで調製することができる。チャンス(Chance)らによる、米国特許第5,514,646号(1996年5月7日出願)は、当業者が様々な類似物を調製できるよう、様々なモノマー系インスリン類似物の調製法を十分詳細に開示している。モノマー系インスリン類似物の溶解は、一般に“酸溶解”として知られている方法で促進される。酸溶解では、生理学的に許容される酸、一般にHClで、水溶媒のpHを約3.0〜3.5に下げてモノマー系類似物の溶解を促進する。他の生理学的に許容される酸としては、酢酸、クエン酸、および硫酸(これらに限定しない)が挙げられる。リン酸は典型的に、本発明の配合物の調製におけるpHの調節には用いない。次に、pHを生理学的に許容される塩基、一般に水酸化ナトリウムで約7.3〜7.5に調節する。他の生理学的に許容される塩基としては、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウム(これらに限定しない)が挙げられる。その後、フェノール系防腐剤および亜鉛を加える。
【0046】
本発明の非経口投与配合物の実施の形態は、通常の溶解および混合法を用いて調製可能である。適当な配合物を調製するため、例えば、水に加えた既知量のモノマー系インスリン類似物を、ヘキサマー錯体の調製に十分な量の所望の防腐剤、亜鉛化合物、および緩衝剤を水に加えたものと混合する。この配合物は通常、投与前に無菌濾過する。当業者ならば、この工程のバリエーションを認めるであろう。例えば、使用する投与濃度および手段に応じて、成分の添加順序、もしあるのならばpHを調節する順序、配合物を調製する温度およびイオン強度を最適化することができる。
【0047】
II.グルコースオキシダーゼの安定化配合物
本発明の実施の形態は、グルコースセンサなどの分析物検出デバイスに用いるためのグルコースオキシダーゼ配合物を含む。このような場合、埋込み型センサの製造に使用するためには、優れた安定性を備えた、高濃度(例えば、100キロ単位/ml)のグルコースオキシダーゼを含む組成物が非常に望ましい。本発明の濃縮グルコースオキシダーゼ溶液配合物は、非常に好ましい安定性を示すため、埋込み型センサの製造での使用に非常に適したものとなる。このような配合物において、安定性を促進するものはソルビン酸カリウムである。希釈するときのグルコースオキシダーゼ配合物は、外付け(皮下)センサの製造に用いることができる。
【0048】
本発明の典型的な配合物は、約100KU/mlのグルコースオキシダーゼと、約0.15(w/v)%のソルビン酸カリウムと、約0.01Mのリン酸カリウム緩衝液とを含むものである。この配合物の一つの製造方法では、まずグルコースオキシダーゼの希薄溶液を調製する。次に、固相抽出またはクロマトグラフ法のいずれかを用いてこの溶液を濃縮する。驚いたことに、この特定の要素を組み合わせた配合物は、プラスチック製バイアル中において最低6ヶ月間は安定である。この配合物は、埋込み型および皮下型センサの製造での使用に適していることが分かった。グルコースセンサでは、血中のグルコースに触媒作用を及ぼして過酸化水素を発生させるためにグルコースオキシダーゼを用い、この過酸化水素を後に電気的に測定する。この配合物中に残留する主な不純物であるカタラーゼは最少とする。センサ中にカタラーゼが存在すると、酵素活性(グルコースオキシダーゼとの)の競合物となることがある。当該技術で知られているように、グルコースオキシダーゼは、市販のもの(例えば、シグマ(Sigma)またはICNなどの製造者より、粉末の状態で)が購入でき、あるいは、技術的に容認された方法(例えば、米国特許第3,930,953号、米国特許第5,094,951号、および米国特許第5,270,194号に記載のものなど)に従って製造することができる。グルコースオキシダーゼ配合物の安定性は、特定の条件下、例えば、一定期間に亘って特定温度および湿度条件下で、配合物中の分析属性を求めることにより測定可能である。測定可能な分析属性としては、グルコースオキシダーゼ活性、タンパク質含量、カタラーゼ含量、ソルビン酸塩含量、熱および物理的現象による失活が挙げられる。次に結果を観測し、特定前のパラメータと比較することができる。
【0049】
本発明には多くの実施の形態がある。一つの実施の形態は、グルコースオキシダーゼとソルビン酸カリウムとリン酸カリウム緩衝液とを含み、グルコースオキシダーゼの濃度が約90〜約110KU/mlであり、ソルビン酸カリウムの濃度が約0.12〜約0.18(w/v)%であり、リン酸カリウム緩衝液の濃度が約0.01Mである配合物である。意外にも、この特定の要素を組み合わせた配合物は、プラスチック製バイアル中で最低6ヶ月間は安定である。これらの配合物中のグルコースオキシダーゼおよびソルビン酸カリウムの濃度を示す際に“約”を用いる場合、これは具体的に明示された値の5%に定めた範囲と定義する。例えば、約0.15(w/v)%のソルビン酸カリウムとは、0.1425〜0.1575(w/v)%のソルビン酸カリウムを指す。本発明の実施の形態には、グルコースオキシダーゼの濃度が約100KU/mlである場合が含まれる。本発明の実施の形態には、ソルビン酸カリウムの濃度が約0.15(w/v)%である場合が含まれる。本発明の実施の形態には、リン酸カリウム緩衝液の濃度が約0.01Mである場合が含まれる。本発明の典型的な実施の形態において、配合物中のグルコースオキシダーゼはプラスチック容器中で少なくとも6ヶ月間は安定である。
【0050】
本発明のもう一つの実施の形態は、プラスチック容器中で少なくとも6ヶ月間は安定なグルコースオキシダーゼ組成物の製造法であって、この方法は、グルコースオキシダーゼ溶液を調製する工程と、次に、このグルコースオキシダーゼ溶液を濃縮して、約90〜約110KU/mlの濃度のグルコースオキシダーゼと、約0.12〜約0.18(w/v)%の濃度のソルビン酸カリウムと、約0.01Mの濃度のリン酸カリウム緩衝液とを含むグルコースオキシダーゼ溶液を製造する工程とを含む。
【0051】
典型的に、このグルコースオキシダーゼ溶液は、固相抽出を含む方法、および/またはクロマトグラフ法を含む方法で濃縮する。当該技術で知られているように、固相抽出(SPE)は、分析前の試料のクリーンアップおよび/または濃縮に使用できる試料調製技術である。液−液抽出に比べてSPEは一般により迅速で、溶媒使用量が少なく、エマルジョンを生じず、安価である。SPEは抽出がクリーンで、収率が高い。SPE製品は一般に2つの方法のいずれかに使用される。最も簡単な方法は、分析物を通過させると妨害試料成分を保持するSPE充填床に試料を通す工程を含むものである。第2の方法は、分析物と妨害試料成分と考えられるものとを保持するSPE充填床に試料を通す工程を含むものである。妨害成分を充填床から洗い流した後、分析物を溶出させる。溶出は少量の溶媒でできるため、試料が濃縮され、検出限界が上がり、分析が簡易となる。SPE技術の実例は、例えば、米国特許第6,759,442号、米国特許第6,723,236号、米国特許第6,602,928号、米国特許第6,541,273号に記載されている。様々なクロマトグラフによる濃縮技術(例えば、イオン交換樹脂の使用)も当該技術において公知である。代表的な手法は、例えば、米国特許第6,576,137号、米国特許第5,447,556号、および米国特許第4,952,321号に記載されている。
【0052】
本発明の更にもう一つの実施の形態は、哺乳動物に埋込むためのグルコースセンサ装置の製造法であって、この製造法は、ベース層を準備する工程と、ベース層上に伝導層を形成する工程と、伝導層上に分析物感知層を形成する工程と、必要に応じて分析物感知層上にタンパク質層を形成する工程と、分析物感知層または必要に応じたタンパク質層の上に接着促進層を形成する工程と、接着促進層上に配置した分析物調節層を形成する工程と、分析物調節層の少なくとも一部の上に配置したカバー層を形成する工程と、を含み、伝導層は作用電極を含み、伝導層上に分析物感知層を形成するには、約90〜約110KU/mlの濃度のグルコースオキシダーゼと、約0.12〜約0.18(w/v)%の濃度のソルビン酸カリウムと、約0.01Mの濃度のリン酸カリウム緩衝液とを含む組成物を使用し、分析物調節層は、これを通る分析物の拡散を調節する組成物を含んでおり、カバー層は更に、分析物調節層の少なくとも一部の上に開口部を含んでいる。本発明のもう一つの実施の形態は、この方法で製作したセンサである。
【0053】
先に述べたように、本発明の実施の形態は、例えば、糖尿病患者の血中グルコース濃度の皮下または経皮的測定使用型のセンサに用いることができる。本明細書は更に、このような配合物を持つこれらのセンサの製造法および使用法を提示する。分析物センサの要素、構成、およびこれらの要素の製造および使用法は、様々な積層型センサ構造体の開発に利用できる。本発明のこのセンサは、驚くほどの柔軟性と融通性とを示し、多様な分析物種を試験するよう設計された多様なセンサ配置を可能とする特徴を備えている。本発明の典型的な実施の形態では、分析物濃度の処理可能な信号への変換は電気化学的手段で行われる。このようなトランスデューサには、当該技術で公知の様々な電流測定、電位差測定、または伝導度測定用ベースセンサ類のいずれかが含まれる。更に、本発明の微細製造センサ技術および材料は、ほぼ非平面的またはほぼ平面的な方法で製造した、他のタイプのトランスデューサ(例えば、音波感知デバイス、サーミスタ、ガス感知電極、電界効果トランジスタ、光学および消失電界波(evanescent field wave)ガイド等)に応用しても良い。バイオセンサに活用されるトランスデューサに関する有用な検討および表、各種のトランスデューサまたはバイオセンサが一般に用いられる分析法の種類は、Christopher R. Lowe の Trends in Biotech. 1984, 2(3), 59-65 の文中に見られる。
【0054】
本発明の具体的な態様および使用については、以下の章で詳細に検討する。
【0055】
A.本発明の典型的な分析物センサ類、センサ要素、およびセンサ配置
図2は、本発明の典型的なセンサ構造体100の断面図を示したものである。このセンサは、センサ構造体を製造するための本発明の方法に従い、それぞれの上に配置した様々な伝導性および非伝導性の構成要素から成る複数の層から形成されている。図2に示す実施の形態は、センサ100を支えるベース層102を含んでいる。ベース層102は、セラミックまたはポリイミド基材などの材料から成るものでも良く、自己支持型、または当該技術で公知の他の材料で更に支持されていても良い。本発明の実施の形態は、ベース層102上に配置した伝導層104を含む。典型的に伝導層104は1つ以上の電極を含む。動作するセンサ100は一般に、作用電極、対電極、および参照電極などの複数の電極を含む。他の実施の形態では、複数の機能を果たす電極、例えば、参照電極と対電極の両方として機能するものを含んでいても良い。更に別の実施の形態では、センサ上に形成されていない、離れた参照要素を使用する。一般にこれらの電極は互いに極めて近くに配置されているが、電気的には分離している。
【0056】
以下で詳しく述べるように、伝導層104は、多くの公知の手法と材料を用いて塗布できる。センサの電気回路は通常、配置した伝導層104を所望の伝導経路パターンにエッチングすることで設置する。センサ100の典型的な電気回路は、近接端に接触パッドを成す部分と遠位端にセンサ電極を成す部分とを備えた2つ以上の隣接する伝導経路を含んでいる。ポリマーコーティングなどの電気絶縁性のカバー層106は一般に、センサ100の一部の上に配置する。絶縁性保護カバー層106として使用できるポリマーコーティングとしては、シリコーン化合物、ポリイミド類、生体適合性のはんだマスク、エポキシアクリラート共重合体などの、無毒な生体適合性ポリマー類が挙げられる(但し、これらに限定しない)。本発明のセンサでは、カバー層106に1つ以上の露出部分または開口部108を穿って伝導層104を外部環境に露出させ、例えば、センサの層にグルコースなどの分析物を浸透させて感知素子で感知させる。開口部108は、レーザアブレーション、化学的粉砕、あるいはエッチングまたはフォトリソグラフ現像など多くの手法で形成することができる。本発明のある実施の形態では、製造の間、更に第2のフォトレジストを保護層106に塗布して保護層の部分を定め、これを取り除いて開口部108を形成する。露出させた電極および/または接触パッドには更に、2次処理、例えば、表面を調製するため、および/または伝導部分を強化するための、追加のメッキ処理を行う(例えば、開口部108を通して)ことができる。
【0057】
図2に示すセンサ配置においては、分析物感知層110(一般に、センサ化学物層。この層中の物質が化学反応を受け、伝導層で感知可能な信号を発生することを意味する)は、伝導層104の1つ以上の露出した電極上に配置される。一般に、センサ化学物層110は酵素層である。最も一般的には、センサ化学物層110は、使用する酸素および/または過酸化水素を発生することのできる酵素、例えば酵素グルコースオキシダーゼを含んでいる。典型的に、グルコースオキシダーゼは、約90〜約110KU/mlのグルコースオキシダーゼと、約0.12〜約0.18(w/v)%のソルビン酸カリウムと、約0.01Mのリン酸緩衝液とを含む配合物中に含まれている。必要に応じて、センサ化学物層110中の酵素を、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンなどの、第2のキャリアタンパク質と結合する。例示的な実施の形態では、センサ化学物層110中のグルコースオキシダーゼなどの酵素は、グルコースと反応して過酸化水素を発生し、この化合物は電極の電流を変化させる。この電流の変化は過酸化水素の濃度に依存し、過酸化水素の濃度はグルコースの濃度と相関関係にあるため、この電流の変化を測定することでグルコースの濃度を求めることができる。本発明の具体的な実施の形態において、過酸化水素はアノードである作用電極(アノード系作用電極とも呼ばれる)で酸化されて、過酸化水素濃度に比例した電流を生じる。過酸化水素濃度の変化によって起こるこのような電流の変化は、ユニバーサルセンサ、電流測定型バイオセンサ検出器などの様々なセンサ検出器装置で、または、Medtronic MiniMed製のグルコース測定デバイスなどの当該技術で公知の同様の様々なデバイスで測定することができる。
【0058】
分析物感知層110は、伝導層の一部、または伝導層全体の上に塗布することができる。一般に分析物感知層110は、アノードまたはカソードである作用電極の上に配置する。必要に応じて、分析物感知層110を対および/または参照電極の上にも配置する。典型的に、分析物感知層110は、当該先行技術で示されたセンサに見られるものに比べて薄く、例えば、一般に1、0.5、0.25、または0.1μm以下の厚さである。以下で詳しく述べるように、薄い分析物感知層110を製造する典型的な方法としては、スピンコーティング法、浸漬および乾式法、低剪断スプレー法、インクジェット印刷法、シルクスクリーン法などが挙げられる。最も典型的には、スピンコーティング法を用いて薄い分析物感知層110を塗布する。
【0059】
典型的に、分析物感知層110は1つ以上の追加の層と共に被覆する。必要に応じて、1つ以上の追加の層は、分析物感知層110上に配置したタンパク質層116を含む。典型的に、タンパク質層116は、アルブミンなどのタンパク質を含んでいる。典型的に、タンパク質層116は、ヒト血清アルブミンを含む。本発明の一部の実施の形態では、追加の層は、分析物感知層110上に配置した、分析物感知層110に接触する分析物を調節するための分析物調節層112を含むものである。例えば、分析物調節膜層112は、分析物感知層中に存在するグルコースオキシダーゼなどの酵素に接するグルコースの量を調節する、グルコース制限膜を含むことができる。このようなグルコース制限膜は、この目的に適うことが知られる様々な材料、例えば、ポリジメチルシロキサン類などのシリコーン化合物、ポリウレタン類、ポリ尿素酢酸セルロース類、Nafion、ポリエステルスルホン酸類(例えば、Kodak AQ)、ヒドロゲル類、または当業者の知るその他適当な親水性膜からも作ることができる。
【0060】
本発明の典型的な実施の形態においては、分析物調節層112と分析物感知層110の接触性および/または接着性を向上させるため、図2に示すように、その間に接着促進剤層114を設ける。本発明の具体的な実施の形態では、分析物調節層112とタンパク質層116との接触性および/または接着を向上させるため、図2に示すように、その間に接着促進剤層114を設ける。接着促進剤層114は、これらの層の接合性を高めることが当該技術において知られている様々な材料を用いて作ることができる。典型的に接着促進剤層114はシラン化合物を含む。別の実施の形態では、分析物感知層110中のタンパク質または類似の分子を十分に架橋させて、あるいは別な方法により、接着促進剤層114を用いずに、分析物感知層110に直に接して分析物調節膜層112を配置することができる。
【0061】
分析物センサ装置には多くの実施の形態がある。本発明の一般的な実施の形態は哺乳動物に埋込むための分析物センサ装置である。分析物センサは一般に、哺乳動物の体内に埋込むよう設計されているが、このセンサは特定の環境に限られず、様々な状況において、例えば、全血、リンパ液、血漿、血清、唾液、尿、大便、汗、粘液、涙、髄液、鼻汁、頸管または膣分泌物、精液、胸膜液、羊水、腹水、中耳液、滑液、胃吸引物などの体液等、殆どの液状試料の分析に用いることができる。更に、固体または乾燥した試料を適当な溶媒に溶解して、分析に適した液状混合物としても良い。
【0062】
先に述べたように、本センサの実施の形態は、1つ以上の生理学的環境中にある対象とする分析物の検知に用いることができる。例えばある実施の形態では、センサを、皮下センサで通常起きているように間質液と直接接触させても良い。本発明のセンサは更に、皮膚を通して間質グルコースを抽出してセンサと接触させる、皮膚表面装置の一部としても良い(例えば、その内容を本件に引用して援用する、米国特許第6,155,992号、および米国特許第6,706,159号を参照)。他の実施の形態では、本センサを、例えば静脈内センサが通常そうであるように、血液と触れさせることができる。本発明のセンサの実施の形態には、様々な状況での使用に適合させたものが更に含まれる。例えばある実施の形態では、センサを、歩行する使用者が使えるものなど、移動状態で用いるよう設計することができる。あるいはこのセンサを、臨床設備での使用に適したものなど、固定状態で用いるよう設計することができる。このようなセンサの実施の形態としては、例えば、入院加療中の患者の1つ以上の生理環境中にある1つ以上の分析物の測定に用いるものが挙げられる。
【0063】
本発明のセンサ類は更に、当該技術で公知の多様な医療用装置に組み込むことができる。本発明のセンサ類は、例えば、薬物を使用者の体内へ注入する速度を制御するよう設計された閉ループ注入装置に用いることができる。このような閉ループ注入装置は、センサとそれに付随する計測器とを含んでも良く、この計測器は、次に送達装置を操作する制御装置(例えば、薬物注入ポンプによって投与される投与量を計算するもの)への入力を発生する。このような場合、センサに付随する計測器は更に、命令を送達装置に伝え、また送達装置をリモート制御するために用いることができる。典型的にこのセンサは、間質液と接して使用者の体内のグルコース濃度を測定する皮下センサであり、送達装置によって使用者の体内に注入される液体はインスリンを含んでいる。例示的な装置は、例えば、いずれもその内容を本件に引用して援用する、米国特許第6,558,351号、および米国特許第6,551,276号、PCT出願第US99/21703号およびPCT出願第US99/22993号、更に、国際公開第WO2004/008956号、および国際公開第WO2004/009161号に開示されている。
【0064】
本発明のある実施の形態は、過酸化物を測定するものであって、これは皮下や静脈内部への埋込み、更に様々な非血管部位への埋込みなど、哺乳動物の様々な場所への埋込みに適した長所を備えている。非血管部位へ埋込むよう設計された過酸化物センサは、非血管部位に埋め込まれた酸素センサに起こり得る酸素ノイズの問題の点で、酸素を測定するよう設計されたある種のセンサ装置よりも優れている。例えば、この埋込み型酸素センサ装置設計では、参照センサでの酸素ノイズが信号/ノイズ比を低下させ、そのためこの環境中での安定したグルコースの読み取りがしにくくなることがある。ゆえに、本発明の過酸化物センサは、非血管部位でのこのような酸素センサに見られる問題点を解決する。
【0065】
本発明のある過酸化物センサの実施の形態は更に、30日以上の期間に亘る哺乳動物への埋込みに適した、有益な長期または“永久”センサを含むものである。詳細には、当該技術で知られているように(例えば、ISO10993, Biological Evaluation of Medical Devices を参照)、センサなどの医療用デバイスは、埋込み期間に基づいて、(1)“制限”(24時間以下)、(2)“延長”(24時間〜30日間)、および(3)“永久”(30日以上)の、3グループに分類できる。本発明の一部の実施の形態では、本発明の過酸化物センサの設計は、この分類法に従えば“永久”埋込み、すなわち30日以上を可能とする。本発明の関連する実施の形態では、本発明の過酸化物センサの非常に安定な設計により、この件に関して2、3、4、5、6、または12ヶ月以上機能し続ける埋込み型センサが可能となる。
【0066】
一般に、分析物センサ装置構造体には、ベース層と、ベース層上に配置した、1つ以上の電極を含む伝導層とが含まれる。例えば伝導層は、作用電極、参照電極、および/または対電極を含むことができる。設計に従って、これらの電極は近接して設け、あるいは遠く離して設けることができる。このセンサ装置の設計は、ある電極(例えば作用電極)がセンサ装置中で検出すべき分析物を含む溶液に触れる(例えば、開口部を通して)ようになっている。センサ装置の設計は、ある電極(例えば参照電極)がセンサ装置中で検出すべき分析物を含む溶液に触れないようになっている。
【0067】
典型的に分析物センサ装置は、伝導層上に配置した分析物感知層を含み、一般にこの分析物感知層は、作用電極の一部または全てを覆っている。この分析物感知層は、検出すべき分析物が存在すると、伝導層中の作用電極での電流を検出できる程に変える。この分析物感知層には典型的に、作用電極での電流を変えることのできる分子の濃度を変更するように(例えば、図1の反応スキームに示される、酸素および/または過酸化水素を参照)対象とする分析物と反応する、酵素または抗体分子などが含まれている。例示的な分析物感知層は、グルコースオキシダーゼなどの酵素(例えば、グルコースセンサで使用するため)を含んでいる。典型的に、分析物感知層は更に、分析物感知化合物(例えば、酵素)とほぼ一定の比でキャリアタンパク質を含んでおり、分析物感知化合物とキャリアタンパク質とは、分析物感知層全体にほぼ均一に分散している。一般に、分析物感知層は非常に薄く、例えば1、0.5、0.25、または0.1μm以下の厚さである。特定の科学的理論に拘束されるものではないが、このような薄い分析物感知層を備えたセンサは、一般に電着で作られる厚い層に比べて驚くほどに向上した特性を持ち、その理由は、電着では3〜5μmの厚い酵素層ができてしまい、コーティング層中の反応性酵素のごく一部しか検出すべき分析物に触れることができないためと考えられる。電着プロトコルに従って製造したこのように厚いグルコースオキシダーゼペレットは更に、機械的安定性も劣る(例えば亀裂が入り易い)ことが認められており、また実際の使用まで長い製造時間がかかり、典型的に、埋込み準備が整うまでの試験に数週間を要する。これらの問題は薄層型の酵素コーティングでは認められず、この薄いコーティングが本発明の実施の形態である。
【0068】
例えばグルコースオキシダーゼを用いるセンサでは、電着で製造した厚いコーティングは、3〜5μmの厚い酵素層の反応性界面で発生した過酸化水素がセンサ表面と接触して信号を発生するのを妨げる。更に、このように厚いコーティングのためにセンサ表面に到達できなかった過酸化水素は、センサからセンサの置かれている環境の中へ拡散して、このセンサの感度および/または生体適合性を低下させることがある。更に、特定の科学的理論に拘束されるものではないが、スピンコーティングなどの方法は、酵素コーティングのグルコースオキシダーゼ対アルブミン(酵素層中のグルコースオキシダーゼを安定化させるためのキャリアタンパク質として用いられる)の比を正確に制御できることから、この薄い分析物感知層を備えたセンサは、予想以上に優れた長所を持つと考えられる。詳細には、グルコースオキシダーゼとアルブミンは異なる等電位点を持つため、電着法では、最適に設定された酵素とキャリアタンパク質との比が電着工程の間に損なわれ、更に、グルコースオキシダーゼとキャリアタンパク質が配置された酵素層全体にほぼ均一に分散していない表面コーティングとなってしまう。更に、この薄い分析物感知層を備えたセンサは、応答時間が予想以上に早い。特定の科学的理論に拘束されるものではないが、このような驚くべき、また優れた性質が得られるのは、酵素層が薄いと作用電極表面への接触が良好となり、電極において電流を変える分子が電極表面に接触する割合が大きくなるためと考えられる。このような場合、本発明のあるセンサの実施の形態では、哺乳動物の体内にある分析物への曝露に応答した電流の変化は、分析物が分析物センサに接してから15、10、5、または2分以内に電流計で検出することができる。
【0069】
必要に応じて、分析物感知層の上、典型的に、この分析物感知層と分析物調節層との間に、タンパク質層を配置する。タンパク質層中のタンパク質は、ウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンから成る群より選ばれるアルブミンである。典型的にこのタンパク質は架橋している。特定の科学的理論に拘束されるものではないが、このそれぞれ独立したタンパク質層はセンサの機能を高め、センサノイズ(例えば、見かけのバックグラウンド信号)を減少させる一種のコンデンサとして働くことで、驚くほどの機能的利益をもたらすと考えられる。例えば、本発明のセンサにおいては、少量の水分が、センサの分析物調節膜層の下に、分析物感知層の酵素に接触できる分析物の量を調節する層を形成することがある。この水分は、センサを用いている患者の動きにつれてセンサ中で移動する圧縮性の層を生じる。センサ中でこのような層が移動すると、グルコースなどの分析物が分析物感知層を通って移動する経路を実際の生理学的分析物濃度とは無関係に変えてしまうため、ノイズが発生する。この場合、タンパク質層は、GOxなどの酵素が水分層と接するのを防ぐことでコンデンサとして働く。このタンパク質層は、分析物感知層と分析物調節膜層との間の接着性を高めるなど、多くの長所をもたらす。あるいは、この層の存在によって過酸化水素などの分子に対する拡散経路が広がるため、これを電極感知素子に局在化させてセンサの感度を上げる一助となる。
【0070】
典型的に、分析物感知層および/または分析物感知層上に配置されたタンパク質層の上には、接着促進層が配置されている。この接着促進層は、分析物感知層と隣接する層、一般に、分析物調節層との間の接着性を高める。この接着促進層は望ましくは、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物を含むもので、これは様々なセンサ層間の接着性を最も良く促進することができ、またセンサを安定化する働きによって選ばれたものである。面白いことに、このようなシラン含有接着促進層を備えたセンサは、全体的な安定性が向上するなど予想外の性質を示す。更に、シラン含有接着促進層は、センサの安定性を高めるほかにも多くの長所を備え、例えば、干渉の排除や、1つ以上の所望の分析物の物質移動の制御において有益な役割を果たすことができる。
【0071】
本発明のある実施の形態では、接着促進層は、分析物調節層を通るグルコースなどの分析物の拡散を制限するよう働く、ポリジメチルシロキサン(PDMS)化合物などの1つ以上の化合物を更に含み、またこの化合物は隣接する層にも加えることができる。例えば、接着促進(AP)層へのPDMSの添加は、センサを製造する際にAP層中に発生する正孔またはギャップを生じにくくするという点で有益といえる。
【0072】
典型的に、接着促進層の上には、通過する分析物の拡散を調節する働きをする分析物調節層が配置されている。ある実施の形態では、分析物調節層は、センサ層を通る分析物(例えば、酸素)の拡散を促進することで、分析物感知層中の分析物濃度を高めるよう機能する組成物(例えば、ポリマー類など)を含んでいる。あるいは、分析物調節層は、センサ層を通る分析物(例えば、グルコース)の拡散を制限することで、分析物感知層中の分析物濃度を制限するよう機能する組成物を含んでいる。その具体的な例は、ポリジメチルシロキサンなどのポリマーを含む、親水性グルコース制限膜(即ち、それを通るグルコースの拡散を制限するよう機能する)である。
【0073】
典型的に分析物調節層は1つ以上のカバー層を更に含んでいる。このカバー層は一般に電気絶縁性の保護層であり、カバー層は、センサ装置の少なくとも一部分の上に配置されている(例えば、分析物調節層を覆っている)。絶縁性保護カバー層として使用可能なポリマーコーティングとしては、シリコーン化合物、ポリイミド類、生体適合性ソルダーマスク、エポキシアクリラート共重合体などの無毒の生体適合性ポリマー類が挙げられる(但し、これらに限定しない)。例示的なカバー層としては、スパンオンシリコーン(spun on silicone)が挙げられる。典型的に、カバー層は、検出すべき分析物を含む溶液にセンサ層の少なくとも一部(例えば、分析物調節層)を曝露する開口部を更に含んでいる。
【0074】
分析物センサをカソードに極性化して、図1に示すような、例えば、グルコースとグルコースオキシダーゼとの相互作用によって起こる、作用カソード付近での酸素濃度の変化から生じた作用カソードでの電流の変化を検出することができる。あるいは、分析物センサをアノードに極性化して、図1に示すような、例えば、グルコースとグルコースオキシダーゼとの相互作用によって起こる、作用アノード付近での過酸化水素濃度の変化から生じた作用アノードでの電流の変化を検出することができる。本発明の典型的な実施の形態では、作用電極での電流を参照電極(対照)での電流と比較し、次にこれらの測定値の差を、測定すべき分析物の濃度に対応させることができる。これらの2つの電極での電流の比較から電流値を得るような分析物センサの設計は、一般に、例えばデュアル酸素センサと呼ばれる。
【0075】
B.本発明の分析物センサ装置を製造するための例示的な方法および材料
多くの論文、米国特許、および特許出願は、一般的な方法と材料を用いて当該技術の状態を述べ、更に、本センサの設計に使用可能な様々な要素(とその製造法)を述べている。このようなものとしては、例えば、いずれもその内容を本件に引用して援用する、米国特許第6,413,393号、米国特許第6,368,274号、米国特許第5,786,439号、米国特許第5,777,060号、米国特許第5,391,250号、米国特許第5,390,671号、米国特許第5,165,407号、米国特許第4,890,620号、米国特許第5,390,671号、米国特許第5,390,691号、米国特許第5,391,250号、米国特許第5,482,473号、米国特許第5,299,571号、米国特許第5,568,806号、米国特許出願第20020090738号、更に、PCT国際公開第WO01/58348号、国際公開第WO03/034902号、国際公開第WO03/035117号、国際公開第WO03/035891号、国際公開第WO03/023388号、国際公開第WO03/022128号、国際公開第WO03/022352号、国際公開第WO03/023708号、国際公開第WO03/036255号、国際公開第WO03/036310号、および国際公開第WO03/074107号が挙げられる。
【0076】
糖尿病のグルコース濃度を測定するための典型的なセンサについては、Shichiri, et al.,: "In Vivo Characteristics of Needle-Type Glucose Sensor-Measurements of Subcutaneous Glucose Concentrations in Human Volunteers," Horm. Metab. Res., Suppl. Ser. 20:17-20 (1988); Bruckel, et al.,: "In Vivo Measurement of Subcutaneous Glucose Concentrations with an Enzymatic Glucose Sensor and a Wick Method," Klin. Wochenschr. 67:491-495 (1989);および Pickup, et al.,: "In Vivo Molecular Sensing in Diabetes Mellitus: An Implantable Glucose Sensor with Direct Electron Transfer," Diabetologia 32:213-217 (1989) に更に記載されている。その他のセンサ類は、その内容を援用する、例えば、Reach, et al., in ADVANCES IN IMPLANTABLE DEVICES, A. Turner (ed.), JAI Press, London, Chap. 1, (1993) に記載されている。
【0077】
本発明の典型的な実施の形態は、哺乳動物に埋込むためのセンサ装置の製造法であって、この製造法は、ベース層を準備する工程と、ベース層上に伝導層を形成する工程と、伝導層上に分析物感知層を形成する工程と、必要に応じて分析物感知層上にタンパク質層を形成する工程と、分析物感知層または必要に応じたタンパク質層の上に接着促進層を形成する工程と、接着促進層上に配置した分析物調節層を形成する工程と、分析物調節層の少なくとも一部の上に配置したカバー層を形成する工程とを含み、伝導層は、電極(典型的に、作用電極、参照電極、および対電極)を含み、分析物感知層は、グルコースオキシダーゼとソルビン酸カリウムとリン酸カリウム緩衝液とを含み、グルコースオキシダーゼの濃度が約90〜約110KU/ml、ソルビン酸カリウムの濃度が約0.12〜約0.18(w/v)%、リン酸カリウム緩衝液の濃度が約0.01Mである組成物を用いて形成し、分析物調節層は、それを通る分析物の拡散を調節する組成物を含み、カバー層は更に、分析物調節層の少なくとも一部の上に開口部を含んでいる。これらの方法のある実施の形態では、分析物センサ装置を平面幾何学的配置に形成する。
【0078】
センサのそれぞれの層は、センサの設計に従って操作可能な様々な異なる特性を示すよう製造することができる。例えば接着促進層は、センサ構造体全体を安定化させる能力によって選ばれた化合物、典型的にシラン組成物を含んでいる。本発明の一部の実施の形態では、分析物感知層はスピンコーティング法で形成し、その厚さは、1、0.5、0.25、および0.1μm以下から成る群より選ばれる。
【0079】
典型的に、このセンサの製造法は、分析物感知層上にタンパク質層を形成する工程を含み、タンパク質層中のタンパク質は、ウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンから成る群より選ばれたアルブミンである。典型的に、センサの製造方法は、グルコースオキシダーゼとソルビン酸カリウムとリン酸カリウム緩衝液とを含み、グルコースオキシダーゼの濃度が約90〜約110KU/ml、ソルビン酸カリウムの濃度が約0.12〜約0.18(w/v)%、リン酸カリウム緩衝液の濃度が約0.01Mである配合物から分析物感知層を形成する工程を含む。このような方法では、分析物感知層は典型的に、酵素とほぼ一定した比でキャリアタンパク質組成物を含み、酵素とキャリアタンパク質は分析物感知層全体にほぼ均一に分散している。
【0080】
本明細書は、様々な公知の手法を組み合わせて製造できるセンサおよびセンサ設計を含んでいる。本明細書は更に、このような種類のセンサに非常に薄い酵素コーティングを塗布する方法と、この方法で製造したセンサを提示する。その場合、本発明の一部の実施の形態は、技術的に一般に容認されている方法に従ってこれらのセンサを基板上に作る方法を含む。ある実施の形態では、基板は、フォトリソグラフマスクおよびエッチング法での使用に適した、堅く平らな構造体を含んでいる。この場合、典型的に、基板は高度に均一な平面度を備えた上面を持つことを特徴とする。滑らかな上面とするため、研磨したガラス板を用いても良い。別の基板材料としては、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、および、delrinなどのプラスチック材料、等が挙げられる。別の実施の形態では、基板は堅くなく、基板として用いられる絶縁体、例えばポリイミド類などのプラスチック類から成るフィルムであるもう一つの層であっても良い。
【0081】
本発明の方法の最初の工程は、一般にセンサのベース層の形成を含むものである。ベース層は、所望の手段のいずれか、例えば制御スピンコーティングによって基板上に配置することができる。更に、基板層とベース層との接着性が十分でなければ、接着剤を用いても良い。典型的に、液状のベース層材料を基板に塗布した後に基板を回転させて、薄くほぼ均一な厚さのベース層とすることで、絶縁性材料から成るベース層を基板上に形成する。これらの工程を繰り返して十分な厚さのベース層を積み上げた後、フォトリソグラフおよび/または化学マスクと、エッチング工程を行って、以下に述べるような導線を形成する。ある形では、ベース層は、セラミックまたはポリイミド基板などの、絶縁材料の薄膜シートを含むものである。ベース層は、アルミナ基板、ポリイミド基板、ガラスシート、調節した多孔性ガラス、または平面化した可塑性液晶ポリマーを含むことができる。ベース層は、炭素、窒素、酸素、ケイ素、サファイア、ダイヤモンド、アルミニウム、銅、ガリウム、ヒ素、ランタン、ネオジム、ストロンチウム、チタン、イットリウム、またはこれらの組み合わせ(但し、これらに限定しない)など、様々な要素の1つ以上を含むどのような材料からも誘導することができる。更に、基板は、スピンガラス(spin glasses)、カルコゲニド類、グラファイト、二酸化ケイ素、有機合成ポリマー類などの材料を用いた、化学蒸着、物理蒸着、またはスピンコーティングなど、当該技術で公知の様々な方法で、固体支持体上に被覆することができる。
【0082】
本発明の方法は更に、1つ以上の感知素子を備えた伝導層の製造を含むものである。典型的にこれらの感知素子は、フォトレジスト、エッチング、および濯ぎなど、当該技術で公知の様々な方法で活性電極の幾何学的配置を画定して形成した電極である。次にこの電極を、例えば、作用および対電極については白金黒の電着により、参照電極上には銀メッキを行った後に塩化銀処理を行って、電気化学的に活性とすることができる。次に、センサ化学物酵素層などのセンサ層を、電気化学的析出、または電気化学的析出以外の方法、例えば、スピンコーティングを行った後、例えばジアルデヒド(グルタルアルデヒド)またはカルボジイミドを用いた蒸気架橋(vapor crosslinking)により、感知層上に配置することができる。
【0083】
本発明の電極は、当該技術で公知の様々な材料から作ることができる。例えば、電極を貴後期遷移金属(noble late transition metals)から作る。金、白金、銀、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、またはオスミウムなどの金属は、本発明の様々な実施の形態に適しているといえる。炭素または水銀など他の構成物も、あるセンサの実施の形態においては有用といえる。これらの金属のうち、銀、金、または白金は、一般に参照電極金属として用いられる。後に塩素化する銀電極は一般に参照電極として用いられる。これらの金属類は、先に挙げたプラズマ蒸着法など当該技術で公知の手段により、あるいは基板を金属塩と還元剤とを含む溶液に漬けて予め金属化した部分へ金属を堆積させる無電解法により堆積することができる。無電解法は、還元剤が伝導性(金属化)表面へ電子を与える際に、同時に伝導性表面で金属塩の還元が起こることで行われる。このようにして吸着した金属の層ができる(更に無電解法については、Wise, E. M. Palladium: Recovery, Properties, and Uses, Academic Press, New York, New York (1988); Wong, K. et al. Plating and Surface Finishing 1988, 75, 70-76; Matsuoka, M. et al. Ibid. 1988, 75, 102-106;および Pearlstein, F. "Electroless Plating," Modern Electroplating, Lowenheim, F. A., Ed., Wiley, New York, N.Y. (1974), Chapter 31. を参照)。しかし高密度の活性部位を備えた触媒活性を持つ金属電極面を生成するためには、このような金属堆積法は、金属と金属との接着が良好で、表面の汚染の少ない構造物が得られるものでなければならない。このような高密度の活性部位は、過酸化水素などの電気活性種の効率の良い酸化還元変換に必要な性質である。
【0084】
本発明の例示的な実施の形態では、ベース層を最初に、電着(electrode deposition)、表面スパッタリング、またはその他適当な方法により、薄膜伝導層で被覆する。ある形態では、この伝導層を、例えば、最初はポリイミド系の層への化学的接着に適したクロム系の層、続いて金系およびクロム系の薄膜層を順次形成した複数の薄膜伝導層として設ける。これに代わる実施の形態では、別の電極層配置または材料を用いることができる。適当な光画像形成のため、通常のフォトリソグラフ法に従って、選択したフォトレジストコーティングを伝導層に被覆し、このフォトレジストコーティング上にコンタクトマスクを塗布しても良い。コンタクトマスクは典型的に、フォトレジストコーティングを適当に露光するための1つ以上の伝導体図形パターンを含んでおり、次にエッチング工程を行うと、ベース層上に複数の伝導性のセンサ図形が残る。皮下グルコースセンサとして使用するよう設計されたセンサ構造の例では、各センサ図形は、作用電極、対電極、および参照電極の3つの独立した電極に対応する、3本の平行したセンサ要素を含むことができる。
【0085】
伝導性センサ層の一部は典型的に、一般にケイ素ポリマーおよび/またはポリイミドなどの材料から成る絶縁性カバー層で覆われている。絶縁性カバー層は、所望の方法で塗布することができる。方法の一例では、絶縁性カバー層を、センサ図形上に液体の層として塗布し、その後、基板を回転させて液体材料を薄膜としてセンサ図形上に分散させ、ベース層と密着したセンサ図形の端辺を超えるまで広げる。次に、この液体材料に、当該技術で公知の1つ以上の適当な照射および/または化学的および/または熱的硬化工程を行っても良い。別の実施の形態では、液体材料は、スプレー法やその他好ましい塗布法のいずれかを用いて塗布することができる。光により画像形成が可能なエポキシアクリラートなど、様々な絶縁性の層材料が使用でき、その例示的な材料としては、ニュージャージー州ウェストパターソン、OCG社(OCG, Inc.)より製品番号7020として市販されている、光画像形成用ポリイミドが挙げられる。
【0086】
先に述べたように、開口部を通してセンサチップを露光した後、遠位端電極を成す適当な電極化学物をセンサチップに塗布することができる。グルコースセンサとして使用する3つの電極を備えた例示的なセンサの実施の形態では、酵素(典型的に、グルコースオキシダーゼ)を1つの開口部の中に準備した後、センサチップの1つをコーティングして作用電極とする。他の電極の1つまたは両方を、作用電極と同じコーティングで作成しても良い。あるいは、他の2つの電極を、別の酵素など他の適当な化学物で作成し、被覆せずに残し、または電気化学的センサ用の参照電極および対電極を形成する化学物で作っても良い。
【0087】
本発明の態様は、物性の優れた電極化学物の非常に薄いコーティング(例えば、厚さ2μm以下のグルコースオキシダーゼコーティング)を備えたセンサの製造法を含むことができる。本発明の極薄酵素コーティングの製造法としては、スピンコーティング法、浸漬および乾式法、低剪断スプレー法、インクジェット印刷法、シルクスクリーン法などが挙げられる。当業者は、当該技術の方法で塗布した酵素被覆の厚さを容易に求めることができるように、本発明の極薄コーティングの製造が可能なこれらの方法を容易に確認できる。一般にこのコーティングは塗布後に蒸気架橋する。驚いたことに、この方法で製造したセンサは、電着で作成したコーティングを持つセンサより優れた物性、例えば、より優れた寿命、直線性、規則性、更に、向上した信号/ノイズ比を備えている。更に、このような方法で形成したグルコースオキシダーゼコーティングを利用する本発明の実施の形態は、過酸化水素をリサイクルして、このセンサの生物適合性を向上させるよう設計されている。
【0088】
特定の科学的理論に拘束されるものではないが、このような方法で製造した驚くべき性質を備えたセンサは、電着で作成したものに比べて優れた特性を備え、その理由は、電着では、反応性酵素の一部しか検出すべき分析物に接することのできない、3〜5μmの厚い酵素層ができるためと考えられる。更に、グルコースオキシダーゼを利用するセンサでは、電着で作成した厚いコーティングは、反応性界面で発生した過酸化水素がセンサ表面に達して信号を発生するのを妨げる。更に、この厚いコーティングのためにセンサ表面に達しなかった過酸化水素は一般にセンサからセンサの置かれている環境へ拡散するため、このようなセンサの生体適合性は低下する。更に、グルコースオキシダーゼとアルブミンは異なる等電位点を持つため、電着法では、最適に設定された酵素とキャリアタンパク質との比が損なわれ、更に、グルコースオキシダーゼとキャリアタンパク質が配置された酵素層全体にほぼ均一に分散していない表面コーティングとなるおそれがある。この薄いコーティング法をセンサの製造に用いると、電着に伴うこれらの問題が回避される。
【0089】
スピンコーティング法などの方法で製造したセンサは更に、電着工程の間にセンサにかかる材料応力に関わる問題など、電着に伴うその他の問題も解決する。詳細には、電着工程では、センサに機械的応力、例えば、引っ張りおよび/または圧縮力より生じる機械的応力がかかることが認められている。場合により、このような機械的応力は、多少割れ易い、または剥離し易いコーティングを持つセンサを生じることがある。これは、スピンコーティングや他の低応力の方法でセンサ上に配置したコーティングでは見られない。その結果、本発明の更にもう一つの実施の形態は、センサ上のコーティングが割れおよび/または剥離し易くなる電着法を用いず、スピンコーティング法でコーティングを塗布する工程を含む方法である。
【0090】
センサ素子の加工に続き、スプレー、浸漬など、当該技術で公知の様々な方法で、1つ以上の追加の機能性コーティングまたはカバー層を塗布することができる。本発明の一部の実施の形態は、酵素含有層上に配置した分析物調節層を含むものである。分析物制限膜層の使用により、活性センサ表面に触れる分析物の量を調節する以外にも、センサに異物が付着する問題も解決できる。当該技術で知られているように、分析物調節層膜層の厚さは活性酵素に到達する分析物の量に影響することがある。このため、その塗布は一般に規定された加工条件下で行われ、その厚さは厳密に制御される。下引き層の微細製造において、分析物調節膜層の厚さの制御に密接に影響する因子は、分析物制限膜層材料自体の組成である。これに関しては、いくつかの種類の共重合体、例えば、シロキサンと非シロキサン部分との共重合体が特に有用であることがわかっている。これらの材料は、ミクロディスペンスまたはスピンコーティングにより厚さを制御することができる。その最終的な構成も、他のそれぞれの構造体に合わせてパターニングおよびフォトリソグラフ技術によって設計される。これらの非シロキサン−シロキサン共重合体の例としては、ジメチルシロキサン−アルケンオキシド、テトラメチルジシロキサン−ジビニルベンゼン、テトラメチルジシロキサン−エチレン、ジメチルシロキサン−シルフェニレン(silphenylene)、ジメチルシロキサン−シルフェニレンオキシド、ジメチルシロキサン−a−メチルスチレン、ジメチルシロキサン−ビスフェノールAカルボナート共重合体、またはこれらの適当な組み合わせが挙げられる(但し、これらに限定しない)。共重合体の非シロキサン成分の重量比は、有用であればどのような値に定めておいても良いが、典型的にこの割合は約40〜80重量%の範囲にある。これらの材料は、米国ペンシルバニア州ブリストル、Petrarch Systemsより市販されており、またこの会社の製品カタログに記載されている。分析物制限膜層として使用できるその他の材料としては、適合性のある、ポリウレタン類、酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコーンラバー、またはこれらの材料の組み合わせ、例えばシロキサン−非シロキサン共重合体など(但し、これらに限定しない)が挙げられる。
【0091】
本発明の一部の実施の形態においては、センサ層の酵素に接触する分析物の量を調節することのできる親水性膜コーティングを含む分析物調節層を塗布する方法で、センサを製造する。例えば、本発明のグルコースセンサに加えられるカバー層は、電極上のグルコースオキシダーゼ酵素層に接触するグルコースの量を調節するグルコース制限膜を含むことができる。このようなグルコース制限膜は、この目的に適うことが知られる様々な材料、例えば、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン類、ポリウレタン類、酢酸セルロース類、Nafion、ポリエステルスルホン酸類(例えば、Kodak AQ)、ヒドロゲル類、または、この目的に適うと当業者に知られているその他の膜から作ることができる。過酸化水素をリサイクルする能力を備えたセンサに関わる本発明のある実施の形態では、グルコースオキシダーゼ酵素層上に配置した膜層は、センサの置かれている環境中に過酸化水素が放出されるのを防ぐよう働き、過酸化水素分子と電極感知素子との接触を促す。
【0092】
本発明の方法の一部の実施の形態では、カバー層(例えば、分析物調節膜層)とセンサ化学物層との接着性を良くするため、それらの間に接着促進剤層を配置する。接着促進剤層は、センサ装置の安定性を向上させるその能力によって選ぶ。接着促進剤層の組成は、センサを安定化する以外にも、多くの所望の特性を持つように選ぶ。例えば、接着促進剤層に用いられる一部の組成物は、雑音除去に役立つよう、また、所望の分析物の物質移動を制御するように選ぶ。接着促進剤層は、これらの層の間の接着性を高めることが当該技術で知られる様々な材料から作ることができ、また当該技術で公知の様々な方法で塗布することができる。典型的に、この接着促進剤層は、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物を含んでいる。本発明のある実施の形態では、接着促進層および/または分析物調節層は、隣接して存在するシロキサン部分を架橋するその能力によって選ばれた試剤を含んでいる。本発明の別の実施の形態では、接着促進層および/または分析物調節層は、隣接する層に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部分を架橋させるその能力によって選ばれた試剤を含んでいる。必要に応じた実施の形態においては、AP層には、グルコース制限膜などの分析物調節層中に典型的に存在するポリマーであるポリジメチルシロキサン(PDMS)が更に含まれている。配合物の例示的な実施の形態には、0.5〜20%のPDMS、一般に5〜15%のPDMS、最も一般的には10%のPDMSが含まれている。AP層へのPDMSの添加は、センサを製造する際にAP層に発生する正孔またはギャップを生じにくくするという点で有益といえる。
【0093】
先に述べたように、センサ層の間の接着性を高めるために一般に用いられる結合剤は、γ−アミノプロピルトリメトキシシランである。シラン化合物は通常、適当な溶媒と混合して液体混合物とする。この液体混合物は、次に、スピンコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、ミクロディスペンスなど様々な方法(但し、これらに限定しない)で、ウェハまたは平面状感知デバイス上に塗布または定着することができる。ミクロディスペンス法は、材料の微小粒子をデバイスの複数の所定位置に分配する、自動化された処理として行うことができる。更に、“リフト・オフ”などのフォトリソグラフ技術、またはフォトレジストキャップを用いて、生成する選択透過性フィルム(即ち、選択透過性を持つフィルム)の結合構造を画定しても良い。シラン混合物の生成での使用に適した溶媒としては、水溶媒、水混和性有機溶媒、およびこれらの混合物が挙げられる。アルコール系水混和性有機溶媒とその水性混合物が特に有用である。これらの溶媒混合物には更に、例えば、分子量が約200〜約6,000の範囲のポリエチレングリコール類(PEG)などの非イオン界面活性剤を加えても良い。混合物に対して約0.005〜約0.2g/dLの濃度で液体混合物へこれらの界面活性剤を加えると、生成する薄膜が平面化し易くなる。更に、シラン試剤を塗布する前にウェハ表面にプラズマ処理を行うと、より平らな層が定着し易い改質表面とすることができる。更に、水と混和しない有機溶媒もシラン化合物の溶液の調製に使用できる。このような有機溶媒の例としては、ジフェニルエーテル、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、またはこれらの混合物(但し、これらに限定しない)が挙げられる。プロトン溶媒またはその混合物を用いる場合、水が存在するとアルコキシ基の加水分解が起きて有機ケイ素水酸化物類(特に、n=1のとき)が生じ、これが縮合してポリ(オルガノシロキサン)類となる。これら加水分解したシラン試薬は更に、基板表面に存在するヒドロキシルなどの極性基とも縮合できる。非プロトン溶媒を用いる場合、シラン試薬上に最初からあるアルコキシ基は、大気中の水分で十分に加水分解する。シラン化合物(n=1または2の場合)のR’基は、次に塗布する追加の層と機能的に適合性があるように選ぶ。R’基は通常、酵素が基板表面へ共有結合するために有用な末端アミン基を含んでいる(Murakami, T. et al., Analytical Letters 1986, 19, 1973-86 に記載のように、例えばグルタルアルデヒドなどの化合物が架橋剤として使用される)。
【0094】
センサの他のコーティング層と同じように、接着促進剤層に、当該技術で公知の1つ以上の適当な放射および/または化学的および/または熱硬化工程を行うことができる。別の実施の形態では、酵素層を十分に架橋させて、あるいは別の方法により、接着促進剤層を用いずにセンサ化学物層に膜カバー層を直接配置することができる。
【0095】
本発明の一つの実施の形態は、ベース層を準備する工程と、ベース層上にセンサ層を形成する工程と、センサ層上に酵素層をスピンコーティングする工程と、次に、センサ上に分析物接触層(例えば、グルコース制限膜などの分析物調節層)を形成する工程と、によってセンサを製造する方法であって、分析物接触層は、酵素層に接触する分析物の量を調節するものである。一部の方法では、酵素層をセンサ層上で蒸気架橋する。本発明の典型的な実施の形態において、センサ層は、少なくとも1つの作用電極と少なくとも1つの対電極とを含むよう形成する。一部の実施の形態では、酵素層を、作用電極の少なくとも一部と対電極の少なくとも一部の上に形成する。典型的に、酵素層は、グルコースオキシダーゼとソルビン酸カリウムとリン酸カリウム緩衝液とを含み、グルコースオキシダーゼの濃度が約90〜約110KU/mlであり、ソルビン酸カリウムの濃度が約0.12〜約0.18(w/v)%であり、リン酸カリウム緩衝液の濃度が約0.01Mである配合物を用いて形成する。具体的な方法では、酵素層は、キャリアタンパク質と一定の比で混合してセンサ層上に被覆することで安定化した、グルコースオキシダーゼを含んでいる。典型的に、キャリアタンパク質はアルブミンである。一般にこのような方法には、グルコースオキシダーゼ層と分析物接触層との間に配置した接着促進剤層の形成工程が含まれる。必要に応じて、分析物接触層を形成する前に、接着促進剤層に硬化処理を行う。
【0096】
本発明に関連する実施の形態は、ベース層を準備する工程と、ベース層上に、少なくとも1つの作用電極と少なくとも1つの対電極とを含むセンサ層を形成する工程と、スピンコーティング法によってセンサ層上にグルコースオキシダーゼ層(グルコースオキシダーゼを一定比率のアルブミンと混合して典型的に安定化させた層)を形成する工程と、次に、グルコースオキシダーゼ層に接触するグルコースの量を調節するよう、グルコースセンサ上にグルコース制限層を形成する工程と、によるグルコースセンサの製造法であって、グルコースオキシダーゼ層は、作用電極の少なくとも一部分と対電極の少なくとも一部分とを覆っている。典型的に、グルコースオキシダーゼは、約90〜約110KU/mlのグルコースオキシダーゼと、約0.12〜約0.18(w/v)%のソルビン酸カリウムと、約0.01Mのリン酸緩衝液とを含む配合物中に含まれている。このような工程では、センサ層上に形成されるグルコースオキシダーゼ層の厚さは典型的に、2、1、0.5、0.25、または0.1μm以下である。一般に、グルコースオキシダーゼコーティングを、センサ層上で蒸気架橋する。必要に応じて、グルコースオキシダーゼコーティングはセンサ層全体を覆っている。本発明の一部の実施の形態では、グルコースオキシダーゼ層と分析物接触層との間に接着促進剤層を配置する。本発明のある実施の形態では、分析物センサは、典型的に電気絶縁性保護層である1つ以上のカバー層を更に含む(例えば、図2の要素106を参照)。典型的に、このようなカバー層は、分析物調節層の少なくとも一部の上に配置する。
【0097】
C.本発明の分析物センサ装置の使用法
本発明の実施の形態は、哺乳動物の体内にある分析物を感知する方法を含み、この方法は、実施の形態の分析物センサを哺乳動物に埋込む工程と、次に、作用電極での電流の変化を感知する工程と、分析物を感知するよう電流の変化と分析物の存在とを相関させる工程と、を含んでいる。このような方法の一つでは、分析物センサ装置は哺乳動物中のグルコースを感知する。先に検討した材料から製造した、および/または構造を持つ特定の分析物センサは、哺乳動物中の分析物を感知する様々な方法を可能とするような、非常に好ましい特性を多く備えている。例えばこのような方法で、哺乳動物に埋込んだ分析物センサ装置は、1、2、3、4、5、または6ヶ月以上もの間、哺乳動物の体内において分析物を感知するよう機能する。典型的に、このように哺乳動物に埋込まれた分析物センサ装置は、分析物がセンサに接触してから15、10、5、または2分以内に分析物に応答した電流の変化を感知する。このような方法では、センサは、哺乳動物の体の様々な場所、例えば、脈管内および非脈管内空間の両方に埋込むことができる。
【0098】
III.本発明のキット
本発明の実施の形態は、先に述べたような分析物の感知に有用なキットおよび/またはセンサセットを含む。キットおよび/またはセンサセットは典型的に、容器と、ラベルと、前述の分析物センサとを含んでいる。適当な容器としては、例えば、金属ホイルなどの素材から作られた開封の容易な包装、瓶、バイアル、シリンジ、および試験管などが挙げられる。容器は、金属類(例えば、ホイル類)、紙製品、ガラス、またはプラスチックなど、様々な材料から作ることができる。容器上の、または容器に添付したラベルは、このセンサが、所定の分析物の評価に使われることを示している。一部の実施の形態では、容器には、グルコースオキシダーゼの層で覆われたグルコースセンサが入っている。典型的にグルコースオキシダーゼ層は、約90〜約110KU/mlのグルコースオキシダーゼと、約0.12〜約0.18(w/v)%のソルビン酸カリウムと、約0.01Mのリン酸緩衝液とを含む配合物から調製する。キットおよび/またはセンサセットは、分析物環境にこのセンサを入れ易くするよう設計された要素またはデバイス、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ類、針、注射器、および使用法を説明した添付文書など、販売者や使用者の立場から見て好ましいその他の材料を更に含んでいても良い。
【0099】
以下の実施例で本発明を更に詳細に述べるが、これは説明のためであって、いかなる方法であっても本発明を限定しようとするものではない。本明細書において挙げられた全ての特許および参照論文はその内容を全て本件に引用して援用する。
【実施例】
【0100】
実施例1:
<U400ヒト組換えインスリン(HRI)および濯ぎ緩衝液中におけるポロキサマー171含量の測定>
この手順は、U400ヒト組換えインスリン(HRI)医薬製品および濯ぎ緩衝液中におけるポロキサマー171(Genapol)含量の、蒸発光散乱検出器を用いた高速液体クロマトグラフ法による測定を述べている。この手順では、ポロキサマー171を試料から酢酸エチルへ抽出した後、抽出液を濃縮した。濃縮抽出液を、次にメタノールに溶解し、蒸発光散乱検出器を備えたHPLCを用いて分析した。
【0101】
この手順を、ヒト組換えインスリン医薬製品および濯ぎ緩衝液中におけるポロキサマー171(Genapol)の測定に適用した。
【0102】
装置および材料:
高速液体クロマトグラフ(蒸発光散乱検出器、定温オートサンプラー、注入器、および適当なデータ収集装置を備え付けたもの)、カラム(ウォーターズ(Waters)XTerra(登録商標)MS C8(4.6×150mm)5μm、または確認済みの同等品)、天秤、pHメーター、メスシリンダー(A級)、メスフラスコ(A級)、ホールピペット(A級)、マイクロピペット、ピペットチップ、150ml丸底フラスコ(24/40)、125ml分液漏斗(FEP)、100mlビーカー、振とう器、ロータリーエバポレータ、遠心機(ベックマン・クールター(Beckman Coulter)(登録商標)、Allegra(登録商標)25R、加速度4600×g、または同等品)、50ml遠心管(ポリプロピレン)、ボルテックスミキサ(Vortex mixer)、窒素ガスタンク。
【0103】
化学薬品類:
メタノール(高純度溶媒)、酢酸エチル(A.C.S試薬)、プロセス水または同等品、塩酸(6N、少なくとも試薬グレード)、塩化亜鉛(少なくとも試薬グレード)、ポロキサマー171。
【0104】
手法:
[試薬の調製]
[0.1mM塩酸溶液(100ml)の調製]
約2,500mlのプロセス水を入れた4,000mlのメスシリンダーに、5mlの6N塩酸をピペットで量り入れた。プロセス水で容量が3,000mlになるまで希釈し、原液Aとした。100mlのメスシリンダーに、1mlの原液Aをピペットで量り入れ、容量までプロセス水で希釈した。
【0105】
[塩化亜鉛溶液(50ml)の調製]
2.5gの塩化亜鉛を約5mlの0.1mM塩酸に溶解した。プロセス水で溶液の体積を50mlに調節した。
【0106】
[標準溶液の調製]
[標準原液(1,250μg/ml)の調製]
化学天秤で約125mgのポロキサマー171参照用標準を量り取った。約80mlのメタノールを入れた100mlのメスフラスコへ注意深くポロキサマー171を移した。ポロキサマー171が溶解するまで良く混ぜた。メタノールを加えて容量を100mlとし、混合した。
【0107】
[標準溶液1(62.5μg/ml)]
100.0mlのメスフラスコに、5.0mlの標準原液をピペットで量り入れ、メタノールで希釈して100.0mlの最終容量とした。
【0108】
[標準溶液2(100μg/ml)]
25.0mlのメスフラスコに、2.0mlの標準原液をピペットで量り入れ、メタノールで希釈して25.0mlの最終容量とした。
【0109】
[標準溶液3(125μg/ml)]
100.0mlのメスフラスコに、10.0mlの標準原液をピペットで量り入れ、メタノールで希釈して100.0mlの最終容量とした。
【0110】
[標準溶液4(150μg/ml)]
25.0mlのメスフラスコに、3.0mlの標準原液をピペットで量り入れ、メタノールで希釈して25.0mlの最終容量とした。
【0111】
[標準溶液5(187.5μg/ml)]
100.0mlのメスフラスコに、15.0mlの標準原液をピペットで量り入れ、メタノールで希釈して100.0mlの最終容量とした。
注:この方法では、標準を抽出しない。
【0112】
[分析手順(試料調製および分析)]
[U400HRI(試料)からのインスリンの沈殿]
50mlの遠心管に、25.0mlのメスピペットを用いて、25.0mlの各試料を量り入れた。1.0mlの塩化亜鉛溶液を加えた。それぞれの管を密栓後、溶液が良く混ざり合うまでボルテックスを用いて溶液を撹拌した。少なくとも30分間、混合物を室温で静置した。溶液を30分間、4,600×gで遠心分離した。上澄み液を125mlの分液漏斗へ移した(漏斗のストップコックが閉位置にあることを確認する)。沈殿物を5mlの冷プロセス水(5±3℃)で洗い、溶液を30分間、4,600×gで遠心分離した。洗浄した上澄み液を125mlの分液漏斗に加え併せた。
【0113】
[濯ぎ緩衝試料溶液の調製]
濯ぎ緩衝液中のポロキサマー171を分析するため、ピペットを用いて25.0mlの試料を125ml分液漏斗へ入れた。濯ぎ緩衝液は直接抽出することが可能で、沈殿工程を行う必要はない。
【0114】
[試料溶液の抽出]
分液漏斗に20mlの酢酸エチルを加えた。漏斗をしっかり密栓した。分液漏斗を振とう器に取り付け、速度10(30回転/分)で10分間振とうした。振とう器から分液漏斗を外してゆっくりと逆さまにした後、コックを開いて余分な圧力を逃がした。圧力を開放後、コックを閉めて分液漏斗を漏斗台に置いた。漏斗内で二層に分離させた(5分間平衡とする)。(注:圧力が溜まり過ぎてコックが飛び、有害と予想される化学物質が吹き出さないよう、時々ガス抜きを行う)活栓を緩め、100mlの清浄なビーカーを漏斗の下に置いた。注意しながらコックを開けて、下層(水層)をビーカーへ流出させた。上の有機層を清浄な150mlの丸底フラスコへ流出させた。下層(水層)を入れておいたビーカーから水層を漏斗に注ぎ入れ、漏斗のストップコックが閉位置にあることを確認した。
【0115】
漏斗に2回目の20mlの酢酸エチルを加えて栓をした。次に、上記の工程を繰り返した。分液漏斗を振とう器にセットし、速度10(30回転/分)で10分間振とうした。振とう器から分液漏斗を外してゆっくりと逆さまにした後、コックを開いて余分な圧力を逃がした。圧力を開放後、コックを閉めて分液漏斗を漏斗台に置いた。漏斗内で二層に分離させた(5分間平衡とする)。(注:圧力が溜まり過ぎてコックが飛び、有害と予想される化学物質が吹き出さないよう、時々ガス抜きを行う)活栓を緩め、100mlの清浄なビーカーを漏斗の下に置いた。注意しながらコックを開けて、下層(水層)をビーカーへ流出させた。上の有機層を清浄な150mlの丸底フラスコへ流出させた。下層(水層)を入れておいたビーカーから水層を漏斗に注ぎ入れ、漏斗のストップコックが閉位置にあることを確認した。
【0116】
漏斗に3回目の20mlの酢酸エチルを加えて栓をした。次に、この3回目の溶媒と共に上記の工程をもう一度繰り返した。
【0117】
同じ150mlの丸底フラスコに3回分の有機抽出液を併せた。ロータリーエバポレータを用いて抽出液から酢酸エチルを蒸発させた。丸底フラスコを35±5℃の湯浴に漬けて蒸発を制御した。抽出溶媒(酢酸エチル)を完全に留去した。150mlの丸底フラスコに、2ml(2mlのホールピペットを使用)のメタノールを加えて試料を再構成した。慎重にフラスコを数回回転させて、フラスコ中のポロキサマー171を全てメタノールに溶解させた。この試料をすぐに2mlのHPLC用バイアルに移してしっかり栓をし、メタノールの蒸発を防いだ。試料は2連で調製し、HPLCに注入した。
【0118】
[機器条件]
検出器条件
検出:ELSD
管温度:85±2℃
窒素ガス流速:2.2リットル/分
レンジ:4
インパクタ:オフ
クロマトグラフ条件
移動相A:100%メタノール
移動相B:100%プロセス水
試料注入量:100μl
ランタイム:23分
流速:1.0ml/分
カラム温度:40±2℃
試料温度:5℃(4〜7℃)
【0119】
移動相勾配:
【表1】

注:ポロキサマー171のピークが保持時間の枠の中に入るよう、必要に応じてA:Bの組成を調節した。
【0120】
[クロマトグラフ法]
前述のようにクロマトグラフ装置を組み立てた。ブランクとしてメタノールを用い、試料セットの最初に注入した。明瞭なバックグラウンドを得るには、2回のブランクの注入が必要である。
【0121】
標準溶液3を6回注入した。ポロキサマー171ピークの保持時間は、7〜12分である。ピークがこの保持枠に入らない場合は、A:Bの組成を調節して溶離液組成を調節した。移動相Aを増やすとポロキサマー171の保持時間は短くなり、移動相Bを増やすとポロキサマー171の保持時間は長くなる。データ収集装置を用いてピークを積分した(谷−谷間:ウォーターズによるソフトウェア)。クロマトグラムからカウントしたポロキサマー171ピークのピーク面積を記録した。
【0122】
[装置適合性]
試料分析時には、装置の適合性を求めなければならない。
[オートインジェクタの精度]
ポロキサマー171ピークのピーク面積を求める。6回の注入から得た面積の%RSDは5%以下でなければならない。RSDが5%以上の場合、最初のセットの値を棄却し、更に6回の注入を行ってピークを積分し、ポロキサマー171の面積カウントのRSDを計算する。
【0123】
[テーリング(USP)]
標準溶液3の最初の注入から、ポロキサマー171ピークに関するUSPテーリングを求める。このテーリングは、2.0以下でなければならない。テーリングが2.0以上の場合、装置のトラブルシューティングが必要と考えられる。
【0124】
[試料分析手順]
標準溶液(1、2、3、4、および5)(2連)と試料溶液(1連)の各調製物をそれぞれ注入した。標準チェック(標準溶液3)は作業の最後と、作業の間では少なくとも、10回の試料注入毎に注入しなければならない。各溶液のクロマトグラムのポロキサマー171ピークの面積を測定し、記録した。
【0125】
[データ解析]
各標準溶液について行った2回の注入より、面積カウントの平均を計算した。標準の平均面積カウントおよび試料の面積カウントの対数(底は10)を求めた。標準注入について、log10(平均標準面積)に対するlog10(濃度)の最小二乗適合グラフをプロットした。標準曲線の相関係数、勾配、および切片を求めた。次の式を用いて、U400HRI中に含まれるポロキサマー171の濃度を求めた。
(数2)
ポロキサマー171含有量(μg/ml)=
Antilog10[{log10(試料面積)−切片}/勾配]×希釈係数/0.94
式中、希釈係数=2/25
【0126】
2つの調製物の平均を記録した。結果は少数点以下2桁(0.01)で示した。
注:U400HRI試料の測定では、検証の結果に基づき、0.94の回収率(revovry factor)を加味した。
【0127】
次の式を用いて、濯ぎ緩衝液中に含まれるポロキサマー171の濃度を求めた。
(数3)
ポロキサマー171含有量(μg/ml)=
Antilog10[{log10(試料面積)−切片}/勾配]×希釈係数
式中、希釈係数=2/25
2つの調製物の平均を記録した。結果は少数点以下2桁(0.01)で示した。
【0128】
[データの受け入れ基準]
[校正標準とチェック標準との相関]
算出したチェック標準濃度を、直線性に用いた対応する標準と比較した(校正標準の一つ、標準3をチェック標準として用いた)。
(数4)
相関(%)=
(チェック標準の濃度/計量した標準の量に基づいたチェック標準の濃度)×100
式中、
(数5)
算出したチェック標準濃度(μg/ml)=
Antilog10[{log10(チェック標準面積)−切片}/勾配]
【0129】
2つの標準の相関は、95〜105%でなければならない。
【0130】
[試料の反復精度]
試料の調製は2連で行う。各調製物の結果は平均の±5%以内で一致しなければならない。
【0131】
実施例2:
<水溶液中の様々な非イオン界面活性剤の測定>
【0132】
目的:
この実験は、先の実施例1でポロキサマー171の測定に用いた方法が、他の非イオン界面活性剤の分析にも使えることを示す。
【0133】
この実験を行うため、5種類の界面活性剤を選んだ。それぞれの界面活性剤を調製し、標準として125ppm濃度のものを注入した(NB#1703 p.73)。更に、記載のポロキサマー法(NB#2062−35)を用いて、それぞれの界面活性剤を溶液から抽出した。
【0134】
装置/材料:
トリトンX−100 製造者 シグマ、カタログ番号 T−9284
トリトンX−405 製造者 MPバイオメディカル社(MP Biomedicals LLC)、
カタログ番号 152411
トリトンBRIJ−35 製造者 ICNバイオメディカル社(ICN Biomedicals Inc)、
カタログ番号 101111
ツイーン20 製造者 シグマ、カタログ番号 P−7949
ツイーン80 製造者 TGIアメリカ(TGI America)、
カタログ番号 T0546
【0135】
結果:
この試験の結果を表2に示す。
【表2】

*2回の注入の平均
【0136】
結論:
表2に示された結果より、実施例1でポロキサマー171の測定に用いた方法は、他の非イオン界面活性剤の分析にも使用できるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】グルコースとグルコースオキシダーゼとの、公知の反応を示す概略図である。
【図2】典型的な分析物センサの配置を示す線図である。
【図3】装置適合クロマトグラムの代表的なデータである。
【図4】参照標準の代表的なクロマトグラムである。
【図5】U400HRI試料の代表的なクロマトグラムである。
【図6】濯ぎ緩衝液試料の代表的なクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度を求める方法であって、
(a)前記水溶液をクロマトグラフ分離工程にかける工程と、
(b)水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度を求めるよう、蒸発光散乱法を用いて、工程(a)で得た前記水溶液を分析する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記非イオン界面活性剤はポロキサマーであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記非イオン界面活性剤は、ポロキサマー171、トリトン(Triton)X−100、トリトンX−405、トリトンBRIJ−35、ツイーン(Tween)20、またはツイーン80であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記非イオン界面活性剤は、クロマトグラフ分離工程の前に前記水溶液から抽出されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記水溶液から抽出された前記非イオン界面活性剤は、クロマトグラフ分離工程の前に濃縮されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記クロマトグラフ分離工程は逆相クロマトグラフ法を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記クロマトグラフ分離工程は高圧液体クロマトグラフ法を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記水溶液は薬学的に許容可能な組成物を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記水溶液は治療用ポリペプチドを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記水溶液はインスリンを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記水溶液中の前記非イオン界面活性剤の濃度は臨界ミセル濃度以下であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記水溶液中の前記非イオン界面活性剤の濃度は、約0.1〜約100ppm(百万分率)であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
前記水溶液中の前記非イオン界面活性剤の濃度は、約1〜約20ppmであることを特徴とする方法。
【請求項14】
水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度を求める方法であって、
(a)水溶液から非イオン界面活性剤を抽出する工程と、
(b)工程(a)で得た前記非イオン界面活性剤を濃縮する工程と、
(c)工程(b)で得た濃縮した前記非イオン界面活性剤を分析する工程と、
を含み、
濃縮した前記非イオン界面活性剤は、水溶液中の非イオン界面活性剤の濃度を求めるため、蒸発光散乱検出器を接続した高速液体クロマトグラフ法で分析される、
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
(a)グルコースオキシダーゼと、
(b)ソルビン酸カリウムと、
(c)リン酸カリウム緩衝液と、
を含む組成物であって、
前記グルコースオキシダーゼの濃度は約90〜約110KU/mlであり、
前記ソルビン酸カリウムの濃度は約0.12〜約0.15(w/v)%であり、
前記リン酸カリウム緩衝液の濃度は約0.01Mである、
ことを特徴とする組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物であって、
前記グルコースオキシダーゼはプラスチック容器中で少なくとも6ヶ月間安定であることを特徴とする組成物。
【請求項17】
請求項15に記載の組成物であって、
前記グルコースオキシダーゼの濃度は約100KU/mlであることを特徴とする組成物。
【請求項18】
請求項15に記載の組成物であって、
前記ソルビン酸カリウムの濃度は約0.15(w/v)%であることを特徴とする組成物。
【請求項19】
プラスチック容器中で少なくとも6ヶ月間安定なグルコースオキシダーゼ組成物の製造方法であって、
(a)グルコースオキシダーゼ溶液を調製する工程と、
(b)工程(a)で得た前記グルコースオキシダーゼ溶液を濃縮する工程と、
を含み、
工程(b)で得た濃縮グルコースオキシダーゼ溶液は、約90〜約110KU/mlの濃度のグルコースオキシダーゼと、0.12〜約0.18(w/v)%の濃度のソルビン酸カリウムと、約0.01Mの濃度のリン酸カリウム緩衝液とを含み、その結果、プラスチック容器中で少なくとも6ヶ月間安定なグルコースオキシダーゼ組成物ができる、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記グルコースオキシダーゼ溶液は、固相抽出を含む操作により、またはクロマトグラフ法を含む操作により、濃縮されることを特徴とする方法。
【請求項21】
哺乳動物に埋込むためのセンサ装置の製造方法であって、
ベース層を準備する工程と、
前記ベース層上に伝導層を形成する工程と、
前記伝導層上に分析物感知層を形成する工程と、
必要に応じて、前記分析物感知層上にタンパク質層を形成する工程と、
前記分析物感知層または必要に応じた前記タンパク質層の上に接着促進層を形成する工程と、
前記接着促進層の上に配置した分析物調節層を形成する工程と、
前記分析物調節層の少なくとも一部の上に配置したカバー層を形成する工程と、
を含み、
前記伝導層は作用電極を含み、
前記分析物感知層は、約90〜約110KU/mlの濃度のグルコースオキシダーゼと、約0.12〜約0.18(w/v)%の濃度のソルビン酸カリウムと、約0.01Mの濃度のリン酸カリウム緩衝液と、を含む組成物を用いて形成し、
前記分析物調節層は、それを通る分析物の拡散を調節する組成物を含み、
前記カバー層は更に、前記分析物調節層の少なくとも一部の上に開口部を含む、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法で製造されたセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−536097(P2008−536097A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556142(P2007−556142)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/001048
【国際公開番号】WO2006/088576
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(595038051)メドトロニック ミニメド インコーポレイテッド (71)
【Fターム(参考)】