説明

ポリマー套管及びそれを用いた電力ケーブル終端接続部

【課題】
電力ケーブルの終端接続を、ストレスコーンを用いることなく、ケーブルの中間接続と同様な作業で簡単に行えるポリマー套管を提供する。
【解決手段】
下端にケーブル導体接続部20を有する導体引出棒12と、この導体引出棒12の外周に設けられた固体絶縁層14と、この固体絶縁層14の外周に設けられた、外周に多数の笠部26を有するポリマー被覆体16とを備えたポリマー套管10において、導体引出棒12のケーブル導体接続部20を、固体絶縁層14の下端よりも下に突出させ、このケーブル導体接続部20を圧縮接続スリーブで構成する。導体引出棒の下端の圧縮接続スリーブ20と電力ケーブル端末部の導体とを圧縮接続して、その外周に接続部絶縁体を設ければよいので、終端接続部の構造がきわめて簡素化され、部品点数も少なくなり、接続作業が容易に行える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー套管と、それを用いた電力ケーブルの終端接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリマー套管は、CVケーブルのような固体絶縁層を有する電力ケーブルの終端接続に用いられる。従来のポリマー套管は、下端にケーブル導体挿入孔を有する導体引出棒と、この導体引出棒の外周に設けられた絶縁筒と、この絶縁筒の外周に設けられた、外周に多数の笠部を有するポリマー被覆体とを備えている。前記絶縁筒は、下端部に、ケーブル端末部のストレスコーンを受け入れるコーン状の受け入れ口を有しており、導体引出棒のケーブル導体挿入部は、このストレスコーン受け入れ口の奥に位置している(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−304632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のポリマー套管は、ケーブル端末部の導体を導体引出棒の導体挿入孔にプラグイン接続すると共に、ストレスコーンを絶縁筒の受け入れ口に押し付けて圧縮する構造である。したがってストレスコーンを圧縮するための押圧装置が必要であり、終端接続部の構造が複雑になり、現地での施工が面倒であるという難点がある。
【0005】
本発明の目的は、電力ケーブルの終端接続を、ストレスコーンを用いることなく、ケーブルの中間接続と同様な作業で簡単に行えるポリマー套管と、それを用いた電力ケーブル終端接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため本発明は、下端にケーブル導体接続部を有する導体引出棒と、この導体引出棒の外周に設けられた固体絶縁層と、この固体絶縁層の外周に設けられた、外周に多数の笠部を有するポリマー被覆体とを備えたポリマー套管において、前記導体引出棒のケーブル導体接続部が、前記固体絶縁層の下端よりも下に突出していることを特徴とするものである。なお、導体引出棒のケーブル導体接続部は、圧縮接続によりケーブル導体と接続する構造であることが好ましい。
【0007】
また、上記のポリマー套管を用いた本発明に係る電力ケーブル終端接続部は、前記ポリマー套管の固体絶縁層の下端から突出するケーブル導体接続部に、段剥ぎ処理された電力ケーブル端末部の導体を接続し、この導体接続部の外周と、ポリマー套管の固体絶縁層及び電力ケーブルの固体絶縁層とに跨がるように接続部絶縁体を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリマー套管の下端に突出している導体引出棒のケーブル導体接続部に、電力ケーブル端末部の導体を接続して、その外周に接続部絶縁体を設ければよいので、終端接続部の構造がきわめて簡素化され、部品点数も少なくなり、接続作業が容易に行えるという利点がある。またストレスコーンやその押圧装置を使用しないため、終端接続部の軸線方向の長さが短くなり、終端接続部を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
〔実施形態1〕 図1は本発明に係るポリマー套管の一実施形態を示す。図において、10はポリマー套管、12はポリマー套管10の中心を貫通する導体引出棒、14は導体引出棒10の外周に設けられた固体絶縁層、16は固体絶縁層14の外周に設けられたポリマー被覆体、18はポリマー套管10を固定するための取付金具である。
【0010】
導体引出棒12の下端はケーブル導体接続部12aである。この例では、ケーブル導体接続部12aは、導体引出棒12と一体に形成された圧縮接続スリーブ20で構成されている。圧縮接続スリーブ20はケーブル導体を挿入して圧縮接続する部分である。
【0011】
固体絶縁層14は、エポキシ樹脂よりなり、導体引出棒10の下端側に形成されている。固体絶縁層14の上端部にはベルマウス状の電界制御部19が形成され、かつ下端寄りの中間部にはフランジ部22が一体に形成されている。また固体絶縁層14の外周面には前記フランジ部22を含めて銀ペースト等により半導電層24が設けられている。
【0012】
ポリマー被覆体16は、シリコーンゴムからなり、固体絶縁層14のフランジ部22より上の部分と導体引出棒10の上端側を覆うように形成されている。ポリマー被覆体16の外周面には軸線方向に所定に間隔をおいて多数の笠部26が形成されている。
【0013】
取付金具18は、ポリマー被覆体16の下端部及び固体絶縁層14のフランジ部22と一体化されている。取付金具18には、パッキング装着用の環状溝28と、ポリマー套管固定用のボルト孔30が形成されている。固体絶縁層14のフランジ部22より下の部分は、取付金具18の下面より下に突出している。また導体引出棒12のケーブル導体接続部12aは、固体絶縁層14の下端よりもさらに下に突出している。即ち、このポリマー套管10の中で最も下に突出している。
【0014】
以上がポリマー套管10の構成である。次に、このポリマー套管10を用いた電力ケーブル終端接続部を、図2(A)〜(D)を参照して、施工手順に沿って説明する。電力ケーブル32はCVケーブルである。電力ケーブル32の端末部は、(A)に示すように段剥ぎ処理されて、導体34、固体絶縁層36、外部半導電層38が露出し、遮蔽層40が外被42上に折り返されている。電力ケーブル32の外周には、ワンピースジョイントタイプの接続部絶縁体44、保護金具46及びパッキング48が予め配置される。接続部絶縁体44は、内部半導電層44a、絶縁層44b、外部半導電層44cを一体化したものである。
【0015】
次に(B)に示すように、電力ケーブル32の導体34を導体引出棒12の圧縮接続スリーブ20に挿入し、両者を圧縮接続すると共に、その外周に半導電性テープ等を巻いて、ポリマー套管側の固体絶縁層14及び電力ケーブル側の固体絶縁層36と同じ外径の半導電層50を形成する。
【0016】
次に(C)に示すように、接続部絶縁体44を導体接続部上に引き戻して、縮径させる。これにより、接続部絶縁体44の内部半導電層44aが導体接続部上の半導電層50に密着し、絶縁層44bの両端部がポリマー套管側の固体絶縁層14及び電力ケーブル側の固体絶縁層36に密着し、外部半導電層44cの両端部がポリマー套管側の半導電層24及び電力ケーブル側の外部半導電層38に密着する。
【0017】
その後(D)に示すように、パッキング48を取付金具18の環状溝28に嵌め込み、保護金具46を引き戻して取付金具18に固定する。これによりパッキング48は、保護金具46の上端の鍔部46aと取付金具18とで挟み付けられる。その後、保護金具46の下端部に、外被42上に折り返しておいた遮蔽層40を接続した後、防食処理52を施せば、電力ケーブル終端接続部が完成する。
【0018】
このように、図1のポリマー套管10を使用すれば、ストレスコーンやストレスコーン押圧装置を使用することなく、簡単に電力ケーブル終端接続部を構成することができる。またストレスコーンを使用しないため、電力ケーブルの端末部の段剥ぎ処理の長さを短くでき、結果として終端接続部の長さを短くできる。
加えて、このポリマー套管10は、固体絶縁層14のフランジ部22を、取付金具18を用いて固定する構造なので、大型のものでも、支持枠などに安定した状態に固定できる利点もある。
【0019】
なお、この実施形態では、接続部絶縁体として、ワンピースジョイントタイプの接続部絶縁体44を使用したが、接続部絶縁体は、テープ巻きにより形成することもできるし、CSJ(cold shrinkable joint:常温収縮チューブ)によって形成することもできる。
またケーブル導体接続部12aの圧縮接続スリーブは別の部材にしてもよい。
【0020】
また、この実施形態では、ポリマー套管を垂直に立てた状態で電力ケーブルの端末部を接続する場合を説明したが、ポリマー套管は軽量であるので、水平に寝かせた状態で電力ケーブルの端末部を接続してから、垂直に立ち上げることも可能である。
【0021】
〔実施形態2〕 図3は本発明に係るポリマー套管の他の実施形態を示す。このポリマー套管10が実施形態1のものと異なる点は、ポリマー被覆体16内の固体絶縁層14の外周に電界緩和用の半導電ゴム層54を設けて、実施形態1で固体絶縁層14に設けていたベルマウス状の部分19を省略したことである。それ以外の構成は図1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。このようなポリマー套管でも実施形態1と同様にして電力ケーブル終端接続部を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るポリマー套管の一実施形態を示す半分切開正面図。
【図2】図1のポリマー套管を使用して電力ケーブル終端接続部を構成する手順を示す断面図。
【図3】本発明に係るポリマー套管の他の実施形態を示す半分切開正面図。
【符号の説明】
【0023】
10:ポリマー套管
12:導体引出棒
14:固体絶縁層
16:ポリマー被覆体
18:取付金具
20:圧縮接続スリーブ
22:フランジ部
24:半導電層
26:笠部
32:電力ケーブル
34:導体
36:固体絶縁層
38:外部半導電層
44:接続部絶縁体
46:保護金具
48:パッキング
50:半導電層
54:半導電ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端にケーブル導体接続部を有する導体引出棒と、この導体引出棒の外周に設けられた固体絶縁層と、この固体絶縁層の外周に設けられた、外周に多数の笠部を有するポリマー被覆体とを備えたポリマー套管において、前記導体引出棒のケーブル導体接続部が、前記固体絶縁層の下端よりも下に突出していることを特徴とするポリマー套管。
【請求項2】
請求項1記載のポリマー套管を用いた電力ケーブル終端接続部であって、前記ポリマー套管の固体絶縁層の下端から突出するケーブル導体接続部に、段剥ぎ処理された電力ケーブル端末部の導体を接続し、この接続部の外周と、ポリマー套管の固体絶縁層及び電力ケーブルの固体絶縁層とに跨がるように接続部絶縁体を設けたことを特徴とする電力ケーブル終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−325321(P2006−325321A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145728(P2005−145728)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【Fターム(参考)】