説明

ポリマー材料

ペレットまたは顆粒は、ポリマー材料、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、および逸散性材料、例えば、塩化ナトリウムを含む。顆粒は、医療用インプラントにおいて使用するための形状を作成するために射出成形において使用されてもよく、好都合には、部分的に多孔性である部品を形成するか、または多孔性フィルムを製造するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料に関し、特に、限定されないが、例えば、医療用インプラントまたはその部品に使用するための多孔性ポリマー材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルエーテルケトンから多孔性医療用インプラントを製造することは、特許文献1より知られている。この記載されている方法では、ポリエーテルエーテルケトンと塩(例えば、塩化ナトリウム)との混合物を型穴に入れ、圧縮および加熱して、塩ではなくポリエーテルエーテルケトンを溶解し、成形部分を形成する。続いて混合物を冷却して固化した後、成形材料を100℃の水浴につけ、成形部分から塩を溶解させて多孔性成形部分を画定する。
【0003】
不都合なことに、記載されている圧縮成形法は、多種類の部品の製造には適しておらず、汎用性を欠いている。例えば、この方法は概して、塩との良好な混和を実現するためにポリマー粉末を用いなければならず、その後の機械加工のための保管形状または単純な部品設計に限定される。加えて、圧縮に使用された力および導入された圧力に起因して、製造された部品が壊れやすくなっている危険性がある。さらに、これらの部品は、汚染のより高い危険性、ポリマー分解および気体の混入の危険性に晒される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/051307号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、多孔性材料の製造に関する課題に対処することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー材料および逸散性材料を含有する粒子を含む材料の集合体が提供される。
材料の集合体は、多孔性であるように調整される部品、例えば、医療用インプラントまたはその部品を製造するために、その後の工程段階において用いることができる。さらなる詳細を以下に記載する。
【0007】
前記材料の集合体は、0.1〜1mlの範囲、好ましくは0.3〜0.8mlの範囲、より好ましくは0.4〜0.8mlの範囲の体積を有する粒子を含有してもよい。好ましくは、集合体中の実質的に全ての粒子が前述の体積を有する。
【0008】
平均体積(材料の集合体中の粒子の総体積を前記粒子の総数で割ったもの)は、少なくとも0.1ml、好ましくは少なくとも0.3ml、より好ましくは少なくとも0.4mlであり得る。平均体積(前述)は0.8ml未満であり得る。
【0009】
前記材料の集合体は、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mmの直径を有する粒子を含有することができる。その直径は、6mm未満、好ましくは5mm未満、より好ましくは4mm未満であり得る。好ましくは、集合体中の実質的に全ての粒子が前述の直径を有する。
【0010】
前記粒子の平均径(全粒子の直径の総和を総数で割ったもの)は、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mmであり得る。その平均径は、6mm未満、好ましくは5mm未満、より好ましくは4mm未満であり得る。
【0011】
前記材料の集合体は、0.01g〜0.1gの範囲、適切には0.02g〜0.08gの範囲、好ましくは0.03g〜0.06gの範囲の重量を有する粒子を含有することができる。好ましくは、集合体中の実質的に全ての粒子が前述の平均重量を有する。
【0012】
材料の集合体中の粒子の平均重量(すなわち、全粒子の総重量を総数で割ったもの)は、0.01g〜0.1gの範囲、適切には0.02g〜0.08gの範囲、好ましくは0.03g〜0.06gの範囲にあってもよい。好ましくは、集合体中の実質的に全ての粒子が前述の平均重量を有する。
【0013】
前記粒子は、好ましくはペレットまたは顆粒である。
前記材料の集合体は、粒子を少なくとも1kg、好ましくは少なくとも5kg含有することができる。
【0014】
前記材料の集合体は、10〜90重量%、適切には20〜80重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜80重量%の逸散性材料を含む粒子を含有し得る。材料の集合体は、いくつかの場合において、50〜80重量%、60〜80重量%または70〜80重量%の逸散性材料を含有してもよい。
【0015】
前記材料の集合体は、10〜90重量%、適切には20〜80重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜80重量%の逸散性材料を含有し得る。材料の集合体は、いくつかの場合において、50〜80重量%、60〜80重量%または70〜80重量%の逸散性材料を含有してもよい。
【0016】
前記材料の集合体は、好ましくは、前記ポリマー材料および逸散性材料から本質的になる。
前記材料の集合体は、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは20〜60重量%の前記ポリマー材料を含有し得る。いくつかの場合には、前記材料の集合体は、20〜50重量%、20〜40重量%または20〜30重量%の前記ポリマー材料を含有してもよい。
【0017】
前記材料の集合体中の逸散性材料の重量に対するポリマー材料の重量の比は、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2であり得る。前記比は、10未満、好ましくは8以下、より好ましくは5以下であり得る。いくつかの場合においては、その比は0.25〜1の範囲にあってもよい。
【0018】
材料の集合体が、1種類よりも多いポリマー材料であって、内部に逸散性材料が分散している基体を画定するように調整されたポリマー材料を含有する場合、本明細書において言及される前記ポリマー材料の重量(または他の量)は、前記基体を画定するように調整された全てのポリマー材料の総重量の総計を示し得る。しかしながら、好ましくは、基体を画定するように調整されたポリマー材料の重量(または他の量)は単一のポリマー材料の重量を示す。好ましくは、前記材料の集合体中の粒子は、内部に逸散性材料が分散している基体を画定するように調整された単一のポリマー材料を含有する。
【0019】
前記材料の集合体は、ポリマー材料内に分散された1つよりも多い逸散性材料を含有するが、本明細書において言及される前記逸散性材料の重量(または他の量)は、全ての逸散性材料の総重量の総計を示してもよい。しかしながら、好ましくは、逸散性材料の重量(または他の量)は、単一の逸散性材料の重量を示す。好ましくは、前記材料の集合体中の粒子は、ポリマー材料内に分散された単一の逸散性材料を含有する。
【0020】
好ましくは、前記材料の集合体の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95重量%、特に約100%は、単一のポリマー材料および逸散性材料から構成される。
前記材料の集合体は、適切には、前記ポリマー材料および逸散性材料を含む均質な粒子を含有する。好ましくは、逸散性材料は、ポリマー材料の全体に分散され、かつ/または分布する。好ましくは、逸散性材料は、逸散性材料の大部分の粒子が逸散性材料の他の粒子と接触するように配置および分布される。すなわち、好ましくは、ごく少数の逸散性材料の粒子が前記ポリマー材料に完全に覆われる。これは、高レベルの逸散性材料を用いること、およびポリマー材料および逸散性材料が十分に混合され、均質な集合体を生成するのを確実にすることによって達成可能である。
【0021】
好ましくは、前記材料の集合体中の前記粒子は、融合ポリマー材料、例えば、ポリマー材料の融合粒子を含有する。前記融合ポリマー材料は、適切には、前記粒子全体で適切かつ実質的に連続しているネットワークを画定する。前記ネットワークは、適切には不規則に成形される。粒子中の逸散性材料は、前記ネットワークの部分同士の間に配置され、かつ/または前記ネットワークに接触し得る。逸散性材料は、互いに接触されてもよい個々の粒子を含んでもよいが、好ましくは互いに融合しない。前記材料の集合体中の、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、特に実質的に全ての粒子は、記載されている通りである。
【0022】
前記材料の集合体中の粒子は、好ましくは、ポリマー材料および逸散性材料の融解処理、例えば、押出工程を含む方法において得ることができる。例えば、ひも状の押出物を切断し、例えば細断して粒子を画定してもよい。
【0023】
前記ポリマー材料は、好ましくは、生体適合性ポリマー材料を含む。前記ポリマー材料は、好ましくは、熱可塑性ポリマーを含む。前記ポリマー材料は、生体吸収性または非生体吸収性であってもよい。生体吸収性ポリマーの例には、ポリ(ジオキサノン)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリシュウ酸アルキレン、ポリ無水物、およびそれらのコポリマーが挙げられる。非生体吸収性ポリマーの例には、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアリールエーテルスルホンおよびポリアリールエーテルケトンが挙げられる。
【0024】
前記ポリマー材料は、少なくとも4KJm−2、好ましくは少なくとも5KJm−2、より好ましくは少なくとも6KJm−2のノッチ付きアイゾット衝撃強度(0.25mmの切り欠きを有する80mm×10mm×4mmの被検査物(タイプA)、ISO180に従って23℃で試験される)を有してもよい。前記ノッチ付きアイゾット衝撃強度は、前述のように測定され、10KJm−2未満、適切には8KJm−2未満であってもよい。
【0025】
ノッチ付きアイゾット衝撃強度は、前述のように測定され、少なくとも3KJm−2、適切には少なくとも4KJm−2、好ましくは少なくとも5KJm−2であってもよい。前記衝撃強度は、50KJm−2、適切には30KJm−2未満であってもよい。
【0026】
前記ポリマー材料は、適切には、少なくとも0.06kNsm−2の溶融粘度(MV)を有し、好ましくは少なくとも0.09kNsm−2、より好ましくは少なくとも0.12kNsm−2、特に少なくとも0.15kNsm−2のMVを有する。
【0027】
MVは、適切には、400℃、1000s−1の剪断速度で操作されるキャピラリー流量計を用い、タングステンカーバイトダイ、0.5×3.175mmを用いて測定される。
【0028】
前記ポリマー材料は、1.00kNsm−2未満、好ましくは0.5kNsm−2未満のMVを有してもよい。
前記ポリマー材料は、0.09〜0.5kNsm−2の範囲、好ましくは0.14〜0.5kNsm−2の範囲、より好ましくは0.3〜0.5kNsm−2の範囲にあるMVを有してもよい。
【0029】
前記ポリマー材料は、23℃において、50mm/分の速度で試験されるISO527(被検査物タイプ1b)に従って測定される引張強度が少なくとも20MPa、好ましくは少なくとも60MPa、より好ましくは少なくとも80MPaであってもよい。引張強度は、好ましくは80〜110MPaの範囲、より好ましくは80〜100MPaの範囲にある。
【0030】
前記ポリマー材料は、ISO178に従って測定される曲げ強度(80mm×10mm×4mmの被検査物を23℃において、2mm/分の速度で3点曲げにより試験する)が少なくとも50MPa、好ましくは少なくとも100MPa、より好ましくは少なくとも145MPaであってもよい。曲げ強度は、好ましくは145〜180MPaの範囲、より好ましくは145〜164MPaの範囲にある。
【0031】
前記ポリマー材料は、ISO178に従って測定される曲げ弾性率(80mm×10mm×4mmの被検査物を23℃において、2mm/分の速度で3点曲げにより試験する)が少なくとも1GPa、適切には少なくとも2GPa、好ましくは少なくとも3GPa、より好ましくは少なくとも3.5GPaであってもよい。曲げ弾性率は、好ましくは3.5〜4.5GPaの範囲、より好ましくは3.5〜4.1GPaの範囲にある。
【0032】
前記ポリマー材料は、非晶質または半結晶であってもよい。ポリマー材料は、好ましくは半結晶である。
ポリマーの結晶化度のレベルおよび程度は、好ましくは、例えば、BlundellおよびOsborn(Polymer 24,953,1983)によって記載されているような広角X線回折(広角X線散乱またはWAXSとも呼ばれる)によって測定される。あるいは、結晶化度は示差走査熱量測定(DSC)によって評価されてもよい。
【0033】
前記ポリマー材料の結晶化度のレベルは、少なくとも1%、適切には少なくとも3%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%であり得る。特に好ましい実施形態では、結晶化度は25%を超えてもよい。
【0034】
前記ポリマー材料(結晶である場合)の融解吸熱(Tm)の主要ピークは少なくとも300℃であってもよい。
前記ポリマー材料は、一般式
【0035】
【化1】

で表される繰り返し単位、または一般式
【0036】
【化2】

で表される繰り返し単位を含有することができ、式中、A、B、CおよびDは独立して0または1を表し、EおよびE’は独立して酸素もしくは硫黄原子または直接結合を表し、Gは酸素もしくは硫黄原子、直接結合または−O−Ph−O−部分を表し、Phはフェニル基を表し、m、r、s、t、v、w、およびzはゼロまたは1を表し、Arは、1つ以上のフェニル部分を介して隣接部分に結合する以下の部分(i)〜(v)
【0037】
【化3】

のうちの1つから選択される。
【0038】
本明細書において特に記載のない限り、フェニル部分は、それが結合される部分に対して1,4−結合を有する。
前記ポリマー材料は、IVまたはVの繰り返し単位を含有するホモポリマーであってもよく、もしくはIVおよび/またはVの少なくとも2つの異なる単位のランダムまたはブロックコポリマーであってもよい。
【0039】
上記で検討した単位IVおよび/またはVを含むポリマー材料の代替物として、前記ポリマー材料は、一般式
【0040】
【化4】

で表される繰り返し単位を含有してもよく、または、一般式
【0041】
【化5】

で表される繰り返し単位を有するホモポリマーであってもよく、式中、A、B、C、およびDは独立して0または1を表し、E、E’、G、Ar、m、r、s、t、v、wおよびzは本明細書のいずれかの記載部分に説明されている通りである。
【0042】
前記ポリマー材料は、IVまたはVの繰り返し単位を含有するホモポリマー、もしくはIVおよび/またはVの少なくとも2つの異なる単位のランダムまたはブロックコポリマーであってもよい。
【0043】
好ましくは、前記ポリマー材料は、一般式IVの繰り返し単位を有するホモポリマーである。
好ましくは、Arは、以下の部分(vi)〜(x)
【0044】
【化6】

から選択される。
【0045】
(vii)において、中央のフェニルは、1,4−または1,3−置換されてもよい。好ましくは1,4−置換される。
適切なフェニル部分Arは、部分(ii)、(iii)、(iv)および(v)であり、これらのうち、部分(ii)、(iii)および(v)が好ましい。他の好ましい部分Arは、部分(vii)、(viii)、(ix)および(x)であり、これらのうち、部分(vii)、(viii)および(x)が特に好ましい。
【0046】
特に好ましい種類のポリマー材料は、ケトンおよび/またはエーテル部分と連結したフェニル部分から本質的になるポリマー(またはコポリマー)である。すなわち、好ましい種類において、ポリマー材料は、−S−、−SO−またはフェニル以外の芳香族基を含有する繰り返し単位を含有しない。記載されたタイプの好ましい生体適合性ポリマー材料には以下のものが含まれる。
(a)式IVの単位から本質的になるポリマーであって、Arは部分(v)を表し、EおよびE’は酸素原子を表し、mは0を表し、wは1を表し、Gは直接結合を表し、sは0を表し、AおよびBは1を表す(すなわち、ポリエーテルエーテルケトン)。
(b)式IVの単位から本質的になるポリマーであって、Eは酸素原子を表し、E’は直接結合を表し、Arは構造(ii)の部分を表し、mは0を表し、Aは1を表し、Bは0を表す(すなわち、ポリエーテルケトン)。
(c)式IVの単位から本質的になるポリマーであって、Eは酸素原子を表し、Arは部分(ii)を表し、mは0を表し、E’は直接結合を表し、Aは1を表し、Bは0を表す(すなわち、ポリエーテルケトンケトン)。
(d)式IVの単位から本質的になるポリマーであって、Arは部分(ii)を表し、EおよびE’は酸素原子を表し、Gは直接結合を表し、mは0を表し、wは1を表し、rは0を表し、sは1を表し、AおよびBは1を表す(すなわち、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン)。
(e)式IVの単位から本質的になるポリマーであって、Arは部分(v)を表し、EおよびE’は酸素原子を表し、Gは直接結合を表し、mは0を表し、wは0を表し、s、r、AおよびBは1を表す(すなわち、ポリエーテルエーテルケトンケトン)。
(f)式IVの単位を含むポリマーであって、Arは部分(v)を表し、EおよびE’は酸素原子を表し、mは1を表し、wは1を表し、Aは1を表し、Bは1を表し、rおよびsは0を表し、Gは直接結合を表す(すなわち、ポリエーテル−ジフェニル−エーテル−フェニル−ケトン−フェニル−)。
【0047】
前記ポリマー材料は、上記で定義した単位(a)〜(f)の1つから本質的になってもよい。あるいは、前記ポリマー材料は、上記で定義した(a)〜(f)から選択される少なくとも2つの単位を含むコポリマーを含んでもよい。好ましいコポリマーは、単位(a)を含有する。例えば、コポリマーは、単位(a)と(f)を含んでもよく、または単位(a)と(e)を含んでもよい。
【0048】
前記ポリマー材料は、好ましくは式(XX)
【0049】
【化7】

で表される繰り返し単位を含み、より好ましくはその単位から本質的になり、式中、t1、およびw1は独立して0または1を表し、ならびにv1は0、1または2を表す。好ましいポリマー材料は、t1=1、v1=0かつw1=0;t1=0、v1=0かつw1=0;t1=0、w1=1、v1=2;またはt1=0、v1=1かつw1=0である前記繰り返し単位を有する。より好ましくは、t1=1、v1=0かつw1=0;またはt1=0、v1=0かつw1=0である。最も好ましくは、t1=1、v1=0かつw1=0である。
【0050】
好ましい実施形態では、前記ポリマー材料は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンおよびポリエーテルケトンケトンから選択される。より好ましい実施形態では、前記ポリマー材料は、ポリエーテルケトンおよびポリエーテルエーテルケトンから選択される。特に好ましい実施形態では、前記ポリマー材料はポリエーテルエーテルケトンである。
【0051】
前記逸散性材料は、適切には、ポリマー材料および形成される粒子と組み合わせることができるが、後にポリマー材料との関連から実質的に除去され得る任意の材料を指す。
前記逸散性材料は、前記ポリマー材料の融点よりも高い融点を有してもよい。逸散性材料の融点は、前記ポリマー材料の融点よりも少なくとも100℃、適切には少なくとも200℃、好ましくは少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも350℃高くてもよい。逸散性材料の融点は、少なくとも450℃、好ましくは少なくとも500℃、より好ましくは少なくとも600℃、特に少なくとも700℃であってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記ポリマー材料が低融点(例えば、40℃)を有する場合、逸散性材料は生物学的材料、例えばコラーゲンチップでもよい。このような逸散性材料は、生物学的反応において、例えば、酵素消化によって除去することができる。
【0053】
前記材料の集合体は、適切にはポリマー材料に分散されている逸散性材料の個別の粒子を含有し得る。前記材料の集合体中の粒子に分散された前記逸散性材料は、1〜20000μmの範囲のD50を有してもよい。好ましくは、D50は10〜2000μmの範囲にある。いくつかの実施形態において、例えば、材料の集合体が骨誘導能に使用されるべき多孔性部材を製造するために使用される場合、骨成長に適した孔隙が形成されるように、D50は10〜1200μmの範囲にあってもよい。他の実施形態ではより低い多孔性が必要とされる場合があり、その場合、D50は10〜100μmの範囲にあってもよい。
【0054】
いくつかの場合では、逸散性材料は繊維状であってもよい。しかしながら、逸散性材料は粒子形態であることが好ましい。
前記逸散性材料は、その後の工程段階において溶解されてポリマー材料から分離されるように調整されてもよく、またはその逸散性材料がポリマー材料から除去されるように反応するように調整されてもよい。好ましくは、前記ポリマー材料をいかなる有意な程度にも溶解させない条件下で、溶媒によって可溶化し得る逸散性材料が選択される。
【0055】
前記逸散性材料は、好ましくは、その後の工程段階において、生物学的に安全な溶媒を用いて溶解され、ポリマー材料から分離されるように調整される。したがって、材料の集合体から作製された医療用インプラント中に溶媒残留物が残存したとしても、その残留物は、インプラントと関連した患者に重大な弊害をもたらすことにはならない。いくつかの場合において、逸散性材料は、酸または塩基を用いて除去されるように調整することができる。例えば、炭酸カルシウムを逸散性材料として用いる場合、塩酸を溶媒として用いることができる。デンプン/糖の逸散性材料は希硫酸を用いて除去され得る。また、シリカゲル逸散性材料は水酸化ナトリウムを用いて除去され得る。
【0056】
前記逸散性材料は、少なくとも5g/100ml、適切には少なくとも15g/100ml、好ましくは少なくとも20g/100ml、より好ましくは少なくとも25g/100ml、特に少なくとも30g/100mlの水への溶解性を有してもよく、各々の場合において、溶解性は25℃で測定される。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記逸散性材料または前記逸散性材料の一部は、インプラントが人体の生体位に存在する場合、インプラントから浸出するように調整されてもよい。この場合において、前記逸散性材料または前記逸散性材料の一部は、適切には上述される水溶性を有し、さらに、好ましくは生体内において無毒であり、かつ/または有害でない材料を遊離させるように調整される。逸散性材料または前記一部は、好ましくは、遊離された場合に有益な効果を有するように調整される。例えば、前記逸散性材料または前記逸散性材料の一部の溶解により、抗菌剤(例えば、銀もしくは抗生物質を含む)、放射性化合物(例えば、治療、研究、トレーシング、画像化、滑膜切除もしくは微量線量計測のためにアルファ、ベータまたはガンマ放射線を放つもの)、または骨の融合もしくは骨と関連した他の方法を促進し得る活性剤(例えば、活性剤はリン酸カルシウムであってもよい)が遊離され得る。
【0058】
記載されている粒子が非医療用途に使用される場合、逸散性材料は、着色剤、色素、潤滑剤、または使用時に放出されて所望の効果を生じる他の活性材料を含んでもよい。
前記逸散性材料は有機物または無機物であってもよい。逸散性材料は、好ましくは無機物である。
【0059】
前記逸散性材料は、好ましくは無毒である。
前記逸散性材料は、多糖、タンパク質、前記ポリマー材料以外のポリマー、または前記ポリマー材料を溶解しない溶媒に溶解性である他の無毒な材料を含んでもよい。
【0060】
前記逸散性材料は、塩、金属酸化物またはガラスを含んでもよい。
前記逸散性材料は、好ましくは水溶性である。逸散性材料は、糖、塩化ナトリウム、NaCO・10HO、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムおよび硫酸マグネシウム、ならびに前述のいずれかの水和形態から選択されてもよい。好ましくは、前記逸散性材料は塩であり、より好ましくは水溶性塩であり、特に水溶性ナトリウム塩である。塩化ナトリウムが好ましい。
【0061】
前記粒子は他の添加物を含んでもよい。このような他の添加物は、好ましくは、前記ポリマー材料の溶融処理温度、例えば、融点よりも高い融点を有する。好ましくは、このような他の添加物は、ポリマー材料の融点よりも、好ましくは少なくとも50℃高い分解温度を有する。
【0062】
他の添加物は生物活性剤であってもよい。例としては、ヒドロキシアパタイトおよびバイオガラスが挙げられる。前記他の活性物は、上記のような、人体の生体位に存在する場合にインプラントから浸出するように調整された逸散性材料であってよく、そのような逸散性材料についての前述の説明は、本明細書に記載された他の添加物に準用される。したがって、生物活性添加物は、材料の集合体から作製し得る部品、例えば、植込み型部品から、使用時に浸出されるように調整されてもよく、またはヒト組織(例えば、骨)の植込み型部品への融合を促進するように調整されてもよい。
【0063】
他の添加物は、補強剤を含んでもよく、材料の集合体から作られた部品の機械的特性を改善するように調整された添加物を含んでもよい。好ましい補強剤は繊維を含む。
前記繊維は、繊維性充填剤または非繊維性充填剤を含むことができる。前記繊維は、繊維性充填剤および非繊維性充填剤の両方を含有してもよい。
【0064】
前記繊維性充填剤は連続状態または不連続状態であってもよい。好ましい実施形態では、前記繊維性充填剤は不連続状態である。
好ましくは、不連続の繊維は、10mm未満、好ましくは7mm未満の平均長を有する。
【0065】
前記繊維性充填剤は、無機繊維性材料、高融解有機繊維性材料およびカーボン繊維から選択され得る。
前記繊維性充填剤は、無機繊維性材料、非融解および高融解有機繊維性材料、例えばアラミド繊維、およびカーボン繊維から選択され得る。
【0066】
前記繊維性充填剤は、ガラス繊維、カーボン繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、フッ化炭素樹脂繊維およびチタン酸カリウム繊維から選択することができる。好ましい繊維性充填剤は、ガラス繊維およびカーボン繊維である。
【0067】
繊維性充填剤は、ナノファイバーを含んでもよい。
前記非繊維性充填剤は、雲母、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、フェライト、粘土、ガラス粉末、酸化亜鉛、炭酸ニッケル、酸化鉄、石英粉末、炭酸マグネシウム、フッ化炭素樹脂および硫酸バリウムから選択され得る。非繊維性充填剤のリストには、さらに、グラファイト、炭素粉末およびナノチューブが含まれてもよい。非繊維性充填剤は、粉末または薄片状粒子の形態で導入することができる。
【0068】
好ましい補強剤は、ガラス繊維および/またはカーボン繊維である。
他の添加物は、放射線不透過剤、例えば、硫酸バリウム、および同時係属出願PCT/GB2006/003947に記載される他の放射線不透過剤を含んでもよい。最大20重量%、または最大5重量%の放射線不透過剤が含有されてもよい。好ましくは1重量%未満の放射線不透過剤が含有され、より好ましくは放射線不透過剤は含有されない。
【0069】
他の添加物は、着色剤、例えば、二酸化チタンを含有してもよい。最大3重量%の着色剤が含有されてもよいが、好ましくは1重量%未満の着色剤が含有され、より好ましくは着色剤は含有されない。
【0070】
前記材料の集合体は、最大15重量%、例えば最大10重量%の他の材料、すなわち、前記ポリマー材料および逸散性材料に追加される材料を含有してもよい。したがって、1つの好ましい実施形態では、前記材料の集合体は、20〜80重量%の逸散性材料(好ましくは単一種類の逸散性材料)、20〜80重量%のポリマー材料(好ましくは単一種類のポリマー材料)、および最大15重量%の他の材料、例えば、記載された種類の材料を含有する。別の好ましい実施形態では、前記材料の集合体は、40〜80重量%の逸散性材料(好ましくは単一種類の逸散性材料)、20〜60重量%のポリマー材料(好ましくは単一種類のポリマー材料)、および最大10重量%の他の材料、例えば、記載された種類の材料を含有する。さらに好ましい実施形態では、前記材料の集合体は、55〜80重量%の逸散性材料(好ましくは単一種類の逸散性材料)、20〜45重量%のポリマー材料(好ましくは単一種類のポリマー材料)、および最大5重量%の他の材料、例えば、記載された種類の材料を含有する。
【0071】
好ましくは、前記粒子(より好ましくは前記材料の集合体)は、ポリマー材料および逸散性材料から本質的になり、より好ましくは、単一種類のポリマー材料および単一種類の逸散性材料から本質的になる。
【0072】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る材料の集合体を作製するための方法が提供され、この方法は、
(a)ポリマー材料および逸散性材料を含む混合物を融解処理する工程と、
(b)前記混合物を粒子に成形する工程と
を含む。
【0073】
材料の集合体、粒子、ポリマー材料および逸散性材料は、前記第1の態様において記載された任意の特徴を有することができる。
工程(a)の最後において、混合物は、好ましくは実質的に均質である。第2の態様の方法は、工程(a)の前に、前記混合物を形成する工程を含む工程(a)を有してもよい。この方法は、ポリマー材料および逸散性材料を選択し、それらを接触させることを伴ってもよい。初期接触は周囲温度で生じさせてもよく、例えば、ポリマー材料および逸散性材料を乾燥混合してもよい。あるいはかつ好ましくは、例えばポリマー材料が融解するときの周囲温度を上回る温度において、逸散性材料をポリマー材料と初期接触させてもよい。好ましい実施形態では、混合機内、例えば混合機のスクリュー内で、逸散性材料をポリマー材料と初期接触させる。
【0074】
前記粒子が前記第1の態様に従って記載される他の添加物を含有する場合、前記他の添加物は、工程(a)において融解処理された混合物に含有されてもよく、工程(a)において形成されてもよい。第2の態様の方法に用いられる処理条件に耐えられる添加物を選択することが好ましい。
【0075】
特に前記混合物が塩または任意の他の潜在的な腐食成分を含有する場合、前記混合物中の材料を、混合物を調製する前に乾燥させ、それにより、この方法に使用される任意の装置の腐食を低減させることが好ましい。
【0076】
混合物の融解処理は、押出機で行うことができる。したがって、ポリマー材料および逸散性材料を、1つの押出機において混合し、かつ/または融解処理することができる。ポリマー材料および逸散性材料は、混合物をある長さに押出し、記載されたタイプの粒子を画定するように、例えば、切断、細断などによってその長さを粉砕して、粒子を画定するように融解処理されてもよい。このような粒子は、適切には融解処理において融解されたポリマー材料によって適切に画定される融合ポリマー材料を含み、その結果、前記ポリマー材料は適切にネットワークを画定し、前記逸散性材料がネットワーク内に配置される。なお、前記逸散性材料は前記融解処理によって融解されない。
【0077】
混合物は、適切には融解処理されて記載された前記粒子を画定し、その粒子は、適切にはその後冷却される。
本発明の第3の態様によれば、部品を作製するための方法が提供され、この方法は、
(a)ポリマー材料および逸散性材料を含有する粒子を含む材料の集合体を選択する工程と、
(b)前記材料の集合体を融解処理して、部品の少なくとも一部を画定する工程と、
(c)任意選択で、逸散性材料を除去する工程と
を含む。
【0078】
前記材料の集合体は、第1の態様に従って記載されるものであってもよく、かつ/または第2の態様に係る方法において作製されてもよい。
この方法は、非医療用途または医療用途において使用され得る。非医療用途には、フィルター、メッシュ、軽量部品、および潤滑剤を溶出するように調整された部品の製造が挙げられる。
【0079】
部品は、人体に組み込まれてもよく、または人体と関連付けられてもよいデバイスの一部または全体を構成してもよい。したがって、部品は、適切には医療用インプラントの一部または全体であってもよい。医療用インプラントは、軟組織または硬組織を置換または補足するように調整されてもよい。医療用インプラントは、骨を置換または補足し得る。医療用インプラントは、外傷性傷害または頭蓋顎顔面傷害の処置に使用され得る。医療用インプラントは、関節置換において、例えば、臀部の一部もしくは指関節の置換の一部として使用されるか、または脊髄外科手術において使用されてもよい。
【0080】
この方法では、前記材料の集合体は、前記材料の集合体中のポリマー材料の融解温度を上回る温度であるが、逸散性材料の融解温度よりも低い温度で適切に融解処理される。
前記材料の集合体は、好ましくは、押出機または成形機、例えば、射出成形機において融解処理される。押出または成型は、前記部品(またはその一部)を直接製造するために使用されてもよく、または、前記部品(またはその一部)の前駆体であって、前記部品(またはその一部)を画定するためにさらなる処理、例えば機械加工に供され得る前駆体を製造するために使用されてもよい。
【0081】
前記材料の集合体が押出機で融解処理される場合、繊維、棒、チューブ、バー、プレートまたはフィルムが製造され得る。棒、チューブ、バーまたはプレートは、例えば、機械加工によってさらに処理され得る前記部品(またはその一部)の前駆体を画定してもよい。前記フィルム自体は、直接使用されてもよく、またはデバイスを画定するための他の材料と関連付けられてもよい。押出には、異なる組成および/または特性の領域を含有する部品を画定するための共押出が含まれる。
【0082】
前記部品は、中空または空洞領域を含有してもよい。
前記材料の集合体が成形機で融解処理される場合、任意の所望の形状が作成され得る。ニアネットシェイプのインゴットは、さらなる処理のために、例えば、機械加工のために製造されてもよく、または、使用前に任意の重要な機械加工を必要としない部品が製造されてもよい。射出成形機は、好ましい成形機である。成型には、異なる組成および/または特性の領域を含有する部品を画定するためのオーバーモールディングが含まれる。
【0083】
特に有利な方法は、異なる組成の領域を含有する部品(またはその一部)を製造することを含んでもよい。例えば、第1の領域は、記載されたタイプの前記材料の集合体を成型することによって作製されてもよく、第2の領域は、第1の領域に隣接する第2の領域を成型することによって作製されてもよい。ただし、前記第2の領域は、前記材料の集合体の組成とは異なる第2の組成から成型される。前記第2の組成は、第1の態様によって記載される材料の集合体の形態であってもよく(例えば、第2の組成はポリマー材料および逸散性材料を含有する)、または第1の態様に従う材料の集合体でなくてもよい(例えば、第2の組成は逸散性材料を含有しなくてもよい)。好ましい実施形態では、前記第1の領域および第2の領域は、同じポリマー材料、例えば、ポリエーテルエーテルケトンを含んでもよい。これらの領域は、前記領域の調製に使用される逸散性材料の量または固有性に基づいて異なっていてもよい。この部品(またはその一部)は、1つまたは複数のさらなる領域を含有してもよい。
【0084】
この方法は、第1および第2の脊椎骨の融合を促進するためのデバイスを製造するために使用することができ、そのデバイスは、
非多孔性ポリエーテルエーテルケトンで形成される第1の無孔性領域と、
多孔性ポリエーテルエーテルケトン構造を含有する第1の多孔性領域と
を含み、第1の多孔性領域は第1の無孔性領域に結合される。このようなデバイスは、米国特許出願公開第2008/0161927号明細書に記載されているデバイスであってもよく、その内容は本明細書に援用される。
【0085】
別の方法では、異なる多孔性の領域、または異なるレベルの逸散性材料を含有する領域を含有する部品(またはその一部)が作製されてもよい(そして、後に、異なる多孔性の領域を画定してもよい)。例えば、第1の領域は、第1の量の逸散性材料を含有する、記載された異なるタイプの前記材料の集合体を成型することによって作製されてもよく、第2の領域は、第2の量の逸散性材料を含有する、記載されたタイプの前記材料の集合体を成型することによって作製されてもよい。ただし、前記第1および第2の量は異なっている。部品は、1つまたは複数のさらなる領域を含有してもよい。このように、この方法は、逸散性材料の異なるレベル(前記逸散性材料が除去される場合は多孔性)を含有する部品(またはその一部)を製造するために使用されてもよい。例えば、部品(またはその一部)は、1つの位置から別の位置に向かって徐々に増加するかまたは段階的なレベルの逸散性材料(または多孔性)を含有してもよい。
【0086】
第1の実施形態では、この方法で作製される部品(またはその一部)は、例えば、逸散性材料が前記方法の工程(c)において除去された後にのみ、人体に組み込まれるかまたは人体と関連付けられ得るデバイスの一部または全体として使用され得る。この場合において、この方法は、使用前に多孔性である部品(またはその一部)を画定するために使用することができる。この方法における逸散性材料の唯一の目的は、このような孔隙形成を促進することであり得る。
【0087】
第2の実施形態では、この方法で作製される部品(またはその一部)は、例えば、逸散性材料をデバイスと関連付けて残存させたままで、かつ/または逸散性材料の何らかの除去前に、人体に組み込まれるかまたは人体に関連付けられ得るデバイスの一部または全体として用いられるように調整されてもよい。したがって、逸散性材料は、適切には、人体に存在する場合に有害な影響を及ぼさない種類のものである。好ましくは、このような逸散性材料は、生体内において部品(またはその一部)から外へ浸出されるように調整される。浸出する材料は、適切には、生体内にプラスの影響を与えてもよい有効成分である。適切には、前記逸散性材料の浸出は、生体内において前記部品(またはその一部)における多孔性のレベル増加を生じさせるように調整される。また、このような多孔性は、プラスの効果を与えるように調整されてもよい。
【0088】
第3の実施形態では、この方法で作製される部品(またはその一部)は、第1の実施形態に従って記載されるその逸散性材料を除去するように処理されてもよい。その後、部品(またはその一部)の多孔性領域は、別の材料で含浸されてもよい。このような材料は、生体内において部品(もしくはその一部)から浸出されるように調整されてもよく、または部品(もしくはその一部)における孔隙内に残存し、存在する場合には効果、例えば生物学的効果を発揮するように調整されてもよい。前述したように含浸されてもよい材料の例は、コラーゲンまたは薬物を充填させた生体吸収性ポリマーである。
【0089】
第4の実施形態では、第1、第2または第3の実施形態の部品(またはその一部)は、第3の実施形態に記載された別の材料で含浸されてもよい中空または空洞領域を含有してもよい。
【0090】
前記方法が工程(c)において前記逸散性材料を除去する工程を含む場合、この方法は、適切には、多孔性を画定するように、工程(b)の融解処理後に形成される製造物を、逸散性材料を除去するための手段と接触させる工程を伴う。接触は、いつ行われてもよい。しかしながら、接触は、適切には、例えば人体に組み込まれるかまたは人体に関連付けられ得るデバイスの一部または全体として使用するための部品(またはその一部)の作製に関与し得る、前記製造物の任意の機械加工または物理的操作の後に行われる。これは、製造物が、例えば機械加工に耐える高い強度を有し得ると同時に、逸散性材料が生体位で存在するためである。
【0091】
逸散性材料を除去するための前記手段は、前記逸散性材料を可溶化するように調整することができる。前記手段は、適切には溶媒を含む。前記溶媒は、好ましくは水を含み、より好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも99重量%の水を含有する。溶媒は、好ましくは、本質的に水からなる。
【0092】
逸散性材料を除去するための手段は、融解処理後に形成される製造物を、100℃を超える温度かつ周囲圧力を上回る圧力の溶媒調製物(好ましくは前述の水を含む)と接触させ、それにより逸散性材料を溶媒調製物に包含させる工程、および包含させた溶媒を製造物から分離する工程を含んでもよい。
【0093】
この方法では、前記溶媒調製物は、前記製造物と接触させる時、150℃を超える温度、適切には200℃を超える温度であってもよい。前記溶媒調製物は、前記製造物と接触させる時、500℃未満の温度、適切には450℃未満の温度、好ましくは400℃未満の温度、より好ましくは350℃未満の温度であってもよい。
【0094】
溶媒調製物は、前記製造物と接触させる時、少なくとも4バール、適切には少なくとも8バール、好ましくは少なくとも10バールの圧力下にあってもよい。この圧力は、300バール未満、好ましくは200バール未満、より好ましくは100バール未満、特に50バール未満であってもよい。圧力は、好ましくは、前記製造物と接触させる時、液体状態の溶媒調製物を維持するように選択される。
【0095】
好ましくは、この方法において、溶媒調製物は、前記製造物が配置される第1の領域から第2の領域を介して第3の領域に流れるように調整される。
第4の態様によれば、第3の態様の方法において得られる部品またはその一部が提供される。
【0096】
第5の態様によれば、部品またはその一部自体が提供される。
本明細書に記載されたいずれの発明または実施形態のいずれの態様のいずれの特徴も、必要に応じて変更を加えて、本明細書に記載されたいずれかの発明または実施形態のいずれかの態様のいずれかの特徴と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1a】オーバーモールディングされた多孔性層を有する寛骨臼カップの斜視図。
【図1b】オーバーモールディングされた多孔性層を有する寛骨臼カップの断面図。
【図2a】1種の多孔性材料のオーバーモールディングされた領域、および隣接する別の材料のオーバーモールディングされた領域を有する、代替の寛骨臼カップの斜視図。
【図2b】1種の多孔性材料のオーバーモールディングされた領域、および隣接する別の材料のオーバーモールディングされた領域を有する、代替の寛骨臼カップの断面図。
【図3】異なる性質を有する領域を含む移植型デバイスの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0098】
本発明の特定の実施形態を、例示の目的で、添付の図面を参照して記載する。
図面では、同一または類似の部分には、同一の参照番号が付されている。
実施例1−顆粒の調製
調合の前に、原材料−中間粘度を有する充填されていない(ポリエーテルエーテルケトン)PEEKポリマー(インヴィビオ・リミテッド(Invibio Limited)から入手したインヴィビオLT2、英国)および医薬品グレードの塩化ナトリウム(シグマ(Sigma)から入手)−を調製した。塩化ナトリウムを、骨誘導のための孔隙(粒子範囲100〜1000μm径)を与えるのに適した適切な粒子サイズに選別した。これは、段階的なメッシュを通過させる篩を介して達成された。大気中の水の除去および有益な処理を促進するために、70kgの塩化ナトリウムを乾燥室に5時間、200℃で置いた。これを、PEEKが吸収する0.5%の水を除去するために、30kgのPEEKについて繰り返した。
【0099】
ストランドダイおよび適切なポリマー粉末計量装置を装着した2軸スクリュー混合器を用いた。塩化ナトリウムおよびPEEK原材料を、2つの混合器のホッパーに手動で装填した。出力末端で、ストランドコンベヤ、ペレタイザ、長さを分けるための分級器、および適切な清潔な回収瓶を配置した。特に塩化ナトリウムも熱を帯び、熱を保持し得るため、適切なサイズの機械を選択して、過剰なポリマーの停留時間を短縮した。使用時に孔隙の相互連結性を促進することが判明した比である、30重量%のPEEKに対して70重量%の塩化ナトリウムを供給した。PEEKポリマーへの塩化ナトリウムの添加は、このポリマーが流体状態にある時(スクリュー内に生じる剪断と温度に起因する)に行われた。より低粘度のPEEKポリマー(中間粘度のLT2)を選択したのは、多量の充填剤の添加に起因する粘度の増加を弱めるためである。2軸スクリュー混合器を360〜400℃の温度で稼働した。ステンレス鋼から加工された、45:1の最小L/D比の通常形状のスクリューを用いた。押出の最後に、4mmの開口部を有する2孔ダイを使用した。スクリューに沿った温度プロフィールは360〜400℃で変動した。
【0100】
主要なスクリューの回転速度は150〜250rpmであった(しかし、高負荷材料についてはより高くすることができた)。それは、長期の停留時間および起こり得るポリマー分解を裂けるために前者の範囲内で維持された。処理量は10kg/時であった(最大20dk/時の可能性があった)。30重量%のPEEK中の70重量%の塩化ナトリウムを含有する調合材料は、約3mmの連続したひもとして押し出された。これをストランドコンベヤに取り込むために空冷した。ひもを顆粒ペレットに変換するために、ペレタイザが、長さを分けるための分級器と共に使用され、適切な清潔な容器中に回収された。
【0101】
実施例2−顆粒のニアネットシェイプのインゴットへの射出成形
機械加工に適切な、寸法20mm×20mm×100mmのインゴットが、実施例1の顆粒を用いて射出成形機械で作製された。
【0102】
実施例3−顆粒の板への射出成形
実施例2に記載された手法を続けて、多孔性から利益を得ることができる医療デバイスのための典型的な試料に機械加工され得る150mm×75mm×10mmの板を調製した。
【0103】
実施例4−部分的な多孔性領域の形成
部分的な多孔性領域を有する、寸法20mm×20mm×100mmのニアネットシェイプのインゴットを作製した。金型内にいくつかの予備成形されたインゴットが配置され、それらは実施例2に記載の技術(ただし、その後、所定の体積を除去するために機械加工された)を用いて製造されたものである。これらは、半分のインゴットおよび他の部分的なインゴットであった。これらの半分のインゴットおよび部分的なインゴットは、分散された塩化ナトリウムを有するPEEKからなり、インゴットが金型に再挿入された時、残りの成形空洞空間への新しいポリマーの流入を可能にするのに十分な体積を除くために機械加工された無孔性インゴットであった。充填されていないPEEKは、残りの空洞空間への射出のための射出成形機械読取りに装填された。実施例2の手法は、一般に、金型から押し出されて焼きなましの前に冷却される成型されたインゴットを製造するために使用された。得られた半分のインゴットおよび部分的なインゴットは、無孔性PEEKおよび塩化ナトリウムを充填させたPEEKの領域を様々な割合で有する20mm×20mm×100mmのインゴットから構成された。インゴットは多孔性から利益を得ることができる医療デバイスの典型的な試料に機械加工された。その後、多孔性は、以下に記載される塩化ナトリウムの浸出によって、塩化ナトリウムを充填したPEEK領域において生じた。
【0104】
実施例5−棒材への押出
棒材は、実施例1の顆粒を用いて、押出によって作製された。棒材は、医療デバイスを画定し、その後、以下に記載される塩化ナトリウムの除去によって製造される多孔性を画定するために機械加工することができた。
【0105】
実施例6−フィルム形成
逸散性顆粒からの材料のフィルムおよび薄いシートを作り出すために、互いにサンドイッチ状にされたいくつかの部分からなる鋳型を用いた。切り抜かれた中心形状(典型的には正方形)を有する1mm厚の金属板の裏面に、取り出しを容易にするために焦げ付き防止剤で被覆された薄いアルミホイルシートを取り付けた。切り抜かれた中心に、切り抜かれた領域を大まかに覆い、その金型を満たして収縮を許容するのに十分な実施例1の顆粒を入れた。
【0106】
実施例7−大規模なフィルム製造
フィルムは、所望の寸法のフィルムを画定するためのスリットダイを通して顆粒を押し出すことによって調製されてもよい。
【0107】
実施例8−直接的デバイスまたは部品形状への射出成形
上述した方法に従って、実施例1の顆粒は、機械加工なしの医療デバイスの一部または全体を画定するように調整された金型を備える射出成形機に供給されてもよい。
【0108】
実施例9−浸出させるための部品からの「外皮」の除去
いくつかの場合において、「外皮」は、例えば射出成形によって製造された部分の外側に形成され得る。逸散性材料の浸出前に一部が機械加工される場合、このような機械加工自体は、外皮の除去をもたらす可能性があるが、他の場合、例えば、直接的デバイスまたは形状が実施例8に記載のように製造される場合においては、溶解前に外皮を除き、その部分への溶媒の浸透を促進することが望まれ得る。この目的を達成するために、マイクロアブレーティブブラスト法(micro−ablative blasting)(例えば、マイクロブラスター(MICROBLASTER)(登録商標))が、研磨媒体としての炭酸ナトリウムと共に使用され得る。
【0109】
実施例10−逸散性材料を除去するための一般的手法
PCT/GB02/02525に記載される精製装置を用いてもよい。この装置は、加熱され、熱的に絶縁された覆いを有する圧力容器を含有する。容器の上流は、容器内に加圧水を送達するための水供給ラインであり、容器の下流には、水を除去して廃棄するための排水溝がある。使用中は、材料の試料(例えば、機械加工されたインゴット、プラークもしくは棒;またはフィルムもしくは射出成形された部分)が容器に設置され、次に高圧および高温で液体水が容器中を流れるようにする。水は、PEEKポリマーに浸透し、逸散性材料を溶解する。
【0110】
前述の実施例に記載された方法および/または製造物は、広範囲な用途を有し得る。
一般に、実施例1の顆粒は、充填されたまたは充填されていないポリエーテルエーテルケトンを含む標準的な顆粒が使用され得る任意の状況下で使用することができる。これらには、押出し、共押出し、成型またはオーバーモールディングの方法が挙げられる。
【0111】
フィルムは、軟組織または硬組織を置換するための、画定された範囲の多孔性で調製され得る。このような設定は、構造的補強のために薄い支持層が要求され得る外傷性傷害または頭蓋顎顔面傷害の治療において実用的であり得る。材料における孔隙の提供により、組織の定着および成長を通じた融合が促進される。多孔性、非多孔性または部分的に多孔性であってもよい、様々な厚さまたは組成を有する層を含む積層体を作製することができる。例えば、200μmの相互連結された孔隙を有する0.4mmの多孔性フィルムを、30重量%の硫酸バリウムを含有するPEEKフィルム上に積層することができる。これらの層は、接合/結合されなくてもよく、あるいは接着剤(シリコーン、エポキシもしくは他の植込み可能な接着剤)を用いて、または溶融溶接、レーザー溶接、超音波溶接もしくは他の手段を通じて融合されてもよい。追加の層を裏面全体または裏面上に組み込むことができる。この柔軟性は、患者特異的な(または他の)要件に従って、必要に応じた厚みの多用途性の利益を有する。例えば、生体内において再吸収され、かつ吸収されて活性物(例えば、薬物、増殖因子、抗菌剤)を放出(dose out)する逸散性材料を含有するフィルムとともに、中間の放射線不透明フィルムを有する多孔性上部フィルムを提供することができた。また、この(多孔性または非多孔性)層は、例えば、骨成長を促進するための表面修飾を有することによって、孔隙に、より迅速な組織の成長を促すようにさらに修飾され得る(例えば、被覆、プラズマ、増殖因子、または表面化学修飾もしくはペプチド連結を介して付着された刺激性タンパク質)。
【0112】
チューブ形成は、適した荷重で、適切な粒子サイズの逸散性材料を含む顆粒を用いて、顆粒を融解させ、チューブ形状を形成するためにダイを通して材料を押し出すことによって作製され得る。この形状は、(例えば、コンベヤライン上の空気中で)冷却し、必要とされる長さに切断することができ、逸散性材料は実施例10に記載のように除去される。チューブは、提案される用途に応じて、硬質または薄肉に作製することができ、部品として、または機能的部品としての用途を有してもよい。このチューブの内腔は、中空のままでも、充填されていないもしくは充填されたPEEK、または別のポリマー、または金属で充填されてもよい。内腔におけるこの追加の材料を挿入し、融解処理(例えば、材料への全押出)を用いて永久的に結合することができる。内部材料は、用途に応じて1〜1000μmの範囲にある孔隙サイズの構造的に多孔性のPEEKチューブ内に、特定の活性(例えば、薬物を含有する吸収性ポリマーなどの内部制御可能な分解材料)を伝達するために孔隙を通じて放出される因子を含有してもよい。
【0113】
一例として、微小多孔性を有する小径のチューブ/中空糸は、逸散性材料(例えば、リン酸三カルシウム(TCP))を用いた骨成長繊維として使用するために製造され得る。この逸散性のものは、細胞成長のために孔隙を離れて生体内で再吸収可能である。再吸収されながら、繊維材料は、骨石灰化因子を有するという有益な効果を備えてもよい。逸散性材料は、目的、用途または細胞型に特異的な直径を有する任意の不活性または刺激性材料であり得る。中空糸は、所望の目的のために、より適した材料で補充された孔隙を有することができる。例えば、中空糸は、押出された繊維から塩化ナトリウムを浸出させ、次に、孔隙を満たし、生体内で再吸収させるために多孔性繊維をコラーゲンに浸漬することによって作製することができる。
【0114】
別の実施形態では、生体内での医療用途に使用されるスクリューまたはボルトは、挿入を可能にするために、図1の顆粒を用いてオーバーモールディングされてもよいが、特定の多孔性領域を画定することによって組織成長が促進されてもよい。
【0115】
モノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維は、実施例1の顆粒を用いて押出され、次に、実施例10に記載の浸出によって作製され得る。多孔性は、融合、または繊維内または繊維上への因子の装填のための利点を提供することができる。繊維は縫合糸または編み糸のために使用されてもよく、その後、織られ、または編まれて、あるいは織られずに、植込みに適した繊維製品にされる。使用される逸散性材料は、典型的には、ポリマーの繊維製造に必要とされる濾過ユニットを通過する小径のものである必要がある。例えば、逸散性材料および/または充填剤は、目的のモノフィラメントまたはマルチフィラメントの直径に依存して、1〜100μmの粒子サイズを有するPEEKと混合することができる。例えば、100μmのモノフィラメントは、逸散性充填剤(例えば、10μmのTCP)を有することができる。さらに、繊維は、他の植込み可能な利点(例えば、硫酸バリウムを介した放射線不透過性もしくは他の安全な充填剤、ナノファイバーもしくはガラスもしくはカーボンもしくはバイオガラス繊維を介した補強剤、または別の材料のコア(例えば、逸散性および/または他の充填剤(単数または複数)で充填されたPEEKを用いてオーバーモールディングされたスチールまたはタンタルのコア)を有するようにオーバー押出しされる)を与えるのに適した充填剤を含むことができる。このような繊維は、様々な特性を有する様々な繊維編み糸の混合物を用いて、繊維製品にされることができる。
【0116】
実施例1に記載される顆粒は、より良好な定着または組織融合を必要とするデバイスの製造に用いられてもよい。図1を参照すると、ポリマー性寛骨臼カップは、PEEKおよびカーボン繊維を含む複合材料から作られてもよいカップ本体2、ならびに実施例1に記載されるようにして作製された顆粒からオーバーモールディングされてもよい生物活性成分(例えば、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムまたはバイオガラス)を含有するポリマー、例えば、PEEKを含むオーバーモールディングされた外層4を含有することができる。生物活性成分は、生体内において組織融合を促進し得る多孔性層4から分離して層4から浸出することができる。代替物として、寛骨臼カップは、PEEK/塩化ナトリウムの外層4を含有してもよく、その塩化ナトリウムは、移植前に、実施例10に記載されるように浸出されてもよい。
【0117】
層4は、組織、例えば骨の、孔隙へのより迅速な成長を促すようにさらに修飾可能であり、例えば、表面修飾されることによって(例えば、被覆、プラズマの使用、増殖因子、または表面化学修飾もしくはペプチド連結を介して付着された刺激性タンパク質によって)、骨成長を促進する。
【0118】
図2aおよび2bに示されるさらなる変更例では、寛骨臼カップは、カップ本体2、およびこの時だけ半球表面を覆っている外層4を含む。他方の半球表面6は、異なる材料(例えば、代替の充填剤またはエラストマーなどの成形用材料を有するPEEK)から形成されてもよい。
【0119】
脊椎ケージインプラントは、充填されていない多孔性材料の選択された領域から加工されてもよい。例えば、ケージは、PEEKを含む複合材料の薄い外側の「ハロー(halo)」縁と、中央部の多孔性PEEKを有するカーボン繊維とを含んでもよく、または多孔性中心部の上に充填されていないPEEKの外端が提供されてもよく、またはヒドロキシアパタイトを充填したPEEKを含む中心領域の上に充填されていないPEEK外端が提供されてもよい。
【0120】
一般的に、記載された顆粒は、他の材料と併せて使用されてもよく、目的とする機能的領域に複合材料を提供し、特定の領域における有益な特性を与え得るデバイスの製造を可能にする。例えば、図3を参照すると、領域10は、厳密に骨を模倣した主要な構造的支持体を提供するように調整された、充填されていないまたはカーボン繊維を充填したPEEKフレームを含んでもよい。例えば、領域12、14におけるある領域は、1つの端部または1つの特定の側面/領域にあってもよく、また、骨と接触して成長を要求し得るが、その領域は多孔性PEEKを画定するか、または骨の融合をもたらす材料(例えば、植込み前に浸出され得る逸散性材料として使用されてもよいか、または孔隙から離れるように植込み中に再吸収されてもよいヒドロキシアパタイトまたはTCP)で充填されたPEEKを含むように成形されてもよい。領域が植込み前に多孔性である場合、それは、表面修飾、または薬物、抗感染症剤または刺激性因子などのさらなる利点を与える分解性材料で充填することによって向上させることができる。
【0121】
組織成長および滑らかな領域を介したインプラントの移動を防止するための多孔性領域を有し、覆っている筋肉運動(例えば、顎)を促進する頭蓋顎顔面インプラントが設計され得る。多孔性領域は、片面の全体または両面の組み合わせの一部であってもよい。
【0122】
複合材料を含んでもよいデバイスは、指関節または頭蓋顎顔面デバイスを含んでもよい。
言及された各場合において、多孔性材料は、さらに、例えば、プラズマ処理、ヒドロキシアパタイト被覆によって被覆されるかまたは選択された領域において処理されてもよく、または任意の見通されていない方法が、骨誘導または細胞成長を促進するために使用されてもよい。孔隙は、さらなる初期の機械的強度を与え、成長を促すために別の分解性材料(例えば、PLGA、LCP)で被覆もしくは充填されてもよく、または経時的に溶出もしくは放出されてもよい刺激性因子(例えば、増殖因子もしくは化合物もしくは薬物またはPLGHAもしくはLCPなどの吸収性材料内に固相化された薬物)で充填されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料および逸散性材料を含有する粒子を含む材料の集合体。
【請求項2】
0.1〜1mlの範囲にある体積を有する粒子を含有する、請求項1に記載の集合体。
【請求項3】
前記粒子の平均体積が、少なくとも0.1mlであり、かつ0.8ml未満である、請求項1または請求項2に記載の集合体。
【請求項4】
前記材料の集合体における粒子の平均重量が0.01g〜0.1gの範囲にある、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項5】
前記粒子がペレットまたは顆粒である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項6】
40〜80重量%の前記逸散性材料、および20〜60重量%の前記ポリマー材料を含む粒子を含有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項7】
前記ポリマー材料および逸散性材料から本質的になる、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項8】
前記材料の集合体の少なくとも90重量%が、単一のポリマー材料および単一の逸散性材料で構成される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項9】
前記材料の集合体における前記粒子が融合ポリマー材料を含有する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の材料の集合体。
【請求項10】
前記ポリマー材料が、ポリ(ジオキサノン)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリシュウ酸アルキレン、ポリ無水物およびそれらのコポリマー、ならびに、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアリールエーテルスルホンおよびポリアリールエーテルケトンから選択される、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項11】
前記ポリマー材料が半結晶である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項12】
前記ポリマー材料が、一般式
【化1】

で表される繰り返し単位、または一般式
【化2】

で表される繰り返し単位を含有し、式中、A、B、CおよびDは独立して0または1を表し、EおよびE’は独立して酸素もしくは硫黄原子または直接結合を表し、Gは酸素もしくは硫黄原子、直接結合または−O−Ph−O−部分を表し、Phはフェニル基を表し、m、r、s、t、v、w、およびzはゼロまたは1を表し、Arは、1つ以上のフェニル部分を介して隣接部分に結合する以下の部分(i)〜(v)
【化3】

のうちの1つから選択される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項13】
前記ポリマー材料が、式(XX)
【化4】

で表される繰り返し単位を含み、式中、t1およびw1は独立して0または1を表し、v1は0、1または2を表す、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項14】
t1=1、v1=0、かつw1=0である、請求項13に記載の集合体。
【請求項15】
前記逸散性材料が、前記ポリマー材料の融点よりも高い融点を有する、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項16】
前記材料の集合体における粒子に分散された前記逸散性材料が、1〜20000μmの範囲のD50を有する、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項17】
前記逸散性材料が、その後の処理工程において生物学的に安全な溶媒を用いて溶解され、前記ポリマー材料から分離されるように調整されている、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項18】
前記逸散性材料が塩、金属酸化物またはガラスを含む、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項19】
前記粒子が、1種類のポリマー材料および1種類の逸散性材料から本質的になる、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項20】
ポリエーテルエーテルケトンおよび塩化ナトリウムを含むとともに、前記集合体は0.1〜1mlの範囲の体積を有するペレットまたは顆粒の形態であり、かつ前記材料の集合体における粒子の平均重量が0.01g〜0.1gの範囲にある、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の集合体。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の材料の集合体を製造するための方法であって、
(a)ポリマー材料および逸散性材料を含む混合物を融解処理する工程と、
(b)前記混合物を粒子に成形する工程と
を含む方法。
【請求項22】
工程(a)の前に前記混合物を形成することを含む工程(a)を含み、工程(a)が、ポリマー材料および逸散性材料を選択し、ならびにポリマー材料が融解されるときにそれらを接触させることを伴う、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記混合物の融解処理が押出機で行われる、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
部品を製造するための方法であって、
(a)ポリマー材料および逸散性材料を含有する粒子を含む材料の集合体を選択する工程と、
(b)前記材料の集合体を融解処理して、前記部品の少なくとも一部を画定する工程と、
(c)任意選択で、前記逸散性材料を除去する工程と
を含む方法。
【請求項25】
前記材料の集合体が請求項1乃至20のいずれか1項に記載の集合体であるか、または請求項21乃至23のいずれか1項に記載の方法において製造される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
異なる組成の領域を含有する部品(またはその一部)を製造する工程を含み、第1の領域は請求項1乃至20のいずれか1項に記載の材料の集合体を成型することによって製造されるとともに、第2の領域は第1の領域に隣接して第2の領域を成型することによって製造され、かつ、前記第2の領域は、前記材料の集合体の組成とは異なる第2の組成から成型される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
異なる多孔性の領域、または異なるレベルの逸散性材料を含有する領域を含む部品(またはその一部)が製造される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が工程(c)において前記逸散性材料を除去する工程を含む場合、前記方法は、多孔性を画定するように、工程(b)において融解処理後に形成された製造物を、前記逸散性材料を除去するための手段と接触させる工程を含む、請求項24乃至27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記逸散性材料を除去するための手段が、前記逸散性材料を可溶化するように調整されている、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記逸散性材料を除去するための前記手段が、融解処理後に形成された前記製造物を、100℃を超える温度かつ周囲圧力を上回る圧力の溶媒調製物と接触させることにより、前記溶媒調製物に逸散性材料を包含させる工程、および包含させた溶媒を前記製造物から分離する工程を含む、請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項24乃至30のいずれか1項に記載の方法において得られる部品またはその一部。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−528059(P2011−528059A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518008(P2011−518008)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050853
【国際公開番号】WO2010/007424
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(508121658)インヴィバイオ リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】INVIBIO LIMITED
【Fターム(参考)】