説明

ポリ乳酸系フィルム

【課題】本発明は、ポリ乳酸を主成分とし、かつ高い耐熱性を有するポリ乳酸系フィルムを提供するものである。さらには、シーラント層を積層することで、幅広いシールレンジを有し、優れた機械適性を有するフィルムを提供するものである。
【解決手段】L−乳酸単位とD−乳酸単位のモル比率が96/4〜100/0あるいは4/96〜0/100のポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、かつ面配向度ΔPが1×10−4≦ΔP≦3×10−3である基材層を有するポリ乳酸系フィルムを、下記温度範囲内の温度T(℃)で熱処理することを特徴とするポリ乳酸系フィルム。
熱処理温度T(℃)の範囲:Tg−30≦T≦Tg+10
ここで、Tgはポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度(℃)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ乳酸系樹脂を主成分とし、かつ面配向度ΔPが1×10−4≦ΔP≦3×10−3の範囲にあるポリ乳酸系フィルムの耐熱性向上に関するものである。具体的には、シーラント層と多層にすることで、優れた機械適性を有し、エアーバッグ緩衝材や包装体に使用可能なポリ乳酸系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成高分子化合物は、その優れた特性からプラスチックとして広範囲に使用されるようになったが、その使用量の増加と共に廃棄物量も増大しており、この廃棄プラスチックをどの様に処理するかが大きな社会問題になっている。焼却処理すると発熱量が大きいため焼却炉を傷めやすいことや、有害物質を生成するおそれがあること等の問題点があり、埋め立て処理すると分解しないため、いつまでも環境中に残留するという問題点もある。更に、分別・回収、再生のコストを考えるとリサイクルだけでは完全な問題解決は困難である。
この様な環境問題への高まりの中で、環境への負荷を低減して、社会を持続可能なものにするために、廃棄後に自然環境下で分解する生分解性プラスチックが求められるようになっている。このような状況の中、バイオマスから作られ、生分解性を有するポリ乳酸が注目を浴びており、さまざまな製品への展開が行われている。
【0003】
しかし、このポリ乳酸は耐熱性がないという欠点を有している。この理由は、結晶化速度が非常に遅いことから、通常の加工方法では結晶化せずに、非晶質状態となるため、熱変形温度がガラス転移温度Tgに依存するからである。このため、ダイレクトインフレーションプロセスなどのインフレーションプロセスやTダイキャストプロセスで作製されたポリ乳酸系フィルムで耐熱性に優れたフィルムは未だ開示されていない。そして、ポリ乳酸系フィルムを包装フィルム等に用いた場合、耐熱性が不足するため、シールバーへの付着等のトラブルが生じやすかった。
また、シート成形プロセスや射出成形プロセスでポリ乳酸の耐熱性を発現させるために、ガラス転移温度以上融点以下で熱処理する手法が、特許文献1で開示されているが、このような条件でフィルムを熱処理すると、フィルムが収縮したり、白化したり、ブロッキングしたりするという問題を有していた。
【0004】
特許文献2、3のように可塑剤を添加したフィルムを低温から熱処理する方法が開示されているが、可塑剤を使用することで、フィルムのガラス転移温度も下がっているため、前記と同様にブロッキングなどの問題を解決するには至っていない。
特許文献4に生分解性ポリエステルの成形品を低温から熱処理する方法が記載されているが、熱処理温度が低温に限定されるものではなく、問題の解決には至っていない。
また特許文献5に、ポリ乳酸を主成分としタルクなどの結晶核剤を添加した層を有するエアー緩衝材用の生分解性フィルムが開示されているが、該フィルムでは未だ、製袋環境温度の季節変動へ十分対応できるような耐熱性を有するものではなかった。
【特許文献1】特開平09−278991号公報
【特許文献2】特開2006−63302号公報
【特許文献3】特開2006−35666号公報
【特許文献4】特開2006−117749号公報
【特許文献5】特開2006−192666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂を主成分とし、かつ高い耐熱性を有するポリ乳酸系フィルムを提供することを目的とする。さらには、シーラント層を積層することで、幅広いシールレンジを有し、優れた機械適性を有するフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、加工時の樹脂の配向性と低温の熱処理により、高い耐熱性を有するフィルムが得られることを見出し、本発明をなすに至った。さらに、シーラント層を積層したフィルムとすることで、ポリ乳酸系のエアー緩衝材、包装体に好適な機械適性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)L−乳酸単位とD−乳酸単位のモル比率が96/4〜100/0あるいは4/96〜0/100のポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、かつ面配向度ΔPが1×10−4≦ΔP≦3×10−3である基材層を有するポリ乳酸系フィルムを、下記温度範囲内の温度T(℃)で熱処理することにより得られるポリ乳酸系フィルム。
熱処理温度T(℃)の範囲:Tg−30≦T≦Tg+10
ここで、Tgはポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度(℃)。
(2)前記基材層がポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性樹脂(B)の混合物からなり、生分解性樹脂(B)の添加量が、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対し、5質量部以上150質量部以下であることを特徴とする(1)記載のポリ乳酸系フィルム。
(3)前記基材層が、さらに結晶核剤(C)を含み、結晶核剤(C)の添加量がポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリ乳酸系フィルム。
(4)基材層同士のシール強度が、シール圧力0.65MPa、シール時間0.4秒でシール温度100℃のとき9N/15mm未満である(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【0008】
(5)前記ポリ乳酸系フィルムの少なくとも一表面にシーラント層を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
(6)前記シーラント層が、融点Tmが70℃以上130℃以下である樹脂を主成分とすることを特徴とする(5)に記載のポリ乳酸系フィルム。
(7)(5)または(6)に記載のポリ乳酸系フィルムを用いたポリ乳酸系エアーバッグ緩衝材。
(8)(5)または(6)に記載のポリ乳酸系フィルムを用いた包装体。
(9)L−乳酸単位とD−乳酸単位のモル比率が96/4〜100/0あるいは4/96〜0/100のポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、かつ面配向度ΔPが1×10−4≦ΔP≦3×10−3である基材層を有するポリ乳酸系フィルムを、下記温度範囲内の温度T(℃)で熱処理することを特徴とするポリ乳酸系フィルムの製造方法。
熱処理温度T(℃)の範囲:Tg−30≦T≦Tg+10
ここで、Tgはポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度(℃)。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、高い耐熱性を有する。さらに、シーラント層を積層した場合、幅広いシールレンジを有し、優れた機械適性を有するフィルムを提供する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のポリ乳酸系フィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とする基材層を有する。ここで、前記基材層に用いられるポリ乳酸系樹脂(A)は、L−乳酸単位とD−乳酸単位のモル比率が96/4〜100/0あるいは4/96〜0/100であることが肝要である。D−乳酸単位のモル比率が4モル%より大きく96モル%より小さい場合、熱処理による耐熱性向上の効果が得られにくくなる。また、より好ましくはL−乳酸単位とD−乳酸単位のモル比率が97/3〜100/0あるいは3/97〜0/100、特に好ましくは98/2〜100/0あるいは2/98〜0/100である。また、該ポリ乳酸系樹脂(A)は、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸、脂肪族環状エステル、ジカルボン酸および多価アルコールからなる群より選ばれる化合物との共重合体であってもよい。共重合体のモル比率としては、乳酸単位のモル比率が50モル%以上であることが肝要である。
【0011】
乳酸単位のモル比率が50%未満の場合、熱処理による耐熱性向上の効果が得られにくくなる。また、より好ましくは乳酸単位が75%以上である。共重合体の化合物であるヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。また脂肪族環状エステルとしては、グリコリド、ラクチド、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンおよびこれらにメチル基などの種々の基が置換したラクトン類が挙げられる。また、ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等、多価アルコールとしては、ビスフェノール/エチレンオキサイド付加反応物等の芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール等の脂肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテルグリコール等が挙げられる。
【0012】
ポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度Tgは15℃以上であることが肝要である。より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは45℃以上である。
ポリ乳酸系樹脂(A)の重合方法としては、縮合重合法、開環重合法などの公知の方法を採用できる。また、ポリイソシアネート、ポリエポキシ化合物、酸無水物、多官能酸塩化物などの結合剤を使用して分子量を増大する方法を用いることもできる。
ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量は10000〜1000000の範囲が好ましい。分子量が10000未満では機械的物性の劣るフィルムとなり易く、1000000を超えると溶融粘度が高くなり、通常の加工機械では物性の安定したフィルムが得られ難くなる。より好ましくは50000〜500000、特に好ましくは100000〜300000の範囲の重量平均分子量である。
【0013】
ポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とする基材層は、熱処理工程の効果向上のため、面配向度ΔPは1×10−4〜3×10−3であることが肝要である。面配向度ΔPは、シートの厚み方向に対し、面方向の配向度合いを表し、通常直交3軸方向の屈折率を測定して算出される。面配向度ΔPはL−乳酸単位とD−乳酸単位のモル比率や、成形時の延伸条件に依存しやすい。面配向度ΔPが1×10−4未満の場合、熱処理による耐熱性向上が得られにくい。また面配向度ΔPが3×10−3を超える場合、熱収縮等の寸法変化が起こる場合がある。より好ましい面配向度ΔPは5×10−4〜3×10−3であり、さらに好ましくは、1×10−3〜3×10−3である。このような面配向度ΔPを達成するには、完全な無延伸ではなく、少なくともインフレーションプロセスのような溶融延伸プロセスによる製造方法をとることが好ましい。二軸延伸のような冷間延伸プロセスによる製造方法の場合、所望の面配向度ΔPの範囲を超えやすい。
【0014】
本発明において、以上のように作製された生分解性フィルムは、フィルムに限定されるものでなく、シートであってもよい。用途上から、厚みは0.01〜0.2mmの範囲が好ましい。
本発明の基材層において、ポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とするとはポリ乳酸系樹脂(A)がマトリックス樹脂として存在している状態をいい、ポリ乳酸系樹脂(A)がマトリックス樹脂として存在することで、耐熱性が得られる。
【0015】
本発明において、熱処理は耐熱性付与に必須のプロセスであり、その方法は特に限定されるものではないが、主成分であるポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、Tg−30≦T≦Tg+10の範囲の温度T(℃)で熱処理されることが好ましい。熱処理温度がTg−30℃未満の場合、熱処理による耐熱性向上の効果が得られない。一方、Tg+10℃を超える場合、耐熱性は向上するものの、熱処理中にフィルムがブロッキングしたり、熱収縮がおこったり、結晶化にともなうフィルムの白化がおこったりする。より好ましくはTg−20≦T≦Tg+5、特に好ましくはTg−15≦T≦Tgの範囲で熱処理を行うことが好ましい。
【0016】
熱処理の方法は、直接的な接触による熱ロールを用いた方法等でもよく、また間接的な加熱炉を通過させる方法や赤外線等で加熱する方法、またロール状の原反をオーブンで加熱する方法等を使用してもよい。直接的な熱処理の場合、熱処理の効率が良いため、間接的な熱処理と比べて、短時間で耐熱性向上の効果が得られやすいが、ポリ乳酸系フィルムの熱処理は数分〜数十分必要となるため、生産スケールによっては大規模な設備等が必要となることがある。そのため、ロール状の原反をそのまま、オーブン等に入れて、熱処理する方法が好ましい。この場合、ロール状でそのまま熱処理をしても、前記した範囲の温度Tで熱処理するためブロッキング等の問題が起こらず、好ましい熱処理方法の一形態として適している。
【0017】
本発明ではこのような熱処理によって、飛躍的に耐熱性が向上することを見出した。この耐熱性が向上するメカニズムの理由は定かではないが、DSCにて評価した場合、この熱処理前後で、(1)結晶量自体はそれほど変化しない、(2)結晶化速度が向上する、(3)エンタルピー緩和のピークが確認される、等の現象から、非晶部分の分子鎖が熱的に安定な状態へ整列していると推定される。
本発明のポリ乳酸系フィルムの基材層には、熱処理後の耐熱性をさらに向上させるために、主成分のポリ乳酸系樹脂(A)に対して、ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性樹脂(B)を加えて用いることができる。原理は定かではないが、ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性樹脂(B)を加えることで、ポリ乳酸系樹脂(A)の分子の運動性が向上するため、耐熱性の向上する効果が得られたと考えられる。
【0018】
ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性樹脂(B)としては、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)などの脂肪族ポリエステル、およびこれらの生分解性ポリエステルの一部が生分解性を失わない範囲で芳香族化合物に置換された構造を持つ脂肪族芳香族ポリエステルから選ばれた少なくとも1種であり、示差走査熱量測定(JIS−K−7121)でのガラス転移温度Tgが10℃以下、好ましくは0℃以下、より好ましくは、−20℃以下の生分解性ポリエステル1種または2種以上からなるポリマー組成物である。生分解性樹脂(B)のTgが10℃を超えると得られるフィルムの熱処理効果の向上には寄与しない場合が多い。
【0019】
脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステルとしては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸(生分解性を妨げない範囲で、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族カルボン酸を含んでも良い)と、エチレングリコール、1,3−プロピオングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂肪族ジオールの中からそれぞれ1種以上選んだ重縮合が例として挙げられる。環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルとしては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状モノマーの中から1種以上選んだ開環重合体が例として挙げられる。合成系脂肪族ポリエステルとしては、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の環状酸無水物とオキシラン類の共重合体が例として挙げられる。
【0020】
また、菌体内で生合成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)としては、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシプロピオン酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシ吉草酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシヘキサン酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシプロピオン酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−4−ヒドロキシ酪酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシオクタン酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシデカン酸)共重合体等が例として挙げられる。また、脂肪族芳香族ポリエステルとしては、ポリブチレンコハク酸フタル酸共重合体、ポリエチレンコハク酸フタル酸共重合体、ポリブチレンアジピン酸フタル酸共重合体、ポリエチレンアジピン酸フタル酸共重合体、ポリエチレングルタル酸テレフタル酸共重合体、ポリブチレングルタル酸テレフタル酸共重合体、ポリブチレンコハク酸アジピン酸フタル酸共重合体などが例として挙げられる。
【0021】
本発明で用いられるガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性樹脂(B)として特に好ましく用いられるものは、上記の内で比較的透明性の良いとされる炭素数2個から10個の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2個から10個の脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステルであり、その具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキセンアジペート、ポリブチレングルタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等が挙げられる。
【0022】
ガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性樹脂(B)の重合方法としては、直接法、間接法などの公知の方法を採用できる。直接法では、例えば、脂肪族ジカルボン酸成分として上記ジカルボン酸化合物その酸無水物又は誘導体を選択し、脂肪族ジオール成分として上記ジオール化合物又はその誘導体を選択して重縮合を行う方法で、重縮合に際して発生する水分を除去しながら高分子量物を得ることができる。間接法では、直接法により重縮合されたオリゴマーに少量の鎖延長剤、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物を添加して高分子量化して得ることができる。生分解性樹脂(B)の重量平均分子量は、20000〜500000の範囲が好ましく、さらに好ましくは重量平均分子量50000〜250000の範囲である。分子量が20000より小さいとポリ乳酸系樹脂(A)とブレンドされ延伸して得られたフィルムにおいて機械的強度、衝撃強度等の実用物性に悪影響が出やすく、分子量が500000を越えると成形加工性に劣る等の問題がある。
【0023】
本発明のポリ乳酸系樹脂(A)とガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性樹脂(B)の混合割合は、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対し、生分解性樹脂(B)は好ましくは5質量部以上150質量部以下である。生分解性樹脂(B)が100質量部を超えても、ポリ乳酸系樹脂(A)がマトリックス樹脂となって存在する限り耐熱性を得ることができるが、生分解性樹脂(B)が150質量部を超えると耐熱性が得られにくくなる傾向にある。より好ましくは生分解性樹脂(B)が6質量部以上100質量部以下で、さらに好ましくは8質量部以上50質量部以下、特に好ましくは10質量部以上35質量部以下の範囲である。
【0024】
本発明のポリ乳酸系フィルムの基材層は、結晶核剤(C)を含んでも良い。結晶核剤(C)を用いることで、より基材層の耐熱性向上の効果がある。結晶核剤(C)としては、粒径10μm以下の無機フィラーや層状ケイ酸塩類の他に、脂肪酸塩や脂肪族ポリエステルを用いることができる。無機フィラーとしてはタルクやシリカを用いることができ、層状ケイ酸塩類としては、モンモリロナイト、雲母などを例示できる。また、分散性向上を目的に、無機フィラーの表面をシランカップリングなどによる表面処理を行ったフィラーも用いることができる。脂肪酸塩としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸鉛、オレイン酸ソーダ、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛等が挙げられる。脂肪族ポリエステルとしては、ポリグリコール酸−乳酸共重合体やポリ乳酸のステレオコンプレックスなどが挙げられる。また、二種類以上の結晶核剤を併用しても良い。この際に、結晶核剤(C)の添加量は、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下が好ましい範囲である。0.1質量部以上で、耐熱性向上のより大きな効果が期待でき、また15質量部以下で、加工性、分散性、フィルムの透明性が低下しにくくなる。より好ましい範囲は、0.1質量部以上10質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以上5質量部以下の範囲である。
【0025】
本発明のポリ乳酸系フィルムを用いて機械適性を満たすためには、JIS−Z1707に準拠して測定した基材層同士のシール強度が、シール圧力0.65MPa、シール時間0.4秒でシール温度100℃のとき9N/15mm未満であることが好ましい。シール温度100℃のときのシール強度が9N/15mm以上のフィルムの場合、シールバーへの付着等の問題が発生しやすく、機械適性が悪化する傾向にある。より好ましくは、シール温度100℃のとき9N/15mm未満であり、かつシール温度120℃のとき12N/15mm未満である。さらに好ましくは、シール温度100℃のとき6N/15mm未満であり、かつシール温度120℃のとき9N/15mm未満である。さらにより好ましくは、シール温度100℃のとき3N/15mm未満であり、かつシール温度120℃のとき6N/15mm未満である。
【0026】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、前述した基材層に対して、シーラント層を積層することができる。本発明に用いられるシーラント層は機能を損なわない範囲で樹脂組成そのものを限定するものではないが、融点Tmが70℃以上130℃以下である樹脂を主成分とするのが好ましい。Tmが70℃未満の場合、加工性の悪化やフィルム同士のブロッキングが起きやすくなり、また130℃を超える場合、シールレンジがほとんどとれないため、好ましくない。より好ましくは融点Tm70℃以上100℃以下、さらに好ましくはTm70℃以上85℃以下である。またシーラント層の樹脂の主成分はポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマーのような石油化学系樹脂でもよいが、好ましくは脂肪族ポリエステルや芳香族ポリエステルのような生分解性樹脂であり、より好ましくはグリコールと脂肪族二塩基酸またはその酸誘導体から合成された脂肪族ポリエステルである。
【0027】
例えば、グリコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、これらを併用しても良い。脂肪族二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等やこれらの無水物等が用いられる。さらに、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、または多価カルボン酸やイソシアネート化合物を用いることができる。これらの代表的なものに、ビオノーレ(商品名;昭和高分子社製)やGS−Pla(商品名:三菱化学社製)が挙げられ、アジピン酸などの重合比率を変えることによって融点を制御することができる。このように、全層が生分解性樹脂である場合、より環境負荷の低減が期待できる。
【0028】
また、融点の低い樹脂をシーラント層に用いる場合、シーラント層に結晶核剤を添加することで加工性を改善できる。結晶核剤としては、粒径10μm以下の無機フィラーや層状ケイ酸塩類の他に、脂肪酸塩や脂肪族ポリエステルを用いることができる。無機フィラーとしてはタルクやシリカなどを用いることができ、層状ケイ酸塩類としては、モンモリロナイト、雲母などを用いることができる。また、分散性向上を目的に、無機フィラーの表面をシランカップリングなどによる表面処理を行ったフィラーも用いることができる。脂肪酸塩としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸鉛、オレイン酸ソーダ、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛等が挙げられる。脂肪族ポリエステルとしては、主としてグリコールと脂肪族二塩基酸またはその酸誘導体から合成された脂肪族ポリエステルを用いることができる。
【0029】
例えば、グリコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、これらを併用しても良い。脂肪族二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等やこれらの無水物等が用いられる。さらに、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、または多価カルボン酸やイソシアネート化合物を用いることができる。また二種類以上の結晶核剤を併用することができる。これらの中で、特に融点が85℃より高く170℃未満である脂肪族ポリエステルを用いることが好ましい。融点が85℃より高いことで、シーラント層の結晶核剤となりうるし、170℃以上となると押出し時の溶融特性に影響を与える場合がある。結晶核剤の含有量は、シーラント層の機能を阻害しない範疇でシーラント層中に0.5質量%〜40質量%が好ましい。0.5質量%未満では、結晶核剤としての効果が発現しにくい。また、40質量%よりも多いと、シール性を阻害する場合がある。より好ましい添加量は1質量%〜30質量%であり、さらに好ましくは2質量%〜20質量%、最も好ましくは3質量%〜10質量%である。
【0030】
本発明のポリ乳酸系フィルムに積層するシーラント層の厚みは0.001mm以上が好ましい。より好ましくは0.003mm以上、さらに好ましくは0.005mm以上である。
本発明のポリ乳酸系フィルムには、無機フィラー、アンチブロッキング剤、熱安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、防曇剤、帯電防止剤、防錆剤、滑剤および耐衝撃性改良剤などの公知の添加剤を、本発明の要件と特性を損なわない範囲で配合することが可能である。
【0031】
次に、本発明のポリ乳酸系フィルムの製造方法について説明する。本発明のポリ乳酸系フィルムの製膜方法としては、押出されたチューブ状またはシート状の樹脂を溶融状態からインフレーション法又はキャスト法により溶融延伸(融点以上の温度での延伸)することで、所望の面配向度ΔPを達成することができる。二軸延伸のような冷間延伸(融点未満の温度での延伸)では、所望の面配向度ΔPよりも大きくなりやすい。溶融延伸プロセスにおける、フィルム又はシートの延伸倍率としては、押出し口金(ダイリップ)間隔に対して、最終の延伸フィルム又はシートの厚みが1/200倍〜1/10倍の範囲になる様に、即ち、押出し口金(ダイリップ)出口直後のフィルム又はシートの面積に対して、最終の延伸フィルム又はシートの面積が10倍〜200倍になる様に、少なくとも1軸方向に延伸することが好ましい。(以下、(押出し口金(ダイリップ)出口直後のフィルム又はシートの面積)/(最終の延伸フィルム又はシートの面積)の比を、「面積倍率」という。)より好ましい溶融延伸時のダイ出口からの面積倍率は30倍から150倍で、さらに好ましくは50倍から140倍である。ΔPは延伸条件に影響されやすく、面積倍率により、ΔPの制御が可能である。面積倍率を高くすることにより、ΔPを高くすることができる。
【0032】
また、シーラント層を積層する方法としては、共押出しで多層フィルムを製膜する方法と、フィルムをラミネート(押出しラミネートやドライラミネート)によって製造することもできる。
本発明における「幅広いシールレンジ」とは、十分なシール強度が得られる最低のシール温度と、シールバーへの付着や溶断などのトラブルが起こらない最大のシール温度の温度幅が広い場合を言い、好ましい温度幅は15℃以上、より好ましくは20℃以上である。また、「優れた機械適性」とは、連続的に、高速で安定的に製袋や包装等が可能である状態を言う。
【0033】
以上のようにして得られたポリ乳酸系シーラント層付フィルムを、エアー緩衝材用に用いることができる。本発明のフィルムを用いた場合、幅広いシールレンジを確保することができ、また優れた製袋機適性を有する。またピロー包装やオーバーラップ包装の袋詰包装に用いても、連続した高速包装をより安定して行うことができる。特に、ポケットティッシュやインクカートリッジ、トナーカートリッジなどにも用いることができる。
【実施例】
【0034】
本発明を実施例に基づいて説明する。
実施例および比較例で用いた評価方法について以下に説明する。
(1)融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)
JIS−K−7121及び7122に準拠して、パーキンエルマー(Perkin−Elmer)社製の示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素ガス流量25ml/分で、30℃から200℃まで10℃/分で昇温し、昇温時の融点(Tm)を測定し、200℃で1分間保持した後、10℃/分で降温し、ガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0035】
(2)ポリ乳酸重合体のD−、L−乳酸組成、光学純度
ポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸及びD−乳酸単量体単位の構成比率は、試料を1N−NaOHでアルカリ分解後に1N−HClで中和して蒸留水で濃度調整した加水分解試料(液)について、光学異性体分離カラムを装着した島津製作所製の高速液体クロマトグラフィー(商品名、HPLC:LC−10A−VP)にて、紫外線UV254nmでのL−乳酸とD−乳酸の検出ピーク面積比(垂線法による面積測定)から、ポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸の重量比率、即ちモル比率[L](単位モル%)、ポリ乳酸重合体を構成するD−乳酸の重量比率、即ちモル比率[D](単位モル%)を求め、1重合体当り3点の算術平均(四捨五入)をもって測定値とした。
【0036】
(3)面配向度(ΔP)
王子計測機器株式会社製自働複屈折計によってフィルムの直交3軸方向の屈折率(Nx、Ny、Nz)を測定し、次式で算出し、1試料当り3点の算術平均(四捨五入)をもって測定値とした。
ΔP={(Nx+Ny)/2}−Nz
Nx:フィルム面内の最大屈折率
Ny:フィルム面内におけるNxの方向と直交する方向の屈折率
Nz:フィルム厚み方向の屈折率
【0037】
(4)フィルムの耐熱性
本発明におけるフィルムの耐熱性の評価は、シール時の熱によるフィルムの付着性から評価し、より剥離強度が低いフィルムほど、耐熱性が高いと判断した。そのため、フィルム同士をシールし、その剥離強度(シール強度)から求めた。フィルムのシール強度はJIS−Z1707に従い、シール圧力を0.65MPa、シール時間を0.4秒として、100℃および120℃におけるシール強度を測定した。シールバーは5mm幅の物を用いた。1試料当り3点の算術平均(四捨五入)をもって測定値とした。この際に、以下の指標にて評価した。
A:シール強度が3N/15mm以下
B:シール強度が6N/15mm以下
C:シール強度が9N/15mm以下
D:シール強度が12N/15mm以下
E:シール強度が12N/15mmを超える
【0038】
(5)フィルムの白化
本発明におけるフィルムの白化度合いは目視にて、評価した。
○:透明
△:少し白濁しているが透明
×:かなり白濁
【0039】
(6)熱処理後のフィルムのブロッキング性
本発明における熱処理後のフィルムのブロッキング性は、熱処理後のフィルムの巻きだし性から評価した。
○:容易に巻きだしが可能
△:若干抵抗あるが、問題なく巻きだし可能
×:巻きだしが困難
【0040】
(7)熱処理後のフィルムの収縮性
本発明における熱処理後のフィルムの収縮性は、寸法変化および機械適性への影響により評価した。
○:収縮なし
△:収縮するが、機械適性に影響なし
×:収縮し、機械適性に悪影響あり
【0041】
以下の実施例および比較例に用いた生分解性樹脂を下記に示す。ただし、本発明における樹脂の組成がこれに限定されるものではない。
A1:ポリ乳酸(ネーチャーワークス社製:4032D(商品名)、D−乳酸含量=1.4%、Tm=166℃、Tg=60℃)
A2:ポリ乳酸(ネーチャーワークス社製:4042D(商品名)、D−乳酸含量=4.3%、Tm=148℃、Tg=60℃)
B1:ポリブチレンサクシネート(昭和高分子株式会社製:ビオノーレ#1001(商品名)、Tm=110℃、Tg=−30℃)
B2:ポリブチレンサクシネートアジペート(昭和高分子株式会社製:ビオノーレ#3001(商品名)、Tm=95℃、Tg<−40℃)
B3:ポリブチレンサクシネートアジペート(昭和高分子株式会社製:ビオノーレ#3020(商品名)、Tm=95℃、Tg<−40℃)
B4:ポリブチレンサクシネートアジペート(昭和高分子株式会社製:ビオノーレ5001D(商品名)、Tm=80℃、Tg<−40℃)
B5:ポリブチレンサクシネート(三菱化学株式会社製:GSPla−AZ91T(商品名)、Tm=110℃、Tg=−30℃)
B6:ポリブチレンサクシネートアジペート(三菱化学株式会社製:GSPla−AZ81T(商品名)、Tm=95℃、Tg<−40℃)
B7:ポリブチレンテレフタレートアジペート(BASF製:エコフレックス(商品名)、Tm=115℃、Tg=−30℃)
タルク:富士タルク工業株式会社製:LMS200(商品名)
【0042】
[実施例1]
表1に示した組成1となるように各原料をドライブレンドした後、単軸押出機を用いて溶融樹脂を25kg/hrの押出し量で押出した。押出時には、外側ダイリップ直径110mm、内側ダイリップ直径108mm、リップクリアランス1mmの円筒ダイより押出し、チューブ状に押出された溶融樹脂に冷却リングより約25℃のエアーを吹き付けながらチューブ内へエアーを注入してバブルを形成し、得られたフィルムをピンチロールへ導きチューブ状のフィルムをフラット状2枚のフィルムとして巻取りロールで巻き取った。次に、バブルが安定してから、樹脂押出速度、バブル中へのエアー注入量を微調整し、表2に示した面配向度ΔPとなるようにピンチロールにおけるフィルム引取速度を調整し、0.03mm厚のフィルムを作製した。得られたフィルムをロール状のまま、50℃で1日オーブンの中で熱処理し、サンプルを得た。
【0043】
[実施例2]
実施例1と同様に、表1に示した組成2の組成で、実施例1と同様の方法を用い、表2のΔPとなるように調整しフィルムを作製した。得られたフィルムをロール状のまま、50℃で1日オーブンの中で熱処理し、サンプルを得た。
【0044】
[実施例3〜18]
二軸押出し機を用いて、原料A1とタルク30質量%濃度のマスターバッチを作製し、最終組成が表1に示した組成3〜組成15の組成となるようにし、実施例1と同様の方法を用い、表2のΔPとなるように調整しフィルムを作製した。得られたフィルムをロール状のまま、50℃で1日オーブンの中で熱処理し、サンプルを得た。
【0045】
[実施例19〜22]
二軸押出し機を用いて、原料A1とタルク30質量%濃度のマスターバッチを作製し、最終組成が表1に示した組成6の組成となるようにし、実施例1と同様の方法を用い、表3のΔPとなるように調整しフィルムを作製した。得られたフィルムをロール状のまま、表3に示した温度で1日オーブンの中で熱処理し、サンプルを得た。
【0046】
[実施例23]
二軸押出し機を用いて、原料A1とタルク30質量%濃度のマスターバッチを作製し、最終組成が表1に示した組成6の組成となるようにし、実施例1と同様の方法を用い、表4のΔPとなるように調整しフィルムを作製した。得られたフィルムをロール状のまま、50℃で1日オーブンの中で熱処理し、サンプルを得た。
【0047】
[比較例1〜4]
二軸押出し機を用いて、原料A1とタルク30質量%濃度のマスターバッチを作製し、最終組成が表1に示した組成6または組成16の組成となるようにし、実施例1と同様の方法を用い、表2のΔPとなるように調整しフィルムを作製した。得られたフィルムをロール状のまま、50℃で1日オーブンの中で熱処理し、サンプルを得た。
【0048】
[比較例5]
実施例1と同様に、表1に示した組成17の組成で、実施例1と同様の方法を用い、表2のΔPとなるように調整しフィルムを作製した。得られたフィルムをロール状のまま、50℃で1日オーブンの中で熱処理し、サンプルを得た。
【0049】
[比較例6〜8]
二軸押出し機を用いて、原料A1とタルク30質量%濃度のマスターバッチを作製し、最終組成が表1に示した組成6の組成となるようにし、実施例1と同様の方法を用い、表3のΔPとなるように調整しフィルムを作製した。得られたフィルムをロール状のまま、表3に示した温度で1日オーブンの中で熱処理し、サンプルを得た。
【0050】
[比較例9]
二軸押出し機を用いて、原料A1とタルク30質量%濃度のマスターバッチを作製し、最終組成が表1に示した組成6の組成となるようにし、実施例1と同様の方法を用い、表3のΔPとなるように調整しフィルムを作製し、熱処理は行わなかった。
【0051】
[比較例10]
二軸押出し機を用いて、原料A1とタルク30質量%濃度のマスターバッチを作製し、最終組成が表1に示した組成6の組成となるようにし、実施例1と同様の方法を用い、表4のΔPとなるように調整しフィルムを作製した。得られたフィルムをロール状のまま、50℃で1日オーブンの中で熱処理し、サンプルを得た。
【0052】
[比較例11、12]
表1に示した組成1の組成となるように、同方向二軸押出機を用いて、樹脂温度200℃の溶融樹脂をTダイより押出し、35℃に温調したキャスティングロールにて急冷し、実質的に非晶質のシートを得た。続いて、得られたフィルムを75℃に加熱して、MD方向にロール延伸し、次いでテンターで延伸温度80℃にてTD方向に延伸し、表4のフィルムを作製した。得られたフィルムをロール状のまま、50℃で1日オーブンの中で熱処理し、サンプルを得た。
上記得られたサンプルについて、評価結果を表2〜4に記す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のフィルムはシーラント層と多層にすることで、優れた機械適性を有し、生分解性エアー緩衝材や包装体に使用可能な生分解性フィルムに関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−乳酸単位とD−乳酸単位のモル比率が96/4〜100/0あるいは4/96〜0/100のポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、かつ面配向度ΔPが1×10−4≦ΔP≦3×10−3である基材層を有するポリ乳酸系フィルムを、下記温度範囲内の温度T(℃)で熱処理することにより得られるポリ乳酸系フィルム。
熱処理温度T(℃)の範囲:Tg−30≦T≦Tg+10
ここで、Tgはポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度(℃)。
【請求項2】
前記基材層がポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性樹脂(B)の混合物からなり、生分解性樹脂(B)の添加量が、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対し、5質量部以上150質量部以下であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項3】
前記基材層が、さらに結晶核剤(C)を含み、結晶核剤(C)の添加量がポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項4】
基材層同士のシール強度が、シール圧力0.65MPa、シール時間0.4秒でシール温度100℃のとき9N/15mm未満である請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項5】
前記ポリ乳酸系フィルムの少なくとも一表面にシーラント層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項6】
前記シーラント層が、融点Tmが70℃以上130℃以下である樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項5に記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のポリ乳酸系フィルムを用いたエアーバッグ緩衝材。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載のポリ乳酸系フィルムを用いた包装体。
【請求項9】
L−乳酸単位とD−乳酸単位のモル比率が96/4〜100/0あるいは4/96〜0/100のポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、かつ面配向度ΔPが1×10−4≦ΔP≦3×10−3である基材層を有するポリ乳酸系フィルムを、下記温度範囲内の温度T(℃)で熱処理することを特徴とするポリ乳酸系フィルムの製造方法。
熱処理温度T(℃)の範囲:Tg−30≦T≦Tg+10
ここで、Tgはポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度(℃)。

【公開番号】特開2008−266369(P2008−266369A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107487(P2007−107487)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】