説明

ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットおよびこれから製造されるフィルム

ある1つのポリマーフィルムは、少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層が、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物を含み、前記組成物が、前記組成物の100重量部のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット、前記組成物の0.1から10重量部の安定剤、および前記組成物の0.1から10重量部のポリマー加工助剤を含む。あるいは、ある1つのポリマーフィルムは、少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層がポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物を含み、前記組成物が、前記組成物の100重量部のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットおよび前記組成物の0.1から10重量部の脂肪酸石鹸を含む。いずれかのフィルムからブリスターパックが製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年3月29日に出願された米国特許仮出願No.60/666213号(この内容は、参照により本明細書に組み込まれる)の利益を請求する。
【0002】
本発明は、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットおよびこれから製造される組成物ならびにフィルム(例えばブリスターパックにおける医薬品の包装に適したフィルムなど)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来のブリスターパックは肩によって囲まれる1つ、より一般的には、多数の凹部を有するベースおよび前記肩に付設された蓋を通常含む。タブレット、カプセル、または他の内容物は、それぞれの凹部に収容され、(1)それぞれの凹部を押し、内容物で蓋(通常、アルミニウム箔または同様のもの)を貫通させるか、または(2)凹部の上にある蓋の部分を除去して、凹部の内容物に直接触れることによって、凹部から取り出すことができる。
【0004】
実際には、ベースは、凹部と、複数の凹部の間にあってベース材料の形状をを画定する肩とを有するように成形され;ベースの凹部は錠剤などで充填され、充填された凹部を有するベースは蓋で覆われ;蓋は密封されるか、またはベースの肩に接着される。
【0005】
ブリスターパックのベースは、非常に高価な、しかも酸素バリア性が最適にはなっていないACLAR(商標)PTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)でできた内側の部分(ふたに接着される)から作られることがある。この材料は、厚さ1ミルについて、通常およそ0.4グラム/mの水蒸気透過速度(MVTR)を示す。このベースの外部は、しばしば、約250マイクロメートル(10ミル)の厚さのPVC(ポリ塩化ビニル)である。PVC、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステルが、ベースを製造するために使用され得るその他の材料である。アルミニウム箔をベースに加えることもできる。
【0006】
蓋は、通常アルミニウム箔またはアルミニウム箔ラミネートから製造される。使われるアルミニウム材料の厚さが、その材料が破れるのに比較的少ない力しか必要としないので、アルミニウム箔はブリスターパックの上の蓋には適した材料である。その結果、貫通のためのエネルギーは低く、アルミニウムは本質的には弾性を全く示さない。プラスチックラミネートもまた、蓋に使用することができる。
【0007】
いくつかのブリスターパックは、それぞれの凹部の領域において強度を低くするための線部を備える蓋を特徴とする。他の例においては、各凹部を、個々の蓋のセグメントで覆うことができる。上記線部に囲まれた箇所にまたはそれぞれの蓋のセグメントの上に、蓋のセグメントを折り返すことによって個々の凹部を露出させるのを可能にする、握るためのタブが存在し得る。
【0008】
酸素と湿気の両方に敏感な医薬品のブリスター包装などの製品例に対しては、包装フイルムに、低い水蒸気透過速度(MVTR)および低い酸素透過速度(OTR)を付与することができるので、塩化ビニリデンコポリマー(「サラン」または「PVdC」と呼ばれることが多い)を組成物中に供給するとよい。また、安定剤が、PVdCを用いた組成物を配合する際にしばしば使用される。これらの安定剤は、押出し中にPVdC成形物の熱分解を減少させる。残念ながら、このような成形物を設計する際にOTRおよび熱安定性が両立しないままそのいずれかひとつを取捨選択しなければならないことがある。したがって、安定剤の量がより多い組成物は、熱安定性がより高くなることはあるが、酸素バリア性が犠牲になる。逆に、成形物中の安定剤の相対的な量を下げることによって、改良された(より低い)OTRを得ることができるが、このことは安定性がその分低くなったPVdC組成物をもたらすことがある。
【0009】
米国特許第6,673,406号(Bekele)(参照によってその全てが本明細書に組み込まれる)は、組成物およびフィルムを開示しており、ここでは例えば変性モンモリロナイトといった親水性粘土がPVdCと混合され、この混合物が、少なくとも1つの層を有するポリマーフィルムの中に組み込まれている。
【0010】
ナノケイ酸塩は、天然(粘土)または合成グレードにおいて利用可能である。
【0011】
天然グレードは、その大量がPVdCと混合される場合において、不十分にしか分散しないという傾向があることが見出されている。この不十分な分散性ゆえに、PVdC/天然モンモリロナイト混合物から製造されたフィルムの酸素バリア性は、必ずしも高められない。
【0012】
ナノケイ酸塩の変性グレードは、天然グレードより良い分散特性を有しており、したがって、一般により良い酸素バリアを有している。しかしながら、ナノケイ酸塩を変性するために使用される表面処理は、アルキル4級塩化アンモニウムに基づいている。この塩のアルキル成分の如何にかかわらず、このナノケイ酸塩の変性グレードは、これが配合されたPVdCの熱安定性に不利に影響することが見出された。
【0013】
また、押出コーティング工程を使用する場合、ナノケイ酸塩の天然および改質グレードの両方に関して添加の制限があることが見出された。押出しコーティングは、PVdCを含む収縮性バッグを製造するために良く知られている工程である。一般に、押出コーティング工程では、PVdC混合物中4重量%未満の量がナノケイ酸塩で構成されるようにすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、ナノケイ酸塩とPVdCとを大量に混合することによって引き起こされる分散性、熱安定性および添加の問題に取り組むことは望ましいことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様において、ある1つの組成物は、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを含む。
【0016】
第2の態様において、ある1つのポリマーフィルムは、少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層が、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを含む。
【0017】
第3の態様において、ある1つのポリマーフィルムは、少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層が、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物を含み、前記組成物が、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを前記組成物の100重量部;安定剤を前記組成物の0.1から10重量部まで;およびポリマー加工助剤を前記組成物の0.1から10重量部まで含む。
【0018】
第4の態様において、ある1つのポリマーフィルムは、少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層が、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物を含み、前記組成物が、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを前記組成物の100重量部;および脂肪酸石鹸を前記組成物の0.1から10重量部まで含む。
【0019】
第5の態様において、ある1つのブリスターパックは、ベース(前記ベースは、多数の凹部と、前記多数の凹部を取り囲む肩とを含む);前記肩に付設された蓋;およびそれぞれの凹部に配置された内容物を含み、前記ベースおよび蓋のうちの少なくとも1つが、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物を含み、前記組成物が、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを前記組成物の100重量部;安定剤を前記組成物の0.1から10重量部まで;およびポリマー加工助剤を前記組成物の0.1から10重量部まで含む。
【0020】
第6の態様において、ある1つのブリスターパックは、ベース(前記ベースは、多数の凹部と、前記多数の凹部を取り囲む肩とを含む);前記肩に付設された蓋;およびそれぞれの凹部に配置された内容物を含み、前記ベースおよび蓋のうちの少なくとも1つが、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物を含み、前記組成物が、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを前記組成物の100重量部;および脂肪酸石鹸を前記組成物の0.1から10重量部まで含む。
【0021】
第7の態様において、ある1つのポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物は、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを前記組成物の100重量部;安定剤を前記組成物の0.1から10重量部まで;およびポリマー加工助剤を前記組成物の0.1から10重量部まで含む。
【0022】
第8の態様において、ある1つのポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物は、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを前記組成物の100重量部;および脂肪酸石鹸を前記組成物の0.1から10重量部まで含む。
【0023】
定義
本明細書における「ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット」および「PVdC層状ケイ酸塩ナノコンポジット」および同様のものは、懸濁プロセスおよびまたは乳化プロセスにおいてin−situで製造されたポリマーをいう。in−situプロセスは、ケイ酸塩結晶の有限の膨張をもたらすポリマー侵入を可能にし、インターカレートポリマー/粘土複合体を生成する。剥離と共に広範囲のポリマー侵入およびケイ酸塩クリスタリットの層間剥離が達成され、その結果、PXdCマトリックス中に分散されたナノスケールのケイ酸塩層を生成する。ポリマーの製造方法において、重合の前にナノ粘土の高い極性の水性分散体が、モノマープレミックス中に前もって分散される。ナノ粘土は、カオリン、タルク、スメクタイト、バーミキュライトまたは雲母であり得る。ナノ粘土のプレ分散体は、分散体の全モノマー含有量の10重量%ほどの量であることができる。プレミックスが調製された後に、重合とポスト重合の従来の工程が実行される。その生成物は、塩化ビニリデンモノマーと例えば塩化ビニル、スチレン、ビニルアセテート、アクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸のC〜C12アルキルエステル(例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートなど)といったコモノマーとを有する塩化ビニリデンコポリマーであり、前記組成物の10重量%までのナノケイ酸塩を含有する。
【0024】
本明細書において「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を指し;
本明細書において「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を指し;
本明細書において「ポリマー」は、重合反応生成物を指し、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーなどを含み;
本明細書において「コポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーの重合反応によって形成されるポリマーを指し、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなどを含み;
本明細書において「エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー」(EAO)は、エチレンと例えばプロペン、ブテン−1、ヘキセン−1.オクテン−1などのCからC10までのアルファ−オレフィンから選択される1つまたは複数のコモノマーとのコポリマーであり、このコポリマーの分子が、エチレンと反応するアルファ−オレフィンから生ずる比較的少ない側鎖分岐を有する長いポリマー鎖を含むコポリマーを指す。この分子構造は、EAOに関して高度に分岐し、高圧ポリエチレンが長鎖および短鎖の分岐を有している従来の高圧低密度または中密度ポリエチレンと対比されるべきである。EAOは、直鎖状中密度ポリエチレン(LMDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、および例えばDowによって供給される樹脂:DOWLEX(商標)またはATTANE(商標)、Exxonによって供給される樹脂:ESCORENE(商標)またはEXCEED(商標)のような非常に低い密度または超低密度のポリエチレン(VLDPEおよびULDPE)ならびに三井石油化学株式会社によって供給される樹脂:TAFMER(商標)、Exxonによって供給された樹脂:EXACT(商標)などの直鎖均質エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー(HEAO)またはDow Chemical Companyによって供給される長鎖分岐の樹脂:(HEAO)AFFINITY(商標)またはDuPont Dow Elastomersによって供給される樹脂:ENGAGE(商標)のような不均一な物質を含み;
本明細書において「包装」は、製品の周りを構成しているフィルムを指し;
本明細書において「フィルム」は、0.50mm(20ミル)以下、例えば0.25mm(10ミル)以下の厚さを有するプラスティックウェブ材料を指し;
本明細書において「シール層」は、フィルムのそれ自体または別の層に対するシーリングにおいて含まれ得るフィルムの層を指し;
本明細書において「シール」は、それぞれの表面をそれぞれのシール開始温度に加熱すること(例えば加熱されたバー、熱い空気、赤外線、超音波のシールなど)よって作り出される第1フィルム表面の第2フィルム表面への接着を指し;
本明細書において「バリア」は、1つまたは複数のガス(例えば酸素)の透過をかなり遅らせることができるフィルムの層を指し;
本明細書において「アビューズ層」は、パッケージの完全さの低下のすり傷、穿刺および/または他の潜在的原因、および/またはパッケージ外観品質の低下の潜在的原因に抵抗し得るフィルムの層を指し;
本明細書において「タイ層」は、それがなければ非付着か、または弱く付着するようなポリマーを含む隣接層への層間接着を提供することができるフィルム層を指し;
本明細書において「バルク層」は、フィルムのアビューズ耐性、強度または引張応力を増加させることができるフィルムの層を指し;
本明細書において「積層」は、2つ以上のフィルム層を例えばポリウレタン接着剤を使用するなどして互いに接着することを指し;
「トータルフリー収縮」は、1990年ASTM標準の年報(Annual Book of ASTM Standards)第08.02巻、368〜371頁(この全ての開示は、参照によって本明細書中に組み込まれる)に明らかにされているASTM D 2732によって実行される定量的な測定を用いる、例えば85℃(185°F)のような特定された試験温度で収縮させた場合のフィルムの10cm×10cmの試料片における寸法変化のパーセントを指す。「トータルフリー収縮」は、縦方向および横方向の両方におけるフリー収縮の合計を指す。
【0025】
本明細書において「機械方向」は、フィルムが、押出しおよび/またはコーティング中に形成される場合のフィルムの長さに沿った方向、すなわちフィルムの方向を指し、および
本明細書において「横方向」は、フィルムを横切る方向、すなわち、機械方向に垂直な方向を指す。
【0026】
本明細書において「直鎖状低密度ポリエチレン」(LLDPE)はチーグラー/ナッタ触媒によって製造された立方センチメートル当たり0.917から立方センチメートル当たり0.925グラムまでの密度を有するポリエチレンをいう。
【0027】
本明細書において「直鎖中密度ポリエチレン」(LMDPE)は、チーグラー/ナッタ触媒によって製造された立方センチメートル当たり0.926グラムから立方センチメートル当たり0.939グラムまでの密度を有するポリエチレンをいう。
【0028】
用語「配向比」(すなわち、フィルムがいくつかの方向、通常、お互いに垂直な2つの方向に配向された範囲の製品)は、与えられたフィルムの配向の程度を述べる場合に使用される。マシン方向への配向は「ドローイング」といい、横方向の配向は「ストレッチング」という。環状抜き型を通して押出されたフィルムについて、気泡を発生させるようにフィルムをブロー成形することによって、ストレッチングが得られる。このようなフィルムについて、ドローイングは、下流のセットが上流のセットより高い表面速度を有し、その結果得られる延伸比が[ニップロールの下流のセットの表面速度]/[ニップロールの上流のセットの表面速度]となる2セットの動力付きニップロールにフィルムを通過させることによって得られる。
【0029】
本明細書において使用される全ての組成上のパーセントは、他に指定がなされないかぎり、「重量」基準で表される。
【0030】
付属の図面に関して本発明の実施形態の詳細な説明は、次のとおりである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
in−situ重合
粘土は、天然由来の鉱物であり、したがってこれらの組成は、かなり変化しやすい。粘土の純度は、最終的なコンポジット特性に影響する。多くの粘土が、シート様の層状構造を有するアルミノケイ酸塩であり、さまざまな形でアルミナAlO8面体に結合したシリカSiO4面体からなる。4面体:8面体が2:1のものは、スメクタイト粘土をもたらす。スメクタイトの中において、最も一般的なものは、モンモリロナイト(ベントナイト)である。例えばマグネシウムなどの他の金属が、結晶構造中のアルミニウムを置換することができる。マグネシウムケイ酸塩のこれらの粘土は、ヘクトライトである。粘土の組成によってシートまたは層は、表面および端部において電荷を負っている。この電荷は、粘土の層間間隙において部分的に存在する対イオンによってバランスされている。層または小板の厚さは、1nmのオーダーであり、アスペクト比の範囲は、100〜1500である。小板の分子量[1.3×10]は、最も大きいポリマーよりかなり大きい。さらに小板は、必ずしも全て固くなく、ある程度の可撓性を有している。また、これらは、グラム当たり数百平方メートルの非常に高い表面積を有している。また、これらは、イオン交換能力がある。粘土は、これらの荷電性質のために一般に高い親水性のものであり、ポリマー系と相溶性がない。したがって、粘土をポリマーと相溶性にするために必要な要件は、これらの極性を変更して、これらを親油性にすることである。これは、例えばアルキルアンモニウムイオンなどの有機カチオンによる親水性粘土のイオン交換で達成される。モンモリロナイトにおいては、粘土中のナトリウムイオンが、例えば12−アミノドデカン酸[ADA]などのアミノ酸で置換することができる。
【0032】
Na−粘土+HOC−R−NH+Cl→HOC−R−NH−粘土+NaCl
モンモリロナイトとヘクトライトに加えて、例えばハイドロタルサイトなどの他の合成の粘土も非常に純粋な形で製造することができ、小板上に正の電荷を負うことができる。
【0033】
最終のナノコンポジットは、インターカレート型または剥離型であり得る。
【0034】
インターカレート型では、相互の小板の間隔が広げられるものの、それでも層が互いに明確な空間的な関係を維持するように、有機ポリマー(PVdC)が粘土の層の間に挿入され得る。
【0035】
剥離型においては、小板が完全に切り離され、個々の層が、ポリマー(PVdC)のマトリクス中に分布される。
【0036】
粘土の表面極性を変更することによって、オニウムイオンは、膜間領域中にポリマー前駆体の熱力学的に好ましい侵入を可能にすることができる。粘土の層間剥離を助長するオニウムイオンの能力は、例えばこの極性などの化学的な性質に左右される。例えばハイドロタルサイトなどの正電荷の粘土に関しては、オニウム塩改質は、イオン界面活性剤の使用によって置換される。粘土改質の他のタイプは、イオン双極子相互作用、シランカップリング剤およびブロックコポリマーおよびグラフトコポリマーの使用を含む。
【0037】
本発明との関係で、PVdC−ナノ粘土ノノコンポジットは、フリーラジカル懸濁重合またはフリーラジカル乳化重合によって製造することができる。ナノ粘土スラリーが、適切な懸濁剤を用いて水相中に前もって分散され、pHが6から8に調整される。ポリマー変換率が少なくとも20%に到達したときに、このスラリーが重合反応器にポンプで送り込まれる。ポリマーの所望の変換率に到達するまで、ナノ粘土スラリー添加後、反応を継続する。
【0038】
使用することができる別の方法は、特定のポリマー変換率に到達した後に反応器にナノ粘土スラリーを加え、反応を終結させることである。
【0039】
両方の場合において、適当な反応攪拌が維持されるか、もしこの系の粘度における上昇がある場合には反応攪拌が増大されるが、十分な時間をかけてナノ粘土の所望の剥離が達成されるようにしなければならない。
【0040】
PVdCの懸濁重合の典型的な工程は、次のとおりである。これらの工程は、例えば塩化ビニリデン(CH=CCl)および塩化ビニルなどのモノマーの製造、および水、開始剤、分散剤、抗酸化剤などの使用を含む。モノマー単位はまた、スチレン、ビニルアセテート、アクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸のC〜C12アルキルエステル(例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートなど)から誘導することができる。PVdC(サラン)の製造は、当該技術において良く知られている。反応器の準備は、窒素によるパージング、反応温度までの加熱、水、モノマーおよび他の添加剤の混合物の所望の攪拌速度での攪拌を含む。次いで、反応が開始され、反応が定められた変換率まで行われる。
【0041】
反応が終了した後にポリマーは、未反応モノマーをストリップし、洗浄し、水から分離し、乾燥することができる。次いで乾燥されたナノコンポジットは、適当な加工助剤と配合され、フィルムに製造される。加工助剤は、反応器に加えるか、またはその後に配合することができる。
【0042】
本明細書の図1は、単一層11を有する単一層フィルム10を示す。
【0043】
層11は、本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを含む。
【0044】
図2は、層21および層22を有する2層フィルム20を示す。
【0045】
層21は、図1の層11に関して前に開示したポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを含む。
【0046】
層22は、例えば熱可塑性ポリマー材料、例えばオレフィンポリマー、例えばエチレンポリマー、例えばエチレンホモポリマーまたはコポリマー、例えばエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、例えば不均質または均質エチレン/アルファ−オレフィンコポリマーなどのいずれかの好適なポリマー材料を含むことができる。
【0047】
層22は、例えばエチレン/ビニルアセテートコポリマー;エチレン/アルキルアクリレートコポリマー;エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー;アイオノマー;プロピレンホモポリマーおよびコポリマー;ブチレンホモポリマーおよびコポリマーなどのオレフィンポリマーまたはコポリマーを含むことができる。
【0048】
層22に関して本明細書に開示された材料のいずれかの配合物も層22に中に含ませることができる。
【0049】
図3は、層31、32および33を有する3層フィルム30を示す。
【0050】
層31は、図1の層11に関して前に開示したポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを含む。
【0051】
層32および33は、図2の層22に関して上記で開示したポリマーのいずれかを含む。
【0052】
層32および33は、同じであっても異なっていても良い。相違は、組成において、1つまたは複数の物理的な性質において、厚さにおいて、添加剤の量およびタイプにおいて、架橋または配向の程度において、等々に存在し得る。例えば、層32は、6%のビニルアセテートを有するエチレン/ビニルアセテートを含むことができ、層33は、9%のビニルアセテートを有するエチレン/ビニルアセテートを含むことができる。別の例として、層32は、6%のビニルアセテートを有するエチレン/ビニルアセテートを含むことができ、層33はエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーを含むことができる。したがって、本発明によるフィルム構造は、A/B/Aとして、またはA/B/C(ここで、A、BおよびCは、多層フィルムの別個の層を表す)として描くことができる。
【0053】
本発明の1つの実施形態による多層フィルム構造は、少なくとも4層を有する。このようなフィルム40(図4を参照)は、シール層43、バルク層44、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを含むO−バリア層41、およびアビューズ層42を含む。層43、41および42は、前の図の層22、32および33のいずれかに一致する。バルク層44は、シール層43とO−バリア層41との間に配置することができ、O−バリア層41は、バルク層44とアビューズ層42との間に配置することができる。所望なら、ポリマー接着剤を含む結合層は、シール層43とバルク層44との間、ならびにO−バリア層41とアビューズ層42との間に配置することができる。
【0054】
バルク層44は、図3の層32および33に関して開示された材料のいずれかを含むことができる。
【0055】
本発明のフィルムは、このフィルムが、意図する最終用途に所望される性質を与える限りにおいて所望のどのような合計の厚さをも有することができる。厚さは、0.1から20ミルまで、例えば0.3から16ミルまで、0.5から12ミルまで、0.7から8ミルまで、および1.3から4ミルまでの範囲内であることができる。
【0056】
図6は、例えば錠剤などの医薬品を包装するための従来のブリスターパック50を示す。蓋52は、ベース56の肩54においてベース56に結合されている(図5も参照されたし)。多数の凹部58(それぞれが錠剤、カプセルまたは他の医薬品を収容するように設計されている)は、蓋52によって被覆されている。蓋52は、従来金属箔または金属化箔である。図5は、ブリスターパック50の縦方向断面図を示す。凹部58を有するベース56は、肩54において蓋52と接触している。肩54の領域において、蓋52は、ベース56に例えばシーリングまたは接着剤の接着によって結合される(シーリング/接着剤は、明解にするために示されていない)。図7は、ベース56、蓋52および凹部58を有するブリスターパック50の断面図を示す。
【0057】
図8は、本発明のフィルムを使用するブリスターパック50の拡大された断片的な断面図を示す。ベース56は、内部フィルム62および外部フィルム60から作られている。
【0058】
内部フィルム62は、本発明のフィルムを含む。フィルム62は、潰して平らにしたフィルムであり得る。このフィルムは、医薬品応用のために良好な(低い)MVTRならびに低いOTRを提供することができる。
【0059】
外部フィルム60は、いくつかのブリスター包装において使用される例えばPVC(ポリ塩化ビニル)フィルムなどのいかなる好適なフィルムでもよい。
【0060】
あるいは、ベースは、追加のフィルム60を必要とすることなく、本発明のフィルムを含む単一フィルムを含むことができる。
【0061】
別の選択肢において、本発明のフィルムは、外部フィルムを含むことができ、別のフィルムが、内部フィルム62を形成することができる。
【0062】
本発明のフィルムがベースの中に存在することを条件に、当業者は、様々な組み合わせをすることができることを理解するはずである。
【0063】
さらに別の実施形態においては、本発明のフィルムは、ブリスターパックの蓋を形成することができ、従来の箔またはプラスチックフィルムがベースを形成することができる。
【0064】
フィルム62および60は、例えば積層、同時押出し、押出しコーティング、押出し積層、熱シーリング、接着などのいずれかの好適な手段によって一緒に結合することができる。
【0065】
本発明のブリスターパックのベースは、エンボス加工し、深絞り加工し、または真空成形することができる。
【0066】
蓋は、1つの実施形態において、アルミニウム箔またはアルミニウム箔を含むラミネート、または低い弾性および乏しい伸縮性を示すプラスチックを含むことができる。
【0067】
ベースは、カップまたは皿の形状の例えば6から30までの凹部を有することができる。凹部は、肩によって取り囲まれ、肩は、互いに連結された平らな平面を形成している。ベースは、例えば凹部中に内容物を有するエンドレスのストリップとして製造することができ、同様にエンドレスのストリップの形で、特に蓋の箔の形状になっている蓋と一緒にすることができる。蓋は、ベースを完全にカバーし、例えばシーリングまたは接着剤で接着することによって肩においてベースに結合される。蓋は、全体の領域で、または特別なシーリングツール、または目的の接合パターンを選択することによって肩にシールされるか、または接着剤で接合され、このシーリングまたは接合は、部分的のみであってもよい。次いで、蓋をされたベースのエンドレスストリップは、所望の寸法に切断することができる。これは、例えばスタンピングツールを使用して実行することができる。同時に、ブリスターパックに外形が与えられてもよく、また、ブリスターパックを曲げさせ、または蓋のセグメントを作り出させ、蓋のセグメントの容易な除去および内容物の取り出しを可能にするために、蓋の材料またはベースに弱い部分を与えることも可能である。
【0068】
本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットは、どのような好適な塩化ビニリデン含有コポリマー(すなわち、塩化ビニリデン(CH=CCl)から誘導されるモノマー単位と、塩化ビニル、スチレン、ビニルアセテート、アクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸のC〜C12アルキルエステル(例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートなど)の1つまたは複数から誘導されるからモノマー単位とを含むコポリマー)を含むことができる。したがって、好適なPVdC樹脂は、例えば塩化ビニリデン/塩化ビニルコポリマー、塩化ビニリデン/メチルアクリレートコポリマー、塩化ビニリデン/アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニリデン/ブチルアクリレートコポリマー、塩化ビニリデン/スチレンコポリマーおよび塩化ビニリデン/ビニルアセテートコポリマーの1つまたは複数を含む。塩化ビニリデンモノマーの重量パーセントは、好ましくは、ナノケイ酸塩含有量を除いたコポリマーの75重量%から96重量%までであり、例えば塩化ビニルなどの第2モノマーの重量%は、好ましくは、ナノケイ酸塩含有量を除いたコポリマーの4重量%から25重量%である。
【0069】
本発明の安定剤は、
1)例えばエピクロロヒドリン/ビスフェノールA、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化アマニ油脂肪酸のブチルエステル、エポキシ化オクチルタレート、エポキシ化グリコールジオレート等ならびにこれらの混合物などのエポキシ化合物;
2)酸化ポリエチレン;
3)2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート;
4) 塩素化ポリエチレン;
5) テトラエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート);
6)例えばピロリン酸四ナトリウム塩などの弱い無機酸の金属塩;
7)例えばリシノール酸カルシウムなどの脂肪酸石鹸;および
8)例えばMITSI(商標)から商標DHT4A(商標)のもとに入手できるマグネシウムアルミニウムヒドロキシカーボネート、またはKisuma Chemicalsから入手できるALCAMIZER(商標)などのハイドロタルサイト
の1つまたは複数を含むことができる。
【0070】
エポキシ化合物の市販の例は、エピクロロヒドリン/ビスフェノールA、すなわち、ShellからEPON(商標)828として入手可能なエポキシ樹脂;Viking Chemical CompanyからVIKOFLEX(商標)7177として入手可能なエポキシ化大豆油;Viking Chemical CompanyからVIKOFLEX(商標)7190として入手可能なエポキシ化アマニ油;Viking Chemical CompanyからVIKOFLEX(商標)9040として入手可能なエポキシ化アマニ油脂肪酸ブチルエステル;C.P.Hall CompanyからMonoplex S−73として入手可能なエポキシ化オクチルタレートおよびC.P.Hall CompanyからMONOPLEX(商標)S−75として入手可能なエポキシ化グリコールジオレートを含む。
【0071】
安定剤は、本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットの0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10重量部、例えば本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットの0.5から5重量部まで、例えば1から3重量部まで、例えば1.5から2重量部までを含むことができる。
【0072】
安定剤の市販の例は、Acme−Hardesty Companyから入手可能なFERRO(商標)PLASCHEK(商標)775、すなわちエポキシ化大豆油およびリシノール酸カルシウムを含む。
【0073】
本発明のポリマー加工助剤は、
1)例えばリシノール酸カルシウムなどの脂肪酸石鹸;
2)例えばメチルアクリレート/ブチルアクリレート/スチレンターポリマー、メチルアクリレート/ブチルアクリレート/ブチルメタクリレートターポリマー;これらの配合物などのアクリレートコモノマーを有するターポリマー;
3) n−(2−ヒドロキシエチル)−12ヒドロキシステアラミド;および
4) プロピレングリコールモノリシノレート
の1つまたは複数を含むことができる。
【0074】
ポリマー加工助剤は、本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットの0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10重量部、例えば本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットの0.5から5重量部まで、例えば1から3重量部まで、例えば1.5から2重量部までを含むことができる。
【0075】
ポリマー加工助剤の市販の例は、ELF ATOCHEM(商標)METABLEN(商標)L1000、アクリル系のポリマー加工助剤である。
【0076】
ここで注記されることは、例えばリシノール酸カルシウムなどの脂肪酸石鹸は、安定剤およびポリマー加工助剤の両方として機能し得ることである。この実施形態において、脂肪酸石鹸は、本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットの0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10重量部を含むことができる。例えば、脂肪酸石鹸は、本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットの0.5から5重量部まで、例えば1から3重量部まで、例えば1.5から2重量部までを含むことができる。
【0077】
他の同時安定化ポリマー加工助剤、例えばHENKEL(商標)LOXIOL(商標)VPG1732、高分子量複合エステル、およびCASCHEM(商標)CASTOWAX(商標)NF、水素添加ヒマシ油なども場合により本組成物に含有させることができる。
【0078】
本発明のナノケイ酸塩は、
1)例えばモンモリロナイト、バイデライトおよびノントロナイトなどの複八面体粘土;および
2)例えばサポナイト、ヘクトライトおよびソーコナイトなどの3八面体粘土;および特にこれらの粘土のオキソニウムイオン変性型
の1つまたは複数を含むフィロケイ酸塩群の1つまたは複数を含むことができる。
【0079】
ナノケイ酸塩は、本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットの0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10重量部を含むことができ、例えば、ナノケイ酸塩は、本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットの0.5から8重量部まで、例えば1から5重量部まで、例えば1.5から4重量部までを含むことができる。
【0080】
ナノケイ酸塩の市販の例は、Southern Clay Productsからのオキソニウムイオン変性モンモリロナイト粘土であるCLOISITE(商標)20A、およびCLOISTTE(商標)15A;Nanocorからのオキソニウムイオン変性モンモリロナイトであるNANOMER(商標)1.31PS;Elementis Specialtiesから入手可能なBENTONE(商標)粘土、すなわちベントナイト粘土(スメクタイトの一部集団)であるBENTONE(商標)107およびBENTONE(商標)111、ヘクトライト粘土(これもまたスメクタイトの一部集団)であるBENTONE(商標)108およびBENTONE(商標)166;Nanova LLCから入手可能な組成MgSiO10(OH)を有するナノタルク;Argonne National Laboratoryから入手可能なナノタルク(フィロケイ酸塩)を含む。
【0081】
場合により、本発明の組成物およびフィルムは、酸(塩酸)捕捉剤を含むことができる。もし存在する場合、酸捕捉剤は、本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットの0.1から4重量部まで、例えば0.5から2重量部までを含むことができる。
【0082】
酸捕捉剤の市販の例は、式:Mg4.5Al(OH)13CO3.5HOのマグネシウムアルミニウムヒドロキシカーボネートであるMITUI(商標)DHT4Aである。代わりの物質は、ピロ燐酸四ナトリウム塩(TSPP)である。
【0083】
本発明のポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットの全体の熱安定性の測定は、前記組成物を、一組の加熱したロールの間または加熱した混合室の中において処理することによって行うことができる。剪断劣化および熱誘発の劣化によって目立って黒ずんだポリマーを生成するに要する時間が、前記組成物の熱安定性の効果の尺度である。商業的に受け容れられる塩化ビニリデンコポリマー配合物は、約168℃(335°F)、63回転/分において稼動している例えばBRABENDER(商標)混合器などの混合装置中において少なくとも10分の熱安定時間を示す。
【0084】
本発明の組成物は、当業者に知られている多くの方法のいずれかにおいて、例えば米国特許第3,741,253号(Brax他)、米国特許第4,278,738号(Brax他)および米国特許第4,284,458号(Schirmer)(参照によってこれらの全てが本明細書に組み込まれる)において開示されている方法によって、押出し、または加工し、そのようにしてフィルムまたは多層フィルムの層を形成することができる。したがって、本発明のフィルムを製造するために、方法が前記ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物を使用するかぎり、酸素バリア層を有するフィルムを製造するいかなる好適な方法をも使用することができる。好適な方法は、チューブ状キャスト同時押出し、例えば米国特許第4,551,380号に示されるような方法(Schoenberg)(参照によってその全てが本明細書に組み込まれる);当該技術において良く知られた技術によるチューブ状またはフラットキャスト押出し;または絞りバブル押出し(単層フィルムのための)または同時押出し(多層フィルムのための)などを含む。多層フィルムは、全てのフィルム層の同時押出し、押出しコーティング、押出し積層、コロナ接着または従来の積層によって製造することができる。PVdC層を有する多層フィルムの製造方法は、Baird,Jr他に対して1978年9月5日に発行された米国特許第4,112,181号(参照によってこの全てが本明細書に組み込まれている)に開示されている。この特許は、チューブの壁が少なくとも3層を有し、その中央の層がPVdC層であるチューブ状フィルムの同時押出し方法を記載している。チューブ状フィルムは、その後、トラップドバブル技術によって2軸方向に配向される。3層フィルムは、電子線照射によって架橋することができる。
【0085】
多層サランフィルムを製造するためのよい方法は、PVdCバリア層を有する多層2軸配向フィルムを開示している、Brax他に対して1973年6月26日に発行された米国特許第3,741,253号(参照によってこの全てが本明細書に組み込まれる)に開示されている。このフィルムは、押出しコーティング法によって製造され、この方法においては、例えばポリエチレンまたはエチレンビニルアセテートコポリマーなどの層またはポリマーの層が、チューブの形で押出され、照射によって架橋され、膨らまされる。PVdCの層は、膨らまされたチューブ状物の上に押出し被覆され、別の層またはポリマーの層が、PVdCの上に同時にまたは順次に被覆される。冷却後、この多層チューブ状構造は、平らにされて、巻き取られる。次いで、このチューブ状物を、膨張させ、配向温度に加熱して、フィルムを2軸配向させる。このバブルを迅速に冷却し、配向を定着させる。この方法は、低い酸素透過性を有する熱収縮性バリアフィルムを製造する。また、架橋フィルムの利点が、サランを劣化させる傾向のある照射にPVdC層をさらすことなく、提供される。Brax他への特許の実施例におけるバリア層は、可塑化された塩化ビニリデンと塩化ビニルのコポリマーである。
【0086】
本発明のフィルムは、架橋されていても、架橋されていなくともよく、配向されていても、配向されていなくてもよく、熱収縮性であっても、非熱収縮性であってもよい。フィルムが熱収縮性である場合、これは、85℃(185°F)において10から100%までの全体のフリー収縮を有する。本発明のフィルムの全てまたは一部は、架橋を起こすために放射線を当てることができる。照射プロセスにおいて、フィルムは、エネルギー照射処理、例えばコロナ放電、プラズマ、火焔、紫外線、X−線、ガンマ線、ベータ線および高エネルギー電子線処理などにかけ、照射された材料の分子間の架橋を起こさせることができる。適当な線量レベルは、当業者に良く知られた標準線量測定方法によって決定することができ、使用される照射の正確な量は、もちろん特定の膜構造およびこの最終用途に依存する。フィルムには、0.5〜15メガラド(MR)(5から150KGraysまで)、例えば1〜12MRのレベルで照射することができる。ポリマーフィルムの照射のさらなる詳細は、例えば米国特許第4,064,296号(Bornstein他)、同第4,120,716号(Bonet)および同第4,879,430号(Hoffman)(これら全てが参照によって全てそのまま本明細書中に組み込まれる)中に見出すことができる。
【0087】
本発明のフィルムは、チューブ状の同時押出し成形によって、および押出しコーティングによって製造することができる。後者の場合において、基材が押出され、または同時に押出され、場合により照射され、次いで場合により、延伸配向され;次いで本明細書に開示されたポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットの層が、場合により少なくとも1つの追加の層と共にその基材に押出し被覆される。
【0088】
本発明のフィルムは、次の構造を有することができる。
【0089】
【表1】

表1において、A=ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット
B、CおよびD=図4の層43、44および42のそれぞれに関して前に開示されたいずれかの材料
【0090】
また、本発明によるフィルムを製造するために使用されるポリマー成分は、通常、このような組成物に含有されるか、またはこのような組成物と共に配合される他の添加剤の適当な量も含むことができる。添加剤の例としては、スリップ剤、酸化防止剤、充填剤、着色料、顔料、照射安定剤、帯電防止剤、エラストマーおよび包装フィルムの技術における当業者によって知られている他の添加剤をがあげられる。
【0091】
本発明の多層フィルムは、このフィルムが、フィルムが使用される特定の包装操作のために所望される性質を与える限り、所望されるいかなる合計の数の層およびいかなる合計の厚さをも有することができる。
【0092】
PVdC(ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット)を含むフィルム層は、フィルムに対して顕著な変化(フィルムの劣化)なしに15MRの照射量レベルまで照射することができる。しかしながら、塩素化物が生成されるとFDAで受け容れられない。
【0093】
当業者に知られているように、塩化ビニリデンおよびメチルアクリレートから誘導されるポリマー単位を含むポリマーの使用は、PVdC上の照射の劣化の影響を減少する。
【0094】
本発明のフィルムは、ベースの上に積層し、接着剤で接着し、押出し被覆し、または押出し積層して、積層体を形成することができる。積層は、接着剤による層の結合、熱および圧力による結合およびスプレッドコーティングおよび押出しコーティングによっても達成することができる。
【0095】
本発明のフィルムは、包装されている製品が、大気のOから保護されるべき包装用途に特に好適である。さらに詳しくは、本発明によるフィルムは、医薬品のブリスター包装として、バリアバッグとして使用に適したフィルムとして、およびパッチバッグにおける使用に好適なフィルムとして特に有用である。
【0096】
ブリスター包装は、前に開示したPVdC組成物およびこれから製造されたフィルムを使用して従来の技術および従来の包装形態で製造することができる。
【0097】
【表2】


表1に対する注記
1.6〜9重量%MAモノマー
2.エポキシ化大豆油
3.ポリマー加工助剤
4.有機第4級アンモニウム塩で表面処理されたスメクタイト粘土(モンモリロナイト)
5.Southern Clay Products Inc.からの天然スメクタイト
6.Elementis Specialitiesからの天然モンモリロナイト
7.Argonne Natural Labsからのフィロケイ酸塩のナノタルク
8.3〜6重量%MAコモノマー
9.VDC−VC(塩化ビニルの重量%は、VDC−VCコポリマーの8から14重量%である)
10.ASは酸捕捉剤である。
【0098】
また、「phr」は、物質の100ポンド(重量単位)当たりのポンドを意味することに注意すべきである。したがって、例えば、第1の比較例のフィルムにおいては、VDC/MA樹脂の100ポンドの等量が、ESO物質の2ポンドおよびポリマー加工助剤の2ポンドと配合された。「phr」に同等のものは、「重量部」である。例えば、VDC/MAが例において存在する各物質の相対量を示すためにナノタルク(ナノケイ酸塩)から別個にあげられているが、事実、ナノケイ酸塩は、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット構造の一部を形成していることが理解されるはずである。
追加の予測実施例
実施例10
熱間ブロー成形(hot blown)プロセスによって4層フィルムが1つのチューブ状体として同時に押出され、フィルムは次の構成を有している:
EVA/EVA/PVdC/EVA
(ここで、
EVA=HuntsmanからPE1335(商標)として入手可能なビニルアセテート含有量3.3重量%を有するEVA
PVdC=ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット
EVA=DuPontからELVAX(商標)3182−2として入手可能なビニルアセテート含有量28重量%を有するEVA)
押出し後、チューブ状の同時押出し物は、それ自身の上で潰され、次の構成;
EVA/EVA/PVdC/EVA//EVA/PVdC/EVA/EVA
を有する平らなフィルムを形成する。
各PVdC層に関する好ましい厚さは、0.75ミルである。
実施例11
前の実施例のものと同様に4層フィルムが、キャスト同時押出し方法によって製造されたが、外層EVA層が、LLDPEで置換されている。したがって、このフィルムは次の構成:
LLDPE/EVA/PVdC/EVA
を有する。この実施例についてそれぞれ有用な2つの市販のLLDPE樹脂は、それぞれDowから入手できるDOWLEX2045.03およびDOWLEX2045.04である。これらのそれぞれは、オクテン含有量6.5重量%および密度0.920グラム/ccを有するエチレン/オクテン−1コポリマーである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】単一層フィルムの図式的な断面図である。
【図2】2層フィルムの図式的な断面図である。
【図3】3層フィルムの図式的な断面図である。
【図4】4層フィルムの図式的な断面図である。
【図5】ブリスターパックの縦断面図を示す。
【図6】図5のブリスターパックの平面図を示す。
【図7】図6のブリスターパックの断面図を示す。
【図8】図6のブリスターパックの拡大された断片的な断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層が、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物を含み、前記組成物が、
a)ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを前記組成物の100重量部;
b)安定剤を前記組成物の0.1から10重量部まで;および
c)ポリマー加工助剤を前記組成物の0.1から10重量部まで
含むポリマーフィルム。
【請求項2】
安定剤が、
a)エポキシ化合物(epoxidized compounds);
b)酸化ポリエチレン;
c)2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート;
d)塩素化ポリエチレン;
e)テトラエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート);
f)弱い無機酸の金属塩;および
g)ハイドロタルサイト
からなる群から選択される、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
エポキシ化合物が、エピクロロヒドリン/ビスフェノールA、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化アマニ油脂肪酸のブチルエステル、エポキシ化オクチルタレートおよびエポキシ化グリコールジオレートからなる群から選択される、請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
ポリマー加工助剤が、
a)アクリレートコモノマーを有するターポリマー;
b)n−(2−ヒドロキシエチル)−12ヒドロキシステアラミド;および
c)プロピレングリコールモノリシノレート
からなる群から選択される、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
アクリルレートコモノマーを有するターポリマーが、メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/スチレンターポリマー;およびメチルメタクリレート/ブチルアクリレート/ブチルメタクリレートターポリマーからなる群から選択される、請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットが、フィロケイ酸塩群の親水性粘土を含み、前記粘土が、
a)二八面体型粘土;および
b)三八面体型粘土
からなる群から選択される、請求項1に記載のフィルム。
【請求項7】
親水性粘土が、モンモリロナイト、バイデライトおよびノントロナイトからなる群から選択される、請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
親水性粘土がオキソニウムイオンで変性されている、請求項6に記載のフィルム。
【請求項9】
組成物が酸捕捉剤を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項10】
少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層が、ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物を含み、前記組成物が、
a)ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを前記組成物の100重量部;および
b)脂肪酸石鹸を前記組成物の0.1から10重量部まで
含むポリマーフィルム。
【請求項11】
脂肪酸石鹸がカルシウムリシノレートを含む、請求項10に記載のポリマーフィルム。
【請求項12】
ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットが、フィロケイ酸塩群の親水性粘土を含み、前記粘土が、
a)二八面体型粘土;および
b)三八面体型粘土
からなる群から選択される、請求項10に記載のフィルム。
【請求項13】
親水性粘土が、モンモリロナイト、バイデライトおよびノントロナイトからなる群から選択される、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
親水性粘土がオキソニウムイオンで変性されている、請求項12に記載のフィルム。
【請求項15】
組成物が酸捕捉剤を含む、請求項10に記載のフィルム。
【請求項16】
a)i)多数の凹部、および
ii)前記凹部を取り囲む肩
を含むベース;
b)前記肩に付設された蓋;および
c)それぞれの凹部中に配置された内容物
を含み、前記ベースおよび蓋のうちの少なくとも1つがポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物を含み、前記組成物が、
i)ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを前記組成物の100重量部;
ii)安定剤を前記組成物の0.1から10重量部まで;および
iii)ポリマー加工助剤を前記組成物の0.1から10重量部まで
含むブリスターパック。
【請求項17】
安定剤が、
a)エポキシ化合物(epoxidized compounds);
b)酸化ポリエチレン;
c)2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート;
d)塩素化ポリエチレン;
e)テトラエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート);
f)弱い無機酸の金属塩;および
g)ハイドロタルサイト
からなる群から選択される、請求項16に記載のブリスターパック。
【請求項18】
ポリマー加工助剤が、
a)アクリレートコモノマーを有するターポリマー;
b)n−(2−ヒドロキシエチル)−12ヒドロキシステアラミド;および
c)プロピレングリコールモノリシノレート
からなる群から選択される、請求項16に記載のブリスターパック。
【請求項19】
ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットが、スメクタイト群の親水性粘土を含み、前記粘土が、
a)二八面体型粘土;および
b)三八面体型粘土
からなる群から選択される、請求項16に記載のブリスターパック。
【請求項20】
a)i)多数の凹部、および
ii)前記凹部を取り囲む肩
を含むベース;
b)前記肩に付設された蓋;および
c)それぞれの凹部に配置された内容物
を含み、前記ベースおよび蓋のうちの少なくとも1つがポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジット組成物を含み、前記組成物が、
i)ポリ塩化ビニリデン層状ケイ酸塩ナノコンポジットを前記組成物の100重量部;
ii)脂肪酸石鹸を前記組成物の0.1から10重量部まで
含むブリスターパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−535966(P2008−535966A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504344(P2008−504344)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/011606
【国際公開番号】WO2006/105273
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(500256772)クライオバック・インコーポレイテツド (25)
【Fターム(参考)】