説明

ポリ(アリーレンエーテル)組成物、方法および物品

相乗作用を起こす難燃剤組み合わせは、(a) 式(I):[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]を有するリン塩と;トリヒドロカルビルホスフィン類、トリヒドロカルビルホスフィンオキシド類およびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物とを含む。難燃剤組み合わせを利用するポリマー組成物が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プラスチックス工業では、多くの物品用途は、難燃性プラスチック組成物を必要とする。ある場合には、これは、本質的に難燃性のプラスチックス、例えば、ハロゲン化されたポリマーを使用することによって達成することができる。他の場合には、本質的に難燃性でないプラスチックスを必要とし、難燃性の添加剤をプラスチックス組成物に添加する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
しかし、極めて有効な難燃性添加剤の多くは、健康上または環境的理由により現在好ましくないハロゲン化された化合物である。さらに、非ハロゲン化された難燃性添加剤を使用するとき、それらは、所望される難燃性を達成するために高濃度で使用する必要があり、これら高濃度は、プラスチック組成物の所望される物理的特性を一部損ないかねない。したがって、ハロゲンを含まずかつ低濃度で有効な難燃性組成物についての需要が存在する。
【課題を解決しようとする手段】
【0003】
上記およびその他の欠点は、式:
【0004】
【化1】

[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有するリン塩と;トリヒドロカルビルホスフィン類、トリヒドロカルビルホスフィンオキシド類およびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物とを含む難燃性組成物によって軽減される。
【0005】
他の実施態様は、(a) 熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂;および、(b) (b1) 式:
【0006】
【化2】

[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化
状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有するリン塩と;(b2) トリヒドロカルビルホスフィン類、トリヒドロカルビルホスフィンオキシド類およびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物とを含む難燃剤を含む難燃性プラスチック組成物である。
【0007】
もう1つの実施態様は、(a) 官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂;(b) トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂およびそれらの組み合わせから選択される硬化性化合物;および、(c) (c1) 式:
【0008】
【化3】

[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有するリン塩と;(c2) トリヒドロカルビルホスフィン類、トリヒドロカルビルホスフィンオキシド類およびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物とを含む難燃剤を含む硬化性組成物である。
【0009】
組成物を製造する方法、難燃性プラスチック組成物から製造される物品、硬化された組成物および硬化性組成物から製造される物品を含め、その他の実施態様は、以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施態様の第1のカテゴリーは、難燃性組成物それ自体に関する。かくして、1つの実施態様は、式:
【0011】
【化4】

[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有するリン塩と;トリヒドロカルビルホスフィン類、トリヒドロカルビルホスフィンオキシド類およびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物とを含む難燃性組成
物である。本発明者等は、リン塩とホスフィン化合物との組み合わせが、個々の成分と比較して、難燃性を改善する難燃性相乗効果を有することを見出した。この利点は、要求される難燃剤の合計量を軽減し、それによって、プラスチック組成物の物理的特性を改善するために使用することができる。あるいは、この利点は、従来難燃性化合物のいずれの許容可能なレベルで達成しえたよりもより高い難燃性(例えば、UL 94評価でV-0)を達成するために使用することができる。本難燃剤の組み合わせは、熱可塑性樹脂を含むプラスチック組成物および熱硬化性樹脂を含むプラスチック組成物を含め、多種多様なプラスチック組成物で使用するのに適している。難燃性組成物の1つの具体的な使用は、官能化されたポリ(アリーレンエーテル);および、硬化性化合物、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂等を含む硬化性組成物への添加剤としてである。
【0012】
本難燃性組成物に使用されるリン塩は、式:
【0013】
【化5】

[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有する。本明細書で使用する場合、“ヒドロカルビル”という用語は、それ自体により、または、もう1つの用語の接頭辞、接尾辞または部分として使用され、炭素および水素のみを含有する残基を称す。残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐、飽和または不飽和であってもよい。それは、また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐、飽和および不飽和の炭化水素部分の組み合わせを含有してもよい。ヒドロカルビル残基は、かく言うとき、しかし、置換基の残基の炭素および水素員にわたるかそれらの上にヘテロ原子を含有してもよい。かくして、このようなヘテロ原子を含有すると特に断る時、ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレン残基は、また、カルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基等を含有してもよいか;または、それは、ヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含有してもよい。
【0014】
1つの実施態様では、Md+は、オニウムイオンである。適したオニウムイオン類としては、例えば、アンモニウムカチオン(NH4+)、モノ-(C1-C12)-ヒドロカルビルアンモニウムカチオン類、ジ-(C1-C12)-ヒドロカルビルアンモニウムカチオン類、トリ-(C1-C12)-ヒドロカルビルアンモニウムカチオン類、テトラ-(C1-C12)-ヒドロカルビルアンモニウムカチオン類;ホスホニウムカチオン(PH4+)、モノ-(C1-C12)-ヒドロカルビルホスホニウムカチオン類、ジ-(C1-C12)-ヒドロカルビルホスホニウムカチオン類、トリ-(C1-C12)-ヒドロカルビルホスホニウムカチオン類、テトラ-(C1-C12)-ヒドロカルビルホスホニウムカチオン類;スルホニウムカチオン(SH3+)、モノ-(C1-C12)-ヒドロカルビルスルホニウムカチオン類、ジ-(C1-C12)-ヒドロカルビルスルホニウムカチオン類、トリ-(C1-C12)-ヒドロカルビルスルホニウムカチオン類等;および、それらの組み合わせが挙げられる。
【0015】
他の実施態様では、Md+は、金属イオンである。適した金属イオンとしては、例えば、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、アンチモン、錫、ゲルマニウム、チタン、亜
鉛、鉄、ジルコニウム、セリウム、ビスマス、ストロンチウム、マンガン、リチウム、ナトリウム、カリウム等;および、それらの組み合わせが挙げられる。1つの実施態様では、Md+は、Al3+である。
【0016】
上記リン塩構造に再度戻ると、1つの実施態様では、R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C6アルキルである。他の実施態様では、R1およびR2の各存在は、メチルまたはエチルである。好ましい実施態様では、Mは、アルミニウムであり、mおよびnの各存在は、ゼロである。他の好ましい実施態様では、リン塩は、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)を含む。
【0017】
難燃性組成物は、リン塩およびホスフィン化合物の合計100重量部に基づき、リン塩約5重量部〜約95重量部を含む。この範囲内で、リン塩の量は、少なくとも約10重量部;または、少なくとも約20重量部であるのがよい。また、この範囲内で、リン塩の量は、約90重量%まで、または、約80重量%までであるのがよい。
【0018】
リン塩以外に、本難燃性組成物は、トリヒドロカルビルホスフィン類、トリヒドロカルビルホスフィンオキシド類およびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物を含む。トリヒドロカルビルホスフィンは、構造:
【0019】
【化6】

[式中、R3〜R5は、各々、独立に、C1-C12ヒドロカルビルである]
を有するのがよいが、ただし、トリヒドロカルビルホスフィンは、少なくとも6個の炭素原子を有する。以下に論じるトリヒドロカルビルホスフィンおよびトリヒドロカルビルホスフィンオキシドの文脈にて、ヒドロカルビル置換基は、炭素および水素以外に、ヒドロキシ置換基(例えば、ヒドロカルビル置換基が4-ヒドロキシフェニルであってもよい)またはエーテル酸素(例えば、ヒドロカルビル置換基が、4-フェノキシフェニルであってもよい)を含んでいてもよい。適したトリヒドロカルビルホスフィン類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、ジアリルフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、ビス(1-ナフチル)(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)(1-ナフチル)ホスフィン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィン、トリス(1-ナフチル)ホスフィン、トリス(2-ナフチル)ホスフィン、ビス(4-フェノキシフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-フェノキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-フェノキシフェニル)ホスフィン、ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)(2,4,5-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,5-トリメチルフェニル)ホスフィン、ビス(t-ブチル)(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィン、ビス(4-ヒドロキシ-フェニル)(t-ブチル)ホスフィン、トリス(t-ブチル)ホスフィン等およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
ホスフィン化合物は、トリヒドロカルビルホスフィンオキシドであってもよい。トリヒドロカルビルホスフィンオキシドは、構造:
【0021】
【化7】

[式中、R3〜R5は、各々、独立に、C1-C12ヒドロカルビルである]
を有するのがよいが、ただし、トリヒドロカルビルホスフィンオキシドは、少なくとも6個の炭素原子を有する。適したトリヒドロカルビルホスフィンオキシドとしては、例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、アリルジフェニルホスフィンオキシド、ジアリルフェニルホスフィンオキシド、トリアリルホスフィンオキシド、ビス(1-ナフチル)(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)(1-ナフチル)ホスフィンオキシド、トリス(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシド、トリス(1-ナフチル)ホスフィンオキシド、トリス(2-ナフチル)ホスフィンオキシド、ビス(4-フェノキシフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-フェノキシフェニル)ホスフィンオキシド、トリス(4-フェノキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)(2,4,5-トリメチルフェニル)ホスフィンオキシド、トリス(2,4,5-トリメチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(t-ブチル)(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(4-ヒドロキシ-フェニル)(t-ブチル)ホスフィンオキシド、トリス(t-ブチル)ホスフィンオキシド等およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
難燃性組成物は、リン塩およびホスフィン化合物の合計100重量部に基づき、ホスフィン化合物約5重量部〜約95重量部を含むことができる。この範囲内で、ホスフィン化合物の量は、少なくとも約10重量部または少なくとも約20重量部であるのがよい。また、この範囲内で、ホスフィン化合物の量は、約90重量%まで、または、約80重量%までであるのがよい。
【0023】
1つの実施態様は、
【0024】
【化8】

[式中、Md+は、Al3+であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C6ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、0である]
を有するリン塩と;構造:
【0025】
【化9】

[式中、R3〜R5は、各々、独立に、C3-C12ヒドロカルビルである]
を有するトリヒドロカルビルホスフィンオキシドと;
を含む難燃性組成物である。
【0026】
1つの実施態様は、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)と;トリフェニルホスフィンオキシド、アリルジフェニルホスフィンオキシドおよびそれらの組み合わせから選択されるホスフィンオキシドとを含む難燃性組成物である。
【0027】
1つの実施態様では、難燃性組成物は、リン塩とホスフィン化合物とをブレンドすることによって製造することができる。しかし、ポリマー組成物に添加する前に、これら2つの成分を予めブレンドする必要はない。例えば、以降の作業実施例に示すように、難燃剤組み合わせの利点は、リン塩とホスフィン化合物とをポリマー組成物に別個の成分として加え、続いて、均質にブレンドする場合に達成することができる。
【0028】
難燃性組成物は、多様な高分子組成物に難燃性を付与するために有用である。かくして、実施態様の第2のカテゴリーは、(a) 熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂;および、(b)
(b1) 式:
【0029】
【化10】

[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有するリン塩と;(b2) トリヒドロカルビルホスフィン類、トリヒドロカルビルホスフィンオキシド類およびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物とを含む難燃剤を含む組成物に関する。熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の組み合わせ(ブレンド)を使用することもできる。組成物に使用するのに適した熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アリーレンエーテル)類;ポリ(アリーレンスルフィド)類;ポリアミド類;ホモポリスチレンおよびゴム改質ポリスチレンを含むポリスチレン類(“高耐衝撃性ポリスチレン”または“HIPS”);ポリエチレンおよびポリプロピレンを含むポリオレフィン類;ポリアリーレート、ポリカーボネートを含むポリエステル類;ポリ(スチレン-コ-アクロニトリル)類(“SAN”)、ポリ(アクリロニトリル-コ-ブタジエン-コ-スチレン)類(“ABS”)、ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)類(“SMA”)、ポリ(アクリロニトリル-コ-スチレン-コ-アクリレート)類(“ASA”)、ポリイミド類、ポリアミドイミド類、ポリエーテルイミド類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリケトン類、ポリエーテルケトン類、ポリシロキサン類等;および、それらの組み合わせが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂およ
びそれらの製造方法は、当分野公知である。上述した熱可塑性樹脂の組み合わせ(ブレンド)としては、例えば、ポリ(アリーレン-エーテル)-ポリアミドブレンド、ポリ(アリーレンエーテル)-ポリスチレンブレンド、ポリ(アリーレンエーテル)-ポリオレフィンブレンド、ポリカーボネート-ポリエステルブレンド、ポリカーボネート-ABSブレンド、ポリカーボネート-ポリシロキサンブレンドおよびポリエーテルイミド-ポリシロキサンブレンドが挙げられる。1つの実施態様では、熱可塑性樹脂は、ポリ(アリーレンエーテル)を含む。好ましいポリ(アリーレンエーテル)類としては、2,6-ジメチルフェノールのホモポリマー(すなわち、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル);および、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとのコポリマー(すなわち、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル-コ-2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル)が挙げられる。
【0030】
組成物に使用するのに適した熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ビニル樹脂、ベンズオキサジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアミド樹脂、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアミド樹脂、ヒドロキシメチルフラン、イソシアネート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、不飽和ポリエステルイミド等;および、それらの組み合わせが挙げられる。1つの実施態様では、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む。他の実施態様では、熱硬化性樹脂は、トリアリルシアヌレートを含む。他の実施態様では、熱硬化性樹脂は、トリアリルイソシアヌレートを含む。
【0031】
特に適したエポキシ樹脂としては、構造:
【0032】
【化11】

[式中、Aは、原子価nの有機または無機基であり;Xは、酸素または窒素であり;mは、1または2でありかつXの原子価と一致し;nは、1〜1000、理想的には、2〜8、最も好ましくは、2〜4である]
によって示されるものが挙げられる。
【0033】
適したエポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンまたはエピブロモヒドリンとフェノール化合物との反応によって製造される樹脂が挙げられる。適したフェノール化合物としては、例えば、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-(ジフェニルホスホリル)ヒドロキノン、ビス(2,6-ジメチルフェノール)2,2’-ビフェノール、4,4-ビフェノール、2,2’,6,6’-テトラメチルビフェノール、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサメチルビフェノール、3,3’,5,5’-テトラブロモ-2,2’,6,6’-テトラメチルビフェノール、3,3’-ジブロモ-2,2’,6,6’-テトラメチルビフェノール、2,2’,6,6’-テトラメチル-3,3’5-ジブロモビフェノール、4,4’-イソプロピリデンジフェノール (ビスフェノール A)、4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジブロモフェノール) (テトラブロモビスフェノール A)、4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジメチルフェノール) (テトラメチルビスフェノール A)、4,4’-イソプロピリデンビス(2-メチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンビス(2-アリルフェノール)、4,4’(1,3-フ
ェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール (ビスフェノール M)、4,4’-イソプロピリデンビス(3-フェニルフェノール)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール (ビスフェノール P)、4,4’-エチリデンジフェノール (ビスフェノール E)、4,4’-オキシジフェノール、4,4’チオジフェノール、4,4’-チオビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-スルホニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’スルフィニルジフェノール、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノール (ビスフェノール AF)、4,4’(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール (ビスフェノールAP)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン (ビスフェノール C)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン (ビスフェノール-F)、ビス(2,6-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’-(シクロペンチリデン)ジフェノール、4,4’-(シクロヘキシリデン)ジフェノール(ビスフェノール Z)、4,4’-(シクロドデシリデン)ジフェノール、4,4’-(ビシクロ[2.2.1]ヘプチリデン)ジフェノール、4,4’-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジフェノール、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン、1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1,3,3,4,6-ペンタメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビ[インデン]-5,6’-ジオール (スピロビインダン)、ジヒドロキシベンゾフェノン (ビスフェノール K)、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、トリス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、テトラキス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ジシクロペンタジエニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビス(2-メチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビスフェノール等;および、それらの混合物が挙げられる。
【0034】
その他の適したエポキシ樹脂としては、N-グリシジルフタルイミド、N-グリシジルテトラヒドロフタルイミド、フェニルグリシジルエーテル、p-ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、ネオヘキセンオキシド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA-タイプのエポキシ化合物、ビスフェノールS-タイプのエポキシ化合物、レゾルシノール-タイプのエポキシ化合物、フェノールノボラック-タイプのエポキシ化合物、クレゾールノボラック-タイプのエポキシ化合物、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバチン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等;および、それらの混合物が挙げられる。
【0035】
フェノール樹脂のグリシジルエーテル類、例えば、フェノール-ホルムアルデヒドノボラックのグリシジルエーテル類;もしくは、例えば、クレゾール-ホルムアルデヒドノボラック、t-ブチルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、sec-ブチルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、t-オクチルフェノール-ホルムアルデヒドノッボラック、クミルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、デシルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック等のアルキル置換されたフェノールホルムアルデヒド樹脂等のグリシジルエーテル類もまたエポキシ樹脂として適している。他の有用なエポキシ類は、ブロモフェノール-ホルムアルデヒド-ノボラック、クロロフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、フェノール-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼンノボラック、フェノール-ビス(ヒドロキシメチルビフェニル)ノボラック、フェノール-ヒドロキシベンズアルデヒドノボラック、フェノール-ジシクロペンタジエンノボラック、ナフトール-ホルムアルデヒドノボラック、ナフトールビス(ヒドロキシメチル)ベンゼンノボラック、ナフトール-ビス(ヒドロキシメチルビフ
ェニル)ノボラック、ナフトール-ヒドロキシベンズアルデヒドノボラック、ナフトール-ジシクロペンタジエンノボラック等のグリシジルエーテル類;および、それらの混合物である。
【0036】
多価脂肪族アルコール類のポリグリシジルエーテル類もまたエポキシ樹脂として適している。挙げることのできるこのような多価アルコール類の例は、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリアルキレングリコール類、グリセロール、トリメチロールプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-シクロヘキシル)プロパンおよびペンタエリスリトールである。
【0037】
エポキシ樹脂用の硬化剤としては、アミン化合物、無水物、ベンゼンジオール化合物、ビスフェノール樹脂、多価フェノール樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。アミン化合物の例としては、脂肪族アミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、メチレンジアミン、N-アミノエチルピラジン(AEP)、m-キシレンジアミン(MXDA)等;芳香族アミン化合物、例えば、m-フェニレンジアミン(MPDA)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DADPS)、ジアミノジフェニルエーテル等;および、第2級または第3級アミン化合物、例えば、フェニルメチルジメチルアミン(BDMA)、ジメチオルアミノメチルフェノール(DMP-10)、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-30)、ピペリジン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、2,6-ジアミノピリジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、ベンジジン、4,4’-ジアミノフェニルオキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4-アミノフェニル)メチルアミン、1,5-ジアミノナフタレン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、6,6’-ジアミン-2,2’-ピリジル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,5-ビス(m-アミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(p-アミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(m-アミノフェニル)チアゾ(4,5-d)チアゾール、5,5’-ジ(m-アミノフェニル)-(2,2’)-ビス-(1,3,4-オキサジアゾリル)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ビス(p-アミノフェニル)-2,2’-ジチアゾール、m-ビス(4-p-アミノフェニル-2-チアゾリル)ベンゼン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノフェニルベンゾエート、N,N’-ビス(4-アミノベンジル)-p-フェニレンジアミンおよび4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン);メラミン、2-アミノ-s-トリアジン、2-アミノ-4-フェニル-s-トリアジン、2-アミノ-4-フェニル-s-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジエチル-s-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-アミノ-4,6-ビス(p-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-アミノ-4-アニリノ-s-トリアジン、2-アミノ-4-フェノキシ-s-トリアジン、2-アミノ-4-クロロ-s-トリアジン、2-アミノ-4-アミノメチル-6-クロロ-s-トリアジン、2-(p-アミノフェニル)-4,6-ジクロロ-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-フェニル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ベンジル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(p-アミノフェニル)-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(m-アミノフェニル)-s-トリアジン、4-アミノ-6-フェニル-s-トリアジン-2-オールおよび6-アミノ-s-トリアジン-2,4-ジオール等;および、それらの混合物が挙げられる。
【0038】
適したシアネートエステル樹脂としては、構造:
【0039】
【化12】

[式中、Aは、原子価nの有機または無機基であり;nは、1〜1000、理想的には、2〜8、最も好ましくは、2〜4である]
を有する化合物が挙げられる。有用な適したシアネートエステル類としては、シアナトベンゼン、1,3-4-クミルシアナトベンゼン、ジシアナトベンゼン、2-t-ブチルシアナトベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-1,3-ジシアナトベンゼン、4-クロロ-1,3-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、4,4’-シアナトビフェニル、2,2’-ジシアナトビフェニル、2,4-ジメチル-1,3-ジシアナトベンゼン、テトラメチルジシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,5-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2,7-ジシアナトナフタレン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-シアナトフェニル)プロパン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)メタン、ビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、1,3-ビス[4-シアナトフェニル-1-(1-メチルエチリデン)]ベンゼン、1,1,1-トリス(4-シアナトフェニル)エタン、1,4-ビス[4-シアナトフェニル-1-(1-メチルエチリデン)]-ベンゼン等;および、それらの混合物が挙げられる。シアネートエステルは、シアネートエステルプレポリマー、例えば、例として、2,2-ビス(4-シアナトフェニル-1-プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、1,3-ビス[4-シアナトフェニル-1-(1-メチルエチリデン)]ベンゼン、1,4-ビス[4-シアナトフェニル-1-(1-メチルエチリデン)]ベンゼン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(p-シアノフェノキシフェノキシ)ベンゼン、ジ(4-シアナトフェニル)ケトン、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、トリス(4-シアナトフェニル)ホスファイトおよびトリス(4-シアナトフェニル)ホスフェートのプレポリマーであってもよい。U.S.特許No.5,215,860、第10欄、19〜38行に開示されているようなその他のシアネート類もまた有用である。
【0040】
本発明にて使用することのできるシアネートエステルプレポリマーは、遊離のシアネートエステル基を含有し、触媒の存在または不在でシアネートエステル樹脂の一部硬化によって製造することができる。このようなシアネートエステルプレポリマーの典型的な例は、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタンの一部反応生成物であり、AroCy (登録商標)B-30、B-50、M-20、PT-60、PT-60SおよびCT-90の下、Lonza.Ltd.Switzerlandにより販売されている。2つ以上の異なるシアネートエステルプレポリマーの混合物は、1つ以上のシアネートエステルプレポリマーと、プレポリマーではない1つ以上のシアネートエステル含有化合物との混合物のように使用することができる。有用なシアネートエステル類としては、Lonza Ltd.、Switzerlandにより商業的に製造されている材料が挙げられ、例えば、例として、B-10、B-30、M-10、M-30、PT-15、PT-30、PT-30S、PT-60、PT-60S、CT-90、BA-230S、L-10、F-10、RTX-399、RTX-366およびQuatrex-7187樹脂が挙げられる。
【0041】
金属塩触媒、例えば、金属カルボキシレートは、シアネートエステル類の硬化速度を促進するために使用することができる。触媒としては、マンガンナフテネート、亜鉛ナフテネート、コバルトナフテネート、ニッケルナフテネート、セリウムナフテネート、マンガンオクタノエート、亜鉛オクタノエート、コバルトオクタノエート、ニッケルオクタノエートおよびセリウムオクタノエート等が挙げられる。
【0042】
適したビスマレイミド類としては、構造:
【0043】
【化13】

[式中、Mは、原子価nの2〜40個の炭素原子を含有する基であり;各Zは、独立に、水素、ハロゲンまたは芳香族もしくは脂肪族基であり;nは、0〜10に等しい]
を有するものが挙げられる。Mは、脂肪族、脂環式、芳香族またはヘテロ環式であってもよい。ビスイミド類の好ましい類は、脂肪族または芳香族ジアミン類から誘導される二官能性のビスマレイミド類である。
【0044】
不飽和イミド類の具体的な例としては、1,2-ビスマレイミドエタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,3-ビスマレイミドベンゼン、1,4-ビスマレイミドベンゼン、2,4-ビスマレイミドトルエン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルエーテル、3,3’-ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4’-ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン、3,5-ビス(4-マレイミドフェニル)ピリジン、2,6-ビスマレイミドピリジン、1,3-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,1-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ジクロロマレイミド)ベンゼン、4,4’-ビスシトラコンイミドジフェニルメタン、2,2-ビス(4-マレイミドフェニル)プロパン、1-フェニル-1,1-ビス(4-マレイミドフェニル)エタン、α,α-ビス(4-マレイミドフェニル)トルエン、3,5-ビスマレイミド-1,2,4-トリアジン、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’,-4,4’-ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’,-4,4’-ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N’,-α,α’-4,4’-ジメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’-m-キシレンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルシクロヘキサンビスマレイミドおよびN,N’,-メチレンビス(3-クロロ-p-フェニレン)ビスマレイミド;および、U.S.特許Nos.3,562,223;4,211,860および4,211,861等に開示されている種々のマレイミド類等;および、それらの混合物が挙げられる。マレイミドは、例えば、U.S.特許No.3,018,290に記載されている方法を含め、当分野公知の方法によって製造することができる。1つの実施態様では、マレイミド樹脂は、N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドである。
【0045】
本組成物は、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂および難燃剤の合計100重量部当り熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂約50重量部〜約99重量部を含むことができる。この範囲内で、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の量は、少なくとも約60重量部または少なくとも約70重量部であるのがよい。またこの範囲内で、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の量は、約95重量部までまたは約90重量部までであるのがよい。
【0046】
本組成物は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂および難燃剤の合計100重量部に基づき難燃剤約1重量部〜約50重量部を含むことができる。この範囲内で、難燃剤の量は、少なくとも約5重量部または少なくとも約10重量部であるのがよい。またこの範囲内で、難燃
剤の量は、約40重量部までまたは約30重量部までであるのがよい。
【0047】
1つの実施態様は、(a) ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アリーレンスルフィド)、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(スチレン-コ-アクリロニトリル)、ポリ(アクリロニトリル-コ-ブタジエン-コ-スチレン)、ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)、ポリ(アクリロニトリル-コ-スチレン-コ-アクリレート)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリシロキサンおよびそれらの組み合わせから選択される熱可塑性樹脂;および、(b) (b1) 式:
【0048】
【化14】

[式中、Md+は、Al3+であり;R1およびR2の存在は、独立に、C1-C6ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、0である]
を有するリン塩と;(b2) 構造:
【0049】
【化15】

[式中、R3〜R5は、各々、独立に、C3-C12ヒドロカルビルである]
を有するトリヒドロカルビルホスフィンオキシドとを含む難燃剤を含む組成物である。
【0050】
1つの実施態様は、(a) ポリ(アリーレンエーテル)を含む熱可塑性樹脂;および、(b)
アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)と;トリフェニルホスフィンオキシド、アリルジフェニルホスフィンオキシド、ジアリルフェニルホスフィンオキシド、トリアリルホスフィンオキシドおよびそれらの組み合わせから選択されるホスフィンオキシドとを含む難燃剤を含む組成物である。
【0051】
1つの実施態様は、(a) エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ビニル樹脂、ベンズオキサジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシメチルフラン、イソシアネート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、不飽和ポリエステルイミドおよびそれらの組み合わせから選択される熱硬化性樹脂;および、(b) (b1) 式:
【0052】
【化16】

[式中、Md+は、Al3+であり;R1およびR2の存在は、独立に、C1-C6ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、0である]
を有するリン塩と;(b2) 構造:
【0053】
【化17】

[式中、R3〜R5は、各々、独立に、C3-C12ヒドロカルビルである]
を有するトリヒドロカルビルホスフィンオキシドとを含む難燃剤を含む組成物である。
【0054】
他の実施態様は、(a) ビスフェノール Aエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂;および、 (b) アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)と;トリフェニルホスフィンオキシド、アリルジフェニルホスフィンオキシド、ジアリルフェニルホスフィンオキシド、トリアリルホスフィンおよびそれらの組み合わせから選択されるホスフィンオキシドとを含む難燃剤を含む組成物である。
【0055】
熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂および難燃剤以外に、本組成物は、熱可塑性および熱硬化性組成物について当分野公知の1つ以上の種々の添加剤を含むことができる。熱可塑性組成物のための適した添加剤としては、例えば、可塑剤、耐衝撃改良剤、充填剤、強化剤(円板形状の充填剤および繊維状の充填剤を含む)、離型剤、着色剤(顔料および染料を含む)、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、定着剤、ドリップ抑制剤、粘着防止剤、帯電防止剤、発泡剤およびそれらの組み合わせが挙げられる。熱硬化性組成物のための適した添加剤としては、例えば、耐衝撃改良剤、低プロファイル添加剤、硬化剤、ハードナー、硬化抑制剤、充填剤、強化剤(円板形状充填剤および繊維状充填剤を含む)、離型剤、流れ調整剤、着色剤(顔料および染料を含む)、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、接着促進剤、ドリップ抑制剤、粘着防止剤、帯電防止剤等;および、それらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
熱可塑性組成物および熱硬化性組成物をブレンドするための装置および技術は、当分野公知である。熱可塑性ブレンドを調製するために適した装置としては、例えば、二本ロール機、Banburyミキサー、および、1軸スクリューおよび2軸スクリュー押出機が挙げられる。熱硬化性ブレンドを調製するために適した装置としては、例えば、PPEオリゴマーを適当な溶剤または硬化性化合物に溶解させるために使用される機械的攪拌を備えたフラスコまたはビーカーが挙げられる。溶解を促進するためには、中程度の加熱を使用する。樹脂溶液に布を浸漬することによりガラスを布に塗布/含浸するためには、樹脂溶液を入れた正方形または長方形の槽を使用する。
【0057】
本組成物は、物品または物品の部品を製造するのに有用である。かくして、1つの実施態様は、上記したポリマー組成物のいずれかを含む物品である。組成物が熱硬化性樹脂を含むとき、物品は、未硬化、一部硬化または完全に硬化された状態で組成物を含むことができる。熱硬化性組成物から物品を製造するための技術は、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂を含む硬化性組成物の文脈中で、以降に論じる。熱可塑性組成物から物品を製造するための技術としては、例えば、フィルムおよびシート押出、射出成形、ガスアシスト射出成形、押出成形、圧縮成形およびブロー成形が挙げられる。物品は、組成物を含む少なくとも1層を有するフィルム、シート、成形された物体または複合体の形態であってもよい。
【0058】
本発明は、さらに、ポリマー組成物を製造する方法を含む。かくして、1つの実施態様は、組成物を製造する方法であって、(a) 熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂;および(b)
(b1) 式:
【0059】
【化18】

[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有するリン塩と;(b2) トリヒドロカルビルホスフィン類、トリヒドロカルビルホスフィンオキシド類およびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物とを含む難燃剤をブレンドして、均質なブレンドを形成する方法である。
【0060】
難燃剤は、重合可能な官能性を有するポリ(アリーレンエーテル)を含む硬化性組成物にて特に有用である。かくして、実施態様の第3のカテゴリーは、(a) 官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂;(b) トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂およびそれらの組み合わせから選択される硬化性化合物;および、(c) (c1) 式:
【0061】
【化19】

[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有するリン塩と;(c2) トリヒドロカルビルホスフィン類、トリヒドロカルビルホスフィンオキシド類およびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物とを含む難燃
剤を含む硬化性組成物に関する。
【0062】
硬化性組成物は、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)を含む。官能化されたポリ(アリーレンエーテル)は、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)、特定のタイプのジ封鎖ポリ(アリーレンエーテル);環官能化されたポリ(アリーレンエーテル);または、カルボン酸、グリシジルエーテル、ビニルエーテルおよび無水物から選択される少なくとも1つの末端官能基を含むポリ(アリーレンエーテル)樹脂であってよい。
【0063】
1つの実施態様では、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)は、式:
【0064】
【化20】

を有する封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を含み、
ここで、Qは、1価、2価または多価フェノールの残基であり;yは、1〜100、さらに詳しくは、1、2、3、4、5または6であり;Jは、式:
【0065】
【化21】

[式中、R6およびR8は、各々、独立に、水素、ハロゲン、第1級または第2級C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C1-C12ハロアルキル、C1-C12ヒドロカルビルオキシおよび少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子および酸素原子を離隔するC2-C12ハロヒドロカルビルオキシ、等からなる群より選択され、;R7およびR9は、各々、独立に、ハロゲン、第1級または第2級C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C1-C12ハロアルキル、C1-C12ヒドロカルビルオキシおよび少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子および酸素原子を離隔するC2-C12ハロヒドロカルビルオキシ、等からなる群より選択され、;mは、1〜約200であり;Kは、
【0066】
【化22】

{式中、R10は、C1-C12アルキルであり;R11〜R13は、各々、独立に、水素、C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、C6-C18アリール、C7-C18アルキル置換アリール、C7-C18アリー
ル置換アルキル、C2-C12アルコキシカルボニル、C7-C18アリールオキシカルボニル、C8-C18アルキル置換アリールオキシカルボニル、C8-C18アリール置換アルコキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボキシレート、イミデートおよびチオカルボキシレートからなる群より選択され; R14〜R18は、各々、独立に、水素、ハロゲン、C1-C12アルキル、ヒドロキシおよびアミノからなる群より選択され;Yは、
【0067】
【化23】

からなる群より選択される2価の基であり、R19およびR20は、各々、独立に、水素およびC1-C12アルキルからなる群より選択される}
からなる群より選択される封鎖基である]
を有する。本明細書にて使用する場合、“ハロアルキル”という用語は、一部および完全にハロゲン化されたアルキル基を含め、1つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を含む。
【0068】
1つの実施態様では、Qは、多官能性フェノール類を含む、フェノールの残基であり、構造:
【0069】
【化24】

[式中、R6およびR8は、各々、独立に、水素、ハロゲン、第1級または第2級C1-C12アルキル、C1-C12アルケニル、C1-C12アルキニル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロキシアルキル、C6-C12アリール(フェニルを含む)、C1-C12ハロアルキル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロカーボンオキシおよび少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子および酸素原子を離隔するC1-C12ハロヒドロカーボンオキシ、等であり、;R7およびR9は、各々、独立に、ハロゲン、第1級または第2級C1-C12アルキル、C1-C12アルケニル、C1-C12アルキニル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロキシアルキル、C6-C12アリール(フェニルを含む)、C1-C12ハロアルキル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロカーボンオキシおよび少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子および酸素原子を離隔するC1-C12ハロヒドロカーボンオキシ、等であり、;Xは、水素;C1-C18ヒドロカルビル、又は;置換基、例えば、カルボン酸、アルデヒド、アルコール、アミノ基等を含有するC1-C18ヒドロカルビルであってよく;Xは、また、硫黄;スルホニル;スルフリル;酸素;C1-C12アルキリデン;種々のビス-またはそれより高級なポリフェノール類を生ずるように原子価2以上を有するその他のこのような架橋基であってもよく;yおよびnは、各々、独立に、1〜約100、好ましくは、1〜3、さらに好ましくは、約1〜2であり;好ましい実施態様では、y=nであ
る]
を有する基を含む。Qは、1価フェノールの残基であってもよい。Qは、また、ジフェノール、例えば、2,2’,6,6’-テトラメチル-4,4’-ジフェノールの残基であってもよい。Qは、また、ビスフェノール、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(“ビスフェノール A”または“BPA”)の残基であってもよい。
【0070】
1つの実施態様では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、構造:
【0071】
【化25】

[式中、R6およびR8は、各々、独立に、水素、ハロゲン、第1級または第2級C1-C12アルキル、C1-C12アルケニル、C1-C12アルキニル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロキシアルキル、C6-C12アリール(フェニルを含む)、C1-C12ハロアルキル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロカーボンオキシおよび、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子および酸素原子を離隔するC1-C12ハロヒドロカーボンオキシ、等であり;R7およびR9は、各々、独立に、ハロゲン、第1級または第2級C1-C12アルキル、C1-C12アルケニル、C1-C12アルキニル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロキシアルキル、C6-C12アリール(フェニルを含む)、C1-C12ハロアルキル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロカーボンオキシおよび少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子および酸素原子を離隔するC1-C12ハロヒドロカーボンオキシ、等である]
を有する少なくとも1つの1価フェノールの重合生成物から本質的になるポリ(アリーレンエーテル)を封鎖することによって製造される。適した1価フェノール類としては、Hayに対するU.S.特許No.3,306,875に記載されているものが挙げられ、高度に好ましい1価フェノール類としては、2,6-ジメチルフェノールおよび2,3,6-トリメチルフェノールが挙げられる。ポリ(アリーレンエーテル)は、少なくとも2つの1価フェノール類、例えば、2,6-ジメチルフェノールおよび2,3,6-トリメチルフェノールのコポリマーであってもよい。
【0072】
1つの実施態様では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、構造:
【0073】
【化26】

[式中、R11〜R13は、各々、独立に、水素、C1-C18ヒドロカルビル、C2-C18ヒドロカルビルオキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボキシレート、イミデートおよびチオ
カルボキシレート等であり; R9〜R13は、各々、独立に、水素、ハロゲン、C1-C12アルキル、ヒドロキシ、アミノ等である]
を有する少なくとも1つの封鎖基を含む。高度に好ましい封鎖基としては、アクリレート(R11=R12=R13=水素)およびメタクリレート(R11=メチル、R12=R13=水素)が挙げられる。接頭辞“(メタ)アクリル-”は、“アクリル-”または“メタクリル-”のいずれかを意味することは理解されるであろう。
【0074】
1つの実施態様では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、上記構造に対応し、Qは、2価フェノールの残基であり、yは、2である。例えば、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、構造:
【0075】
【化27】

[式中、Q2の各存在は、独立に、水素、ハロゲン、第1級または第2級C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、C3-C12アルケニルアルキル、C2-C12アルキニル、C3-C12アルキニルアルキル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C1-C12ハロアルキル、C1-C12ヒドロカルビルオキシおよび少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを離隔するC2-C12ハロヒドロカルビルオキシから選択され、;Q1の各存在は、独立に、ハロゲン、第1級または第2級C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、C3-C12アルケニルアルキル、C2-C12アルキニル、C3-C12アルキニルアルキル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C1-C12ハロアルキル、C1-C12ヒドロカルビルオキシおよび少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを離隔するC2-C12ハロヒドロカルビルオキシから選択され、;R21の各存在は、独立に、水素またはメチルであり;xの各存在は、独立に、1〜約100であり;zは、0または1であり;Yは、
【0076】
【化28】

から選択される構造を有し、式中、R22、R23およびR24は、独立に、水素およびC1-C12ヒドロカルビルから選択される]
を有するジ封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を含んでもよい。
【0077】
封鎖ポリ(アリーレンエーテル)が製造される方法について、特に制限は存在しない。封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、未封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の封鎖剤との反応によって形成することができる。封鎖剤としては、フェノール性基と反応する文献公知の化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、無水物、酸クロライド、エポキシ、カーボネート、エステル、イソシアネート、シアネートエステルまたはアルキルハライド基を含有するモノマーおよびポリマーの両方が挙げられる。封鎖剤は、有機化合物に限定され
るものではなく、例えば、リンおよび硫黄ベースの封鎖剤もまた含まれる。封鎖剤の例としては、例えば、無水酢酸;無水コハク酸;無水マレイン酸;無水サリチル酸;サリチル酸エステル単位を含むポリエステル類;サリチル酸のホモポリエステル;無水アクリル酸;無水メタクリル酸;グリシジルアクリレート;グリシジルメタクリレート;アセチルクロライド;ベンゾイルクロライド;ジフェニルカーボネート、例えば、ジ(4-ニトロフェニル)カーボネート;アクリロイルエステル類;メタクリロイルエステル類;アセチルエステル類;フェニルイソシアネート;3-イソプロペニル-α,α-ジメチルフェニルイソシアネート;シアナトベンゼン;2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン);3-(α-クロロメチル)スチレン;4-(α-クロロメチル)スチレン;アリルブロマイド等;それらのカーボネートおよび置換誘導体;ならびに、それらの混合物が挙げられる。封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を形成するこれらおよびその他の方法は、例えば、Holoch et al.に対するU.S.特許No.3,375,228;Goossensに対するU.S.特許No.4,148,843;Percec et al.に対するU.S.特許Nos.4,562,243;4,663,402;4,665,137;および5,091,480;Nelissen et al.に対するU.S.特許Nos.5,071,922;5,079,268;5,304,600;および5,310,820;Vianello et al.に対するU.S.特許No.5,338,796;Yeager et al.に対する6,627,704 B2;および、Peters et al.に対するヨーロッパ特許No.261,574 B1に記載されている。
【0078】
封鎖触媒は、未封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の無水物との反応にて使用することができる。このような化合物の例としては、フェノールの上記した封鎖剤との縮合を触媒することのできる当分野公知の化合物が挙げられる。有用な材料は、例えば、塩基性化合物ヒドロキシド塩類、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラアルキルアルミニウムヒドロキシド等;第3級アルキルアミン類、例えば、トリブチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルブチルアミン等;第3級混合アルキル-アリールアミン類およびそれらの置換された誘導体、例えば、N,N-ジメチルアニリン;ヘテロ環式アミン類、例えば、イミダゾール類、ピリジン類;および、それらの置換された誘導体、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ビニルイミダゾール、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、4-(1-ピロリノ)ピリジン、4-(1-ピペリジノ)ピリジン、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等を含む、塩基性化合物である。有機金属塩類、例えば、イソシアネート類またはシアネートエステル類のフェノール類との縮合を触媒することが公知の錫塩類および亜鉛塩類もまた有用である。
【0079】
もう1つの実施態様では、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)は、式:
【0080】
【化29】

[式中、各L1〜L4は、独立に、水素、C1-C12アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり;ここで、アルケニル基は、
【0081】
【化30】

によって表され、式中、L5〜L7は、独立に、水素またはメチルであり、aは、0、1、2、3または4であり;アルキニル基は、
【0082】
【化31】

によって表され、式中、L8は、水素、メチルまたはエチルであり、bは、0、1、2、3または4であり;環官能化されたポリ(アリーレンエーテル)の合計L1〜L4置換基の約0.02モルパーセント〜約25モルパーセントは、アルケニルおよび/またはアルキニル基である]で表される繰り返し構造単位を含む環官能化されたポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内で、少なくとも約0.1モルパーセント、さらに好ましくは、少なくとも約0.5モルパーセントのアルケニルおよび/またはアルキニル基を有するのが好ましい。また、この範囲内で、約15モルパーセントまで、さらに好ましくは、約10モルパーセントまでのアルケニルおよび/またはアルキニル基を有するのが好ましい。この実施態様の環官能化されたポリ(アリーレンエーテル)は、公知方法に従い製造することができる。例えば、未官能化ポリ(アリーレンエーテル)、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)は、試薬、例えば、n-ブチルリチウムで金属化され、続いて、アルケニルハライド、例えば、アリルブロマイド;および/または、アルキニルハライド、例えば、プロパルギルブロマイドと反応させることができる。環官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂を製造するためのこのおよびその他の方法は、例えば、Katayose et al.に対するU.S.特許No.4,923,932に記載されている。
【0083】
他の実施態様では、環官能化されたポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(アリーレンエーテル)とα,β-不飽和カルボニル化合物またはβ-ヒドロキシカルボニル化合物との溶融反応生成物である。α,β-不飽和カルボニル化合物の例としては、例えば、無水マレイン酸、無水シトリコン酸等が挙げられる。β-ヒドロキシカルボニル化合物の例としては、例えば、クエン酸等が挙げられる。このような官能化は、典型的には、ポリ(アリーレンエーテル)の約190℃〜約290℃の温度での所望されるカルボニル化合物との溶融混合によって行われる。
【0084】
1つの実施態様では、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂は、カルボン酸、グリシジルエーテル、ビニルエーテルおよび無水物から選択される少なくとも1つの末端官能基を含む。これら特定の官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂は、エポキシ樹脂との組み合わせにて特に有用である。末端カルボン酸基で置換されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂を製造するための適した方法は、例えば、Peters et al.に対するヨーロッパ特許No.261,574 B1に記載されている方法が挙げられる。グリシジルエーテル官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂およびそれらの製造方法は、例えば、Amagai et al.に対するU.S.特許No.6,794,481;および、Ishii et al.に対するU.S.特許No. 6,835,785;ならびに、Tokiwaに対するU.S.特許出願公開公報No.2004/0265595 A1に記載されている。ビニルエーテル官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂およびそれらの製造方法は、例えば、Fanに対するU.S. Statutory Invention Registration No.H521に記載されて
いる。無水物官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂およびそれらの製造方法は、例えば、Peters et al.に対するヨーロッパ特許No.261,574 B1およびOhno et al.に対するU.S.特許出願公開公報No.2004/0258852 A1に記載されている。
【0085】
官能化されたポリ(アリーレンエーテル)の分子量または固有粘度について、特に制限は存在しない。1つの実施態様では、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂は、25℃、クロロホルム中で測定した固有粘度約0.03〜約0.6デシリットル/グラムを有する。この範囲内で、固有粘度は、少なくとも約0.06dL/gまたは少なくとも約0.1dL/gであってよい。また、この範囲内で、固有粘度は、約0.5dL/gまでもしくは約0.4dL/gまたは約0.3dL/gまでであってよい。概して、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、対応する未官能化ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度から著しくは変化しないであろう。特に、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、概して、未官能性ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度の10%内となるであろう。異なる分子量と固有粘度とを有する少なくとも2つの官能化されたポリ(アリーレンエーテル)のブレンドを使用することも当然に考えられる。組成物は、少なくとも2つの官能化されたポリ(アリーレンエーテル)のブレンドを含んでもよい。このようなブレンドは、個々に製造し、かつ、単離した官能化されたポリ(アリーレンエーテル)から製造することが可能である。あるいは、このようなブレンドは、1つのポリ(アリーレンエーテル)を少なくとも2つの官能化剤と反応させることによって製造することもできる。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)は、2つの封鎖剤と反応させてもよく、または、ポリ(アリーレンエーテル)は、金属化して、2つの不飽和アルキル化剤と反応させることができる。これらとは別に、異なるモノマー組成および/または分子量を有する少なくとも2つのポリ(アリーレンエーテル)樹脂の混合物を1つの官能化剤と反応させてもよい。
【0086】
1つの実施態様は、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)が封鎖ポリ(アリーレンエーテル)または環官能化されたポリ(アリーレンエーテル)であり;かつ、硬化性化合物がトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂およびそれらの組み合わせから選択される硬化性組成物である。
【0087】
硬化性組成物は、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)、硬化性化合物および難燃剤の合計100重量部に基づき、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)約5重量部〜約80重量部の量を含むことができる。この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は、少なくとも約10重量部または少なくとも約20重量部であるのがよい。また、この範囲内で、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)の量は、約70重量部までまたは約50重量部までであるのがよい。
【0088】
硬化性組成物は、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂等;および、それらの組み合わせから選択される硬化性化合物を含む。これら硬化性化合物およびそれらの製造方法は、当分野公知であり、多くの例は、市販入手可能である。硬化性組成物は、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)、硬化性化合物および難燃剤の合計100重量部に基づき、硬化性化合物約20重量部〜約95重量部の量の硬化性化合物を含むことができる。この範囲内で、硬化性化合物の量は、少なくとも約30重量部または少なくとも約40重量部であるのがよい。またこの範囲内で、硬化性化合物の量は、約90重量部までまたは約80重量部までであるのがよい。
【0089】
官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂および硬化性化合物以外に、硬化性組成物は、上記した難燃剤を含む。難燃剤は、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)、硬化性化合物および難燃剤の合計100重量部に基づき、約1重量部〜約40重量部の量存在することができる。この範囲内で、難燃剤の量は、少なくとも約10重量部または少なくとも約15重
量部であるのがよい。またこの範囲内で、難燃剤の量は、約30重量部までであるのがよい。
【0090】
1つの実施態様は、(a) 封鎖ポリ(アリーレンエーテル)樹脂;(b) トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂;および、それらの組み合わせから選択される硬化性化合物;および、(c) 式:
【0091】
【化32】

[式中、Md+は、Al3+であり;R1およびR2の存在は、独立に、C1-C6ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、0である]
を有するリン塩と;構造:
【0092】
【化33】

[式中、R3〜R5は、各々、独立に、C3-C12ヒドロカルビルである]
を有するトリヒドロカルビルホスフィンオキシドとを含む難燃剤を含む硬化性組成物である。
【0093】
他の実施態様は、(a) (メタ)アクリレート-封鎖ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)樹脂;(b) トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートまたはそれらの組み合わせ;および、(c) アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)と;トリフェニルホスフィンオキシド、アリルジフェニルホスフィンオキシド、ジアリルフェニルホスフィンオキシド、トリアリルホスフィンオキシドおよびそれらの組み合わせから選択されるホスフィンオキシドとを含む難燃剤を含む硬化性組成物である。
【0094】
本発明は、硬化性組成物を硬化させる際に得られる一部および完全に硬化された組成物を含む。硬化は、加熱硬化(硬化剤の有り無しでの)および光化学硬化を含む、当分野公知の方法によって実行することができる。本発明は、また、硬化性組成物から形成される物品を含む。このような物品は、例えば、樹脂トランスファー成形;シート成形;バルク成形;引抜成形;(反応射出成形(RIM)を含む)射出成形;大気圧成形(APM);遠心および静電注型、開放式金型注型を含む、注型;湿潤または乾燥レイアップおよびスプレーレイアップを含む積層を含め当分野公知の熱硬化性加工法を使用して形成することができ、また、シリンダー状接触圧成形を含め接触圧成形;減圧アシスト樹脂トランスファー成形および化学的アシスト樹脂トランスファー成形を含め圧縮成形;Seemanの複合樹脂注入製造加工(SCRIMP);開放成形;樹脂およびガラスの連続組み合わせ;および、シリンダー状フィラメント巻を含めフィラメント巻も挙げられる。
【0095】
本発明は、さらに、硬化性組成物を製造する方法を含む。かくして、1つの実施態様は、硬化性組成物を製造する方法であって、(a) 官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂;(b) トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂およびそれらの組み合わせから選択される硬化性化合物;および、(c) (c1) 式:
【0096】
【化34】

[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有するリン塩と;(c2) トリヒドロカルビルホスフィン類、トリヒドロカルビルホスフィンオキシド類およびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物とを含む難燃剤をブレンドして、均質なブレンドを形成する工程を含む方法である。
【0097】
以下の実施例により、本発明をさらに例示するが、これら実施例は、本発明を何等限定するものではない。
【実施例】
【0098】
実施例1〜4、比較実施例1〜7
これら実施例および比較実施例は、本発明に従うリン塩とホスフィン化合物との難燃性相乗作用を示す。全ての組成物は、Degussa Corporationから入手されるトリアリルイソシアヌレート(“TAIC”)47.5重量部;Braat et al.に対するU.S.特許No.6,384,176の方法に従い製造される固有粘度0.12dL/gを有するメタクリレート-封鎖ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(“MA-PPE”)27.2重量部;および、Owens-Corningから497-14Cとして入手される直径約14マイクロメートルおよび初期長さ約4ミリメートルを有するガラス繊維25.3重量部を含んでいた。試料は、それらの難燃剤のタイプおよび量を変化させた。比較実施例(本明細書にてC.Ex.と略記する場合もある)1は、難燃剤を含有しなかった。比較実施例2〜4は、ClariantからOP930として入手されるアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)(“Al(OPEt2))3”)の含量を増加させた。比較実施例5〜7は、Sigma-Aldrichから入手されるアリルジフェニルホスフィンオキシド(“ADPPO”)の含量を増加させた。実施例(本明細書にてEx.と略記する場合もある)1〜4は、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)とアリルジフェニルホスフィンオキシドとの両方の含量を変化させた。全部そろった配合を表1に示し、成分の量を重量部(pbw)で表す。
【0099】
硬化性組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)が溶解するまで、メタクリレート-封鎖ポリ(アリーレンエーテル)、トリアリルイソシアヌレートおよびt-ブチルカテコールの混合物を90〜95℃に加熱することによって製造した。次に、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)とアリルジフェニルホスフィンオキシドとを、90〜95℃に温度を維持しながら、加え、混合した。ついで、90〜95℃に温度を維持しながら、細断したガラス繊維を加え、混合した。最後に、過酸化物を加え、素早く混合した。硬化性組成物は、100℃まで予熱した254ミリメートル×254ミリメートル×3.175ミリメートル(10インチ×10インチ×0.125インチ)の型に移すことにより成形し、100℃のオーブン内に15〜18時間置いた。
ついで、温度を段階的に、110℃で1時間、125℃で2時間、150℃で1時間および175℃で10分と上昇させた。オーブンのスイッチを切り、型を周囲温度まで一晩冷却させた。硬化したプラックは、型から取出し、ダイヤモンドの刃を有するタイル切断のこぎりを使用して切断して、寸法127ミリメートル×12.7ミリメートル×3.175ミリメートル(5インチ×0.5インチ×0.125インチ)を有する試験物品とした。試験物品の難燃性は、アンダーライター実験室UL 94試験法に従い決定した。V-0等級については、第1または第2のフレーム使用からの個々の燃焼時間は、10秒を越えず、;いずれか5つの標品についての燃焼時間の合計は、50秒を越えず;標品の下に置いた綿のガーゼ片を発火させるドリップ粒子は許されない。V-1等級については、第1または第2のフレーム使用からの個々の燃焼時間は、30秒を越えず;いずれか5つの標品についての燃焼時間の合計は、250秒を越えず;標品の下に置いた綿のガーゼ片を発火させるドリップ粒子は許されない。V-2等級については、第1または第2のフレーム使用からの個々の燃焼時間は、30秒を越えず;いずれか5つの標品についての燃焼時間の合計は、250秒を越えず;標品の下に置いた綿のガーゼ片を発火させるドリップ粒子は許容される。“消炎時間(秒)”は、UL 94試験における試料当りの平均消炎時間(5つの試料について平均した)を称し、秒単位で表される。難燃性試験の結果を表1に示す。結果は、リン酸塩とホスフィン化合物とがともに中程度に有効な難燃性であり、リン酸塩とホスフィン化合物との組み合わせが極めて有効な難燃性であることを示す。例えば、比較実施例4(11.11pbw Al(OPEt2)3)、比較実施例7(11.11pbw ADPPO)および実施例1(各5.56pbw Al(OPEt2)3およびADPPO)は、全て、難燃剤の合計量が同一であるが、それぞれの消炎時間は、それぞれ、44.1秒、104.3秒および13.2秒である。実施例2〜4は、さらに、難燃剤の組み合わせが官能化されたポリ(アリーレンエーテル)および硬化性化合物の合計100重量部当り難燃剤の合計約23重量部を使用し、5秒程度の消炎時間を達成可能とすることを示す。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
実施例5〜14、比較実施例8〜10
これら実施例は、トリフェニルホスフィンオキシドをホスフィン化合物として使用するとき、先の実施例で立証された相乗効果がまた達成されることを示す。トリフェニルホスフィンオキシド(“TPPO”)は、Sigma-Aldrichから入手した。組成物は、上記したように、製造し、成形し、試験した。組成および結果を表2に示す(表2は、比較実施例1〜4の結
果を繰り返す)。結果は、再度、リン酸塩とホスフィン化合物とがともに中程度に有効な難燃剤であり、リン酸塩とホスフィン化合物との組み合わせが極めて有効な難燃性であることを示す。例えば、比較実施例4(11.11pbw Al(OPEt2)3)、比較実施例10(11.11pbw TPPO)および実施例6(各5.56pbw Al(OPEt2)3およびTPPO)は、全て、難燃剤の合計量が同一であるが、それぞれの消炎時間は、それぞれ、44.1秒、91.1秒および18.6秒である。実施例8〜14は、さらに、難燃剤の組み合わせが官能化されたポリ(アリーレンエーテル)および硬化性化合物の合計100重量部当り難燃剤の19重量部ほどの少なさを使用し、10秒未満の消炎時間を達成可能とすることを示す。
【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

【0105】
【表5】

【0106】
実施例15〜54、比較実施例11〜17
これら実施例は、硬化性組成物を使用する積層板の製造を説明する。積層板は、ガラス布(17.78センチメートル(7インチ)×19.05センチメートル(7.5インチ)を樹脂および難燃剤のトルエン溶液に含浸することによって製造された。樹脂溶液を30分間混合した後、樹脂溶液を65℃まで15〜30秒間加熱した。2サイクルのガラス布の浸漬後、約50重量パーセント含浸させた硬化性組成物(すなわち、“プレプレグ)を得るために蒸発により、ガラス布を一晩乾燥させた。積層板は、温度150〜180℃に圧力13.34キロニュートン(3000ポンド
)で4分間数個のプレプレグを積み重ねて圧縮成形し、熱圧プレス内で3分間冷却することによって製造された。各積層板について平均厚さは、マイクロメータを使用して決定した。平均第1消炎時間および平均第2消炎時間は、UL 94に従い決定した。
【0107】
組成は、表3に示す。先に記載した成分以外に、硬化性組成物は、硬化開始剤2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシンおよび硬化抑制剤t-ブチルカテコールを含有させた。燃焼試験結果は、表3に示すが、難燃性組成物が官能化されたポリ(アリーレンエーテル)および硬化性化合物の合計100重量部当り難燃剤の20重量部ほどの少なさの使用で、非常に望ましいV-0等級を着実に達成可能であることを示す。難燃剤の量を増加させると、より良好な消炎時間を与える。さらに、より優れた消炎時間は、より高濃度の試料について期待される。
【0108】
【表6】

【0109】
【表7】

【0110】
【表8】

【0111】
【表9】

【0112】
【表10】

【0113】
【表11】

【0114】
【表12】

【0115】
【表13】

【0116】
誘電特性は、数種の積層板について測定した。誘電率(Dk)および誘電正接(Df)は、Baker-Javis J.,Janezic M.,Riddle B.,Holloway C.,Paulter N.およびBlendell J.NIST
Technical Note 1520,Dielectric and Conductor-Loss Characterization and Measurements on Electronic Packaging Materials(sect 3.2.1および3.2.2),2001に従い特定の周波数で決定した。結果を、表4に示す。平均値は、2つの独立な決定を反映する。結果は、難燃性の量が積層板の誘電特性を変化させないことを示す。
【0117】
【表14】

【0118】
【表15】

【0119】
【表16】

【0120】
【表17】

【0121】
【表18】

【0122】
【表19】

【0123】
好ましい実施態様を参考として、本発明を説明したものの、当業者であれば、種々の変形をなし、等価体は、本発明の範囲から逸脱することなくその要件を置換しうることが理解されるであろう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、個々の状況または材料を本発明の教示に適合させる多くの変更をなしうる。したがって、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の形態として開示した特定の実施態様に限定するのではなく、特許請求の範囲の請求項に入る全ての実施態様を包含するであろうことを意図するものである。
【0124】
本明細書に開示した全ての範囲は、終点を含み、終点は、相互に組み合わせ可能である。
【0125】
列挙した全ての特許、特許出願およびその他の参考文献は、それらの全体を参考とすることによって本明細書に組み込む。
【0126】
本発明を記載する文脈中(特に、特許請求の範囲の文脈中)の用語“a”および“an”ならびに“the”および同様の指示語の使用は、本明細書で特に断るかまたは文脈によって明瞭に否認しない限り、単数および複数の両方をカバーすると解釈するべきである。さらに、本明細書における用語“第1”、“第2”等は、いずれの順序、量または重要性を示すものではなく、むしろ、個々の要素を識別するために使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂;
(b) トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂およびそれらの組み合わせから選択される硬化性化合物;および、
(c) (c1) 式:
【化1】

[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有するリン塩と;
(c2) トリヒドロカルビルホスフィン、トリヒドロカルビルホスフィンオキシドおよびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物と;
を含む難燃剤;
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
官能化されたポリ(アリーレンエーテル)が、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)または環官能化されたポリ(アリーレンエテール)であり;
硬化性化合物が、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
官能化されたポリ(アリーレンエーテル)が、構造:
【化2】

を有する封鎖ポリ(アリーレンエーテル)であり、
ここで、Qは、1価、2価または多価フェノールの残基であり;yは、1〜100であり;Jは、式:
【化3】

[式中、R6およびR8は、各々、独立に、水素、ハロゲン、第1級または第2級C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C1-C12ハロアルキル、C1-C12ヒドロカルビルオキシおよび少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を離隔するC2-C12ハロヒドロカルビルオキシ
からなる群より選択され、;R7およびR9は、各々、独立に、ハロゲン、第1級または第2級C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、C1-C12アミノアルキル、C1-C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C1-C12ハロアルキル、C1-C12ヒドロカルビルオキシおよび少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を離隔するC2-C12ハロヒドロカルビルオキシからなる群より選択され、;mは、1〜約200であり;Kは、
【化4】

{式中、R10は、C1-C12アルキルであり;R11〜R13は、各々、独立に、水素、C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、C6-C18アリール、C7-C18アルキル置換アリール、C7-C18アリール置換アルキル、C2-C12アルコキシカルボニル、C7-C18アリールオキシカルボニル、C8-C18アルキル置換アリールオキシカルボニル、C8-C18アリール置換アルコキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボキシレート、イミデートおよびチオカルボキシレートからなる群より選択され; R14〜R18は、各々、独立に、水素、ハロゲン、C1-C12アルキル、ヒドロキシおよびアミノからなる群より選択され;Yは、
【化5】

からなる群より選択される2価の基であり、R19およびR20は、各々、独立に、水素およびC1-C12アルキルからなる群より選択される}
からなる群より選択される封鎖基である]
を有する、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
Qが、1価フェノールの残基であり;yが、1である、請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
Qが、2価フェノールの残基であり、yが、2である、請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
官能化されたポリ(アリーレンエーテル)が、式:
【化6】

[式中、各L1〜L4は、独立に、水素、アルケニル基またはアルキニル基であり;ここで、アルケニル基は、
【化7】

によって表され、式中、L5〜L7は、独立に、水素またはメチルであり、aは、0、1、2、3または4であり;アルキニル基は、
【化8】

によって表され、式中、L8は、水素、メチルまたはエチルであり、bは、0、1、2、3または4であり;環官能化されたポリ(アリーレンエーテル)の合計L1〜L4置換基の約0.02モルパーセント〜約25モルパーセントは、アルケニルおよび/またはアルキニル基である]を有する繰り返し構造単位を含む環官能化されたポリ(アリーレンエーテル)である、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂が、カルボン酸、グリシジルエーテル、ビニルエーテルおよび無水物から選択される少なくとも1個の末端官能基を含み;かつ、
硬化性化合物が、エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
官能化されたポリ(アリーレンエーテル)が、25℃、クロロホルム中で固有粘度約0.03〜約0.6デシリットル/グラムを有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
官能化されたポリ(アリーレンエーテル)、硬化性化合物および難燃剤の合計100重量部に基づき、官能化されたポリ(アリーレンエーテル)約5重量部〜約80重量部を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
官能化されたポリ(アリーレンエーテル)、硬化性化合物および難燃剤の合計100重量部に基づき、硬化性化合物約20重量部〜約95重量部を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
Md+が、オニウムイオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
Md+が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、アンチモン、錫、ゲルマニウム、チタン、亜鉛、鉄、ジルコニウム、セリウム、ビスマス、ストロンチウム、マンガン、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびそれらの組み合わせのイオンから選択される金属イオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
Md+が、Al3+である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
R1およびR2の各存在が、独立に、C1-C6アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
R1およびR2の各存在が、メチルまたはエチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
Mが、アルミニウムであり、mおよびnの各存在が、ゼロである、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
リン塩が、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
リン塩およびホスフィン化合物の合計100重量部に基づき、リン塩約5重量部〜約95重量部を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
ホスフィン化合物が、トリヒドロカルビルホスフィンを含み、トリヒドロカルビルホスフィンが、構造:
【化9】

[式中、R3〜R5は、各々、独立に、C1-C12ヒドロカルビルである]
を有するが、ただし、トリヒドロカルビルホスフィンが、少なくとも6個の炭素原子を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
トリヒドロカルビルホスフィンが、トリフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、ジアリルフェニルホスフィン、トリアリルホスフィンおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ホスフィン化合物が、トリヒドロカルビルホスフィンオキシドを含み、トリヒドロカルビルホスフィンオキシドが、構造:
【化10】

[式中、R3〜R5は、各々、独立に、C1-C12ヒドロカルビルである]
を有するが、ただし、トリヒドロカルビルホスフィンオキシドが、少なくとも6個の炭素原子を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
トリヒドロカルビルホスフィンオキシドが、トリフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィンオキシド、ジアリルフェニルホスフィンオキシド、トリアリルホスフィンオキシドおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
リン塩およびホスフィン化合物の合計100重量部に基づき、ホスフィン化合物約5重量部〜約95重量部を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂、硬化性化合物および難燃剤の合計100重量部に基づき、難燃剤約1重量部〜約40重量部を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
(a) 封鎖ポリ(アリーレンエーテル)樹脂;
(b) トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂およびそれらの組み合わせから選択される硬化性化合物;および、
(c) 式:
【化11】

[式中、Md+は、Al3+であり; R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有するリン塩と;
構造:
【化12】

[式中、R3〜R5は、各々、独立に、C3-C12ヒドロカルビルである]
を有するトリヒドロカルビルホスフィンオキシドと;
を含む難燃剤;
を含む硬化性組成物。
【請求項26】
(a) (メタ)アクリレート封鎖ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)樹脂;
(b) トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートまたはそれらの組み合わせ;および、
(c) アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)と;トリフェニルホスフィンオキシド、アリルジフェニルホスフィンオキシド、ジアリルフェニルホスフィンオキシド、トリアリルホスフィンオキシドおよびそれらの組み合わせから選択されるホスフィンオキシドとを含む難燃剤;
を含む硬化性組成物。
【請求項27】
請求項1に記載の硬化性組成物の硬化された生成物を含む硬化組成物。
【請求項28】
請求項27の組成物を含む物品。
【請求項29】
硬化性組成物を製造する方法であって、
(a) 官能化されたポリ(アリーレンエーテル)樹脂;
(b) トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂およびそれらの組み合わせから選択される硬化性化合物;および、
(c) (c1) 式:
【化13】

[式中、Md+は、金属イオンまたはオニウムイオンであり;dは、Mの種類およびその酸化状態に従い1、2、3または4であり;R1およびR2の各存在は、独立に、C1-C18ヒドロカルビルであり;mおよびnの各存在は、独立に、0または1である]
を有するリン塩と;
(c2) トリヒドロカルビルホスフィン、トリヒドロカルビルホスフィンオキシドおよびそれらの組み合わせから選択されるホスフィン化合物と;
を含む難燃剤;
をブレンドして、均質なブレンドを形成する工程を含む方法。

【公表番号】特表2009−511668(P2009−511668A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534607(P2008−534607)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/038500
【国際公開番号】WO2007/044312
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】