説明

ポリ(エステル−アミド)、それらの誘導体、及び埋め込み型医療デバイスへのそれらの使用

本発明は、デバイス上のコーティング層にポリ(エステル−アミド)エラストマーを含む埋め込み型医療デバイスに関する。本発明はまた、ポリ(エステルアミド)が治癒促進特性を有する埋め込み型医療デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、有機化学、ポリマー化学、材料科学、及び医療デバイスの分野に関する。
【0002】
[発明の背景]
1980年代半ばまで、アテローム性動脈硬化症、即ち冠状動脈の狭窄に許容された治療は、環状動脈バイパス技術であった。バイパス手術は効果的であると同時に、かかる侵襲的手順に対して比較的高い度合いの安全性を進展させてきたが、最高の場合でも長い回復期間を要するという、潜在的に深刻な問題が依然として伴う。
【0003】
1977年に経皮経管冠動脈形成(PTCA)が出現し、局面は劇的に変化した。元々心臓探査のために開発されたカテーテル技術を使用して、動脈の閉塞領域を再開するための膨張性バルーンが用いられた。この手順は、比較的非侵襲的であり、バイパス手術と比較して非常に短時間で済み、回復時間が最小限となった。しかしPTCAには、伸張された動脈壁の血管攣縮及び弾性収縮などの他の問題が伴い、達成されたものの多くを台無しにし、さらには、新生内膜過形成による治療済み動脈の新規疾患、再狭窄、再血栓を発症した。
【0004】
1980年代半ばに進展した次なる改善は、PTCA後に内腔径を維持するためのステントの使用であった。これはどう見ても、血管攣縮及び弾性収縮に終止符を打つものであったが、再狭窄の問題を完全には解決しなかった。即ち、ステントの導入の前に、PTCAを受けた患者の30〜50%に再狭窄が生じていた。ステントはこれを約15〜20%に低減して大きく改善したが、依然として十分望ましいものではない。
【0005】
2003年に、薬物溶出ステント又はDESが導入された。当初DESと共に使用された薬物は、再狭窄をもたらす細胞増殖を縮小する化合物である細胞増殖抑制化合物であった。それによって再狭窄の発症は、約5〜7%と、比較的許容できる数値に低減した。今日DESは、アテローム性動脈硬化症の治療に対する業界標準のデフォルトであり、大腿動脈の末梢血管形成術など、冠状動脈以外の血管の狭窄の治療に急速に求められるようになっている。
【0006】
しかしDESの使用によって、「遅発性ステント血栓症」と呼ばれる新しい問題、即ちステントが配置されたずっと後に血栓が形成されるということが生じてきた。血栓形成は、治癒の遅延、細胞増殖抑制薬物の使用の副作用による可能性が最も高いと仮定されている。
【0007】
DESの重要な基準の1つは、薬物貯蔵層、律速層、保護トップコート層等に使用されるポリマー又はポリマーブレンドの選択である。生物学的に安定なポリマー、即ち患者の体内で著しく分解しないポリマーが選択される場合、それらのポリマーは分解し患者の系に入ることを企図されていないので、それらの化学組成は重大な問題にならないことが多い。一方、最近の生分解性ポリマーは、生物環境でのそれらの分解能が、多数の望ましい特徴をそれらのポリマーに付与することから、多くの用途で好ましいものとなっている。例えば、ポリマーは生分解可能であり、最終的には患者の体内から実質的には完全に排除できるということによって、ポリマーの役割が終わった後に、そのポリマーを侵襲的にDESから除去する必要を回避することができる。さらに、生分解性ポリマーの賢明な選択によって、例えば、バルク浸食により生物的に侵食するポリマー又は浸食面により生物的に浸食するポリマーを選択することによって、ポリマーの特性は、薬物放出速度の微調整のための追加の手段として使用することができる。
【0008】
当然のことながら、ポリマーが患者の体内で分解される場合、生体適合性があること、即ちその分解産物が患者に害を与えないということが必須である。これには、ポリマーの化学的性質及びその分解産物の特性への細心の注意が必要となる。適切な生分解性ポリマー、並びに生分解性、生体適合性、薬物相溶性に関して特に望ましい特性を示すかかるクラスのポリマーを見出すための努力に多大な労力が費やされ、一般に、それらの構成単位の賢明な選択によってポリマーに設計され得る特性の範囲は、ポリマーの中でもポリ(エステル−アミド)ファミリーである。
【0009】
しかし、最近使用されているポリ(エステル−アミド)は、一般にいくらか軟性であり、殆どの薬物といわないまでも多くに対して非常に透過性を持つ傾向があり、DESへのそれらの適用はある程度限られている。使用において最近のものよりも強く頑丈で、透過性が少ないと同時に、そのクラスの他の有益な特徴を依然として維持するポリ(エステル−アミド)が必要とされている。
【0010】
さらに、薬物溶出による治癒の遅延に対応するための治癒促進影響力を含み、したがって遅発性ステント血栓症の発症を低減又は排除する埋め込み型医療デバイスを有することが最も望ましいはずである。このことは、冠状動脈ステントに関して特に有用と思われるが、任意方式の埋め込み型医療デバイスにも多大な有益性を付与するはずである。例えば、四肢の経皮的血管形成が少ない場合の再狭窄の発症は、特に許容されないことが記載されており(Paul S.Teirstein、Circulation、2000年、102:2674)、この状況は、治癒促進特性を有するステントの効果を受けやすいことも予測されよう。
【0011】
本発明は、先の問題のそれぞれに対処するポリ(エステル−アミド)及びそれらの使用方法を提供する。
【0012】
[発明の概要]
したがって本発明は、最近利用可能なものが示すよりも強く頑丈で、透過性が少なく、さらに遅発性ステントの問題を緩和する治癒促進の特徴を含むポリ(エステルアミド)及びポリ(エステルアミド)誘導体を対象とする。
【0013】
即ち一態様では、本発明は、式
【化1】


を有するポリ(エステル−アミド)に関し、
式中、
mは、0〜約200の整数であり、
nは、0〜約200の整数であり、
kは、1〜約3000の整数であり、
Mnは、約10,000〜約1,000,000Daであり、
rは、0及び1を含む0〜1の数であり、
sは、0及び1を含む0〜1の数であり、
r+s=1であり、
Xは、化学構造
【化2】


を有し、
Yは、化学構造
【化3】


を有し、
は、
【化4】


、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化5】


からなる群から選択され、
は、−OH、−O(1C〜20C)アルケニル、及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から選択され、
qは、1及び600を含む1〜600の整数であり、
は、−C(O)CH=CH及び−C(O)C(CH)=CHからなる群から選択され、
及びRは、(1C〜12C)アルキル及び(2C〜12C)アルケニルからなる群から独立に選択され、
、R2’、R2’’、及びR2’’’は、水素及び(1C〜4C)アルキルからなる群から独立に選択され、
アルキル基は、−OH、−SH、−SeH、−C(O)OH、−NHC(NH)NH
【化6】


、フェニル、及び
【化7】


からなる群から選択される部分で、任意選択で置換されており、或いは
、R2’、R2’’、及びR2’’’の1つ又は複数は、それが結合する炭素と、隣接する窒素との間の架橋を形成することができ、該架橋は−CHCHCH−を含み、
及びR3’は、(1C〜12C)アルキル、(2C〜12C)アルケニル、(3C〜8C)シクロアルキル、及び−(CHCHO)CHCH−からなる群から独立に選択され、
qは、1及び10を含む1〜10の整数であり、
ポリ(エステル−アミド)は、約0.05モル%〜約5モル%架橋されている。
【0014】
本発明の一態様では、Mnは、約20,000Da〜約500,000Daである。
本発明の一態様では、架橋は化学架橋である。
【0015】
本発明の一態様では、化学架橋は、R、R2’、R2’’、R2’’’、又はR上の−OH、−SH、−NH、又は−C(O)OH置換基と、多官能性OH−反応性、−SH−反応性、−NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤との反応生成物を含む。
【0016】
本発明の一態様では、OH−反応性、−SH−反応性、−NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤は、ジイソシアネートを含む。
【0017】
本発明の一態様では、ジイソシアネートは、1,2−エタンジイソシアネート、1,3−プロパンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,5−ペンタンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、及び1,4−シクロヘキサンジイソシアネートからなる群から選択される。
【0018】
本発明の一態様では、−SH−反応性多官能性架橋剤は、ビスマレイミドを含む。
【0019】
本発明の一態様では、−OH−反応性、−SH−反応性、NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤は、ジエポキシドを含む。
【0020】
本発明の一態様では、−OH−反応性、−SH−反応性、−NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤は、ジイソチオシアネートを含む。
【0021】
本発明の一態様では、−OH−反応性、−SH−反応性、−NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤は、二酸ハロゲン化物を含む。
【0022】
本発明の一態様では、R、R2’、R2’’、及びR2’’’は、非置換(1C〜4C)アルキル、及びそれが結合する炭素と、隣接する窒素との間の架橋からなる群から独立に選択され、該架橋は−CHCHCH−を含み、
は、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化8】


からなる群から選択され、
は−OHである。
【0023】
本発明の一態様では、Rは−(CHCH(COR)NH−である。
本発明の一態様では、R及びR2’は−CHCH(CHである。
【0024】
本発明の一態様では、OH−反応性、SH−反応性、NH反応性、C(O)OH−反応性多官能性架橋剤は、多官能性アジリジン化合物である。
【0025】
本発明の一態様では、多官能性アジリジン化合物は、ペンタエリスリトールトリス(3−アジリジノプロピオネート)である。
【0026】
本発明の一態様では、R、R2’、R2’’、及びR2’’’は、非置換(1C〜4C)アルキル、及びそれが結合する炭素と、隣接する窒素との間の架橋からなる群から独立に選択され、該架橋は−CHCHCH−を含み、
は、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化9】


からなる群から選択され、
は−OHである。
【0027】
本発明の一態様では、Rは−(CHCH(COR)NH−である。
本発明の一態様では、R及びR2’は−CHCH(CHである。
【0028】
本発明の一態様では、R及びRは−(CHであり、
は−(CH−である。
【0029】
本発明の一態様では、Rは、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化10】


からなる群から選択され、
は、−O(1C〜20C)アルケニル及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から選択され、
qは、0及び600を含む0〜600の整数であり、
は、−C(O)CH=CH及び−C(O)C(CH)=CHからなる群から選択され、
化学架橋は、二重結合のUV又はフリーラジカル開始反応を含む。
【0030】
直前の態様における本発明の一態様では、Rは、−(CHCH(COR)NH−である。
【0031】
直前の態様における本発明の一態様では、Rは、−O(CHCH=CH(CHCH及び
【化11】


からなる群から選択される。
【0032】
本発明の一態様では、R及びRは−(CH−であり、
及びR2’は−CHCH(CHであり、Rは−(CHである。
【0033】
本発明の一態様では、mは0.75であり、nは0.25である。
【0034】
本発明の一態様では、Rは、
【化12】


であり、
又はRの一方は、(2C〜12C)アルケニルであり、他方は(1C〜12C)アルキルであるか、或いは
及びRが(2C〜12C)アルケニルであり、化学架橋は、アルケニル二重結合のUV又はフリーラジカル開始反応を含む。
【0035】
本発明の一態様では、nは0であり、Rは(2C〜12C)アルケニルであり、化学架橋は、アルケニル二重結合のUV又はフリーラジカル開始反応を含む。
【0036】
本発明の一態様では、R及びR2’は−(CH)CH(CHであり、Rは−(CH−である。
【0037】
本発明の一態様では、R、R2’、R2’’、R2’’’、及びRの少なくとも1つは、−C(O)OH基を含み、化学架橋はアイオノマーを含む。
【0038】
本発明の一態様では、アイオノマーは一価のカチオンを含む。
【0039】
本発明の一態様では、一価のカチオンは、ナトリウム、カリウム、リチウム、及び銀からなる群から選択される。
【0040】
本発明の一態様では、アイオノマーは多価カチオンを含む。
【0041】
本発明の一態様では、多価カチオンは、カルシウム(II)、マグネシウム(II)、亜鉛(II)、鉄(II)、及びアルミニウム(III)からなる群から選択される。
【0042】
本発明の一態様では、R及びR2’は、水素及び(1C〜4C)アルキルからなる群から独立に選択され、
は、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化13】


からなる群から選択され、
は−OHである。
【0043】
直前の態様における本発明の一態様では、R及びR2’は−CHCH(CHであり、Rは−(CHCH(COR)NH−である。
【0044】
直前の態様における本発明の一態様では、R及びRは−(CH−であり、Rは−(CH−である。
【0045】
本発明の一態様では、本明細書のアイオノマーは、Zn(II)を含む。
本発明の一態様では、架橋は物理的架橋である。
【0046】
架橋が物理的架橋である本発明の一態様では、Aは軟質セグメントであり、Bは硬質セグメントであり、物理的架橋は、軟質セグメントと準結晶の硬質セグメントの分離領域を含む。
【0047】
本発明の一態様では、Aは、40℃以下のガラス転移温度を有し、Bは、45℃以上のガラス転移温度を有する。
【0048】
本発明の一態様では、Rは、
【化14】


である。
【0049】
本発明の一態様では、Rは−(CH−であり、R及びR2’は−(CH(CH)CHCHであり、Rは−(CH−であり、R1’は−(CH−であり、R2’’及びR2’’’は−CH(CHであり、R3’は−(CH−である。
【0050】
本発明の一態様では、Rは−(CH−であり、R及びR2’は−(CH(CH)CHCHであり、Rは−(CH12−であり、R1’は−(CH−であり、R2’’及びR2’’’は−CH(CHであり、R3’は−(CH−である。
【0051】
本発明の一態様では、Rは−(CH−であり、R、R2’、R2’’、及びR2’’’は−(CH(CH)CHCHであり、Rは−(CH−であり、R1’は−(CH−であり、R3’は−(CH−である。
【0052】
本発明の一態様では、Aは非晶質でありBは結晶性であり、架橋は鎖中の結晶化を含む。
【0053】
Aが非晶質でありBが結晶性である本発明の一態様では、
は、
【化15】


である。
【0054】
Aが非晶質でありBが結晶性である本発明の一態様では、Rは−(CH−であり、R1’は−(CHであり、R及びR2’は−CHCH(CHであり、R2’’及びR2’’’はCHフェニルであり、Rは−(CH−であり、R3’は−(CH−である。
【0055】
本発明の一態様は、デバイス本体と、任意選択の下塗層と、少なくとも1つの治療剤を含む薬物貯蔵層と、任意選択の律速層と、任意選択のトップコート層とを含む埋め込み型医療デバイスであり、薬物貯蔵層、必要ならば律速層、及び/又は必要ならばトップコート層の少なくとも1つは、本発明のポリ(エステル−アミド)を含み、該ポリ(エステル−アミド)は、式
【化16】


を有し、
式中、
mは、0〜約200の整数であり、
nは、0〜約200の整数であり、
kは、1〜約3000の整数であり、
は、約10,000〜約1,000,000Daであり、
rは、0及び1を含む0〜1の数であり、
sは、0及び1を含む0〜1の数であり、
r+s=1であり、
Xは、化学構造
【化17】


を有し、
Yは、化学構造
【化18】


を有し、
は、
【化19】


、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化20】


からなる群から選択され、
は、−OH、−O(1C〜20C)アルケニル、及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から選択され、
qは、1及び600を含む1〜600の整数であり、
は、−C(O)CH=CH及び−C(O)C(CH)=CHからなる群から選択され、
及びRは、(1C〜12C)アルキル及び(2C〜12C)アルケニルからなる群から独立に選択され、
、R2’、R2’’、及びR2’’’は、水素及び(1C〜4C)アルキルからなる群から独立に選択され、
アルキル基は、−OH、−SH、−SeH、−C(O)OH、−NHC(NH)NH
【化21】


、フェニル、及び
【化22】


からなる群から選択される部分で、任意選択で置換されており、或いは
、R2’、R2’’、及びR2’’’の1つ又は複数は、それが結合する炭素と、隣接する窒素との間の架橋を形成することができ、該架橋は−CHCHCH−を含み、
及びR3’は、(1C〜12C)アルキル、(2C〜12C)アルケニル、(3C〜8C)シクロアルキル、及び−(CHCHO)CHCH−からなる群から独立に選択され、
qは、1及び10を含む1〜10の整数であり、
ポリ(エステル−アミド)は、約0.05モル%〜約5モル%架橋されている。
【0056】
本発明の一態様では、Mnは、約20,000Da〜約500,000Daである。
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、架橋は化学架橋である。
【0057】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、化学架橋は、R、R2’、R2’’、R2’’’、又はR上の−OH、−SH、−NH、又は−C(O)OH置換基と、多官能性OH−反応性、−SH−反応性、−NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤との反応生成物を含む。
【0058】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、OH−反応性、−SH−反応性、−NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤は、ジイソシアネートを含む。
【0059】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、ジイソシアネートは、1,2−エタンジイソシアネート、1,3−プロパンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,5−ペンタンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、及び1,4−シクロヘキサンジイソシアネートからなる群から選択される。
【0060】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、R、R2’、R2’’、及びR2’’’は、非置換(1C〜4C)アルキル、及びそれが結合する炭素と、隣接する窒素との間の架橋からなる群から独立に選択され、該架橋は−CHCHCH−を含み、
は、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化23】


からなる群から選択され、
は−OHである。
【0061】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは−(CHCH(COR)NH−である。
【0062】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、R及びR2’は−CHCH(CHである。
【0063】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、OH−反応性、SH−反応性、NH反応性、C(O)OH−反応性多官能性架橋剤は、多官能性アジリジン化合物である。
【0064】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、多官能性アジリジン化合物は、ペンタエリスリトールトリス(3−アジリジノプロピオネート)である。
【0065】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、R、R2’、R2’’、及びR2’’’は、非置換(1C〜4C)アルキル、及びそれが結合する炭素と、隣接する窒素との間の架橋からなる群から独立に選択され、該架橋は−CHCHCH−を含み、
は、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化24】


からなる群から選択され、
は−OHである。
【0066】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは−(CHCH(COR)NH−である。
【0067】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、R及びR2’は−CHCH(CHである。
【0068】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、R及びRは−(CHであり、Rは−(CH−である。
【0069】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化25】


からなる群から選択され、
は、−O(1C〜20C)アルケニル及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から選択され、
qは、0及び600を含む0〜600の整数であり、
は、−C(O)CH=CH及び−C(O)C(CH)=CHからなる群から選択され、
化学架橋は、二重結合のUV又はフリーラジカル開始反応を含む。
【0070】
直前の態様の先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは−(CHCH(COR)NH−である。
【0071】
直前の態様の先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは、−O(CHCH=CH(CHCH及び
【化26】


からなる群から選択される。
【0072】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、R及びRは−(CH−であり、R及びR2’は−CHCH(CHであり、Rは−(CH−である。
【0073】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは、
【化27】


であり、
又はRの一方は、(2C〜12C)アルケニルであり、他方は(1C〜12C)アルキルであるか、或いは
及びRが(2C〜12C)アルケニルであり、化学架橋は、アルケニル二重結合のUV又はフリーラジカル開始反応を含む。
【0074】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、nは0であり、Rは(2C〜12C)アルケニルであり、化学架橋は、アルケニル二重結合のUV又はフリーラジカル開始反応を含む。
【0075】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、R及びR2’は、−(CH)CH(CHであり、Rは−(CH−である。
【0076】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、R、R2’、R2’’、R2’’’、及びRの少なくとも1つは、−C(O)OH基を含み、化学架橋はアイオノマーを含む。
【0077】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、アイオノマーは一価のカチオンを含む。
【0078】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、一価のカチオンは、ナトリウム、カリウム、リチウム、及び銀からなる群から選択される。
【0079】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、アイオノマーは多価カチオンを含む。
【0080】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、多価カチオンは、カルシウム(II)、マグネシウム(II)、亜鉛(II)、鉄(II)、及びアルミニウム(III)からなる群から選択される。
【0081】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、R及びR2’は、水素及び(1C〜4C)アルキルからなる群から独立に選択され、Rは、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化28】


からなる群から選択され、Rは−OHである。
【0082】
直前の態様の先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、R及びR2’は−CHCH(CHであり、Rは−(CHCH(COR)NH−である。
【0083】
直前の態様の先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、R及びRは−(CH−であり、Rは−(CH−である。
【0084】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、本明細書のアイオノマーはZn(II)を含む。
【0085】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、架橋は物理的架橋である。
【0086】
架橋が物理的である、先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Aは軟質セグメントであり、Bは硬質セグメントであり、物理的架橋は、軟質セグメントと準結晶の硬質セグメントの分離領域を含む。
【0087】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Aは、40℃以下のガラス転移温度を有し、Bは、45℃以上のガラス転移温度を有する。
【0088】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは、
【化29】


である。
【0089】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは−(CH−であり、R及びR2’は−(CH(CH)CHCHであり、Rは−(CH−であり、R1’は−(CH−であり、R2’’及びR2’’’は−CH(CHであり、R3’は−(CH−である。
【0090】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは−(CH−であり、R及びR2’は−(CH(CH)CHCHであり、Rは−(CH12−であり、R1’は−(CH−であり、R2’’及びR2’’’は−CH(CHであり、R3’は−(CH−である。
【0091】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは−(CH−であり、R、R2’、R2’’、及びR2’’’は−(CH(CH)CHCHであり、Rは−(CH−であり、R1’は−(CH−であり、R3’は−(CH−である。
【0092】
Aが非晶質でありBが結晶性である先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、架橋は鎖中の結晶化を含む。
【0093】
Aが非晶質でありBが結晶性である先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは、
【化30】


である。
【0094】
Aが非晶質でありBが結晶性である先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、Rは−(CH−であり、R1’は−(CHであり、R及びR2’は−CHCH(CHであり、R2’’及びR2’’’はCHフェニルであり、Rは−(CH−であり、R3’は−(CH−である。
【0095】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、少なくとも薬物貯蔵層が、本発明の架橋ポリ(エステル−アミド)を含む。
【0096】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、少なくとも律速層が、本発明の架橋ポリ(エステル−アミド)を含む。
【0097】
先の埋め込み型医療デバイスにおける本発明の一態様では、少なくともトップコート層が、本発明の架橋ポリ(エステル−アミド)を含む。
【0098】
本発明の別の態様は、
デバイス本体と、
デバイス本体上に配置された任意選択の下塗層と、
デバイス本体又は必要ならば下塗層上に配置された薬物貯蔵層と(該薬物貯蔵層は、1つ又は複数の治療剤を含む)、
必要ならば薬物貯蔵層の少なくとも一部分上に配置された任意選択の律速層と、
デバイス本体、必要ならば下塗層、必要ならば薬物貯蔵層、又は必要ならば律速層上に配置された、最外層としての任意選択のトップコート層と
を含む埋め込み型医療デバイスに関し、
これらの層の少なくとも1つは、式
【化31】


を有するポリ(エステル−アミド)を含み、
式中、
mは、0〜約200の整数であり、
pは、0〜約200の整数であり、
nは、0〜約200の整数であり、
rは、1〜約3000の整数であり、
Mnは、約10,000Da〜約1,000,000Daであり、
sは、0及び1を含む0〜1の数であり、
tは、0及び1を含む0〜1の数であり、
vは、0及び1を含む0〜1の数であり、s+t+v=1であり、
Xは、化学構造
【化32】


を有し、
Yは、化学構造
【化33】


を有し、
Zは、化学構造
【化34】


を有し、
、R1’、及びRは、(1C〜12C)アルキル及び(2C〜12C)アルケニルからなる群から独立に選択され、
、R2’、R2’’、及びR2’’’は、水素及び(1C〜4C)アルキルからなる群から独立に選択され、
アルキル基は、−OH、−O(1C〜4C)アルキル、−SH、−S(1C〜4C)アルキル、−SeH、−COR、−NHC(NH)NH、イミダゾール−2−イル、イミダゾール−5−イル、インドール−3−イル、フェニル、4−ヒドロキシフェニル、及び4−[(1C〜4C)アルキルO]フェニルからなる群から選択される部分で、任意選択で置換されており、
は、−OH、−O(1C〜4C)アルキル、−NH、−NH(1C〜4C)アルキル、−N(1C〜4C)アルキル(1C〜4C)アルキル、安定なニトロキシド、−O(CH)OP(=O)(O)OCHCH(CH、−O(CHCHO)CHCHOR、及び
【化35】


からなる群から選択され、
は、水素、(1C〜4C)アルキル、−C(O)CH=CH、及び−C(O)C(CH)=CHからなる群から選択され、
或いは
、R2’、R2’’、及びR2’’’の1つ又は複数は、それが結合する炭素と、隣接する窒素との間の架橋を形成することができ、該架橋は−CHCHCH−を含み、
は、(1C〜12C)アルキル及び(2C〜12C)アルケニル、(3C〜8C)シクロアルキル、及び−(CHCHO)CHCH−からなる群から選択され、
は、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化36】


からなる群から選択され、
qは、1及び600を含む1〜600の整数である。
【0099】
本発明の一態様では、Mnは、約20,000Da〜約500,000Daである。
本発明の一態様では、少なくとも最外層は、ポリ(エステル−アミド)を含む。
【0100】
本発明の一態様では、最外層はトップコート層である。
【0101】
本発明の一態様では、Rは、−(CH−、−(CH−、及び−CHCH=CHCH−からなる群から選択され、R1’及びRは、−(CH−及び−(CH−からなる群から選択される。
【0102】
本発明の一態様では、Rは−CHCH(CHである。
【0103】
本発明の一態様では、Rは−(CH−であり、R3’
【化37】


である。
【0104】
本発明の一態様では、Rは−(CHCORNH−であり、Rは、−O(CH)OP(=O)(O)OCHCH(CH及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から選択され、Rは、水素、(1C〜4C)アルキル、−C(O)CH=CH、及び−C(O)C(CH)=CHからなる群から選択される。
【0105】
本発明の一態様では、p=0である。
【0106】
本発明の一態様では、p=0である場合、R及びRは、−(CH−及び−(CH−からなる群から独立に選択される。
【0107】
本発明の一態様では、p=0である場合、R及びR2’は、−CH、−CHCHNHC(NH)NH、−CHCONH、−CHCOOH、−CHSH、−CHCHCOOH、−CHCHCONH、−CHNH
【化38】

−CH(CH)CHCH、−CHCH(CH、−(CHNH、(CHSCH
【化39】

CHOH、−CH(CH)OH、
【化40】


【化41】

−CH(CH、及び−CHCHCH−からなる群から独立に選択され、第2の炭素は窒素と共有結合しており、その窒素は、Rが結合する炭素と隣接している。
【0108】
本発明の一態様では、p=0である場合、Rは、−(CH−、−(CH−及び−(CHCHO)CHCH−からなる群から選択され、qは、1及び10を含む1〜10の整数である。
【0109】
本発明の一態様では、p=0である場合、Rは−(CHCH(COR)NH−であり、Rは、安定なニトロキシド、
【化42】

−O(CH)OP(=O)(O)OCHCH(CH、及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から選択され、Rは、水素、(1C〜4C)アルキル、−C(O)CH=CH、及び−C(O)C(CH)=CHからなる群から選択される。
【0110】
本発明の一態様では、p=0である場合、R及びR2’は同じである。
本発明の一態様では、p=0である場合、R及びR2’は、−CHCH(CHである。
【0111】
本発明の一態様では、p=0である場合、安定なニトロキシドは、
【化43】


からなる群から選択される。
【0112】
本発明の一態様では、p=0である場合、安定なニトロキシドは、
【化44】


である。
【0113】
本発明の一態様では、p=0である場合、Rは、
【化45】


である。
【0114】
本発明の一態様では、p=0でありn=0である。
【0115】
本発明の一態様では、p=0でありn=0である場合、R及びR2’は、−CH、−HCHNHC(NH)NH、−CHCONH、−CHCOOH、−CHSH、−CHCHCOOH、−CHCHCONH、−CHNH
【化46】

−CH(CH)CHCH、−CHCH(CH、−(CHNH、(CHSCH
【化47】

CHOH、−CH(CH)OH、
【化48】

CH(CH、及び−CHCHCH−からなる群から選択され、第2の炭素は窒素と共有結合しており、その窒素は、Rが結合する炭素と隣接している。
【0116】
本発明の一態様では、p=0でありn=0である場合、Rは、−(CH−、−(CH−、及び−CHCH=CHCH−からなる群から選択される。
【0117】
本発明の一態様では、p=0でありn=0である場合、R及びR2’は同じである。
【0118】
本発明の一態様では、p=0でありn=0である場合、R及びR2’は、CHCH(CHである。
【0119】
本発明の一態様では、p=0でありn=0である場合、Rは、(3C〜8C)アルキル、−(CHCHO)CHCH−(qは、1及び10を含む1〜10の整数である)、
【化49】


からなる群から選択される。
【0120】
本発明の一態様では、p=0でありn=0である場合、qは2である。
【0121】
本発明の一態様では、p=0でありn=0である場合、Rは、−(CH−及び−(CH−からなる群から選択される。
【0122】
本発明の一態様では、p=0でありn=0である場合、Rは、
【化50】


である。
【0123】
本発明の一態様では、p=0でありn=0である場合、R及びR2’はベンジルである。
【0124】
本発明の一態様では、埋め込み型医療デバイスは、薬物貯蔵層及び律速層をさらに含み、該律速層は、ポリ(l−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む。
【0125】
本発明の一態様では、律速層はポリ(D,L−ラクチド)を含む。
【0126】
本発明の一態様では、埋め込み型医療デバイスは、下塗層上に純粋な状態で(neat)配置された1つ又は複数の薬物を含む薬物貯蔵層をさらに含む。
【0127】
本発明の一態様では、埋め込み型医療デバイスは、1つ又は複数のポリマーを含む薬物貯蔵層をさらに含む。
【0128】
本発明の一態様では、治療剤はエベロリムスである。
【0129】
本発明の一態様では、薬物貯蔵層ポリマーは、ポリ(フッ化ビニリデン)及びポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)からなる群から選択される。
【0130】
本発明の一態様では、埋め込み型医療デバイスは、ポリ(n−ブチルメタクリレート)を含む下塗層をさらに含む。
【0131】
本発明の一態様は、ポリ(n−ブチルメタクリレート)下塗層、エベロリムスを含むポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)薬物貯蔵層、及びポリ(エステル−アミド)を含むトップコート層を含むステントである。
【0132】
本発明の一態様では、直前の態様のポリ(エステル−アミド)は、PEA−TEMPO及びPEA−BZからなる群から選択される。
【0133】
本発明の一態様では、R、R2’、R2’’、R2’’’、及びRの1つ又は複数は、ペンダント基−CORを含み、各Rは、安定なニトロキシド構成要素、ベンジルO−、−O(CHOP(=O)(O)CHCH(CH、及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から独立に選択される。
【0134】
本発明の一態様では、最外層はポリ(エステルアミド)を含む。
本発明の一態様では、最外層はトップコート層である。
【0135】
直前の態様の本発明の一態様では、安定なニトロキシドは、
【化51】


からなる群から選択される。
【0136】
本発明の一態様では、qは、1及び10を含む1〜10である。
本発明の一態様では、qは、300及び600を含む300〜600である。
【0137】
本発明の一態様では、Rは、−O(CHOP(=O)(O)CHCH(CH−である。
【0138】
本発明の一態様では、埋め込み型医療デバイスはステントである。
[詳細な説明]
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】Impra(登録商標)グラフト材料、Hemashield(登録商標)グラフト材料、PEA−TEMPO、及びPEA−BZによって誘発された、ラットの心外膜組織への移植後14日目の炎症反応及び細胞応答の図である。
【図2】Impra(登録商標)グラフト材料、Hemashield(登録商標)グラフト材料、PEA−TEMPO、及びPEA−BZによって誘発された、ラットの心外膜組織への移植後30日目の炎症反応及び細胞応答の図である。
【図3】PEA−コーティングステント、BMS、及びSolef(登録商標)ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)−コーティングステントの内皮細胞被覆率の図である。
【図4】標的放出速度を設定するトップコートなしのステントによるエベロリムス放出パーセンテージを、本発明のポリ(エステル−アミド)のトップコートを有するステントと比較した図である。
【0140】
[考察]
別段の指定が無い限り、本明細書における単数の使用は複数を含み、その逆もまた同様である。つまり、「1つの」及び「該」は、その語が修飾するあらゆるもののうちの1つ又は複数を指す。例えば、「1つの治療剤」には、1つのかかる薬剤、2つのかかる薬剤等が含まれる。同様に「該層」は、1つ、2つ、又は複数の層を指すことができ、「該ポリマー」は、1つのポリマー又は複数のポリマーを意味することができる。同様に、それに限定されるものではないが「複数層」及び「複数のポリマー」などの用語は、やはり別段指定されず、又はそのようなことが企図されていない文脈から明らかとなる限り、1つの層又はポリマー、並びに複数の層又はポリマーを指すことになろう。
【0141】
本明細書で使用されるように、それに限定されるものではないが、「約」、「本質的には」、「実質的には」などの近似の任意用語は、そのように修飾された要素が、厳密に記載されているものである必要はないが、本発明の範囲を超えず、±15%だけその記載から変わり得ることを意味する。
【0142】
本明細書で使用されるように、「必要ならば」は、論じられている事項が任意選択であることを意味し、その選択が行われる場合には、その句に従う条件が付随することになる。
【0143】
本明細書で使用されるように、「任意選択の」は、その用語によって修飾された要素が、存在しても存在しなくてもよいことを意味する。例えば、それに限定されるものではないが、「任意選択の」下塗層(pl)、「任意選択の」薬物貯蔵層(dr)、「任意選択の」律速層(rc)、及びトップコート層(tc)(本明細書では任意選択ではないことに留意されたい)でコーティングされたデバイス本体(db)は、それに限定されるものではないが、以下のデバイス、db+tc、db+dr+tc、db+dr+rc+tc、db+pl+tc、db+pl+dr+tc、及びdb+pl+dr+rc+tcのいずれかを指す。
【0144】
ポリ(エステル−アミド)は、その主鎖構造中に、エステル及びアミド結合の両方を有するポリマーを指す。例えば、以下の式は、本発明のポリ(エステル−アミド)を表す。
【化52】


X、Y、及びZは、ポリマーの構成単位、即ち反復単位を指す。例えば、ポリマー
【化53】


中、
【化54】


は、X構成単位であり、
【化55】


は、Z構成単位であり、Yは存在せず、即ちpは0である。構成単位それら自体は、他の化合物の反応の生成物であってよい。例えば、それに限定されるものではないが、先のX構成単位は、アミノ酸、
【化56】


と、ジオール、HO−(R)−OHとを反応させて、ジアミノエステル
【化57】


を得、次いでそれを二酸
【化58】


と反応させて構成単位を得ることを含み得る。アミン基、カルボン酸基、又はヒドロキシル基は、所望ならば「活性化」し、即ち、より化学的反応性を高くして反応を容易にすることができ、かかる活性化技術は、当技術分野で周知であり、任意のかかる技術の使用は本発明の範囲に含まれる。先の一般構造を有するX構成単位を制限しない、例示的な合成の非限定的な一例は、1,6−ヘキサンジオールをl−ロイシンと反応させて、ジアミノジエステルを得、次いでそれをセバシン酸と反応させてXを得ることである。構成単位Yは、Xを得るものと同じ反応によって得ることができるが、1つ又は複数の異なる反応物質を使用し、したがって得られた構成単位X及びYは化学的に異なっており、或いはYは、二酸と、官能基の2つが二酸と反応できる三官能性アミノ酸との反応によって得ることができる。先の例は、セバシン酸又はその活性化誘導体と、l−リシン、即ち2,6−ジアミノヘキサン酸との反応である。
【0145】
本発明のポリ(エステル−アミド)の合成に関して、本明細書では、特定の反応又は反応条件が例示されないことを示しておく。これは、構成単位の調製及び最終ポリ(エステル−アミド)の調製の両方に対する反応及び反応条件が、当業者に周知の標準の有機化学及び有機ポリマー化学であり、したがって当業者は、本明細書の開示を基にして、過度の実験なしに本明細書の化合物のいずれかを調製できるはずだからである。
【0146】
本発明のポリ(エステル−アミド)の調製のために選択されるアミノ酸に関して、任意のものを使用できるが、現在、該アミノ酸は、標準的なアミノ酸又は場合によってはタンパク新生アミノ酸として一般に知られる群から選択されることが好ましく、それは、それらのアミノ酸が正常な遺伝子コードによってコードされているからである。現在、20個の標準的なアミノ酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンが存在する。比較的最近になって、セレノアデニン(selenoadenine)が多数のタンパク質に導入されることが見出され、本発明の特に有用なアミノ酸として、上記のものと共に含まれる。天然に生じる生物学的タンパク質では、これらのアミノ酸はl−鏡像体として出現するが、本発明の目的では、それらはl−若しくはd−鏡像体又はラセミ混合物として使用することができる。
【0147】
上式では、m、p、及びnは、一連のものとしての構成単位X、Y、及びZ、又はブロック、即ちY1単位と遭遇する前のX単位数が2つ以上存在する等の場合の構成単位X、Y、及びZの平均数を表す整数である。整数m、p、及びnは、0を含む任意の数であってよく、m、p、及びnの2つが0である場合、得られるポリ(エステル−アミド)はホモポリマーである。
【0148】
上式では、kは、ポリマー内のX及びY単位の総数を表し、rは、ポリマー内のX、Y、及びZ単位の総数を表す。k及びrの値は、1〜約2500の任意の整数であってよく、ただし、m、n、p、及びkの組合せは、以下に記載の範囲内の分子量を有するポリ(エステル−アミド)を提供すべきである。
【0149】
上式では、Mnは、本発明のポリ(エステル−アミド)の数平均分子量を表す。また、本発明の埋め込み型医療デバイス上の層として配置されるのに必須の特性を有するポリマーをもたらす任意の分子量が本発明の範囲に含まれるが、現在、本発明のポリ(エステル−アミド)の数平均分子量は、約10,000Da(ダルトン)〜約1,000,000Da、好ましくは現在約20,000Da〜約500,000Daである。
【0150】
上式では、s、t、及びvは、構成単位のそれぞれのモル分率を表している。s、t、及びvのそれぞれは、0及び1を含む0及び1の間の数であり、vが存在しない場合s+t=1であり、又はvが存在する場合s+t+v=1である。モル分率及び構成単位数は明白に関係しており、一方の指定は他方に影響を与えるものであることが理解される。
【0151】
示したように、s、t、及びvは、それぞれ、0、1、又はその間の任意の分率であってよい。ただし幾つかの条件があり、(1)追加の治癒促進構成要素が構成単位の1つに存在する場合、その構成単位は、ポリマーの少なくとも.02モル分率でなければならず、(2)Rが、−CH(COR)CHS−、−CH(C(O)RCHO−、−CH(COR)CH(CH)O−、及び
【化59】


からなる群から選択される場合のみ、m及びpは両方0であってよく、さもなければ、得られるホモポリマーはポリ(エステル−アミド)にならないはずである。先の条件以外に、s、t、及びvの任意の値によって、企図した使用、例えば薬物貯蔵層、律速層等として望ましい特性を有するポリマーが提供され、当業者は、本明細書の開示を基に、過度の実験なしにかかる変動を容易に行い、必要な特性としての生成ポリマーかどうかを決定することができよう。
【0152】
また上記のように、s及びtは、それぞれ、0、1、又はその間の任意の分率であってよい。唯一の条件は、Rが、−CH(COR)CHS−、−CH(C(O)RCHO−、−CH(COR)CH(CH)O−、及び
【化60】


からなる群から選択される場合のみ、mは0であり得るということであり、さもなければ、得られるホモポリマーはポリ(エステル−アミド)にならないはずである。先の条件以外に、m及びnは、所与の範囲内の任意の数であってよく、当業者は本明細書の開示を基に、本明細書で先に示された層のどの種類が企図されるかに依存してモル分率の変更を実現し得るようにm及びnを変化させて、任意の種類の所望の特性を最終ポリマーに付与することができる。
【0153】
一方、構成単位Zは、二酸と、官能基の2つが二酸と反応することができる三官能性アミノ酸との反応の結果物である。例として、セバシン酸又はその活性化誘導体と、l−リシン、2,6−ジアミノヘキサン酸との反応が挙げられ、2つのアミノ基は、二酸カルボキシル基と反応して、アミドを形成することができる。
【0154】
本発明のポリ(エステル−アミド)はそのままで、即ち上記のアミノ酸、二酸、及びジオールの生成物として使用することができ、それは、本発明のポリ(エステル−アミド)が、それら独自の本来のものとしての治癒促進特性を示すことが見出されたからである。しかし、本発明の一態様は、ポリマー主鎖に結合した適切なペンダント基への追加の治癒促進部分の結合によって、本発明のポリ(エステル−アミド)をさらに改変できるということである。治癒促進部分とは、生体適合性があり、炎症の緩和及び/又は埋め込み型医療デバイスの内皮細胞増殖(endothelialization)の助けとなる置換基を意味する。かかる置換基には、それに限定されるものではないが、安定なニトロキシド;ホスホリルコリン、−O(CH)OP(=O)(O)OCHCH(CH、酸化窒素供与体、ニトロソチオールを利用する酸化窒素生成触媒、エチレングリコール又はエチレンオキシドのオリゴマー;ポリ(エチレングリコール)及びその末端基修飾誘導体、即ち−O(CHCHO)CHCHORが含まれ、Rは、水素、(1C〜4C)アルキル、−C(O)CH=CH、−C(O)C(CH)=CH、及びホスホリルコリンからなる群から選択される。Rが二重結合を含む場合、異なるポリマー鎖上の二重結合が、UV光又はフリーラジカル開始剤を使用して互いに反応することによって、架橋ポリ(エステル−アミド)を得ることができる。
【0155】
本発明のポリマーは、別段の指定が無い限り、規則性交互ポリマー、ランダム交互ポリマー、規則性ブロックポリマー、ランダムブロックポリマー、又は純ランダムポリマーであってよい。規則性交互ポリマーは、一般構造...x−y−z−x−y−z−x−y−z−...を有する。ランダム交互ポリマーは、一般構造...x−y−x−z−x−y−z−y−z−x−y−...を有し、様々な構成単位の正確な並置は変わり得ることが理解される。規則性ブロックポリマーは、一般構造...x−x−x−y−y−y−z−z−z−x−x−x...を有し、ランダムブロックポリマーは、一般構造...x−x−x−z−z−x−x−y−y−y−y−z−z−z−x−x−z−z−z−...を有する。規則性ポリマー及び交互ポリマーと同様、本発明の特定のブロックポリマー内のブロックの並置、各ブロックの構成単位数、及びブロック数は、いかなる方式でも先に例示される一般構造によって制限されない。
【0156】
本明細書で使用されるように、「アルキル」は、直鎖又は分岐鎖の、完全に飽和の(二重結合又は三重結合が無い)炭化水素(炭素及び水素のみ)基を指す。アルキル基の例には、それに限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第3ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが含まれる。本明細書で使用されるように、「アルキル」には「アルキレン」基が含まれ、他の基に結合するために1つではなく2つの開いた原子価を有する、直鎖又は分岐鎖の、完全に飽和の炭化水素基を指す。アルキレン基の例には、それに限定されるものではないが、メチレン、−CH−、エチレン、−CHCH−、プロピレン、−CHCHCH−、n−ブチレン、−CHCHCHCH−、sec−ブチレン、−CHCHCH(CH)−等が含まれる。
【0157】
本明細書で使用されるように、m及びnが整数である「mC〜nC」は、示された基の中に可能な炭素原子の数を指す。即ちその基は、「m」〜「n」個の炭素原子を含有することができる。本発明のアルキル基は、1〜12個の炭素原子を含むことができ、即ちmが1でありnが12である。当然のことながら、特定のアルキル基はさらに限定され得る。例えばそれに限定されるものではないが、本発明のアルキル基は、3〜8個の炭素原子からなることができ、この場合(3C〜8C)アルキル基と示されよう。数は両端を含めたものであり、示された数の炭素原子を有する全ての直鎖又は分岐鎖構造を組み込む。例えばそれに限定されるものではないが、「C〜Cアルキル」基は、1〜4個の炭素を有する全てのアルキル基、即ちCH−、CHCH−、CHCHCH−、CHCH(CH)−、CHCHCHCH−、CHCHCH(CH)−、及び(CHCH−を指す。
【0158】
本明細書で使用されるように、シクロアルキル基は、アルキル鎖の末端炭素原子が互いに共有結合しているアルキル基を指す。数「m」及び「n」は、形成される環の中の炭素数を指す。したがって例えば、(3C〜8C)シクロアルキル基は、3、4、5、6、7、又は8員環、即ちシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びシクロオクタンを指す。
【0159】
本明細書で使用されるように、「ビシクロアルキル」は、単一の共有結合で一緒になって結合した2つのシクロアルキル基を指す。ビシクロアルキル基の一例は、それに限定されるものではないが、ビシクロヘキサン、
【化61】


である。
【0160】
本明細書で使用されるように、「ベンジル」は、フェニルメチレン、
【化62】


基を指す。
【0161】
本明細書で使用されるように、「アルケニル」は、直鎖又は分岐の炭化水素鎖中に、1つ又は複数の二重結合を含有するアルキル基を指す。
【0162】
本発明の基が、「任意選択で置換されている」と記載される場合には、その基は非置換であってよく、又は示された置換基の1つ若しくは複数で置換されていてもよいことを意味する。
【0163】
本願を通して、当業者に周知の標準的な略語が使用される。したがって、任意の特定の原子の必要な原子価に基づいて、必要な全ての水素原子が提供されるという理解と共に、当業者は企図された構造を容易に認識されよう。例えば、炭素は四価であることから、−COR又は−C(O)Rは、構造
【化63】


を指していなければならず、それは、構造内に示されない水素又は他の原子を添加せずに炭素が四価となり得る唯一の方法だからである。同様に、−O(CH)OP(=O)(O)OCHCH(CHは、構造
【化64】


を指す。同様に、
【化65】


によって例示される、いわゆる枝状(stick)構造は、構造
【化66】


を表し、即ち各末端はCH基でキャップされており、各頂角は、必要数の水素が結合している炭素原子であることを化学分野の技術者は理解されよう。
【0164】
アルキル、アルキル等の2つ以上のアルキル部分の表示は、それらのアルキル基が同じであっても異なっていてもよいことを意味する。
【0165】
本明細書で使用されるように、「安定なニトロキシド」は、一般構造RR’N−O・を有する分離可能な常磁性有機化合物を指し、R及びR’は脂肪族であってよく、又は結合して、非環式若しくは芳香族であり得る環を形成することができる。さらに本発明の目的では、安定なニトロキシドはまた、少なくとも1つの官能基を含有していなければならず、それを介して、ニトロキシドは本発明のポリ(エステル−アミド)と共有結合することができる。例えば、それに限定されるものではないが、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルは、それに限定されるものではないが、本発明のポリ(エステル−アミド)の主鎖を含むリシンのペンダントカルボン酸基と反応して、アミドを形成することができる。共有結合した安定なニトロキシドをもたらすであろう他のかかる官能基は、本明細書の開示に基づいて当業者に明らかとなるはずであり、本発明の範囲に含まれる。
【0166】
本明細書で使用されるように、「純粋な(neat)」治療剤の層を配置するとは、治療剤が表面に塗布され、その塗布中に使用された任意の溶媒が蒸発すると、該治療剤が、デバイスに塗布される前に有していたのと本質的には同じ純度で層の唯一の構成成分となり、即ち治療剤以外に、層中に溶媒、ポリマー、賦形剤、又は任意の他の材料が本質的には存在しないことを単に意味する。
【0167】
本発明のポリ(エステル−アミド)は、特に炎症及び血管新生に関して、インビボで有益な治癒促進特性を有することが見出されている。例えば、それに限定されるものではないが、本発明の2つのポリ(エステル−アミド)であるco−ポリ−{[N,N’−セバコイル−ビス−(L−ロイシン)−1,6−ヘキシレンジエステル]−[N,N’−セバコイル−L−リシンベンジルエステル]}(PEA−BZ)及びco−ポリ−{[N,N’−セバコイル−ビス−(L−ロイシン)−1,6−ヘキシレンジエステル]−[N,N’−セバコイル−L−リシン4−アミノ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシルアミド]}(PEA−TEMPO)製の試験ディスクによってインビボで誘発された炎症反応と、インビボで低い炎症作用を有することが示されているImpra(登録商標)ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)及び高度に炎症性であることが知られているポリエステル系グラフト材料Hemaschield(登録商標)(D.L.Salzmann等、Cardiovascular Pathology、1999年、8(2):63〜71頁)の2つの市販のグラフトポリマー製の試験ディスクによって生じた炎症反応との比較を実施した。実施例1により詳細に論じられている比較の結果は、PEA−TEMPO及びPEA−BZディスクの両方によって誘発された炎症反応が、Impra(登録商標)ディスクによって示される炎症反応以下であるというものであった。
【0168】
さらに、ステントが生体工学による血管に埋め込まれる場合の、PEA−TEMPOでコーティングしたステントの血管新生動態の比較を、地金ステント(BMS)及びポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(SOLEF(登録商標))コーティングステント(実施例2)のものと比較した。PEA−TEMPO−コーティングステントは、BMSによって示されたものよりもごくわずかに低い内皮被覆率を示し、実質的にはSOLEF(登録商標)ステントによって示されたものよりも高かった。
【0169】
本発明のポリ(エステル−アミド)が非常に生体適合性であるという事実と共に、先の結果に基づくと、本明細書のポリ(エステル−アミド)のトップコートで埋め込み型医療デバイスをコーティングすることは、埋め込みデバイス近辺の治癒に著しく有益な効果をもたらし、それによって晩期血栓症などの治癒遅延に関連する問題の発生を低減するはずであると期待される。これは、BMSの患者の中の再狭窄の高い発症率に対抗するために最初に導入された薬物溶出ステント(DES)に関して、特に価値があるはずである。即ちBMSは、血管の動的再狭窄をもたらす動脈壁の弾性収縮などの経皮的冠動脈血管形成(PTCA)不足のいくらかを克服しながら、実質的には非ステントPTCAよりも低かったものの(ステント患者15〜20%対先の非ステントPTCA30〜50%)、依然として再狭窄を受けやすいことが見出された。2002年には、BMS再狭窄に対処するために設計された最初のDESが導入された。このステントは、ステント近辺に細胞増殖抑制薬物を徐放し、それによって細胞増殖及びその結果である再狭窄を遅延又は防止するように設計された。DESは、再狭窄の発症を5〜7%に低減した。その時以来、ステントの臨床結果をさらに改善し、患者の体内の標的部位に薬物の局所送達を行って、毒性、生体適合性、可溶性などの薬物に伴う問題を克服するために、他の薬物がDESとの併用に提案されてきた。本発明の埋め込み型医療デバイスとの併用を見出すことが期待される治療物質を、以下に記載する。
【0170】
本発明のポリ(エステル−アミド)は、本発明の埋め込み型医療デバイス上に配置される層のいずれか、それらの任意の組合せ、又はそれら全てに組み込むことができるが、本発明の一実施形態では、ポリ(エステル−アミド)は現在、デバイス上にコーティングされた少なくとも最外層に含まれることが好ましい。
【0171】
本明細書で使用されるように、「最外層」は単に、デバイスが埋め込まれる患者の体液及び/又は組織と接触する本発明の埋め込み型医療デバイス上に配置される材料の層を指す。最外層は、現在、本明細書の他の箇所に記載の別個のトップコート層であることが好ましいが、トップコート層が選択されない場合には律速層であってよく、又はトップコート層も律速層も選択されない場合には薬物貯蔵層であってもよい。
【0172】
したがって、本発明の一態様は、ポリ(エステル−アミド)トップコートをBMSの表面に直接塗布できることである。ポリ(エステル−アミド)コーティングのみの治癒特性は、追加の治療剤なしに、再狭窄に有益な作用を有すると期待されている。
【0173】
しかし本発明の一態様は、さらなる層を塗布せずに薬物貯蔵層にポリ(エステル−アミド)を含むことでもある。これは、その層にポリ(エステル−アミド)を含むことによって、治療剤の放出プロファイルが有害な影響を受けない場合であり得る。特定の治療剤の放出プロファイルが特定の適用に許容可能であるかどうかを決定する技術は、当業者には周知であり、本明細書でさらに記載する必要はない。
【0174】
記載したように、ポリ(エステル−アミド)トップコートとデバイス本体の間に配置される層が存在してもよい。一般的な追加層は、上記の下塗となろう。デバイス本体を構築する材料が、選択されたポリ(エステル−アミド)に十分接着しないことが見出される場合には、下塗を使用することができる。多数の下塗ポリマー及びポリマーブレンドが当技術分野では知られており、それらのいずれもが本明細書のデバイス及び方法と併用できるが、現在好ましいクラスの下塗は、アクリレートポリマー、コポリマー、及びそれらのブレンドである。現在好ましいポリ(n−ブチルメタクリレート)は、本発明のデバイス及び方法との併用に好ましい下塗である。
【0175】
上記のように、本発明の埋め込み型医療デバイスはかなり多数のデバイスを包含することができるが、現在好ましいデバイスは冠動脈ステントであり、ステントとの併用に現在好ましい治療剤は、エベロリムスである。本明細書の埋め込み型医療デバイスが、デバイス本体に直接塗布された下塗と、次いでその下塗層上に塗布されるポリ(フッ化エチリデン)及びエベロリムスを含む薬物貯蔵層を含むことが、現在さらに好ましい。次いで、治癒促進ポリ(エステル−アミド)トップコートを、薬物貯蔵層上に塗布する。律速層が存在してもよいが、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)/エベロリムス薬物貯蔵層の特定の配合物が望ましい放出プロファイルを示すことが測定されている(データは示さず)場合には、必ずしも存在しなくてもよい。本発明のこの態様のより詳細な説明を、実施例3に提示する。
【0176】
一方、薬物層中にポリ(フッ化エチリデン)若しくはポリ(エステル−アミド)を使用しても、又は組合せの律速/トップコートとしてポリ(エステル−アミド)を使用しても達成不可能な放出プロファイルが求められる場合には、別個の律速層を使用することができる。ここで再び、異なる治療剤に関して有用な異なる律速ポリマー又はポリマーブレンドは、当技術分野では知られており、ポリ(エステル−アミド)トップコート層が埋め込みデバイスの最外層として塗布される限り、全て本発明の範囲に含まれる。
【0177】
上記のように、エベロリムスは、本明細書で使用するのに現在好ましい治療剤である。結局、現在好ましい治癒促進ポリ(エステル−アミド)、PEA−TEMPO及びPEA−BZは、エベロリムスに対して非常に透過性があり、単独では望ましい徐放プロファイルを実現できない。同様に、薬物貯蔵層が望ましいプロファイルを完全には提供できない場合、薬物貯蔵層が使用され得るその上に律速層を配置することができる。望ましいエベロリムス放出プロファイルを設定するのに有用な現在好ましいポリマーは、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)、又はそれらの任意の組合せである。現在最も好ましいのは、ポリ(D,L−ラクチド)である。それに限定されるものではないが、先のプロトコールに従う埋め込み型医療デバイスの具体例には、
12mmのVision(登録商標)ステント;
ステント上に配置された、エベロリムス/PEA−TEMPOが1:2wt/wtの混合物の全重量168μgの薬物貯蔵層;
薬物貯蔵層上の律速層として配置されるポリ(D,L−ラクチド)40μg;及び
治癒促進トップコート層としてのPEA−TEMPO75μg
がある。
【0178】
同様にそれに限定されるものではないが、別の例には、
12mmのVision(登録商標)ステントに下塗層として塗布されたPEA−TEMPO100μg;
下塗層の上に薬物貯蔵層として塗布された純粋なエベロリムス56μg;
純粋なエベロリムス層の上に律速層として塗布されたポリ(D,L−ラクチド)40μg;及び
トップコート治癒促進層としてのPEA−TEMPO75μg
がある。
【0179】
上記のように、治療剤が、それと共に同じ層に含まれる効果的な律速ポリマーと十分に相溶性がある場合、別個の律速層は必須ではない。エベロリムス及びポリ(D,L−ラクチド)の場合はそうである。したがって、本発明のさらに別の非限定的構築物は、
12mmのVision(登録商標)ステント上にコーティングされたポリ(D,L−ラクチド)100μg;
全重量112μgの1:1エベロリムス/ポリ(D,L−ラクチド)薬物貯蔵層/律速層;及び
治癒促進トップコートとしてのPEA−TEMPO150μg
を含むことを想定される。
【0180】
本明細書で使用されるように、「架橋」は、少なくとも2つの別個のポリマー鎖を含み、少なくとも4つの鎖が生じる巨大分子の小領域を指す。架橋は、関与する個々の鎖の動作が、架橋に含まれる他の鎖に対して制限されるようにするものである。本発明の目的では、架橋は、鎖間に共有結合若しくはイオン結合を含むことができ、これを本明細書では「化学架橋」と呼び、又は架橋は、個々の鎖の領域の非結合性相互作用の結果であってもよく、これを本明細書では「物理的架橋」と呼ぶ。
【0181】
共有結合による化学架橋は、有機化学分野の技術者に周知の化学反応を使用して作り出される。本発明の目的では、共有化学架橋には2つの種類がある。第1の種類は、ポリマー主鎖に付加した官能基と多官能性架橋剤との反応を含む。本明細書で使用されるように、「多官能性架橋剤」は、ポリマー主鎖に付加した官能基と反応することができる2つ以上の官能基を有する化合物である。非限定的な一例として、ポリマー主鎖に付加した官能基は、ヒドロキシル基、−OHであってよく、多官能性架橋剤はジイソシアネートであってよい。架橋反応をスキーム1に図示する。
【化67】


ここで波線はポリマー主鎖を表し、架橋は、カルバメート基、−OC(O)NH−基を含む。当然のことながら、どれほどの量のジイソシアネートが使用されるかに依存して、ポリマー鎖1つ当たり2つ以上のヒドロキシル基が架橋形成に関与することができる。
【0182】
ヒドロキシル基が、メルカプト基、−SHで置換される場合、架橋はチオカルバメート、−SC(O)NH−を含む。
【0183】
ヒドロキシルが、アミノ基、−NHで置換される場合、架橋は尿素、−NHC(O)NH−を含む。
【0184】
ヒドロキシルが、カルボキシ基、−C(O)OHで置換される場合、架橋はアミド基、−C(O)NH−を含む。イソシアネート及びカルボキシル基の反応を含む、本発明のポリ(エステル−アミド)の化学架橋セグメントの非限定的な一例は以下の通りである。
【化68】

【0185】
簡潔明瞭にするために、先のスキーム(及び本明細書の全ての他のスキーム)では、ポリ(エステル−アミド)の1つのセグメント及び1つの架橋のみを示す。実際、2つのポリマー鎖は、それらの間に1つ又は複数の架橋を有することができ、1つのポリマー鎖は、複数の他のポリマー鎖に架橋され得ると理解される。
【0186】
別の多官能性化学架橋剤は、ペンタエリスリトールトリス(3−アジリジノプロピオネート)である。アジリジンは、以下の非限定的な例(スキーム3)によって例示されるように、カルボキシルなどの活性なH官能基と反応することが知られている。
【化69】


当然ながら、先の生成物の残りのアジリジン基は、ポリマー鎖と反応して3方向の架橋をもたらすこともできる。
【0187】
−OH、−SH、−NH、及び−C(O)OH基と反応することができる多くの他の化学架橋剤は、当業者に知られており、ポリ(エステル−アミド)を架橋するためのそれらのいずれかの使用は、本発明の範囲に含まれる。
【0188】
本発明の目的に合った第2の種類の化学架橋は、本明細書ではエチレン基と呼ばれ、化学構造−CR=CR−(Rは、水素又は低級アルキルであってよいが、現在水素が好ましい)を有する、2つの二重結合のUV光−又はフリーラジカル開始反応である。十分に確立されたこの反応は、1つのエチレン基の炭素と別のエチレン基の炭素との単一の共有結合を形成する。エチレン基は、ポリマーの主鎖に組み込むことができる(スキーム4)。
【化70】

【0189】
スキーム5は、本発明のポリ(エステル−アミド)のUV又はフリーラジカル開始架橋セグメントの非限定的な一例を示す。
【化71】

【0190】
代替として、以下の本発明のさらに別の架橋ポリ(エステル−アミド)セグメント(スキーム6)の非限定的な例に示されるように、ポリマー主鎖に付加した基にエチレン基を組み込むことができる。
【化72】

【0191】
それ自体エチレン基を有する架橋試薬を使用してUV−又はフリーラジカル開始架橋を達成することも可能である。それに限定されるものではないが、かかる架橋剤の例は、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレート、CH=C(CH)C(O)O(CHCHO)CHCHOC(O)C(CH)=CH(MA−PEG−MA)である。MA−PEG−MAエチレン基の1つが、本発明のポリ(エステル−アミド)を架橋するために使用される場合、その基は、1つのポリマー鎖のエチレン基と反応し、MA−PEG−MAの他のエチレン基は、異なる鎖のエチレン基と反応する。
【0192】
本発明の目的に合った他の種類の化学架橋は、金属カチオン(M)と、本明細書のポリ(エステル−アミド)の主鎖に付加したカルボキシルアニオン、−C(O)Oとの間のイオン結合形成である。この方式で架橋されたポリマーは、アイオノマーと呼ばれる。アイオノマーは、2つの機構によってポリマーを「架橋」するが、多量の重複が存在する。第1機構は、ポリマー主鎖に付加したカルボン酸基、−C(O)OHが、二価の塩基と、例えばそれに限定されるものではないがZn(OH)と反応する場合に生じる。Zn(II)は、2つの異なるポリマー鎖のカルボキシル基と反応し、形成されたイオン結合でそれらを一緒に結合し、それによってポリマー鎖を「架橋」する。本発明のポリ(エステル−アミド)の二価カチオン架橋セグメントの非限定的な一例を、スキーム7に示す。
【0193】
【化73】

【0194】
一方、それに限定されるものではないがNaなどの一価のカチオンが使用される場合、ただ1つのカルボキシル基と反応することができる。しかし、形成されたイオン基、即ちNaOC(O)−ポリマーは、他のポリマー鎖上のかかる基と一緒になって、実際に多数のポリマー鎖を生じ、イオン基を介して一緒になってクラスター化する傾向がある。クラスターを保持するイオン力は、共有結合架橋と同じように、関連するポリマー鎖の動作を一緒になって妨げる。したがって、イオンクラスターの形成は、実際にポリマー鎖を「架橋」する。いかなる理論にも拘泥するものではないが、イオン基のクラスターは、基本的には疎水性ポリマー主鎖及び親水性イオン基の相分離から生じると思われる。しかし、アイオノマーは正式には架橋せず、ポリマー鎖間の共有結合の形成を必要とする。したがってアイオノマーのイオンクラスターは、クラスターが分散する点までポリマー鎖中の分子の動作の度合い及び力の両方を増大する熱などの力によって、比較的容易に防止することができる。外部の力に対するこの感受性にも関わらず、クラスターは、それらの指定された操作条件下で使用される場合、主にアイオノマーの物理的特性の原因となり、この物理的特性は、幾つかの場合非常に顕著となり得る。例えばそれに限定されるものではないが、アイオノマーは極度に丈夫にすることができ、したがってそれらは、ゴルフボールの外部被覆などの優れた弾力性を必要とする製品を製造するためにしばしば使用される。
【0195】
化学的に架橋した本発明のポリマーはいずれの種類でもよいが、本発明のホモポリマー、交互ポリマー、ランダム交互ポリマー、交互ブロックポリマー、ランダムブロックポリマー、又は完全なランダムポリマー、物理的架橋ポリマーは、ブロックコポリマーでなければならない。
【0196】
本発明の物理的架橋ポリ(エステル−アミド)の第1の種類は、硬質セグメント及び軟質セグメントの交互からなる多成分ブロックコポリマーを含む。硬質セグメント及び軟質セグメントは、それらのガラス転移温度Tによって主に区別される。(T)は、ポリマー(又はポリマーのセグメント)が、ゴム(即ち弾性)の機械特性からガラス(脆性)の機械的特性に変化する温度である。T未満では、ポリマー分子は、並進の自由を殆ど有しておらず、即ちそれらは容易に移動できず、又は互いに関して非常に距離がある。適用されたストレスに適応するために動きまわるのではなく、極端に分離する傾向があり、それによってストレスをかけられたガラス枠のようにポリマーが破壊又は粉砕される。Tを超えると、比較的容易なセグメント動作が可能となり、ポリマー鎖は動きまわって互いにずれることができ、したがってポリマーにストレスが適用される場合、ポリマーは壊れずに撓み屈曲する。
【0197】
本発明の目的では、軟質セグメントのTは、生存哺乳類の身体である所期の操作環境の温度以下でなければならない。哺乳類の正常な体温にはかなり差異があるが、本発明が現在適用を所期する第1の哺乳類は、約37℃の正常な体温を有するヒトである。したがって現在、本発明のポリ(エステル−アミド)の軟質セグメントが約37℃以下のTを有し、したがってヒトの体内に置かれる際、その軟質セグメントが体温と平衡した場合にガラス様の態様ではなく弾性態様になることが好ましい。
【0198】
当然のことながら、本発明のポリ(エステル−アミド)は、ヒトとは全く異なる正常な体温を有する他の哺乳類に使用することができる。当業者は、本明細書の開示に基づいて特定の哺乳類に合った適切なTを決定することができ、任意の哺乳類への使用に合った全てのかかるポリ(エステル−アミド)が本発明の範囲に含まれる。
【0199】
逆に、本発明のポリ(エステル−アミド)の硬質セグメントは、哺乳類の体温に曝される場合、それらの作用環境でこの方式の架橋を行うのに必要な軟質セグメント/硬質セグメント形態を作り出すために、弾性態様ではなく脆性のガラス様の態様でなければならない。これを達成するために、硬質セグメントは37℃を超え、当然のことながら軟質セグメントのTを超えるTを有する。本発明のポリ(エステル−アミド)硬質セグメントが、ポリマーを使用することが計画される患者の体温の少なくとも5℃、好ましくは少なくとも15℃、最も好ましくは現在少なくとも25℃を超えるTを有することが現在好ましい。
【0200】
該して、この種類の物理的架橋では、硬質セグメント及び軟質セグメントの重合度は、n及びmが両方約10以上となることが現在好ましい。さらに、絶対上限は存在しないものの、硬質セグメント及び軟質セグメントが、約10〜約100の重合度を有することが現在好ましい。現在好ましくは、先の硬質セグメント及び軟質セグメントからなるブロックコポリマーは、セグメントの重合度よりも少なくとも一桁大きい重合度を有する。
【0201】
先の基準を満たす本発明のポリ(エステル−アミド)は、約37℃以上(ただし硬質セグメントのT未満)に曝される場合、セグメントの化学的及び物理的不相溶性により、軟質セグメント相と硬質セグメント相とに相分離することになる。軟質セグメントは、ランダムな配列のポリマー鎖中に残り、それらの弾性特徴を維持することになる。一方、硬質セグメントは、それらの剛性構造により互いに整列する傾向があり、即ち様々なポリマー鎖の硬質セグメントが一緒になって、準結晶構造として説明できるものになる。準結晶とは、X線回折で調査した場合に、整列したセグメントがいくらか短い距離を示しており、本物の結晶の複雑な長距離秩序を示すものではないことを単に意味する。水素結合、ファンデルワールス力などの物理力によって一緒に保持される整列した硬質セグメントは、分離耐性があり、広範な多機能架橋領域として作用する。硬質セグメントは、結晶化度を全く有する必要がないことに留意されたい。それらが特定の領域のみに相分離するという事実と共に、操作温度を超えるそれらのTによって、硬質セグメントは物理的架橋として作用することができる。
【0202】
セグメントのTと共に、本発明の軟質セグメント/硬質セグメントポリ(エステル−アミド)の非限定的な例は、
【化74】


である。
【0203】
本明細書の開示に基づくと、本発明の目的に有用とされる必須の化学的及び物理的特性を有する数々の追加の軟質セグメント/硬質セグメントポリ(エステル−アミド)は、当業者には明らかであり、全てのかかる化合物は本発明の範囲に含まれる。
【0204】
本発明のさらなる種類の物理的架橋ポリ(エステル−アミド)は、先の軟質セグメント/硬質セグメントポリマーの独特のサブセット、即ち硬質セグメントが結晶性であるものを含む。
【0205】
ポリマーのセグメントが十分な構造規則性を示す場合、個々の鎖のこれらの領域は、整列した構成として一緒になり、最終的には結晶構造を形成することができる。ポリマーの結晶化は、結晶性小分子の従来の成長パターンに従うと思われる。即ち結晶化は、液体ポリマーの海の小さな破片の周りに結晶性小粒子が形成される核生成によって始まる。これらの核は、秩序構造の階層、即ちラメラに成長し、最終的に結晶に成長する。本明細書で先に論じた準結晶性の軟質セグメント/硬質セグメント構造とは異なり、ポリマーの結晶領域は、X線回折試験にかけた場合、相当長い距離秩序を示す。また軟質セグメント/硬質セグメント準結晶架橋とは異なり、ポリマーの結晶領域は実質的により強固であり、結晶構造が小分子結晶と同様に「融解」し、非晶質になる時点に結晶領域の決定可能数である融点Tが達するまで、架橋構成を維持することになる。
【0206】
本発明の結晶性ポリ(エステル−アミド)の非限定的な一例を以下に示す。
【化75】

【0207】
当業者は、本明細書の開示に基づき、多数のさらなる軟質セグメント/結晶セグメントポリ(エステル−アミド)を想定することができ、それらは全て本発明の範囲に含まれる。
【0208】
本明細書で使用されるように「埋め込み型医療デバイス」は、手術又は薬物によって患者の体内に完全に又は部分的に導入されるか、或いは医療介入によって元々ある開口部に導入され、その手順後もそこに留まることを企図される任意の種類の装置を指す。埋込み期間は、本質的には恒久的であってよく、即ちデバイスが生分解するまで、又は物理的に除去されるまで、患者の残りの人生の間、適所に留まることを企図することができる。埋め込み型医療デバイスの例には、それに限定されるものではないが、埋め込み可能な心臓ピースメーカー及び徐細動器;前述のもの用の鉛及び電極;神経、膀胱、括約筋、及び横隔膜刺激装置などの埋め込み可能な臓器刺激装置、人工内耳;プロテーゼ、血管ブラフト、自己拡張型ステント、バルーン拡張ステント、ステント−グラフト、グラフト、人工心臓弁、及び脳脊髄液シャントが含まれる。特別に設計され、治療剤の局所送達のみを所期した埋め込み型医療デバイスが、本発明の範囲に含まれる。
【0209】
本明細書で使用されるように、「デバイス本体」は、コーティングが塗布されないか、又はデバイスが製造された材料とは異なる材料の層を塗布された外表面を有する、完全に形成された実用的な状態の埋め込み型医療デバイスを指す。「外表面」とは、空間的に配向しているが、身体組織又は体液と接触する任意の表面を意味する。「デバイス本体」の一般例はBMS、即ち地金ステントであり、名称が意味するように、それは身体組織又は体液と接触している任意の表面上に、ステントが製造される金属とは異なる任意の材料の層でコーティングされていない、完全に形成された使用可能なステントである。当然のことながら、デバイス本体はBMSだけでなく、それが何で製造されているかに関わらず、任意の非コーティングデバイスをも指す。
【0210】
実際任意の材料、即ち埋め込み型医療デバイスの製造に有用であることが現在知られている材料、及び将来有用であることを見出し得る材料を、本発明のコーティングで使用することができる。例えばそれに限定されるものではないが、本発明に有用な埋め込み型医療デバイスは、それに限定されるものではないが、コバルト−クロム合金(ELGILOY、L−605)、コバルト−ニッケル合金(MP−35N)、316Lステンレス鋼、高窒素ステンレス鋼、例えばBIODUR108、ニッケル−チタン合金(NITINOL)、タンタル、白金、白金−イリジウム合金、金、及びそれらの組合せを含む、1つ又は複数の生体適合性のある金属又はそれらの合金から製造することができる。
【0211】
埋め込み型医療デバイスは、生体適合性があり生物学的に安定な、又は生分解性のポリマーから製造することもでき、後者の用語は、生体吸収性及び/又は生体浸食性を含む。
【0212】
本明細書で使用されるように、「生体適合性」は、そのままの、即ち合成される際の状態として、及びその分解状態、即ちその分解産物としての両方で、生存組織にとって毒性でなく、又は少なくとも毒性が最小限であり;生存組織を傷つけることなく、又は少なくともそれが最小限であり回復できるものであり;並びに/或いは生存組織の免疫反応を生じず、又は少なくともそれが最小限であり、及び/又は制御可能であるポリマーを指す。
【0213】
生体適合性のある有用なものの中でも、比較的生物学的に安定なポリマーは、それに限定されるものではないが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニルハロゲン化物、ポリビニリデンハロゲン化物、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族、ポリビニルエステル、ポリアクリロニトリル、アルキド樹脂、ポリシロキサン、及びエポキシ樹脂である。
【0214】
生体適合性のある生分解性ポリマーには、それに限定されるものではないが、コラーゲン、キトサン、アルギン酸塩、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース系、デンプン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸、ヘパリン、グリコサミノグリカン、多糖、及びエラスチンなどの天然に生じるポリマーが含まれる。
【0215】
本発明に有用な埋め込み型医療デバイスを製造するために、1つ又は複数の合成又は半合成の生体適合性の生分解性ポリマーを使用することもできる。本明細書で使用されるように、合成ポリマーは、完全に実験室内で作り出されるものを指し、半合成ポリマーは、実験室内で化学的に改変された天然に生じるポリマーを指す。合成ポリマーの例には、それに限定されるものではないが、ポリホスファジン、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステルウレタン、ポリヒドロキシ酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ無水物、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリアミノ酸、ポリオキシメチレン、ポリ(エステル−アミド)、及びポリイミドが含まれる。
【0216】
先のポリマーのブレンド及びコポリマーを使用することもでき、それらは本発明の範囲に含まれる。本明細書の開示に基づき、当業者は、本発明のコーティングと共に有用となるこれらの埋め込み型医療デバイス及びそれらが製造され得る材料を認識されよう。現在、本発明のコーティングとの併用に好ましい埋め込み型医療デバイスは、ステントである。
【0217】
ステントは、一般に、患者の体内で適所に組織を保持するために使用される任意のデバイスを指す。しかし、特に有用なステントは、それに限定されるものではないが、腫瘍(例えば、胆管、食道、気管/気管支等における)、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、及び不安定プラークなど、良性膵臓疾患、冠動脈疾患、頸動脈疾患、及び末梢動脈疾患を含む疾患又は障害によって血管が狭窄又は閉鎖される場合、患者体内の血管の開存性を維持するために使用されるものである。不安定プラーク(VP)は、炎症によって引き起こされると思われる、動脈中に形成される脂肪を指す。VPは、破裂して血栓を形成する恐れがある薄い線維性被膜によって被覆されている。ステントは、VP近辺の血管壁を増強し、かかる破裂に対する保護として作用するために使用することができる。ステントは、それに限定されるものではないが、神経、頸動脈、冠動脈、肺、大動脈、腎臓、胆管、腸骨、大腿、及び膝窩、並びに他の末梢血管系に使用することができる。ステントは、それに限定されるものではないが、血栓症、再狭窄、出血、血管解離又は穿孔、血管動脈瘤、慢性完全閉塞、跛行、吻合部の増殖、胆管障害、及び尿感閉鎖などの障害の治療又は防止に使用できる。
【0218】
先の使用に加えて、ステントは、患者体内の特定の治療部位に治療剤を局所送達するために使用することもできる。実際、治療剤の送達がステントの唯一の目的であってよく、又はステントは、副次的便益を提供する薬物送達と共に、先に論じたものなどの別の使用を第1に企図することができる。
【0219】
開存性維持のために使用されるステントは、通常、圧縮された状態で標的部位に送達され、次いでそれが挿入された血管に適合するように拡張する。標的位置に送達されると、ステントは、自己拡張又はバルーン拡張することができる。いずれにしてもステントの拡張により、その上の任意のコーティングは、柔軟性があり、伸長できなければならない。
【0220】
本明細書で使用されるように、指示された基材、例えばそれに限定されるものではないが、デバイス本体又は別の層「上に配置された」層として記載される材料は、好ましくは現在、指示された基材の本質的には露出表面全体に直接塗布される、比較的薄いコーティングの材料を指す。「露出表面」とは、使用の際に身体組織又は体液と接触することになる基材の表面を意味する。しかし「上に配置された」は、基材に塗布されている介在層に、薄層材料を塗布することを指すこともでき、ここでその材料は、介在層が存在しないならば、材料が実質的には基材の露出表面全体を被覆するような方式で塗布される。
【0221】
本明細書で使用されるように、「下塗層」は、デバイス本体が製造される材料に対して良好な接着特性を示し、デバイス本体上にいかなる材料がコーティングされても良好な接着特性を示すポリマー又はポリマーブレンドからなるコーティングを指す。したがって下塗層は、デバイス本体と、デバイス本体によって担持される材料との間の接着性中間層として働き、したがってデバイス本体に直接塗布される。それに限定されるものではないが、下塗の例には、シラン、チタン酸塩、ジルコン酸塩、ケイ酸塩、パリレン、ポリアクリレート、及びポリメタクリレートが含まれ、ポリ(n−ブチルメタクリレート)が現在好ましい下塗である。
【0222】
本明細書で使用されるように、「薬物貯蔵層」は、純粋な状態で塗布される1つ又は複数の治療剤の層、或いはその3次元構造内に1つ又は複数の治療剤が分散したポリマー又はポリマーブレンドの層を指す。それに限定されるものではないが、所望の治療剤が所望の薬剤濃度を提供するためのポリ(エステル−アミド)との相溶性が十分に無いことが見出される場合、所望の放出プロファイルが達成されないなどの場合、個別の薬物貯蔵層が必要とされ得る。薬物貯蔵層は単に、純粋な薬物のみを含むことができる。これは、薬物を適切な溶媒に溶解し、デバイス本体上にコーティングされている下塗上にその溶液を塗布し、溶媒を除去して薬物のみの層を残すことによって実現し得る。次いで、ポリ(エステル−アミド)トップコートを、純粋な薬物層上に直接塗布することができる。
【0223】
代替として、治療剤をポリマー又はポリマーブレンドと配合することもできる。したがって、治療剤及びポリマーを適切な溶媒に溶解することができ、又はポリマーを溶解し、そのポリマー溶液に治療剤を均一に分散させることができる。次いで、溶液又は混合液を、デバイス本体又は下塗層上に塗布することができる。溶媒が除去されると、薬物がポリマー中に懸濁した状態で残る。所望の放出プロファイルを提供するために、ポリマー又はポリマーブレンドが選択される。しかし、薬物と相溶性のあるポリマーが所望の放出プロファイルをもたらすことができなかったり、又は所望のプロファイルを提供できるポリマーが薬物と十分に相溶性でなかったりする。この状況は、薬物貯蔵層上に律速層を含むことによって緩和することができる。
【0224】
本明細書で使用されるように、「治療剤」は、疾患に罹患している患者に治療有効量で投与される場合、患者の健康及び福祉への治療上有益な効果を有する任意の物質を指す。患者の健康及び福祉への治療上有益な効果には、それに限定されるものではないが、(1)疾患を治癒すること、(2)疾患の進行を遅延すること、(3)疾患を退行させること、或いは(4)疾患の1つ又は複数の症候を緩和することが含まれる。本明細書で使用されるように、治療剤はまた、疾患に特に罹患しやすいことが知られている又はその疑いがある患者に、予防的に有効な量で投与される場合、患者の健康及び福祉への予防上有益な効果を有する任意の物質を含む。患者の健康及び福祉への予防上有益な効果には、それに限定されるものではないが、(1)第1に疾患の発症を予防し又は遅延すること、(2)疾患を、予防上有効な量で使用される物質と同じでも異なっていてもよい治療有効量の物質によって達成された退行レベルに一度維持すること、或いは(3)予防上有効な量で使用される物質と同じでも異なっていてもよい治療有効量の物質を用いた治療過程後に、疾患の再発を防止又は遅延することが含まれると結論付けられている。
【0225】
本明細書で使用されるように、「薬物」及び「治療剤」という用語は同義に使用される。
【0226】
本明細書で使用されるように、「律速層」は、薬物貯蔵層上に塗布して、薬物貯蔵層からの治療剤の環境への放出速度を改変するポリマー層を指す。律速層は、医師によって所望される正確な速度まで、治療剤の放出速度を単に「調節する」ために使用することができ、或いは薬物貯蔵層としてのコーティングに関して、治療剤と相溶性のあるポリマー又はポリマーブレンドが、治療物質との透過性が高過ぎて、患者の身体へのあまりに急激な治療物質の放出及び送達をもたらす恐れがあることから、律速層を構築物の必須の付加物にしてもよい。非限定的な一例は、PEA−TEMPOを含むエベロリムス薬物貯蔵層である(2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジンオキシルが共有結合的に付加されているポリ(エステル−アミド))。PEA−TEMPOは非常に望ましいインビボ特性を有しているが、エベロリムスへの透過性が実に高い。したがって、ポリ(エステル−アミド)ポリマーマトリックスからのエベロリムスの徐放(即ち、数日、数カ月、又はそれ以上になることがある長期間にわたる、治療有効量の薬物の放出)は困難であり、幾つかの場合に達成不可能である。この状況を緩和するために、エベロリムスが通過しなければならない律速ポリマー又はポリマーブレンドを、さらなるPEA−TEMPO層上に塗布することができる。その層は、ポリマーの固有の性質により、又は架橋されているという理由から、溶出薬剤へのバリア妨害をより困難するポリマーを含むことができる。この相の律速傾向は、それに限定されるものではないが、層中のこのポリマーの量、相の厚さ、及びポリマーの架橋度などの因子に依存することになる。
【0227】
本明細書で使用されるように、「トップコート層」は最外層、即ち、外部環境に接触し、他の全ての層上にコーティングされる層を指す。トップコート層は、より良好な親水性をデバイスに提供し、デバイスをより潤滑にするために、又は単にデバイスの保護剤として塗布することができる。ただし特に、使用される治療プロトコールが、1つ又は複数の治療剤(これらはトップコート層に含まれる)を本質的には即時放出した後に、より長時間にわたって1つ又は複数の別の治療剤を徐放することを必要とする場合、トップコート層が治療剤を含有することもできる。さらにトップコート層は、1つ又は複数の「生物学的に有用な薬剤」を含有することができる。一実施形態では、本発明の埋め込み型医療デバイスは、少なくともトップコート層を含み、そのトップコート層は、本明細書に記載のポリ(エステル−アミド)を含む。
【0228】
「生物学的に有用な」薬剤は、例えばデバイスのタンパク質汚損傾向を低減し、デバイスの血液適合性を増大し、及び/又は抗血栓性、非炎症性、非細胞毒性、非溶血性等のデバイスの特徴を増強することによって埋め込み型医療デバイスに有益な影響を与えるものである。幾つかの代表的な生物学的に有益な材料には、それに限定されるものではないが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリ(プロピレングリコール)などのポリエーテル;ポリ(エチレンオキシド−co−乳酸)などのコポリ(エーテル−エステル);ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)などのポリアルキレンオキシド;ポリホスファゼン、ホスホリルコリン、コリン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、及びn−ビニルピロリドン(VP)などのヒドロキシル担持モノマーのポリマー及びコポリマー;メタクリル酸、アクリル酸、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート、及び3−トリメチルシリルプロピルメタクリレートなどのカルボン酸担持モノマー;ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メチルメタクリレート)−PEG(PM MA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−co−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能化ポリ(ビニルピロリドン);フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸、ヘパリン、グリコサミノグリカン、多糖、エラスチン、キトサン、アルギン酸塩、シリコーン、PolyActive(商標)、及びそれらの組合せなどの生体分子が含まれる。PolyActive(商標)は、ポリ(エチレングリコール)及びポリ(ブチレンテレフタラート)のブロックコポリマーを指す。
【0229】
本発明の埋め込み型医療デバイスは、1つ又は複数の治療剤を含むことができる。実際、埋め込み型医療デバイス上に組み込まれる場合に有用であることが見出されている任意の治療剤を、本発明のデバイス及び方法において使用できる。治療剤の例には、それに限定されるものではないが、抗増殖、抗炎症、抗新生物、抗血小板、抗凝固、抗フィブリン、抗血栓(antithrombonic)、抗有糸分裂、抗生物、抗アレルギー、及び抗酸化化合物が含まれる。したがって該治療剤は、再度それに限定されるものではないが、合成無機又は有機化合物、タンパク質、ペプチド、多糖、及び他の糖、脂質、DNA及びRNA核酸配列、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体、受容体リガンド、酵素、接着性ペプチド、ストレプトキナーゼ及び組織プラスミノゲン活性化因子などの血液凝固剤、抗原、ホルモン、成長因子、リボザイム、レトロウィルスベクター、抗増殖剤、例えばラパマイシン(シロリムス)、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン、40−エピ(N1−テトラゾリル)ラパマイシン(ゾタロリムス、ABT−578)、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン、及びマイトマイシン、抗血小板化合物、抗凝固剤、抗フィブリン、抗トロンビン、例えばヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン、プロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、アンジオマックスaなどのトロンビン阻害剤、ニフェジピンなどのカルシウムチャンネル遮断薬、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(ω3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン、モノクローナル抗体、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン、酸化窒素又は酸化窒素供与体、スーパーオキシドジムスターゼ、スーパーオキシドジムスターゼ模倣薬、エストラジオール、抗癌剤、ビタミンなどの栄養補助食品、アスピリン、タクロリムス、デキサメタゾン、及びクロベタゾールなどの抗炎症剤、アンギオペプチンなどの細胞増殖抑制物質、カプトプリル、シラザプリル、又はリシノプリルなどのアンギオテンシン変換酵素阻害剤、ペルミロラストカリウムなどの抗アレルギー薬、α−インターフェロン、生物活性RGD、並びに遺伝子組換え上皮細胞であってよい。埋め込み型医療デバイスとの併用に現在利用可能な、又は将来開発し得る他の治療剤も同様に使用でき、それらは全て本発明の範囲に含まれる。
【0230】
本発明との併用に現在好ましい治療剤は、ラパマイシン(シロリムス)、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン、及び40−エピ(N1−テトラゾリル)ラパマイシン(ゾタロリムス、ABT−578)である。
[実施例]
【0231】
実施例1
PEA−TEMPO及びPEA−BZの炎症反応を、ラットの心外膜モデルを使用して評価した。Hemashield(登録商標)グラフト材料を、高炎症性対照として使用し、Impra(登録商標)ePTFEグラフト材料を最小限の炎症性対照として使用した。各ポリマーの直径4ミリメートル、厚さ300μmのディスクを、ラットの心外膜表面上に埋め込み、炎症レベルを14日及び30日目に測定した。対照ディスクは、これらの材料の典型的な炎症反応及び細胞応答を示した。PEA−TEMPO及びPEA−BZの両方が、Impra(登録商標)ディスク以下の細胞応答及び炎症反応を示した。結果を図1及び2に図示する。
【0232】
実施例2
ステント上にコーティングされたPEA−TEMPOの内皮再生(re−endothelialization)動態を、地金ステント(BMS)及びSolef(登録商標)(ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)でコーティングしたステントの動態と比較した。むき出しのMedium Vision(登録商標)4.0×18mmステント、PEA−TEMPO1494μgでコーティングした、又はSolef(登録商標)767μgでコーティングした同ステントを使用した。生体工学による血管にステントを埋め込み、7日後に評価した。ステントした血管を、ビスベンズイミド(BBI)で染色し、縦方向に半分に切断し、10×対象で画像化した。その画像を分析のために、MetaMorph(登録商標)ソフトウェアに取り込んだ。各画像において、ステントの鋭先(tine)領域を調査し定量化した。次いで、ステントの鋭先を被覆する細胞を手作業で計数した。標準段階の顕微鏡を用いて決定した変換率を使用して、鋭先領域をmmに変換した。各画像について細胞数/mmを算出し、各血管について平均化した。PEA−TEMPO−コーティングステントは、BMSと類似の、実質的にはSolef(登録商標)−コーティングステントよりも多量の内皮細胞被覆を有することが見出された。結果を図3に図示する。
【0233】
実施例3
ポリ(エステル−アミド)トップコートを、ポリ(n−ブチルメタクリレート)下塗及びエベロリムス190μgを含有するポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)の薬物貯蔵層を有する小型18mmステント上に塗布した。使用したポリ(エステル−アミド)はPEA−TEMPOであり、ステントに、89μgを薬物貯蔵層上に塗布した。トップコートなしのステントの放出速度標的を、図4の右に示す。PEA−TEMPOで得られた放出速度を左に示す。分かるように、許容できる標準偏差が重複しており、これは、PEA−TEMPOトップコートが標的放出速度に有害な妨げとならなかったことを示すものである。
【0234】
実施例4
実施例3のステントの機械的完全性に対するポリ(エステル−アミド)トップコート層の効果を調査した。18mmの小型Vision(登録商標)ステントを、ポリ(n−ブチルメタクリレート)下塗及びエベロリムス190μgを含有するポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)の薬物貯蔵層でコーティングした。薬物貯蔵層上に、2wt%固体の無水エタノール溶液からのPEA−TEMPO89μgをスプレーコーティングし、厚さ約0.92μmのポリ(エステル−アミド)のコーティングを得た。次いでコーティングを、湿潤伸長後に全体、外径、及び内径の観点から調査した。PEA−TEMPOコーティングは、湿潤伸長に関して、コーティングの完全性に観測可能ないかなる不具合も提示しなかったことが見出された。
【0235】
本発明の理解を容易にするために、本発明の様々な態様を、具体例に関してしばしば記載してきた。本明細書で提供される具体例は、いかなる方式でも本発明の範囲を制限するものではなく、またそのように解釈されないことを理解されたい。即ち当業者は、本明細書の開示の変更及び代替が本発明と同じ目的を達成する限り、それらの変更及び代替を認識することができ、それらは本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】


を有するポリ(エステル−アミド)。
[式中、
mは、0〜約200の整数であり、
nは、0〜約200の整数であり、
kは、1〜約3000の整数であり、
Mnは、約10,000〜約1,000,000Daであり、
rは、0及び1を含む0〜1の数であり、
sは、0及び1を含む0〜1の数であり、
r+s=1であり、
Xは、化学構造
【化2】


を有し、
Yは、化学構造
【化3】


を有し、
は、
【化4】


、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化5】


からなる群から選択され、
は、−OH、−O(1C〜20C)アルキル、−O(1C〜20C)アルケニル、及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から選択され、
qは、1及び600を含む1〜600の整数であり、
は、水素、−C(O)CH=CH、及び−C(O)C(CH)=CHからなる群から選択され、
及びRは、(1C〜12C)アルキル及び(2C〜12C)アルケニルからなる群から独立に選択され、
、R2’、R2’’、及びR2’’’は、水素及び(1C〜4C)アルキルからなる群から独立に選択され、
アルキル基は、−OH、−SH、−SeH、−C(O)OH、−NHC(NH)NH
【化6】


、フェニル、及び
【化7】


からなる群から選択される部分で、任意選択で置換されており、或いは
、R2’、R2’’、及びR2’’’の1つ又は複数は、それが結合する炭素と、隣接する窒素との間の架橋を形成することができ、前記架橋は−CHCHCH−を含み、
及びR3’は、(1C〜12C)アルキル、(2C〜12C)アルケニル、(3C〜8C)シクロアルキル、及び−(CHCHO)CHCH−からなる群から独立に選択され、qは、1及び10を含む1〜10の整数であり、
前記ポリ(エステル−アミド)は、約0.05モル%〜約5モル%架橋されている]
【請求項2】
Mnが約20,000Da〜約500,000Daである、請求項1に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項3】
前記架橋が化学架橋である、請求項1に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項4】
前記化学架橋が、R、R2’、R2’’、R2’’’、又はR上の−OH、−SH、−NH、又は−C(O)OH置換基と、多官能性OH−反応性、−SH−反応性、−NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤との反応生成物を含む、請求項3に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項5】
前記OH−反応性、−SH−反応性、−NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤が、ジイソシアネートを含む、請求項4に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項6】
前記ジイソシアネートが、1,2−エタンジイソシアネート、1,3−プロパンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,5−ペンタンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、及び1,4−シクロヘキサンジイソシアネートからなる群から選択される、請求項5に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項7】
前記−SH−反応性多官能性架橋剤が、ビスマレイミドを含む、請求項4に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項8】
前記−OH−反応性、−SH−反応性、NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤が、ジエポキシドを含む、請求項4に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項9】
前記−OH−反応性、−SH−反応性、−NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤が、ジイソチオシアネートを含む、請求項4に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項10】
前記−OH−反応性、−SH−反応性、−NH−反応性、又は−C(O)OH−反応性多官能性架橋剤が、二酸ハロゲン化物を含む、請求項4に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項11】
、R2’、R2’’、及びR2’’’が、非置換(1C〜4C)アルキル、及びそれが結合する炭素と、隣接する窒素との間の架橋からなる群から独立に選択され、前記架橋が−CHCHCH−を含み、
が、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化8】


からなる群から選択され、
が−OHである、請求項5に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項12】
が−(CHCH(COR)NH−である、請求項11に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項13】
及びR2’が−CHCH(CHである、請求項12に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項14】
前記OH−反応性、SH−反応性、NH反応性、C(O)OH−反応性多官能性架橋剤が、多官能性アジリジン化合物である、請求項4に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項15】
前記多官能性アジリジン化合物が、ペンタエリスリトールトリス(3−アジリジノプロピオネート)である、請求項14に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項16】
、R2’、R2’’、及びR2’’’が、非置換(1C〜4C)アルキル、及びそれが結合する炭素と、隣接する窒素との間の架橋からなる群から独立に選択され、前記架橋が−CHCHCH−を含み、
が、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化9】


からなる群から選択され、
が−OHである、請求項15に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項17】
が−(CHCH(COR)NH−である、請求項16に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項18】
及びR2’が−CHCH(CHである、請求項17に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項19】
及びRが−(CHであり、
が−(CH−である、請求項18に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項20】
が、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化10】


からなる群から選択され、
が、−O(1C〜20C)アルケニル及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から選択され、
qが、0及び600を含む0〜600の整数であり、
が、−C(O)CH=CH及び−C(O)C(CH)=CHからなる群から選択され、
前記化学架橋が、二重結合のUV又はフリーラジカル開始反応を含む、請求項3に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項21】
が、−(CHCH(COR)NH−である、請求項20に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項22】
が、−O(CHCH=CH(CHCH及び
【化11】


からなる群から選択される、請求項21に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項23】
及びRが−(CH−であり、
及びR2’が−CHCH(CHであり、
が−(CHである、請求項22に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項24】
が、
【化12】


であり、
又はRの一方が、(2C〜12C)アルケニルであり、他方が(1C〜12C)アルキルであるか、或いは
及びRが(2C〜12C)アルケニルであり、
前記化学架橋が、アルケニル二重結合のUV又はフリーラジカル開始反応を含む、請求項3に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項25】
nが0であり、
が(2C〜12C)アルケニルであり、
前記化学架橋が、アルケニル二重結合のUV又はフリーラジカル開始反応を含む、請求項3に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項26】
及びR2’が−(CH)CH(CHであり、
が−(CH−である、請求項25に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項27】
、R2’、R2’’、R2’’’、及びRの少なくとも1つが−C(O)OH基を含み、
前記化学架橋がアイオノマーを含む、請求項3に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項28】
前記アイオノマーが一価のカチオンを含む、請求項27に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項29】
前記一価のカチオンが、ナトリウム、カリウム、リチウム、及び銀からなる群から選択される、請求項28に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項30】
前記アイオノマーが多価カチオンを含む、請求項27に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項31】
前記多価カチオンが、カルシウム(II)、マグネシウム(II)、亜鉛(II)、鉄(II)、及びアルミニウム(III)からなる群から選択される、請求項30に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項32】
及びR2’が、水素及び(1C〜4C)アルキルからなる群から独立に選択され、
が、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化13】


からなる群から選択され、
が−OHである、請求項27に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項33】
及びR2’が−CHCH(CHであり、
が−(CHCH(COR)NH−である、請求項32に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項34】
及びRが−(CH−であり、
が−(CH−である、請求項33に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項35】
前記アイオノマーがZn(II)を含む、請求項34に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項36】
前記架橋が物理的架橋である、請求項1に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項37】
Aが軟質セグメントであり、
Bが硬質セグメントであり、
前記物理的架橋が、軟質セグメントと準結晶の硬質セグメントの分離領域を含む、請求項36に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項38】
Aが40℃以下のガラス転移温度を有し、
Bが45℃以上のガラス転移温度を有する、請求項37に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項39】
が、
【化14】


である、請求項38に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項40】
が−(CH−であり、
及びR2’が−(CH(CH)CHCHであり、
が−(CH−であり、
1’が−(CH−であり、
2’’及びR2’’’が−CH(CHであり、
3’が−(CH−である、請求項39に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項41】
が−(CH−であり、
及びR2’が−(CH(CH)CHCHであり、
が−(CH12−であり、
1’が−(CH−であり、
2’’及びR2’’’が−CH(CHであり、
3’が−(CH−である、請求項39に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項42】
が−(CH−であり、
、R2’、R2’’、及びR2’’’が−(CH(CH)CHCHであり、
が−(CH−であり、
1’が−(CH−であり、
3’が−(CH−である、請求項39に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項43】
Aが非晶質であり、
Bが結晶性であり、
前記架橋が鎖中の結晶化を含む、請求項36に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項44】
が、
【化15】


である、請求項43に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項45】
が−(CH−であり、
1’が−(CHであり、
及びR2’が−CHCH(CHであり、
2’’及びR2’’’がCHフェニルであり、
が−(CH−であり、
3’が−(CH−である、請求項44に記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項46】
デバイス本体と、
任意選択の下塗層と、
少なくとも1つの治療剤を含む薬物貯蔵層と、
任意選択の律速層と、
任意選択のトップコート層とを含み、
前記薬物貯蔵層、必要ならば前記律速層、及び/又は必要ならば前記トップコート層の少なくとも1つが、請求項1に記載の架橋ポリ(エステル−アミド)を含む、埋め込み型医療デバイス。
【請求項47】
少なくとも前記薬物貯蔵層が、請求項1に記載の架橋ポリ(エステル−アミド)を含む、請求項46に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項48】
少なくとも前記律速層が、請求項1に記載の架橋ポリ(エステル−アミド)を含む、請求項46に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項49】
少なくとも前記トップコート層が、請求項1に記載の架橋ポリ(エステル−アミド)を含む、請求項46に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項50】
ステントである、請求項46に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項51】
デバイス本体と、
前記デバイス本体上に配置された任意選択の下塗層と、
前記デバイス本体又は必要ならば前記下塗層上に配置された薬物貯蔵層と(前記薬物貯蔵層は、1つ又は複数の治療剤を含む)、
必要ならば前記薬物貯蔵層の少なくとも一部分上に配置された任意選択の律速層と、
前記デバイス本体、必要ならば前記下塗層、必要ならば前記薬物貯蔵層、又は必要ならば前記律速層上に配置された、最外層としての任意選択のトップコート層と
を含み、
前記層の少なくとも1つが、式
【化16】


を有するポリ(エステル−アミド)を含み、
式中、
mは、0〜約200の整数であり、
pは、0〜約200の整数であり、
nは、0〜約200の整数であり、
rは、1〜約3000の整数であり、
Mnは、約10,000Da〜約1,000,000Daであり、
sは、0及び1を含む0〜1の数であり、
tは、0及び1を含む0〜1の数であり、
vは、0及び1を含む0〜1の数であり、
s+t+v=1であり、
Xは、化学構造
【化17】


を有し、
Yは、化学構造
【化18】


を有し、
Zは、化学構造
【化19】


を有し、
、R1’、及びRは、(1C〜12C)アルキル及び(2C〜12C)アルケニルからなる群から独立に選択され、
、R2’、R2’’、及びR2’’’は、水素及び(1C〜4C)アルキルからなる群から独立に選択され、
前記アルキル基は、−OH、−O(1C〜4C)アルキル、−SH、−S(1C〜4C)アルキル、−SeH、−COR、−NHC(NH)NH、イミダゾール−2−イル、イミダゾール−5−イル、インドール−3−イル、フェニル、4−ヒドロキシフェニル、及び4−[(1C〜4C)アルキルO]フェニルからなる群から選択される部分で、任意選択で置換されており、
は、−OH、−O(1C〜4C)アルキル、−NH、−NH(1C〜4C)アルキル、−N(1C〜4C)アルキル(1C〜4C)アルキル、安定なニトロキシド、−O(CHOP(=O)(O)OCHCH(CH、−O(CHCHO)CHCHOR、及び
【化20】


からなる群から選択され、
は、水素、(1C〜4C)アルキル、−C(O)CH=CH、−C(O)C(CH)=CH、及び−O(CHOP(=O)(O)OCHCH(CHからなる群から選択され、
或いは
、R2’、R2’’、及びR2’’’の1つ又は複数は、それが結合する炭素と、隣接する窒素との間の架橋を形成することができ、前記架橋は−CHCHCH−を含み、
は、(1C〜12C)アルキル及び(2C〜12C)アルケニル、(3C〜8C)シクロアルキル、(3C〜8C)ビシクロアルキル及び−(CHCHO)CHCH−からなる群から選択され、
は、−CH(COR)CHS−、−CH(COR)CHO−、−CH(COR)(CHNH−、−(CHCH(COR)NH−、−CH(COR)CH(CH)O−、
【化21】


からなる群から選択され、
qは、1及び600を含む1〜600の整数である、埋め込み型医療デバイス。
【請求項52】
Mnが約20,000Da〜約500,000Daである、請求項51に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項53】
少なくとも最外層がポリ(エステル−アミド)を含む、請求項51に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項54】
前記最外層がトップコート層である、請求項53に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項55】
が、−(CH−、−(CH−、及び−CHCH=CHCH−からなる群から選択され、
1’及びRが、−(CH−及び−(CH−からなる群から選択される、請求項51に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項56】
が−CHCH(CHである、請求項55に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項57】
が−(CH−であり、
3’
【化22】


である、請求項56に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項58】
が−(CHCORNH−であり、
が、−O(CHOP(=O)(O)OCHCH(CH及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から選択され、
が、水素、(1C〜4C)アルキル、−C(O)CH=CH、及び−C(O)C(CH)=CHからなる群から選択される、請求項57に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項59】
p=0である、請求項51に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項60】
及びRが、−(CH−及び−(CH−からなる群から独立に選択される、請求項59に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項61】
及びR2’が、−CH、−CHCHNHC(NH)NH、−CHCONH、−CHCOOH、−CHSH、−CHCHCOOH、−CHCHCONH、−CHNH
【化23】


−CH(CH)CHCH、−CHCH(CH、−(CHNH、(CHSCH
【化24】


CHOH、−CH(CH)OH、
【化25】


、CH(CH、及び−CHCHCH−からなる群から独立に選択され、第2の炭素が窒素と共有結合しており、前記窒素が、Rが結合する炭素と隣接している、請求項60に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項62】
が、−(CH−、−(CH−及び−(CHCHO)CHCH−からなる群から選択され、qが、1及び10を含む1〜10の整数である、請求項61に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項63】
が−(CHCH(COR)NH−であり、
が、安定なニトロキシド、
【化26】

−O(CHOP(=O)(O)OCHCH(CH、及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から選択され、
が、水素、(1C〜4C)アルキル、−C(O)CH=CH、及び−C(O)C(CH)=CHからなる群から選択される、請求項62に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項64】
及びR2’が同じである、請求項62に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項65】
及びR2’が、−CHCH(CHである、請求項64に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項66】
前記安定なニトロキシドが、
【化27】


からなる群から選択される、請求項65に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項67】
前記安定なニトロキシドが、
【化28】


である、請求項66に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項68】
が、
【化29】


である、請求項65に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項69】
p=0であり、
n=0である、請求項51に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項70】
及びR2’が、−CH、−HCHNHC(NH)NH、−CHCONH、−CHCOOH、−CHSH、−CHCHCOOH、−CHCHCONH、−CHNH
【化30】

−CH(CH)CHCH、−CHCH(CH、−(CHNH、(CHSCH
【化31】

CHOH、−CH(CH)OH、
【化32】


、CH(CH、及び−CHCHCH−からなる群から選択され、第2の炭素が窒素と共有結合しており、前記窒素が、Rが結合する炭素と隣接している、請求項69に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項71】
が、−(CH−、−(CH−、及び−CHCH=CHCH−からなる群から選択される、請求項70に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項72】
及びR2’が同じである、請求項71に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項73】
及びR2’が、CHCH(CHである、請求項72に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項74】
が、(3C〜8C)アルキル、−(CHCHO)CHCH−(qは、1及び10を含む1〜10の整数である)、
【化33】


からなる群から選択される、請求項73に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項75】
qが2である、請求項73に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項76】
が、−(CH−及び−(CH−からなる群から選択される、請求項73に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項77】
が、
【化34】


である、請求項73に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項78】
及びR2’がベンジルである、請求項76に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項79】
薬物貯蔵層及び律速層を含み、前記律速層が、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項51、59、又は69のいずれか一項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項80】
前記律速層がポリ(D,L−ラクチド)を含む、請求項79に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項81】
前記下塗層上に純粋な状態で配置された1つ又は複数の薬物を含む薬物貯蔵層を含む、請求項51、59、又は69のいずれか一項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項82】
1つ又は複数のポリマーを含む薬物貯蔵層を含む、請求項51、59、又は69に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項83】
前記薬物がエベロリムスである、請求項82に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項84】
前記薬物貯蔵層ポリマーが、ポリ(フッ化ビニリデン)及びポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)からなる群から選択される、請求項83に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項85】
ポリ(n−ブチルメタクリレート)を含む下塗層をさらに含む、請求項84に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項86】
ステントである、請求項85に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項87】
、R2’、R2’’、R2’’’、及びRの1つ又は複数が、ペンダント基−CORを含み、各Rが、安定なニトロキシド構成要素、ベンジルO−、−O(CHOP(=O)(O)CHCH(CH、及び−O(CHCHO)CHCHORからなる群から独立に選択される、請求項51、59、又は69のいずれか一項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項88】
少なくとも最外層がポリ(エステルアミド)を含む、請求項87に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項89】
前記最外層がトップコート層である、請求項88に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項90】
前記安定なニトロキシドが、
【化35】


からなる群から選択される、請求項87に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項91】
qが、1及び10を含む1〜10である、請求項87に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項92】
qが、300及び600を含む300〜600である、請求項87に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項93】
が、−O(CHOP(=O)(O)CHCH(CHである、請求項87に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項94】
ステントである、請求項51、59、又は69のいずれか一項に記載の埋め込み型医療デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−543897(P2009−543897A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519529(P2009−519529)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/015902
【国際公開番号】WO2008/008437
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】