説明

ポンプ及びヒートポンプ式給湯装置及びポンプの製造方法

【課題】羽根車の安定した動作を確保しながら、羽根車吸入部付近の整流を行うことでポンプ性能の向上を図ることができるポンプを提供する。
【解決手段】この発明に係るポンプ410は、モールド固定子450と、ケーシング441と、椀状隔壁部品490とを組付けてなるポンプ部440と、椀状隔壁部品490の軸支持部494に、一方の端部が固定される軸470とを備え、回転子部460aは、回転子部460aの中央部に設けられ、軸470の他方の端部に摺動自在に嵌合するスリーブ軸受471と、回転子部460aの羽根車460b側の軸方向端部に形成される羽根車設置面の中央部に設けられ、吸入口から流入する流体を羽根車460bに案内する略円錐状の突起と、を有し、羽根車460bは、ケーシング441の環状の溝部447に収納される略ドーナツ状の摺動部を具備するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モールド固定子とポンプ部とを組み合わせて製作されるポンプ及びポンプの製造方法に関する。さらに、そのポンプを用いるヒートポンプ式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
羽根車の外周部から前面シュラウドとポンプケース間の隙間を通じて吸入口マウス内に還流する帰還経路の途中に遮蔽部材を設け、該遮蔽部材は、上記隙間に対向する対向面の一方に取り付けられる摺動部と、他方に取り付けられて摺動部に対して密着状態で摺接する摺接部とで構成されているポンプの羽根車構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−240655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のポンプは、ケーシングの吸入口から伸びる複数のリブで回転子の回転中心となる軸の支持部を支持しているため、その軸支持部を収納する空間が回転子側(羽根車の羽根設置面付近)に必要となる。この空間は、吸入口から吐出口に流れる流体のよどみ領域となる。詳細は、実施の形態で説明する。
【0005】
また、ケーシングの吸入口から伸びる複数のリブで軸支持部を支持しているので、この複数のリブにより羽根車へ流入する流体の流れに乱れが生じる。
【0006】
また、ケーシングの金型構造の制約により、ケーシングに一体に形成される軸支持部は、吸入口より径方向に小さくする必要がある。軸支持部が吸水口より小さいと、前記の「よどみ領域」へ流入する流体が増加し、ポンプ性能が低下する恐れがあった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、羽根車の安定した動作を確保しながら、羽根車吸入部付近の整流を行うことでポンプ性能の向上を図ることができるポンプを提供する。
【0008】
また、そのポンプの製造方法を提供する。
【0009】
さらに、そのポンプを搭載するヒートポンプ式給湯装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るポンプは、固定子鉄心の絶縁部が施された複数のティースに巻線してコイルが形成され、電子部品が実装されるとともにリード線を口出しするリード線口出し部品が取り付けられた基板を組付けた固定子組立をモールド樹脂で成形してなるモールド固定子と、
流体の吸入口及び吐出口と、吸入口の内側周囲に形成される環状の溝部とを有するケーシングと、回転子部と羽根車とを備える回転子を内部に収納し、回転子が摺動自在に嵌合する椀状隔壁部と、鍔部とを有する椀状隔壁部品とを組付けてなるポンプ部と、
椀状隔壁部の軸支持部に、一方の端部が固定される軸と、を備え、
回転子部は、
回転子部の中央部に設けられ、軸の他方の端部に摺動自在に嵌合するスリーブ軸受と、
回転子部の羽根車側の軸方向端部に形成される羽根車設置面の中央部に設けられ、吸入口から流入する流体を羽根車に案内する略円錐状の突起と、を有し、
羽根車は、ケーシングの吸入口内側周囲に設けられた環状の溝部に収納される略ドーナツ状の摺動部を具備するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るポンプは、回転子部の羽根車側の軸方向端部に形成される羽根車設置面の中央部に、吸入口から流入する流体を羽根車に案内する略円錐状の突起を備え、羽根車は、ケーシングの吸入口内側周囲に設けられた環状の溝部に収納される略ドーナツ状の摺動部を具備するので、羽根車の安定した動作を確保しながら、羽根車吸入部付近の整流を行うことでポンプ性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1を示す図で、ヒートポンプ式給湯装置300の構成図。
【図2】実施の形態1を示す図で、ポンプ10の分解斜視図。
【図3】実施の形態1を示す図で、モールド固定子50の斜視図。
【図4】実施の形態1を示す図で、モールド固定子50の断面図。
【図5】実施の形態1を示す図で、固定子組立49の分解斜視図。
【図6】実施の形態1を示す図で、下穴部品81を示す図((a)は側面図、(b)は平面図)。
【図7】実施の形態1を示す図で、固定子組立49の斜視図。
【図8】実施の形態1を示す図で、ポンプ部40の分解斜視図。
【図9】実施の形態1を示す図で、ポンプ10の断面図。
【図10】実施の形態1を示す図で、ケーシング41の軸支持部46側から見た斜視図。
【図11】実施の形態1を示す図で、ポンプ10の製造工程を示す図。
【図12】実施の形態2を示す図で、実施の形態1のポンプ部40における流体の流れを示す図。
【図13】実施の形態2を示す図で、ポンプ410の分解斜視図。
【図14】実施の形態2を示す図で、ポンプ部440の分解斜視図。
【図15】実施の形態2を示す図で、ポンプ410の断面図。
【図16】実施の形態2を示す図で、ケーシング441の回転子460側から見た斜視図。
【図17】実施の形態2を示す図で、回転子部460aの断面図。
【図18】実施の形態2を示す図で、回転子460の分解斜視図。
【図19】実施の形態2を示す図で、羽根車460bの斜視図。
【図20】実施の形態2を示す図で、回転子460の斜視図。
【図21】実施の形態2を示す図で、摺動部460cの上面斜視図。
【図22】実施の形態2を示す図で、摺動部460cの下面斜視図。
【図23】実施の形態2を示す図で、羽根車部460dの上面斜視図。
【図24】実施の形態2を示す図で、羽根車部460dの下面斜視図。
【図25】実施の形態2を示す図で、羽根車460bの上面斜視図。
【図26】実施の形態2を示す図で、羽根車460bの下面斜視図。
【図27】実施の形態2を示す図で、変形例1の羽根車560bの上面斜視図。
【図28】実施の形態2を示す図で、変形例1の羽根車560bの下面斜視図。
【図29】実施の形態2を示す図で、変形例1の摺動部560cの上面斜視図。
【図30】実施の形態2を示す図で、変形例1の摺動部560cの下面斜視図。
【図31】実施の形態2を示す図で、変形例2の羽根車660bの上面斜視図。
【図32】実施の形態2を示す図で、変形例2の羽根車660bの下面斜視図。
【図33】実施の形態2を示す図で、変形例2の羽根車部660dの上面斜視図。
【図34】実施の形態2を示す図で、変形例2の羽根車部660dの下面斜視図。
【図35】実施の形態2を示す図で、変形例の軸570が一体成形された椀状隔壁部品490の部分断面図。
【図36】実施の形態2を示す図で、ポンプ410の製造工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
本実施の形態は、モールド固定子が固定子に組付けられた下穴部品がモールド樹脂で一体に成形され、このとき下穴部品の足部のタッピングネジ用の下穴が表出し、ポンプ部に形成されたネジ穴を介してポンプ部とモールド固定子とをタッピングネジで下穴に締結して組付けることにより、ポンプ部とモールド固定子とを強固に組付ける点に特徴がある。
【0014】
図1乃至図11は実施の形態1を示す図で、図1はヒートポンプ式給湯装置300の構成図、図2はポンプ10の分解斜視図、図3はモールド固定子50の斜視図、図4はモールド固定子50の断面図、図5は固定子組立49の分解斜視図、図6は下穴部品81を示す図((a)は側面図、(b)は平面図)、図7は固定子組立49の斜視図、図8はポンプ部40の分解斜視図、図9はポンプ10の断面図、図10はケーシング41の軸支持部46側から見た斜視図、図11はポンプ10の製造工程を示す図である。
【0015】
先ず、ポンプが使用されるヒートポンプ式給湯装置について、その概要を簡単に説明する。
【0016】
図1に示すように、ヒートポンプ式給湯装置300の構成図である。ヒートポンプ式給湯装置300は、ヒートポンプユニット100と、タンクユニット200と、ユーザが運転操作などを行う操作部11とを備える。
【0017】
図1において、ヒートポンプユニット100は、冷媒を圧縮する圧縮機1、冷媒と水とが熱交換を行う冷媒−水熱交換器2、高圧の冷媒を減圧膨張させる減圧装置3、低圧の二相冷媒を蒸発させる蒸発器4を冷媒配管15によって環状に接続された冷媒回路と、圧縮機1の吐出圧力を検出する圧力検出装置5と、蒸発器4に送風するファン7と、ファン7を駆動するファンモータ6とを備えている。
【0018】
また、温度検出手段として、冷媒−水熱交換器2の沸上げ温度検出手段8と、冷媒−水熱交換器2の給水温度検出手段9と、外気温度検出手段17とを備えている。
【0019】
また、ヒートポンプユニット制御部13を備える。ヒートポンプユニット制御部13は、圧力検出装置5、沸上げ温度検出手段8、給水温度検出手段9、及び外気温度検出手段17からの信号を受信し、圧縮機1の回転数制御、減圧装置3の開度制御、ファンモータ6の回転数制御を行う。
【0020】
タンクユニット200は、冷媒−水熱交換器2で高温・高圧の冷媒と熱交換することにより加熱された湯水を貯湯する温水タンク14と、風呂水の追い焚きを行う風呂水追い焚き熱交換器31と、風呂水循環装置32と、冷媒−水熱交換器2と温水タンク14の間に配置された温水循環装置であるポンプ10と、温水循環配管16と、冷媒−水熱交換器2と温水タンク14と風呂水追い焚き熱交換器31とに接続された混合弁33と、温水タンク14と混合弁33とを接続する風呂水追い焚き配管37とを備える。
【0021】
また、温度検出手段として、タンク内水温検出装置34、風呂水追い焚き熱交換器を通過した後の水温を検出する追い焚き後水温検出装置35、混合弁33を通過した後の水温を検出する混合後水温検出装置36を備えている。
【0022】
また、タンクユニット制御部12を備える。タンクユニット制御部12は、タンク内水温検出装置34、追い焚き後水温検出装置35、混合後水温検出装置36からの信号を受信するとともに、ポンプ10の回転数制御、混合弁33の開閉制御、及び操作部11との間で信号の送受信を行う。
【0023】
操作部11は、ユーザが湯水の温度設定や出湯指示などを行うためのスイッチなどを備えたリモコンや操作パネルなどである。
【0024】
図1において、上記のように構成したヒートポンプ式給湯装置における通常の沸上げ運転動作について説明する。操作部11またはタンクユニット200からの沸上げ運転指示がヒートポンプユニット制御部13に伝えられると、ヒートポンプユニット100は沸上げ運転を行う。
【0025】
ヒートポンプユニット100に備えられたヒートポンプユニット制御部13は、圧力検出装置5、沸上げ温度検出手段8、給水温度検出手段9の検出値などに基づいて、圧縮機1の回転数制御、減圧装置3の開度制御、ファンモータ6の回転数制御を行う。
【0026】
また、ヒートポンプユニット制御部13とタンクユニット制御部12との間で沸上げ温度検出手段8の検出値の送受信を行い、タンクユニット制御部12は、沸上げ温度検出手段8で検出した温度が目標沸上げ温度になるよう、ポンプ10の回転数を制御する。
【0027】
以上のように制御されるヒートポンプ式給湯装置300において、圧縮機1から吐出された高温高圧の冷媒は冷媒−水熱交換器2で給水回路側へ放熱しながら温度低下する。放熱して冷媒−水熱交換器2を通過した高圧低温の冷媒は、減圧装置3で減圧される。減圧装置3を通過した冷媒は蒸発器4に流入し、そこで外気空気から吸熱する。蒸発器4を出た低圧冷媒は圧縮機1に吸入されて循環し冷凍サイクルを形成する。
【0028】
一方、温水タンク14の下部の水は、温水循環装置であるポンプ10の駆動により冷媒−水熱交換器2へ導かれる。ここで、冷媒−水熱交換器2からの放熱によって水が加熱され、加熱された湯水は温水循環配管16を通って温水タンク14の上部に戻されて蓄熱される。
【0029】
以上のように、ヒートポンプ式給湯装置300において、温水タンク14と冷媒−水熱交換器2との間の温水循環配管16に、湯水を循環させる温水循環装置としてポンプ10が用いられる。
【0030】
次に、温水循環装置として用いられるポンプ10について説明する。
【0031】
図2に示すように、ポンプ10は、回転子(後述する)の回転により水を吸入して吐出するポンプ部40と、回転子を駆動するモールド固定子50と、ポンプ部40とモールド固定子50とを締結する締結ネジであるタッピングネジ160(図2の例は、4本)とを備える。
【0032】
本実施の形態に係るポンプ10は、4本のタッピングネジ160をポンプ部40のボス部44に形成されたネジ穴44aを介し、モールド固定子50に埋め込まれた下穴部品81の下穴84(図4参照)に締結することでポンプ10を組み立てる。
【0033】
先ず、モールド固定子50の構成について説明する。
【0034】
図3、図4に示すように、モールド固定子50は、固定子組立49(後述する)をモールド樹脂53によりモールド成形することにより、モールド固定子50が得られる。
【0035】
モールド固定子50の軸方向の一方の端面(ポンプ部40側)は、外周縁部に沿って平らなポンプ部設置面63になっている。
【0036】
ポンプ部設置面63には、第2の溝64が径方向に放射状に複数形成されている。この第2の溝64は、後述する椀状隔壁部品90の鍔部90b(図8参照)の補強用リブの逃がし溝である。図3の例では、第2の溝64は、後述する椀状隔壁部品90の鍔部90bの補強用リブに対応して、周方向に略等間隔に6本形成されている。
【0037】
また、ポンプ部設置面63には、6本の第2の溝64の外側端部を結ぶ環状の第3の溝65を備える。この環状の第3の溝65は、椀状隔壁部品90の鍔部90bに形成される環状のリブに対応している。
【0038】
さらに、ポンプ部設置面63には、四隅に略円柱状の樹脂成形品の下穴部品81の足部85(図6参照)が軸方向に埋め込まれている。モールド樹脂53によるモールド成形時に、下穴部品81の足部85の一方の端面(ポンプ部40側)は、成形金型の金型押え部82(図4参照)になる。そのため、下穴部品81が、ポンプ部設置面63より所定の距離だけ内側に埋め込まれる形で表出している。表出しているのは、金型押え部82及びタッピングネジ160用の下穴84である。
【0039】
後述する固定子組立49から引き出されるリード線52が、モールド固定子50のポンプ部40の反対側の軸方向端面付近から外部に引き出されている。
【0040】
モールド固定子50のモールド樹脂53(熱硬化性樹脂)によるモールド成形時の軸方向の位置決めは、基板押え部品95(図7参照)に形成されている複数個の突起95aの軸方向外側の端面が、上型の金型押え部になる。そのため、モールド固定子50の基板58側の軸方向端面に、複数個の突起95aの軸方向外側の端面(金型押え面)が表出している(図示せず)。
【0041】
また、反結線側の絶縁部56の軸方向端面よりさらに外側(軸方向の)に延びる突起56a(図5、図7参照)が、下型の金型押え部になる。そのため、モールド固定子50の基板58の反対側の軸方向端面に、複数個の突起56aが表出している(図示せず)。
【0042】
モールド固定子50のモールド成形時の径方向の位置決めは、固定子鉄心54の内周面が金型に嵌合することでなされる。そのため、図2、図3に示すモールド固定子50の内周部に、固定子鉄心54のティースの先端部が露出している。
【0043】
モールド固定子50の内部の構成、即ち、固定子組立49(図4に示す、リード線52、固定子鉄心54、絶縁部56、コイル57、基板58、端子59等)、下穴部品81については、後述する。
【0044】
次に、固定子組立49について説明する。図5、図7に示すように、固定子組立49は、固定子47と、下穴部品81とを備える。
【0045】
固定子組立49は、以下に示す手順で製作される。
(1)厚さが0.1〜0.7mm程度の電磁鋼板が帯状に打ち抜かれ、かしめ、溶接、接着等で積層された帯状の固定子鉄心54を製作する。帯状の固定子鉄心54は、複数個のティースを備える。図3に示すモールド固定子50の内周部に、固定子鉄心54のティースの先端部が露出している。ここで示す固定子鉄心54は、薄肉連結部で連結されている6個のティースを有するので、図3においても、6箇所に固定子鉄心のティースの先端部が露出している。但し、図3で見えているのは二箇所のみ。
(2)固定子鉄心54のティースには、絶縁部56が施される。絶縁部56は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂を用いて、固定子鉄心54と一体に又は別体で成形される。
(3)絶縁部56が施されたティースに、集中巻のコイルが巻回される。6個の集中巻のコイル57を接続して、三相のシングルY結線の巻線を形成する。
(4)三相のシングルY結線であるので、絶縁部56の結線側には、各相(U相、V相、W相)のコイル57(図4参照)が接続される端子59(電源が供給される電源端子及び中性点端子)が組付けられる。電源端子は3個、中性点端子は1個である。
(5)基板58が結線側の絶縁部56(端子59が組付けられる側)に取り付けられる。基板58は、基板押え部品95により絶縁部56との間に挟持される。基板58には、電動機(ブラシレスDCモータ)を駆動するIC58a(駆動素子)、回転子60の位置を検出するホール素子(位置検出素子)等が実装されている。IC58aやホール素子を、電子部品と定義する。また、基板58には、その外周縁部付近の切り欠き部にリード線52を口出しするリード線口出し部品61が、取り付けられる。
(6)リード線口出し部品61が取り付けられた基板58が基板押え部品95により絶縁部56に固定され、端子59と基板58とが半田付けされた固定子47に下穴部品81を組みつけることで固定子組立49が完成する。
【0046】
下穴部品81の構成を図5、図6により説明する。下穴部品81は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂を成形して形成される。
【0047】
図6に示すように、タッピングネジ160の下穴84を備えた略円柱部の複数の足部85が、薄肉の連結部87で連結されている。略円柱部の足部85は、下穴部品81を固定子47とともにモールド成形した後、下穴部品81の抜け防止のため、足部85の表出端面(金型押え部82、及び、突起83端部)を基準に太くなるテーパ状である。
【0048】
また、下穴部品81は、下穴部品81の回転防止のための複数の突起85aを足部85の外周部に備えている。下穴部品81は略円柱部の足部85を薄肉の連結部87で連結することで、モールド金型へ一度でセット可能なことにより、加工コストの低減が可能となる。
【0049】
図5、図7に示すように、下穴部品81の連結部87に、下穴部品81を固定子47に組付けるための複数の爪86を備える。図5の例では、2本の爪86を備える。
【0050】
固定子47の固定子鉄心54の外周部に形成された溝54aに、下穴部品81の爪86を係り止めすることにより、固定子47と下穴部品81とをモールド金型へ一度でセット可能なことにより、加工コストの低減が可能とる。
【0051】
固定子47に下穴部品81を係り止めした固定子組立49のモールド樹脂53によるモールド成形時に、下穴部品81のタッピングネジ160用の下穴84の開口側の端面(金型押え部82)と、下穴部品81の他端面に備える突起83(図4参照)とを、モールド成形金型により狭持することで下穴部品81の軸方向の位置決めを行う。
【0052】
下穴部品81のタッピングネジ160用の下穴84の開口側の端面の金型押え部82の外径を、下穴部品81の開口側の端面の外径より小さくする。それにより、下穴部品81の端面は、金型押え部82を除く部分が、モールド樹脂53で覆われる。従って、下穴部品81の両端面がモールド樹脂53で覆われるので、下穴部品81の表出を抑制し、ポンプ10の品質向上を図ることが可能となる。
【0053】
モールド固定子50は、固定子47に組付けられた下穴部品81がモールド樹脂53で一体に成形され、このとき下穴部品81の足部85のタッピングネジ160用の下穴84が表出する。ポンプ部40に形成されたネジ穴44aを介して、ポンプ部40とモールド固定子50とをタッピングネジ160で下穴84に締結して組付けることにより、ポンプ部40とモールド固定子50とを強固に組付けることが可能となる。
【0054】
また、図示はしないが、ポンプ部40とモールド固定子50とを強固に取り付けるために、下穴部品81の代替品として、外周に抜け防止、且つ回転防止のための突起を備えた金属製のネジ穴を有するインサートナットを用いることも可能である。下穴部品81、もしくはインサートナットの種類や取付け位置の変更は、金型の取付け部分の変更で対応可能となる。ネジ穴を有するインサートナットを用いる場合は、ネジには締付けネジを使用する。
【0055】
次に、ポンプ部40の構成を説明する。図8、図9に示すように、ポンプ部は、以下に示す要素で構成される。
(1)水の吸入口42と吐出口43とを有し、内部に回転子60の羽根車60bを収納するケーシング41:ケーシング41は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの熱可塑性樹脂を用いて成形される。ケーシング41には、吸入口42側の端部に、ポンプ部40とモールド固定子50とを組付ける際に用いられるネジ穴44aを有するボス部44が4箇所に設けられる。また、ケーシング41には、ポンプ10を、例えば、ヒートポンプ式給湯装置300のタンクユニット200に固定するための孔45aを有する取付脚45を3箇所に備える。
(2)第1のスラスト軸受71a:第1のスラスト軸受71aの材質は、例えば、アルミナ等のセラミックである。回転子60は、ポンプ10の運転中、回転子60の羽根車60bの表裏に作用する水の圧力差により第1のスラスト軸受71aを介してケーシング41に押し付けられるため、第1のスラスト軸受71aにはセラミックにより製作されたものを使用し、耐摩耗性、摺動性を確保している。
(3)回転子60:回転子60は、回転子部60aと、羽根車60bとを備える。回転子部60aは、フェライト等の磁性粉末と樹脂を混練したペレットを成形したリング状(円筒状)の樹脂マグネット68と、樹脂マグネット68の内側に設けられる円筒形のスリーブ軸受66(例えば、カーボン製)とが、例えばPPE(ポリフェニレンエーテル)等の樹脂67で一体化される(図9参照)。羽根車60bは、例えばPPE(ポリフェニレンエーテル)等の樹脂成形品である。回転子部60aと、羽根車60bとが超音波溶着等により接合される。
(4)軸70:椀状隔壁部品90の軸支持部94に軸70の一端が挿入され、軸70の他端がケーシング41の軸支持部46に挿入される。椀状隔壁部品90の軸支持部94に挿入される軸70の一端は、軸支持部94に対して回転しないように挿入される。そのため、軸70の一端は所定の長さ(軸方向)円形の一部を切り欠いている(D字形状)。軸支持部94の孔もそれに合わせた形状になっている。ケーシング41の軸支持部46(図10も参照)に挿入される軸70の他端も、所定の長さ(軸方向)円形の一部を切り欠いている(D字形状)。即ち、軸70は長さ方向に対称形である。但し、軸70の他端は、ケーシング41の軸支持部46に回転可能に挿入される。軸70が長さ方向に対称形なのは、軸70を椀状隔壁部品90の軸支持部94に挿入する際に、上下の向きを意識することなく組立を可能とするためである。
(5)第2のスラスト軸受71b:第2のスラスト軸受71bの材質はSUSである。回転子60は、ポンプ10の運転中、回転子60の羽根車60bの表裏に作用する水の圧力差により第1のスラスト軸受71aを介してケーシング41に押し付けられるが、運転状態によっては、回転子60が第2のスラスト軸受71bを介して椀状隔壁部品90の軸支持部94に接触するケースも考えられるため、第2のスラスト軸受71bを使用している。
(6)Oリング80:Oリング80は、ポンプ部40のケーシング41と椀状隔壁部品90とのシールを行う。
(7)椀状隔壁部品90:椀状隔壁部品90は、PPE(ポリフェニレンエーテル)などの熱可塑性樹脂を用いて成形される。椀状隔壁部品90は、モールド固定子50との嵌合部である椀状隔壁部90aと、鍔部90bとを備える。椀状隔壁部90aは、円形の底部と円筒形の隔壁とで構成される。円形の底部の内面の略中央部に、軸70の一端が挿入される軸支持部94が立設している。椀状隔壁部90aの外周面に軸方向に延びるリブ91が形成されている。リブ91は、椀状隔壁部90aの根元(鍔部90bとの連結部)から軸方向に所定の長さ形成されている。そして、リブ91の径方向の寸法は、椀状隔壁部90aの根元側が大きく、先に行くに従って小さくなるテーパ形状である。鍔部90bには、鍔部90bを補強する補強リブ(図示せず)が径方向に放射状に6個形成されている。その中の任意の一つの補強リブに椀状隔壁部90aのリブ91が接続している。これにより、椀状隔壁部品90の成形金型の製作が容易になる。また、鍔部90bには、モールド固定子50のポンプ部40のポンプ部設置面63に形成される環状の第3の溝65に納まる環状リブ(図示せず)を備える。また、鍔部90bには、タッピングネジ160が通る孔90dが4箇所に形成されている。さらに、鍔部90bのケーシング41側の面に、Oリング80を収納する環状のOリング収納溝90cが形成されている。
【0056】
ポンプ10は、椀状隔壁部品90にOリング80を設置した後、ケーシング41を椀状隔壁部品90に組付けポンプ部40を組立、モールド固定子50にポンプ部40を組付けタッピングネジ160等により固定して組立てられる。
【0057】
モールド固定子50とポンプ部40とを組付ける際に、モールド固定子50の内周部に軸方向に形成されている第1の溝51と、椀状隔壁部品90の椀状隔壁部90aの外周面に軸方向に延びるリブ91とが嵌合することにより、回転方向(周方向)の位置決めがなされる(図9参照)。
【0058】
モールド固定子50とポンプ部40との嵌合は、以下のように行われる。椀状隔壁部品90の椀状隔壁部90aの外周面の鍔部90bと反対側の部分にはリブ91がないので、モールド固定子50の内周に、ポンプ部40の椀状隔壁部90aの先端部(リブ91がない部分)を任意の位置で挿入することができる。
【0059】
挿入が進み、ポンプ部40の椀状隔壁部90aのリブ91がモールド固定子50の内周の開口部側の端部までくると、モールド固定子50の内周部に軸方向に形成されている第1の溝51と、椀状隔壁部品90の椀状隔壁部90aの外周面に軸方向に延びるリブ91とが合わないとそれ以上は挿入できないが、ある程度モールド固定子50の内周にポンプ部40の椀状隔壁部90aが挿入されているので、回転させることで容易に第1の溝51とリブ91との位置を合わせることができる。
【0060】
第1の溝51とリブ91との位置が合えば、ポンプ部40の椀状隔壁部90aをモールド固定子50の内周に完全に挿入することができる。
【0061】
椀状隔壁部品90の椀状隔壁部90aの内周には、椀状隔壁部品90の軸支持部94に挿入される軸70に回転子60が嵌められて収納される。従って、モールド固定子50と回転子60との同軸を確保するために、モールド固定子50の内周と椀状隔壁部品90の椀状隔壁部90aの外周との隙間はできるだけ小さい方がよい。例えば、その隙間は、0.02〜0.06mm程度に選ばれる。
【0062】
モールド固定子50の内周と椀状隔壁部品90の椀状隔壁部90aの外周との隙間を小さくすると、モールド固定子50の内周に椀状隔壁部品90の椀状隔壁部90aを挿入する場合に、空気が逃げる道がないと挿入が困難になる。
【0063】
そのため、モールド固定子50の内周部に軸方向に形成される第1の溝51を設けて、この第1の溝51を空気の逃げ道としている。
【0064】
また、椀状隔壁部品90と、モールド固定子50との周方向の位置決めが必要である。
【0065】
椀状隔壁部品90とモールド固定子50との周方向の位置決めを行うために、モールド固定子50の内周部に軸方向に形成される第1の溝51に、椀状隔壁部90aのリブ91が嵌るようにしている。
【0066】
空気の逃げ道であるモールド固定子50の第1の溝51を、椀状隔壁部90aのリブ91が塞いでしまうと、椀状隔壁部品90のモールド固定子50への挿入が困難になる。そこで、椀状隔壁部品90がモールド固定子50に完全に挿入された状態で、モールド固定子50の第1の溝51と椀状隔壁部90aのリブ91との間に隙間ができるようにしている。その隙間は、最も狭い所(リブ91の径方向の寸法が最も大きい所)で1mm前後にしている。
【0067】
このように、モールド固定子50の内周と椀状隔壁部品90の椀状隔壁部90aの外周との隙間はできるだけ小さくして(例えば、0.02〜0.06mm程度)モールド固定子50回転子60との同軸を確保しつつ、且つ、モールド固定子50の内周部に軸方向に形成される空気の逃げ道となる第1の溝51を設けて、モールド固定子50の内周への椀状隔壁部品90の挿入を容易としている。さらに、椀状隔壁部90aに、椀状隔壁部90aの根元(鍔部90bとの連結部)から軸方向に所定長さリブ91を形成し、リブ91の径方向の寸法を、椀状隔壁部90aの根元側が大きく、先に行くに従って小さくなるテーパ形状とし、リブ91がモールド固定子50の第1の溝51に所定の径方向の隙間(1mm程度)ができる状態で嵌合するようにしているので、モールド固定子50と椀状隔壁部品90との位置決めができるとともに、モールド固定子50と椀状隔壁部品90との組付けを容易に行うことができる。
【0068】
図11を参照しながら、ポンプ10の製造工程を説明する。
(1)ステップ1:固定子47を製造する。先ず、厚さが0.1〜0.7mm程度の電磁鋼板が帯状に打ち抜かれ、かしめ、溶接、接着等で積層され、薄肉連結部で連結された帯状の固定子鉄心54を製作する。ティースには、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂を用いる絶縁部56が施される。絶縁部56が施されたティースに集中巻のコイル57が巻回される。例えば、6個の集中巻のコイル57を接続して、三相のシングルY結線の巻線を形成する。三相のシングルY結線であるので、絶縁部56の結線側には、各相(U相、V相、W相)のコイル57が接続される端子59(電源が供給される電源端子及び中性点端子)が組付けられる。併せて、基板58を製造する。基板58は、基板押え部品により絶縁部56との間に挟持される。基板58には、電動機(ブラシレスDCモータ)を駆動するIC58a、回転子60の位置を検出するホール素子58b等が実装されている。また、基板58には、その外周縁部付近の切り欠き部にリード線52を口出しするリード線口出し部品61が、取り付けられる。併せて、回転子部60aを製造する。回転子部60aは、フェライト等の磁性粉末と樹脂を混練したペレットを成形したリング状(円筒状)の樹脂マグネット68と、樹脂マグネット68の内側に設けられる円筒形のスリーブ軸受66(例えば、カーボン製)とが、例えばPPE(ポリフェニレンエーテル)等の樹脂67で一体化される。さらに、併せて、羽根車60bを成形する。羽根車60bは、PPE(ポリフェニレンエーテル)などの熱可塑性樹脂を用いて成形される。
(2)ステップ2:基板58を固定子47に組付ける。リード線口出し部品61が取り付けられた基板58が基板押え部品により絶縁部56に固定される。併せて、回転子部60aに羽根車60bを超音波溶着等により組付ける。併せて、椀状隔壁部品90を成形する。併せて、軸70と第1のスラスト軸受71a、第2のスラスト軸受71bを製造する。軸70は、SUSで製造される。第1のスラスト軸受71aは、セラミックで製造される。第2のスラスト軸受71bは、SUSで製造される。
(3)ステップ3:端子59(電源が供給される電源端子及び中性点端子)と基板58とを半田付けする。固定子47に、下穴部品81を組付けることで固定子組立49が完成する。椀状隔壁部品90に回転子60等を組付ける。さらに、併せて、ケーシング41を成形する。ケーシング41は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの熱可塑性樹脂を用いて成形される。
(4)ステップ4:固定子組立49をモールド成形して、モールド固定子50を製造する。併せて、椀状隔壁部品90にケーシング41を固定してポンプ部40を組立てる。さらに、併せて、タッピングネジ160を製造する。
(5)ステップ5:ポンプ10の組立を行う。モールド固定子50にポンプ部40を組付けタッピングネジ160で固定する。モールド固定子50とポンプ部40とを組付ける際、モールド固定子50の内径に備える第1の溝51と、椀状隔壁部品90のモールド固定子50の内径との椀状隔壁部90aに備えるリブ91とが嵌合うことにより、回転方向に対する位置決めとなる。
【0069】
実施の形態2.
本実施の形態では、上記実施の形態1のポンプ10をさらに改善したポンプ410について説明する。
【0070】
図12乃至図36は実施の形態2を示す図で、図12は実施の形態1のポンプ部40における流体の流れを示す図、図13はポンプ410の分解斜視図、図14はポンプ部440の分解斜視図、図15はポンプ410の断面図、図16はケーシング441の回転子460側から見た斜視図、図17は回転子部460aの断面図、図18は回転子460の分解斜視図、図19は羽根車460bの斜視図、図20は回転子460の斜視図、図21は摺動部460cの上面斜視図、図22は摺動部460cの下面斜視図、図23は羽根車部460dの上面斜視図、図24は羽根車部460dの下面斜視図、図25は羽根車460bの上面斜視図、図26は羽根車460bの下面斜視図、図27は変形例1の羽根車560bの上面斜視図、図28は変形例1の羽根車560bの下面斜視図、図29は変形例1の摺動部560cの上面斜視図、図30は変形例1の摺動部560cの下面斜視図、図31は変形例2の羽根車660bの上面斜視図、図32は変形例2の羽根車660bの下面斜視図、図33は変形例2の羽根車部660dの上面斜視図、図34は変形例2の羽根車部660dの下面斜視図、図35は変形例の軸570が一体成形された椀状隔壁部品490の部分断面図、図36はポンプ410の製造工程を示す図である。
【0071】
図12を参照しながら、実施の形態1のポンプ部40における流体の流れを説明する。図12の矢印で示すように、流体(例えば、水)は、ケーシング41の吸入口42から羽根車60b(インペラー)に吸い込まれ、吐出口43(図9参照)から吐き出される。このとき、実施の形態1のポンプ部40は、以下の点が改善されると、羽根車60bの安定した動作を確保しながら、羽根車60bの吸入部付近の整流を行うことで、さらにポンプ性能の向上を図ることができる。
(1)ケーシング41の吸入口42から伸びる複数のリブ48(図10参照)で回転子60の回転中心となる軸70の軸支持部46を支持しているため、その軸支持部46を収納する空間が回転子60側に必要となる。この空間は、吸入口42から吐出口43に流れる流体の「よどみ領域」となり、ポンプ性能が低下する恐れがある。「よどみ領域」を、図12では、ハッチングで示す。
(2)ケーシング41の吸入口42から伸びる複数のリブ48(例えば、3本)で軸支持部46を支持しているので、この複数のリブ48により羽根車60bへ流入する流体の流れに乱れが生じる。
(3)ケーシング41の樹脂成形時における金型構造の制約により、ケーシング41に一体に形成される軸支持部46は、吸入口42より小さくする必要がある。軸支持部46が吸入口42より小さいと、前記の「よどみ領域」へ流入する流体が増加し、ポンプ性能が低下する恐れがある。
(4)ケーシング41と、羽根車60bのケーシング41側端部から突出する環状凸部60d(図8参照)との間に隙間があるため、羽根車60bを出た流体がその隙間を通る還流(図12で、幅の狭い矢印で示す)が存在する。それにより、ポンプ性能が低下する恐れがある。
【0072】
本実施の形態では、上記実施の形態1の(1)〜(4)を改善して、羽根車60bの安定した動作を確保しながら、羽根車60bの吸入部付近の整流を行うことで、さらにポンプ性能の向上を図るものである。
【0073】
図13に示すように、ポンプ410は、回転子(後述する)の回転により水を吸入して吐出するポンプ部440と、回転子を駆動するモールド固定子450と、ポンプ部440とモールド固定子450とを締結する締結ネジであるタッピングネジ560(図13の例は、4本)とを備える。
【0074】
本実施の形態に係るポンプ410は、4本のタッピングネジ560をポンプ部440のボス部444に形成されたネジ穴444aを介し、モールド固定子450に埋め込まれた下穴部品481の下穴(図4の下穴84と同じ)に締結することでポンプ410を組み立てる。
【0075】
モールド固定子450、タッピングネジ560は、実施の形態1のモールド固定子50、タッピングネジ160と同じものである。
【0076】
ポンプ部440の構成が、実施の形態1のポンプ部40と異なる。図14に示すように、ポンプ部440は、以下に示す要素で構成される。
(1)水の吸入口442と吐出口443とを有し、内部に回転子460の羽根車460bを収納するケーシング441;
(2)スラスト軸受471;
(3)回転子460;
(4)軸470;
(5)Oリング480;
(6)椀状隔壁部品490。
【0077】
以下、(1)〜(6)のポンプ部440を構成する各要素について、順に説明する。
【0078】
図14〜図16を参照しながら、ケーシング441について説明する。ケーシング441は、全体が平面視略四角形で、その中央部に吸入口442が形成され、且つ四角形の一辺のコーナー近傍に吸入口442に対して直交する方向に吐出口443が形成されている。
【0079】
ケーシング441は、PPE(ポリフェニレンエーテル)などの熱可塑性樹脂を用いて成形される。ケーシング441には、吸入口442側の端面に、ポンプ部440とモールド固定子450とを組付ける際に用いられるネジ穴445aを有するボス部444が四箇所に設けられる。
【0080】
また、ケーシング441には、ポンプ410を、例えば、ヒートポンプ式給湯装置300のタンクユニット200に固定するためのネジ穴445aを有する取付脚445を三箇所に備える。
【0081】
また、図15、図16に示すように、ケーシング441には、吸入口442と反対側の端面で、略中央部にスラスト軸受471を収納する環状の溝部448を備える。
【0082】
図14に示すように、スラスト軸受471は、略ドーナツ形状で、PPSなどにカーボン繊維などを添加した熱可塑性樹脂、あるいは、アルミナ等のセラミックなどの材料により製作され、ケーシング441内側に設けられた環状の溝部448(図15、図16参照)に設置される。
【0083】
スラスト軸受471は、モールド固定子450(図示せず、モールド固定子50と同じ)に流れる電流により発生する回転磁界の作用によって駆動される回転子460に組付けられた羽根車460bの摺動部460c(図14、図18、図19参照)と摺接する。そうすることで、羽根車460bの安定した回転動作を確保するとともに、羽根車460bとケーシング441との間の流体の還流経路(図12参照)を遮蔽し、ポンプ室内部の循環量(ショートサイクル)を低減することが可能となる。
【0084】
図14〜図34(図16を除く)を参照しながら回転子460について説明する。回転子460は、回転子部460aと、羽根車460bとを備え、回転子部460aと、羽根車460bとが超音波溶着等により接合されて形成される。
【0085】
図17に示すように、回転子部460aは、少なくとも以下の要素を備える。
(1)樹脂マグネット468;
(2)スリーブ軸受466;
(3)熱可塑性樹脂467。
【0086】
樹脂マグネット468は、リング状(円筒状)で、フェライト等の磁性粉末と樹脂を混練したペレットで成形したものである。
【0087】
スリーブ軸受466(例えば、カーボン製)は、樹脂マグネット468の内側に設けられる。スリーブ軸受466は、一方の端面(図17において、突起460a−1と反対側)に軸470挿入用の開口部466aを備え、他方の端面(図17において、突起460a−1側)が閉じた円筒形のものである。
【0088】
例えば、PPE(ポリフェニレンエーテル)等の熱可塑性樹脂467により、樹脂マグネット468と、スリーブ軸受466(例えば、カーボン製)とが一体成形される。
【0089】
樹脂マグネット468と共に熱可塑性樹脂467で一体成形されるスリーブ軸受466は、熱可塑性樹脂467の射出成形時に、軸470挿入用の開口部466aを備える端面と、スリーブ軸受466の他端面の外周部の複数個所とを回転子部460aの成形金型に備える押え部で狭持し、スリーブ軸受466の軸方向の位置決めを行うことでポンプ410の品質向上を図ることが可能となっている。図17に示すように、回転子部460aには、スリーブ軸受466の他端面側に、成形金型の押え部が、孔460a−3として残る。
【0090】
また、回転子部460aの羽根車設置面460a−4の略中央部に、略円錐状の突起460a−1が形成されている。略円錐状の突起460a−1により、羽根車460b(図18〜図20)の流体の吸入部(突起460a−1付近)の流れをスムーズに羽根車460bの半径方向に曲げるようにしている(図15の矢印(流体の流れ)参照)。それにより、羽根車460bの流体の吸入部(突起460a−1付近)の流れの衝突や剥離などによる流体損失を低減し、ポンプ410の高効率化が可能となる。
【0091】
また、回転子部460aは、樹脂マグネット468の内側で、且つスリーブ軸受466の外側に、つりあい穴460a−2が形成されている。図18に示すように、二つのつりあい穴460a−2が、周方向に略180°間隔で形成されている。
【0092】
図17に示すように、つりあい穴460a−2は、一方の端部が突起460a−1付近(羽根車460bの流体の吸入部)に開口して連通し、他方の端部が回転子部460aの内部(スリーブ軸受466の開口部466a側)に開口して連通している。
【0093】
つりあい穴460a−2の役割について説明する。ポンプ410において、回転子460が回転すると、流体(例えば、水)が吸入口442から羽根車460bの流体の吸入部(回転子部460aの突起460a−1付近)に流入する。そして、羽根車460bの回転によって流体が渦巻を起こし、その力で流体を吸い込み、吐出口443から吐き出す。
【0094】
遠心羽根車では流体が流入する吸入部が開放しているので、ポンプ410において、回転子部460a裏側には、羽根車460bから吐き出された、吸入部側よりも高圧の流体が存在する。そのため、回転子460は、圧力の低い吸入部側との差圧により吸入部側に押し付けられる。具体的には、羽根車460bの摺動部460c(図18等参照)がスラスト軸受471に上記差圧による力で押し付けられるため、羽根車460bの摺動部460cもしくはスラスト軸受471が摩耗しやすい。
【0095】
回転子部460aにつりあい穴460a−2を設けることで、回転子部460aの高圧側が圧力の低い吸入部側に連通して、回転子部460aの高圧側の圧力を吸入部とほぼ同程度にすることができる。それにより、羽根車460bの摺動部460cをスラスト軸受471に押し付けるスラスト力が軽減して、羽根車460bの摺動部460cもしくはスラスト軸受471の摩耗を抑制する。
【0096】
回転子460は、スリーブ軸受466が後述する軸470に摺動自在に支持されるとともに、摺動部460cがスラスト軸受471に当接しながらケーシング441の環状の溝部448で支持される。
【0097】
図18、図19に示すように、羽根車460bは、羽根車部460dと、摺動部460cとを備える。羽根車部460dと摺動部460cとは、例えば、PPE(ポリフェニレンエーテル)等の樹脂成形により製作される。羽根車部460dと摺動部460cとが超音波溶着等により接合される。
【0098】
羽根車460bのスラスト軸受471との摺動面に組付けられる略ドーナツ状の摺動部460c(図21、図22参照)は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの熱可塑性樹脂にカーボン繊維などを添加し、耐磨耗性、摺動性が優れた熱可塑性樹脂を射出成形して製作される。
【0099】
図21に示すように、摺動部460cの一方の端面はスラスト軸受471に当接する摺動面460c−2である。
【0100】
図22に示すように、他方の端面の羽根車部460dとの接合面には、摺動部460cの回り留めとなる略角形状の突起460c−1を複数備える(図22では、六個)。略角形状の突起460c−1、または、接合面の少なくともいずれか一方には、表面に超音波溶着リブ(超音波溶着時に溶ける部分)が設けられる。
【0101】
羽根車460bの摺動部組付け部に、放射状に複数設けられた切欠き460d−1(図23参照)に、摺動部460cの突起460c−1を嵌め込み、摺動部460cが超音波溶着などにより羽根車部460dに接合される(図25、図26参照)。
【0102】
摺動部460cと羽根車部460d、羽根車460bと回転子部460aとを各々超音波溶着などで接合することにより、スリーブ軸受466と摺動面460c−2との垂直度を確保することでポンプ410の品質向上を図ることが可能となっている。
【0103】
図23に示すように、羽根車部460dは、回転子部460aの反対側の面の略中央部にリング状の摺動部組付け部を備える。リング状の摺動部組付け部には、複数の切欠き460d−1が周方向に略等間隔に形成されている。
【0104】
図24に示すように、羽根車部460dは、回転子部460a側の面に、複数(図24では六個)の円弧状の羽根460d−2が周方向に略等間隔に形成されている。
【0105】
次に、図27〜図30により、変形例1の羽根車560bについて説明する。変形例1の羽根車560bは、略ドーナツ状の摺動部560c(図29、図30参照)を羽根車560bの成形金型にインサートして、PPSなどの熱可塑性樹脂で一体成形して製作される。
【0106】
摺動部560cは、スラスト軸受471との摺動面560c−2に、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの熱可塑性樹脂にカーボン繊維などを添加し、耐磨耗性、耐摩擦性を向上した熱可塑性樹脂、もしくはアルミナなどのセラミックを用いて製作される。
【0107】
この場合、インサート成形される略ドーナツ状の摺動部560cは、軸方向の所定の位置にフランジ部560c−3(図29、図30参照)を備え、一体成形時に羽根車部560dを形成する熱可塑性樹脂がフランジ部560c−3を把持し、摺動部560cの抜け止めとなることで、ポンプ410の品質向上を図ることが可能となる。
【0108】
図31乃至図34を参照しながら、変形例2の羽根車660bについて説明する。変形例2の羽根車660bは、羽根車部660dの流体の吸入口である内径側に略角形状の切欠き660d−1を複数(図33では六個)備える。
【0109】
羽根車部660dに、スラスト軸受471との摺動部660cを、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などにカーボン繊維などを添加し、耐磨耗性、耐摩擦性を向上した熱可塑性樹脂を用いて一体成形する。
【0110】
このとき、羽根車部660dの流体の吸入口である内径側に略角形状の切欠き660d−1を複数備えるので、摺動部660cの周り止め、且つ抜け止めとなることでポンプ410の品質向上を図ることが可能となる。
【0111】
図14、図15を参照しながら軸470について説明する。図14、図15に示すように、軸470は、直径の異なる二つの円柱部からなる。直径の細い円柱部が、椀状隔壁部品490の軸支持部494に、例えば、圧入により固定される。
【0112】
軸470の直径の太い円柱部は、自由で片持ち梁の状態である。軸470の直径の太い円柱部に、回転子460がスリーブ軸受466の開口部466a(図17参照)から摺動自在に挿入される。
【0113】
回転子460は、椀状隔壁部品490の軸支持部494に固定された軸470を中心として回転する。回転子460は、既に述べたように、スリーブ軸受466が軸470に摺動自在に支持されるとともに、摺動部460cがスラスト軸受471に当接しながらケーシング441の環状の溝部448で支持される。
【0114】
図35により、変形例の軸570について説明する。変形例の軸570は、椀状隔壁部品490成形時に熱可塑性樹脂で一体化される。軸570には、椀状隔壁部品490成形時に熱可塑性樹脂で把持される鍔部570aを備える。
【0115】
Oリング480は、実施の形態1のOリング80と同じである。Oリング480は、後述する椀状隔壁部品490に備える環状のOリング収納溝490cに設置される。椀状隔壁部品490にケーシング441を組付け、Oリング480を所定の距離押しつぶすことで、椀状隔壁部品490とケーシング441とのシールを行う。
【0116】
図14、図15を参照しながら、椀状隔壁部品490について説明する。椀状隔壁部品490は、実施の形態1の椀状隔壁部品90と同じである。
【0117】
椀状隔壁部品490は、PPE(ポリフェニレンエーテル)などの熱可塑性樹脂を用いて成形される。椀状隔壁部品490は、モールド固定子450との嵌合部である椀状隔壁部490aと、鍔部490bとを備える。
【0118】
椀状隔壁部490aは、円形の底部と円筒形の隔壁とで構成される。円形の底部の内面の略中央部に、軸の一端が挿入される軸支持部494が立設している。
【0119】
椀状隔壁部490aの外周面に軸方向に延びるリブ491が形成されている。リブ491は、椀状隔壁部490aの根元(鍔部490bとの連結部)から軸方向に所定長さ形成されている。そして、リブ491の径方向の寸法は、椀状隔壁部490aの根元側が大きく、先に行くに従って小さくなるテーパ形状である。
【0120】
鍔部490bには、鍔部490bを補強する補強リブ(図示せず)が径方向に放射状に6個形成されている。その中の任意の一つの補強リブに椀状隔壁部490aのリブ491が接続している。これにより、椀状隔壁部品490の成形金型の製作が容易になる。
【0121】
また、鍔部490bには、モールド固定子450の椀状隔壁部品の鍔部設置面に形成される環状の第3の溝(図示せず)に納まる環状リブ(図示せず)を備える。
【0122】
また、鍔部490bには、タッピングネジ560が通る孔490d(ネジ穴)が4箇所に形成されている。
【0123】
さらに、鍔部490bのケーシング441側の面に、Oリング480を収納する環状のOリング収納溝490cが形成されている。
【0124】
ポンプ410は、先ず椀状隔壁部品490に固定もしくは一体成形された軸470に、回転子460を挿入する。椀状隔壁部品490の鍔部490bのOリング収納溝490cにOリング480を設置する。そして、ケーシング441を椀状隔壁部品90に組付け、ポンプ部440を組み立てる。さらに、ポンプ部440に備えるネジ穴445a、孔490dを介して、ポンプ部440とモールド固定子450とをタッピングネジ560で組付けて、ポンプ410が組み立られる。
【0125】
椀状隔壁部品490に固定もしくは一体成形された軸470を中心に回転する回転子460は、回転子部460aに組付けられる摺動部460cがケーシング441内側に備える環状の溝部448、または、PPSなどにカーボン繊維などを添加した熱可塑性樹脂、あるいは、アルミナセラミックで製作されたスラスト軸受471に摺接するようにしている。
【0126】
そのように構成することにより、回転子460の安定した回転動作を確保しながら、羽根車460bとケーシング441との隙間の還流経路(図12参照)を遮断し、ポンプ室内部の循環損失を低減し、ポンプ410の高効率化が可能となる。
【0127】
また、回転子部460aの羽根車設置面460a−4の略中央部に形成されている略円錐状の突起460a−1により、羽根車吸入部付近(略円錐状の突起460a−1)の流れをスムーズに羽根車460bの半径方向に曲げるようにしているので(図15参照)、羽根車460bの吸入部付近の流れの衝突や剥離などによる流体損失を低減し、ポンプ410の高効率化が可能となる。
【0128】
実施の形態1と同様に、モールド固定子450とポンプ部440とを組付ける際に、モールド固定子450の内周部に軸方向に形成されている第1の溝451と、椀状隔壁部品490の椀状隔壁部490aの外周面に軸方向に延びるリブ491とが嵌合することにより、回転方向(周方向)の位置決めがなされる(図15参照)。
【0129】
モールド固定子450の内周と、椀状隔壁部品490の椀状隔壁部490aの外周との隙間はできるだけ小さくして(例えば、0.02〜0.06mm程度)、モールド固定子450と回転子460との同軸を確保しつつ、且つ、モールド固定子450の内周部に軸方向に形成される空気の逃げ道となる第1の溝451を設けて、モールド固定子450の内周への椀状隔壁部品490の挿入を容易としている。
【0130】
さらに、椀状隔壁部490aに、椀状隔壁部490aの根元(鍔部490bとの連結部)から軸方向に所定長さリブ491を形成する。リブ491の径方向の寸法を、椀状隔壁部490aの根元側が大きく、先に行くに従って小さくなるテーパ形状とし、リブ491がモールド固定子450の第1の溝451に所定の径方向の隙間(1mm程度)ができる状態で嵌合するようにしている。それにより、モールド固定子450と椀状隔壁部品490との位置決めができるとともに、モールド固定子450と椀状隔壁部品490との組付けを容易に行うことが可能となる。
【0131】
図36によりポンプ410の製造工程を説明する。
【0132】
(1)ステップ1:固定子447(図示せず、固定子47と同じ)を製造する。先ず、厚さが0.1〜0.7mm程度の電磁鋼板が帯状に打ち抜かれ、かしめ、溶接、接着等で積層され、薄肉連結部で連結された帯状の固定子鉄心454(図示せず、固定子鉄心54と同じ)を製作する。ティースには、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂を用いる絶縁部456(図示せず、絶縁部56と同じ)が施される。絶縁部456が施されたティースに集中巻のコイル457(図示せず、コイル57と同じ)が巻回される。例えば、6個の集中巻のコイル457を接続して、三相のシングルY結線の巻線を形成する。三相のシングルY結線であるので、絶縁部456の結線側には、各相(U相、V相、W相)のコイル457が接続される端子459(図示せず、端子59に同じ、電源が供給される電源端子及び中性点端子)が組付けられる。併せて、基板458(図示せず、基板58と同じ)を製造する。基板458は、基板押え部品により絶縁部456との間に挟持される。基板458には、電動機(ブラシレスDCモータ)を駆動するIC458a(図示せず、IC58aと同じ)、回転子460の位置を検出するホール素子458b(図示せず、ホール素子58bと同じ)等が実装されている。また、基板458には、その外周縁部付近の切り欠き部にリード線452(図示せず、リード線52と同じ)を口出しするリード線口出し部品461(図示せず、リード線口出し部品61と同じ)が、取り付けられる。併せて、回転子部460aを製造する。回転子部460aは、フェライト等の磁性粉末と樹脂を混練したペレットを成形したリング状(円筒状)の樹脂マグネット468と、樹脂マグネット468の内側に設けられる円筒形のスリーブ軸受466(例えば、カーボン製)とが、例えばPPE(ポリフェニレンエーテル)等の熱可塑性樹脂467で一体化される。さらに、併せて、羽根車460bを成形する。羽根車460bは、PPE(ポリフェニレンエーテル)などの熱可塑性樹脂を用いて成形される。
(2)ステップ2:基板458を固定子447に組付ける。リード線口出し部品461が取り付けられた基板458が基板押え部品により絶縁部456に固定される。併せて、回転子部460aに羽根車460bを超音波溶着等により組付ける。軸470を椀状隔壁部品490の軸支持部494に圧入する。併せて、椀状隔壁部品90を成形する。併せて、スラスト軸受471を製造する。軸470は、SUSで製造される。スラスト軸受471は、セラミックで製造される。
(3)ステップ3:固定子447の端子459(電源が供給される電源端子及び中性点端子)と基板458とを半田付けする。固定子447に、下穴部品481(図示せず、下穴部品81に同じ)を組付けることで固定子組立449(図示せず、固定子組立49に同じ)が完成する。椀状隔壁部品490の軸支持部494に軸470を圧入するとともに、回転子460等を組付ける。さらに、併せて、ケーシング441を成形する。ケーシング441は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの熱可塑性樹脂を用いて成形される。
(4)ステップ4:固定子組立449をモールド成形して、モールド固定子450を製造する。併せて、椀状隔壁部品490にケーシング441を固定してポンプ部440を組立てる。さらに、併せて、タッピングネジ560を製造する。
(5)ステップ5:ポンプ410の組立を行う。モールド固定子450にポンプ部440を組付けタッピングネジ560で固定する。モールド固定子450とポンプ部440とを組付ける際、モールド固定子450の内径に備える第1の溝451と、椀状隔壁部品490のモールド固定子450の内径との椀状隔壁部490aに備えるリブ491とが嵌合うことにより、回転方向に対する位置決めとなる。
【符号の説明】
【0133】
1 圧縮機、2 冷媒−水熱交換器、3 減圧装置、4 蒸発器、5 圧力検出装置、6 ファンモータ、7 ファン、8 沸上げ温度検出手段、9 給水温度検出手段、10 ポンプ、11 操作部、12 タンクユニット制御部、13 ヒートポンプユニット制御部、14 温水タンク、15 冷媒配管、16 温水循環配管、17 外気温度検出手段、31 風呂水追い焚き熱交換器、32 風呂水循環装置、33 混合弁、34 タンク内水温検出装置、35 追い焚き後水温検出装置、36 混合後水温検出装置、37 風呂水追い焚き配管、40 ポンプ部、41 ケーシング、42 吸入口、43 吐出口、44 ボス部、44a ネジ穴、45 取付脚、45a 孔、46 軸支持部、47 固定子、48 リブ、49 固定子組立、50 モールド固定子、51 第1の溝、52 リード線、53 モールド樹脂、54 固定子鉄心、56 絶縁部、57 コイル、58 基板、58a IC、59 端子、60 回転子、60a 回転子部、60b 羽根車、61 リード線口出し部品、63 ポンプ部設置面、64 第2の溝、65 第3の溝、66 スリーブ軸受、67 樹脂、68 樹脂マグネット、70 軸、71a 第1のスラスト軸受、71b 第2のスラスト軸受、80 Oリング、81 下穴部品、82 金型押え部、83 突起、84 下穴、85 足部、85a 突起、86 爪、87 連結部、90 椀状隔壁部品、90a 椀状隔壁部、90b 鍔部、90c Oリング収納溝、90d 孔、91 リブ、93 環状リブ、94 軸支持部、95 基板押え部品、100 ヒートポンプユニット、160 タッピングネジ、200 タンクユニット、300 ヒートポンプ式給湯装置、410 ポンプ、440 ポンプ部、441 ケーシング、442 吸入口、443 吐出口、444 ボス部、444a ネジ穴、445 取付脚、445a ネジ穴、447 固定子、448 溝部、449 固定子組立、450 モールド固定子、451 第1の溝、454 固定子鉄心、456 絶縁部、457 コイル、458 基板、458a IC、458b ホール素子、459 端子、460 回転子、460a 回転子部、460a−1 突起、460a−2 つりあい穴、460a−3 孔、460a−4 羽根車設置面、460b 羽根車、460c 摺動部、460d−1 切欠き、460c−2 摺動面、460d 羽根車部、460d−1 切欠き、460d−2 羽根、466 スリーブ軸受、466a 開口部、467 熱可塑性樹脂、468 樹脂マグネット、470 軸、471 スラスト軸受、480 Oリング、481 下穴部品、490 椀状隔壁部品、490a 椀状隔壁部、490b 鍔部、490c Oリング収納溝、490d 孔、494 軸支持部、491 リブ、560 タッピングネジ、560b 羽根車、560c 摺動部、560c−2 摺動面、560c−3 フランジ部、560d 羽根車部、570 軸、570a 鍔部、660b 羽根車、660c 摺動部、660d 羽根車部、660d−1 切欠き。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心の絶縁部が施された複数のティースに巻線してコイルが形成され、電子部品が実装されるとともにリード線を口出しするリード線口出し部品が取り付けられた基板を組付けた固定子組立をモールド樹脂で成形してなるモールド固定子と、
流体の吸入口及び吐出口と、前記吸入口の内側周囲に形成される環状の溝部とを有するケーシングと、回転子部と羽根車とを備える回転子を内部に収納し、前記回転子が摺動自在に嵌合する椀状隔壁部と、鍔部とを有する椀状隔壁部品とを組付けてなるポンプ部と、
前記椀状隔壁部の軸支持部に、一方の端部が固定される軸と、を備え、
前記回転子部は、
該回転子部の中央部に設けられ、前記軸の他方の端部に摺動自在に嵌合するスリーブ軸受と、
該回転子部の前記羽根車側の軸方向端部に形成される羽根車設置面の中央部に設けられ、前記吸入口から流入する前記流体を前記羽根車に案内する略円錐状の突起と、を有し、
前記羽根車は、前記ケーシングの前記環状の溝部に収納される略ドーナツ状の摺動部を具備することを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記ケーシングの前記環状の溝部に、略ドーナツ形状のスラスト軸受を備えることを特徴とする請求項1記載のポンプ。
【請求項3】
前記スラスト軸受は、PPSなどにカーボン繊維などを添加した熱可塑性樹脂、あるいは、アルミナセラミックで製作されることを特徴とする請求項2記載のポンプ。
【請求項4】
前記羽根車は、羽根車部と摺動部と、を備え、
前記羽根車部は、熱可塑性樹脂を射出成形して製作されるとともに、前記スラスト軸受と摺接する側の端部に角形状の切り欠きを複数有し、
前記摺動部は、PPSなどにカーボン繊維などを添加した熱可塑性樹脂を射出成形して製作され、前記ケーシングの前記環状の溝部、もしくは前記スラスト軸受に摺接する摺動面と、前記羽根車部側の端面に前記羽根車部との接合時に当該摺動部の回り止めとなる突起を放射状に複数備え、
前記羽根車部の前記切欠きに、前記摺動部の前記突起を嵌め込み接合されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のポンプ。
【請求項5】
前記摺動部の前記突起または接合面の少なくともいずれかの一方は、超音波溶着リブを備えることを特徴とする請求項4記載のポンプ。
【請求項6】
前記羽根車部の前記切欠きに前記摺動部の前記突起を嵌め込み、超音波溶着により接合されることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のポンプ。
【請求項7】
前記羽根車は、羽根車部と摺動部と、を備え、
前記羽根車は、PPSなどにカーボン繊維などを添加した熱可塑性樹脂を射出成形して製作される略ドーナツ状の前記摺動部を成形金型にインサートし、熱可塑性樹脂で一体成形して製作され、
前記摺動部品は、軸方向の所定の位置にフランジ部を備え、一体成形時に前記羽根車部を形成する熱可塑性樹脂が前記フランジ部を把持することで、当該摺動部の抜け止めとなることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項8】
前記摺動部は、アルミナセラミックにより製作されることを特徴とする請求項7に記載のポンプ。
【請求項9】
前記羽根車は、羽根車部と摺動部と、を備え、
前記羽根車は、熱可塑性樹脂を射出成形して製作される前記羽根車部を成形金型にインサートし、PPSなどにカーボン繊維などを添加した熱可塑性樹脂を一体成形することにより前記摺動部が形成され、
前記羽根車部の前記吸入口の内径側に角形状の切欠きを放射状に複数備え、前記摺動部の一体成形時に、前記切り欠きに前記摺動部を形成する前記熱可塑性樹脂が流入することで、前記摺動部の周り止め、かつ、抜け止めとなることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項10】
前記回転子部は、フェライト等の磁性粉末と樹脂を混練したペレットを成形したリング状の樹脂マグネットと、前記樹脂マグネットの内側に設けられる円筒形のスリーブ軸受とが熱可塑性樹脂で一体化されてなり、
前記スリーブ軸受は、前記熱可塑性樹脂の射出成形時に、当該スリーブ軸受の一方の端面と、当該スリーブ軸受の他方の端面とを前記回転子部の成形金型で狭持し、前記スリーブ軸受の軸方向の位置決めを行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のポンプ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかのポンプを搭載したことを特徴とするヒートポンプ式給湯装置。
【請求項12】
固定子鉄心のティースに絶縁部を施し、前記絶縁部が施された前記ティースにコイルを巻回して固定子を製造し、電子部品が実装されるとともにリード線を口出しするリード線口出し部品が取り付けられる基板を製造し、樹脂マグネットと前記樹脂マグネットの内側に設けられるスリーブ軸受とが樹脂で一体化して回転子部を製造し、さらに羽根車を成形する第1の工程と、
前記基板を前記固定子に組付け、前記回転子部に前記羽根車を超音波溶着等により組付けるとともに、椀状隔壁部品を成形し、さらに軸とスラスト軸受を製造する第2の工程と、
前記固定子の端子と基板とを半田付けし、前記椀状隔壁部品に前記軸と前記回転子とを組付け、さらにケーシングを成形する第3の工程と、
前記固定子をモールド成形してモールド固定子を製造し、前記椀状隔壁部品に前記ケーシングを固定してポンプ部を組立て、さらにタッピングネジを製造する第4の工程と、
前記モールド固定子に前記ポンプ部を組付け、前記タッピングネジで固定してポンプの組立を行う第5の工程とを備えたことを特徴とするポンプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2011−111953(P2011−111953A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267940(P2009−267940)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】