説明

ポンプ機場

【課題】機場を大規模化することなく、かつ各ポンプの排水運転時間を均一化しつつ、吸込水槽のサージング現象の防止ないし緩和と電源設備の負荷軽減とを実現する。
【解決手段】吸込水槽2に設置された立軸ポンプ3A〜3Cの羽根車12の高さは同一に設定されている。制御装置22は水位計21で検出される吸込水槽2内の水位の上昇におうじて、立軸ポンプ3A〜3Cの回転数を待機回転数Rwから定格回転数Rrに順次切り替える。待機回転数Rwでは、ケーシング5内に水柱24が形成される。定格回転数Rrは待機回転数Rwよりも高回転数であり、ケーシング5内に吸い込まれた吸込水槽2内の水が吐出管14に吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの吸込水槽に複数の立軸ポンプを備えるポンプ機場に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の先行待機型の立軸ポンプを羽根車までの高さが段階的に異なるように一つの吸込水槽に配置したポンプ機場が開示されている。複数の立軸ポンプは一斉に排水を開始するのではなく、吸込水槽内の水位上昇に伴い、羽根車の配置高さが低いものから順次排水を開始する。その結果、急激な排水開始に起因する吸込水槽のサージング現象を防止ないし緩和でき、立軸ポンプを駆動する電動機に電力を供給する電源設備の負荷も軽減できる。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されたポンプ機場には以下の問題がある。
【0004】
まず、複数の立軸ポンプの羽根車の高さ位置を異ならせる必要があるので、特に高さ方向に機場が大規模化する。
【0005】
また、複数の立軸ポンプ間で実際に排水運転を行う時間に偏りがある。具体的には、羽根車の高さが最も低く設定されている立軸ポンプは頻繁に排水運転を行うが、羽根車の高さが最も高く設定されている立軸ポンプは排水運転を行う頻度が低い。そのため、立軸ポンプが排水運転を行う時間は、羽根車の高さが低いもの程長く(羽根車の高さが高いもの程短く)なる。この排水運転時間の偏りのため、羽根車の高さが低い立軸ポンプでは、羽根車の高さが高い低いものと比較して、主軸を支持する軸受や回転する摺動部品の摩耗の進行が著しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−94834号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、一つの吸込水槽に複数の立軸ポンプを備えるポンプ機場において、機場を大規模化することなく、かつ立軸ポンプ間で排水運転時間を均一化しつつ、吸込水槽のサージング現象の防止ないし緩和と電源設備の負荷軽減とを実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、吸込口を設けた下端側に羽根車が収容されて上端側に吐出側管路が接続されたケーシングと、前記ケーシング内に配置されて前記羽根車が固定された主軸と、前記主軸を回転させる少なくとも電動機を含む駆動手段とをそれぞれ備える複数台の立軸ポンプを、一つの吸込水槽に設置したポンプ機場であって、前記複数台の立軸ポンプの羽根車の高さは同一に設定されており、前記吸込水槽内の水位を検出する水位検出手段と、前記駆動手段により個々の前記立軸ポンプの回転数を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記水位検出手段で検出される水位の上昇に伴って、前記複数の立軸ポンプの回転数を、前記吸込水槽から吸い込んだ水でケーシング内に水柱が形成される回転数である待機回転数から、前記待機回転数よりも高い回転数であって前記ケーシング内に吸い込んだ前記吸込水槽内の水が前記吐出側管路に吐出される回転数である定格回転数へ順次切り換える、ポンプ機場を提供する。
【0009】
制御手段は、水位検出手段で検出される水位の上昇に伴って、複数の立軸ポンプの回転数を待機回転数(ケーシング内に水柱が形成される)から定格回転数(吸い込んだ水は吐出側管路に吐出される)に順次切り換える。つまり、複数の立軸ポンプは一斉に排水を開始するのではなく、吸込水槽内の水位上昇に伴い、待機回転数から定格回転数に切り換えられたものから順次排水を開始する。その結果、急激な排水開始に起因する吸込水槽のサージ現象を防止ないし緩和でき、個々の立軸ポンプの駆動手段が備える電動機に電力を供給する電源設備の負荷も軽減できる。
【0010】
複数の立軸ポンプの羽根車は同一高さに設定されている。従って、特に高さ方向の機場の規模を低減できる。
【0011】
回転数を待機回転数からそれよりも高回転の定格回転数に順次切り換えることで、羽根車が同一高さに設定された複数の立軸ポンプが吸込水槽内の水位上昇に応じて順次排水を開始する。つまり、羽根車の高さが立軸ポンプ間で異なることによってではなく、回転数を高回転に切り換えるタイミングが立軸ポンプ間で異なることにより、複数の立軸ポンプが順次排水を開始する。従って、複数の立軸ポンプが排水を開始する順序は、制御手段が回転数を待機回転数から定格回転数に切り換える順序を変えるだけで変更できる。例えば、第1から第3の3台の立軸ポンプがある場合、まず待機回転数から定格回転数に切り換える順序(排水運転を開始する順序)を第1、第2、第3の順とし、一定期間(例えば数か月や数年)が経過した後にこの順序を第2、第3、第1の順に変更し、さらに一定期間が経過した後に第3、第2、第1の順に変更し、以降、一定期間が経過する度に同様に待機回転数から定格回転数に切り換える順序を変更することができる。このように待機回転数から定格回転数に切り換える順序(排水運転を開始する順序)の入れ換えないし変更を実行することで、複数の立軸ポンプ間で排水運転時間の偏りをなくして均一化できる。立軸ポンプ間で排水運転時間の偏りをなくすことにより、特定の立軸ポンプで軸受等の摩耗の進行が著しくなって軸受等の交換の頻度が高くなること(いわゆる片減り)を防止できる。
【0012】
前記立軸ポンプは、前記ケーシングの前記羽根車よりも上方位置に、前記待機回転数での運転中に前記水柱を形成する水を前記吸込水槽に噴出するための噴出孔を備える事が好ましい。
【0013】
待機回転数での運転中、ケーシング内の水柱から噴出孔を通って吸込水槽に水が噴出されるので、水柱を形成する水が入れ換えられる。その結果、待機回転数での運転中に主軸と軸受等の間に発生する摩擦熱による過熱を防止できる。また、吸込水槽の底部にし渣、砂等の異物が堆積していると噴出孔から噴出される水によって撹拌されるので、吸込水槽の底部への異物の堆積を防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポンプ機場では、一つの吸込水槽に設置された複数の立軸ポンプの羽根車の高さを同一とし、吸込水槽内の水位上昇に応じて回転数を待機回転数(ケーシング内に水柱が形成される)から定格回転数(吸い込んだ水は吐出側管路に吐出される)に切り換えることで、複数の立軸ポンプに順次排水を開始させる。そのため、機場を大規模化することなく、かつ各ポンプの排水運転時間を均一化しつつ、吸込水槽のサージング現象の防止ないし緩和と電源設備の負荷軽減とを実現できる。また、ケーシングに噴出孔を設けることで、過熱と吸込水槽の底部への異物の堆積とを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るポンプ機場を示す模式的な断面図。
【図2】1台の立軸ポンプを示す模式的な断面図。
【図3】代案の立軸ポンプの一部を示す模式的な断面図。
【図4A】2台の立軸ポンプが通常運転状態であるときのポンプ機場を示す模式的な断面図。
【図4B】3台の立軸ポンプが通常運転状態であるときのポンプ機場を示す模式的な断面図。
【図5】通常運転状態及び待機運転状態における流量と揚程、効率、及び軸動力の関係を示す模式的な線図。
【図6】実施形態における吸込水槽内の水位と各立軸ポンプの運転状態の変化の一例を示す模式的な線図。
【図7】代案における吸込水槽内の水位と各立軸ポンプの運転状態の変化の一例を示す模式的な線図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係るポンプ機場1の吸込水槽2には3台の立軸ポンプ3A,3B,3Cが設置されている。
【0018】
3台の立軸ポンプ3A〜3Cは同一構造であるので、図2をさらに参照して立軸ポンプ3Aについて説明する。
【0019】
立軸ポンプ3Aは、概ね鉛直方向に延びる直管状のケーシング5を備える。ケーシング5は、ポンプ機場1の床構造1aに差し込まれた状態で固定されている。ケーシング5の下端側の吸込ベルマウス6が備える吸込口6aは、吸込水槽2の底部2aに対して例えば吸込口6aの直径の1.3倍程度の距離を隔てて対向している。本実施形態における吸込ベルマウス6は、上部吸込ベル7とその下方に間隔を隔てて配置された下部吸込ベル8を備える二重構造である。この二重構造の吸込ベルマウス6の構造及び機能の詳細は、例えば特開2004−176567号公報に記載されている。下部吸込ベル8の内側は複数の吸気管9の下端側が連通している。これらの吸気管9の上端側は想定される吸込水槽2の最高水位よりも上方で大気に連通している。吸込ベルマウス6の上側のベーンケーシング11には羽根車12が収容されている。また、ケーシング5には、羽根車12(ベーンケーシング11)よりも上方位置に、斜め下向きの噴出孔5aが複数個形成されている。ケーシング5の上端側の吐出ベント13が備える吐出口13aには、吐出管14が接続されている。下端側に羽根車12が固定された主軸15はケーシング5内で鉛直方向に延びるように配置され、軸受16A,16Bにより回転可能に支持されている。吐出ベント13からケーシング5の外部に突出する主軸15の上端側は、図示しない継手やクラッチを介して電動機17に連結されている。
【0020】
前述のように同一構造である3台の立軸ポンプ3A〜3Cの羽根車12は、吸込水槽2の底部2aからの高さが同一に設定されている。そのため、これらの立軸ポンプ3A〜3Cの吐出ベント13の上端のポンプ機場1の床構造1aからの高さも同一である。
【0021】
吸込水槽2には、図示しない流入側管路から流入して貯留される雨水等の水の水位を検出するための水位計21が設置されている。水位計21が検出する吸込水槽2内の水位は制御装置22に出力される。立軸ポンプ3A〜3Cの制御に必要な範囲及び精度で吸込水槽2内の水位を検出可能で、かつ検出した水位を示す信号を制御装置22に出力可能であれば、水位計21の具体的な構成は特に限定されない。
【0022】
制御装置22は、水位計21から入力される水位に応じて、個々の立軸ポンプ3A〜3Cの電動機17の回転数を制御し、それによって主軸15の回転数を立軸ポンプ3A〜3C毎に制御する。電動機17の回転数の制御方式は特に限定されないが、電動機17がかご形誘導電動機であれば極数変換方式、電源周波数制御方式(インバータ方式)、パウダクラッチモートル等を採用できる。また、電動機17が巻線形誘導電動機であれば、静止セルビウス装置等を採用できる。さらに、電動機17が同期電動機であれば、サイリスタモータ(交流無整流電動機)等を採用できる。図3に概念的に示すように、電動機17と主軸15の間に変速装置23を介在させ、この変速装置23の変速比を制御装置22が制御することで立軸ポンプ3A〜3Cの回転数を制御してもよい。
【0023】
制御装置22は、立軸ポンプ3A〜3Cを停止状態(回転数ゼロ)以外に、待機回転数Rwと、この待機回転数Rwよりも高回転数である定格回転数Rrとのいずれかの回転数に制御できる。待機回転数Rwは、吸込水槽2内の水位が十分高い場合(羽根車12よりも上方)であっても、吸込水槽2からケーシング5内の吸い込んだ水を吐出管14へ吐出せずにケーシング5内に水柱24が形成される揚程となるように設定している。定格回転数Rrは、吸込水槽2内の水位が十分高い(羽根車12よりも上方)に位置にあれば、ケーシング5内の吸い込んだ水を吐出管14へ吐出する揚程(最高効率点を含む)で立軸ポンプ3A〜3Cが運転されるように設定している。以下の説明では、必要に応じて待機回転数Rwでの立軸ポンプ3A〜3Cの運転を待機運転といい、定格回転数Rrでの立軸ポンプ3A〜3Cの運転を排水運転という。
【0024】
図5は、立軸ポンプ3A〜3Cの流量−揚程曲線(H−Q曲線)を、効率η及び軸動力Lと共に示し、実線は定格回転数Rrの場合で破線は待機回転数Rwの場合である。また、図5において点P1は定格回転数Rrでの意図している運転状態(最高効率点)を示し、点P2は待機回転数Rwでの意図している運転状態(前述のようにケーシング5内に水柱が形成される)を示す。図5の横軸は最適流量Qoptに対する流量Qの割合Q/Qoptで、縦軸は最適揚程Hoptに対する揚程Hの割合H/Hoptである。
【0025】
次に、本実施形態のポンプ機場1の動作を説明する。制御装置22は水位計21により検出される水位に応じて立軸ポンプ3A〜3Cの停止/起動と回転数を切り換える。流入側管路からの雨水等の流入により、吸込水槽2内の水位が予め設定された水位WL1(立軸ポンプ3A〜3Cの吸込口6aより下方)まで上昇すると、それまで停止状態であってすべての立軸ポンプ3A〜3Cが待機回転数Rwでの運転(待機運転)に移行する。図6を参照すると、以下の説明では、吸込水槽2内の水位が、水位WL1から想定される最高水位又はそれに近い水位である水位WL7まで上昇し(時刻t1〜t5)、この水位WL7をある時間維持し(時刻t5〜t6)、その後水位WL7から水位WL1まで低下する(時刻t6〜t9)場合を想定する。
【0026】
吸込水槽2内の水位が予め定められた水位WL4(立軸ポンプ3A〜3Cの羽根車12の上端よりも上方)まで上昇すると、立軸ポンプ3A〜3Cのうち1台の立軸ポンプ3Aのみ待機回転数Rwから定格回転数Rrに切り換えられる(図6の時刻t2)。この状態では、図1に示すように、定格回転数Rrである立軸ポンプ3Aは吸込口6aからケーシング5内に吸い込んだ水を吐出管14へ吐出するが(排水運転)、待機回転数Rwである残りの2台の立軸ポンプ3B,3Cはケーシング5内の吸い込んだ水を吐出管14へ吐出せず、これらの立軸ポンプ3B,3Cのケーシング5内に水柱24が形成される。水柱24が形成された立軸ポンプ3B,3Cのケーシング5内の水位WLiは図5の点P2の揚程に相当する。
【0027】
次に、吸込水槽2内の水位が水位WL4から予め定められた水位WL5まで上昇すると、それまでは待機回転数Rwであった2台の立軸ポンプ3B,3Cのうち、1台の立軸ポンプ3Bのみが定格回転数Rrに切り換えられる(図6の時刻t3)。つまり、吸込水槽2内の水位が水位WL4まで上昇すると、図4Aに示すように、2台の立軸ポンプ3A,3Bが排水運転を行い、残りの1台の立軸ポンプ3Cのみがケーシング5内に水柱24が形成された待機運転となる。
【0028】
その後、吸込水槽2内の水位が水位WL5から予め定められた水位WL6まで上昇すると、それまでは待機回転数Rwであった残り1台の立軸ポンプ3Cも定格回転数Rrに切り換えられる(図6の時刻t4)。つまり、吸込水槽2内の水位が水位WL4まで上昇すると、図4Bに示すように、3台の立軸ポンプ3A〜3Cがすべて排水運転を行う。
【0029】
このように、制御装置22は、水位計21で検出される吸込水槽2内の水位の上昇に伴って、3台の立軸ポンプ3A〜3Cの回転数を待機回転数Rw(待機運転)から定格回転数Rr(排水運転)に順次切り換える。つまり、3台の立軸ポンプ3A〜3Cは一斉に排水を開始するのではなく、吸込水槽2内の水位上昇に伴い、立軸ポンプ3A→立軸ポンプ3B→立軸ポンプ3Cの順で待機回転数Rwから定格回転数Rrに切り換えられて順次排水を開始する。その結果、急激な排水開始に起因する吸込水槽2のサージ現象を防止ないし緩和でき、個々の立軸ポンプ3A〜3Cの電動機17に電力を供給する電源設備の負荷も軽減できる。
【0030】
吸込水槽2内の水位が水位WL7まで上昇し(図6の時刻t4〜t6)、その後に水位WL6まで低下すると、それまでは定格回転数Rrであった3台の立軸ポンプ3A〜3Cのうち、1台の立軸ポンプ3C(最後に待機運転から排水運転に移行)のみが待機回転数Rwに切り換える(図6の時刻t7)。その結果、図4Bに示すように、2台の立軸ポンプ3A,3Bが排水運転を行い、残りの1台の立軸ポンプ3Cのみがケーシング5内に水柱24が形成された待機運転となる。
【0031】
次に、吸込水槽2内の水位が水位WL5まで低下すると、それまでは定格回転数Rrであった2台の立軸ポンプ3A,3Bのうち、1台の立軸ポンプ3B(2番目に待機運転から排水運転に移行)が待機回転数Rwに切り換える(図6の時刻t8)。その結果、図1に示すように、1台の立軸ポンプ3Aのみが排水運転を行い、残りの2台の立軸ポンプ3B,3Cはケーシング5内に水柱24が形成された待機運転状態となる。
【0032】
その後、吸込水槽2内の水位が水位WL1まで低下すると、それまでは定格回転数Rrであった残り1台の立軸ポンプ3Aも待機回転数Rwに切り換えられる(図6の時刻t9)。つまり、吸込水槽2内の水位が水位WL1まで低下すると、3台の立軸ポンプ3A〜3Cがすべて待機運転となる。
【0033】
本実施形態のポンプ機場1は、前述した吸込水槽2のサージ現象を防止ないし緩和と、電動機17に電力を供給する電源設備の負荷の軽減に加え、以下の利点ないし特徴を有する。
【0034】
まず、3台の立軸ポンプ3A〜3Cの羽根車12は、吸込水槽2の底部2aからの高さが同一に設定され、吐出ベント13の上端のポンプ機場1の床構造1aからの高さも同一である。そのため、特許文献1に記載のもののように一つの吸込水槽に設置された立軸ポンプ間で羽根車の高さ位置を異ならせる場合と比較して、特に機場の高さ方向の規模を低減できる。
【0035】
待機回転数Rwから定格回転数Rrに順次切り換えることで、吸込水槽2内の水位上昇に応じて羽根車12が同一高さに設定された立軸ポンプ3A〜3Cに順次排水を開始させている。つまり、羽根車12の高さが立軸ポンプ3A〜3C間で異なることによってではなく、回転数を定格回転数Rrに切り換えるタイミングが立軸ポンプ3A〜3C間で異なることにより、3台の立軸ポンプ3A〜3Cが順次排水を開始する。従って、立軸ポンプ3A〜3Cが排水を開始する順序は、制御装置22が回転数を待機回転数Rwから定格回転数Rrに切り換える順序を変えるだけで変更できる。
【0036】
例えば、前述のように待機回転数Rwから定格回転数Rrに切り換える順序(排水運転を開始する順序)を立軸ポンプ3A→立軸ポンプ3B→立軸ポンプ3Cの順(パターン1)とし、一定期間(例えば数か月や数年)が経過した後にこの順序を立軸ポンプ3B→立軸ポンプ3C→立軸ポンプ3Aの順(パターン2)に変更し、さらに一定期間が経過した後に立軸ポンプ3C→立軸ポンプ3A→立軸ポンプ3B(パターン3)の順に変更し、さらにまた一定期間が経過した後、立軸ポンプ3A→立軸ポンプ3B→立軸ポンプ3Cの順(パターン1)に戻す。そして、以降、一定期間が経過する度にパターン1〜3を繰り返す。このように待機回転数Rwから定格回転数Rrに切り換える順序(排水運転を開始する順序)の入れ換えないし変更を実行することで、立軸ポンプ3A〜3C間で排水運転時間の偏りをなくして均一化できる。立軸ポンプ3A〜3C間で排水運転時間の偏りをなくすことにより、特定の立軸ポンプ3A〜3Cで軸受等の摩耗の進行が著しくなって軸受等の交換の頻度が高くなること(いわゆる片減り)を防止できる。
【0037】
前述のように回転数が待機回転数Rwで待機運転を実行中の立軸ポンプ3A〜3Cのケーシング5内には水柱24が形成される。この待機運転中、ケーシング5内の水柱から噴出孔5aを通って吸込水槽2に水が噴出されるので、水柱24を形成する水が入れ換えられる。その結果、待機回転数Rwでの運転中に主軸15と軸受16A,16B等の間に発生する摩擦熱による過熱を防止できる。また、吸込水槽2の底部2aにし渣、砂等の異物が堆積していると噴出孔5aから噴出される水によって撹拌されるので、吸込水槽の底部への異物の堆積を防止できる。
【0038】
再び図6を参照すると、この図の例ではいったん水位WL7まで上昇した吸込水槽2内の水位は、最終的には水位WL1(立軸ポンプ3A〜3Cの吸込口6aより下方)まで低下し、3台の立軸ポンプ3A〜3Cがすべて定格回転数Rrから待機回転数Rwに戻っている。しかし、吸込水槽2内の水位が水位WL4よりも低下して例えば2台の立軸ポンプ3B,3Cが定格回転数Rrから待機回転数Rwに戻った後、立軸ポンプ3A〜3Cの吸込口6a付近で吸込水槽2内の水位が上下変動を繰り返す場合がある。この場合、まだ定格回転数Wrである最後の1台の立軸ポンプ3Aは、以下のように動作する。
【0039】
吸込水槽2の水位が水位WL4と水位WL3(上部吸込ベル7の開口に対応する高さ)との間では、図5に示す定格運転域(例えばQ/Qoptが約0.6〜1.2の範囲)又は過大流量域(例えばQ/Qopt約1.2以上)での運転となる。定格運転域であれば、下部吸込ベル8の下端開口から水が吸い上げられるが、上部吸込ベル7と下部吸込ベル8の間の環状の流路25からの水の流入はない。過大流量域では、下部吸込ベル8aの下端開口と流路25の両方からケーシング5内に水が吸い上げられる。
【0040】
吸込水槽2の水位が水位WL3まで低下すると、立軸ポンプ3Aの運転状態は、図5に示す部分流領域(例えばQ/Qoptが約0.6未満)となる。この部分流領域では下部吸込ベル8の下端開口から吸い上げられた水の一部が逆流水として流路25から吸込水槽2へ戻る。この流路23を通る逆流水があるために、流路23からケーシング12内へ空気が流入せず、通常運転が維持される。
【0041】
水位WL3から上部吸込ベル7と下部吸込ベル8の高低差に相当する分だけ低い水位WL2まで低下すると、水面付近から下部吸込ベル8の下端開口を介してケーシング5内の羽根車12よりも下方の領域に空気が多量かつ瞬間的に吸い込まれる。その結果、ケーシング5内の羽根車12よりも下方の領域に空気だまりが形成され、その上方に水柱が形成される(エアロック運転)。流路25と吸気管9から空気だまりに空気が流入することでエアロック運転が維持される。
【0042】
吸込水槽2内の水位が水位WL2から水位WL3まで上昇すると流路25が水で閉じられるので流路25を介した空気の流入が停止し、羽根車14による揚水が再開される。
【0043】
本発明は実施形態に限定されず、例えば以下に列挙するような種々の変形が可能である。
【0044】
図6では、吸込水槽2内の水位上昇時に待機回転数Rwから定格回転数Rrに切り換える順序(立軸ポンプ3A→立軸ポンプ3B→立軸ポンプ3C)と逆の順序、すなわち立軸ポンプ3C→立軸ポンプ3B→立軸ポンプ3Aの順序で吸込水槽2内の水位低下時に定格回転数Rrから待機回転数Rwへの切り換えを行っている。しかし、図7に示すように、水位上昇時に待機回転数Rwから定格回転数Rrに切り換える順序と同じ順次、すなわち立軸ポンプ3A→立軸ポンプ3B→立軸ポンプ3Cの順序で吸込水槽2内の水位低下時に定格回転数Rrから待機回転数Rwへの切り換えを行ってもよい。
【0045】
吸込水槽に3台の立軸ポンプが設置されている場合を例に本発明を説明したが、立軸ポンプが2台の場合や、4台以上の場合にも本発明を適用できる。
【0046】
個々の立軸ポンプの構造は実施形態のものに限定されない。例えば、下部吸込ベル8や吸気管9を備えない一般的な構造の立軸ポンプであってもよい。
【0047】
複数の立軸ポンプの構造は必ずしも同一である必要はなく、少なくとも羽根車が吸込水槽の底部から同じ高さに設定されていればよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ポンプ機場
1a 床構造
2 吸込水槽
2a 底部
3A,3B,3C 立軸ポンプ
5 ケーシング
5a 噴出孔
6 吸込ベルマウス
6a 吸込口
7 上部吸込ベル
8 下部吸込ベル
9 吸気管
11 ベーンケーシング
12 羽根車
13 吐出ベント
13a 吐出口
14 吐出管
15 主軸
16A,16B 軸受
17 電動機
21 水位計
22 制御装置
23 変速装置
24 水柱
25 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口を設けた下端側に羽根車が収容されて上端側に吐出側管路が接続されたケーシングと、前記ケーシング内に配置されて前記羽根車が固定された主軸と、前記主軸を回転させる少なくとも電動機を含む駆動手段とをそれぞれ備える複数台の立軸ポンプを、一つの吸込水槽に設置したポンプ機場であって、
前記複数台の立軸ポンプの羽根車の高さは同一に設定されており、
前記吸込水槽内の水位を検出する水位検出手段と、
前記駆動手段により個々の前記立軸ポンプの回転数を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記水位検出手段で検出される水位の上昇に伴って、前記複数の立軸ポンプの回転数を、前記吸込水槽から吸い込んだ水でケーシング内に水柱が形成される回転数である待機回転数から、前記待機回転数よりも高い回転数であって前記ケーシング内に吸い込んだ前記吸込水槽内の水が前記吐出側管路に吐出される回転数である定格回転数へ順次切り換える、ポンプ機場。
【請求項2】
前記立軸ポンプは、前記ケーシングの前記羽根車よりも上方位置に、前記待機回転数での運転中に前記水柱を形成する水を前記吸込水槽に噴出するための噴出孔を備える、請求項1に記載のポンプ機場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−52440(P2012−52440A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194178(P2010−194178)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000152170)株式会社酉島製作所 (89)
【Fターム(参考)】