説明

マイクロカプセル

本発明はマイクロカプセルに関係し、より詳しくは、活性成分を含有する一個もしくは複数の水性ビーズが、疎水性シェルマトリックス内にあるいは疎水性シェルマトリックスによってカプセル化されたマイクロカプセルに関係する。また本発明は、本発明のマイクロカプセルの用途及び、本発明のマイクロカプセルを調製するための新しい方法に関係する。本発明のマイクロカプセルは硬化疎水性シェルマトリックス、この硬化疎水性シェルマトリックス内にあるいは硬化疎水性シェルマトリックスによってカプセル化された一個もしくは複数の水性ビーズ、及びこのカプセル化された水性ビーズ内で溶解するあるいは混合された一つもしくは複数の活性成分からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明はマイクロカプセルに関係し、より詳しくは、一つもしくは複数の活性成分からなる一個もしくは複数のカプセル化水性ビーズがさらに疎水性シェルマトリックス内にカプセル化されているマイクロカプセルに関係する。また本発明は、本発明のマイクロカプセルを調製するための新しい方法、及び本発明のマイクロカプセルの用途に関係する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
特許文献1は、多数多様の液状芯物質を含有する食用マイクロカプセルを調製するための方法を開示している。この工程では、内部水相に溶解する活性成分を有する油中水型エマルジョンが噴霧冷却され、この結果油脂相が硬化されてマイクロカプセル中に分散する微小液滴の形にて内部水相が取り込まれる。しかしこの工程でできるマイクロカプセルは非常に不安定であり、このマイクロカプセルの水相はマイクロカプセル内側部分から外側部分に移動する。さらにこのため、容器の壁面で水相が凝縮する。
【0003】
非特許文献1は、同心ノズルを有する回転押出ヘッドを使用して液体をカプセル化する方法を公開している。この工程は液体あるいはスラリー(泥漿)に適するのみであり、またこの工程の産物は油脂あるいは蝋等、溶解性コーティングを有する大粒子ビーズである。しかしながら、芯物質として一つの液滴を含有するマイクロカプセルは非常に破裂しやすい。
【0004】
非特許文献2は、ミクロスフェア(小球体)を大量調製するための方法を記述している。この方法では滅菌アルギン酸塩溶液を調整し、次にこの溶液を撹拌しながら非水性相を含有する反応器に注ぐ。アルギン酸塩微小液滴のエマルジョンが形成され、適量の架橋結合剤を加える。ミクロスフェア性アルギン酸ゲル粒子は底に沈み、これをろ過によって回収する。
【0005】
同様に、非特許文献3において、ペクチンミクロスフェアの放出特性及びこれらミクロスフェアの調製方法を記述している。この手法ではペクチンミクロスフェアを油中水型エマルジョン法によって調製するが、ここでは液状疎水性連続相中に散乱した、活性成分を含有するペクチンの微小液滴を硬化し、これをろ過によって回収する。
【0006】
コアセルベーション相分離法によるマイクロカプセル化は、非特許文献4による論文によって周知されている。この工程は、常に撹拌しながら実行する、一連となる3つの段階から構成される。:(1)3つの不混和性化学相の作製、(2)コーティング剤の凝着、(3)コーティング剤の硬化。
【0007】
セルロースアセテートトリメリテートミクロスフェアの粒子サイズに対する、粘度及び表面張力の影響が研究された。この結果は非特許文献5に示されている。
【0008】
非特許文献6は、乳清タンパク質ベースのマイクロカプセルを調製するための、二重乳化法及び熱ゲル化法について記述している。記載された方法に従って調製されたマイクロカプセルは、無極芯物質を含有する乳清タンパク質ベースのマイクロカプセルである。
【0009】
非特許文献7は、コロイド粒子から構成される選択透過性カプセルについて記述している。このカプセルはエマルジョン液滴の内表面にコロイド粒子が自己集合することによって作製される。この粒子が互いに固着して弾性殻を形成した後、このエマルジョン液滴をこの液滴の内側と同じものである、新たな連続相液に移す。
【0010】
引用した、Leeら、もしくはDinsmoreら、Mofidiら、Wongらによる文献に従って調製されたマイクロカプセルあるいはミクロスフェアの欠点は、そのマイクロカプセルが単に一個がカプセル化されたマイクロカプセルであり、マイクロカプセルが調製された後、疎水性相が捨てられる点である。
【0011】
液相小滴一個のみを包含する先行技術のマイクロカプセルに伴う問題点は、非常に破裂しやすい点にある。シェルマトリックスは、例えばマイクロカプセルを保存あるいは操作している間に壊れる可能性があり、これによって全内部相の液体が放出される。この結果粘着性の塊体が生じ、マイクロカプセルはもはや自由流動粒子の形態ではなくなる。
【0012】
この破裂の問題は、特許文献1にて記載されているような、多数多様の液状芯物質を包含するマイクロカプセルを調製することによって幾分緩和することができる。しかしながら、この方法も依然、マイクロカプセル内側部分の水相が外側部分へ移動してさらにカプセルの外へ移動する、非常に不安定なマイクロカプセルに帰着する。この結果、容器壁面上で水が凝縮される。引用した特許文献1に従うマイクロカプセルに伴う別の問題は、活性成分の放出をマイクロカプセル内にて制御することができない点である。
【特許文献1】米国特許第5,204,029号明細書
【非特許文献1】Kirk−Othmer、「Encyclopedia of Chemical Technology」,第3版、第15巻,p.473−474
【非特許文献2】Mofidi,N.ら、「Mass preparation and characterisation of alginate microspheres」、Process Biochemistry、2000年、第35巻、p.885−888
【非特許文献3】Wong,T.W.ら、J.Micoencapsulation,2002年、第19巻、第4号,p.511−522
【非特許文献4】Joseph A.Bakan、Agis F.Kydonieus、Controlled Release Technologies,1980年
【非特許文献5】Sanghvi,S.P.およびNairn J.G.、J.Microencapsulation,1992年,第9巻、第2号,p.215−227
【非特許文献6】Lee,S.J.およびRosenberg,M、Lebensm.−Wiss.U.−Technol.,2000年、第33巻,p.80−88
【非特許文献7】Dinsmore、Science,2002年11月1日、第298巻
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、安定性が高くかつ、制御されたかつ(あるいは)持続的な活性成分の放出を供与するマイクロカプセルを提供することによって、上記に記載した既知のマイクロカプセルの問題点の克服に努める。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の概略)
本発明は上記問題点を解決するために、硬化疎水性シェルマトリックス及び、さらに硬化疎水性シェルマトリックス内にあるいは硬化疎水性シェルマトリックスによってカプセル化された一個もしくは複数個の水性ビーズ、カプセル化された一個もしくは複数個の水性ビーズ内で溶解されたあるいは混合された一つもしくは複数の活性成分からなるマイクロカプセル、並びにこれを調整するための方法を提供する。
【0015】
従って、一局面にて本発明は、硬化疎水性シェルマトリックス及び、硬化疎水性シェルマトリックス内にあるいは硬化疎水性シェルマトリックスによってカプセル化された一個もしくは複数個の水性ビーズ、カプセル化された一個もしくは複数個の水性ビーズ内で溶解されたあるいは混合された一つもしくは複数の活性成分からなるマイクロカプセルを提供する。
【0016】
また別の局面にて本発明はマイクロカプセルを調整する方法を提供し、この方法は以下の工程を包含する:
a) 水相及び、この水相に溶解するあるいは混合される一つもしくは複数の活性成分を調製する工程、
b) 溶解形態の疎水性相を調製する工程、
c) カプセル形成物質あるいはカプセル形成物質の混合物を、水相あるいは疎水性相に混合するもしくは溶解する工程、
d) 水相と疎水性相を合わせ、この混合相をホモジナイズあるいは混合して油中水型エマルジョンを作る工程、
e) この水相をエマルジョン中でカプセル化する工程、即ち、液状水相をカプセル化水性ビーズに変換する工程。これによって水性ビーズからなる分散物が形成され、一つあるいは複数の活性成分がこの水性ビーズ内で混合されるあるいは溶解される工程、
f) 工程e)で得られた分散物を加工して、カプセル化水性ビーズがさらに硬化疎水性シェルマトリックスによってカプセル化されたマイクロカプセルを作製する工程。
【0017】
本発明のさらに別の局面は、本発明のマイクロカプセルを食品・飼料産業、並びに薬剤もしくは化粧品の投与において使用することに関係する。
【0018】
本発明は、カプセル形成物質、例えばハイドロコロイド(hydrocolloid)もしくは他の適切なカプセル形成物質あるいはその混合物を、活性成分を含有する水相もしくは溶解形態の疎水性相に加えて水相及び溶解疎水性相からなるエマルジョンを作り、続いて、このエマルジョン中で活性成分が一個または複数の水性ビーズ内にカプセル化される、という概念に基づいている。この水相のカプセル化は、ゲル化あるいは架橋結合、コアセルベーション、焼結、その他任意の適切な手段によって実践される。この結果、活性成分からなるカプセル化水性ビーズが疎水性相に分散する分散液ができる。任意の適切な工程によって、この分散液を疎水性相の融点あるいは滴点を下回るまで冷却し、その結果マイクロカプセルが形成される。例えば噴霧冷却あるいは流動床冷却によって、この冷却工程を実践することができる。このマイクロカプセルは活性成分を包含する多数のカプセル化された水相ビーズを包含し、このカプセル化水相ビーズはさらに硬化疎水性外郭マトリックス内に、あるいは硬化疎水性外郭マトリックスによってカプセル化される。
【0019】
本発明の利点は、マイクロカプセル中の活性成分の放出を抑制することができる点である。従来の噴霧冷却油脂マトリックスのマイクロカプセル中の水溶性活性成分の放出速度は、通常油脂マトリックスの溶解によって制御されず、むしろ水のマイクロカプセル内への拡散及び、続いて活性成分がマイクロカプセル外へ移動することによって支配される。従来の噴霧冷却マイクロカプセル中の水溶性活性成分の放出速度は通常非常に速い。典型的には、この活性成分の放出速度は15分間で約80%の範囲内にあり、カプセル化された活性成分の性質によって変わる。本発明の新しく工夫に富むマイクロカプセルでは、硬化疎水性外郭マトリックスが実際に「溶解した」時点で大方の活性成分が放出されるため、活性成分の放出速度は非常に遅く、あるいは(かつ)持続的である。本発明のマイクロカプセル中の活性成分の放出は制御することができ、例えば電子レンジ等の加熱等の熱処理によって、あるいは凍結によって、ストレス処理によって、あるいは任意の他の適切な方法によって等、様々な方法でこの放出を開始することができる。また本発明のマイクロカプセル中の活性成分の放出は持続的であることができる、もしくは非常に遅く放出を引き起こすことができる。
【0020】
本発明の別の利点はマイクロカプセルの安定性が改善された点である。さらに硬化疎水性シェルマトリックス内にあるいは硬化シェルマトリックスによってカプセル化された水性ビーズ、好ましくはゲル化あるいは架橋結合水性ビーズ内にて、活性成分が溶解あるいは混合しているため、この水性ビーズはシェルマトリックスあるいはシェルマトリックスの外側へ移動もしくは消散することができない。
【0021】
本発明のマイクロカプセルの利点は、例えばLeeら、あるいはDinsmoreら、Mofidiら、Wongらの、引用した参考文献に従って調整されたマイクロカプセル等、先行技術のマイクロカプセルと比較して、疎水性相を使用してさらなるカプセル化を形成する、即ち最初に一つもしくは複数の活性成分が一つの水相ビーズ内にカプセル化され、次に疎水性相内にさらにカプセル化されたマイクロカプセルが形成される点である。
【0022】
本発明のマイクロカプセルの新しく改良された特性によって、本発明のマイクロカプセルを、例えば食品・飼料分野あるいは製薬分野における様々な利用等、広範囲な用途に使用することが可能となる。
【0023】
さらに、本発明の方法の別の利点は、費用を抑えたまま高い生産能を達成することが可能となる点である。
【0024】
本明細において、一局面における「硬化疎水性外郭マトリックス内にあるいは硬化疎水性外郭マトリックスによってカプセル化された」という語は、「硬化疎水性外郭マトリックス内にカプセル化された」を意味するために採用することができる。別の局面における「硬化疎水性外郭マトリックス内にあるいは硬化疎水性外郭マトリックスによってカプセル化された」という語は、「硬化疎水性外郭マトリックスによってカプセル化された」を意味するために採用することができる。
【0025】
参照を容易にするため、本発明のこれらの局面あるいはさらに別の局面はこの先、適当な段落小見出しの元で議論される。しかし、各段落における技術は必ずしも特定の各段落に限定されない。
【0026】
以下において本発明は、好ましい実施例によって、かつこれら実施例を参照して、より詳細に記載する。
【0027】
図並びに本明細にある「WOK」という記載は、本発明の試料を言及する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(発明の詳細)
本発明は、硬化疎水性外郭マトリックス及び、さらに硬化疎水性外郭マトリックス内にあるいは硬化疎水性外郭マトリックスによってカプセル化された一個もしくは複数のカプセル化ビーズ、このカプセル化水性ビーズ内で溶解するあるいは混合されたに一つもしくは複数の活性成分からなるマイクロカプセルに関係する。
【0029】
この水性ビーズは、ゲル化もしくは架橋形成、焼結を可能とするのに適切な濃度の、ハイドロコロイド並びに他の任意の適切なカプセル形成物質あるいはこれらの混合物等のカプセル形成物質を含有することが好ましい。好ましくは、このカプセル化水性ビーズはゲル化あるいは架橋結合したハイドロコロイドビーズである。
【0030】
本発明の一局面に従うと、一つもしくは複数の活性成分はマイクロカプセル内にて二重カプセル化される。まず、ハイドロコロイドあるいは他の任意のカプセル形成物質もしくはこれらの混合物等、カプセル形成物質を含有する水相内に活性成分を溶解するあるいは混合する。加えて、例えばゲル化、架橋結合、コアセルベーション、焼結、あるいは他の任意の適切な手段によって、この水相をカプセル化し、結果生じる一個もしくは複数のカプセル化水性ビーズをさらに、硬化疎水性シェルマトリックス内にカプセル化する。
【0031】
(疎水性シェル)
疎水性シェルマトリックスは、例えばマイクロカプセルの使用目的、保存温度等、目的とするマイクロカプセルの特性に基づいて選択される。好ましくは、この疎水性シェルマトリックスは常温で保存できるよう45℃を越える融点を有するべきであり、一般的には、マイクロカプセルをその疎水性物質の融点以下で保存すれば、任意の疎水性物質を使用することができる。
【0032】
本明細書における融解形態とは、その疎水性相が、ASTM D566あるいはD265によって判定されるような疎水性相が十分滴下する液体である最小温度にあることを意味する。
【0033】
この疎水性シェルマトリックスもしくは疎水性相は、脂質あるいは油、蝋、樹脂、乳化剤、あるいはこれらの混合物からなる群から選択することができ、食品等級であることが好ましい。この疎水性シェルマトリックスもしくは疎水性相は、動物性油脂並びに、完全水素化植物油あるいは動物油、部分水素化植物油あるいは動物油、不飽和もしくは部分水素化もしくは完全水素化脂肪酸、不飽和もしくは部分水素化もしくは完全水素化脂肪酸モノグリセリド並びに脂肪酸ジグリセリド、不飽和のもしくは部分水素化もしくは完全水素化されたモノグリセリドあるいはジグリセリドのエステル化脂肪酸、不飽和もしくは部分水素化もしくは完全水素化遊離脂肪酸、他の乳化剤、動物性蝋、植物性蝋、鉱物蝋、合成蝋、天然並びに合成樹脂、及びこれらの混合物、からなる群から選択されることが好ましい。
【0034】
動物油は、牛脂あるいはマトン脂、ラム脂、ラード、豚脂、鯨油等であるがこれらに限定されない。植物油並びに、特に水素化あるいは部分水素化植物油は、キャノーラ油並びに綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ココナッツ油、パーム油、アマニ油、桐油、ヒマシ油等であるが、これらに限定されない。遊離脂肪酸は、ステアリン酸並びにパルミチン酸、オレイン酸等であるがこれらに限定されない。他の乳化剤とは、ポリグリセロールエステル並びに脂肪酸ソルビタンエステル等であるがこれらに限定されない。動物性蝋は、蜜蝋あるいはラノリン、シェラック蝋(shell wax)、中国昆虫蝋等であるがこれらに限定されない。植物性蝋は、カルナウバ蝋あるいはカンデリラ蝋、月桂実蝋、サトウキビ蝋等であるがこれらに限定されない。鉱物蝋は、パラフィンあるいはミクロクリスタリン鉱油、地蝋、セレシン、モンタン等であるが、これらに限定されない。合成蝋は、低分子量ポリオレフィン並びに多価アルコールエーテル・エステル、フィッシャー・トロプシュ合成ワックス等であるが、これらに限定されない。天然樹脂とは、ロジン並びにバルサム、シェラック、ゼイン等であるがこれらに限定されない。
【0035】
(カプセル形成物質)
本発明のマイクロカプセル中のカプセル化水性ビーズはハイドロコロイド等のカプセル形成物質を含有し、このハイドロコロイドは、あらゆる食品等級のハイドロコロイドあるいは他の適切なカプセル形成物質であり、かつゲル化、架橋結合、コアセルベーション、焼結もしくは他の任意の適切な手段によってカプセルを形成することができるものである。
【0036】
このカプセル形成物質は、ハイドロコロイド、シェラック、ゼイン、任意の合成あるいは天然の水溶性ポリマー、二酸化ケイ素、二酸化チタン等の任意の非水溶性微粒子、合成あるいは天然の食品等級ポリマービーズ、あるいは粒子の大きさが水相中の水性液滴の大きさよりも十分に小さく焼結することができる任意の非水溶性固形粒子、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0037】
ハイドロコロイドは、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ゲランガム、澱粉、化工澱粉、ガーゴム、寒天ゴム、ペクチン、アミド化ペクチン、カラゲナン、ゼラチン、キトサン、メスキートガム、ヒアルロン酸、セルロース酢酸塩・フタル酸等のセルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、エチルセルロース並びにカルボキシメチルセルロース(CMC)、ユードラジット(Eudragit)(登録商標)等のメチルアクリル酸塩共重合体、オオバコ、タマリンド、キサンタン、イナゴマメゴム、キサンタンイナゴマメガム混合物、乳清タンパク質、ダイズタンパク質、カゼイン酸ナトリウム、任意の食品等級のタンパク質、及びこれらの混合物、から選択されることが好ましい。
【0038】
さらに別の局面においてカプセル形成物質は、ゼラチン/アラビアゴム、ゼラチン/CMC、任意のタンパク質/イオン性ハイドロコロイド、ハイドロコロイドと塩もしくは糖、酸、塩基等の溶解度減少薬剤との任意の組み合わせ等、任意の逆荷電ハイドロコロイドの混合物、あるいはイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、ダマールゴム、ウッドロジンのグリセリンエステル、もしくはこれらの混合物から選択される。脂質もしくは蝋、乳化剤を使用する場合、これらは疎水性マトリックスとは別の物でなくてはならない。当該混合物はコアセルベーションカプセル形成物質として特に好ましい。
【0039】
本発明のマイクロカプセル中の水性ビーズはカプセル化されている。この適用例でカプセル化とは、ゲル化あるいは架橋結合、コアセルベーション、焼結、もしくは任意の他の適切なカプセル化方法によるカプセル化である。本発明のマイクロカプセル中の水性ビーズはハイドロコロイドを含有し、かつこのビーズはゲル化もしくは架橋結合されていることが好ましい。
【0040】
本発明の好ましい実施例に従うと、マイクロカプセルは硬化疎水性シェルマトリックス及び、この硬化疎水性シェルマトリックスにカプセル化された、ゲル化もしくは架橋結合した水性ハイドロコロイドビーズ、一個もしくは複数のゲル化したもしくは架橋結合した水性ハイドロコロイドビーズ内で溶解するあるいは混合された一つもしくは複数の活性成分からなる。
【0041】
ゲル化ハイドロコロイドは、典型的には常温を超えるゲル化温度を有する。ゲル化ハイドロコロイドの例には、カラゲナン、ゼラチン、ガーゴム、寒天ゴム、澱粉、化工澱粉、キサンタン及びイナゴマメゴムとの混合物、並びに任意のゲル化ハイドロコロイドと他の非ゲル化ハイドロコロイドとの混合物が含まれる。
【0042】
ハイドロコロイドの架橋結合は、架橋剤あるいは様々な機構を利用することによって達成される。ハイドロコロイドがタンパク質あるいはキトサン等アミノ基を保有する多糖類、acic、アラビアゴム、メルキートゴムである場合、グルタールアルデヒド等のジアルデヒドを用いて架橋結合することができる。ハイドロコロイドがアルギン酸ナトリウムあるいはゲランガム、ペクチン等の多糖類である場合、カルシウムあるいはマグネシウム等の多価イオンで架橋結合することがきる。またこの架橋結合は、加熱、pHの調整、加圧等の他の機構によって、あるいは酵素的架橋結合によって達成することができる。例えばタンパク質は、タンパク質を加圧処理することによって架橋結合することができ、2から200、あるいは5から200バールであることが好ましい。もしくは(かつ)そのタンパク質が変成する温度を超える温度でタンパク質を処理することによって達成することができる。加熱する温度は、架橋結合されるハイドロコロイドによって異なる。タンパク質の酵素的架橋結合は、例えばトランスグルタミナーゼを用いて達成することができる。使用するハイドロコロイドに基づき当分野の技術者は、どのゲル化もしくは架橋結合の方法を用いるかを決定することができる。
【0043】
本発明のマイクロカプセル中の水性ビーズは、コアセルベーションによってカプセル化することもできる。ハイドロコロイド等のカプセル形成物質のコアセルベーションは、任意の適当なコアセルベーション手法を用いることによって達成することができる。コアセルベーションは、例えば塩あるいは糖、他の添加物等、ハイドロコロイド等のカプセル形成物質の相分離を引き起こす物を添加することによって実践することができる。またコアセルベーションは、このエマルジョンを加熱処理、冷却処理、酸あるいは塩基を添加することによるpH変化処理等、ハイドロコロイド等のカプセル形成物質の相分離を引き起こす処理を施すことによって実践することができる。水性ビーズ周囲並びに疎水性マトリックスと水相との界面でのコアセルベート相の凝着は自然発生的なものであり、界面張力によって推進される。その後、コアセルベートに関係する技術者に周知されている任意の適切な方法によって、コアセルベート相を架橋結合あるいは硬化することができる。
【0044】
コアセルベーションに適切なカプセル形成物質は、シェラック、ゼイン、任意の合成・天然疎水性ポリマー、脂質、乳化剤、蝋、ゼラチン/アラビアゴム並びにゼラチン/CMC、あらゆるタンパク質/イオン性ハイドロコロイド等逆荷電ハイドロコロイドの任意の混合物、ハイドロコロイドと塩あるいは糖、酸、塩基等の溶解度減少剤との組み合わせ、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、ダマールゴム、ウッドロジンのグリセリンエステル、もしくはこれらの混合物、からなる群から選択される。
【0045】
本明細書において焼結とは、微粒子が互いに融合して有孔あるいは無孔フィルムを形成することを意味する。カプセル形成物質の焼結は、水相中の水性液滴の大きさよりも十分に小さな粒子サイズを有する、適切な量の固形不溶性粒子を準備することによって達成される。この微粒子は、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、合成あるいは天然の食品等級ポリマービーズ、もしくは水相中の水性液滴の大きさよりも十分に小さな粒子サイズを有する任意の非水溶性固形粒子等である。次にこの微粒子を、微粒子が焼結する温度を超える温度もしくはガラス転移温度で処理することによって、自然発生的に水相周囲に凝着させることができ、これによって微粒子からなる連続フィルムが形成される。
【0046】
(活性成分)
活性成分あるいは活性成分混合物(これらはゲル化、もしくは架橋結合、コアセルベート化、焼結した水性ビーズ内で溶解しているあるいは混合されている。)は、任意の成分であることができ、好ましくは一つの疎水性食品あるいは製薬成分であり、これはマイクロカプセルの使用目的に基づいて選択される。この活性成分は、例えば、プロピオン酸カルシウムあるいはプロピオン酸、ソルビン酸、ソルビン酸カルシウム、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、フマル酸、ソルビン酸カリウム、クエン酸、重炭酸ナトリウム等の無機あるいは有機塩あるいは酸であることができる。また活性成分は、ピザ香味料あるいはコーヒー香味料等の着香剤であることができる。あるいは活性成分は、バクテリオシン(例えばナイシンあるいはペジオシン)、ナタマイシン等の抗生物質もしくは保存剤、ビタミンCあるいはベタイン等の栄養素あるいはビタミンであることができる。また、上記成分の任意の混合物はマイクロカプセルに使用することができる。
【0047】
活性成分は、矯味矯臭剤、香味増強剤、栄養素、ビタミン、保存剤、醗酵剤、微生物、酸味料、酸化防止剤、色素、酵素、気体類、増粘剤、並びに他の任意の食品成分もしくは製薬成分からなる群から選択されることが好ましい。適当な薬学的活性成分には、抗生物質、抗菌物質、抗炎症剤、鎮痛剤(analgesics)、鎮静剤(sedatives)、催眠剤、抗不安薬、抗ヒスタミン剤、抗不整脈薬、抗高血圧剤、抗パーキンソン病薬、ホルモンが含まれる。
【0048】
本発明のマイクロカプセルは、疎水性シェルマトリックス内にカプセル化された約1から100個の水性ビーズからなることができ、5から50個の水性ビーズであることが好ましい。マイクロカプセルの大きさは、約40から800ミクロンの間であり、100から150ミクロンの間であることが好ましい。水性ビーズ一個の大きさは、約0.1から20ミクロンの間であることができ、1から5ミクロンであることが好ましい。マイクロカプセル中の硬化シェルマトリックス内にカプセル化された水性ビーズの数及び大きさは、そのマイクロカプセルの使用目的に応じて変えることができる。また、本発明のマイクロカプセルの大きさは、使用目的に応じて変えることができる。
【0049】
(方法)
本発明はまた、本発明のマイクロカプセルを調製するための新しい方法に関係し、その方法は以下の工程を包含する。
【0050】
a) 水相内で溶解するあるいは混合される一つもしくは複数の活性成分からなる水相を調製する工程、
b) 溶解形態の疎水性相を調製する工程、
c) カプセル形成物質あるいはカプセル形成物質の混合物を、水相あるいは疎水性相に混合するもしくは溶解する工程、
d) 水相と疎水性相を合わせ、この混合相をホモジナイズあるいは混合して油中水型エマルジョンを作る工程、
e) このエマルジョン中の水相をカプセル化する工程、即ち、液状水相をカプセル化水性ビーズに変換する工程であって、これによって水性ビーズからなる分散物が形成され、一つあるいは複数の活性成分がこの水性ビーズ内にカプセル化される工程、
f) カプセル化水性ビーズがさらに硬化疎水性シェルマトリックス内にあるいは硬化疎水性シェルマトリックスによってカプセル化されたマイクロカプセルが形成されるよう、工程e)で得られた分散物を加工する工程。
【0051】
本明細書において水相とは、水あるいは、水とエタノールあるいはエチレングリコール、グリセロール等任意の他の水混和性溶媒との混合物を意味する。また水相は、ハイドロコロイドゲルの特性を改変するために単糖類、あるいはオリゴ糖類等炭水化物、タンパク質ゲルの特性を改変するために無機塩、細菌あるいは真菌によるマイクロカプセルの変質を防ぐために保存剤、加工助剤として乳化剤、結晶形態修飾剤としてトリステアリン酸ソルビタンあるいは他の乳化剤、マトリックスの力学物性を改変するための疎水性天然あるいは合成ポリマー、可塑剤、マイクロカプセルの変成を防ぐための保存剤、等の添加物を含有することができる。
【0052】
水相と疎水性相との合併は、混合によって実践することが好ましい。
【0053】
工程d)におけるホモジェネートは、高剪断混合によって、あるいはインライン混合によって行うことが好ましい。
【0054】
カプセル形成物質はハイドロコロイドあるいは、ハイドロコロイドの混合物、あるいは他の任意のカプセル形成物質もしくはこれらの混合物である。
【0055】
工程e)におけるカプセル化は、ゲル化、架橋結合、コアセルベーション、焼結、あるいは一つもしくは複数の活性成分からなる水相のカプセル化に帰着する他の任意の適切なカプセル化方法によって実践することができる。
【0056】
工程e)におけるゲル化によるカプセル化は、エマルジョンを冷却することによって実践することができる。ゲル化カプセル形成物質として適切なカプセル形成物質は、カラゲナン並びにゼラチン、澱粉、修飾澱粉、寒天ゴム、ガールゴム、キサンタンとイナゴマメゴムとの混合物、あるいは任意のゲル化ハイドロコロイドの混合物からなる群から選択することができる。
【0057】
工程e)における架橋結合によるカプセル化は、架橋結合剤によって、あるいは加熱、加圧等様々な機構によって、あるいは酵素架橋結合によって実践される。この架橋結合は、エマルジョンを60℃から120℃の間の温度に加熱処理することによって実践することもできる。またこの架橋結合は、エマルジョンをハイドロコロイドの変性を引き起こすpH値にさらすことによって実践することもできる。このpH値は典型的には2から12の間である。またこの架橋結合は、エマルジョンを2から200バールの間の気圧にさらすことによって実践することが可能である。
【0058】
架橋結合剤は、グルタールアルデヒド等のジアルデヒド、カルシウムあるいはマグネシウム等の2価イオン、酵素、あるいはイリドイド等他の架橋結合化合物からなる群から選択することができる。ゲル化あるいは架橋結合によるカプセル化の結果、活性成分がハイドロコロイド網から形成されたゼリー様ビーズ内にカプセル化され、さらに疎水性シェルマトリックス内にカプセル化されたマイクロカプセルが形成される。
【0059】
ゲル化もしくは架橋結合によるカプセル化によってマイクロカプセルが形成され、このマイクロカプセル内では活性成分がハイドロコロイド網から形成されたゼリー様ビーズ内にカプセル化され、次いでこれらゼリー様ビーズが疎水性シェルマトリックス内にカプセル化されている。
【0060】
工程e)におけるコアセルベーションによるカプセル化は、ハイドロコロイド等のカプセル形成物質の溶解性を減少させ、コアセルベート相を作り出すことによって実践することもでき、このコアセルベート相はさらに水相周囲に凝着する。このエマルジョン中の水相はカプセル化されてカプセル化固形水性ビーズを包含する分散物を形成する。
【0061】
コアセルベーションは親水性カプセル形成物質もしくは疎水性カプセル形成物質のいずれかを使用して実践することができる。親水性カプセル形成物質を使用する場合、最初に親水性カプセル形成物質を水相に溶解し、典型的には、温度あるいはpHの変更もしくは添加物の使用等、溶解度減少の工程を適用して親水性カプセル形成物質を水相外に引き出す。続いて、前記カプセル形成物質が溶解形態の疎水性相と水相との間の界面にて凝着する。その後必要に応じて温度あるいはpHを変更する、もしくは添加物を加えることによって、このカプセル形成物質を硬化する。疎水性カプセル形成物質を使用する場合、典型的には、最初に疎水性カプセル形成物質を溶解形態の疎水性相に溶解し、温度変化あるいは添加物の添加等溶解度減少工程を適用してこの疎水性カプセル形成物質を疎水性相の外へ引き出すことができる。続いて前記カプセル形成物質が疎水性相と水相との間の界面にて凝着することができる。
【0062】
工程e)における焼結によるカプセル化は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、合成あるいは天然の食品等級のポリマービーズ、もしくは水相中の水性液滴の大きさよりも十分に小さい粒子サイズを有する任意の非水溶性固形粒子等、適量の固形非水溶性微粒子を準備することによって実践することができ、この微粒子はエマルジョン中で焼結を被りやすいものである。その後、この微粒子を自然発生的に、疎水性相と水相との間の界面で水相の周囲にて凝着させ、この微粒子が焼結する温度あるいはこの微粒子のガラス転移温度を超える温度で微粒子を処理する。微粒子は互いに融合して切れ目のないフィルムを形成する。焼結した微粒子からなる薄層フィルムによってカプセル化された水性ビーズの、疎水性シェルマトリックス内での凝着はこのように形成される。
【0063】
焼結カプセル形成物質として適するカプセル形成物質は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、合成あるいは天然の食品等級のポリマービーズ、もしくは疎水性マトリックス内の水相中の水性液滴の大きさよりも十分に小さい粒子サイズを有する任意の非水溶性粒子等、任意の非水溶性粒子からなる群から選択することができる。
【0064】
コアセルベーションあるいは焼結によるカプセル化の結果、カプセル形成物質の薄いコーティングが活性成分からなる水性ビーズの周囲に凝着し、この一個もしくは複数のビーズがさらに疎水性シェルマトリックス内にあるいは疎水性シェルマトリックスによってカプセル化されているマイクロカプセルができる。
【0065】
工程e)における混合溶液からなる分散物の形成は、溶解したカプセル形成物質の溶解度を減少させ、その結果水相周囲にカプセル形成物質を凝着させる任意の工程あるいは手段によって実践することができる。工程e)は、温度を上げるもしくは下げることによる温度変化によって、もしくは添加剤を加えることによって実践されることが好ましい。
【0066】
工程f)の工程は、疎水性シェルマトリックスを形成する疎水性相が硬化し、マイクロカプセルの形成に帰着する任意の適切な方法によって実行される。この工程は噴霧冷却あるいは流動床冷却によって行われることが好ましい。この工程は噴霧冷却によって行われることが好ましい。
【0067】
疎水性相は、例えばマイクロカプセルの使用目的、保存温度等、目的とするマイクロカプセルの特性に基づいて選択される。疎水性相は、常温で用意に保存できるよう、好ましくは45℃を超える融点を有するべきである。
【0068】
本発明は以下の工程を包含する方法に関係することが好ましい。:
a) ハイドロコロイドあるいはハイドロコロイドと一つもしくは複数の活性成分との混合物からなる水相を調製する工程、
b) 溶解形態の疎水性相を調製する工程、
c) 工程a)の水相と工程b)の疎水性マトリックスを合わせ、この混合物をホモジナイズしてエマルジョンを作る工程、
d) このエマルジョン中のハイドロコロイドをゲル化あるいは架橋結合する工程であって、これによって、ゲル化したもしくは架橋結合したハイドロコロイドビーズからなる分散物が形成され、一つもしくは複数の活性成分はゲル化したもしくは架橋結合したハイドロコロイドビーズ内で溶解しているあるいは混合されている工程、
e) 工程d)で得られる分散物を噴霧冷却あるいは流動床冷却によって冷却して、ゲル化したもしくは架橋結合したハイドロコロイドビーズが硬化疎水性シェルマトリックス内にカプセル化されたマイクロカプセルを作製する工程。
【0069】
工程a)の水相と工程b)の疎水性相とを合わせるのは、混合によって実践することが好ましい。
【0070】
工程c)のホモジナイズは、高剪断混合によってあるいはインライン混合によって実践することが好ましい。
【0071】
本発明で使用するハイドロコロイドは任意の食品等級のハイドロコロイドであることができ、水溶性でありかつゲル化あるいは(かつ)架橋結合することができることが好ましい。
【0072】
エマルジョン内にあるハイドロコロイドはゲル化しているかもしくは架橋結合されていることが好ましい。ゲル化されるハイドロコロイドは保存温度を超えるゲル化温度を有するべきである。ゲル化ハイドロコロイドの例には、カラゲナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉、寒天ゴム、ガーゴム、キサンタンガムとイナゴマメゴムとの混合物、あるいは任意のゲル化ハイドロコロイドの混合物、並びに他の非ゲル化ハイドロコロイドが含まれる。エマルジョン中のハイドロコロイドのゲル化は、エマルジョンを冷却することによって、冷却の工程の前もしくはその過程において実践される。冷却の過程でハイドロコロイドのゲル化が達成された場合、エマルジョンはゲルが形成された後に冷却される。ハイドロコロイドのゲル化が噴霧冷却の前に達成された場合、ゲル化ハイドロコロイドビーズからなる分散物が形成され、次にこの分散物は冷却されてマイクロカプセルを形成する。
【0073】
架橋結合剤は、グルタールアルデヒド等のジアルデヒド、カルシウムあるいはマグネシウム等の2価イオン、もしくはイリドイド等他の架橋結合剤からなる群から選択することができる。
【0074】
分散物の冷却は、噴霧冷却塔内にて噴霧冷却によって、あるいは流動床装置内にて流動床によって実践されることが好ましい。噴霧冷却の過程で、分散物中の溶解形態にある疎水性マトリックスは硬化して粒子形態となるよう冷却されて、ハイドロコロイドをカプセル化する。冷却塔内では、常温気体あるいは冷却気体を使用することができる。この気体あるいは冷却気体は空気であることが好ましい。冷却気体の温度は−270℃と50℃の間であることができ、好ましくは−50℃と40℃の間、より好ましくは−20℃と20℃の間である。
【0075】
このマイクロカプセルの特性は、上記手法の工程パラメータを変更することによって変えることができる。例えば、可塑剤を疎水性マトリックス相に加えて柔軟性を改良し、シェルの力学物性を改変することができる、リパーゼ酵素類を水相に加えて放出速度を変えることができる。
【0076】
本発明の方法に従って調製された一マイクロカプセルは、疎水性シェルマトリックス内に包埋された約1から100個の水性ビーズを包含することができ、この水性ビーズは5から50個であることが好ましい。典型的なマイクロカプセルの大きさは、約40から800ミクロンであり、好ましくは100から150ミクロンである。典型的な一水性ビーズの大きさは、0.1から20ミクロンであり、好ましくは1から5ミクロンである。
【0077】
また本発明は、本発明のマイクロカプセルの用途に関係する。上記のマイクロカプセルは、食品産業並びに製薬用途において広範囲に使用することができる。
【0078】
本発明のマイクロカプセルは非常に多様な用途に使用することができ、これは例えばマイクロカプセル、活性成分もしくはこれらの混合物、ハイドロコロイド、疎水性マトリックス、あるいはマイクロカプセルの大きさに応じて異なる。本発明によってマイクロカプセル中の活性成分の調節放出が達成される。マイクロカプセル中の活性成分の放出は、様々な方法における放出始動によって調節することができ、例えば熱処理によって、電子レンジ加熱によって、あるいは他の任意の方法によって調節することができる。また、本発明のマイクロカプセル中の活性成分の放出は非常にゆっくりと生じさせることができる。また、この活性成分の放出は、マイクロカプセルの凍結によっても生じる。凍結によって水相が膨張し、このため外側の疎水性マトリックスが深割れを起こす。融解によって活性成分は素早くマイクロカプセルから放出される。
【0079】
例えば製パン業において、本発明のマイクロカプセルを用いて抗成形剤の徐放を達成することができる。必要とされる製パン酵母の活性が阻害されることを防ぐために、これは重要である。活性成分としてナイシンあるいはナタマイシンを使用する場合、熱安定性の増大が、例えば低温殺菌食品あるいは熱加工食品において達成される。また、塩化ナトリウムの徐放は、例えばチーズのスターター培養に有害な相互作用を防ぐために、非常に重要である。本発明のマイクロカプセルを用いて、製パン・製菓におけるビタミンCの熱安定性を達成することができる。
【0080】
ベタインは、魚類並びにエビ類の栄養摂取のために添加する目的で餌に使用される。しかし、ベタインは非常に吸湿性が高くかつ水に溶けやすく、動物に食べられる前に餌ペレットから浸出するため、長期間に渡る、魚への一定量安定した給餌を確保するのが難しい。本発明に従うカプセル化によって早期の分解を防ぐことができる可能性があり、つまりベタインを魚へ効果的に給餌することが確保される。噴霧冷却によって、10〜15分を超える間水性液中に内容物を保持するマイクロカプセルを作製することはできない。これは魚の餌という用途には十分な時間ではない。これらの問題は本発明のカプセル化ベタインが解決を図る。
【0081】
本発明は、香味料、バクテリオシン製剤、保存剤並びに緩やかで調節されたかつ(あるいは)持続的な活性成分の放出を供給する薬剤としてのマイクロカプセルの用途に関係する。本発明のマイクロカプセルは、緩やかで調節された、かつ(あるいは)持続的な薬学的活性成分の放出が必要とされる広範囲の製薬用途にて使用することができる。当該用途には、例えばデポー製剤並びに経皮投与法が含まれる。
【0082】
パン製品、ピザ、インスタントコーヒー、ティーバッグ等の食品生産物における香味料の調節放出は、活性成分として香味料を含有する本発明のマイクロカプセルを用いて達成される。カプセル化香料は、熱あるいは(かつ)刺激処理を受けてその香味料が放出されるまで製品内に保持される。熱は、例えば電子レンジ、伝統的なオーブンあるいは熱水によって与えることができる。刺激は、例えば周囲条件を変える、あるいは咀嚼によって与えることができる。
【0083】
例えば加工肉製品内での、あるいはオレンジジュース等の飲料内でのバクテリオシンの緩やかな放出は、本発明のマイクロカプセルを用いて達成される。本発明のマイクロカプセルにおいて保存剤が活性成分として使用される場合、保存剤は自然分解するにつれて製品内にて緩やかに放出される。これは真菌あるいは他の有害な微生物の増殖を、非カプセル化保存剤よりも長期間効果的に防ぐ。つまり、その食品生産品ではより長期の貯蔵期間が確保される。また、このコーティングは、バクテリオシン並びに保存剤が熱処理並びに厳しい処理に耐え、処理した製品が保存される期間活性を保持するよう、バクテリオシン並びに保存剤に温度安定性を提供することができる。
【0084】
本発明のマイクロカプセルは、チーズ生産物において塩の緩やかな放出を提供する。これによって、2段階の処理に代わり1段階の処理が可能となる。塩が緩やかに放出されることによって、スターター培養が有害な影響を受けずに開始段階で適切に作用することが可能となる。発酵が完了した時点で塩は放出される。典型的な処理では、発酵の後にチーズを食塩水に浸しかけるという時間のかかる作業によって塩が添加されている。
【0085】
本発明のマイクロカプセルによって、製パン用途における抗菌剤の緩やかな放出が達成される。パン並びに他の製パン生産物の賞味期限を延ばすために保存剤が広く使用されているが、代償として酵母の効果に悪い影響を与えている。緩やかに放出することによって酵母のより効率的な利用が可能となり、一方でパンを焼く過程でこの活性成分が放出された後、保存剤的な活性も供与される。更なる利点として、プロピオン酸カルシウムよりも効力が強いが強酸性で液体のためはるかに扱い難いプロピオン酸を、扱いやすい安定した粉末に変換することができる。
【0086】
本発明に従うカプセル化された薬学的活性成分は、例えば滞留錠剤にする等、現在実践されている方法(流動床コーティングによる方法)と比較してはるかに費用を抑えた方法で、長期間に渡る緩やかで調節されたあるいは(かつ)持続的な活性成分の放出を提供する。また、本発明に従うカプセル化によって、薬学的活性成分の消化管(低pH)における安定性が得られ、これによってその後、活性成分の大半が吸収されている腸管内での活性成分の放出が可能となる。適切な薬学的活性成分の例には、抗生物質並びに抗菌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、鎮静剤、催眠剤、抗不安薬、抗ヒスタミン剤、抗不整脈薬、抗高血圧剤、抗パーキンソン薬、ホルモンが含まれる。
【0087】
その他の成分並びに可能な用途には、以下が含まれる。
【0088】
ベタイン‐家畜飼料
ナイシン‐製パン
ナタマイシン‐製パン
アスコルビン酸‐製パン、ロールしたパン生地
ソルビン酸‐製パン
香味料‐冷凍ピザ、飲料、シリアル類
プロピオン酸‐製パン
ナイシン‐ソーセージ皮、ビネグレットソース
クエン酸系、フマル酸系‐製パン、トルティーヤ
水‐低脂肪スプレッド、製パン。
【0089】
塩化ナトリウムは香味料としてチーズに使用され、通常は熟成工程の最後に、チーズ全体を食塩水に浸すことによって添加される。この工程は時間と費用がかかる。初期の試験によって、カプセル化塩化ナトリウムは発酵工程の初めに牛乳に加えることができ、緩やかな放出によってスターター培養に対する塩の有害な影響が減少し、一方熟成の最後には良い香味が確保されることが示された。
【0090】
アスコルビン酸は、タンパク質の酸化的架橋結合を介してグルテン網を強化するために層状のパン生地に使用される。パン生地基質の架橋結合及び強化は、最終産物の構造を損なわないよう、パン生地の混合・層形成工程の後に行うものである。不十分な架橋結合及び強化によって、発酵が難しく、見た目に魅力のないパン生地となる。カプセル化によってアスコルビン酸の放出を緩やかにすることで、強化される前のパン生地が加工しやすくなる。カプセル化は、放出をより効果的に緩やかにし、すでに溶解しているアスコルビン酸を供給するという、噴霧冷却に対する利点を有する。放出された後は、このアスコルビン酸の迅速な分散が確保される。
【0091】
また、水もカプセル化によって効果を増す。本発明は水を隙間なくカプセル化することができる。カプセル化した水を用いて、大きく不均一な孔のあるチャバータパンを生産することができる。パンを焼く工程で、蒸発によって大きな孔を作り出す水滴が放出されることとなる。エマルジョン内に使用する水をカプセル化し、熱によって即座に蒸発する可能性を抑えられれば、飛び散らない低脂肪スプレッドを成功させることができると考えられる。
【0092】
(追加成分)
カプセル化した抗菌物質は、活性成分からなる芯物質及びカプセル形成物質からなるシェルに加えて、一つ以上の成分を包含することができる。これら一つ以上の追加成分は活性成分と共にシェル内にあるいはシェルによってカプセル化される場合もされない場合もある。換言すると、追加成分は活性成分と共にシェル内にあるいはシェルによってカプセル化される場合も、シェルの「外部」にある場合もある。一つ以上の追加成分が与えられた場合、上記の組み合わせが考えられる(一成分はシェル内にあり、かつ別の成分はシェルの外部にある場合もある)。
【0093】
一般にカプセル化抗菌物質は、単独で食品内に導入されるものではない。即ち一局面において、カプセル化抗菌物質は担体の形で食品内に導入される。この担体は食塩水である、あるいは食塩水からなることが好ましい。
【0094】
カプセル化した抗菌物質の分離あるいは沈殿を防ぐため、カプセル化抗菌物質の密度は担体(食塩水等)の密度と一致し、注入あるいは回転混合の過程でカプセル化抗菌物質が均一に分散するのを防がなければならない。即ち、好ましい一局面では、担体及びカプセル化抗菌物質は、実質的に同じ密度を有する。
【0095】
担体とカプセル化抗菌物質の密度を一致させることは、担体並びにカプセル化抗菌物質を注意深く選択することによって達成される。あるいは、担体と実質的に同じ密度を有するようにカプセル化抗菌物質を改変することによって、あるいはカプセル化抗菌物質と実質的に同じ密度を有するように担体を改変することによって達成することもできる。カプセル化抗菌物質を臭素化油等の油に接触させることによって、カプセル化抗菌物質を改変することもできる。担体は、キサンタンガム等の追加成分を添加することによって改変することもできる。
【0096】
この担体は一つ以上の追加成分を包含することができる。しかし、一部の局面では、担体は追加成分を包含しない、あるいはこの組成物の特性に物質的影響を与える追加成分を包含しない。
【0097】
好ましい一局面において、この担体はさらに乳化剤からなる。この乳化剤は、ポリソルビン酸塩として知られるもの(例えばツイン80、ツイン20)を除いたポリオキシエチレンソルビタンエステル(E432−E436)、並びにモノグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドの酢酸エステル、ジグリセリドの酢酸エステル、モノグリセリドの酒石酸エステル、ジグリセリドの酒石酸エステル、モノグリセリドのクエン酸エステル、ジグリセリドのクエン酸エステル、から選択されることが好ましい。
【0098】
このカプセル化抗菌物質は、一つ以上の追加成分を包含することができる。しかし、一部の実施例では、カプセル化抗菌物質は追加成分を包含しない、あるいは組成物の特性に物質的影響を与える追加成分を包含しない。
【0099】
好ましい一局面では、カプセル化抗菌物質はさらに、シソ科の植物から得た、あるいはシソ科の植物から得ることのできる抽出物からなる。必要に応じて、この局面において、及び特に抗菌物質がナイシンから構成される場合、この組成物は、組成物に対して0.075重量%未満の量のカルバクロール及び組成物に対して15重量%の量のカルボンからなる。抗菌物質及びシソ科植物から得たあるいは得ることのできる抽出物からなる組成物については、我々の英国特許出願第0323335.0号において議論されている。GB 0323335.0の各教示事項は、本方法に適用することができる。
【0100】
この局面において、シソ科の植物から得たあるいはシソ科の植物から得ることのできる抽出物は、抗菌物質と共にシェル内にあるいはシェルによってカプセル化されないことが好ましい。
【0101】
好ましい一局面において、この抽出物は組成物に対して0.075重量%未満の量のカルバクロールを包含し、好ましくは組織物に対して0.04重量%未満の量、より好ましくは組織物に対して0.02重量%未満の量である。
【0102】
好ましい一局面において、この抽出物は組成物に対して0.075重量%未満の量のカルボンを包含し、好ましくは組織物に対して0.04重量%未満の量、より好ましくは組織物に対して0.02重量%未満の量である。
【0103】
好ましい一局面において、この抽出物は組成物に対して0.1重量%未満の量のチモールを包含し、好ましくは組織物に対して0.075重量%未満の量、より好ましくは組織物に対して0.0重量%未満の量である。
【0104】
一局面において使用する抽出物はシソ科の植物から得られる。
【0105】
「抽出物」という語によって、植物全体から単離することのできる植物の任意の成分が意味されると、当分野の技術者によって認識されるものである。
【0106】
一局面において本発明で使用される抽出物は、シソ科の植物からから得ることができる。植物から得ることのできる抽出物は、植物から得ることができる、あるいは植物から単離することができる、あるいはこの抽出物を同定して次いで例えば化学合成あるいは酵素による産生等別の供給源から入手することができることは、当分野の技術者によって認識されることである。例えば抽出物は、真核細胞あるいは原核細胞による発酵によって、遺伝子操作の手法によって産出することもできる。本出願人は、シソ科の植物内に存在する産物が、抗菌物質、好ましくはバクテリオシンの活性を共同作用的に増大させると認識している。これらの産物は任意の供給源から得ることができ、本発明の範囲内に収まることとなる。
【0107】
本発明は、ナイシン等のバクテリオリシンと、共に食品系中のグラム陽性菌の増殖を抑制するローズマリー(Rosmarinus officinalis)あるいはセージ(Salvia officinalis)等シソ科植物との組合せ物の使用を含む。本発明において共同作用に係わる抽出物とは、フェノール系ジテルペン(カルノソール、並びにカーノシック酸等)、あるいはフェノール系トリテルペン(ウルソール酸、並びにベツリン酸、オレアノール酸等)、ローズマリー酸含量を増加させるために選択的に抽出されたシソ科植物の抽出物(「脱臭抽出物」)を意味することが好ましい。 これらの脱臭抽出物は、フェノール系テルペン含量が高く(例えば3.5重量%を超える。)かつ植物精油由来の香気誘発化合物及び香料あるいは芳香剤として使用されるオレオジンが低量(1重量%未満。)であることによって判別することができる。精油は典型的には植物物質を単純に蒸留することによって抽出される。
【0108】
好ましい一局面において、抽出物は脱臭された抽出物である。この(脱臭された)抽出物は1.0から70重量%のフェノール系ジテルペンを含有することが好ましく、好ましくは3.5から70重量%のフェノール系ジテルペン及び1重量%未満の精油を含有する。
【0109】
好ましい一局面において、抽出物は、フェノール系ジテルペン並びにフェノール系トリテルペン、ローズマリー酸から選択される。
【0110】
好ましい一局面において、抽出物はフェノール系ジテルペンである、あるいはフェノール系ジテルペンからなる。このフェノール系ジテルペンは、カーノシック酸、カルノソール、メチルカルノシック酸、並びにこれらの混合物から選択されることが好ましい。このフェノール系ジテルペンは、カーノシック酸並びにカルノソールから選択されることが好ましい。
【0111】
好ましい一局面においてこの抽出物は、 組成物に対して1.0重量%を越える量のフェノール系ジテルペンを含有し、好ましくは組成物に対して2.0重量%を越える量であり、より好ましくは組成物に対して3.0重量%を越える量であり、さらに好ましくは組成物に対して3.5重量%を越える量である
非常に好ましい一局面においてこの抽出物は、一つ以上のフェノール系トリテルペンを含有する。このフェノール系トリテルペンは、ベツリン酸並びにオレアノール酸、ウルソール酸から選択されることが好ましい。
【0112】
好ましい一局面において、抽出物はフェノール系トリテルペンである、あるいはフェノール系トリテルペンからなる。このフェノール系トリテルペンは、ベツリン酸並びにオレアノール酸、ウルソール酸から選択されることが好ましい。
【0113】
好ましい一局面において抽出物はローズマリー酸である、あるいはローズマリー酸からなる。
【0114】
好ましい一局面においてこのシソ科の植物は、ローズマリー並びにセージ、オレガノ、マヨラマ、ミント、バーム、セイバリー、タイムから選択される。好ましい一局面においてこのシソ科の植物は、ローズマリー並びにセージ、オレガノ、マヨラマ、ミント、バーム、セイバリーから選択される。これらの名称は、これらの名称によって知られる植物の全生物種及び変種を包含すると、理解されるものである。
【0115】
好ましい一局面においてこのシソ科の植物は、ローズマリー(Rosemarinus officinalis L.)、セージ(Salvia officinalis L.)、オレガノ(Origanum vulgare L.)、マヨラマ(Origanum marjorana L.)、ミント(Mentha spp.)、バーム(Melissa officinalis L.)、セイバリー(Satureia hortensis)タイム(Thymus vulgaris L.)から選択される。
【0116】
好ましい一局面においてこのシソ科の植物は、ローズマリー(Rosemarinus officinalis L.)並びにセージ(Salvia officinalis L.)、オレガノ(Origanum vulgare L.)、マヨラマ(Origanum marjorana L.)、ミント(Mentha spp.)、バーム(Melissa officinalis L.)、セイバリー(Satureia hortensis)から選択される。
【0117】
好ましい一局面においてこのシソ科の植物は、ローズマリーである。
【0118】
好ましい一局面において抽出物は、香味誘発化合物及び(あるいは)この抽出物に対して1重量%未満の量の精油を含有する。好ましい一局面において抽出物は、香味誘発化合物及び(あるいは)組成物に対して1重量%未満の量の精油を含有する。
【0119】
典型的な香味誘発物質及び(あるいは)この抽出物は、カンフル並びに、ベルベノン、ボルネオール、アルファ‐テルピネオールである。
【0120】
好ましい一局面において抽出物中に存在するカンフルの合算量は、抽出物に対して1重量%未満(好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.15重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満)である。
【0121】
好ましい一局面において抽出物中に存在するベルベノンの合算量は、抽出物に対して1重量%未満(好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.15重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満)である。
【0122】
好ましい一局面において抽出物中に存在するボルネオールの合算量は、抽出物に対して1重量%未満(好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.15重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満)である。
【0123】
好ましい一局面において抽出物中に存在するアルファ‐テルピエノールの合算量は、抽出物に対して1重量%未満(好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.15重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満)である。
【0124】
好ましい一局面において抽出物中に存在するカンフル及びベルベノン、ボルネオール、アルファ‐テルピエノールの合算量は、抽出物に対して1重量%未満(好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.15重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満)である。
【0125】
好ましい一局面においてカプセル化された抗菌物質はさらにキレート剤からなる。このキレート化剤はEDTA並びにクエン酸、一リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、ポリリン酸塩から選択されることが好ましい。
【0126】
さらに別の適切なキレート化剤はUS 5573891にて教示されており、これにはカルボン酸並びにポリカルボン酸、アミノ酸、リン酸塩が含まれる。特に、以下の化合物及びその塩は有用である場合がある。
【0127】
酢酸、並びにアデニン、アジピン酸、ADP、アラニン、B‐アラニン、アルブミン、アルギニン、アスコルビン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、ATP、安息香酸、n‐酪酸、カゼイン、シトラコン酸、クエン酸、システイン、デヒドロ酢酸、デフェリフェリクリシン、デフェリフェリクローム、デフェリフェリオキサミンE(Desferri−ferrioxamin E)、3,4ジヒドロキシ安息香酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、ジメチルグリオキシム、O,O‐ジメチルプルプロガリン、EDTA、ギ酸、フマル酸、グロブリン、グルコン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリシン、グリコール酸、グリシルグリシン、グリシルサルコシン、グアノシン、ヒスタミン、3ヒドロキシフラボン、イノシン、イノシン三リン酸、鉄無配合フェリクローム、イソ吉草酸、イタコン酸、コウジ酸、乳酸、ロイシン、リジン、マレイン酸、リンゴ酸、メチオニン、サリチル酸メチル、ニトリロトリ酢酸(NTA)、オルニチン、オルトリン酸、オキサリン酸、オキシステアリン、B‐フェニールアラニン、リン酸、フィチン酸塩、ピメリン酸、ピバル酸、ポリリン酸塩、プロリン、プロピオン酸、プリン、ピロリン酸塩、ピルビン酸、リボフラビン、サリチルアルデヒド、サリチル酸、サルコシン、セリン、ソルビトール、コハク酸、シュセキ酸、テトラメタリン酸塩、チオ硫酸、スレオニン、トリメタリン酸塩、三リン酸塩、トリプトファン、ウリジン二リン酸、ウリジン三リン酸、n‐吉草酸、バリン、キサントシン。
【0128】
多数の上記金属イオン封鎖剤は、塩形態にて食品加工に有用であり、一般的にナトリウムあるいはカルシウムあるいは第4アンモニムウ塩等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属である。多価の金属イオン封鎖剤は、例えば食品系のコーティングにおいて、pH調整あるいは金属イオンの選択的導入もしくは吸収のために有益に利用することができる。キレート剤についての詳細は、T. E. Furia (Ed.), CRC Handbook of Food Additives, 2nd Ed., pp. 271−294(1972, Chemical Rubber Co.)並びにM. S. Peterson とA. M. Johnson (Eds.), Encyclopaedia of Food Science, pp. 694−699(1978, AVI Publishing Company, Inc.)にて開示されており、これら文献を参考のためこの明細に添付する。
【0129】
「キレート剤」という語は、金属と配位化物を形成することのできる有機あるいは無機化合物として定義される。また、「キレート剤」という語がこの明細で使用さているように、これにはシクロデキストリン等の分子カプセル化化合物が含まれる。キレート剤は無機あるいは有機であることができるが、有機であることが好ましい。
【0130】
好ましいキレート剤は哺乳類に対して無毒であり、これには、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)あるいはこれの塩(特に二ナトリウム塩並びに三ナトリウム塩)等のアミノポリカルボン酸類並びにこれらの塩、並びにクエン酸等のヒドロカルボン酸及びその塩が含まれる。しかし、本発明においては、酢酸、ギ酸、乳酸、酒石酸、及びこれらの塩等の、非クエン酸並びに非クエン酸塩のヒドロキシカルボン酸キレーター剤も有用であると考えられる。
【0131】
上記に記した通り、この明細において「キレート剤」という語は、金属イオン封鎖剤の同義語として定義されて使用され、またシクロデキストリン等の分子カプセル化化合物を含むものとして定義される。シクロデキストリンは、ドーナツ型の環状に配列する6個あるいは7個、8個のグルコース分子を有する環状炭水化物分子であり、これらはそれぞれアルファ‐あるいはベータ‐、ガンマ‐シクロデキストリンと表記される。この明細で使用される場合、シクロデキストリンは非修飾並びに修飾シクロデキストリンの単量体及び重合体を意味する。シクロデキストリン分子カプセル化剤は、インディアナ州Hammond のAmerican Maize−Products から市販されている。シクロデキストリンは、J. Szetliの「Industrial Applications of Cyclodextrin」と題されている、第3巻第11章のページ331〜390、Inclusion Compounds(Academic Press, 1984)にて詳細が記載されており、この章を参考のためこの明細に添付する。
【0132】
キレート剤がバクテリオシンの抗菌活性及び(あるいは)抗菌スペクトルを強化することが好ましい。より好ましくは、キレート剤が、グラム陰性細菌並びに他の微生物に対するバクテリオシンの抗菌活性及び(あるいは)抗菌スペクトルを強化する。
【0133】
我々は、キレート剤を使用することが、使用するバクテリオシンの抗菌活性及び(あるいは)抗菌スペクトルの強化という見地において特に効果的であることを見出した。このような強化は、カプセル化抗菌物質の送達方法あるいはカプセル化抗菌物質のシェルの性質に係わらず実行可能である。
【実施例】
【0134】
(実施例1 ピザ香味料のカプセル化)
最初に1.5 gのκ‐カラゲナンからなる110 mlの水溶液を85℃で調製する。これに110 mlの前加熱済み(80℃)水溶性液体ピザ香味料を加える。こうしてできた混合物を完全に混合する。次に、200 gの植物性トリグリセリド(GRINDSTED(登録商標) PS 101、融点58℃)と11 gのアセチル化乳化剤(Acetem 50 00)との混合物を、85℃の水浴中で溶解する。水性混合物をゆっくりと混合しながら、この溶解脂質混合物のホモジナイズ(Silverson mixer、8000 rpm)を続ける。このホモジナイズは全水性混合物を加えた後5分間継続し、次に撹拌を続けながら0.45 gのポリソルベート80からなる15 mlの水溶液を加える。次に、こうしてできる低粘度の油中水型エマルジョンを、Niroスプレー塔内で以下のパラメーターを用いて、直ちに噴霧冷却する。:入口空気温度10℃、出口空気温度28℃、回転噴霧器車輪速度10,000 rpm。ピザ芳香自由流動粉体が得られる。
【0135】
6インチの凍結したピザモデルに1.5 gの香味粉末を振りかけ、電子レンジで2分間、中高強度で加熱した。電子レンジから出した時、香味付けピザはコントロールのピザ試料と比較して、明らかに強いピザ芳香を有する。
【0136】
(実施例2 コーヒー香味料のカプセル化)
最初に1.5 gのκ‐カラゲナンからなる110 mlの水溶液を85℃で調製する。これに110 mlの前加熱済み(80℃)水溶性液体コーヒー香味料を加える。こうしてできた混合物を完全に混合する。次に、200 gの植物性トリグリセリド(GRINDSTED(登録商標) PS 101、融点58℃)と11 gのアセチル化乳化剤(Acetem 50 00)との混合物を、85℃の水浴中で溶解する。水性混合物をゆっくりと混合しながら、この溶解脂質混合物のホモジナイズ(Silverson mixer、8000 rpm)を続ける。このホモジナイズは全水性混合物を加えた後5分間継続し、次に撹拌を続けながら0.45 gのポリソルベート80からなる15 mlの水溶液を加える。次に、こうしてできる低粘度の油中水型エマルジョンを、Niroスプレー塔内で以下のパラメーターを用いて、直ちに噴霧冷却する。:入口空気温度10℃、出口空気温度28℃、回転噴霧器車輪速度10,000 rpm。コーヒー芳香の自由流動粉体が得られる。
【0137】
この香料粉末を熱水(90℃)に加えると、一分以内に強いコーヒーの香りが立つ。
【0138】
(実施例3 ナイシンのカプセル化)
最初に、pH 3.5のフタル酸緩衝液1000 ml内に15 gのκ‐カラゲナンからなる溶液を85℃で調製する。これに300 gの市販のナイシン抽出物(Nisaplin(登録商標)、Danisco)を加える。こうしてできた混合物を完全に混合する。同時に、1333 gの植物性トリグリセリド(GRINDSTED(登録商標) PS 101、融点58℃)と73 gのアセチル化乳化剤(Acetem 50 00)との混合物を、85℃の水浴中で溶解する。水性混合物をゆっくりと混合しながら、この溶解脂質混合物のホモジナイズ(Silverson mixer、8000 rpm)を続ける。このホモジナイズは全水性混合物を加えた後5分間継続し、次に撹拌を続けながら3 gのポリソルベート80からなる40 ml の水溶液を加える。次に、こうしてできる低粘度の油中水型エマルジョンを、Niroスプレー塔内で以下のパラメーターを用いて、直ちに噴霧冷却する。:入口空気温度10℃、出口空気温度28℃、回転噴霧器車輪速度10,000 rpm。自由流動粉体が得られる。カプセル化ナイシンをソーセージ、ソーゼージケーシング、肉製品、あるいはバクテリオシンを必要とする他の任意の食品生産物に続いて噴霧するための懸濁液へ混合することによって、カプセル化していないナイシン、あるいは従来の噴霧冷却をしたナイシンを懸濁液に使用する場合と比較して、遥かに安定したナイシン製剤が得られる。つまり、その食品生産物が低温殺菌されるまでの間のナイシンの残存率が劇的に改善される。例えば噴霧冷却したナイシンは懸濁液中で放出される、即ち、急速に分解されやすく、懸濁液中では3日後で57%の速度である。本実施例で提示したカプセル化ナイシンは、3日後にわずか7%という速度で放出される。
【0139】
(実施例4 ナイシンのカプセル化)
最初に、pH 3.5のフタル酸緩衝液1000 ml内に15 gのκ‐カラゲナンからなる溶液を85℃で調製する。これに300 gの市販のナイシン抽出物(Nisaplin(登録商標)、Danisco)を加える。こうしてできた混合物を完全に混合する。同時に、1333 gの植物性トリグリセリド(GRINDSTED(登録商標) PS 101、融点58℃)と73 gのアセチル化乳化剤(Acetem 50 00)との混合物を、85℃の水浴中で溶解する。水性混合物をゆっくりと混合しながら、この溶解脂質混合物のホモジナイズ(Silverson mixer、8000 rpm)を続ける。水性混合物を混合した後に、7 gの塩化カルシウウムからなる70 mlの水溶液を滴状に加える。ホモジナイズをさらに後5分間継続し、次に撹拌を続けながら3 gのポリソルベート80からなる40 ml の水溶液を加える。次に、こうしてできる低粘度の油中水型エマルジョンを、Niroスプレー塔内で以下のパラメーターを用いて、直ちに噴霧冷却する。:入口空気温度10℃、出口空気温度28℃、回転噴霧器車輪速度10,000 rpm。自由流動粉体が得られる。前に記載した通り、この実施例で提示するカプセル化ナイシンは、従来の噴霧冷却試料よりも、水性環境内においてはるかに安定性が高い。例えば、噴霧冷却したナイシンは懸濁液中で放出される、即ち、急速に分解されやすく、懸濁液中では3日後で57%の速度である。本実施例で提示するカプセル化ナイシンは、3日後でわずか0.1%という速度で放出される。
【0140】
(実施例5 塩化ナトリウムのカプセル化)
最初に15 gのκ‐カラゲナンからなる1000 mlの水溶液を85℃で調製する。これに585 gの塩化ナトリウムを加える。こうしてできた混合物を完全に混合する。同時に、1333 gの植物性トリグリセリド(GRINDSTED(登録商標) PS 101、融点58℃)と73 gのアセチル化乳化剤(Acetem 50 00)との混合物を、85℃の水浴中で溶解する。水性混合物をゆっくりと混合しながら、この溶解脂質混合物のホモジナイズ(Silverson mixer、8000 rpm)を続ける。このホモジナイズは全水性混合物を加えた後5分間継続し、次に撹拌を続けながら3 gのポリソルベート80からなる40 mlの水溶液を加える。次に、こうしてできる低粘度の油中水型エマルジョンを、Niroスプレー塔内で以下のパラメーターを用いて、直ちに噴霧冷却する。:入口空気温度10℃、出口空気温度28℃、回転噴霧器車輪速度10,000 rpm。自由流動粉体が得られる。
【0141】
(実施例6 ソルビン酸のカプセル化)
最初に15 gのκ‐カラゲナンからなる1000 mlの水溶液を85℃で調製する。これに300 gのソルビン酸を加える。こうしてできた混合物を完全に混合する。同時に、1333 gの植物性トリグリセリド(GRINDSTED(登録商標) PS 101、融点58℃)と73 gのアセチル化乳化剤(Acetem 50 00)との混合物を、85℃の水浴中で溶解する。水性混合物をゆっくりと混合しながら、この溶解脂質混合物のホモジナイズ(Silverson mixer、8000 rpm)を続ける。このホモジナイズは全水性混合物を加えた後5分間継続し、次に撹拌を続けながら3 gのポリソルベート80からなる40 mlの水溶液を加える。次に、こうしてできる低粘度の油中水型エマルジョンを、Niroスプレー塔内で以下のパラメーターを用いて、直ちに噴霧冷却する。:入口空気温度10℃、出口空気温度28℃、回転噴霧器車輪速度10,000 rpm。自由流動粉体が得られる。
【0142】
(実施例7 プロピオン酸カルシウムのカプセル化)
最初に15 gのκ‐カラゲナンからなる1000 mlの水溶液を85℃で調製する。これに300 gのプロピオン酸カルシウムを加える。こうしてできた混合物を完全に混合する。同時に、1333 gの植物性トリグリセリド(GRINDSTED(登録商標) PS 101、融点58℃)と73 gのアセチル化乳化剤(Acetem 50 00)との混合物を、85℃の水浴中で溶解する。水性混合物をゆっくりと加えながら、この溶解脂質混合物のホモジナイズ(Silverson mixer、8000 rpm)を続ける。このホモジナイズは全水性混合物を加えた後5分間継続し、次に撹拌を続けながら3 gのポリソルベート80からなる40 mlの水溶液を加える。次に、こうしてできる低粘度の油中水型エマルジョンを、Niroスプレー塔内で以下のパラメーターを用いて、直ちに噴霧冷却する。:入口空気温度10℃、出口空気温度28℃、回転噴霧器車輪速度10,000 rpm。自由流動粉体が得られる。このプロピオン酸カルシウムの放出速度を、バスケット法を用いて測定した。その曲線を図1に示す。
【0143】
(実施例8 プロピオン酸のカプセル化)
最初に40 gのアミド化低級エステルタンパク質からなる750 mlの水溶液を85℃で調製する。これに250 gのプロピオン酸を加える。こうしてできた混合物を完全に混合する。同時に、1333 gの植物性トリグリセリド(GRINDSTED(登録商標) PS 101、融点58℃)と73 gのアセチル化乳化剤(Acetem 50 00)との混合物を、85℃の水浴中で溶解する。水性混合物をゆっくりと混合しながら、この溶解脂質混合物のホモジナイズ(Silverson mixer、8000 rpm)を続ける。水性混合物を混合した後、5 gの塩化カルシウムからなる30 mlの水溶液を滴状に加える。このホモジナイズをさらに5分間継続し、次に撹拌を続けながら3 gのポリソルベート80からなる40 mlの水溶液を加える。次に、こうしてできる低粘度の油中水型エマルジョンを、Niroスプレー塔内で以下のパラメーターを用いて、直ちに噴霧冷却する。:入口空気温度10℃、出口空気温度28℃、回転噴霧器車輪速度10,000 rpm。自由流動粉体が得られる。
【0144】
(実施例8)
(材料と機器)
本発明の試料の調製に使用する全ての原材料の詳細を以下に示す。リン酸緩衝液は、22 mmolのリン酸を約1.8 Lの水道水に溶解して1 MのNaOHを加えてpHを3に調整し、正確に2 Lにして完了することによって調製した。
【0145】
【表1】

混合・乳化の工程は、Silverson Mixer L4R−T(Waterside−Chestam−Bucks, 英国)を用い、6000 rpmで丸穴乳化ヘッドを使用して実践した。本発明の全ての実験の最終噴霧冷却工程は、回転噴霧器車輪を備えた試作等級のNIROスプレー塔(Niro、デンマーク)にて行った。入口並びに出口の空気温度は、通常それぞれ10℃並びに30℃であった。噴霧器車輪は8000 rpmで作動させた。設定された出口空気温度に達するよう、塔内への供給流を手動で調節した。NMRの実験は、GU200(Bruker、ドイツ)上でPulse Gradient Spin Echo装置を用いることによって行った。
【0146】
(放出方法)
放出試験は、活性成分が投与形態(例えば錠剤、カプセル)から溶解する速度を測定するために製薬業界で用いられる、標準稀釈試験法(USP 27, Method 711, Apparatus 1)に基づく。この放出試験では、少量のカプセル化成分を金網のかごに入れ、次に水中に浸して回す。このかごを回すとカプセル化活性成分が放出され、これに相応して溶解液中に遊離した成分の量が増加する。カプセル化された成分の性質に応じて、続いて起こるpH変化、イオン濃度変化(特定のもの、あるいは全体の)によって、あるいはサンプリング及びこれに続くHPLC分析によって、溶解速度を測定することができる。溶解液中の成分量は、60分を超える試験時間ごとに測定し、「標準化」濃度(理論濃度値に比例する濃度で、カプセル化量に対する濃度。)という用語にて報告される。このデータから、時間経過に対する標準化濃度での増加量を示す放出曲線を作成することができる(例として図4を参照。)。
【0147】
(実施例 8.1 ゲル化ハイドロコロイド)
最初に、15 gのゲルとなるハイドロコロイドを1000 mLの水に加え、この溶液を加熱して85℃にする。前もって暖めておいた(40〜60℃)カプセル化する成分を、絶えず撹拌しながらこのハイドロコロイド溶液に加える。同時に1333 gの植物性トリグセリド(GRISTED(登録商標) PS 1010、融点58℃)と73 gのアセチル化乳化剤(Acetem 50 00)との混合物を、85℃の水浴中で溶解する。水性混合物をゆっくりと加えながら、この溶解した脂質混合物を高剪断撹拌器(Silverson mixer、8000 rpm)を用いて混合する。このホモジナイズは全ての水性混合物が加えられた後5分間継続してこの間撹拌を続け、その後3 gのポリソルベート80からなる40 mlの水溶液を加える。次に、こうしてできる低粘度の油中水型エマルジョンを直ちに噴霧冷却する。典型的にはNiroスプレー塔内で以下のパラメーターを用いる。:入口空気温度0〜10℃、出口空気温度25〜35℃、回転噴霧器車輪速度10000 rpm。
【0148】
(実施例8.2 架橋結合ハイドロコロイド)
架橋結合能を有するハイドロコロイドの1000 ml水溶液を、85℃にて調製する。これに、前もって暖めた(40〜60℃)カプセル化する成分を加える。できた混合物を完全に混合する。同時に、1333 gの植物性トリグセリド(GRISTED(登録商標) PS 1010、融点58℃)と73 gのアセチル化乳化剤(Acetem 50 00)との混合物を、85℃の水浴中で溶解する。水性混合物をゆっくりと混合しながら、この溶解脂質混合物をホモジナイズ(Silverson mixer、8000 rpm)する。水性混合物を混合した後、7 gの塩化カルシウムからなる70 ml水溶液を滴状に加える。ホモジナイズをさらに5分間続け、次に撹拌を続けながら3 gのポリソルベート80からなる40 mlの水溶液を加える。次に、こうしてできた低粘度油中水型エマルジョンを、Niroスプレー塔内で以下のパラメーターを用いて。直ちに噴霧冷却する。:入口空気温度0〜10℃、出口空気温度25〜35℃、回転噴霧器車輪速度10000 rpm。
【0149】
(試料)
上記の活性成分並びに被覆剤、カプセル化手法を組み合わせて、様々なカプセル化食品成分の系列を作り出した。下の表は作製して試験した試料の詳細をまとめたものである。
【0150】
【表2】

上記成分をカプセル化する特別な利点及び用途の背景については、前に説明している。
【0151】
プロピオン酸カルシウム:
噴霧冷却したプロピオン酸カルシウムは、保存剤として製パンに使用される市販品(PRO45)である。カプセル化によって、混合・イースト発酵の最初の15〜20分間の、プロピオン酸塩と酵母との有害な相互作用を防ぐ。プロピオン酸塩が緩やかに放出されることによって、カプセル化されないプロピオン酸カルシウムと比較して、適切な賞味期限と酵母の節約とが得られる。PRO45の代品として本発明のカプセル化製品を使用することは、以下の利点を有する。1)既に溶解したプロピオン酸塩を加えるので、極端なpHの「ホットスポット」のために時折発生する焦げを減らすことができる。並びに2)放出速度がより緩やかになる可能性があり、酵母のさらなる節約が可能になるとも考えられる。
【0152】
クエン酸はトルティーヤ等製パン製品のpHを下げるものであり、フマル酸等の他の有機酸が使用できない場合に保存剤として働く。
【0153】
ナイシンは、多数の用途において賞味期限を延ばし、微生物による損傷を防ぐために使用される強力な抗菌剤である。しかし、中性・アルカリ性のpHでは急速に分解され、またタンパク質であるために高温では本来不安定である。本発明のカプセル化ナイシンは、熱安定性の改善及び、食品加工中の過剰な分解を防ぐために必要とされる放出機能のさらなる制御を示すこともできる。可能な用途には、加工肉・マリネ肉製品、加工チーズ、サラダドレッシング、製パン製品等が含まれる。
【0154】
ベタインは魚類並びにエビ類の栄養摂取を補完するため飼料に使用される。しかし、ベタインは非常に吸湿性及び水溶解性が高く、動物に食べられる前に飼料ペレットから浸出するため、長期間に渡る魚類への一定量の給餌を確保することが難しい。本発明に従うカプセル化によって、早期溶解を防ぐこともできる。つまり、魚類へのべタインの効果的な給餌を確保することができる。噴霧冷却では、水媒体中で内容物を10〜15分以上内容物を保持するマイクロカプセルを作製することができない。これは魚類への給餌という用途には不十分な時間である。これらの問題点は、本発明に従ってカプセル化されたベタインによって解決が図られる。
【0155】
(8.3 結果)
(8.3.1 顕微鏡分析)
図2は、光学顕微鏡で観察した本発明の微粒子の一試料を示す(倍率200X)。噴霧冷却の結果生じた幾分不規則な形状の粒子がいくつかあるが、大半の粒子は球形をしている。この粒子の内部二層芯物質(例えばw/o型固形エマルジョン)は一つの塊として見える。この画像(及び類似の画像)から粒子の基質的性質を観察することはできない。
【0156】
図3は、予備実験中に得た、同様の本発明の微粒子のESEM(環境制御型走査電子顕微鏡)画像を示す。左図は網目構造を示し、画像の左上の破裂孔内にある2つの小さな球体が見える。右図では、別の3つの小球体が見える。これらの小球体粒子は、活性成分を包含し、ゲル化水性液滴に相当するより大きな物の内部に分布していることが仮説として考えられる。当該担体粒子がより大きな粒子の体部内に完全に埋め込まれているわけではないという事実から、最初の2、3分の間に成分が放出する初期破裂があったことが説明される。
【0157】
(8.4 本発明対噴霧冷却)
この明細にて説明したとおり、本発明は、従来の費用が掛からず処理量が高い噴霧冷却法及び、より費用が掛かかり処理量が低い流動床法に対する利点を提供する。上記に示したように本発明の物質は、噴霧冷却法の低い製造費用・高い処理量という利点を提供する。また以下で、本発明が通常流動床によって得られるさらに緩やかな放出速度を目指すことができることを示す。
【0158】
(プロピオン酸カルシウム)
噴霧冷却したプロピオン酸カルシウム及び本発明に従ってカプセル化されたプロピオン酸カルシウムの放出特性を、60分を超えて溶液の伝導度の増加を測定するバスケット法によって測定した。図4はカプセル化したプロピオン酸カルシウム試料とコンロールのプロピオン酸カルシウム試料(カプセル化されていない。)の2つの放出特性曲線を比較する(コントロールの「放出速度」は実質的には溶解液中のプロピオン酸塩の分解速度である。)。噴霧冷却したプロピオン酸カルシウムの放出速度は以前の実験と一致し、15分後に約75%が放出される。図に示すように、本発明のプロピオン酸カルシウムの放出速度は有意に遅く、15分後に放出されるのはわずか20%である。1時間後でさえ、プロピオン酸カルシウムの全有効量のわずか40%が放出されるのみであり、放出速度は減少した。これによって、残る60%を放出するにははるかに長い時間を必要とし、おそらく熱、刺激、あるいは他の引き金によってカプセルが崩壊することが必要とされるであろうことが示唆される。
【0159】
(クエン酸)
噴霧冷却によって調製したクエン酸試料と本発明に従って調整されたクエン酸試料の放出特性曲線を、マイクロカプセルから酸がゆっくりと放出されるように水のpHを下げることによって比較した。クエン酸の多荷電性を無視し、時間の関数として溶解液中のクエン酸濃度をpHから算出した。図5に示したとおり、15分後に約80%の噴霧冷却クエン酸が放出され、これは典型的な噴霧冷却試料と一致する。本発明のマイクロカプセル中のクエン酸の放出速度が噴霧冷却粒子中のクエン酸より著しく遅いことが図5によって明確に示される。40分後、非常に少量のクエン酸のみが本発明のマイクロカプセルから放出されていた。pHを非カプセル化試料並びに噴霧冷却試料の最終濃度へ到達させるには、続いてこの試料を20分間煮沸することが必要であった。この結果は、噴霧冷却試料と比較して、本発明のマイクロカプセルの硬さが増大していることを示している。即ち、カプセル化クエン酸を大量に放出するには、前もって油脂コーティングとハイドロコロイドを完全に溶解させなければならない。
【0160】
(ナイシン)
噴霧冷却試料中のナイシンと本発明のカプセル化試料中のナイシンの放出速度を、30℃の0.02 N HCl水性溶解液中で測定した。1日目、2日目、及び10日目に採取した部分試料をナイシン含量についてHPLC分析した。この分析から溶解液中に存在する活性ナイシンの量を定量した。これは実際にマイクロカプセルから放出されたナイシンの合算であり、酸性溶液中で時間経過と共に分解される量よりも少ない。溶解液のpHを低くすることでナイシンの分解は最小になるが、完全に妨げられはしない。ナイシンの高分子的性質のため、噴霧冷却粒子中のナイシンの放出速度は典型的な水溶性成分よりもはるかに遅い(分単位に対して日単位。)。つまり、油脂基質を通過するナイシンの拡散は、その大きな分子量(3353 g/mol)のために遅い。一方図6は、ナイシンのマイクロカプセルからの放出が噴霧冷却粒子からの放出よりもはるかに遅いことを明確に示している。本発明の試料では、20%放出の平坦部に2日後に到達しているが、噴霧冷却試料では2日後に50%の放出を示し、さらに10日後には60%の放出に増加している。
【0161】
(8.5 ハイドロコロイドの影響)
本発明に従ってカプセル化された成分の放出速度を、水相をゲル化するために使用するハイドロコロイドを選択することによって微調整できるか否かを検討するためのモデル成分として、ベタインを選択した。様々なハイドロコロイドを用いて、本発明に従ってカプセル化したベタインのシリーズを調製した。これらのハイドロコロイドは冷却によってゲル化するかあるいは2価イオンと反応させることによって架橋結合するものである。放出速度は、60分を超えて試料を採取してHPLCを用いるバスケット法によって測定した(屈折率検出器を使用。)。図7は、本発明に従ってカプセル化されたベタイン試料の放出特性曲線を示している。ここではハイドロコロイドのみが異なっており、つまり内部水相のゲル化機構のみが異なる。
【0162】
図7ではデータを3つの異なるグループに分類することができる。最も早く放出する試料群と最も遅く放出する試料群の放出特性曲線の間には、優位な違いがある。15分後、最も早く放出する試料は最も遅く放出する試料の2倍量が放出されている。興味深いことに、速い放出速度を有する試料の水相は、冷却によってゲル化するものであり(例えばそのハイドロコロイドはカラゲナンあるいはペクチン1400、LBG及びカラゲナンもしくはキサンタンの混合物のいずれかである。)、一方放出の遅い試料の水相はハイドロコロイドの架橋結合によってゲル化するものである(アルギン酸塩あるいはペクチン2580)。寒天は例外である。冷却によってゲル化するがその放出特性曲線は放出が遅い試料に近いと分類される。
【0163】
(表4 本発明のマイクロカプセル内の水の緩和時間)
また、パルス低磁場NMRによって、本発明のマイクロカプセルの強度に対するハイドロコロイドの影響を調べた。本マイクロカプセル内側部分の水分子の緩和時間T2を測定することによって、ゲル化したあるいは架橋結合した水性液滴の相対的安定度を評価した。下の表は、パルスシーケンス後のNMR強度の減衰に最も合う時間定数示す。緩和時間は通常、その環境中の分子の運動度に直接関係する。緩和時間が長ければ、分子が分子間及び分子内の平衡移動並びに回転移動が制限される、より硬い環境が伴う。下の表は、ゲル化したカラゲナン液滴内の水分子の緩和時間が、架橋結合したアルギン酸塩の液滴よりも短いことを示す。この結果は、本発明のマイクロカプセル内の水相は、アルギン酸塩で調製された場合にカラゲナンで調製された場合よりも硬いことを示唆している。これを拡大して我々は、アルギン酸塩ベースの水相の他の成分もまたその動きを制限されており、このためマイクロカプセルの外へ拡散する可能性がより低い、あるいは拡散が最小である、拡散がよりゆっくりとした速度となると推論することができる。この結果は図7の放出特性曲線と一致し、これはアルギン酸塩ベースのマイクロカプセルはカラゲナンベースのマイクロカプセルよりもゆっくりと内容物を放出することを示している。
【0164】
【表3】

(8.5 凍結が誘発する放出)
本発明のマイクロカプセルは、典型的には30〜40%の水を含有する。我々はマイクロカプセル中に存在する水が凍結によって結晶となって膨張し、脂質層を破裂させてカプセル化されている成分の放出を促進することを見出した。即ち、凍結に基づく誘発が提供される。図8は、凍結した本発明のマイクロカプセルの透過型光学顕微鏡画像を示している。この画像は、凍結の過程で内部の水が膨張することにより、脂質層が破裂したことを明確に示している。
【0165】
(8.6 用途の試行)
(加工チーズにおけるカプセル化ナイシンの熱安定性)
【0166】
【表4】

* 実施例8.2のナイシン/アルギン酸塩試料
(加工チーズのナイシン)
本発明に従ってカプセル化されたナイシンを加工チーズ組成物に混和し、10分間熱処理を行った。上の表は、カプセル化されていないナイシンは最も低い温度でも実質的に分解していることを示している。60℃及び100℃での回収率はそれぞれ74%及び59%である。本発明のカプセル化及び噴霧冷却は、ナイシンの分解を減らす可能性のある手段である。このように、噴霧冷却は全ての温度での分解を抑えて約25%の減少としたが、本発明に従うカプセル化によってより低い温度での保護作用が増大し、より高い温度では噴霧冷却による作用と同様の保護作用が得られた。これらの試行によって、本発明に従うカプセル化がナイシンの熱分解に対する実行可能な保護手段であることが確認された。本発明は中程度の温度において特に有効な解決法である。
【0167】
(ピザ香味料)
1)マイクロカプセル化した香味料を加えない、2)低量の(ピザ重量に対して1% w/w)本発明に従ってカプセル化したピザ香味料を加えた、3)高量の(ピザ重量に対して2% w/w)本発明に従ってカプセル化したピザ香味料を加えた、冷凍ピザを調整した。次にこのピザを電子レンジの強で3分間加熱し、「パネル」によるブラインドテスト(盲検)を行った。低量あるいは高量のカプセル化香味料をピザに加えた場合、電子レンジの扉を開けるとパネル全員が部屋内の、コントロ‐ルと比較してはるかに強いピザ芳香に気づいた。試食後、4人のパネルのうち3人が、強化ピザの芳香度がコントロールのピザよりも少々高いと評価した。
【0168】
この結果は、電子レンジ加熱によって本発明に従ってカプセル化された成分放出の引き金を引くことができることを示唆している。マイクロカプセル内側部分の水性液滴が電子レンジのエネルギーを吸収し、膨張して破裂し、脂質壁が割れ、これによって急速に水が進入する機構であると推定される。
【0169】
(考察)
本発明に従ってカプセル化された成分が、有意にかつ常に噴霧冷却したものよりもゆっくりとした放出特性を有することを我々は示してきた。典型的には、噴霧冷却試料は15分後にその含量の80%を放出したが、本発明の試料は同じ時間後にその含量の20〜40%を放出している。典型的には、噴霧冷却では含量のうちの半量が放出されるのに5分しかかからないが、本発明の試料では通常60分後にこの限度に達する。本発明は、カプセル化した成分の放出を遅らせるという点で噴霧冷却よりも能率が良い。
【0170】
また、カプセル化された成分の大部分は常温で水性環境中に放出されないことを我々は示した。これは、比較的短い時間内に、シェルマトリックスを溶解させる必要もなく、最終的に全量を放出する噴霧冷却試料と明確な対比をなす。噴霧冷却成分はその脂質壁の融点を超えた時のみ放出されるということは、広く受け入れられている。また、成分の放出は、マイクロカプセル内部の水相を凍結することによって誘発することができることが確立された。
【0171】
また、水相をゲル化・架橋結合するためのハイドロコロイドを適切に選択することによって、本発明のカプセル化試料の放出特性を微調整することができることが、実験によって示された。
【0172】
上記明細にて言及した全ての文献を参考のためこの明細に添付する。様々な変法及び、記載した本発明の手法並びに工程の変法は、本発明の範囲及び本質から解離しない限り、当分野の技術者にとって明白なものである。具体的な好ましい実施例と関連づけて本発明を記載したが、請求される本発明は当該実施例に不当に制限されないと理解されるべきである。実際、化学あるいは関連する分野の技術者に明白な、本発明を実践するために記載された方法の様々な変法は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】図1は実施例7の結果のグラフ表示である。これは、カプセル化されたプロピオン酸カルシウムの放出速度と、従来の噴霧冷却プロピオン酸カルシウムの放出速度との比較を図示する。
【図2】図2は本発明のマイクロカプセルの透過型光学顕微鏡像である。
【図3】図3は本発明のマイクロカプセルのESEM画像である。
【図4】図4は、噴霧冷却したプロピオン酸Ca2+並びに発明されたプロピオン酸Ca2+、非カプセル化プロピオン酸Ca2+の放出特性曲線を比較するグラフである。
【図5】図5は、噴霧冷却クエン酸並びに発明されたクエン酸、非カプセル化クエン酸の放出特性曲線を比較するグラフである。
【図6】図6は、噴霧冷却ナイシン並びに本発明のナイシンの30℃での放出特性曲線を比較するグラフである。
【図7】図7は本発明のベタイン試料の放出特性曲線を比較するグラフである。
【図8】図8は、凍結した本発明のマイクロカプセルの透過型光学顕微鏡像であり、結晶化による内部水相の膨張のため生じた脂質粒子の深割れを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルであって、
固化した疎水性シェルマトリックス;
カプセル化された水性ビーズであって、該ビーズは、該固化した疎水性シェルマトリックス内に、または該シェルマトリックスによって、さらにカプセル化されている、カプセルかされた水性ビーズ;および
該カプセル化された水性ビーズ内に溶解しているかまたは組み込まれている、活性成分、
を含有する、マイクロカプセル。
【請求項2】
前記カプセル化された水性ビーズが、水性ハイドロコロイドビーズであることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
前記カプセル化されたハイドロコロイドビーズが、ゲル化されたハイドロコロイドビーズ、または架橋したハイドロコロイドビーズであることを特徴とする、請求項1または2に記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
前記カプセル化された水性ビーズが、適切なカプセル化物質を使用するコアセルベーションによってカプセル化されている、請求項1または2に記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
コアセルベーションにおいて使用される、前記カプセル化物質が、セラック、ゼイン、任意の合成疎水性ポリマーもしくは天然疎水性ポリマー、脂肪、乳化剤、蝋、逆に荷電したハイドロコロイドの任意の混合物(例えば、ゼラチン/アラビアゴム、ゼラチン/CMC、任意のタンパク質/イオン性ハイドロコロイド)、ハイドロコロイドと溶解度低下剤(例えば、塩、糖、酸もしくは塩基)との任意の組み合わせ、または酢酸イソブチル酸スクロース(SAIB)ダマールゴム、およびウッドロジンのグリセリルエステル、あるいはこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
前記カプセル化された水性ビーズが、適切なカプセル化物質を使用する焼結によってカプセル化されることを特徴とする、請求項1または2に記載のマイクロカプセル。
【請求項7】
焼結において使用される前記カプセル化物質が、任意の水不溶性マイクロ粒子(例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、食品等級の合成ポリマービーズもしくは食品等級の天然ポリマービーズ)、または任意の水不溶性固体粒子からなる群より選択されることを特徴とする、請求項6に記載のマイクロカプセル。
【請求項8】
前記カプセル化された水性ビーズが、保存温度より高いゲル化温度を有する食品等級の任意のハイドロコロイドを含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項9】
前記カプセル化された水性ビーズが、架橋し得る食品等級の任意のハイドロコロイドを含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項10】
前記ハイドロコロイドが、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ゲランガム、澱粉、化工澱粉、ガーゴム、ペクチン、アミド化ペクチン、カラゲナン、ゼラチン、キトサン、メスキートガム、寒天ゴム、ヒアルロン酸、乳清タンパク質、ダイズタンパク質、カゼイン酸ナトリウム、キサンタン/イナゴマメガム混合物、セルロース誘導体(例えば、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース(CMC))、ユードラジット(Eudragit)(登録商標)などのメチルアクリル酸共重合体、オオバコ、タマリンド、キサンタン、イナゴマメゴム、乳清タンパク質、ダイズタンパク質、カゼイン酸ナトリウム、セラック、ゼイン、任意の合成水溶性ポリマーもしくは天然水溶性ポリマー、任意の食品等級のタンパク質、およびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項8または9のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項11】
前記疎水性シェルマトリックスが、動物油および動物脂肪、完全水素化植物油もしくは完全水素化動物油、部分水素化植物油もしくは部分水素化動物油、不飽和脂肪酸もしくは部分水素化脂肪酸もしくは完全水素化脂肪酸、不飽和脂肪酸モノグリセリドもしくは部分水素化脂肪酸モノグリセリドもしくは完全水素化脂肪酸モノグリセリドおよび不飽和脂肪酸ジグリセリドもしくは部分水素化脂肪酸ジグリセリドもしくは完全水素化脂肪酸ジグリセリド、モノグリセリドもしくはジグリセリドの不飽和エステル化脂肪酸もしくは部分水素化エステル化脂肪酸もしくは完全水素化エステル化脂肪酸、不飽和遊離脂肪酸もしくは部分水素化遊離脂肪酸もしくは完全水素化遊離脂肪酸、他の乳化剤、動物性蝋、植物性蝋、鉱物蝋、合成蝋、天然樹脂および合成樹脂、ならびにこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項12】
前記活性成分が、矯味矯臭剤、香味増強剤、栄養素、ビタミン、保存剤、醗酵剤、微生物、酸味料、酸化防止剤、色素、酵素、気体類、増粘剤、および他の任意の食品成分もしくは製薬成分(例えば、抗生物質、抗菌物質、抗炎症剤、鎮痛剤、鎮静剤、催眠剤、抗不安薬、抗ヒスタミン剤、抗不整脈薬、抗高血圧剤、抗パーキンソン病薬およびホルモン)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項13】
1つのマイクロカプセルが、前記疎水性シェルマトリックス内に包埋された、約1〜100個の水性ビーズを含有し、好ましくは、5〜50個の水性ビーズが、前記疎水性シェルマトリックス内に包埋されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項14】
マイクロカプセルを調製するための方法であって、以下の工程:
a)水相、および該水相内に分散したかもしくは組み込まれた活性成分を提供する工程、
b)融解形態の疎水性相を提供する工程、
c)カプセル化物質またはカプセル化物質の混合物を、該水相または該疎水性相に組み込むか、または溶解する工程、
d)該水相を該疎水性層と合わせ、そして該合わせた相をホモジナイズまたは混合して、油中水エマルジョンを形成する工程、
e)該エマルジョン中に該水相をカプセル化する工程であって、これによって、カプセル化された水性ビーズを含有する分散物が形成され、そして該活性成分が、該水性ビーズ内にカプセル化されている、工程、ならびに
f)工程e)において得られた分散物を処理して、マイクロカプセルを形成する工程であって、ここで、該カプセル化された水性ビーズが、さらに、該固化した疎水性シェルマトリックス内にカプセル化されるか、または該疎水性シェルマトリックスによってカプセル化される、工程、
を包含する、方法。
【請求項15】
前記水相が、水、および水と他の任意の水混和性溶媒(例えば、エタノール、エチレングリコール、グリセロール)との混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カプセル化物質が、ハイドロコロイド、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ゲランガム、澱粉、化工澱粉、ガーゴム、寒天ゴム、ペクチン、アミド化ペクチン、キサンタン、カラゲナン、ゼラチン、キトサン、メスキートガム、ヒアルロン酸、セルロース誘導体(例えば、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース(CMC))、ユードラジット(Eudragit)(登録商標)などのメチルアクリル酸共重合体、オオバコ、タマリンド、キサンタン、イナゴマメゴム、乳清タンパク質、ダイズタンパク質、カゼイン酸ナトリウム、任意の食品等級のタンパク質、セラック、ゼイン、任意の合成水溶性ポリマーもしくは天然水溶性ポリマー、任意の水不溶性マイクロ粒子(例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、食品等級の合成ポリマービーズもしくは食品等級の天然ポリマービーズ)、および焼結を受けやすい任意の水不溶性固体粒子からなる群より選択されることを特徴とする、請求項14または15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記疎水性相が、動物油および動物脂肪、完全水素化植物油もしくは完全水素化動物油、部分水素化植物油もしくは部分水素化動物油、不飽和脂肪酸もしくは部分水素化脂肪酸もしくは完全水素化脂肪酸、不飽和脂肪酸モノグリセリドもしくは部分水素化脂肪酸モノグリセリドもしくは完全水素化脂肪酸モノグリセリドおよび不飽和脂肪酸ジグリセリドもしくは部分水素化脂肪酸ジグリセリドもしくは完全水素化脂肪酸ジグリセリド、モノグリセリドもしくはジグリセリドの不飽和エステル化脂肪酸もしくは部分水素化エステル化脂肪酸もしくは完全水素化エステル化脂肪酸、不飽和遊離脂肪酸もしくは部分水素化遊離脂肪酸もしくは完全水素化遊離脂肪酸、他の乳化剤、動物性蝋、植物性蝋、鉱物蝋、合成蝋、天然樹脂および合成樹脂、ならびにこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記水相と前記疎水性相とを合わせる工程が、混合によって実施されることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
工程d)における前記ホモジナイズする工程が、高せん断混合またはインライン混合によって実施されることを特徴とする、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記カプセル化する工程が、ゲル化、架橋、コアセルベーションまたは焼結によって実施されることを特徴とする、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記コアセルベーションによるカプセル化が、カプセル化物質を使用し、そして該カプセル化物質の溶解度を低下させることによって実施されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記カプセル化物質の溶解度が、温度を変化させること、pHを変化させること、展開剤を添加すること、またはハイドロコロイドもしくは任意の適切なコアセルベーション誘導剤を添加することによって低下されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カプセル化物質が、セラック、ゼイン、任意の合成疎水性ポリマーもしくは天然疎水性ポリマー、および脂肪、乳化剤、蝋、またはこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記焼結によってカプセル化する工程が、カプセル化物質として固体マイクロ粒子を使用することによって実施されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記マイクロ粒子が、該マイクロ粒子をその焼結温度またはガラス転移温度より高温に曝露することによって、前記水相の周りに連続的なフィルムとして融合することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記カプセル化物質が、任意の水不溶性マイクロ粒子(例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、食品等級の合成ポリマービーズもしくは食品等級の天然ポリマービーズ)、または任意の水不溶性固体粒子からなる群より選択されることを特徴とする、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記水相をカプセル化する工程が、ゲル化によって実施され、そして前記エマルジョン中での該水相のゲル化が、該エマルジョンの温度を、該カプセル化物質のゲル化温度より低い温度まで低下させることによって実施されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記カプセル化物質が、ゲル化ハイドロコロイド(例えば、カラゲナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉、寒天ゴム、ガーゴム)およびキサンタンとイナゴマメゴムとの混合物、または任意のゲル化ハイドロコロイドの混合物からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記水層のカプセル化が、カプセル化物質を使用することにより架橋することによって実施され、該カプセル化物質は、任意の食品等級のタンパク質(例えば、ダイズタンパク質、乳清タンパク質、ゼラチンカゼイン酸塩)、または澱粉、化工澱粉、キトサン、セルロース誘導体(例えば、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース(CMC))、ユードラジット(Eudragit)などのメチルアクリル酸共重合体、熱、pHもしくは化学的処理による架橋を受けやすい任意の合成水溶性ポリマーもしくは天然水溶性ポリマー、ならびにこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記架橋が、加熱すること、圧力を付与すること、または酵素的架橋によって実施されることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
工程f)における前記加工する工程が、噴霧冷却によって実施されることを特徴とする、請求項14〜30に記載の方法。
【請求項32】
工程f)における前記加工する工程が、流動床冷却によって実施されることを特徴とする、請求項14〜30に記載の方法。
【請求項33】
前記活性成分が、矯味矯臭剤、香味増強剤、栄養素、ビタミン、保存剤、醗酵剤、微生物、酸味料、酸化防止剤、色素、酵素、気体類、増粘剤、および他の任意の食品成分もしくは製薬成分からなる群より選択されることを特徴とする、請求項14〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
1つのマイクロカプセルが、前記疎水性シェルマトリックス内に包埋された、約1〜100個の水性ビーズを含有することを特徴とする、請求項14〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
1つのマイクロカプセルが、前記疎水性シェルマトリックス内に包埋された、5〜50個の水性ビーズを含有することを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項14〜35のいずれか1項に記載の方法によって得られるか、または得ることが可能である、マイクロカプセル。
【請求項37】
食品産業における添加剤としての、請求項1〜13または36のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの使用。
【請求項38】
矯味矯臭剤、保存剤またはバクテリオシン剤としての、請求項1〜13または36のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの使用。
【請求項39】
薬学的用途における請求項1〜13または36のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの使用。
【請求項40】
デポー製剤または経皮投与システムにおける、請求項39に記載のマイクロカプセルの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−503293(P2007−503293A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523668(P2006−523668)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003406
【国際公開番号】WO2005/018794
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】