説明

マイクロプロセッサの温度監視制御装置、およびマイクロプロセッサの温度監視制御方法

【課題】
組み込みコントローラに設けられたMPUの異常発熱を保護するために、MPUへ供給される複数の電源の停止制御を規定シーケンスに従って正常に行うようにする。
【解決手段】
組み込みコントローラのオンボードに、MPUと、MPUに多電源を供給する電源供給回路と、MPUとは別の電源系統によって動作する小型マイコンと、MPUの温度を検出する温度センサとを設置し、温度センサが異常温度を検出したときには、小型マイコンは電源供給回路に対してMPU停止信号を出力するとともに、このMPU停止信号は、予めプログラムされた規定シーケンスに従い出力される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプロセッサの温度監視制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MPU(Micro Processing Unit)に代表されるマイクロプロセッサとFPGA(Field Programmable Gate Array)とを搭載した組み込みコントローラが、各種制御機器に広く使用されるようになってきている。MPUの設置環境や動作状態によっては、MPUがその動作保障温度を超えて異常発熱してしまう可能性がある。そうすると、当該MPUを基本構成とした演算システムの誤動作が引き起こされてしまい、所望の出力を得ることができなくなる。そこで、MPUがその動作保障温度を超えてしまわないような対策を施す必要がある。
【0003】
一般に、マイクロプロセッサに温度センサを設け、マイクロプロセッサの温度を監視して、異常過熱を検出した場合には、マイクロプロセッサへの電力供給を停止または制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この事例の制御について、図4を用いて説明する。図4に記載されたシステムは、複数のプロセッサカード403を有するプロセッサユニット401と、プロセッサユニット401に対して電源を供給する電源部402とを有し、さらに、各プロセッサカード403に温度センサ404を設置し、各温度センサ404で検出した温度の情報を入力するユニット内過熱温度判定回路405と、このユニット内過熱温度判定回路405で演算された結果を受信する制御回路406と、制御回路406により駆動されるスイッチ素子407とを設けた構成である。そして、このシステムは、温度センサ404で検出した温度が予め設定された値を超えた場合に、制御回路406によりスイッチ素子407を開いて、プロセッサカード403への電源の供給を停止することによって、プロセッサカード403の加熱保護を行うようにしている。
【0004】
しかしながら、組み込みコントローラに使用されるMPUの場合、電源を単純に停止させるとMPUの内部レジスタに記憶された情報がクリアされてしまい、復帰時に停止時前の状態に戻らない。この対策として、停電時バックアップ用電源と記憶装置を備え、電源停止等の例外処理発生時に内部レジスタに記憶された情報を記憶装置に退避させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−38357号公報
【特許文献2】特開平6−250860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MPUは複数の電源を有しており、電源停止前の状態にMPUを戻すために予め定められた電源停止の規定シーケンスによる制御を行う必要があるが、MPU自身の過熱のために規定シーケンスに従った制御ができない可能性がある。
【0007】
本発明は、組み込みコントローラに設けられたMPU等のマイクロプロセッサの異常発熱を保護するために、マイクロプロセッサへ供給される複数の電源の停止制御を規定シーケンスに従って正常に行うようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、組み込みコントローラのオンボードに、マイクロプロセッサと、マイクロプロセッサに多電源を供給する電源供給回路と、マイクロプロセッサとは別の電源系統によって動作する小型マイコンと、マイクロプロセッサの温度を検出する温度センサとを設置し、温度センサが異常温度を検出したときには、小型マイコンは電源供給回路に対してマイクロプロセッサの停止信号を出力するとともに、このマイクロプロセッサ停止信号は、予めプログラムされた規定シーケンスに従い出力される構成としたものである。
【発明の効果】
【0009】
上記構成により、組み込みコントローラに設けられたマイクロプロセッサの異常発熱を保護するために、マイクロプロセッサへ供給される複数の電源の停止制御を規定シーケンスに従って正常に行うようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、組み込みコントローラの概略構成図である。また、図2は、MPUの電源が停止するまでの手順を示すフローチャートである。図1において、組み込みコントローラのオンボード上に搭載されたMPU102の温度を監視する温度検出IC101を配置する。温度の検出方法は、サーミスタや熱電対等の接触式と放射温度計に代表される非接触式とがあり、任意の既存の方法を用いる。温度検出IC101は、温度を検出するだけでなく、測定値が設定された閾値に達すると、上位のシステムへ信号を出力できる仕様のものとする。この閾値は、MPU102が許容できるジャンクション温度の定格値に対応する温度検出IC101の検出値を設定する。
【0012】
MPU102の温度が設定された閾値に達すると(図2のステップ201)、温度検出IC101は、小型マイコン103へ異常温度検出信号を送信する(ステップ202)。MPU102は、多電源を使用しており、その停止には規定されたシーケンスを守る必要がある。また、システムを停止するための処理を行う時間が必要である。
【0013】
オンボードには、MPU102へMPU供給電源を供給する電源供給回路104と、小型マイコン103へ電源を供給する独立電源105が設けられ、バックプレーン106から電源供給回路104と独立電源105へ外部供給電源が供給され、レギュレータによって降圧する。
【0014】
小型マイコン103は、MPU102に多電源を供給する電源供給回路104の各電源を制御できるように電源供給回路104に接続されており、温度検出IC101からの異常温度検出信号を受けて、MPU102のシャットダウンを実行する。MPU102の異常温度検出の信号を受けた小型マイコン103は、MPU102が異常発熱状態であることを、オンボードに設けられたLED107を点灯させることによって表示する。
【0015】
その後、MPU102のシャットダウン処理が、プログラムされた規定のシーケンスに従って小型マイコン103で実行され、電源供給回路104へMPU電源供給停止信号が送信され(ステップ203)、電源供給回路104からMPU102へ供給される各MPU供給電源が停止される(ステップ204)。システムの停止処理に必要な時間は、例えば2ms程度である。制御できる電源数は小型マイコン103のI/O出力数に依存するので、MPU102への電源の数に従って小型マイコン103を選択する必要がある。
【0016】
MPU102の再起動は、小型マイコン103のリセットによってのみ行い、その操作はバックプレーン106からの電源供給を停止し再投入することで行われる。MPU102の再起動以降は、LED107が消灯される。
【0017】
図3は、MPU停止処理を示すシーケンス図である。小型マイコン103に異常温度検出信号が送信されたタイミング301でシーケンスが起動し、時間302で示すように、「TEMPALERT」が2ミリ秒経過してからMPU電源供給停止信号がタイミング303で起動する。MPU電源供給停止信号は、例えば、はじめに「1.2VSHUTDOWN」が開始され、順次「1.8VSHUTDOWN」,「2.5VSHUTDOWN」,「3.3VSHUTDOWN」が実行される。
【0018】
以上述べたように、本発明の実施例によれば、MPUの異常温度を検出し、MPUとは独立した電源で動作させるようにした小型マイコンを用いて、MPUへ供給される多電源を、規定のシーケンスに従って停止させるようにすることができる。そして、MPUの内部レジスタに記憶された情報がクリアされる等の、電源復帰時の問題を解決して、MPUが正常に復帰できるようになるという効果をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】組み込みコントローラの概略構成図。
【図2】MPUの電源が停止するまでの手順を示すフローチャート。
【図3】MPU停止処理を示すシーケンス図。
【図4】従来技術を示す、装置構成図。
【符号の説明】
【0020】
101 温度検出IC
102 MPU
103 小型マイコン
104 電源供給回路
105 独立電源
106 バックプレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み込みコントローラのオンボードに、マイクロプロセッサと、該マイクロプロセッサに多電源を供給する電源供給回路と、前記マイクロプロセッサとは別の電源系統によって動作する小型マイコンと、前記マイクロプロセッサの温度を検出する温度センサとを設置し、該温度センサが異常温度を検出したときには、前記小型マイコンは電源供給回路に対して前記マイクロプロセッサの停止信号を出力するとともに、該マイクロプロセッサの停止信号は、予めプログラムされた規定シーケンスに従い出力されることを特徴とするマイクロプロセッサの温度監視制御装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記小型マイコンには、前記マイクロプロセッサとは独立した電源が供給されることを特徴とするマイクロプロセッサの温度監視制御装置。
【請求項3】
請求項1の記載において、前記小型マイコンは、前記温度センサが異常温度を検出したときには、前記マイクロプロセッサが異常温度になったことを示す表示を行うことを特徴とするマイクロプロセッサの温度監視制御装置。
【請求項4】
組み込みコントローラのオンボードに配置されたマイクロプロセッサの温度が、予め設定された閾値を超えた場合、該マイクロプロセッサに供給される多電源を予め定められた規定のシーケンスで停止することを特徴とするマイクロプロセッサの温度監視制御方法。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記マイクロプロセッサの温度が、予め設定された閾値を超えた場合には、前記マイクロプロセッサが異常温度になったことを示す表示を行うことを特徴とするマイクロプロセッサの温度監視制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−129137(P2009−129137A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302492(P2007−302492)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】