説明

マイクロ・ブラインド・ビアの埋め込み方法

本発明は以下の工程を含んでなるプリント基板製造におけるμ−ブラインド・ビアの埋め込み方法を提供する。(i)銅金属塩と任意に有機添加剤とを含んでなる、電気めっきにより金属被覆を施すための電解質浴を準備する工程、(ii)前記浴を、電流密度0.5〜10A/dmの直流または有効電流密度0.5〜10A/dmの電流パルスで運転する工程、(iii)前記電気浴から前記電解質の一部を取り出す工程、(iv)前記取り出された電解質の一部に酸化剤を添加する工程、(v)任意に、前記取り出された電解質に紫外線を照射する工程および(vi)前記取り出された部分を前記電気浴へと戻し、かつ、酸化処理によって破壊された有機添加剤を補充する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の製造におけるいわゆるμ−ブラインド・ビア(μ−BVs)の新規な埋め込み方法に関する。このようなμ−BVsは、プリント基板の少なくとも2つの層の間を導電接続する経路を形成する。「μ−BVs」という表現は、ビアの孔径が(IPCに準じて)0.15mm未満である場合または孔密度が1,000ビア/dmより大きい場合に用いられる。
【背景技術】
【0002】
通常の製造条件下において、銅めっき電解質は徐々に劣化してゆくが、この劣化によって銅析出物の品質が低下し、さらにはめっき処理工程が全く進行しなくなる。一般的な銅めっき用の銅電解質の耐用寿命は、数週間から数年間である。しかしながら、μ−BVsを埋め込むために用いられる電解質として現在知られているものは、非常に短い耐用寿命しか示さない。標準的な耐用寿命は、100Ah/lほどの短い期間、すなわち、数週間から数ヶ月間であろう。一般に、電解質の劣化は、用いられている添加物の分解生成物によって、異物の混入によって、ならびに基材およびフォトレジストの浸出によって生じる。
この電解質の劣化によって多大な費用が生じるが、その理由は、前記劣化によって新しい溶液を頻繁に調製することが必要となり、また、使用済み溶液の高コストな廃棄処理が余儀なくされるからである。μ−ブラインド・ビアの埋め込みは、工程の安定性および制御に関してより高い性能を必要とするという点で、ドリル孔の銅めっきのごとき、プリント基板を電気めっきするための他の一般的な方法とは著しく異なる。ドリル孔の銅めっきでは、用いられるめっき浴の耐用寿命は、500〜1,000Ah/lであろう。ドリル孔の金属めっき並びに回路の作製だけでなく、μ−BVsの埋め込みにも用いられる電解質が必要とする工程安定性に関するより高い性能は、特異的に適合した有機添加剤によって実現することができる。
【0003】
しかしながら、公知の特定の銅電解質を用いた場合、約100Ah/lの運転時間が経過しただけで、もはやμ−BVsを埋め込むことができなくなる。そのような運転時間が経過すると、μ−ブラインド・ビアは、埋め込まれるというよりはむしろトレースされるだけである(図2参照)。さらなる処理を施さなければ、電気めっき浴はこの段階で交換されなければならない。一方、標準的な用途の場合、前記浴は、許容範囲内のめっき品質をまだ提供することができる。
【0004】
μ−ブラインド・ビアを埋め込むために用いられる銅電気めっき浴の短い耐用寿命の問題を解決するために、従来技術において、いくつかの試みがなされている。
EP1264918A1には、空電解フェーズにおいて不活性アノードを用いることによって電解質の埋め込み能を維持および向上させることが記載されている。
EP1219729A1によれば、ホルムアルデヒドのごとき化学物質または酸化剤を用いることによって電解質の耐用寿命が延長される。この文献によれば、添加剤(特に、ホルムアルデヒド)の作用機構は、光沢剤とその分解生成物の平衡に対する作用と関連付けて説明することができる。
【0005】
DE19525509C2には、電気めっきによって製品に金属被覆を施すための浴を再使用または連続使用するために、UV/H酸化処理を施すことが記載されている。この処理において、運転中に生成した分解生成物によって汚染された、金属の特定の基本組成物と添加された有機光沢剤とを含有する浴が酸化処理に附される。前記酸化処理において、前記有機光沢剤は破壊されてもかまわない。前記酸化処理の後、前記有機光沢剤は前記浴に再度添加される。しかしながら、DE19810859A1に正しく指摘されているように、DE19525509C2には、前記浴から有機分解生成物を効率的に取り除くための具体的な方法が示唆されていない。前記特許の実施例1によれば、十分な浄化を得るためにには、処理される浴の1m当たり、約2,000kWhの電気エネルギーの消費と250リットルのH(35%溶液)とが必要とされる。しかしながら、そのような高いエネルギー消費量およびH量は、処理の経済的継続性を脅かすことになる(DE19810859A1、第1欄、56〜64行目を参照)。
従って、DE19810859A1には、電気浴、特に、電気ニッケル浴を処理するための方法が提案されている。前記方法において、UV酸化処理を行うことによって、別の、より軽い相を形成させる。前記相は、単に最終収着工程によってまたは浮遊工程におけるスキミングによって分離することができる。その後、スキミングされた部分につき清澄法を施す。そして、浮遊物質は廃棄し、透明な溶液は再使用する。前記循環処理は、最終収着工程処理後の浴中のすべての有機物質が分解され、浴が再び基本組成を有する程度にまで続けられる(DE19810859A1の請求項1を参照)。前記収着工程のために、この方法は複雑である。さらに、前記方法は、「特有の工程制御」を必要とする(第2欄、1および2行目を参照)。すなわち、前記方法は、他の浴に容易に応用することができない。それどころか、処理条件は各別に選択しなければならず、対応するパラメータは面倒な予備テストによって定める必要がある。
【0006】
公知のUV/H酸化処理法のさらなる不都合は、かなり大きな処理装置がさらに必要になるという事実にある。例えば、プリント基板の製造においてμ−ブラインド・ビアを埋め込む場合、一般に総電解質量の10〜15%が処理される。従って、3,000〜12,000リットルの電解質が、2〜3日間、巨大なタンク内で処理されなければならない。その時間の大部分、一般には約1日が、稼動中の電解質の作用を阻害する余分なHを取り除くためのUV照射に費やされる。
従って、本発明の目的は、前記のような従来技術において知られているような方法の問題点を示さない、μ−BVsを金属で電気的に埋め込むための方法を提供することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に、本発明の目的は、
− UV/H処理を、従来よりも短い時間で行なうことができ、
− 従来よりも小さな処理装置で実施することができ、
− 従来よりも効率的であり、および/または
− 銅イオン濃度の制御および調整を同時に行うことができる、
μ−ブラインド・ビアを埋め込むための銅電解質のUV/H処理の改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(i)銅金属塩と任意に有機添加剤とを含んでなる、電気めっきにより金属被覆を施すための電解質浴を準備する工程と
(ii)前記浴を、電流密度0.5〜10A/dmの直流または有効電流密度0.5〜10A/dmの電流パルスで運転する工程と、
(iii)前記電気浴から前記電解質の一部を取り出す工程と、
(iv)前記取り出された電解質の一部に酸化剤を添加する工程と、
(v)任意に、前記取り出された電解質に紫外線を照射する工程と、
(vi)前記取り出された部分を前記電気浴へと戻し、かつ、酸化処理によって破壊された有機添加剤を補充する工程と、
を含んでなる、μ−ブラインド・ビアの埋め込み方法を提供する。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記方法の工程(iv)において添加される酸化剤はHであり、そして前記浴から取り出された電解質の一部は、前記方法の工程(vi)において電気浴へと戻される前に、銅金属を含んでなる金属溶解装置に通される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を添付の図面によってさらに詳しく説明する。
図1は、浴が調製された直後、すなわち、2Ah/lの運転時間後の浴の埋め込み能力を示す図である。2本の矢印の間の層はテスト電解質中で析出したものである。その下の層はテスト板の製造者によって析出されたものであり、μ−ブラインド・ビアの埋め込みにおいては意味がない。
図2は、100Ah/lの運転時間後の埋め込み能力の低下を示す図である。μ−ブラインド・ビアはその形状がトレースされるのみであり、すなわち、慣用の表面めっき用電解浴を用いた場合の如くであり、20μmの銅がビア内と表面上に析出している。
図3は、100Ah/lの時間運転し、その後UV/H処理および有機添加剤を補給して所望の濃度範囲とした後の電解質の埋め込み能力を示す図である。
図4は、実施例2の実験Aにおいて、時間の関数として測定された銅濃度およびH濃度を示す図である(四角=H、菱形=Cu)。
図5は、実施例2の実験Bにおいて、時間の関数として測定された銅濃度およびH濃度を示す図である(四角=H、菱形=Cu)。
【0010】
本発明の方法において、銅は、硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)または硫酸銅溶液として電解質に添加される。銅の使用可能な濃度範囲は、8〜60g/l、好ましくは15〜60g/l、さらに好ましくは25〜50g/lである。
硫酸(HSO)は、50〜96%溶液として添加される。硫酸の使用可能な濃度範囲は、40〜300g/l、好ましくは130〜250g/lである。
塩化物は、塩化ナトリウム(NaCl)または塩酸溶液(HCl)として添加される。塩化物の使用可能な濃度範囲は、20〜150mg/l、好ましくは30〜60mg/lである。
さらに、浴電解質は、有機添加剤として、光沢剤、レベリング剤および湿潤剤を含んでなることが好ましい。
湿潤剤は、0.005〜20g/l、好ましくは0.01〜5g/lの濃度で用いられる慣用の酸素含有高分子量化合物である。本発明の方法において用いられ得る湿潤剤の例を表1に示す。
【0011】
【表1】

【0012】
使用される光沢剤は、一般に、表2に示されるもののごとき硫黄原子含有物質である。
【0013】
【表2】

【0014】
レベリング剤としては、高分子窒素化合物(例えば、ポリアミンまたはポリアミド)または窒素含有硫黄化合物、例えば、DE3836521C2に記載されているようなチオ尿素誘導体またはラクタムアルコキシレートを用いることができる。用いられる物質の濃度は、0.1〜100ppmの範囲内である。
さらに、DE4126502C1に記載されているオリゴマーおよびポリマーのフェナゾニウム誘導体を用いることもできる。μ−ブラインド・ビアを埋め込むのに用いられるさらなる物質としては、マラカイトグリーン、ロザリニンまたはクリスタルバイオレットのごとき、アミノトリフェニルメタン構造に基づいた染料が挙げられる。
【0015】
浴は、電流密度0.5〜10A/dm、好ましくは0.5〜2.5A/dmの直流または有効電流密度0.5〜10A/dmの電流パルスで運転される。有効電流密度は、下記式に従って計算される。
【0016】
【数1】

【0017】
析出の改善は、複数のパルスシーケンスによって、または、パルスシーケンスとDCシーケンスとの組み合わせによって達成することができる。
【0018】
本発明の方法において、浴から取り出された電解質の一部に酸化剤が添加されるが、この部分には任意に紫外線が照射される。この処理によって有機成分が完全に分解され、結果として、電解質の基本組成が浄化されることになる。その後、有機添加剤を添加することによって、電解質の埋め込み性能が回復され、μ−ブラインド・ビアを埋めることができるようになる。本発明の方法は、最先端技術において公知である活性炭処理よりも著しく効率的であり、廃棄物処理を全く必要としない。従って、新しい電解質を用意する必要がないため、大幅にコストが削減される。
【0019】
DE19810859A1に記載されている方法とは異なり、本発明の銅めっき浴の処理によると、反応済みの有機添加剤の独立した相または好ましからざる沈着物が形成されることはない。電解質の添加剤を特定のものにすることによって、残留物を形成することなく、有機添加剤をCOやNのごとき揮発性酸化生成物へと転化することができる。
【0020】
従って、本発明の方法は、有機添加物の酸化生成物を物理的に分離させるための手段なしで実施することができる。特に、本発明の方法は、酸化処理の前または後に電解質を物理的分離、例えば濾過または遠心分離、化学吸着または物理吸着によって処理することなく、実施することができる。
酸化剤は、TOC濃度(すなわち、有機成分の総濃度)を1,000〜1,500mg/lから50〜300mg/lにまで下げるのに十分な量で用いられることが好ましい。TOC濃度を酸化処理前の値の50%にまで下げるのに十分な量の酸化剤を用いることも有益であろう。
酸化剤としてHが用いられることが好ましい。Hは、例えば30%水溶液として、めっき浴の1リットル当たり3〜30mlの量で用いられることが好ましい。
さらに、酸素を酸化剤として用いることもできる。これは、浴に溶けている空気中の酸素でもよい。この場合、酸化剤をあらためて添加することが不要となろう。
【0021】
特に、本発明の方法は、Hを唯一の酸化剤として用いて実施することができる。従って、オゾンのごときガス状の酸化剤なしで実施することができる。
【0022】
照射は、それ自体が公知である装置、例えば、波長領域が100〜700nm、好ましくは200〜550nmであるUVランプを用いて行われる。放射電力は、一般に浴の1リットル当たり0.5〜20W、好ましくは浴の1リットル当たり1〜5Wである。
本発明の方法において、照射時に分解してCOおよび/またはNを形成するそのような有機添加剤が用いられることが好ましい。前述の窒素化合物のみならず表1および表2に記載されている添加剤がこれらの要件を満たす。
用いられるアノードは、例えば、酸化還元系のない(すなわち、Fe2+/3+系のない)不活性アノードであることができる。酸性銅の場合、DC電解質、AC電解質、可溶性アノードを用いることも可能である。
【0023】
本発明の方法は、以下に記す様々な実施態様に従って実施することができる。
第1の実施態様では、電解質は連続的にUV室において少量のH(すなわち、0.01〜0.1ml/lのH(30%溶液))と混ぜ合わされ、そして照射される。この場合、電解質は、前記室から出るときにはHを含有していてはいけないので、交換される(すなわち、取り出される)電解質の量は制限される。本発明の方法の本実施態様において、交換される電解質の量は、10〜50l/h、好ましくは約30l/hである。
【0024】
本発明の方法の第2の実施態様では、電解質の一部のみを取り出し、UV室においてHおよび紫外線で処理する。一般に、取り出される部分の量は、電解質の総量の10〜50%、好ましくは約30%である。
処理時間は、電解質の量、酸化剤の量、ランプの照射力および温度に依存する。設備は、電解質の総量をその耐用寿命を通じて浄化することができるように設計されなければならない。前記耐用寿命は、電解質に必要とされる性能に依存する。
【0025】
本発明の第3の実施態様では、H処理は行われない。本実施態様では、電解質の浄化は前記2つの実施態様ほど有効ではないことが認められる。しかしながら、第3の実施態様による方法は連続して実施することができる。
【0026】
前記第1および第2の実施態様における酸化剤の使用は、(第3の実施態様と比較して)有機添加剤の分解を促進する。電解質の埋め込み性能を維持するために、これらの添加剤を補充しなければならない。しかしながら、前述のように、浴を完全に取り替える必要がないことが本発明の方法の重要な利点である。
【0027】
本発明の方法の特に好ましい実施態様によれば、本方法の工程(iv)において添加される酸化剤はHであり、そして電気浴から取り出された電解質の一部は、UV/H処理に附された後、かつ工程(vi)において前記浴に戻される前に銅金属の入った金属溶解装置に通される。
前記特に好ましい実施態様による本発明の方法を実施するための設備は、とりわけ、(UV/H処理が行われる)処理装置と、前記処理装置に接続されたH投与装置と、前記処理装置に接続された金属溶解装置とを含んでなる。浴から取り出された電解質の一部は、まず前記処理装置に通され、そして電気浴に戻される前に前記金属溶解装置に通される。
本発明の方法を実施するための設備は、さらに冷却装置を含んでいてもよい。
【0028】
前記金属溶解装置は、一般に容器であり、銅金属が入っている。前記銅金属は、アノード材料、ペレット、ロッドまたは粒子の形態で供給することができる。前記金属溶解装置は、前記処理装置から出てくる処理済みの電解質が通過することができるカラムであることが好ましい。
【0029】
電気浴の一部、一般には10〜15%が取り出され、UV/H処理に附される。前記UV/H処理では、比較的大量のHが添加され、溶液に連続して紫外線を照射することによって電解質中の有機物質を分解する。前記有機物質の分解は、TOC濃度、すなわち、有機成分の総濃度を測定することによって制御することができる。TOC濃度が所定の目標値に達した後、Hの添加を止める。この段階で、処理された電解質には比較的大量のHが含有されている。μ−ブラインド・ビアの埋め込みにおいて電解質が適切に機能するようにするために、余分なHは破壊しなければならない。このため、H濃度は、一般に、約0.5g/lの値にまで下げなければならない。
【0030】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、さらに紫外線を照射することによって、H濃度をまず約3〜5g/lの値にまで下げる。次に、H濃度が上記範囲内にある処理された電解質を金属溶解装置に通すことによって、前記装置に入っている銅金属の表面の触媒効果によって、酸素を放出しながら余分なHが部分的に破壊される。さらに、Hは、前記金属溶解装置内において、酸化還元反応で消費される。前記酸化還元反応において、Hは水へと還元され、銅金属は酸化されて銅イオンになる。この酸化還元反応は下記式に従って進行する。
【0031】
+ Cu + 2H → Cu2+ + 2HO (1)
この式による反応において、1g/lのHは、理論的に最大1.85g/lのCu2+を溶け出させることができる。
【0032】
一方、銅金属表面におけるHの触媒的破壊は下記式に従って進行する。
→ 1/2O + 2HO (2)
この反応は、紫外線の照射によるHの破壊よりもはるかに速い。
式(1)および式(2)に従ってHが反応する割合は、それぞれ、温度、圧力、電解質の純度および触媒金属表面の性質といった要素に依存する。
【0033】
従って、処理された電解質を銅金属の入った金属溶解装置に通すことにより、紫外線の放射のみによる破壊と比べて、余分なHの破壊が著しく促進される。余分なHを紫外線の放射によって破壊する処理工程には、通常はほぼ1日かかるであろう。前述の金属溶解装置を用いる本発明の方法の特に好ましい実施態様において、余分なHの破壊に必要とされる時間は、例えば20〜40%短くすることができる。金属溶解装置を用いることによって得られる実際のHの破壊速度は、Hの初期量および所望の最終量、触媒金属表面の性質および流速のごとき様々な要素に依存する。
【0034】
前述のように、前記式(1)によるHの反応によって、銅イオンが溶け出す。これは、銅イオンの濃度が高くなるというさらなる利点、および、めっきされるプリント基板上への銅金属の望ましい析出の結果だけでなく電解質の好ましからざるエントレインメントの結果としても生じる銅イオンの損失が補填されるというさらなる利点を有する。これは、めっき浴において高い銅濃度、例えば35〜60g/l、が用いられる場合に特に有利である。
【0035】
余分なHの破壊をさらに促進するために、金属溶解装置にまたはその一部として、前記式(2)の反応を触媒する材料のさらなる触媒表面を提供することができる。この目的に好適な材料の例としては、チタン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、酸化チタン、混合酸化チタン、酸化イリジウム、混合酸化イリジウム、およびこれらの材料の任意の混合物が挙げられる。
【実施例】
【0036】
本発明を下記実施例によってさらに説明する。
実施例1
下記組成を有する酸性銅めっき浴を用いた。
銅:44g/l
硫酸:130g/l
塩化物:40mg/l
基本レベリング剤 Cupracid HLF(商品名、Atotech Deutschland GmbH):20ml/l
光沢剤 Cupracid BL(商品名、Atotech Deutschland GmbH):0.5ml/l
前記光沢剤は表2に記載の物質を含有し、そして前記基本レベリング剤は表1に記載の湿潤剤と窒素化合物(ポリアミド)とを含んでなる。
【0037】
100Ah/lまで浴を稼動させたところ、μ-ブラインド・ビアの埋め込みが正常に行われなくなった。その後、前記浴をUV/Hで処理し、有機成分を補充して前記初期組成に戻した。埋め込み性能を調べるために、前記処理の前後にめっき試験を行なった。これらのめっき試験は、可溶性銅アノードを備えた縦型標準槽において1.5A/dmの直流法で試験した。前記UV/H処理の条件は以下の通りである。
容積: 600リットルの銅浴、Cupracid HLF(商品名)
紫外線ランプ: 12kW; 200nm
添加: 27l/hまたは14l/h
電解質循環: 10.5m/h
処理前のTOC: 1,180mg/l
処理後のTOC: 81mg/l
図1〜図3は試験のシーケンスを示す。
【0038】
実施例2
一連の4つの実験(A〜D)を以下のようにして実施した。
【0039】
実験Aでは、5ml/lのH溶液(35%)と、1ml/lのレベリング剤Cupracid HLF(商品名)とを、280lの銅電解質溶液に添加した。第1のバイパスでは、前記電解質溶液を、1kWの照射力に設定された紫外線反応器(A.C.K.社製のEnviolett S(商品名))に通した。前記紫外線反応器での処理率は650l/hであった。
処理条件を評価するために、銅濃度およびH濃度を1時間間隔で測定した(銅はEDTA溶液を用いて容量分析で測定し、HはKMnO溶液を用いて容量分析で測定した)。所定時間で測定した銅濃度およびH濃度を下記表3および図4に示す。
【0040】
実験Bでは、第2のバイパスにおいて、電解質溶液を、6kgの銅ペレット(長さ:18mm、直径:7mm、総表面積:約40dm)が充填された銅カラムにさらに並列に通した以外は、実験Aと同様にして処理を行った。前記銅カラムの直径は90mm、長さは250mm、容量は約1.5lであった。前記銅カラムでの処理率は360l/hであった。実験Aと同様にして銅濃度およびH濃度を測定し、その結果を表3および図5に示す。
銅カラムを用いなかった場合(実験A)、H濃度は7時間の間に5g/lから3.2g/lまでしか低下せず、銅濃度は30g/lのままであった。
銅カラムを用いた場合(実験B)、H濃度は7時間の間に5g/lから1.4g/lまで低下し、銅濃度は34g/lから38g/lまで4g/l増加した。H濃度を5g/lから3g/lまで下げるのに、3時間の総処理時間が必要であった。この3時間の間、銅濃度は0.8g/l増加した。
従って、銅カラムを用いた場合、H濃度を5g/lから3g/lまで下げるのに必要な時間は4時間(すなわち、57%)減少した。同じ時間内に、わずかな銅濃度の増加が見られた。
【0041】
実験Cでは、銅ペレットの量を3kgに減らしたこと以外は、実験Bと同様にして処理を行った。さらに、実験Dでは、混合酸化イリジウムで被覆されたチタン格子(0.5m)を銅カラム内にさらに設置したこと以外は、実験Cと同様にして処理を行った。H濃度および銅濃度を一定の間隔で測定した。その結果を表3に示す。
混合酸化イリジウムで被覆された格子をさらに用いた場合、前記格子を用いない場合よりもH濃度が速くかつ大きく低下した。同時に、銅ペレットの一部を混合酸化イリジウムで被覆されたチタン格子で置き換えることによって銅濃度の増加を遅くさせることができる。
【0042】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】浴が調製された直後、すなわち、2Ah/lの運転時間後の浴の埋め込み能力を示す図である。2本の矢印の間の層はテスト電解質中で析出したものである。その下の層はテスト板の製造者によって析出されたものであり、μ−ブラインド・ビアの埋め込みにおいては意味がない。
【図2】100Ah/lの運転時間後の埋め込み能力の低下を示す図である。μ−ブラインド・ビアはその形状がトレースされるのみであり、すなわち、慣用の表面めっき用電解浴を用いた場合の如くであり、20μmの銅がビア内と表面上に析出している。
【図3】100Ah/lの時間運転し、その後UV/H処理および有機添加剤を補給して所望の濃度範囲とした後の電解質の埋め込み能力を示す図である。
【図4】実施例2の実験Aにおいて、時間の関数として測定された銅濃度およびH濃度を示す図である(四角=H、菱形=Cu)。
【図5】実施例2の実験Bにおいて、時間の関数として測定された銅濃度およびH濃度を示す図である(四角=H、菱形=Cu)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)銅金属塩と任意に有機添加剤とを含んでなる、電気めっきにより金属被覆を施すための電解質浴を準備する工程と、
(ii)前記浴を、電流密度0.5〜10A/dmの直流または有効電流密度0.5〜10A/dmの電流パルスで運転する工程と、
(iii)前記電気浴から前記電解質の一部を取り出す工程と、
(iv)前記取り出された電解質の一部に酸化剤を添加する工程と、
(v)任意に、前記取り出された電解質に紫外線を照射する工程と、
(vi)前記取り出された部分を前記電気浴へと戻し、かつ、酸化処理によって破壊された有機添加剤を補充する工程と、
を含んでなる、μ−ブラインド・ビアの埋め込み方法。
【請求項2】
前記電気めっき用電解質浴は、8〜60g/lの銅と、40〜300g/lの硫酸と、20〜150mg/lの塩化物とを含んでなり、そして前記有機添加剤は、光沢剤と、湿潤剤と、ポリアミド、ポリアミン、ラクタムアルコキシレート、チオ尿素、オリゴマーおよびポリマーのフェナゾニウム誘導体ならびにアミノトリフェニルメタン染料から選択される添加剤とを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化剤が、TOC濃度を1,000〜1,500mg/lから50〜300mg/lにまで下げるのに十分な量で添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記照射が、200〜550nmの範囲の波長で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
照射強度が、浴1リットル当たり0.5〜20W、好ましくは浴1リットル当たり1〜5Wである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
照射時にCOを形成するポリマーが有機添加剤として用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
酸性銅電解質が電解質として用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電気浴が、酸化還元系なしの不活性アノードで運転される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
酸性銅電解質が電解質として用いられ、そして可溶性アノードがアノードとして用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(iv)において添加される酸化剤がHであり、そして前記浴から取り出された電解質の一部が工程(vi)において前記浴に戻される前に銅金属の入った金属溶解装置に通される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属溶解装置中の銅金属の形態が、アノード材料、ペレット、ロッドまたは粒子である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属溶解装置が、チタン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、酸化チタン、混合酸化チタン、酸化イリジウム、混合酸化イリジウム、およびこれらの材料の任意の混合物からなる群から選択される材料を含んでなる触媒表面をさらに有する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記金属溶解装置は、前記浴から取り出された電解質の一部が処理された後に通されるカラムである、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)銅金属塩と任意に有機添加剤とを含んでなる、電気めっきにより金属被覆を施すための電解質浴を準備する工程と、
(ii)前記浴を、電流密度0.5〜10A/dmの直流または有効電流密度0.5〜10A/dmの電流パルスで運転する工程と、
(iii)前記電気浴から前記電解質の一部を取り出す工程と、
(iv)前記取り出された電解質の一部に酸化剤を添加する工程と、
(v)任意に、前記取り出された電解質に紫外線を照射する工程と、
(vi)前記取り出された部分を前記電気浴へと戻し、かつ、酸化処理によって破壊された有機添加剤を補充する工程と、
を含んでなり、
前記工程(iv)において添加される酸化剤がHであり、そして前記浴から取り出された電解質の一部が工程(vi)において前記浴に戻される前に銅金属の入った金属溶解装置に通されることを特徴とする、
μ−ブラインド・ビアの埋め込み方法。
【請求項2】
前記電気めっき用電解質浴は、8〜60g/lの銅と、40〜300g/lの硫酸と、20〜150mg/lの塩化物とを含んでなり、そして前記有機添加剤は、光沢剤と、湿潤剤と、ポリアミド、ポリアミン、ラクタムアルコキシレート、チオ尿素、オリゴマーおよびポリマーのフェナゾニウム誘導体ならびにアミノトリフェニルメタン染料から選択される添加剤とを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化剤が、TOC濃度を1,000〜1,500mg/lから50〜300mg/lにまで下げるのに十分な量で添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記照射が、200〜550nmの範囲の波長で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
照射強度が、浴1リットル当たり0.5〜20W、好ましくは浴1リットル当たり1〜5Wである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
照射時にCOを形成するポリマーが有機添加剤として用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
酸性銅電解質が電解質として用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電気浴が、酸化還元系なしの不活性アノードで運転される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
酸性銅電解質が電解質として用いられ、そして可溶性アノードがアノードとして用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属溶解装置中の銅金属の形態が、アノード材料、ペレット、ロッドまたは粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記金属溶解装置が、チタン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、酸化チタン、混合酸化チタン、酸化イリジウム、混合酸化イリジウム、およびこれらの材料の任意の混合物からなる群から選択される材料を含んでなる触媒表面をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属溶解装置は、前記浴から取り出された電解質の一部が処理された後に通されるカラムである、請求項1に記載の方法。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−526890(P2006−526890A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508236(P2006−508236)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005874
【国際公開番号】WO2004/107834
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】