説明

マイクロ波減圧乾燥機及びマイクロ波減圧乾燥機を使用した乾燥方法

【課題】大量の被乾燥物を一度で処理でき、被乾燥物の種類や性状等に対応した精度の高い乾燥状態の制御を可能にする。
【解決手段】本発明のマイクロ波減圧乾燥機1は、減圧乾燥炉5と、開閉扉7と、減圧装置33と、を備え、上記減圧乾燥炉5内を複数の個別乾燥室25に区画して、各個別乾燥室25ごとにマイクロ波照射装置9、ターンテーブル37、温度センサ39とを配置し、制御部31によって上記温度センサ39によって計測した品温とマイクロ波出力とマイクロ波の発振時間とに基づいて上記個別乾燥室25ごとに乾燥制御状態を切り替えることができるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧雰囲気下で被乾燥物にマイクロ波を照射して所定の含水率になるまで乾燥させるマイクロ波減圧乾燥機及びマイクロ波減圧乾燥機を使用した乾燥方法に係り、特に、大量の被乾燥物を同時に処理でき、被乾燥物の種類や性状に応じて乾燥制御状態を切り替えることができるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロ波を利用した乾燥機が種々開発されており、種々の被乾燥物の乾燥に使用されている。また、大量の被乾燥物を乾燥させる場合には、被乾燥物をコンベヤ上に載せて移動させながら乾燥させる連続式の乾燥機や下記の特許文献1に示すような多段式の棚を使用したバッチ式の乾燥機が存在している。
【0003】
また、イチゴやみかん等、糖分を含んだ果物等を乾燥させると、所定の水分量に達するまでは良好な水分量の減少が見られるが、その後は水分量の減少が鈍ってジャム状の粘った状態になり、乾燥時間が長くかかり、被乾燥物の外観品質や風味が大きく損なわれてしまう。
この場合、従来は、高額な設備コストを要する真空凍結乾燥機等を導入して対処していたが、乾燥後の被乾燥物の表面がカサカサになったり、外観形状に変形等が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−220963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているマイクロ波減圧乾燥機は、ターンテーブルを備えていないため、被乾燥物の位置によって乾燥状態にムラが出易いという欠点を有している。
また、多段式の棚で仕切られている各部屋は完全に連通しており、単一のマイクロ波照射装置を使用して上記各部屋を同時に乾燥させる方式のため上記各部屋ごとの乾燥状態の切り替えを行うことができない。従って、少量多品種の被乾燥物の乾燥を行うような場合には、効率の悪い乾燥となってしまう。
【0006】
また、上記糖分を含んだ果物等を外観品質や風味等を損ねることなく乾燥させるためには、精度の高い乾燥状態の制御が必要になってくるが、上記特許文献1に開示されているマイクロ波減圧乾燥機や上述した真空凍結乾燥機では、被乾燥物の種類や性状、あるいは乾燥の進捗状況等に応じて乾燥制御状態を切り替えることはできなかった。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、被乾燥物の種類や性状あるいは乾燥の進捗状況等に応じて各個別乾燥室ごとのマイクロ波乾燥のON、OFFを切り替えることができる低コストで精度の高い乾燥が可能なマイクロ波減圧乾燥機及びマイクロ波減圧乾燥方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1によるマイクロ波減圧乾燥機は、被乾燥物を収容したトレーを投入及び排出する開口部を備えた減圧乾燥炉と、上記開口部に取り付けられる開閉可能な開閉扉と、上記減圧乾燥炉内を通気性及び通水性を維持しマイクロ波の漏洩を遮蔽した状態で区画することによって形成される複数の個別乾燥室と、上記個別乾燥室ごとに設けられ、該個別乾燥室内に収容された被乾燥物に向けてマイクロ波を照射して被乾燥物を乾燥させるマイクロ波照射装置と、上記個別乾燥室ごとに設けられ、該個別乾燥室内に収容された被乾燥物を回転軸を中心にして所定の回転数で回転させるターンテーブルと、上記減圧乾燥炉内を減圧雰囲気にする減圧装置と、上記個別乾燥室ごとに設けられ、該個別乾燥室内に収容された被乾燥物の品温を計測する温度センサと、上記温度センサによって計測した品温と上記マイクロ波照射装置から照射されたマイクロ波出力とマイクロ波の発振時間とに基づいて乾燥制御状態を切り替える制御部と、を具備していることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2によるマイクロ波減圧乾燥機は、請求項1記載のマイクロ波減圧乾燥機において、上記減圧乾燥炉の開口部と上記開閉扉との間には、第1チョークと第2チョークが向い合わせになるように周方向に所定ピッチで連続的に配置されたダブルチョーク一体構造のシール構造が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3によるマイクロ波減圧乾燥機は、請求項1または2記載のマイクロ波減圧乾燥機において、上記各個別乾燥室を仕切り板によって区画する構成とし、該仕切り板の前端縁には、長さ方向に所定ピッチで連続的に配置された第1チョークと第2チョークが一部入り込んで向い合わせになるように配設されたダブルチョーク一体構造のシール構造が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4によるマイクロ波減圧乾燥機は、請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機において、上記トレーの下方と上記個別乾燥室の仕切り板の上面には、トレーから流出した水分や粉末等を受け止める受け皿が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項5によるマイクロ波減圧乾燥機は、請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機において、上記トレーの上方には、先端側を下向き姿勢に配置され、マイクロ波照射装置から照射されるマイクロ波を反射させる反射板が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項6によるマイクロ波減圧乾燥機は、請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機において、上記各ターンテーブルは、該ターンテーブルの中心から鉛直方向下方に延びる回転軸によって回転自在に支持されており、該回転軸には、単一の駆動モータから動力伝達機構を介して個別に動力が伝達されてすべてのターンテーブルが同時に回転するように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項7によるマイクロ波減圧乾燥機を使用した乾燥方法は、請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機を使用することによって実行される乾燥方法であって、上記制御部では、マイクロ波出力とマイクロ波の発振時間とを複数の工程に分けて設定し、最初の工程から最後の工程にかけて順次、マイクロ波出力が段階的に低くなるように設定して被乾燥物の乾燥状態を制御する時間・出力制御方法に従った乾燥を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項8によるマイクロ波減圧乾燥機を使用した乾燥方法は、請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機を使用することによって実行される乾燥方法であって、上記制御部では、被乾燥物の品温とマイクロ波の発振時間とを設定し、被乾燥物の品温に基づいてPID制御を行い、マイクロ波出力を上記被乾燥物の品温の変化に比例させて制御し、更に積分制御と微分制御とによってその値を補正する品温制御方法に従った乾燥を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項9によるマイクロ波減圧乾燥機を使用した乾燥方法は、請求項7または8記載のマイクロ波減圧乾燥機を使用した乾燥方法において、請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機を使用することによって実行される乾燥方法であって、上記制御部では、上記時間・出力制御方法または品温制御方法によって一次乾燥を実行後、除湿乾燥機を使用して二次乾燥を実行して目標含水率にする除湿併用乾燥方法を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
そして、上記手段によって以下のような作用が得られる。まず、減圧乾燥炉をマイクロ波の漏洩を遮蔽した状態で区画して複数の個別乾燥室を設け、各個別乾燥室ごとにマイクロ波照射装置とターンテーブルを配置したことにより、個別乾燥室ごとのマイクロ波による減圧乾燥が可能になる。
従って、被乾燥物の種類や性状、あるいは乾燥の進捗状況等に応じてマイクロ波による減圧乾燥を行う個別乾燥室と行わない個別乾燥室とを振り分けて乾燥を実行することが可能になる。
また、各個別乾燥室内に温度センサが設けられているから乾燥中の各個別乾燥室内に収容されている被乾燥物の品温を随時把握することができるから、上記被乾燥物の品温を乾燥状態の制御に利用することが可能になる。
【0018】
また、上記被乾燥物の品温と上記マイクロ波照射装置からのマイクロ波出力及びマイクロ波の発振時間とに基づいて被乾燥物の乾燥状態を制御部において制御することが可能になるから、被乾燥物の種類や性状に対応した精度の高い乾燥状態の制御が行えるようになる。
【0019】
また、減圧乾燥炉の開口部と開閉扉との間にダブルチョーク一体構造のシール構造を配設した場合には、該シール構造の外方へのマイクロ波の漏洩が高レベルで高周波回路的に防止されるようになる。
【0020】
また、各個別乾燥室を仕切り板によって区画する構成とした場合には、各個別乾燥室内で発振されたマイクロ波を該仕切り板によって反射させて当該個別乾燥室外へのマイクロ波の漏洩を防止することが可能になる。
また、上記各仕切り板の前端縁に、ダブルチョーク一体構造のシール構造を配設した場合には、各個別乾燥室間でのマイクロ波の漏洩も高レベルで高周波回路的に防止されるようになる。
【0021】
また、トレーの下方と仕切り板の上面に受け皿を設けた場合には、トレーから流出した水分や粉末等のターンテーブル上面や個別乾燥室内壁面への付着を防止でき、メンテナンスが容易になる。
また、トレーの上方に、先端側を下向き姿勢に配置され、マイクロ波照射装置から照射されるマイクロ波を反射させる反射板を設けた場合は、マイクロ波がトレーT上の被乾燥物Aが均一に乾燥され、加熱ムラを防止することができる。
また、各ターンテーブルの下面の中心から下方に延びる回転軸を単一の駆動モータによって回転駆動するように構成した場合には、駆動モータや該駆動モータの出力軸の回転を上記回転軸に伝える動力伝達機構の数が少なくて済むから、部品点数を削減して部品コスト及び製品コストを低く抑えることが可能になる。
【0022】
また、上記制御部において、マイクロ波出力とマイクロ波の発振時間とを複数の工程に分けて設定し、最初の工程から最後の工程にかけて順次、マイクロ波出力が段階的に低くなるようにして被乾燥物の乾燥状態を制御する時間・出力制御方法を行うようにした場合には、常に同じ大きさのマイクロ波出力で所定のマイクロ波の発振時間、マイクロ波を照射させる従来の乾燥方法に比べて被乾燥物の種類や性状、あるいは乾燥の進捗状況等に応じたより精度の高い乾燥状態の制御が可能になる。また、被乾燥物の品温を比較的低く保持して短い乾燥時間で効率の良い乾燥を実行できる。
【0023】
また、上記制御部において、被乾燥物の品温とマイクロ波の発振時間とを設定し、被乾燥物の品温に基づいてPID制御を行い、マイクロ波出力を上記被乾燥物の品温の変化に比例させて制御し、更に積分制御と微分制御とによってその値を補正する品温制御方法を行うようにした場合には、上記時間・出力制御方法と同様、常に同じ大きさのマイクロ波出力で所定のマイクロ波の発振時間、マイクロ波を照射させる従来の乾燥方法に比べて被乾燥物の種類や性状、あるいは乾燥の進捗状況等を考慮したより精度の高い乾燥状態の制御が可能になる。また、被乾燥物の品温を比較的低く保持して短い乾燥時間で効率の良い乾燥を実行できる。
【0024】
また、上記制御部において、上記時間・出力制御方法または品温制御方法によって一次乾燥を実行後、除湿乾燥機を使用して二次乾燥を実行して目標含水率にする除湿併用乾燥方法を行うようにした場合には、乾燥後の被乾燥物の外観品質や風味を優先させた乾燥を実行でき、ユーザの目的に合った、より自由度を持った精度の高い乾燥が実行できるようになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のマイクロ波減圧乾燥機及びマイクロ波減圧乾燥機を使用した乾燥方法によると、一度に大量の被乾燥物の乾燥を処理でき、被乾燥物の種類や性状、あるいは乾燥の進捗状況等に応じて各個別乾燥室ごとのマイクロ波乾燥のON、OFFを切り替えることが可能になる。
また、制御部で行う乾燥状態の制御方法の切り替えによって被乾燥物の種類や性状、あるいは乾燥の進捗状況等に応じた低コストで精度の高い、ユーザの目的に合った被乾燥物の乾燥が実行できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロ波減圧乾燥機の全体構成を示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロ波減圧乾燥機の全体構成を示す右側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロ波減圧乾燥機の全体構成を示す平面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、減圧乾燥炉の内部構造を示す縦断正面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、減圧乾燥炉の内部構造を示す縦断右側面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、減圧乾燥炉の内部構造を示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、減圧乾燥炉の開口部を示す正面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、減圧乾燥炉の開口部を示す斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、各仕切り板の前端縁にもシール構造を配設した減圧乾燥炉の開口部と開閉扉の押圧シリンダ収縮時の状態を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、各仕切り板の前端縁にもシール構造を配設した減圧乾燥炉の開口部と開閉扉の押圧シリンダ伸長時の状態を示す断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態の変形例を示す図で、各仕切り板の前端縁にもシール構造を配設した減圧乾燥炉の開口部を示す正面図である。
【図12】反射板の有無による効果を試すために行ったマイクロ波照射試験に使用した反射板無しの装置説明図である。
【図13】反射板の有無による効果を試すために行ったマイクロ波照射試験に使用した反射板有りの装置説明図である。
【図14】反射板無しの場合のトレー上の各位置における温度を図式で示す説明図である。
【図15】反射板有りの場合のトレー上の各位置における温度を図式で示す説明図である。
【図16】反射板無しの場合のトレー上の各位置における温度を表で示す説明図である。
【図17】反射板有りの場合のトレー上の各位置における温度を表で示す説明図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態による乾燥曲線を示す図で、被乾燥物の含水率変化と乾燥時間との関係を示すグラフである。
【図19】本発明の第1の実施の形態による乾燥制御曲線を示す図で、時間・出力制御方法選択時のマイクロ波出力と品温とマイクロ波の発振時間との関係を示すグラフである。
【図20】本発明の第1の実施の形態による乾燥制御曲線を示す図で、品温制御方法選択時のマイクロ波出力と品温とマイクロ波の発振時間との関係を示すグラフである。
【図21】本発明の第1の実施の形態の変形例を示す図で、個別乾燥室を2段設けた減圧乾燥炉の内部構造を示す縦断正面図である。
【図22】本発明の第1の実施の形態の他の変形例を示す図で、個別乾燥室を3段設けた減圧乾燥炉の内部構造を示す縦断正面図である。
【図23】本発明の第2の実施の形態を示す図で、マイクロ波減圧乾燥機の全体構成を示す正面図である。
【図24】本発明の第2の実施の形態を示す図で、マイクロ波減圧乾燥機の全体構成を示す左側面図である。
【図25】本発明の第2の実施の形態を示す図で、マイクロ波減圧乾燥機の全体構成を示す平面図である。
【図26】本発明の第2の実施の形態を示す図で、開閉扉を示す背面図である。
【図27】本発明の第2の実施の形態を示す図で、減圧乾燥炉の開口部を示す斜視図である。
【図28】本発明の第3の実施の形態を示す図で、マイクロ波減圧乾燥機の全体構成を示す正面図である。
【図29】本発明の第3の実施の形態を示す図で、マイクロ波減圧乾燥機の全体構成を示す右側面図である。
【図30】本発明の第3の実施の形態を示す図で、マイクロ波減圧乾燥機の全体構成を示す背面図である。
【図31】本発明の第3の実施の形態を示す図で、マイクロ波減圧乾燥機の全体構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1〜図22に示す第1の実施の形態と、図23〜図27に示す第2の実施の形態と、図28〜図31に示す第3の実施の形態と、を例にとって本発明を実施するための形態を説明する。
尚、第1の実施の形態に係るマイクロ波減圧乾燥機1Aは、開閉扉7Aが正面と背面に2つ配設されたスライド式で個別乾燥室25が上下に一例として5段配設された大型のマイクロ波減圧乾燥機である。また、第2の実施の形態に係るマイクロ波減圧乾燥機1Bは、開閉扉7Bが片開き回動式で個別乾燥室25が上下に一例として2段配設された中型ないし小型のマイクロ波減圧乾燥機である。
【0028】
更に、第3の実施の形態に係るマイクロ波減圧乾燥機1Cは、上記第1、第2の実施の形態に係るマイクロ波減圧乾燥機1A、1Bに除湿乾燥機2を組み合わせた除湿乾燥とマイクロ波減圧乾燥を併用して行うことができる複合タイプのマイクロ波減圧乾燥機である。
また、本発明の乾燥対象となる被乾燥物Aとしては、具体的には、生の茶葉、緑茶等の茶や、トマト等の野菜や、糖度が高く、乾燥しにくい、いちご、ブルーベリー等の果物や、食物繊維の一種であるデキストリンが一例として挙げられるが、これらに限られるものではなく、広く食品や食品以外の種々の被乾燥物Aの乾燥に適用可能である。
【0029】
そして、本発明のマイクロ波減圧乾燥機1は、被乾燥物Aを収容したトレーTを投入及び排出する開口部3を備えた減圧乾燥炉5と、上記開口部3に取り付けられる開閉可能な開閉扉7と、上記減圧乾燥炉5内を、通気性及び通水性を維持しマイクロ波の漏洩を遮蔽した状態で区画することによって形成される複数の個別乾燥室25と、上記個別乾燥室25ごとに設けられるマイクロ波照射装置9、ターンテーブル37及び温度センサ39と、上記温度センサ39によって計測した品温と上記マイクロ波照射装置9から照射されたマイクロ波出力とマイクロ波の発振時間とに基づいて乾燥制御状態を切り替える制御部31と、を具備することによって基本的に構成されている。
【0030】
(1)第1の実施の形態(図1〜図22参照)
本実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Aは、アングル材等、適宜の構造部材を矩形枠状に組み立てることによって構成される支持架台23Aに対して、中央向って右寄りの位置に減圧乾燥炉5A、その前方に被乾燥物Aが収容されたトレーTを上記減圧乾燥炉5内に投入するトレー投入機41、上記減圧乾燥炉5Aの後方に乾燥が終了した被乾燥物Aが収容されたトレーTを上記減圧乾燥炉5Aから外部に排出するトレー排出機43と、がそれぞれ配設されている。
尚、本実施の形態で使用するトレーTは、一例として幅が667mm、奥行きが667mmで高さが47mmのプラスチック製のトレーで、各個別乾燥室25ごとに計5枚が使用される。
【0031】
また、上記トレー投入機41の左方に高圧盤45と、上記制御部31として機能する制御盤が設けられている。
また、上記トレー排出機43の左方上部に貯水槽35、上記トレー排出機43の左方下部に減圧装置として機能する一例として5.5kwの水封式の真空ポンプ33が配設されている。減圧乾燥炉5の各個別乾燥室25には、一側面に吸気口32が設けられ、ここには図示しない配管により真空ポンプ33が接続されている。また、減圧乾燥炉5の各個別乾燥室25には、他側面に給気口34が設けられ、ここから大気を吸い込むように構成されている。
【0032】
また、上記支持架台23Aの前方の上下には、図7中左方に延びるガイドレール47を備えた開閉扉7Aの支持機構と、該支持機構によって支持される左右スライド式の開閉扉7Aが配設されている。
また、上記開閉扉7Aの前面の一例として左右には開閉扉7Aを開閉する際の手掛かりとなるグリップ75が設けられており、上記開閉扉7Aの前面の一例として中央には各個別乾燥室25に対応した位置に1個ずつ、計5個の点検窓73が設けられている。
【0033】
また、上記減圧乾燥炉5Aは、金属製平板によって構成された仕切り板51によって、通気性及び通水性を維持しマイクロ波の漏洩を遮断した状態で5段の個別乾燥室25に区画されている
上記減圧乾燥炉5Aの一例として左方には、各個別乾燥室25に対応した位置に1基ずつ、計5基のマイクロ波照射装置9が設けられており、上記減圧乾燥炉5Aの一例として右方には、各個別乾燥室25に対応した位置に1個ずつ、計5個の温度センサ39が、各個別乾燥室25内のトレーTにセットされた被乾燥物Aに指向するように一例として傾斜姿勢で設けられている。
尚、本実施の形態において使用するマイクロ波照射装置9は、最大可変出力が1.95kwのものを5基使用しており、計9.75kwの最大可変出力を有するように構成されている。また、本実施の形態において使用する温度センサ39としては一例として赤外線温度計を採用することが可能である。
【0034】
また、本実施の形態では、開閉扉7Aの背面の外周部がシール面になっており、該シール面と対向する開口部3の周りの減圧乾燥炉5Aの前面に第1チョーク17と第2チョーク19が向い合わせになるように周方向に所定ピッチで連続的に配置されたダブルチョーク一体構造のシール構造21Aと、その外方にリング状のゴムパッキン等によって構成されるシール部材11と、が設けられている。
尚、この方式のシール構造21Aは、接合部の隙間から漏洩するマイクロ波を高周波回路的に阻止して外部に飛散しないようにするもので、マイクロ波が伝搬する経路中にマイクロ波の波長の1/4の長さの迂回路を設けることで、この部分での反射波と外部に直接向かう波との位相差をマイクロ波の波長の1/2にして互いに打ち消し合うようにするというものである。
【0035】
また、上記開閉扉7Aの閉塞位置における上記減圧乾燥炉5Aの前面の上下の左右には、1基ずつ計4基の押圧シリンダ49が設けられており、閉塞位置に来た開閉扉7Aを減圧乾燥炉5A側に所定の押圧力で押圧できるように構成されている。
また、上述したシール構造21Aは、図7〜10に示すように上記各個別乾燥室25を区画する仕切り板51を利用して個別乾燥室25ごとにも設けられている。具体的には、上記仕切り板51の前端縁に上記第1チョーク17と第2チョーク19の一部が入り込む構造になっており、開閉扉7Aの背面に第1チョーク17と第2チョーク19が取り付けられていて、そのスライド位置を上記第1チョーク17と第2チョーク19の高さ分、逃がしておき、上記押圧シリンダ49の押圧力を利用して開閉扉7Aを減圧乾燥炉5側に圧着させた際、仕切り板51の前端縁に第1チョーク17と第2チョーク19が入り込む構造が採用されている。
尚、この方式のシール構造21Aは、接合部の隙間から漏洩するマイクロ波を高周波回路的に阻止して外部に飛散しないようにするもので、マイクロ波が伝搬する経路中にマイクロ波の波長の1/4の長さの迂回路を設けることで、この部分での反射波と外部に直接向かう波との位相差をマイクロ波の波長の1/2にして互いに打ち消し合うようにするというものである。
尚、図11に示す変形例のように、上記仕切り板51の前端縁に上記第1チョーク17と第2チョーク19の一部が入り込んだ状態で開口部3の周りの減圧乾燥炉5Aの前面に取り付けておき、上記押圧シリンダ49の押圧力を利用して開閉扉7Aを減圧乾燥炉5側の第1チョーク17と第2チョーク19に圧着させる構造を採用してもよい。
【0036】
尚、上記仕切り板51は、一部に通気性及び通水性を維持した状態で鉄板などの金属製平板によって構成されているが、パンチングメタルや金網等によって形成されているマイクロ波遮蔽作用を有する板材を採用することも可能である。
また、上記仕切り板51の上面には、図4〜図6に示すように被乾燥物Aが収容されたトレーTから流出した水分や粉末等を受け止める一例として4枚の受け皿53が設けられている。そして、このうち中央の2枚の受け皿53及び図中右側の受け皿53には、次に述べるターンテーブル37の回転部38や駆動軸67を逃げる切り欠き55が形成されている。
【0037】
また、上記仕切り板51の下方の空間には、各個別乾燥室25のターンテーブル37を個別に回転させるための動力伝達機構57が配設されており、上記仕切り板51の上方の中心にはターンテーブル37が配設されている。
そして、各ターンテーブル37の下面の中心には鉛直方向下方に延びる短寸の回転軸59が突出しており、該回転軸59は軸受部材によって構成される上記ターンテーブル37の回転部38によって回転自在に支持されている。
【0038】
また、上記ターンテーブル37の下面の中心から延びる回転軸59の先端には上述した動力伝達機構57の構成部材である従動プーリ61が取り付けられている。そして、該従動プーリ61には次に述べる単一の駆動モータ63の出力軸の回転が駆動プーリ60からタイミングベルト64を介して伝達されるようになっている。
尚、図6中符号62で示すのは、上記タイミングベルト64の緊張状態を保持するためのテンションプーリである。そして、上記駆動プーリ60と従動プーリ61とテンションプーリ62とタイミングベルト64とによって1組の動力伝達機構57が構成されている。
【0039】
また、本実施の形態では、各個別乾燥室25に対応した5組の動力伝達機構57が設けられており、これら5組の動力伝達機構57を単一の駆動モータ63によって駆動している。具体的には、減圧乾燥炉5Aの上面に一例として下向きで駆動モータ63が設けられており、該単一の駆動モータ63の出力軸の回転をカップリング65を介して鉛直方向下方に向けて延びている長尺な駆動軸67に伝達している。そして、該駆動軸67には、上記各組の動力伝達機構57の駆動プーリ60が取り付けられていて、単一の駆動モータ63を駆動すると、すべてのターンテーブル37が同方向に同速度で回転するように構成されている。
また、上述したターンテーブル37の上方には、一例として囲桁状に組んだ支持フレーム69が取り付けられており、該支持フレーム69上に被乾燥物Aを収容したトレーTがセットされるように構成されている。
また、上記トレーTの下方にも上記受け皿53と同様の機能を有する受け皿71が設けられており、乾燥中の水分や粉末等の外部飛散を防止してメンテナンスを容易にしている。
【0040】
また、上記トレーTの上方には、先端側を下向き姿勢に配置され、マイクロ波照射装置から照射されるマイクロ波を反射させる反射板70が設けられている。すなわち、本装置においてはマイクロ波照射装置9を個別乾燥室25の側面に設ける必要があり、上記マイクロ波照射装置9から照射するマイクロ波が回転するトレーT上の被乾燥物Aに均一に照射されるように、マイクロ波が適度に反射されるように配置した反射板70が設けられる。上記反射板70は一例としてステンレス製であり、扇状の形状を有している。そして、これをマイクロ波照射装置9の照射口の上部からターンテーブル37の中心線付近まで下向きの傾斜姿勢に取り付けている。
次に、図12〜17を参照して上記反射板の効果を試すために反射板無しの場合と有りの場合とを比較したマイクロ波加熱試験の内容と結果について説明する。本試験は方形状のトレーT上に水を収容した容器を対角線上に9箇所配置し、これを2段式乾燥装置の下段の個別乾燥室25内の支持フレーム69上にセットし、上記トレーTを回転させながらマイクロ波照射装置9より1500Wの出力で一定時間マイクロ波を照射し、その前後でサーモグラフィーにより各容器毎の水の温度の変化を計測した。尚、反射板無しの場合は、トレーTは通常の位置にセットし、加熱時間10分間とした。一方、反射板有りの場合は、反射板70が照射口の上部から先端が80mm前下がりになるように取り付け、トレーTは通常より30mm上げてセットし、加熱時間5分間とした。
その試験結果は図14〜17に示す通りであり、反射板無しの場合は、中央と一方の対角線の1つ外側で8.34℃の温度差であるのに対し、反射板有りの場合は、中央と一方の対角線の2つ外側で4.07℃の温度差であり、反射板を設けた場合の方が、マイクロ波による加熱が中心から外方にかけて均一に行われていることが確認できた。この結果から明らかなように、上記反射板70を設けることによってトレーT上の被乾燥物Aをより均一に乾燥することができるようになり、加熱ムラを防止することができる。
【0041】
次に、このようにして構成される本実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Aを使用することによって実行される本発明の乾燥方法について説明する。
即ち、本実施の形態では上記制御部31において、時間・出力制御方法と品温制御方法とが選択できるように構成されており、これらの制御方法に従った2種類の乾燥方法が実行できるように構成されている。尚、2種類の制御方法のいずれかだけを実行できるように構成されていても良い。
【0042】
このうち時間・出力制御方法に従った乾燥方法によれば、マイクロ波出力とマイクロ波の発振時間とを複数の工程に分けて設定し、最初の工程から最後の工程にかけて順次、マイクロ波出力が段階的に低くなるように設定して被乾燥物Aの乾燥状態を制御する。
例えば、初期質量608g、初期水分量90.06%(547.6g)のイチゴを、マイクロ波の初期出力を360W、気流導入量を3.0l/min、圧力を約3.0KPa以下、ターンテーブル37の回転数を左回転で3rpmの乾燥条件で品温40℃以下を保持して、減圧乾燥する場合を考えると、この時の乾燥曲線は、図18に示す通りとなる。
【0043】
また、時間・出力制御方法の工程を3つに分け、第1工程のマイクロ波出力を360W、マイクロ波の発振時間を60分、第2工程のマイクロ波出力を300W、マイクロ波の発振時間を30分、第3工程のマイクロ波出力を260W、マイクロ波の発振時間を30分に設定した場合の乾燥制御曲線は図19に示す通りとなる。
尚、図19では更に温度上昇を確認するために第4工程を設けており、第4工程のマイクロ波出力を200W、マイクロ波の発振時間を90分に設定している。
【0044】
図19のグラフから明らかなように第1工程〜第3工程の乾燥時間が120分までは被乾燥物Aの品温が36℃前後に保たれ、良好な乾燥状態が維持される。一方、更に乾燥を続けて第4工程に移行すると、品温が徐々に上昇して乾燥時間210分の時点では最終的に約70℃になるため、外観品質や風味等を重視する被乾燥物Aの乾燥に当たっては第3工程までの乾燥で終了するのが望ましいと言える。
【0045】
一方、品温制御方法に従った乾燥方法によれば、被乾燥物Aの品温とマイクロ波の発振時間とを設定し、被乾燥物Aの品温に基づいてP(Proportional)I(Integral)D(Derivative)制御を行い、マイクロ波出力を上記被乾燥物Aの品温の変化に比例させて制御し、更に積分制御と微分制御とによってその値を補正する。
例えば、上記と同じ乾燥条件で、設定品温を40℃とした場合の乾燥制御曲線は図20に示す通りとなる。そして、図20ではPID制御の作用でマイクロ波発振直後のマイクロ波出力は高出力となり、品温が設定値の40℃に到達した後は、マイクロ波出力が低下する。その後時間の経過と共に被乾燥物Aの乾燥の程度が進行し、品温が一定に保持されるためマイクロ波出力は徐々に低下して行く。
そして、上記乾燥条件の場合には、一例として乾燥時間が160〜180分位になった時点で、乾燥を終了させることが望ましい。
【0046】
このように本実施の形態によれば、一度に大量の被乾燥物Aの乾燥を処理でき、被乾燥物Aの種類や性状あるいは乾燥の進捗状況等に応じて各個別乾燥室25ごとのマイクロ波乾燥のON、OFFを切り替えることができ、低コストで精度の高い乾燥が可能なマイクロ波減圧乾燥機1A及び該乾燥機1Aを使用した乾燥方法が提供できるようになる。
また、本実施の形態でも制御部31において時間・出力制御方法と品温制御方法との選択の切り替えが可能であるから、被乾燥物Aの種類や性状、あるいは乾燥の進捗状況等に応じた精度の高い乾燥状態の制御が可能である。
また、本実施の形態で採用した個別乾燥室25は、複数設けられることを基本としており、5段に限らず、図21に示す変形例のように2段でもよいし、図22に示す変形例のように3段でも構わないし、他の段数でも構わない。いずれの場合でも、各個別乾燥室25毎の乾燥がすべて終了した段階で、減圧乾燥炉5Aの開閉扉7Aを開閉して、被乾燥物Aを収容したトレーTの排出と投入を行う構造となっている。
【0047】
(2)第2の実施の形態(図23〜図27参照)
第2の実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Bは、前述した第1の実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Aよりも小型の小容量タイプのマイクロ波減圧乾燥機になっている。尚、第2の実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Bの基本的構成は、前記第1の実施の形態と同様である。従って、ここでは前記第1の実施の形態と相違する第2の実施の形態特有の構成に絞って説明する。
【0048】
即ち、第2の実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Bは、開閉扉7Bが片開き回動式で個別乾燥室25が上下に一例として2段配設された中型ないし小型のマイクロ波減圧乾燥機になっている。
また、シール部材11とシール構造21Bは開閉扉7Bの背面側に設けられている。また、個別乾燥室25を上下2段構造にしたことに伴って減圧乾燥炉5Bの高さは前記第1の実施の形態よりも低く、点検窓73が上下に2個設けられる構成になっている。
【0049】
この他、本実施の形態では片開き回動式の開閉扉7Bを採用したことに伴って、開閉扉7Bの前面の回動自由端側の1ヶ所のみに開閉扉7Bを開閉する時の手掛かりとなる一例としてアーチ型のグリップ75が設けられている。
一方、上記開閉扉7Bの回動基端の上下と中央の一例として3ヶ所には、上記開閉扉7Bを減圧乾燥炉5Bの開口部3の周辺の前面に回動可能な状態で接続するためのヒンジ部77が設けられている。
【0050】
また、上記開閉扉7Bの前面の上縁と下縁には、前記実施の形態の押圧シリンダ49に代えて一例として2ヶ所ずつ回転式のロックハンドル79が設けられており、該ロックハンドル79の先端の係止爪81が上記減圧乾燥炉5B前面に設けられている係止フック83に係止されることによって開閉扉7Bの閉塞状態がロックできるように構成されている。
また、シール構造21Bは、上記開閉扉7Bの背面の外周部に加えて図26、27に示すようにその中間部に水平にもう1本設けられている。そして、中間部に設けられるシール構造21Bによって仕切り板51によって区画された上下の個別乾燥室25間のマイクロ波の遮蔽が図られている。
【0051】
また、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と相違して減圧乾燥炉5Bの前面のみに開口部3が形成されており、減圧乾燥炉5Bの前面側からトレーTの投入と排出を行う構造になっている。従って、本実施の形態では前記第1の実施の形態において設けられていたトレー投入機41とトレー排出機43は設けられていない。
【0052】
このようにして構成される第2の実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Bによっても、前記第1の実施に形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Aと同様の作用、効果が発揮され、中型ないし小型のマイクロ波減圧乾燥機においても被乾燥物Aの処理量の増加や個別乾燥室25ごとの乾燥運転のON、OFFの切り替えが実行できるようになる。
また、本実施の形態でも制御部31において時間・出力制御方法と品温制御方法との選択の切り替えが可能であるから、被乾燥物Aの種類や性状、あるいは乾燥の進捗状況等に応じた精度の高い乾燥状態の制御が可能である。
【0053】
(3)第3の実施の形態(図28〜図31参照)
第3の実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Cは、前述した第1、第2の実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1A、1Bに除湿乾燥機2を組み合わせた複合タイプのマイクロ波減圧乾燥機になっている。
従って、ここでは前記第1、第2の実施の形態と相違する除湿乾燥機2の構成と、該除湿乾燥機2を設けたことに伴って実行される乾燥方法に絞って説明する。
【0054】
本実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Cで乾燥させることができる被乾燥物Aとしては、乾燥後の外観品質や色味、風味等が重要視されるイチゴ、みかん等の果物やトマト等の野菜などが好適である。そして、これらには糖分と水分が多く含まれていることから、乾燥時の被乾燥物Aの品温には十分に注視する必要がある。
上記被乾燥物Aは、浅底のトレーT等に入れて並べられ、前述した第1、第2の実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1A、1B等に入れて例えば60〜90分程度、加熱乾燥される。
ここでの乾燥を初期乾燥といい、図18に示すように被乾燥物Aの含水率Gは、初期含水率G0で約9.0(初期水分率90.06%)あったものが時間と共にほぼ直線的に減少していって、図18の例では、乾燥時間90分で約1.5になる。そして、減少したこの時の含水率Gを本明細書において除湿開始含水率G1と定義する。
【0055】
上記初期乾燥終了後、被乾燥物Aを上記マイクロ波減圧乾燥機1A、1B等から取り出して、本実施の形態のマイクロ波減圧乾燥機1Cの除湿乾燥機2に投入して目標含水率G2に向けての仕上げ乾燥が実行される。尚、上記目標含水率G2は、乾燥する被乾燥物Aの種類や乾燥後の用途等に応じて任意に定めることができ、図18の例では、乾燥時間210分で含水率Gが約0.1〜0.2になり、この時の含水率Gが目標含水率G2になっている。
【0056】
本実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Cの除湿乾燥機2は、除湿する被乾燥物Aを収容して、目標含水率G2になるまでの仕上げ乾燥を実行する除湿乾燥室85と、除湿乾燥に使用する吸湿乾燥剤Sを貯留する吸湿乾燥剤貯留室87と、上記除湿乾燥室85と吸湿乾燥剤貯留室87とを連絡する空気循環経路89と、上記空気循環流路89の途中に設けられ、上記除湿乾燥室85で発生した吸湿空気Wを上記吸湿乾燥剤貯留室87に向けて搬送するための搬送風を生起させる送風機91と、上記吸湿乾燥剤貯留室87内の吸湿した吸湿乾燥剤Sにマイクロ波を作用させて再生するマイクロ波加熱装置97と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0057】
また、本実施の形態では、更に上記吸湿乾燥剤貯留室87の搬出口から搬出された吸湿
乾燥剤Sを吸湿乾燥剤貯留室87の投入口に導いて再び吸湿乾燥剤貯留室87に投入する循環搬送経路93が設けられており、該循環搬送経路93の途中に上記マイクロ波加熱装置97と、低位置に存する吸湿乾燥剤Sを高位置に輸送するための輸送装置の一例であるバケットコンベア95と、スクリューコンベア131と、が配設されている。
【0058】
除湿乾燥室85は、上面が開放された角箱状の部材で、開放された上面には、開閉式の扉99が設けられている。また、図30中、除湿乾燥室85の左方には、第1連通室101が設けられており、除湿乾燥室85と第1連通室101との間には、除湿乾燥室85において発生した吸湿空気Wを第1連通室101側に送るための通気口103が形成されている。
更に、上記第1連通室101の図30中の左方には、中継ダクト105を介して上下方向に垂直に延びる第1搬送ダクト35の中間部が接続されており、上記第1連通室101と第1搬送ダクト107との間にも吸湿空気Wを第1搬送ダクト105側に送るための通気口109が設けられている。
【0059】
また、上記第1搬送ダクト107の上部には、図29、31に示すように前方に向って水平に延びる第2搬送ダクト111が接続されており、上記第2搬送ダクト111の前端には、図29に示すように下方に向って垂直に延びる第3搬送ダクト113が接続されている。
また、上記第2搬送ダクト111の途中には、図29に示すように吸湿乾燥剤貯留室87が設けられている。
【0060】
尚、上記第2搬送ダクト111と接続されている吸湿乾燥剤貯留室87の前面と後面には、吸湿空気Wの流入と乾燥空気Dの流出は許容するが、後述する吸湿乾燥剤Sの通過を禁止する通気構造115、117が設けられている。
更に、上記第3搬送ダクト113の下端には、図29に示すように後方に向って水平に延びる第4搬送ダクト119が接続されており、該第4搬送ダクト119の後端が上記第1搬送ダクト107の下部に接続されるようになっている。
【0061】
したがって、上記第1搬送ダクト107と第2搬送ダクト111と第3搬送ダクト113と第4搬送ダクト119は、図29に示すようにループ状に接続されている。
また、図30中、上記第1搬送ダクト107の下部の右方には、中継ダクト106を介して第2連通室121が接続されており、上記第1搬送ダクト107と第2連通室121との間にも乾燥空気Dを第2連通室121側に送るための通気口123が設けられている。
【0062】
また、図30中、上記第2連通室121の右方には、第3連通室125が設けられており、第2連通室121と第3連通室125との間には、乾燥空気Dを第3連通室125側に送るための通気口127が形成されている。
また、図30に示すように上記第3連通室125の上方に上述した除湿乾燥室85が位置しており、該除湿乾燥室85の底面が一例としてメッシュ状の金網129によって形成されていて、上記第3連通室125内に供給された乾燥空気Dは、上記金網129の網目を通って除湿乾燥室85に至るように構成されている。
【0063】
そして、上述した除湿乾燥室85と、第1連通室101と、中継ダクト105と、第1搬送ダクト107と、第2搬送ダクト111と、吸湿乾燥剤貯留室87と、第3搬送ダクト113と、第4搬送ダクト119と、中継ダクト106と、第2連通室121と、第3連通室125と、によって上記空気循環流路89が形成されており、上記第2連通室121と第3連通室125との間に上記送風機91が図30中、矢印で示す方向に空気が流れるように設けられている。
【0064】
尚、本実施の形態で使用する吸湿乾燥剤Sとしては、湿気を嫌う食品等の乾燥剤として広く使用されているビーズ状のシリカゲルが一例として適用できる。シリカゲルは二酸化珪素を主成分とする物理的乾燥剤であり、物質が化学反応等によって変化することはなく、シリカゲルの有する毛細孔に水蒸気を吸着させることによって除湿を実行する。
また、シリカゲルは吸湿能力に優れ、安全であり、比較的安価で加熱によって再生が可能なことから経済性にも優れている。
【0065】
次に、このようにして構成される本実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Cを使用することによって実行される本発明の乾燥方法について説明する。
即ち、本実施の形態では上記制御部31において、上記時間・出力制御方法または品温制御方法によって目標含水率G2になるまで一括乾燥させるマイクロ波単独乾燥方法と、上記時間・出力制御方法または品温制御方法によって一次乾燥を実行後、除湿乾燥機2を使用して二次乾燥を実行して目標含水率G2にする除湿併用乾燥方法と、を選択できるように構成されており、これらの制御方法に従った2種類の乾燥方法が実行できるように構成されている。
【0066】
この場合、被乾燥物Aの目標含水率G2が比較的高い場合に上記マイクロ波単独乾燥方法を選択し、被乾燥物Aの目標含水率G2が比較的低い場合に除湿併用乾燥方法を選択するようにすることが可能である。
具体的には、時間・出力制御方法を選択して被乾燥物Aの乾燥を実行する場合には、乾燥時間が120分位までであればマイクロ波単独乾燥方法を選択し、乾燥時間を120分より長く取りたい場合には、除湿乾燥方法を選択して被乾燥物Aの仕上がりに影響する被乾燥物Aの品温の上昇を防止するような使い分けが可能である。
【0067】
一方、品温制御方法を選択して被乾燥物Aの乾燥を実行する場合には、含水率の低下と共にマイクロ波出力が減少し、被乾燥物Aの品温も所定の設定値に保たれている。
従って、マイクロ波単独乾燥方法と除湿併用乾燥方法のいずれの制御方法を採用してもよく、この場合、乾燥タイマーやマイクロ波出力の減少度合い等に基づいて乾燥を終了することになる。
【0068】
このようにして構成される第3の実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1Cによっても、前記第1、第2の実施の形態によるマイクロ波減圧乾燥機1A、1Bと同様の作用、効果が発揮され、加えて除湿併用乾燥方法を選択した場合には、品温上昇を抑えた乾燥後の外観品質、色味及び風味の良好な被乾燥物Aを得ることが可能であるから、被乾燥物Aの種類や性状、あるいは乾燥の進捗状況等に応じた精度の高い乾燥状態の制御が可能になる。
【0069】
尚、本発明のマイクロ波減圧乾燥機1は、上記の実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での変更が可能である。例えば、前記第1の実施の形態で減圧乾燥炉5Aの前面と後面の2ヶ所に設けた開口部3は、前面と後面のいずれか一つの面にすることが可能である。
また、該開口部3の周辺と開閉扉7との間と、前記仕切り板51と開閉扉7との間に適用したシール構造21は、第1チョーク17と第2チョーク19を半ピッチずらして互い違いになる配列で設置することも可能であるし、第1チョーク17と第2チョーク19のいずれか一方を省略したシングルチョーク構造のシール構造とすることも可能である。
【0070】
また、ターンテーブル37を駆動する動力伝達機構57は、前述した実施の形態のようにタイミングベルト64を利用した機構の他、チェーンを利用した機構でもよいし、各個別乾燥室25ごとに駆動モータ63を配設すれば、駆動モータ63の出力軸の回転を直接回転軸59に伝える機構とすることも可能である。
また、本発明の乾燥方法で採用した時間・出力制御方法では、工程の数を可変でき、前記実施の形態で採用した数よりも少ない数にしたり、工程の数を増やして各工程でのマイクロ波の発振時間を短くしてマイクロ波出力を更に多段階にあるいは連続的に低くなるように設定することが可能である。
【0071】
この他、前記第3の実施の形態で述べた除湿乾燥機2の構成とレイアウトは一例であり、種々の構成とレイアウトの除湿乾燥機2を採用することが可能である。例えば、吸湿乾燥剤Sの輸送装置として採用したバケットコンベア95に代えてスプリングフィーダやエア圧等を利用して低位置に存する吸湿乾燥剤Sを高位置に搬送するようにした輸送装置を採用することも可能である。
また、被乾燥物Aの除湿開始含水率G1、目標含水率G2、品温の設定値等も乾燥する被乾燥材Aの種類や性状等の違いに応じて適宜、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のマイクロ波減圧乾燥機及びマイクロ波減圧乾燥機を使用した乾燥方法は、種々の乾燥食品等の製造、使用分野等で利用でき、特に大量の被乾燥物を一度に処理したい場合や被乾燥物の種類や性状等の違いに応じて異なる乾燥制御状態で種類や性状の違う被乾燥物を同時に乾燥させたい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0073】
1 マイクロ波減圧乾燥機
2 除湿乾燥機
3 開口部
5 減圧乾燥炉
7 開閉扉
9 マイクロ波照射装置
11 シール部材
17 第1チョーク
19 第2チョーク
21 シール構造
23 支持架台
25 個別乾燥室
31 制御部
32 吸気口
33 真空ポンプ(減圧装置)
34 給気口
35 貯水槽
37 ターンテーブル
38 回転部
39 温度センサ
41 トレー投入機
43 トレー排出機
45 高圧盤
47 ガイドレール
49 押圧シリンダ
51 仕切り板
53 受け皿
55 切り欠き
57 動力伝達機構
59 回転軸
60 駆動プーリ
61 従動プーリ
62 テンションプーリ
63 駆動モータ
64 タイミングベルト
65 カップリング
67 駆動軸
69 支持フレーム
70 反射板
71 受け皿
73 点検窓
75 グリップ
77 ヒンジ部
79 ロックハンドル
81 係止爪
83 係止フック
85 除湿乾燥室
87 除湿乾燥剤貯留室
89 空気循環流路
91 送風機
93 循環搬送経路
95 バケットコンベア
97 マイクロ波加熱装置
99 扉
101 第1連通室
103 通気口
105 中継ダクト
106 中継ダクト
107 第1搬送ダクト
109 通気口
111 第2搬送ダクト
113 第3搬送ダクト
115 通気構造
117 通気構造
119 第4搬送ダクト
121 第2連通室
123 通気口
125 第3連通室
127 通気口
129 金網
131 スクリューコンベア
A 被乾燥物
T トレー
G 含水率
G0 初期含水率
G1 除湿開始含水率
G2 目標含水率
S 吸湿乾燥剤
W 吸湿空気
D 乾燥空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物を収容したトレーを投入及び排出する開口部を備えた減圧乾燥炉と、
上記開口部に取り付けられる開閉可能な開閉扉と、
上記減圧乾燥炉内を通気性及び通水性を維持しマイクロ波の漏洩を遮蔽した状態で区画することによって形成される複数の個別乾燥室と、
上記個別乾燥室ごとに設けられ、該個別乾燥室内に収容された被乾燥物に向けてマイクロ波を照射して被乾燥物を乾燥させるマイクロ波照射装置と、
上記個別乾燥室ごとに設けられ、該個別乾燥室内に収容された被乾燥物を回転軸を中心にして所定の回転数で回転させるターンテーブルと、
上記減圧乾燥炉内を減圧雰囲気にする減圧装置と、
上記個別乾燥室ごとに設けられ、該個別乾燥室内に収容された被乾燥物の品温を計測する温度センサと、
上記温度センサによって計測した品温と上記マイクロ波照射装置から照射されたマイクロ波出力とマイクロ波の発振時間とに基づいて乾燥制御状態を切り替える制御部と、を具備していることを特徴とするマイクロ波減圧乾燥機。
【請求項2】
上記減圧乾燥炉の開口部と上記開閉扉との間には、第1チョークと第2チョークが向い合わせになるように周方向に所定ピッチで連続的に配置されたダブルチョーク一体構造のシール構造が設けられていることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波減圧乾燥機。
【請求項3】
上記各個別乾燥室を区画する仕切り板の前端縁には、長さ方向に所定ピッチで連続的に配置された第1チョークと第2チョークが一部入り込んで向い合わせになるように配設されたダブルチョーク一体構造のシール構造が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のマイクロ波減圧乾燥機。
【請求項4】
上記トレーの下方と上記個別乾燥室の仕切り板の上面には、トレーから流出した水分や粉末等を受け止める受け皿が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機。
【請求項5】
また、上記トレーの上方には、先端側を下向き姿勢に配置され、マイクロ波照射装置から照射されるマイクロ波を反射させる反射板が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機。
【請求項6】
上記各ターンテーブルは、該ターンテーブルの中心から鉛直方向下方に延びる回転軸によって回転自在に支持されており、該回転軸には、単一の駆動モータから動力伝達機構を介して個別に動力が伝達されてすべてのターンテーブルが同時に回転するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機を使用することによって実行される乾燥方法であって、
上記制御部では、マイクロ波出力とマイクロ波の発振時間とを複数の工程に分けて設定し、最初の工程から最後の工程にかけて順次、マイクロ波出力が段階的に低くなるように設定して被乾燥物の乾燥状態を制御する時間・出力制御方法に従った乾燥を行うようにしたことを特徴とするマイクロ波減圧機を使用した乾燥方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機を使用することによって実行される乾燥方法であって、
上記制御部では、被乾燥物の品温とマイクロ波の発振時間とを設定し、被乾燥物の品温に基づいてPID制御を行い、マイクロ波出力を上記被乾燥物の品温の変化に比例させて制御し、更に積分制御と微分制御とによってその値を補正する品温制御方法に従った乾燥を行うようにしたことを特徴とするマイクロ波減圧乾燥機を使用した乾燥方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロ波減圧乾燥機を使用することによって実行される乾燥方法であって、
上記制御部では、上記時間・出力制御方法または品温制御方法によって一次乾燥を実行後、除湿乾燥機を使用して二次乾燥を実行して目標含水率にする除湿併用乾燥方法に従った乾燥を行うようにしたことを特徴とする請求項7または8記載のマイクロ波減圧乾燥機を使用した乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2013−113448(P2013−113448A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257076(P2011−257076)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(500360116)西光エンジニアリング株式会社 (6)
【出願人】(505290922)株式会社沖友 (4)
【Fターム(参考)】