説明

マクロモノマー

【課題】通常、不活性かつ非重合性のオレフィン性不飽和有機分子を含むマクロモノマーの提供。
【解決手段】本発明の不活性かつ非重合性のオレフィン性不飽和有機分子を含むマクロモノマーは、コバルト連鎖移動触媒の使用により慣用のモノマーとホモ重合または共重合することができる、オレフィン性不飽和有機分子または非重合性の有機分子を用いた方法により得ることができる。該マクロモノマーは、片方の末端に官能基およびもう片方の末端に二重結合を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常、不活性かつ非重合性のオレフィン性不飽和有機分子を使用し、コバルト連鎖移動触媒を通して、フリーラジカルモノマーからポリマー連鎖を開始する方法から製造できるマクロモノマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホモポリマーを形成するか、またはメタクリレート、アクリレート、スチレン、等のような慣用のモノマーとコポリマーを形成する、フリーラジカル重合法に対して本質的に不活性である、多くのオレフィン性不飽和有機化合物があることは公知である。ここで、“本質的に不活性である”という表現は、それらのオレフィン性不飽和分子がホモ重合化されないこと、および、それらは、慣用のモノマーに対して10倍過剰量で存在するときでさえも、10モルパーセント未満の量のレベルにおいてしか慣用のモノマーと共重合化しないこと、を意味するものである。
【0003】
特許文献1では、さらなるオリゴマー化のために、追加の連鎖移動触媒(CTC)を用いて末端不飽和オリゴマーの末端を再度重合開始することにより、末端不飽和ポリマー組成物を合成する方法を記述している。
【0004】
いくつかの刊行物では、メタクリルダイマーの共重合化を論じているが、複雑な該ダイマーの再重合開始化を言及していない。非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3を参照されたい。
【0005】
ここに記述する本発明は、オリゴマーまたはマクロモノマーというよりも、どちらかといえば非重合性有機分子(ここでは“UO”と呼ぶ)の共重合化、およびこれらのUOからの官能化モノマーおよび官能化マクロモノマーの生成を示すものである。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,587,431号明細書
【特許文献2】米国特許第4,680,352号明細書
【特許文献3】米国特許第4,694,054号明細書
【特許文献4】米国特許第5,324,879号明細書
【特許文献5】国際公開第87/003605号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5,362,826号明細書
【特許文献7】米国特許第5,264,530号明細書
【特許文献8】ソ連特許第664,434号(1978)明細書
【特許文献9】ソ連特許第856,096号(1979)明細書
【特許文献1】ソ連特許第871,378号(1979)明細書
【特許文献2】ソ連特許第1,306,085号(1986)明細書
【非特許文献1】D. M. Haddleton らによるMacromolecules 29 巻(1994)の481ff 頁
【非特許文献2】T. P. Davis らによるMacromol.Theory Simul.4 巻(1995)の195ff 頁
【非特許文献3】T. P. Davis らによるJ. Macromolecular Science-Rev. Macromol. Chem. Phys.C34 (2 )巻(1994)の243ff 頁
【非特許文献4】D. F. Shriver らによる“The Manipulation of Air Sensitive Compounds ”第2 版(Wiley Interscience、1986年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、非重合性有機分子(ここでは“UO”と呼ぶ)の共重合化による官能化マクロモノマーの生成を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、オレフィン性不飽和有機分子と少なくとも一つの慣用のモノマーとからなるマクロモノマーに関するものである。すなわち、本発明は、以下の構造式:
(UO)(CM)で表されるマクロモノマー、
または、
以下の構造式:
(UO)(CM)で表されるマクロモノマー
及び以下の構造式:
(UO)(CM)で表されるマクロモノマー、
の混合物である末端二重結合を含むマクロモノマー;
であって、
UOは下記式オレフィンのモノマー単位を示し、
【0009】
【化1】

【0010】
ここで、
1およびR3は、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群(I)、および−C(O)OR5、−C(O)NR67、−CR8(O)、−C(O)OC(O)R9、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(II)から各々独立に選ばれ;ここでR1またはR3が群(II)から選ばれるときは、R1およびR3は必要に応じて環状構造を形成してもよい;
【0011】
および
2およびR4は、H、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群 (III)、および−C(O)OR5、−C(O)NR67、−CR8(O)、−C(O)OC(O)R9、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(IV)から各々独立に選ばれ;ここでR2またはR4が群(IV)から選ばれるときは、R2およびR4は必要に応じて環状構造を形成してもよい;
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、H、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
13は、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
ここで、該アルキルならびに置換アルキルは、C1−C12であり;および該置換アルキルまたは該置換アリールにおける置換基は、フリーラジカル重合化を本質的に妨げる官能基を含まないものであり、
CMは下記式オレフィンのモノマー単位を示し、
【化2】

【0012】
ここで、
Xは、CH、およびCHOHからなる群から選ばれ;
Yは、OR、OCR、ハロゲン、COH、COR、COR、CN、CONH、CONHR、CONRおよびR’からなる群から選ばれ;
Rは、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリール、置換アラルキルならびに無置換アラルキル、置換アルカリールならびに無置換アルカリール、および置換オルガノシリルならびに無置換オルガノシリルからなる群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸およびハロゲンからなる群から選ばれ;前記アルキル基における炭素数は1から12であり;および R’は、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリールからなる芳香族群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換オレフィンならびに無置換オレフィンおよびハロゲンからなる群から選ばれ;
【0013】
但し、マクロモノマー中の末端CM単位は、末端二重結合を有する以下の構造に誘導体化されており、
【化3】

【0014】
ここで、Yは上記CM中のYと同じものを表し、Pはマクロモノマーの残部であるオリゴマー基を表し、
mは1から100の範囲であり、
nは2から4の範囲であることを特徴とするマクロモノマーに関する。
さらに本発明は、以下の構造式からなることを特徴とするマクロモノマーであって、
【0015】
【化4】

【0016】
ここで、
mは1から100の範囲である:
1およびR3は、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群(I)、および−C(O)OR5、−C(O)NR67、−CR8(O)、−C(O)OC(O)R9、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(II)から各々独立に選ばれ;
ここでR1またはR3が群(II)から選ばれるときは、R1およびR3は必要に応じて環状構造を形成してもよい;および
2およびR4は、H、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群(III)、および−C(O)OR5、−C(O)NR67、−CR8(O)、−C(O)OC(O)R9、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(IV)から各々独立に選ばれ;ここでR2またはR4が群(IV)から選ばれるときは、R2およびR4は必要に応じて環状構造を形成してもよい;
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、H、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
13は、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
ここで、該アルキルまたは置換アルキルは、C1からC12であり、該置換アルキルまたは該置換アリールにおける置換基は、フリーラジカル重合化を本質的に妨げる官能基を含まない;および
Yは、OR、OCR、ハロゲン、COH、COR、COR、CN、CONH、CONHR、CONRおよびR’からなる群から選ばれ;
Rは、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリール、置換アラルキルならびに無置換アラルキル、置換アルカリールならびに無置換アルカリール、および置換オルガノシリルならびに無置換オルガノシリルからなる群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸およびハロゲンからなる群から選ばれ;
【0017】
前記アルキル基における炭素数は1から12であり;および
R’は、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリールからなる芳香族群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換オレフィンならびに無置換オレフィンおよびハロゲンからなる群から選ばれるものである、マクロモノマーに関する。
【0018】
本発明のマクロモノマーは、1種以上のモノマーのフリーラジカル重合法により調製でき、以下、“慣用のモノマー”を(CM)と呼ぶ。形成されたポリマーは、ビニル末端基を有する。重合は、オレフィン性不飽和有機分子から誘導された官能基により開始される。この方法において有用なCMは、以下の式を有する:
【0019】
【化5】

【0020】
ここで、
Xは、CH 、およびCH OHからなる群から選ばれ;
Yは、OR、O CR、ハロゲン、CO H、COR、CO R、CN、CONH、CONHR、CONR およびR’からなる群から選ばれ;
Rは、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリール、置換アラルキルならびに無置換アラルキル、置換アルカリールならびに無置換アルカリール、および置換オルガノシリルならびに無置換オルガノシリルからなる群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸およびハロゲンからなる群から選ばれ;前記アルキル基における炭素数は1から12であり;および R’は、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリールからなる芳香族群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換オレフィンならびに無置換オレフィンおよびハロゲンからなる群から選ばれ;
【0021】
前記重合法は、前記CMとコバルトを含む連鎖移動剤およびフリーラジカル開始剤とを約25℃から240℃までの温度において接触させることにより;
以下の構造式で示されるオレフィン性不飽和有機分子UOの添加を含むことで改善され;
【0022】
【化6】

【0023】
ここで、
およびR は、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群(I)、および−C(O)OR 、−C(O)NR 、−CR (O)、−C(O)OC(O)R 、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(II)から各々独立に選ばれ;ここでR またはR が群(II)から選ばれるときは、RおよびR は必要に応じて環状構造を形成してもよい;および
およびR は、H、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群(III )、および−C(O)OR 、−C(O)NR 、−CR (O)、−C(O)OC(O)R 、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(IV)から各々独立に選ばれ;ここでR またはR が群(IV)から選ばれるときは、RおよびR は必要に応じて環状構造を形成してもよい;
、R 、R 、R 、R 、R10、R11およびR12は、H、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
13は、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
ここで、該アルキルならびに置換アルキルは、C −C12であり、および該置換アルキルまたは該置換アリールにおける置換基は、フリーラジカル重合化を本質的に妨げる官能基(すなわち、フリーラジカル鎖の停止剤になることが知られている、例えばチオールまたはニトロキシドといった群)を含まない。
【0024】
他の実施態様例として、R およびR の少なくとも1つが水素であり、RおよびR は、−CH(O)、−CNおよびハロゲンからなる群(I)、および−C(O)OR 、−C(O)NR 、−CR (O)、−C(O)OC(O)R 、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(II)から各々独立に選ばれ;ここでR またはR が群(II)から選ばれるときは、RおよびR は必要に応じて環状構造を形成してもよい;または、
【0025】
他の実施態様例として、R およびR は、H、−CH(O)、−CNおよびハロゲンからなる群(III )および−C(O)OR 、−C(O)NR 、−CR (O)、−C(O)OC(O)R 、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリール(IV)から各々独立に選ばれ;ここで、R またはR が群(IV)から選ばれるときは、R およびR は必要に応じて環状構造を形成してもよい;
【0026】
、R 、R 、R 、R 、R10、R11およびR12は、H、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
13は、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
ここで、該アルキルまたは置換アルキルは、C からC12であり、該置換アルキルまたは該置換アリールにおける置換基は、フリーラジカル重合化を本質的に妨げる官能基(すなわち、フリーラジカル鎖の停止剤になることが知られている、例えばチオールまたはニトロキシドといった群)を含まない。
特に下記式のマクロモノマーの調製について、
【0027】
【化7】

【0028】
(ここで、mは1から100、好ましくは2から20、最も好ましくは2から10の範囲である)出発のオレフィン性不飽和有機分子は式(A)により示すことができる:
【0029】
【化8】

【0030】
ここで、
、R 、R およびR は、H、−CH(O)、−CN、ハロゲン、−C(O)OR 、−C(O)NR 、−CR (O)、−C(O)OC(O)R 、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリールおよび置換アリールからなる群から各々独立に選ばれ;
およびRまたは R およびR は、R 、R 、R またはR が−C(O)OR 、−C(O)NR 、−CR (O)、−C(O)OC(O)R 、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリールまたは置換アリールであるときは、R 、R 、R またはR は結合されて環状構造でもよく;
【0031】
さらに、R 、R 、R およびR の2つまでがHであることが可能であり;
、R 、R 、R 、R 、R10、R11およびR12は、H、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
13は、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
【0032】
ここで、該アルキルまたは置換アルキルは、C からC12であり、該置換アルキルまたは該置換アリールにおける置換基は、フリーラジカル重合化を本質的に妨げる官能基(すなわち、フリーラジカル鎖の停止剤になることが知られている、例えばチオールまたはニトロキシドといった群)を含まない。
Yは、OR、O CR、ハロゲン、CO H、COR、CO R、CN、CONH 、CONHR、CONR およびR’からなる群から選ばれ;
Rは、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリール、置換アラルキルならびに無置換アラルキル、置換アルカリールならびに無置換アルカリール、および置換オルガノシリルならびに無置換オルガノシリルからなる群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸およびハロゲンからなる群から選ばれ;前記アルキル基における炭素数は1から12であり;および R’は、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリールからなる芳香族群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換オレフィンならびに無置換オレフィンおよびハロゲンからなる群から選ばれる。
【0033】
前記慣用のモノマー(CM)は、スチレン、アクリレート、ビニルピリジン、メタクリレート、α−メチルスチレン、ビニルピロリドン、クロロプレン、およびコバルト触媒の存在下において触媒的な連鎖移動が起こることが公知である他のモノマーからなる群から選ばれる。本発明は、R とR の双方が同時にHになることのない上述のようなマクロモノマーに関するものでもある。
【発明の効果】
【0034】
通常、不活性かつ非重合性のオレフィン性不飽和有機分子を含むマクロモノマーの提供。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
発明のマクロモノマーは、連鎖移動触媒(CTC)を実現することができるコバルト錯体の存在下において、不活性オレフィン性不飽和有機分子(UO)と他の慣用のモノマー(CMとする)とを重合することにより形成される。一般的に、UOとは、CTCに委ねることが知られている慣用のモノマーと、評価すべき量までホモ重合化または共重合化しない内部オレフィン性モノマーまたは他の不飽和モノマー種を意味するものである。前記慣用のモノマーとしては、例えば、メタクリレート、メタアクリロニトリル、α−メチルスチレン等、同様にそれらのフッ素化類似物も挙げられる。“評価すべき量まで共重合化していない”とは、それらのオレフィン性不飽和有機分子が、慣用のモノマーに対して10倍過剰量で存在する時でさえ、慣用のモノマーと10モルパーセント未満(慣用のモノマーに対して)の量のレベルでしか共重合化しないことを意味する。しばしばこれらの分子は、共重合化を阻害する。
【0036】
この物質の製造に使用する金属連鎖移動触媒としては、コバルト(II)キレートおよびコバルト(III )キレートが好ましい。かかるコバルト化合物の例は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、1987年6月に発行された特許文献5、特許文献6および特許文献7において開示されている。他の有用なコバルト化合物[ポルフィリン、フタロシアニン、テトラアゾポリフィリンのコバルト錯体およびコバロキシム(cobaloximes )]は、Enikolopov, N. S. らによる特許文献8、Golikov, I. らによる特許文献9、Belgovskii, I. M. による特許文献10およびBelgovskii, I. M. らによる特許文献11においてそれぞれ開示されている。
【0037】
これらの触媒は、拡散速度を制御するために密封系において取り扱う。これらの触媒は、ppm単位濃度で効果的である。これらのコバルト(II)およびコバルト(III )連鎖移動触媒の例としては、以下の構造で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
【0038】
【化9】

【0039】
Co(II)(DPG−BF J=K=Ph、L=配位子
Co(II)(DMG−BF J=K=Me、L=配位子
Co(II)(EMG−BF J=Me、K=Et、L=配位子
Co(II)(DEG−BF J=K=Et、L=配位子
Co(II)(CHG−BF J=K=−(CH −、L=配位子
【0040】
【化10】

【0041】
QCo(III )(DPG−BF J=K=Ph、R=アルキル、L=配位子QCo(III )(DMG−BF J=K=Me、R=アルキル、L=配位子QCo(III )(EMG−BF J=Me、K=Et、R=アルキル、L=配位子
QCo(III )(DEG−BF J=K=Et,R=アルキル、L=配位子
QCo(III )(CHG−BF J=K=−(CH −,R=アルキル、L=配位子
QCo(III )(DMG−BF J=K=Me、R=ハロゲン、L=配位子
【0042】
Lは、配位化学において一般に知られる付加的な中性配位子である。例えば、水、アミン、アンモニア、ホスフィンが挙げられる。
【0043】
触媒としては、テトラフェニルポルフィリン、テトラアニシルポルフィリン、テトラメシチルポルフィリンといった種々のポルフィリン分子および他の置換種からなるコバルト錯体を挙げることもできる。Qは、有機ラジカル(例えば、アルキルまたは置換アルキル)である;Q基としては、イソプロピル、1−シアノエチルおよび1−カルボメトキシエチルが好ましい。
【0044】
CoCTC触媒が存在するとき、CTCが機能するまでは、連鎖が単一のUOで始まり、引き続いて慣用のモノマーが重合する。該CTCが働くと、ポリマー鎖は水素原子の喪失により停止され、末端不飽和マクロモノマーを生成する;水素原子は、Co触媒により新しいUOに移動され、その結果、新しいポリマー鎖を誘導する。それ故、得られたマクロモノマーは、UOから誘導された1つの官能基および端にある末端二重結合(ビニリデン不飽和物)を含む。ビニリデン不飽和物とは、CMから水素原子を引き抜いたものから誘導され、以下の基を意味する:
YPC=CH
【0045】
ここで、
Yは、OR、O CR、ハロゲン、CO H、COR、CO R、CN、CONH 、CONHR、CONR およびR’からなる群から選ばれ;
Rは、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリール、置換アラルキルならびに無置換アラルキル、置換アルカリールならびに無置換アルカリール、および置換オルガノシリルならびに無置換オルガノシリルからなる群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸およびハロゲンからなる群から選ばれ;前記アルキル基における炭素数は1から12であり;および R’は、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリールからなる芳香族群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換オレフィンならびに無置換オレフィンおよびハロゲンからなる群から選ばれ;および
Pは、ポリマーラジカルまたはオリゴマーラジカルへの慣用のモノマーの付加から得られるポリマー基またはオリゴマー基(polymeric or oligomeric group)である。
【0046】
一般的な反応スキームは、式(1)として要約することができる:
UO+CM+Co CTC →UO (CM) +(CM) (1)
(CM) で示される同時生成物(coproduct )は避けられないが、スターブドフィード反応条件により、その存在を最小にすることができる。重合化度(m)および(p)は、CoCTCの添加量により調節されるが、mは、1から100、好適には2から20、最も好適には2から10の範囲であり、一方pは、2から100の範囲であり、一般的にmと同じである。
【0047】
UOに関してある最小量の共重合が起こる場合、一般的な反応スキームは式(2)として記述することができる:
UO+CM+Co CTC →UO (CM) +(UO) (CM) +(CM) (2)
【0048】
重合度(n)は、UOおよびCMの反応性比により調節されるが、nは一般的に2であり、4より大きいことはめったにない。最も有用な生成物に関して、得られたマクロモノマーは、1つのUOおよび2から20のCMを含む;すなわち、UO:CMのモル比は、約1:2から約1:20の範囲である。このことは、実施例の比較実験において記述される。
UOの一般式は以下の通りである:
【0049】
【化11】

【0050】
ここで、
およびR は、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群(I)、および−C(O)OR 、−C(O)NR 、−CR (O)、−C(O)OC(O)R 、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(II)から各々独立に選ばれ;ここでR またはR が群(II)から選ばれるときは、RおよびRは必要に応じて環状構造を形成してもよい;および
およびR は、H、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群(III )、および−C(O)OR 、−C(O)NR 、−CR (O)、−C(O)OC(O)R 、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(IV)から各々独立に選ばれ;ここでR またはR が群(IV)から選ばれるときは、R およびR は必要に応じて環状構造を形成してもよい;
、R 、R 、R 、R 、R10、R11およびR12は、H、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
13は、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
ここで、該アルキルならびに置換アルキルは、C −C12であり、および該置換アルキルまたは該置換アリールにおける置換基は、フリーラジカル重合化を本質的に妨げる官能基(すなわち、フリーラジカル鎖の停止剤になることが知られている、例えばチオールまたはニトロキシドといった群)を含まない。
【0051】
前記慣用のモノマー(CM)は、メタクリレート、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、ビニルピロリドン、クロロプレンおよびコバルト連鎖移動触媒の存在下おいて触媒的連鎖移動を受けることが知られている他のモノマーからなる群からから選ばれる1種以上のモノマーである;
【0052】
前記コバルト連鎖移動触媒は、コバルト(II)キレートまたはコバルト(III )キレート、コバルトポルフィリン、コバルトフタロシアニン、コバルトテトラアゾポルフィリン、コバルトグリオキシム、コバルトコバロキシムおよび他の適当なコバルト(II)キレートおよびコバルト(III )キレートからなる群から選ばれる。
【0053】
“環状構造を形成してもよい”とは、C=C基の同じ炭素(C)に結合しているか、あるいは“=”に関して“シス”であるR基(すなわち、R 、R 、R 、R )が、互いに結合して環状構造を形成することができることを意味するものである。これは、以下の構造で示される:
【0054】
【化12】

【0055】
それらの構造は代表的なものであり、および例えば、上記R およびRまたはRおよびRは、前記構造において環状部位を示すことができないという理由はないことは、当業者により容易に理解される。このことは、以降の実施例7において説明する。
【0056】
好適な慣用のモノマー(CM)としては、メタクリロニトリル、メタアクリロイルクロリド、メタクリル酸無水物、[2−(メタアクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、2−(メタアクリロイルオキシ)エチルメタクリレート、2−(メタアクリロイルオキシ)エチルアセトアセテート、[2−(メタアクリロイルオキシ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、ビニルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート(全ての異性体)、ブチルメタクリレート(全ての異性体)、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メタクリル酸、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、トリブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシメチル−シリルプロピルメタクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート、イソプロペニルブチラート、イソプロペニルアセテート、イソプロペニルベンゾエート、イソプロペニルクロリド、イソプロペニルフルオリド、イソプロペニルブロミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−メチル−オール メタクリルアミド、N−エチル−オール メタクリルアミド、イソプロペニル安息香酸(全ての異性体)、ジエチルアミノα−メチルスチレン(全ての異性体)、p−メチル−α−メチルスチレン(全ての異性体)、ジイソプロペニルベンゼン(全ての異性体)、イソプロペニルベンゼンスルホン酸(全ての異性体)、メチル 2−ヒドロキシメチルアクリレート、エチル 2−ヒドロキシメチルアクリレート、プロピル 2−ヒドロキシメチルアクリレート(全ての異性体)、ブチル 2−ヒドロキシメチルアクリレート(全ての異性体)、2−エチルヘキシル 2−ヒドロキシメチルアクリレート、イソボルニル 2−ヒドロキシメチルアクリレート、メチル 2−クロロメチルアクリレート、 エチル 2−クロロメチルアクリレート、プロピル 2−クロロメチルアクリレート(全ての異性体)、ブチル 2−クロロメチルアクリレート(全ての異性体)、2−エチルヘキシル 2−クロロメチルアクリレートおよびイソボルニル 2−クロロメチルアクリレートが挙げられる。
【0057】
好適なオレフィン性不飽和有機分子(UO)としては、ブテンニトリル(全ての異性体)、ペンテンニトリル(全ての異性体)、メチルブテンカルボキシレート(全ての異性体)、エチル ブテンカルボキシレート(全ての異性体)、プロピル ブテンカルボキシレート(全ての異性体)、ブチル ブテンカルボキシレート(全ての異性体)、2−エチルヘキシルブテンカルボキシレート(全ての異性体)、メチルペンテンカルボキシレート(全ての異性体)、エチルペンテンカルボキシレート(全ての異性体)、パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸プロピル(全ての異性体)、シンナモニトリル、無水マレイン酸メチル、シクロペンテン−1−オン、シクロヘキセン−1−オン、シクロペプテン−1−オン、ジメチルマレート、ジメチルフマレート、ジエチルマレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、クロトンアルデヒド、クロトンニトリル、メチルフマロニトリル、ジフェニルエチレン(全ての異性体)、トリフェニルエチレン、メチル オクタデセン−2−オエート、エチル オクタデセン−2−オエート、メチル ヘキサデセン−2−オエート、エチル ヘキサデセン−2−オエート、クマリン、メチルクマリン−3−カルボキシレートおよび無水イタコン酸メチルが挙げられる。
【0058】
UOは、重合“溶剤”として利用することができるため利点があり、かつスターブドフィード法において、他のモノマーを理想的に添加し、所望の生成物を最適に調節することができる。UOは、実際のところモノマー体であり、すなわち、出発物質として存在するマクロモノマーはない。使用されるUOは他の方法からの生成物、または副生成物であってもよい。例えば、ブタジエンのモノヒドロシアン化からのEtHC=CHCN、ブタジエンのヒドロカルボキシル化からのEtHC=CHCO H、ブタジエンのカルボメトキシル化からのEtHC=CHCO Meまたはシクロオクタジエンのヒドロシアン化からの2−シアノシクロオクテンといった熱力学的に異性化した共役生成物である。さらに、それらは、不飽和脂肪酸のエステル、または好ましくは異性化して共役生成物になっている不飽和脂肪酸のエステルであってもよい。
【0059】
炭素中心ラジカルを与える開始剤は、金属キレート連鎖移動触媒を破壊しないように充分にマイルドであり、代表的にはポリマーの製造において使用することもできる。適当な開始剤としては、必要な溶解度および適切な半減期を有するアゾ化合物である。アゾ化合物としては、アゾクメン、2,2’−アゾビス(2−メチル)−ブタンニトリル、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)ならびに2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、および当業者に知られた他の化合物が挙げられる。
【0060】
上述の金属連鎖移動触媒を使用する重合方法は、およそ室温から約240℃までの範囲またそれ以上の温度、好適には約50℃から150℃における実施が適当である。本発明の工程において製造されたポリマーは、典型的には標準的な溶液重合技術による重合反応で合成されるが、エマルジョン重合法、懸濁重合法またはバルク重合法により合成することもできる。連続(CSTR)重合法を使用することもできる。この重合法はバッチ法、セミバッチ法、または連続法のいずれかで実施することができる。バッチ法で実施するときは、代表的に、金属連鎖触媒、慣用のモノマー、および不飽和有機分子、必要に応じて溶剤で反応器を充填する。次いで、該混合物に対して所望量の開始剤を添加する。代表的な所要量は、かかるモノマー:開始剤の比が5:1000である。次いで、該混合物を、必要時間(通常は約30分から約12時間)にわたって加熱する。バッチ法では、モノマーの環流を避けるために、加圧下で反応を実施してもよい。
【0061】
本発明に従って合成された末端不飽和オリゴマーまたはマクロモノマーを、非金属連鎖移動触媒としてのみでなく、グラフトコポリマー、非水系分散ポリマー、ミクロゲル、スターポリマー、枝分かれポリマーおよびラダーポリマーの生成において有用な成分または中間体として使用することができる。
【0062】
本発明の方法により製造されたオリゴマー、マクロモノマーおよびポリマーは、種々のコーティング樹脂および成形樹脂において有用である。他の潜在的な使用としては、繊維、フィルム、シート、複合材料、多層コーティング、光重合材料、フォトレジスト、界面活性剤、分散剤、接着剤、定着剤、カップリング剤およびその他においてキャスト、ブロー、スフまたはスプレーといった適用を挙げることができる。得られる特性を利用した最終製品としては、例えば、自動車および建築用のコーティングまたは仕上げ剤(ハイソリッドの水性仕上げ剤および溶剤性仕上げ剤を含む)が挙げられる。本発明において製造されるようなポリマーは、例えば、顔料分散剤として用いるために構築されたポリマーにおける使用が見られる。
【0063】
以下の実施例において使用されるような凍結−ポンプ−融解−サイクル(freeze-pump-thaw cycle)は、非特許文献4において記載されている。
【0064】
H−NMRスペクトルは、QE300 NMR分光計(General Electric(Freemont 、CA 94539) 社製)を使用し、300MHzの周波数において測定した。
【0065】
IDSマススペクトルはイオン化法であって、該方法は、ほとんどフラグメーションなしに[M]K の形成において擬似の分子イオン(pseudomolecular ions)を生成するものである。そのままの有機分子は、迅速な加熱により脱着される。ガス層において、有機分子はカリウムアタッチメントによりイオン化される。カリウムイオンは、K Oを含むアルミノシリケートマトリックスから生じる。これらの実験の全ては、Finnegan型 4615 GC/MS 4極マス分光計(Finnegan MAT(USA) 、San Jose、CA)を用いて実施した。200℃における電気衝撃源(electron impact source)のコンフィグレーション(configuration )操作および1×10−6torrより下の圧力源を利用した。
【0066】
MWおよびDP測定は、スチレンを標準物質に用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づき、100A,500A,1000Aおよび5000Aのフェノーゲル(phenogel)カラム(Waters Corp., Marlborough 、MA 01752-9162 )を備えたWISP 712クロマトグラフにおいて実施した。Mpic は、K IDSを用いて得られた最大分子イオンシグナルの分子量の測定であり、一般的にMNとMWとの間の値である。
【0067】
定 義

特に言及しない限り、全ての化学種および試薬は、Aldrich Chemical社(Milwaukee, WI )のものをそのまま使用した。
【0068】
MMA=メチルメタクリレート
2−PN=2−ペンテンニトリル
TAPCo=メソ−テトラ(4−メトキシフェニル)ポルフィリン−Co
VAZO−88(登録商標)=1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−
1−カルボニトリル)(Du Pont (wilmington、DE)社製)
AIBN=2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)
THPCo=テトラキス(4−ヘキシルフェニル)ポルフィリン−Co
DMM=ジメチルマレート
EC=エチルクロトネート
DEM=ジエチルマレート
CPO=シクロペンテン−1−オン
PPVE=パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル
【0069】
実 施 例

実施例1:2−PNを用いたMMAの重合開始

2mgのTAPCo、2.6mgのVAZO(登録商標)88、0.6mLの1,2−ジクロロエタン、0.4mLの2−PNおよび0.04mLのMMAからなる溶液を凍結−ポンプ−融解(freeze-pump-thaw)の3つのサイクルにより脱気し、密閉し、次いで90℃の循環浴中に2時間にわたって浸漬した。この溶液を密閉し、次いで追加分の0.04mLのMMAを直ちに加えた。次いで、上述のように脱気し、90℃の等温浴にさらに2時間にわたって浸漬した。
【0070】
上述と同様の操作を100℃において30分間隔で、次いで110℃において15分間隔で繰り返した。
【0071】
IDS分析は、全ての3つの場合において、およそ30%のポリマー生成物が、およそ3のDPを有し、ポリマー分子あたり1つの2−PN単位のみを含むことを示した。TAPCoを使用しないことを除いて、上述のように実施した比較実験では、NMRデーターによると、ポリマーに混入した2−PNを1%未満を含むポリMMAを生じた。
【0072】
実施例2: 2−シアノ−2−ブテンを用いたMMAの重合開始

4mgのTAPCo、2mgのAIBN、0.7mLのクロロホルム、0.3mLの2−シアノ−2−ブテンおよび0.08mLのMMAからなる溶液を凍結−ポンプ−融解の3つのサイクルにより脱気し、密閉し、次いで70℃の循環浴中に2時間にわたって浸漬した。この溶液を密閉し、次いで0.06mLのMMAを直ちに加えた。次いで、上述のように脱気し、70℃の等温浴にさらに3時間にわたって浸漬した。次いで、追加のMMAを0.06mL加え、さらに3時間にわたって溶液を70℃に保った。
【0073】
+IDS分析は、全ての3つの場合において、およそ10%のポリマー生成物が、およそ3のDPを有し、ポリマー分子あたり1つの2−シアノ−2−ブテン単位のみを含むことを示した。
【0074】
実施例3:MMAを用いたクロトンアルデヒドの重合開始

MMAのアリコート0.04mLを5mgのTHPCo、0.9mLのクロトンアルデヒドおよび8mgのVAZO(登録商標)88を含む反応混合物に加えた。次いで、凍結−ポンプ−融解の3つのサイクルにより反応溶液を脱気し、密閉し、次いで100℃の循環浴中に1時間にわたって浸漬した。
上述の操作をさらに2回繰り返した。真空蒸発させたサンプルのプロトン−NMRによると、およそ60%の形成された重合生成物は、およそ5のDPを有し、アルデヒド基を含んでいた。K+IDS分析は、オリゴMMAおよび若干のコポリマー(不明のスペクトル)からなる反応生成物を示した。比較実験は、THPCoを使用しないことを除いて上述のように実施し、NMR分析によれば、ポリマーに混入したクロトンアルデヒドを1%未満含むポリMMAを生じた。
【0075】
実施例4:DMMを用いたMMAの重合開始

MMAのアリコート0.04mLを5mgのTHPCo、0.9mLのDMMおよび8mgのVAZO(登録商標)88を含む反応混合物に加えた。次いで、凍結−ポンプ−融解の3つのサイクルにより反応溶液を脱気し、密閉し、次いで100℃の循環浴に1時間にわたって浸漬した。
90分および150分の加熱時間を設けたことを除いて、上述の操作をさらに2回繰り返した。K+IDS分析は、およそ15%のMMAホモポリマーのみが形成されていたことを示した。残りのポリマー生成物の約50%は、分子あたり1つのDMM単位を含み、その残りの〜50%は、おおむね2つのDMM単位を含んだ。GPCでは、およそ5のDPを示した。
【0076】
実施例5: ECを用いたMMAの重合開始

MMAのアリコート0.04mLを3mgのTHPCo、0.9mLのECおよび8mgのVAZO(登録商標)88を含む反応混合物に加えた。次いで、凍結−ポンプ−融解の3つのサイクルにより反応溶液を脱気し、密閉し、次いで100℃の循環浴に60分間にわたって浸漬した。
上述の操作をさらに2回繰り返した。DPがおよそ4である生成物が得られた。K+IDS分析は、およそ18%のMMAホモポリマーのみが形成されていたことを示した。残りポリマー生成物の約60%は、分子あたり1つのEC単位を含み、約40%は分子あたり、おおむね2つのEC単位を含んだ。
【0077】
実施例6: DEMを用いたMMAの重合開始

MMAのアリコート0.08mLを2mgのTHPCo、1.8mLのDEMおよび16mgのVAZO(登録商標)88を含む反応混合物に加えた。次いで、凍結−ポンプ−融解の3つのサイクルにより反応溶液を脱気し、密閉し、次いで100℃の循環浴に1時間にわたって浸漬した。
【0078】
90分および150分の加熱時間を設けたことを除いて、上述の操作をさらに2回繰り返した。DPがおよそ3.5である生成物が得られた。K+IDS分析は、およそ30%のMMAホモポリマーのみが形成されたことを示した。残りのポリマー生成物の約70%は、分子あたり1つのDEM単位を含み、その残りの30%は分子あたり、おおむね2つのDEM単位を含んだ。
【0079】
比較実験は、THPCoを使用しないことを除いて上述のように実施し、NMRデーターによれば、ポリマーに混入したECを6%含むポリMMAを生じた。
【0080】
実施例7: CPOを用いたMMAの重合開始

MMAのアリコート0.08mLを1mgのビス(ジフェニルグリオキシム)−(トリフェニルホスフィン)コバルト(III)クロライド、1.8mLのCPOおよび16mgのVAZO(登録商標)88を含む反応混合物に加えた。次いで、この反応溶液を凍結−ポンプ−融解の3つのサイクルにより脱気し、密閉し、次いで100℃の循環浴に40分間にわたって浸漬した。90分および150分の加熱時間を設けることを除いて、上述の操作をさらに2回繰り返した。DPがおよそ3である生成物が得られた。K+IDS分析は、およそ58%のMMA/CPOコポリマーが形成されたことを示した。かかるコポリマーのおよそ90%は、分子あたり1つのCPO単位のみを含んだ。
【0081】
実施例8: UOの共重合化

MMAのアリコート2.4mLを10mgのTHPCo、6mLのジクロエタン、0.12gのVAZO(登録商標)88、3mLのFREON−113および9mLのPPVEを含む反応混合物に加えた。MMAを3回加え、かつ各添加後に、溶液を脱気し60分間100℃に保った。
蒸発の後に得られたポリマー生成物は、Mpic=800を有した。K+IDS分析によれば、15%のポリMMAは、PPVEを1分子含んだ。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明により、通常、不活性かつ非重合性のオレフィン性不飽和有機分子を含むマクロモノマーを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
(UO)(CM)で表されるマクロモノマー、
または、
以下の構造式:
(UO)(CM)で表されるマクロモノマー
及び以下の構造式:
(UO)(CM)で表されるマクロモノマー、
の混合物である末端二重結合を含むマクロモノマー;
であって、
UOは下記式オレフィンのモノマー単位を示し、
【化1】


ここで、
1およびR3は、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群(I)、および−C(O)OR5、−C(O)NR67、−CR8(O)、−C(O)OC(O)R9、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(II)から各々独立に選ばれ;ここでR1またはR3が群(II)から選ばれるときは、R1およびR3は必要に応じて環状構造を形成してもよい;
およびR2およびR4は、H、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群 (III)、および−C(O)OR5、−C(O)NR67、−CR8(O)、−C(O)OC(O)R9、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(IV)から各々独立に選ばれ;ここでR2またはR4が群(IV)から選ばれるときは、R2およびR4は必要に応じて環状構造を形成してもよい;
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、H、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
13は、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
ここで、該アルキルならびに置換アルキルは、C1−C12であり;および該置換アルキルまたは該置換アリールにおける置換基は、フリーラジカル重合化を本質的に妨げる官能基を含まないものであり、
CMは下記式オレフィンのモノマー単位を示し、
【化2】


ここで、
Xは、CH3、およびCH2OHからなる群から選ばれ;
Yは、OR、O2CR、ハロゲン、CO2H、COR、CO2R、CN、CONH2、CONHR、CONR2およびR’からなる群から選ばれ;
Rは、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリール、置換アラルキルならびに無置換アラルキル、置換アルカリールならびに無置換アルカリール、および置換オルガノシリルならびに無置換オルガノシリルからなる群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸およびハロゲンからなる群から選ばれ;
前記アルキル基における炭素数は1から12であり;
およびR’は、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリールからなる芳香族群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換オレフィンならびに無置換オレフィンおよびハロゲンからなる群から選ばれ;
但し、マクロモノマー中の末端CM単位は、末端二重結合を有する以下の構造に誘導体化されており、
【化3】


ここで、Yは上記CM中のYと同じものを表し、Pはマクロモノマーの残部であるオリゴマー基を表し、
mは1から100の範囲であり、
nは2から4の範囲であることを特徴とするマクロモノマー。
【請求項2】
以下の構造式からなることを特徴とするマクロモノマーであって、
【化4】


ここで、
mは1から100の範囲である:
1およびR3は、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群(I)、および−C(O)OR5、−C(O)NR67、−CR8(O)、−C(O)OC(O)R9、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(II)から各々独立に選ばれ;ここでR1またはR3が群(II)から選ばれるときは、R1およびR3は必要に応じて環状構造を形成してもよい;
およびR2およびR4は、H、−CH(O)、−CNならびにハロゲンからなる群 (III)、および−C(O)OR5、−C(O)NR67、−CR8(O)、−C(O)OC(O)R9、−C(O)NR10COR11、−OC(O)R12、−OR13、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールからなる群(IV)から各々独立に選ばれ;ここでR2またはR4が群(IV)から選ばれるときは、R2およびR4は必要に応じて環状構造を形成してもよい;
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、H、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
13は、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであり;
ここで、該アルキルまたは置換アルキルは、C1からC12であり、該置換アルキルまたは該置換アリールにおける置換基は、フリーラジカル重合化を本質的に妨げる官能基を含まない;および
Yは、OR、O2CR、ハロゲン、CO2H、COR、CO2R、CN、CONH2、CONHR、CONR2およびR’からなる群から選ばれ;
Rは、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリール、置換アラルキルならびに無置換アラルキル、置換アルカリールならびに無置換アルカリール、および置換オルガノシリルならびに無置換オルガノシリルからなる群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸およびハロゲンからなる群から選ばれ;前記アルキル基における炭素数は1から12であり;および R’は、置換アリールならびに無置換アリール、置換ヘテロアリールならびに無置換ヘテロアリールからなる芳香族群から選ばれ、該置換基は、同一であるかまたは異なっており、かつ、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、イソシアナト、スルホン酸、置換アルキルならびに無置換アルキル、置換アリールならびに無置換アリール、置換オレフィンならびに無置換オレフィンおよびハロゲンからなる群から選ばれるものである、マクロモノマー。

【公開番号】特開2006−144027(P2006−144027A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39719(P2006−39719)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【分割の表示】特願平9−533633の分割
【原出願日】平成9年3月19日(1997.3.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】