説明

マグネトロンへの電力供給を調整する方法及び装置

【課題】瞬時電力の設定値と比べて、マグネトロンにより照射されたマイクロ波の瞬時電力の正確さを改善し最適化する。
【解決手段】マグネトロンへの電力供給をマイクロ波の瞬時電力の設定値の関数として以下のように調整する。マグネトロンの電気効率の値を予め決めてメモリに記憶する。マイクロ波の平均電力の設定値を入力し、それを変換して電力信号の瞬時値の設定値を得る。マグネトロンに供給されたアノード電流と高電圧の瞬時値を測定してサンプリングする。サンプリング時におけるアノード電流の瞬時値に高電圧の瞬時値を乗算し、マグネトロンの電気効率の所定値を乗算して、サンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を得る。連続したサンプリング時において有効な所定の調整関係の関数として修正された、連続したサンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を決定する。それを修正されたマイクロ波の瞬時電力を表すアナログ信号に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波の瞬時電力についての設定値の調整と共に、超高周波(UHF)の電磁波を生成する手段の一部を構成するマグネトロンへの電力供給の調整の分野における改良に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、コーティングを形成する分野に好適に応用することができる(ただし、排他的なものではない)。例えば、熱可塑性材料の容器の少なくとも一つの表面に、前記容器を入れる円筒状の空洞内でUHF帯域に存在している電磁波で前駆ガスを励起することにより、低圧プラズマを用いてバリア効果コーティングを形成する。前記UHF電磁波は、アノードを持つマグネトロンを有するUHF波発生装置により照射され、前記アノードに電力供給手段が高電位で電流を供給する。
【0003】
本発明をこの分野において詳しく説明するが、本発明に係るマグネトロンへの電力供給の調整は他の分野にも適用できる。
【0004】
文献FR2776540にはバリア層を形成する工程が記載され、特に、文献FR2783667,FR2792854,FR2847912には沈着物を生成可能とする装置の実施例が記載されている。
【0005】
【特許文献1】仏国特許第2776540号
【特許文献2】仏国特許第2783667号
【特許文献3】仏国特許第2792854号
【特許文献4】仏国特許第2847912号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当業者は、低温プラズマ法、特にプラズマ化学気相成長(PECVD)において、照射されたマイクロ波の瞬間的なエネルギーレベルの精度と、処理サイクルの間における電力の波形の両方が、コーティング膜を実質的に一定の品質にする、言い換えると、実質的に同じ品質の容器を得るための主因になることを知っている。多数の成膜装置を持つ生産能力が大きい産業設備において、一つの機械内又は異なる機械間における装置の性能の違い、複数の装置でそれぞれ処理した容器の質の違いを最小化するために、設備の全ての装置内における全ての空洞でのマイクロ波の瞬間的なエネルギーレベルを正確に制御することは重要である。
【0007】
器材のさまざまな部分(サーキュレータ、マイクロ波の電力を測定する装置、スタブを調整する装置…)が、マイクロ波のエネルギーレベルを正確に調整するのに利用できることが良く知られている。しかし、器材のこれらの部分は高価であり、低コスト化が永遠の関心事である産業設備では想定し難い。さらに、器材のこれらの部分は大きいため、産業機械、特に回転するタイプに搭載するのが難しい。回転するタイプは、器材が散りばめられていて、利用できる空間がほとんど残っていない。従って、この種類の器材の有効及び効果的な実施形態は、有資格者だけが実行できる正確な調整を必要とし、実装や動作を単純化する技術手段に恒常的な関心がある大量生産の産業設備では、必ずしも利用できない。
【0008】
高速な工業処理で容器に形成されるコーティングの特性ばらつきを減らすために、正確にマグネトロンの動作を制御する特定の安価な解決策を見つける必要がある。
【0009】
マイクロ波を用いるシステムの中心に位置するマグネトロンは、入力された高電圧(数kV)を超高周波の電磁波(マイクロ波)に変換するのに用いられる。高電圧は、低電圧源(特に、従来の電力供給ネットワークの電圧、例えば400Vの三相)を、マグネトロンの出力で要求されるマイクロ波のエネルギーの関数として調整された高電圧に変換させるのに適した高電圧源により印加される。マグネトロンの生産者は、マグネトロンのモデルごとに、高電圧源の特性を定義する基本曲線を提供する。マグネトロンのモデルごとに、特に、マイクロ波の電力の関数として、アノード電流の曲線変化、電気効率の曲線変化、及び、マグネトロンに印加される電圧の曲線変化を得ることができる。
【0010】
マグネトロンの電気効率は、所与のマイクロ波の電力に対して実質的に安定であり、マイクロ波の電力の関数として殆ど変化しない(典型的なマグネトロンにおいて、マイクロ波の電力が350Wから900Wの範囲で変化した場合に、電気効率の変化は2.8%程度である)。
【0011】
しかし、これらマグネトロンの特性は、マグネトロンが、整合した負荷(即ち、マグネトロンから受けたマイクロ波のエネルギーの一部をマグネトロンに反射しない負荷)と結合した場合にのみ有効である。
【0012】
都合の悪いことに、本発明が意図する装置(即ち、熱可塑性材料の容器に、前記容器を入れる円筒状の空洞内でUHF電磁波で前駆ガスを励起することにより、低圧プラズマを用いてコーティングを形成する装置)では、マグネトロンに結合された負荷は整合していないだけでなく、時間経過に対して一定ではなく、(数ミリ秒程度の周期で)急速に変化する。これらの負荷における変化は、所与のマイクロ波の平均電力で空洞内においてプラズマが形成される状況(動作設定値として操作者が設定した装置の動作条件)に固有のものである:
・始めは、プラズマはまだ発生していない;マグネトロンに結合された負荷は十分に整合されておらず、多くのエネルギーを反射する;
・空洞内にプラズマが発生する;マグネトロンに結合された負荷はより良く整合され、反射されるエネルギーが低くなる。
【0013】
これら2つの動作ステージ間で平均電力設定値が変化しないことが強調される。マグネトロンに印加される電圧と電流の変化は、反射エネルギーの量を変化させるマグネトロンの振る舞いだけに関わる。
【0014】
マグネトロンにより照射されたマイクロ波の電力を設定値に維持するために、アノード電流を調整することが知られている:アノード電流とマイクロ波の電力との間で比例係数が決定される(この特性は、マグネトロンの生産者により供給されたデータの一部となり得る);動作中に、アノード電流の値は連続的に計量され、マグネトロンにより照射されたマイクロ波の電力をできるだけ設定値に対して一定に維持するために、高電圧発生器の負荷における変化の関数としてアノード電流に比例修正が適用される。
【0015】
電源調節の速度は比較的遅く選択される(応答時間は100msより大きい)。一方、大きく不整合な負荷状態から整合した負荷状態への転換は、非常に短く、高電圧の1周期に対応することができる(例えば10ms〜20ms程度)。この結果、主に初めの段階において、上記の不均衡は、実質的に同一なマイクロ波の電力のために高圧電源により供給される電力の大きな不平衡と共に、複数の高電圧パルスを通じて伸びることができる。
【0016】
具体的には、図1は、典型的なマグネトロンについて計算した結果を示す図であり、時間(横座標に沿って秒で表される)の関数として、マグネトロンの端子に印加される高電圧の変化(右側の縦軸に沿ってボルトで表された実線の曲線)、及び、上記の状況において調整されたアノード電流の変化(左側の縦軸に沿ってミリアンペアで表された点線の曲線)がプロットされている。
【0017】
最初の2周期(図の左側)において、高電圧の最低値は−3.6kVである;十分に整合されていない負荷により反射されたエネルギーの比率は高い(プラズマはまだ発生していない)。その後の周期において、高電圧の最低値は−4kVである;プラズマが発生し、負荷の整合が良くなり、反射されるエネルギーの比率が小さくなる。
【0018】
発生器に印加されたアノード電流は、40ms程度の応答時間で、比較的ゆっくり調整される。パルスPA(最初の周期に属する)とパルスPB(その後の周期に属する)の瞬間的なピーク強度は以下の通りである:
・パルスPA:アノード電流は360mマグネトロンの生産者は1mAに対するマイクロ波の比例係数として3Wを与えるため、マグネトロンにより供給されるマイクロ波の瞬時電力は360×3、即ち1080Wである。
・パルスPB:アノード電流は305mマグネトロンにより供給されるマイクロ波の瞬時電力は305×3、即ち915Wである。
【0019】
図1に示された2つのパルスPAとPBは動作条件の転換の際に最も近くなり、電源は相対的にゆっくり調整され、電源動作の内部パラメータは変わらないと考えられる。マグネトロンにより供給されるマイクロ波の電力のマグネトロンに結合された負荷の整合の変化による違いは約15%であり、とても大きい。マグネトロンは、両方の状況において実質的に同一なマイクロ波の平均電力を供給し続けている。
【0020】
この結果、高圧電源が大きく急速な電力変化に従属するので、マグネトロンにより照射されたマイクロ波の電力を設定値に維持するためにアノード電流調整を用いた高圧電源に適応された現在の装置の動作条件は最適化されない。
【0021】
本発明の目的は、更に良く実際の要求を満たし、低コストで、特に、高速に変化するマイクロ波のエネルギーがマグネトロンに反射された場所において、瞬時電力の設定値と比べて、マグネトロンにより照射されたマイクロ波の瞬時電力の正確さを改善し最適化することができる改良した手段(方法及び装置)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の方法は以下の工程を有する:
・マグネトロンの電気効率について少なくとも一つの値を予め決めてメモリに記憶する;
・マイクロ波の平均電力の設定値を入力する;
・前記マイクロ波の平均電力の設定値を変換して、低い周波数において電力信号の瞬時値の設定値を得る;
・高いサンプリング周波数において、前記電力信号の瞬時値の設定値をサンプリングする;
・マグネトロンに供給されたアノード電流と高電圧の瞬時値を測定してサンプリングする;
・前記サンプリング時におけるアノード電流の瞬時値に高電圧の瞬時値を乗算し、マグネトロンの電気効率の所定値を乗算して、前記サンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を得る;
・測定された前記マイクロ波の瞬時電力と対応する瞬間にサンプリングされた瞬時電力の設定値を比較し、前記サンプリング時における両者の差値を求める;
・前記サンプリング時に計算された前記差値と、連続したサンプリング時にサンプリングされた瞬時電力の設定値とから、前記連続したサンプリング時において有効な所定の調整関係の関数として修正された、前記連続したサンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を決定する;
・マグネトロンへの電力供給を制御するのに適し、修正されたマイクロ波の瞬時電力を表すアナログ信号を得るために、制御電気強度変換を実行する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の構成を実施することで、マイクロ波の電力を実質的に同一に維持するため、高電圧発生からの瞬時電力の違いをかなり減らすことができる。
【0024】
パルスPAとPBに関する上記の例に戻って、本発明の方法を実施することによる効果は以下の通りである:
・パルスPA:アノード電流が360mA、電圧が−3550V、マグネトロンの平均電気効率が73.7%(マグネトロンの生産者により提供された所定の特性又は予め測定した値)の場合に、マグネトロンにより照射されたマイクロ波の瞬時電力は942W;
・パルスPB:アノード電流が305mA、電圧が−4050V、マグネトロンの平均電気効率が73.7%の場合、マグネトロンにより照射されたマイクロ波の瞬時電力は910W。
【0025】
従って、マグネトロンにより照射されたマイクロ波の瞬時電力と2つのパルスPAとPBとの相違は、マイクロ波の平均電力に対してわずか3.4%である。本発明の調整を実行することで、簡単にほとんどコストを上げずに、これまで行われてきた単なるアノード電流の調整と比べて、高電圧発生器からの動作電流の違いを4分の1にすることができる。
【0026】
さらに、最大の効果として、応答が高速であるため、本発明の構成は特に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この目的のために、第1の形態において、本発明は、マイクロ波の瞬時電力の設定値の関数として、マグネトロンへの電力供給を調整する調整方法を提供する。マグネトロンはUHF電磁波を形成する手段の一部を構成する。本発明の方法は以下の工程を有する:
・マグネトロンの電気効率について少なくとも一つの値を予め決めてメモリに記憶する;
・マイクロ波の平均電力の設定値を入力する;
・前記マイクロ波の平均電力の設定値を変換して、低い周波数において電力信号の瞬時値の設定値を得る;
・高いサンプリング周波数において、前記電力信号の瞬時値の設定値をサンプリングする;
・マグネトロンに供給されたアノード電流と高電圧の瞬時値を測定してサンプリングする;
・前記サンプリング時におけるアノード電流の瞬時値に高電圧の瞬時値を乗算し、マグネトロンの電気効率の所定値を乗算して、前記サンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を得る;
・測定された前記マイクロ波の瞬時電力と対応する瞬間にサンプリングされた瞬時電力の設定値を比較し、前記サンプリング時における両者の差値を求める;
・前記サンプリング時に計算された前記差値と、連続したサンプリング時にサンプリングされた瞬時電力の設定値とから、前記連続したサンプリング時において有効な所定の調整関係の関数として修正された、前記連続したサンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を決定する;
・マグネトロンへの電力供給を制御するのに適し、修正されたマイクロ波の瞬時電力を表すアナログ信号を得るために、制御電気強度変換を実行する。
本発明の構成は、調整において様々な変形が可能である。
【0028】
本発明の方法の実施形態において、共振変換装置を用いて電源を制御することで、電力から周波数への変換が行われる。
【0029】
マグネトロンの電気効率は定在波比の関数としてかなり変化するため、マグネトロンに供給される瞬時電力を決めるために、動作条件に応じて以下のどちらかの解法を用いることができる:
・所定の閾値よりも小さい定在波比に対して、マグネトロンの電気効率は一定とみなされ、予め測定されてメモリに格納された値はマグネトロンの平均電気効率に対する値である;又は、
・前記所定の閾値よりも大きい定在波比に対して、マグネトロンに供給されたアノード電流及び電圧の瞬時値の測定値と前記マグネトロンの電気効率との間の対応が予め設定され記憶されている。動作中において、瞬時電力は、マグネトロンに供給されたアノード電流及び電圧の瞬時値の測定値と、ノード電流と電圧の瞬時値の測定値に対応する、前記メモリに記憶されたマグネトロンの電気効率から決定される。
【0030】
上記の方法は、マグネトロンがUHF電磁波を円筒状の空洞内に照射し、このUHF電磁波により前駆ガスを活性化した低圧プラズマにより、1つの熱可塑性材料の容器の面にバリア材のコーティングを形成するのに適用した場合に特に有効である。
【0031】
第2の実施形態として、本発明は、本発明の方法を実施するために、マイクロ波の瞬時電力の設定値の関数として、UHF電磁波発生器のマグネトロンへの電力供給を調整する調整装置を提供する。
【0032】
この調整装置は、以下の構成を含むことを特徴とする:
マグネトロンの電気効率の少なくとも一つの所定値を記憶するためのメモリ手段;及び
以下の構成を有するマイクロコントローラ:
・マイクロ波の平均電力の設定値を入力するための入力手段;
・低い周波数において、前記マイクロ波の平均電力の設定値を電力信号の瞬時値の設定値に変換する変換装置;
・高いサンプリング周波数において、前記電力信号の瞬時値の設定値をサンプリングするためのサンプラー;
・マグネトロンに供給されたアノード電流と高電圧の瞬時値を測定してサンプリングするための測定手段及びサンプラー;
・前記サンプリング時におけるアノード電流の瞬時値に前記サンプリング時における高電圧の瞬時値を乗算し、電気効率の瞬時値の所定値を乗算して、前記サンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を得る手段;
・測定された前記マイクロ波の瞬時電力と対応する瞬間にサンプリングされた瞬時電力の設定値を比較し、前記サンプリング時における両者の差値を求める比較回路;
・前記サンプリング時に計算された前記差値と、連続したサンプリング時にサンプリングされた瞬時電力の設定値とから、前記連続したサンプリング時において有効な所定の調整関係の関数として修正された、前記連続したサンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を決定する手段;及び
・マグネトロンへの電力供給を制御するのに適し、修正されたマイクロ波の瞬時電力を表すアナログ信号を得るために、電力を制御電気強度(修正されたマイクロ波の瞬時電力を制御するための電気強度)に変換する変換装置。
この装置は様々な調整に適用することができる。
【0033】
1つの実施の形態において、電源は共振周波数が制御電気強度である共振変換装置の電源であり、電力を制御電気強度に変換する手段は、電力を周波数に変換する変換装置である。
【0034】
定在波比が所定の閾値(例えば約2より小さい)よりも小さい場合に適用される実施の形態において、マグネトロンの電気効率はメモリに記憶された所定の定数である。
【0035】
逆に、定在波比が所定の閾値(例えば約2より小さい)よりも大きい場合に、この装置は、マグネトロンのアノード電流とマグネトロンの端子に印加される電圧の対応を複数のマグネトロンの電気効率と共に記憶するメモリ手段を有する。
【0036】
好ましい実施の形態において、マグネトロンのアノード用の電源は、2つの制御部により制御された電力スイッチのブリッジを含む共振チョッパー電源と、前記電力スイッチのブリッジの対角線に沿って接続された共振フィルタとを有する。電力を周波数に変換する変換装置は、前記2つの制御部にそれぞれ接続された位相が反対の2つの出力を有する。
【0037】
前記調節装置は、容器を入れた円筒状の空洞内においてUHF電磁波により前駆ガスを活性化した低圧プラズマを用いて、少なくとも1つの熱可塑性材料の容器の面にコーティングを形成する装置に好適に実施され得る。この装置は、UHF波発生器と、前記発生器を空洞の側壁の窓に接続するUHF導波管とを有する。前記UHF波発生器は、アノードを持つマグネトロンと、前記アノードに高電圧で電流を供給する電源と、マイクロ波の瞬時電力の関数としてマグネトロンへの電力供給を調整する調節装置を有する。;特に、装置は、本発明により調整された電源とマグネトロンをそれぞれ有する多数の処理装置を備えたカルーゼル・タイプの回転装置であってもよい。
【0038】
図示した好ましい実施の形態の詳細な説明を読むことで本発明を更に理解することができる。添付の図面を用いながら説明する:
・図1は、典型的なマグネトロンについて計算した結果を示す図であり、時間(横座標に沿って秒で表される)の関数として、マグネトロンの端子に印加される高電圧の変化(右側の縦軸に沿ってボルトで表された実線の曲線)、及び、上記の状況において調整されたアノード電流の変化(左側の縦軸に沿ってミリアンペアで表された点線の曲線)が表されている。
・図2は、本発明を適用したマグネトロン用の高圧電源の好ましい実施の形態のブロック図である;
・図3は、図2の装置に実装されるマイクロコントローラの実施の形態を示すブロック図である;
・図4は、図2,3の装置の動作モードを要約した図である。
【0039】
電源からマグネトロンに高電圧を供給する装置の本発明の好ましい実施の形態を示すブロック図である図2において、マグネトロンを符号Mで表し、電源を符号Sで表す。電源は、一般的な交流(AC)ネットワークであり、例えば400Vで動作する三相ネットワークである。
【0040】
装置はAC―ACタイプの電源装置である。この目的のため、装置は、入力において、交流電圧を整流された滑らかな電圧に変換する整流器及びフィルタ段を持つ。この電圧は、静的な電源2に印加される。電源2は、交流電圧を生成するのに適した構造を有する。
【0041】
実際には、共振変換装置タイプの電源2は、好ましくは、ブリッジ状に接続された4つのスイッチQ1〜Q4(例えば高速切替えトランジスタ)と、スイッチのペアQ1,Q3又はQ2,Q4をそれぞれ制御する2つの制御部3,4とを有する。共振フィルタ5は一方のQ1,Q3と他方のQ2,Q4の間においてブリッジの対角線を接続する。
【0042】
変換装置の電流分岐に位置している共振フィルタ5は、適当なQ因子で最適な共振周波数が得られるようにインダクタンスと容量が設定されたインダクタとキャパシタの結合によって構成されている。
【0043】
この種の電源装置の動作は、当業者に知られており、以下に簡単に要約する。
【0044】
共振フィルタは、入力信号の振幅を変調する。この振幅の変化は、フィルタを形成している構成部品の特性及び信号の周波数の関数である。それは、電圧と電流の間に存在する位相オフセットも変える。信号の周波数がフィルタの共振周波数に対応するときに、振幅は最大になる。それは、共振周波数と信号の実際の周波数との相違の関数として減衰される。
【0045】
共振フィルタからの出力において、増幅部6は、前記増幅部6で振幅が増幅されたとても高い周波数の交流電圧をピックアップする。増幅部6の下流にある出力部7において整流及びスムージングが行われた後、UHF電力信号はマグネトロンMのアノードに供給される。
【0046】
調整ループは、出力部7からの出力において、電流測定手段8と電圧測定手段9を有する。これらは、マグネトロンMのアノードに供給されるアノード電流の瞬時値Ibと高電圧の瞬時値Ebmをそれぞれ測定する周知のセンサにより構成される。
【0047】
マグネトロンに供給されるアノード電流及び電圧の測定は、マグネトロンへの電力供給を正確に測定するために、マグネトロンのできるだけ近くで行われる。
しかし、これらの測定は、マグネトロンと離れている回路の他の位置で行うこともできる;この状況において、離れた点で測定された値とマグネトロンで測定された実際の値との比例関係を確定するために予め測定が行われる。そして、動作中に、所定の比例関係により修正されるように、離れた点で測定された値が用いられる。
【0048】
電流及び高圧測定手段8及び9は、マイクロコントローラ10の2つの入力にそれぞれ接続される。マイクロコントローラ10は、例えば、スイッチQ1〜Q4を制御するユニット3及び4の制御入力にそれぞれ接続される位相が反対の2つの出力を持つデジタル信号処理装置(DSP)である。マイクロコントローラ10は、アノード電流Ibと高電圧Ebmを処理し、特にパルス幅変調技術を用いて、高い周波数でスイッチQ1〜Q4を制御する制御ユニット3及び4で電力調整を管理する。
【0049】
マイクロコントローラ10も、マン・マシーンインターフェース装置19を介して、操作者により与えられた電力の設定値Pmean(マイクロ波の平均電力)を受信する。装置の動作のためにマイクロ波の所望の瞬時電力はPmeanから確定される
【0050】
最後に、マイクロコントローラ10に接続されたメモリ手段20は、マグネトロンMに対する少なくとも一つの所定の電気効率ηを保存する。
【0051】
マイクロコントローラ10は、測定したアノード電流の瞬時値Ibと高電圧の瞬時値Ebmから瞬時電力を計算する:
測定した瞬時電力=Ib×Ebm×マグネトロンの電気効率
そして、マイクロ波の瞬時電力の設定値と測定した瞬時電力の間の相違を計算する。
【0052】
その後、以下を基礎とする:
・マイクロ波の瞬時電力の設定値;
・計算された相違(以前の測定で決定された相違を少なくとも一つ考慮する);及び
・所望の調整を得るために予め設定及び/又は選択された所定の調整関係(例えばマイクロコントローラに入力されるPID(proportional integral derivative)タイプなどの適当なタイプ);
スイッチQ1〜Q4を制御するためにユニット3及び4に制御信号を出すマイクロコントローラ10。
【0053】
パルスPAとPBに関する上記の例に戻って、本発明の構成を実施することによる効果は以下の通りである:
・パルスPA:アノード電流が360mA、電圧が−3550V、マグネトロンの平均電気効率が73.7%(マグネトロンの生産者により提供された所定の特性又は予め測定した値)の場合に、マグネトロンにより照射されたマイクロ波の瞬時電力は942W;
・パルスPB:アノード電流が305mA、電圧が−4050V、マグネトロンの平均電気効率が73.7%の場合、マグネトロンにより照射されたマイクロ波の瞬時電力は910W。
【0054】
2つのパルスPAとPBの間におけるマグネトロンの電力の相違は、マイクロ波の平均電力に対してわずか3.4%である。マグネトロンは、現在の装置よりも規則性が非常に良い状態で動作する。
【0055】
図3は、マイクロコントローラ10の好ましい実施の形態を示す。
【0056】
マン・マシーンインターフェース装置19を用いて操作者が入力した平均電力の設定値Pmeanは、変換装置11により処理され、例えば100Hz程度の低い周波数を持つ電力信号の瞬時値の設定値に変換される。電力信号の瞬時値の設定値はサンプラー12においてデジタル化される。サンプリング周波数は例えば20kHz程度である。これは電力信号の瞬時値の設定値の一周期Tで約200の測定ポイントを導く。
【0057】
サンプラー12は、2つの連続的なサンプリングポイントn及びn+1からのサンプル値に対応する2つの出力を供給される。
【0058】
サンプリングポイントnで値Pinst_cを受信している出力は、比較回路13(例えば代数比較回路)の一方の入力(例えば+入力)に接続される。代数比較回路13の他方の入力(−入力)は、後述のように準備された調節装置ループから信号を受け取る。
【0059】
測定された高電圧の瞬時値Ebm_mとアノード電流の瞬時値Ib_mは、マグネトロンMの端子において、上記の測定手段9及び8にそれぞれ検出される。そして、これら2つの信号をサンプリングするためのサンプラー16に送られる。Ebm及びIbに対応するサンプルされたデータは、測定された電力の瞬時値(即ち、マグネトロンに入力された実際の電力)Pelect_m=Ebm×Ibを出力する第1の乗算手段17に入力される。
【0060】
この強度は、マグネトロンMの効率に関するデータEffを受ける他の入力を持つ第2の乗算手段18に供給される。第2の乗算手段18からの出力信号は、測定されたマイクロ波の瞬時電力Pinst_m(即ち、マグネトロンによりマイクロ波の電力に変換された電力)を表す。測定されたマイクロ波の瞬時電力Pinst_mに基づいて、積分回路21は測定されたマイクロ波の平均電力を計算する。この電力は、マン・マシーンインターフェース装置19を介して、マイクロ波の平均電力の設定値との比較が見て分かるように、操作者に提供される。
【0061】
この測定されたマイクロ波の瞬時電力Pinst_mは、上記の比較回路13の他方の入力(この場合、負入力)に印加される。
【0062】
マイクロ波の瞬時電力の設定値と測定値の差値を発生する比較回路13の出力は、所定の制限値に設定された瞬時電力補正部14の入力に接続される。瞬時電力補正部14は、ポイントn+1における値Pinst_cを出力するサンプラー12の他の出力に接続された主入力を有する。瞬時電力補正部14は、ポイントnの前記サンプリング時に計算された差値と共に、前記連続したサンプリング時(ポイントn+1)にサンプリングされた瞬時電力の設定値の関数として、及び、ポイントn+1の前記サンプリング時に適用できる所定の調整関係の関数として、ポイントn+1における値Pinst_cを代数的に修正する。
【0063】
瞬時電力補正部14からの出力は、電力を制御電気強度(共振変換装置の実施例における周波数)に変換する変換装置15に接続されている。変換装置15は、周波数制限値F_max及びF_minの間で定義された変動のほぼ直線の部分を処理するのに適する。F_max及びF_minは、Frを中心とする周波数の関数として、電力の曲線PO=f(Fr、F_min、F_max)の一部を形成する。最後に、電力を制御電気強度に変換する変換装置15は、値F_maxとF_minの間に制限された、時間の関数として、周波数信号を電流分岐に出力する。
【0064】
最後に、電力を制御電気強度に変換する変換装置15の出力信号は、マグネトロンMに接続された上記の電源アセンブリ(電源2、増幅部6、出力部7)に供給される。
【0065】
まとめると、マイクロ波の瞬時電力の設定値の関数として、マグネトロンMの電源を調整する調整方法は、以下の工程を有する:
・マグネトロンMの電気効率について少なくとも一つの値ηを予め決めてメモリ手段20のメモリに記憶する;
・マイクロ波の平均電力の設定値Pmeanを19に入力する;
・11において前記マイクロ波の平均電力の設定値を変換して、低い周波数において電力信号の瞬時値の設定値を得る;
・高いサンプリング周波数において、前記電力信号の瞬時値の設定値をサンプラー12でサンプリングする;
・測定手段8,9及びサンプリング手段16を用いて、マグネトロンに供給されたアノード電流と高電圧の瞬時値を測定してサンプリングする;
・前記サンプリング時nにおけるマイクロ波の瞬時電力を得るために、手段17,18を用いて、前記サンプリング時nにおけるアノード電流の瞬時値に高電圧の瞬時値を乗算し、マグネトロンの電気効率の所定値を乗算する;
・測定された前記マイクロ波の瞬時電力と対応する瞬間nにサンプリングされた瞬時電力の設定値を比較回路13で比較し、前記サンプリング時nにおける差値εを求める;
・前記サンプリング時nに計算された前記差値と、連続したサンプリング時n+1にサンプリングされた瞬時電力の設定値とから、前記連続したサンプリング時n+1において有効な所定の調整関係の関数として修正された、前記連続したサンプリング時n+1におけるマイクロ波の瞬時電力を決定する;
・マグネトロンへの電力供給を制御するのに適し、修正されたマイクロ波の瞬時電力を表すアナログ信号を得るために、変換装置15により電力を制御電気強度に変換する。
【0066】
上記の方法は、マイクロ波の瞬時電力の設定値の関数としてマグネトロンへの電力供給を調整する調整装置により実施される。この調整装置は、マグネトロンMの電気効率について少なくとも一つの予め決められた値ηを記憶するメモリ手段20と、マイクロコントローラ10とを有する。マイクロコントローラ10は以下の構成を有する:
・マイクロ波の平均電力の設定値Pmeanを入力する入力手段19;
・低い周波数において、前記マイクロ波の平均電力の設定値を電力信号の瞬時値の設定値に変換する変換装置11;
・高いサンプリング周波数において、前記電力信号の瞬時値の設定値をサンプリングするサンプラー12;
・マグネトロンに供給されるアノード電流と高電圧の瞬時値を測定してサンプリングする測定手段8,9及びサンプラー16;
・前記サンプリング時nに測定されたマイクロ波の瞬時電力を決定するために、前記サンプリング時nにおけるアノード電流の瞬時値に高電圧の瞬時値を乗算し、マグネトロンの電気効率の所定値を乗算する手段17,18;
・測定された前記マイクロ波の瞬時電力と対応する瞬間nにサンプリングされた瞬時電力の設定値を比較し、前記サンプリング時nにおける差値εを求める比較回路13;
・前記サンプリング時nに計算された前記差値と、連続したサンプリング時n+1にサンプリングされた瞬時電力の設定値とから、前記連続したサンプリング時n+1において有効な所定の調整関係の関数として修正された、前記連続したサンプリング時n+1におけるマイクロ波の瞬時電力を決定する手段;
・マグネトロンへの電力供給を制御するのに適し、修正されたマイクロ波の瞬時電力を表すアナログ信号を得るために、電力を制御電気強度に変換する変換装置15。
【0067】
こうして、マグネトロンMには、使用者により与えられた電力の設定値の関数として調整された電力が供給される。
【0068】
電源が共振変換装置以外のタイプで、周波数以外の電気強度(例えば電流や位相)が制御された場合、電力から制御電気強度への変換が実行される。マグネトロンに供給される電力は、使用者に設定された電力の設定値の関数として制御される。
【0069】
図4(図3を参照)には、本発明の装置の動作を要約した2つ図が示されている:図A(横軸の時間の関数として縦軸に瞬時電力がプロットされている)には、(b)(図3の変換装置11の出力信号)における瞬時電力の設定値、(f)における測定され調整されたマイクロ波の瞬時電力が示されている;図B(横軸の時間の関数として縦軸に平均電力がプロットされている)には、(a)(図3の変換装置11の入力信号)におけるマイクロ波の平均電力の設定値、(g)における測定されたマイクロ波の平均電力が示されている。以下のように、(a)におけるマイクロ波の平均電力の設定値Pmeana(実際に処理を実行して出された設定値)は、(b)における瞬時電力の設定値Pb(t)の関数として数学的に表わされている。
【数1】

以下のように、(g)における測定されたマイクロ波の平均電力Pmeanfは、(f)における調整されたマイクロ波の瞬時電力Pf(t)の関数として表わされている。
【数2】

【0070】
2本の曲線(一方はの電力設定値、他方は実際の電力)の違いが非常に小さいことが分かる。
【0071】
本発明の方法の実施の形態において調整を正確に行うためには、マグネトロンの電気効率の値を正確にする必要がある。残念なことに、この値は、マグネトロンの動作条件に応じてかなり変化し得る。
【0072】
定在波比(SWR)が比較的小さい(例えば約2より小さい)場合、負荷によりエネルギーは反射されず、ほとんど全てのマイクロ波のエネルギーが負荷に吸収される。このような状況では、マグネトロンの電気効率は、実質的に定数であると考えられ、この値は予め測定して決定される。これは、上記の第2の掛算器手段18に入力される値である。
【0073】
一方、定在波比が比較的大きい(例えば約2より大きい)場合、負荷によって電源2に反映されるマイクロ波エネルギーは比較的高く、マグネトロンの電気効率はかなり減少する。より正確に言うと、マグネトロンの電気効率は、その動作条件(即ち、要求されるマイクロ波エネルギー及び定在波比の強度)の2つの強度特性と関係している。本発明の方法の最適な実施の形態として、できるだけ正確な調整を得るためには、定数でないが、瞬間的な動作条件に適しているマグネトロンの電気効率の値を用いる必要がある。このため、マグネトロンの平均電気効率の概略値を決定するために、マグネトロンに供給される瞬時電圧とマグネトロンに消費されるアノード電流(又は、マグネトロンに消費される瞬時電力)のペアの値を得る事前の試験が実行される。効率の値の表を作成するか、又は、マイクロコントローラ10のメモリに入力されるモデリング方程式を決めることができる。実際に調整を行う際に、マイクロコントローラは照射された瞬時電力を二段階で計算する:
・まず、マグネトロンに供給されたアノード電流及び電圧の瞬時値が測定され、この測定した値のペアに対応するマグネトロンの電気効率の値をマイクロコントローラが(例えば、表を見るか、モデリング方程式を用いることで)決定する;
・次に、瞬時電力が、測定した値のペア、及び、対応するマグネトロンの電気効率の値から決定する。
【0074】
提案された解法の利点は、センサや計算手段を追加する必要がないことによる実施手段の単純化と経済化である;調整された電源やマグネトロンを有する装置を操作するためにマイクロコントローラはもともと必要なものであり、マグネトロンに供給されたアノード電流の瞬時値や電圧の瞬時値の測定はもともと必要なものであるため、特別に必要なことは、電流及び電圧の瞬時値のペアの関数としてマグネトロンの電気効率の値を与える表やモデリング方程式を用意することだけであり、不利な制限とはならない。
【0075】
本発明の構成の最も有効な実施例は、熱可塑性材料の容器の少なくとも一つの表面に、前記容器を入れる円筒状の空洞内でUHF帯域に存在している電磁波で前駆ガスを励起することにより、低圧プラズマを用いてバリア効果コーティングを形成する装置である。この装置は、UHF波発生器と、
前記発生器を空洞の側壁の窓に接続するUHF導波管とを有する。前記UHF波発生器は、アノードを持つマグネトロンMと、前記アノードに高電圧で電流を供給する手段2と、マイクロ波の瞬時電力の設定値の関数としてマグネトロンMの電源を調整する調節装置とを有する。特に、装置は、本発明により調整された電源とマグネトロンをそれぞれ有する多数の処理装置を備えたカルーゼル・タイプの回転装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】典型的なマグネトロンについて計算した結果を示す図であり、時間(横座標に沿って秒で表される)の関数として、マグネトロンの端子に印加される高電圧の変化(右側の縦軸に沿ってボルトで表された実線の曲線)、及び、上記の状況において調整されたアノード電流の変化(左側の縦軸に沿ってミリアンペアで表された点線の曲線)が表されている。
【図2】本発明を適用したマグネトロン用の高圧電源の好ましい実施の形態のブロック図である;
【図3】図2の装置に実装されるマイクロコントローラの実施の形態を示すブロック図である;
【図4】図2,3の装置の動作モードを要約した図である。
【符号の説明】
【0077】
2 電源;3,4 制御部 ;8,9 測定手段;10マイクロコントローラ;11 変換装置;12 サンプラー;13 比較回路;15 変換装置;16 サンプラー;17, 18 乗算手段;19 マン・マシーンインターフェース装置;20 メモリ手段;M マグネトロン;n, n+1 サンプリングポイント;Pmean 電力の設定値(マイクロ波の平均電力);Q1〜Q4 スイッチ;η 電気効率;ε 差値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高周波の電磁波を形成する手段の一部を構成するマグネトロンへの電力供給をマイクロ波の瞬時電力の設定値の関数として調整する調整方法であって、
前記マグネトロンの電気効率の値を少なくとも一つ予め決めてメモリに記憶する工程と、
マイクロ波の平均電力の設定値を入力する工程と、
前記マイクロ波の平均電力の設定値を変換して、低い周波数において電力信号の瞬時値の設定値を得る工程と、
高いサンプリング周波数において、前記電力信号の瞬時値の設定値をサンプリングする工程と、
前記マグネトロンに供給されたアノード電流と高電圧の瞬時値を測定してサンプリングする工程と、
前記サンプリング時における前記アノード電流の瞬時値に前記高電圧の瞬時値を乗算し、前記マグネトロンの電気効率の所定値を乗算して、前記サンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を得る工程と、
測定された前記マイクロ波の瞬時電力と対応する瞬間にサンプリングされた瞬時電力の設定値を比較し、前記サンプリング時における両者の差値を求める工程と、
前記サンプリング時に計算された前記差値と、即時連続したサンプリング時にサンプリングされた瞬時電力の設定値とから、前記即時連続したサンプリング時において有効な所定の調整関係の関数として修正された、前記即時連続したサンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を決定する工程と、
電力から制御電気強度への変換を実行して、前記マグネトロンへの電力供給を制御するのに適した、修正されたマイクロ波の瞬時電力を表すアナログ信号を得る工程とを備えることを特徴とする調整方法。
【請求項2】
電力から周波数への変換は、共振変換装置の電源を制御することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の調整方法。
【請求項3】
所定の閾値よりも小さい定在波比に対して、マグネトロンの電気効率は一定とみなされ、予め測定されてメモリに格納された値はマグネトロンの平均電気効率に対する値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の調整方法。
【請求項4】
前記所定の閾値よりも大きい定在波比に対して、前記マグネトロンに供給されたアノード電流及び電圧の瞬時値の測定値と前記マグネトロンの電気効率との間の対応が予め設定され記憶され、
動作中において、前記瞬時電力は、前記マグネトロンに供給されたアノード電流及び電圧の瞬時値の測定値と、前記アノード電流及び電圧の瞬時値の測定値に対応する、前記メモリに記憶されたマグネトロンの電気効率から決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の調整方法。
【請求項5】
前記マグネトロンは、少なくとも一つの熱可塑性材料の容器が入った円筒状の空洞内に前記超高周波の電磁波を照射し、
前記電磁波で前駆ガスを励起することにより、低圧プラズマを用いて、前記熱可塑性材料の容器の一面にバリア材のコーティングを形成することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の調整方法。
【請求項6】
超高周波の電磁波発生器のマグネトロンへの電力供給をマイクロ波の瞬時電力の設定値の関数として調整する調整装置であって、
マグネトロンの電気効率の少なくとも一つの所定値を記憶するためのメモリ手段と、マイクロコントローラとを備え、
前記マイクロコントローラは、
マイクロ波の平均電力の設定値を入力するための入力手段と、
低い周波数において、前記マイクロ波の平均電力の設定値を電力信号の瞬時値の設定値に変換する変換装置と、
高いサンプリング周波数において、前記電力信号の瞬時値の設定値をサンプリングするためのサンプラーと、
前記マグネトロンに供給されたアノード電流と高電圧の瞬時値を測定してサンプリングするための測定手段及びサンプラーと、
前記サンプリング時におけるアノード電流の瞬時値に前記サンプリング時における高電圧の瞬時値を乗算し、電気効率の瞬時値の所定値を乗算して、前記サンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を得る手段と、
測定された前記マイクロ波の瞬時電力と対応する瞬間にサンプリングされた瞬時電力の設定値を比較し、前記サンプリング時における両者の差値を求める比較回路と、
前記サンプリング時に計算された前記差値と、即時連続したサンプリング時にサンプリングされた瞬時電力の設定値とから、前記即時連続したサンプリング時において有効な所定の調整関係の関数として修正された、前記即時連続したサンプリング時におけるマイクロ波の瞬時電力を決定する手段と、
電力を、修正されたマイクロ波の瞬時電力を制御するための制御電気強度へ変換して、前記マグネトロンへの電力供給を制御するのに適した、修正されたマイクロ波の瞬時電力を表すアナログ信号を得る変換装置とを有することを特徴とする調整装置。
【請求項7】
前記電源は共振周波数が制御電気強度である共振変換装置の電源であり、電力を制御電気強度に変換する変換装置は、電力を周波数に変換する変換装置であることを特徴とする請求項6に記載の調整装置。
【請求項8】
所定の閾値よりも小さい定在波比に対して、マグネトロンの電気効率は一定とみなされ、メモリ手段はマグネトロンの平均電気効率の所定値を記憶していることを特徴とする請求項6又は7に記載の調整装置。
【請求項9】
前記所定の閾値よりも大きい定在波比に対して、前記メモリ手段に、前記マグネトロンに供給されたアノード電流及び電圧の瞬時値の測定値と前記マグネトロンの電気効率との間の対応が記憶されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の調整装置。
【請求項10】
マグネトロンのアノード用の電源は、2つの制御部により制御された電力スイッチのブリッジを含む共振チョッパー電源と、前記電力スイッチのブリッジの対角線に沿って接続された共振フィルタとを有し、
電力を周波数に変換する変換装置は、前記2つの制御部にそれぞれ接続された位相が反対の2つの出力を有することを特徴とする請求項6〜9の何れかに記載の調整装置。
【請求項11】
熱可塑性材料の容器の少なくとも一つの表面に、前記容器を入れる円筒状の空洞内で超高周波の電磁波で前駆ガスを励起することにより、低圧プラズマを用いてバリア効果コーティングを形成する調整装置であって、
超高周波発生器と、前記超高周波発生器を空洞の側壁の窓に接続する超高周波の導波管とを備え、
前記超高周波発生器は、アノードを持つマグネトロンと、前記アノードに高電圧で電流を供給する電源と、マイクロ波の瞬時電力の設定値の関数としてマグネトロンへの電力供給を調整する調節装置とを有することを特徴とする請求項6〜10の何れかに記載の調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−163450(P2008−163450A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−277087(P2007−277087)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(506100093)シデル・パーティシペーションズ (72)
【Fターム(参考)】