説明

マザーボードの端子配置方法

【課題】複数の電気信号が入出力される装置内において、入出力端子間または、信号間で発生するクロストークの影響で信号にノイズが発生する。その際に、送信した信号波形に対して、受信側で劣化した波形が再生される、または正常な波形を再生できないといった課題がある
【解決手段】そこで本発明は基板上で仮配置された信号端子において、隣接する信号端子間の信号強度差の総和値を算出し、仮配置ごとに算出される総和値の中で最小となる総和値を得た仮配置を本配置として決定することを特徴とする信号端子の配置方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上で隣接する信号端子間の信号強度差の絶対値を最小とするように配置することを特徴とする信号端子の配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電気信号が入出力される装置内において、入出力端子間または、信号間で発生するクロストークの影響で信号にノイズが発生する。その際に、送信した信号波形に対して、受信側で劣化した波形が再生される、または正常な波形を再生できないといった問題が発生する。特に長距離伝送、高速信号伝送などのアプリケーションにおいて顕著に表れる。そこで、上記課題を解決するために以下のような技術が提供されている。そこで、特許文献1に記載のように、信号入出力装置において所望のクロストーク特性、伝送特性を得るために配線長および配線間隔を複数のグループに分け配線を行う技術が提供されている。また、特許文献2では、クロストーク特性の改善をはかるために、逆方向の信号を併走させ、逆位相のクロストークを発生させることでクロストーク同士を相殺させる技術が提供されている。
【特許文献1】特開平08−205207
【特許文献2】特開平10−243423
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に記載の技術では、諸般の事情で配線間隔をあけることが出来ない場合や、逆方向の信号を配線するためのスペースを確保することが出来ない場合には適用することが困難となる。したがって、上記に記載の技術ではいかなる条件でも適用できるというわけではなく、所望のクロストーク特性を得ることが困難となる場合があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、上記課題を解決するために、以下のような隣接する信号端子間の信号強度差の絶対値を最小とするように配置することを特徴とする信号端子の配置方法を提供する。
【0005】
具体的には、信号強度に関連付けて複数の信号端子を基板上に仮配置する仮配置ステップと、信号端子が仮配置された基板上で隣接する信号端子間の信号強度差を算出する信号強度差算出ステップと、算出した信号強度差の総和値を算出する総和値算出ステップと、 仮配置ごとに算出される総和値の中で最小となる総和値を得た仮配置を本配置として決定する決定ステップと、からなる信号端子の配置方法である。
【発明の効果】
【0006】
以上の本発明によって、配線間隔をあけることが出来ない場合や、逆方向の信号を配線するためのスペースを確保することが出来ない場合であっても、隣り合う信号端子間の強度差を最小にし、所望のクロストーク特性を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。なお、実施例1は主に請求項1について説明する。
【0008】
≪実施例1≫
【0009】
<概要>
【0010】
本発明は、基板上で仮配置された信号端子において、隣接する信号端子間の信号強度差の総和値を算出し、仮配置ごとに算出される総和値の中で最小となる総和値を得た仮配置を本配置として決定することを特徴とする信号端子の配置方法である。
<機能的構成>
【0011】
以下、本実施例の複数の信号端子の基板上での配置方法のステップについて図1などを用いて説明する。
【0012】
本実施例の、複数の信号端子の基板上での配置方法は「仮配置ステップ」(0101)と「信号強度差算出ステップ」(0102)と「総和値算出ステップ」(0103)と「決定ステップ」(0104)とを有する。
【0013】
「仮配置ステップ」(0101)は、信号強度に関連付けて複数の信号端子を基板上に仮配置する。具体的には、信号強度を有する信号が入出力される信号端子を、あらかじめ決められた配置可能な端子位置に仮に配置する。例えば、図2に示すように端子が横3列、縦3列の格子上に配置されている信号端子に対して、信号AからIまでの計9本の信号を配置するという具合である。ここで、あらかじめ決められた配置可能な端子位置とは、物理制約、装置の性質等、諸般の事情で特定の端子を特定の位置に固定しなければならない場合、その端子を除いた端子位置のことである。また、信号端子は基板上に複数配置され上記信号強度を有する電気信号が入出力される端子である。たとえば、コネクタのピン、ピンが挿入される穴、接触端子、ねじ止め端子台などがある。また、基板上に配置される信号端子はオスであってもメスであってもよい。さらに、1つまたは複数のピンを有するコネクタを信号端子と表現してもよい。さらにここでいう、信号強度とは信号端子に付加される電流値(A、mA等)、電圧値(V、mV等)、電力(W、mW等)などであらわされるノイズ発生源となる信号の強さを示すものであるが、信号強度は上記のような具体的な値ではなく、信号強度の大小関係を表す相対的な値で表してもよい。
【0014】
「信号強度差算出ステップ」(0102)は、信号端子が仮配置された基板上で隣接する信号端子間の信号強度差を算出する。具体的には、上記仮配置ステップで配置された基板上の信号端子において、隣接する信号端子の信号強度と自身の信号強度の差の絶対値を算出するという具合である。このとき、グランド電位等のノイズ源とならないような安定電位の信号端子との信号強度差は無視してもよい。さらに安定電位の信号端子においては信号強度差を算出せずに無視してもよい。さらには、信号端子から信号強度によって発生するノイズは距離に反比例するため、隣接する信号端子の信号強度を距離で除算または距離の係数で除算する等の演算をおこなってもよい。
【0015】
信号強度差を算出する一例として、図3のように信号端子A、B、Cがあったとする。ここで、信号端子A(0301)の信号強度が1、信号端子B(0302)、C(0303)の信号強度が2であり、信号端子A(0301)から見た距離が信号端子B(0302)が1、信号端子C(0303)が2であったとする。上記の状態において、信号端子A(0301)と信号端子B(0302)との信号強度差は(1−2/1)の絶対値で1となる。また、信号端子A(0301)と信号端子C(0303)との信号強度差は、(1−2/2)の絶対値で0となる。
【0016】
ここで、信号強度差とは任意の信号端子と隣接する信号端子との信号強度の差を表すものであり、電流値の差、電圧値の差、電力の差などの形で表現される。ここでは、信号強度差を表現する単位として、パワー比(dB)を用いるがそれに限らない。また、信号強度差は上記のような絶対値から導き出される具体的な値ではなく、信号強度と同様に信号強度差の大小関係を表す相対的な値で表してもよい。
【0017】
「総和値算出ステップ」(0103)は、算出した信号強度差の総和値を算出する。具体的には、上記信号強度差算出ステップで算出した各信号端子の信号強度差をすべて加算する。ここで、グランド電位等のノイズ源とならないような安定電位の信号端子の信号強度差を含めて算出してもよいし無視して算出してもよい。
【0018】
「決定ステップ」(0104)は、仮配置ごとに算出される総和値の中で最小となる総和値を得た仮配置を本配置として決定する。具体的には、上記総和値算出ステップで算出された総和値が最小になるような信号端子の配置を最終的な信号端子の配置として決定する。ここで、本配置の決定方法として、仮配置すべてのパターンの信号強度差の総和を算出してから最小となる総和値を持つ仮配置を検索し本配置を決定してもよいし、仮配置1パターンの総和の算出が行われるその都度、算出された仮配置パターンの総和値を比較して最終的に本配置を決定してもよい。さらに、算出された総和値が最小でない場合であっても、あらかじめ決められた総和値以下である配置パターンを本配置としてもよい。また、複数候補存在する場合には複数候補を提示することとしてもよい。
【0019】
<処理の流れ>
【0020】
図4は、本実施例の仮配置から本配置を決定するまでのフローチャートの一例を表している。なお、以下に示すステップは、媒体に記録され、計算機を制御するためのプログラムを構成する処理ステップであってもかまわない。
【0021】
まず、全配置パターン(全パターン数=N)のうちの一つである配置パターンを仮配置パターン[n]として配置する。(S0401)仮配置したそれぞれの信号端子において隣り合う信号端子間の信号強度差を算出する。(S0402〜S0406)信号端子間の信号強度差が算出されると、仮配置パターン[n]における信号強度差の総和を算出する(S0407)。総和が算出されると、仮配置パターン[n]が最終の仮配置パターンである仮配置パターン[N]であるかどうかを判断する(S0408)。まず、仮配置パターン[n]が最終仮配置パターン[N]でない場合には、仮配置パターン[n]で仮配置されている信号端子を次の配置パターンである仮配置パターン[n+1]に再配置(S0409)し、仮配置パターン[n+1]における信号強度差の総和を算出する(S0402〜)。そして、仮配置パターン[n]が最終仮配置パターン[N]である場合には、各仮配置パターンにて算出された信号強度差の総和の値が最小値となる配置パターン[n]を検索し、最小値を取る配置パターン[n]を本配置として決定する(S0410)。
【0022】
<具体例>
【0023】
図5〜7は本実施例における具体的な一例を説明するための図である。図5は、横3列、縦3列の格子上配置された信号端子1〜9を示している。図6は、端子に流される信号である信号A〜Iに対してそれぞれの信号強度を示している。(たとえば、信号Aは信号強度1であるということである)図7は図5で示した格子状に配置された端子に対して実際に信号A〜Iを配置した仮配置のパターンの一つである仮配置パターン[1]である(信号端子1に信号A、信号端子2に信号端子B・・・のように配置している。)。
【0024】
上記に説明した状態において、本実施例の配置方法を用いて、実際に配置する具体例を以下に示す。
【0025】
まず、信号端子1(信号A)において考えると、信号端子1(信号A)の隣接信号端子は信号端子2(信号B)、信号端子4(信号D)、信号端子5(信号E)の計3本である。このときの信号強度差をそれぞれ算出する。具体的に信号強度は次の通りである。信号強度差[信号端子1,信号端子2]=|(1−2)|=1、信号強度差[信号端子1,信号端子4]=|(1−4)|=3、信号強度差[信号端子1,信号端子5]=|(1−5)|=4という具合である。
【0026】
次に信号端子2においても同様の作業をし、信号強度差を算出する。これらの処理を信号端子9まで行う。
【0027】
そして、各信号端子における隣接する信号端子の信号強度差が求められるとその総和を算出する(仮配置パターン[1]における信号強度差[信号端子i,信号端子j]の総和[1]は96となる)。
【0028】
上記と同様の手法を用いて各仮配置パターン[n〜N]に対して信号強度差の総和を算出する。ここで、本具体例の場合は、9本の信号端子に9種類の信号を配置するので、パターン数は9!=362880通りの組み合わせがある。(例えば、全通りのパターンの一例である仮配置パターン[n]が図8である。)
【0029】
各仮配置パターンの信号強度差の総和が算出されると、各仮配置パターンの信号強度差の総和の中から最小値をとる値を総和[i]を検索する。(ここでは、図7に示す仮配置パターン[1]の配置から算出される総和値=96が各配置パターンにおける信号強度差の総和の中で最小値であるとする。)そして、信号強度差の総和が最小値である総和[i]の配置パターンである仮配置パターン[i]を本配置として決定することで、信号強度差が最小となる配置パターンに信号端子を配置することができる(ここでは、総和[1]の配置パターンである仮配置パターン[1]が本配置となる)。
【0030】
<効果の簡単な説明>
【0031】
本実施例の信号端子の配置方法によって、隣り合う信号端子に流れる信号の信号強度差を小さくすることが可能となる。つまり、隣り合う信号端子に対して与えるもしくは受ける影響を最小限にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1の信号端子の配置方法における複数の信号端子の基板上での配置方法のステップを示す図
【図2】実施例1の信号端子の配置方法における信号端子の配置例を示す図
【図3】実施例1の信号端子の配置方法における信号端子A、B、Cを用いて信号強度差を算出する一例を表す図
【図4】実施例1の信号端子の配置方法における仮配置から本配置を決定するまでのフローチャートの一例
【図5】実施例1の信号端子の配置方法における格子上配置された信号端子を示す図
【図6】実施例1の信号端子の配置方法における端子に流される信号である信号A〜Iに対してそれぞれの信号強度を示した図
【図7】実施例1の信号端子の配置方法における仮配置のパターンの一つである仮配置パターン[1]を表す図
【図8】実施例1の信号端子の配置方法における具体例の仮配置パターンの全通りのうちその一例を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号端子の基板上での配置方法であって、
信号強度に関連付けて複数の信号端子を基板上に仮配置する仮配置ステップと、
信号端子が仮配置された基板上で隣接する信号端子間の信号強度差を算出する信号強度差算出ステップと、
算出した信号強度差の総和値を算出する総和値算出ステップと、
仮配置ごとに算出される総和値の中で最小となる総和値を得た仮配置を本配置として決定する決定ステップと、
からなる信号端子の配置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−245129(P2009−245129A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90390(P2008−90390)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(599083318)株式会社メディアグローバルリンクス (12)
【Fターム(参考)】