説明

マッサージ機

【課題】肩甲骨周辺の筋膜及び分界項線の筋膜の癒着を簡単効果的に解消し、また、自律神経や副交感神経に影響を与える仙骨部を暖めることができるマッサージ機を提供する。
【解決手段】背もたれ部と座部とからなるマッサージ機であって、被施療者の肩甲骨内側部をマッサージするための上腕を乗せる凹部の設けられた上腕支持台と、上腕支持台を支えるとともに駆動部に接続されて駆動する駆動杆と、から構成される一対の上腕部施療子を背もたれ部の上部の左右両側端付近に装備する構造である。また、仙骨部を温めることで副交感神経を優位にさせ自律神経の緊張を解すため、発熱機能を有する仙骨部保温装置を背もたれ下部に備えた構造でもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背もたれ部と座部とからなるマッサージ機であって、特に肩甲骨及び分界項線の筋膜マッサージを目的とする上腕部施療子、背面施療子、可動マクラ、仙骨部保温装置を備えるマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
筋肉を覆う薄い筋膜には、皮下筋膜と深在筋膜がある。皮下筋膜は皮下組織の直下にあり、深在筋膜は皮下筋膜の直下および深部に存在し、各筋肉を包み込んで筋肉と筋肉がスムーズに動くための役割を果たしている。
この筋膜に対するアプローチとして、筋膜マッサージが注目されている。筋膜マッサージとは、ロルファー(治療師)により皮下筋膜に対する働きかけを行うことを主体とするロルフィングと、ヨーガ、東洋医学を研究した結果として確立された治療方法である。筋膜マッサージは深在筋膜へのマッサージ(押圧等)によるアプローチを主体としている。例えば、筋肉の起始部と停止部を押圧施療することにより、関節の可動範囲が大きくなり、個々の筋肉の伸び縮みがスムーズに行われることになる。
【0003】
筋膜マッサージの施療方法としては、筋膜自体に圧力を加えるだけでは不十分であり、手や肘等を使って、患者の筋膜の箇所を圧迫しつつ、その筋膜の下部にある筋肉を外部からの力によって動かすことが、その方法のひとつとして考えられる。
肩こりや腕の疲れ、首の痛みなどと肩甲骨の動きとは密接な関係がある。正常な肩甲骨は、片側で左右に約15cm、上下に約10cm〜12cm動くが、細かな手作業やパソコン、長時間のドライブなどで肩甲骨周辺の筋肉は拘縮する。それが慢性的になると筋膜は癒着し肩甲骨の可動域が狭くなる。僧帽筋、菱形筋、板状筋などは肩甲骨の動きに深く関係しているので、肩甲骨を正常に動かせるように保つことが重要となる。しかし、従来のマッサージ機には、肩甲骨の動きを正常な状態に戻すという効果は期待できない。
【0004】
首と頭は後頭骨と第一頚椎(環椎)で結ばれている。筋肉(僧帽筋、板状筋、胸鎖乳突筋、頭半棘筋)はこの後頭骨から下方に向かって走っている。この筋肉の起始部を分界項線という。この部位は肩甲骨周囲の筋肉が拘縮したり、筋膜が癒着すると、下方へ引っ張られて顎が上がる姿勢を作り、この状態は頚動脈を圧迫し、脳への血流不足を促し、大きなトラブルの原因を作りだす。トラブルを未然に防ぐ為にも、まず、肩甲骨の動きを正常な状態に保つことが必要となる。
【0005】
次に、分界項線は頭の重さや重力によって絶えず圧迫を受けているので、癒着を放置しておくと脳への血流不足を起こしやすく、日常生活においても、かなり深刻な状態になることがある。従って、分界項線の筋膜の癒着を解消する為のマッサージが必要となる。
また、分界項線は自律神経にも深く関係している部位で、副交感神経の中枢である延髄への血流不足は、物理的なストレスとなる。その結果、交感神経の緊張が高まり内臓の機能低下にもつながる。
【0006】
また副交感神経は仙椎(仙骨)の2番、3番、4番からも出ていて、特に泌尿器系、婦人科系など骨盤の中の諸器官である子宮、卵巣、前立腺、膀胱などをコントロールしている。この中でも子宮、卵巣は生命誕生の器官でもありとても大切な部位である。この部分は自律神経にコントロールされるだけでなく、特に冷えはこの部位に大きな影響を与えることがあるので、常に温めておかなければいろいろな症状が現れることがある。
【0007】
従来より筋肉へのマッサージを行うマッサージ機は存在しているが、これらのマッサージ機は、筋肉の緊張を解す効果はあっても、筋肉とは異なる筋膜の癒着や変形などを正常な状態に戻すことは出来なかった。また、ロルファー(治療師)による筋膜を対象とした人間が施療するマッサージは存在していても、機械的に施療する筋膜を対象としたマッサージ機は存在していなかった。特に、肩こりや腕の疲れ、首の痛みなどと大きく関係する細かな手作業やパソコン作業、長時間ドライブ等といった肩甲骨周辺の筋膜の癒着につながる生活習慣が増加し、さらに、分界項線の筋膜癒着が脳への血流不足を招き、大きなトラブルの原因となることからも、簡単で効果的に肩甲骨周辺や分界項線の筋膜癒着を解消できるマッサージ機の開発が待たれていた。
また、ストレスの多い現代において、仙骨部分を暖めることで、副交感神経を優位にすることは、さまざまな病気予防にもつながり、その重要性も増加していることが判明したので、仙骨部分を暖める機能を兼ね備えたマッサージ機が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開平11−299565号
【特許文献2】特願2006−329017号
【非特許文献1】磯崎 文雄著 「自分で肌を若返らせる!米国式筋膜マッサージ」 平成16年7月20日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記課題である肩甲骨周辺の筋膜及び分界項線の筋膜の癒着を簡単効果的に解消し、また、自律神経や副交感神経に影響を与える仙骨部を暖めることができるマッサージ機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るマッサージ機は、背もたれ部と座部とからなるマッサージ機であって、被施療者の肩甲骨内側部をマッサージするための上腕を乗せる凹部の設けられた上腕支持台と、上腕支持台を支えるとともに駆動部に接続されて駆動する駆動杆と、から構成される一対の上腕部施療子を背もたれ部の上部の左右両側端付近に装備する構造である。
本発明に係るマッサージ機の上腕支持台は、半円形、棒状体を凹状に屈曲させた形、平面に凹部を設けた形、断面U字形または上腕部の周囲を固定する円筒形に構成されている。
【0011】
また、本発明に係るマッサージ機の上腕施療子は、背もたれ部の横幅の中心線から左右略10cm〜略40cm、座部の上面から上方略40cm〜略100cmの位置に装備された構成であり、また、被施療者の体形に適合する位置に配置できるように、前後、上下、左右に位置調節することができる調節機構を備えた構成でもある。
また、本発明に係るマッサージ機の駆動部は、上腕部施療子の駆動杆を前後・上下および前後回転駆動させる構造でもある。
【0012】
さらに、本発明に係るマッサージ機は、背もたれ部の表面に振動動作を加えて肩甲骨内側部をマッサージする一対の円形又は楕円形の突起からなる背面施療子が上下移動自在に装着されている構造でもある。
また、前記背面施療子は、背もたれ部の横幅の中心線から左右に略5cm〜略30cmで、座部の上面から上方略30cm〜略80cmに設けられている構造でもある。
【0013】
また、本発明に係るマッサージ機は、首受け部と、首受け部を支えつつ駆動する首部駆動杆とからなる可動マクラが背もたれ部の上に装備された構造であり、首部駆動杆が駆動手段で上下に伸縮駆動するとともに、可動マクラが、首部駆動杆と背もたれ部との結合部および/または首部駆動杆と首受け部との結合部を枢支点として前後に円弧を描きながら駆動する構造である。
また、前記可動マクラは、機械的にまたは音楽に合わせて振動を与える振動装置、または、もむ、叩く、圧迫する動作の1つ以上を含む刺激を与えるマクラ施療子を装備した構造でもある。
【0014】
また、本発明に係るマッサージ機は、仙骨部を温めることで副交感神経を優位にさせ自律神経の緊張を解すため、発熱機能を有する仙骨部保温装置を背もたれ下部に備えた構造でもある。
また、前記仙骨部保温装置は、背もたれの横幅の中心線上に位置し、マッサージ機の座部上面から0cm〜略40cmに装備された構造でもある。
また、本発明に係るマッサージ機は、上腕部施療子・背面施療子または可動マクラは、相互の位置を記憶する機能を有する自動位置調節機構を備えた構造でもある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るマッサージ機は、上述のような構造から、以下のような効果を有する。
(1)従来のマッサージ機では対応できず、現代において、よりマッサージが必要となる肩甲骨周辺の筋膜及び分界項線の筋膜の癒着を解すマッサージ機の提供を行うことで、簡単で、効果的に肩甲骨周辺の筋膜及び分界項線の筋膜の癒着を解消することができる。
(2)上腕支持台の形状を円筒形等にすることで上腕部の固定度を強めることができ、筋膜へのマッサージ効果をより増加させることができる。
(3)上腕施療子を適切な上腕部の位置に配置することで、筋膜へのマッサージを効果的に行うことができる。
(4)上腕施療子を身体に合わせて適宜調節可能とすることで、適切なマッサージを行うことができる。
【0016】
(5)上腕施療子を駆動部により前後・上下および前後に回転駆動させることが出来るので肩甲骨周辺の筋膜の癒着を有効にほぐすことができる。
(6)マッサージ機に左右両肩甲骨と脊椎の間の上部に一対の背面施療子を装備し、背面施療子を上部から下部に移動しつつ振動動作を加えることで、肩甲骨周辺の筋膜の癒着を解す効果を有する。
(7)背面施療子を適切な位置に配置することで、肩甲骨周辺の筋膜へ効果的にマッサージを行うことができる。
(8)上腕部施療子と背面施療子により肩甲骨周辺の筋膜の癒着を解消しつつ、マッサージ機に装備された可動マクラを伸長させ、首を少し伸ばした状態で可動マクラを駆動させ、首部にマッサージを行うことで、より効果的に分界項線周辺の筋膜の癒着を解消することができる。
(9)可動マクラに音楽に合わせて振動する体感音響システムや機械的振動
を与える振動装置、または、もむ、叩く、圧迫する動作の1つ以上を含む刺激を与えるマクラ施療子を装備することで、よりマッサージ効果を高めることができる。
【0017】
(10)マッサージ機に仙骨部保温装置を備えることで、マッサージ時に副交感神経を優位にさせ自律神経の緊張を解すことができるため、被施療者をよりリラックスさせた状態でマッサージを行うことができる。
(11)前記仙骨部保温装置を適切な位置に配置することで、仙骨部を効果的に保温することができる。
(12)前記各施療子および可動マクラの位置を記憶して自動的に制御できる自動位置調節機構を備えることで、使用の都度、各施療子等の位置を設定する必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るマッサージ機を図面に示した実施例に基づいて説明する。図1は本発明に係るマッサージ機の正面図であり、図2は本発明に係るマッサージ機の側面図である。
図1に示す本発明のマッサージ機10は、上腕施療子30と、背もたれ部40と、座部60と、可動マクラ70とから成る。また、背もたれ部40は、左背もたれ上部40a、右背もたれ上部40b、中央背もたれ上部40c、背もたれ下部40nとから成る構造である。
【0019】
上腕施療子30は、被施療者の肩甲骨内側部をマッサージするための上腕支持台32と駆動部に接続して駆動する駆動杆34とからなる。両腕を同時に支えられるように左上腕施療子30aと右上腕施療子30bの一対の上腕施療子が、背もたれ部40の上部の左右両側端付近に設けられている。上腕支持台32は、被施療者の上腕を負荷なく支持するために上腕の形状に合わせた半円筒形に形成されている。上を開口とした半円筒形の内側周壁部分を脇に挟み込むようにして上腕を支持する。支持する上腕部分は、上腕部の付け根(脇の下辺り)で、両腕は下げた状態となる。実施例によっては上腕支持台に乗せるような状態も考えられる。
図6bは上腕施療子30の形状を表した図である。図6bに表されるように上腕支持台32の形状は、半円形に限らず、太目の棒状体を凹状に形成した形でも、板状平面に凹部を設けた形でも、断面U字形、または、円筒形として上腕部の周囲を固定する形状であっても良い。太目の棒状体に代えてパイプ部材を屈曲した構成であっても良い。上腕部を上腕部の付け根(脇の下辺り)で支持する場合は、上腕支持台の横幅は3cm〜4cmとすることが望ましい。
【0020】
上腕施療子30は、背もたれ部に内蔵される駆動部により、左右駆動杆34a、34bが前後・上下および前後回転運動を左右上腕支持台32a、32bに伝え、被施療者の上腕部を動作させることで、施療子として肩甲骨を動かすことにより、肩甲骨周辺の筋膜の癒着をほぐすマッサージを施す。また、上腕施療子30には位置調節のための調節機構が設けられており、被施療者の上腕部の位置となるように身体に合わせて、駆動杆34を前後、上下、左右へ移動させて、位置あわせを行うことができる。被施療者の身体的特徴にあわせて上腕施療子30の位置を被施療者自ら適切な位置に調節可能とすることで、筋膜マッサージを効果的に行うことができる。
【0021】
駆動杆34は、左右駆動杆34a、34bからなり、それぞれ背もたれ部40の左右上部40a、40bに内蔵される駆動手段と左右上腕支持台32a、32bとを接続し、駆動手段の動作を上腕支持台に伝えるとともに、上腕支持台32を支持する。駆動杆34は、上腕支持台の底面に接合される。駆動杆34の位置は身長に合わせて調節できるように、座部60(若しく仙骨部底先端)の高さから略40cm〜略100cmの幅で上下移動可能な構造であり、背もたれ部40の横幅の中心線40dから左右略10cm〜略40cmの幅で左右に移動可能な構造である。
【0022】
駆動杆34の形状は、上腕支持台32を下から支持するL字型だけでなく、円弧を描く形状でも良く、上腕支持台32を横から支持する直線状でも良い。上腕支持台32を直線状に横から支持する形状とした場合、駆動杆が背もたれ部に対し突出しすぎない構成にする必要がある。特に、上腕支持台32の形状が円筒形の場合には、直線状の形状とすることにより横から支持することで、ベッド型としたときにもそのまま使用できる効果が得られる。
【0023】
駆動杆34を、左右背もたれ部に設けず、背もたれ部の側面に装着して、背もたれ部に設けた駆動手段と結合させ駆動させても良い。図5は、左右背もたれ部を設けない本件発明に係るマッサージ機の平面図であり、図6aは左右背もたれ部を設けない本件発明に係るマッサージ機の斜視図である。背もたれ部40の側面に装着する場合は、駆動杆の形状を背もたれ部40から背もたれ部側面に対し垂直方向へ直線状に上腕部の位置まで(左右背もたれ部を設けている場合と同じ位置)突出させ、その先端を背もたれ部表面に対し垂直方向へ(被施療者の上腕部がある方向へ)L字形に延設し、上腕支持台と結合させ下から支持しても良い。また、延設する形状は円弧形状でも良く、上腕支持台は下から支持せず、横から支持しても良い。
【0024】
上腕部のマッサージを行わないときは、上腕施療子30が邪魔にならないよう上腕支持台32を駆動杆34から又は駆動杆34も背もたれ部から取り外し可能な構成とすることもできる。また、上腕施療子30は、取り外しせずとも左右背もたれ部内部へ手動または自動で収納可能な構造としても良い。
【0025】
左右背もたれ上部40a、40bを設けず、背もたれ部側面から駆動杆を突出させる場合は、駆動杆の背もたれ部本体と結合している部分を中心とし、下方又は上方へ円弧を描くように後方に倒すことができるようにすることで、または、駆動杆の背もたれ部と結合している部分で後方に、若しくは駆動杆途中位置で下方に折り曲げることができるようにすることで、マッサージを行わないときに上腕施療子30が邪魔にならないよう収納可能とすることもできる。
【0026】
背もたれ上部40は左上腕施療子30aが配置される左背もたれ上部40a及び右上腕施療子30bが配置される右背もたれ上部40bと、背面施療子12が配置される中央背もたれ上部40cとから成る構造である。肩甲骨周辺の筋膜に前後・上下および前後回転運動のマッサージ動作を無駄なく、適切に伝えるためには、マッサージ動作を被施療者の身体の奥行き方向の中心線上で行うことが効果的であり、そのためには、被施療者の上腕を身体の奥行き方向の中心線上に置くことが好ましい。
【0027】
図4は本件発明に係るマッサージ機の平面図である。左背もたれ部40a及び右背もたれ部40bは、被施療者が中央背もたれ上部40cに背中を持たれかけた際に、身体の奥行きの中心線上に、左右上腕支持台32a、32bを配置するため、駆動杆34が背もたれ部に対し突出する分、中央背もたれ上部40cに対し略1cmから略20cmの間で、やや後方に位置する構造となっている。
【0028】
中央背もたれ上部40cには、背面施療子12が装備されている。中央背もたれ上部40cは、左右背もたれ上部40a、40bと一体となり、被施療者の座高に合わせて上下にスライドする構造で、高さの調節を行う。高さ調節を行えるようにすることで、被施療者の身体的特徴にあわせ、背面施療子を適切な位置へ、被施療者自身が移動できる。
【0029】
図3は、中央背もたれ上部40cのA−A’断面図である。図3(a)のように中央背もたれ上部40cの表面は、被施療者の肩から下方の腰方向に向かうと、肩部分では平坦よりやや窪み、肩と腰の中心付近で山形に一旦盛り上がり、さらに腰方向に向かって再度やや窪むS状の形状となる構造である。なお、図3(b)のように中央背もたれ上部40cの表面は、平面形状であっても良い。
【0030】
背面施療子12は、被施療者の左右両肩甲骨と脊椎の間を被施療者の背後からマッサージするため、中央背もたれ上部40cの表面に設けられており、被施療者が着席した際に背もたれ部の横幅の中心から左右略5cm〜略30cm、被施療者の仙骨部を底先端(座部の上面)から上方略30cm〜略80cmの位置に配置される。
【0031】
この実施例で背面施療子12は、中央背もたれ部40cの表面に突起しており、正面から見ると半円または楕円形の形状であって、肌に当たる部分の材質は弾力性のあるシリコンまたは合成ゴムから構成される。また、背面施療子12の表面は、側面からみると凹凸若しくは半球状の形状である。
【0032】
背面施療子12は、中央背もたれ上部40cの表面に突出していても良く、被施療者が体重を背もたれ部にかけることで、被施療者の施療部に接合する構造でも良い。また、マッサージ機を動作していないときは中央背もたれ上部に収まっており、マッサージ機の背面施療子12を動作させることで、中央背もたれ上部から突出し、施療部に当接する構造でも良く、このようにすれば、マッサージ機として使用せず、通常の椅子として使用する際に、着席者の背面に突起物が当たることがなく、より快適に使用することができる。
【0033】
背面施療子12は、被施療者の仙骨部を座面から上方略30cm〜略80cmの間を中央背もたれ上部40cに装着された駆動手段により、上下に移動可能な構造となっている。背面施療子12は、上下移動しつつ、または、一定時間、一定の位置に停止しつつ、左右両背面施療子12を同時に、または、左右両背面施療子12の片方づつについて、当接する部分に対し、加圧し、振動を加える構造である。
【0034】
背もたれ下部40nは、中央背もたれ上部40cの下に位置し、加熱器からなる仙骨部保温装置42を備える構成である。仙骨部保温装置42は、被施療者が座部に着席した際、被施療者の仙骨部に位置するよう背もたれ部横幅の中心線上であって、背もたれ下部の底辺から0cm〜略40cmに配置する構成である。
【0035】
自律神経には、交感神経(起きている時の神経・緊張している時の神経)と副交感神経(寝ている時の神経・リラックスしている時の神経)があり、副交感神経を優位な状態にすると精神的にリラックスした状態となる。従って、自律神経や副交感神経と関係する分界項線への筋膜マッサージを施しつつ、同じように副交感神経と関係しており、特に泌尿器系、産婦人科系など骨盤のなかの諸器官などに影響する仙骨を温めることで副交感神経を優位とし、自律神経の緊張をほぐすことにより、マッサージ効果を高めることが可能となる。
【0036】
背もたれ部40は、リクライニング機構を備え、内蔵される駆動手段で自動に、または手動にて、後方に向け自在にリクライニング可能な構造である。これにより、被施療者が自分自身で落ち着く姿勢に調節することができる。
【0037】
可動マクラ70は、首受け部72と、首受け部を支え背もたれ部に装備した駆動部に接続して駆動する首部駆動杆74と、マクラ施療子と、振動装置とから構成される。また、可動マクラの結合部は、首部駆動杆74と背もたれ部との結合部76または首部駆動杆74と首受け部72の1箇所とする事も可能であるが、首部駆動杆74と背もたれ部との結合部76および首部駆動杆74と首受け部72との結合部78の2箇所とする構成も可能である。
【0038】
可動マクラ70は、身体に合わせて位置を変えられるよう上下スライド調節が可能な構造である。また、可動マクラ70は、適切な首の位置に接合させられるよう、首部駆動杆74と背もたれ部との結合部76を中心として円弧を描きながら前後に傾斜させることができる前後調節機構を備える。首部駆動杆74と首受け部72との結合部78を中心に首受け部を同位置のまま円弧状に移動する構成とすることも可能である。すなわち可動マクラ70の根元である背もたれ部との結合部を支点として大きく前後に円弧状に移動させることができる。その他にも首受け部72の下部を支点として首受け部72だけを円弧状に前後させる事も可能である。上下スライド調節及び前後調節は、駆動手段により自動に行うことも、手動で行うことも可能である。
【0039】
首部駆動杆74と接続される可動マクラの駆動手段は、背もたれ部との結合部76で首部駆動杆74と接続されており、首部駆動杆74を上下に伸縮駆動させ、首部駆動杆74と背もたれ部との結合部76の枢支点を中心に円弧を描きながら前後に駆動させる構造である。また、首部駆動杆74と首受け部72の結合部78の枢支点を中心に円弧を描きながら前後に駆動させる構造とすることも出来る。これにより、分界項線の筋膜の癒着をより効果的にほぐすことができる。
【0040】
可動マクラ70は、中央背もたれ上部40cに内蔵された駆動手段により、分界項線(僧帽筋、板状筋、胸鎖乳突筋、頭半棘筋)の筋膜の癒着をほぐすために、上下の伸縮と首部駆動杆74と背もたれ部との結合部76および/または首部駆動杆74と首受け部72との結合部78を中心として円弧を描きながら前後に傾斜する動作によりマッサージを行う。尚、上下の伸縮と前後に傾斜する動作は、必ず単独で作動し、一緒に作動はできない構造とする。可動マクラ70の該動作が作動しているときは、背面施療子12及び上腕施療子30の動作は行わないような構造とする。
また、可動マクラ70には、温熱装置を装着し、頭部を温めることで、マッサージ時のリラックス効果を高める構造としても良い。
【0041】
首が前にでて、背中の丸い姿勢の人は、肩甲骨内側の筋膜マッサージを十分に行うことで、首へのストレスを緩和してから可動マクラ70のマッサージを使用すると効果的である。また、背面施療子12による筋膜マッサージを行うときに、マクラを前方に出した位置で固定して行うことにより首へのストレスが楽になる効果がある。
【0042】
首受け部72は、略円柱を横に寝かせ被施術者の首部と当接する面が首部に合せて凹状に湾曲している形状であり、高さは、可動マクラを伸長した際に、頭部を首受け部の上面で押し上げることで引き伸ばせるよう、首の長さと同程度となる略5cm〜略20cmが好ましい。
なお、首受け部72は、首部と当接する面が平面であっても首部を当接することで凹部形状に変形すれば良く、首部と当接する面が湾曲していれば略四角柱を寝かせた形状でも良い。また、首受け部72の高さは、頭部まで収まる高さでも良く、この場合、首受け部の底面で頭部が押し上げられるように、上面に比べ底面を広くし、底面が台形となる略四角柱を寝かせた形状としても良い。
【0043】
可動マクラ70の振動装置は、首受け部72に内蔵され、マクラに音楽の振動(体感音響システム)や、機械的振動を与える。特に、体感音響システムは、150Hz以下の低音振動を用いると効果的である。該振動は、マクラ部の上下伸縮や前後傾斜の動作と一緒に作動する。該振動は、背面施療子12及び上腕施療子30が動作している際にも作動できる構造とする。
また、マクラ施療子は、首受け部72に内蔵され、もむ、圧迫、叩くなどの1以上の刺激を頭部に与える。
【0044】
可動マクラ70の表面は、凹凸若しくは平面形状とすることが好ましい。また、皮膚と当接する部分の材質は、弾力性のある材質でシリコンや合成ゴムが好ましい。
【0045】
可動マクラ70の位置と、背面施療子12の位置と、上腕施療子30の位置と、背もたれ上部40の位置とは、使用の度に位置を調節しなくても良いよう最初に調節してセットした相互の位置関係を記憶させることにより、それぞれの位置を自動調節可能な自動調節機構を備える構造とすることも可能である。
【0046】
この実施例の各施療子は、背面施療子12が片側又は両側一緒に肩甲骨内側部を押圧しながら振動を加える動作をパターンAと、パターンAの動作をしつつ、動作している背面施療子側の上腕部施療子30が、一定時間上下または前後回転動作を行うパターンBと、パターンB終了後に背面施療子12が上下移動を行うパターンCとをパターンA、パターンB、パターンCの順に繰り返し行う構造である。
【0047】
なお、図面には椅子型マッサージ機を記載しているが、ベッド型マッサージ機であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本件発明に係るマッサージ機の正面図
【図2】本件発明に係るマッサージ機の側面図
【図3】(a)本件発明に係るマッサージ機におけるS状形状背もたれ部のA−A’断面図(b)本件発明に係るマッサージ機における平面形状背もたれ部のA−A’断面図
【図4】本件発明に係るマッサージ機の平面図
【図5】左右背もたれ部のない本件発明に係るマッサージ機の平面図
【図6a】左右背もたれ部のない本件発明に係るマッサージ機の斜視図
【図6b】上腕施療子30の形状を表した図
【符号の説明】
【0049】
10 マッサージ機
12 背面施療子
30 上腕施療子
30a 左上腕施療子
30b 右上腕施療子
32 上腕支持台
32a 左上腕支持台
32b 右上腕支持台
34 駆動杆
34a 左駆動杆
34b 右駆動杆
40 背もたれ部
40a 左背もたれ上部
40b 右背もたれ上部
40c 中央背もたれ上部
40d 背もたれ部中心線
40n 背もたれ下部
42 仙骨部保温装置
60 座部
70 可動マクラ
72 首受け部
74 首部駆動杆
76 首部駆動杆と背もたれ部との結合部
78 首部駆動杆と首受け部との結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ部と座部とからなるマッサージ機において、被施療者の肩甲骨内側部をマッサージするための上腕を乗せる凹部の設けられた上腕支持台と、上腕支持台を支えるとともに駆動部に接続されて駆動する駆動杆と、から構成される一対の上腕部施療子を背もたれ部の上部の左右両側端付近に装備したことを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記上腕支持台は、半円形、棒状体を凹状に屈曲させた形、平面に凹部を設けた形、断面U字形または上腕部の周囲を固定する円筒形であることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記上腕施療子は、背もたれ部の横幅の中心線から左右略10cm〜略40cm、座部の上面から上方略40cm〜略100cmの位置に装備されることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記上腕施療子は、被施療者の体形に適合する位置に配置できるように、前後、上下、左右に位置調節する調節機構を備えたことを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項5】
前記駆動部は、上腕施療子の駆動杆を前後・上下および前後回転駆動することを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項6】
前記マッサージ機は、背もたれ部の表面に振動動作を加えて肩甲骨内側部をマッサージする一対の円形又は楕円形の突起からなる背面施療子が上下移動自在に装着されていることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項7】
前記背面施療子は、背もたれ部の横幅の中心線から左右に略5cm〜略30cmで、座部の上面から上方略30cm〜略80cmに設けられていることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項8】
前記マッサージ機は、首受け部と、首受け部を支えつつ駆動する首部駆動杆とからなる可動マクラが背もたれ部の上に装備された構造であり、首部駆動杆が駆動手段で上下に伸縮駆動するとともに、可動マクラが、首部駆動杆と背もたれ部との結合部および/または首部駆動杆と首受け部との結合部を枢支点として前後に円弧を描きながら駆動することを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項9】
前記可動マクラは、機械的にまたは音楽に合わせて振動を与える振動装置、または、もむ、叩く、圧迫する動作の1つ以上を含む刺激を与えるマクラ施療子を装備したことを特徴とする請求項8記載のマッサージ機。
【請求項10】
前記マッサージ機は、仙骨部を温めることで副交感神経を優位にさせ自律神経の緊張を解すため、発熱機能を有する仙骨部保温装置を背もたれ下部に備えたことを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項11】
前記仙骨部保温装置は、背もたれの横幅の中心線上に位置し、マッサージ機の座部上面から0cm〜略40cmに装備されたことを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項12】
前記上腕施療子・背面施療子または可動マクラは、相互の位置を記憶する機能を有する自動位置調節機構を備えたことを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公開番号】特開2008−253631(P2008−253631A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100897(P2007−100897)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(505146456)有限会社 磯崎健康企画 (7)
【Fターム(参考)】