説明

マルチコアファイバ端末及びその接続構造

【課題】マルチコアファイバの接続損失の増加を効果的に抑制する端末構造を提供する。
【解決手段】マルチコアファイバ端末100は、複数のSM型コア11を有するSM型マルチコアファイバ10と、マルチコアファイバ端面10aに融着固定された屈折率分布型レンズアレイ20を備える。屈折率分布型レンズアレイ20は、SM型マルチコアファイバ10の端面10aにおけるコア配列に一致するように屈折率変化領域21が設定されている。例えばGI型マルチコアファイバで構成する場合、各GI型コアが屈折率変化領域21に相当し、SM型マルチコアファイバ10の端面10aから出射された光のビーム径拡大が可能になる。また、屈折率分布型レンズアレイ20の厚みDを調節することにより発散角を抑制した光も得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ網の一部として、それぞれが個別に光導波路として機能する複数のコアを有するマルチコアファイバを含むマルチコアファイバ端末に関し、特に、同一コア配列を有するネットワーク資源への低損失接続を実現するための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一つの送信局と複数の加入者との間の光通信を可能にするFTTH(Fiber To The Home)サービスを提供するため、例えば図6に示されたように、多段の光スプリッタを介在させることで一本の光ファイバを各加入者が共有する、いわゆるPON(PassiveOptical Network)システムが実現されている。
【0003】
すなわち、図6に示されたPONシステムは、インターネットなどの既存の通信システムの最終中継局である端局1(送信局)と、端局1と加入者宅2(加入者)との間に敷設された光ファイバ網とを備える。この光ファイバ網は、分岐点として設けられたクロージャー(光スプリッタ30を含む)と、端局1からクロージャーまでの光通信回線12と、クロージャーから各加入者宅2までの光通信回線31から構成されている。
【0004】
上記端局1は、局側終端装置10(OLT:Optical Line Terminal)と、OLT10からの多重化信号を分岐する光スプリッタ11を備える。一方、上記加入者宅2には、加入者側終端装置20(ONU:OpticalNetwork Unit)が設けられている。また、端局1と加入者宅2との間に敷設されている光ファイバ網の分岐点としてのクロージャーには、少なくとも、到達した多重化信号をさらに分岐するための光スプリッタ30や、サービス内容を制限するための波長選択フィルタなどが配置されている。
【0005】
以上のように、図6に示されたPONシステムでは、端局1内に光スプリッタ11が設けられるとともに、光ファイバ網上に配置されたクロージャー内にも光スプリッタ30が設けられているので、1つの局側終端装置10からは複数の加入者に対してFTTHサービスの提供が可能になっている。
【0006】
しかしながら、上述のように多段の光スプリッタを介することで複数の加入者が一本の光ファイバを共有するPONシステムでは、輻輳制御(Congestion Control)や受信ダイナミックレンジの確保など、将来的な伝送容量の増加に対して技術的課題を抱えているのは事実である。本技術的課題(輻輳制御・ダイナミックレンジの確保など)を解決する手段の一つとして、SS(SingleStar)システムへの移行が考えられる。SSシステムへ移行する場合は、局内側においてファイバ心数がPONシステムに対して増大するため、局内側光ケーブルにおいて極細径化・超高密度化が必須となる。極細径・超高密度化用の光ファイバとしては、マルチコアファイバが好適である。
【0007】
例えば、マルチコアファイバとして、特許文献1に開示された光ファイバは、その断面において二次元に配置された7個以上のコアを有する。また、特許文献2には、複数のコアが一直線上に並列された光ファイバが開示されており、光導波路・半導体光集積素子との接続が容易になる旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−341147号公報
【特許文献2】特開平10−104443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らは、上述の従来技術について検討した結果、以下のような課題を発見した。
【0010】
すなわち、特許文献1に記載されたマルチコアファイバは、送信端や受信端において、光デバイス等との接続が困難になる。これは、特許文献2にも記載されている通り、通常製造される光導波路、半導体光集積素子等の光学デバイスは、一次元に複数の光送受信要素(発光エリア又は受光エリア)が配列されているのが一般的であり、このような光デバイスを、その断面において複数のコアが二次元に配置されているマルチコアファイバ(以下、この配置状態を二次元コア配列という)に光学的に結合させることは困難であった。
【0011】
また、特許文献2に記載されたマルチコアファイバは、一次元配列された光送受信要素との光学的な接続を目的としているため、コアは一次元に配列されている。この場合、当該マルチコアファイバ一本当りのコア数を大幅に増加させることが困難であるため、光伝送路としての利用はできない。
【0012】
一方で、FTTHにおいて加入者の増加に伴いファイバ芯数も増加するため局内のファイバ収納スペースを圧迫しているのも事実であり、一次元コア配列を有するマルチコアファイバ、二次元コア配列を有するマルチコアファイバの何れに関しても、その利用要求が高まってくることは容易に想像できる。しかしながら、マルチコアファイバと他のネットワーク資源との接続を考えると、単一コアファイバの接続とは異なり、当該マルチコアファイバの長手方向を中心としたコア配列の回転も修正する必要があり、その接続作業は著しく煩雑になることが容易に予想される。また、実際には、マルチコアファイバ内におけるコア位置のばらつき(マルチコアファイバの製造ばらつき)や、接続コネクタ部におけるマルチコアファイバ同士の位置ずれ(コネクタ偏心や嵌合トレランス)のため、全てのコア調芯に関して低接続損失を実現することが困難であった。
【0013】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、光通信システムにおける光導波路の一部として適用可能なマルチコアファイバを含み、同一コア配列を有する別のマルチコアファイバ等、種々のネットワーク資源(接続対象)間の接続損失の増加を効果的に抑制するための構造を備えたマルチコアファイバ端末及びその接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するため、この発明に係るマルチコアファイバ端末は、複数のコアを有するマルチコアファイバと、他のネットワーク資源(同一コア配列を有するマルチコアファイバを含む)間の接続に際し、その接続精度の許容度を緩和させるための構造を備える。具体的に、当該マルチコアファイバ端末は、局内外を問わず光ファイバ網の一部として適用可能なシングルモード(以下、SMという)型マルチコアファイバと、このSM型マルチコアファイバの端面に固定された屈折率分布型レンズアレイを備える。
【0015】
SM型マルチコアファイバは、それぞれが光学的に独立したシングルモード光導波路として機能する複数のSM型コアと、複数のSM型コアを一体的に覆うとともに、その断面におけるコア配列を保持するクラッドを有する。屈折率分布型レンズアレイは、SM型マルチコアファイバの端面に対面する第1端面と、この第1端面に対向する第2端面を有する。また、屈折率分布型レンズアレイは、SM型マルチコアファイバの端面におけるコア配列に一致するように屈折率変化領域が設定されている。
【0016】
特に、屈折率分布型レンズアレイは、他のネットワーク資源との低損失の接続を実現するため、SM型マルチコアファイバにおける一つのSM型コアを伝搬した光を入力し、該一つのSM型コアのモードフィールド径(以下、MFDという)よりも大きなビーム径で、かつ、該一つのSM型コアを伝搬した光の発散角よりも小さい発散角の光を出力する。通常、屈折率分布型レンズアレイの第2端面から出力される光のビーム径は、SM型マルチコアファイバの端面におけるコア間隔やコア位置誤差、接続コネクタの偏心、嵌合トレランス等を考慮して最適値が決定される。ただし、シングルモード光通信を行なう1.3μm〜1.55μmの波長帯での光伝送路への当該マルチコアファイバ端末の適用を考慮すれば、屈折率分布型レンズアレイから出力される光のビーム径は、15μm以上であるのが好ましい。
【0017】
なお、屈折率分布型レンズアレイをより安価に製造する場合には、複数のGraded Index(以下、GIという)型コアを有するGI型マルチコアファイバの一部を利用するのが現実的である。このGI型マルチコアファイバは、それぞれが光学的に独立したGI型屈折率分布を有する光導波路として機能する複数のGI型コアと、これら複数のGI型コアを一体的に覆ったクラッドを有する。特に、GI型マルチコアファイバは、その端面において、SM型マルチコアファイバの端面におけるコア配列と一致するよう複数のGI型コアが配置されている。したがって、当該マルチコアファイバ端末において、SM型マルチコアファイバの端面上における各SM型コアの中心位置と、屈折率分布型レンズアレイの第1端面における屈折率ピーク位置は略一致する。
【0018】
本発明に係るマルチコアファイバ端末の接続構造は、それぞれが上述のような構造を備えたマルチコアファイバ(本発明に係るマルチコアファイバ)と同一構造を有する第1及び第2マルチコアファイバを備える。そして、当該接続構造では、第1マルチコアファイバ端末の屈折率分布型レンズアレイにおける第2端面と、第2マルチコアファイバ端末の屈折率分布型レンズアレイにおける第2端面とを互いに向かい合わせた状態で、これら第1及び第2マルチコアファイバ端末同士が接続固定される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るマルチコアファイバ端末によれば、SM型マルチコアファイバ内での各SM型コアの位置ばらつき(SM型マルチコアファイバの製造ばらつき)や、接続コネクタ部におけるSM型マルチコアファイバ同士の位置ずれ(コネクタ偏心や嵌合トレランス)が存在する中でも、全てのSM型コアについて低損失接続を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るマルチコアファイバ端末の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るマルチコアファイバ端末の機能を説明するための図である。
【図3】本実施形態に係るマルチコアファイバ端末の製造工程を説明するための図である。
【図4】GI型コアにおける光の伝搬状態を示すとともに、屈折率分布型レンズアレイの厚み決定プロセスを説明するための図である。
【図5】本発明に係るマルチコアファイバ端末の接続構造の一実施形態を説明するための図である。
【図6】従来の光通信システム(PONシステム)の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明に係るマルチコアファイバの各実施形態を、図1〜図5を参照しながら詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明に係るマルチコアファイバ端末の一実施形態の構成を示す図である。この図1に示されたマルチコアファイバ端末100は、複数のコアを有するマルチコアファイバと、他のネットワーク資源(同一コア配列を有するマルチコアファイバを含む)間の接続に際し、その接続精度の許容度を緩和させるための構造を備える。なお、図2は、図1に示されたマルチコアファイバ端末100の機能を説明するための図である。
【0023】
具体的に、当該マルチコアファイバ端末100は、局内外を問わず光ファイバ網の一部として適用可能なSM型マルチコアファイバ10と、このSM型マルチコアファイバ10の端面10a(光入出力端面)に固定された屈折率分布型レンズアレイ20を備える。
【0024】
図1に示されたように、SM型マルチコアファイバ10は、それぞれが光学的に独立したシングルモード光導波路として機能する複数のSM型コア11と、これら複数のSM型コア11を一体的に覆うとともに、その断面におけるコア配列を保持するクラッド12を有する。屈折率分布型レンズアレイ20は、SM型マルチコアファイバ10の端面10aに対面する第1端面20aと、この第1端面20aに対向する第2端面20bを有し、この第2端面20bが端面10aに融着接続されることにより、マルチコアファイバ端末10の端面10aに屈折率分布型レンズアレイ20が固定される。また、屈折率分布型レンズアレイ20は、SM型マルチコアファイバ10の端面10aにおけるコア配列に一致するように屈折率変化領域21が設定されている。
【0025】
なお、屈折率分布型レンズアレイ20の厚みDは、屈折率変化領域21における最大屈折率変化量とともに、当該屈折率分布型レンズアレイ20の第2端面20bから出力される光の拡がり角及びビーム径を制御するため微調整される。また、この厚みDを調節することにより、当該屈折率分布型レンズアレイ20の第2端面20bから、発散角を抑制した、平行光に近い光を出力させることも可能になる。
【0026】
本実施形態において、上述のような構造を備えた屈折率分布型レンズアレイ20は、図2に示されたように、他のネットワーク資源との低損失の接続を実現するため、SM型マルチコアファイバ10における一つのSM型コア11を伝搬した光を入力し、該一つのSM型コア11のMFDよりも大きなビーム径で、かつ、該一つのSM型コア11を伝搬した光の発散角よりも小さい発散角の光を出力する。特に、シングルモード光通信を行なう1.3μm〜1.55μmの波長帯での光伝送路への当該マルチコアファイバ端末の適用を考慮すれば、屈折率分布型レンズアレイ20の第2端面20bから出力される光のビーム径は、15μm以上であるのが好ましい。さらに、出力される光の発散角は、半角5度以内であるのが好ましい。
【0027】
続いて、本実施形態に係るマルチコアファイバ端末の製造工程を、図3を参照しながら説明する。
【0028】
まず、当該マルチコアファイバ端末100の製造では、図3(a)に示されたように、光伝送路の一部に適用されるSM型マルチコアファイバ10と、屈折率分布型レンズアレイ20を得るためのGI型マルチコアファイバ200を用意する。
【0029】
なお、用意されるSM型マルチコアファイバ10は、125μmのファイバ径(クラッド径)を有するとともに、7芯のSM型コア11を有する。各SM型コアの直径は9μmであり、端面10aにおいて、SMコア11の最小間隔は40μmである。一方、上述のGI型マルチコアファイバ200は、それぞれが光学的に独立したGI型屈折率分布を有する光導波路として機能する複数のGI型コア210と、これら複数のGI型コア210を一体的に覆ったクラッド220を有する。特に、このGI型マルチコアファイバ200は、その端面200aにおいて、SM型マルチコアファイバ10の端面10aにおけるコア配列と一致するよう複数のGI型コア210が配置されている。
【0030】
続いて、用意されたSM型マルチコアファイバ10の端面10aとGI型マルチコアファイバ200の端面200aを付き合わせた状態でSM型コア11とGI型コア210の調芯が行われる。この調芯作業は、それぞれが位置対応しているSM型コア11及びGI型コア210の組で構成される伝搬経路のうち少なくとも2本の伝搬経路を通過する光のパワーを測定しながら、これらSM型マルチコアファイバ10とGI型マルチコアファイバ200の位置関係を調節することにより行われる。調芯作業の終了時点では、SM型マルチコアファイバ10の端面10a上における各SM型コア11の中心位置と、GI型マルチコアファイバ200の端面200a屈折率ピーク位置(GI型コア210の中心位置)は略一致している。
【0031】
上述の調芯作業が完了すると、SM型マルチコアファイバ10の端面10aとGI型マルチコアファイバ200の端面200aが融着接続される。その後、図3(b)に示されたように、融着部を構成する端面200aから距離Dだけ離れた位置でGI型マルチコアファイバ200を切断することにより、当該マルチコアファイバ端末100が得られる。すなわち、SM型マルチコアファイバ10の端面10aに固定されたGI型マルチコアファイバ200の先端部分が屈折率分布型レンズアレイ20となる。
【0032】
なお、上述のGI型マルチコアファイバ200の各GI型コア210は、図4に示されたように、中心においてピークを取り、該中心から離れるに従って距離の二乗で屈折率が低下する屈折率分布250を有する。このようなGI型コア210内を伝搬する光は、一定周期で集束しながら伝搬していくことになる。したがって、GI型マルチコアファイバ200の切断位置、すなわち端面200aからの距離D(屈折率分布型レンズアレイ20の厚みに相当)を適切に選択することにより、所望のビーム径を有する光、更には発散角を抑制した平行光に近い光を得ることが可能になる。このときに得られた屈折率分布型レンズアレイ20において、外径は上述のSM型マルチコアファイバ10のクラッド径と同様に125μm、レンズ数(屈折率変化領域21に相当するGI型コア210の数)は7個、レンズ径(GI型コア210の外径)は20μmである。また、隣接するレンズ間の距離(レンズ中心間の距離)は40μmである。
【0033】
以上のように製造された当該マルチコアファイバ端末100では、SM型コア11とGI型コア210(屈折率変化領域21であるレンズ部分に相当)との許容ずれ量は、SM型マルチコアファイバ同士を接続する場合と比較して2.2倍(=20μm/9μm)になる。また、当該マルチコアファイバ端末100の長手方向を中心とした回転誤差1度でコネクタ接続する場合、上述のような構造を有するSM型マルチコアファイバ10におけるSM型コア11(外径は9μm)に対し、約0.7μmの軸ずれが発生する。しかしながら、上述の屈折率分布型レンズアレイ20をSM型マルチコアファイバ10の端面10aに設けることで、当該マルチコアファイバ端末100によれば、この0.7μmの軸ずれによる影響を実質的に受けない光接続特性が得られる。また、屈折率分布型レンズアレイ20の第2端面20bから出力される光のビーム径と同程度のレンズ間隔が確保されているため、隣接チャネル(隣接するコア)へのクロストークも十分に抑制される。
【0034】
上述のような特性を有する当該マルチコアファイバ端末100は、図3(c)に示されたように、屈折率分布型レンズアレイ20側からコネクタフェルール300の貫通孔310内に挿入される。その後、屈折率分布型レンズアレイ20を含む当該マルチコアファイバ端末100の先端部分と、コネクタフェルール300とが接着固定される。なお、このコネクタフェルール300は、互いに対向する端面300a、300bと、これら端面300a、300bを連絡する貫通孔310を備える。
【0035】
屈折率分布型レンズアレイ20を含む当該マルチコアファイバ端末100の先端部分にコネクタフェルール300が接着固定されると、屈折率分布型レンズアレイ20の第2端面20bとともにコネクタフェルール300の端面300bが研磨される。このとき、必要に応じて第2端面20bからの出力光の発散角が小さくなるように研磨量が調整される。
【0036】
なお、図3に示された製造方法では、調芯済みのGI型マルチコアファイバ200とSM型マルチコアファイバ10を融着固定した後に、必要な長さ(屈折率分布型レンズアレイ20の厚み)だけGI型マルチコアファイバ200を切断した。しかしながら、本実施形態に係るマルチコアファイバ端末100は、用意されたGI型マルチコアファイバ200から予め所望の厚みDで切り出し、この切り出された部分(屈折率分布型レンズアレイ20に相当)を、SM型マルチコアファイバ10の各SM型コア11に対して調芯した後に、このSM型マルチコアファイバ10に融着固定すてもよい。この場合の調芯作業は、例えば、屈折率分布型レンズアレイ20の第2端面20bがわに観察装置を配置し、この観察装置から取り込まれる画像を観察しながら行われる。
【0037】
次に、本発明に係るマルチコアファイバ端末の接続構造の一実施形態を、図5を参照しながら説明する。なお、本実施形態に係るマルチコアファイバ端末の接続構造は、上述の図3に示された製造工程を経て得られた第1及び第2マルチコアファイバ端末100A、100Bを備える。また、用意される第1及び第2マルチコアファイバ端末100A、100Bにおけるコア配列は、互いに一致している。
【0038】
第1マルチコアファイバ端末100Aは、複数のSM型コアと、これら複数のSM型コアを一体的に覆うクラッドを有するSM型マルチコアファイバ10Aと、GI型マルチコアファイバの先端部分に相当する屈折率分布型レンズアレイ20Aと備える。また、屈折率分布型レンズアレイ20Aを含む当該第1マルチコアファイバ端末100Aの先端部分には、コネクタフェルール300Aが接着固定されている。
【0039】
一方、第2マルチコアファイバ端末100Bは、複数のSM型コアと、これら複数のSM型コアを一体的に覆うクラッドを有するSM型マルチコアファイバ10Bと、GI型マルチコアファイバの先端部分に相当する屈折率分布型レンズアレイ20Bと備える。また、上述の第1マルチコアファイバ端末100Aと同様に、屈折率分布型レンズアレイ20Bを含む当該第2マルチコアファイバ端末100Bの先端部分にも、コネクタフェルール300Bが接着固定されている。
【0040】
本実施形態に係るマルチコアファイバ端末の接続構造では、上述のように用意された第1マルチコアファイバ端末100Aの端面(屈折率分布型レンズアレイ20Aの第2端面に相当)と、第2マルチコアファイバ端末100Bの端面(屈折率分布型レンズアレイ20Bの第2端面に相当)とを突き合わせた状態で、各端面におけるコア配列の調芯が行われる。この調芯作業は、図3(a)の製造工程で行われたように、それぞれが位置対応しているSM型マルチコアファイバ端末100Aにおけるコア経路と第2マルチコアファイバ端末100Bにおけるコア経路で構成される伝搬経路のうち少なくとも2本の伝搬経路を通過する光のパワーを測定しながら、第1マルチコアファイバ端末100Aと第2マルチコアファイバ端末100Bの位置関係を調節することにより行われる。
【0041】
上述のように第1及び第2マルチコアファイバ端末100A、100B間の調芯作業が完了すると、第1マルチコアファイバ端末100Aの端面と、第2マルチコアファイバ端末100Bの端面との間に塗布された接着剤を硬化することにより、当該マルチコアファイバ端末の接続構造が得られる。
【0042】
なお、上述の実施形態において、複数のコアが端面において二次元に配列されたマルチコアファイバを含むマルチコアファイバ端末について説明したが、マルチコアファイバの端面におけるコア配列は一次元であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るマルチコアファイバ端末は、光伝送路の一部として、光通信システムへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10、10A、10B…SM型マルチコアファイバ、11…SM型コア、20、20A、20B…屈折率分布型レンズアレイ、100、100A、100B…マルチコアファイバ端末、200…GI型マルチコアファイバ、210…GI型コア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが光学的に独立したシングルモード光導波路として機能する複数のSM型コアと、前記複数のSM型コアを一体的に覆うとともに、その断面におけるコア配列を保持するクラッドを有するSM型マルチコアファイバと、
前記SM型マルチコアファイバの端面に固定された屈折率分布型レンズアレイであって、前記SM型マルチコアファイバの端面に対面する第1端面と前記第1端面に対向する第2端面を有するとともに、前記SM型マルチコアファイバの端面におけるコア配列に一致するように屈折率変化領域が設定された屈折率分布型レンズアレイと、を備えたマルチコアファイバ端末。
【請求項2】
前記屈折率分布型レンズアレイは、前記SM型マルチコアファイバにおける一つのSM型コアを伝搬した光を入力し、前記一つのSM型コアのモードフィールド径よりも大きなビーム径で、かつ、前記一つのSM型コアを伝搬した光の発散角よりも小さい発散角の光を出力することを特徴とする請求項1記載のマルチコアファイバ端末。
【請求項3】
前記屈折率分布型レンズアレイから出力される光のビーム径は、15μm以上であることを特徴とする請求項2記載のマルチコアファイバ端末。
【請求項4】
前記屈折率分布型レンズアレイは、それぞれが光学的に独立したGI型屈折率分布を有する光導波路として機能する複数のGI型コアと、前記複数のGI型コアを一体的に覆ったクラッドを有するGI型マルチコアファイバであって、その端面において、前記SM型マルチコアファイバの端面におけるコア配列と一致するよう前記複数のGI型コアが配置されたGI型マルチコアファイバを含むことを特徴とする請求項1記載のマルチコアファイバ端末。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載のマルチコアファイバ端末と同一構造を有する第1マルチコアファイバ端末と、
請求項1〜4のいずれか一項記載のマルチコアファイバ端末と同一構造を有する第2マルチコアファイバ端末と、を備え、
前記第1マルチコアファイバ端末の屈折率分布型レンズアレイにおける第2端面と、前記第2マルチコアファイバ端末の屈折率分布型レンズアレイにおける第2端面とを互いに向かい合わせた状態で、前記第1及び第2マルチコアファイバ端末同士を接続固定したマルチコアファイバ端末の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−286718(P2010−286718A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141334(P2009−141334)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】