説明

マルチモードイオン化源及び分子スクリーニング方法

【課題】 単独のイオン化チャンバー及びネブライザーを利用して、効率的かつ効果的にESIイオン及びAPCIイオンの両方を発生することが可能なマルチモードイオン化源を利用する複合検体の検出方法を提供する。
【解決手段】 本発明の検出方法は、(a)前記複合検体をエレクトロスプレーイオン化源に導入して帯電エアロゾルを発生し、(b)前記エレクトロスプレーイオン化源に隣接する赤外線放射体で前記帯電エアロゾルを乾燥し、(c)前記エレクトロスプレーイオン化源より下流の大気圧イオン化源を利用して前記乾燥されたエアロゾルをイオン化し、(d)前記複合検体からのイオンを検出することを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチモードイオン化源及び分子スクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析計は、分子をイオン化した後、質量電荷比(m/z)に基づいて分子を分類かつ同定することによって機能する。このプロセスにおける2つの重要な構成要素として、イオンを生成するイオン源、及びイオンを分類する質量分析器を挙げることができる。
【0003】
いくつかの異なる形式のイオン源が、質量分析計に利用可能である。それぞれのイオン源は、特有の長所を有し、異なる部類の化合物と共に使用するのに適している。異なる形式の質量分析器も使用される。必要とされる情報の種類に応じて、それぞれ長所と短所を有する。
【0004】
この10年間で、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)における多くの進歩が、検体分子をイオン化し、結果生じるイオンを移動相から分離する新規のイオン源及び技術を発展させてきた。以前のLC/MSシステムは、準大気圧で又は不完全真空下で機能していたのに対し、大気圧イオン化(API)は大気圧で起こる。加えて、従来これらの旧式システムにおいて、全ての構成要素が一般的に真空下にあったのに対し、APIは真空以外で起こり、その後イオンは真空中に移送される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エレクトロスプレーイオン化(ESI)及び大気圧化学イオン化(APCI)は、大気圧でイオンを形成する共通の要素を備えている2つの非常に異なるイオン化プロセスである。単独のイオン化チャンバー及びネブライザーを利用して、効率的かつ効果的にESIイオン及びAPCIイオンの両方を発生することが可能なイオン源を提供することは極めて望ましい。この形式の設計は、多数の課題を提起する。例えば、1つの重要な課題として、ESIイオン及びAPCIイオンを発生するために必要な電場を作り出すことと、帯電ESIエアロゾルに物理的に接触することなく十分に乾燥することを同時に行う能力が挙げられる。第二の重要な課題は、バイオテクノロジー及び製薬工業にとって興味深い、特定の有機又は生体分子を効率的にイオン化し、かつ特性化するための装置の能力にある。当該技術によりもたらされるこれらの及び他の問題は、本発明によって克服される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、マルチモードイオン化源を利用して検体を検出する方法を提供する。この方法は、検体をエレクトロスプレーイオン化源に適用して、帯電エアロゾルを発生し、エレクトロスプレーイオン化源に隣接する赤外線放射体で帯電エアロゾルを乾燥し、エレクトロスプレーイオン化源より下流の大気圧イオン化源を利用して乾燥エアロゾルをイオン化し、帯電エアロゾルからのイオンを検出することを含む。この方法は、イオンを発生しかつ検出するために幅広く適用される。例えばこの方法は、天然物、ステロイド又は他の有機分子を検出するのに適用される。この方法を、イオン源又は質量分析システムと共に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
発明を詳細に説明する前に、本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用されるように、単数形「1つの(「a」、「an」及び「the」)」は、その文脈が明らかに他のものを表していない限り、複数の言及を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば「1つの導管」についての言及は、1つより多い「導管」を含む。1つの「エレクトロスプレーイオン化源」又は1つの「大気圧イオン化源」についての言及は、1つより多い「エレクトロスプレーイオン化源」又は「大気圧イオン化源」を含む。本発明を説明し、請求する際に、下記に設定された定義にしたがって、以下の専門用語を使用する。
【0008】
「隣接」という用語は、近接、隣又は近傍を意味する。また、隣接するものは、別の構成要素と接触していても、他の構成要素を取り囲んでいても(すなわち、それと同心であっても)、他の構成要素から間隔を空けていても、又は他の構成要素の一部を含んでいてもよい。例えば、ネブライザーに隣接する「乾燥装置」は、ネブライザーの隣に間隔を空け、ネブライザーに接触し、ネブライザー又はネブライザーの一部を取り囲みもしくはそれに取り囲まれ、ネブライザーを含みもしくはネブライザーに含まれ、ネブライザーの近傍又はネブライザーに近接している。
【0009】
「検体」という用語は、イオン化されることが可能な、任意の有機系分子、天然物、ステロイド又はそれらの誘導体を指す。
【0010】
「導管」という用語は、イオン又はガスを受容し又は移送するのに利用可能である任意のスリーブ、キャピラリー、移送装置、ディスペンサー、ノズル、ホース、パイプ、プレート、ピペット、ポート、オリフィス、壁のオリフィス、コネクター、チューブ、カップリング、容器、ハウジング、構造又は装置を指す。
【0011】
「複合検体」という用語は、溶媒とサンプル分子の混合物を指す。溶媒として、質量分析で利用され、使用される当業者に既知の典型的な溶媒を挙げることができる。サンプル分子として、天然物、有機分子及びそれらの誘導体を挙げることができるが、それらに限定されない。例えば、サンプル分子としては、質量分析を行うことが困難であることがあるタキソール、ステロイド、レセルピン、プロゲステロン、エストロゲン、ホルモン、ペプチド、タンパク質、核酸、ヌクレオチド、サルファ剤、スルホンアミド、制癌剤、パクリタキセル、トルアズミド(tolazmide)、ウラシル、プロカインアミド、フェニルブタゾン、モリン、リドカイン、カフェイン剤、ヨージパミド、ラベタロール、ゲムフィブロジル、コルチゾン、アセタゾラミド、アミノ安息香酸、インドール、ヒドロフルメチアジド、アジド、スルファメトキサゾール、各種ジオン及び他の類似の種類の分子が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0012】
「コロナ針」という用語は、コロナ放電をもたらすのに利用され使用される任意の導管、針、物体又は装置を指す。
【0013】
「分子長軸」という用語は、スプレーの方向に最も大きなイオン濃度を有する領域を介して描くことが可能な理論上の軸又は線を意味する。上記の用語は、導管の軸に対する分子長軸の関係のために採用されてきた。ある場合においては、イオン源又はエレクトロスプレーネブライザーの長軸は、導管の長軸からずれることがある(理論上の軸は直交するが、3次元空間では整列しない)。「分子長軸」という用語の使用は、本発明の広い範囲内の実施形態を含むように採用されている。直交することとは、垂直又はおおよそ90度の角度で整列することを意味する。例えば、「分子長軸」は、導管の軸に対して直交することがある。実質的に直交するという用語は、90度±20度であることを意味する。しかしながら、本発明はこれらの関係に限定されず、「分子長軸」と導管の長軸との間に画定された、様々な鋭角及び鈍角を含むことがある。
【0014】
「ネブライザー」という用語は、液体から小さな液滴又はエアロゾルを発生する当業者に既知の任意の装置を指す。
【0015】
「第一電極」という用語は、ESI源から発生された水柱又はスプレーを導く又は制限するために、あるいは帯電した液滴の形成を助けるためネブライザーの周囲の電場を増大させるために、ネブライザー又はエレクトロスプレーイオン化源に隣接して使用されることのある任意の設計又は形状の電極を指す。
【0016】
「第二電極」という用語は、第一電極から導管に向けてイオンを導くために使用されることのある任意の設計又は形状の電極を指す。
【0017】
「乾燥装置」という用語は、イオン化された蒸気を乾燥あるいは部分的に乾燥することができる任意のヒーター、ノズル、ホース、導管、イオンガイド、同心構造、赤外線(IR)ランプ、u波ランプ、被加熱面、ターボスプレー装置又は被加熱ガス導管を指す。イオン化された蒸気を乾燥することは、機器の感度を維持又は改善するのに重要である。
【0018】
「イオン源」又は「源」という用語は、検体イオンを発生する任意の発生源を指す。
【0019】
「イオン化領域」という用語は、任意のイオン化源と導管との間の範囲を指す。
【0020】
「エレクトロスプレーイオン化源」という用語は、ネブライザー及び、エレクトロスプレーイオンを発生するための関連部品を指す。ネブライザーは接地電位であっても又はそうでなくてもよい。またこの用語は、当該技術分野で既知のエレクトロスプレーイオン化技術を使用して発生されたイオンと同様又は同一の帯電粒子を放電させることが可能な電極を備えているチューブのような装置又はデバイスを含むように広く解釈されるべきである。
【0021】
「大気圧イオン化源」という用語は、イオンを発生するための当該技術分野で既知の一般的な用語を指す。さらに、この用語は周囲の圧力でイオンを発生するイオン源を指す。幾つかの典型的なイオン源の例として、エレクトロスプレー、大気圧光イオン化(APPI)源及び大気圧化学イオン化(APCI)源を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0022】
「検出器」という用語は、イオンを検出することができる任意のデバイス、装置、機械、構成要素、コンポーネント又はシステムを指す。検出器は、ハードウェア及びソフトウェアを含んでいても又は含んでいなくてもよい。質量分析計において、一般的な検出器は、質量分析器を含み、及び/又は質量分析器と連結される。
【0023】
「連続」又は「連続配列」という用語は、連続的な配置でイオン源を使用することを指す。イオン源は順々に続く。これは、線形配置であっても又はそうでなくてもよい。
【0024】
本発明を、図面を参照して説明する。図面は縮尺によらず、特に、明確に描写するために、ある寸法を誇張することがある。
【0025】
図1は、質量分析システムの一般的な構成図を示す。この構成図は、縮尺によらず、本発明が様々な異なる形式の質量分析計と共に利用されるために、一般的な構成で描かれている。本発明の質量分析システム1は、マルチモードイオン源2、移送システム6、検出器11を含む。広義での本発明は、単独のAPIイオン源のイオン化範囲を増加させ、多重イオン形成機構を単独の発生源に組み込む。一実施形態においては、これは、ESIの機能性と、1つ又はそれ以上のAPCI並びに/あるいはAPPIの機能性とを組み合わせることによって達成される。第一イオン源又は機能性によってイオン化されない検体は、第二イオン源又は機能性によってイオン化される。
【0026】
図1及び2を参照して、マルチモードイオン源2は、第一イオン源3及び、第一イオン源3より下流の第二イオン源4を含む。第一イオン源3は、第二イオン源4と空間的に分離されていても又は一体化されていてもよい。また第一イオン源3を、第二イオン源4と連続配列とすることもできる。しかしながら、連続配列することは必須ではない。「連続」又は「連続配列」という用語は、連続的な配置でイオン源を利用することを指す。イオン源は順々に続く。これは、線形配置であっても又はそうでなくてもよい。第一イオン源3が第二イオン源4と連続配列である場合、イオンは第一イオン源3から第二イオン源4まで通過しなければならない。第二イオン源4は、マルチモードイオン源2の全て又は一部、移送システム6の全て又は一部、あるいは両方の全て又は一部を含むことがある。
【0027】
第一イオン源3は大気圧イオン源を含むことがあり、第二イオン源4も1つ又はそれ以上の大気圧イオン源を含むことがある。帯電した液滴及びイオンをエアロゾル形態で提供するために、第一イオン源3がエレクトロスプレーイオン源又は類似の形式の装置であることが本発明にとって重要である。加えて、エレクトロスプレー技術は、後に検出され、除されて、デコンボリュートされ、タンパク質のような巨大分子を特性化することができる複数の帯電種を提供することができるという長所を有する。第一イオン源3は、マルチモードイオン源2の中の多数の場所、方向又は配向に配置可能である。これらの図面は、第一イオン源3が(キャピラリーとして示す)導管37に対して直交配置されていることを示す。直交とは、第一イオン源3が導管37の導管長軸9に対して垂直である「分子長軸」7を有することを意味する(明確化のために図2を参照)。「分子長軸」という用語は、スプレーの方向に最も大きなイオン濃度を有する領域を介して描くことが可能な理論上の軸又は線を意味する。上記の用語は、導管の軸に対する「分子長軸」の関係のために採用されている。ある場合においては、イオン源又はエレクトロスプレーネブライザーの長軸は、導管の長軸からずれることがある(理論上の軸は直交するが、3次元空間では整列しない)。「分子長軸」という用語の使用は、本発明の広い範囲内のこれらのずれた、オフセットした実施形態を含むように採用されている。また、この用語は、(図面に示すように)イオン源及び/又はネブライザーの長軸が導管長軸9に対して実質的に直交する状態(2次元空間)を含むように画定される。加えて、図面は実質的に直交する配置(分子長軸が導管の長軸に対して本質的に直交する)の本発明を示すが、これは必須ではない。分子長軸と導管の長軸との間に様々な角度(鈍角及び鋭角)が画定される。
【0028】
図2は、本発明の第一の実施形態の断面図を示す。この図面は、マルチモードイオン源2のさらなる詳細を示す。マルチモードイオン源2は、第一イオン源3、第二イオン源4、導管37を含み、これらは全て単独の発生源ハウジング10に囲まれている。この図面は、第一イオン源3が発生源ハウジング10の中の第二イオン源4としっかりと連結し、かつ一体化していることを示す。この図面には発生源ハウジング10を示しているが、これは本発明の必須要素ではない。これらのイオン源を別個のハウジング内に置くことも、イオン源が発生源ハウジング10と共に決して利用されない配置で使用されてもよいことも予想される。発生源は、通常、大気圧(約1013hPa(760 Torr))で動作されるが、約27hPa〜約2666hPa(約20〜約2000 Torr)までの圧力で代替的に維持可能であることに注意しなければならない。発生源ハウジング10は、ガスを除去するための排出ポート12を有する。
【0029】
第一イオン源3(図2でエレクトロスプレーイオン源として示す)は、ネブライザー8と乾燥装置23を含む。ネブライザー8のそれぞれの構成要素を、発生源ハウジング10と分離することも、又は(図2〜図5に示すように)一体化することもできる。ネブライザー8が発生源ハウジング10と一体化している場合、ネブライザー8を発生源ハウジング10に取り付けるめにネブライザーカップリング40を使用することができる。
【0030】
ネブライザー8は、ネブライザー導管19、ネブライザー入口42を有するネブライザーキャップ17、ネブライザー先端20を含む。ネブライザー導管19は、ネブライザーキャップ17からネブライザー先端20まで延びる長軸内腔28を有する(図面は、ネブライザー導管19が整列した内腔により2つに分離される分割設計の導管を示す)。長軸内腔28は、イオン化領域15に排出される帯電された帯電エアロゾルを形成するためにサンプル21をネブライザー先端20に移送するように設計されている。ネブライザー8は、イオン化領域15に排出される帯電エアロゾルを形成するようにオリフィス24を有する。乾燥装置23は、ネブライザー先端20から発生及び排出された帯電エアロゾルにスイープガスをもたらす。スイープガスは加熱され、イオン化領域15に直接又は間接的に適用される。スイープガス導管25は、イオン化領域15にスイープガスを直接もたらすために利用される。スイープガス導管25を、(図2に示すように)発生源ハウジング10に取り付けることも、又は一体化することもできる。スイープガス導管25が発生源ハウジング10に取り付けられている場合、スイープガスをスイープガス源23からスイープガス導管25に向けて導くために別個の発生源ハウジング内腔29が使用される。スイープガス導管25は、ネブライザー先端20からエアロゾルが発生される際にスイープガスをエアロゾルに供給するように、ネブライザー導管19の一部を含むことも、又はネブライザー導管19を部分的もしくは全体的に取り囲んでいてもよい。
【0031】
ESI液を帯電させるためにネブライザー先端20で電場を確立することが重要であることに留意すべきである。ネブライザー先端20は、高電界強度を作り出すように十分小さくなければならならい。ネブライザー先端20は、典型的には直径100〜300ミクロン(μm)である。第二イオン源4がAPCIイオン源である場合、コロナ針14における電圧は500〜6000 Vの間であり、典型的には4000 Vである。通常、光子源はネブライザー先端20の電場に影響しないため、この場はAPPIにとって重要ではない。マルチモードイオン源2の第二イオン源4がAPCI源である場合、最初のESIプロセスと相互作用しないようにするために、ネブライザーにおける場をコロナ針14に印加される電圧と絶縁する必要がある。(図2に示すように)上記の実施形態では、接地されたネブライザーが使用される。この設計は、使用者にとってより安全であり、低電流、低コスト電源を利用する(電源を示さず、説明しない)。
【0032】
第二イオン源4がAPCIイオン源である一実施形態において、第一イオン源3に隣接して、随意的な第一電極30と第二電極33が使用される(図2を参照。ここで説明する電極に関するさらなる情報については、「Apparatus for Delivering Ions from a Grounded Electrospray Assembly to a Vacuum Chamber」という名称の、出願番号第09/579,276号を参照)。ネブライザー先端20と第一電極30の間の電位差は、先端で帯電エアロゾルを発生する電場を生成する一方、第二電極33と導管37の間の電位差は、導管37に向けてイオンを導く又は案内するための電場を生成する。また、イオンはガス流を利用して導管に導かれる。
【0033】
コロナ放電はコロナ針14における高電場により発生され、この電場は主にコロナ針14と導管37の間の電位差によって発生されるが、これは第二電極33の電位により多少影響される。限定ではなく例示として、様々な電極における電位の典型的な組み合わせを、ネブライザー先端20(接地);第一電極30(-1kV);第二電極33(接地);コロナ針14(+3kV);導管37(-4kV)とすることができる。これらの電位の例は、正イオンの場合に対するものであり、負イオンに対しては、電位の符号が逆となる。第一電極30と第二電極33の間の電場は、正に帯電したイオンと液滴を減速させるため、スイープガスを利用して、それらを場に逆らって押し、前進させ、第二電極33を確実に通って進むようにする。
【0034】
電場は電位差により引き起こされるため、電極での絶対電位の選択は、適切な電位差が維持される限り実質的に任意である。例として、可能な電位の組み合わせを、ネブライザー先端20(+4kV);第一電極30(+3kV);第二電極33(+4kV);コロナ針14(+7kV);導管37(接地)とすることができる。任意ではあるが、電位の選択は、通常、利便性や機器設計の実用性によって決定される。
【0035】
第二イオン源4に対するAPPIの使用は、イオン化プロセスで役立つ電場を必要としないため、APCIの使用とは異なる状況である。図4は、APPIを使用する本発明の実施形態の断面図を示し、これについては下記で詳細に説明する。図5は第一電極30と第二電極33の適用を示し、随意的に、これらをAPPI源と共に使用する必要はない。
【0036】
標準的なエレクトロスプレーイオン源の場合、ネブライザー先端20と導管37の間の電場は、エレクトロスプレーを生成することと、導管37へイオンを動かすことの両方の役割がある。例えば1kV又はそれ以上の正電位を、接地電位付近又は接地電位に維持されている導管37を備えているネブライザー先端20に適用することが可能であり、あるいは例えば1kV又はそれ以上の負電位を、接地電位付近又は接地電位に維持されているネブライザー先端20を備えている導管37に適用することが可能である(負イオンに対しては、極性が逆となる)。いずれの場合も、紫外線(UV)ランプ32は、導管37とネブライザー先端20から十分な距離であれば、電場にほとんど影響を及ぼさない。代替的には、導管37の電位値とネブライザー先端20の電位値の間の、適切な電位値の別の電極又はケーシングによって、このランプを覆うことが可能である。
【0037】
乾燥装置23は、ネブライザー8に隣接して位置し、第一イオン源3によって発生される帯電エアロゾルを乾燥するように設計されている。帯電エアロゾルを乾燥するための乾燥装置23は、赤外線(IR)ランプ又は放射体、被加熱面、ターボスプレー装置、マイクロ波ランプ及び加熱ガス導管からなる群より選択される。ESIエアロゾルの乾燥は重要なステップであることに留意すべきである。エアロゾルが十分に乾燥されず、非イオン化検体を作用されると、APCI又はAPPIプロセスが効果的でなくなる。乾燥は、エレクトロスプレーによって生成されたイオンの損失を避けるような方法で行わなければならない。イオンは、表面に放出することによって、又は有用なイオンサンプリング量の中からイオンが流れ出ることによって損失する。溶液の乾燥は、両方の問題に対応しなければならない。帯電エアロゾル及びイオンを乾燥及び閉じ込めるための実用的手段には、高温不活性ガスの使用がある。イオンを制御することに対して、大気圧において、電場はほんのわずかしか効果がない。不活性ガスは、電荷を散逸させず、加熱源となり得る。密閉空間でイオンと帯電滴を保持することが可能な力ベクトルを有するようにガスを供給することも可能である。これは、エアロゾルに対して平行かつ同心のガス流を使用すること、又はエアロゾルに対して垂直にガスを流すことによって達成される。乾燥装置23は、ネブライザー先端20から発生されるエアロゾルにスイープガスを提供する。一実施形態においては、乾燥装置23は被加熱ガスを提供するガス源又は他の装置を含むことがある。ガス源は当該技術分野では既知であり、他の部分で説明する。乾燥装置23を、発生源ハウジング10と別個の構成要素とすることも、又は一体化することもできる。乾燥装置23は、スイープガス導管25を利用して多数のガスを供給することができる。例えば、窒素、アルゴン、キセノン、二酸化炭素、空気、ヘリウム等のようなガスを本発明と共に使用することができる。ガスは不活性である必要はなく、十分な量のエネルギー又は熱を輸送することができなければならない。これらの特有の性質を含む当該技術分野で既知の他のガスも、本発明と共に使用することができる。他の実施形態においては、スイープガス及び乾燥ガスは、異なる又は別個の導入点を有する。例えば、スイープガスを同じ導管(図2及び4に示すように)又は異なる導管(図3及び5に示すように)を利用して導入し、その後、別個の噴霧ガスをスイープガスの導入点よりさらに下流のシステムに添加し得る。ガスの成分及び温度を維持又は変える融通性を増すために、代替的なガス導入点(導管、ポート等)を設けることができる。しかしながら、上記のように、乾燥ガスはエアロゾルを乾燥させるために使用される唯一の又は主要な手段ではない。エアロゾルを乾燥させるための赤外線放射体を使用する実施形態は、下記で検討する図6及び図7に示す。
【0038】
第二イオン源4は、APCI又はAPPIイオン源を含む。図2は、APCI配列の場合の第二イオン源4を示す。実施形態例として(限定ではなく)、第二イオン源4は、その後、コロナ針14、コロナ針ホルダー22、コロナ針被覆27を含む。コロナ針14は、第一イオン源3より下流の発生源ハウジング10に配置される。コロナ針14の高電位による電場は、APCIプロセスによって、第一イオン源3から流れる蒸気流中の検体のさらなるイオン化を生じるコロナ放電を引き起こす。正イオンに対しては正のコロナが使用され、ここでは電場がコロナ針から周囲に向けられている。負イオンに対しては負のコロナが使用され、電場はコロナ針14に向かって方向付けられる。検体イオンの混合物である蒸気とエアロゾルは、第一イオン源3からイオン化領域15の中に流れ、ここではAPCI又はAPPIプロセスによってさらにイオン化される。上記の乾燥又はスイープガスは、第一イオン源3からイオン化領域15へ混合物を移送するための手段を含む。
【0039】
図3は、図2と類似の実施形態を示すが、図3の実施形態では、スイープガス、噴霧ガス及び乾燥ガスの様々な導入点に対する設計を含む。これらのガスを組み合わせて、帯電エアロゾルが乾燥される。上記のように、噴霧ガス及びスイープガスは、説明したように導入される。しかしながら、この設計においては、乾燥ガスポート(単数又は複数)45及び46を利用して、乾燥ガスを1つ又はそれ以上の乾燥ガス源44に導入することができる。図面は、乾燥ガス源44、乾燥ガスポート(単数又は複数)45及び46を示し、これは、第二電極33の一部を含む。これは必要条件ではなく、これらの構成要素を、発生源ハウジング10に別々に、又はその一部として組み込むことができる。
【0040】
図4は、図2と類似の実施形態を示すが、これは異なる第二イオン源4を含む。加えて、この実施形態では、随意的な第一電極30及び第二電極33は使用されない。第二イオン源4はAPPIイオン源を含む。紫外線ランプ32は、第一イオン源3と導管37の間に置かれている。紫外線ランプ32は、分子をイオン化することが可能な当該技術分野で既知の任意の数のランプを含む。多数のUVランプ及びAPPI源が既知であり、当該技術分野で使用され、本発明と共に利用される。第二イオン源4を、第一イオン源3より下流の多数の場所に配置することができ、本発明の広い範囲は、図面で示し、説明する実施形態に限定され、又はそれに主眼を置くと解釈されるべきではない。他の構成要素及び部品を、上記のAPCIの実施形態で説明したものと類似とすることができる。明確化のため上記の説明を参照されたい。
【0041】
移送システム6(一般的に図1に示す)は、導管37、あるいはイオンをある位置又はチャンバーから別の位置又はチャンバーへ受容し移動させるための任意の数のキャピラリー、導管又は装置を含む。図2〜図5は、単独の導管37を含む場合の移送システム6をより詳細に示す。導管37は、コロナ針14又はUVランプ32に隣接する発生源ハウジング10に配置され、エレクトロスプレーエアロゾルからのイオンを受容するように設計されている。導管37は、イオン源3より下流に位置し、当該技術分野で既知の様々な材料及び設計を含む。導管37は、イオン化領域15に放出されるイオン源3及びイオン源4から発生された検体イオンを受容し、収集するように設計されている(図1には示さない)。導管37は、検体イオンを受容し、それらを別の場所へ移送するオリフィス38を有する。導管37を支持するために、当該技術分野で既知の他の構造及び装置を利用することができる。ガス導管5は、イオン化領域15内のイオンに向けて乾燥ガスをもたらす。乾燥ガスはイオン化領域15内の検体イオンと相互作用して、イオン源2及び/又はイオン源3からもたらされる溶媒和エアロゾルから溶媒を除去する。導管37は、当該技術分野で既知の様々な材料及び装置を含む。例えば、導管37は、スリーブ、移送装置、ディスペンサー、キャピラリー、ノズル、ホース、パイプ、ピペット、ポート、コネクター、チューブ、オリフィス、壁のオリフィス、カップリング、容器、ハウジング、構造又は装置を含む。ある例において、導管はイオンを受容するためのオリフィス38を単に含む。図2〜図5において、導管37を、キャピラリーがガス導管5に配置され、本発明の別個の構成要素である具体的な実施形態において示す。「導管」という用語は広く解釈され、図面に示す実施形態の範囲により限定されるものと解釈されるべきではない。「導管」という用語は、イオンを受容するために利用される任意のスリーブ、キャピラリー、移送装置、ディスペンサー、ノズル、ホース、パイプ、プレート、ピペット、ポート、コネクター、チューブ、オリフィス、カップリング、容器、ハウジング、構造又は装置を指す。
【0042】
検出器11は、第二イオン源4より下流に配置されいている(検出器11は図1にのみ示す)。検出器11は、移送システム6により収集され移送される強化された検体イオンを検出するための、当該技術分野で既知の質量分析器又は他の類似の装置を含む。また検出器11は、当該技術分野で既知であり検体イオンを検出する際に役立つ任意のコンピューターハードウェア及びソフトウェアを含む。
【0043】
図5は、図4と類似の実施形態を示すが、さらに第一電極30及び第二電極33を含む。加えて、本発明のこの実施形態は、スイープガス、噴霧ガス、乾燥ガスの分離を含む。乾燥ガスポート45及び46を介して乾燥ガスを供給するために、図3に上記したように別個の乾燥ガス源44が使用される。
【0044】
本発明及び構成要素について多少詳しく説明してきたが、上記の実施形態の典型的な動作を順を追って説明する。マルチモードイオン化源2を利用してイオンを発生する方法は、エレクトロスプレーイオン化源のような第一の大気圧イオン化源によって帯電エアロゾルを発生し、第一の大気圧イオン化源によって発生された帯電エアロゾルを乾燥し、第二の大気圧イオン化源を利用して帯電エアロゾルをイオン化し、マルチモードイオン化源から発生されたイオンを検出することを含む。例示的な実施形態としての図2を参照すると、サンプル21は、長軸内腔28に通じるネブライザー入口42を利用して第一イオン源3にもたらされる。サンプル21は、当該技術分野で既知であり質量分析計と共に使用される任意の数の材料を含む。サンプル21は、大気圧イオン化源(すなわちESI、APPI又はAPPIイオン源)によってイオン化することが可能な任意のサンプルである。本明細書では開示しない他の発生源を利用することもでき、それらは当該技術分野で既知である。ネブライザー導管19は、サンプル21をネブライザー先端20に向けて運ぶために利用される長軸内腔28を有する。図2に示す乾燥装置23は、乾燥ガス流を使用するが、これはスイープガスをスイープガス導管25を介してイオン化サンプル中に導入する。スイープガス導管25は、ネブライザー導管19を包囲し又は取り囲み、スイープガスをネブライザー先端20に放出する。ネブライザー先端20から放出されたエアロゾルは、その後、第一電極30及び第二電極33により発生された電場に曝される。第二電極33は、帯電エアロゾルを導管37に向けて導く電場をもたらす。しかしながら、帯電エアロゾルが導管37に到達する前に、帯電エアロゾルは最初に第二イオン源4に曝される。図2に示す第二イオン源4は、APCIイオン源である。本発明は、第一イオン源3と第二イオン源4の同時適用に限定されると解釈されるべきではない。とはいえ、これは本発明の重要な特徴である。第二イオン源4ができるように、第一イオン源3が「オン」又は「オフ」になることもできるのは、本発明の範囲内である。すなわち、本発明は、唯一のESIイオン源を、APCI及びAPPIイオン源のいずれか又は両方と共に利用しても、利用しなくてもよいように設計されている。APCI又はAPPIイオン源は、ESIイオン源と共に利用しても又はしなくともよい。
【0045】
図4は、APPIイオン源4としての第二イオン源4を示す。第一イオン源3を利用して分子をイオン化した後、いずれか、両方又は複数のイオン源を使用することは、本発明の範囲内である。すなわち、第二イオン源は、当該技術分野で既知であり、まだ帯電されていない分子の一部をイオン化する又は第一イオン源3によって電荷を増加させる1つ、1つより多い、2つ、2つより多い又は多数のイオン源を含む。マルチモードイオナイザを動作するために多数の重要なステップがある。例えば、流出物は、ネブライザー先端の電界強度がおおよそ108V/cm又はそれ以上であるような高電場にあるネブライザーを出なければならない。これによって、液体分子の帯電が可能となる。その後、この液体は電場の存在下でネブライザーによって帯電エアロゾルへと変換される。この帯電エアロゾルは、帯電された又は帯電されていない分子を含む。ESI技術を利用して帯電されていない分子は、APCIイオン源又はAPPIイオン源によって場合により帯電されることがある。スプレー針は、液体流速が高い状態での動作を可能にするために、(空気のような)噴霧支援を利用することがある。上記のように、その後、帯電エアロゾルは乾燥される。エアロゾル、イオン及び蒸気の組み合わせは、さらに、コロナ放電又は真空紫外線照射のいずれかに曝される。これは、結果として二次イオン形成メカニズムを生じる。最後に、ESIプロセスと第二イオン源の両方からのイオンを導管37内に導くように、発生源において電圧勾配を維持することが重要である。このイオンは、その後、移送システム6を介して検出器11に進む(概して移送システム6は図2〜図5に示さない)。
【0046】
図6は、図2に類似の実施形態であり、ここでは赤外線放射体として乾燥装置を使用している。示すように、内側チャンバー50は、ESI源から帯電エアロゾルを受容するためにネブライザー先端20に隣接して配置されいている開口52を有する。内側チャンバーは、エアロゾルの分子軸の方向で、幾分かの距離、縦に延伸していることにより、エアロゾルが下流に流れる際にエアロゾルを取り囲む。
【0047】
内側チャンバー50は、赤外線放射体55に対する囲い又は筐体を構成し、受容するエアロゾルを十分に乾燥し、赤外線放射体55により発生された熱を取り囲まれた空間内に閉じ込めるのに適した任意の便利な形状、寸法及び材料からなる。適した材料として、ステンレス鋼、モリブデン、チタニウム、シリコンカーバイド又は他の高温金属を挙げることができる。
【0048】
内側チャンバー50は、第二の大気イオン化源にエアロゾルを曝すための開口56を含む。ESI/APCIマルチモード源を示す図6において、開口56は、コロナ針14が内側チャンバー50の内側に延伸することを可能とする。開口56はコロナ針に対して十分な隙間ができるように寸法決めされているが、相当のガスや熱が逃げるのを防止するのに十分なほど小さい。開口56を介して延伸するコロナ針を有することによって、検体の第二のイオン化が内側チャンバー内で起こる。
【0049】
また内側チャンバー50は、排出ポート12に通じる出口58及び、導管37を備えているインターフェイス59を含む。導管開口へのインターフェイス59をオリフィスとすることができ、又は示すように、内側チャンバーを導管37と密閉するように結合することができる。エアロゾルが加熱され、検体イオンが溶媒分子から脱溶媒される際、検体イオンは電場を介して導管37に向かって引き寄せられ、溶媒分子は排出ポート12に向かってエアロゾルのスイープによって推進される。図解する実施形態において、随意的な第一電極30及び第二電極33を示さないが、これらは内側チャンバーを介して導管に向かって検体イオンを案内するのを助けるために赤外線放射体よりも上方の領域に含まれ、配置されている。加えて、内側チャンバーを接地することができ、又は検体イオンの極性に応じて、電場形成を目的として正の電圧もしくは負の電圧に維持することもできる。
【0050】
赤外線放射体55は、内側チャンバー50と連結し、電気的に励起した場合に赤外線照射を発生する1つ又はそれ以上の赤外線ランプを含む。赤外線ランプを、様々な構成とすることができ、エアロゾルに適用された熱量を最大にする様々な方法で、内側チャンバー50内に配置することができる。例えば、赤外線放射体は、内側チャンバー50の長軸長にわたって照射の均等な分布を達成するために、内側チャンバー50の両側又は両端に位置し、その長さに沿って縦に延伸する「平坦な」ランプを利用して構成される(図6は単独のコイルを示すが、このコイルは一対のランプの1つとして考えられ、示されている一方は、ページに埋め込まれている内側チャンバーの「背面」に位置し、示されていないもう一方は、ページの前方にある)。この文脈で利用可能なランプの例として、図8Aは、http://www.noblelight.netでHeraeus社のウェブサイト上で示されているHeraeus Noblelight GmbH社によって製造された平坦な短波ランプを示す。代替的には、エアロゾルの放射対称照射を促進するように内側チャンバーを介してエアロゾルが流れるため、赤外線放射体はエアロゾルの一部を取り囲むように同心円状に配置されている。図8Bは、中心の管状領域の周りに巻かれ、同心円配置で使用可能な赤外線ランプの一例を示す。この配置の例は、Heraeus Noblelight社のウェブサイト上に示されていることもわかる。
【0051】
赤外線放射体55が、エアロゾルで利用された溶媒の吸収バンドと一致する波長範囲でピーク照射強度を放射することが有用である。多数の溶媒に対して、この吸収バンドは2〜6ミクロン(μm)の範囲内にある。このような波長で赤外線照射を放出するために、900 ℃で又はおおよそ900 ℃の温度でランプを動作することができる。例えば、水の放射線吸収バンド(おおよそ2.6〜3.9ミクロン(μm))は、2.7ミクロン(μm)の範囲にピークを有するため、水が溶媒である場合、加熱効率を最大化する波長で又はその波長付近の波長で照射することが有利である。アルコール及び他の有機溶媒のような他の溶媒はより長い波長に吸収ピークを有するため、このような溶媒を使用する場合、ピーク赤外線放射をより長い波長に調整することがより有効である。しかしながら、赤外線放射体55によって放出された放射の一部は、通常、この「ピーク」バンドの外側にあり、より短い波長及びより長い波長の両方を含むことを理解されたい。
【0052】
また、ランプからの赤外線放射強度は、閉ループ方式で制御され、内側チャンバー内の温度を検体イオンから溶媒分子を脱溶媒するのに適切な範囲に維持する。溶媒が水である場合、内側チャンバー内の温度は、典型的には約120 ℃〜160 ℃の範囲に維持される。
【0053】
内側チャンバーの内面は、ランプによって放出された放射に曝されるが、研磨されたステンレス鋼のような反射性材料により内側チャンバーを形成することによって、又は内面に反射性の被覆を設けることによって、赤外線放射に対して反射性となる。内側チャンバーの表面によって、別の方法では吸収される照射がチャンバー内で反射されるため、反射表面は加熱効率を改善するが、このような放射はエアロゾルの加熱及び乾燥に寄与する。
【0054】
図7は、図6と類似の実施形態を示し、第二イオン源4は、APCI源ではなく、APPIイオン源である。示すように、紫外線ランプ32は、第一イオン源3と導管37の間に置かれ、内側チャンバー50と隣接して配置されている。UV透過窓57は、紫外線ランプ32に面する内側チャンバー壁の一部内に埋め込まれており、紫外線ランプ32によって放射された紫外線放射に内側チャンバー内のエアロゾルが曝される。透過窓57を、スクリーン又はオリフィス、あるいは内側チャンバー内のエアロゾルに十分な量の紫外線照射をもたらすための他の任意の手段とすることができる。さらに、紫外線放射により、エアロゾル内の分子をイオン化し、重要なことは、ESI源により不十分にイオン化された検体種をさらにイオン化することができることである。
【0055】
図9は、APCI源のコロナ針がコロナ針シールド装置65(以後「シールド」と称する)により実質的に取り囲まれている本発明によるESI/APCIマルチモード源を示す。しかしながら、「シールド」という用語は広く解釈されるべきであり、以下に説明される図面に示す実施形態の範囲に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0056】
描写する実施形態において、コロナ針14はエアロゾルの分子軸に対して直交して方向付けられ、導管オリフィス38とは反対側であるが、上記のように、この配向を直交以外の方向とすることができる。断面に示すように、シールド65は、コロナ針14の長さ程度のイオン化領域内に延伸する円筒を形成し、オリフィス68を備えている末端表面67を有する。コロナ針先端16は、オリフィス68の前のコロナ針シールド65のちょうど内側で終端する。オリフィス67の直径は、コロナ先端16における電場が、コロナ針14と導管37の間の電圧差によるよりも、コロナ針14とシールド65の間の電圧差による方が、極めてより強く影響されるように寸法決めされており、コロナ針を外部電場から絶縁することを可能にする。これは、コロナ放電電流が導管37で印加される電圧と比較的無関係であるという利点を有する。さらに、シールド65は、ESI源からのイオン化エアロゾルの下流の流れにより引き起こされる、又はESI源からのイオン化エアロゾルの「風」からコロナ針を物理的に分離するが、さもなければコロナ放電の不安定さを引き起こし、一貫性のない結果をもたらすことになる。
【0057】
採用する典型的な電圧差(例えばコロナ針とシールドの間に約3000〜4000 V)でコロナ放電を発生するのに必要な電場を生成するために、シールドのオリフィス68の直径を、先端と末端表面67の間に2.5ミリメートル(mm)の半径の間隙が生じるように、約5ミリメートル(mm)とすることができる。シールド65は、安定したコロナ放電を維持するために、必要に応じて接地又は浮動動作される。しかしながら、これらの設計パラメータは、適用される電圧、使用される雰囲気ガス、当業者に容易に理解される他の因子にしたがって調整される。
【0058】
乾燥装置は図9に示していないが、赤外線放射体を含む上記の乾燥装置のいずれかを、描写する実施形態と共に使用することができるということにも留意すべきである。
【0059】
図10は、質量分析器(図示せず)に通じる導管オリフィス38に向かってイオンを案内する際に役立つように、補助電極70がAPCI源コロナ針14に隣接して配置されている本発明によるESI/APCIマルチモード源の一例を示す。APCI源をESI源と同時に使用すると、コロナ針14の電圧は、下流に流れる正イオンを導管オリフィス38から押し返すのに十分(正イオンモードで)高くなる。予備電極70は、コロナ針とは反対の極性で、類似する大きさの電圧に維持される。また、予備電極に印加された電圧は、イオンが予備電極から導管オリフィスに向かって案内されるように、導管に対して相殺される。例示に示すように、予備電極は導管37の延長部として構成され、示すようにその末端がコロナ針先端に隣接するように曲げられていてもよい。予備電極の末端をコロナ針に隣接して位置づけることにより、この領域におけるイオンに対する電場強度及び力が非常に強くなる結果、電界の向きの線がこの領域で縮む。その結果、コロナ針の領域における正イオンは、反発力が打ち勝つこの場により十分に強く影響され、導管オリフィスに向かって電場により案内される。
【実施例】
【0060】
図11Aは、ESI/APCIマルチモード源を利用して、ESI源のみを動作させた場合に得られるクリスタルバイオレット及びビタミンD3を含有する検体サンプルの例示的なスペクトルを示す。認識されるように、クリスタルバイオレットに関連するイオン(372.2及び358.2)のみが観察される。APCI源のみを動作させた場合に同じサンプルから得られる例示的なスペクトルを示す図11Bにおいて、ビタミンD3に関連するイオン(397.3及び379.3)のみが観察される。図11Cは、ESI源とAPCI源の両方を同時に動作させた場合に同じサンプルから得られた例示的なスペクトルを示す。
【0061】
この場合、クリスタルバイオレットイオン(372.2、358.2)及びビタミンD3イオン(397.3、379.3)が観察され、これは異なる化学種をイオン化する際に2つの異なるイオン化モードの同時動作を利用することの効果を示す。
【0062】
図12A〜図12Cは、ESIのみ(MM-ESI)、APCIのみ(MM-APCI)、マルチモードESI+APCI(MM-混合)イオン源として動作されたマルチモード源に関する。
【0063】
図12Aは、ESIのみのモードの例示的なスペクトルを示す。インドールの弱い信号と共にインスリンの強い信号が見られる。ESI源のみでは、インドールに対する応答が見られない(図示せず)。
【0064】
図12Bは、MM-APCIのみのモードを示す。この図は、インドールの強い信号及び存在しないインスリンの信号を示す。
【0065】
図12Cは、MM-混合のみのモードを示す。この図は、ESIのみ及びAPCIのみのモードの動作と比較して信号強度が小幅に30 %減少したインスリン及びインドールの強い応答を示す。
【0066】
[複合検体例]
サンプル調製
高い処理量での作業及びステロイドの分析のための化合物を、Sigma-Aldrich(St. Louis, Mo)から最も高純度のものを購入した。サンプルをメタノール又はジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、メタノールで100 ng/μLの濃度まで希釈した。環境分析のための化合物は、AccuStandard(New Haven, CT)から標準として入手し、80:20 水/メタノール中で1%酢酸により所望の濃度に希釈した。
機器及び作業
アジレントケミステーションランニングバージョンB.01ソフトウェアを介して制御されるバイナリポンプ(binary pump)、アイソクラティックポンプ(isocratic pump)、ウェルプレートオートサンプラー(well plate autosmpler)、10ポート弁を備えている温度自動調整カラムコンパートメント、ダイオードアレイ検出器を有するアジレントテクノロジー製の1100 LC/MSD四重極システムを使用した。
高処理量分析
LC条件:カラム:2つの4.6×15mmゾルバックス(Zorbax)SB-C18 RR-HT、1.8μ 40℃、バイナリポンプ移動相:A=0.2%酢酸/水、B=0.2%酢酸/メタノール、1.5mL/分、バイナリポンプの変化度:0.01分で15% B、1.00分で100 % B、1.01分で15% B、1.50分で動作停止、アイソクラティックポンプ移動相:0.2%酢酸含有15%メタノール/85%水、1.5mL/分、注入量:0.1〜1.0 μL、DAD:250 nm、バンド幅10 nm、リファレンスオフ(reference off)。
【0067】
MSD条件:発生源は、APCIのみ、ESIのみ、マルチモード源を含む。動作モード:正、負、正/負切り替え。スキャンモード:100〜1100 m/z、APCIコロナ電流:4μA正又は負、乾燥ガス:5L/分、350 ℃、気化器温度:200 ℃(マルチモード)350 ℃(APCI)、キャピラリー電圧:+/-1500 V、フラグメンター(fragmentor):120 V、EMケ゛イン(EM gain):サンプル量に応じて0.1〜3.0。
同時ESI+APCI動作
同時ESI+APCI動作を行った。最初に1モードのみ(正ESI、負ESI、正APCI、負APCI)でイオン化するため、それぞれの成分を判定した。混合モード動作によりESI及びAPCIイオンを同時に発生した。2.1×30 mm Zorbax SB-C18、3.5μ、0.2%酢酸含有65:35メタノール/水、0.4mL/分、交互の正及び負SIMモード。結果は、1回の注入で4成分に対して実施する能力を示した。図13を参照。
感度試験
また感度試験を図14A〜図14Cに示すようなレセルピンを利用して行った。レセルピン注入、2.1×30 mm SB-C18、3.5μ、5mMギ酸アンモニウム含有75:25メタノール水、0.4mL/分、正モードSIM@609.3m/z。マルチモード源の感度は、典型的にはピコグラム(pg)程度であると判定された(図14A〜図14Cを参照)。感度は、一般的に単独イオン化モードでESI源のみ又はAPCI源のみと等しく、混合モードで5倍の係数内であると判定された。図14を参照。
熱不安定化合物-タキソール
タキソールのような熱不安定化合物に関しても試験を行った。試験は、100〜1000 m/zからスキャンする正モードを利用して行った。150 ℃に設定された気化器温度で、タキソールはわずかに熱分解され[M+H]+イオンのみが形成された。より高温ほど熱断片化(熱フラグメント化)を生じやすいことが示された。図15を参照。
IR加熱ブーストAPCI応答
IR加熱試験はAPCI応答により行った。100 ngジフェンヒドラミン正APCIモードを利用して、反復注入を行った。2.1×30 mm Zorbax SB-C18、3.5μ、50:50の水:ACN、0.4mL/分、SIM@167.1、256.2m/z。最適な動作のために、APCI用スプレーはESI用スプレーよりも乾燥している必要のあることが判明した。IR放射体は、HPLC廃液及び検体を完全に気化するためのさらなる乾燥性能をもたらし、APCIにおける最適な応答を生じさせた。図16を参照。
環境分析
環境分析研究も、様々な専用源を利用して行った。化合物は1成分につき5ngを含み、正/負混合モード分析、2.1×150 mm Zorbax XDB-C18、3.5μ、0.3mL/分、1mM酢酸アンモニウム含有の水:メタノール(3〜90 %メタノール)、スキャンモード130〜330 m/z、サンプルは1%酢酸含有80:20の水:メタノールに溶解、5μLの1注入。試験は、様々な種類の除草剤及び殺虫剤に関して行った。結果は、ビピリジリウム、除草剤、カルバメート、フェニル尿素系除草剤、トリアジン、フェノール、クロロフェノキシ酸系除草剤を含む試験化合物全てに対して応答を示した。図17を参照。
非誘導体化ステロイド分析
非誘導体化ステロイドを使用して試験を行った。正/負混合モードで1成分につき約100 ngを使用した、2.1×30 mm Zorbax SB-C18、3.5μ、0.4mL/分、0.2%酢酸含有の水:メタノール(10〜100 %メタノール)、スキャンモード165〜600 m/z、1μL注入。結果は、全てのステロイドと量が検出可能であることを示した。加えて、テストステロン及びプロゲステロンが高応答で検出された。図18を参照。
高処理量化合物検出
高処理量化合物検出のための試験を行った。様々な化合物及び官能基を試験した。結果は、単独の専用源はできないが、混合モードのマルチモード源では全ての化合物を検出することができたことを示した。結果は、より大きなスクリーン及び試験サンプルを利用しても成功した。図19を参照。
高処理量分析時間
高処理量分析時間を行い、評価した。サンプルの処理量は、カラム再生(28%改善)、最小化されたディレイ量を伴う重複注入(29%改善)、混合モードESI+APCI動作(50 %改善)を次々に行うことによって改善された。96サンプルを、3時間未満でESI+APCIモードにおいて、正/負切り替えで分析した。
【0068】
ステロイド及びその誘導体、内因性及び生体異物のどちらも、非常に様々な化学置換基を有する。多くのステロイドは、医療目的(創傷、リハビリテーション、抗炎症)で投与されるが、(スポーツにおけるアナボリックステロイドや成績向上薬として)悪用されることもあり、多くは環境中に辿り着く。それらは途中で生物学的又は化学的に修飾され、さらに他のステロイド変異体を生成する。MS技術を利用して非常に様々な生物学的、化学的又は環境マトリクスにおけるステロイド及びその誘導体を検出することはやりがいのある課題である。これは、従来のイオン源を利用してステロイドが十分にイオン化されない場合に特に問題があり、首尾よく検出するために検体を官能化する化学的誘導体化が使用されることが多い。
【0069】
様々なステロイド及び誘導体に関して試験を行った。単独四重極システムとマルチモードイオン源とを比較試験した。マルチモード源は、正/負同時ESI及びAPCIイオン化が可能であった。様々なケトン、ヒドロキシル基、フッ化物、フェノール性の、サルフェート及びカルボン酸官能基を含有する試験混合物を使用して有意な応答が得られた。応答は図に示され、存在する10個のステロイド全てに対してスキャンモードで得られた。発生源パラメータを作動中にプログラムで変更し、それまでに溶出したステロイドに対する応答を最適化した。典型的な検出限界は、SIMモードで中程度のピコグラム(pg)から低ピコグラム(pg)の範囲であった。図20を参照。
【0070】
タキソールは、イチイ樹皮由来の天然物である。この天然物は、抗癌特性があるため非常に興味深い。熱に対して敏感であり及び容易にイオン化できないことのためにこれをイオン化することに挑戦することは興味深い。IRランプを備えているマルチモード源を利用して、様々なモードを試験した。MM-APCIモードで観察される信号はあるが、MM-ESI及びMM-混合モードの両方では、ナトリウム例証や熱フラグメントのほとんどない、[M+H]+の強い信号があることがわかる。図15A〜図15Cは、モードの比較及び様々な得られたスペクトルを示す。
【0071】
レセルピンに関する感度試験も行った。レセルピンは通常、機器感度に対する迅速な標準、クイックベンチマークとして利用される。図14A〜図14Cは、MM-APCIのみ、MM-ESIのみ、MM-混合モードで動作された組み合わせ発生源に対する試験結果を示す。カラムにレセルピンを5回注入し、ピーク信号に対するピークとノイズ(雑音)の比をそれぞれのピークに対して算出し、平均化した。APCIのみモードの動作では、5ピコグラム(pg)のレセルピンでノイズ(雑音)に対するシグナル(信号)は25であった。ESIのみモードでは、2ピコグラム(pg)のレセルピンでノイズに対する信号は33であった。ESI+APCIモードの動作では、2ピコグラム(pg)のレセルピンでノイズに対する信号は28であった。このデータは、APCIモードの動作では、ESI及びESI+APCIモードの動作よりも2.5倍感度が低いことを示す。ここで示したデータは、ESI源のみに対して予想されたよりも2倍低い感度であった。
【0072】
本発明をその具体的な実施形態と併せて説明してきたが、上述の説明及び先の実施例も例示であり、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。本発明の範囲内の、他の態様、利点及び変形は、本発明に関連する当業者には明らかである。
【0073】
本明細書で述べた下記及び上記の全ての特許、特許出願及び出版物は、参照することによりその内容全体を本明細書に取り入れることとする。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】質量分析システムの一般的な構成図を示す。
【図2】本発明の第一の実施形態の拡大断面図を示す。
【図3】本発明の第二の実施形態の拡大断面図を示す。
【図4】本発明の第三の実施形態の拡大断面図を示す。
【図5】本発明の第四の実施形態の拡大断面図を示す。
【図6】本発明の第五の実施形態の拡大断面図を示す。
【図7】本発明の第六の実施形態の拡大断面図を示す。
【図8】図8A及び8Bは、本発明の文脈で利用され得る赤外線放射体ランプの例を示す。
【図9】本発明の第七の実施形態の拡大断面図を示す。
【図10】本発明の第八の実施形態の拡大断面図を示す。
【図11】図11Aは、ESI/APCIマルチモード源を利用して、ESI源のみを動作して得られたスペクトル例を示す。図11Bは、ESI/APCIマルチモード源を利用して、APCI源のみを動作して得られたスペクトル例を示す。図11Cは、ESI/APCIマルチモード源を利用して、ESI源及びAPCI源の両方を動作して得られたスペクトル例を示す。
【図12】図12Aは、ESI/APCIマルチモード源を利用して、ESI源のみを動作して得られたスペクトル例を示す。図12Bは、ESI/APCIマルチモード源を利用して、APCI源のみを動作して得られたスペクトル例を示す。図12は、ESI/APCIマルチモード源を利用して、ESI源及びAPCI源の両方を動作して得られたスペクトル例を示す。
【図13】図13Aは、負イオンモード動作における同時ESI+APCI動作を示すスペクトルの一例を示す。図13Bは、正イオンモード動作における同時ESI+APCI動作を示すスペクトルの一例を示す。
【図14】図14Aは、ESI/APCIマルチモード源を利用して、APCI源のみを動作してマルチモード感度を試験するスペクトルの一例を示す。図14Bは、ESI/APCIマルチモード源を利用して、ESI源のみを動作してマルチモード感度を試験するスペクトルの一例を示す。図14Cは、ESI/APCIマルチモード源を利用して、混合源を動作してマルチモード感度を試験するスペクトルの一例を示す。
【図15】図15Aは、熱不安定なタキソール化合物に関して、APCI源のみを動作してESI/APCIマルチモード源を試験するスペクトルの一例を示す。図15Bは、熱不安定なタキソール化合物に関して、ESI源のみを動作してESI/APCIマルチモード源を試験するスペクトルの一例を示す。図15Cは、熱不安定なタキソール化合物に関して、混合源を動作してESI/APCIマルチモード源を試験するスペクトルの一例を示す。
【図16】図16Aは、250 ℃でのIR加熱ブースト及び気化器によるAPCI応答を示す。図16Bは、115℃でのIR加熱ブースト及び気化器によるAPCI応答を示す。図16Cは、60 ℃でのIR加熱ブースト及び気化器によるAPCI応答を示す。
【図17】図17Aは、環境化合物に関して試験するマルチモード正混合モード分析を利用したスペクトルの一例を示す。図17Bは、殺虫剤/除草剤に関して試験するマルチモード負混合モード分析を利用したスペクトルの一例を示す。
【図18】図18Aは、非誘導体化ステロイドに関して試験するマルチモード正混合モード分析を利用したスペクトルの一例を示す。図18Bは、非誘導体化ステロイドに関して試験するマルチモード負混合モード分析を利用したスペクトルの一例を示す。
【図19】APCIのみ、ESIのみ及び同時マルチモードの検出限界の結果の比較を示す。
【図20】マルチモード及び専用源を比較するサンプルスループットタイムの結果を示す。
【符号の説明】
【0075】
1 質量分析システム
2 マルチモードイオン源
3 第一イオン源
4 第二イオン源
6 移送システム
8 ネブライザー
10 発生源ハウジング
11 検出器
12 排出ポート
14 コロナ針
15 イオン化領域
17 ネブライザーキャップ
19 ネブライザー導管
20 ネブライザー先端
22 コロナ針ホルダー
23 乾燥装置
24 オリフィス
25 スイープガス導管
27 コロナ針被覆
28 長軸内腔
29 発生源ハウジング内腔
30 第一電極
32 UVランプ
33 第二電極
37 導管
40 ネブライザーカップリング
42 ネブライザー入り口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモードイオン化源を利用する複合検体の検出方法であって、
(a)前記複合検体をエレクトロスプレーイオン化源に導入して帯電エアロゾルを発生し、
(b)前記エレクトロスプレーイオン化源に隣接する赤外線放射体で前記帯電エアロゾルを乾燥し、
(c)前記エレクトロスプレーイオン化源より下流の大気圧イオン化源を利用して前記乾燥されたエアロゾルをイオン化し、
(d)前記複合検体からのイオンを検出することを含む方法。
【請求項2】
前記複合検体が天然物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複合検体が有機分子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機分子が、ステロイド、レセルピン及びタキソール分子からなる群より選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記大気圧イオン化源が大気圧光イオン化(APPI)源である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記大気圧イオン化源が大気圧化学イオン化(APCI)源である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記エレクトロスプレーイオン化源と導管の間に置かれた第一電極、及び
前記第一電極とオリフィスの間に置かれた第二電極をさらに含み、該オリフィスに向かってイオンを案内することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記赤外線放射体が筐体内に位置付けられている赤外線(IR)ランプを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記筐体が、前記赤外線ランプから生じる熱を当該筐体内に閉じ込めるように構成され、かつ当該筐体が、前記導管のオリフィスに隣接する出口を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記赤外線放射体が約2〜6ミクロン(μm)の波長の放射線を放射する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記エレクトロスプレーイオン化源が長軸を有し、かつ前記導管が長軸を有し、当該エレクトロスプレーイオン化源の長軸が、当該導管の長軸に対して実質的に直交する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
マルチモードイオン化源を利用して複合検体からイオンを発生する方法であって、
(a)エレクトロスプレーイオン化により帯電エアロゾルを発生し、
(b)前記帯電エアロゾルを赤外線放射に曝し、当該赤外線放射により前記帯電エアロゾルを乾燥させ、
(c)大気圧イオン化源を利用して前記帯電エアロゾルをさらにイオン化し、
(d)前記複合検体からイオンを検出することを含む方法。
【請求項13】
前記大気圧イオン化源が大気圧光イオン化(APPI)源である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記大気圧イオン化源が大気圧化学イオン化(APCI)源である請求項12に記載の方法。
【請求項15】
(e)電極を利用して前記帯電エアロゾルを下流に案内することをさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項16】
(f)前記帯電エアロゾルを赤外線放射に曝す際に、取り囲まれた領域内に前記帯電エアロゾルを閉じ込めることをさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ESI源及びAPCI源を含むマルチモード源を利用して複合検体からイオンをスクリーニングする方法であって、
(a)ESI源を利用して帯電エアロゾルを発生し、
(b)シールドを有するコロナ針で放電を発生し、
(c)前記帯電エアロゾルを前記放電に曝すことを含む方法。
【請求項18】
(d)前記ESI源により発生された前記帯電エアロゾルを乾燥することをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記乾燥することが、前記帯電エアロゾルを赤外線放射の放射に曝すことを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記シールドが、前記コロナ針を実質的に取り囲み、前記放電を通過させるための出口を有する請求項17に記載の方法。
【請求項21】
(d)前記帯電エアロゾルに電場を作用させることにより、前記放電に曝した後で前記帯電エアロゾルを質量分析器の入口に向かって案内することをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項22】
(d)前記帯電エアロゾルにガス流を作用させることにより、前記放電に曝した後で前記帯電エアロゾルを質量分析器の入口に向かって案内することをさらに含む請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−10667(P2007−10667A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179042(P2006−179042)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】