説明

マンデル酸ヒドラジド

式(I)の新規なマンデル酸ヒドラジド(ここで、R1〜R11は、請求項1に記載された意味を有する)は、SGK阻害薬であり、糖尿病、肥満、メタボリック症候群(異脂肪血症)、全身および肺の緊張亢進、循環器疾患および腎臓疾患などのSGKにより誘発される疾患および病訴の、一般的に任意のタイプの線維症および炎症過程における治療用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、有用な性質、特に薬物の調製に使用することができる性質を有する新規な化合物を見出す目的に基づくものであった。
【0002】
本発明は、キナーゼ、特に細胞容積調節ヒトキナーゼh−sgk(ヒト血清およびグルココルチコイド依存性キナーゼまたはSGK)のシグナル伝達の阻害、調節および/または調整が役割を果す化合物、更にこれらの化合物を含む医薬組成物ならびにSGK誘発性疾患の治療のためのこれらの化合物の使用に関する。
【0003】
イソ型のSGK−1、SGK−2およびSGK−3を有するSGKは、セリン/スレオニンプロテインキナーゼファミリーである(WO02/17893)。
【0004】
本発明による化合物は、好ましくはSGK−1の選択的阻害薬である。それらは、更に、SGK−2および/またはSGK−3の阻害薬であってもよい。
【0005】
詳しくは、本発明は、したがって、SGKシグナル伝達を阻害、調節および/または調整する化合物に関し、これらの化合物を含む組成物に関し、ならびにSGK誘発性疾患および病訴、例えば、糖尿病(例えば、真性糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性血管症および細小血管症)、肥満、メタボリック症候群(異脂肪血症)、全身および肺の緊張亢進、循環器疾患(例えば、心筋梗塞後の心筋線維症(cardiac fibrosis)、心臓肥大および心不全、動脈硬化)および腎臓疾患(例えば、糸球体硬化、腎硬化、腎炎、ネフロパシー、電解質排泄障害)などの、一般的に任意のタイプの線維症および炎症過程(例えば、肝硬変、肺線維症、線維性膵炎(fibrosing pancreatitis)、リウマチおよび関節症、クローン病、慢性気管支炎、放射線線維症、硬化性皮膚炎、嚢胞性線維症、瘢痕、アルツハイマー病)における治療のためのその使用方法に関する。
【0006】
本発明による化合物は、腫瘍細胞の増殖および腫瘍転移を阻害することもでき、したがって腫瘍治療に適している。
【0007】
本発明による化合物は、特にストレスにより誘発される形態の場合の消化性潰瘍の治療にも使用される。本発明による化合物は、更に、凝血障害、例えば、異常フィブリノゲン血症、低プロコンバーチン血症、B型血友病、Stuart−Prower因子欠乏症、プロトロンビン複合体欠乏症、消費性凝固障害、線溶亢進、免疫凝固障害または複合性凝固障害の治療、および同様に神経細胞の興奮性、例えばてんかんに使用される。本発明による化合物は、緑内障または白内障の治療にも治療的に使用することができる。本発明による化合物は、細菌感染の治療および抗感染療法に更に使用される。本発明による化合物は、学習能力および注意を増すために治療的に使用することもできる。更に、本発明による化合物は、細胞老化およびストレスに対抗し、したがって期待寿命および高齢者の適応度を増加する。
【0008】
本発明による化合物は、耳鳴の治療に更に使用される。
【0009】
SGKシグナル伝達を特異的に阻害、調節および/または調整する小化合物の同定は、したがって望ましくあり、本発明の目的である。
【0010】
本発明による化合物およびその塩は、十分な耐容性を示しながら非常に有用な薬理学的特性を有することが見出された。
【0011】
特に、それらはSGK阻害特性を示す。
【0012】
本発明は、したがって、前記疾患の治療および/または予防における薬物および/または薬物活性成分としての本発明による化合物、ならびに前記疾患の治療および/または予防用の薬剤の調製のための本発明による化合物の使用、ならびに同様にこのような投与を必要とする患者への本発明による1種または複数の化合物の投与を含む前記疾患の治療方法に関する。
【0013】
宿主または患者は、任意の哺乳類種、例えば、霊長類種、特にヒト;マウス、ラットおよびハムスターを含めた齧歯類;ウサギ;ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属することができる。動物モデルは、それらがヒトの疾患の治療のモデルを提供する実験的調査に興味深い。
【0014】
シグナル伝達経路の同定、および様々なシグナル伝達経路間の相互作用の検知のために、様々な科学者が、適切なモデルまたはモデル系、例えば、細胞培養モデル(例えば、Khwajaら、EMBO、1997年、16、2783〜93)および形質転換動物のモデル(例えば、Whiteら、Oncogene、2001年、20、7064〜7072)を開発している。シグナル伝達カスケードにおける特定の段階の決定のために、相互作用化合物を、シグナルを調整するために利用することができる(例えば、Stephensら、Biochemical J.、2000年、351、95〜105)。本発明による化合物は、動物および/もしくは細胞培養モデルまたは本出願に記載された臨床疾患におけるキナーゼ依存性シグナル伝達経路を試験するための試薬としても使用することができる。
【0015】
キナーゼ活性の測定は、当分野の技術者に周知の技術である。基質、例えばヒストン(例えば、Alessiら、FEBS Lett. 1996年、399、3、333〜338頁)または塩基性ミエリンタンパク質を使用するキナーゼ活性の測定のための一般的な試験システムは、文献(例えば、Campos−Gonzalez,R.およびGlenney,Jr.、J.R.1992年、J.Biol.Chem. 267、14535頁)に記載されている。
【0016】
様々なアッセイシステムが、キナーゼ阻害薬の同定に利用できる。シンチレーション近接アッセイ(Sorgら、J.of.Biomolecular Screening、2002年、7、11〜19)およびフラッシュプレートアッセイにおいては、基質としてのタンパク質またはペプチドの放射性リン酸化反応がγATPを用いて測定される。阻害化合物の存在下では、減少した放射性シグナルを検知することができるか、まったく検知することができない。更に、均一時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(HTR−FRET)および蛍光偏光(FP)技術が、アッセイ方法として有用である(Sillsら、J.of Biomolecular Screening、2002年、191〜214)。
【0017】
他の非放射性のELISAアッセイ方法は、特定のリン酸化(phospho)抗体(リン酸化AB)を使用する。リン酸化ABは、リン酸化された基質のみを結合させる。この結合を、第2ペルオキシダーゼ結合抗ヒツジ抗体を使用して、化学発光によって検出することができる(Rossら、Biochem.J.、2002年、366、977〜981)。
【0018】
先行技術
WO00/62781は、細胞容積調節ヒトキナーゼH−SGKの阻害薬を含む薬物の使用を記載している。
【0019】
アシルヒドラゾンは、WO2005037773においてSGK阻害薬として記載されている。他のアシルマンデル酸ヒドラジドは、WO96/17840およびP.LegrelによってTetrahedron 1988年、44、4805〜4814に殺真菌剤として記載されている。
【0020】
抗菌作用を有するベンジリデンベンゾヒドラジドは、WO02/070464A2に記載されている。細菌感染の治療のためのアシルヒドラジドの使用は、WO01/70213に開示されている。
【0021】
とりわけ糖尿病合併症の治療用の他のアシルヒドラゾン誘導体は、JP11−106371に開示されている。
【0022】
癌の治療用のメトキシ置換芳香族アシルヒドラゾン誘導体は、T.KametaniらによってYakugaku Zasshi(1963年)、83、851〜855およびYakugaku Zasshi(1963年)、83、844〜847に記載されている。
【0023】
鎮痛増強剤(sedative enhancer)としておよび血圧降下用の他の芳香族アシルヒドラゾン誘導体は、JP41−20699に開示されている。
【0024】
抗感染療法におけるキナーゼ阻害薬の使用は、C.DoerigによってCell.Mol.Biol.Lett.Vol.8、No.2A、2003年、524〜525に記載されている。
【0025】
肥満におけるキナーゼ阻害薬の使用は、N.PerrottiによってJ.Biol.Chem.2001年、March 23;276(12):9406〜9412に記載されている。
【0026】
次の参考文献は、疾患治療におけるSGK阻害薬の使用を示唆および/または記載している。
【0027】
【表1−1】

【0028】
【表1−2】

【0029】
発明の概要
本発明は、式Iの化合物、ならびに全ての割合のそれらの混合物を含む、薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体に関する
【0030】
【化1】

【0031】
[式中、
1、R2は、それぞれ互いに独立に、H、CHOまたはアセチルを表し、
3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11は、それぞれ互いに独立に、
H、A、OSO2A、Hal、NO2、OR12、N(R12)2、CN、O−COA、−[C(R12)2]nCOOR12、O−[C(R12)2]oCOOR12、SO3H、−[C(R12)2]nAr、−CO−Ar、O−[C(R12)2]nAr、−[C(R12)2]nHet、−[C(R12)2]nC≡CH、O−[C(R12)2]nC≡CH、−[C(R12)2]nCON(R12)2、−[C(R12)2]nCONR12N(R12)2、O−[C(R12)2]nCON(R12)2、O−[C(R12)2]oCONR12N(R12)2、NR12COA、NR12CON(R12)2、NR12SO2A、N(SO2A)2、COR12、S(O)mAr、SO2NR12またはS(O)mAを表し、
3およびR4は、一緒になってCH=CH−CH=CHを表し、
3およびR4、R7およびR8またはR8およびR9は、一緒になって3、4または5個のC原子を有するアルキレンも表し、ここで、1つまたは2つのCH2基は、酸素で置換されていてよく、
Aは、1〜6個のC原子を有する非分枝もしくは分枝のアルキル(ここで、1〜7個のH原子は、Fで置換されていてよい)、または3〜7個のC原子を有する環状アルキルを表し、
Arは、フェニル、ナフチルまたはビフェニルを表し、これらのそれぞれは、非置換であるか、Hal、A、OR12、N(R12)2、NO2、CN、フェニル、CON(R12)2、NR12COA、NR12CON(R12)2、NR12SO2A、COR12、SO2N(R12)2、S(O)mA、−[C(R12)2]n−COOR12および/または−O[C(R12)2]o−COOR12で一、二または三置換されており、
Hetは、1から4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式または二環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表し、これは、Hal、A、OR12、N(R12)2、NO2、CN、COOR12、CON(R12)2、NR12COA、NR12SO2A、COR12、SO2NR12、S(O)mA、=S、=NR12および/または=O(カルボニル酸素)で一、二または三置換されていてよく、
12は、HまたはAを表し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを表し、
mは、0、1または2を表し、
nは、0、1、2または3を表し、
oは、1、2または3を表す]。
【0032】
本発明は、式Iの化合物およびそれらの塩に関し、
a)式IIの化合物
【0033】
【化2】

【0034】
(ここで、
1、R7、R8、R9、R10およびR11は、請求項1に示された意味を有する)
を式IIIの化合物と反応させ
【0035】
【化3】

【0036】
(ここで、
Lは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応性官能性修飾OH基を表し、
2、R3、R4、R5およびR6は、請求項1に示された意味を有する)、
あるいは
b)式IVの化合物
【0037】
【化4】

【0038】
(ここで、
2、R3、R4、R5およびR6は、請求項1に示された意味を有する)
を式Vの化合物を式Vの化合物と反応させ
【0039】
【化5】

【0040】
(ここで、
Lは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応性官能性修飾OH基を表し、
1、R7、R8、R9、R10およびR11は、請求項1に示された意味を有する)、
あるいは
c)式Iの化合物の基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10および/またはR11を、エーテルを加水分解または水素添加分解により開裂することによって別の基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10および/またはR11に変換する、
かつ/あるいは式Iの塩基または酸をその塩の1つに変換することを特徴とする、請求項1〜16に記載の式Iの化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体の調製方法に関する。
【0041】
本発明は、同様にこれらの化合物の立体異性体(E、Z異性体)および水和物および溶媒和物に関する。化合物の溶媒和物は、それらの相互引力により形成する不活性溶媒分子の化合物への付加(adduction)を意味するものと解釈される。溶媒和物は、例えば、一または二水和物またはアルコラートである。
【0042】
薬学的に使用できる誘導体は、例えば、本発明による化合物の塩および同様にいわゆるプロドラッグ化合物を意味するものと解釈される。
【0043】
プロドラッグ誘導体は、例えば、アルキルまたはアシル基、糖またはオリゴペプチドで修飾されており、かつ有機体中で急速に開裂されて本発明による活性化合物を形成する式Iの化合物を意味するものと解釈される。
【0044】
これらは、例えば、Int.J.Pharm.115、61〜67(1995)に記載されたように、本発明による化合物の生分解性ポリマー誘導体も含む。
【0045】
表現「有効量」は、組織、器官、動物またはヒトにおいて、例えば研究者または医師により求められまたは意図された生物学的または医学的反応を引き起こす薬物または薬剤活性成分の量を意味する。
【0046】
更に、表現「治療有効量」は、この量を受けていない対応する対象と比較して、次の結果:
疾患、症候群、状態、病訴、障害または副作用の改善された治療、治癒、予防または除去あるいは同様に疾患、病訴または障害の進行の低減を有する量を意味する。
【0047】
表現「治療有効量」は、通常の生理的機能を増加させるのに有効な量も包含する。
【0048】
本発明は、同様に、本発明による式Iの化合物の混合物、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000の比の、例えば2種のジアステレオマーまたは鏡像異性体の混合物に関する。
【0049】
これらは、特に好ましくは、立体異性化合物の混合物であり、特に、本発明による化合物は、ラセミ体の形態である。
【0050】
二度以上出現する全ての基については、それらの意味は、互いに独立である。
【0051】
上記および以下において、基およびパラメーターR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、明示的に別に示した場合を除き、式Iに関して示された意味を有する。
【0052】
Aは、アルキルを意味し、非分枝状(線状)または分枝状であり、1、2、3、4、5または6個のC原子を有する。Aは、好ましくはメチルを意味し、さらにエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルを、さらにまたペンチル、1−、2−または3−メチルブチル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−、2−、3−または4−メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−または3,3−ジメチルブチル、1−または2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−または1,2,2−トリメチルプロピルを、さらに好ましくは例えばトリフルオロメチルを意味する。
【0053】
Aは、特に非常に好ましくは1、2、3、4、5または6個のC原子を有する、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは1,1,1−トリフルオロエチルを好ましくは意味する。
【0054】
Acはアセチルを表し、Bnはベンジルを表し、Msは−SO2CH3を表す
1は、好ましくはH、CHOまたはアセチルを表し、特に好ましくはHを表す
2は、好ましくはHを表す
3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11は、好ましくは、互いにそれぞれ独立に、H、A、Hal、OR12またはO−[C(R12)2]nArを表す
3は、特に好ましくはH、AまたはHalを表す
6は、特に好ましくはOHを表す
8は、特に好ましくはOH、A、フェノキシまたはHalを表す
4、R5、R7、R9、R10、R11は、特に好ましくはHまたはAを表す
7、R10、R11は、特に好ましくは、互いにそれぞれ独立に、HまたはHalも表す
12は、特に好ましくはHを表す。
【0055】
Arは、例えば、フェニル、o−、m−またはp−トリル、o−、m−またはp−エチルフェニル、o−、m−またはp−プロピルフェニル、o−、m−またはp−イソプロピルフェニル、o−、m−またはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−またはp−ニトロフェニル、o−、m−またはp−アミノフェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−アセトアミドフェニル、o−、m−またはp−メトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシカルボニルフェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−(N−エチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−フルオロフェニル、o−、m−またはp−ブロモフェニル、o−、m−またはp−クロロフェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホンアミド)フェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホニル)フェニル、o−、m−またはp−シアノフェニル、o−、m−またはp−ウレイドフェニル、o−、m−またはp−ホルミルフェニル、o−、m−またはp−アセチルフェニル、o−、m−またはp−アミノスルホニルフェニル、o−、m−またはp−カルボキシフェニル、o−、m−またはp−カルボキシメチルフェニル、o−、m−またはp−カルボキシメトキシフェニルを表し、更に好ましくは2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジブロモフェニル、2,4−または2,5−ジニトロフェニル、2,5−または3,4−ジメトキシフェニル、3−ニトロ−4−クロロフェニル、3−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−3−クロロ−、2−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−5−クロロ−または2−アミノ−6−クロロフェニル、2−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノ−または3−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノフェニル、2,3−ジアミノフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−または3,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル、p−ヨードフェニル、3,6−ジクロロ−4−アミノフェニル、4−フルオロ−3−クロロフェニル、2−フルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、3−ブロモ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−アミノ−6−メチルフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニルあるいは2,5−ジメチル−4−クロロフェニルを表す。
【0056】
Arは、好ましくは、例えば、非置換であるか、Hal、A、OR10、SO2A、COOR10またはCNで一、二または三置換されたフェニルを表し、非常に特に好ましくは、非置換であるか、Halおよび/またはAで一、二または三置換されたフェニルを表し、特にArは、フェニルを表す。
【0057】
更なる置換に関係なく、Hetは、例えば、2−または3−フリル、2−または3−チエニル、1−、2−または3−ピロリル、1−、2−、4−または5−イミダゾリル、1−、3−、4−または5−ピラゾリル、2−、4−または5−オキサゾリル、3−、4−または5−イソオキサゾリル、2−、4−または5−チアゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、2−、3−または4−ピリジル、2−、4−、5−または6−ピリミジニルを表し、更により好ましくは、1,2,3−トリアゾール−1−、−4−または−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−または−5−イル、1−または5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−または−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−または−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−または−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−または−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−または−5−イル、3−または4−ピリダジニル、ピラジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−または7−インドリル、4−または5−イソインドリル、1−、2−、4−または5−ベンズイミダゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−または7−インダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾキサゾリル、3−、4−、5−、6−または7−ベンズイソオキサゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−または7−ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−または8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−または8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−または8−キナゾリニル、5−または6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−または8−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニルを表し、更に好ましくは1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−または−5−イルまたは2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−イルを表す。
【0058】
複素環基は、部分的にまたは全部水素化されていてもよい。
【0059】
Hetは、したがって、例えば、2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または−5−フリル、テトラヒドロ−2−または−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−または−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、1−、2−または3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−または−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−または−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1−、−2−、−3−または−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−または−6−ピリジル、1−、2−、3−または4−ピペリジニル、2−、3−または4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−または−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−または−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−または−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−または−5−ピリミジニル、1−、2−または3−ピペラジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−イソキノリル、2−、3−、5−、6−、7−または8−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニルも表すことができ、更に好ましくは2,3−メチレンジオキシフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2,3−エチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−(ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−または−6−イル、2,3−(2−オキソメチレンジオキシ)フェニルまたは同様に3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−または−7−イルも表すことができ、更に好ましくは2,3−ジヒドロベンゾフラニルまたは2,3−ジヒドロ−2−オキソフラニルも表すことができる。
【0060】
Hetは、好ましくは、非置換であるか、A、Hal、OHおよび/またはOAで一、二または三置換されていてよい、1から2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表す。
【0061】
Hetは、特に好ましくは、非置換であるか、Aで一または二置換されていてよい、1から2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表す。
【0062】
更なる実施形態においては、Hetは、非常に特に好ましくは、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルまたはピペラジニルを表す。
【0063】
更なる実施形態においては、Hetは、特に好ましくは、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラゾリル、チアゾリル、インドリル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルまたはピペラジニルを表し、これらのそれぞれは、非置換であるか、A、Hal、OHおよび/またはOAで一、二または三置換されている。
【0064】
式Iの化合物は、1つまたは複数のキラル中心を有してよく、したがって様々な立体異性体で出現し得る。式Iは、全てのこれらの形態を包含する。
【0065】
したがって、本発明は、特に、前記基の少なくとも1つが、上記に示された好ましい意味の1つを有する式Iの化合物に関する。化合物のいくらかの好ましい群は、次の下位式IaからIo{これらは、式Iに適合し、ここで、より詳細に示されていない基は、式Iに関して示された意味を有するが、ここで、
Iaにおいては、R1は、HまたはCHOを表し、
2は、Hを表し;
Ibにおいては、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11は、それぞれ互いに独立に、H、A、Hal、OR12またはO−[C(R12)2]nArを表し;
Icにおいては、R6は、OHを表し;
Idにおいては、R3は、H、AまたはHalを表し;
Ieにおいては、R8は、OH、A、フェノキシまたはHalを表し;
Ifにおいては、R4、R5、R7、R9、R10、R11は、HまたはAを表し;
Igにおいては、R7、R10、R11は、それぞれ互いに独立に、HまたはHalを表し;
Ihにおいては、Arは、非置換であるか、Halおよび/またはAで一、二または三置換されたフェニルを表し;
Iiにおいては、Arは、フェニルを表し;
Ijにおいては、Hetは、1から2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表し、これは、非置換であるか、A、Hal、OHおよび/またはOAで一、二または三置換されていてよく;
Ikにおいては、Hetは、1から2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、これは、非置換であるか、Aで一または二置換されていてよく;
Ilにおいては、Hetは、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラゾリル、チアゾリル、インドリル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルまたはピペラジニルを表し、これらのそれぞれは、非置換であるか、A、Hal、OHおよび/またはOAで一、二または三置換されており;
lmにおいては、R1は、HまたはCHOを表し、
2は、Hを表し、
3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11は、それぞれ互いに独立に、H、A、Hal、OR12またはO−[C(R12)2]nArを表し;
Inにおいては、R1は、HまたはCHOを表し、
2は、Hを表し、
3は、H、AまたはHalを表し、
4、R5、R7、R9、R10、R11は、HまたはAを表し、
6は、OHを表し、
8は、OH、A、フェノキシまたはHalを表し;
loにおいては、R1は、H、CHOまたはアセチルを表し、
2は、Hを表し、
3は、H、AまたはHalを表し、
4、R5、R7、R10、R11は、それぞれ互いに独立に、H、AまたはHalを表し、
6は、OHを表し、
8は、OH、A、フェノキシまたはHalを表し、
9は、H、HalまたはOAを表し、
8およびR9は、ともにメチレンジオキシも表す}ならびに全ての割合のそれらの混合物を含む、薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体により表すことができる。
【0066】
特に好ましいのは、次の群から選択される式Iの化合物である。
【0067】
【表2】

【0068】
本発明による化合物および同様にそれらの調製用の出発原料は、更に、文献に記載されたようなそれ自体周知の方法(例えば、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgartなどの標準的な研究における)によって、正確には、周知であり前記反応に適した反応条件下で調製される。より詳細には本明細書で記載していないそれ自体周知の変形を本発明で使用することもできる。
【0069】
必要に応じて、出発原料を、それらを反応混合物から単離せずに、代わりにすぐにそれらを本発明による化合物に更に変換することによって現場で形成することもできる。
【0070】
出発化合物は、一般的に周知である。しかしながら、それらが新規である場合、それ自体周知の方法によりそれらを調製することができる。
【0071】
式Iの化合物は、好ましくは、式IIのヒドラジドを式IIIの化合物と反応させることにより得ることができる。
【0072】
反応は、当分野の技術者に周知である方法により行う。反応は、一般的に、不活性溶媒中で、場合によっては酸結合剤、好ましくは有機塩基、例えばDIPEA、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジンもしくはキノリン、または過剰の式IIIのカルボキシル成分の存在下で行う。
【0073】
適切な不活性溶媒の例は、炭化水素、例えばヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンまたはキシレン;塩素化炭化水素、例えばトリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムまたはジクロロメタン;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールまたはtert−ブタノール;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサン;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム);ケトン、例えばアセトンまたはブタノン;アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド(DMF);ニトリル、例えばアセトニトリル;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO);二硫化炭素;カルボン酸、例えばギ酸または酢酸;ニトロ化合物、例えばニトロメタンまたはニトロベンゼン;エステル、例えば酢酸エチル、あるいは前記溶媒の混合物である。
【0074】
特に好ましい溶媒は、水またはDMFである。
【0075】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩、あるいはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の、好ましくはカリウム、ナトリウム、カルシウムまたはセシウムの弱酸の別の塩の添加も有利であることがある。
【0076】
使用される条件に応じて、反応時間は、数分から14日であり、反応温度は、約−30°から140°、通常−10°から90°、特に約0°から約70°である。
【0077】
式IIIの化合物においては、Lは、好ましくは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応性修飾OH基、例えば、活性化エステル、イミダゾリドまたは1〜6個のC原子を有するアルキルスルホニルオキシ(好ましくはメチルスルホニルオキシまたはトリフルオロメチルスルホニルオキシ)または6〜10個のC原子を有するアリールスルホニルホキシ(好ましくはフェニル−またはp−トリルスルホニルオキシ)を表す。
【0078】
標準的なアシル化反応におけるカルボキシル基の活性化のためのこの種類の基は、文献に記載されている(例えば、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgartなどの標準的な研究)。
【0079】
活性化エステルは、有利には、例えばHOBtまたはN−ヒドロキシスクシンイミドの添加によって現場で形成される。
【0080】
式Iの化合物は、更に好ましくは、式IVのヒドラジドを式Vの化合物と反応させることによって得ることができる。
【0081】
反応は、一般的に、酸結合剤、好ましくはDIPEA、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジンもしくはキノリンなどの有機塩基、または過剰の式Vのカルボキシル成分の存在下で不活性溶媒中において行われる。
【0082】
適切な不活性溶媒の例は、炭化水素、例えばヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンまたはキシレン;塩素化炭化水素、例えばトリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムまたはジクロロメタン;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールまたはtert−ブタノール;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサン;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム);ケトン、例えばアセトンまたはブタノン;アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド(DMF);ニトリル、例えばアセトニトリル;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO);二硫化炭素;カルボン酸、例えばギ酸または酢酸;ニトロ化合物、例えばニトロメタンまたはニトロベンゼン;エステル、例えば酢酸エチル、あるいは前記溶媒の混合物である。
【0083】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の、好ましくはカリウム、ナトリウム、カルシウムまたはセシウムの弱酸の別の塩の添加も有利であることがある。
【0084】
使用される条件に応じて、反応時間は、数分から14日であり、反応温度は、約−30°から140°、通常−10°から90°、特に約0°から約70°である。
【0085】
式Vの化合物においては、Lは、好ましくは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応性修飾OH基、例えば、活性化エステル、イミダゾリドまたは1〜6個のC原子を有するアルキルスルホニルオキシ(好ましくはメチルスルホニルオキシまたはトリフルオロメチルスルホニルオキシ)または6〜10個のC原子を有するアリールスルホニルオキシ(好ましくはフェニル−またはp−トリルスルホニルオキシ)を表す。
【0086】
典型的なアシル化反応におけるカルボキシル基の活性化のためのこの種類の基は、文献に記載されている(例えば、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgartなどの標準的な研究)。
【0087】
活性化エステルは、有利には、例えばHOBtまたはN−ヒドロキシスクシンイミドの添加によって現場で形成される。
【0088】
式Iの化合物は、更に、例えば、エーテルを加水分解または水素添加分解によって開裂することによって基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10および/またはR11を別の基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10および/またはR11に変換することによって得ることができる。
【0089】
エーテルの開裂は、当分野の技術者に周知の方法で行われる。
【0090】
エーテル開裂(例えばメチルエーテルの)の標準的な方法は、三臭化ホウ素の使用である。
【0091】
水素添加分解性脱離基(例えばベンジルエーテルの開裂)は、例えば、触媒の存在下での水素による処理によって開裂することができる(例えば、有利には炭素などの担体上のパラジウムなどの貴金属触媒)。本発明における適切な溶媒は、上記に示されたものであり、特に、例えば、メタノールまたはエタノールなどのアルコール、またはDMFなどのアミドである。水素添加分解は、一般的に、約0から100°の温度および約1から200barの圧力で、好ましくは20〜30°および1〜10barで行われる。
【0092】
エステルは、例えば、0から100°の温度で酢酸を使用すること、または水中のNaOHもしくはKOH、水/THFもしくは水/ジオキサンを使用することによって鹸化することができる。
【0093】
薬剤の塩およびその他の形態
本発明による前記化合物は、それらの最終的な塩ではない形態で使用することができる。他方、本発明はまた、技術的に知られている方法によりさまざまな有機および無機の酸および塩基から誘導することができる薬学的に許容されるこれら化合物の塩の形態でのそれらの使用に関する。式Iの化合物の薬学的に許容される塩の形態は、大部分を従来の方法により調製する。式Iの化合物がカルボキシル基を含有する場合、その適当な塩の1つは、その化合物を適当な塩基と反応させて対応する塩基付加塩を生じさせることにより形成することができる。上記塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを含むアルカリ金属水酸化物;水酸化バリウムおよび水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;アルカリ金属アルコキシド、例えばカリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド;およびさまざまな有機塩基、例えばピペリジン、ジエタノールアミン、N−メチルグルタミンなどがある。式Iの化合物のアルミニウム塩も同様に含まれる。式Iのいくつかの化合物の場合、酸付加塩は、これらの化合物を、薬学的に許容される有機酸および無機酸、例えば、塩化水素、臭化水素またはヨウ化水素等のハロゲン化水素、その他の無機酸および硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩および同種のものなど対応するそれらの塩、およびエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のアルキルおよびモノアリールスルホン酸、ならびにその他の有機酸、および、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩、および同種のもの等対応するそれらの塩で処理することにより形成することができる。したがって、薬学的に許容される式Iの化合物の酸付加塩としては、以下のもの:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギニン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、重亜硫酸塩、臭化物、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二水素リン酸塩、ジニトロ安息香酸塩、硫酸ドデシル、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩(粘液酸から)、ガラクツロン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸塩、一水素リン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パルモエ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、フタル酸塩が挙げられるが、これは限定を意味しない。
【0094】
さらに、本発明による化合物の塩基塩としては、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、鉄(III)塩、鉄(II)塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン(III)塩、マンガン(II)塩、カリウム塩、ナトリウム塩および亜鉛塩が挙げられるが、これは限定を意味するように意図されていない。上記の塩のうち、優先されるのは、アンモニウム塩、アルカリ金属塩のナトリウム塩およびカリウム塩、ならびにアルカリ土類金属塩のカルシウム塩およびマグネシウム塩である。薬学的に許容される毒性のない有機塩基から誘導される式Iの化合物の塩としては、第一級、第二級および第三級アミン、天然の置換アミンも含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂も含む、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジクロロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リドカイン、リシン、メグルミン、N−メチル−D−グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、およびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)の塩が挙げられるが、これは限定を意味するように意図されていない。
【0095】
塩基性窒素含有基を含有する本発明の化合物は、(C1〜C4)アルキルハロゲン化物、例えば、メチル、エチル、イソプロピルおよびt−ブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;ジ(C1〜C4)アルキル硫酸、例えば、ジメチル、ジエチルおよびジアミル硫酸;(C10〜C18)アルキルハロゲン化物、例えば、デシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;ならびにアリール(C1〜C4)アルキルハロゲン化物、例えば、塩化ベンジルおよび臭化フェネチル等の作用物質を用いて第四級化することができる。水溶性および油溶性の両方の本発明による化合物を上記の塩を用いて調製することができる。
【0096】
上記のうちの好ましい薬剤の塩としては、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベシル酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヘミコハク酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、イセチオン酸塩、マンデル酸塩、メグルミン、硝酸塩、オレイン酸塩、ホスホン酸塩、ピバリン酸塩、リン酸ナトリウム、ステアリン酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、チオリンゴ酸塩、トシル酸塩およびトロメタミンが挙げられるが、これは限定を意味するように意図されていない。
【0097】
式Iの塩基性化合物の酸付加塩は、その遊離の塩基の形態を十分な量の所望の酸と接触させて、従来どおりに塩を形成させることにより調製する。遊離の塩基は、その塩の形態を塩基と接触させて従来どおりに遊離の塩基を単離することにより再生させることができる。その遊離の塩基の形態は、極性溶媒中の溶解性等の本発明のためのある一定の物理的性質に関して、対応するその塩の形態とは異なるが、一方で、その塩は、その他の点において、そのそれぞれの遊離の塩基の形態に対応する。
【0098】
言及したように、薬学的に許容される式Iの化合物の塩基付加塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミン等の金属類またはアミン類により形成される。好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムである。好ましい有機アミンは、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−D−グルカミンおよびプロカインである。
【0099】
本発明による酸性化合物の塩基付加塩は、その遊離の酸の形態を十分な量の所望の塩基と接触させて、従来どおりに塩を形成させることにより調製する。その遊離の酸は、その塩の形態を酸と接触させて従来どおりに遊離の酸を単離することにより再生させることができる。その遊離の酸の形態は、極性溶媒中の溶解性等の本発明のためのある一定の物理的性質に関して、対応するその塩の形態とは異なるが、一方で、その塩は、その他の点において、そのそれぞれの遊離の酸の形態に対応する。
【0100】
本発明による化合物が、このタイプの薬学的に許容される塩を形成することができる複数の基を含有する場合、本発明はまた、多塩も包含する。典型的な多塩の形態としては、例えば、酸性酒石酸塩、二酢酸塩、二フマル酸塩、ジメグルミン、二リン酸塩、二ナトリウムおよび三塩酸塩が挙げられるが、これは限定を意味するように意図されていない。
【0101】
上で述べたことに関しては、現在の関連における「薬学的に許容される塩」という表現は、特にこの塩の形態が、活性成分の遊離の形態または以前に使用された活性成分のいずれか別の塩の形態と比較してその活性成分に改良された薬物動態学的特性を与える場合に、式Iの化合物をその塩の1つの形態で含む活性成分を意味すると捉えるものと理解することができる。活性成分の薬学的に許容される塩の形態はまた、この活性成分にそれが以前は有していなかった望ましい薬物動態学的特性を初めて提供し、体内におけるその治療効果に対するこの活性成分の薬力学についての好ましい影響を有することさえできる。
【0102】
本発明による式Iの化合物は、それらの分子構造によってキラルであってよく、したがって種々の鏡像異性体で出現してよい。それらは、したがって、ラセミ体または光学活性体で存在することができる。
【0103】
本発明による化合物のラセミ体または立体異性体の薬剤活性は異なる場合があるので、鏡像異性体を使用することが望ましい場合がある。これらの場合においては、最終生成物または更に中間体は、当分野の技術者に周知の化学的または物理的手段によって鏡像異性化合物に分離することができ、あるいはそのまま合成に使用することができる。
【0104】
ラセミアミンの場合においては、ジアステレオマーは、光学活性分割剤との反応によって混合物から形成される。適切な分割剤の例は、RおよびS型の酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、適切にN保護されたアミノ酸(例えばN−ベンゾイルプロリンまたはN−ベンゼンスルホニルプロリン)、または種々の光学活性カンファースルホン酸などの光学活性酸である。同様に有利であるのは、光学活性分割剤(例えばシリカゲル上の固定されたジニトロベンゾイルフェニルグリシン、セルローストリアセテートまたは炭水化物の他の誘導体またはキラル誘導体化(chirally derivatised)されたメタクリレートポリマー)を用いたクロマトグラフ鏡像異性体分割である。この目的に適切な溶離液は、例えば82:15:3の比の、例えば、ヘキサン/イソプロパノール/アセトニトリルなどの水性またはアルコール溶媒混合物である。
【0105】
本発明は、更に、特に非化学的方法による、薬物(薬剤組成物)の調製のための、上記化合物および/または生理学的に許容されるそれらの塩の使用に関する。それらは、少なくとも1種の固体、液体および/または半液体の賦形剤またはアジュバントと一緒に、また必要に応じて1種または複数の更なる活性成分と一緒に適切な剤形に変換することができる。
【0106】
本発明は、さらに、少なくとも1つの式Iの化合物および/またはすべての比率のそれらの混合物を含めた薬学的に使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体、ならびに場合により賦形剤および/または補助剤を含む薬剤に関する。
【0107】
医薬品製剤は、予め定められた1投薬単位当たりの有効成分の量を含む投薬単位の形で投与することができる。上記単位は、処置する状態、投与の方法ならびに患者の年齢、体重および状態により、例えば、本発明による化合物の0.5mgから1g、好ましくは1mgから700mg、特に好ましくは5mgから100mgを含むことができ、または医薬品製剤は、予め定められた1投薬単位当たりの有効成分の量を含む投薬単位の形で投与することができる。好ましい投薬単位の製剤は、有効成分の上で示した1日量または分割投与量、あるいは対応するそれらの画分を含むものである。さらに、この型の医薬品製剤は、医薬品技術において一般に知られている方法を使用して調製することができる。
【0108】
医薬品製剤は、任意の望ましい適切な方法、例えば、経口(頬側または舌下を含む)、直腸、経鼻、局所(頬側、舌下または経皮を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内を含む)の方法による投与に適合させることができる。上記製剤は、例えば、有効成分を賦形剤(1つまたは複数)または補助剤(1つまたは複数)と組み合わせることにより、医薬品技術において知られているすべての方法を使用して調製することができる。
【0109】
経口投与に適合する医薬品製剤は、例えばカプセルまたは錠剤;粉末または顆粒;水性もしくは非水性液体中の溶液または懸濁液;食用気泡または気泡食品;あるいは水中油滴型乳濁液または油中水滴型乳濁液等の独立単位として投与することができる。
【0110】
したがって、例えば、錠剤またはカプセルの形の経口投与の場合、有効成分要素は、例えばエタノール、グリセロール、水および同種のものなど、経口で、毒性がなく、医薬品に許容される不活性の賦形剤と組み合わせることができる。粉末は、化合物を適当な細かい粒度に粉砕し、それを同じように粉砕した医薬品用賦形剤、例えば食用になる炭水化物等、例えばデンプンまたはマンニトール等と混合することにより調製する。香料、防腐剤、分散剤および染料をさらに存在させることができる。
【0111】
カプセルは、粉末混合物を上記のように調製し、成型したゼラチンの殻にそれを充填することにより製造する。例えば、高分散ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固形のポリエチレングリコール等の流動促進剤および滑剤を充填作業の前に粉末混合物に添加することができる。例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム等の錠剤分解物質または可溶化剤を、カプセルが摂取された後の薬剤の有効性を改良するためにさらに加えることができる。
【0112】
さらに、所望によりまたは必要に応じて、適当な結合剤、滑剤および錠剤分解物質ならびに染料をその混合物中にさらに組み込むことができる。適当な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖例えばグルコースまたはβ−ラクトース等、トウモロコシからつくった甘味料、天然および合成ゴム例えばアラビアゴム、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム等、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス類などが挙げられる。これらの剤形に使用される滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。錠剤分解物質としては、それらに限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、その混合物を粒状にするか乾式プレスにかけ、滑剤および錠剤分解物質を加え、全体の混合物を加圧成型して錠剤を生じさせることにより製剤化する。粉末混合物は、適当な方法で粉砕した化合物を、上記のような希釈剤または基材および場合により結合剤例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン等、溶解遅延剤例えばパラフィン等、吸収促進剤例えば第四級塩等、および/または吸収剤例えばベントナイト、カオリンまたは第二リン酸カルシウム等と混合することにより調製する。粉末混合物は、それを結合剤例えばシロップ、デンプン糊、アカディア(acadia)粘液またはセルロースまたはポリマー材料の溶液等、で湿潤させ、それを加圧して篩を通すことにより顆粒状にすることができる。顆粒化の別法として、粉末混合物を打錠器に通し、不均一の形状の塊を生じさせてそれを破砕して顆粒を形成させることもできる。その顆粒は、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱物油を添加して錠剤の鋳型へのくっつきを防止するように滑らかにすることができる。その滑らかにした混合物を、次に加圧して錠剤を生じさせる。本発明による化合物はまた、自由に流れる不活性賦形剤と混合し、次いで、顆粒化または乾式プレスのステップを行わずに直接加圧して錠剤を生じさせることもできる。セラックシール層、糖またはポリマー材料の層からなる透明または不透明な保護層およびワックスの光沢層が存在してもよい。異なる用量単位の間を区別することができるように、染料をこれらのコーティングに添加することができる。
【0113】
経口液例えば溶液、シロップおよびエリキシル剤等は、所定量が化合物の事前に特定した量を含むように用量単位の形で調製することができる。シロップは適当な香料の水溶液中に化合物を溶解することによって調製することができ、一方、エリキシル剤は毒性のないアルコール媒体を使用して調製する。懸濁剤は毒性のない媒体中に化合物を分散させることによって製剤化することができる。可溶化剤および乳化剤例えばエトキシレート化イソステアリルアルコール類およびポリオキシエチレンソルビトールエーテル類等、防腐剤、香料添加剤例えばペパーミント油等、あるいは天然甘味料もしくはサッカリン、またはその他の人工甘味料などをさらに添加することができる。
【0114】
経口投与のための用量単位の製剤は、所望に応じて、マイクロカプセルに封入することができる。その製剤はまた、例えば、ポリマー、ワックスおよび同種のもの中の粒子材料のコーティングまたは埋め込みによって、放出が延長または遅延するように調製することができる。
【0115】
本発明による化合物ならびにその塩、溶媒和物および生理的に機能する誘導体はまた、例えば小さい単層小胞、大きい単層小胞および多層小胞等のリポソーム送達系の形で投与することができる。リポソームは、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリン等さまざまなリン脂質から形成することができる。
【0116】
本発明による化合物ならびにその塩、溶媒和物および生理的に機能する誘導体はまた、化合物分子が結合する個々の担体としてモノクローナル抗体を使用して送達することもできる。該化合物はまた、目標の薬剤の担体としての可溶性ポリマーに結合させることもできる。上記ポリマーは、パルミトイル基により置換されている、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノールまたはポリエチレンオキシドポリリシンを包含し得る。該化合物は、さらに、薬剤の制御放出を達成するのに適する生分解性ポリマーの類、例えば、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリラート、およびヒドロゲルの橋かけまたは両親媒性ブロック共重合体に結合させることができる。
【0117】
経皮的投与に適合する医薬品製剤は、レシピエントの表皮に伸ばして密接に接触させる独立した硬膏剤として投与することができる。かくして、例えば、有効成分は、Pharmaceutical Research,3(6),318(1986)中、一般用語で記載されているイオン泳動により硬膏剤から送達することができる。
【0118】
局所投与に適合する医薬品化合物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤または油剤として製剤化することができる。
【0119】
眼またはその他の外部組織、例えば、口および皮膚の治療のためには、製剤は、好ましくは局所の軟膏またはクリームとして適用する。軟膏を与える製剤の場合、有効成分はパラフィンまたは水混和性のクリーム基剤のいずれかと共に使用することができる。別法では、有効成分は水中油滴型クリーム基剤または油中水滴型基剤により製剤化して、クリーム剤を生じさせることができる。
【0120】
眼の局所適用に対応する医薬品製剤としては点眼液が挙げられ、その有効成分は適当な担体、特に水性溶媒中に溶解または懸濁させる。
【0121】
口中の局所適用に対応する医薬品製剤としては、トローチ剤、パステル剤およびうがい薬が含まれる。
【0122】
直腸投与に適合する医薬品製剤は、座剤または浣腸剤の形で投与することができる。
【0123】
担体物質が固体である経鼻投与に適合する医薬品製剤は、例えば20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗い粉末を含み、それは、鼻呼吸をするやり方で、すなわち、鼻の近くに保持した粉末を含有する容器から鼻腔を通して急速に吸入することにより投与される。担体物質が液体の鼻腔用スプレーまたは鼻点滴剤としての投与に適した製剤は、水または油中の有効成分の溶液を含む。
【0124】
吸入による投与に適合する医薬品製剤は、微細な粒子状粉末または霧を含み、それはさまざまな型のエアロゾルの加圧容器、噴霧器または吸入器により発生させることができる。
【0125】
膣投与に適合する医薬品製剤は、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫またはスプレー製剤として投与することができる。
【0126】
非経口的投与に適合する医薬品製剤としては、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤および溶質を含んでおり、それを用いて製剤を治療されるレシピエントの血液と等張にする水性および非水性の無菌の注射液、ならびに懸濁媒体および増粘剤を含むことができる水性および非水性の無菌の懸濁剤が挙げられる。その製剤は、単回投与または複数回投与の容器、例えば密閉したアンプルおよびガラス瓶で投与することができ、使用直前に無菌の担体液(例えば注射のための水)の添加のみが必要であるように凍結乾燥した状態で保存することができる。
【0127】
処方せんにしたがって調製される注射液または懸濁剤は、無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0128】
上で特に言及した構成要素に加えて、該製剤が、独特のタイプの製剤に対して技術的に通常のその他の作用物質も含むことができることは言うまでも無く、したがって、例えば、経口投与に適する製剤は香料を含むことができる。
【0129】
本発明の化合物の治療有効量は、例えば、ヒトまたは動物の年齢および体重、治療を必要とする正確な状態、およびその重篤性、製剤の性質ならびに投与方法を含めたいくつかの要因により、最終的には治療医師または獣医によって決定される。しかしながら、治療用の本発明による化合物の有効量は、一般的に、1日当たりレシピエント(哺乳類)の体重1kg当たり0.1から100mgの範囲であり、特に典型的には、1日当たり体重1kg当たり1から10mgの範囲である。したがって、体重70kgの成熟した哺乳類の1日当たりの実際量は、通常70から700mgであり、ここで、この量は、1日当たりの個別用量として、またはより普通に合計日用量が同じであるように1日当たりの一連の部分用量(例えば、2、3、4、5または6などの)で投与することができる。それらの生理学的機能性誘導体の塩または溶媒和物の有効量は、本発明による化合物それ自体の有効量の割合として決定することができる。類似の用量が上記の他の状態の治療に適していることは想定することができる。
【0130】
本発明は、更に、少なくとも1種の本発明による化合物ならびに/または薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)、ならびに少なくとも1種の更なる薬物活性成分を含む薬物に関する。
【0131】
本発明は、同様に、
(a)有効量の本発明による化合物ならびに/または薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)と、
(b)有効量の更なる薬物活性成分と
の別々のパックからなるセット(キット)に関する。
【0132】
セットは、箱、個別ボトル、バッグまたはアンプルなどの適切な容器を含む。セットは、例えば、それぞれ、溶解されたまたは凍結乾燥された形態における、有効量の本発明による化合物ならびに/または薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)、ならびに有効量の更なる薬物活性成分を含む別々のアンプルを含むことができる。
【0133】
使用
本化合物は、SGKにより誘発された疾患の治療において、哺乳類、特にヒト用の薬剤活性成分として適している。
【0134】
本発明は、したがって、キナーゼシグナル伝達の阻害、調節および/または調整が役割を果す疾患の治療用の薬物の調製のための、請求項1に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)の使用に関する。
【0135】
SGKが本発明では好ましい。
【0136】
請求項1に記載の化合物による、SGKの阻害により影響される疾患の治療用の薬物の調製のための、請求項1に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)の使用が好ましい。
【0137】
本発明は、糖尿病(例えば、真性糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性血管症および細小血管症)、肥満、メタボリック症候群(異脂肪血症)、全身および肺の緊張亢進、循環器疾患(例えば、心筋梗塞後の心筋線維症、心臓肥大および心不全、動脈硬化)および腎臓疾患(例えば、糸球体硬化、腎硬化、腎炎、ネフロパシー、電解質排泄障害)などの、一般的に任意のタイプの線維症および炎症過程(例えば、肝硬変、肺線維症、線維性膵炎、リウマチおよび関節症、クローン病、慢性気管支炎、放射線線維症、硬化性皮膚炎、嚢胞性線維症、瘢痕、アルツハイマー病)における治療または予防用の薬物の調製のための、本発明による請求項1に記載の化合物、ならびに/または生理学的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用を包含する。
【0138】
本発明による化合物は、癌、腫瘍細胞および腫瘍転移の増殖を阻害することもでき、したがって腫瘍治療に適している。
【0139】
本発明による化合物は、更に、凝血障害、例えば、異常フィブリノゲン血症、低プロコンバーチン血症、B型血友病、Stuart−Prower因子欠乏症、プロトロンビン複合体欠乏症、消費性凝固障害、線溶亢進、免疫凝固障害または複合性凝固障害の治療、および同様に神経細胞の興奮性、例えばてんかんに使用される。本発明による化合物は、緑内障または白内障の治療にも治療的に使用することができる。本発明による化合物は、細菌感染の治療および抗感染療法に更に使用される。本発明による化合物は、学習能力および注意を増すために治療的に使用することもできる。
【0140】
糖尿病、肥満、メタボリック症候群(異脂肪血症)、全身および肺の緊張亢進、循環器疾患および腎臓疾患の、一般的に任意のタイプの線維症および炎症過程、癌、腫瘍細胞、腫瘍転移、凝血障害、神経細胞の興奮性、緑内障、白内障、細菌感染、および抗感染療法における治療または予防のための、学習能力および注意を増すための、ならびに細胞老化およびストレスの治療および予防のための、薬物の調製のための、請求項1に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体)全ての割合のそれらの混合物を含む)の使用が好ましい。
【0141】
糖尿病は、好ましくは、真性糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性血管症および細小血管症である。
【0142】
循環器疾患は、好ましくは、心筋梗塞後の心筋線維症、心臓肥大、心不全および動脈硬化である。
【0143】
腎臓疾患は、好ましくは、糸球体硬化、腎硬化、腎炎、ネフロパシーおよび電解質排泄障害である。
【0144】
線維症および炎症過程は、好ましくは、肝硬変、肺線維症、線維性膵炎、リウマチおよび関節症、クローン病、慢性気管支炎、放射線線維症、硬化性皮膚炎、嚢胞性線維症、瘢痕、アルツハイマー病である。
【0145】
アッセイ
実施例に記載される本発明による化合物を、以下に記載するアッセイで試験し、キナーゼ阻害活性を有することが見出された。更なるアッセイは、文献から周知であり、当分野の技術者によって容易に実施することができる)例えば、Dhanabalら、Cancer Res.59:189〜197;Xinら、J.Biol.Chem.274:9116〜9121;Sheuら、Anticancer Res.18:4435〜4441;Ausprunkら、Dev.Biol.38:237〜248;Gimbroneら、J.Natl.Cancer Inst.52:413〜427;Nicosiaら、In Vitro 18:538〜549を参照)。
【0146】
SGK1タンパク質キナーゼの阻害は、フィルター結合法で求めることができる。
【0147】
上記および下記において、全ての温度は℃で示されている。次の実施例においては、「通常の後処理」は、必要に応じて水を添加し、pHを必要に応じて最終生成物の化学構造に応じて2から10の値に調節し、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出し、層を分離し、有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し蒸発し、生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーによっておよび/または結晶化によって精製することを意味する。シリカゲル上のRf値;溶離液:酢酸エチル/メタノール9:1。
質量分析(MS):EI(電子衝撃イオン化)M+
FAB(高速原子衝撃)(M+H)+
ESI(エレクトロスプレーイオン化)(M+H)+(別に示さない限り)。
【0148】
実施例1
N'−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシアセチル]−2,4−ジヒドロキシ−6−メチルベンゾヒドラジド(「A1」)の調製を次のスキームと同様に行った。
【0149】
【化6】

【0150】
1.1
【0151】
【化7】

【0152】
25OHを、2,4−ジベンジルオキシ−6−メチル安息香酸を使用してモノアセチル化した。収量:2,4−ジベンジルオキシ−6−メチルベンゾヒドラジド(63%);m.p.136〜137℃。
【0153】
1.2
【0154】
【化8】

【0155】
2,4−ジベンジルオキシ−6−メチルベンゾヒドラジドを水素化した。収量:2,4−ジヒドロキシ−6−メチルベンゾヒドラジド(89%);m.p.226℃(分解)。
【0156】
1.3 282mgの3,4−ジフルオロマンデル酸、410mgの2,4−ジヒドロキシ−6−メチルベンゾヒドラジド、431mgの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(WSCD)および164mgの1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を1.5mlのDMF中で3時間撹拌した。この混合物を通常の後処理およびシリカゲル上のクロマトグラフィーにかけた。同一の画分を合わせ、蒸発しEtOAc/石油エーテルから再結晶化した。収量250mgの「A1」(46%)、m.p.220℃。
【0157】
次の化合物が同様に得られた。
【0158】
【表3−1】

【0159】
【表3−2】

【0160】
【表3−3】

【0161】
【表3−4】

【0162】
【表3−5】

【0163】
【表3−6】

【0164】
実施例2
N'−[2−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシフェニル)アセチル]−2−クロロ−4,6−ジヒドロキシベンゾヒドラジド(「A15」)の調製
【0165】
【化9】

【0166】
20mlのTHF+0.2mlの32%HCl中の720mgのN'−[2−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシフェニル)アセチル]−2−クロロ−4,6−ジベンジルオキシベンゾヒドラジドを、360mgのPd/Cを使用して計算量のH2で水素化した。この水素化溶液を蒸発しシリカゲル上のクロマトグラフィーにかけた。同一の画分を合わせ、蒸発しEtOAcから再結晶化した。収量310mg(65%)の「A15」、m.p.230〜231℃。
【0167】
次の化合物が同様に得られた。
【0168】
【表4−1】

【0169】
【表4−2】

【0170】
実施例3
N'−(2−ヒドロキシ−2−フェニルアセチル)−2−メチル−4,6−ジヒドロキシベンゾヒドラジド(「A18」)の調製
【0171】
【化10】

【0172】
1.6gの2,4−ジヒドロキシ−6−メチル安息香酸を、4mlのSOCl2と共に透明な溶液が形成するまで還流した。SOCl2を除去し、続いてCH2Cl2と共に更に2回、乾燥するまで蒸発した。この酸塩化物を、次いで3mlのDMFに溶解し、1.14gのマンデル酸ヒドラジドを添加した。この混合物を室温で2時間撹拌した後、それをH2Oに添加し、EtOAcで抽出し、乾燥し少量になるまで蒸発した。収量1.49g(50%)の「A18」、m.p.188〜189℃。
【0173】
別の調製法(実施例4)
1.82gの2,4−ジヒドロキシ−6−メチルベンゾヒドラジドを、10mlのDMFに溶解した。1.71gのマンデロイルクロリドをゆっくり添加した。この混合物を室温で2時間撹拌した後、それをH2Oに添加し、EtOAcで抽出し、乾燥し少量になるまで蒸発した。収量2.16g(68%)の「A18」、m.p.188〜189℃。
【0174】
前駆体の合成
実施例5
N'−[2−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシフェニル)アセチル]−2,4−ジベンジルオキシ−6−メチルベンゾヒドラジド
【0175】
【化11】

【0176】
上記物質を2,4−ジベンジルオキシ−6−メチルベンゾヒドラジドおよび3−ヒドロキシマンデル酸から実施例1と同様に調製し、47%の収量、m.p.181〜182℃(Me2COH/Et2Oから)であった。
【0177】
次の化合物が同様に得られた。
N'−[2−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシフェニル)アセチル]−2−クロロ−4,6−ジベンジルオキシベンゾヒドラジド、m.p.160〜162℃(Me2COH/Et2Oから)、61%収量、およびN'−[2−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシフェニル)アセチル]−2,4−ジベンジルオキシ−6−エチルベンゾヒドラジド、m.p.205〜206℃(Me2COH/Et2Oから)、90%収量。
【0178】
実施例6
2,4−ビスベンジルオキシ−6−エチルベンズアルデヒド
【0179】
【化12】

【0180】
1.9gのジヒドロキシ−6−エチルベンズアルデヒド、3.48mlの塩化ベンジルおよび4.7gのK2CO3を5.2mlのDMF中において90℃で2時間撹拌した。このバッチをEtOAcで希釈し水で洗浄した。有機層を、Na2SO4を使用して乾燥し、蒸発しシリカゲル上のクロマトグラフィーにかけた。同一の画分を合わせ蒸発した。油状残渣が静置して数日後に凝固した。エーテル/石油エーテル1:1で処理して3.5g(88%)の2,4−ビスベンジルオキシ−6−エチルベンズアルデヒドを得、これは空気中で変色した。
【0181】
3−クロロ−2−エチル−4−ヒドロキシ安息香酸を同様にベンジル化し、3−クロロ−2−エチル−4−ベンジルオキシ安息香酸が得られ、78%の収率、m.p.208〜210℃であった。
【0182】
実施例7
2,4−ビスベンジルオキシ−6−エチル安息香酸
【0183】
【化13】

【0184】
3.3gの2,4−ビスベンジルオキシ−6−エチルベンズアルデヒドを、63mlのDMSO中に溶解した。32mlの水中の7.9gのNaClO2および7.9gのNaHCO3の溶液を氷冷しながらゆっくり添加し、この間、温度は40℃を超えなかった。この混合物を更に2時間撹拌した後、水で更に希釈しEtOAcで2回抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、Na2SO4を使用して乾燥し、蒸発し、シリカゲル上のクロマトグラフィーにかけ、Me2COHから結晶化した。
2,4−ビスベンジルオキシ−6−エチル安息香酸の収量2.21g(64%)、m.p.126〜127℃。
【0185】
次を同様に調製した。
2,4−ビスベンジルオキシ−6−クロロ安息香酸、m.p.135〜136℃(35%)および3−クロロ−2−エチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒドからの3−クロロ−2−エチル−4−ヒドロキシ安息香酸:収量51%、m.p.138〜139℃。
【0186】
実施例8
2,4−ジベンジルオキシ−6−エチルベンゾヒドラジド
上記物質を、2,4−ビスベンジルオキシ−6−エチル安息香酸およびヒドラジニウムヒドロキシドから実施例1に示した方法によって調製した。収量75%、m.p.140〜141℃。
【0187】
同様の調製手順によって、2,4−ジベンジルオキシ−6−クロロベンゾヒドラジド:収量61%、m.p.166〜167℃、および4−ベンジルオキシ−3−クロロ−2−エチルベンゾヒドラジド:収量85%、m.p.182〜184℃も得られた。
【0188】
実施例9
2,4−ビスベンジルオキシ−6−クロロベンズアルデヒド
【0189】
【化14】

【0190】
12gのクロロ−3,5−ジベンジルオキシベンゼンを40mlのDMF中に溶解した。12mlのPOCl3を5〜10℃で一滴ずつゆっくり添加した。この混合物を室温で更に90分間、次いで80℃で終夜反応させた。この溶液をRotavaporで蒸発し、次いで200mlの氷水に添加した。この混合物をEtOAcで3回抽出し、水で洗浄し、乾燥し蒸発した。シリカゲルクロマトグラフィーによって8.2g(63%)の2,4−ビスベンジルオキシ−6−クロロベンズアルデヒドが得られ、これを(Me2C)2Oから結晶化させた。m.p.85〜86℃。
【0191】
実施例10
アセトキシ(3−クロロフェニル)酢酸
1gのラセミ3−クロロマンデル酸を2mlの塩化アセチルと混合した。透明な溶液が形成し、これを2時間後にRotavaporで蒸発し、(Me2C)2O/石油エーテルを使用して結晶化した。収量670mg(55%)、m.p.118℃。
【0192】
実施例11
3−クロロ−2−エチル−4−ヒドロキシベンゾヒドラジド
上記化合物をPd/Cu上の10mlのMeOHおよび145μlの32%HCl中の300mgの3−クロロ−2−エチル−4−ベンジルオキシベンゾヒドラジドの水素化によって調製した。収量165mg(78%)、233〜235℃(EtOAc/MeCN)。
【0193】
次を同様に調製した。5−クロロ−2,4−ジヒドロキシベンゾヒドラジド、収量84%、m.p.260℃。
【0194】
実施例12
3−クロロ−2−エチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド
【0195】
【化15】

【0196】
40mlのCHCl3中の3.4gのN−クロロスクシンイミドを80mlのCHCl3および1.5mlの濃HCl中に溶解した4gの2−エチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒドに45分間かけて一滴ずつ添加した。この混合物を更に1時間撹拌し、水で洗浄し、乾燥し蒸発した。
【0197】
シリカゲルクロマトグラフィーによって、5−クロロ−2−エチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(m.p.83℃、中程度の極性)および3,5−ジクロロ−2−エチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(m.p.117〜118℃、無極性)に加えて1g(20%)の3−クロロ−2−エチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(m.p.85℃、エーテル/石油エーテル1:1を用いるシリカゲル上の極性物質)が得られた。
【0198】
次の実施例は薬剤組成物に関する。
【0199】
実施例A:注射バイアル
3Lの再蒸留水中の100gの本発明による活性成分および5gのリン酸一水素二ナトリウムの溶液を、2N塩酸を使用してpH6.5に調節し、無菌ろ過し、注射バイアル中に移し、無菌条件下で凍結乾燥し無菌条件下で密封した。各注射バイアルは5mgの活性成分を含む。
【0200】
実施例B:坐剤
20gの本発明による活性成分と100gの大豆レシチンおよび1400gのカカオ脂の混合物を融解し、型に注入し放置して冷却した。各坐剤は20mgの活性成分を含む。
【0201】
実施例C:溶液
溶液を、940mlの再蒸留水中の1gの本発明による活性成分、9.38gのNaH2PO4・2H2O、28.48gのNa2HPO4・12H2Oおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから調製した。pHを6.8に調節し、溶液を1Lにし、放射線照射によって滅菌した。この溶液を点眼薬の形態で使用することができる。
【0202】
実施例D:軟膏
500mgの本発明による活性成分を無菌条件下で99.5gのVaselineと混合した。
【0203】
実施例E:錠剤
1kgの活性成分、4kgの乳糖、1.2kgのバレイショデンプン、0.2kgのタルクおよび0.1kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を、各錠剤が10mgの活性成分を含むように通常の方法でプレスして錠剤を得た。
【0204】
実施例F:糖衣錠
錠剤を実施例Eと同様にプレスし、次いで、通常の方法で、ショ糖、バレイショデンプン、タルク、トラガントおよび染料のコーティングでコートした。
【0205】
実施例G:カプセル
2kgの活性成分を、各カプセルが20mgの活性成分を含むように通常の方法で硬質ゼラチンカプセル中に導入した。
【0206】
実施例H:アンプル
60Lの再蒸留水中の1kgの本発明による活性成分の溶液を無菌ろ過し、アンプル中に移し、無菌条件下で凍結乾燥し無菌条件下で密封した。各アンプルは10mgの活性成分を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)
【化1】

[式中、
1、R2は、それぞれ互いに独立に、H、CHOまたはアセチルを表し、
3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11は、それぞれ互いに独立に、
H、A、OSO2A、Hal、NO2、OR12、N(R122、CN、O−COA、−[C(R122nCOOR12、O−[C(R122oCOOR12、SO3H、−[C(R122nAr、−CO−Ar、O−[C(R122nAr、−[C(R122nHet、−[C(R122nC≡CH、O−[C(R122nC≡CH、−[C(R122nCON(R122、−[C(R122nCONR12N(R122、O−[C(R122nCON(R122、O−[C(R122oCONR12N(R122、NR12COA、NR12CON(R122、NR12SO2A、N(SO2A)2、COR12、S(O)mAr、SO2NR12またはS(O)mAを表し、
3およびR4は、一緒になってCH=CH−CH=CHも表し、
3およびR4、R7およびR8またはR8およびR9は、一緒になって3、4または5個のC原子を有するアルキレンも表し、ここで、1つまたは2つのCH2基は、酸素で置換されていてよく、
Aは、1〜6個のC原子を有する非分枝もしくは分枝のアルキル(ここで、1〜7個のH原子は、Fで置換されていてよい)、または3〜7個のC原子を有する環状アルキルを表し、
Arは、フェニル、ナフチルまたはビフェニルを表し、これらのそれぞれは、非置換であるか、Hal、A、OR12、N(R122、NO2、CN、フェニル、CON(R122、NR12COA、NR12CON(R122、NR12SO2A、COR12、SO2N(R122、S(O)mA、−[C(R122n−COOR12および/または−O[C(R122o−COOR12で一、二または三置換されており、
Hetは、1から4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式または二環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表し、これは、Hal、A、OR12、N(R122、NO2、CN、COOR12、CON(R122、NR12COA、NR12SO2A、COR12、SO2NR12、S(O)mA、=S、=NR12および/または=O(カルボニル酸素)で一、二または三置換されていてよく、
12は、HまたはAを表し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを表し、
mは、0、1または2を表し、
nは、0、1、2または3を表し、
oは、1、2または3を表す]。
【請求項2】
1が、HまたはCHOを表し、
2が、Hを表す、
請求項1に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項3】
3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11が、それぞれ互いに独立に、H、A、Hal、OR12またはO−[C(R122nArを表す、
請求項1または2に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項4】
6が、OHを表す、
請求項1から3の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項5】
3が、H、AまたはHalを表す、請求項1から4の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項6】
8が、OH、A、フェノキシまたはHalを表す、請求項1から5の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項7】
4、R5、R7、R9、R10、R11が、HまたはAを表す、請求項1から6の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項8】
7、R10、R11が、それぞれ互いに独立に、HまたはHalを表す、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項9】
Arが、非置換であるか、Halおよび/またはAで一、二または三置換されたフェニルを表す、請求項1から8の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項10】
Arが、フェニルを表す、請求項1から9の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項11】
Hetが、1から2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表し、この環が、非置換であるか、A、Hal、OHおよび/またはOAで一、二または三置換されていてよい、請求項1から10の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項12】
Hetが、1から2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、この環が、非置換であるか、Aで一または二置換されていてよい、請求項1から11の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項13】
Hetが、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラゾリル、チアゾリル、インドリル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルまたはピペラジニルを表し、これらのそれぞれが、非置換であるか、A、Hal、OHおよび/またはOAで一、二または三置換されている、請求項1から12の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項14】
1が、HまたはCHOを表し、
2が、Hを表し、
3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11が、それぞれ互いに独立に、H、A、Hal、OR12またはO−[C(R122nArを表す、
請求項1から13の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項15】
1が、HまたはCHOを表し、
2が、Hを表し、
3が、H、AまたはHalを表し、
4、R5、R7、R9、R10、R11が、HまたはAを表し、
6が、OHを表し、
8が、OH、A、フェノキシまたはHalを表す、
請求項1から14の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項16】
1が、HまたはCHOを表し、
2が、Hを表し、
3が、H、AまたはHalを表し、
4、R5、R7、R9、R10、R11が、H、AまたはHalを表し、
8およびR9が、一緒になってメチレンジオキシも表し、
6が、OHを表し、
8が、OH、A、フェノキシまたはHalを表す、
請求項1から15の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項17】
1が、H、CHOまたはアセチルを表し、
2が、Hを表し、
3が、H、AまたはHalを表し、
4、R5、R7、R10、R11が、それぞれ互いに独立に、H、AまたはHalを表し、
6が、OHを表し、
8が、OH、A、フェノキシまたはHalを表し、
9が、H、HalまたはOAを表し、
8およびR9が、一緒になってメチレンジオキシも表す、
請求項1から16の一項または複数項に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【請求項18】
次の群から選択される、請求項1に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【請求項19】
a)式IIの化合物
【化2】

(ここで、
1、R7、R8、R9、R10およびR11は、請求項1に示された意味を有する)
を式IIIの化合物と反応させ
【化3】

(ここで、
Lは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応性官能性修飾OH基を表し、
2、R3、R4、R5およびR6は、請求項1に示された意味を有する)、
あるいは
b)式IVの化合物
【化4】

(ここで、
2、R3、R4、R5およびR6は、請求項1に示された意味を有する)
を式Vの化合物と反応させ
【化5】

(ここで、
Lは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応性官能性修飾OH基を表し、
1、R7、R8、R9、R10およびR11は、請求項1に示された意味を有する)、
あるいは
c)式Iの化合物の基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10および/またはR11を、エーテルを加水分解または水素添加分解により開裂することによって別の基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10および/またはR11に変換する、
かつ/あるいは式Iの塩基または酸をその塩の1つに変換することを特徴とする、請求項1から18に記載の式Iの化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体の調製方法。
【請求項20】
請求項1から18に記載の少なくとも1種の化合物、ならびに/または薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)、ならびに場合によっては賦形剤および/またはアジュバントを含む薬物。
【請求項21】
キナーゼシグナル伝達の阻害、調節および/または調整が役割を果す疾患の治療または予防用の薬物の調製のための、請求項1から18に記載の式Iの化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)の使用。
【請求項22】
前記キナーゼがSGKである、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
請求項1から18に記載の化合物によるSGKの阻害によって影響を受ける疾患の治療用の薬物の調製のための、請求項1から18に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)の請求項22に記載の使用。
【請求項24】
糖尿病、肥満、メタボリック症候群(異脂肪血症)、全身および肺の緊張亢進、循環器疾患および腎臓疾患の、一般的に任意のタイプの線維症および炎症過程、癌、腫瘍細胞、腫瘍転移、凝血障害、神経細胞の興奮性、緑内障、白内障、細菌感染、および抗感染療法における治療または予防のための、学習能力および注意を増すための、ならびに細胞老化およびストレスの治療および予防のための、および耳鳴の治療のための薬物の調製のための、請求項1から18に記載の化合物、ならびに薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)の、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
糖尿病が、真性糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性血管症および細小血管症である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
循環器疾患が、心筋梗塞後の心筋線維症、心臓肥大、心不全および動脈硬化である、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
腎臓疾患が、糸球体硬化、腎硬化、腎炎、ネフロパシーおよび電解質排泄障害である、請求項24に記載の使用。
【請求項28】
線維症および炎症過程が、肝硬変、肺線維症、線維性膵炎、リウマチおよび関節症、クローン病、慢性気管支炎、放射線線維症、硬化性皮膚炎、嚢胞性線維症、瘢痕およびアルツハイマー病である、請求項24に記載の使用。
【請求項29】
請求項1から18に記載の少なくとも1種の化合物、ならびに/または薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)、ならびに少なくとも1種の更なる薬物活性成分を含む薬物。
【請求項30】
(a)有効量の請求項1から18に記載の化合物、ならびに/または薬学的に使用できるそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のそれらの混合物を含む)と、
(b)有効量の更なる薬物活性成分と
の別々のパックからなるセット(キット)。

【公表番号】特表2009−526787(P2009−526787A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554620(P2008−554620)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000430
【国際公開番号】WO2007/093264
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】