説明

マンドレルの製造方法

【課題】マンドレルを用いてホースを製造する際にマンドレルの引き抜き性が高いマンドレルを製造する方法の提供。
【解決手段】少なくとも外層が樹脂層からなり、内層に導電性部材を有するマンドレルの表面にコロナ放電を施した直後に離型剤を塗布することを特徴とするマンドレルの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムホース等の製造時に用いられるマンドレルを製造する方法に係り、特にゴムホース等の製造時におけるマンドレルの引き抜き性が高いマンドレルを製造するのに好適な方法に関する。
【0002】
ゴムホースは、ゴムをマンドレル上でホース状に成形し、ゴムを加硫した後、成形したホースからマンドレルを抜き出すことによって製造されている。長尺のホースを製造する場合、このマンドレルの抜き出しには、多大の労力と時間を要するのみならず、ホースの引き抜き時にマンドレルとホースとの摩擦抵抗により、マンドレルの表面層の一部が剥離し、剥離したマンドレルの表面層がホースに付着するという問題があった。
このような問題を解消するためにマンドレルの製造用の樹脂材料中に帯電防止剤を配合させて離型性を向上させることが開示されている。(特許文献1)
樹脂製マンドレルの表面粗さを適度な粗さとすることによって離型剤の塗布性を向上させることが開示されている。(特許文献2)
また、電線やゴムホース等、樹脂とゴム等の等の材質との密着性を改善するために樹脂表面にコロナ放電処理を行うことが開示されている。(特許文献3)
【0003】
【特許文献1】特開2006−159795
【特許文献2】特開平3−153333
【特許文献3】特開平9−17551
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のマンドレルの場合、マンドレルの十分な引き抜き性を維持することが困難であり、特許文献2の場合、マンドレル表面を適度な表面粗さとしても静電気によるホースの引き抜き時にマンドレルとホースとの摩擦抵抗によるマンドレル引き抜き時の向上には限界があった。
特許文献3では、樹脂とゴム等の等の材質との密着性を改善するためのホースであって、マンドレルの引き抜き性の向上に関する記載乃至は示唆はないものである。
本願発明の課題は、マンドレルの引き抜き性を向上させて安全に効率的よく、ホースを製造することができるマンドレルの製造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下のマンドレルの製造方法によって達成される。
<1> 少なくとも外層が樹脂層からなり、内層に導電性部材を有するマンドレルの表面にコロナ放電を施した直後に離型剤を塗布することを特徴とするマンドレルの製造方法である。
<2> 前記内層がゴム層からなることを特徴とする前記<1>に記載のマンドレルの製造方法である。
<3> 前記内層のゴム層がエチレン−プロピレン共重合物からなることを特徴とする前記<2>に記載のマンドレルの製造方法である
<4> 前記外層の樹脂層がポリアミド樹脂からなることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれかに記載のマンドレルの製造方法である。
<5> 前記導電部材が、前記ゴム層に導電剤を配合してなることを特徴とする前記<2>又は<3>に記載のマンドレルの製造方法である。
<6> 前記導電部材が前記ゴム層の芯部に設けられた導電性の芯体であることを特徴とする<2>〜<5>のいずれかに記載のマンドレルの製造方法である
<7>マンドレルの表面にコロナ放電を施した後、30秒以内に離型剤を塗布することを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載のマンドレルの製造方法である
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、マンドレル表面のコロナ放電を施した直後に離型剤を塗布するので、離型剤がマンドレル表面になじんだ状態で保持されており、マンドレル表面の離型効果が比較的長時間維持され、マンドレルの引き抜き性が高度に維持される。
請求項2に記載の発明によれば、内層がゴム層からなるので、柔軟性に富み、かつ、導電性を兼ね備えたマンドレルにすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、内層のゴム層がエチレン−プロピレン共重合物からなるので、安価でかつ加硫時の熱に耐えうる充分な耐熱性を有するマンドレルを提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、マンドレルの外層がポリアミド樹脂からなるので、耐熱性、耐熱変形性等の点でマンドレルの変形等が防止される。
請求項5に記載の発明によれば、ゴム層に導電剤が配合しているので、コロナ放電に際し、導電剤が配合されたゴム層が内部電極として機能し、マンドレル表面において、コロナ放電を均一に行うことができる。
請求項6に記載の発明によれば、ゴム層の芯部に導電性の芯体が設けられているので、コロナ放電に際し、導電性の芯体が内部電極として機能し、マンドレル表面において、コロナ放電をより均一に行うことができる。
請求項7に記載の発明によれば、マンドレルの表面にコロナ放電を施した後、30秒
以内に離型剤を塗布するので、マンドレル表面が電荷を有する状態で離型剤が塗布される結果、離型剤がマンドレル表面に良くなじんだ状態で保持される結果、マンドレルの引き抜き性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、少なくとも外層が樹脂層からなり、内層に導電性部材を有するマンドレルの表面にコロナ放電を施した直後に離型剤を塗布することを特徴とする。マンドレルの外層を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂が好ましく、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン);PP(ポリプロピレン);TPX〔(ポリ4−メチル−1−ペンテン)〕;PS(ポリスチレン);PPE(ポリフェニレンエーテル);PC(ポリカーボーネート);PBT(ポリブチレンテレフタレート);PA(ポリアミド);PI(ポリイミド);PAI(ポリアミドイミド);FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー);PFA(テトラフルオロエチレン−ペルフルオロエチレンコポリマ−)等のフッ素樹脂;ポリエステル系エラストマー、ポリアミド、ポリアミド系等のエラストマーが挙げられる。これらの中での耐熱性、可撓性等の点から、ポリアミド、ポリエステル系エラストマー、TPX〔(ポリ4−メチル−1−ペンテン)〕が好ましい。
【0008】
本発明において、マンドレルは少なくとも外層が樹脂層からなり、その内層はゴム層からなることが望ましい。このゴム層を構成するゴムとしては、耐熱性の高いエチレン−プロピレン共重合物、アクリルゴム、水添化NBR,フッ素ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらの中で供給安定性、コスト、加工性等の点からエチレン−プロピレン共重合物が好ましい。
【0009】
このゴム層は、導電部材からなることが好ましい。導電部材のゴム層とするためには、ゴム層に導電剤を配合してもよく、また、ゴム層を導電部材とするために、ゴム層の芯部に導電性の芯体を設けることができる。導電剤としては、カーボンブラック、鉄、アルミ等の金属粉等が挙げられるが、これらの中で加工性、比重、コストの点から、カーボンブラックが好ましい。導電性の芯体としては、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではないが、銅線、ステンレス線、鉄ワイヤー等が好適に使用される。この場合、これらの芯体は、コロナ放電処理時に内部電極として機能し、内部電極は接地電極とすることが望ましい。
【0010】
マンドレルの外周囲に配置される外部電極は、導電体として、銅パイプ、ステンレスパイプ、鉄パイプ等の管状体の表面に可撓性の樹脂、例えば、フッ素樹脂、フッ素ゴム、シリコーン樹脂、シリコーンゴム等で覆いたものが好ましく用いられる。
コロナ放電処理には、マンドレルの外部表面に絶縁材で覆った外部電極を設置し、高周波電圧を印加することが望ましい。コロナ放電の条件として、コロナ出力は好ましくは
400W〜1500W、より好ましくは600W〜1000Wである。
【0011】
本発明において、マンドレル表面にコロナ放電を施した直後にマンドレル表面に離型剤を塗布する。ここにコロナ放電を施した直後とは、コロナ放電を施した後、できるだけ、早いタイミングで離型剤を塗布することが望ましい。この理由は、マンドレル表面にコロナ放電を施すと、マンドレル表面の電荷が確実に保持された状態で離型剤を塗布することによってマンドレル表面に離型剤を均一にかつ確実に保持するのに有効となる。
したがって、マンドレル表面にコロナ放電を施してから時間が経過しすぎると、マンドレル表面の電荷が消失する恐れがあるので、コロナ放電の条件にもよるが、マンドレル表面にコロナ放電を施してから、好ましくは60秒以内、より好ましくは30秒以内に離型剤を塗布することが望ましい。
【0012】
本発明において、離型剤は特に制限されず、従来この種の離型剤に使用されている、例えば、ノニオン系界面活性剤、ノニオン型とアニオン型の界面活性剤の混合系、ジメチルシリコーン、変性シリコーンオイル等のシリコーン類、ノニオン型界面活性剤とシリコーン類の混合系、フッ素系の離型剤等を使用することができる。
離型剤は、水分散液タイプ、乳化分散液タイプとして用いると、本発明の機能がより効果的に発揮される。
【0013】
本発明の製造方法で得られるマンドレルは、例えば、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、エチレン−プロプレンゴム、オレフィン系ゴムの他、樹脂やエラストマーからなるホースの製造にも有効である。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例よりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
実施例1
内部電極用に芯部にステンレス線が内蔵した内層ゴム層(エチレン−プロピレン共重合物)の表面にポリアミド樹脂(UBEナイロン6:宇部興産社製)からなる外層が有する直径15mmのマンドレルを作製した。
一方、ステンレスパイプにシリコンゴム製の絶縁体を被覆した後、コイル状に調整した外部電極の内部空間部に前記マンドレルを配置し、10m/分の速度で外部電極内を移動させながら、周波数はコロナ出力800Wでコロナ放電処理を行った。
次にコロナ放電処理が施されたマンドレルの表面に水分散型の離型剤(KM740T:信越化学社製)を塗布した。このとき、マンドレルの表面にコロナ放電処理してから、離型剤を塗布するまでの時間は30秒であった。
【0015】
比較例1
マンドレル表面にコロナ放電処理をすることなく、離型剤を塗布した他は、実施例1と同様にしてマンドレルを作製した。
比較例2
マンドレルの表面にコロナ放電処理してから、離型剤を塗布するまでの時間を90秒とした他は、実施例1と同様にしてマンドレルを作製した。
【0016】
実施例1、比較例1及び比較例2のそれぞれのマンドレルの表面に補強剤、可塑剤、加硫剤等を含むブチルゴム混練物をマンドレルの上に押し出し、その上に補強系外面ゴムを成形し、その後、加硫して内面ゴム、補強層、外面ゴムからなるホースを成形した。
【0017】
実施例1、比較例1及び比較例2の各ホースの製造に際して、マンドレルの引き抜き性を対比した。
<マンドレルの引き抜き性の評価方法>
200mのマンドレル上に上記ホースを成形し、加硫した後、ホースの一方の端部より、水圧をかけて中のマンドレルが完全に抜き出るまでの時間(分)を測定した。この時の水圧は6MPaであった。
【0018】
マンドレルの引き抜き性の評価結果、実施例1では、90秒でマンドレルが完全に抜き出せたのに対し、比較例1では480秒、比較例2では460秒かかった。
このことから、本発明のマンドレルの製造方法では、マンドレルの引き抜き性に優れていることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外層が樹脂層からなり、内層に導電性部材を有するマンドレルの表面にコロナ放電を施した直後に離型剤を塗布することを特徴とするマンドレルの製造方法。
【請求項2】
前記内層がゴム層からなることを特徴とする請求項1に記載のマンドレルの製造方法。
【請求項3】
前記内層のゴム層がエチレン−プロピレン共重合物からなることを特徴とする請求項2に記載のマンドレルの製造方法。
【請求項4】
前記外層の樹脂層がポリアミド樹脂からなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のマンドレルの製造方法。
【請求項5】
前記導電部材が、前記ゴム層に導電剤を配合してなることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のマンドレルの製造方法。
【請求項6】
前記導電部材が前記ゴム層の芯部に設けられた導電性の芯体であることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載のマンドレルの製造方法。
【請求項7】
マンドレルの表面にコロナ放電を施した後、30秒以内に離型剤を塗布することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに1項に記載のマンドレルの製造方法。

【公開番号】特開2010−155408(P2010−155408A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335700(P2008−335700)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】