説明

ミクロポーラス炭素系材料、ミクロポーラス炭素系材料の製造方法及びミクロポーラス系炭素材料を用いた水素吸蔵方法

【課題】元来有する細孔機能を維持しながら担持された金属が有する機能を発現可能なミクロポーラス炭素系材料を提供する。
【解決手段】ミクロポーラス炭素系材料5であって、0.7nm以上2nm以下の範囲内の3次元の長周期規則構造と、ミクロ細孔2aとを有するミクロポーラス炭素系材料であって、ミクロ細孔2a表面に遷移金属4が担持されている。この材料を、遷移金属を含む多孔質材料の表面及びミクロ細孔内に有機化合物を導入し、この有機化合物を化学気相成長法により炭化して遷移金属を含むミクロポーラス炭素系材料と多孔質材料の複合体を得る工程と、多孔質材料を除去する工程とを有する方法、又は多孔質材料の表面に有機化合物を導入して化学気相成長法によりミクロポーラス炭素系材料を得て、このミクロポーラス炭素系材料を遷移金属塩溶液中に浸漬・含浸し、ミクロポーラス炭素系材料の表面に遷移金属を担持する方法により得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵材料や燃料電池用電極触媒に適用して好適なミクロポーラス炭素系材料、ミクロポーラス炭素系材料の製造方法及びミクロポーラス系炭素材料を用いた水素吸蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギー源として水素を利用することが注目されている。ところが水素は常温では液化しない気体であるために輸送や貯蔵が難しく、このことが水素利用の大きな障害となっている。そこで、例えば、高圧に圧縮する、低温で液化する、水素吸蔵合金やケミカルハイドライドを利用する、等の様々な方法が提案されている。しかし、これらのどの方法にも一長一短がある。
【0003】
このような背景から、炭素材料を水素貯蔵材料として利用する試みがなされている。水素吸蔵能の大きな炭素材料を合成するためには、例えばミクロレベルで規則的な構造を有する炭素材料を合成する等、炭素材料を分子レベルで設計、合成することが必要である。これまでの合成方法は、石油や石炭から取れる重質芳香族化合物であるピッチや汎用高分子類等の既存材料を炭素化して目的の構造や特性にいかに近づけるかという点に主眼を置いて合成するものである。このため、これまでの合成方法では、分子レベルで設計された炭素材料を合成することは難しい。
【0004】
そこで、規則的な構造を有するメソ多孔質炭素材料を合成する方法として、鋳型としてメソ多孔質(メソポーラス)シリカを使用する方法が提案されている(非特許文献1,2参照)。しかし、この方法では、規則性を有するメソ細孔構造を合成することはできるが、更に細孔が小さな規則性を有するミクロ細孔構造を合成することはできない。そこで、本願発明の発明者らのグループは、鋳型としてY型ゼオライトを使用してミクロ細孔構造を合成する方法を提案している(特許文献1,2、非特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3951567号公報
【特許文献2】特開2003−206112号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】RooR, et al., J.Phys.Chem.B1999;103:7743-7746
【非特許文献2】LeeJ, et al., Chem.Commun.1999;2177-2178
【非特許文献3】Kyotani, et al., Chem.Commun.2000;2365-2366
【非特許文献4】MaZX, et al., Carbon,40:pp.2367-2374(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、ミクロ細孔構造に機能性を付与するためには、ミクロ細孔内に遷移金属をドープ又は担持する必要がある。しかしながら、従来のミクロポーラス炭素系材料の製造方法によれば、ミクロポーラス炭素系材料のBET比表面積が最大で数100m2/g程度と小さい上に、ミクロ細孔の径が制御されていない。このため、遷移金属のドープ又は担持の効果を十分に得ることができない。または、遷移金属の添加効果が発現したとしても、遷移金属の添加に伴う比表面積の低下によって、ミクロポーラス炭素系材料が元来有している細孔機能が損なわれる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係るミクロポーラス炭素系材料は、0.7nm以上2nm以下の範囲内の3次元の長周期規則構造と、ミクロ細孔とを有するミクロポーラス炭素系材料であって、ミクロ細孔表面に遷移金属が担持されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るミクロポーラス炭素系材料の製造方法は、遷移金属を含む多孔質材料の表面及びミクロ細孔内に第1の有機化合物を導入し、第1の有機化合物を化学気相成長法により炭化して遷移金属を含むミクロポーラス炭素系材料と多孔質材料の複合体を得る工程と、多孔質材料を除去する工程と、を有することを特徴とする。また、本発明に係る他のミクロポーラス炭素系材料の製造方法は、多孔質材料の表面及びミクロ細孔内に有機化合物を導入し、有機化合物を化学気相成長法により炭化してミクロポーラス炭素系材料と多孔質材料の複合体を得る第1工程と、多孔質材料を除去する第2工程と、第2工程で得られたミクロポーラス炭素系材料を遷移金属塩溶液中に浸漬・含浸し、ミクロポーラス炭素系材料の表面に遷移金属を担持する第3工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るミクロポーラス系炭素材料を用いた水素吸蔵方法は、上記本発明に係るミクロポーラス炭素系材料を用いて、−40℃から150℃の範囲で水素を吸蔵放出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、細孔機能を維持しながら、担持した遷移金属が有する機能を発現可能なミクロポーラス炭素系材料が得られる。また、本発明によれば、本発明に係るミクロポーラス炭素系材料を用いるため、低温で効率良く水素の吸蔵及び放出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料の製造方法に用いる多孔質材料を示す図である。(b)多孔質材料とミクロポーラス炭素系材料との複合体を示す図である。(c)ミクロポーラス炭素系材料の一例を模式的に示す図である。(d)本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料の一例を模式的に示す図である。
【図2】白金担持ゼオライトを鋳型として調製した白金担持ゼオライト鋳型カーボンのX線回折パターンを示す図である。
【図3】(a)実施例2のTEM写真を示す図である。(b)実施例2のTEM写真を示す図である。(c)実施例1のTEM写真を示す図である。(d)実施例1のTEM写真を示す図である。
【図4】(a)水溶液中の液相還元により調製した白金担持ゼオライト鋳型カーボンのX線回折パターンを示す図である。(b)図4(a)の部分を拡大した図である。
【図5】(a)実施例4のTEM写真を示す図である。(b)実施例4のTEM写真を示す図である。(c)実施例5のTEM写真を示す図である。(d)実施例5のTEM写真を示す図である。
【図6】(a)エタノール溶液中の液相還元により調製した白金担持ゼオライト鋳型カーボンのX線回折パターンを示す図である。(b)図6(a)の部分を拡大した図である。
【図7】(a)実施例6のTEM写真を示す図である。(b)実施例6のTEM写真を示す図である。(c)実施例7のTEM写真を示す図である。(d)実施例7のTEM写真を示す図である。
【図8】気相還元により調製した白金担持ゼオライト鋳型カーボンのX線回折パターンを示す図である。
【図9】(a)水素雰囲気の気相還元で調製した実施例8のTEM写真を示す図である。(b)水素雰囲気の気相還元で調製した実施例8のTEM写真を示す図である。
【図10】(a)気相還元により調製したニッケル担持ゼオライト鋳型カーボンである実施例9のTEM写真を示す図である。(b)実施例9のTEM写真を示す図である。(c)実施例9の制限視野で撮影したTEM像を示す図である。(d)図10(c)の部分の制限視野電子線回折像を示す図である。
【図11】気相還元により調製したニッケル担持ゼオライト鋳型カーボンのX線回折パターンを示す図である。
【図12】実施例4、9及び比較例1、2の試料の水素吸蔵量を示すグラフである。
【図13】実施例4、9及び比較例2の試料の低圧側の水素吸蔵量を示すグラフである。
【図14】比較例2、3の試料の水素吸蔵量を示すグラフである。
【図15】実施例4、9及び比較例2〜4の試料におけるBET比表面積と水素吸蔵量の関係を示すグラフである。
【図16】実施例4の水素吸放出量を示すグラフである。
【図17】比較例1の水素吸蔵量の温度依存性を示すグラフである。
【図18】比較例2の水素吸蔵量の温度依存性を示すグラフである。
【図19】実施例4の水素吸蔵量の温度依存性を示すグラフである。
【図20】比較例1の150℃における水素吸放出曲線を示すグラフである。
【図21】実施例4の150℃における水素吸放出曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料、ミクロポーラス炭素系材料の製造方法及びミクロポーラス系炭素材料を用いた水素吸蔵方法を説明する。
【0014】
<ミクロポーラス炭素系材料>
図1に、本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料の一例を模式的に示す。図1(d)に示す本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料5は、多孔質材料としてゼオライト1を用い、ゼオライト1を鋳型として得られたゼオライト炭素2に遷移金属である白金4を担持したものである。より詳細には、図1(c)に示すゼオライト炭素2は、図1(a)に示すゼオライト1のミクロ孔1aに炭素源である有機化合物を導入した後に加熱処理して図1(b)に示すゼオライト1とゼオライト炭素2との複合体3を得て、その後にゼオライト1のみを除去することによって得られるものである。ゼオライト炭素2は、鋳型として用いたゼオライト1の構造的特徴が反映された、0.7nm以上2nm以下の範囲内の3次元の長周期規則構造とミクロ細孔2aとを有する。
【0015】
ゼオライト炭素2は、その製造にあたり、使用する鋳型材である特定の3次元規則構造を有するゼオライト1が備える構造的特徴を反映した多孔性炭素材料である。ゼオライト炭素2は、直径が0.1〜2nmの範囲内にある細孔(ミクロ細孔2a)が網目状に連結した構造を有する。具体的には、図1(c)に示すように、ゼオライト炭素2は、0.5〜100nmの範囲内の3次元長周期規則構造を有すると共に、ミクロ細孔2aを有する。より具体的には、ゼオライト炭素2は、炭素鎖と炭素鎖の間の距離が0.5〜100nmであることが好ましい。より好ましくは、炭素鎖と炭素鎖の間の距離が0.7〜50nmであることが好ましい。また、炭素鎖と炭素鎖の間の距離が0.7〜2nmであることが更に好ましい。このように、ゼオライト炭素2は、炭素鎖と炭素鎖の間の距離が任意の間隔で3次元的に長周期にわたって規則的に繰り返した構造を有する炭素材料である。なお、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry:国際純正及び応用化学連合)では、直径2nm以下の細孔をミクロ(マイクロ)細孔(micropore)、直径2〜50nmの細孔をメソ細孔(mesopore)、直径50nm以上の細孔をマクロ細孔(macropore)と定義している。ミクロ細孔を有する物質を総称してミクロ(マイクロ)ポーラス材料と称している。
【0016】
本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料5は、ミクロ細孔2a表面に遷移金属4が担持されている。ここで、ミクロ細孔2a表面とは、ミクロポーラス炭素系材料5を構成するゼオライト炭素2のミクロ細孔2aの表面を指し、ミクロ細孔2a内部の表面も指す。遷移金属4は、ミクロ細孔2a表面だけではなく、ミクロ細孔2a以外の部分、つまり、ゼオライト炭素2の外表面に担持されても良い。遷移金属4は、ミクロポーラス炭素系材料5において、0.01〜10wt%の濃度範囲内で担持することが好ましい。この場合、遷移金属4は、微粒子の形態でミクロ細孔の表面に担持されている。担持されている遷移金属4が0.01wt%以下である場合、遷移金属の機能を十分に得ることができない。一方、担持されている遷移金属4が10wt%以上である場合には、BET比表面積が低下したり、遷移金属の微粒子が大きくなり過ぎる。遷移金属の微粒子の大きさは、3nm以下であることが好ましいが、より小さい方が遷移金属の機能と高いBET比表面積を維持する上で望ましい。遷移金属の濃度が0.01〜10wt%の場合、細孔機能を維持しながら、担持した遷移金属が有する機能が発現可能なミクロポーラス炭素系材料が得られる。
【0017】
担持する遷移金属は、機能性を付与するという観点で遷移金属であることが好ましいが、遷移金属以外の金属であっても良い。また、遷移金属は単体だけではなく、2種類以上の金属が担持されていても良く、合金であっても良い。なお、耐酸化性を機能として付与する場合には、遷移金属のうち白金を用いることが望ましい。白金を用いる場合には、0.05wt%〜6wt%の範囲で用いることが好ましい。担持する金属の機能を得る為には、少なくとも0.05wt%以上であることがより好ましい。金属を多く用いるとコストアップの要因ともなる。特に白金等の貴金属やレアメタルを用いるとコスト高となるため、担持する場合には多くとも6wt%程度以下が好ましい。これ以上担持することは技術的には可能であるが、担持の割合に対して性能向上が見込めない場合が多い。
【0018】
用いる遷移金属は、白金の他に、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム及びランタン、セリウム等のランタノイド類があげられる。製造プロセスや水素貯蔵用途等の還元雰囲気を維持できる使用環境では、担持する金属に耐酸化性を持たせなくとも、使用可能である。この場合には、金属結合型又は侵入型水素化物(M−H結合)を形成する遷移金属であれば使用できる。特に、資源的な観点から、金属結合型又は侵入型水素化物(M−H結合)を形成する遷移金属を用いることが好ましい。
【0019】
本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料5は、遷移金属4を担持した状態で、ミクロ細孔2aの占める容積が1.0cm3/g以上であることが好ましい。ミクロ細孔2aの占める容積は、1.2cm3/g以上であることがより好ましく、1.5cm3/g以上であることが更に好ましい。また、本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料5は、遷移金属4を担持した状態で、BET比表面積が2500m2/g以上であることが好ましい。BET比表面積は3000m2/g以上であることがより好ましく、BET比表面積が3500m2/g以上であることが更に好ましい。ミクロ細孔の占める容積が1.0cm3/g以下又はBET比表面積が2500m3/g以下である場合には、ミクロポーラス炭素系材料の十分な水素貯蔵性能が得られない場合がある。なお、本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料を水素貯蔵材料として利用する場合、ミクロ細孔の占める容積の割合は多いほど好ましいが、ミクロ細孔の占める容積Aと直径が2〜50nmの範囲内にある細孔(メソ細孔容積)が占める容積Bの比率A/Bは少なくとも2以上、好ましくは3以上であることが望ましい。比率A/Bが低下した場合、同一比表面積であっても水素貯蔵性能が低下する可能性がある。
【0020】
本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料は、その構造的特徴として2次元積層規則性が少ないほど、ガス吸着力等が高くなる。例えば、粉末X線回折測定を行った場合には、得られるX線回折パターンは、2次元積層規則性を示す通常26°付近に現れる回折ピークはできるだけ少ないほうが好ましい。この26°付近に現れる回折ピークの存在は、無孔質の炭素層の増加を意味し、BET比表面積の低下を意味する。
【0021】
本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料は、−40℃から150℃の範囲で水素を吸蔵放出させることができる。元来、金属担持されていない炭素系材料は、温度上昇と共に水素吸蔵量が低下する問題があったが、本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料は水素吸蔵能の温度依存性が改良された材料であり、温度上昇と共に吸蔵能が向上する。上限である150℃は、材料の安定性、材料を充填する筐体の設計自由度を考慮したものである。燃料電池の廃熱利用を考慮すると、100℃以下で使用することが望ましい。また、本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料は、水素の吸蔵能だけではなく、吸蔵した水素を容易に放出させることが可能である。このため、水素吸蔵材料として有効に使用することが可能となる。このように、本発明の実施の形態に係る水素吸蔵方法では、本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料を用いるため、低温で効率良く水素の吸蔵及び放出が可能となる。
【0022】
<ミクロポーラス炭素系材料の製造方法>
本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料は、遷移金属を含む多孔質材料の表面及びミクロ細孔内に有機化合物を導入し、有機化合物を化学気相成長法により炭化して遷移金属を含むミクロポーラス炭素系材料と多孔質材料の複合体を得る工程と、多孔質材料を除去する工程と、を有する製造方法により得られる。また、本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料は、多孔質材料の表面及びミクロ細孔内に有機化合物を導入し、有機化合物を化学気相成長法により炭化してミクロポーラス炭素系材料と多孔質材料の複合体を得る第1工程と、多孔質材料を除去する第2工程と、第2工程で得られたミクロポーラス炭素系材料を遷移金属塩溶液中に浸漬・含浸し、ミクロポーラス炭素系材料の表面に遷移金属を担持する第3工程と、を有する製造方法によっても得られる。以下、詳細に説明する。
【0023】
まず、上記した構造的な特徴を有するミクロポーラス炭素系材料を得るためには、構造内部に空孔を有し、この空孔が網目状に連結した構造を有する多孔質材料を鋳型として用いる。そして、この多孔質材料の表面及びミクロ細孔内部に加熱条件下で有機化合物を導入し、加熱することによって有機化合物を炭化し、多孔質材料に炭素を堆積させる。次に、鋳型である多孔質材料を除去する。この方法により、ミクロ細孔を有するミクロポーラス炭素系材料を容易に製造することができる。有機化合物の炭化・炭素の堆積は、例えば化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法により行う。
【0024】
鋳型として用いる多孔質材料は、ミクロ細孔内部に有機化合物が導入できること、CVD法の際に元の構造を安定に保つこと、生成したミクロポーラス炭素系材料と分離できることが必要である。このため、例えば多孔質酸化物等の耐熱性に優れ、且つ、酸やアルカリで溶解することが望ましい。また、既に述べたように、ミクロポーラス炭素系材料は鋳型の形態を転写した状態で合成される。このため、鋳型として用いる多孔質材料は、結晶(構造)が十分に発達し、粒子径の揃った構造及び組成が均一な材料であることが望ましい。多孔質材料の備えるべき材料物性と、得られるミクロポーラス炭素系材料の物性を考慮すると、多孔質材料としてゼオライトを用いることが好ましい。ゼオライトは、シリカ構造のケイ素(Si)の一部がアルミニウム(Al)で置換されたアルミノケイ酸塩であり、骨格自体が負電荷を持つことから構造内にカチオンが分布した構造を有する。また、ゼオライトは、Si/Alモル比、カチオンの種類や量、及びカチオンに水和した水分子の数によって多様な結晶構造を有し、例えば細孔が2次元的に連結した構造や3次元的に連結した構造等の、多様な大きさの細孔を有する多孔質材料である。代表的なゼオライトとしては、ケージ又はスーパーケージといった空隙構造を有するものが挙げられ、ゼオライトの中でもFAU型ゼオライト、FAU型ゼオライトの中でもY型ゼオライトを用いることが望ましい。多孔質材料の除去は、生成したミクロポーラス炭素系材料を分離できる方法であれば如何なる方法を用いても良い。例えば、ゼオライトは酸で溶解可能であり、例えば、塩酸やフッ化水素酸を用いることで容易に溶解できる。
【0025】
ミクロ細孔表面に遷移金属が担持されたミクロポーラス炭素系材料を得るために、鋳型として遷移金属を含む多孔質材料を用いる。遷移金属を含む多孔質材料の表面及びミクロ細孔内に有機化合物を導入し、有機化合物を加熱により炭化すると、多孔質材料の構造を反映し、なおかつ表面に遷移金属が転写されたミクロポーラス炭素系材料と多孔質材料との複合体が得られる。得られた複合体を酸によって処理し、多孔質材料を除去することにより、容易にミクロ細孔表面に遷移金属が担持されたミクロポーラス炭素系材料が得られる。遷移金属を含む多孔質材料は、例えば多孔質材料をイオン交換することにより、容易に得ることができる。用いる遷移金属は、例えば白金があげられる。
【0026】
有機化合物を炭化して炭素を堆積するために用いるCVD法は、鋳型等の基板上に特定の元素又は元素組成からなる薄膜(例えば炭素からなる薄膜)を作る工業的手法である。通常、原料物質を含むガスに熱や光によってエネルギーを与えたり、高周波でプラズマ化することにより、化学反応や熱分解によって原料物質がラジカル化して反応性に富むようになり、基板上に原料物質が吸着して堆積することを利用する技術である。温度を上げて原料物質を堆積させるものを熱CVD法、化学反応や熱分解を促進させるために光を照射するものを光CVD法、ガスをプラズマ状態に励起する方法をプラズマCVD法と区別することもある。
【0027】
CVD法で用いる有機化合物は、常温で気体であるか、又は気化できるものが好ましい。気化の方法は、沸点以上に熱する方法や雰囲気を減圧にする方法等がある。用いる有機化合物は、当業者に知られた炭素源物質の中から適宜選択して使用できる。特に、加熱により熱分解する化合物が好ましい。例えば、CVD法で鋳型として用いる多孔質材料の骨格上(例えばシリカゲル骨格上)に炭素を堆積することができる化合物が好ましい。
【0028】
また、用いる有機化合物は、水素を含む有機化合物でも良い。この有機化合物は、不飽和又は飽和の有機化合物でも良く、これらの混合物でも良い。用いる有機化合物は、二重結合及び/又は三重結合を有する不飽和直鎖又は分枝鎖の炭化水素、飽和直鎖又は分枝鎖の炭化水素等が含まれて良く、飽和環式炭化水素や芳香族炭化水素等を含んでいても良い。有機化合物は、例えば、アセチレン、メチルアセチレン、エチレン、プロピレン、イソプレン、シクロプロパン、メタン、エタン、プロパン、ベンゼン、ビニル化合物、エチレンオキサイド等があげられる。中でも、用いる有機化合物は、多孔質のミクロ細孔内に入り込むことが可能なもの、例えばアセチレン、エチレン、メタン、エタン等を用いることが望ましい。有機化合物は、より高温でのCVDに用いるものと、より低温でCVDに用いるものとでは互いに同一のものであっても異なっていても良い。例えば、低温でのCVDではアセチレン、エチレン等を使用し、高温でのCVDにはプロピレン、イソプレン、ベンゼン等を使用しても良い。
【0029】
多孔質材料のミクロ細孔内部に有機化合物を導入する際は、多孔質材料を予め減圧にしても良く、系自体を減圧下にしても良い。本発明の実施の形態では、多孔質材料は安定であるので、CVDにより炭素が堆積する方法であれば如何なる方法を用いても良い。通常は、多孔質材料の骨格上に有機化合物の化学反応又は熱分解で生成した炭素を堆積(又は吸着)させ、多孔質材料と炭素を含むミクロポーラス炭素系材料からなる複合体を得る。CVDを行う際は、加熱温度は、使用する有機化合物によって適宜適切な温度を選択できる。通常は、400〜1500℃であることが好ましい。加熱温度は、450〜1100℃であることがより好ましく、500〜900℃が更に好ましい。また、550〜800℃であることがより好ましく、575〜750℃更には約600〜700℃の範囲内にすることが望ましい。加熱温度はCVD処理時間及び/又は反応系内の圧力に応じて適宜適切な温度を選択することもできる。CVDの処理時間は、十分に炭素堆積が得られる時間とすることが好ましく、使用する有機化合物や温度によって適宜適切な時間を選択できる。
【0030】
CVDは、減圧又は真空下、加圧下、若しくは不活性ガス雰囲気下で行うことができる。不活性ガス雰囲気下で行う場合には、不活性ガスとしては例えばN2ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴン等があげられる。CVD法では、通常、気体状の有機化合物をキャリアガスと共に多孔質材料に接触させるように流通させながら加熱し、容易に気相で多孔質材料上に炭素を堆積させることができる。キャリアガスの種類、流速、流量及び加熱温度は使用する有機化合物や多孔質材料の種類によって適宜調節する。キャリアガスは、例えば上記の不活性ガス等があげられる。爆発限界を考慮して、酸素ガス又は水素ガスとの混合物等であっても良い。
【0031】
CVD法により多孔質材料のミクロ細孔内部に炭素を堆積させる条件として、ミクロ細孔中の炭素の充填量は10〜40wt%の範囲内であることが好ましい。また、炭素の充填量は15〜30wt%の範囲内に制御することがより好ましい。炭素の充填量が10wt%以下である場合、炭素骨格形成に必要な炭素が不足し、安定な規則性構造の維持が困難になる。一方、炭素の充填量が40wt%以上である場合には、必要以上の炭素が付着することになり、結果としてミクロ細孔容積及びBET比表面積の低下を招くこととなる。
【0032】
CVDによる炭素の堆積(吸着)後、多孔質材料とミクロポーラス炭素系材料の複合体を、CVD温度より高い温度で更に加熱しても良い。この加熱温度は、使用する有機化合物によって適宜選択できるが、通常は700〜1500℃である。加熱温度は、750〜1200℃であることが好ましく、800〜1100℃であることがより好ましい。また、825〜1000℃であることが好ましく、850〜950℃、更には約875〜925℃の範囲内にすることが好ましい。また、加熱温度は、加熱時間及び/又は反応系内の圧力に応じて適宜選択することもできる。また、加熱時間は本明細書中に開示されている分析法等を利用して生成物を分析し、その結果に基づいて十分な炭素堆積に要求される時間を設定することができる。
【0033】
また、多孔質材料とミクロポーラス炭素系材料の複合体に更に有機化合物を導入して加熱し、更に炭素を堆積させても良い。この場合には、CVD法により得られたミクロポーラス炭素系材料の構造がより安定する。炭化は、CVD法によって行っても良く、他の加熱方法で行っても良い。また、加熱温度はCVD温度より高温であっても良く、低温であっても良い。また、導入する有機化合物は、CVD法で導入した有機化合物と同じであっても良く、異なっていても良い。この操作は、複数回行っても構わない。
【0034】
多孔質材料の表面及びミクロ細孔内に有機化合物を導入してCVDを行う前に、有機化合物を含浸して炭化しても良い。含浸する有機化合物は、多孔質材料のミクロ細孔径より小さな分子サイズを有する有機化合物であれば使用できる。具体的には、有機化合物は、炭化歩留まりの高いフルフリルアルコール等の熱重合性モノマーを用いることが好ましい。有機化合物の含浸方法は、モノマーが液体であればそのまま、固体であれば溶媒に溶解して多孔質材料と接触させる等、公知の手段を採用することができる。なお、多孔質材料の表面に残った過剰なモノマーは、予め洗浄等で除去することが好ましい。例えば、多孔質材料を室温減圧下でフルフリルアルコールと接触させた後、混合物を大気圧に戻すことにより、多孔質材料のミクロ細孔内にフルフリルアルコールを導入することができる。また、多孔質材料の表面に付着した余分なアルコールは、有機溶剤による洗浄で除去できる。
【0035】
用いる有機化合物は、多孔質材料のミクロ細孔内に挿入可能な大きさを有し、且つ、炭化時に炭素としてミクロ細孔内に残留するものであれば特に制限は無く用いることができる。例えば、有機化合物として、酢酸ビニル・アクリロニトリル・塩化ビニル等のビニル化合物、塩化ビニリデン・メタクリル酸メチル等のビニリデン化合物、無水マレイン酸等のビニレン化合物、エチレンオキサイド等のエポキシ誘導体があげられる。また、グルコース・サッカロース等の糖類、脂肪族多価アルコール類、レゾルシノール・カテコール等の芳香族多価アルコール(ジオール)類、チオフェン等の含窒素複素環化合物、ピリジン・ピリミジン等の含窒素複素環化合物も利用することができる。
【0036】
本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料は、多孔質材料の表面及びミクロ細孔内に有機化合物を導入し、有機化合物を化学気相成長法により炭化してミクロポーラス炭素系材料と多孔質材料の複合体を得る第1工程と、多孔質材料を除去する第2工程と、第2工程で得られたミクロポーラス炭素系材料を遷移金属塩溶液中に浸漬・含浸し、ミクロポーラス炭素系材料の表面に遷移金属を担持する第3工程と、を有する方法によっても得ることができる。この方法により、遷移金属を含まない多孔質材料を用いて容易にミクロ細孔表面に遷移金属が担持されたミクロポーラス炭素系材料が得られる。この方法では、第1工程及び第2工程により、0.7nm以上2nm以下の範囲内の3次元の長周期規則構造と、ミクロ細孔とを有するミクロポーラス炭素系材料を得る。その後、得られたミクロポーラス炭素系材料を遷移金属塩溶液中に浸漬・含浸し、ミクロポーラス炭素系材料に吸着した遷移金属を還元し、ミクロ細孔表面に遷移金属を担持する。遷移金属を還元する方法として、例えば液相還元と気相還元があげられる。
【0037】
液相還元によりミクロ細孔表面に遷移金属を担持する方法を説明する。第3工程は、ミクロポーラス炭素系材料を遷移金属塩溶液中に浸漬・含浸して混合液を得る浸漬工程と、この混合液を減圧下で撹拌した後、遠心分離により遷移金属が吸着したミクロポーラス炭素系材料を分離する分離工程と、分離により得た遷移金属が吸着したミクロポーラス炭素系材料と還元剤溶液とを混合し、吸着した遷移金属を液相還元してミクロポーラス炭素系材料の表面及びミクロ細孔内に析出させる液相還元工程と、遷移金属を析出させたミクロポーラス炭素系材料を純水で洗浄して乾燥させる乾燥工程と、を有する。この液相還元により、ミクロポーラス炭素系材料に吸着した遷移金属を還元して析出させることができる。
【0038】
遷移金属塩溶液は、濃度が10ppm以上5wt%以下の範囲内に調製されていることが好ましい。濃度が10ppm以下である場合、遷移金属の担持効果が得られなくなる。一方、濃度が5wt%以上である場合には、遷移金属の担持量が多すぎてBET比表面積が低下し、結果としてミクロポーラス炭素系材料が元来有している細孔機能が損なわれる。
【0039】
遷移金属塩を溶解する溶媒は、後の工程における脱溶媒、乾燥を考慮すると、常圧における沸点が100℃以下の溶媒であることが望ましい。100℃以下の沸点を有し、金属塩の溶解度を考慮すると、水、アルコール、アセトン、エーテル等を用いることが好ましく、これらを混合した混合溶媒として用いることも可能である。製造工程において、担持する遷移金属を酸化する等の影響を与えない溶媒であり、後述する還元剤により還元されない溶媒であることが好ましい。担持する遷移金属として、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム及びランタン、セリウム等のランタノイド類を用いる場合には、水を含まない溶媒であることが好ましく、溶媒として1級アルコール又はエーテルを用いることが好ましい。
【0040】
添着した金属イオンを還元する方法は、還元剤を溶媒に溶かして用い、この還元剤溶液がヒドリド錯体を含むことが好ましい。ヒドリド錯体は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、及びアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムのうちのいずれかを含むことが好ましく、2種類以上含んでいても良い。
【0041】
次に、気相還元によりミクロ細孔表面に遷移金属を担持する方法を説明する。上記第3工程は、ミクロポーラス炭素系材料を遷移金属塩溶液中に浸漬・含浸して混合液を得る浸漬工程と、この混合液から蒸発乾固により遷移金属が添着したミクロポーラス炭素系材料を分離する蒸発乾固工程と、蒸発乾固して得たミクロポーラス炭素系材料を水素を用いた気相還元により遷移金属を還元する気相還元工程と、を有する。気相還元では、ミクロポーラス炭素系材料のミクロ細孔内に還元剤が侵入しやすい。このため、ミクロ細孔内に吸着した遷移金属を効率良く還元することができ、ミクロポーラス炭素系材料に担持する遷移金属の量や担持状態を制御することが可能となる。このように、気相還元を用いた方法によれば、ミクロ細孔の径の制御が可能となり、ミクロポーラス炭素系材料が元来有している細孔機能を損なわずに遷移金属を担持することができる。
【0042】
還元に用いるガスは、添着した遷移金属イオンを還元する能力を有する還元性ガスであれば問題は無い。できるだけ温和な条件で還元するためには、還元性ガスとして水素を用いることが望ましい。還元温度は、液相還元の場合と異なり昇温する必要がある。処理速度とミクロポーラス炭素系材料へのダメージを考慮すると、概ね100〜350℃の範囲で行うことが望ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例1〜9及び比較例1〜4により本発明の実施の形態に係るミクロポーラス炭素系材料及びミクロポーラス炭素系材料の製造方法について更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0044】
1.試料の調製
<実施例1:PtY−PFA−5P7(0.5)−H9(3)>
実施例1では、始めに、乾燥したNaYゼオライト2.0gを200mlのPt(NH3)4Cl2水溶液(濃度2.62M)に入れて室温で24時間攪拌した。次に、水溶液を濾過して沈殿物を純水で洗浄する操作を数回繰り返した後に、濾過物を70℃で8時間真空乾燥させることにより白金担持ゼオライト(PtY)を調製した。次に、PtYにフルフリルアルコール(FA)を含浸させ、PtYのミクロ細孔内で重合させることによりミクロ細孔内にポリフルフリルアルコール(PFA)を充填したPtY(PtY−PFA)を調製した。次に、窒素雰囲気下でPtY−PFAを昇温して、温度が700℃に到達した時点でプロピレンガスを5vol%の混合比で導入して0.5時間CVDを行った後に、900℃で3時間熱処理した。そして最後に熱処理後のPtY−PFAからフッ化水素酸処理によりゼオライトを溶解除去することにより、実施例1のミクロポーラス炭素系材料(以下MPCと表記)を得た。これにより得られたMPCを試料PtY−PFA−5P7(0.5)−H9(3)と表記する。
【0045】
<実施例2:PtY−PFA−7P7(1)−H9(3)>
実施例2では、プロピレンガスを7vol%の混合比で導入して1時間CVDを行った他は実施例1と同様に調製した。実施例2では、MPCとして、PtY−PFA−7P7(1)−H9(3)を得た。
【0046】
<実施例3:PtY−PFA−H7(1)−7P7(1)−H9(3)>
実施例3では、窒素雰囲気下でPtY−PFAを昇温し、700℃で1時間熱処理を行った後、プロピレンガスを7vol%の混合比で導入して1時間CVDを行った。プロピレンガスを7vol%の混合比で導入して1時間CVDを行った他は実施例1と同様に調製した。実施例3では、MPCとして、PtY−PFA−H7(1)−7P7(1)−H9(3)を得た。
【0047】
<実施例4:ZTC/Pt−0.8%(w)>
実施例4では、液相還元により白金担持した例を示す。始めに、丸底フラスコに約15gの粉末状のゼオライトを入れ、室温で8時間真空乾燥を行った。次に、丸底フラスコをオイルバスに浸して150℃で8時間真空乾燥を行った後、室温まで冷却した。次に、真空雰囲気下で丸底フラスコ内に約400mlのFAを注入した後、丸底フラスコ内に窒素を導入して大気圧に戻し、窒素雰囲気で8時間撹拌することにより、FAをゼオライトのミクロ細孔内に含浸させた。次に、丸底フラスコからFA/ゼオライト複合体を取り出し、複合体の外表面に付着しているFAをメシチレンで洗浄、濾過した。次に、石英反応管(内径29mm)内に約15gのFA/ゼオライト複合体を入れ、窒素流通下で80℃、24時間熱処理した。その後、さらに150℃、8時間熱処理することにより、ゼオライトのミクロ細孔内のFAを加熱重合させてPFA/ゼオライト複合体を得た。次に、約0.5gのPFA/ゼオライト複合体を石英反応管に入れ、窒素流通下で700℃まで加熱することによりPFAを炭素化した。次に、700℃で保持したままプロピレン(濃度2vol%)を1時間流通し、ゼオライトのミクロ細孔内にさらに炭素を充填した。次に、窒素流通下で900℃まで昇温して3時間保持した。次に、得られた炭素/ゼオライト複合体0.5gを47wt%フッ化水素酸100mlに投入後、5時間撹拌することによりゼオライトを溶解除去した。そして最後に、水洗、濾過した後に150℃で8時間減圧乾燥を行い、BET比表面積が約4000m2/gのMPC(試料PFA−2P7(1)−H9(3))を得た。
【0048】
次に、4.54wt%の[Pt(NH32(NO22]/HNO3水溶液5mgを2.0gの純水で希釈した溶液Aと、2.4mgのNaBH4を20mlの純水で希釈した溶液Bを調製し、溶液A,Bを0℃に冷却した。溶液A,Bの濃度は白金の担持量が得られたMPCに対し0.8wt%になるよう計算した。次に、30mgのMPCを0℃の溶液Aに投入し、減圧雰囲気下0℃で30分攪拌した。次に、これを遠心分離して0℃の溶液Bと混合し、0℃で10分間攪拌することによりPt(NH32(NO22を還元して白金ナノ粒子を生成させた。最後に、白金ナノ粒子を担持させたMPCを濾過して純水で洗浄する操作を数回繰り返した後、150℃で6時間真空乾燥させることにより、白金を担持させたMPC(試料ZTC/Pt−0.8%(w))を得た。
【0049】
<実施例5:ZTC/Pt−4%(w)>
実施例4において、4.54wt%の[Pt(NH32(NO22]/HNO3水溶液25mgを2.0gの純水で希釈したものを溶液Aとし、さらに溶液Bの量を5倍にして調製することにより、白金の担持量がMPCに対し4wt%となるようにして、同様の処理により白金を担持させたMPC(試料ZTC/Pt−4%(w))を得た。
【0050】
<実施例6:ZTC/Pt−0.8%(e)>
実施例6では、始めに、4.54wt%の[Pt(NH32(NO22]/HNO3水溶液5mgを2.0gのエタノールで希釈した溶液Cと、2.4mgのNaBH4を20mlのエタノールで希釈した溶液Dを調製し、溶液C,Dを0℃に冷却した。溶液C,Dの濃度は白金の担持量がMPCに対し0.8wt%になるよう計算した。次に、実施例4と同様に調製したBET比表面積が約4000m2/gのMPC(試料PFA−2P7(1)−H9(3))30mgを0℃の溶液Cに投入し、大気圧雰囲気下0℃で5分間超音波処理を施した後、減圧雰囲気下で30分間攪拌した。次に、MPCを遠心分離して0℃の溶液Dと混合し、0℃で10分間攪拌することにより、Pt(NH32(NO22を還元して白金ナノ粒子を生成させた。最後に、白金ナノ粒子を担持させたMPCを濾過して純水で洗浄する操作を数回繰り返した後、150℃で6時間真空乾燥させることにより、白金を担持させたMPC(試料ZTC/Pt−0.8%(e))を得た。
【0051】
<実施例7:ZTC/Pt−4%(e)>
実施例6において、4.54wt%の[Pt(NH32(NO22]/HNO3水溶液25mgを2.0gの純水で希釈したものを溶液Cとし、さらに溶液Dの量を5倍にして調製することにより、白金の担持量がMPCに対し4wt%となるようにして、同様の処理により白金を担持させたMPC(試料ZTC/Pt−4%(e))を得た。
【0052】
<実施例8:ZTC/Pt−5.8%(H2)>
実施例8では、気相還元により白金担持した例を示す。まず、200mgの乾燥したZTCを20mlのアセトンに添加し、室温で0.5時間攪拌した。白金担持に使用したZTCは、実施例4と同様に調製したBET比表面積が約4000m2/gであるPFA−2P7(1)−H9(3)である。調製した液を強攪拌しつつ、ここに32.86mgのH2PtCl6・6H2Oを含むアセトン溶液2mlを10分かけてゆっくりと滴下した。加えた白金の量は、これが全てZTCに担持されたとすると5.8wt%になる量である。この混合液を1時間超音波処理し、その後室温で24時間攪拌した。得られた混合液を60℃で10時間加熱し、アセトンを蒸発させた。得られた混合物を石英ボートに載せて石英反応管にセットし、N2フロー120℃で2時間熱処理をし、アセトンや水分を完全に除去した。続いて雰囲気ガスをH2に切り替え、1℃/分で300℃まで昇温し、300℃で2時間保持することで、H2PtCl6をPtに還元した。その後、H2雰囲気のまま室温まで冷却し、N2ガスに切り替えた後に素早く試料を取り出した。試料はすぐにArガスを充填した密閉容器に保存した。この試料をZTC/Pt−5.8%(H2)とする。
【0053】
<実施例9:ZTC/Ni−5%(h)>
実施例9では、気相還元によりニッケルを担持した例を示す。ニッケル担持に使用したZTCは、実施例4と同様に調製したPFA−2P7(1)−H9(3)である。まず、ZTCを100mg秤量し、120℃で2時間真空乾燥した。次に、乾燥したZTCと、24.77mgのNi(NO32・6H2Oを20mlのエタノールに溶解させて得られたNi(NO32/エタノール溶液とを単に空気中で混合した。ここで、Niの全量が担持された場合、5wt%の担持量になる。ZTCを含んだ溶液を密閉容器に入れ10秒超音波処理し、その後マグネットスターラーで2時間攪拌した。得られた混合物を枝付きフラスコに入れ、空気を100cc/minで流しながら120℃でエタノールを蒸発させた。次に、乾燥した試料を回収し、石英反応管(内径34mm)に入れ、H2雰囲気中375℃で還元を行った。昇温プログラムは次の通りである。まず、H2流通下(50cc/min)、室温より150℃まで1℃/minで昇温した。その後、150℃から375℃まで1.875℃/minで昇温し、4時間保持した。375℃で処理後、雰囲気ガスをN2に切り替え、室温まで冷却した。還元した後、試料を回収して重量を測定し、すぐにグローブボックス内で保管した。この試料をZTC/Ni−5%(h)とする。
【0054】
<比較例1:MSC−30>
比較例1では、関西熱化学株式会社製マックスソーブ(登録商標)MSC−30(BET表面積2770m2/g)を試料として用いた。
【0055】
<比較例2:PFA−2P7(1)−H9(3)>
比較例2では、丸底フラスコに約15gの粉末状のゼオライトを入れ、室温で8時間真空乾燥を行った。次に、丸底フラスコをオイルバスに浸して150℃で8時間真空乾燥を行った後、室温まで冷却した。次に、真空雰囲気下で丸底フラスコ内に約400mlのFAを注入した後、丸底フラスコ内に窒素を導入して大気圧に戻し、窒素雰囲気で8時間撹拌することにより、FAをゼオライトのミクロ細孔内に含浸させた。次に、丸底フラスコからFA/ゼオライト複合体を取り出し、複合体の外表面に付着しているFAをメシチレンで洗浄、濾過した。次に、石英反応管(内径29mm)内に約15gのFA/ゼオライト複合体を入れ、窒素流通下で80℃、24時間熱処理した。その後、さらに150℃、8時間熱処理することにより、ゼオライトのミクロ細孔内のFAを加熱重合させてPFA/ゼオライト複合体を得た。次に、約0.5gのPFA/ゼオライト複合体を石英反応管に入れ、窒素流通下で700℃まで加熱することによりPFAを炭素化した。次に、700℃で保持したままプロピレン(濃度2vol%)を1時間流通し、ゼオライトのミクロ細孔内にさらに炭素を充填した。次に、窒素流通下で900℃まで昇温して3時間保持した。次に、得られた炭素/ゼオライト複合体0.5gを47wt%フッ化水素酸100mlに投入後、5時間撹拌することによりゼオライトを溶解除去した。そして最後に、水洗、濾過した後に150℃で8時間減圧乾燥を行い、BET比表面積が約4000m2/gのMPC(試料PFA−2P7(1)−H9(3))を得た。
【0056】
<比較例3:PFA−P7(1)>
比較例3では、NaYゼオライトにフルフリルアルコール(FA)を含浸させ、PtYのミクロ細孔内で重合させることによりミクロ細孔内にポリフルフリルアルコール(PFA)を充填したNaY−PFAを調製した。次に、窒素雰囲気下でNaY−PFAを昇温して、温度が700℃に到達した時点でプロピレンガスを7vol%の混合比で導入して1時間CVDを行った。そして、フッ化水素酸処理によりゼオライトを溶解除去することにより、比較例3のミクロポーラス炭素系材料を得た。これにより得られたMPCを試料PFA−P7(1)と表記する。
【0057】
<比較例4:PFA−P8(4)>
比較例4では、温度が800℃に到達した時点でプロピレンガスを7vol%の混合比で導入して4時間CVDを行った他は比較例3と同様に調製した。比較例4では、PFA−P8(4)を得た。
【0058】
2.評価
実施例1〜9及び比較例1〜4の各試料について、X線回折パターン、BET比表面積と熱重量(TG)から算出される金属の担持量(wt%)、及びTEM写真を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
図2に白金担持ゼオライトを鋳型として調製した白金担持ゼオライト鋳型カーボンのX線回折パターンを示す。図2に示すように、プロピレン濃度が5vol%と低く、CVD時間が0.5時間と短い実施例1のPtY−PFA−5P7(0.5)−H9(3)のX線回折パターンは、2Aで示すように、通常のMPCのX線回折パターンと比較するとやや弱いものの、2Xで示す2θ=6°付近にピークを示し、また2Yで示す2θ=20〜30°のピーク強度は小さい。このことから、実施例1で得られた試料では、MPCの規則構造が保持されている。これは、CVDを行った際に炭素がゼオライトのミクロ細孔内に堆積せず、ゼオライト粒子の外表面に析出したことを示唆している。2B、2Cで示す700℃でCVDを行った実施例2、3で得られた試料は、X線回折パターンはいずれも2Xで示す2θ=6°付近の長周期規則構造を示すピークの強度が弱く、2Yで示す2θ=20〜30°に炭素網面の積層に由来するブロードなピークを示す。このことは、CVDを行った際に炭素がゼオライトのミクロ細孔内に堆積せず、ゼオライト粒子の外表面に大量の炭素が析出したことを示唆している。この原因は、白金を担持したゼオライトではプロピレンガスを炭素化する触媒能が通常のゼオライトよりも高く、結果として細孔閉塞が生じやすいためであると思われる。従って、白金担持ゼオライトを鋳型として使用する場合には、その触媒能を考慮して合成条件を選択する必要がある。また、2Zで示す白金に由来するピークはいずれも小さく、仕込み量の全てが担持されているわけではないと考えられた。
【0061】
表1に示すように、実施例1のPtY−PFA−5P7(0.5)−H9(3)、実施例2のPtY−PFA−7P7(1)−H9(3)、実施例3のPtY−PFA−H7(1)−7P7(1)−H9(3)はいずれもほぼ同じBET比表面積と白金担持量を有する。しかしながら、BET比表面積はMPCの表面積の最大値である4000m2/gよりもかなり小さい。図3に、白金担持ゼオライトを鋳型として調製した白金担持ゼオライト鋳型カーボンのTEM写真を示す。(a)・(b)は実施例2、(c)・(d)は実施例1を示す。図3に示すように、これらの試料のTEM写真において、3A、3B、3C、3Dで示す白金粒子の粒径は約3〜5nmと非常に小さい。また、白金粒子は広範囲に分散している。また、図3(b)、(d)に示すように、白金粒子3B、3Dは炭素によって被覆されているように見える。このような炭素被膜は通常CVDの段階で生成される。従って、白金粒子はPFA/白金担持ゼオライトを700℃まで昇温した段階で、イオン交換によって導入された白金種が焼結して生成されたものと考えられる。一般に、焼結が生じるとゼオライトの結晶構造は多少なりとも破壊される。ゼオライトの構造が破壊されると、多くの場合MPCの表面積は小さくなる。白金担持MPCの表面積が小さい理由はこのためであると考えられる。
【0062】
水溶液中の液相還元により調製した実施例4、5の試料の白金担持量を、空気雰囲気下で燃焼させたときの重量変化から見積もった。実施例4の白金担持量は2wt%、実施例5の白金担持量は6wt%だった。原料の段階で加えたPtの量よりも担持されたPtの量が大きいことは理屈に合わない。この原因としては、白金の原料である4.54wt%の[Pt(NH32(NO22]/HNO3水溶液の濃度が実際にはもっと大きかったこと、若しくはゼオライトがフッ化水素酸処理によって完全に除去されておらず、少量の解け残りが存在することが考えられる。いずれにしても原料として加えたPtの大部分はMPCに担持されたものと考えられる。従ってMPCを溶液Aに浸漬した際に溶液中に存在するPt(NH32(NO22のほぼ全てがMPCに液相吸着したものと考えられる。
【0063】
白金担持前のMPCのBET比表面積は約4000m2/gであるので、ここに2wt%及び6wt%の非多孔性物質が担持された場合のBET比表面積はそれぞれ3920m2/g及び3760m2/gと計算される。しかしながら、表1に示すように、実際に得られた試料のBET比表面積はこれよりやや小さい。この原因としては、担持操作で用いているNaBH4等の試薬によってMPCの構造が若干破壊されている可能性が考えられる。
【0064】
図4に実施例4、5で得られた試料のX線回折パターンを示す。(a)は全領域のパターンを、(b)は(a)の一部を拡大した図である。図4において4Aで示す実施例4、及び4Bで示す実施例5の試料は、図2に示す実施例1〜3で得られた試料と比較して、4Xで示す2θ=6.4°に鋭いピークを示しており、4Yで示す2θ=20〜30°のピーク強度は小さい。このことから、実施例4、5で得られた試料ではMPCの規則構造が保持されていることがわかる。このように、白金担持ゼオライトを鋳型に用いる方法よりも、MPCに直接白金を担持する方法の方がMPCの規則性が高いことがわかった。白金のX線回折パターンは通常2θ=40°付近にピークを示すが、4Zで示すように実施例5で得られたX線回折パターンではこのピークが確認できるものの、実施例4で得られたX線回折パターンにはこのピークを確認することができない。なお、2θ=44°付近にブロードなピークが存在するが、これは炭素(10)回折によるものであり、白金を担持しないMPCから得られたX線回折パターンにも観察されるものである。このことから、実施例4では、白金の存在量が少ない上に析出したすべての白金粒子のサイズが極めて小さいため、回折ピークが非常にブロードになっていると予想される。
【0065】
図5は、実施例4、5のTEM写真である。(a)・(b)は実施例4、(c)・(d)は実施例5を示す。図5から明らかなように、実施例4では、白金粒子5A、5Bの粒径は約1〜2nmの範囲内と非常に小さい。白金粒子5A、5Bが非常に小さいのは、Pt(NH32(NO22がMPCに吸着された状態(すなわち広範囲に分散した状態)で還元されたためと考えられる。一方、実施例5では白金粒子5C、5Dの粒径は少し大きく、3〜5nmの範囲内にあった。また、特に実施例5では、白金粒子5C、5DはMPC粒子の外表面に多く存在しているように見える。これは、MPCは疎水性であるため、水溶液を用いた含浸では水がミクロ細孔内部に浸透しにくく、Pt(NH32(NO22は主にMPCの外表面近傍に吸着し、還元されたためであると考えられる。また、実施例1とは異なり、図5(d)に示す実施例5では、白金粒子5Dはカーボンの層に覆われていない。このことからも、実施例1で白金粒子を被覆しているカーボンの膜はCVDによって形成されたものであると考えられる。
【0066】
次に、エタノール溶液中の液相還元によりMPCに白金を担持させた実施例6、7について検討する。図6において、6Aは実施例6、6Bは実施例7のX線回折パターンである。(a)は全領域のパターンを、(b)は(a)の一部を拡大した図である。水ではなくエタノール溶媒を用いて白金を担持した場合、エタノールはMPC粒子内部に浸透するので、白金はMPC粒子の内部に担持されると考えられる。図4に示す実施例4、5のX線回折パターンと大きく異なる点は、6Xに示すピークの他に、6Yに示す2θ=26°を中心とするブロードなピークが観察されることである。また、6Zに示すように、白金の担持量が大きい実施例7では、このピークの強度が大きいことがわかる。このピークはグラフェンシートの積層構造による炭素(002)回折ピークであると思われる。
【0067】
図7は、実施例6、7のTEM写真である。(a)・(b)は実施例6、(c)・(d)は実施例7を示す。図5に示す実施例4、5とは異なり、白金粒子7A、7B、7C、7DはMPC粒子の内部に存在しているように見える。また、白金の担持量が大きい実施例7においてても、白金粒子7C、7Dの粒径は1〜2nmの範囲内であり、非常に小さい。この理由は、エタノール溶媒を用いたことで、Pt(NH32(NO22がMPC粒子内部に浸透し、均一に液相吸着されて還元されたためと考えられる。しかしながら、図7に示す実施例6、7は、図5に示す実施例4、5と比較すると白金の量が少ないように見える。これは、白金粒子7A、7B、7C、7Dの粒径が非常に小さく、且つ、MPC内部に均一に存在するため、観察が難しくなったためと考えられる。または、溶媒としてエタノールを用いたことで、Pt(NH32(NO22のMPCへの液相吸着量が減少し、白金担持量が減少したためと考えられる。原因が前者と後者のどちらのものによるのかを確認するためには、熱重量測定装置により白金担持量を測定する必要がある。いずれにせよ、実施例6、7では粒径が大きい白金粒子が存在しないため、図6に示すX線回折ピークでは、6Zに白金に由来するピークは観察されない。
【0068】
図6(a)に示すように、実施例7のX線回折パターン6Bは、炭素(002)に由来する大きなピークを示すが、図6(b)に示すように炭素(10)のピーク強度は実施例6とほぼ同じである。つまり、実施例7では炭素の積層構造が実施例6より多く存在しているが、グラフェンシートの広がりLaは実施例6とほぼ同じである。この理由は、MPC粒子内部で白金粒子が生成されたことでMPC構造が破壊され、部分的にグラフェンシートの積層構造が形成されたためと考えられる。表1に示すように、実施例6のBET比表面積はそれぞれ3410m2/gであり、この原因についても白金粒子の生成によってMPC構造が破壊したためであると考えられる。
【0069】
次に、気相還元によりMPCに白金を担持させた実施例8について説明する。図8に、気相還元で調製した実施例8のXRDパターン8Aを示す。図8において、8Xで示す2θ=6.4°の鋭いピークは、ゼオライト鋳型カーボンに特有の長周期規則構造に由来するものである。また、8Bで示す白金を担持していないゼオライト鋳型カーボンと比較して、実施例8では8Zで示す2θ=44°付近に炭素(10)の弱くてブロードなピークを示す。白金のピークは2θ=40°の位置であるため、この炭素(10)のブロードなピークの一部に重なる形で現れる。液相還元で調製した実施例4〜7では、いずれも白金のピークが非常に弱く、白金担持量が少ないことが示唆された。一方、気相還元で調製した実施例8では、白金のピークがはっきりと確認できた。XRDによる白金のピーク強度の大小は、各試料が実質的に含有する白金の量を反映しているものと考えられる。
【0070】
図9に水素雰囲気の気相還元で調製した実施例8のTEM写真を示す。実施例8の試料においても、白金と思われるナノ粒子9A、9Bが高分散している状態が観察された。ナノ粒子9A、9Bのサイズは5nm以下であった。
【0071】
次に、水素気相還元によりニッケルを担持させた実施例9について説明する。Ni担持ZTCのTEM写真を図10(a)、(b)に示す。図10(a)、(b)において、それぞれ10A、10Bで示すように、粒子径約20〜30nmのNiと思われる黒い粒子が均一に分散している。図10(c)に制限視野で撮影したTEM像、図10(d)に図10(c)において10Cで示す部分の制限視野電子線回折像を示す。図10(d)のスポットは4個の同心円上に存在しており、それぞれの同心円のd値は内側から、Niのミラー指数(111)、(200)、(220)、(311)の面に各々対応していることを確認した。図11に示すXRDの結果では、Ni金属以外のNi種(酸化物や水酸化物)は一切検出されなかったことから、図10で観察された黒い粒子はすべてNi金属ナノ粒子だと言える。
【0072】
図11にNi担持前後のZTCのXRDパターンを示す。11Aで示すNi担持前のXRDパターンでは、2θ=6.3°付近にシャープなピークが見られる。これは、ゼオライト鋳型の(111)の規則構造が炭素に転写されたことに由来するピークであり、ZTCの高い規則構造を示すものである。11Bで示すNi担持後のXRDパターンでは、2θ=6.3°のピークの強度が小さくなっている。これは、Ni担持操作の中で、試料を375℃に加熱しているため、熱に弱いZTCの骨格構造が若干破壊されたためである。より高角領域に注目すると、Ni担持ZTCには、明確なNi金属のピークが確認できた。参考のため、Ni金属以外のNi化合物由来のピーク位置を図11に11a〜11eで示した。11Bで示すNi担持ZTCでは、これらのピークは全く検出されなかった。図10,11に示すTEM、XRDの結果から、今回の担持操作により、ZTCに粒径20〜30nmのNi金属を担持できたことは明らかである。
【0073】
また、Ni担持ZTCについて、150℃で6時間の真空乾燥後、窒素吸脱着測定を行った。この真空加熱処理による構造変化が無いかを調べるため、窒素吸脱着測定後のNi担持ZTCのXRDパターンも測定した。図11において、11Cで示す。窒素吸着測定前後でピークに変化は見られなかった。また、Ni担持前後のZTCの比表面積を算出する為、N2吸脱着特性を測定したところNi担持前のZTCの表面積は4000m2/gであったが、担持後にはこれが2600m2/gに減少した。ZTCに単に5wt%のNi金属を混合しただけであれば、表面積は3838m2/gになるはずであるが、Ni担持ZTCの表面積はこれより大幅に低い。これは、XRDパターンからもわかるように、375℃の熱処理によりZTCの構造が若干破壊されたためと考えられる。
【0074】
〔水素吸蔵能の評価〕
実施例及び比較例の代表的な試料について、ジーベルツ法(容量法、JIS H 7201)に従って圧力−組成等温線(PCT線)を測定した。水素吸蔵能は、国立標準規格技術研究所(National Institute of Standards and Technology:NIST)で定められている圧縮係数を用いて測定した。測定精度はサンプルの充填量に依存する。最低でも1g以上を充填し、必要に応じて上記合成スキームを繰り返し行い、所要量を準備した。試料を秤量して測定用耐圧試料管に入れ、100℃で4時間真空引きして試料管内に残留しているガスを放出させて、水素が吸蔵されていない原点を得た後測定した。測定温度は30℃、100、150℃とした。その後、大気圧まで減圧して水素放出量の確認を行った。測定結果を図12〜21に示す。
【0075】
図12に、12Aで示す実施例4、12Bで示す実施例9、12Cで示す比較例2、及び12Dで示す比較例1の水素吸蔵量(PCT線図)を示す。また、図13に図12の低圧側の水素吸蔵量を示す。図12に示すように、水素平衡圧10.5MPaにおける水素吸蔵量は、それぞれ実施例4では1.0wt%、比較例2では0.91%、比較例1では0.78wt%であった。また、白金を担持させた実施例4が最も水素吸蔵能が良好であり、白金を担持しない比較例1、2より水素吸蔵能が高かった。このように、実施例4では白金による金属担持効果が得らた。また、図13に示すように、低圧側において、13Bで示すニッケル担持の実施例9は、13Aで示す実施例4より水素吸蔵能が低かったが、13Cで示す比較例2より水素吸蔵能が高かった。図13の結果より、ニッケル担持の実施例9は、高圧側において、図12の12Bで示す点線のような挙動を示し、実施例4よりは低いものの高い水素吸蔵能が得られ、高圧領域においても10〜20%のニッケルによる金属担持効果が得られるものと推察される。
【0076】
図14に、白金を担持する前の試料である14Aで示す比較例2と、14Bで示す比較例3の水素吸蔵能を示す。図15は、15Aで示す比較例2、15Bで示す比較例3、15Cで示す比較例4と、15Dで示す白金を担持した実施例4、15Eで示すニッケルを担持した実施例9のBET比表面積と水素吸蔵能の関係をプロットした図である。図15に示すように、白金を担持しない比較例2、3、4では水素吸蔵量とBET比表面積はほぼ直線的な関係を示す。白金を担持した実施例4及びニッケルを担持した実施例9では、水素吸蔵量は比較例2〜4の直線(15X)より大きく上方にプロットされている。このことから、実施例4、9はこれまでとは異なる水素吸蔵メカニズム(スピルオーバー等の白金やニッケルに代表される遷移金属による水素解離吸着。)が働いていると考えられる。なお、実施例4の水素吸蔵能は、白金を担持していない同一の表面積品をプロットすることにより得られる直線関係から推定すると約40%向上したことになり、実施例9では20〜25%向上すると考えられる。
【0077】
図16に、実施例4の30℃における水素吸放出能を示す。16Aは実施例4の水素の吸着曲線を示し、16Bは実施例4の水素の脱離曲線を示す。図16に示すように実施例4は多少ヒステリシス特性を示すが、水素平衡圧低下と共に速やかに水素を放出し、水素平衡圧0.1MPaにおける残留水素吸蔵量は0.1wt%であった。また、実際に取り出せる有効水素吸蔵量も90%を確保しており、実施例4の試料は水素貯蔵材料として実用的な性能を示していることがわかった。
【0078】
図17に比較例1、図18に比較例2、図19に実施例4の水素吸蔵能の温度依存性を示す。図17、18に示すように、金属を担持していない比較例1、2では、10.5MPaにおける水素吸蔵能は温度上昇と共に低下した。例えば、図17では17Aで示す30℃における水素吸蔵能が最も高く0.78wt%であり、17Bで示す100℃における水素吸蔵能が次に高く0.55wt%であり、17Cで示す150℃における水素吸蔵能が最も低く0.48wt%だった。また、図18では、18Aで示す30℃における水素吸蔵能が最も高く0.91wt%であり、18Bで示す100℃における水素吸蔵能が次に高く0.63wt%であり、18Cで示す150℃における水素吸蔵能が最も低く0.52wt%だった。逆に、図19に示す実施例4では、19Aで示す30℃における水素吸蔵能が最も低く1.00wt%であり、19Bで示す100℃における水素吸蔵能が次に低く1.11wt%であり、19Cで示す150℃における水素吸蔵能が最も高く1.33wt%だった。このように、温度上昇と共に水素吸蔵能が向上することが分かった。このことは、遷移金属を担持することにより、水素吸着メカニズムが異なることを意味している。
【0079】
温度上昇と共に吸蔵能が上昇することは、実用上も有利な場合が多い。水素充填時は断熱圧縮により温度が上昇するが、急速充填するほど材料、または材料を充填している筐体の温度上昇を招くことになる。温度上昇に伴って、吸蔵能が低下する材料では、実質の水素充填量は低下することになるが、本材料のように温度上昇とともに水素吸蔵能が向上する材料を用いれば、そのような問題も解決可能である。
【0080】
次に、図20に150℃における比較例1の水素吸放出曲線を、図21に、150℃における実施例4の水素吸放出曲線を示す。20Aは比較例1の水素の吸着曲線を示し、20Bは比較例1の水素の脱離曲線を示す。図20に示すように比較例1は多少ヒステリシス特性を示すが、水素平衡圧低下と共に速やかに水素を放出し、水素平衡圧0.1MPaにおける残留水素吸蔵量は0.1wt%以下であった。また、実際に取り出せる有効水素吸蔵量も90%以上を確保していた。21Aは実施例4の水素の吸着曲線を示し、21Bは実施例4の水素の脱離曲線を示す。図21に示すように実施例4も多少ヒステリシス特性を示すが、水素平衡圧低下と共に速やかに水素を放出し、水素平衡圧0.1MPaにおける残留水素吸蔵量は0.1wt%であった。また、実際に取り出せる有効水素吸蔵量も90%を確保していた。このように、実施例4は比較例1と同様に、150℃という比較的厳しい環境においても、圧力を低下させると満充填の90%以上を放出させることが可能であり、10回程度の充填放出では、吸蔵能の低下もなく安定に水素吸放出できることが分かった。このように、実施例4の試料は高温においても水素貯蔵材料として実用的な性能を示していることがわかった。
【0081】
本発明によれば、0.7nm以上2nm以下の範囲内の3次元の長周期規則構造と、ミクロ細孔とを有するミクロポーラス炭素系材料であって、ミクロ細孔表面に遷移金属が担持されているミクロポーラス炭素系材料では、元来有する細孔機能を維持しながら担持された金属が有する機能を発現可能であることがわかった。なお、実施例4では白金を用いた例を例示したが、同じプロセスを用いて、他の金属を担持することも可能である。また、実施例9では、ニッケルの例を例示したが、アセチルアセトン塩としては、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ランタノイド類が市販されており、ニッケルアセチルアセトンの代わりに用いることで、これらの金属を担持することが可能であり、ニッケルに限定されるものではない。
【0082】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係るミクロポーラス炭素系材料は、水素・メタン等に代表される燃料として用いられるガスを貯蔵する材料として使用できる。また、新規複合材料のマトリックス、電気伝導性材料及び炭素膜、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵するデバイスであるキャパシタやリチウムイオン電池や燃料電池等の電極材料に適用することができる。ま本発明に係るミクロポーラス炭素材料は優れた電気的特性を示すので、例えば各種産業上の材料選択の幅を広げたり、製品の性能を飛躍的に向上させたりする可能性がある。特に、電極材料として使用して電気二重層キャパシタ等を構成した場合には、高出力密度、急速充放電を可能にする特性を示し、また長寿命化に優れた性質を示す可能性がある。本発明に係るミクロポーラス炭素材料を使用して、容量、重負荷特性、サイクル特性に優れた電池又は電気二重層型キャパシターを得られる可能性がある。このように本発明に係るミクロポーラス炭素系材料は、電子部品・機器、輸送機器、電気機器、電力装置等を高機能にし、さらに装置・素子の小型化、軽量化、携帯化を実現する上でも優れている。
【符号の説明】
【0084】
1 ゼオライト(多孔質材料)
1a ミクロ孔
2 ゼオライト炭素
3 複合体
4 遷移金属
5 ミクロポーラス炭素系材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.7nm以上2nm以下の範囲内の3次元の長周期規則構造と、ミクロ細孔とを有するミクロポーラス炭素系材料であって、
前記ミクロ細孔表面に遷移金属が担持されていることを特徴とするミクロポーラス炭素系材料。
【請求項2】
請求項1に記載のミクロポーラス炭素系材料であって、
前記遷移金属は白金であることを特徴とするミクロポーラス炭素系材料。
【請求項3】
請求項1に記載のミクロポーラス炭素系材料であって、
前記遷移金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム及びランタノイド類を含む金属群から選択される少なくとも1種類以上の金属を含むことを特徴とするミクロポーラス炭素系材料。
【請求項4】
遷移金属を含む多孔質材料の表面及びミクロ細孔内に第1の有機化合物を導入し、前記第1の有機化合物を化学気相成長法により炭化して遷移金属を含むミクロポーラス炭素系材料と多孔質材料の複合体を得る工程と、
前記多孔質材料を除去する工程と、を有することを特徴とするミクロポーラス炭素系材料の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のミクロポーラス炭素系材料の製造方法であって、
前記複合体を得る工程は、更に前記多孔質材料の表面及びミクロ細孔内に第2の有機化合物を導入して炭素を堆積させる工程を有することを特徴とするミクロポーラス炭素系材料の製造方法。
【請求項6】
多孔質材料の表面及びミクロ細孔内に有機化合物を導入し、前記有機化合物を化学気相成長法により炭化してミクロポーラス炭素系材料と前記多孔質材料の複合体を得る第1工程と、
前記多孔質材料を除去する第2工程と、
前記第2工程で得られたミクロポーラス炭素系材料を遷移金属塩溶液中に浸漬・含浸し、前記ミクロポーラス炭素系材料の表面に遷移金属を担持する第3工程と、を有することを特徴とするミクロポーラス炭素系材料の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のミクロポーラス炭素系材料の製造方法であって、
前記第3工程は、前記ミクロポーラス炭素系材料を遷移金属塩溶液中に浸漬・含浸して混合液を得る浸漬工程と、
前記混合液を減圧下で撹拌した後、遠心分離により遷移金属が吸着したミクロポーラス炭素系材料を分離する分離工程と、
分離により得た遷移金属が吸着したミクロポーラス炭素系材料と還元剤溶液とを混合し、吸着した遷移金属を液相還元してミクロポーラス炭素系材料の表面及びミクロ細孔内に析出させる液相還元工程と、
遷移金属を析出させたミクロポーラス炭素系材料を純水で洗浄して乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とするミクロポーラス炭素系材料の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のミクロポーラス炭素系材料の製造方法であって、
前記還元剤溶液は、ヒドリド錯体を含むことを特徴とするミクロポーラス炭素系材料の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のミクロポーラス炭素系材料の製造方法であって、
前記ヒドリド錯体は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、及びアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムのうちのいずれかを含むことを特徴とするミクロポーラス炭素系材料の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載のミクロポーラス炭素系材料の製造方法であって、
前記第3工程は、前記ミクロポーラス炭素系材料を遷移金属塩溶液中に浸漬・含浸して混合液を得る浸漬工程と、
前記混合液から蒸発乾固により遷移金属が添着したミクロポーラス炭素系材料を分離する蒸発乾固工程と、
蒸発乾固して得たミクロポーラス炭素系材料を水素を用いた気相還元により遷移金属を還元する気相還元工程と、を有することを特徴とするミクロポーラス炭素系材料の製造方法。
【請求項11】
請求項6乃至請求項10のいずれか一項に記載のミクロポーラス炭素系材料の製造方法であって、
前記遷移金属塩溶液に用いる溶媒が、1級アルコール又はエーテルを含むことを特徴とするミクロポーラス炭素系材料の製造方法。
【請求項12】
請求項4乃至請求項11のいずれか一項に記載のミクロポーラス炭素系材料の製造方法であって、
前記多孔質材料はゼオライトであることを特徴とするミクロポーラス炭素系材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のミクロポーラス炭素材料を用いて、−40℃から150℃の範囲で水素を吸蔵放出させることを特徴とするミクロポーラス系炭素材料を用いた水素吸蔵方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−115636(P2010−115636A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40932(P2009−40932)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、水素製造・輸送・貯蔵システム等技術開発/次世代技術開発・フィージビリティスタディ等革新的な次世代技術の探索・有効性に関する研究開発/ゼオライト鋳型炭素をベースとしたスピルオーバー水素貯蔵に関する研究開発、委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願。
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】