ミシン及びミシン制御プログラム
【課題】ピッチの揃った縫製結果を得る手助けをするミシンを提供する。
【解決手段】縫目形成開始から単位時間毎に移動量を検出して累積し、実移動量を算出する。目標ピッチとするための単位時間での目標移動量が算出され、縫目形成開始時点からの経過時間の目標移動量が累積される。実移動量/目標移動量で一致度合いKを算出し(S31)、0.9≦K≦1.1ならば(S32:YES)、中央のLEDを点灯する(S33)。1.2<Kならば(S32:NO,S34:YES,S35:YES)、一番右のLEDを点灯する(S36)。1.1<K≦1.2ならば(S32:NO,S34:YES,S35:NO)、右から2番目のLEDを点灯する(S37)。0.8≦K<0.9ならば(S34:NO,S38:YES)、左から2番目のLEDを点灯する(S39)。K<0.8ならば(S34:NO,S38:NO)、一番左のLEDを点灯する(S40)。
【解決手段】縫目形成開始から単位時間毎に移動量を検出して累積し、実移動量を算出する。目標ピッチとするための単位時間での目標移動量が算出され、縫目形成開始時点からの経過時間の目標移動量が累積される。実移動量/目標移動量で一致度合いKを算出し(S31)、0.9≦K≦1.1ならば(S32:YES)、中央のLEDを点灯する(S33)。1.2<Kならば(S32:NO,S34:YES,S35:YES)、一番右のLEDを点灯する(S36)。1.1<K≦1.2ならば(S32:NO,S34:YES,S35:NO)、右から2番目のLEDを点灯する(S37)。0.8≦K<0.9ならば(S34:NO,S38:YES)、左から2番目のLEDを点灯する(S39)。K<0.8ならば(S34:NO,S38:NO)、一番左のLEDを点灯する(S40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン及びミシン制御プログラムに関するものであり、詳細には、ユーザが加工布を動かしながら縫製を行うミシン及びミシン制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの手動操作で加工布を移動させながら縫製を行い、縫目を形成するフリーモーション縫製が行われている。このようなフリーモーション縫製は、例えば、表地と裏地との間に中綿を入れて、直線や曲線等の縫目模様で縫合するキルティング縫製において用いられる。このフリーモーション縫製においては、縫製結果が美しいとされるいくつかのポイントがある。その一つは、縫目の長さ(ピッチ)が揃っていることである。そこで、縫製作業者は縫目を揃えて縫製したいが、ピッチを揃えるには高い技能が縫製作業者に必要である。そこで、特許文献1に記載の発明のミシンでは、一針毎に加工布の移動量を読み取り、加工布の移動量に応じて縫製速度を変化させることによりピッチを揃えている。
【0003】
また、縫製速度を設定する速度設定装置を備え、この速度設定装置で設定された速度に応じて速度表示用ランプを点灯させるミシンが提案されている(例えば、特許文献2参照)。そして、速度設定用スイッチを備え、この速度設定用スイッチで設定された速度に応じて速度表示ディスプレイの発光ダイオードを点灯させるミシンが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−292175号公報
【特許文献2】特開昭56−102276号公報
【特許文献3】実開平4−64376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のミシンでは、加工布の移動量に応じて縫製速度を変化させることによりピッチを揃えているのみであり、逆に縫製速度が一定な場合にどれだけ加工布を移動させればピッチを揃えることができるかをユーザが知ることはできない。そして、特許文献2,3に記載の発明のミシンでは、設定の速度を表示しているのみである。よって、一定の速度で縫製が行われる場合、ユーザがどれだけ加工布を移動させれば、ピッチを揃えることができるのかを知ることはできないという問題点がある。
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、ピッチの揃った縫製結果を得る手助けをするミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明のミシンでは、縫針を装着する針棒を駆動する主軸と、この主軸を回転駆動するミシンモータとを備え、ユーザが加工布を移動させながら縫製を行うミシンにおいて、所定の長さを前記加工布の縫目ピッチの目標値である目標ピッチとして記憶する目標ピッチ記憶手段と、前記検出手段により検出された前記加工布の移動量に基づいて決定される実際に縫製される縫目ピッチと前記目標ピッチとの一致度合いを算出する一致度合い算出手段と、前記一致度合い算出手段により算出された前記一致度合いを報知する報知手段とを備えている。
【0007】
また、請求項2に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の前記加工布の移動量を検出し、前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記所定微小時間毎の前記加工布の移動量を前記縫目形成時間内の所定時間において累積した累積値と、前記目標ピッチと前記主軸の回転速度とから演算される前記加工布の前記所定微小時間毎の目標移動量を前記所定時間において累積した累積値との一致度合いを算出することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の前記加工布の移動量を検出し、前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記移動量と、前記目標ピッチと前記主軸の回転速度とから演算される前記所定微小時間毎の目標移動量との一致度合いを算出することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記検出手段は、前記縫針が針落ちする一針毎の前記加工布の移動量を検出し、前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記移動量と前記目標ピッチの移動量との一致度合いを算出することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明のミシンでは、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記報知手段は、前記一致度合いに応じた表示態様を表示する表示手段を備えている。
【0011】
また、請求項6に係る発明のミシンでは、請求項5に記載の発明の構成に加えて、前記表示手段は、当該ミシンの頭部の下方正面側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る発明のミシンでは、請求項5又は6に記載の発明の構成に加えて、前記表示手段は、LEDで構成されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る発明のミシンでは、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記報知手段は、前記一致度合いに応じた音又は音声を出力する音出力手段を備えている。
【0014】
また、請求項9に係る発明のミシン制御プログラムでは、請求項1乃至8のいずれかに記載のミシンの各種処理手段としてミシンに内蔵されたコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明のミシンでは、検出手段は、加工布が移動される移動量を検出し、目標ピッチ記憶手段は、所定の長さを前記加工布の縫目ピッチの目標値である目標ピッチとして記憶し、一致度合い算出手段は、検出手段により検出された加工布の移動量に基づいて決定される実際に縫製される縫目ピッチと目標ピッチとの一致度合いを算出し、報知手段は、一致度合い算出手段により算出された一致度合いを報知することができる。したがって、目標ピッチと実際に縫製された縫目のピッチとの一致度合いが報知されるので、縫製者は目標ピッチとのずれを認識しながら縫製することができる。よって、一致度合いが低い場合に縫製者は、縫製速度を調整したり、加工布の送り量を調整したりして目標ピッチに合わせるようにすることができ、縫目ピッチの揃った美しいフリーモーション縫製を行うことができる。
【0016】
また、請求項2に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の効果に加えて、検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の加工布の移動量を検出し、一致度合い算出手段は、検出手段により検出された所定微小時間毎の加工布の移動量を縫目形成時間内の所定時間において累積した累積値と、目標ピッチと主軸の回転速度とから演算される加工布の所定微小時間毎の目標移動量を所定時間において累積した累積値との一致度合いを算出することができる。したがって、縫製者は、1つの縫目が形成される間所定微少時間毎に、縫目形成開始時から累積された加工布の移動量と、目標ピッチの縫目を形成する場合にその時間で加工布が移動される目標移動量との一致度合いを知ることができる。よって、縫目を形成中にもその縫目の一致度合いを詳細に知ることができるので、縫目ピッチをより揃え易くすることができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の効果に加えて、検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の加工布の移動量を検出し、一致度合い算出手段は、検出手段により検出された移動量と、目標ピッチと主軸の回転速度とから演算される所定微小時間毎の目標移動量との一致度合いを算出することができる。したがって、縫製者は1つの縫目が形成される間所定微少時間毎に、所定微小時間内の加工布の移動量と、目標ピッチの縫目を形成する場合に所定微小時間内で加工布が移動される目標移動量との一致度合いを知ることができる。よって、詳細に一致度合いを知ることができるので、縫目ピッチをより揃え易くすることができる。
【0018】
また、請求項4に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の効果に加えて、検出手段は、縫針が針落ちする一針毎の加工布の移動量を検出し、一致度合い算出手段は、検出手段により検出された移動量と目標ピッチの移動量との一致度合いを算出することができる。したがって、一針毎に目標ピッチとの一致度合いを知ることができる。よって、簡易な制御で一致度合いを算出することができる。
【0019】
また、請求項5に係る発明のミシンでは、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、報知手段の表示手段は、一致度合いに応じた表示態様を表示することができる。したがって、一致度合いを縫製者の視覚に訴え、縫製者に一致度合いを認識させやすい。
【0020】
また、請求項6に係る発明のミシンでは、請求項5に記載の発明の効果に加えて、表示手段は、ミシンの頭部の下方正面側に配置することができる。よって、縫製中であっても縫製者の視野に表示手段が入るので、縫製者が縫製中に針元から視線を殆ど動かさなくても一致度合いを認識させることができる。
【0021】
また、請求項7に係る発明のミシンでは、請求項5又は6に記載の発明の効果に加えて、表示手段はLEDで構成されているので、簡単な構成で安価に表示手段を構成することができる。
【0022】
また、請求項8に係る発明のミシンでは、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、報知手段の音出力手段は、一致度合いに応じた音又は音声を出力することができる。したがって、縫製中であっても縫製者は音又は音声が聞こえるので、縫製者が縫製中に針元から視線を動かさなくても一致度合いを認識することができる。
【0023】
また、請求項9に係る発明のミシン制御プログラムでは、請求項1乃至8のいずれかに記載のミシンの各種処理手段としてミシンに内蔵されたコンピュータを機能させることができる。したがって、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明のミシンと同様の効果を奏すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の第一の実施の形態〜第三の実施の形態のミシン1を図面を参照して説明する。第一の実施の形態〜第三の実施の形態のミシン1の物理的構成及び電気的構成は同様であるので、まず、図1乃至図4を参照して、ミシン1の電気的構成及び電気的構成について説明する。図1はミシン1の上側からの斜視図であり、図2は、ミシン1の頭部5に設けられた一致度合い報知LED20を示す部分拡大図であり、図3は、イメージセンサ50を示す模式図である。図4は、ミシン1の電気的構成を示す模式図である。
【0025】
まず、図1を参照して、本実施の形態におけるミシン1の物理的構成について説明する。ミシン1は、左右方向に長いミシンベッド2と、ミシンベッド2の右端部から上方へ立設された脚柱部3と、脚柱部3の上端から左方へ延びるアーム部4と、アーム部4の左先端部に設けられた頭部5とを有する。脚柱部3の前面部には、表面にタッチパネル16を備えた液晶ディスプレイ10が設けられている。液晶ディスプレイ10には、縫製模様や縫製条件の入力キー等が表示され、タッチパネル16においてこれらの入力キー等に対応した位置に触れることにより縫製模様や縫製条件等を選択可能になっている。ミシン1の内部には、ミシンモータ79(図4参照)、主軸、下端部に縫針7を装着した針棒6(図3参照)、この針棒6を上下動させる針棒上下動機構(図示せず)、針棒6を左右方向に針振りさせる針振り機構(図示せず)、針棒6をミシンモータ79の動力から釈放する針棒釈放機構(図示せず)等が収納されている。
【0026】
また、ミシンベッド2の上部には針板80が配設されている。ミシンベッド2の内部には、送り歯(図示せず)を駆動する送り歯前後動機構(図示せず)及び送り歯上下動機構(図示せず)、送り歯による加工布の送り量を調整する送り量調整用パルスモータ78(図4参照)、及び下糸を格納した釜(図示せず)等が収納されている。
【0027】
また、ミシン1の右側面には、手動で主軸を回転させ、前記針棒6を上下動させるプーリ(図示せず)が設けられている。そして、前記頭部5の前面右側にはミシンモータ79の駆動を開始させて縫製を開始させる縫製開始スイッチ81、ミシンモータ79の駆動を停止させて縫製を停止させる縫製停止スイッチ82、縫製速度(主軸の回転速度)を調整する縫製速度調整スイッチ90が設けられている。さらに、頭部5の前面左側には、本発明の要部である一致度合い報知LED20が設けられている。この一致度合い報知LED20は、図2に示すようにLED21〜25の5つのLEDで構成されており、目標ピッチと実際に縫製されている縫目のピッチとの一致度合いを報知するのに用いられる。LED21〜25は、左から順にLED21,LED22,LED23,LED24,LED25と並んでおり、中央のLED23は目標ピッチとの一致度合いが丁度よいことを示しており、左のLEDほど、目標ピッチよりも短いピッチとなることを示し、右のLEDほど、目標ピッチよりも長いピッチとなることを示している。つまり、実際の縫製の加工布移動量を示す一致度合い報知LED20が、左から順にLED21,LED22,LED23,LED24,LED25と並んでいる。なお、この一致度合い報知LED20が「報知手段」である「表示手段」に該当する。
【0028】
次に、図3を参照して、イメージセンサ50について説明する。図3は、イメージセンサ50を示す模式図である。イメージセンサ50は周知の変位センサである。イメージセンサ50は、CCDカメラ及び制御回路を備え、CCDカメラで画像を撮影する。そして、直前に撮影された画像と、今回撮影された画像との同一部分を比較し、その同一部分の範囲及び、画像内の位置から、撮影対象がどの方向にどれだけ移動したのかを示す数値(XY座標値)が出力されるものである。実施の形態では、図3に示すように、ミシン1の図示しないフレームに支持フレーム51が取り付けられている。そして、その支持フレーム51にイメージセンサ50が、縫針7の針落ち点を含むその近傍の位置を撮影できるように取り付けられている。なお、針落ち点とは、縫針7が針棒上下動機構により下方に移動され、加工布に刺さった点を指している。ここで、加工布を押さえる押え足39は、押え棒48の下端部に固定される押えホルダ46に装着されている。このイメージセンサ50が「検出手段」に該当する。ここで、押え足39と押えホルダ46は、針落ち点を含むその近傍の位置が撮影可能なように透明樹脂で形成されている。また、CCDカメラはCMOSカメラであってもよいし、他の撮像素子であってもよい。
【0029】
次に、図4を参照して、ミシン1の主な電気的構成について説明する。図4に示すように、このミシン1は、CPU61,ROM62,RAM63,EEPROM64,カードスロット17,外部アクセスRAM68,入力インターフェイス65,出力インターフェイス66、RTC69等で構成され、これらはバス67により相互に接続されている。そして、入力インターフェイス65には、縫製開始スイッチ81,縫製停止スイッチ82,タッチパネル16,針上センサ88,針下センサ89,縫製速度調整スイッチ90,イメージセンサ50等が接続されている。一方、出力インターフェイス66には、送り量調整用パルスモータ78を駆動させる駆動回路71,主軸を回転駆動させるためのミシンモータ79を駆動させる駆動回路72,針棒6を揺動駆動する針振りパルスモータ43を駆動させる駆動回路74,液晶ディスプレイ10を駆動させる駆動回路75、一致度合い報知LED20が電気的に接続されている。
【0030】
CPU61は、ミシン1の主制御を司り、読み出し専用の記憶素子であるROM62の制御プログラム記憶領域に記憶された制御プログラムに従って、各種演算及び処理を実行するものである。RAM63は、任意に読み書き可能な記憶素子であり、CPU61が演算処理した演算結果を収容する各種記憶領域が必要に応じて設けられている。縫製開始スイッチ81及び縫製停止スイッチ82はボタン式スイッチである。そして、針上センサ88は、主軸の回転位相を検出するセンサであり、主軸が回転して縫針7の先端が針板80上面よりも上の位置に到達する(針上位置)とON信号を出力するように設定されている。針下センサ89は、主軸の回転位相を検出するセンサであり、主軸が回転して針棒6が針上位置から降下して、縫針7の先端が針板80上面よりも降下した位置(針下位置)に到達するとON信号を出力するように設定されている。そして、縫製速度調整スイッチ90は、スライド式スイッチであり、縫製速度、つまり主軸の回転速度を指示することができる。本実施の形態のミシン1では、スライドつまみを左にするほど速度は遅くなり、右にするほど速度は早くなる。
【0031】
次に、第一の実施の形態について、図5乃至図7を参照して説明する。図5は、第一の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図であり、図6は、第一の実施の形態の縫製処理のフローチャートであり、図7は、縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【0032】
まず、図5を参照して、RAM63に設けられている記憶エリアについて説明する。図5は、RAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。図5に示すように、RAM63には、目標ピッチ記憶エリア661、主軸回転速度記憶エリア662、加工布移動量記憶エリア663、分割数記憶エリア664、累積カウンタ記憶エリア665、基準座標記憶エリア666、現在座標記憶エリア667、一致度合い記憶エリア668等が設けられている。なお、RAM63には図示外の記憶エリアも設けられている。
【0033】
目標ピッチ記憶エリア661には、縫製する際に目標とするピッチ(縫目の長さ)が記憶される。この目標ピッチXは、縫製を開始する前にユーザにより数値が入力されたり、予め登録されている値から選択されたりして、目標ピッチ記憶エリア661に記憶される。この目標ピッチXの入力は、入力や選択を行うための画面が液晶ディスプレイ10に表示され、タッチパネル16により入力が受け付けられる。主軸回転速度記憶エリア662には、ミシン1の起動時の初期処理にて、縫製速度調整スイッチ90により指定されている主軸回転速度Yが記憶される。なお、主軸回転速度Yは1分間の主軸の回転数として与えられている。本実施の形態のミシン1では主軸回転速度Yは70〜850回/分とする。なお、縫製速度調整スイッチ90が操作された際には、操作の都度、指定されている主軸回転速度に変更される。そして、加工布移動量記憶エリア663には、イメージセンサ50から出力される加工布移動量Aが記憶される。加工布移動量AはXY座標値として出力され、加工布移動量A(XA,YA)と表すこととする。
【0034】
そして、分割数記憶エリア664には、一致度合いKを算出する際に使用される分割数Nが記憶される。この分割数Nは、加工布を移動可能な時間、つまり、設定されている縫製速度において縫針7が針上の状態となる時間中に、単位時間Tがいくつあるかを示す数である。なお、加工布移動可能時間Qは、主軸が1回転するのに掛かる時間のほぼ半分とみなすことができる。よって、「加工布移動可能時間Q=(60/主軸回転速度Y)/2」で算出される。本実施の形態のミシン1では、主軸回転速度Yが70〜850回/分であるので、「(60/850)/2≦加工布移動可能時間Q≦(60/70)/2」となる。簡単には「0.035<加工布移動可能時間Q<0.43」である。単位時間Tは、加工布移動可能時間Qよりも短い時間とするので、単位時間Tは0.01,0.02などとすればよい。
【0035】
そして、累積カウンタ記憶エリア665には、縫針7が針上である際に経過した単位時間をカウントするための累積カウンタnが記憶される。基準座標記憶エリア666には、縫目の形成が開始される際、つまり、縫針7が針下から針上となった時点での針落ち点を示す情報(XY座標)が基準座標として記憶される。そして、現在座標記憶エリア667には、一致度合いKを判断する際の針落ち点を示す情報(XY座標)が現在座標として記憶される。
【0036】
そして、一致度合い記憶エリア668には、目標ピッチXと実際に縫製される縫目のピッチとの一致度合いを示す一致度合いKが記憶される。本第一の実施の形態では、単位時間毎に加工布の移動量が検出される。そして、縫目の形成が開始される際、つまり、縫針7が針下から針上となった時点から、単位時間毎に検出された移動量が累積され、縫目形成開始時点からの加工布の移動量が算出される(実移動量)。一方、目標ピッチを形成するためには、単位時間でどれだけ加工布を移動すべきかを示す単位時間の目標移動量が算出され、縫目形成開始時点からの経過時間の目標移動量が累積される(目標移動量)。そして、実移動量と目標移動量とが比較されて一致度合いKが算出される。本第一の実施の形態では、実移動量の目標移動量に対する比を一致度合いKとする。つまり「一致度合いK=実移動量/目標移動量」である。
【0037】
次に、図6及び図7のフローチャートを参照して、第一の実施の形態のミシン1の動作について説明する。縫製処理は、縫製開始スイッチ81が押下されることにより、CPU61にてROM62に記憶されている縫製プログラムが実行されて行われる処理である。
【0038】
まず、初期処理が行われる(S1)。この初期処理では、RAM63の加工布移動量記憶エリア663、分割数記憶エリア664、累積カウンタ記憶エリア665、基準座標記憶エリア666、現在座標記憶エリア667、一致度合い記憶エリア668に初期値の「0」が記憶されて各値が初期化される。次いで、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661から目標ピッチXが読み出され(S2)、主軸回転速度記憶エリア662から主軸回転速度Yが読み出される(S3)。次いで、加工布移動可能時間Qの単位時間Tでの分割数Nが算出されて分割数記憶エリア664に記憶される(S4)。上述したように、加工布移動可能時間Qは主軸回転速度Yにより決定される。また、単位時間Tは予め定められている。ここでは、一例として0.01秒とする。よって、例えば主軸回転速度Yが「600回/分」であるとすると、「分割数N=(60/600)/0.01=10」である。なお、割り切れない場合には、商の整数部分のみを分割数Nとする。
【0039】
そして、ミシンモータ79の回転が開始される(S5)。そして、縫針7が針上となるのが待機される(S6:NO,S6)。具体的には、針上センサ88の出力に基づいて縫針7が針上であるか否かの判断が行われ(S6)、針上であると判断されない間は(S6:NO)、繰り返し針上センサ88の出力の判断が行われる(S6)。
【0040】
そして、針上となったら(S6:YES)、加工布から縫針7が抜かれて縫目の形成が開始されたこととなる。そこで、イメージセンサ50にアクセスし、加工布移動量A(XA,YA)が取得され、加工布移動量記憶エリア663に記憶される(S7)。なお、縫製開始後最初のイメージセンサ50へのアクセス時には、加工布移動量Aは(0,0)が出力される。そして、縫目の形成開始の位置を示す基準座標B(XB,YB)が算出され、基準座標記憶エリア666に記憶される(S8)。この基準座標Bは、前回のイメージセンサ50へのアクセス時の座標(現在座標Cが該当する)に、S8で取得された移動量を加算することにより算出される。なお、縫製開始後最初に基準座標Bを算出する際には、加工布移動量Aは(0,0)であり、現在座標Cは初期値の(0,0)であるので、基準座標Bは(0,0)とされる。つまり、縫製開始後最初にイメージセンサ50へアクセスした時点の加工布の位置が原点とされる。次いで、累積カウンタnに「0」が記憶され、現在座標C(XC,YC)に基準座標Bが記憶される(S9)。
【0041】
そして、RTC69から現在時刻が参照され、単位時間Tの経過が待機される(S10:NO,S10)。そして、単位時間Tが経過したら(S10:YES)、累積カウンタnに「1」が加算され(S11)、イメージセンサ50にアクセスし、加工布移動量A(XA,YA)が取得され、加工布移動量記憶エリア663に記憶される(S12)。そして、現在座標Cが算出され、現在座標記憶エリア667に記憶される(S13)。具体的には、現在座標記憶エリア667に記憶されている、前回のイメージセンサ50アクセス時の座標である現在座標Cに、加工布移動量Aが加算される。これにより、今回のアクセス時点の座標が新たな現在座標Cが算出される。
【0042】
そして、報知処理が行われる(S14、図7参照)。この報知処理では、一致度合いKが算出されて、それに基づいて一致度合い報知LED20が点灯される。図7に示すように、まず、一致度合いKが算出される(S31)。この一致度合いKは、「実移動量/目標移動量」である。実移動量は、縫目の始点(基準座標B)から現在の針落ち点(現在座標C)までの距離、つまり、基準座標Bの点と現在座標Cの点とを結ぶ線分の長さである。よって、実移動量は「(XC−XB)2+(YC−YB)2」の正の平方根で与えられる。そして、目標移動量は、「(累積カウンタn/分割数N)×目標ピッチX」で与えられる。つまり、一致度合いKが1.0に近いほど目標ピッチに近く、ずれが少ないということとなる。また、一致度合いKが小さいほど、目標ピッチに追いついておらず、加工布の移動量が少ないことを示しており、一致度合いKが大きいほど、目標ピッチをオーバし、加工布の移動量が多いことを示している。
【0043】
そして、一致度合いKの値に応じて一致度合い報知LED20を点灯させる処理が行われる(S32〜S40)。まず、一致度合いKが0.9以上かつ1.1以下であるか否かの判断が行われる(S32)。0.9以上かつ1.1以下であれば(S32:YES)、目標ピッチとのずれが少ないので、中央のLED23のみが点灯される(S33)。つまり、「0.9≦一致度合いK≦1.1」である場合には中央のLED23のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0044】
また、0.9以上かつ1.1以下でない場合には(S32:NO)、一致度合いKが0.9より大きいか否かの判断が行われる(S34)。0.9より大きければ(S34:YES)、さらに、一致度合いKが1.2よりも大きいか否かの判断が行われる(S35)。1.2よりも大きい場合には(S35:YES)、一番右のLED25のみが点灯される(S36)。つまり、「1.2<一致度合いK」である場合には、一番右のLED25のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。一方、一致度合いKが1.2よりも大きくない場合には(S35:NO)、右から2番目のLED24のみが点灯される(S37)。つまり、「1.1<一致度合いK≦1.2」である場合には、右から2番目のLED24のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0045】
また、一致度合いKが0.9より大きくない場合には(S34:NO)、一致度合いKが0.8以上であるか否かの判断が行われる(S38)。一致度合いKが0.8以上であれば(S38:YES)、左から2番目のLED22のみが点灯される(S39)。つまり、「0.8≦一致度合いK<0.9」である場合には、左から2番目のLED22のみが点灯される。一方、0.8以上でない場合には(S38:NO)、一番左のLED21のみが点灯される(S40)。つまり、「一致度合いK<0.8」である場合には、一番左のLED21のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0046】
そして、図6に示すように縫製処理では、縫製停止スイッチ82が押下されたか否かの判断が行われる(S15)。縫製停止スイッチ82が押下されていなければ(S15:NO)、針下センサ89の出力に基づいて縫針7が針下であるか否かの判断が行われ(S16)、針下であると判断されない場合は(S16:NO)、S10へ戻り、単位時間T秒の経過が待機される(S10:NO,S10)。そして、T秒が経過したら(S10:YES)、一致度合いの算出、報知が行われる(S11〜S14)。そして、縫製停止スイッチ82が押下されていなければ(S15:NO)、針下センサ89の出力の判断が行われる(S16)。そして、繰り返しS10〜S16の処理が行われる中で、針下となったら(S16:YES)、S6へ戻り、そして、縫針7が針上となるのが待機される(S6:NO,S6)。一方、縫製停止スイッチ82が押下された場合には(S15:YES)、ミシンモータ79の回転が停止され(S17)、縫製処理は終了する。このようにして、縫製停止スイッチ82が押下されるまで(S15:YES)、繰り返しS6〜S16の処理が行われる。
【0047】
以上のように、縫製が実施される間、単位時間T毎という細かい間隔で、現在割く静止している縫目の目標ピッチXの一致度合いをユーザの視覚に訴えることができる。これにより、ユーザは中央のLED23が点灯している際には、目標ピッチXとほぼ同じピッチで縫目を形成できていると認識して縫製を継続することができる。また、右側のLED24,25が点灯している際には、目標ピッチXをオーバしていると認識して加工布の送り量を控えて縫製を行い、目標ピッチXに揃えるように縫製することができる。また、左側のLED21,22が点灯している際には、目標ピッチXに追いついていないと認識して加工布の送り量を増やして縫製し、目標ピッチXに揃えるように縫製することができる。
【0048】
なお、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661が「目標ピッチ記憶手段」に該当する。そして、図7に示す報知処理のS31で一致度合いKを算出する処理を行うCPU61が「一致度合い算出処理」に相当する。
【0049】
次に、第二の実施の形態について、図8乃至図10を参照して説明する。図8は、第二の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図であり、図9は、第二の実施の形態の縫製処理のフローチャートであり、図10は、縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【0050】
まず、図8を参照して、RAM63に設けられている記憶エリアについて説明する。図8に示すように、RAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。図5に示すように、RAM63には、目標ピッチ記憶エリア661、主軸回転速度記憶エリア662、加工布移動量記憶エリア663、一致度合い記憶エリア668、単位目標移動量記憶エリア669等が設けられている。なお、RAM63には図示外の記憶エリアも設けられている。目標ピッチ記憶エリア661、主軸回転速度記憶エリア662、加工布移動量記憶エリア663については、第一の実施の形態と同様であるので説明を援用して省略する。
【0051】
一致度合い記憶エリア668には、目標ピッチと実際に縫製される縫目のピッチとの一致度合いを示す一致度合いLが記憶される。本第二の実施の形態では、単位時間毎に加工布の移動量が検出される(加工布移動量A)。一方、目標ピッチを形成するためには、単位時間でどれだけ加工布を移動すべきかを示す単位時間の目標移動量が算出される(単位目標移動量Z)。そして、単位時間毎に加工布移動量Aと単位目標移動量Zとが比較されて一致度合いLが算出される。本第二の実施の形態では、加工布移動量Aの単位目標移動量Zに対する比を一致度合いLとする。つまり「一致度合いL=加工布移動量A/単位目標移動量Z」である。そして、単位目標移動量記憶エリア669には、単位目標移動量Zが記憶される。
【0052】
次に、図9及び図10のフローチャートを参照して、第二の実施の形態のミシン1の動作について説明する。縫製処理は、縫製開始スイッチ81が押下されることにより、CPU61にてROM62に記憶されている縫製プログラムが実行されて行われる処理である。
【0053】
まず、初期処理が行われる(S51)。この初期処理では、RAM63の加工布移動量記憶エリア663、一致度合い記憶エリア668、単位目標移動量記憶エリア669に初期値の「0」が記憶されて各値が初期化される。次いで、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661から目標ピッチXが読み出され(S52)、主軸回転速度記憶エリア662から主軸回転速度Yが読み出される(S53)。次いで、加工布移動可能時間Qの単位時間Tで加工布の移動量、つまり単位目標移動量Zが算出され、単位目標移動量記憶エリア669に記憶される(S54)。加工布移動可能時間Qについては、第一の実施の形態と同様であるので説明を援用して省略する。
【0054】
そして、ミシンモータ79の回転が開始される(S55)。そして、縫針7が針上となるのが待機される(S56:NO,S56)。具体的には、針上センサ88の出力に基づいて縫針7が針上であるか否かの判断が行われ(S56)、針上であると判断されない間は(S56:NO)、繰り返し針上センサ88の出力の判断が行われる(S56)。
【0055】
そして、針上となったら(S56:YES)、加工布から縫針7が抜かれて縫目の形成が開始されたこととなる。そこで、イメージセンサ50にアクセスする(S57)。このアクセスは、単位時間Tが経過した後に、単位時間T中の加工布移動量Aを取得するため、イメージセンサ50に縫製開始時点の加工布の画像を撮影させるためのダミーアクセスである。よって、所得された加工布移動量Aを加工布移動量記憶エリア663に記憶する必要はない。
【0056】
そして、RTC69から現在時刻が参照され、単位時間Tの経過が待機される(S58:NO,S58)。そして、単位時間Tが経過したら(S58:YES)、イメージセンサ50にアクセスし、加工布移動量A(XA,YA)が取得され、加工布移動量記憶エリア663に記憶される(S59)。この加工布移動量Aが単位実移動量に該当する。そして、報知処理が行われる(S60、図10参照)。この報知処理では、一致度合いLが算出されて、それに基づいて一致度合い報知LED20が点灯される。
【0057】
報知処理では、図10に示すように、まず、一致度合いLが算出される(S71)。この一致度合いLは、「加工布移動量A/単位目標移動量Z」である。「目標ピッチX:加工布移動可能時間Q=単位目標移動量Z:単位時間T」の関係が成り立つため、単位目標移動量Zは、「目標ピッチX×単位時間T/加工布移動可能時間Q」で算出される。そして、前述のように、「加工布移動可能時間Q=(60/主軸回転速度Y)/2」であるので、「単位目標移動量Z=目標ピッチX×主軸回転速度Y×単位時間T/30」で算出される。よって、「一致度合いL=「加工布移動量A/(目標ピッチX×主軸回転速度Y×単位時間T/30)」で算出される。つまり、一致度合いLが1.0に近いほど目標ピッチに近く、ずれが少ないということとなる。また、一致度合いLが小さいほど、目標ピッチに追いついておらず、加工布の移動量が少ないことを示しており、一致度合いLが大きいほど、目標ピッチをオーバし、加工布の移動量が多いことを示している。
【0058】
そして、一致度合いLの値に応じて一致度合い報知LED20を点灯させる処理が行われる(S72〜S80)。まず、一致度合いLが0.9以上かつ1.1以下であるか否かの判断が行われる(S72)。0.9以上かつ1.1以下であれば(S72:YES)、目標ピッチとのずれが少ないので、中央のLED23のみが点灯される(S73)。つまり、「0.9≦一致度合いL≦1.1」である場合には中央のLED23のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0059】
また、0.9以上かつ1.1以下でない場合には(S72:NO)、一致度合いLが0.9より大きいか否かの判断が行われる(S74)。0.9より大きければ(S74:YES)、さらに、一致度合いLが1.2よりも大きいか否かの判断が行われる(S75)。1.2よりも大きい場合には(S75:YES)、一番右のLED25のみが点灯される(S76)。つまり、「1.2<一致度合いL」である場合には、一番右のLED25のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。一方、一致度合いLが1.2よりも大きくない場合には(S75:NO)、右から2番目のLED24のみが点灯される(S77)。つまり、「1.1<一致度合いL≦1.2」である場合には、右から2番目のLED24のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0060】
また、一致度合いLが0.9より大きくない場合には(S74:NO)、一致度合いLが0.8以上であるか否かの判断が行われる(S78)。一致度合いLが0.8以上であれば(S78:YES)、左から2番目のLED22のみが点灯される(S79)。つまり、「0.8≦一致度合いL<0.9」である場合には、左から2番目のLED22のみが点灯される。一方、0.8以上でない場合には(S78:NO)、一番左のLED21のみが点灯される(S80)。つまり、「一致度合いL<0.8」である場合には、一番左のLED21のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0061】
そして、図9に示すように縫製処理では、縫製停止スイッチ82が押下されたか否かの判断が行われる(S61)。縫製停止スイッチ82が押下されていなければ(S61:NO)、針下センサ89の出力に基づいて縫針7が針下であるか否かの判断が行われ(S62)、針下であると判断されない場合は(S62:NO)、S58へ戻り、単位時間T秒の経過が待機される(S58:NO,S58)。そして、T秒が経過したら(S58:YES)、一致度合いの算出、報知が行われる(S59,S60)。そして、縫製停止スイッチ82が押下されていなければ(S61:NO)、針下センサ89の出力の判断が行われる(S62)。そして、繰り返しS58〜S62の処理が行われる中で、針下となったら(S62:YES)、S56へ戻り、そして、縫針7が針上となるのが待機される(S56:NO,S56)。一方、縫製停止スイッチ82が押下された場合には(S61:YES)、ミシンモータ79の回転が停止され(S63)、縫製処理は終了する。このようにして、縫製停止スイッチ82が押下されるまで(S61:YES)、繰り返しS6〜S16の処理が行われる。
【0062】
以上のように、縫製が実施される間、単位時間T毎という短い間隔で、目標ピッチの一致度合いをユーザの視覚に訴えることができる。これにより、ユーザは中央のLED23が点灯している際には、目標ピッチとほぼ同じピッチで縫目を形成できていると認識して縫製を継続することができる。また、右側のLED24,25が点灯している際には、目標ピッチをオーバしていると認識して加工布の送り量を控えて縫製を行い、目標ピッチに揃えるように縫製することができる。また、左側のLED21,22が点灯している際には、目標ピッチに追いついていないと認識して加工布の送り量を増やして縫製し、目標ピッチに揃えるように縫製することができる。
【0063】
なお、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661が「目標ピッチ記憶手段」に該当する。そして、図10に示す報知処理のS71で一致度合いLを算出する処理を行うCPU61が「一致度合い算出処理」に相当する。
【0064】
次に、第三の実施の形態について、図11乃至図13を参照して説明する。図11は、第三の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図であり、図12は、第三の実施の形態の縫製処理のフローチャートであり、図13は、縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【0065】
まず、図11を参照して、RAM63に設けられている記憶エリアについて説明する。図11に示すように、RAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。図5に示すように、RAM63には、目標ピッチ記憶エリア661、主軸回転速度記憶エリア662、加工布移動量記憶エリア663、一致度合い記憶エリア668等が設けられている。なお、RAM63には図示外の記憶エリアも設けられている。目標ピッチ記憶エリア661、主軸回転速度記憶エリア662、加工布移動量記憶エリア663については、第一の実施の形態と同様であるので説明を援用して省略する。
【0066】
一致度合い記憶エリア668には、目標ピッチと実際に縫製される縫目のピッチとの一致度合いを示す一致度合いMが記憶される。本第三の実施の形態では、縫針7が針下位置から針上位置となり再び針下位置となって、1つの縫目が形成される毎、つまり縫針7が針落ちする一針ごとに加工布の移動量が検出される(加工布移動量A)。つまり、この加工布移動量Aは、実際に形成された縫目のピッチを示している。そして、1つの縫目が形成される毎に加工布移動量Aと目標ピッチXとが比較されて一致度合いMが算出される。本第三の実施の形態では、加工布移動量Aと目標ピッチXとの差を一致度合いMとする。つまり「一致度合いM=加工布移動量A−目標ピッチX」である。
【0067】
次に、図12及び図13のフローチャートを参照して、第三の実施の形態のミシン1の動作について説明する。縫製処理は、縫製開始スイッチ81が押下されることにより、CPU61にてROM62に記憶されている縫製プログラムが実行されて行われる処理である。
【0068】
まず、初期処理が行われる(S101)。この初期処理では、RAM63の加工布移動量記憶エリア663、一致度合い記憶エリア668に初期値の「0」が記憶されて各値が初期化される。次いで、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661から目標ピッチXが読み出され(S102)、イメージセンサ50にアクセスする(S103)。このアクセスは、単位時間Tが経過した後に、単位時間T中の加工布移動量Aを取得するため、イメージセンサ50に縫製開始時点の加工布の画像を撮影させるためのダミーアクセスである。よって、所得された加工布移動量Aを加工布移動量記憶エリア663に記憶する必要はない。
【0069】
そして、ミシンモータ79の回転が開始される(S104)。そして、縫針7が針上となるまで待機される(S105:NO,S105)。具体的には、針上センサ88の出力に基づいて縫針7が針上であるか否かの判断が行われ(S105)、針上であると判断されない間は(S105:NO)、繰り返し針上センサ88の出力の判断が行われる(S105)。
【0070】
そして、針上となったら(S105:YES)、縫針7が針下となるまで待機される(S106:NO,S106)。具体的には、針下センサ89の出力に基づいて縫針7が針下であるか否かの判断が行われ(S106)、針下であると判断されない間は(S106:NO)、繰り返し針下センサ89の出力の判断が行われる(S106)。そして、針下となったら(S106:YES)、イメージセンサ50にアクセスし、加工布移動量A(XA,YA)が取得され、加工布移動量記憶エリア663に記憶される(S107)。そして、報知処理が行われる(S108、図13参照)。この報知処理では、一致度合いMが算出されて、それに基づいて一致度合い報知LED20が点灯される。
【0071】
報知処理では、図13に示すように、まず、一致度合いMが算出される(S121)。この一致度合いMは、「加工布移動量A−目標ピッチX」である。つまり、一致度合いMが0に近いほど目標ピッチに近く、ずれが少ないということとなる。また、一致度合いMが負の値であれば、目標ピッチに追いついておらず、加工布の移動量が少ないことを示しており、一致度合いMが正の値であれば、目標ピッチをオーバし、加工布の移動量が多いことを示している。
【0072】
そして、一致度合いMの値に応じて一致度合い報知LED20を点灯させる処理が行われる(S122〜S130)。まず、一致度合いMが−1mm以上かつ1mm以下であるか否かの判断が行われる(S122)。−1mm以上かつ1mm以下であれば(S122:YES)、目標ピッチとのずれが少ないので、中央のLED23のみが点灯される(S123)。つまり、「−1mm≦一致度合いM≦1mm」である場合には中央のLED23のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0073】
また、−1mm以上かつ1mm以下でない場合には(S122:NO)、一致度合いMが−1mmより大きいか否かの判断が行われる(S124)。−1mmより大きければ(S124:YES)、さらに、一致度合いMが2mmよりも大きいか否かの判断が行われる(S125)。2mmよりも大きい場合には(S125:YES)、一番右のLED25のみが点灯される(S126)。つまり、「2mm<一致度合いM」である場合には、一番右のLED25のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。一方、一致度合いMが2mmよりも大きくない場合には(S125:NO)、右から2番目のLED24のみが点灯される(S127)。つまり、「1mm<一致度合いM≦2mm」である場合には、右から2番目のLED24のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0074】
また、一致度合いMが−1mmより大きくない場合には(S124:NO)、一致度合いMが−2mmより大きいか否かの判断が行われる(S128)。一致度合いMが−2mmより大きければ(S128:YES)、左から2番目のLED22のみが点灯される(S129)。つまり、「−2mm≦一致度合いM<−1mm」である場合には、左から2番目のLED22のみが点灯される。一方、−2mmより大きくない場合には(S128:NO)、一番左のLED21のみが点灯される(S130)。つまり、「一致度合いM<−2mm」である場合には、一番左のLED21のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0075】
そして、図12に示すように縫製処理では、縫製停止スイッチ82が押下されたか否かの判断が行われる(S109)。縫製停止スイッチ82が押下されていなければ(S109:NO)、S105へ戻る。一方、縫製停止スイッチ82が押下された場合には(S109:YES)、ミシンモータ79の回転が停止され(S110)、縫製処理は終了する。このようにして、縫製停止スイッチ82が押下されるまで(S109:YES)、繰り返しS105〜S109の処理が行われる。
【0076】
以上のように、縫製が実施される間、縫目が形成される毎に目標ピッチの一致度合いをユーザの視覚に訴えることができる。これにより、ユーザは中央のLED23が点灯している際には、目標ピッチとほぼ同じピッチで縫目を形成できていると認識して縫製を継続することができる。また、右側のLED24,25が点灯している際には、目標ピッチをオーバしていると認識して加工布の送り量を控えて縫製を行い、目標ピッチに揃えるように縫製することができる。また、左側のLED21,22が点灯している際には、目標ピッチに追いついていないと認識して加工布の送り量を増やして縫製し、目標ピッチに揃えるように縫製することができる。
【0077】
なお、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661が「目標ピッチ記憶手段」に該当する。そして、図13に示す報知処理のS121で一致度合いMを算出する処理を行うCPU61が「一致度合い算出処理」に相当する。
【0078】
なお、本発明のミシン1は、上記第一の実施の形態〜第三の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。第一の実施の形態では、実移動量の目標移動量に対する比を一致度合いKとしたが、一致度合いKはこれに限らない。例えば、実移動量と目標移動量との差を用いてもよい。第二の実施の形態では、加工布移動量Aの単位目標移動量Zに対する比を一致度合いLとし、一致度合いLはこれに限らない。例えば、加工布移動量Aと単位目標移動量Zとの差を用いてもよい。第三の実施の形態では、加工布移動量Aと目標ピッチXとの差を一致度合いMとしたが、一致度合いMはこれに限らない。例えば、加工布移動量Aの目標ピッチXに対する比を用いてもよい。また、一致度合いの割合と表示手段の表示態様の組合せも本実施の形態に限定されるものではない。
【0079】
また、また、一致度合い報知LED20の構成は図2に示す5つのLED21〜25を用いるものに限らない。5つよりも少ない数や多い数のLEDを用いてもよい。また、一致度合いが丁度よい場合にはLEDを点灯させないようにしてもよいし、一致度合いが低い場合にはLEDを点滅させるようにしてもよい。また、種々の異なる発光色のLEDを用いてもよい。また、「報知手段」はLEDでなく、ランプ等の発光部材や小型の液晶ディスプレイや有機ELを用いてもよい。また、脚注部3に備えられた液晶ディスプレイ10を用い、メッセージ等を表示させてもよい。また、視覚に訴えるのではなく、図14に示すようにスピーカ84を設けて、音声メッセージや警告音で報知してもよい。なお、スピーカ84は出力インターフェイス66に接続している。
【0080】
上記実施の形態では、目標ピッチをユーザが入力するものとしたが、ROM62に予め記憶されていてもよい。この場合には、縫製処理のS2(図5)、S52(図8)、S101(図10)においては、ROM62から目標ピッチが読み出される。また、ROM62やRAM63等の記憶手段から目標ピッチを読み出すのではなく、ミシン制御プログラム中に目標ピッチの数値が記載されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】ミシン1の上側からの斜視図である。
【図2】ミシン1の頭部5に設けられた一致度合い報知LED20を示す部分拡大図である。
【図3】イメージセンサ50を示す模式図である。
【図4】ミシン1の電気的構成を示す模式図である。
【図5】RAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。 第一の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。
【図6】第一の実施の形態の縫製処理のフローチャートである。
【図7】縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【図8】第二の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。
【図9】第二の実施の形態の縫製処理のフローチャートである。
【図10】縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【図11】第三の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。
【図12】第三の実施の形態の縫製処理のフローチャートである。
【図13】縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【図14】変形例のミシン1の斜視図である
【符号の説明】
【0082】
1 ミシン
20 一致度合い報知LED
21 LED
22 LED
23 LED
24 LED
25 LED
50 イメージセンサ
61 CPU
63 RAM
661 目標ピッチ記憶エリア
663 加工布移動量記憶エリア
668 一致度合い記憶エリア
K 一致度合い
L 一致度合い
M 一致度合い
X 目標ピッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン及びミシン制御プログラムに関するものであり、詳細には、ユーザが加工布を動かしながら縫製を行うミシン及びミシン制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの手動操作で加工布を移動させながら縫製を行い、縫目を形成するフリーモーション縫製が行われている。このようなフリーモーション縫製は、例えば、表地と裏地との間に中綿を入れて、直線や曲線等の縫目模様で縫合するキルティング縫製において用いられる。このフリーモーション縫製においては、縫製結果が美しいとされるいくつかのポイントがある。その一つは、縫目の長さ(ピッチ)が揃っていることである。そこで、縫製作業者は縫目を揃えて縫製したいが、ピッチを揃えるには高い技能が縫製作業者に必要である。そこで、特許文献1に記載の発明のミシンでは、一針毎に加工布の移動量を読み取り、加工布の移動量に応じて縫製速度を変化させることによりピッチを揃えている。
【0003】
また、縫製速度を設定する速度設定装置を備え、この速度設定装置で設定された速度に応じて速度表示用ランプを点灯させるミシンが提案されている(例えば、特許文献2参照)。そして、速度設定用スイッチを備え、この速度設定用スイッチで設定された速度に応じて速度表示ディスプレイの発光ダイオードを点灯させるミシンが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−292175号公報
【特許文献2】特開昭56−102276号公報
【特許文献3】実開平4−64376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のミシンでは、加工布の移動量に応じて縫製速度を変化させることによりピッチを揃えているのみであり、逆に縫製速度が一定な場合にどれだけ加工布を移動させればピッチを揃えることができるかをユーザが知ることはできない。そして、特許文献2,3に記載の発明のミシンでは、設定の速度を表示しているのみである。よって、一定の速度で縫製が行われる場合、ユーザがどれだけ加工布を移動させれば、ピッチを揃えることができるのかを知ることはできないという問題点がある。
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、ピッチの揃った縫製結果を得る手助けをするミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明のミシンでは、縫針を装着する針棒を駆動する主軸と、この主軸を回転駆動するミシンモータとを備え、ユーザが加工布を移動させながら縫製を行うミシンにおいて、所定の長さを前記加工布の縫目ピッチの目標値である目標ピッチとして記憶する目標ピッチ記憶手段と、前記検出手段により検出された前記加工布の移動量に基づいて決定される実際に縫製される縫目ピッチと前記目標ピッチとの一致度合いを算出する一致度合い算出手段と、前記一致度合い算出手段により算出された前記一致度合いを報知する報知手段とを備えている。
【0007】
また、請求項2に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の前記加工布の移動量を検出し、前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記所定微小時間毎の前記加工布の移動量を前記縫目形成時間内の所定時間において累積した累積値と、前記目標ピッチと前記主軸の回転速度とから演算される前記加工布の前記所定微小時間毎の目標移動量を前記所定時間において累積した累積値との一致度合いを算出することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の前記加工布の移動量を検出し、前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記移動量と、前記目標ピッチと前記主軸の回転速度とから演算される前記所定微小時間毎の目標移動量との一致度合いを算出することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記検出手段は、前記縫針が針落ちする一針毎の前記加工布の移動量を検出し、前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記移動量と前記目標ピッチの移動量との一致度合いを算出することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明のミシンでは、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記報知手段は、前記一致度合いに応じた表示態様を表示する表示手段を備えている。
【0011】
また、請求項6に係る発明のミシンでは、請求項5に記載の発明の構成に加えて、前記表示手段は、当該ミシンの頭部の下方正面側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る発明のミシンでは、請求項5又は6に記載の発明の構成に加えて、前記表示手段は、LEDで構成されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る発明のミシンでは、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記報知手段は、前記一致度合いに応じた音又は音声を出力する音出力手段を備えている。
【0014】
また、請求項9に係る発明のミシン制御プログラムでは、請求項1乃至8のいずれかに記載のミシンの各種処理手段としてミシンに内蔵されたコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明のミシンでは、検出手段は、加工布が移動される移動量を検出し、目標ピッチ記憶手段は、所定の長さを前記加工布の縫目ピッチの目標値である目標ピッチとして記憶し、一致度合い算出手段は、検出手段により検出された加工布の移動量に基づいて決定される実際に縫製される縫目ピッチと目標ピッチとの一致度合いを算出し、報知手段は、一致度合い算出手段により算出された一致度合いを報知することができる。したがって、目標ピッチと実際に縫製された縫目のピッチとの一致度合いが報知されるので、縫製者は目標ピッチとのずれを認識しながら縫製することができる。よって、一致度合いが低い場合に縫製者は、縫製速度を調整したり、加工布の送り量を調整したりして目標ピッチに合わせるようにすることができ、縫目ピッチの揃った美しいフリーモーション縫製を行うことができる。
【0016】
また、請求項2に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の効果に加えて、検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の加工布の移動量を検出し、一致度合い算出手段は、検出手段により検出された所定微小時間毎の加工布の移動量を縫目形成時間内の所定時間において累積した累積値と、目標ピッチと主軸の回転速度とから演算される加工布の所定微小時間毎の目標移動量を所定時間において累積した累積値との一致度合いを算出することができる。したがって、縫製者は、1つの縫目が形成される間所定微少時間毎に、縫目形成開始時から累積された加工布の移動量と、目標ピッチの縫目を形成する場合にその時間で加工布が移動される目標移動量との一致度合いを知ることができる。よって、縫目を形成中にもその縫目の一致度合いを詳細に知ることができるので、縫目ピッチをより揃え易くすることができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の効果に加えて、検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の加工布の移動量を検出し、一致度合い算出手段は、検出手段により検出された移動量と、目標ピッチと主軸の回転速度とから演算される所定微小時間毎の目標移動量との一致度合いを算出することができる。したがって、縫製者は1つの縫目が形成される間所定微少時間毎に、所定微小時間内の加工布の移動量と、目標ピッチの縫目を形成する場合に所定微小時間内で加工布が移動される目標移動量との一致度合いを知ることができる。よって、詳細に一致度合いを知ることができるので、縫目ピッチをより揃え易くすることができる。
【0018】
また、請求項4に係る発明のミシンでは、請求項1に記載の発明の効果に加えて、検出手段は、縫針が針落ちする一針毎の加工布の移動量を検出し、一致度合い算出手段は、検出手段により検出された移動量と目標ピッチの移動量との一致度合いを算出することができる。したがって、一針毎に目標ピッチとの一致度合いを知ることができる。よって、簡易な制御で一致度合いを算出することができる。
【0019】
また、請求項5に係る発明のミシンでは、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、報知手段の表示手段は、一致度合いに応じた表示態様を表示することができる。したがって、一致度合いを縫製者の視覚に訴え、縫製者に一致度合いを認識させやすい。
【0020】
また、請求項6に係る発明のミシンでは、請求項5に記載の発明の効果に加えて、表示手段は、ミシンの頭部の下方正面側に配置することができる。よって、縫製中であっても縫製者の視野に表示手段が入るので、縫製者が縫製中に針元から視線を殆ど動かさなくても一致度合いを認識させることができる。
【0021】
また、請求項7に係る発明のミシンでは、請求項5又は6に記載の発明の効果に加えて、表示手段はLEDで構成されているので、簡単な構成で安価に表示手段を構成することができる。
【0022】
また、請求項8に係る発明のミシンでは、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、報知手段の音出力手段は、一致度合いに応じた音又は音声を出力することができる。したがって、縫製中であっても縫製者は音又は音声が聞こえるので、縫製者が縫製中に針元から視線を動かさなくても一致度合いを認識することができる。
【0023】
また、請求項9に係る発明のミシン制御プログラムでは、請求項1乃至8のいずれかに記載のミシンの各種処理手段としてミシンに内蔵されたコンピュータを機能させることができる。したがって、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明のミシンと同様の効果を奏すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の第一の実施の形態〜第三の実施の形態のミシン1を図面を参照して説明する。第一の実施の形態〜第三の実施の形態のミシン1の物理的構成及び電気的構成は同様であるので、まず、図1乃至図4を参照して、ミシン1の電気的構成及び電気的構成について説明する。図1はミシン1の上側からの斜視図であり、図2は、ミシン1の頭部5に設けられた一致度合い報知LED20を示す部分拡大図であり、図3は、イメージセンサ50を示す模式図である。図4は、ミシン1の電気的構成を示す模式図である。
【0025】
まず、図1を参照して、本実施の形態におけるミシン1の物理的構成について説明する。ミシン1は、左右方向に長いミシンベッド2と、ミシンベッド2の右端部から上方へ立設された脚柱部3と、脚柱部3の上端から左方へ延びるアーム部4と、アーム部4の左先端部に設けられた頭部5とを有する。脚柱部3の前面部には、表面にタッチパネル16を備えた液晶ディスプレイ10が設けられている。液晶ディスプレイ10には、縫製模様や縫製条件の入力キー等が表示され、タッチパネル16においてこれらの入力キー等に対応した位置に触れることにより縫製模様や縫製条件等を選択可能になっている。ミシン1の内部には、ミシンモータ79(図4参照)、主軸、下端部に縫針7を装着した針棒6(図3参照)、この針棒6を上下動させる針棒上下動機構(図示せず)、針棒6を左右方向に針振りさせる針振り機構(図示せず)、針棒6をミシンモータ79の動力から釈放する針棒釈放機構(図示せず)等が収納されている。
【0026】
また、ミシンベッド2の上部には針板80が配設されている。ミシンベッド2の内部には、送り歯(図示せず)を駆動する送り歯前後動機構(図示せず)及び送り歯上下動機構(図示せず)、送り歯による加工布の送り量を調整する送り量調整用パルスモータ78(図4参照)、及び下糸を格納した釜(図示せず)等が収納されている。
【0027】
また、ミシン1の右側面には、手動で主軸を回転させ、前記針棒6を上下動させるプーリ(図示せず)が設けられている。そして、前記頭部5の前面右側にはミシンモータ79の駆動を開始させて縫製を開始させる縫製開始スイッチ81、ミシンモータ79の駆動を停止させて縫製を停止させる縫製停止スイッチ82、縫製速度(主軸の回転速度)を調整する縫製速度調整スイッチ90が設けられている。さらに、頭部5の前面左側には、本発明の要部である一致度合い報知LED20が設けられている。この一致度合い報知LED20は、図2に示すようにLED21〜25の5つのLEDで構成されており、目標ピッチと実際に縫製されている縫目のピッチとの一致度合いを報知するのに用いられる。LED21〜25は、左から順にLED21,LED22,LED23,LED24,LED25と並んでおり、中央のLED23は目標ピッチとの一致度合いが丁度よいことを示しており、左のLEDほど、目標ピッチよりも短いピッチとなることを示し、右のLEDほど、目標ピッチよりも長いピッチとなることを示している。つまり、実際の縫製の加工布移動量を示す一致度合い報知LED20が、左から順にLED21,LED22,LED23,LED24,LED25と並んでいる。なお、この一致度合い報知LED20が「報知手段」である「表示手段」に該当する。
【0028】
次に、図3を参照して、イメージセンサ50について説明する。図3は、イメージセンサ50を示す模式図である。イメージセンサ50は周知の変位センサである。イメージセンサ50は、CCDカメラ及び制御回路を備え、CCDカメラで画像を撮影する。そして、直前に撮影された画像と、今回撮影された画像との同一部分を比較し、その同一部分の範囲及び、画像内の位置から、撮影対象がどの方向にどれだけ移動したのかを示す数値(XY座標値)が出力されるものである。実施の形態では、図3に示すように、ミシン1の図示しないフレームに支持フレーム51が取り付けられている。そして、その支持フレーム51にイメージセンサ50が、縫針7の針落ち点を含むその近傍の位置を撮影できるように取り付けられている。なお、針落ち点とは、縫針7が針棒上下動機構により下方に移動され、加工布に刺さった点を指している。ここで、加工布を押さえる押え足39は、押え棒48の下端部に固定される押えホルダ46に装着されている。このイメージセンサ50が「検出手段」に該当する。ここで、押え足39と押えホルダ46は、針落ち点を含むその近傍の位置が撮影可能なように透明樹脂で形成されている。また、CCDカメラはCMOSカメラであってもよいし、他の撮像素子であってもよい。
【0029】
次に、図4を参照して、ミシン1の主な電気的構成について説明する。図4に示すように、このミシン1は、CPU61,ROM62,RAM63,EEPROM64,カードスロット17,外部アクセスRAM68,入力インターフェイス65,出力インターフェイス66、RTC69等で構成され、これらはバス67により相互に接続されている。そして、入力インターフェイス65には、縫製開始スイッチ81,縫製停止スイッチ82,タッチパネル16,針上センサ88,針下センサ89,縫製速度調整スイッチ90,イメージセンサ50等が接続されている。一方、出力インターフェイス66には、送り量調整用パルスモータ78を駆動させる駆動回路71,主軸を回転駆動させるためのミシンモータ79を駆動させる駆動回路72,針棒6を揺動駆動する針振りパルスモータ43を駆動させる駆動回路74,液晶ディスプレイ10を駆動させる駆動回路75、一致度合い報知LED20が電気的に接続されている。
【0030】
CPU61は、ミシン1の主制御を司り、読み出し専用の記憶素子であるROM62の制御プログラム記憶領域に記憶された制御プログラムに従って、各種演算及び処理を実行するものである。RAM63は、任意に読み書き可能な記憶素子であり、CPU61が演算処理した演算結果を収容する各種記憶領域が必要に応じて設けられている。縫製開始スイッチ81及び縫製停止スイッチ82はボタン式スイッチである。そして、針上センサ88は、主軸の回転位相を検出するセンサであり、主軸が回転して縫針7の先端が針板80上面よりも上の位置に到達する(針上位置)とON信号を出力するように設定されている。針下センサ89は、主軸の回転位相を検出するセンサであり、主軸が回転して針棒6が針上位置から降下して、縫針7の先端が針板80上面よりも降下した位置(針下位置)に到達するとON信号を出力するように設定されている。そして、縫製速度調整スイッチ90は、スライド式スイッチであり、縫製速度、つまり主軸の回転速度を指示することができる。本実施の形態のミシン1では、スライドつまみを左にするほど速度は遅くなり、右にするほど速度は早くなる。
【0031】
次に、第一の実施の形態について、図5乃至図7を参照して説明する。図5は、第一の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図であり、図6は、第一の実施の形態の縫製処理のフローチャートであり、図7は、縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【0032】
まず、図5を参照して、RAM63に設けられている記憶エリアについて説明する。図5は、RAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。図5に示すように、RAM63には、目標ピッチ記憶エリア661、主軸回転速度記憶エリア662、加工布移動量記憶エリア663、分割数記憶エリア664、累積カウンタ記憶エリア665、基準座標記憶エリア666、現在座標記憶エリア667、一致度合い記憶エリア668等が設けられている。なお、RAM63には図示外の記憶エリアも設けられている。
【0033】
目標ピッチ記憶エリア661には、縫製する際に目標とするピッチ(縫目の長さ)が記憶される。この目標ピッチXは、縫製を開始する前にユーザにより数値が入力されたり、予め登録されている値から選択されたりして、目標ピッチ記憶エリア661に記憶される。この目標ピッチXの入力は、入力や選択を行うための画面が液晶ディスプレイ10に表示され、タッチパネル16により入力が受け付けられる。主軸回転速度記憶エリア662には、ミシン1の起動時の初期処理にて、縫製速度調整スイッチ90により指定されている主軸回転速度Yが記憶される。なお、主軸回転速度Yは1分間の主軸の回転数として与えられている。本実施の形態のミシン1では主軸回転速度Yは70〜850回/分とする。なお、縫製速度調整スイッチ90が操作された際には、操作の都度、指定されている主軸回転速度に変更される。そして、加工布移動量記憶エリア663には、イメージセンサ50から出力される加工布移動量Aが記憶される。加工布移動量AはXY座標値として出力され、加工布移動量A(XA,YA)と表すこととする。
【0034】
そして、分割数記憶エリア664には、一致度合いKを算出する際に使用される分割数Nが記憶される。この分割数Nは、加工布を移動可能な時間、つまり、設定されている縫製速度において縫針7が針上の状態となる時間中に、単位時間Tがいくつあるかを示す数である。なお、加工布移動可能時間Qは、主軸が1回転するのに掛かる時間のほぼ半分とみなすことができる。よって、「加工布移動可能時間Q=(60/主軸回転速度Y)/2」で算出される。本実施の形態のミシン1では、主軸回転速度Yが70〜850回/分であるので、「(60/850)/2≦加工布移動可能時間Q≦(60/70)/2」となる。簡単には「0.035<加工布移動可能時間Q<0.43」である。単位時間Tは、加工布移動可能時間Qよりも短い時間とするので、単位時間Tは0.01,0.02などとすればよい。
【0035】
そして、累積カウンタ記憶エリア665には、縫針7が針上である際に経過した単位時間をカウントするための累積カウンタnが記憶される。基準座標記憶エリア666には、縫目の形成が開始される際、つまり、縫針7が針下から針上となった時点での針落ち点を示す情報(XY座標)が基準座標として記憶される。そして、現在座標記憶エリア667には、一致度合いKを判断する際の針落ち点を示す情報(XY座標)が現在座標として記憶される。
【0036】
そして、一致度合い記憶エリア668には、目標ピッチXと実際に縫製される縫目のピッチとの一致度合いを示す一致度合いKが記憶される。本第一の実施の形態では、単位時間毎に加工布の移動量が検出される。そして、縫目の形成が開始される際、つまり、縫針7が針下から針上となった時点から、単位時間毎に検出された移動量が累積され、縫目形成開始時点からの加工布の移動量が算出される(実移動量)。一方、目標ピッチを形成するためには、単位時間でどれだけ加工布を移動すべきかを示す単位時間の目標移動量が算出され、縫目形成開始時点からの経過時間の目標移動量が累積される(目標移動量)。そして、実移動量と目標移動量とが比較されて一致度合いKが算出される。本第一の実施の形態では、実移動量の目標移動量に対する比を一致度合いKとする。つまり「一致度合いK=実移動量/目標移動量」である。
【0037】
次に、図6及び図7のフローチャートを参照して、第一の実施の形態のミシン1の動作について説明する。縫製処理は、縫製開始スイッチ81が押下されることにより、CPU61にてROM62に記憶されている縫製プログラムが実行されて行われる処理である。
【0038】
まず、初期処理が行われる(S1)。この初期処理では、RAM63の加工布移動量記憶エリア663、分割数記憶エリア664、累積カウンタ記憶エリア665、基準座標記憶エリア666、現在座標記憶エリア667、一致度合い記憶エリア668に初期値の「0」が記憶されて各値が初期化される。次いで、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661から目標ピッチXが読み出され(S2)、主軸回転速度記憶エリア662から主軸回転速度Yが読み出される(S3)。次いで、加工布移動可能時間Qの単位時間Tでの分割数Nが算出されて分割数記憶エリア664に記憶される(S4)。上述したように、加工布移動可能時間Qは主軸回転速度Yにより決定される。また、単位時間Tは予め定められている。ここでは、一例として0.01秒とする。よって、例えば主軸回転速度Yが「600回/分」であるとすると、「分割数N=(60/600)/0.01=10」である。なお、割り切れない場合には、商の整数部分のみを分割数Nとする。
【0039】
そして、ミシンモータ79の回転が開始される(S5)。そして、縫針7が針上となるのが待機される(S6:NO,S6)。具体的には、針上センサ88の出力に基づいて縫針7が針上であるか否かの判断が行われ(S6)、針上であると判断されない間は(S6:NO)、繰り返し針上センサ88の出力の判断が行われる(S6)。
【0040】
そして、針上となったら(S6:YES)、加工布から縫針7が抜かれて縫目の形成が開始されたこととなる。そこで、イメージセンサ50にアクセスし、加工布移動量A(XA,YA)が取得され、加工布移動量記憶エリア663に記憶される(S7)。なお、縫製開始後最初のイメージセンサ50へのアクセス時には、加工布移動量Aは(0,0)が出力される。そして、縫目の形成開始の位置を示す基準座標B(XB,YB)が算出され、基準座標記憶エリア666に記憶される(S8)。この基準座標Bは、前回のイメージセンサ50へのアクセス時の座標(現在座標Cが該当する)に、S8で取得された移動量を加算することにより算出される。なお、縫製開始後最初に基準座標Bを算出する際には、加工布移動量Aは(0,0)であり、現在座標Cは初期値の(0,0)であるので、基準座標Bは(0,0)とされる。つまり、縫製開始後最初にイメージセンサ50へアクセスした時点の加工布の位置が原点とされる。次いで、累積カウンタnに「0」が記憶され、現在座標C(XC,YC)に基準座標Bが記憶される(S9)。
【0041】
そして、RTC69から現在時刻が参照され、単位時間Tの経過が待機される(S10:NO,S10)。そして、単位時間Tが経過したら(S10:YES)、累積カウンタnに「1」が加算され(S11)、イメージセンサ50にアクセスし、加工布移動量A(XA,YA)が取得され、加工布移動量記憶エリア663に記憶される(S12)。そして、現在座標Cが算出され、現在座標記憶エリア667に記憶される(S13)。具体的には、現在座標記憶エリア667に記憶されている、前回のイメージセンサ50アクセス時の座標である現在座標Cに、加工布移動量Aが加算される。これにより、今回のアクセス時点の座標が新たな現在座標Cが算出される。
【0042】
そして、報知処理が行われる(S14、図7参照)。この報知処理では、一致度合いKが算出されて、それに基づいて一致度合い報知LED20が点灯される。図7に示すように、まず、一致度合いKが算出される(S31)。この一致度合いKは、「実移動量/目標移動量」である。実移動量は、縫目の始点(基準座標B)から現在の針落ち点(現在座標C)までの距離、つまり、基準座標Bの点と現在座標Cの点とを結ぶ線分の長さである。よって、実移動量は「(XC−XB)2+(YC−YB)2」の正の平方根で与えられる。そして、目標移動量は、「(累積カウンタn/分割数N)×目標ピッチX」で与えられる。つまり、一致度合いKが1.0に近いほど目標ピッチに近く、ずれが少ないということとなる。また、一致度合いKが小さいほど、目標ピッチに追いついておらず、加工布の移動量が少ないことを示しており、一致度合いKが大きいほど、目標ピッチをオーバし、加工布の移動量が多いことを示している。
【0043】
そして、一致度合いKの値に応じて一致度合い報知LED20を点灯させる処理が行われる(S32〜S40)。まず、一致度合いKが0.9以上かつ1.1以下であるか否かの判断が行われる(S32)。0.9以上かつ1.1以下であれば(S32:YES)、目標ピッチとのずれが少ないので、中央のLED23のみが点灯される(S33)。つまり、「0.9≦一致度合いK≦1.1」である場合には中央のLED23のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0044】
また、0.9以上かつ1.1以下でない場合には(S32:NO)、一致度合いKが0.9より大きいか否かの判断が行われる(S34)。0.9より大きければ(S34:YES)、さらに、一致度合いKが1.2よりも大きいか否かの判断が行われる(S35)。1.2よりも大きい場合には(S35:YES)、一番右のLED25のみが点灯される(S36)。つまり、「1.2<一致度合いK」である場合には、一番右のLED25のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。一方、一致度合いKが1.2よりも大きくない場合には(S35:NO)、右から2番目のLED24のみが点灯される(S37)。つまり、「1.1<一致度合いK≦1.2」である場合には、右から2番目のLED24のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0045】
また、一致度合いKが0.9より大きくない場合には(S34:NO)、一致度合いKが0.8以上であるか否かの判断が行われる(S38)。一致度合いKが0.8以上であれば(S38:YES)、左から2番目のLED22のみが点灯される(S39)。つまり、「0.8≦一致度合いK<0.9」である場合には、左から2番目のLED22のみが点灯される。一方、0.8以上でない場合には(S38:NO)、一番左のLED21のみが点灯される(S40)。つまり、「一致度合いK<0.8」である場合には、一番左のLED21のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0046】
そして、図6に示すように縫製処理では、縫製停止スイッチ82が押下されたか否かの判断が行われる(S15)。縫製停止スイッチ82が押下されていなければ(S15:NO)、針下センサ89の出力に基づいて縫針7が針下であるか否かの判断が行われ(S16)、針下であると判断されない場合は(S16:NO)、S10へ戻り、単位時間T秒の経過が待機される(S10:NO,S10)。そして、T秒が経過したら(S10:YES)、一致度合いの算出、報知が行われる(S11〜S14)。そして、縫製停止スイッチ82が押下されていなければ(S15:NO)、針下センサ89の出力の判断が行われる(S16)。そして、繰り返しS10〜S16の処理が行われる中で、針下となったら(S16:YES)、S6へ戻り、そして、縫針7が針上となるのが待機される(S6:NO,S6)。一方、縫製停止スイッチ82が押下された場合には(S15:YES)、ミシンモータ79の回転が停止され(S17)、縫製処理は終了する。このようにして、縫製停止スイッチ82が押下されるまで(S15:YES)、繰り返しS6〜S16の処理が行われる。
【0047】
以上のように、縫製が実施される間、単位時間T毎という細かい間隔で、現在割く静止している縫目の目標ピッチXの一致度合いをユーザの視覚に訴えることができる。これにより、ユーザは中央のLED23が点灯している際には、目標ピッチXとほぼ同じピッチで縫目を形成できていると認識して縫製を継続することができる。また、右側のLED24,25が点灯している際には、目標ピッチXをオーバしていると認識して加工布の送り量を控えて縫製を行い、目標ピッチXに揃えるように縫製することができる。また、左側のLED21,22が点灯している際には、目標ピッチXに追いついていないと認識して加工布の送り量を増やして縫製し、目標ピッチXに揃えるように縫製することができる。
【0048】
なお、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661が「目標ピッチ記憶手段」に該当する。そして、図7に示す報知処理のS31で一致度合いKを算出する処理を行うCPU61が「一致度合い算出処理」に相当する。
【0049】
次に、第二の実施の形態について、図8乃至図10を参照して説明する。図8は、第二の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図であり、図9は、第二の実施の形態の縫製処理のフローチャートであり、図10は、縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【0050】
まず、図8を参照して、RAM63に設けられている記憶エリアについて説明する。図8に示すように、RAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。図5に示すように、RAM63には、目標ピッチ記憶エリア661、主軸回転速度記憶エリア662、加工布移動量記憶エリア663、一致度合い記憶エリア668、単位目標移動量記憶エリア669等が設けられている。なお、RAM63には図示外の記憶エリアも設けられている。目標ピッチ記憶エリア661、主軸回転速度記憶エリア662、加工布移動量記憶エリア663については、第一の実施の形態と同様であるので説明を援用して省略する。
【0051】
一致度合い記憶エリア668には、目標ピッチと実際に縫製される縫目のピッチとの一致度合いを示す一致度合いLが記憶される。本第二の実施の形態では、単位時間毎に加工布の移動量が検出される(加工布移動量A)。一方、目標ピッチを形成するためには、単位時間でどれだけ加工布を移動すべきかを示す単位時間の目標移動量が算出される(単位目標移動量Z)。そして、単位時間毎に加工布移動量Aと単位目標移動量Zとが比較されて一致度合いLが算出される。本第二の実施の形態では、加工布移動量Aの単位目標移動量Zに対する比を一致度合いLとする。つまり「一致度合いL=加工布移動量A/単位目標移動量Z」である。そして、単位目標移動量記憶エリア669には、単位目標移動量Zが記憶される。
【0052】
次に、図9及び図10のフローチャートを参照して、第二の実施の形態のミシン1の動作について説明する。縫製処理は、縫製開始スイッチ81が押下されることにより、CPU61にてROM62に記憶されている縫製プログラムが実行されて行われる処理である。
【0053】
まず、初期処理が行われる(S51)。この初期処理では、RAM63の加工布移動量記憶エリア663、一致度合い記憶エリア668、単位目標移動量記憶エリア669に初期値の「0」が記憶されて各値が初期化される。次いで、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661から目標ピッチXが読み出され(S52)、主軸回転速度記憶エリア662から主軸回転速度Yが読み出される(S53)。次いで、加工布移動可能時間Qの単位時間Tで加工布の移動量、つまり単位目標移動量Zが算出され、単位目標移動量記憶エリア669に記憶される(S54)。加工布移動可能時間Qについては、第一の実施の形態と同様であるので説明を援用して省略する。
【0054】
そして、ミシンモータ79の回転が開始される(S55)。そして、縫針7が針上となるのが待機される(S56:NO,S56)。具体的には、針上センサ88の出力に基づいて縫針7が針上であるか否かの判断が行われ(S56)、針上であると判断されない間は(S56:NO)、繰り返し針上センサ88の出力の判断が行われる(S56)。
【0055】
そして、針上となったら(S56:YES)、加工布から縫針7が抜かれて縫目の形成が開始されたこととなる。そこで、イメージセンサ50にアクセスする(S57)。このアクセスは、単位時間Tが経過した後に、単位時間T中の加工布移動量Aを取得するため、イメージセンサ50に縫製開始時点の加工布の画像を撮影させるためのダミーアクセスである。よって、所得された加工布移動量Aを加工布移動量記憶エリア663に記憶する必要はない。
【0056】
そして、RTC69から現在時刻が参照され、単位時間Tの経過が待機される(S58:NO,S58)。そして、単位時間Tが経過したら(S58:YES)、イメージセンサ50にアクセスし、加工布移動量A(XA,YA)が取得され、加工布移動量記憶エリア663に記憶される(S59)。この加工布移動量Aが単位実移動量に該当する。そして、報知処理が行われる(S60、図10参照)。この報知処理では、一致度合いLが算出されて、それに基づいて一致度合い報知LED20が点灯される。
【0057】
報知処理では、図10に示すように、まず、一致度合いLが算出される(S71)。この一致度合いLは、「加工布移動量A/単位目標移動量Z」である。「目標ピッチX:加工布移動可能時間Q=単位目標移動量Z:単位時間T」の関係が成り立つため、単位目標移動量Zは、「目標ピッチX×単位時間T/加工布移動可能時間Q」で算出される。そして、前述のように、「加工布移動可能時間Q=(60/主軸回転速度Y)/2」であるので、「単位目標移動量Z=目標ピッチX×主軸回転速度Y×単位時間T/30」で算出される。よって、「一致度合いL=「加工布移動量A/(目標ピッチX×主軸回転速度Y×単位時間T/30)」で算出される。つまり、一致度合いLが1.0に近いほど目標ピッチに近く、ずれが少ないということとなる。また、一致度合いLが小さいほど、目標ピッチに追いついておらず、加工布の移動量が少ないことを示しており、一致度合いLが大きいほど、目標ピッチをオーバし、加工布の移動量が多いことを示している。
【0058】
そして、一致度合いLの値に応じて一致度合い報知LED20を点灯させる処理が行われる(S72〜S80)。まず、一致度合いLが0.9以上かつ1.1以下であるか否かの判断が行われる(S72)。0.9以上かつ1.1以下であれば(S72:YES)、目標ピッチとのずれが少ないので、中央のLED23のみが点灯される(S73)。つまり、「0.9≦一致度合いL≦1.1」である場合には中央のLED23のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0059】
また、0.9以上かつ1.1以下でない場合には(S72:NO)、一致度合いLが0.9より大きいか否かの判断が行われる(S74)。0.9より大きければ(S74:YES)、さらに、一致度合いLが1.2よりも大きいか否かの判断が行われる(S75)。1.2よりも大きい場合には(S75:YES)、一番右のLED25のみが点灯される(S76)。つまり、「1.2<一致度合いL」である場合には、一番右のLED25のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。一方、一致度合いLが1.2よりも大きくない場合には(S75:NO)、右から2番目のLED24のみが点灯される(S77)。つまり、「1.1<一致度合いL≦1.2」である場合には、右から2番目のLED24のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0060】
また、一致度合いLが0.9より大きくない場合には(S74:NO)、一致度合いLが0.8以上であるか否かの判断が行われる(S78)。一致度合いLが0.8以上であれば(S78:YES)、左から2番目のLED22のみが点灯される(S79)。つまり、「0.8≦一致度合いL<0.9」である場合には、左から2番目のLED22のみが点灯される。一方、0.8以上でない場合には(S78:NO)、一番左のLED21のみが点灯される(S80)。つまり、「一致度合いL<0.8」である場合には、一番左のLED21のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0061】
そして、図9に示すように縫製処理では、縫製停止スイッチ82が押下されたか否かの判断が行われる(S61)。縫製停止スイッチ82が押下されていなければ(S61:NO)、針下センサ89の出力に基づいて縫針7が針下であるか否かの判断が行われ(S62)、針下であると判断されない場合は(S62:NO)、S58へ戻り、単位時間T秒の経過が待機される(S58:NO,S58)。そして、T秒が経過したら(S58:YES)、一致度合いの算出、報知が行われる(S59,S60)。そして、縫製停止スイッチ82が押下されていなければ(S61:NO)、針下センサ89の出力の判断が行われる(S62)。そして、繰り返しS58〜S62の処理が行われる中で、針下となったら(S62:YES)、S56へ戻り、そして、縫針7が針上となるのが待機される(S56:NO,S56)。一方、縫製停止スイッチ82が押下された場合には(S61:YES)、ミシンモータ79の回転が停止され(S63)、縫製処理は終了する。このようにして、縫製停止スイッチ82が押下されるまで(S61:YES)、繰り返しS6〜S16の処理が行われる。
【0062】
以上のように、縫製が実施される間、単位時間T毎という短い間隔で、目標ピッチの一致度合いをユーザの視覚に訴えることができる。これにより、ユーザは中央のLED23が点灯している際には、目標ピッチとほぼ同じピッチで縫目を形成できていると認識して縫製を継続することができる。また、右側のLED24,25が点灯している際には、目標ピッチをオーバしていると認識して加工布の送り量を控えて縫製を行い、目標ピッチに揃えるように縫製することができる。また、左側のLED21,22が点灯している際には、目標ピッチに追いついていないと認識して加工布の送り量を増やして縫製し、目標ピッチに揃えるように縫製することができる。
【0063】
なお、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661が「目標ピッチ記憶手段」に該当する。そして、図10に示す報知処理のS71で一致度合いLを算出する処理を行うCPU61が「一致度合い算出処理」に相当する。
【0064】
次に、第三の実施の形態について、図11乃至図13を参照して説明する。図11は、第三の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図であり、図12は、第三の実施の形態の縫製処理のフローチャートであり、図13は、縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【0065】
まず、図11を参照して、RAM63に設けられている記憶エリアについて説明する。図11に示すように、RAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。図5に示すように、RAM63には、目標ピッチ記憶エリア661、主軸回転速度記憶エリア662、加工布移動量記憶エリア663、一致度合い記憶エリア668等が設けられている。なお、RAM63には図示外の記憶エリアも設けられている。目標ピッチ記憶エリア661、主軸回転速度記憶エリア662、加工布移動量記憶エリア663については、第一の実施の形態と同様であるので説明を援用して省略する。
【0066】
一致度合い記憶エリア668には、目標ピッチと実際に縫製される縫目のピッチとの一致度合いを示す一致度合いMが記憶される。本第三の実施の形態では、縫針7が針下位置から針上位置となり再び針下位置となって、1つの縫目が形成される毎、つまり縫針7が針落ちする一針ごとに加工布の移動量が検出される(加工布移動量A)。つまり、この加工布移動量Aは、実際に形成された縫目のピッチを示している。そして、1つの縫目が形成される毎に加工布移動量Aと目標ピッチXとが比較されて一致度合いMが算出される。本第三の実施の形態では、加工布移動量Aと目標ピッチXとの差を一致度合いMとする。つまり「一致度合いM=加工布移動量A−目標ピッチX」である。
【0067】
次に、図12及び図13のフローチャートを参照して、第三の実施の形態のミシン1の動作について説明する。縫製処理は、縫製開始スイッチ81が押下されることにより、CPU61にてROM62に記憶されている縫製プログラムが実行されて行われる処理である。
【0068】
まず、初期処理が行われる(S101)。この初期処理では、RAM63の加工布移動量記憶エリア663、一致度合い記憶エリア668に初期値の「0」が記憶されて各値が初期化される。次いで、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661から目標ピッチXが読み出され(S102)、イメージセンサ50にアクセスする(S103)。このアクセスは、単位時間Tが経過した後に、単位時間T中の加工布移動量Aを取得するため、イメージセンサ50に縫製開始時点の加工布の画像を撮影させるためのダミーアクセスである。よって、所得された加工布移動量Aを加工布移動量記憶エリア663に記憶する必要はない。
【0069】
そして、ミシンモータ79の回転が開始される(S104)。そして、縫針7が針上となるまで待機される(S105:NO,S105)。具体的には、針上センサ88の出力に基づいて縫針7が針上であるか否かの判断が行われ(S105)、針上であると判断されない間は(S105:NO)、繰り返し針上センサ88の出力の判断が行われる(S105)。
【0070】
そして、針上となったら(S105:YES)、縫針7が針下となるまで待機される(S106:NO,S106)。具体的には、針下センサ89の出力に基づいて縫針7が針下であるか否かの判断が行われ(S106)、針下であると判断されない間は(S106:NO)、繰り返し針下センサ89の出力の判断が行われる(S106)。そして、針下となったら(S106:YES)、イメージセンサ50にアクセスし、加工布移動量A(XA,YA)が取得され、加工布移動量記憶エリア663に記憶される(S107)。そして、報知処理が行われる(S108、図13参照)。この報知処理では、一致度合いMが算出されて、それに基づいて一致度合い報知LED20が点灯される。
【0071】
報知処理では、図13に示すように、まず、一致度合いMが算出される(S121)。この一致度合いMは、「加工布移動量A−目標ピッチX」である。つまり、一致度合いMが0に近いほど目標ピッチに近く、ずれが少ないということとなる。また、一致度合いMが負の値であれば、目標ピッチに追いついておらず、加工布の移動量が少ないことを示しており、一致度合いMが正の値であれば、目標ピッチをオーバし、加工布の移動量が多いことを示している。
【0072】
そして、一致度合いMの値に応じて一致度合い報知LED20を点灯させる処理が行われる(S122〜S130)。まず、一致度合いMが−1mm以上かつ1mm以下であるか否かの判断が行われる(S122)。−1mm以上かつ1mm以下であれば(S122:YES)、目標ピッチとのずれが少ないので、中央のLED23のみが点灯される(S123)。つまり、「−1mm≦一致度合いM≦1mm」である場合には中央のLED23のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0073】
また、−1mm以上かつ1mm以下でない場合には(S122:NO)、一致度合いMが−1mmより大きいか否かの判断が行われる(S124)。−1mmより大きければ(S124:YES)、さらに、一致度合いMが2mmよりも大きいか否かの判断が行われる(S125)。2mmよりも大きい場合には(S125:YES)、一番右のLED25のみが点灯される(S126)。つまり、「2mm<一致度合いM」である場合には、一番右のLED25のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。一方、一致度合いMが2mmよりも大きくない場合には(S125:NO)、右から2番目のLED24のみが点灯される(S127)。つまり、「1mm<一致度合いM≦2mm」である場合には、右から2番目のLED24のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0074】
また、一致度合いMが−1mmより大きくない場合には(S124:NO)、一致度合いMが−2mmより大きいか否かの判断が行われる(S128)。一致度合いMが−2mmより大きければ(S128:YES)、左から2番目のLED22のみが点灯される(S129)。つまり、「−2mm≦一致度合いM<−1mm」である場合には、左から2番目のLED22のみが点灯される。一方、−2mmより大きくない場合には(S128:NO)、一番左のLED21のみが点灯される(S130)。つまり、「一致度合いM<−2mm」である場合には、一番左のLED21のみが点灯される。そして、縫製処理へ戻る。
【0075】
そして、図12に示すように縫製処理では、縫製停止スイッチ82が押下されたか否かの判断が行われる(S109)。縫製停止スイッチ82が押下されていなければ(S109:NO)、S105へ戻る。一方、縫製停止スイッチ82が押下された場合には(S109:YES)、ミシンモータ79の回転が停止され(S110)、縫製処理は終了する。このようにして、縫製停止スイッチ82が押下されるまで(S109:YES)、繰り返しS105〜S109の処理が行われる。
【0076】
以上のように、縫製が実施される間、縫目が形成される毎に目標ピッチの一致度合いをユーザの視覚に訴えることができる。これにより、ユーザは中央のLED23が点灯している際には、目標ピッチとほぼ同じピッチで縫目を形成できていると認識して縫製を継続することができる。また、右側のLED24,25が点灯している際には、目標ピッチをオーバしていると認識して加工布の送り量を控えて縫製を行い、目標ピッチに揃えるように縫製することができる。また、左側のLED21,22が点灯している際には、目標ピッチに追いついていないと認識して加工布の送り量を増やして縫製し、目標ピッチに揃えるように縫製することができる。
【0077】
なお、RAM63の目標ピッチ記憶エリア661が「目標ピッチ記憶手段」に該当する。そして、図13に示す報知処理のS121で一致度合いMを算出する処理を行うCPU61が「一致度合い算出処理」に相当する。
【0078】
なお、本発明のミシン1は、上記第一の実施の形態〜第三の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。第一の実施の形態では、実移動量の目標移動量に対する比を一致度合いKとしたが、一致度合いKはこれに限らない。例えば、実移動量と目標移動量との差を用いてもよい。第二の実施の形態では、加工布移動量Aの単位目標移動量Zに対する比を一致度合いLとし、一致度合いLはこれに限らない。例えば、加工布移動量Aと単位目標移動量Zとの差を用いてもよい。第三の実施の形態では、加工布移動量Aと目標ピッチXとの差を一致度合いMとしたが、一致度合いMはこれに限らない。例えば、加工布移動量Aの目標ピッチXに対する比を用いてもよい。また、一致度合いの割合と表示手段の表示態様の組合せも本実施の形態に限定されるものではない。
【0079】
また、また、一致度合い報知LED20の構成は図2に示す5つのLED21〜25を用いるものに限らない。5つよりも少ない数や多い数のLEDを用いてもよい。また、一致度合いが丁度よい場合にはLEDを点灯させないようにしてもよいし、一致度合いが低い場合にはLEDを点滅させるようにしてもよい。また、種々の異なる発光色のLEDを用いてもよい。また、「報知手段」はLEDでなく、ランプ等の発光部材や小型の液晶ディスプレイや有機ELを用いてもよい。また、脚注部3に備えられた液晶ディスプレイ10を用い、メッセージ等を表示させてもよい。また、視覚に訴えるのではなく、図14に示すようにスピーカ84を設けて、音声メッセージや警告音で報知してもよい。なお、スピーカ84は出力インターフェイス66に接続している。
【0080】
上記実施の形態では、目標ピッチをユーザが入力するものとしたが、ROM62に予め記憶されていてもよい。この場合には、縫製処理のS2(図5)、S52(図8)、S101(図10)においては、ROM62から目標ピッチが読み出される。また、ROM62やRAM63等の記憶手段から目標ピッチを読み出すのではなく、ミシン制御プログラム中に目標ピッチの数値が記載されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】ミシン1の上側からの斜視図である。
【図2】ミシン1の頭部5に設けられた一致度合い報知LED20を示す部分拡大図である。
【図3】イメージセンサ50を示す模式図である。
【図4】ミシン1の電気的構成を示す模式図である。
【図5】RAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。 第一の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。
【図6】第一の実施の形態の縫製処理のフローチャートである。
【図7】縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【図8】第二の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。
【図9】第二の実施の形態の縫製処理のフローチャートである。
【図10】縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【図11】第三の実施の形態におけるRAM63に設けられている記憶エリアを示す模式図である。
【図12】第三の実施の形態の縫製処理のフローチャートである。
【図13】縫製処理の中で行われる報知処理のフローチャートである。
【図14】変形例のミシン1の斜視図である
【符号の説明】
【0082】
1 ミシン
20 一致度合い報知LED
21 LED
22 LED
23 LED
24 LED
25 LED
50 イメージセンサ
61 CPU
63 RAM
661 目標ピッチ記憶エリア
663 加工布移動量記憶エリア
668 一致度合い記憶エリア
K 一致度合い
L 一致度合い
M 一致度合い
X 目標ピッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫針を装着する針棒を駆動する主軸と、この主軸を回転駆動するミシンモータとを備え、ユーザが加工布を移動させながら縫製を行うミシンにおいて、
前記加工布が移動される移動量を検出する検出手段と、
所定の長さを前記加工布の縫目ピッチの目標値である目標ピッチとして記憶する目標ピッチ記憶手段と、
前記検出手段により検出された前記加工布の移動量に基づいて決定される実際に縫製される縫目ピッチと前記目標ピッチとの一致度合いを算出する一致度合い算出手段と、
前記一致度合い算出手段により算出された前記一致度合いを報知する報知手段とを備えたことを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の前記加工布の移動量を検出し、
前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記所定微小時間毎の前記加工布の移動量を前記縫目形成時間内の所定時間において累積した累積値と、前記目標ピッチと前記主軸の回転速度とから演算される前記加工布の前記所定微小時間毎の目標移動量を前記所定時間において累積した累積値との一致度合いを算出することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の前記加工布の移動量を検出し、
前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記移動量と、前記目標ピッチと前記主軸の回転速度とから演算される前記所定微小時間毎の目標移動量との一致度合いを算出することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項4】
前記検出手段は、前記縫針が針落ちする一針毎の前記加工布の移動量を検出し、
前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記移動量と前記目標ピッチの移動量との一致度合いを算出することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項5】
前記報知手段は、前記一致度合いに応じた表示態様を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のミシン。
【請求項6】
前記表示手段は、当該ミシンの頭部の下方正面側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のミシン。
【請求項7】
前記表示手段は、LEDで構成されることを特徴とする請求項5又は6に記載のミシン。
【請求項8】
前記報知手段は、前記一致度合いに応じた音又は音声を出力する音出力手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のミシン。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のミシンの各種処理手段としてミシンに内蔵されたコンピュータを機能させるためのミシン制御プログラム。
【請求項1】
縫針を装着する針棒を駆動する主軸と、この主軸を回転駆動するミシンモータとを備え、ユーザが加工布を移動させながら縫製を行うミシンにおいて、
前記加工布が移動される移動量を検出する検出手段と、
所定の長さを前記加工布の縫目ピッチの目標値である目標ピッチとして記憶する目標ピッチ記憶手段と、
前記検出手段により検出された前記加工布の移動量に基づいて決定される実際に縫製される縫目ピッチと前記目標ピッチとの一致度合いを算出する一致度合い算出手段と、
前記一致度合い算出手段により算出された前記一致度合いを報知する報知手段とを備えたことを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の前記加工布の移動量を検出し、
前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記所定微小時間毎の前記加工布の移動量を前記縫目形成時間内の所定時間において累積した累積値と、前記目標ピッチと前記主軸の回転速度とから演算される前記加工布の前記所定微小時間毎の目標移動量を前記所定時間において累積した累積値との一致度合いを算出することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記検出手段は、所定の針落ち点から次の針落ち点が形成される縫目形成時間内における所定微小時間毎の前記加工布の移動量を検出し、
前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記移動量と、前記目標ピッチと前記主軸の回転速度とから演算される前記所定微小時間毎の目標移動量との一致度合いを算出することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項4】
前記検出手段は、前記縫針が針落ちする一針毎の前記加工布の移動量を検出し、
前記一致度合い算出手段は、前記検出手段により検出された前記移動量と前記目標ピッチの移動量との一致度合いを算出することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項5】
前記報知手段は、前記一致度合いに応じた表示態様を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のミシン。
【請求項6】
前記表示手段は、当該ミシンの頭部の下方正面側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のミシン。
【請求項7】
前記表示手段は、LEDで構成されることを特徴とする請求項5又は6に記載のミシン。
【請求項8】
前記報知手段は、前記一致度合いに応じた音又は音声を出力する音出力手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のミシン。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のミシンの各種処理手段としてミシンに内蔵されたコンピュータを機能させるためのミシン制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−229066(P2008−229066A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73843(P2007−73843)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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