説明

ミシン

【課題】より正確に所望する長さの縫い目を縫製することができるミシンを実現する。
【解決手段】ミシン1において、繰り返し縫いの基準となる基準縫い目を布に縫製する際に、布送り機構30により布送りされる布の移動量をロータリセンサ10によって計測することにより、その基準縫い目の縫い始め位置から縫い終わり位置までの縫い目長さを計測して取得し、その縫い目長さを含む基準縫い目に関する縫製データを記憶装置84に記憶して、更に、記憶装置84に記憶した基準縫い目に関する縫製データに基づく縫製を実行する際に、縫製中の縫い目の長さをロータリセンサ10により計測することによって、その縫い目の長さが基準縫い目に応じた所定の縫い目長さとなるように送り量調整機構40を調整し、縫い終わり位置を調整することによって、基準縫い目と同じ長さの縫い目を縫製することを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の縫い目に関する送り量や針数などのデータを予め記憶することによって、その縫い目と同じ縫い目を形成することを可能して、同じ長さの縫い目を複数回繰り返して縫製する繰り返し縫いを容易に行うことができるミシンが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、所定の縫い目に関する縫い始め位置と縫い終わり位置とを記憶するとともに、布の端部を光学センサで検出することにより、縫い終わり位置から布端部までを一定の長さにするように縫い目の縫い終わり位置を調整する縫製を行い、常に一定量の縫い代を布端に確保する繰り返し縫いが可能なミシンが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平8−10474号公報
【特許文献2】特許第2858495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の場合、布の厚さや、布の表面の性状(摩擦係数)によっては、送り歯の駆動により布が実際に布送りされる送り量が、送り量の設定値からずれてしまうことがあり、所定の長さの縫い目を形成することができないことがあるという問題があった。
また、上記特許文献2の場合、布端部における糸のほつれ等により布端部を正確に検出することができないことや、布の素材や色彩などによって布端部の検出に誤差が生じてしまうことなどがあり、布端の縫い代の長さ(幅)がばらついてしまうことがあるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、より正確に所望する長さの縫い目を縫製することができるミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ミシン主軸の駆動により縫い針を上下動させる針上下動機構と、ミシン主軸の駆動に同期して送り歯を移動させることにより被縫製物を布送りする布送り機構と、布送り機構による、縫い針が上下動する1針あたりの被縫製物の送り量をアクチュエータの駆動により調整可能な送り量調整機構と、を備えるミシンであって、布送り機構により布送りされる被縫製物の移動量を計測する計測手段と、繰り返し縫いの基準となる基準縫い目を被縫製物に縫製する際に、その基準縫い目の縫い始め位置から縫い終わり位置までの縫い目長さを計測手段によって計測する縫い目長計測制御手段と、縫い目長計測制御手段により計測された縫い目長さを含む基準縫い目に関する縫製データを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された基準縫い目の縫製データに基づく縫製を実行する際に、計測手段によって縫い目の長さを計測しつつ、基準縫い目に応じた所定の縫い目長さとなるように送り量調整機構のアクチュエータを動作制御して、縫い終わり位置を調整する縫い目長補正制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ミシンは、繰り返し縫いの基準となる基準縫い目を被縫製物に縫製する際に、布送り機構により布送りされる被縫製物の移動量を計測手段によって計測することにより、その基準縫い目の縫い始め位置から縫い終わり位置までの縫い目長さを計測して取得し、その縫い目長さを含む基準縫い目に関する縫製データを記憶手段に記憶することができる。
更に、ミシンは、記憶手段に記憶した基準縫い目に関する縫製データに基づく縫製を実行する際に、被縫製物に縫製中の縫い目の長さを計測手段により計測することによって、その縫い目が基準縫い目に応じた所定の縫い目長さとなるように送り量調整機構を調整して、縫い終わり位置を調整するができるので、基準縫い目と同じ長さの縫い目を縫製することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のミシンにおいて、計測手段は、被縫製物に接触するとともに、布送り機構によって布送りされる被縫製物の移動に従って回転する回転体の回転量に基づき、被縫製物の移動量を計測することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用を奏するとともに、ミシンの計測手段は、布送り機構によって布送りされる被縫製物に接触することで、布送りされる被縫製物の移動に従って回転する回転体を備えており、その回転体の回転量に基づき、被縫製物の移動量を計測することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ミシンは、繰り返し縫いの基準となる基準縫い目を被縫製物に縫製する際に、布送り機構により布送りされる被縫製物の移動量を計測手段によって計測することにより、その基準縫い目の縫い始め位置から縫い終わり位置までの縫い目長さを計測して取得し、その縫い目長さを含む基準縫い目に関する縫製データを記憶手段に記憶することができ、更に、記憶手段に記憶した基準縫い目に関する縫製データに基づく縫製を実行する際に、被縫製物に縫製中の縫い目の長さを計測手段により計測することによって、その縫い目の長さが基準縫い目に応じた所定の縫い目長さとなるように送り量調整機構を調整して、縫い終わり位置を調整するができるので、基準縫い目と同じ長さの縫い目を縫製することができる。
具体的には、例えば、ミシンが、記憶手段に記憶した基準縫い目に関する縫製データに基づく縫製を実行する際に、縫製中の縫い目の長さを計測手段により計測し、それまでに縫製した縫い目の長さが基準縫い目と同じ長さに達したか否かを判断するとともに、最後の1針の縫い目の縫い終わり位置を調整するように送り量調整機構を動作制御して、最後の1針の縫い目の送り量を調整することによって、基準縫い目の縫い目長さと同じ長さの縫い目を縫製することができる。
よって、ミシンは、予め基準縫い目の縫製を実行して基準縫い目の縫い目長さを計測して取得することにより、その基準縫い目と同じ長さの縫い目を繰り返し縫製することが可能なので、より正確に所望する長さの縫い目を繰り返し縫製することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ミシンの計測手段は、布送り機構によって布送りされる被縫製物に接触することで、布送りされる被縫製物の移動に従って回転する回転体を有しており、その回転体の回転量に基づき、被縫製物の移動量を計測することができる。
このように、ミシンは、布送りされる被縫製物に接触して回転する回転体を有する計測手段を備えており、縫製中に布送りされる被縫製物の送り量を直接計測することができるので、被縫製物の種類や厚みなどによらず、基準となる基準縫い目の長さを正確に計測し取得することができる。また、繰り返し縫いを行う際にも、縫製中の縫い目の縫い目長さを正確に計測することが可能なので、基準縫い目の縫い目長さと同じ長さの縫い目を調整して縫製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係るミシンの実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係るミシン1を示す斜視図であり、図2は、ミシン1の制御系を示すブロック図である。
なお、本実施形態において、ミシン1の縫い針6が上下動を行う方向をZ軸方向(上下方向)とし、これと直交する一の方向をX軸方向(左右方向)とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向(前後方向)と定義する。
【0013】
ミシン1は、図1、図2に示すように、外形が正面視にて略コ字状を呈するミシンフレーム2を備えている。このミシンフレーム2は、ミシン1の上部をなし左右方向に延びるミシンアーム部2aと、ミシン1の下部をなし左右方向に延びるミシンベッド部2bと、ミシンアーム部2aとミシンベッド部2bとを連結する縦胴部2cと、を有している。
そして、ミシン1は、ミシンフレーム2内にミシン主軸3や下軸13(図3参照)、ミシンモータ7などの動力伝達機構を備えている。また、ミシン1は、ミシンフレーム2の前面に操作パネル11を備えており、また、ミシンフレーム2におけるミシンアーム部2aの前面にスタート/ストップスイッチ12を備えている。
【0014】
また、ミシン1は、ミシンアーム部2aの一端部から下方に延出して上下動自在な針棒5と、針棒5に装着された縫い針6と、ミシンベッド部2b上面の針板4における送り歯31(図3、図4参照)の出没位置に被縫製物としての布を付勢して支持する布押さえ9と、ミシンアーム部2a内に配されるミシン主軸3を回転駆動するミシンモータ7と、ミシン主軸3の回転駆動により針棒5及び縫い針6を上下動させる針上下動機構50と、針上下動機構50と同期してミシンベッド部2b上面の針板4上に載置される布を布送りする布送り機構30(図3、図4参照)と、布送り機構30に作用して1針当りの送り量を調節可能な送り量調節機構40(図4、図5参照)と、布送り機構30により布送りされる布の移動量を計測する計測手段としてのロータリセンサ10と、ミシン1の各部の動作を統括制御する制御装置8と、を有している。
【0015】
そして、このミシン1は、針棒5の先端に装着された縫い針6を、ミシンモータ7の駆動に伴い回転駆動されるミシン主軸3を介して上下動させながら、布送り機構30により布を所定の方向に送ることで、その布に縫い目を施すものである。なお、縫製時に縫い針6と協働する釜やルーパなどの構成や動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0016】
(布送り機構)
ミシン1の布送り機構30について説明する。
図3、図4に示すように、ミシンベッド部2b内には、左右方向に沿った状態で下軸13が回転自在に支持されている。この下軸13は、図示されていないリンク機構やベルト機構のような伝達機構を介してミシン主軸3に連結されており、針棒5に上下動駆動力を付与するミシン主軸3と連動して回転駆動を行う。そして、布送り機構30は、下軸13から布送りのための駆動力が付与される。
【0017】
布送り機構30は、針板4の上面上の布を前後方向に沿って搬送する送り歯31と、下軸13の一端部(図3における下側)に固定された偏心カム32aを介して下軸13と送り歯31を支持する送り歯台36とを連結する上下動リンク体32と、偏心カム33aを介して下軸13にその一端部が連結された左右動リンク体33と、左右動リンク体33の他端部がその中間部に連結された送り量調節リンク体34と、送り量調節リンク体34の一端部と送り歯31を支持する送り歯台36とを連結する伝達支軸35とを備えている。つまり、布送り機構30は、送り歯31を前後方向(正逆方向)に移動させて布送りするようになっている。
【0018】
上下動リンク体32は、その一端部が送り歯31を支持する送り歯台36に対して回転可能に連結され、他端部が偏心カム32aによりその偏心量に応じた円周運動を行う。この上下動リンク体32の円周運動の内、上下方向の往復駆動力のみが送り歯台36を介して送り歯31に伝達される。つまり、送り歯31は下軸13の回転駆動時には常に偏心カム32aの偏心量に等しい変位で上下動を行うこととなる。
【0019】
左右動リンク体33は、その他端部が送り量調節リンク体34に対して回転可能に連結され、他端部が偏心カム33aによりその偏心量に応じた円周運動を行う。この左右動リンク体33の円周運動の内、上下方向の往復駆動力のみが送り量調節リンク体34に伝達される。
【0020】
送り量調節リンク体34は、その長手方向の中間部において左右動リンク体33から上下方向の往復駆動力を付与され、その一端部が伝達支軸35の一端部に設けられた後述するアーム部35bの先端部を揺動可能に連結されている。従って、送り量調節リンク体34は、その一端部を揺動支点として他端部が上下方向に揺動運動を行うこととなる。そして、送り量調節リンク体34の他端部には、後述する送り量調節機構40の角駒41が連結されている。
【0021】
かかる角駒41は、その往復移動方向が、上下方向と平行な状態を基準として前後方向両側に傾斜させて調節可能な状態で角駒支持体42のガイド溝42aに支持されている。そして、角駒41が上下方向と平行に往動可能に支持されている状態にあっては、送り量調節リンク体34に前後方向の変位は生じない。一方、角駒41の往復移動方向が前後方向に傾斜を生じた場合には、送り量調節リンク体34は、前後方向に変位を生じることとなる。また、上下方向に平行な状態から前後方向の一方と他方のいずれに傾斜したかによって、送り量調節リンク体34の前後方向における揺動動作はその位相が逆転することとなる。
【0022】
伝達支軸35は、左右方向に沿って配設された軸部35aと、軸部35aの一端部と他端部とにそれぞれ設けられたアーム部35b,35cとを備えている。そして、軸部35aが中心軸となって双方のアーム部35b,35cの先端部がいずれも連動して揺動を行うようになっている。
一方のアーム部35bの先端部が送り量調節リンク体34の一端部と連結され、他方のアーム部35cの先端部が送り歯31を支持する送り歯台36に連結されている。従って前述したように、角駒41の往復移動方向の調節に応じて、送り量調節リンク体34に前後方向に沿った揺動運動が生じる場合には、送り歯31に逆位相で前後方向の揺動駆動力を付与することとなる。そして、送り量調節リンク体34と伝達支軸35を介して、角駒41の往復移動方向に応じた位相で前後方向に沿った往復移動動作を行うこととなる。
【0023】
布送り機構30は、上記構成により下軸13の回転駆動力を利用して送り歯31に前後方向と上下方向の往復運動を組み合わせて付与することで円(楕円)運動を行わせる。このとき、送り歯31は、針板4の下方に配設されると共に、円(楕円)運動により描かれる軌跡の一部を移動する際に当該送り歯31の先端部が針板4に設けられた貫通口からその上面に突出し、その際の前後方向運動の位相に応じて被縫製物を正方向(図4における左方向)、逆方向(図4における右方向)に送ることができる。また、角駒41の往復移動方向に応じてその送り量を調節可能であるとともに、送り量を0とすることも可能である。
【0024】
そして、送り歯31の円(楕円)運動の回転数は下軸13の回転数と一致しており、下軸13はミシン主軸3と回転数が一致することから、送り歯31が針板4の上面に出現する周期は針棒5の上下動周期及びミシン主軸3の回転周期と一致する。また、ミシン主軸3の位相(針棒5の上死点を0°とした場合において、0°からの回転角度)において常に同じ区間において送り歯31は針板4の上面に出現し、それ以外の区間では送り歯31の先端部は針板4の上面より下方に位置することとなる。本実施形態たるミシン1では、ミシン主軸3の位相の150〜270°の範囲で送り歯31の先端部は針板4の上面より下方に埋没するように設定されている。
【0025】
(送り量調節機構)
ミシン1の送り量調節機構40について説明する。
図3から図5に示すように、送り量調節機構40は、前述した送り量調節リンク体34の他端部に連結された角駒41と、この角駒41を往復移動可能に支持すると共に、送り量調節用のアクチュエータである送り量調整モータとしてのステッピングモータ43により駆動され、その往復移動方向をY−Z平面に沿ったいずれかの方向に可変調節可能な角駒支持体42と、そのステッピングモータ43の出力軸43aにより揺動される主動リンク体44と、角駒支持体42に固定支持された従動リンク体45と、主動リンク体44と従動リンク体45とを連結する伝達リンク体46とを備えている。
【0026】
角駒支持体42は、円柱状に形成されると共にその中心線を基準に回転可能に図示しないミシンフレームに支持されている。そして、円柱形状の直径方向に沿って角駒41を支持するガイド溝42aが形成されている。つまり、角駒支持体42は、回転操作を加えられることで角駒41の往復移動方向を可変調節することができる。
従動リンク体45は角駒支持体42の中心線方向一端部において、当該角駒支持体42の直径方向に沿って固定装備されている。
【0027】
一方、主動リンク体44は、ステッピングモータ43の回転駆動半径方向に沿った状態でその出力軸43aに一端部が固定支持されており、その他端部が伝達リンク体46を介して従動リンク体45の一端部と連結されている。これにより、ステッピングモータ43の回転駆動力が従動リンク体45を介して角駒支持体42を回転させる。
つまり、アクチュエータであるステッピングモータ43の駆動量(回転角度変化量)に応じて、角駒支持体42が回動されて角駒41の傾斜角度が切り替えられて、角駒41が移動する方向(揺動方向)が規定されるようにして、角駒41が送り歯31の送り量を規定することとなる。
【0028】
このように送り歯31は、上下方向と前後方向の各往復運動の合成により円ないし楕円運動を行って、針板4上の布を所定の方向に送る布送り運動を行う。そして、送り歯31が針板4から上方へ突出している間に図4中にて右から左へ移動するように円ないし楕円運動を行うと、正方向へ布が送られることとなる。また、送り歯31が針板4から上方へ突出している間に図4中にて左から右へ移動するように円ないし楕円運動を行うと、逆方向へ布が送られることとなる。
このように、送り量調整機構40は、布(被縫製物)の定常的な送り方向である正方向と、正方向と反対方向の逆方向とに被縫製物の送り方向を変更可能に構成されている。
【0029】
送り歯31の布送り方向の正方向と逆方向の変換は、角駒41の傾斜角度(所定の基準位置に対する回転角度)が変更されることで実現される。すなわち、角駒41が往復揺動動作を行う場合に、その揺動の左右方向成分が送り歯31に伝達される。従って、角駒支持体42(角駒41)が図4に示した初期位置からA方向へ回動した場合は、送り歯31が正方向の運動を行い、B方向へ回動した場合は、送り歯31が逆方向の運動を行う。なお、これらの中間位置で角駒41が上下方向に沿って往復揺動を行う場合、左右方向成分ゼロとなるので布送りは行われない。
このように角駒支持体42(角駒41)の傾斜角度が変更されることによって、送り歯31の送り方向や送り量の変更を行うことができる。
【0030】
また、前述したように、角駒41が上下方向に沿って往復移動を行うときには送り歯31の送り量は“0”に設定される。そして、本件では角駒41が上下方向に沿って往復移動を行うように、角駒支持体42の回転角度を規定するステッピングモータ43の出力軸43aの角度をステッピングモータ43の原点(動作原点)とする。かかるステッピングモータ43の原点位置は、主動リンク体44の揺動端部が所定位置にあるか否かにより検出することが可能である。
【0031】
(針上下動機構及び針振り機構)
ミシン1の針上下動機構50と針振り機構(図示省略)について説明する。
図1に示すように、縫い針6は、針棒5の下端側に装備され、針棒5は図示しない針棒支持台に支持されている。
針上下動機構50は、ミシンモータ7により回転されるミシン主軸3の回転駆動力をクランク機構、カム機構等を用いて上下往復運動に変換し、針棒支持台(図示省略)を上下移動させる機構である。そして、針上下動機構50は針棒支持台(図示省略)を介して針棒5を上下移動させて、縫い針6を上下動させるようになっている。
また、図示しない針振り機構は、針振り用ステッピングモータ61(図2参照)と、針棒支持台(図示省略)と針振り用ステッピングモータ61とを連結してモータの回転運動を左右往復運動へ変換する複数の連結部材とを有している。針振り用ステッピングモータ61が連結部材(図示省略)を介して針棒支持台(図示省略)を左右に移動させることにより、針棒5とともに縫い針6を左右方向に移動させるようになっている。そして、針振り機構(図示省略)は、上下動を行う針棒5に対して所定のタイミングで針振りを実行させている。
この針振り方向は、布の送り方向と直交しており、縫い針6の針振り量(揺動量)が調整可能となっている。また、針振り方向は左右方向(X軸方向)に沿っており、布の送り方向は前後方向(Y軸方向)に沿っており、互いに直交していることから、布送りと針振りとを組み合わせることで縫い目の方向(縫い方向)及び針落ち位置を任意に設定することを可能としている。
【0032】
(ロータリセンサ(計測手段))
ミシン1のロータリセンサ10について説明する。
図1に示すように、ロータリセンサ10は、回転体10aと、回転体10aを回転自在に軸支する支持ケース10bとを有しており、支持ケース10bが布押さえ9に固定されることによって、ロータリセンサ10は布押さえ9に取り付けられている。
そして、布押さえ9が、ミシンベッド部2b上面の針板4上に布を付勢して支持する配置に切り替えられると、ロータリセンサ10の回転体10aが針板4上の布に接触するようにロータリセンサ10の配置も切り替えられることとなって、ミシン1において布を縫製する際に、布送り機構30によって布送りされる布の移動に従って、回転体10aが回転するようになっている。この回転体10aには回転量検出部が内蔵されており、その回転量検出部は回転体10aが回転した回転角度や回転回数に応じて、布送り機構30によって布送りされた布の移動量を検出することが可能になっている。
つまり、ロータリセンサ10は、縫製時に布送り機構30により布送りされる布に接触して回転する回転体10aの回転量を検出することによって、その布の移動量を計測することができる。また、ロータリセンサ10は、布に縫製する縫い目の縫い始め位置から縫い終わり位置までに対応する布の移動量を計測することによって、その布に形成される縫い目の長さを計測することが可能になっている。
そして、ロータリセンサ10が検出し、計測した布の移動量に関するデータは、制御装置8に出力されるようになっている。
【0033】
(ミシンの制御系)
次いで、ミシン1の制御系について説明する。
制御装置8は、図2に示すように、ミシン1における様々な動作処理を実行するための制御プログラムや制御データが書き込まれているROM82と、制御プログラムに従って各処理を実行するCPU81と、CPU81の各種処理データを記憶するRAM83と、を有している。また、RAM83には、種々のワークメモリやカウンタなどが設けられており、各処理におけるワークエリアとしても使用される。
【0034】
また、制御装置8には、図示しないインターフェースを介して、ミシンモータ7、そのミシンモータ7により駆動されるミシン主軸3の回転位置および回転速度を検出するエンコーダ14、送り量操作レバー(図示省略)の操作量を検出するポテンショメータ39、布送り機構30の送り量の切替設定動作を行う送り用ステッピングモータ43、針振りを行う針振り用ステッピングモータ61、布の移動量を計測するロータリセンサ10、各種設定等の入力と各種情報の表示を行う操作パネル11、縫製の開始や停止の指示を入力するスタート/ストップスイッチ12、各種データを記憶する記憶手段としての記憶装置84等が接続されている。
【0035】
スタート/ストップスイッチ12は、ミシン1における縫製をスタートさせたり、ストップさせたりするための操作スイッチであり、ミシンモータ7の起動/停止を切り替えるスイッチである。
【0036】
ミシンモータ7は、図示しない操作ペダルが踏み込まれた踏み込み量に応じた操作信号に基づくCPU81の制御によって、その踏み込み量に対応する回転速度でミシン主軸3を回転駆動する。
【0037】
ロータリセンサ10は、縫製時に布送りされる布の移動量や、布に形成される縫い目の長さを計測して、制御装置8に出力する。
【0038】
エンコーダ14は、ミシンモータ7により回転されるミシン主軸3の回転速度及び回転位置を検出し、検出したミシン主軸3の回転速度や回転位置を制御装置8に出力する。
【0039】
送り用のステッピングモータ43は、CPU81により、ROM82や記憶装置84に記憶されている布の送り量に関するデータに基づき駆動制御されて、角駒支持体42(角駒41)の傾斜角度を調整することにより、布送りに関する送り歯31の送り方向や送り量の変更を行う。
【0040】
針振り用のステッピングモータ61は、CPU81により、エンコーダ14の出力から認識される針落ちタイミングに対する所定のタイミングで同期を図って駆動制御され、針振りにより縫い針6を所定の針落ち位置に位置決めする。
【0041】
ポテンショメータ39は、手動により布送り量の設定入力を行う図示しない送り量操作レバーの操作量を検出するためのものである。かかるポテンショメータ39の検出操作量に応じて、CPU81は、ステッピングモータ43を駆動して、所定の送り量となるように角駒支持体42の回転角度を設定する。すなわち、ポテンショメータ39も、送り量設定手段として動作する。
なお、通常、このミシン1では、操作パネル11により設定された送り量や針振り量、ROM82や記憶装置84に記憶されている送り量や針振り量に基づき縫製が行なわれ、縫製開始時ないし縫製中において、CPU81はステッピングモータ43を駆動して角駒支持体42を所定角度だけ回転して送り量を設定された送り量に調整する。
【0042】
操作パネル11は、例えば、液晶表示機構部とタッチパネル機構部とからなり、複数の操作キーやスイッチ、各種設定値や各種縫い目形状(縫製パターンの画像)等を表示するとともに、タッチパネル式の操作入力が可能となっている。
つまり、操作パネル11は、送り量や針振り量などの縫製に関するデータを入力するための入力部と、各種データや設定値などを表示する表示部とを有する構成になっている。
【0043】
記憶装置84は、例えば、不揮発性のフラッシュメモリやEEPROMなどからなり、縫製に関するデータである送り量や針振り量、また、ロータリセンサ10により計測された布送り機構30によって布送りされた布の移動量やその布に縫製された縫い目の長さなどを記憶する。
特に、記憶装置84は、ミシン1により繰り返し縫いの基準となる基準縫い目を縫製する際に、ロータリセンサ10によって計測された、その基準縫い目の縫い始め位置から縫い終わり位置までの布の移動量である縫い目長さを含む基準縫い目に関する縫製データを記憶する。なお、基準縫い目の縫製データには、ミシン1が基準縫い目を縫製する際の各種設定値である送り量や針振り量、糸調子などのデータと、基準縫い目の縫い目長さのデータが含まれている。
【0044】
そして、制御装置8は、ROM82に記憶されている縫製処理プログラムや各種縫製データ、記憶装置84に記憶されている基準縫い目に関する縫製データに基づいて、ミシン1の各部(ミシンモータ7、布送り機構30、送り量調整機構40、針上下動機構50)を制御して、縫製を実行する縫製制御手段として機能する。
【0045】
また、制御装置8は、ミシン1において繰り返し縫いの基準となる基準縫い目を布に縫製する際に、その基準縫い目の縫い始め位置から縫い終わり位置までの縫い目長さをロータリセンサ10によって計測して、基準縫い目の縫い目長さを取得する縫い目長計測制御手段として機能する。
なお、縫い目長計測制御手段としての制御装置8の制御により、ロータリセンサ10によって計測されて取得された基準縫い目の縫い目長さのデータは、基準縫い目に関する縫製データとして記憶装置84に記憶される。
【0046】
また、制御装置8は、記憶装置84に記憶された基準縫い目の縫製データに基づく縫製を実行する際に、ロータリセンサ10によって縫い目の長さを計測しつつ、その縫い目の長さが基準縫い目に応じた所定の縫い目長さとなるように送り量調整機構40のステッピングモータ43を動作制御して、縫い終わり位置を調整する縫い目長補正制御手段として機能する。
つまり、ミシン1において、基準縫い目の縫製データに基づく縫製を実行する際に、縫製中の縫い目の長さをロータリセンサ10によって計測することによって、布に形成した縫い目の長さが基準縫い目の縫い目長さに達したか否かを判断し、縫製中の縫い目の長さが基準縫い目の縫い目長さとなるように、布の送り量を送り量調整機構40に調整させる制御を実行する。
具体的には、ミシン1において、基準縫い目の縫製データに基づく縫製を行う場合に、その縫製データにおける所定の送り量に応じた縫製を実行した際に、ロータリセンサ10によって計測している縫製中の縫い目の長さが、次の1針の布送りによって基準縫い目の縫い目長さを越えてしまうと制御装置8が判断すると、制御装置8は、次の1針の布送りに関する送り量を送り量調整機構40に調整させて、縫製中の縫い目の長さが基準縫い目の縫い目長さとなるように、縫い終わり位置を調整する制御を実行する。
【0047】
次に、ミシン1における縫い目長さの調整処理について説明する。
ミシン1は、通常の縫製を行う通常モードと、繰り返し縫いの基準となる基準縫い目に関する縫製データ、特に、基準縫い目の縫い目長さを記録する記録モードと、記録モードによって記録した基準縫い目に関する縫製データに基づき、基準縫い目に応じた縫い目長さとなるように縫い目長さを調整して縫製する再生モードと、のそれぞれに切り替えて、それぞれの処理や動作を実行することができるようになっている。
そして、ミシン1は、記録モードにおいて基準縫い目に関する縫製データを記録して、再生モードにおいてその記録した縫製データに基づいて基準縫い目と同じ長さの縫い目を繰り返して複数縫製する、繰り返し縫いを行うことが可能になっている。
【0048】
まず、ミシン1における縫い目長さの調整に関する処理であって、繰り返し縫いの基準となる基準縫い目に関する縫製データを記録する記録モードについて、図6に示すフローチャートに基づき説明する。
【0049】
まず、ミシン1の操作パネル11における所定の記録モードキー(図示省略)が押下され、記録モードが選択されると、操作パネル11は、図7(a)に示すような、開始キー111とOKキー112が備えられるタッチパネル画面に切り替わり、ミシン1における通常の縫製が禁止された状態に設定される(ステップS101)。
【0050】
次いで、制御装置8は、OKキー112が押下されたか否かを判断する(ステップS102)。
制御装置8が、OKキー112が押下されたと判断すると(ステップS102;Yes)、ステップS111へ進む。
一方、制御装置8が、OKキー112は押下されていないと判断すると(ステップS102;No)、制御装置8は、開始キー111が押下されたか否かを判断する(ステップS103)。
【0051】
制御装置8が、開始キー111は押下されていないと判断すると(ステップS103;No)、ステップS102に戻る。
一方、制御装置8が、開始キー111が押下されたと判断すると(ステップS103;Yes)、前回の処理で記憶した基準縫い目の縫い目長さのデータを消去し(ステップS104)、縫製可能状態に切り替えられる(ステップS105)。
なお、開始キー111が押下されると、操作パネル11は、図7(b)に示すような、終了キー113とOKキー112が備えられるタッチパネル画面に切り替わる。
【0052】
そして、スタート/ストップスイッチ12が押下されるなどすることによって、制御装置8は、ミシンモータ7、布送り機構30、針上下動機構50などを制御し、ミシン1において繰り返し縫いの基準となる基準縫い目の縫製を実行する(ステップS106)。
そして、ミシン1が基準縫い目の縫製を実行する際、制御装置8は布送りされる布の移動量をロータリセンサ10に計測させ、その基準縫い目の縫い始め位置から縫い終わり位置までの縫い目長さを、ロータリセンサ10によって計測する。なお、ロータリセンサ10は、例えば、開始キー111が押下されてから(ステップS103)、後述する終了キー113が押下されるまで(ステップS108)の間の布の移動量である基準縫い目の縫い目長さを計測する。
【0053】
次いで、制御装置8は、ミシンモータ7が停止しているか否かを判断する(ステップS107)。
制御装置8が、ミシンモータ7は停止していないと判断すると(ステップS107;No)、ステップS106に戻る。
一方、制御装置8が、ミシンモータ7が停止していると判断すると(ステップS107;Yes)、制御装置8は、終了キー113が押下されたか否かを判断する(ステップS108)。
【0054】
制御装置8が、終了キー113は押下されていないと判断すると(ステップS108;No)、ステップS106に戻る。
一方、制御装置8が、終了キー113が押下されたと判断すると(ステップS108;Yes)、制御装置8は、ロータリセンサ10によって計測された基準縫い目の縫い目長さのデータを取得し、記憶装置84に記憶する(ステップS109)。
更に、制御装置8は、ミシン1が基準縫い目を縫製した際の各種設定値である送り量や針振り量、糸調子などのデータを基準縫い目の縫い目長さのデータと関連付けて、基準縫い目の縫製データとして記憶装置84に記憶し(ステップS110)、ステップS101に戻る。
【0055】
ステップS111において、OKキー112が押下されたことに伴い、ミシン1を縫製可能状態に切り替えて(ステップS111)、ミシン1の記録モードの処理を終了する。
【0056】
このように、ミシン1の記録モードにおいて基準縫い目の縫製を実行する際に、ロータリセンサ10によって布送りされる布の移動量を計測することで、その基準縫い目の縫い始め位置から縫い終わり位置までの縫い目長さを計測することができ、計測された縫い目長さを含む基準縫い目に関する縫製データを記憶装置84に記憶することができる。
【0057】
次いで、ミシン1における縫い目長さの調整に関する処理であって、記録モードによって記録した基準縫い目に関する縫製データに基づき、基準縫い目に応じた縫い目長さとなるように縫い目長さを調整して縫製する再生モードであって、基準縫い目と同じ長さの縫い目を繰り返し縫いする再生モードについて、図8に示すフローチャートに基づき説明する。
【0058】
まず、ミシン1の操作パネル11における所定の再生モードキー(図示省略)が押下され、再生モードが選択されると、操作パネル11は、図9(a)に示すような、中止キー114と終了キー115と再生状況メータ116が備えられるタッチパネル画面に切り替わる。
そして、制御装置8は、記憶装置84に基準縫い目の縫い目長さのデータを含む縫製データが記憶されているか否かを判断する(ステップS201)。
制御装置8が、記憶装置84に基準縫い目の縫い目長さのデータを含む縫製データが記憶されていないと判断すると(ステップS201;No)、ミシン1の再生モードの処理を終了する。
一方、制御装置8が、記憶装置84に基準縫い目の縫い目長さのデータを含む縫製データが記憶されていると判断すると(ステップS201;Yes)、前回の処理で設定した基準縫い目の縫い目長さのデータを消去し(ステップS202)、記憶装置84に記憶されている縫製データにおける基準縫い目を縫製した際の各種設定値である送り量や針振り量、糸調子などのデータと、基準縫い目の縫い目長さデータを読み出して、ミシン1に設定する(ステップS203)。
【0059】
そして、スタート/ストップスイッチ12が押下されるなどすることによって、制御装置8は、ミシンモータ7、布送り機構30、送り量調節機構40、針上下動機構50などを制御し、ミシン1が、記憶装置84に記憶された基準縫い目に関する縫製データを再生するようにして、繰り返し縫い用の基準縫い目の縫製を実行する(ステップS204)。
そして、ミシン1が再生モードで縫製を実行する際、制御装置8は布送りされる布の移動量をロータリセンサ10に計測させ、縫製中の縫い目であって、それまでに縫い終えた分の縫い目の長さを、例えば、1針毎に計測し取得する。なお、ミシン1において、1針毎に縫製が進む状況を、図9(b)に示すように、操作パネル11の再生状況メータ116によって、その基準縫い目の縫い目長さに対する割合としてグラフ状に表示するようになっている。
【0060】
次いで、制御装置8は、1針毎に、ミシンモータ7が停止しているか否かを判断する(ステップS205)。
制御装置8が、ミシンモータ7は停止していないと判断すると(ステップS205;No)、ステップS208へ進む。
一方、制御装置8が、ミシンモータ7が停止していると判断すると(ステップS205;Yes)、制御装置8は、中止キー114が押下されたか否かを判断する(ステップS206)。
【0061】
制御装置8が、中止キー114が押下されたと判断すると(ステップS206;Yes)、再生モードの縫製をやり直すように、ステップS202に戻る。
一方、制御装置8が、中止キー114は押下されていないと判断すると(ステップS206;No)、制御装置8は、終了キー115が押下されたか否かを判断する(ステップS207)。
【0062】
制御装置8が、終了キー115が押下されたと判断すると(ステップS207;Yes)、ミシン1の再生モードの処理を終了する。
一方、制御装置8が、終了キー115は押下されていないと判断すると(ステップS207;No)、ステップS208へ進む。
【0063】
ステップS208において、制御装置8は、縫製した縫い目の長さが、予め設定されている基準縫い目の縫い目長さになったか否かを判断する(ステップS208)。つまり、ミシン1において再生モードである繰り返し縫いを行う際、ミシン1における基準縫い目(繰り返し縫い)の縫製の1針毎に、制御装置8は、縫製した縫い目の長さが所定の基準縫い目の縫い目長さになったか否かを判断するようになっている。
制御装置8が、縫製した縫い目の長さが、予め設定されている基準縫い目の縫い目長さになったと判断すると(ステップS208;Yes)、制御装置8は、所定の縫い目長さの縫い目であって繰り返し縫いの1つが完成したものとして、ミシン1の各部を停止させて(ステップS209)、ステップS202に戻り、次の繰り返し縫いに移行する。
【0064】
一方、制御装置8が、縫製した縫い目の長さが、予め設定されている基準縫い目の縫い目長さに達していないと判断すると(ステップS208;No)、制御装置8は、現在まで縫製が進んだ縫い目の長さに、次の1針分の布送りの送り量の長さを加えた場合に、予め設定されている基準縫い目の縫い目長さを越えてしまうか否かを判断する(ステップS210)。つまり、制御装置8は、次の1針分を縫製することによって、縫製中の縫い目の長さが基準縫い目の縫い目長さを越えてしまうか否かを判断するようになっている。なお、この際、操作パネル11の再生状況メータ116によって、図9(c)に示すような状態が表示されている。
制御装置8が、次の1針で、予め設定されている基準縫い目の縫い目長さを越えてしまわないと判断すると(ステップS210;No)、ステップS204に戻り、縫製を継続する。
【0065】
一方、制御装置8が、次の1針で、予め設定されている基準縫い目の縫い目長さを越えてしまうと判断すると(ステップS210;Yes)、制御装置8は、次の1針で予め設定されている基準縫い目の縫い目長さとなる縫い終わり位置に針落ちするように、送り量を短く切り替えるように送り量調節機構40を調整する動作制御を行い(ステップS211)、ステップS204に戻る。
【0066】
このように、ミシン1の再生モードにおいて基準縫い目に対応する繰り返し縫いを実行する際に、ミシン1における縫製の1針毎に、縫製した縫い目の長さが所定の基準縫い目の縫い目長さになったか否かを判断し、最後の1針である縫い終わり位置を調整するように最後の1針の送り量を調整することで、基準縫い目の縫い目長さと同じ長さの縫い目を縫製することができる。
【0067】
このように、本発明に係るミシン1によれば、基準縫い目の縫製を実行する際に、ロータリセンサ10によって布送りされる布の移動量を計測することによって、その基準縫い目の縫い始め位置から縫い終わり位置までの縫い目長さを計測して取得することができ、更に、取得して記憶装置84に記憶した基準縫い目に関する縫製データに基づく縫製(繰り返し縫い)を実行する際に、最後の1針である縫い終わり位置を調整するように、送り量調整機構40を動作制御して最後の1針の送り量を調整することによって、基準縫い目の縫い目長さと同じ長さの縫い目を縫製することができる。
【0068】
よって、ミシン1は、予め基準縫い目の縫製を実行して基準縫い目の縫い目長さを計測して取得することにより、その基準縫い目と同じ長さの縫い目を繰り返し縫製することが可能なので、より正確に所望する長さの縫い目を繰り返し縫製することができる。
特に、ロータリセンサ10を用いることによって、縫製中に布送りされる布の送り量を直接計測することができるので、布の種類や厚みなどによらず、基準となる基準縫い目の長さを正確に計測し取得することができる。また、繰り返し縫いを行う際にも、縫製中の縫い目の縫い目長さを正確に計測することが可能なので、基準縫い目の縫い目長さと同じ長さの縫い目を調整して縫製することができる。
【0069】
従って、パッチワークなど、同じ長さの縫い目を繰り返し縫製する作業を行う際に、ミシン1を使用することによって、より正確に所望する長さの縫い目を複数回縫製する繰り返し縫いを容易に行うことができる。
【0070】
なお、以上の実施の形態においては、最後の1針目の送り量を短くする調整を行うことによって基準縫い目の縫い目長さと同じ長さの縫い目を縫製することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、最後から2針目の送り量を長くする調整を行うことによって基準縫い目の縫い目長さと同じ長さの縫い目を縫製するようにしてもよい。
【0071】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係るミシンを示す斜視図である。
【図2】ミシンの制御系を示す概略構成ブロック図である。
【図3】図1のIII−III部分の断面図である。
【図4】図3のIV−IV部分の断面図である。
【図5】図3の矢印V方向から送り量調整機構を説明するための説明図である。
【図6】本発明に係るミシンにおける繰り返し縫いの基準となる基準縫い目に関する縫製データを記録する記録モードの処理を示すフローチャートである。
【図7】ミシンが記録モードである場合の操作パネルの表示例(a)、(b)を示す説明図である。
【図8】本発明に係るミシンにおいて繰り返し縫いを行う再生モードの処理を示すフローチャートである。
【図9】ミシンが再生モードである場合の操作パネルの表示例(a)、(b)、(c)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ミシン
3 ミシン主軸
5 針棒
6 縫い針
7 ミシンモータ
8 制御装置(縫い目長計測制御手段、縫い目長補正制御手段)
81 CPU
82 ROM
83 RAM
84 記憶装置(記憶手段)
10 ロータリセンサ(計測手段)
10a 回転体
11 操作パネル
12 スタート/ストップスイッチ
13 下軸
14 エンコーダ
30 布送り機構
31 送り歯
40 送り量調整機構
43 ステッピングモータ(アクチュエータ)
50 針上下動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン主軸の駆動により縫い針を上下動させる針上下動機構と、
前記ミシン主軸の駆動に同期して送り歯を移動させることにより被縫製物を布送りする布送り機構と、
前記布送り機構による、前記縫い針が上下動する1針あたりの前記被縫製物の送り量をアクチュエータの駆動により調整可能な送り量調整機構と、
を備えるミシンであって、
前記布送り機構により布送りされる前記被縫製物の移動量を計測する計測手段と、
繰り返し縫いの基準となる基準縫い目を前記被縫製物に縫製する際に、その基準縫い目の縫い始め位置から縫い終わり位置までの縫い目長さを前記計測手段によって計測する縫い目長計測制御手段と、
前記縫い目長計測制御手段により計測された縫い目長さを含む基準縫い目に関する縫製データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された基準縫い目の縫製データに基づく縫製を実行する際に、前記計測手段によって縫い目の長さを計測しつつ、前記基準縫い目に応じた所定の縫い目長さとなるように前記送り量調整機構のアクチュエータを動作制御して、縫い終わり位置を調整する縫い目長補正制御手段と、
を備えることを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記計測手段は、被縫製物に接触するとともに、前記布送り機構によって布送りされる前記被縫製物の移動に従って回転する回転体の回転量に基づき、前記被縫製物の移動量を計測することを特徴とする請求項1に記載のミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−61705(P2008−61705A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240394(P2006−240394)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】