説明

ミトコンドリアの表面および内部における活性剤の選択的局在化法ならびに相当する活性剤

本発明は、生きている細胞内のミトコンドリアの表面および内部における活性剤選択的局在化のための新規な方法、並びにさらなる補助薬なしで細胞膜を通って細胞に浸透し、かつミトコンドリアの表面および内部の両方に局在化することができる、相当する活性剤に関する。これらの活性剤は少なくとも1つのモノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基で置換されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生きている細胞内のミトコンドリアの表面および内部における活性剤選択的局在化のための新規な方法、並びにさらなる補助薬なしで細胞膜を通って細胞に浸透し、かつミトコンドリアの表面および内部の両方に選択的に局在化する、相当する活性剤に関する。
【0002】
ミトコンドリアの表面または内部における活性剤の局在化とは、それぞれ本出願全体において、ミトコンドリアの表面または内部それぞれにおける活性剤の蓄積を意味する。ミトコンドリアの表面または内部における「局在化」という表現は、それぞれ本出願全体において、ミトコンドリアの表面または内部それぞれにおける「蓄積」を意味する。
【背景技術】
【0003】
ミトコンドリアは細胞の半自律性小器官である。それらは、−核ゲノム近くに−それらのたんぱく質の一部をコードする独自のゲノム(mtDNA)を有する。ミトコンドリオンによってコードされるたんぱく質は、ミトコンドリオンによっても転写、翻訳および合成される。ミトコンドリアにおける重要な代謝経路はエネルギー生成のために働き、従って、細胞の活力に欠くことができないものである。
【0004】
ミトコンドリア疾患には、例えば、多くの遺伝性疾患、癌、糖尿病、パーキンソン病および動脈硬化症が含まれる。とりわけ、ミトコンドリア代謝障害は加齢現象、例えば難聴または視力低下を招く。加齢現象は、例えば、ミトコンドリアDNAの変異または欠失それぞれに原因があるとも考えられる。("Mitochondria as targets for detection and treatment of cancer", Josephine S. Modica-Napolitano, Keshav K. Singh, Expert Reviews in Molecular Medicine, (02)00445-3a.pdf (short code: txt001ksb); 11 April 2002, ISSN 1462-3994 (copyright)2002 Cambridge University Press. "Mitochondrial defects in cancer", Jennifer S Carew, Peng Huang, Molecular Cancer, 2002, I:9.; G. A. Cortopassi, Aliu Wong, Biochimica et Biophysica Acta (BBA)- Bioenergetics, 1999, 1410 (2), 183-193.)。
【0005】
ミトコンドリア疾患の土台を形成する遺伝子欠陥は、突発的に生じるおよび純粋に母系遺伝された位置およびmtDNAの長さ突然変異から、核ゲノム内での突然変異時の常染色体優性または劣性それぞれに遺伝された形にまでに及ぶ。さらに、mtDNAにおける突然変異が複雑な遺伝と共に多遺伝子疾患で役割を果たすことも議論されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの疾患の特徴は、臨床徴候の多様性、診断の複雑さ、および利用可能な治療対処法がこれまでは限られた方法のみであることである。従って、ミトコンドリアのはっきりした性質、例えば、ミトコンドリアDNAの突然変異またはミトコンドリア代謝障害の研究および診断は、ミトコンドリア疾患に対する適切な活性剤開発のための重要な必須条件である。細胞内のミトコンドリア表面における活性剤の選択的局在化も、ミトコンドリア表面における活性剤の局所濃度が高くなり、それが最終的には活性剤をミトコンドリアへ運び込むことになるので重要な側面である。
【0007】
従って、本発明の目的は、ミトコンドリア活性剤、例えば小さい分子またはアンチセンス活性剤が、細胞内でミトコンドリアの表面および内部の両方に選択的に局在化することができる方法を提供することである。
ミトコンドリア活性剤は、ミトコンドリアの表面および内部の両方における効果、例えばミトコンドリア疾患の治療における効果またはミトコンドリアの表面および内部の両方での診断法に関しての効果が得られる物質である。
【0008】
さらに、本発明の目的は、ミトコンドリアにおけるアンチセンスまたはアンチゲノム効果を生じるために、さらなる補助薬なしで細胞膜を通って細胞へ浸透し、かつミトコンドリアの表面および内部の両方に選択的に局在化するアンチセンス活性剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は一般式Iの化合物で解決される。
【0010】
【化1】

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、1つのモノヒドロキシモノニトロフェニル残基で置換された本発明による一般式Iの化合物を含むHeLa細胞を示す。
【図2】図2は、1つのモノヒドロキシモノニトロフェニル残基で置換された本発明による一般式Iの化合物を含むHeLa細胞を示す。
【図3】図3は、1つのモノヒドロキシジニトロフェニル残基で置換された本発明による一般式Iの化合物を含むHeLa細胞を示す。
【図4】図4は、1つのモノヒドロキシジニトロフェニル残基で置換された本発明による一般式Iの化合物を含む143Bペアレント細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
式中、nは0〜35、好ましくは1〜28、さらに好ましくは9〜28、最も好ましくは13〜20の整数である。
【0013】
残基K、LまたはR1は互いに独立して、少なくとも1つのモノヒドロキシモノニトロフェニル残基、好ましくは4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル残基、さらに好ましくは4−ヒドロキシ−2−ニトロフェニル残基、さらに好ましくは3−ヒドロキシ−6−ニトロフェニル残基で、またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基、好ましくは3,5−ジニトロ−4−ヒドロキシフェニル残基、さらに好ましくは2,5−ジニトロ−4−ヒドロキシフェニル残基、さらに好ましくは2,4−ジニトロ−5−ヒドロキシフェニル残基で置換されており、ここで、フェニル残基の残基K、LまたはR1との結合位置は1位として定められ、さらに、フェニル残基は1つ以上のフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子で、あるいは−COOH、−COOR8、−CSOH、−CSOR8、−COSH、−COSR8、−CONH2、−CONHR9、−COR1011、−OH、−OR8、−SH、−SR8、−NH2、−NHR9、−NR1011、−NR12NOH、−NOR13、ホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で、あるいはC1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C1−C6ヘテロアルキル、C3−C10シクロアルキル、C3−C10ヘテロシクロアルキル、C6−C10アリール、C5−C9ヘテロアリール、C7−C12アラルキルまたはC2−C11ヘテロアラルキル基で置換されていてもよく、ここで、R8、R9、R10、R11、R12およびR13は互いに独立してC1−C6アルキル残基を表す。
【0014】
Eは互いに独立して、水素原子、置換もしくは非置換フェニル残基、置換もしくは非置換複素環式残基、保護基で任意に置換されたヌクレオベース、例えば天然もしくは非天然由来のヌクレオベース、またはDNAインターカレーターを表す。
好ましくは、各Eは互いに独立して、アデニニル、シトシニル、プソイドイソシトシニル、グアニニル、チミニル、ウラシリルまたはフェニル残基である。
【0015】
各残基R1は互いに独立して、水素原子または20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基を表し、ここで、少なくとも1つの残基R1は水素原子を表さず、1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されている。
残基R1が1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されていないならば、それは互いに独立して、例えば、天然由来または非天然由来のアミノ酸の側鎖を1つ以上、および好ましくは、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基を有していてもよい。
好ましくは、各残基R1は互いに独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を含む。
各残基R1は互いに独立して枝分かれしていても、枝分かれしていなくてもよい。
【0016】
「任意に置換された」という表現は、本出願全体において、1つ以上の水素原子がフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子で、あるいは−COOH、−COOR8、−CSOH、−CSOR8、−COSH、−COSR8、−CONH2、−CONHR9、−COR1011、−OH、−OR8、=O、−SH、−SR8、=S、−NH2、=NH、−NHR9、−NR1011、−NR12NOH、−NOR13または−NO2基、ホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置き換えられている基に関する。さらに、この表現は、非置換C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C1−C6ヘテロアルキル、C3−C10シクロアルキル、C2−C9ヘテロシクロアルキル、C6−C10アリール、C5−C9ヘテロアリール、C7−C12アラルキルまたはC2−C11ヘテロアラルキルで置換されている基にも関係し、ここで、残基R8、R9、R10、R11、R12およびR13は互いに独立してC1−C6アルキル残基を表す。
【0017】
ホスホン酸エステル官能基は、例えば、式−P(=O)(OV)2または−P(=O)(OV)(OH)を示しうる。ここで、各Vは互いに独立して、20まで、より好ましくは7までの炭素原子を有する非置換アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、脂環式残基、最も好ましくはメチル、エチル、シクロヘキシルまたはベンジル残基を表してもよい。
本発明の化合物において、ホスホン酸官能基は、例えば、式−P(=O)(OH)2を示しうる。
【0018】
最も好ましくは、各残基R1は互いに独立して、式−(C1−C10)アルキル−[P(=O)(O−V)2](式中、各Vは互いに独立して、水素原子、メチル、エチル、シクロヘキシルまたはベンジル残基を表す)の基から選択される。
【0019】
Kは、式−NR23、−N+234、−NR2(CO)R3または−NR2(CS)R3の基を表し、ここで、R2、R3およびR4は互いに独立して、水素原子、アルキル、アルカリール、アルケニルまたはアルキニル残基、アミノ保護基、リポーターリガンド、蛍光マーカー、インターカレーター、キレート化剤、アミノ酸、ペプチド、たんぱく質、炭水化物、脂質、ステロイド、脂肪酸、オリゴヌクレオチド、量子ドット、FRET消光物質(蛍光共鳴エネルギー伝達消光物質)、または水に可溶性もしくは不溶性のポリマーを表し、上記残基のそれぞれは任意に置換されていてもよい。
【0020】
好ましくは、Kは、−NH2官能基、−NH(CO)CH3残基、−NH(CO)−(C1−C10)アルキル官能基、−NH(CO)−(C1−C10)アルカリール官能基、−NH(CO)−(C1−C10)アルケニル官能基、−NH(CO)−(C1−C10)アルキニル官能基、式−NR23または−N+234または−NR2(CO)R3の基を表し、ここで、R2、R3およびR4は互いに独立して、水素原子、天然由来もしくは非天然由来のアミノ酸、アミノ酸もしくはペプチド、またはそれぞれホスホン酸エステル官能基もしくはホスホン酸官能基で置換されたまたは置換されていないアルキル、アルカリール、アルケニルもしくはアルキニル残基を表し、ここで、上記残基のそれぞれは任意に置換されていてもよい。
【0021】
Lは、式−NR56、−NR5(CO)R6、−NR5(CS)R6、−OR7またはSR7の基を表し、ここで、R5およびR6は互いに独立して、水素原子、アルキル、アルカリール、アルケニルまたはアルキニル残基、リポーターリガンド、蛍光マーカー、インターカレーター、キレート化剤、アミノ酸、アミノ酸アミド、ペプチド、ペプチドアミド、たんぱく質、炭水化物、脂質、ステロイド、脂肪酸、オリゴヌクレオチド、量子ドット、FRET消光物質(蛍光共鳴エネルギー伝達消光物質)、または水に可溶性もしくは不溶性のポリマーを表し、R7は、水素原子、アルキル残基、リポーターリガンド、蛍光マーカー、インターカレーター、キレート化剤、アミノ酸、アミノ酸アミド、ペプチド、ペプチドアミド、たんぱく質、炭水化物、脂質、ステロイド、脂肪酸、オリゴヌクレオチド、量子ドット、FRET消光物質、または水に可溶性もしくは不溶性のポリマーを表し、上記残基のそれぞれは任意に置換されていてもよい。
【0022】
好ましくは、Lは、OH官能基、−NH2官能基、−NH−(C1−C10)アルキル官能基、−NH−(C1−C10)アルカリール官能基、−NH−(C1−C10)アルケニル官能基、−NH−(C1−C10)アルキニル官能基、天然由来もしくは非天然由来のアミノ酸、アミノ酸、アミノ酸アミド、ペプチドもしくはペプチドアミド単位を表し、これらの全てはホスホン酸エステル官能基もしくはホスホン酸官能基で置換されていても、置換されていなくてもよく、上記残基のそれぞれは任意に置換されていてもよい。
【0023】
本出願全体において、アルキル残基は1〜6個の炭素原子を有するのが好ましく、例えば、それらはメチル、エチル、プロピルまたはブチルで表されうる。本出願全体における「アラルキル」、「アルカリール」および「アリールアルキル」という表現は、脂肪族および芳香族部分を有する基を意味する。
【0024】
1が水素原子を表さないならば、残基R1の一般的化合物Iの主鎖への結合により結合位置において非対称中心(*)が生じる。従って、各非対称中心において、R配置またはS配置が存在する。
【0025】
ここにおいて、非対称中心での配置はCahn-Ingold-Prelog規則に従って定義されるのが好ましく、さらに、配位子は常に次のように優先されることになっている:非対称中心における窒素原子は常に優先度1である。非対称中心におけるカルボキシル基の炭素原子は常に優先度2である。非対称中心における残基R1の炭素原子は常に優先度3である。非対称中心における水素原子は常に優先度4である。
【0026】
本発明では、一般式Iの化合物は少なくとも1つの非対称中心を示し、少なくとも1つの残基R1は1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されている。
【0027】
本発明のさらに好ましい態様では、一つ置きの残基R1は互いに独立して、天然由来または非天然由来のアミノ酸の側鎖、好ましくは、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基に相当し、少なくとも1つの残基R1は、1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換された、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリールまたは脂環式残基を表し、残りの残基R1は水素原子を表す。
【0028】
本発明のさらに好ましい態様では、二つ置きの残基R1は互いに独立して、天然由来または非天然由来のアミノ酸の側鎖、好ましくは、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基に相当し、少なくとも1つの残基R1は、1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換された、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリールまたは脂環式残基を表し、残りの残基R1は水素原子を表す。
【0029】
本発明のさらに好ましい態様では、2、3またはそれ以上の隣接残基R1は互いに独立して、天然由来または非天然由来のアミノ酸の側鎖、好ましくは、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基に相当し、少なくとも1つの残基R1は、1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換された、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリールまたは脂環式残基を表し、残りの残基R1は水素原子を表す。
【0030】
本発明のさらに好ましい態様では、各残基R1は互いに独立して、天然由来または非天然由来のアミノ酸の側鎖、好ましくは、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基に相当し、少なくとも1つの残基R1は、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリールまたは脂環式残基を表し、1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されている。
【0031】
本発明のさらに好ましい態様では、残基R1の1つ以上は互いに独立して、少なくとも1つのホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基を示す。
【0032】
本発明のさらに好ましい態様では、次のとおりである:
もし1つ以上の非対称中心および1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基を有する1つ以上の任意に置換された残基R1が一般式Iの化合物に存在するならば、1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基をもつ残基を有する非対称中心の数の少なくとも50%はR配置を示し、好ましくは66%、より好ましくは70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは100%がR配置を示す。
【0033】
本発明の別の好ましい態様では、次のとおりである:
もし1つ以上の非対称中心および1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基を有する1つ以上の任意に置換された残基R1が一般式Iの化合物に存在するならば、1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基をもつ残基を有する非対称中心の数の少なくとも50%はS配置を示し、好ましくは66%、より好ましくは70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは100%がS配置である。
【0034】
別の態様では、残基R1の数の多くても80%はホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されており、残りの残基R1は水素原子を表す。
別の態様では、残基R1の数の多くても60%はホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されており、残りの残基R1は水素原子を表す。
別の態様では、残基R1の数の多くても50%はホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されており、残りの残基R1は水素原子を表す。
別の態様では、残基R1の数の多くても40%はホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されており、残りの残基R1は水素原子を表す。
別の態様では、残基R1の数の多くても30%はホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されており、残りの残基R1は水素原子を表す。
別の態様では、残基R1の数の多くても20%はホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されており、残りの残基R1は水素原子を表す。
別の態様では、残基R1の数の多くても10%はホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されており、残りの残基R1は水素原子を表す。
別の態様では、残基R1の数の多くても4%はホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されており、残りの残基R1は水素原子を表す。
【0035】
本発明の別の好ましい態様では、一般的化合物Iの全ての非対称中心(*)は同じ配置を示す。
本発明の別の好ましい態様では、一般的化合物Iの全ての非対称中心(*)はS配置を示す。
本発明の別の好ましい態様では、一般的化合物Iの全ての非対称中心(*)はR配置を示す。
【0036】
さらに、本発明の組成物は、通常の補助薬と任意に組み合わせた本発明の1種以上の化合物を含有する。
【0037】
一般式Iの化合物の合成は光学的対掌的に純粋なモノマーから実施されるのが好ましい。一般式Iの化合物の合成中、化学合成条件により、個々の非対称中心は先の定められた配置が少しの割合で変化する。しかしながら、合成中に形成される一般式Iの化合物の最大割合は立体異性体的に純粋である。また、これらの組成物は本発明の目的を実現することができる。
【0038】
一般式Iの化合物はリンカーとしての残基KおよびLを通して第2の一般式Iの化合物に結合してもよい。これらの残基は上で定義されている。第1の一般式Iの化合物における非対称中心での配置は、リンカーによって結合している第2の一般式Iの化合物における非対称中心での配置とは関係ない。従って、例えば、第1の一般式Iの化合物における全ての非対称中心はR配置を示し、結合した第2の一般式Iの化合物における全ての非対称中心はS配置を示してもよい。例えば、また、第1の一般式Iの化合物における全ての非対称中心はR配置を示し、結合した第2の一般式Iの化合物における全ての非対称中心はR配置を示してもよい。
【0039】
リンカーおよびシングルストランドRNAもしくはDNAまたはダブルストランドDNAを有する2つの一般式Iの化合物間で、それぞれ、相互作用がそれぞれのヌクレオベースにより生じうるように、リンカーは2つの一般式Iの化合物間の距離を調整する目的に特に役立つ。
【0040】
リンカーとして、あらゆる公知のリンカーおよびあらゆるリンカー分子は、この目的に用いるのに適しているか、あるいは適用できる。例えば、そのようなリンカーは任意に置換されたアルキル鎖、ペプチド、オリゴヌクレオチド、または8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸(eg1単位)の少なくとも3つの単位でできているオリゴマーを表しうる。
【0041】
ホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されている残基R1の数および配列は、それぞれ、本発明に従って自由に選択することができる。従って、各、一つ置き、二つ置き、三つ置き、四つ置き、五つ置き、六つ置き、七つ置き、八つ置き、または9つ置きの残基R1は、例えば、ホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基でそれぞれ置換されていてもよい。ホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基での置換は、それぞれ、規則的であっても、あるいはどのような位置にあってもよい。
【0042】
さらに、いくつかの残基R1は、続けて(隣接した配列で)ホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基でそれぞれ置換されていてもよい。一般式Iの化合物では、もっと多くのこれら隣接配列を含んでいてもよい。
【0043】
しかしながら、例えば、いずれかの位置の単一の残基R1のみがホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基でそれぞれ置換されていてもよい。
【0044】
ホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換された単一の残基R1を次に有する位置はそれぞれ任意である。
【0045】
EP 1157031には、ホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されている、従って、良好な細胞透過性を示す化合物が記載されている。
EP 1157031に記載の化合物に対して、ここに記載の本発明の化合物は少なくとも1つのモノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基でさらに置換されている。
【0046】
本発明のこれら化合物の場合において、発明者等は、生きている細胞内のミトコンドリア表面および内部の両方における予想外の選択的局在化について調べた。本発明の化合物は、ミトコンドリアの表面および内部の両方におけるそれらの選択的局在化の後、ミトコンドリア内での驚くほど強力なアンチセンスまたはアンチゲノム効果によってそれらの効果を生じることができる。
【0047】
ミトコンドリアの表面および内部の両方における局在化を調べるため、細胞内の緑の蛍光による共焦点顕微鏡での細胞透過性についての実験でこれらの化合物を検出することができるように、本発明の化合物を蛍光染料ビオチンで標識した。ミトコンドリアの染色のために、商業的に入手しうる「MitoTracker」を用いた。それを用いることによって、ミトコンドリアは赤の蛍光により共焦点顕微鏡によって見分けることができる。同時に、細胞核は青の蛍光により「DAPI」染色によって識別された。細胞はビオチン標識された本発明の化合物の10μM溶液と共に24時間インキュベートし、その後、共焦点顕微鏡により分析した。様々なラインスキャンを、細胞を通して測定した。
【0048】
HeLa細胞またはペアレント細胞143Bそれぞれを通した図1〜4のラインスキャン分析は、ミトコンドリアについてのおよび細胞核についての一般式Iの化合物の信号強度を示す。モノヒドロキシモノニトロフェニル残基(図1〜2)またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基(図3〜4)をそれぞれ有する本発明による一般式Iの化合物およびミトコンドリアのパラレル信号強度によって、ミトコンドリアの表面および内部の両方における一般式Iの化合物の選択的局在化をはっきり認めることができる。しかしながら、細胞核内では、本発明の化合物は認めることができない。これにより、本発明の化合物は、ミトコンドリアのための商業的に入手しうる染色試薬「MitoTracker」と、ミトコンドリアの表面および内部の両方における局在化に関して同等の選択性を示す。
【0049】
本発明の化合物はまた、ミトコンドリア内で驚くほど強力なアンチセンスおよびアンチゲノム効果も示す。ミトコンドリアたんぱく質COX1の発現に影響を与える本発明の化合物は、10μMの濃度において、HeLa細胞内でCOX1のたんぱく質レベルを、未処理HeLa細胞と比較して、3日後に71%に、9日後に20%に減じる。時間依存性効果の他に、濃度依存性効果も観察することができる。従って、例えば、9日のインキュベーションの後、COX1のたんぱく質レベルは2.5μMの濃度で55%に、500nMの濃度でも80%に減少する。
【0050】
HeLa細胞内でのミトコンドリアDNAのコピーの数も本発明の化合物(アンチCOX1配列を有する)での処理によって時間および濃度依存性の状態で減少する。mtDNAの減少は、10μMの濃度において、3日後ではまだ効果は見られないが、6日後に81%に、9日後に62%に減少することが観察できる。これらの値は、未処理HeLa細胞と、または本発明による化合物で処理されたがmtDNAに対して相補的配列をもたないHeLa細胞(ネガティブ対照)と、それぞれ比較すべきである。
【0051】
異なる濃度の本発明による化合物(アンチCOX1配列を有する)で処理されたHeLa細胞の場合、mtDNAのコピー数は、例えば9日後に10μMで62%に、2.5μMで82%に、そして500nMで83%に減少する。
【0052】
従って、本発明による化合物はトリフェニルホスホニウム残基と結合した公知のペプチド核酸(A. Muratovska, R. N. Lightowlers, R. W. Taylor, D. M. Turnbull, R. A. J. Smith, J. A. Wilce, S. W. Martin, M. P. Murphy, Nucleic Acid Research, 2001, Vol. 29, No. 9, 1852-1863)よりも明らかにすぐれている。この出版物に記載されている分子は無細胞系においてのみミトコンドリアDNAへの結合を示す。さらに、これらの分子は細胞の外側の細胞膜を通り抜け、そしてミトコンドリアへ結合することが実際にできるが、それらは細胞内のミトコンドリアにおいて、アンチセンスまたはアンチゲノム効果のような効果を示さない。
【0053】
置換基K、LまたはR1にモノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基をもたない一般式Iの化合物は均一に細胞内に分配されるか、あるいはそれらはミトコンドリアとは異なる他の細胞コンパートメントへ結合する。意外なことに、一般式Iの化合物をモノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基で置換すると、ミトコンドリア表面および内部の両方におけるこれらのミトコンドリア活性剤の選択的局在化が生じる。
【0054】
そのために、本発明はまた、化合物、例えば、トランスフェクション試薬の助けでまたは助けなしで、50μM未満の細胞外濃度にて、外側の細胞膜を通り抜けて細胞内部へ浸透することができる化合物が、モノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基との共有結合により細胞内のミトコンドリア表面および内部の両方に選択的に局在化され、その後、ミトコンドリア表面および内部においてそれらの効果を生じることができる方法を提供する。
【0055】
例えば、本方法はまた、ミトコンドリア疾患に選択的に影響を与える活性剤を得る手段として、モノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基を、(任意にリンカーMを通して)酸化または還元が可能な活性剤、例えば抗酸化薬へ共有結合させることを含む。
【0056】
これらの方法に基づいて、本発明は一般式Vの化合物をさらに提供する:
Z−M−P (V)
(式中、
Zは、酸化または還元可能な官能基を表し、
Mは、リンカー基を表し、そして
Pは、モノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基をあらわす。)
【0057】
好ましくは、Zは、式VI、VII、VIIIまたはIXの基を表す:
【0058】
【化2】

(式中、mおよびm´は0〜3の整数を表す。)
【0059】
各YおよびY´は互いに独立して、アルコキシ、チオアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、アミノ、ニトロまたは任意に置換されたアルキルもしくはアリール残基を表すか、あるいはmが2または3であるならば、2つの残基Yは一緒になって1もしくは2もしくは3個の脂肪族、複素環式(複素原子はO、SまたはNである)または芳香族環を形成してもよく、これらはアリール環と縮合される。
好ましくは、YおよびY´は互いに独立して、メチルまたはメトキシ基を表す。
【0060】
好ましくは、Mは、カルボン酸エステル、エーテル、アミンまたはカルボン酸アミド官能基をこれらの鎖の構成要素として任意に有する、分枝もしくは非分枝の任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルキルアリール鎖を表し、ここで、Mは合計30までの炭素原子を有し、より好ましくは、Mは−(CH2p−を表し、ここで、pは1〜20の整数を表し、最も好ましくは、Mはエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシル鎖を表す。
【0061】
最も好ましくは、Zは以下のいずれかの式の基を表す。
【0062】
【化3】

【0063】
【化4】

【0064】
【化5】

【0065】
【化6】

【0066】
従って、本発明の化合物および本発明の方法はミトコンドリア疾患の治療並びにミトコンドリアに関連する診断目的に適している。これらには、例えば、遺伝性疾患、癌、パーキンソン病および糖尿病が含まれる。本発明の化合物はアンチエイジング薬としても用いうる。
【0067】
本発明の化合物を病気の予防および/または治療用薬剤の製造に用いることは、本発明の構成要件でもある。一般に、本発明の化合物は公知のおよび許容される方法を用いて、単独でまたは他の治療薬と組み合わせて投与される。例えば、次の経路の1つで投与することができる:例えば、糖衣錠、被覆錠剤、ピル、半固体、ソフトおよびハードカプセル、溶液、エマルジョンまたは懸濁液として経口的に;例えば、注射溶液として非経口的に;座薬として直腸へ;例えば、粉末配合物またはスプレーとして吸入によって、あるいは経皮的にまたは鼻腔内へ投与される。そのような錠剤、ピル、半固体、被覆錠剤、糖衣錠およびハードゼラチンカプセルの製造には、治療に用いうる生成物は、薬理学的に不活性な無機もしくは有機薬剤担体物質と、例えば、ラクトース、サッカロース、グルコール、ゼラチン、麦芽、シリカゲル、デンプンもしくはその誘導体、タルカム、ステアリン酸もしくはその塩、および無脂肪粉末ミルク等と混合してもよい。ソフトカプセルの製造には、薬剤担体物質、例えば、植物油、鉱油、動物もしくは合成油、ワックス、脂肪、ポリオールを用いうる。溶液およびシロップの製造には、薬剤担体物質、例えば、水、アルコール、水性塩溶液、水性デキストロース、ポリオール、グリセロール、植物油、鉱油、動物もしくは合成油を用いうる。座薬には、薬剤担体物質、例えば、植物油、鉱油、動物もしくは合成油、ワックス、脂肪、ポリオールを用いうる。エアロゾル配合物には、この目的に適した圧縮ガス、例えば、酸素、窒素、クロロフルオロ炭化水素、フルオロ炭化水素、クロロ炭化水素および二酸化炭素を用いうる。薬学的に用いうる薬剤はまた、保存、安定化のための添加剤、乳化剤、甘味料、香味料、浸透圧を変えるための塩類、バッファー物質、被覆のための添加剤、および抗酸化薬を含有していてもよい。
【0068】
本発明の一般式Iの化合物は、例えば文献に記載の方法により一般式IIの化合物を公知の方法で反応させることによって製造しうる(例えば、L. Christensen, R. Fitzpatrick, B. Gildea, K.H. Petersen, H.F. Hansen, T. Koch, M. Egholm, O. Buchardt, P.E. Nielsen, J. Coull, R.H. Berg, J. Pept. Sci. 3, 1995, 175-183. T. Koch, H.F. Hansen, P. Andersen, T. Larsen, H.G. Batz, K. Otteson, H. Orum, J. Pept. Res. 49, 1997, 80-88. F. Bergmann, W. Bannwarth, S. Tam, Tetrahedron Lett. 36, 1995, 6823-6826)。
【0069】
モノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基の置換基としての本発明の化合物への導入は、例えば、一般式IIIまたはIVの化合物の残基K、LまたはR1中のアミン官能基への結合によって行いうる。
【0070】
【化7】

【0071】
以下において、一般式IIIの化合物はMNPA(「モノニトロ−ヒドロキシ−フェニル−アセテート」)と省略し、一般式IVの化合物はDNPA(「ジニトロ−ヒドロキシ−フェニル−アセテート」)と省略する。
【0072】
一般式IIの化合物では、残基R14は、例えば、水素原子またはアルキル、ベンジル、エチルもしくはメチル残基、あるいは可溶性もしくは不溶性ポリマーを表す。
【0073】
【化8】

【0074】
Prは、水素原子または切り離し可能なアミン保護基を表す。アミン保護基はヌクレオベース保護基の存在下で選択的に切り離し可能でなければならない。好ましくは、Prは、水素原子、オキソカルバメートまたはチオカルバメート保護基、最も好ましくは、Prは、水素原子またはFmoc、Boc、Cbz、MmtまたはBhoc保護基である。
Eおよび残基R1は上記定義どおりである。
残基R1が結合する非対称中心(*)は、RまたはS配置でありうる。
【0075】
例えば、一般式IIの化合物は次の方法によって製造してもよい。
【0076】
非対称中心におけるR配置での一般式IIの化合物の製造:
【0077】
【化9】

【0078】
ピラジン成分のS配置から出発して、手順は、例えば、文献に記載のように行いうる (U. Schollkopf, U. Busse, R. Lonsky, R. Hinrichs, Liebigs Ann. Chem. 1986, 2150-2163; A. Schick, T. Kolter, A. Giannis, K. Sandhoff, Tetrahedron 51, 1995, 11207-11218)。
【0079】
【化10】

【0080】
例えば、手順は、文献に記載のように行いうる(U. Schollkopf, U. Busse, R. Lonsky, R. Hinrichs, Liebigs Ann. Chem. 1986, 2150-2163)。
【0081】
【化11】

【0082】
塩基(例えば、NaHCO3、NH3)によりアミンをそれらの塩酸塩から離した後、反応工程2からの生成物混合物は次の反応に用いうる。還元アミノ化のこの反応は文献に記載のように行なうことができる(G. Haaima, A. Lohse, O. Buchardt, P.E. Nielsen, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 35, 1996, No 17, 1939-1942)。シアノ硼水素化ナトリウムの代わりに、他の還元剤、例えば水素および触媒(例えばPd/C)も用いることができる。反応生成物はクロマトグラフィーによって分離される。
【0083】
【化12】

【0084】
手順は文献に記載のように行うことができる(G. Haaima, A. Lohse, O. Buchardt, P.E. Nielsen, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 35, 1996, No 17, 1939-1942)。ここで、DCC/DHBTの代わりに他のカップリング試薬も用いうる。化合物E−CH2−COOH(例えば、C(PG)−CH2−COOH、A(PG)−CH2−COOH、G(PG)−CH2−COOHまたはT−CH2−COOH、J(PG)−CH2−COOH(式中、A=アデニニル、C=シトシニル、G=グアニニル、T=チミニル、J=プソイドイソシトシニル、PG=保護基、例えば、ベンジルオキシカルボニル(Z)、ベンジル(Bz)、アセチル(Ac)またはアニソイル(An))の生成は文献に記載のように行うことができる(S.A. Thomson, J.A. Josey, R. Cadilla, M.D. Gaul, F.C. Hassmann, M.J. Lazzio, A.J. Pipe, K.L. Reed, D.J. Ricca, R.W. Wiether, S.A. Noble, Tetrahedron 51, 1995, 6179-6194)。さらに可能な保護基はやはり文献に記載されている。 (G. Breitpohl, D.W. Will, A. Peymann, E. Uhlmann, Tetrahedron 53, 1997, 14671-14686; T. Kofoed, H.F. Hansen, H. Orum, T. Koch, J. Peptide Sci., 7, 2001, 402-412)。
【0085】
【化13】

【0086】
手順は文献に記載のように行うことができる(G. Haaima, A. Lohse, O. Buchardt, P.E. Nielsen, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 35, 1996, No 17, 1939- 1942)。
【0087】
反応工程5において生成物として生じる一般式IIの化合物のさらに簡単な説明には、次の省略が用いられる:
【0088】
例えばA(PG)−CH2−COOHを反応工程5で用いるならば、非対称中心を有する一般式IIの相当する化合物が得られる。この化合物はここでは一般にAR(PG)と省略される。ここで、略記Aは、非対称中心を有する一般式IIの化合物におけるヌクレオベースを意味し、上付きRは化合物のR配置を意味し、略記PGはヌクレオベースでの保護基を意味する。例えばフェニル酢酸を反応工程5で用いるならば、PRと省略される非対称中心を有する一般式IIの化合物が得られる。
【0089】
非対称中心をもたない一般式IIの相当する化合物(R1=H)は、非対称中心を有する一般式IIの相当する化合物と同様に省略され、ヌクレオベースに対する大文字および配置に対する上付き文字(例えばAR)の代わりに、それぞれの小文字aが用いられる。例えば、ヌクレオベースとして、PGで保護されたCを有する非対称中心のない一般式IIの化合物はc(PG)と省略される。
【0090】
非対称中心でS配置を有する一般式IIの化合物の生成では、R配置を有するピラジンが反応工程1で用いられ、反応工程1〜5は同様に行われる。次に、例えばAS(PG)と省略される一般式IIの化合物が得られる。
【0091】
本発明の化合物は、例えば、公知の方法で一般式IIの化合物の反応による固相合成により製造することができる。固相合成では、ヌクレオベースでの保護基が切り離されて、次のように省略される一般式IIの化合物が得られる:
【0092】
例えば、R配置の非対称中心を有する一般式IIの化合物からもっぱら製造され、そして最終工程でMNPA−OHと結合され、その後、第1アミドとして樹脂から切り離される本発明の化合物は、MNPA−ARRRRRRRRRRRRRRR−NH2と省略される。
【0093】
例えば、R配置の非対称中心を有する一般式IIの化合物からおよび非対称中心をもたない一般式IIの化合物から製造され、そして最終工程でMNPA−OHと結合され、その後、第1アミドとして樹脂から切り離される本発明の化合物は、MNPA−ARcGRgTRcGRgCRgARaCRaTR−NH2と省略される。
【0094】
例えば、S配置の非対称中心を有する一般式IIの化合物からもっぱら製造され、そして最終工程でDNPA−OHと結合され、その後、第1アミドとして樹脂から切り離される本発明の化合物は、DNPA−ASSSSSSSSSSSSSSS−NH2と省略される。
【0095】
例えば、S配置の非対称中心を有する一般式IIの化合物からおよび非対称中心をもたない一般式IIの化合物から製造され、そして最終工程でDNPAと結合され、その後、第1アミドとして樹脂から切り離される本発明の化合物は、DNPA−AScGSgTScGSgCSgASaCSaTS−NH2と省略される。
【0096】
例えば、R配置の非対称中心を有する一般式IIの化合物からおよびBoc-Gly-PAM-MBHA樹脂で非対称中心をもたない一般式IIの化合物からもっぱら製造され、そして最終工程でDNPAと結合され、その後、第1アミドとして樹脂から切り離される本発明の化合物は、DNPA-tGRcCRtARggactcRcARgCR-Gly-NH2として省略される。
【0097】
例えば、R配置の非対称中心を有する一般式IIの化合物から、非対称中心を有しない一般式IIの化合物から、グリシンから、およびBoc-Gly-PAM-MBHA樹脂で2つのアミノ酸、例えば4−(ジエトキシ−ホスホリル)−2−(t−ブトキシカルボニルアミノ)酪酸(Boc-DEPABS)から製造され、そして最終工程でDNPAと結合され、その後、第1アミドとして樹脂から切り離される本発明の化合物は、DNPA-(DEPABS)2-Gly-tGRcCRtARggactcRcARgCR-Gly-NH2と省略される。
【0098】
例えば、R配置の非対称中心を有する一般式IIの化合物から、非対称中心をもたない一般式IIの化合物から、およびBoc-Gly-PAM-MBHA樹脂でキレート化剤1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸トリ−t−ブチルエステル(DOTA)から製造され、そして最終工程でDNPAと結合され、その後、第1アミドとして樹脂から切り離される本発明の化合物は、DNPA-DOTA-gGRcTRcGRaARtARaGRgARgGR-Gly-NH2と省略される。
【実施例】
【0099】
実施例
実施例1: (2R,5S)−2−(2−(ジエトキシ−ホスホリル)エチル)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−5−イソプロピルピラジンの製造
【0100】
【化14】

【0101】
0.52モルの(S)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−イソプロピルピラジンをアルゴンの下で400mlの無水THFに溶解し、−78℃に冷却する。攪拌しながら、200mlのブチルリチウム(ヘプタン中)の2.7M溶液(0.54モル)をゆっくり滴加する。その後、0.52モルのジエチル−(2−ブロモメチル)ホスホネートの無水THF300ml中の溶液を攪拌しながらゆっくり滴加し、混合物を−78℃でさらに3時間攪拌する。次に、11.7ml(約0.2モル)無水酢酸をゆっくり加える。反応混合物を室温にゆっくり温める。溶媒を除去し、残留物を600mlのジエチルエーテルに溶解し、200mlの水で洗浄する。水性相を各100mlのジエチルエーテルで3回さらに抽出する。一緒にしたエーテル相をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして溶媒を真空除去する。残留物をジエチルエーテルとヘキサン(1:10)の混合物に溶解し、シリカゲル床で濾過する。その後、未反応成分をジエチルエーテルおよびヘキサン(1:5)で溶出する。最後に、生成物を酢酸エチルエステルで溶出する。
【0102】
収率: 約70%の黄色液体
1H-NMR(CDCl3): 0.71, 1.04 (d, 6H, CH(CH3)2), 1.33 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2), 1.68-2.25 (m, 4H, CHCH2CH2P), 3.65, 3.67 (s, 6H, OCH3), 4.02 (m, 1H), 4.10-4.20 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2).
【0103】
実施例2: (2R,5S)−2−(8−(ジベンジルオキシ−ホスホリル)オクチル)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−5−イソプロピルピラジンの製造
実施例1の製造法と同様に、(2R,5S)−2−(8−(ジベンジルオキシ−ホスホリル)オクチル)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−5−イソプロピルピラジンを、(S)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−イソプロピルピラジンおよびジベンジル−(8−ブロモオクチル)ホスホネートから出発して製造する。
【0104】
実施例3: (2S,5R)−2−(4−(ジシクロヘキシルオキシ−ホスホリル)ブト−2−エニル)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−5−イソプロピルピラジンの製造
実施例1の製造法と同様に、(2S,5R)−2−(4−(ジシクロヘキシルオキシ−ホスホリル)ブト−2−エニル)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−5−イソプロピルピラジンを、(R)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−イソプロピルピラジンおよびジシクロヘキシル−(4−ブロム−ブト−2−エニル)ホスホネートから出発して製造する。
【0105】
実施例4: (2R)−2−[2−(t−ブトキシカルボニルアミノ)エチル]−アミノ−4−(ジエトキシ−ホスホリル)酪酸メチルエステルの製造
【0106】
【化15】

【0107】
0.38モルの(2R,5S)−2−(2−(ジエトキシ−ホスホリル)エチル)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−5−イソプロピルピラジンを400mlのジエチルエーテルに溶解する。この溶液に、塩酸の1N水溶液1150mlを加える。60分後、反応が完了し、エーテルを除去する。生成物を貯蔵するならば、水も完全に真空除去する。生成物を直ちにさらに反応させるならば、約半分の水を回転蒸発器で除去し、その後、反応混合物のpHをアンモニア溶液で8〜9に調整する。塩基性溶液をジクロロメタンで6回抽出する。各回にpH値を調整し、任意に修正する。ジクロロメタン層を一緒にし、MgSO4で乾燥し、溶媒を真空除去する。得られた黄色油は次の還元アミノ化の反応に直ちに用いる。
【0108】
【化16】

【0109】
黄色油(反応は完了していると思われる)を600mlのメタノールに溶解し、0℃に冷却する。その後、0.76モルのN-Boc-アミノアセトアルデヒドを加える。0℃で30分間攪拌した後、まず0.90モルの無水酢酸、次いで、0.40モルのシアノ硼水素化ナトリウムを加える。ガスの発生が完了するまで、反応混合物を0℃で攪拌し、次に、溶媒を回転蒸発器で除去する。残留物を酢酸エチルエステル(約600ml)に溶解し、さらに飽和炭酸水素ナトリウム(約200ml)で1回、そして飽和塩化ナトリウム溶液(約100ml)で1回洗浄する。有機相をMgSO4で乾燥し、濾過する。その後、溶媒を真空除去する。
【0110】
さらなる精製は、シリカゲルを詰めたガラスフリットでのSPEで行う。不純物および不要な生成物はまずヘキサンと酢酸エチルエステル(1:1)混合物、次いで、純粋な酢酸エチルエステルで溶出する。所望の生成物はジクロロメタン中の10%メタノールで抽出することによって最後に得られる。
溶媒を除去した後、約75%の生成物が黄色粘性油として得られる。
【0111】
1H-NMR(CDCl3): 1.35 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2), 1.47 (s, 9H, C(CH3)3); 1.8-2.0 (m, 4H, CHCH2CH2P,), 2.5-2.6, 2.75-2.85, 3.0-3.4 (m, 4H, NCH2CH2N), 3.75 (s, 3H, OCH3), 4.0-4.2 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2).
【0112】
実施例5: (2R)−2−[2−(t−ブトキシカルボニルアミノ)エチル]−アミノ−10−(ジベンジルオキシ−ホスホリル)デカン酸メチルエステルの製造
実施例4の製造法と同様に、(2R)−2−[2−(t−ブトキシカルボニルアミノ)エチル]−アミノ−10−(ジベンジルオキシ−ホスホリル)デカン酸メチルエステルを、(2R,5S)−2−(8−(ジベンジルオキシ−ホスホリル)オクチル)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−5−イソプロピルピラジンから出発して製造する。
【0113】
実施例6: (2S)−2−[2−(t−ブトキシカルボニルアミノ)エチル]−アミノ−6−(ジシクロヘキシルオキシ−ホスホリル)ヘキス−4−エノイック酸メチルエステルの製造
実施例4の製造法と同様に、(2S)−2−[2−(t−ブトキシカルボニルアミノ)エチル]−アミノ−6−(ジシクロヘキシルオキシ−ホスホリル)ヘキス−4−エノイック酸メチルエステルを、(2S,5R)−2−(4−(ジシクロヘキシルオキシ−ホスホリル)オクチル)−ブト−2−エニル)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−5−イソプロピルピラジンから出発して製造する。
【0114】
実施例7: (R)−2−([2−{N4−ベンジルオキシカルボニルシトシン−1−イル}−アセチル]−[2−t−ブトキシカルボニルアミノエチル]−アミノ)−4−(ジエトキシ−ホスホリル)酪酸メチルエステルの製造
【0115】
【化17】

【0116】
30.96ミリモルの4−N−(ベンジルオキシカルボニル)−シトシン−1−イル−酢酸および30.96ミリモルの3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(DHBT-OH)の無水DMF100ml中の攪拌溶液へ、32.51ミリモルのジシクロヘキシルカルボジイミドを加え、この溶液を40℃で1時間攪拌する。その後、23.84ミリモルの(2R)−2−[2−(t−ブトキシカルボニルアミノ)エチル]−アミノ−4−(ジエトキシ−ホスホリル)酪酸メチルエステルを加え、40℃で攪拌する。反応はHPLCでモニターし、3日後に完了する。
【0117】
溶液を不溶性部分から濾過によって分離し、溶媒を真空除去する。残留物をジクロロメタンに溶解し、一晩冷蔵庫で貯蔵する。この方法では、さらにジシクロヘキシル尿素が沈殿し、濾過によって分離する。濾液を希釈炭酸水素ナトリウム溶液(1/3が飽和炭酸水素ナトリウム溶液、2/3が水)で2または3回、希釈硫酸水素カリウム溶液(1/3が飽和硫酸水素カリウム溶液、2/3が水)で1または2回洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして回転蒸発器で濃縮する。さらなる精製は、酢酸エチルエステルに溶解し、一晩冷蔵庫に貯蔵することによって行い、さらに任意に沈殿したジシクロヘキシル尿素は濾過によって分離し、溶媒を再度除去する。粗生成物をジクロロメタンに溶解し(3g粗生成物毎に5ml)、ジエチルエーテル(3g粗生成物毎に25ml)およびヘキサン(3g粗生成物毎に5ml)で再度沈殿させる。不純物を含む溶媒を除去し、生成物を真空乾燥する。
【0118】
収率:約65%の鮮やかな黄色固体
1H-NMR(CDCl3): 1.32 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2); 1.44 (s, 9H, C(CH3)3); 1.75-2.45 (m, 4H, CHCH2CH2P); 3.2-3.85 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.73 (s, 3H, OCH3); 4.07 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.28 (m, 1H, NCHC(O)); 4.42/4.99 (2d, 2H, NCH2C(O)); 5.22 (s, 2H, OCH2Ph); 5.56 (t, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.25 (d, 1H, CCH=CHN); 7.38 (s, 5H, Ph);7.55 (d, 1H, CCH=CHN).
【0119】
実施例8: (R)−2−([2−{N4−ベンジルオキシカルボニルアミノ−シトシン−1−イル}−アセチル]−[2−t−ブトキシカルボニルアミノ−エチル]アミノ)−4−(ジエトキシ−ホスホリル)酪酸の製造
【0120】
【化18】

【0121】
19.1ミリモルの(R)−2−([2−{N4−ベンジルオキシカルボニルシトシン−1−イル}−アセチル]−[2−t−ブトキシカルボニルアミノエチル]−アミノ)−4−(ジエトキシ−ホスホリル)酪酸メチルエステルを80mlのTHFおよび水(2:3)に溶解し、0℃に冷却する。この溶液に、水酸化リチウムの1M溶液48mlを滴加する(pH〜9)。反応の進行はDC(ジクロロメタン中の10%メタノール)によってモニターする。反応完了後、反応溶液を130mlの水および塩化ナトリウム溶液で希釈し、ジクロロメタン(200ml)で1回抽出する。水性相を2M硫酸水素ナトリウム溶液でpH2〜3に調整し、ジクロロメタンで数回抽出する。それによって、pH値を調整し、任意に繰り返し修正する。一緒にした有機相をMgSO4で乾燥し、溶媒を真空除去する。必要ならば、粗生成物をジクロロメタンからジエチルエーテルで再沈殿させてもよい。最後に、生成物を凍結乾燥機で乾燥する。
【0122】
収率: 約80%の白黄色固体
1H-NMR(DMSO-d6): 1.21 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2); 1.39 (s, 9H, C(CH3)3); 1.70-2.30 (m, 4H, CHCH2CH2P); 2.90-3.60 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.93-4.02 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.25 (m, 1H, NCHC(O)); 4.50-4.83 (m, 2H, NCH2C(O)); 5.19 (s, 2H, OCH2Ph); 6.88 (m, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.02 (d, 1H, CCH=CHN); 7.31-7.41 (m, 5H, Ph); 7.97 (d, 1H, CCH=CHN).
【0123】
実施例9: 一般式IIのさらなる化合物の製造
実施例7および8と同様な合成によって、 C(Z)-CH2-COOHにもかかわらず、さらにそれぞれZ保護された、ベンジル保護された(Bzl)、アニソイル保護された(An)またはアセチル保護された(Ac)、および保護されていないヌクレオベース酢酸成分、例えばA(Z)-CH2-COOH, A(An)-CH2-COOH, A(Bzl)-CH2-COOH, G(Z)-CH2-COOH, G(Ac)-CH2-COOH, C(An)-CH2-COOH, C(Bzl)-CH2-COOH, J(Z)-CH2-COOH, J(Bzl)-CH2-COOH, J(An)-CH2-COOH またはT-CH2-COOH (A =アデニニル、C =シトシニル、G =グアニニル、T=チミニル;J =プソイドイソシトシニル)並びにフェニル酢酸を用い、本発明の一般式IIに従うさらに別の化合物が製造される。
【0124】
AR(Z):
1H-NMR(CH3OH-d4): 1.20 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2); 1.34 (s, 9H, C(CH3)3); 1.70-2.30 (m, 4H, CHCH2CH2P); 3.00-3.80 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.93-4.02 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.10 (m, 1H, NCHC(O)); 5.18 (s, 2H, OCH2Ph); 5.20-5.40 (m, 2H, NCH2C(O)); 7.15-7.40 (m, 5H, Ph); 8.14 (s, 1H, N=CHN); 8.46 (s, 1H, N=CHN).
【0125】
AR(Bzl):
1H-NMR(DMSO-d6): 1.21 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2), 1.40 (s, 9H, C(CH3)3); 1.70-2.20 (m, 4H, CHCH2CH2P,), 2.90-3.75 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.90-4.10 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.22 (m, 1H, NCHC(O)); 5.25-5.45 (m, 2H, NCH2C(O)); 6.96 (m, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.50-8.10 (m, 5H, Ph); 8.42 (s, 1H, N=CHN); 8.69 (s, 1H, N=CHN).
【0126】
AR(An):
1H-NMR(DMSO-d6): 1.21 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2); 1.41 (s, 9H, C(CH3)3); 1.70-2.20 (m, 4H, CHCH2CH2P); 2.90-3.750 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.86 (s, 3H, OCH3); 3.90-4.10 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.22 (m, 1H, NCHC(O)); 5.25-5.45 (m, 2H, NCH2C(O)); 6.96 (m, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.08 (d, 2H, Ph); 8.05 (d, 2H, Ph); 8.42 (s, 1H, N=CHN); 8.69 (s, 1H, N=CHN).
【0127】
JR(Z):
1H-NMR(DMSO-d6): 1.32 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2), 1.42 (s, 9H, C(CH3)3); 1.60-2.50 (m, 4H, CHCH2CH2P,), 3.10-3.55 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.65-3.90 (m, 2H, NCH2C(O)); 4.00-4.15 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.20 (m, 1H, NCHC(O)); 5.24 (s, 2H, OCH2Ph); 6.80 (m, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.27 (d, 1H, C=CHN); 7.30-7.50 (m, 5H, Ph).
【0128】
JR(An):
1H-NMR(DMSO-d6): 1.22 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2); 1.38 (s, 9H, C(CH3)3); 1.65-2.25 (m, 4H, CHCH2CH2P); 2.80-3.70 (m, 4H, NCH2CH2N); 2.80-3.70 (m, 2H, CCH2C(O)); 3.84 (s, 3H, OCH3); 3.90-4.05 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.17 (m, 1H, NCHC(O)); 6.81 (m, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.05 (d, 2H, Ph); 7.70 (s, 1H, NCH=C); 8.07 (d, 2H, Ph).
【0129】
GR(Z):
1H-NMR(DMSO-d6): 1.18 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2), 1.37 (s, 9H, C(CH3)3); 1.70-2.30 (m, 4H, CHCH2CH2P,), 2.95-3.70 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.90-4.10 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.20 (m, 1H, NCHC(O)); 4.85-5.20 (m, 2H, NCH2C(O)); 5.269 (s, 2H, OCH2Ph); 6.95 (m, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.30-7.50 (m, 5H, Ph); 7.85 (s, 1H, N=CHN).
【0130】
GR(Ac):
1H-NMR(DMSO-d6): 1.20 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2); 1.41 (s, 9H, C(CH3)3); 1.70-2.18 (m, 4H, CHCH2CH2P); 2.20 (s, 3H, CH3C(O)); 2.90-3.60 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.90-4.10 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.22 (m, 1H, NCHC(O)); 4.91-5.22 (m, 2H, NCH2C(O)); 7.00 (m, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.88 (s, 1H, N=CH-N);.
【0131】
CR(Bzl):
1H-NMR(DMSO-d6): 1.21 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2); 1.40 (s, 9H, C(CH3)3); 1.70-2.30 (m, 4H, CHCH2CH2P); 3.20-3.60 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.93-4.02 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.28 (m, 1H, NCHC(O)); 4.50-4.83 (m, 2H, NCH2C(O)); 6.90 (m, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.33 (d, 1H, CCH=CHN); 7.50-7.55 (m, 2H, Ph); 7.62 (d, 1H, CCH=CHN); 8.00-8.10 (m, 3H, Ph).
【0132】
CR(An):
1H-NMR(DMSO-d6): 1.22 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2); 1.39 (s, 9H, C(CH3)3); 1.65-2.10 (m, 4H, CHCH2CH2P); 3.20-3.60 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.84 (s, 3H, OCH3); 3.85-4.05 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.25 (m, 1H, NCHC(O)); 4.50-4.95 (m, 2H, NCH2C(O)); 6.90 (m, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.04 (d, 2H, Ph); 7.30 (d, 1H, CCH=CHN); 8.00 (d, 1H, CCH=CHN); 8.03 (d, 2H, Ph).
【0133】
TR:
1H-NMR(DMSO-d6): 1.22 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2); 1.39 (s, 9H, C(CH3)3); 1.65-2.20 (m, 4H, CHCH2CH2P); 1.75 (s, 3H, C=CCH3); 2.90-3.50 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.90-4.10 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.18 (m, 1H, NCHC(O)); 4.45-4.65 (m, 2H, NCH2C(O)); 6.86 (m, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.37 (s, 1H, NCH=C).
【0134】
PR:
1H-NMR(DMSO-d6): 1.20 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2); 1.38 (s, 9H, C(CH3)3); 1.46-2.30 (m, 4H, CHCH2CH2P); 3.00-3.45 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.50-3.75 (m, 2H, CCH2C(O)); 3.80-4.00 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.22 (m, 1H, NCHC(O)); 7.10-7.30 (m, 5H, Ph).
【0135】
実施例10: 対称中心でS配置の一般式IIのさらなる化合物の製造
R配置の一般式IIの化合物についての製造法を、S配置の一般式IIの相当する化合物の製造に同様に適用する。ここで、(R)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−イソプロピルピラジンを実施例1に記載の合成において出発物質として用い、その後の合成は記載のように行う。
例えば、次の化合物が生成された:
【0136】
JS(Z):
1H-NMR(DMSO-d6): 1.32 (t, 6H, P(O)(OCH2CH3)2), 1.42 (s, 9H, C(CH3)3); 1.60-2.50 (m, 4H, CHCH2CH2P,), 3.10-3.55 (m, 4H, NCH2CH2N); 3.65-3.90 (m, 2H, NCH2C(O)); 4.00-4.15 (m, 4H, P(O)(OCH2CH3)2); 4.20 (m, 1H, NCHC(O)); 5.24 (s, 2H, OCH2Ph); 6.80 (m, br, 1H, C(O)NHCH2); 7.27 (d, 1H, C=CHN); 7.30-7.50 (m, 5H, Ph).
【0137】
実施例11: 残基KにMNPA置換基を有する本発明の化合物の一般的な合成についての詳細:
非対称中心を有する一般式IIの相当する化合物および/または非対称中心をもたない一般式IIの相当する化合物および/またはアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体および/または蛍光マーカーを固相ペプチド合成により順次結合することによって、本発明の化合物を製造する。
【0138】
次の合成手順が適用される:
段階1: ジクロロメタン中での10mgの樹脂(Boc-Gly-PAM-MBHA樹脂、0.54ミリモル/g)の3時間予備膨潤。
段階2: 合成サイクルの開始:ジクロロメタンでの洗浄4回。
段階3: TFAおよびm−クレゾール(95:5)との反応によるBoc基の切り離し。反応時間:2回×各3分。
段階4: ジクロロメタンでの洗浄5回。
段階5: NMPでの洗浄5回。
【0139】
段階6: NMPとピリジン(2:1)中のHATU 3.8当量およびNMM9当量で、一般式IIの相当する保護化合物のまたは相当する保護アミノ酸それぞれ4当量を、1分間予備活性化。
段階7: 一般式IIの活性化保護化合物または相当する保護アミノ酸それぞれの固相との反応;(1.カップリング;時間:30分)。
段階8: NMPでの洗浄4回。
段階9: ジクロロメタンでの洗浄1回。
段階10: 段階6〜8の繰り返し(2.カップリング)。
【0140】
段階11: ニンヒドリンとのカップリング効率試験(カイザー試験;カイザー試験でポジティブな結果が示されたら、段階6〜8は一般式IIの相当する保護化合物で繰り返さなければならない)。
段階12: ネガティブなカイザー試験の後、反応シークエンスはAc2O、NMPおよびピリジン(1:25:25)の溶液でそれぞれ4分間2回キャップする。
段階13: NMPでの洗浄5回。
段階14: 一般式IIの相当する最終保護化合物とのカップリングまでの合成サイクル(段階2〜13)の繰り返し。その後、合成サイクル(段階2〜13)は相当する最終保護アミノ酸とのカップリングまで任意に繰り返す。
段階15: ジクロロメタンでの洗浄4回。
【0141】
段階16: TFAおよびm−クレゾール(95:5)との反応によるBoc基の切り離し。反応時間:2回×各3分。
段階17: ジクロロメタンでの洗浄5回。
段階18: NMPでの洗浄5回。
段階19: NMPとピリジン(2:1)中のHATU 5.7当量およびNMM13当量で、MNPA-OH6当量を、1分間予備活性化。
段階20: 活性化MNPA-OHの固相との反応(時間:30分)。
【0142】
段階21: NMPでの洗浄4回。
段階22: 段階19〜21の繰り返し(2.カップリング)。
段階23: ジクロロメタンでの洗浄5回。
段階24: 乾燥:ジエチルエーテルでの洗浄5回。
【0143】
カルボン酸末端で樹脂に結合する一般式Iの化合物が得られる。
【0144】
本発明の化合物の樹脂からの切り離し:
本発明の化合物を含む樹脂を水性アンモニア溶液(H2O中の NH328〜30重量%)中で60℃にて20時間攪拌する。その後、切り離された樹脂を濾過し、濾液を真空濃縮し、乾燥する。粗生成物は、メタノールおよび水でRP-C18カラムでの調製HPLCによって精製する。本発明の化合物は約50%の収率で無色固体として得られる。本発明の化合物の分子量はMALDI-TOFによって明らかにされる。
【0145】
実施例12: 残基KにDNPA置換基を有する本発明の化合物の一般的な合成についての詳細:
非対称中心を有する一般式IIの相当する化合物および/または非対称中心をもたない一般式IIの相当する化合物および/またはアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体および/または蛍光マーカーを固相ペプチド合成によって順次結合することによって、本発明の化合物を製造する。
【0146】
次の合成手順が適用される:
段階1: ジクロロメタン中での10mgの樹脂(Boc-Gly-PAM-MBHA樹脂、0.54ミリモル/g)の3時間予備膨潤。
段階2: 合成サイクルの開始:ジクロロメタンでの洗浄4回。
段階3: TFAおよびm−クレゾール(95:5)との反応によるBoc基の切り離し。反応時間:2回×各3分。
段階4: ジクロロメタンでの洗浄5回。
段階5: NMPでの洗浄5回。
【0147】
段階6: NMPとピリジン(2:1)中のHATU 3.8当量およびNMM9当量で、一般式IIの相当する保護化合物または相当する保護アミノ酸それぞれ4当量を、1分間予備活性化。
段階7: 一般式IIの活性化保護化合物または相当する保護アミノ酸それぞれの固相との反応;(1.カップリング;時間:30分)。
段階8: NMPでの洗浄4回。
段階9: ジクロロメタンでの洗浄1回。
段階10: 段階6〜8の繰り返し(2.カップリング)。
【0148】
段階11: ニンヒドリンとのカップリング効率試験(カイザー試験;カイザー試験でポジティブな結果が示されたら、段階6〜8は一般式IIの相当する保護化合物で繰り返さなければならない)。
段階12: ネガティブなカイザー試験の後、反応シークエンスはAc2O、NMPおよびピリジン(1:25:25)の溶液でそれぞれ4分間2回キャップする。
段階13: NMPでの洗浄5回。
段階14: 一般式IIの相当する最終保護化合物とのカップリングまでの合成サイクル(段階2〜13)の繰り返し。その後、合成サイクル(段階2〜13)は相当する最終保護アミノ酸とのカップリングまで任意に繰り返す。
段階15: ジクロロメタンでの洗浄4回。
【0149】
段階16: TFAおよびm−クレゾール(95:5)との反応によるBoc基の切り離し。反応時間:2回×各3分。
段階17: ジクロロメタンでの洗浄5回。
段階18: NMPでの洗浄5回。
段階19: NMPとピリジン(2:1)中のHATU 5.7当量およびNMM13当量で、DNPA-OH6当量を1分間予備活性化。
段階20: 活性化DNPA-OHの固相との反応(時間:30分)。
【0150】
段階21: NMPでの洗浄4回。
段階22: 段階19〜21の繰り返し(2.カップリング)。
段階23: ジクロロメタンでの洗浄5回。
段階24: 乾燥:ジエチルエーテルでの洗浄5回。
【0151】
カルボン酸末端で樹脂に結合する一般式Iの化合物が得られる。
【0152】
本発明の化合物の樹脂からの切り離し:
本発明の化合物を含む樹脂を水性アンモニア溶液(H2O中の NH328〜30重量%)中で60℃にて20時間攪拌する。その後、切り離された樹脂を濾過によって分離し、濾液を真空濃縮し、乾燥する。粗生成物は、メタノールおよび水でRP-C18カラムによる調製HPLCによって精製する。本発明の化合物は約50%の収率で無色固体として得られる。本発明の化合物の分子量はMALDI-TOFによって明らかにされる。
【0153】
実施例13: 残基KにリンカーおよびMNPA置換基またはDNPA置換基を有する本発明の化合物の一般的な合成についての詳細:
非対称中心を有する一般式IIの相当する化合物および/または非対称中心をもたない一般式IIの相当する化合物および/またはアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体および/または蛍光マーカーと共に適切なリンカーモノマーを固相ペプチド合成によって順次結合することによって、本発明の化合物を製造する。
【0154】
次の合成手順が適用される:
合成手順:
段階1: ジクロロメタン中での10mgの樹脂(Boc-Gly-PAM-MBHA樹脂、0.54ミリモル/g)の3時間予備膨潤。
段階2: 合成サイクルの開始:ジクロロメタンでの洗浄4回。
段階3: TFAおよびm−クレゾール(95:5)との反応によるBoc基の切り離し。反応時間:2回×各3分。
段階4: ジクロロメタンでの洗浄5回。
段階5: NMPでの洗浄5回。
【0155】
段階6: NMPとピリジン(2:1)中のHATU 3.8当量およびNMM9当量で、一般式IIの相当する保護化合物または相当する保護アミノ酸それぞれ4当量を、1分間予備活性化。
段階7: 一般式IIの相当する保護化合物または相当する保護アミノ酸それぞれの固相との反応;(1.カップリング;時間:30分)。
段階8: NMPでの洗浄4回。
段階9: ジクロロメタンでの洗浄1回。
段階10: 段階6〜8の繰り返し(2.カップリング)。
【0156】
段階11: ニンヒドリンとのカップリング効率試験(カイザー試験;カイザー試験でポジティブな結果が示されたら、段階6〜8は一般式IIの相当する保護化合物で繰り返さなければならない)。
段階12: ネガティブなカイザー試験の後、反応シークエンスはAc2O、NMPおよびピリジン(1:25:25)の溶液でそれぞれ4分間2回キャップする。
段階13: NMPでの洗浄5回。
段階14: リンカーeg1(8−アミノ−2,6−ジオキサオクタン酸)のカップリングまでの合成サイクル(段階2〜13)の繰り返し。
段階15: リンカーのカップリング:ジクロロメタンでの洗浄4回。
【0157】
段階16: TFAおよびm−クレゾール(95:5)との反応によるBoc基の切り離し。反応時間:2回×各3分。
段階17: ジクロロメタンでの洗浄5回。
段階18: NMPでの洗浄5回。
段階19: NMPとピリジン(2:1)中のHATU 3.8当量およびNMM9当量で、4当量のeg1を1分間予備活性化。
段階20: 活性化リンカーの固相との反応(1.カップリング;時間:30分)。
【0158】
段階21: NMPでの洗浄4回。
段階22: ジクロロメタンでの洗浄1回。
段階23: 段階19〜21の繰り返し(2.カップリング)。
段階24: ニンヒドリンとのカップリング効率試験(カイザー試験;カイザー試験でポジティブな結果が示されたら、段階19〜21を繰り返さなければならない)。
段階25: ネガティブなカイザー試験の後、反応シークエンスはAc2O、NMPおよびピリジン(1:25:25)の溶液でそれぞれ4分間2回キャップする。
【0159】
段階26: NMPでの洗浄5回。
段階27: (eg1)3についての合成段階(段階15〜26)の繰り返し2回。
段階28: 一般式IIの相当する最終保護化合物とのカップリングまでの合成サイクル段階(段階2〜13)の繰り返し。その後、合成サイクル段階(段階2〜13)は相当する最終保護アミノ酸とのカップリングまで任意に繰り返す。その後、MNPA-OHのカップリングの場合、実施例11からの段階15〜24、またはDNPA-OHのカップリングの場合、実施例12からの段階15〜24をそれぞれ行う。
【0160】
カルボン酸末端で樹脂に結合するリンカーを有する本発明の化合物が得られる。
【0161】
リンカーを有する本発明の化合物の樹脂からの切り離し:
リンカーを有する本発明の化合物を含む樹脂を水性アンモニア溶液(H2O中の NH328〜30重量%)中で60℃にて20時間攪拌する。その後、切り離された樹脂を濾過し、濾液を真空濃縮し、乾燥する。粗生成物は、メタノールおよび水でRP-C18カラムによる調製HPLCによって精製する。リンカーを有する本発明の化合物は約50%の収率で無色固体として得られる。本発明の化合物の分子量はMALDI-TOFによって明らかにされる。
【0162】
実施例14: 配列のさらに別の例
実施例11または12からの一般的な合成を行うことによって、本発明のさらに別の化合物が製造された:
【0163】
MNPA-ARcGRgTRcGRgCRgARaCRaTR-Gly-NH2
MNPA-Bio-ARcGRgTRcGRgCRgARaCRaTR-Gly-NH2 (Bio=リシン、リシン側鎖のアミノ官能基を介してビオチンで官能化されている)
DNPA-ARcGRgTRcGRgCRgARaCRaTR-Gly-NH2
DNPA-Bio-ARcGRgTRcGRgCRgARaCRaTR-Gly-NH2
DNPA-tGRcCRtARgGRaCRtCRcARgCR-Gly-NH2
DNPA-Bio-tGRcCRtARgGRaCRtCRcARgCR-Gly-NH2
DNPA-tGRcCRtARggactCRcARgCR-Gly-NH2
DNPA-Bio-tGRcCRtARggactCRcARgCR-Gly-NH2
DNPA-cGRaARtARaGRgARgGRcTRtAR-Gly-NH2
DNPA-Bio-cGRaARtARaGRgARgGRcTRtAR-Gly-NH2
DNPA-cGRaARtARaggagGRcTRtAR-Gly-NH2
DNPA-Bio-cGRaARtARaggagGRcTRtAR-Gly-NH2
【0164】
DNPA-gGRcTRcGRaARtARaGRgARgGR-Gly-NH2
DNPA-Bio-gGRcTRcGRaARtARaGRgARgGR-Gly-NH2
DNPA-gGRcTRcGRaataaGRgARgGR-Gly-NH2
DNPA-Bio-gGRcTRcGRaataaGRgARgGR-Gly-NH2
DNPA-aCRaARaTRgCRaTRgGRgCRtGR-Gly-NH2
DNPA-Bio-aCRaARaTRgCRaTRgGRgCRtGR-Gly-NH2
DNPA-aCRaARaTRgcatgGRgCRtGR-Gly-NH2
DNPA-Bio-aCRaARaTRgcatgGRgCRtGR-Gly-NH2
DNPA-cGRcCRtTRaTRcCRgTRaGRcCR-Gly-NH2
DNPA-Bio-cGRcCRtTRaTRcCRgTRaGRcCR-Gly-NH2
DNPA-cGRcCRtTRatccgTRaGRcCR-Gly-NH2
DNPA-Bio-cGRcCRtTRatccgTRaGRcCR-Gly-NH2
DNPA-tgccTRaGRgactcCRaGRc-Gly-NH2
DNPA-Dota-gGRcTRcGRaARtARaGRgARgGR-Gly-NH2 (DOTA=リシン、リシン側鎖のアミノ官能基を介してDOTAで官能化されている)
【0165】
実施例15: 一般式Vを有する本発明の化合物の合成についての詳細:
2mlのDMFおよび2mlのピリジンをスクリューカップに入れる。攪拌しながら、382mg(2.95ミリモル)のDIPEA、その後、291mg(1.48ミリモル)の4−ヒドロキシ−3−ニトロ−フェニル酢酸を加える。その後、2mlのDMFに溶解した562mg(1.48ミリモル)のHATUを加える。反応混合物を5分間予備活性化する。予備活性化された溶液を、10mlのDMFに溶解した2−(10−ヒドロキシデシル)−5,6−ジメトキシ−3−メチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(イデベノン)500ml(1.48ミリモル)の溶液へ滴加し、その後40℃に加熱する。24時間の反応時間の後、溶媒を除去し、残留物を酢酸エチルエステルに溶解する。有機相を2N硫酸水素カリウム溶液で2回および飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、その後、硫酸マグネシウムで乾燥する。粗生成物はクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサンおよび酢酸エチルエステル、1:1、v/v)で精製する。
【0166】
【化19】

【0167】
実施例16: モノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基をそれぞれ有する一般式Iの化合物の選択的局在化
HeLa細胞または143Bペアレント細胞それぞれを、10μMの一般式Iのビオチン標識化合物溶液と共にインキュベートする。24時間後、2μMのMitoTracker溶液を加え、さらに45分後、細胞をエタノールで固定する。その後、フルオレセインおよびアビジンの溶液(5μg/ml)を室温で30分間細胞に作用させる。細胞を洗浄した後、ビオチニル化抗アビジン溶液(5μg/ml)を室温で30分間細胞に作用させる。さらに細胞を洗浄した後、フルオレセインおよびアビジンの溶液(5μg/ml)を室温で30分間細胞に再び作用させる。さらに洗浄した後、細胞核をDAPIカウンター染色によってマークする。その後、細胞内のミトコンドリア並びに細胞核の、一般式Iの化合物の立体分布または分散を共焦点顕微鏡によって調べる。
【0168】
実施例17: 本発明の化合物DNPA-tGRcCRtARggactCRcARgCR-Gly-NH2で処理することによるHeLa細胞内のCOX1およびmtDNA量の減少
HeLa細胞は、異なる濃度(100nM, 250nM, 500nM, 1μM, 2.5μM, 5μM and 10μM)および異なる時間(3、6、9、11および17日)で、ミトコンドリアたんぱく質COX1のmtDNA/mtRNAコーディング位置へ送られるDNPA-tGRcCRtARggactCRcARgCR-Gly-NH2の溶液(「実施品」)と共にインキュベートする。3日以上行われる実験の場合、上澄みは同じ濃度の本発明の化合物DNPA-tGRcCRtARggactCRcARgCR-Gly-NH2を含む新しい媒質に3日毎に入れ代える。
【0169】
COX1レベルの測定は、濃度が本発明の化合物での処理によって影響されないたんぱく質である内部標準としてのミトコンドリア膜内外たんぱく質に対するウエスタンブロッティングによって行う。COX1の減少は未処理HeLa細胞との比較で示す。ここで、未処理HeLa細胞のCOX1濃度は100%とする。
本発明の化合物の濃度10 μMで、HeLa細胞内のCOX1レベルは3日後に67%に、そして9日後に20%に減少する。
次の表は、9日間処理した後のCOX1減少の濃度依存状態を示す:
【0170】
【表1】

【0171】
mtDNA量の測定は、本発明の化合物DNPA-tGRcCRtARggactCRcARgCR-Gly-NH2での処理によって影響されない内部標準としての細胞核のDNAに対する同時PCRによって行う。mtDNAの減少は未処理HeLa細胞との比較で示す。ここで、未処理HeLa細胞のmtDNAの量は100%とする。さらなる比較として、mtDNA/mtRNAに対する相補的配列をもたない本発明の化合物を用いる(「負の対照」)。
【0172】
本発明の化合物DNPA-tGRcCRtARggactCRcARgCR-Gly-NH2 の濃度10 μMでは、3日後ではまだ効果がない。未処理HeLa細胞とまたは負の対照で処理したHeLa細胞とそれぞれ比較して、mtDNAは6日後に81%に、9日後に62%に減少したことが観察される。その後、mtDNAの減少量値は11日後(64%)および17日後(61%)において変化がない。
次の表は、負の対照と比較した、本発明の有効化合物で9日間処理した後のmtDNA減少の濃度依存状態を示す:
【0173】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

(式中、
nは0〜35の整数を表し、
各Eは互いに独立して、水素原子、置換もしくは非置換フェニル残基、置換もしくは非置換複素環式残基、保護基で任意に置換されたヌクレオベース、またはDNAインターカレーターを表し、
各R1は互いに独立して、水素原子または天然由来もしくは非天然由来のアミノ酸の側鎖、または20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基を表し、ここで、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基の少なくとも1つは、1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基で置換されており、
Kは、式−NR23、−N+234、−NR2(CO)R3または−NR2(CS)R3の基を表し、ここで、R2、R3およびR4は互いに独立して、水素原子、アルキル、アルカリール、アルケニルもしくはアルキニル残基、アミノ保護基、リポーターリガンド、蛍光マーカー、インターカレーター、キレート化剤、アミノ酸、ペプチド、たんぱく質、炭水化物、脂質、ステロイド、脂肪酸、オリゴヌクレオチド、量子ドット、FRET消光物質(蛍光共鳴エネルギー伝達消光物質)、または水に可溶性もしくは不溶性のポリマーを表し、上記残基のそれぞれは任意に置換されていてもよく、
Lは、式−NR56、−NR5(CO)R6、−NR5(CS)R6、−OR7またはSR7の基を表し、ここで、R5およびR6は互いに独立して、水素原子、アルキル、アルカリール、アルケニルもしくはアルキニル残基、リポーターリガンド、蛍光マーカー、インターカレーター、キレート化剤、アミノ酸、アミノ酸アミド、ペプチド、ペプチドアミド、たんぱく質、炭水化物、脂質、ステロイド、脂肪酸、オリゴヌクレオチド、量子ドット、FRET消光物質(蛍光共鳴エネルギー伝達消光物質)、または水に可溶性もしくは不溶性のポリマーを表し、R7は、水素原子、アルキル残基、リポーターリガンド、蛍光マーカー、インターカレーター、キレート化剤、アミノ酸、アミノ酸アミド、ペプチド、ペプチドアミド、たんぱく質、炭水化物、脂質、ステロイド、脂肪酸、オリゴヌクレオチド、量子ドット、FRET消光物質、または水に可溶性もしくは不溶性のポリマーを表し、上記残基のそれぞれは任意に置換されていてもよく、
残基K、LまたはR1は互いに独立して、少なくとも1つのモノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基で置換されている)。
【請求項2】
式Iの化合物が少なくとも1つの非対称中心を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
少なくとも1つの残基R1が水素原子を表さず、式Iの化合物が少なくとも1つの非対称中心を示す、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
一つ置きの残基R1が互いに独立して、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基を表し、残りの残基R1が水素原子を表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
二つ置きの残基R1が互いに独立して、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基を表し、残りの残基R1が水素原子を表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
2、3またはそれ以上の隣接残基R1が互いに独立して、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基を表し、残りの残基R1が水素原子を表す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
各R1が互いに独立して、20までの炭素原子を有する任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、複素環式もしくは脂環式残基を表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
1つ以上の残基R1が互いに独立して、ホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基を表す、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
全ての非対称中心が同じ配置を示す、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
全ての非対称中心が(S)配置を示す、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
全ての非対称中心が(R)配置を示す、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
各R1が互いに独立して、1つ以上のホスホン酸エステル官能基またはホスホン酸官能基を表し、ここで、ホスホン酸エステル官能基が式−P(=O)(OV)2または−P(=O)(OV)(OH)を有し、各Vが互いに独立して、20までの炭素原子を有する置換されていないアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール、もしくは脂環式残基を表す、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
各Vが互いに独立して、メチル、エチル、シクロヘキシルまたはベンジル残基を表す、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の少なくとも2つの化合物を含んでなり、該2つの化合物が互いにリンカーを経て接続されている化合物。
【請求項15】
リンカーがアルキル鎖、ペプチド、オリゴヌクレオチド、または8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸の少なくとも3つの単位からなるオリゴマーを表す、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物を含有する組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の担体、溶媒または他の薬学的補助薬と任意に組み合わせた、請求項1〜16のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物または組成物を含有する医薬組成物。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物もしくは組成物または請求項17に記載の医薬組成物の、ミトコンドリア疾患の治療または予防用薬剤製造への使用。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物もしくは組成物の、ミトコンドリア特性またはミトコンドリア疾患の診断への使用。
【請求項20】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物もしくは組成物または請求項17に記載の医薬組成物の、ミトコンドリア疾患治療または予防への使用。
【請求項21】
ミトコンドリア疾患が遺伝性疾患である、請求項18〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
癌の治療または予防への請求項18〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
糖尿病の治療または予防への請求項18〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
パーキンソン病の治療または予防への請求項18〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
加齢現象の治療または予防への請求項18〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
動脈硬化症の治療または予防への請求項18〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物もしくは組成物または請求項17に記載の医薬組成物の、細胞内または生体内におけるmtDNAの転写防止用薬剤製造への使用。
【請求項28】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物もしくは組成物または請求項17に記載の医薬組成物の、細胞内または生体内におけるmtDNAの翻訳防止用薬剤製造への使用。
【請求項29】
式Vの化合物:
Z-M-P (V)
(式中、
Zは酸化または還元可能な官能基を表し、
Mはリンカー基を表し、そして
Pはモノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基を表す)。
【請求項30】
化合物が少なくとも1つのモノヒドロキシモノニトロフェニル残基またはモノヒドロキシジニトロフェニル残基で置換されていることを特徴とする、化合物をミトコンドリアの表面および内部の両方に選択的に局在化させる方法。
【請求項31】
化合物が酸化または還元可能な官能基を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
化合物が抗酸化薬を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
化合物が請求項29に記載の式Vの化合物である、請求項30、31または32に記載の方法。
【請求項34】
請求項29に記載の化合物の少なくとも1つを含む組成物。
【請求項35】
少なくとも1種の担体、溶媒または他の薬学的補助薬と任意に組み合わせた、請求項29に記載の化合物の少なくとも1つまたは請求項34に記載の組成物を含有する医薬組成物。
【請求項36】
請求項29に記載の化合物、請求項34に記載の組成物または請求項35に記載の医薬組成物の、ミトコンドリア疾患の治療または予防用薬剤製造への使用。
【請求項37】
請求項29に記載の化合物、請求項34に記載の組成物または請求項35に記載の医薬組成物の、ミトコンドリア特性またはミトコンドリア疾患の診断への使用。
【請求項38】
請求項29に記載の化合物、請求項34に記載の組成物または請求項35に記載の医薬組成物の、ミトコンドリア疾患の治療または予防への使用。
【請求項39】
ミトコンドリア疾患が遺伝性疾患である、請求項36〜38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
癌の治療または予防への請求項36〜39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
糖尿病の治療または予防への請求項36〜39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
パーキンソン病の治療または予防への請求項36〜39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
加齢現象の治療または予防への請求項36〜39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項44】
動脈硬化症の治療または予防への請求項36〜39のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−507607(P2010−507607A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533716(P2009−533716)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009187
【国際公開番号】WO2008/049583
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509115317)ウギヘム ゲゼルシャフト フュア オルガニシェ ヘミー エムベーハー (1)
【Fターム(参考)】