説明

ミョウバンアジュバント免疫活性剤の安定化

アジュバント凝固、及び付随するワクチン有効性増大の消失を緩和又は回避する、アジュバント免疫活性剤、特にワクチンを配合し、送達するための組成物及び方法。アジュバント免疫活性剤は氷結、乾燥、凍結乾燥、又は凍結乾燥に処することができ、還元したとき高レベルの有効性を保持している。本発明はさらに、経皮送達器具又は微小突起又はこれらのアレイ上に析出させることができる、安定なアジュバント免疫活性剤を配合し、送達するための組成物及び方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、免疫活性剤組成物、並びにこのような組成物を配合及び送達する方法に関する。より詳細には本発明は、ミョウバンアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野でよく知られているように、免疫活性剤、特に抗原物質又はワクチンは全ウイルス(生、弱毒化ウイルス)及び細菌、多糖複合体、タンパク質又は核酸を含み得る。他の抗原物質は合成、組換え、又は精製サブユニット抗原から構成される。
【0003】
サブユニット(又はサブビリオン)ワクチンは防御免疫に必要とされる抗原のみを含むように設計されており、完全不活化又は弱毒化生ワクチンより安全であると考えられている。しかしながら、サブユニットワクチン単独では弱い免疫原性を示す可能性がある。このようなワクチンの考えられる弱い免疫原性に対する1つの解決策は、特異的免疫応答を増大させる、アジュバントを含むサブユニットワクチンを配合することである。
【0004】
免疫活性剤は通常は経口的或いは注射によって投与され、さらに近年は経皮送達によって投与されている。本明細書で使用する用語「経皮」は、外科手術用ナイフによる切断又は皮下注射針による皮膚の貫通などの皮膚の実質的な切断又は浸透を伴わない、皮膚から局所組織又は全身循環系への活性剤(例えば薬剤のような治療剤、又はワクチンなどの免疫活性剤)の送達を指す一般用語である。経皮剤送達には、受動拡散による送達、並びに電気(例えばイオン導入法)及び超音波(例えば音波泳動法)などの外部エネルギー源に基づく送達がある。
【0005】
小さな皮膚貫通要素を利用して経皮剤送達を向上させる、多数の経皮剤送達系及び装置が開発されてきている。このような系及び装置の例は、いずれもその全容が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,879,326号、第3,814,097号、第5,250,023号、第3,964,482号、再発行第25,637号及びPCT公報WO96/37155、WO96/37256、WO96/17648、WO97/03718、WO98/11937、WO98/00193、WO97/48440、WO97/48441、WO97/48442、WO98/00193、WO99/64580、WO98/28037、WO98/29298、及びWO98/29365中に開示されている。
【0006】
開示された系及び装置は、様々な形状及び大きさの貫通要素を利用して皮膚の最外殻層(即ち角質層)を貫通し、これによって経皮剤の流速を向上させる。貫通要素は一般に、パッド又はシートなどの薄い平面状の部材から垂直に伸びている。貫通要素は通常は非常に小さく、幾つかの貫通要素はわずか約25〜400ミクロンの微小突起長さ、及びわずか約5〜50ミクロンの微小突起厚さを有する。
【0007】
幾つかの経皮剤送達系は、高濃度の活性剤を含む薬剤貯蔵部を含むことができる。貯蔵部は皮膚との接触に適合しており、これによって活性剤を患者の皮膚を介して身体組織内又は血流内に拡散させることができる。
【0008】
経皮剤送達系の近年の改良は、送達すべき活性剤が物理的貯蔵部に含まれる代わりに微小突起にコーティングされる系、方法及び配合物を含む。これによって別の物理的貯蔵部の必要性、及び貯蔵部に特別に合わせた活性剤の配合物又は組成物を開発する必要性が排除される。その開示が参照として本明細書に完全に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0062813号(Cormier他)、及び第2004/0096455号(Macy他)は、微小突起上に配置される塗膜に1種又は複数の活性剤を含めることによって、活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法を開示している。
【0009】
前述の出願中に示されたように、活性剤配合物及び微小突起上に配合物をコーティングする方法は、塗膜付き微小突起を介した経皮送達における重要因子である。実際、不安定であるか或いは充分な貯蔵寿命を有していない活性剤配合物中のワクチンを利用する場合、そのワクチンは多くの場合、所望の(或いは必要とされる)有効性を有していない可能性がある。
【0010】
したがって、免疫活性剤、例えばワクチンの安定化は、特に活性剤の送達形式が複数の塗膜付き微小突起を有する経皮送達器具を介するときは、活性剤の有効性を確実にする際の重要なステップである。
【0011】
当技術分野で知られているように、ポリペプチド系ワクチン、サブユニットワクチン、並びに不活化ウイルス及び細菌ワクチンは、一般に主に体液性応答を誘発する。ワクチン(例えば生ウイルス、ポリオ及び天然痘などの弱毒化ウイルスのワクチン)の複製は、最も有効な体液性及び細胞性免疫応答をもたらす。同様の広い免疫応答範囲をDNAワクチンによって得ることができる。
【0012】
免疫活性剤に対する特異的な免疫応答を増大させるために、アルミニウム塩などのアジュバントを通常は加える。アジュバントは多様な作用機構を有し、通常は投与の経路、及び特定の免疫活性剤に望ましい免疫応答の型(例えば抗体、細胞仲介、粘膜型など)に基づいて選択される。
【0013】
ミョウバンアジュバント免疫活性剤、特にワクチンの安定性は、しかしながら問題のあるものとなっている。ミョウバンアジュバント免疫活性剤、特にワクチンは、凍結及び乾燥によって有効性を失う傾向がある。氷結−解凍によるアルミニウム塩ゲルの安定性の問題は、(凍結によって形成される)氷結晶はミョウバン粒子に分子間斥力を打ち消させ、それによって強い粒子間引力を生み出すという事実によるものであると考えられる。これは一般に、ミョウバンが濃縮される任意の機構又は系に当てはまると考えられる。したがって、分子間斥力が打ち消されるようにミョウバン粒子が非常に隣接して1つになるミョウバンの懸濁液中では、ミョウバン粒子は凝固又は凝集する傾向がある。
【0014】
ミョウバンアジュバント免疫活性剤配合物、特にワクチンの氷結又は乾燥、特に凍結乾燥(freeze−drying)又は凍結乾燥(lyophillization)の結果、免疫原性の消失をもたらすことが多い、何故ならミョウバン粒子の表面上に吸着した抗原分子は、凝固した配合物基質内から放出させることができないからである。
【0015】
したがって、安定なミョウバンアジュバント免疫活性剤、特にワクチンの組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法であって、大規模なミョウバンの凝固を防止し、乾燥時にミョウバンアジュバント活性剤配合物の有効性及び免疫原性を保つ、該組成物及び該方法を提供することが望ましいと思われる。
【0016】
ミョウバンアジュバント免疫活性剤の送達器具と、安定なミョウバンアジュバント免疫活性剤を含む配合物が、被験体の皮膚を介した該活性剤の送達に適合した複数の皮膚貫通性微小突起を有する経皮送達器具にコーティングされ、ミョウバンアジュバント免疫活性剤の組成物及びそれを配合する方法が、ミョウバンアジュバント免疫活性剤の効力及び免疫原性を保つ方法とを提供することは、さらに望ましいと思われる。
【0017】
ミョウバン粒子の凝固を減らすための「体積最小化」理論がMaa他、J.Pharm.Sci.、92:319〜332(2003)中で提案されている。この参照文献は、氷結及び乾燥によるミョウバン凝固の機構、及びそのワクチン有効性の消失との関係を記載している。この参照文献は様々なワクチンの脱水プロセス、及び還元時のワクチン有効性に対するそれらの影響を比較している。しかしながら、この参照文献は、このような氷結及び乾燥によるミョウバンアジュバントワクチンの有効性の消失を最少化又は緩和することを対象としたアジュバント配合物、又はそのための方法は教示、示唆又は開示していない。
【0018】
他の参照文献は、アジュバントワクチンを安定化させるための試みにおいて、氷結−乾燥プロセス自体を対象とした方法を開示している。例えば、米国特許出願公開No.2003/0202978は、粉末状の医薬配合物の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法を開示している。しかしながら示された出願公開も、如何なる他の知られている参照文献も、常温での薄膜塗膜及び乾燥による、ミョウバンアジュバントワクチンの配合物、又はそれを安定化させるための技法は開示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって本発明の目的は、乾燥させ容易に還元し免疫学的に(或いは生物学的に)有効な量投与することができる安定なアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、安定なミョウバンアジュバント免疫活性剤配合物に特異的な物理特性を与えることである。
【0021】
本発明の他の目的は、安定な乾燥状態のミョウバンアジュバントワクチン配合物であって、配合物基質のミョウバン介在型凝固によって引き起こされる大幅な免疫原性の消失、及びその結果生じる利用可能な抗原分子の減少を示さない配合物の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、安定なミョウバンアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法であって、免疫活性剤の有効性を最大化又は最適化する該組成物、及びそのような組成物を配合する該方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらに他の目的は、薄膜として表面(又は送達器具)上に析出するのに適した安定なアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法であって、免疫活性剤の有効性を最大化又は最適化する組成物、並びにそのような組成物を配合し、送達する方法を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、送達器具上の薄膜塗膜として、或いは薄膜多層塗膜系として容易に利用することができ、薄膜塗膜又は塗膜系が免疫活性剤の有効性を最大又は最適化する、安定なアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらに他の目的は、免疫活性剤を経皮送達器具の複数の微小突起に析出される薄膜塗膜として、或いは薄膜多層塗膜系として容易に利用することができ、薄膜塗膜又は塗膜系が免疫活性剤の有効性を最大又は最適化する、安定なアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び経皮送達する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前述の目的及び以下で参照し明らかとなる目的に従い、本発明の一実施形態では、ミョウバン介在型凝固、及び付随するワクチン有効性増大の消失を緩和又は回避する、安定なミョウバンアジュバント免疫活性剤、特にワクチンの組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法を提供する。本発明は、氷結、乾燥、凍結乾燥、又は凍結乾燥に処すことができ、還元したとき高レベルの有効性を保持している、安定なアジュバント免疫活性剤、特にワクチンの組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法も提供する。
【0027】
本発明はさらに、(送達器具を含めた)表面に容易に析出させその上において常温で乾燥させることができる、安定なアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法を提供する。本発明はさらに、薄膜単層コーティングとして、或いは薄膜多層塗膜として表面上に析出させることができる、安定なアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法を提供する。このようなコーティングは微小突起送達器具を使用する経皮送達に特に適しており、免疫活性剤は生体適合性塗膜中に含まれ、それは少なくとも1個の角質層貫通性微小突起、より好ましくは複数の角質層貫通性微小突起にコーティングされる。
【0028】
本発明の安定なアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法は、5〜100ミクロンの範囲、より好ましくは10〜50ミクロンの範囲の全厚を有する薄膜多層塗膜の生成を可能にする。本発明によれば、ミョウバン含有薄膜層は、ミョウバン粒子が大規模な配合物基質中に凝固するのを妨げる。
【0029】
一実施形態では、送達表面に配置することができる、且つ/或いは有効性の大幅な消失無しで乾燥及び復元することができる、ミョウバンアジュバント免疫活性剤配合物を形成する方法は、以下のステップ:(i)ミョウバン濃度が3%未満である、適切な溶媒に懸濁させたミョウバンの懸濁液を調製するステップ;(ii)無定形の炭水化物糖をミョウバン懸濁液に加えるステップ;(iii)場合によっては、セルロース又はデンプンなどの増粘剤を加えて、好ましくは30センチポイズ(cP)未満の溶液粘度を得るステップ;(iv)膜形成剤、例えばポリアカルボン酸を加える他のステップ;及び(v)免疫活性剤をミョウバン懸濁液に加えて、ミョウバンアジュバント免疫活性剤溶液を形成するステップを含む。免疫活性剤は従来の濃縮及び緩衝処理によって調製することが好ましい。
【0030】
一実施形態では、ミョウバンアジュバント免疫活性剤の生成溶液を噴霧乾燥、空気乾燥、噴霧凍結乾燥、凍結乾燥又は凍結乾燥させて、保存又は分配用に溶液を安定化させる。復元すると、免疫活性剤の有効性及び免疫応答は最大になる。
【0031】
他の実施形態では、ミョウバンアジュバント免疫活性剤の生成溶液が、微小突起送達器具又は少なくとも1個の角質層貫通性微小突起、より好ましくは複数の角質層貫通性微小突起、又はこれらのアレイのコーティングに適合した活性剤配合物中に含まれる。各コーティングステップ間に乾燥ステップを伴う一連のコーティングステップでコーティング法を実施することが好ましい。本発明の所望の薄膜の形成を最適化するために、それぞれの乾燥サイクル間の乾燥時間は、それぞれの層の乾燥を確実にするほど充分長いことが好ましい。
【0032】
一実施形態では、常温、好ましくは約15〜50℃の範囲、より好ましくは約20〜30℃の範囲で乾燥させることによって、送達器具又は微小突起で活性剤配合物を安定化させる。しかしながら、様々な温度及び湿度レベルを利用して、コーティング溶液を乾燥させることができる。
【0033】
各コーティングステップは、約0.5〜5ミクロンの範囲、より好ましくは約1〜3ミクロンの範囲の層又は塗膜厚をもたらすことが好ましい。凝集塗膜厚は約3ミクロンを超えないことが好ましく、より好ましくは約0.5〜5ミクロンの範囲、さらにより好ましくは約1〜3ミクロンの範囲である。
【0034】
真空チャンバー型乾燥装置を利用する幾つかの実施形態では、乾燥時間は0〜30%の相対湿度及び常圧未満の条件下において、好ましくは約0.5〜360分の範囲、より好ましくは1〜100分の範囲である。
【0035】
本発明の幾つかの実施形態では、免疫活性剤は、ウイルス及び細菌、タンパク質系ワクチン、多糖系ワクチン、及び核酸系ワクチンからなる群から選択される抗原物質又はワクチンを含む。
【0036】
適切な免疫活性剤には、したがって非制限的に、タンパク質、多糖複合体、オリゴ糖、及びリポタンパク質の形の抗原がある。これらのサブユニットワクチンには、百日咳菌(組換え体PTワクチン−無細胞性)、破傷風菌(精製、組換え体)、コリネバクテリウム属ジフテリア菌(精製、組換え体)、サイトメガロウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A群連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風トキソイドとの糖複合体A群多糖、毒性サブユニット担体と連結したMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価型−特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(組換え体Pre−bS1、Pre−S2、S、組換え体コアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(組換え体−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(キャプシドタンパク質、TA−GN組換えタンパク質L2及びE7[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501組換えVLPL1、4価組換えBLPL1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラニューモフィラ(精製細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(破傷風トキソイドとの糖複合体)、緑膿菌(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎球菌(髄膜炎菌BOMPと結合した糖複合体[1、4、5、6B、9N、14、18C、19V、23F]、CRM197と結合した糖複合体[4、6B、9V、14、18C、19F、23F]、CRM1970と結合した糖複合体[1、4、5、6B、9V、14、18C、19F、23F]、梅毒トレポネーマ(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)、及びビブリオコレラ(複合体リポ多糖)ワクチンがある。
【0037】
全ウイルス又は細菌には非制限的に、弱化又は不活化ウイルス、例えばサイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、及び水痘帯状疱疹など、弱化又は不活化細菌、例えば百日咳菌、破傷風菌、コリネバクテリウム属ジフテリア菌、A群連鎖球菌、レジオネラニューモフィラ、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎球菌、梅毒トレポネーマ、及びビブリオコレラ、並びにこれらの混合物などがある。
【0038】
抗原物質を含む幾つかの市販のワクチンは、本発明に関しても有用性がある。示すワクチンには非制限的に、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、はしかワクチン、おたふくかぜワクチン、水疱瘡ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチン、及びジフテリアワクチンがある。
【0039】
本発明の方法に従い送達することも可能である核酸を含むワクチンには、非制限的に、一本鎖及び二本鎖核酸、例えばスーパーコイルプラスミドDNA、線状プラスミドDNAなど、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母菌人工染色体(YAC)、哺乳動物人工染色体、及びRNA分子、例えばmRNAなどのワクチンがある。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、免疫活性剤はインフルエンザワクチンを含む。このような実施形態では、免疫活性剤はサブビリオンインフルエンザワクチンを含むことがより好ましい。
【0041】
本発明の他の実施形態によれば、免疫活性剤を経皮送達するための装置は、角質層を介した根底の表皮層、又は表皮及び真皮層中への貫通に適合した複数の微小突起を含む微小突起部材を含み、この微小突起部材は、安定なミョウバンアジュバント免疫活性剤を含むその上に配置された生体適合性塗膜を有する。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、安定なミョウバンアジュバント免疫活性剤を送達する方法は、以下のステップ:(i)複数の微小突起を有する微小突起部材を提供するステップ、(ii)多量の免疫活性剤を提供するステップ、(iii)約3%未満のミョウバンを溶媒に懸濁させた懸濁液を調製するステップ、(iv)少なくとも1つの無定形の炭水化物糖をミョウバン懸濁液に加えるステップ、(v)場合によっては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はヒドロキシメチルスターチなどの増粘剤を加えるステップ、(vi)膜形成剤を加えるステップ、(vii)ミョウバン懸濁液及び免疫活性剤を含む生体適合性コーティング配合物を形成するステップ、(viii)生体適合性コーティング配合物で微小突起部材をコーティングして、生体適合性塗膜を形成するステップ、(ix)乾燥させ、薄膜塗膜を確立することによって生体適合性塗膜を安定化させるステップ、及び(x)塗膜付き微小突起部材を被験体の皮膚に施すステップを含む。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態によれば、ステップ(i)〜(vii)に次いで(a)乾燥、凍結乾燥又は凍結乾燥によって生成した生体適合性塗膜配合物を安定化させて、安定状態の生体適合性塗膜配合物を形成するステップ、(b)溶媒(例えば水)で生体適合性塗膜配合物を還元して、(免疫活性剤を含む)生体適合性塗膜配合物を形成するステップ、(c)還元状態の生体適合性塗膜配合物で微小突起部材をコーティングして、生体適合性塗膜を形成するステップ、(d)乾燥させ、薄膜塗膜を確立することによって生体適合性塗膜を安定化させるステップ、及び最後に(e)塗膜付き微小突起部材を被験体の皮膚に施すステップが続く。塗膜は薄膜として施して、それぞれ免疫活性剤及びミョウバンの免疫原性及びアジュバント性を保つことが好ましい。
【0044】
他の特徴及び利点は、添付の図面中に示すように、図中の同じ部分又は要素を一般的に参照する参照した特徴と同様に、本発明の好ましい実施形態の以下の記載及びさらに特定の記載から明らかになると思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特に例示した物質、配合物、方法又は構造などに限られず、当然ながら変わる可能性があることを理解されたい。したがって、本明細書に記載したものと類似又は均等である幾つかの物質及び方法は、本発明を実施する際に使用することができ、好ましい物質及び方法を本明細書に記載する。
【0046】
本明細書で使用する用語は単に本発明の特定の実施形態を記載することを目的とするものであり、制限することは意図しないことも理解されたい。
【0047】
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0048】
さらに、本明細書に引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、前のものであれ後のものであれ、その全容は参照として本明細書に組み込まれる。
【0049】
最後に、本明細書及び添付の特許請求の範囲中で使用するように、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が別途明示しない限り複数形を含む。したがって、例えば「1種の免疫活性剤」という参照は2種以上のこのような物質を含み;「1種の微小突起」という参照は2個以上のこのような微小突起などを含む。
【0050】
定義
本明細書で使用する用語「経皮」は、局所又は全身療法のための、皮膚中への物質の送達及び/又は皮膚を介した物質の送達を意味する。
【0051】
本明細書で使用する用語「経皮流動」は、経皮送達の割合を意味する。
【0052】
配合物、又はコーティングを参照するために本明細書で使用する用語「安定状態」は、配合物が過度の化学的又は物理的分解、破壊、又は不活性化を受けていないことを意味する。コーティングを参照するために本明細書で使用する用語「安定状態」は、機械的に安定状態であること、即ちコーティングが析出されている表面からの過度の排除、又は損失を受けていないことも意味する。
【0053】
本明細書で使用する用語「同時送達」は、物質を送達する前、物質の経皮流動の前及び最中、物質の経皮流動の最中、物質の経皮流動の最中及び後、及び/又は物質の経皮流動の後に、少なくとも1つの補助物質を経皮投与することを意味する。さらに、2種以上の免疫活性剤を本発明の生体適合性塗膜中に配合して、異なる免疫活性剤の同時送達をもたらすことができる。
【0054】
本明細書で使用する用語「免疫活性剤」は、免疫学的に有効な量投与すると有益な免疫応答を誘発することができる、抗原物質を含む物体又は混合物の組成物、及び/又は任意及び全ての供給源由来の「ワクチン」を指す。免疫活性剤の具体例はインフルエンザワクチンである。
【0055】
免疫活性剤の他の例には、非制限的に、ウイルス及び細菌、タンパク質系ワクチン、多糖系ワクチン、及び核酸系ワクチンがある。
【0056】
本明細書で使用する用語「生物学的に有効な量」又は「生物学的に有効な割合」は、有益な結果をもたらすことが多い、望ましい免疫を刺激又は開始するのに必要とされる免疫活性剤の量又は割合を指す。本発明のコーティングに利用する免疫活性剤の量は、望ましい免疫結果を得るのに必要な量の免疫活性剤を送達するのに必要な量であると思われる。実際これは、送達する個々の免疫活性剤、送達部位、並びに皮膚組織中への免疫活性剤の送達に関する分解及び放出動態に応じて広く変わると思われる。
【0057】
本明細書で使用する用語「コーティング配合物」は、液体又は固体状の自由に流動する組成物又は混合物を意味しかつこれを含むことを意味し、これを利用して複数の微小突起及び/又はそれらのアレイを含めた送達表面をコーティングする。
【0058】
本明細書で使用する用語「生体適合性塗膜」は、充分な接着性を有し免疫活性剤との有害な相互作用が無いか或いは最小限である「コーティング配合物」を意味しこれを含む。
【0059】
本明細書で使用する用語「微小突起」は、生きている動物、特に哺乳動物、及びより詳細にはヒトの皮膚の角質層を介した根底の表皮層、又は表皮及び真皮層中の貫通又は切断に適合した貫通要素を指す。
【0060】
本明細書で使用する用語「微小突起部材」は、角質層に貫通させるためのアレイ中に配置された複数の微小突起を含む微小突起アレイを一般的に意味する。薄いシートから複数の微小突起をエッチング又は打ち抜くことによって、及びシートの平面から微小突起を折る又は曲げて輪郭を形成することによって、微小突起部材を形成することができる。その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,050,988号中に開示されているように、それぞれのストリップ片の端に沿って微小突起を有する1つ又は複数のストリップ片の形成などの、他の知られている方法で微小突起部材を形成することもできる。
【0061】
本発明と共に利用することができる微小突起部材には、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,083,196号、第6,050,988号及び第6,091,975号、及び米国特許公開第2002/0016562号中に開示された部材があるが、これらだけには限られない。当業者によって理解されるように、微小突起アレイを利用する場合、送達する免疫活性剤の用量は、微小突起アレイ(又はパッチ)の大きさ、密度などを変えることによって変更又は操作することもできる。
【0062】
発明の詳細な説明
当業者に知られているように、免疫活性剤、特にワクチンに対する望ましい生理的応答は、免疫応答の刺激である。免疫応答、特に抗体の生成は、物質に対する特異的免疫応答を増大させるアジュバントなどの補助成分を含むワクチンを配合することによって増大する。現代の免疫活性剤、特にワクチン、及びより詳細にはサブユニット型、又はサブビリオンワクチンは、通常はこのようなアジュバントを用いて配合して、物質の有効性及び効能を向上させる。
【0063】
当技術分野で知られているように、ワクチン配合物中のアジュバントの使用に関する利点には、(1)ワクチンに適した免疫応答を誘導及び最適化する能力;(2)ワクチンの粘膜送達を容易にする能力;(3)細胞仲介の免疫応答を助長する能力;(4)弱性抗原の免疫原性を増大させる能力;(5)防御免疫を与えるのに必要とされる抗原の量及び/又は投与の頻度を低下させる能力;及び(6)弱性の免疫応答を有する個体におけるワクチンの有効性を向上させる能力がある。
【0064】
アジュバントの作用機構には通常は、(1)ワクチン抗原の生物学的又は免疫学的貯蔵寿命を増大させること;(2)抗原提示細胞への抗原送達を改善すること;(3)抗原提示細胞による抗原処理を改善すること;及び(4)免疫調節サイトカインの生成を誘導することがある。
【0065】
鉱物アジュバントは、1つの広く使用されているクラスのアジュバントである。このようなアジュバントには、例えばセリウム、亜鉛、鉄、アルミニウム及びカルシウムなどの金属の塩がある。アルミニウム塩、特にリン酸アルミニウム塩及び水酸化アルミニウム塩が広く利用されている。実際このような塩は、B型肝炎ワクチン(ミョウバン−HBsAg)及びジフテリア及び破傷風トキソイドワクチン(ミョウバン−DT)を含めた50%を超える市販のワクチン製品で利用されている。本明細書で使用するように、文脈から他に明らかでない限り、用語「ミョウバン」を使用して水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムの両方を包含する。
【0066】
図1を参照すると、従来技術の配合及び方法によって調製されたミョウバン基質10を示す。図1が表す配合物はAl(OH)3(2.9%)+トレハロース(4.1%)、AlPO3(3.0%)+デキストラン(1.2%)、又はAlPO3(5.0%)+マンニトール(2.2%)を含み、空気乾燥又は凍結乾燥によって調製された(Maa他、Pharm.Res.、Vol.20、No.7、2003年7月、pp.969〜977を参照)。
【0067】
図1中に示す黒色領域12は、大規模なミョウバン介在の凝固を表す。このような大規模な凝固は、ミョウバン表面に吸着し凝固中に捕捉され、したがって望ましい免疫応答を誘発することができない多量の抗原をもたらす。
【0068】
前に示したように、本発明は、ミョウバン介在型凝固、及び付随する抗原物質の有効性増大の消失を緩和又は回避する、安定なミョウバンアジュバント免疫活性剤、特にワクチンの組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法を含む。本発明は、氷結、乾燥、凍結乾燥、又は凍結乾燥に施すことができ、還元したとき高レベルの有効性を保持している、安定なアジュバント免疫活性剤、特にワクチンの組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法も提供する。本発明の好ましい実施形態では、免疫活性剤はワクチンを含み、アジュバントは水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、及びこれらの混合物を含む。
【0069】
図2を参照すると、乾燥及び還元後の、本発明のミョウバンアジュバント免疫活性剤配合物を表す基質14を示す。図2が表す配合物は実施例1中にさらに記載し、噴霧乾燥及び噴霧凍結乾燥によって調製した。
【0070】
図1中に示す基質と比較すると、ミョウバン介在型凝固を表す黒色領域16は、大幅に狭い領域を占めることを見ることができる。結果として、より高い割合の抗原が望ましい免疫応答を誘導するために利用可能である。
【0071】
一実施形態では、本発明はしたがって、表面上(又は送達器具)に容易に析出させその上において常温で乾燥させることができる、安定なアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法を含む。本発明はさらに、薄膜塗膜として表面上(又は送達器具)に析出させることができる、安定なアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法を提供する。
【0072】
薄膜塗膜は単層を含むことができるか、或いは多層であってよい。単層及び多層薄膜塗膜は微小突起系送達器具を使用する経皮送達に特に適している。このような器具によって、物質、例えばワクチンを、少なくとも1つ、より好ましくは複数の角質層貫通性微小突起にコーティングされる生体適合性塗膜中に含ませる。
【0073】
本発明の一実施形態では、安定なアジュバント免疫活性剤の組成物、並びにそれらを配合及び送達する方法は、5〜100ミクロンの範囲、より好ましくは10〜50ミクロンの範囲の全厚を有する薄膜多層塗膜の生成を可能にする。本発明によれば、ミョウバン含有薄膜層は、ミョウバン粒子が大規模な配合物基質中に凝固するのを妨げる。間質液による皮膚内での溶解によって、ワクチン抗原は容易に放出され、したがって投与され得る。抗原物質の免疫原性及びミョウバンのアジュバント性もコーティング配合物中で保たれ、それによって生じる抗原物質の有効性は向上する。
【0074】
図4を参照すると、一実施形態では、送達表面に配置することができる、且つ/或いは有効性の大幅な消失無しで乾燥及び復元することができる、ミョウバンアジュバント免疫活性剤を形成する方法は、以下のステップ:(i)ミョウバン濃度が3%未満である、適切な溶媒に懸濁させたミョウバンの懸濁液を調製するステップ(20);(ii)無定形の炭水化物糖(即ち、バルク剤及びタンパク質安定剤)をミョウバン懸濁液に加えるステップ(21);(iii)場合によっては、セルロース又はデンプンなどの増粘剤を加えて溶液粘度を得るステップ(22);(iv)膜形成剤、例えばポリアカルボン酸を加えるステップ(23);及び(v)多量の免疫活性剤をミョウバン懸濁液に加えるステップ(24)を含む。本発明によれば、当技術分野で知られているように、濃縮及び緩衝処理によって免疫活性剤を調製することができる。
【0075】
一実施形態では、ミョウバンアジュバント免疫活性剤の生成溶液を噴霧乾燥、空気乾燥、噴霧凍結乾燥、凍結乾燥又は凍結乾燥させて、それを保存又は分配用に溶液を安定化させる(26)。復元すると、免疫活性剤の有効性及び免疫応答は最大になる。
【0076】
他の実施形態では、ミョウバンアジュバント免疫活性剤の生成溶液を、送達器具、1個の角質層貫通性微小突起、又は複数の角質層貫通性微小突起、又はこれらのアレイ上のコーティングとして利用することができる生体適合性塗膜配合物中に含ませる(27)。各コーティングステップ間で乾燥ステップを伴う一連のコーティングステップでコーティング法を実施することが好ましい。本発明の所望の薄膜の形成を最適化するために、それぞれの乾燥サイクル間の乾燥時間は、それぞれの層の乾燥を確実にして、新しいコーティングと以前に非乾燥状態であったコーティングの混合を回避するほど充分長いことが好ましい。
【0077】
本発明の、ミョウバンアジュバント配合物の望ましい薄膜塗膜及び方法によって得られる有益な結果を、図3中に図式的に示す。図3中に示すように、配合物基質18の凝固は、本発明の薄膜コーティング法によって最小になり、ミョウバンアジュバント免疫活性剤配合物の薄膜のアレイ(即ち層)19を与える。図3中に示す基質が表す配合物は実施例2中にさらに記載し、膜コーティングによって調製した。
【0078】
本発明のミョウバンアジュバント免疫活性剤を配合するために使用した方法及び物質は、以下でさらに詳細に記載する。
【0079】
ミョウバン懸濁液の調製(20)
水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムの懸濁液は、約0.0001重量%〜3重量%、好ましくは約0.05重量%〜2重量%の水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムを適切な溶媒に加えることによって調製する。適切な溶媒には水及びエタノールがある。生成する溶液の粘度は約1〜50cPの範囲、より好ましくは約10〜30cPの範囲内でなければならない。水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムは好ましい金属化合物であるが、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム及びヒドロキシ炭酸アルミニウム塩などの他の金属塩も有用である可能性がある。
【0080】
ミョウバンに加えて、他の免疫応答増大アジュバントをワクチン抗原と配合して、ワクチンを構成することができる。このようなアジュバントには非制限的に、藻類グルカン、β−グルカン;コレラ毒素Bサブユニット;CRL1005:x=8及びy=205の平均値を有するABAブロックポリマー;γインスリン:線状(非分岐状)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース;Gerbuアジュバント:N−アセチルグルコースアミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシル塩化アンモニウム(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8);Imiquimod(1−(2−メチプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;ImmTher(商標):N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−ジパルミチン酸グリセロール;MTP−PEリポソーム:C5910819PNa−3HO(MTP);Murametide:Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH;Pleuran:β−グルカン;QS−21;S−28463:4−アミノ−a、a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール;サルボペプチド:VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163〜171ペプチド);及びスレオニル−MDP(Termurtide(商標)):N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、及びインターロイキン18、IL−2IL−12、IL−15がある。アジュバントには、DNAオリゴヌクレオチド、例えばCpG含有オリゴヌクレオチドなどもある。さらに、IL−18、IL−2IL−12、IL−15、IL−4、IL10などの免疫制御調節リンホカイン、γインターフェロン、及びNFκB制御シグナルタンパク質をコードする核酸配列を使用することができる。
【0081】
無定形の糖の添加(21)
当技術分野で知られているように、無定形の糖はバルク剤及びタンパク質安定剤として働く。本発明によれば、無定形の糖は一般的なクラスのガラス形成糖から選択することができる。特にスクロース、メテジトース、ラフィノース、トレハロース、スタキオース、ラクトース、マルトース及びこれらの組合せが有用である。糖は体積増大に有効な量又はタンパク質安定化に有効な量加えることが好ましい。重量%単位に基づくと、糖は約2重量%〜40重量%の範囲、より好ましくは約10重量%〜30重量%の範囲で存在してよい。
【0082】
増粘剤の添加(22)
場合によっては、ポリマー物質などの増粘剤を配合物に加えることができる。適切なポリマーの例には、非制限的に、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、又はエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)などのセルロース誘導体がある。
【0083】
増粘剤を利用する場合、好ましくは約100cP未満、より好ましくは約20〜60cPの範囲の最終溶液粘度を与えるのに充分な量で加える。本発明によれば、増粘剤は約0.1重量%〜10重量%の範囲で存在してよい。
【0084】
膜形成剤の添加(23)
膜形成剤の多くの例が存在する。一般に膜形成剤は、約1,000〜1,000,000ダルトンの範囲、より好ましくは約30,000〜500,000ダルトンの範囲の分子量を有するポリカルボン酸、及びその塩を含む。非制限的な例には、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリルアミド、アクリルニトリル及びその他のポリマーがある。カルボン酸のコポリマーも適切である。好ましいポリマーは、商品名CARBOPOL(登録商標)、ACUSOL(登録商標)の市販品などのポリアクリレートなど、並びにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、及びポリビニルアルコール(PVOH)である。
【0085】
膜形成剤は、膜を形成するのに有効な量加えることが好ましい。本発明によれば、膜形成剤は約0.001重量%〜10重量%の範囲、より好ましくは約0.1重量%〜5重量%の範囲で存在してよい。
【0086】
免疫活性剤の添加(24)
ワクチンなどの免疫活性剤は通常は、適切な担体を、適切なアジュバント、賦形剤、保護物質、溶媒、塩、界面活性剤、緩衝剤及び他の要素と共に使用して水性形で調製する。免疫活性剤は当技術分野で知られているような濃縮及び緩衝処理によって、通常は調製される。
【0087】
適切な免疫活性剤には、したがって非制限的に、タンパク質、多糖複合体、オリゴ糖、及びリポタンパク質の形の抗原がある。これらのサブユニットワクチンには、百日咳菌(組換え体PTワクチン−無細胞性)、破傷風菌(精製、組換え体)、コリネバクテリウム属ジフテリア菌(精製、組換え体)、サイトメガロウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A群連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風トキソイドとの糖複合体A群多糖、毒性サブユニット担体と連結したMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価型−特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(組換え体Pre−S1、Pre−S2、S、組換え体コアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(組換え体−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(キャプシドタンパク質、TA−GN組換えタンパク質L2及びE7[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501組換えVLPL1、4価組換えBLPL1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラニューモフィラ(精製細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(破傷風トキソイドとの糖複合体)、緑膿菌(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎球菌(髄膜炎菌BOMPと結合した糖複合体[1、4、5、6B、9N、14、18C、19V、23F]、CRM197と結合した糖複合体[4、6B、9V、14、18C、19F、23F]、CRM1970と結合した糖複合体[1、4、5、6B、9V、14、18C、19F、23F]、梅毒トレポネーマ(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)、及びビブリオコレラ(複合体リポ多糖)ワクチンがある。
【0088】
全ウイルス又は細菌には非制限的に、弱化又は不活化ウイルス、例えばサイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、及び水痘帯状疱疹など、弱化又は不活化細菌、例えば百日咳菌、破傷風菌、コリネバクテリウム属ジフテリア菌、A群連鎖球菌、レジオネラニューモフィラ、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎球菌、梅毒トレポネーマ、及びビブリオコレラ、並びにこれらの混合物などがある。
【0089】
抗原物質を含む幾つかの市販のワクチンは、本発明に関しても有用性がある。示すワクチンには非制限的に、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、はしかワクチン、おたふくかぜワクチン、水疱瘡ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチン、及びジフテリアワクチンがある。
【0090】
本発明の配合及び方法に従い利用することも可能である核酸を含むワクチンには、非制限的に、一本鎖及び二本鎖核酸、例えばスーパーコイルプラスミドDNA、線状プラスミドDNAなど、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母菌人工染色体(YAC)、哺乳動物人工染色体、及びRNA分子、例えばmRNAなどのワクチンがある。核酸の大きさは、数千キロベースまでであってよい。核酸はタンパク質物質と結合することもでき、或いは1つ又は複数の化学修飾、例えばホスホロチオエート成分などを含むことができる。
【0091】
本発明のミョウバンアジュバント免疫活性剤配合物は、適切な賦形剤、保護物質、溶媒、塩、界面活性剤、緩衝剤及び他の要素も含むことができる。このような配合物の例は、その開示が参照として本明細書に組み込まれる米国特許出願第60/600,560号及び第10/970,890号中で見ることができる。
【0092】
本発明によれば、ミョウバンアジュバント免疫活性剤の生成溶液(25)を噴霧乾燥、空気乾燥、噴霧凍結乾燥、凍結乾燥又は凍結乾燥させて、それを保存又は分配用に溶液を安定化させる(26)。復元すると、免疫活性剤の有効性及び免疫応答は最大になる。
【0093】
他の実施形態では、ミョウバンアジュバント免疫活性剤の生成溶液(25)を、送達器具、1個の角質層貫通性微小突起、又は複数の角質層貫通性微小突起、又はこれらのアレイ上のコーティングとして利用することができる生体適合性塗膜配合物中に含ませる(27)。生体適合性塗膜の組成物、及びその配合方法は、その開示が参照として本明細書に組み込まれる米国特許出願第10/127,108号及び第10/608,304号中に詳細に記載されている。
【0094】
ここで図5を参照すると、本発明の組成物及び方法と共に使用するための、角質層貫通性微小突起アレイの一実施形態を示す。図5中に示すように、微小突起アレイ30は複数の微小突起32を含む。微小突起32は、開口部36を有するシート34からほぼ90°に伸びている。
【0095】
図9中に示すように、シート34用の裏材35を有する送達パッチ中に、シート34を組み込むことができる。裏材35は、裏材35及び微小突起アレイ30を患者の皮膚に接着させるための接着剤36をさらに含むことができる。この実施形態では、シート34の平面から複数の微小突起32をエッチング又はパンチングすることによって、微小突起32を形成する。
【0096】
微小突起アレイ30は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金などの金属、或いはプラスチックなどの類似の生体適合性材料で製造することができる。微小突起アレイ30はチタンで構成されることが好ましい。金属微小突起部材は、その開示が参照として本明細書に組み込まれるTrautman他、米国特許第6,038,196号;Zuck、米国特許第6,050,988号;及びDaddona他、米国特許第6,091,975号中に開示されている。
【0097】
本発明と共に使用することができる他の微小突起部材は、シリコンをエッチングすることによって、チップのエッチング技法を利用することによって、或いはエッチングした微小金型を使用してプラスチック成形することによって形成する。シリコン及びプラスチック製微小突起部材は、その開示が参照として本明細書に組み込まれるGodshall他、米国特許第5,879,326号中に開示されている。
【0098】
このような微小突起器具に関しては、免疫活性剤を有する生体適合性塗膜を、微小突起に均質且つ均一に、好ましくは微小突起自体に限定して施すことが重要である。これによって、ひとたび器具が皮膚に施され角質層に貫通した後に、間質液中で物質を溶解させることができる。さらに、均質なコーティングは、保存中と皮膚への挿入中の両方でさらに高い機械的安定性を与える。弱性及び/又は不連続コーティングは、製造及び保存中に剥がれ落ち、塗布中に皮膚から拭き取られる可能性が高い。
【0099】
さらに、物質の最適な安定性及び貯蔵寿命は、固体及びほぼ乾燥状態である生体適合性塗膜によって達成される。しかしながら、コーティングの溶解及び物質の放出の動態は、幾つかの要因に応じて相当変化する可能性がある。保存安定性以外に、生体適合性塗膜は物質の望ましい放出を可能にすることは容易に理解されよう。
【0100】
ここで図6を参照すると、微小突起32が生体適合性塗膜50でコーティングされた、微小突起アレイ30を示す。本発明によれば、生体適合性塗膜50は微小突起32を部分的又は完全に覆うことができる。微小突起32が形成される前又は後に、生体適合性塗膜50を微小突起に施すことができる。
【0101】
微小突起上のコーティング50は、様々な周知の方法によって形成することができる。1つのこのような方法はディップコーティングである。免疫活性剤含有生体適合性塗膜溶液中に微小突起を部分的又は完全に浸すことによって微小突起をコーティングするための手段として、ディップコーティングを説明することができる。或いは、器具全体を生体適合性塗膜溶液中に浸すことができる。多くの場合、コーティング内の免疫活性剤は非常に高価である可能性がある。したがって、微小突起の先端のみをコーティングすることが好ましい可能性がある。微小突起の先端コーティング装置及び方法は、その開示が参照として本明細書に組み込まれるTrautman他、米国特許出願公開第2002/0132054号中に開示されている。
【0102】
前述の出願中に記載されたように、コーティング装置は微小突起のみにコーティングを施し、そこから微小突起が突出している支持体/シートには施さない。このことは、免疫活性剤のコストが比較的高く、したがって免疫活性剤を含む生体適合性塗膜を、被験体の角質層に貫通する微小突起アレイの一部分のみに配置しなければならない場合に望ましい可能性がある。このコーティング技法は、皮膚貫通中に微小突起から容易に除去されない滑らかなコーティングを自然に形成する追加的利点を有する。微小突起先端コーティングの滑らかな断面は、図6A中でさらに明確に示す。
【0103】
マイクロ流体噴霧又は印刷技法などの、他のコーティング技法を使用して、図6中に示すように微小突起32の先端上のコーティング38を正確に析出することもできる。
【0104】
本発明を実施する際に利用することができる他のコーティング法には、微小突起32上へのコーティング溶液の噴霧がある。噴霧はコーティング組成物のエアロゾル懸濁液の形成を含むことができる。一実施形態では、約10〜約200ピコリットルの滴の大きさを形成するエアロゾル懸濁液を微小突起に噴霧し、次いで乾燥させる。
【0105】
本発明によれば、微小突起32は、孔(示さず)、溝(示さず)、表面の凸凹(示さず)、又は類似の変形などの、コーティング38の容量を受け入れる且つ/或いは増大させるように適合した手段であって、多量のコーティングを析出させることができる増大した表面積を与える手段をさらに含むことができる。
【0106】
ここで図7を参照すると、微小突起アレイ31の他の実施形態を示す。図7中に示すように、微小突起アレイ31は60〜63で示す幾つかの部分に分けることができ、異なるコーティングをそれぞれの部分に施し、それによって1種の微小突起アレイを利用して2種以上の有益剤を使用中に送達することができる。
【0107】
ここで図8を参照すると、複数の微小突起32を有する微小突起アレイ30の断面図を示すが、微小突起32は、参照番号61〜64によって示すように、異なる生体適合性塗膜及び/又は異なる免疫活性剤で一続きにコーティングされる。即ち、別々のコーティングを望ましい数の個々の微小突起32に施す。
【0108】
好ましい実施形態では、パターンコーティングを利用して微小突起32をコーティングする。微小突起アレイの表面上に被覆液を位置決めするための分配システムを使用して、パターンコーティングを適用することができる。析出液の量は、微小突起当たり0.1〜20ナノリットルの範囲であることが好ましい。適切な正確な目盛り付きの液体ディスペンサーの例は、その開示が参照として本明細書に組み込まれる、Tisoneの米国特許第5,916,524号、第5,743,960号、第5,741,554号及び第5,738,728号中に開示されている。
【0109】
周知のソレノイドバルブ付きディスペンサー、電場の使用により一般に制御される任意選択の流体動力手段及び位置決め手段を使用するインクジェット技術を使用して、微小突起コーティング溶液を塗布することもできる。印刷産業由来の他の液体分配技術、又は当技術分野で知られている類似の液体分配技術を、本発明のパターンコーティングを塗布するために使用することができる。
【0110】
好ましい実施形態では、ミョウバンアジュバント免疫活性剤を含む生体適合性塗膜を微小突起部材の少なくとも1個の角質層貫通性微小突起、より好ましくは複数のこのような角質層貫通性微小突起に塗布する方法は、常温で乾燥させることによって生体適合性塗膜をさらに安定化させるステップを含む。
【0111】
コーティング法は、各コーティングステップ間の乾燥ステップを伴う一連のコーティングステップで実施することが好ましい。本発明の望ましい薄膜の形成を最適化するために、それぞれの乾燥サイクル間の乾燥時間は、それぞれの層の乾燥を確実にするほど充分長くなければならない。
【0112】
各コーティングステップは、約0.5〜5ミクロンの範囲、より好ましくは約1〜3ミクロンの範囲の層又は塗膜厚をもたらすことが好ましい。全塗膜厚又は凝集塗膜厚は約3ミクロンを超えず、好ましくは約5〜100ミクロンの範囲、より好ましくは約10〜50ミクロンの範囲でなければならない。真空チャンバー型乾燥装置を利用する幾つかの実施形態では、乾燥時間は0〜3%の相対湿度及び常圧未満の条件下において、好ましくは約0.5〜360分の範囲、より好ましくは1〜100分の範囲である。
【0113】
本発明の一実施形態では、ミョウバンアジュバント免疫活性剤配合物を含む生体適合性塗膜を周囲の室温で乾燥することにより、所望の薄膜塗膜を得ると、同時に抗原マスキング性凝固を無くす。これを達成するための1つの方法は、噴霧乾燥型の乾燥装置を使用して溶液を乾燥させることである。このような装置では、可溶性物質(例えば、免疫活性剤溶液)の微細な霧を大きな円錐形のチャンバーに導入し、そこで約60〜250℃、好ましくは約80〜150℃の範囲に加熱された空気と接触する。温度、圧力、湿度及び滞留時間の正確な条件は、乾燥させる材料又は物質に依存する。本発明の免疫活性剤に関しては、乾燥条件は約60℃〜約150℃の範囲、より好ましくは約80℃〜約120℃の範囲の入口温度で実施することが好ましい。適切な供給率は約1mL/分〜約20mL/分、より好ましくは約5〜10mL/分の範囲である。湿度は約10〜50%の範囲であってよい。
【0114】
1つの適切な乾燥装置は、その開示が参照として本明細書に組み込まれる、2004年5月19日に出願された米国特許出願第60/572,861号中に開示されている[整理番号ALZ5134]。
【0115】
当業者によって理解されるように、本発明の示した配合物及び方法は、様々なワクチン供給源物質及びその形態を配合するように改変及び適合させることができる。例えば、本法は、B型肝炎、ジフテリア及び破傷風トキソイドワクチンを配合するように適合させることができると思われる。
【0116】
本発明によれば、多数の免疫活性剤又はワクチンを本発明の配合プロセス及び方法に処して、非常に安定なワクチン配合物を得ることができる。本発明の好ましい実施形態では、免疫活性剤はインフルエンザワクチン、より好ましくはサブビリオンインフルエンザワクチンを含む。
【実施例】
【0117】
以下の試験及び実施例は、本発明の配合物、方法及びプロセスを例示する。これらの実施例は単なる例示目的であり、決して本発明の範囲を制限することは意味しない。
【0118】
(実施例1)
水酸化アルミニウム吸着B型肝炎表面抗原(HBsAg)溶液を、表1中に要約した組成で配合した。
【0119】
【表1】

【0120】
この液体配合物を噴霧乾燥又は噴霧凍結乾燥させた。
【0121】
噴霧乾燥
卓上噴霧乾燥機(Buchi)を以下の条件で使用した:130〜140℃の乾燥空気の入口温度、3.5mL/分の液体供給、及び80〜85℃の乾燥空気の出口温度。生成する粉末はD10%=1.2μm、D50%=3.5μm、及びD90%=5.8μmの粒径分布を有する。
【0122】
噴霧凍結乾燥
ステンレス鋼製の鍋中に含まれる液体窒素中に1.5mL/分の供給率で、超音波噴霧装置(60kHz、Sono−Tek Corporation、Milton、NY)を使用して、液体配合物を噴霧した。この鍋を、−55℃で予め冷却した棚を有する凍結乾燥装置(DuraStop、FTS Systems、Stone Ridge、NY)に移した。
【0123】
一次乾燥は−10℃において10時間で実施し、二次乾燥は15℃、次いで25℃においてそれぞれ5時間実施した。サイクル中、温度勾配率は1℃/分、真空チャンバー圧は100mTorに設定した。生成する粉末はD10%=25μm、D50%=40μm、及びD90%=60μmの粒径分布を有する。
【0124】
ミョウバン凝固の分析
噴霧乾燥及び噴霧凍結乾燥によって調製した還元粉末において、光学顕微鏡下でミョウバンの凝固を評価した。光学顕微鏡画像下で砂質感を示す未処理AL(OH)/HBsAg液体とは対照的に、両方の還元粉末配合物共に明らかな粒子を含まない同じ砂構造を示し、粉末配合物中の最少のミョウバン凝固を示唆する。
【0125】
有効性及び抗原性の分析
粉末配合物におけるHBsAgの有効性/抗原性を、AUSZYME(登録商標)Monoclonalキット(Abbot Laboratory、Abbott Park、IL)を使用する定量酵素免疫アッセイによって測定した。この試験では、還元粉末配合物のHBsAg有効性は、未処理HBsAg出発物質に匹敵した。
【0126】
(実施例2)
水酸化アルミニウム吸着B型肝炎表面抗原(HBsAg)溶液を、表2中に要約した組成で配合した。
【0127】
【表2】

【0128】
生成した溶液の特性を決定した結果、40cpsの粘度及びチタン金属上で40°の接触角を示した。この溶液中に微小突起の上部100μmを沈めることによって、ディップコーティングを225μmの微小突起(1cm当たり725の微小突起)のアレイの先端に施した。それぞれの浸漬後に、液体摂取物を周辺空気条件(22℃及び50%相対湿度)下において10秒間乾燥させた。乾燥塗膜の厚さが約20μmになるまで、コーティングプロセスを10回繰り返した。
【0129】
ミョウバン凝固の分析
乾燥塗膜配合物は水中に還元した。光学顕微鏡法を使用して、還元溶液中のミョウバン凝固を測定した。未処理AL(OH)/HBsAg液体と同様に、還元配合物は明らかな粒子を含まない類似の砂構造を示し、乾燥塗膜中の最少のミョウバン凝固を示唆する。
【0130】
有効性及び抗原性の分析
乾燥塗膜配合物におけるHBsAgの有効性/抗原性を、AUSZYME(登録商標)Monoclonalキット(Abbot Laboratory、Abbott Park、IL)を使用する定量酵素免疫アッセイによって測定した。この試験では、還元乾燥塗膜配合物のHBsAg有効性は、未処理HBsAg出発物質のそれに匹敵した。
【0131】
本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、当業者は本発明に様々な変化及び変更を加えて、本発明を様々な使用及び条件に適合させることができる。したがって、このような変化及び変更は、適切、公正に添付の特許請求の範囲の均等物の全範囲内に入り、また、そのように意図している。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】従来技術の配合及び方法によって調製された乾燥したミョウバン吸着状態の免疫活性剤を示し、ミョウバン介在の凝固の領域を示す図である(図1中に黒色領域として示す)。
【図2】図1の従来技術の物質配合と比較した、乾燥状態の本発明のミョウバンアジュバント免疫活性剤配合物を示し、凝固ミョウバンの有意な最小化を示す図である(再度、黒色領域によって表す)。
【図3】本発明の薄膜塗膜系として実施した、ミョウバンアジュバント免疫活性剤配合を示す図である。
【図4】本発明のミョウバンアジュバント免疫活性剤を配合する方法の、一実施形態を示すフローチャートである。
【図5】本発明のミョウバンアジュバント免疫活性剤配合物を有する生体適合性塗膜をその上に析出することができる、微小突起アレイの斜視図である。
【図6】微小突起の上に析出した生体適合性塗膜を有する、図5の微小突起アレイの斜視図である。
【図6A】図6中のライン6A−6Aに沿って得た1種の微小突起10の断面図である。
【図7】様々な部分への微小突起アレイの分割を示す、微小突起アレイの皮膚隣接側の図である。
【図8】異なる生体適合性塗膜を異なる微小突起に施す、他の実施形態を示す微小突起アレイの側断面図である。
【図9】接着裏材を有する微小突起アレイの側断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的に有効な量の免疫活性剤、
安定化量の炭水化物糖、及び
乾燥したときに免疫活性剤の免疫原性の消失を最小限にする量のアルミニウム塩
を含む免疫活性剤含有配合物。
【請求項2】
アルミニウム塩の凝固を最小限にして配合物の有効性及び免疫原性を保つ、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
アルミニウム塩が水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、又はこれらの混合物である、請求項1に記載の配合物。
【請求項4】
配合物の全重量に対して約0.0001重量%〜3重量%のアルミニウム塩を含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項5】
前記糖がスクロース、メテジトース、ラフィノース、トレハロース、スタキオース、ラクトース、マルトース及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の配合物。
【請求項6】
配合物の全重量に対して約2重量%〜40重量%の範囲の前記糖を含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項7】
増粘剤をさらに含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項8】
配合物が約1〜50センチポイズの範囲の粘度を有するように増粘剤が存在する、請求項7に記載の配合物。
【請求項9】
膜形成剤をさらに含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項10】
配合物の全重量に対して約0.001重量%〜10重量%の範囲で配合物中に膜形成剤が存在する、請求項9に記載の配合物。
【請求項11】
配合物が少なくとも1種の他のアジュバントをさらに含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項12】
免疫活性剤がウイルス、細菌、タンパク質系ワクチン、多糖系ワクチン、核酸系ワクチン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の配合物。
【請求項13】
免疫活性剤の経皮送達に適合した複数の角質層貫通性微小突起を有する部材、及び
少なくとも1個の前記微小突起上にコーティングした請求項1に記載の配合物を含む、免疫活性剤を経皮送達するための器具。
【請求項14】
前記部材が複数の角質層貫通性微小突起を有する、請求項13に記載の器具。
【請求項15】
前記部材がステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金の群からなる金属、又は類似の生体適合性材料から製造される、請求項13に記載の器具。
【請求項16】
ミョウバンアジュバント免疫活性剤塗膜を調製する方法であって、
適切な溶媒中の1種又は複数のアルミニウム塩、少なくとも1種の炭水化物糖、任意選択の増粘剤、及び免疫活性剤を含むコーティング組成物を調製するステップであって、全アルミニウム塩濃度がコーティング組成物の全重量に対して約3重量%未満であるステップ、
前記コーティング組成物を支持体に塗布するステップ、及び
前記塗布済みコーティング組成物を乾燥、又は放置乾燥させて、前記乾燥塗膜を調製するステップを含む上記方法。
【請求項17】
コーティング組成物に膜形成剤を加えるステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
噴霧乾燥、空気乾燥、噴霧凍結乾燥、凍結乾燥(freeze−drying)、凍結乾燥(lyophillization)又はこれらの組合せからなる群から選択される乾燥プロセスにコーティング組成物を施すステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
溶媒でコーティング組成物を復元するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
復元コーティング組成物を少なくとも1個の角質層貫通性微小突起に施して、生体適合性塗膜を形成するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ディップコーティング、マイクロ流体噴霧、印刷及び噴霧からなる群から選択される方法により、生体適合性塗膜を少なくとも1個の角質層貫通性微小突起に施す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
生体適合性塗膜を乾燥又は放置乾燥させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
一連の塗布中にコーティング組成物を少なくとも1個の角質層貫通性微小突起に施す、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
実質的に全ての前記塗布の間に乾燥ステップを実施する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
常温で乾燥ステップを実施する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
乾燥時間が約0.5〜360分の範囲である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
約0〜30%の相対湿度及び常圧未満の条件下で乾燥ステップを実施する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
生体適合性塗膜が約0.5〜5ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
凝集塗膜厚が約0.5〜5ミクロンの範囲である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
請求項20に記載のミョウバンアジュバント免疫活性剤塗膜を調製すること、及び
免疫活性剤が被験体の皮膚を介して送達されるように部材を塗布すること
を含む、免疫活性剤を経皮送達する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6A】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−514644(P2008−514644A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533767(P2007−533767)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/034899
【国際公開番号】WO2006/037070
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(506353677)アルザ コーポレイション (23)
【Fターム(参考)】