説明

メソ多孔性複合酸化チタン及びその調製方法

本発明はメソ多孔性複合酸化チタン及びその調製方法を開示し、該材料はメソ多孔性酸化チタンの外表面及び孔壁に炭素、ケイ素、硫黄、リン、セレニウムのうちの少なくとも1種の元素を含む無機物を複合化し、元素質量に換算する無機物の含有量が多孔性複合酸化チタン材料の質量の0.01%〜25%であり、メソ多孔性複合酸化チタン材料の孔分布は少なくとも1つの最確孔径が3〜15nm、比表面積が50〜250m/g、細孔容積が0.05〜0.4cm/gである。本発明の材料が触媒担体とすると水素添加脱硫黄反応の転化率は98%にも達し、リチウムイオン電池の負極材料とする時の比容量は220mAh/gにも達し、且つ材料の調製方法が簡単で、コストが低く、工業化の量産に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は材料調製技術分野に属し、具体的にはメソ多孔性複合酸化チタン及びその調製方法に係り、該材料はメソ多孔性酸化チタン基複合材料である。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは感光性半導体材料に属し、一貫して光触媒水素発生、有機物分解及び光電池分野において汎用されている。近年、他分野における酸化チタンの応用も絶えず発見され、触媒担体、リチウムイオン電池の負極材料としてエネルギー、環境などの方面の応用もますます注目されており、例えば、触媒分野において、担体及び触媒の二重機能を有する触媒材料を調製し得れば、生産コストを大幅に低減でき、且つ、工業的に期待が大きい。また、従来の触媒不活性担体、例えばγ−Alと比べ、酸化チタンそのものは良い触媒活性を有し、潜在能力の高い触媒担体材料である(非特許文献1)。リチウムイオン電池の分野において、酸化チタンの独特な結晶型構造はリチウムイオンの嵌入/脱嵌に有利であり、次世代の負極材料として従来の負極炭素材料と比べ、コストが低く、使用上安全で爆発が発生しにくい(非特許文献2)。これと同時に、ナノ技術の発展に伴い、ナノ形態またはチャンネルを有する酸化チタンが絶えず開発されており、酸化チタンの当該分野における応用がより推進されている。
【0003】
触媒担体としてもリチウムイオン電池の負極材料としても、酸化チタンの高い比表面積が要求される。例えばナノTiOが触媒担体として反応において触媒活性が高いが、顆粒が小さすぎるため回収利用が難しくて重合もしやすく、且つ焼成成形後比表面積が大幅に下がるため、その活性が大幅に下がる。普通、アナタース型TiO顆粒の成形または層状のチタン酸塩イオン交換により調製し得られたTiOの比表面積が30m/gより低く、比表面積の高い多孔性酸化チタンを得ることは主にゾルゲル法によるが、複雑な工程、高い原料価格、及び、潜在的な環境問題により、その工業的量産は不可能である。
【0004】
前記問題に対して、本研究グループはチタン酸カリウムを原料とし、固相微構造転換プロセスを強化することによって比表面積の高いメソ多孔性酸化チタンを調製し得た(特許文献1)。その比表面積は50m/gより高く、結晶性の高いメソ多孔を有し、合成プロセスはテンプレートを使用せず、プロセスが簡単で、コストが比較的低く、量産に適する。これをベースに、特許文献2に記載する方法に基づいて、応用のニーズに応じてこの種類のメソ多孔性酸化チタンの孔構造の調節を行うことができる。
【0005】
しかし、メソ多孔性酸化チタン材料は触媒担体及びリチウムイオン電池負極とする時、さらに以下の不利な点がある。1)酸化チタンが非常に強い親水性を有し、担体として触媒の調製プロセスにおいて金属前駆体との化学反応を発生しやすく、金属活性成分の分散に不利である。2)リチウムイオン電池負極材料とする時、比較的大きな比表面積は電極及び電解質の接触面における副反応の発生に至る。
【0006】
現在、酸化チタン材料に対する改質は、主に酸化チタンナノ顆粒における有機物に対する改質であり、有機物の界面挙動によって酸化チタンの溶解分散性を変化させる(非特許文献3)。ナノ酸化チタンが前記のようにメソ多孔性酸化チタンと比べ応用において優勢が無い一方、有機物を直接利用して無機物に対して改質を行うことは、有機物分子そのものが高温及び酸・塩基の条件下で分解しやすく失効するため、工業化の実際応用には不利である。
【0007】
発明者は、研究を通じて、酸・塩基及び高温に対して相対的に不活性である無機物、例えば炭素、ケイ素、硫黄、リン、セレニウムを使用してメソ多孔性酸化チタンのチャンネルの性質を改善することができれば、メソ多孔性酸化チタンを触媒担体及びリチウムイオン電池負極とする要件をより満足させることができることを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許第ZL0315827.5号明細書(He Ming, Lu Xiaohua, Feng Xin, Yu Lei and Yang Zhuhong. A simple approach to mesoporous fibrous titania from potassium dititanate. Chemical Communication, 2004: 2 202; Lu Xiahua,He Ming,Yang Zhuhong,Feng Xin,Zheng Zhong,Bao Ningzhong,A synthetic method of titanium oxide with high specific surface area, ZL03158274.5, 2005.)
【特許文献2】国際出願第PCT/CN2007/070428号明細書(Lu Xiaohua,Zhou Yaxin,Liu Chang,Feng Xin,Yang Zhuhong,Wang Changsong,A method for fast-preparing of easy-controllable micropore-mesopore structure titanium oxide or the precursor thereof,PCT/CN2007/070428,2007)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Dzwigaj S., Louis C., Breysse M., Cattenot M., Belliere V., Geantet C., Vrinat M., Blanchard P., Payen E., Inoue S., Kudo H., Yoshimur Y. New generation of titanium dioxide support for hydrodesulfurization, Applied Catalysis B: Environmental, 2003: 41 181
【非特許文献2】Yang Zhenguo, Choi Daiwon, Kerisit Sebastien, Rosso Kevin M., Wang Donghai, Zhang Jason, Graff Gordon, Liu Jun, Nanostructures and lithium electrochemical reactivity of lithium titanites and titanium oxides: A review, Journal of Power Sources, 2009: 192 588
【非特許文献3】Vioux Andre; Le Bideau Jean, Mutin P Hubert, Leclercq Dominique, Hybrid Organic-Inorganic Materials Based on Organophosphorus Derivatives,Topics in current chemistry 2004: 232 145
【非特許文献4】Bao Shujuan, Bao Qiaoliang, Li , Changming, Dong Zhili. Novel porous anatase TiO2 nanorods and their high lithium electroactivity. Electrochemistry Communications 2007: 9 1233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的はメソ多孔性複合酸化チタンを提供することにある。該材料を触媒担体とすると水素添加脱硫黄反応の転化率が98%にも達し、リチウムイオン電池の負極材料とする時の比容量が220mAh/gにも達する。
【0011】
本発明の他の1つの目的は該メソ多孔性複合酸化チタンの調製方法を提供することにある。該方法はプロセスが簡単で、コストが低く、工業化の量産に適するなどの長所を有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は以下の手段によって達成することができる。
【0013】
新型のメソ多孔性複合酸化チタン材料であって、該材料はメソ多孔性酸化チタンの外表面及び孔壁に炭素、ケイ素、硫黄、リン、セレニウムのうちの少なくとも1種の元素を含む無機物を複合化してなり、元素質量に換算する無機物の含有量が多孔性複合酸化チタン材料の質量の0.01%〜25%であり、前記メソ多孔性複合酸化チタン材料の孔分布は少なくとも1つの最確孔径が3〜15nm、比表面積が50〜250m/g、細孔容積が0.05〜0.4cm/gである。本発明のメソ多孔性複合酸化チタン材料の外観は、0.1〜10μm直径または当量直径の髭結晶、繊維または顆粒状である。
【0014】
本発明の前記メソ多孔性複合酸化チタン材料は、X線回折またはラマンスペクトルを使用して検出し、メソ多孔性複合酸化チタン材料における酸化チタンがアナターゼ相酸化チタン、TiO(B)相酸化チタン、ルチル型酸化チタンのうちの1種または複数種を呈する。
【0015】
前記メソ多孔性酸化チタン複合材料の調製方法は以下のステップを含む:ケイ素、炭素、硫黄、リン、セレニウムのうちの少なくとも1種の元素を含有する前駆体を、水または有機溶剤に溶解して溶液を形成するステップ;前記溶液にメソ多孔性酸化チタンを加えて1〜72h(好ましくは1〜24h)撹拌した後、水または有機溶剤で洗浄してろ過を行うステップ;特定の雰囲気条件下で焼成を行うステップ。焼成温度は300〜900℃、好ましくは300〜500℃である。
【0016】
使用される原料メソ多孔性酸化チタンの最確孔径(most probable pore diameter)は3nm〜15nm、細孔容積は0.05〜0.4cm/g、比表面積は50〜250m/gであり、酸化チタンの結晶型はアナターゼ相酸化チタン、TiO2(B)相酸化チタン、ルチル型酸化チタンのうちの少なくとも1種を呈する。メソ多孔性酸化チタンの外観は、0.1〜10μm直径または当量直径の髭結晶、繊維または顆粒状であってもよい。
【0017】
本発明の調製方法における前記溶解用有機溶剤は、非極性、弱極性溶剤または強極性溶剤であり、前駆体分子を溶解できればよい。好ましくは、トルエン、トリメチルベンゼン、エタノール、メタノール、エーテル、アセトン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、二硫化炭素のうちの1種または複数種の混合溶剤であり、調製プロセスにおいて前駆体分子の溶解に用いられる。
【0018】
本発明の調製方法における前記洗浄用有機溶剤は、非極性、弱極性溶剤または強極性溶剤である。好ましくは、トルエン、トリメチルベンゼン、エタノール、メタノール、エーテル、アセトン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、二硫化炭素のうちの1種または複数種の混合溶剤である。調製プロセスにおいて、前駆体分子は化学結合の方式でメソ多孔性酸化チタンの外表面及び孔壁と結合することができ、この時、該有機溶剤による洗浄の目的はメソ多孔性酸化チタンと結合しなかった前駆体分子を洗浄し除去することにある。前駆体分子は外表面及び孔壁に吸着していてもよく、この時、該有機溶剤による洗浄の目的は外表面の過剰の前駆体分子を洗浄し除去することにある。
【0019】
本発明の調製方法に使用される前駆体は炭素、ケイ素、硫黄、リン、セレニウムのうちの少なくとも1種の元素を含有する酸、アルカリ、可溶性無機塩または有機物を含む。好ましくはC−C20の糖、C−C20のアルコール、C−C20のチオール、C−C20のシラン、C−C20の有機ホスフィン酸またはセレン酸塩である。より好ましくは、1−ナフトール、ブドウ糖、フルフリルアルコール、フェニルメルカプタン、オクタデシルトリクロロシラン、フェニルホスホン酸または亜セレン酸二ナトリウムである。前駆体の、水または有機溶剤における濃度は0.001〜10mol/L、好ましくは0.001〜1mol/Lであり、前駆体とメソ多孔性酸化チタンとのモル比は0.001〜1、好ましくは0.001〜0.5、より好ましくは0.001〜0.2、最も好ましくは0.001〜0.03である。
【0020】
本発明の調製方法に使用される焼成プロセスの雰囲気はN、O、Ar、HO、He、H、CO、COのうちの少なくとも1種または2種以上の異なる調合比の混合雰囲気であり、保温時間は3〜20時間、焼成温度は300〜900℃である。
【0021】
本発明の調製方法に使用されるメソ多孔性酸化チタンは特許文献1及び2に基づいて調製されたものであり、具体的には以下の方法に基づいて得られる。チタン化合物及びカリウム化合物を原料とし、原料チタン化合物はTiO及びKOに換算し、TiO/KO=1〜4molの配合比に基づいて均一に混合する。600〜1100℃で30分間以上焼成して、生成物であるチタン酸カリウムを得る。そのうち、二チタン酸カリウム結晶体が含有される。焼成した生成物を水に分散した後、20〜100℃、1〜50倍のpH≧8のアルカリ溶液または1mol/Lより高い濃度のK溶液に4時間反応させ、その後pH<5の酸溶液に水和処理を行い、該生成物を熱処理方法によって脱水する。あるいは、アルカリ金属チタン酸塩を原料として、20〜250℃温度、2〜100%湿度の湿気雰囲気において0.5〜72時間反応させ、その後水または酸溶液で洗浄を行い、最後に空気焼成または溶剤熱処理する。得られたメソ多孔性酸化チタンの最確孔径は3nm〜15nm、細孔容積は0.05〜0.4cm/g、比表面積は50〜250m/gであり、酸化チタンの結晶型はアナターゼ相酸化チタン、TiO(B)相酸化チタン、ルチル型酸化チタンのうちの少なくとも1種を呈し、外観は0.1〜10μm直径または当量直径の髭結晶、繊維または顆粒状である。
【発明の効果】
【0022】
従来の技術と比べた本発明の有益な効果は:
(1)本発明の利点は、本発明のメソ多孔性複合酸化チタン材料は、孔壁及び外表面に無機物が複合化され、元のメソ多孔性酸化チタンの性質を改善するため、触媒担体とする時水素添加脱硫黄反応の転化率を98%にも達させ、リチウムイオン電池の負極材料とする時、リチウムイオンの嵌入力を増強し、リチウムイオン電池の負極材料の比容量を220mAh/gにも達させる。
(2)本発明の利点は、本発明のメソ多孔性複合酸化チタン材料の方法にあり、プロセスが簡単で、コストが低く、工業化の量産に適する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明で調製される新型のメソ多孔性酸化チタンは、触媒担体として例えばMoNi金属を担体して、水素添加脱硫黄において非常によい性能を有する。以下、実施例1〜7を通じて本発明を説明する。
【実施例】
【0024】
実施例1
特許文献1に記載される方法に基づいて、アナタース型TiOと、工業用KCO(純度98wt%)と、HOとを均一に混合する。TiO/KO=2.5(モル比)とし、含水量は20wt%である。混合された反応用材料を酸化アルミニウム固定板に均一に塗布し、反応温度1000℃、反応時間2時間として、焼成生成物として二チタン酸カリウムと四チタン酸カリウムとの混合結晶を得る。焼成生成物を水に分散した後、50℃、5倍のpH=8の水溶液に入れて8時間反応させ、ろ過した後、カリウムの固形分含有量が生成物重量の5wt%より低くなるまでpH=3の塩酸水溶液に入れて8時間撹拌し、水洗してろ過を行い、20〜50℃で12時間乾燥して水和生成物を得る。500℃の空気において2時間結晶させる。得られたメソ多孔性TiOの結晶型はアナターゼ型と単斜型TiOとの混合結晶であり、外観は髭結晶状で、比表面積は105m/g、最確孔径は6.2nm、細孔容積は0.23cm/gである。
【0025】
1−ナフトールを前駆体とし、エタノールに溶解して溶液を調製する。前駆体濃度は1mol/Lであり、前駆体とメソ多孔性酸化チタンとのモル比は0.05である。調製後のメソ多孔性酸化チタンに加えて24時間撹拌した後、水で洗浄してろ過を行い、N下で焼成し、昇温速度5℃/min、500℃で12時間保温して、本発明のメソ多孔性複合酸化チタンを得る。本発明の材料の最確孔径は9.6nm、比表面積は250m/g、細孔容積は0.25cm/gであり、酸化チタンの結晶型はアナターゼ相酸化チタンとTiO[B]との混合結晶である。
【0026】
金属MoNiの担持方法
モリブデン酸アンモニウム四水和物及び硝酸ニッケル六水和物を活性成分前駆体とし、等容積にメソ多孔性酸化チタンを浸漬し、4時間静置した後、120℃で加熱乾燥し、最後にさらにマッフル炉内に置いて500℃で2時間焼成して触媒を調製した。
【0027】
触媒性能評価は水素添加脱硫黄試験を採用し、自制実験室の中圧固定床小型反応装置において行った。触媒の充填量は1mLであり、パイプ式反応装置の中部に充填され、両端に珪砂を充填し、反応材料は組成がSで含有量が1737ppmであるジメチルジベンゾチオフェン(DBT)−デカヒドロナフタレンモデル溶液である。反応前、3wt%CS−デカヒドロナフタレンモデルを使用して反応温度300℃、反応圧力2.0 MPa、体積空間速度2h−1及び水素/オイル比(v/v)1200の条件下で触媒に対して8時間事前加硫を行う。事前加硫の終了後反応液を切換し、同様な実験条件下で反応を行い、活性評価のプロセスにおいて、1時間毎に生成物を1回毎に収集し、転化率安定値を触媒の該実験条件下でのDBT転化率とする。8時間後、DBTの転化率が95%以上に達することができることが試験から分かった。
【0028】
実施例2〜7 表1を参照する
比較例1
特許文献1に記載される方法に基づいて、アナタース型TiOと、工業用KCO(純度98wt%)と、HOとを均一に混合した。TiO/KO=2.5(モル比)とし、含水量は20wt%である。混合された反応用材料を酸化アルミニウム固定板に均一に塗布し、反応温度1000℃、反応時間2時間として、焼成生成物として二チタン酸カリウムと四チタン酸カリウムとの混合結晶を得る。焼成生成物を水に分散した後、50℃、5倍のpH=8の水溶液に入れて8時間反応させ、ろ過した後カリウムの固形分含有量が生成物重量の5wt%より低くなるまでpH=3の塩酸水溶液に入れて8時間撹拌し、水洗してろ過を行い、20〜50℃で12時間乾燥して水和生成物を得る。500℃の空気において2時間結晶させ、得られたメソ多孔性TiOの結晶型はアナターゼ型と単斜型TiOとの混合結晶であり、外観は髭結晶状で、最確孔径は6.2nm、比表面積は105m/g、細孔容積は0.23cm/gである。該メソ多孔性酸化チタンを担体とし、活性成分MoNiを実施例1と同様の担持方法で担持させる。実施例1の触媒性能評価方法に基づいて、8時間反応した後、DBTの転化率が約65%であることが試験から分かった。
【0029】
比較例2
水和酸化チタン(江蘇省鎮江二酸化チタン股▲ふん▼有限公司)を原料とし、500℃2時間焼成した後無孔の酸化チタンを得る。比表面積は280m/gであり、結晶型はアナターゼ相酸化チタンである。該新型のメソ多孔性複合酸化チタンを担体とし、実施例1と同様の担持方法で担持活性成分MoNiを担持させる。実施例1の触媒性能評価方法に基づいて、8時間反応した後、DBTの転化率が60%であることが試験から分かった。
【0030】
本発明により調製されたメソ多孔性複合酸化チタンは、Li電池負極材料として優れた性能を有する。以下、実施例8〜13を通じて本発明を説明する。
【0031】
実施例8
メソ多孔性複合酸化チタンの調製方法は実施例1と同様である。
【0032】
リチウム電池負極の調製プロセスは以下の通りである。本発明のメソ多孔性複合酸化チタン材料と、高伝導性炭素(Super P)と、粘着剤(ポリフッ化ビニリデンPVdF)とを、85:10:5の割合で適量のN−メチルピロリドンに加えて均一に混合し、表面を紙やすりで粗面化した銅箔上に均一に塗布して、得られた極シートを100℃以下で12時間真空乾燥した。模擬電池の製作はグローブボックス内で行った。金属リチウムシート(99.9%)を対電極とし、ポリプロピレン微多孔膜(Celgard2320)を隔膜とし、1mol/L LiFPのEC +DMC(体積比1:1,EC:Ethylene Carbonate; DMC:Dimethyl Carbonate)を電解液とした。電池のテスト過程は以下の通りである。組み立てた後の模擬電池を25℃下で充放電テストする。電圧範囲は1〜3V、電池テストの電流密度は120mA/gである。電池の性能テストは、NEWARE BTS−5V 50mA電池テスト・ワークステーションによって、充放電性能の解析を行った。これにより、電極材料の比容量性能を得る。比容量性能は電池充放電5回後の性能データに基づいて計算した。
【0033】
実施例9〜13のメソ多孔性複合酸化チタン及びその調製方法は実施例2〜7と同様であり、電極の調製及び性能解析プロセスは実施例8と同様である。性能結果は表1を参照する。
【0034】
比較例3
非特許文献4にレポートされるメソ多孔性酸化チタンは、最確孔径が5nm、比表面積が99.3m/g、結晶型がアナターゼ相酸化チタンである。該メソ多孔性酸化チタンを活性成分とし、電極の調製方法は実施例8と同様とした。実施例8の電池テスト方法に基づいて、文献に報告される電極材料をリチウムイオン電池負極とする時の比容量は175mAh/gであった。
【0035】
比較例4
市販の酸化チタンナノ顆粒(杭州万景新材料有限公司、比表面積:88.3 m/g、細孔容積:0.05cm/g、顆粒サイズ:10nm)を活性成分とした。電極の調製方法は実施例8と同様とした。実施例8の電池テスト方法に基づいた、電極材料をリチウムイオン電池負極とする時の比容量は185mAh/gであった。
【0036】
表1 実施例2〜7原材料の調製条件、生成物の構造及び性能
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種のメソ多孔性複合酸化チタン材料において、
該材料はメソ多孔性酸化チタンの外表面及び孔壁に炭素、ケイ素、硫黄、リン、セレニウムのうちの少なくとも1種の元素を含む無機物を複合化してなり、
元素質量に換算する前記無機物の含有量が前記多孔性複合酸化チタン材料の質量の0.01%〜25%であり、
前記メソ多孔性複合酸化チタン材料の孔分布は少なくとも1つの最確孔径が3〜15nm、比表面積が50〜250m/g、細孔容積が0.05〜0.4cm/gであることを特徴とする、メソ多孔性複合酸化チタン材料。
【請求項2】
前記メソ多孔性複合酸化チタン材料における酸化チタンは、アナターゼ相酸化チタン、TiO(B)相酸化チタン、ルチル型酸化チタンのうちの1種または複数種を呈することを特徴とする、請求項1に記載のメソ多孔性複合酸化チタン材料。
【請求項3】
請求項1に記載のメソ多孔性複合酸化チタン材料の調製方法において、
ケイ素、炭素、硫黄、リン、セレニウムのうちの少なくとも1種の元素を含有する前駆体を、水または有機溶剤に溶解して溶液を形成するステップと、
前記溶液にメソ多孔性酸化チタンを加えて1〜72時間撹拌した後、水または有機溶剤で洗浄してろ過を行うステップと、
雰囲気条件下で焼成温度300〜900℃で焼成を行うステップと、を含むことを特徴とする、メソ多孔性複合酸化チタン材料の調製方法。
【請求項4】
加えた前記メソ多孔性酸化チタン材料の最確孔径が3nm〜15nm、細孔容積が0.05〜0.4cm/g、比表面積が50〜250m/gであり、
酸化チタンの結晶型がアナターゼ相酸化チタン、TiO(B)相酸化チタン、ルチル型酸化チタンのうちの少なくとも1種を呈することを特徴とする、請求項3に記載のメソ多孔性複合酸化チタン材料の調製方法。
【請求項5】
前記前駆体が炭素、ケイ素、硫黄、リン、セレニウムのうちの少なくとも1種の元素を含む酸、アルカリ、可溶性無機塩または有機物であることを特徴とする、請求項3に記載のメソ多孔性複合酸化チタン材料の調製方法。
【請求項6】
前記前駆体がC−C20の糖、C−C20のアルコール、C−C20のチオール、C−C20のシラン、C−C20の有機ホスフィン酸またはセレン酸塩であることを特徴とする、請求項5に記載のメソ多孔性複合酸化チタン材料の調製方法。
【請求項7】
前記焼成過程に使用される雰囲気がN、O、Ar、HO、He、H、CO、COのうちの少なくとも1種または2種以上の異なる調合比の混合雰囲気であることを特徴とする、請求項3に記載のメソ多孔性複合酸化チタン材料の調製方法。
【請求項8】
前記前駆体の、水または有機溶剤における濃度が0.001〜10mol/Lであり、 前記前駆体と前記メソ多孔性酸化チタンとのモル比が0.001〜1であることを特徴とする、請求項3に記載のメソ多孔性複合酸化チタン材料の調製方法。
【請求項9】
洗浄に使用される前記有機溶剤が非極性、弱極性溶剤または強極性溶剤であることを特徴とする、請求項3に記載のメソ多孔性複合酸化チタン材料の調製方法。
【請求項10】
前記前駆体の溶解に使用される前記有機溶剤が非極性、弱極性溶剤または強極性溶剤であることを特徴とする、請求項3に記載のメソ多孔性複合酸化チタン材料の調製方法。

【公表番号】特表2013−503094(P2013−503094A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525841(P2012−525841)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/CN2009/073599
【国際公開番号】WO2011/022888
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(510033929)南京工▲業▼大学 (2)
【氏名又は名称原語表記】NANJING UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】5 Xinmofan Road,Nanjing,Jiangsu,210009 China
【出願人】(510084817)南京▲たい▼威科技有限公司 (2)
【氏名又は名称原語表記】NANJING TAIWEI TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Nanjing New and Hi−Tech Zone,Nanjing,Jiangsu,210061 China
【Fターム(参考)】