説明

メソ細孔性またはメソ細孔性およびミクロ細孔性の組み合わせの無機酸化物を製造する方法

【課題】触媒、触媒担体または吸着剤として使用できる非結晶性のメソ細孔性およびミクロ細孔性の無機酸化物を、安価な物質を使用しそして環境に優しく製造する方法の提供。
【解決手段】a)錯体化温度で無機酸化物の源と錯体化剤とを反応させて少なくとも1つの錯体を得る段階、b)少なくとも1つの錯体を分解して少なくともいくつかの有機の孔形成剤を含む無機酸化物の骨格を有する細孔性物質の前駆物を得る段階、そしてc)溶媒抽出および/またはか焼により無機酸化物の骨格から有機の孔形成剤の少なくとも大部分を除く段階からなるメソ細孔性またはメソ細孔性/ミクロ細孔性の組み合わせの無機酸化物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、触媒担体または吸着剤として使用できる無機の多孔性酸化物を製造する改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メソ細孔またはミクロ細孔を含む無機酸化物を製造する種々の方法は周知である。一般的に、ミクロ細孔は、2mmより小さい直径を有する細孔として規定され、一方メソ細孔は、2−50mmの孔直径を有するものと規定される。無機酸化物は、触媒、触媒担体または吸着剤として使用できる。所望により、無機酸化物は、ゼオライトと組み合わせることができる。
【0003】
参考として本明細書で引用される特許文献1は、メソ細孔性またはメソ細孔性とミクロ細孔性との組み合わせを有するバイモダル無定形の無機酸化物、および酸化物を製造する方法を開示している。
【0004】
参考として本明細書で引用される特許文献2は、メソ細孔性の無機酸化物例えばシリカまたはアルミナ上に支持されたミクロ細孔性のゼオライト例えばゼオライトベータ、ゼオライトYまたはZSM−5を含む触媒物質を開示している。触媒物質を製造し使用する方法も記述されている。
【0005】
【特許文献1】米国特許6358486
【特許文献2】米国特許公開2002/0074263
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非結晶性のメソ細孔性およびミクロ細孔性の無機酸化物を製造するには、種々の方法が知られているが、より高価ではない物質を使用しそしてさらに環境に優しい方法を有することは有利なことであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
メソ細孔性またはメソ細孔性/ミクロ細孔性の組み合わせの無機酸化物を製造する方法が、本発明で提供される。方法は、a)錯体化温度で無機酸化物の源と錯体化剤とを反応させて少なくとも1つの錯体を得る段階、b)少なくとも1つの錯体を分解して少なくともいくつかの有機の孔形成剤を含む無機酸化物の骨格を有する細孔性物質の前駆物を得る段階、そしてc)溶媒抽出および/またはか焼により無機酸化物の骨格から有機の孔形成剤の少なくとも大部分を取り出す段階からなる。
【0008】
方法は、酸化物の無機の源の使用および有機の孔形成剤の回収の両者を有利に促進し、それにより環境に優しく同時にコストを節約する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、触媒、触媒担体、吸着剤および分子ふるいとして使用される非結晶性のメソ細孔性またはメソ細孔性/ミクロ細孔性の組み合わせの無機酸化物を合成する新しい経済的な方法を提供する。酸化物は、三次元のランダムに相互に接続したメソ細孔性またはメソ細孔性およびミクロ細孔性の組み合わせを有する。酸化物は、族IVB、VB、VIB、VIIB、III、IB、IIB、IIIB、VIII、VA、IIIA、IVA、IIAおよびランタニドから選ばれる1つ以上の元素の酸素との組み合わせである。金属元素の特定な例は、Si、Al、Ti、V、Cr、Zn、Fe、Sn、Mo、Ga、Ni、Co、Zr、Cu、Mg、Bi、Nb、Mn、Sb、La、Ce、TeおよびWを含む。酸化物は、純粋な酸化物(すなわち、ただ1つのタイプの金属を含む)または混合した酸化物(すなわち、2つ以上のタイプの金属を含む)である。混合した酸化物中の異なる金属のモル比は、0.0001から約0.9999に及ぶことができる。
【0010】
本発明の酸化物組成物は、X線回折(“XRD”)パターンにおける2θにおいて0.3−3.5度で少なくとも1つのピークを示し、それは25オングストロームと440オングストロームとの間の基礎面間隔に相当する。窒素吸着は、それが、酸化物の組成に応じて、約15オングストロームから約300オングストロームのサイズに及ぶ波長可変メソ細孔、約40−約1250m/gの表面積および約0.3−約2.5cm/gの孔体積を有することを明らかにしている。
【0011】
本発明の組成物は、構造中に配合されるミクロ細孔性物質例えばゼオライトを含むことができる。
組成物は、触媒としてまたは触媒組成物の一部として使用できる。触媒の一部として、本発明の組成物は、触媒の活性成分であるか、または触媒担体である。シリカの場合、本発明の組成物は、触媒担体またはマトリックスとして主として使用され、それらは、多くの応用例えば水素化、水素化分解などのための貴金属例えばPd、PtおよびRhを支持できる。配合された元素の官能性に応じて、組成物は弱い酸性、中度の酸性または強い酸性を有することができる。その結果、それは、クラッキング、異性化、アルキル化、アシル化、重合、脱水、脱窒素化および脱硫黄化または有機化合物を触媒化できる。組成物は、また、レドックス性を有することができ、それはアルケン(例えばシクロヘキセン、エチレンまたはプロピレン)のエポキシ化、アルカン(例えばシクロドデカン、シクロヘキサン)、アルコールおよびアミンの選択的酸化、芳香族のヒドロキシル化およびケトンのアンモ酸化を触媒化できる。この組成物への金属の添加は、水素化分解、(脱)水素化および脱硫黄化の能力を提供する。シリカ−アルミナの場合、組成物は、クラッキングまたはエステル化用の酸性の触媒として使用できるが、それはまた触媒担体/マトリックスとして使用できる。Bi−Mo、Fe−SbまたはMo−V−Nb−Te混合酸化物を配合することにより、組成物は、有機物の選択的酸化用の活性触媒成分として使用できる。本発明の組成物は、触媒、共触媒(触媒の一部)、触媒担体、吸着剤および分子ふるいとして応用できる。
【0012】
本発明の方法は、錯体化温度で無機酸化物の源と錯体化剤とを反応させることを含む。錯体化剤は、少なくとも1つのアミン好ましくはアルカノールアミンを含み、それはアルカノールアミン−無機酸化物の錯体のような錯体を形成することによって無機酸化物を可溶化する。錯体化反応は、アミンと無機酸化物の源との混合物を、一般に約150−約50℃好ましくは約180−約220℃の錯体化温度、約10分から約48時間そして約0.1−2バールの圧力でそして空気または不活性気体例えば窒素またはアルゴンの雰囲気下で加熱することを含む。250℃より高い温度で、本明細書に記載される無機酸化物と錯体化剤との間で形成される錯体は、下記のように分解し始める。そのため、本発明の方法のこの初めの段階で、錯体化温度は、250℃より高くてはならず、好ましくは240℃より低くなければならない。
【0013】
本発明の1つの態様では、無機酸化物の源は、無機化合物である。無機酸化物の有機源中の有機基は、例えば、アルコール性カルボキシルおよび/またはアルキル基を含むことができる。これらの有機源は、例えば、テトラエチルオルソシリケート(“TEOS”)、アルミニウムアルコキシド(例えば、アルミニウムイソプロポキシド)、マグネシウムアルコキシド(例えば、マグネシウムエトキシド)および同様な化合物を含む。また、無機酸化物の有機源として有用なのは、中性および混合した中性/アニオン性ポリメタロオキサン例えばシラトラン、アルマトラン、チタナトランおよび米国特許5418298および5216155およびW098/27010(これらのすべては本明細書において参考として引用される)に記述されたような他の化合物である。
【0014】
無機酸化物の源としてさらに有用なのは、無機源例えば所望の元素の水和されたまたは水和されていない酸化物または水酸化物、または所望の元素の硝酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩(例えば、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、二クロム酸アンモニウム)などである。珪素酸化物の好ましい源は、シリカゲル、シリカヒドロゲル、シリカエロゲル、シリカゾル、燻蒸シリカなどを含む。アルミニウム酸化物の好ましい源は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムまたはアルミニウム塩である。メソ細孔性のマグネシウム酸化物の製造は、原料源としてマグネシア、水酸化マグネシウムまたはマグネシウム塩を使用することができる。
【0015】
原料としての無機酸化物の有機源の使用とは異なり、本発明のこの態様は、より安価でしかも取り扱いが容易な無機源から開始される。無機酸化物は、その場で有機錯体に転換される。
【0016】
錯体化剤は、好ましくは、少なくとも160℃好ましくは少なくとも約190℃の沸点を有し、そして所望の無機酸化物と錯体を形成できるアミノ基を有する化合物好ましくは任意のアルカノールアミンである。本発明で使用するのに好適なアルカノールアミンは、トリエタノールアミン(TEA)、トリ−イソプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、トリス−ヒドロキシメチレンアミノメタン、N、N−ジメチルエタノールアミンおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の重要な特徴は、アルカノールアミンが2つの機能を行うことである。第一に、それは、無機酸化物を溶解する錯体化剤として機能する。そして、それは、また同時にメソ細孔性(またはメソ細孔性/ミクロ細孔性)の構造への無機酸化物の形成を助ける孔形成剤として機能する。
【0018】
所望により、1つ以上の有機溶媒が、アルカノールアミン錯体化剤と関連して使用される。好ましい溶媒は、グリコール例えばエチレングリコール(EG)、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびテトラプロピレングリコールを含む。有機溶媒は、少なくとも約100℃の沸点を有しなければならないが、アルカノールアミン錯体化剤のそれより低くなければならない。もっとも好ましい溶媒は、エチレングリコールおよびプロピレングリコールである。
【0019】
所望により、アルカリ、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは水酸化カリウムおよび炭酸カリウムは、錯体化反応を促進させるために上記の混合物に添加できる。
【0020】
第二の段階では、錯体は分解して、細孔性物質の前駆物を形成する。錯体の分解は、ある遊離の孔形成剤を生じさせ、その分子は粒子サイズのクラスターに凝集する。選択された無機酸化物の無機種は、次に孔形成剤のクラスターの周りに合着して多孔性の無機酸化物の骨格を形成する。最終の無機酸化物の孔のサイズは、孔形成剤の凝集物により決定され、凝集物は無機酸化物の骨格の内側に捕捉される。無機酸化物/有機複合体(すなわち、細孔性物質の前駆物)が形成され、孔形成剤の凝集物は、無機の骨格全体に均一に分布する。さらに重要なこととして、これらの凝集物は、ある面間隔単位でうまく配列している。
【0021】
錯体の分解は、少なくとも一部加水分解により達成できる。特に、水または水溶液が、前の段階で得られた錯体または混合物に添加される。水溶液は、中性のpH、酸性のpH(例えば、約6より低いpH)または塩基性(例えば、約8より高いpH)である。酸性の溶液は、無機の酸例えば硝酸、塩酸または硫酸、或いは有機の酸例えば酢酸、蟻酸または他のカルボン酸から選ぶことができる。塩基性の溶液は、無機のアルカリ例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムまたは炭酸ナトリウムから選ぶことができる。好適な有機の塩基は、例えば尿素および/または水酸化テトラアルキルアンモニウム例えば水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムまたは水酸化テトラプロピルアンモニウムおよび/または水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムおよび/または水酸化テトラブチルホスホニウムおよび/または水酸化ジメチルジエチルアンモニウムを含む。
【0022】
別な方法として、錯体は、約0.1−約24時間好ましくは約2−約16時間に及ぶ時間、250℃より高い温度、好ましくは251−約450℃の温度、より好ましくは約275−約400℃に加熱することにより分解できる。好ましくは、加熱による分解は、加水分解と関連して行うことができる。
【0023】
次の段階において、大部分そして好ましくは実質的にすべての有機の孔形成剤は、細孔性物質の前駆物の無機の骨格の細孔から取り除かれる。この段階は、例えば溶媒抽出および/またはか焼によって達成できる。孔形成剤(例えばアルカノールアミン)の抽出は、好適な溶媒例えば水、アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル(例えばメチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテルなど)、ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトンなど)またはエステル(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、安息香酸エチルなど)またはこれらの混合物中に細孔性物質の前駆物を浸漬することにより達成できる。孔形成剤は、この抽出段階から回収しリサイクルでき、それにより合成のコストおよび有害な環境への影響を低下できる。
【0024】
か焼は、一般的に、約48時間以内好ましくは約1−約8時間そしてより好ましくは約5−約20時間に及ぶか焼時間、400℃より高い温度好ましくは約401−約1100℃より好ましくは約450−約700℃に細孔性物質の前駆物を加熱することにより行われる。好ましくは、溶媒抽出またはか焼の何れも単独で行うことができるが、か焼は、溶媒抽出後に行われる。
【0025】
本発明の方法は、最終生成物の孔のサイズ、孔体積および表面積のような特徴について制御できるように柔軟に改変できる。孔の「整調(tunability)」を達成するために、以下の方法を行うことができる。
【0026】
錯体化段階後、錯体の分解は、例えば、第一の段階で形成される錯体に水または水溶液を添加することによる加水分解により行って細孔性物質の前駆物を得る。
次に、細孔性物質の前駆物は、所望により、約48時間以内に及ぶエージング時間で約20−約120℃でエージングされる。所望により、混合物は、室温における先行するエージングとともにまたはそれなしに、約2日以内で約50−約120℃の温度で加圧容器中でオートクレーブ処理される。
【0027】
次に、細孔性物質の前駆物は、約1−48時間に及ぶ時間約60−約140℃の温度に加熱することにより乾燥してほとんどの揮発性化合物(例えば水、アルコール)を除くことができる。
【0028】
次に、乾燥した物質は、約1−96時間に及ぶ時間約120−約200℃の温度でオートクレーブ処理される。
最後に、細孔性物質の前駆物は、溶媒抽出および/または400℃より高い温度でのか焼により処理して、細孔性物質の前駆物の細孔内に含まれたすべての有機化合物を除いてメソ細孔性または組み合わされたメソ細孔性/ミクロ細孔性の無機酸化物物質を得ることができる。
【0029】
本発明の組成物は、1つ以上のタイプのゼオライトを含むことができる。例えば、予め形成されたゼオライトは、上記の方法の第一の合成段階で得られた錯体に添加できる。ゼオライトの添加は、水または水溶液とともに、或いは水または水溶液の添加後行うことができる。本発明の組成物中の混在物として好適なゼオライトは、ゼオライトY、ゼオライトX、ゼオライトL、ゼオライトA、ゼオライトベータ、モルデン沸石、SSZ−32、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−48、ZSM−58、MCM−22、MCM−36、PSH−3、シリカライト−1およびシリカライト−2を含むがこれらに限定されず、そしてタイプLTL、FAU、MOR、BEA、MFI、MEL、MTW、MWW、DDR、MTT、MFS、FERおよびTONの群から選択できる。
【0030】
より高価でなくそして環境にさらに優しい無機酸化物原料を使用することに加えて、本発明の方法の第二の利点は、最終のか焼前に有機の孔形成剤を回収することである。この回収は、(a)溶媒を使用する抽出および/または(b)窒素、アルゴンまたは他の非酸化性気体下の予備か焼により達成できる。
【0031】
抽出に関して、好適な溶媒は、細孔性の無機酸化物の構造を損なうことなく有機の孔形成剤を溶解できるものである。これらの溶媒は、上記のように、水、アルコール、エーテル、ケトンまたはこれらの混合物から選択できる。孔形成剤は、例えば蒸留により溶媒中のその溶液から回収できる。
【0032】
予備か焼加熱に関して、非酸化性気体例えば窒素またはアルゴンの流れを、細孔形成物質を蒸発および/または分解するのに十分な温度そして無機酸化物構造から孔形成剤のほとんどまたは実質的にすべてを除くのに十分な時間加熱されている細孔性物質の前駆物の上を通す。一般に、温度は、約150−約350℃に及ぶ。時間は、一般に、約1−約16時間に及ぶ。孔形成剤は、その後例えば冷却および凝縮により回収できる。
【0033】
以下の実施例および比較例は、説明のために提供される。実施例は、本発明の特徴を説明する。比較例は、比較の目的でありそして本発明を説明していない。組成の%および部は、他に指示されていない限り重量による。
【0034】
[比較例A]
この比較例Aでは、Ludoxシリカゾルがシリカ源として使用された。まず、92部のLudox HS−40を93部のトリエタノールアミン(TEA)および65部の水と混合した。1時間の攪拌後、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH、35重量%)を、pHの値が10に達するまで、上記の混合物中に添加した。2時間の攪拌後、混合物全体をオートクレーブに移し、そして6時間自然発生の圧力下180℃で水熱処理にかけた。次に、合成混合物を98℃で乾燥して水を除き濃いゲルを得た。乾燥したゲルを次にオートクレーブに移して4時間180℃で他の水熱処理を行った。最後に、乾燥したゲルを、1℃/分の温度勾配で空気中で10時間600℃でか焼した。
【0035】
最終の生成物のX線回折(XRD)パターンは、2θで20−30度の無定形のハローを示し、それは、最終の生成物が十分に規定された構造を有しないことを示す。窒素の吸着は、約200m/gの低い表面積および広い孔サイズの分布を明らかにした。
【0036】
[比較例B]
この比較例Bでは、水ガラスをシリカ源として使用した。まず、19部の水ガラス(〜14重量%NaOH、〜27重量%SiO)を7部の水と混合し、次に25部のテトラエチレングリコール(TEG)を加えた。次に、合成混合物を20時間98℃で乾燥し、そして1℃/分の温度勾配で10時間600℃でか焼した。
【0037】
最終生成物のXRDパターンは、結晶性物質である珪酸ナトリウムを示した。窒素吸着は、表面積は約25m/gを示した。
以下の実施例は、本発明の方法を使用してメソ細孔性物質の製造の点で成功している。
【実施例1】
【0038】
まず、30部のシリカゲル、74部のトリエタノールアミン(TEA)および60部のエチレングリコール(EG)を凝縮器を備えた反応器中に入れた。反応器の内容を機械的攪拌機により十分に混合した後、混合物を攪拌しつつ200−210℃に加熱した。この方法は、凝縮器の頂点からEGの少量とともに、反応中発生する水のほとんどを除いた。その間、EGおよびTEAのほとんどは、反応混合物に残った。約5時間後、加熱を止め、そして反応混合物を55℃への冷却後集めた。この反応混合物は、僅かに茶色を呈し、混合物Iと名付けた。
【0039】
第二に、95部の水および60部の水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH、35%)を攪拌しつつ混合物Iに添加したが、どんなゲルも形成されなかった。未反応シリカゲル粒子を濾去し、そして重量は約8%であった。液状溶液の部分を25時間98℃で乾燥して固体の塊の乾燥した混合物を得た。
【0040】
第三に、乾燥した混合物の1部を、1℃/分の温度勾配で10時間600℃でか焼し、そして最後に白色の粉末サンプルを分析のために得た。
乾燥した混合物のXRDパターンは、2θで約1.1の集中的な反射を示し、それはメソ細孔性物質の特徴を示す。窒素吸着は、860m/gの表面積、0.66cm/gの全孔体積および約3.5nmの平均孔直径を明らかにした。
【実施例2】
【0041】
この実施例は、孔の「整調」、すなわち合成混合物の処理条件(例えば、オートクレーブ加熱の時間および/または温度)の選択的変化により予定された孔直径または孔体積を有する物質を製造する能力を示す。合成混合物および方法は、実施例1のそれと同じである。乾燥した混合物(25時間98℃での乾燥により得られた)を、本明細書でサンプル2−1、2−2および2−3として命名される3つの部分に分割した。これらの3つの部分をオートクレーブに移し、そして表1に示される異なる時間の間180℃でオーブンに入れた。すべての細孔の性質は、窒素吸着により測定した。
【0042】
【表1】

表1で分かるように、孔の直径および体積は、加熱時間の増加とともに増加した。
【実施例3】
【0043】
この実施例は、アルカリ溶液が錯体の加水分解に必要ではないことを示す。まず、24部のシリカゲル、76部のTEAおよび62部のEGを凝縮器を備えた反応器に入れた。実施例1に記載したのと同じ方法に従った。約8時間後、加熱を止めそして僅かに茶色の膠様の錯体液体を、室温に冷却後集めた。
【0044】
第二に、100部の水を、攪拌条件下上記で得られた錯体液体125部に加えた。1時間攪拌後、混合物は濃いゲルを形成し、ゲルを7日間室温でエージングした。
第三に、濃いゲルを、本明細書でサンプル3−1および3−2と名付けられる2つの部分に分割した。2つの部分を2つのオートクレーブに移し、そしてそれぞれ6時間および11時間70℃に加熱した。次に、これらの2つのゲルを23時間98℃で乾燥した。再びそれらをオートクレーブに入れそして24時間180℃に加熱した。最後に、これらの2つの部分を、1℃/分の温度勾配で10時間空気中で600℃でか焼した。
これら4つのサンプルの細孔の性質は、表2にリストされる。
【0045】
【表2】

【実施例4】
【0046】
この実施例は、メソ細孔性アルミナの合成を示す。まず、150重量部の水酸化アルミニウム、320部のTEAおよび240部のEGを凝縮器を備えた反応器に入れた。実施例1に記載されたのと同じ方法を行った。約5時間後、加熱を止め、そして僅かに黄色の液体を、室温に冷却後集めた。
【0047】
第二に、25部の水を、攪拌下50部の上記の錯体液体に添加した。1時間の攪拌後、混合物は濃いゲルを形成した。
第三に、ゲルを12時間80℃で乾燥し、次にオートクレーブに移しそして3時間180℃に加熱した。最後に、ゲルを、1℃/分の温度勾配で10時間空気中で600℃でか焼した。
【0048】
窒素吸着の測定は、最終のアルミナが、約404m/gのBET表面積、4.5nmの平均メソ細孔直径および0.47cm/gの全孔体積を有することを示した。
【実施例5】
【0049】
この実施例は、溶媒として水を用いるソックスレー抽出を示す。まず、200重量部のシリカゲル、555部のTEAおよび418部のEGを、凝縮器を備えた反応器に入れた。実施例3に記載されたのと同じ方法を行った。約6時間後、加熱を止め、そして僅かに茶色の膠様の液体を、室温に冷却後集めた。
【0050】
第二に、100部の水を、攪拌下上記で得られた液体125部に加えた。1時間攪拌後、混合物は濃いゲルを形成し、ゲルを室温で1日間エージングし、その後50時間180℃でオートクレーブ中で熱水処理した。
【0051】
第三に、少量のゲルをセルロース製円筒濾紙に移した。抽出装置のフラスコに、150部の水を満たした。サンプルを9時間抽出した。抽出された物質を2時間120℃で乾燥し、そして2℃/分の温度勾配で4時間500℃でか焼した。得られた物質は、336m/gのBHT表面積、1.15cm/gの孔体積および13.8nmの平均孔直径を有した。
【実施例6】
【0052】
この実施例は、メソ細孔性の酸化マグネシウムの合成を記述している。133部のMgO(99%)を、557部のトリエタノールアミン(99%)および418部のエチレングリコール(無水)の混合物に添加した。混合物を190℃に加熱すると、混合物はペーストになった。物質をさらに1時間連続して加熱し、次に1晩冷却した。
【0053】
30部の上記で得られたペーストを16.2部の水と混合してゲルを得た。このゲルを室温で1日間エージングした。次に、それを12時間98℃で乾燥し、そして1日間180℃で熱水処理をした。得られたゲルを、9時間エタノールによるソックスレー装置で抽出した。得られた物質を空気中で1晩乾燥し、さらに2時間100℃で乾燥し、そして2℃/分の温度勾配で4時間500℃でか焼した。最終生成物は、65m/gのBET表面積、0.44cm/gの全孔体積および27.1nmの平均孔直径を示した。
【実施例7】
【0054】
この実施例は、孔形成剤の主要部分を除くための窒素下の予備か焼の方法を示す。約514部の実施例5で得られたペーストを278部の水と混合し、そして室温で24時間エージングした。混合物を24時間98℃で乾燥して乾燥したゲルを得た。乾燥したゲルを4時間180℃でオートクレーブ中で熱水処理した。
【0055】
次に、乾燥したゲルを管状炉に移した。予備か焼は、300/時の窒素流下行われそして以下の加熱プログラムに従った。3℃/分で190℃、1時間保持;3℃/分で295℃、2時間保持;5℃/分で600℃、1.5時間保持。最後に、気体流を次に、空気の%を15分毎に20%段階的に上げることにより窒素から空気に変え、その間600℃に温度を保持した。この温度を、オーブンを冷却する前に、空気のみでさらに3時間維持した。得られた物質は、43m/gのBET表面積、0.24cm/gの全孔体積および22.2nmの平均孔直径を有した。
【0056】
上述は多くの詳細を含むが、これらの詳細は、本発明を制限するものと考えてはならず、むしろその好ましい態様の例示としてのみ考えるべきである。当業者は、請求の範囲に規定された本発明の範囲および趣旨内の多くの他の態様を考えることができるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)錯体化温度で無機酸化物の源と錯体化剤とを反応させて少なくとも1つの錯体を得る段階、
b)少なくとも1つの錯体を分解して少なくともいくつかの有機の孔形成剤を含む無機酸化物の骨格を有する細孔性物質の前駆物を得る段階、そして
c)溶媒抽出および/またはか焼により無機酸化物の骨格から有機の孔形成剤の少なくとも大部分を除く段階
からなることを特徴とするメソ細孔性またはメソ細孔性/ミクロ細孔性の組み合わせの無機酸化物を製造する方法。
【請求項2】
無機酸化物の源が、元素の周期律表の族IVB、VB、VIB、VIIB、III、IB、IIB、IIIB、VIII、VA、IIIA、IVA、IIAおよびランタニドの1つの少なくとも1つの元素の少なくとも1つの無機酸化物を含む請求項1の方法。
【請求項3】
無機酸化物が、Si、Al、Ti、V、Cr、Zn、Fe、Sn、Mo、Ga、Ni、Co、Zr、Cu、Mg、Bi、Nb、Mn、Sb、La、Ce、TeおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素の少なくとも1つの酸化物を含む請求項2の方法。
【請求項4】
無機酸化物の源が、テトラエチルオルソシリケートおよびアルミニウムイソプロポキシド、シラトラン、アルマトランおよびチタナトランからなる群から選ばれる有機化合物を含む請求項1の方法。
【請求項5】
無機酸化物の源が、Si、Al、Ti、V、Cr、Zn、Fe、Sn、Mo、Ga、Ni、Co、Zr、Cu、Mg、Bi、Nb、Mn、Sb、La、Te、CeおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属の水和されたまたは水和されていない酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩またはアンモニウム塩から選ばれる請求項1の方法。
【請求項6】
無機酸化物の源が、シリカゲル、シリカヒドロゲル、シリカエロゲルおよび燻蒸シリカからなる群から選ばれるシリカ源である請求項1の方法。
【請求項7】
無機酸化物の源が、水酸化アルミニウムまたはアルミナである請求項1の方法。
【請求項8】
無機酸化物の源が、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる請求項1の方法。
【請求項9】
錯体化剤がアミノ基を有する有機化合物である請求項1の方法。
【請求項10】
錯体化剤がアルカノールアミンである請求項9の方法。
【請求項11】
アルカノールアミンが、トリエタノールアミン、トリ−イソプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、トリス−ヒドロキシメチレンアミノメタン、N、N−ジメチルエタノールアミンおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項10の方法。
【請求項12】
錯体化剤がグリコール溶媒と組み合わされる請求項1の方法。
【請求項13】
グリコール溶媒が、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびテトラプロピレングリコールからなる群から選ばれる請求項12の方法。
【請求項14】
錯体化温度が約150℃から約250℃に及ぶ請求項1の方法。
【請求項15】
錯体を分解する段階(b)が、酸性、塩基性または中性のpHの水性流体による錯体の加水分解を含む請求項1の方法。
【請求項16】
錯体を分解する段階(b)が、約251℃から約400℃の温度で錯体をか焼することを含む請求項1の方法。
【請求項17】
溶媒抽出が、水、アルコール、エーテル、ケトン、エステルおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる溶媒中に細孔性物質の前駆物を浸漬することを含む請求項1の方法。
【請求項18】
段階(c)のか焼が、約48時間以内で約401℃から約1100℃の温度に細孔性物質の前駆物を加熱することを含む請求項1の方法。
【請求項19】
約48時間以内で約20℃から約120℃の温度で細孔性物質の前駆物をエージングする段階をさらに含む請求項1の方法。
【請求項20】
細孔性物質の前駆物をエージングした後に細孔性物質の前駆物を乾燥する段階をさらに含む請求項1の方法。
【請求項21】
約4日以内で高圧下細孔性物質の前駆物を加熱する段階をさらに含む請求項1の方法。
【請求項22】
ゼオライトを段階(a)の錯体に添加する段階をさらに含む請求項1の方法。
【請求項23】
該ゼオライトが、ゼオライトY、ゼオライトX、ゼオライトL、ゼオライトA、ゼオライトベータ、モルデン沸石、SSZ−32、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−48、ZSM−58、MCM−22、MCM−36、PSH−3、シリカライト−1およびシリカライト−2からなる群から選ばれる請求項22の方法。
【請求項24】
細孔性物質の前駆物から有機の孔形成剤を回収する段階をさらに含む請求項1の方法。

【公表番号】特表2007−522066(P2007−522066A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551375(P2006−551375)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/002209
【国際公開番号】WO2005/072870
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(500443589)エイビービー ラマス グローバル インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】