説明

メタクリル樹脂組成物

【課題】耐熱性に優れた導光板を作製することができるメタクリル樹脂組成物の提供。
【解決手段】メタクリル樹脂組成物は、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとを含み、メタクリル酸メチルの含有割合が97重量%以上である単量体成分が重合してなる共重合体を含有し、濃度0.5g/50mLのクロロホルム溶液として測定した25℃における還元粘度が0.46〜0.55dL/gであり、37.3N荷重で測定した230℃におけるMFRが8g/10分以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板を例えば射出成形により作製するための成形材料として有用なメタクリル樹脂組成物、並びにその使用および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル樹脂は、優れた透明性を有しているため、従来から導光板の成形材料として利用されており、かかる導光板は、通常、射出成形により作製されている。このように射出成形によって導光板のような光学用部品を得るための成形材料としては、これまでに種々のメタクリル樹脂組成物が報告されている(特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−269291号公報
【特許文献2】特開平08−302145号公報
【特許文献3】特開平08−253650号公報
【特許文献4】特開平08−280746号公報
【特許文献5】特開2006−298966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えばノートパソコンやモニター等の各種液晶ディスプレイのバックライトユニットの部材などに使用される導光板は、長時間高温に曝されることがあり、そのような場合には、高い耐熱性を有する導光板が求められる。ところが、上述した従来のメタクリル樹脂組成物では、耐熱性の点で必ずしも満足できる導光板が得られなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、耐熱性に優れた導光板を作製することができるメタクリル樹脂組成物と、その使用および用途とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとを含み、メタクリル酸メチルを一定以上の高い含有割合で含む単量体成分が重合してなる共重合体を含有するとともに、還元粘度およびMFRが特定範囲である樹脂組成物であれば、高い耐熱性を有する導光板を射出成形などで作製できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとを含み、メタクリル酸メチルの含有割合が97重量%以上である単量体成分が重合してなる共重合体を含有し、濃度0.5g/50mLのクロロホルム溶液として測定した25℃における還元粘度が0.46〜0.55dL/gであり、37.3N荷重で測定した230℃におけるMFRが8g/10分以上であることを特徴とする導光板用メタクリル樹脂組成物。
(2)前記単量体成分中のアクリル酸エステルの含有割合が0.1重量%以上である前記(1)に記載のメタクリル樹脂組成物。
(3)前記単量体成分は、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を0.02〜0.3重量%含有する前記(1)又は(2)に記載のメタクリル樹脂組成物。
(4)前記単量体成分の重合は、塊状重合により行われる前記(1)〜(3)のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物。
(5)メタクリル樹脂組成物総量に対して0.01〜1.0重量%の離型剤を含有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物。
(6)熱安定化剤を含有する前記(1)〜(5)のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物。
(7)射出成形に供される前記(1)〜(6)のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物。
(8)導光板を射出成形するための、前記(1)〜(7)のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物の使用。
(9)前記(1)〜(7)のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物を射出成形して得られることを特徴とする導光板。
【発明の効果】
【0008】
本発明のメタクリル樹脂組成物によれば、耐熱性に優れた導光板を作製することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(メタクリル樹脂組成物)
本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとを含み、メタクリル酸メチルの含有割合が97重量%以上である単量体成分が重合してなる共重合体を含有するものである。詳しくは、前記共重合体を構成する単量体成分は、メタクリル酸メチル(a)とアクリル酸エステル(b)とを必須とし、これら以外に、メタクリル酸メチルまたはアクリル酸エステルと共重合可能な単量体(c)を含みうるものである。
【0010】
前記単量体成分中、メタクリル酸メチル(a)の含有割合は97重量%以上であり、好ましくは97〜99.9重量%、より好ましくは97〜99.5重量%である。また、前記単量体成分中、アクリル酸エステル(b)の含有割合は、3重量%以下となり、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上である。アクリル酸エステル(b)が3重量%を超えると、得られる成形体(導光板)の耐熱性を充分に高めることができない。
【0011】
前記アクリル酸エステル(b)としては、得られる共重合体のガラス転移温度を下げうるアクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロペンタジエン等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチルやアクリル酸エチルが好ましい。なお、前記アクリル酸エステル(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0012】
前記メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体(c)としては、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体や、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体が挙げられる。具体的には、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロペンタジエン等のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸またはこれらの酸無水物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の窒素含有モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;等が挙げられ、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートの如きグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルの如き不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートの如き多塩基酸のポリアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレートの如き多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼン;等が挙げられる。なお、前記単量体(c)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0013】
前記単量体成分は、前記単量体(c)として上述したラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を含有することが好ましい。かかる多官能単量体を含有させることにより、樹脂組成物のMFRを高め、射出成形時の金型への充填性を向上させることができる。前記多官能単量体を含有する場合、単量体成分中に占める前記多官能単量体の含有割合は、通常0.02〜0.3重量%、好ましくは0.05〜0.1重量%である。前記多官能単量体が少なすぎると、MFRを充分に高めることができない場合があり、一方、前記多官能単量体が多すぎると、得られる成形体(導光板)の機械的強度が低下するおそれがある。
【0014】
前記単量体成分の好ましい態様は、メタクリル酸メチル97重量%以上と、アクリル酸エステル2.98重量%以下と、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体0.02〜0.3重量%とからなる態様である。
【0015】
前記単量体成分を重合する際の重合方法については、特に制限はなく、例えば、懸濁重合、溶液重合、塊状重合などの公知の重合法を採用することができるが、中でも、塊状重合が好ましい。塊状重合は、例えば、単量体成分および重合開始剤等を反応容器の中に連続的に供給しながら、反応容器内に所定時間滞留させて得られる部分重合体を連続的に抜き出すことにより行うことができ、高い生産性で重合体を得ることができる。
【0016】
前記単量体成分を重合する際に用いられる重合開始剤は、特に制限されるものではなく、例えば、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ化合物、1,1―ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンの如き過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。なお、重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0017】
前記単量体成分を重合する際には、必要に応じて、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に制限されないが、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート等のメルカプタン類等が好ましく挙げられる。なお、連鎖移動剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0018】
前記単量体成分を共重合する際の重合温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類や量により適宜調整されるが、通常100〜200℃、好ましくは120〜180℃である。重合温度が高すぎると、得られる共重合体のシンジオタクティシティーが低くなるため、得られた成形体(導光板)がその形状を維持しうるだけの充分な耐熱性が得られないおそれがある。
【0019】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、前記共重合体とともに、メタクリル樹脂組成物総量に対して0.01〜1.0重量%の離型剤を含有することが好ましい。より好ましくは、離型剤の含有量はメタクリル樹脂組成物総量に対して0.05〜0.5重量%であるのがよい。これにより、射出成形した場合に得られた成形体を金型から離型する際の離型性を向上させることができる。
前記離型剤としては、特に制限されないが、例えば、高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。なお、離型剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0020】
前記高級脂肪酸エステルとしては、具体的には、例えば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸オクチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸プロピル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸オクチルの如き飽和脂肪酸アルキル;オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸オクチル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸プロピル、リノール酸ブチル、リノール酸オクチルの如き不飽和脂肪酸アルキル;ラウリン酸モノグリセリド、ラウリン酸ジグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、パルミチン酸ジグリセリド、パルミチン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ベヘン酸モノグリセリド、ベヘン酸ジグリセリド、ベヘン酸トリグリセリドの如き飽和脂肪酸グリセリド;オレイン酸モノグリセリド、オレイン酸ジグリセリド、オレイン酸トリグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リノール酸ジグリセリド、リノール酸トリグリセリドの如き不飽和脂肪酸グリセリド;等が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド等が好ましい。
【0021】
前記高級脂肪族アルコールとしては、具体的には、例えば、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールの如き飽和脂肪族アルコール;オレイルアルコール、リノリルアルコールの如き不飽和脂肪族アルコール;等が挙げられる。これらの中でも、ステアリルアルコールが好ましい。
前記高級脂肪酸としては、具体的には、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸の如き飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リシノール酸の如き不飽和脂肪酸;等が挙げられる。
【0022】
前記高級脂肪酸アミドとしては、具体的には、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドの如き飽和脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、リノール酸アミド、エルカ酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド;エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−オレイルステアロアミドの如きアミド類;等が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸アミドやエチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
前記高級脂肪酸金属塩としては、例えば、上述した高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等が挙げられる。
【0023】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、前記共重合体とともに、前記共重合体の熱分解を抑制するための熱安定化剤を含有することが好ましく、より好ましくは、熱安定化剤の含有量がメタクリル樹脂組成物総量に対して1〜2000重量ppmであるのがよい。本発明のメタクリル樹脂組成物を射出成形して所望の導光板を成形する際、成形効率を高める目的で成形温度を高めに設定することがあり、そのような場合に熱安定化剤を配合するとより効果的である。
前記熱安定化剤としては、特に制限されないが、例えば、リン系熱安定化剤や有機ジスルフィド化合物などが挙げられ、中でも、有機ジスルフィド化合物が好ましい。なお、熱安定化剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0024】
前記リン系熱安定化剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0025】
前記有機ジスルフィド化合物としては、例えば、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジ−n−プロピルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ−sec−ブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジ−tert−アミルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジ−tert−オクチルジスルフィド、ジ−n−ドデシルジスルフィド、ジ−tert−ドデシルジスルフィドなどが挙げられる。これらの中でも、ジ-tert−アルキルジスルフィドが好ましく、さらに好ましくはジ−tert−ドデシルジスルフィドである。
【0026】
本発明のメタクリル樹脂組成物には、上述した共重合体や離型剤、熱安定化剤のほかに、必要に応じて、紫外線吸収剤、光拡散剤、酸化防止剤、帯電防止剤などの各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよい。
なお、本発明のメタクリル樹脂組成物が上述した離型剤、熱安定化剤もしくは各種添加剤(以下、纏めて「添加物」と称する)を含有する場合、それらは、(I)前記単量体成分を重合して得られた共重合体と添加物とを単独押出機や二軸押出機に入れて加熱溶融混練により混合する方法、(II)前記単量体成分と添加物とを混合し、これを重合反応に付すことにより重合する方法、(III)上記(I)の重合体からなるペレットもしくはビーズの表面に添加物を付着させておき、成形時に同時に混合する方法、等の方法によって含有させればよい。
【0027】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、濃度0.5g/50mLのクロロホルム溶液として測定した25℃における還元粘度が0.46〜0.55dL/gである。前記還元粘度は、好ましくは0.47〜0.51dL/g、より好ましくは0.47〜0.50dL/gであるのがよい。前記還元粘度が0.46dL/g未満であると、得られる成形体(導光板)の耐熱性を充分に高めることができない。一方、前記還元粘度が0.55dL/gを超えると、射出成形時の金型への充填性が悪くなる。なお、還元粘度を前記範囲とするには、前記単量体成分を重合する際に用いる連鎖移動剤の使用量を調整すればよく、具体的には、連鎖移動剤の量を増やせば、還元粘度を低くすることができる。
【0028】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、射出成形時の金型への充填性を確保するため、37.3N荷重で測定した230℃におけるMFRが8g/10分以上である。前記MFRは、好ましくは8〜12g/10分、より好ましくは8〜11g/10分であるのがよい。なお、MFRは、還元粘度、前記単量体成分の組成(アクリル酸エステルおよび多官能単量体の含有割合)、および単量体成分を重合する際の重合温度に依存されるものであり、MFRを前記範囲とするには、例えば、所定の重合温度とした際に還元粘度や前記単量体成分の組成を調整すればよい。具体的には、所定の重合温度において、還元粘度を低く設定するか、単量体成分中のアクリル酸エステルの含有割合を増やすか、単量体成分中の多官能単量体の含有割合を増やすようにすると、MFRを高くすることができる。
以上のような本発明のメタクリル樹脂組成物は、耐熱性が要求される導光板を作製するための成形材料として有用であり、特に、射出成形に供される成形材料として好適に使用される。
【0029】
本発明の導光板は、前記本発明のメタクリル樹脂組成物を射出成形して得られるものである。詳しくは、本発明の導光板は、本発明のメタクリル樹脂組成物を成形材料とし、これを溶融状態で金型に充填(射出)し、次いで冷却後、成形された成形体を金型から剥離することにより得られるものであり、具体的には、例えば、本発明のメタクリル樹脂組成物をホッパーから投入し、スクリューを回転させながら後退させて、シリンダー内に樹脂組成物を計量し、該樹脂組成物を溶融させ、溶融した樹脂組成物を圧力をかけながら金型内に充填し、金型が充分に冷めるまで一定時間保圧した後、型を開いて成形体を取り出すことにより、作製することができる。なお、本発明の導光板を作製する際の諸条件(例えば、成形材料の溶融温度、成形材料を金型に射出する際の金型温度、樹脂組成物を金型に充填した後保圧する際の圧力など)については、適宜設定すればよく、特に限定されない。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
なお、得られた樹脂組成物の各種物性の測定およびその評価は下記の方法で行なった。
【0031】
<還元粘度>
ISO 1628−6に準拠して、試料0.5gをクロロホルム50mLに溶解させ、25℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。
<MFR>
JIS− K7210に準拠して、230℃、37.3N荷重で測定し、10分間当たりの値に換算した。
<耐熱性(ビカット軟化温度)>
JIS−K7206(B50法)に準拠して、ヒートディストーションテスター((株)安田精機製作所製「148−6連型」)を用いて、ビカット軟化温度を測定した。ビカット軟化温度が高いほど、耐熱性に優れていると言える。
【0032】
(実施例1)
攪拌機を備えた重合反応器に、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と略す)98重量部、アクリル酸メチル(以下「MA」と略す)2重量部、およびエチレングリコールジメタクリレート(以下「EGDM」と略す)0.1重量部の混合物(単量体成分)と、重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.02重量部と、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.35重量部と、熱安定化剤として、最終的に得られる樹脂組成物総量の10重量ppm程度に相当する量のジ−tert−ドデシルジスルフィドとを、それぞれ連続的に供給し、175℃にて平均滞留時間40分間で重合反応を行った。次いで、重合反応器から出てきた反応液(部分共重合体)を脱揮押出機に供給し、未反応の単量体成分を気化させて回収するとともに、離型剤として、最終的に得られる樹脂組成物総量の0.1重量%に相当する量(0.1重量部)のステアリン酸モノグリセライドと、最終的に得られる樹脂組成物総量の0.03重量%に相当する量(0.03重量部)のステアリン酸メチルとを添加し、充分に混練した後、賦形して、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。
得られたメタクリル樹脂組成物の還元粘度およびMFRは表1に示す通りであり、この樹脂組成物の耐熱性をビカット軟化温度により評価したところ、表1に示す結果となった。
【0033】
(比較例1)
実施例1におけるMMAの量を95重量部に、MAの量を5重量部に変更するとともに、連鎖移動剤として用いたn−オクチルメルカプタンの量を0.35重量部から0.30重量部に変更したこと以外、実施例1と同様にして、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。
得られたメタクリル樹脂組成物の還元粘度およびMFRは表1に示す通りであり、この樹脂組成物の耐熱性をビカット軟化温度により評価したところ、表1に示す結果となった。
【0034】
(比較例2)
実施例1におけるMMAの量を95重量部に、MAの量を5重量部に、EGDMの量を0重量部に変更するとともに、連鎖移動剤として用いたn−オクチルメルカプタンの量を0.35重量部から0.20重量部に変更し、かつ、離型剤として用いたステアリン酸モノグリセライドおよびステアリン酸メチルを使用せず、代わりに、最終的に得られる樹脂組成物総量の0.1重量%に相当する量(0.1重量部)のステアリルアルコールを離型剤として用いたこと以外、実施例1と同様にして、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。
得られたメタクリル樹脂組成物の還元粘度およびMFRは表1に示す通りであり、この樹脂組成物の耐熱性をビカット軟化温度により評価したところ、表1に示す結果となった。
【0035】
(比較例3)
実施例1におけるMMAの量を95重量部に、MAの量を5重量部に変更するとともに、連鎖移動剤として用いたn−オクチルメルカプタンの量を0.35重量部から0.40重量部に変更したこと以外、実施例1と同様にして、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。
得られたメタクリル樹脂組成物の還元粘度およびMFRは表1に示す通りであり、この樹脂組成物の耐熱性をビカット軟化温度により評価したところ、表1に示す結果となった。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとを含み、メタクリル酸メチルの含有割合が97重量%以上である単量体成分が重合してなる共重合体を含有し、濃度0.5g/50mLのクロロホルム溶液として測定した25℃における還元粘度が0.46〜0.55dL/gであり、37.3N荷重で測定した230℃におけるMFRが8g/10分以上であることを特徴とする導光板用メタクリル樹脂組成物。
【請求項2】
前記単量体成分中のアクリル酸エステルの含有割合が0.1重量%以上である請求項1に記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項3】
前記単量体成分は、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を0.02〜0.3重量%含有する請求項1又は2に記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項4】
前記単量体成分の重合は、塊状重合により行われる請求項1〜3のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項5】
メタクリル樹脂組成物総量に対して0.01〜1.0重量%の離型剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項6】
熱安定化剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項7】
射出成形に供される請求項1〜6のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項8】
導光板を射出成形するための、請求項1〜7のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物の使用。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物を射出成形して得られることを特徴とする導光板。

【公開番号】特開2010−285483(P2010−285483A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138571(P2009−138571)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】