説明

メッキ鋼板用洗浄剤組成物

【課題】洗浄性が向上され、さらに亜鉛等のメッキ面を保護し、表面処理鋼板の生産性を向上させるメッキ鋼板用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)アルカリ剤(炭酸塩及びリン酸塩を除く)、(b)炭酸塩、(c)リン酸塩、並びに(d)非イオン界面活性を配合してなるメッキ鋼板用洗浄剤組成物であって、(a)、(b)及び(c)を特定の重量比で配合してなるメッキ鋼板用洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、主に鉄、アルミ、銅などに亜鉛等のメッキ処理を施した金属帯に塗装などの表面処理を行う連続生産ラインにおいて使用される洗浄剤組成物及び該組成物を得るためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、メッキ、塗装等の鋼板表面の表面処理を行う前処理として必要な脱脂洗浄に有用な、アルカリ剤と特定の非イオン界面活性剤を組み合せたアルカリ洗浄剤組成物が開示されている。
【0003】
特許文献2には、水酸化ナトリウム、炭酸二ナトリウム及びリン酸三ナトリウムを混合したアルカリ剤と特定の非イオン界面活性剤を組み合せた硬質表面用のアルカリ洗浄剤組成物が開示されている(実施例58〜60)。
【特許文献1】特開平10−280179号公報
【特許文献2】特開平10−324900号公報(実施例58〜60)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、亜鉛等のメッキ処理された鋼板表面に対して、メッキを損なうことなく、良好な洗浄性を発現するメッキ鋼板用洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
メッキ鋼板の表面洗浄に、特許文献1に開示される、メッキ処理を行う前処理として必要な脱脂洗浄に有用なアルカリ洗浄剤組成物を使用すると、アルカリ剤が水酸化ナトリウムのような強アルカリであると、メッキが腐食し易くなり、アルカリ剤が炭酸塩やリン酸塩の場合は、脱脂洗浄に良好な高いpHを達成することが困難となる。
【0006】
一方、メッキ鋼板の表面洗浄に、特許文献2の実施例58〜60に開示される、アルカリ剤と特定の非イオン界面活性剤を組み合せた硬質表面用のアルカリ洗浄剤組成物を使用しても、メッキの腐食を抑制することができない。
【0007】
本発明者等は、強アルカリ剤、炭酸塩及びリン酸塩が特定の割合のときにのみ、メッキ鋼板用洗浄剤組成物が、高いpHを維持した上で、メッキ鋼板洗浄時のメッキ腐食を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、(a)アルカリ剤(炭酸塩及びリン酸塩を除く)、(b)炭酸塩、(c)リン酸塩、並びに(d)非イオン界面活性剤を配合してなるメッキ鋼板用洗浄剤組成物であって、(a)、(b)及び(c)の重量比が(a)/(b)/(c)=1/(5〜25)/(0.4〜5)となるように(a)、(b)及び(c)を配合してなるメッキ鋼板用洗浄剤組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、(a)アルカリ剤(炭酸塩及びリン酸塩を除く)〔以下、(a)成分という〕、(b)炭酸塩〔以下、(b)成分という〕、(c)リン酸塩〔以下、(c)成分という〕、並びに(d)非イオン界面活性剤〔以下、(d)成分という〕を含有し、(a)、(b)及び(c)の重量比が(a)/(b)/(c)=1/(5〜25)/(0.4〜5)であるメッキ鋼板用洗浄剤組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、上記本発明のメッキ鋼板用洗浄剤組成物を得るためのキットであって、
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分のうち、1つ〜3つを含む組成物(イ)、
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分のうち、組成物(イ)に含まれない残りの1つ〜3つを含む組成物(ロ)、
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分のうち、組成物(イ)及び(ロ)に含まれないものがある場合、その1つ〜2つを含む組成物(ハ)、並びに
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分のうち、組成物(イ)、(ロ)及び(ハ)に含まれないものがある場合、それを含む組成物(ニ)とを含んで構成され、使用時に(a)/(b)/(c)=1/(5〜25)/(0.4〜5)の重量比となるように混合されるキットに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、亜鉛等のメッキ処理された鋼板表面に対して、メッキを損なうことなく、良好な洗浄性を発現するメッキ鋼板用洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[(a)成分]
(a)成分は、油脂を鹸化し油汚れを除去分散させたり、固体汚れに電荷を付与し分散させる、洗浄性に寄与する成分である。本発明に用いられる(a)成分のアルカリ剤としては、水溶性のアルカリ剤であればいずれのものも使用できる。具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム、一号珪酸ナトリウム、二号珪酸ナトリウム、三号珪酸ナトリウム等の珪酸塩、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩等が挙げられる。2種以上の水溶性アルカリ剤を組み合わせても良い。好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウムであり、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであり、更に好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0013】
[(b)成分]
(b)成分は、亜鉛等のメッキ材の腐食(溶出)を防止する成分、すなわち、洗浄中のメッキ保護に寄与する成分である。(b)成分としては、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムであり、より好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウムである。
【0014】
[(c)成分]
(c)成分は、亜鉛等のメッキ材の腐食(溶出)を防止する成分、すなわち、洗浄中のメッキ保護に寄与する成分である。(c)成分としては、好ましくは、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、リン酸ニ水素カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウムであり、より好ましくはリン酸三ナトリウム、リン酸三カリウムであり、更に好ましくはリン酸三ナトリウムである。
【0015】
[(d)成分]
(d)成分は、油汚れを乳化、除去する、洗浄性の向上に寄与する成分である。(d)成分の非イオン界面活性剤としては、炭素数4〜24のアルコール、特に炭素数4〜24の直鎖又は分岐鎖アルコールのアルキレンオキサイド付加物、アルキル(アルキル基の炭素数5〜12、アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい)フェノールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、炭素数4〜24の直鎖又は分岐鎖アルコールのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、一般式(I)〜(V)で表される化合物が更に好ましい。
【0016】
1O-<EOn/POm>-H (I)
2O-(EO)x1-(PO)y1-(EO)x2-H (II)
3O-[EOx3/POy2]-(EO)x4-H (III)
4O-(EO)x5-[EOx6/POy3]-(PO)y4-[EOx7/POy5]-(EO)x8-H (IV)
5O-(EO)z-H (V)
【0017】
〔式中、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。R1は炭素数4〜14の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、nはオキシエチレン基の平均付加モル数、mはオキシプロピレン基の平均付加モル数を表し、nは0〜20、mは0超20以下の数であり、好ましくは式α=0.33×n−0.15×m−0.475×(R1の炭素数)+2.6によって計算されるαが−2.0<α<1.9を満たす。R2、R3及びR4はそれぞれ独立に炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、x1, x2, x3, x4, x5, x6, x7及びx8はエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、好ましくはx1, x2, x3, x4, x5及びx8はそれぞれ1以上の数、より好ましくはx1+x2≧4、x3+x4≧4、x5+x6+x7+x8≧4、x6+x7≧1である。y1, y2, y3, y4及びy5はプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、好ましくは0<y1<x1+x2、0<y2<x3+x4、y3+y5≧0.1、y3≧0、y4≧0、y5≧0、y3+y4+y5<x5+x6+x7+x8である。また、< >で囲まれた部分はランダム付加でもブロック付加でもよいことを、[ ]で囲まれた部分はランダム付加、( )で囲まれた部分はブロック付加であることを示す。R5は炭素数5〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、zはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す数で、R5が炭素数5〜10である場合にはzは1〜20、R5が炭素数11〜12の場合にはzは6〜20である。〕
【0018】
一般式(I)において、R1は炭素数4〜14の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、直鎖の場合より好ましくはR1は炭素数6〜10、分岐鎖の場合より好ましくはR1は炭素数8〜14である。nはオキシエチレン基の平均付加モル数、mはオキシプロピレン基の平均付加モル数を表し、0≦n≦20、0<m≦20であり、好ましくは上記の式で表されるαが−2.0<α<1.9を満たすものである。αがこの範囲にあると浸透性と乳化性のバランスがよく、良好な脱脂性が得られる。αは一般式(I)において極めて優れた脱脂効果に寄与する化合物をR1、n及びmで規定した指標である。かかる一般式(I)の化合物〔以下、化合物(I)成分という〕は、(a)成分、(b)成分、(c)成分との併用において良好な脱脂性を示すものであるが、化合物(I)の構造によっては、洗浄性(脱脂効果)にバラツキが生じることが判明した。そこで、更に、化合物(I)の構造と脱脂効果との関係を詳細に検討した結果、オキシエチレン基の平均付加モル数n及びオキシプロピレン基の平均付加モル数mと、脱脂効果とに相関があることが見出され、種々のR1の化合物について、nを横軸(X軸)とmを縦軸(Y軸)とするグラフに脱脂効果をプロットして、より優れた効果が得られる範囲を検討した結果、一定の傾きを持つ2つの直線の範囲内に収まることがわかった。その2つ直線の傾きを算出し、nとmを変数とする1次方程式におきかえ、一方の直線を範囲の上限とし、他方の直線を範囲の下限とすることを表現するために不等式を採用して上記αの算出式に到達したものである。すなわち、化合物(I)についてのαの算出式は、(a)成分、(b)成分、(c)成分との併用において、より脱脂性に優れた効果が得られる化合物(I)の構造について行った種々の実験に基づいて導出されたものである。
【0019】
なお、化合物(I)において、オキシエチレン、オキシプロピレンの付加形態はブロックでもランダムでもよく、ブロックの場合はオキシエチレンとオキシプロピレンの位置が逆でも良い。しかしオキシプロピレン−オキシエチレンの順番でR1Oにブロック付加したものがより好ましい。
【0020】
一般式(I)で表される化合物は平均分子量が130〜1000が好ましく、130〜700がより好ましい。オキシエチレン基及びオキシプロピレン基の好ましい平均付加モル数は、0≦n<8、且つ0<m<5であり、3<n<8であることがより好ましい。またαの値として直鎖の場合、より好ましいのは−1.3<α<1.6であり、さらに好ましくは−1.3<α<0.7であり、特に好ましくは−0.8<α<0.7であり、最も好ましくは−0.3<α<0.3である。分岐鎖の場合、より好ましいのは−2.0<α<1.6であり、さらに好ましくは−2.0<α<1.0であり、最も好ましくは−2.0<α<0.3である。
【0021】
一般式(II)〜(IV)において、R2、R3及びR4は、洗浄性の観点から、炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、好ましくは炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、更に好ましくは炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、特に好ましくは炭素数10〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。
【0022】
一般式(II)で表される化合物において、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示すx1及びx2はそれぞれ1以上の数であり、水との相溶性の観点から、好ましくはx1とx2の和は4以上の数である。またx1とx2の和が20を越えても洗浄性能は変わらないが、排水処理や発泡抑制等の観点から、x1とx2の和は、好ましくは20以下の数であり、さらに好ましくは6〜15の数である。また、一般式(II)で表される化合物のプロピレンオキサイドの平均付加モル数y1は、洗浄性や生分解性等の観点から、0より大きく、エチレンオキサイドの平均付加モル数であるx1とx2の和より小さい数であり、好ましくは 0.5〜6、より好ましくは1〜5の数である。
【0023】
一般式(III)で表される化合物において、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示すx3及びx4はそれぞれ1以上の数であり、水との相溶性の観点から、好ましくはx3とx4の和は4以上の数である。またx3とx4の和が20を越えても洗浄性能は変わらないが、排水処理や発泡抑制等の観点から、x3とx4の和は、好ましくは20以下の数であり、さらに好ましくは6〜15の数である。また、一般式(III)で表される化合物のプロピレンオキサイドの平均付加モル数y2は、洗浄性や生分解性等の観点から、好ましくは0より大きく、エチレンオキサイドの平均付加モル数であるx3とx4の和より小さい数であり、より好ましくは 0.5〜6、更に好ましくは1〜5の数である。
【0024】
一般式(IV)で表される化合物において、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示すx5及びx8はそれぞれ1以上の数であり、x6とx7の和は1以上の数で、水との相溶性の観点から、好ましくはx5とx6とx7とx8の和は4以上の数である。またx5とx6とx7とx8の和が20を越えても洗浄性能は変わらないが、排水処理や発泡抑制等の観点から、x5とx6とx7とx8の和は、好ましくは20以下の数であり、さらに好ましくは6〜15の数である。また、一般式(IV) で表される化合物のプロピレンオキサイドの平均付加モル数y3, y4, y5はそれぞれ0以上であり、好ましくはy3+y5≧0.1、より好ましくはy3+y5≧1である。y3とy4とy5の和は、洗浄性や生分解性等の観点から、エチレンオキサイドの平均付加モル数であるx5とx6とx7とx8の和より小さい数であり、好ましくは 0.5〜6、より好ましくは1〜5の数である。
【0025】
一般式(V)において、R5は、好ましくは炭素数が6〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、R5が炭素数6〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基の場合にはオキシエチレン基の平均付加モル数zは1〜10、R5が炭素数9〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基の場合にはオキシエチレン基の平均付加モル数zは4〜10である。さらにより好ましくは、R5が炭素数6〜7の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基の場合にはzは2〜8、R5が炭素数が8〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基の場合にはzは4〜8である。
【0026】
泡を抑制する観点から、一般式(I)〜(V)のR1〜R5は2級アルキル基であることが更に好ましい。
【0027】
これらの非イオン界面活性剤の中では、一般式(II)〜(IV)で表される化合物が好ましく、下記一般式(II−1)、(III−1)又は(IV−1)で表される化合物が更に好ましい。
【0028】
Ra−O−(EO)x1−(PO)y1−(EO)x2−H (II−1)
Rb−O−[EOx3/POy2]−(EO)x4−H (III−1)
Rc−O−(EO)x5−[EOx6/POy3]−(PO)y4−[EOx7/POy5]−(EO)x8−H (IV−1)
【0029】
〔式中、Ra、Rb及びRcはそれぞれ独立に炭素数6〜24の2級アルキル基を示し、EO,PO,x1, x2, x3, x4,x5, x6, x7,x8,y1, y2, y3, y4及びy5は前記の意味を示す。また、[ ]で囲まれた部分はランダム付加、( )で囲まれた部分はブロック付加であることを示す。〕
【0030】
一般式(II−1)及び(IV−1)で表される化合物を得る際に用いられるエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加する前の原料の具体例として、日本触媒化学工業(株)製、商品名ソフタノール30、ソフタノール50、ソフタノール70、ソフタノール90、ソフタノールEP5035、ソフタノールEP7025、ソフタノールEP7045、ソフタノールEP9050等が挙げられる。また、一般式(III−1)で表される化合物は、2級アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加して得ることができる。
【0031】
[(e)成分]
本発明の組成物は、(e)成分として、アミノアルコールを含有することが好ましい。(e)成分は、亜鉛等のメッキ材の腐食(溶出)防止(洗浄中のメッキ保護)の観点で好ましい成分である。(e)成分としては、好ましくは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、t−ブチルエタノールアミン、t−ブチルジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、エタノールジプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミンであり、より好ましくはジエタノールアミン、トリエタノールアミンである。
【0032】
[(f)成分]
本発明の組成物は、(f)成分として、キレート剤を含有することが好ましい。(f)成分は、硬度成分の析出防止、固体汚れの分散性向上の観点で好ましい成分である。(f)成分としては、グリセリン酸、テトロン酸、ペントン酸、ヘキソン酸、ヘプトン酸等のアルドン酸類のアルカリ金属塩もしくは低級アルキルアミン塩、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、テトラエチレンテトラミン六酢酸等のアミノカルボン酸類のアルカリ金属塩もしくは低級アルキルアミン塩、クエン酸、リンゴ酸等のオキシカルボン酸類のアルカリ金属塩もしくは低級アルキルアミン塩、アミノトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸等のホスホン酸類のアルカリ金属塩もしくは低級アルキルアミン塩が挙げられ、好ましくは、グルコン酸、グルコヘプトン酸、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、リンゴ酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸のアルカリ金属塩もしくは低級アルキルアミン塩であり、特に好ましくは、グルコン酸ナトリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸ナトリウムである。
【0033】
[洗浄剤組成物]
本発明の洗浄剤組成物は供給方法に応じて様々な形態をとることができる。具体的には、液体、スラリー、ペースト、固体(粉体、粉末、顆粒等)などであり、(a)〜(d)成分、更には(e)〜(f)それぞれを個別に供給して得た組成物を水で希釈して洗浄液とする事も可能である。本発明の洗浄剤組成物の製造方法には特に限定がなく、(a)〜(f)成分は任意の順序で混合することができる。
【0034】
本発明の組成物において、(a)成分、(b)成分、(c)成分の重量比は、(a)/(b)/(c)=1/(5〜25)/(0.4〜5)であり、好ましくは1/(7〜20)/(0.5〜3)、より好ましくは1/(9〜15)/(0.6〜2)である。この範囲内であれば、洗浄性及びメッキ面の保護(メッキ溶出量及び変色の抑制)を両立できるため好ましい。
【0035】
本発明の組成物は、水で希釈した洗浄液の状態で以下の濃度になるような比率で各成分を含有することが好ましい。なお、各成分を下記濃度で含有する組成物は、そのまま本発明の洗浄剤組成物として使用できる。本発明の組成物は、高いpH、例えばpH13以上の洗浄液を用いたメッキ鋼板の洗浄に好適に用いられる。
【0036】
(a)+(b)+(c)の総量は、洗浄性及びメッキ面の防食効果の観点から、該洗浄液中、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。(d)成分の含有量は、洗浄性及び経済性の観点から、該洗浄液中、0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜3重量%よがり好ましい。(e)成分の含有量は、メッキ面の防食効果及び経済性の観点から、該洗浄液中、0.001〜10重量%が好ましく、0.005〜1重量%がより好ましい。(f)成分の含有量は、洗浄性及び経済性の観点から、該洗浄液中、0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜2重量%がより好ましい。
【0037】
本発明の組成物では、洗浄性及びメッキ面の防食効果の観点から、組成物中の有効成分(通常、水を除いた全成分)中、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計含有量(a)+(b)+(c)は30〜90重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。また、十分な洗浄性を得る観点から、組成物中の有効成分中の(d)成分の含有量は3〜70重量%が好ましく、5〜60重量%がより好ましい。また、より十分なメッキ面の防食効果を得る観点から、組成物中の有効成分中の(e)成分の含有量は0.05〜20重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましい。また、より十分な洗浄性を得る観点から、組成物中の有効成分中の(f)成分の含有量は1〜50重量%が好ましく、2〜30重量%が更に好ましい。
【0038】
本発明のメッキ鋼板用洗浄剤組成物は、
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分のうち、1つ〜3つを含む組成物(イ)、
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分のうち、組成物(イ)に含まれない残りの1つ〜3つを含む組成物(ロ)、
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分のうち、組成物(イ)及び(ロ)に含まれないものがある場合、その1つ〜2つを含む組成物(ハ)、並びに
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分のうち、組成物(イ)、(ロ)及び(ハ)に含まれないものがある場合、それを含む組成物(ニ)とを含んで構成され、使用時に(a)/(b)/(c)=1/(5〜25)/(0.4〜5)の重量比となるように混合されるキットにより調製することができる。これら組成物(イ)〜(ニ)が含有する成分の数、組み合わせ、各成分の濃度、組成物の形態は限定されない。また、任意の(e)、(f)成分も、何れの組成物に含有させてもよい。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物としては、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含有し、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の重量比が(a)/(b)/(c)=1/(5〜25)/(0.4〜5)となるように(a)成分、(b)成分及び(c)成分を配合してなるものが挙げられる。
【実施例】
【0040】
実施例1〜6及び比較例1〜13
表1、2の成分と下記成分を用い、表1、2に示す組成の洗浄剤組成物を調製した。得られた洗浄剤組成物を用い、下記方法で洗浄性及びメッキ浸食性を評価した。その結果を表1、2に示す。なお、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキシドの略である。
【0041】
<配合成分>
・d−1:ノニルフェノールEO10モル付加物(付加モル数は平均付加モル数である、以下同様)
・d−2:ドデカノールEO5モルPO2モルEO5モルブロック付加物
・d−3:2級ドデカノールEO5モルPO2モルEO5モルブロック付加物
【0042】
(I)洗浄性評価方法
・被洗浄鋼板の調製
70mm×100mmに切断した溶融亜鉛メッキ鋼板(SGCC)に防錆油を2g/m2塗布して被洗浄鋼板を調製した。
・洗浄試験手順
洗浄剤組成物を45℃に加温し、150kPaの圧力で5秒間、被洗浄鋼板の表裏両面にスプレーし、その後、40℃の温水を150kPaの圧力で3秒間、被洗浄鋼板の表裏両面にスプレーしてリンスした後、温風にて乾燥した。なお、洗浄剤組成物には、防錆油(被洗浄鋼板の調製に用いたもの)を1重量%濃度となるように添加した。
・残存付着油分量測定方法
洗浄試験後の鋼板表面の付着油分量は、すべて鋼板付着油分量測定装置EMIA−111((株)堀場製作所製)を用いて測定した。測定値は5回測定の平均値である。洗浄性の判定基準としては、表面残存付着油分量が40mg/m2以上は不良、20mg/m2以上40mg/m2未満は良、10mg/m2以上20mg/m2未満は優、10mg/m2未満は特優として評価される。
【0043】
(II)メッキ侵食性評価1(表面変色の評価)
45℃に加温した洗浄剤組成物に鋼板表面の防錆油を溶剤で除去した70mm×100mmに切断した溶融亜鉛メッキ鋼板(SGCC)を入れ、60秒間静置し、その後取り出し、5分間放置した後に水で濯ぎ、温風にて乾燥する。鋼板表面の変色の有無を目視確認する。
【0044】
(III)メッキ侵食性評価2(亜鉛溶出量の測定)
鋼板表面の防錆油を溶剤で除去した70mm×100mmに切断した溶融亜鉛メッキ鋼板(SGCC)5枚をあらかじめ45℃に加温しておき、45℃に加温しポリプロピレン容器に入れた1000mlの洗浄剤組成物中に加える。60秒間静置後、鋼板を取り出し、洗浄剤組成物中の亜鉛濃度を蛍光X線装置にて定量し、溶出した亜鉛量を測定する。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルカリ剤(炭酸塩及びリン酸塩を除く)、(b)炭酸塩、(c)リン酸塩、並びに(d)非イオン界面活性剤を配合してなるメッキ鋼板用洗浄剤組成物であって、(a)、(b)及び(c)の重量比が(a)/(b)/(c)=1/(5〜25)/(0.4〜5)となるように(a)、(b)及び(c)を配合してなるメッキ鋼板用洗浄剤組成物。
【請求項2】
(a)アルカリ剤(炭酸塩及びリン酸塩を除く)、(b)炭酸塩、(c)リン酸塩、並びに(d)非イオン界面活性剤を含有し、(a)、(b)及び(c)の重量比が(a)/(b)/(c)=1/(5〜25)/(0.4〜5)であるメッキ鋼板用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)、(b)及び(c)と(d)との重量比が〔(a)+(b)+(c)〕/(d)=30〜90/3〜70である請求項1又は2記載のメッキ鋼板用洗浄剤組成物。
【請求項4】
(d)が、炭素数4〜24のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、及びアルキル(アルキル基の炭素数5〜12)フェノールのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる一種以上である、請求項1〜3いずれか記載のメッキ鋼板用洗浄剤組成物。
【請求項5】
さらに、(e)アミノアルコールを含有する請求項1〜4いずれか記載のメッキ鋼板用洗浄剤組成物。
【請求項6】
さらに、(f)キレート剤を含有する請求項1〜5いずれか記載のメッキ鋼板用洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項記載のメッキ鋼板用洗浄剤組成物を得るためのキットであって、
(a)、(b)、(c)及び(d)のうち、1つ〜3つを含む組成物(イ)、
(a)、(b)、(c)及び(d)のうち、組成物(イ)に含まれない残りの1つ〜3つを含む組成物(ロ)、
(a)、(b)、(c)及び(d)のうち、組成物(イ)及び(ロ)に含まれないものがある場合、その1つ〜2つを含む組成物(ハ)、並びに
(a)、(b)、(c)及び(d)のうち、組成物(イ)、(ロ)及び(ハ)に含まれないものがある場合、それを含む組成物(ニ)とを含んで構成され、使用時に(a)/(b)/(c)=1/(5〜25)/(0.4〜5)の重量比となるように混合されるキット。

【公開番号】特開2007−99935(P2007−99935A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292401(P2005−292401)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】