説明

メラノコルチン4レセプターの活性を低下させる薬剤を使用した、神経系の疾患または損傷の処置

インビトロまたはインビボにおいてCNS細胞中でCNS細胞新生を調節するための新規な方法であって、メラノコルチン4レセプター(MC4R)の活性を低下する薬剤の使用を包含する方法が提供される。本発明の方法をヒトのような被験体に供する場合、これはCNS障害の症状を低減するために用いられ得る。一実施形態において、本発明の別の実施形態は、被験体におけるCNS障害の症状を緩和する方法に関する。この方法によって処置され得る障害としては、被験体におけるニューロンの異常な減少、またはグリア細胞の異常な減少によって特徴付けられる障害が挙げられる。このような障害の例としては以下が挙げられる:パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2006年12月14日に出願された、米国仮特許出願第60/875,140号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)からの優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
数年間にわたって、神経幹細胞が成体の哺乳動物の脳で生きているということが確認されている。新しいニューロンが成体の哺乳動物の脳で発生したという最初の示唆は、1960年代に行われた研究に由来した[1、2]。しかし、哺乳動物の中枢神経系(CNS)内の神経発生が、胚発生および周産期に限定されるという理論を克服するには、さらに30年の月日と洗練された技術的手順を要した(概説については[3]、[4]を参照のこと)。神経の疾患および損傷の処置は伝統的に、既存の生きているニューロンの維持に集中していたが、現在では、神経学的な障害および疾患の治療的処置のための神経形成を開発するという可能性がある。
【0003】
新しいニューロンの供給源は、例えば、側脳室を裏打ちする上衣層および/または脳室下帯(SVZ)内[5]、[6(非特許文献1)]および海馬形成の歯状回内[7]に位置する、成体の神経幹細胞(NSC)である。他の研究で、成体のCNS内のNSCのいくつかのさらなる位置の可能性が明らかになっている[8]。さらに、神経系細胞を生じ得る幹細胞がCNSの外側から生じ得るということも示されている。例えば、Mezey,Eら「Turning Blood into Brain Cells Bearing Neuronal Antigens Generated in vivo from Bone Marrow.」 Science 第290巻、2000年12月1日、第1779〜1782頁、およびBrazelton,T.R.ら「From Marrow to Brain:Expression of Neuronal Phenotypes in Adult Mice from Adult Bone Marrow−Derived Cells.」Science,第290巻、2000年12月1日、第1775〜1779頁を参照のこと。NSCは非対称性分裂によってその数を維持し、一方で急速に分裂する前駆体、または前駆体細胞の集団を生成する[6(非特許文献1)]。この前駆体は、それらが分化する細胞タイプ、およびそれらが最終的に脳内で占める位置の両方に関して、その増殖の程度、生存およびそれらの運命を命令する、ある範囲の合図に対して応答する。
【0004】
成体の脳における心室系のNSCは、神経管を裏打ちする胚性脳室帯幹細胞の対応物である可能性が高く、その前駆体が遊走して分化したニューロンおよびグリアとしてCNSを形成する。NSCは成体の側脳室壁(LVW)で生き残り、神経前駆体を生じ、これが吻側細胞移動経路(rostral migratory stream)を嗅球まで遊走し下って、ここで顆粒細胞および糸球体周辺ニューロンに分化する[9]。実質的なニューロンの死は嗅球で生じ、失われたニューロンの連続的な置換の必要性(LVW由来の遊走する前駆体によって満たされる要件)が生じる[10]。嗅球ニューロンのこの継続中の再増殖に加えて、他の脳領域から失われたニューロンがLVW由来の前駆体(これは、適切なニューロン投射およびシナプスを正確な標的細胞タイプとともに備えた失われたニューロンの表現型に分化する)によって置換され得ることが強力に示されている[11];[12]。
【0005】
インビトロの培養技術が、NSCの増幅および分化の調節に関与する外部シグナルを特定するために確立されている[6(非特許文献1)]、[13]。分裂促進因子EGFおよび塩基性FGFによって、神経前駆細胞(脳室壁および海馬から単離される)を培養物中で大きく増殖することが可能になる[14]、[13]。この分裂する前駆体は、ニューロスフェア(neurospheres)として公知の細胞の大きいボールに成長する未分化状態のままである。血清の追加と組み合わせた分裂促進因子の使用中止によって、脳の3つの細胞系列、ニューロン、アストロサイトおよびオリゴデンドロサイトへの前駆体の分化が誘発される[5、6(非特許文献1)]。特定の成長因子の適用によって、各々の細胞タイプの割合を一方向または他に偏向することができる。例えば、CNTF(毛様体神経栄養因子)は神経前駆体をアストログリア細胞の運命に仕向けるように作用する[15、16(非特許文献2)]が、甲状腺ホルモン、トリヨードチロニン(トリヨードサイロニン)(T3)は、オリゴデンドロサイト分化を促進することが示されている[16(非特許文献2)]。PDGFによる神経前駆体の神経分化の強化も、実証されている[16(非特許文献2)];[17]。
【0006】
神経前駆体を増殖し、次いでその細胞の運命を操作する能力は、特定の細胞タイプが失われる神経学的疾患(例えば、CNS変性障害)の処置のために多大な意味を有する。
【0007】
ニューロン細胞の損失によって特徴付けられる疾患の例は、例えば、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病(AD)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)、レヴィー小体疾患、多発脳梗塞性認知症、ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病、前頭葉変性(FLD、前頭側頭認知症または非特異的前頭葉認知症とも呼ばれる)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、多系統萎縮症(MSA)、線条体黒質変性症(SND)、進行性核上麻痺、フリードリッヒ運動失調症(Friedrich’s ataxia)、オリーブ橋小脳萎縮症(olivopontocerebe/lar atrophy)(OPCA)、および他のCNS変性疾患、脳卒中、脳外傷、てんかん/LWおよび統合失調症である。
【0008】
グリア細胞の消失によって特徴付けられる疾患の例としては、シャルコー・マリー・ツース病、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、進行性多病巣性白質脳障害、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、HIV脳炎、橋中央ミエリン溶解、副腎脳白質ジストロフィー、クラッベ球様細胞(Krabbe’s globoid cell)、および異染性白質萎縮症、アレクサンダー病、カナバン病、コケーン症候群およびペリツェウス・メルツバッハー病が挙げられる。グリア細胞の消失を生じる他の障害としては、過剰な照射、化学療法剤(例えば、メトトレキサート、シス−プラチン、シトシンアラビノシド(ARA−C)、カルムスチン(BCNU)およびチオテパ)の副作用、および免疫抑制療法(例えば、サクリスポリンA)による副作用が挙げられる。
【0009】
さらに、未分化の神経幹/前駆体の免疫抑制効果によって処置され得る多発性硬化症(MS)などのさらなる疾患がある。例えば、Pluchino Sら[18]を参照のこと。MSは、おそらく自己免疫の原因による、ニューロンではなくオリゴデンドロサイトの消失によって特徴付けられる。
【0010】
前駆体細胞は、インビトロで増殖されてもよく、引き続き患者に移植されてもよい。この開示の目的について、「患者」および「被験体」とは、同じ意味を有する。PD患者の以前の移植処置は、黒質ドーパミン作動性ニューロンが末梢分化を受けている時点で中脳腹側から採取された胎児組織を用いている[19]。この細胞は、線条体上に移植され、ここでホストの線条体ニューロンとのシナプス接合を形成し、それらの正常なシナプス標的は、ドーパミン代謝回転を修復して、患者にとって重要な機能的利点を有する正常なレベルまで遊離する[19](概説については、[20])。移植のかなり好ましい代替は、脳に直接または末梢に投与される、医薬(すなわち、成長因子、ペプチドまたは低分子量化合物)を用いるインビボでの内因性の前駆体の増殖および分化の刺激のストラテジーである。このストラテジーを用いれば、移植に関するいくつかの問題、例えばドナー組織の欠乏、および胎児組織を用いて生じる倫理的問題は、回避され得る。
【0011】
EGFおよび塩基性FGFのラットの脳への脳室内インフュージョンは、脳室壁細胞集団を増殖することが示されている。FGFの場合、隣接する線条体実質への前駆体細胞の過剰な遊走が示されている[21、22]。前駆体の分化は、優先的にグリア系列へ向かい、ニューロンの発生は減少した[21]。成体ラット中のBDNFの脳室内注入は、嗅球および吻側細胞移動経路(rostral migratory stream)における、ならびに実質構造(線条体、中隔、視床および視床下部を含む)における、新しく発生されるニューロンの数の増大を促進することが示されている[23(非特許文献3)]。これらの研究によって、LVWのSVZ内の前駆体の増殖が、刺激され得ること、およびそれらの系列が、神経およびグリアの運命を促進するように操作され得ることが実証される。
【0012】
多数の成長因子、例えば、EGFおよびbFGFは、神経幹細胞の強力な分裂促進因子として特定されている。側脳室への注入は、正常な哺乳動物におけるインビボの神経形成を刺激し、決定的には虚血のラットにおいて損傷の上方制御神経形成を有意に増強して、機能的な利得を与える。血管内皮細胞成長因子(VEGF)は神経形成を促進する別の成長因子である。脳由来の栄養素(BDNF)はまた、脳室内注入後の線条体における新しいニューロン発生を刺激することが示されている[23(非特許文献3)]。EGFと同様、トランスフォーミング成長因子α(TGF−α)は、神経幹細胞増殖を刺激するEGFレセプターを通じて機能する。TGFαの効果は、PDのラット6−ヒドロキシドーパミンモデルで研究されており、これは魅力的な結果であった[24]。6−ヒドロキシ−ドーパミンは、最も広く受け入れられる「古典的な」毒素誘発性のパーキンソン病モデルのうちの1つである。神経毒の効果は、黒質におけるドーパミン作動性ニューロンを破壊することによってパーキンソン病でみられる重篤な症状に関連する細胞消失を模倣する。病変の線条体へのTGF−αの注入(線条体へのSNpcドーパミン作動性神経投射軸索の消失)は、脳室下帯幹細胞の急速な増殖、続いて、注入/病変部位に向かう神経細胞前駆体およびグリアの前駆体の突起部の移動を誘発した。興味深いことに、これは、病変のある動物においてのみ明白であった。引き続き、漸増数の分化したニューロンが線条体で観察されその多くの数が、ドーパミン作動性ニューロンマーカー、チロシンヒドロキシラーゼおよびドーパミントランスポーターで陽性に染色された。行動実験では、TGFα処理動物において、アポモルフィン誘発性の回転の有意な減少が観察された。これらの結果によって、神経幹細胞は、げっ歯類PDモデルにおいて、線条体で新規な機能的ニューロンを促進する(パーキンソン症状を減少する)ように刺激され得ることが示されている。この実験では、ニューロンの置換は、直接ではなく、言い換えれば、SNpcニューロンの消失は、SNpcにおいてではないが線条体において、ドーパミン作動性ニューロンによって置き換えられた。有益な行動上の効果は、おそらく、失われた線条体のドーパミン作動性の阻害の状態(正常にはSNpcドーパミン作動性ニューロンによって提供されるが、今は新規な線条体ドーパミン作動性ニューロンによって遊離される)の回復を通じていた。
【0013】
一般には、現在のパーキンソン病薬療法が関与する薬物は一時的かつ短期間の効果を有しており、薬物療法の休止を超えて続かない。現在のところ、インビボでの神経形成に影響することが公知の因子の数は少なく、その作用はしばしば、常にではないが、望ましくない副作用の誘引を包含する。神経幹細胞活性、神経前駆体の増殖、および所望のニューロン細胞タイプへの前駆体の分化を選択的に刺激し得る因子の長年にわたる切実な必要性がある。インビボの神経形成(および/または新生)を刺激するため、および移植療法のために細胞を培養するための新規な方法が必要である。
【0014】
神経変性疾患におけるニューロンの喪失を置き換えるためには、前駆体のサブセットは、ニューロンの運命ではなく、グリア細胞の運命に順応する場合が有益であり得る。神経形成(および/または新生)プロセス自体および得られたニューロンに対する正の効果に加えて、新生のグリア細胞は、既存のニューロンに対して栄養の支持および神経保護を提供し得る。これは、BDNF、GDNFもしくはPDGFなどの成長因子、またはPACAP、VIP、GLP1もしくはケモカインなどの神経ペプチド、およびニューロンにこれらの効果を与えるサイトカインの分泌を通じ得る。新しいグリア細胞からのこれらの因子の分泌からの神経ネットワークに対する有益な影響はまた、ニューロンの樹枝状分岐の増大、シナプス形成、またはシナプス伝達の効率に重要な輸送因子および受容体の調節の形態をとってもよい。
【0015】
脳の炎症は、慢性神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病およびパーキンソン病の病因に重要な役割を果たす。炎症によって生じる神経変性は、脳の常在性免疫細胞であるミクログリア(多数の炎症促進性神経毒性因子を生じる)の活性化に関与する。また、急性の脳発作(例えば、脳卒中およびてんかん発作)は、神経病理学的事象の伝播に寄与する炎症に関連する。脳実質への新規なグリア細胞分泌因子の形成によって脳は免疫応答を調節し得、従って、炎症の有害な影響を減らし、かつ有益な効果を促進する。未熟な神経前駆体は、免疫誘発性の特性を有する(初期のコメントにおける引用文献を参照のこと)。
【0016】
医薬は、神経幹細胞子孫が神経回路網に有益な因子またはプロセスを生じることを促進し得る。これは、新生グリアの場合であっても、またはついでに言えば既存のグリア/細胞(栄養性、神経保護性、免疫調節性の因子を産生および/または分泌するように誘導される)の場合であっても、または新生のニューロンもしくは既存のニューロン(その機能を改善するように刺激される)の場合であってもよい。
【0017】
これらの作用機序の全ての結果、本発明者らは、神経系の疾患または損傷を有する患者に有益であると提唱する。
【0018】
(メラノコルチンレセプター)
AクラスのGPCRスーパーファミリーに属する、メラノコルチンレセプターの5つのサブタイプであるMC1〜5Rが特定されクローニングされている[25]。これらのレセプターは、多数の機能に関与する。MCR1は、皮膚組織沈着および免疫系を調節する。MC2R(ACTHレセプター)は、ステロイド産生をコントロールする。MC3Rは、中枢の性的行動の調節に関与し得、MC5Rは、外分泌腺分泌を調節する役割を有するが、MC4Rは主に、摂食行動を制御する[26]。MC4Rに対するアゴニストは、食物摂取を減らすが、アンタゴニストは、食物摂取を増大する。MC4Rの他の機能は、勃起能、痛覚、不安/抑うつおよび視床下部・下垂体・副腎系軸の調節に関与する([27(非特許文献4)]に概説される)。
【0019】
MC4Rは、ノーザンブロットによって評価されるとおり主に脳で発現される[28]。インサイチュハイブリダイゼーション技術を用いれば、MC4Rは脳において、皮質、視床、視床下部および脳幹を含む複数の部位で、広範に分布されることが示されている[29]、[30]。さらに、中程度から広範囲な標識がまた、扁桃体、海馬および内嗅皮質層(enthorhinal cortex)にもみられる[30]。
【0020】
メラノコルチンレセプターの天然のリガンド(アゴニスト)は、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)α、βおよびγ、ならびに副腎皮質刺激ホルモンACTHからなる。全てのメラノコルチンレセプターは、ACTHによって活性化されるが、MC2Rを除く全てのメラノコルチンレセプターが、以下のチャートで示されるとおりMSHで活性化される。
【0021】
【化1】

さらに、2つの内因性アンタゴニスト、アグーチ(agouti)−タンパク質およびアグーチ関連タンパク質(agouti−related protein)(AGRP)が特定されている[31]。アグーチは、ヒトの脂肪組織、精巣、卵巣、心臓において、ならびに低レベルで包皮、腎臓および肝臓において発現される。AGRPは、アグーチに対するその相同性に基づいてクローニングされた(ヒトアグーチと25%同一性)。AGRPは、中枢神経系に極めて明確な分布を有し、これはプロオピオメラノコルチン(POMC)発現ニューロンに近接している視床下部後部の神経細胞体で発現されている。アグーチは、MC1RおよびMC4Rで競合的アンタゴニストであるが、MC3RおよびMC5Rには結合しない。対照的に、AGRPは、MC3RおよびMC4Rに結合して、これを拮抗して、MC4Rでインバースアゴニストとして作用する([27(非特許文献4)]で概説される)。メラノコルチン系の現在の研究は、肥満の可能な処置についてMC4Rアゴニストに集中しており、MC4Rアンタゴニストは、悪液質の可能な処置に用いられている(疾患によって生じる体重および筋肉の質量の消失を伴う身体的消耗)。MC4Rの遮断は、不安疼痛の症状および乱用薬物の習慣性を緩和する有用な方法であり得るということも示されている([27(非特許文献4)]に概説される)。中枢神経系の神経変性疾患または損傷を処置するためのMC4Rの活性を低下させる薬剤の使用は以前には記載されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Johansson,C.B.ら、Cell(1999)96(1):p.25〜34
【非特許文献2】Johe,K.K.ら、Genes Dev(1996)10(24):p.3129〜40
【非特許文献3】Pencea,V.ら、J Neurosci(2001)21(17):p.6706〜17
【非特許文献4】Chaki,S.およびS.Okuyama、Peptides(2005)26(10)p.1952〜64
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の簡単な説明
本発明の一実施形態は、CNS細胞の新生を調節する方法に関する。この方法では、CNS細胞は、MC4Rの活性を低下する薬剤と、CNS細胞の新生を調節するのに十分な量で接触される。
【0024】
本発明の方法は、インビトロで行われてもよい。すなわち、本発明の任意の方法は、一次培養物、樹立された培養物、または患者から収集された細胞懸濁物として培養されるCNS細胞に適用され得る。さらに、本発明の方法は、インビボにおいて、例えば、MC4Rの活性を低下する薬剤を直接被験体に投与することによって、行われてもよい。
【0025】
CNSの、またはCNS由来の任意の細胞は、本発明の方法によって調節されてもよい。これらの細胞としては以下が挙げられる:神経幹細胞、神経前駆細胞、幹細胞およびグリア細胞。さらに、調節とは細胞の直接調節、または細胞子孫の調節を包含し得る。
【0026】
新生を調節することは、細胞またはその子孫の多くの特徴を変化させること(増大または減少させること)を包含し得る。これらの特徴は、少なくとも、増幅、生存、分化、脱分化、遊走および薬剤(例えば、タンパク質)の産生または分泌を包含する。新生を調節することが、ある薬剤の発現または分泌を変化させることに関与する場合、この薬剤は、神経系細胞またはその子孫の栄養因子(trophic factor)、免疫調節因子、神経保護因子、ニューロン樹枝状分岐因子(neuronal arborisation factor)、シナプス形成促進因子、またはシナプス伝達促進因子(synaptogenesis promoting factor)であってもよい。さらに、CMS新生を調節することは、神経系細胞またはその子孫の免疫調節効果を調節することに関与し得る。
【0027】
本発明の方法の任意の1つは、任意の哺乳動物由来のCNS細胞に適用可能である。従って、この方法は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジおよび他の市販の有用な哺乳動物由来のCNS細胞に適用可能である。CNS細胞は、成体CNS細胞、若年CNS細胞、思春期前のCNS細胞、新生CNS細胞、および胚性細胞を含むCNS細胞を含む、哺乳動物の寿命の任意の段階であってもよい。これらの細胞の例としては、少なくとも、成体神経幹細胞、胚性幹細胞および非胚性幹細胞が挙げられる。
【0028】
本発明の方法における薬剤として用いられ得るMC4Rアンタゴニストおよびアナログとしては、少なくともHS014、HS028、化合物10、化合物Pontillo14c、化合物Xi14a、化合物Xi14b、化合物Xi14c、化合物Xi14d、化合物Xi14e、化合物Xi14f、化合物Xi14g、化合物Xi14h、化合物Xi14i、化合物Xi14j、SHU9119、HS024、化合物10d、化合物18v、化合物13b−2、化合物Tran2e、Agouti(1−40)アミド、Agouti(87−132)、ならびにそれらのアナログおよび低分子量アナログおよび組み合わせが挙げられる。
【0029】
本発明の方法はさらに、細胞と1つ以上の成長因子との接触という任意の工程を含んでもよい。これらの成長因子は、例えば、EGF、PDGF、FGF、TGF−β、TGF−α、Epo、IGF−I、IGF−II、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、TNF−β、IFN−β、IFN−γ、CSF、VEGFまたはそれらの組み合わせであってもよい。これらの成長因子は、MC4Rの活性を低下する薬剤(単数または複数)の適用の前、間、または後に適用されてもよい。
【0030】
本発明の別の実施形態は、被験体におけるCNS障害の症状を緩和する方法に関する。この方法は、この被験体に対してMC4Rの活性を低下させる薬剤を含む組成物を、この症状を緩和するのに十分な量で投与する工程を包含する。この方法によって処置され得る障害としては、被験体におけるニューロンの異常な減少、またはグリア細胞の異常な減少によって特徴付けられる障害が挙げられる。このような障害の例としては以下が挙げられる:パーキンソン病、パーキンソン症候群の障害、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄虚血、虚血性脳卒中、脊髄損傷、ガン関連脳損傷、およびガン関連脊髄損傷、シャイ・ドレーガー症候群、進行性核上麻痺、脳卒中、脳梗塞、多発脳梗塞性認知症、老人性認知症、レヴィー小体疾患、ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病、前頭葉変性、大脳皮質基底核変性症(CBD)、多系統萎縮症(MSA)、線条体黒質変性症(SND)、進行性核上麻痺、フリードリッヒ運動失調症、およびオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)、多発性硬化症およびてんかん。
【0031】
別の例としては、この方法によって処置され得る障害としては、神経変性障害、神経幹細胞障害、神経前駆体障害、虚血性障害、神経学的外傷および損傷、情動障害、精神神経性障害、網膜の変性疾患、網膜損傷および外傷、学習および記憶の障害、神経変性に関連する運動失調、ウマ変性脳脊髄障害、小脳性無生活力(cerebellar abiotrophy)、ウマ運動ニューロン疾患;胃スピロヘータ病(ウマ自律神経障害)、麻酔後脊髄軟化症、およびウマ白質脳軟化症が挙げられる。
【0032】
任意の工程としては、投与は、MC4Rの活性を低下する薬剤の投与の前、後、または間に投与される1つ以上の薬剤を包含し得る。この薬剤は、上記で列挙される成長因子のうちの1つであってもよい。さらに、この薬剤は、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬、抗てんかん薬、抗アルツハイマー薬、抗パーキンソン薬、MAOインヒビター、セロトニン取り込みブロッカー、ノルアドレナリン取り込みブロッカー、ドーパミン取り込みブロッカー、ドーパミンアゴニスト、L−DOPA、トランキライザー、鎮静薬およびリチウムであってもよい。
【0033】
本発明の組成物は、任意の投与方法を用いて投与され得る。これらの方法としては、全身投与および中枢投与が挙げられる。全身投与の方法としては、経口、皮下、皮内、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、口腔内、粘膜、経鼻、肺および直腸の投与が挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、経鼻スプレーまたは経鼻坐剤(nasal suppository)によって投与される。例えば、経鼻投与は、乾燥粉末吸入器または水性ベースの吸入器を用いて行われてもよい。好ましい実施形態では、本発明の方法は、被験体のCNSに対する投与(中枢投与)、例えば、側脳室内、実質内、髄腔内および頭蓋内投与を包含する。これは、例えば、注射または注入によって行われてもよい。
【0034】
本発明の別の実施形態は、中枢神経系障害のうち少なくとも1つの症状を示す患者において、CNS新生を誘導する方法に関する。この方法は、患者に対して、MC4Rの活性を低下する薬剤を、この患者においてCNS新生をこの薬剤が誘導するのに十分な量で投与する工程を包含する。CNS新生は、神経系細胞の乏突起神経膠細胞への変換を誘導する工程を包含する。この変換はさらに、(a)神経系細胞を幹細胞(例えば、単能性、少能性(oligopotent)、または多能性の幹細胞)に変換する工程と、(b)この幹細胞を乏突起神経膠細胞に変換する工程とを包含し得る。さらに、この変換工程は、インビトロで行われてもよい。すなわち、この神経系細胞は、患者から取り出されて、MC4Rの活性を低下させる薬剤で処理されて、乏突起神経膠細胞に変換されてもよい。次いで、この乏突起神経膠細胞は、患者に再移植されてもよい。
【0035】
投与されるべきMC4RアンタゴニストのようなMC4Rの活性を低下させる薬剤の有効量の決定は、当業者の技術の範囲内であって、当業者には慣用的である。投与されるべきMC4R活性低下薬剤の量は患者の正確な大きさおよび状態に依存するが、0.001〜10mlの容積中に少なくとも0.1ng/kg/日、少なくとも1ng/kg/日、少なくとも5ng/kg/日、少なくとも20ng/kg/日、少なくとも100ng/kg/日、少なくとも0.5μg/kg/日、少なくとも2μg/kg/日、少なくとも5μg/kg/日、少なくとも50μg/kg/日、少なくとも500μg/kg/日、少なくとも1mg/kg/日、少なくとも5mg/kg/日、少なくとも10mg/kg/日、または1〜100mg/kg/日である。別の投与方法では、この薬剤は、標的組織が、0.0001nM〜500nM、0.001nM〜500nM、0.01nM〜500nM、0.1nM〜500nM、0.1nM〜100nM、または少なくとも1nM、少なくとも50nM、少なくとも100nM、または少なくとも500nMというこの薬剤の濃度を達成するように投与され得る。好ましい投薬量としては、少なくとも10mgを1日2回、もしくは少なくとも25mgを1日2回という全身投与;少なくとも0.04mg/kg/日、少なくとも0.08mg/kg/日、少なくとも0.24mg/kg/日、少なくとも36mg/kg/日、もしくは少なくとも48mg/kg/日という全身投与;少なくとも22μgを1日2回、少なくとも44μgを1日2回という全身投与;または少なくとも3〜10mg/kgを週に1回という全身投与が挙げられる。特に好ましい投薬量範囲は、0.04mg/kg〜4mg/kgおよび0.05mg/kg〜5mg/kgである。これらの投薬量は、経皮適用または局所適用において10×、100×または1000×増大されてもよい。
【0036】
本開示の任意の方法については、投与は、達成されるべき結果の性質に依存する多数の経路によってであってもよい。投与は、経口であっても、経鼻であっても、局所であっても、または注射もしくは注入によってもよい。非経口投与の経路は、注射または注入によってもよく、これには静脈内(IV)、腹腔内(IP)、皮下(SC)、筋肉内または髄内(すなわち、髄腔内)注射および脳室内(ICV)が挙げられる。投与されるべき薬剤は、液体であっても、固体であっても、丸剤であっても、坐剤であっても、経鼻スプレーであっても、または患者(当然ながらヒトを含む任意の哺乳動物であってもよい)に送達するための任意の公知の形式であってもよい。
【0037】
本発明の別の実施形態は、多数の工程を含む被験体中の変性CNS障害の症状を緩和するための方法に関する。第一の工程では、MC4R活性低下薬剤を含む組成物の1つ以上の有効用量を、一定期間この被験体に投与する。第二の工程では、この被験体中の新生の指標を、非侵襲性の方法を用いることによって、モニタリングして、上記用量が十分であるか否かを決定する。第三の工程では、投薬量(すなわち、用量)は、上記新生の兆候が最少閾値より低い場合、増大され、上記新生の兆候が最大閾値を上回る場合、減量される。
【0038】
モニタリング工程、第二の工程は、多数の方法によって行い得る。本発明者らは、薬剤の有効性の1つの信頼できて、かつ予測可能な指標が体重増加であることを見出した。さらに、本発明者らは、体重増加が、ある程度のCNS障害を有する被験体(例えば、パーキンソン病、または臨床的に誘発されるパーキンソン病疾患のモデル)で特に信頼できるということを見出した。体重増加を測定することによって、十分な用量は、同様のCNS障害の症状を有するが、上記組成物を投与されない第二の被験体に比較して、設定閾値を上回る上記被験体の体重の増大を生じる最小用量として決定される。上記閾値は、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、40%または50%という体重増加であってもよい。体重の増大は、なんらかの体重増加が、利用される食物の質または量の変化に起因しないように、同じ食物および飲料を被験体に自由に提供することによって最も容易に測定される。自然には、これらの管理条件下で、患者は、試験されるべき薬剤(MC4R活性低下薬剤)を除いて食欲または体重に影響する薬剤を投与されてはならない。
【0039】
従って、体重増加または減少は、同じ程度のCNS障害および症状を有するが、本発明の薬剤を投与されていない、第二の被験体と比較することによって決定され得る。別の有用な比較は、処置の前の被験体の体重と、処置の間の被験体の体重を比較することである。すなわち、もとの被験体および第二の被験体は、異なる時点の同じ被験体であってもよい。
【0040】
新生をモニタリングするための別の非侵襲的方法は、プロトン核磁気共鳴によって被験体のCNS中の神経幹細胞および前駆体細胞のレベルをモニターすることである。刊行物[32]では、著者らは、インビボでヒト脳における神経前駆細胞(NPC)の検出および定量のための代謝性バイオマーカーを記載している。著者らは、プロトン核磁気共鳴分光法(H−MRS)を用いて、バイオマーカー(NPCが富化されて、その用途が新生をモニタリングするための参照として実証される)を特定および特徴づけした。インビボで低濃度のNPCを検出するために、著者らは、シグナル処理方法を開発した。この方法によって、げっ歯類の脳および生きたヒトの海馬の両方でNPCバイオマーカーの分析のための核磁気共鳴分光法の使用が可能になる。バイオマーカーの正確な分子性質は、確立されていないが、著者らによって記載される「1.28−ppmスペクトル・ピーク」バイオマーカーは、飽和されるかおよび/または不飽和の脂肪酸、ならびに関連の化合物の複雑な混合物であるということが強力に示された。従ってこれらの知見によって、非侵害的な方式において広範な種々のヒト脳障害におけるNPCおよび神経形成の役割を検討することの可能性が開かれる。
【0041】
上で言及されるとおり、本発明の方法は、ある程度のCNS障害を有する被験体に特に有効である。例えば、この被験体は、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%という健常な被験体に比較したドーパミン作動性ニューロンの減少を有し得る。
【0042】
本発明の別の実施形態は、被験体が変性CNS症状の所望の軽減を示すまで、一定期間、この被験体に対してMC4Rアンタゴニスト活性低下薬剤を投与することによって、変性CNS障害を有する被験体で変性CN症状を軽減するための長時間作用性の処置に関する。本発明者らは、驚くべきことに、この方法は、このMC4R活性低下薬剤の投与の停止後少なくとも2週間にわたって変性CNS障害を軽減し得るということを見出した。変性CNS障害は、パーキンソン病であってもよく、この変性CNS症状は、パーキンソン病の症状であってもよい。このパーキンソン病の症状は、CNSにおけるドーパミン作動性ニューロンの減少であってもよい。他の変性CNS疾患は例えば、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、レヴィー小体疾患、多発脳梗塞性認知症、ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病、前頭葉変性、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、線条体黒質変性症、進行性核上麻痺、フリードリッヒ運動失調症、オリーブ橋小脳萎縮症、脳卒中、脳外傷、てんかん、統合失調症、シャルコー・マリー・ツース病、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、進行性多病巣性白質脳障害、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、HIV脳炎、橋中央ミエリン溶解、副腎脳白質ジストロフィー、クラッベ球様細胞、および異染性白質萎縮症、アレクサンダー病、カナバン病、コケーン症候群、およびペリツェウス・メルツバッハー病、過剰な照射、化学療法剤の副作用、および免疫抑制療法による副作用であってもよい。この方法は、変性CNS障害を処置するのに多数の有用性を有する。例えば、この方法は、側脳室壁の成体の神経幹細胞の増殖を増大するために用いられ得る。このMC4Rアンタゴニスト活性低下薬剤は、0.1ng/kg/日〜10ng/kg/日、1〜100ng/kg/日、または10ng/kg/日〜1000ng/kg/日という投薬量で投与され得る。投与は、被験体のCNSに対するこの薬剤の注射または注入による直接投与を含む、本開示で言及される任意の方法を包含し得る。投薬量を測定する別の方法は、被験体が0.1nM〜500nMという組織濃度を達成するような投薬量を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】A)は、1〜100nMの濃度内のMC4RアンタゴニストHS014またはHS028が、成体神経幹細胞の懸濁培養物中のATP値を増大することを;およびB)は、1〜100nMの濃度内のHS014が、成体神経幹細胞の付着培養物中のBrdU組み込みを増大することを示す。
【図2】A)は、SVZ中の増殖に対するHS014の効果。2週間にわたってラットの右の側脳室に浸透圧ミニポンプを通じて投与された;B)体重に対するHS014の効果。2週間にわたってラットの右の側脳室に浸透圧ミニポンプを通じて投与された。**P<0.01。
【図3】いくつかのMC4Rアンタゴニストの構造を示す。
【図4】パーキンソン病の6−OHDA−病変ラットモデルにおけるアンフェタミンによって誘発される正味の向同側回転に対するHS014の効果を示す。**P<0.01(対ベースライン);反復測定一元配置(one−way repeated measures)ANOVA、続いてDunnett試験。#P<0.05(対それぞれのビヒクル);対応のないt検定。
【図5】体重に対するHS014の効果を示す。x軸の時間は週数である。投与の期間は、影付きのボックスである。処置群の平均体重は、四角で示すが、プラセボ群は、ひし形で示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明の詳細な説明
定義
幹細胞とは、単能性、少能性、または多分化能(多能性)の幹細胞を含む任意の神経幹細胞をいう。単能性、少能性、または多分化能(多能性)の幹細胞は、1つまたは多数の細胞タイプに分化され得る細胞として規定される。天然には、幹細胞は、神経系細胞に分化し得る前駆体細胞を包含する。幹細胞はまた、神経系細胞の任意の前駆体を意味する新生の前駆体(neogenic presursors(NGP))を包含し、これには、神経幹細胞、系統に限定されない神経前駆細胞、および系統に限定される神経前駆体細胞が挙げられる。CNSに遊走できるCNS起源でない任意の前駆体細胞はまた、NGP細胞に含まれる。「幹細胞」および「神経幹細胞」という用語は、少なくとも、成体の神経幹細胞、若年の神経幹細胞、非新生神経幹細胞、および非胚性神経幹細胞を包含することが理解される。
【0045】
神経系細胞(neural cell)(ニューロン細胞(neuronal cell)に対向して)とは、神経系の任意の細胞であって、これには、神経細胞(ニューロン)、グリア細胞(グリア)、および分化または分裂によって脳の新しい細胞を生じる任意の細胞を包含する。神経幹細胞は、子孫として神経系細胞を生じ得る細胞である。この場合、子孫は、直接の子孫、例えば、娘細胞またはより遠い子孫、例えば、孫娘細胞、ひ孫娘細胞などであってもよい。「神経系細胞」の定義は、少なくとも全ての主な成熟CNS細胞タイプ、例えば、ニューロン、アストログリア(星状膠細胞)、NG2陽性グリア、および乏突起神経膠細胞、ならびに神経系列の細胞を生じる幹細胞を包含する。
【0046】
本発明によるレセプターのアンタゴニストとは、本発明によるレセプターに結合可能であり、かつ天然のリガンドを含むリガンドのこのレセプターに対する結合をブロックできる分子または分子の群を意味する。例えば、レセプターの「アンタゴニスト」とは、天然のリガンドと同じ部位でレセプターに競合的に結合するが、レセプターの活性型によって初期化された細胞内応答を活性化せず、それによってこの天然のリガンドによって誘発される細胞内応答を阻害するリガンドであってもよい。アンタゴニストは例えば、このアンタゴニストの非存在下における天然のリガンドの存在における細胞内応答に比較して、化合物に対する細胞の細胞性応答を少なくとも10%、好ましくは15〜25%、より好ましくは25〜50%、最も好ましくは50〜100%まで、減じ得る。アンタゴニストアナログとは、このアンタゴニストアナログが、細胞、細胞培養物、または細胞を含む組織と接触されるとき、アンタゴニストの細胞応答を誘導し得る化合物である。アナログは、標的細胞上のレセプターに結合することによって直接作用してもよい。あるいは、アナログは、近接する細胞に結合または影響すること、および標的細胞が同様の結果を得るように影響すること(あたかもアンタゴニストが適用されるように)によって間接的に作用してもよい。アンタゴニストアナログは、多くの機構で作用し得る。例えば、アンタゴニストアナログは、細胞内シグナル伝達をブロックし得、その結果、たとえリガンドが細胞上のレセプターに結合されても、この細胞は、このアンタゴニストアナログの存在下では、この結合されたリガンドとは反応しない。
【0047】
本発明の方法で用いられ得るMC4Rアンタゴニストの例は本明細書では、2つの環状ペプチドHS014およびHS028によって例示される。HS014は、以下のアミノ酸配列を有する:
[アセチル基]−Cys−Glu−His−(D−2−Nal)−Arg−Trp−Gly−Cys−Pro−Pro−Lys−Asp−[アミド基](配列番号3;CAS番号207678−81−7,MDL番号MFCD02179654)
このリストは、N末端からC末端に書いており、上記で示されるとおり、N末端にはアセチル基が、C末端にはアミド基がある。他に規定しない限り、全てのペプチドおよびタンパク質は、この開示において従来の形態でアミノ末端で開始してカルボキシル末端に列挙される(すなわち、アミノ末端−Xxx−Xxx−カルボキシル末端)。環の閉鎖を形成するアミノ酸には下線しており、Nalはβ−ナフチルアラニンをいう。Kaskら[33]を参照のこと。HS028は、アミノ酸配列
[アセチル基]−Cys−Glu−His−(diCl−D−Phe)−Arg−Trp−Gly−Cys−Pro−Pro−Lys−Asp−[アミド基](配列番号4)
を有し、ここで「diCl−D−Phe」とは、ジクロロ−D−フェニルアラニンをいう。MC4Rのこれらの2つのアンタゴニストは、悪液質/食欲不振の研究におけるツールとして用いられている。1つの検討では、HS014を、1日2回の注射(2×1ナノモル)によって6日間、または浸透圧ミニポンプ(1時間あたり0.16ナノモル)での持続注入によって2週間i.c.v.注入した。この結果、なんらタキフィラキシーの兆候なしに両方の処置後に食物摂取および体重のかなりの増大が示された[34]。他の有用なMC4Rアンタゴニストは以下のとおりである:
化合物14c(本明細書ではPontillo14cと呼ばれる):
【0048】
【化2】

Pontillo14cは、Pontillo,Jら[35]に記載されている。メラノコルチン−4レセプターの強力かつ選択性の非ペプチドアンタゴニストは、満腹したマウスで食物摂取を誘発する、Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters,第15巻、Issue 10,2005年5月16日、2541〜2546頁。
【0049】
4−{(2R)−[3−アミノプロピオニルアミド]−3−(2,4−ジクロロフェニル)プロピオニル}−1−{2−[(2−チエニル)エチルアミノメチル]フェニル}ピペラジン(本明細書において化合物10と呼ばれる):
【0050】
【化3】

この化合物は、Chen,Cら[36]に、化合物10であって、4−{(2R)−[3−アミノプロピオニルアミド]−3−(2,4−ジクロロフェニル)プロピオニル}−1−{2−[(2−チエニル)エチルアミノメチル]フェニル}ピペラジンとして、強力かつ選択性のメラノコルチン−4レセプターアンタゴニストとしてデザイン、合成および特徴が挙げられる。
【0051】
図3の化合物14a〜14j(本明細書においては化合物Xi14a〜Xi14jと呼ばれる)はXi N.ら、Synthesis of novel melanocortin 4 receptor agonists and antagonists containing a succinamide core[37]に記載されるとおり。(Xiの化合物は、同じ名称を有する(すなわち、化合物14)が、それらは、上記のPontillo 14cには関係しない)。
【0052】
本発明の方法に有用な他の公知の化合物としては、SHU9119、HS024、化合物10d、化合物18v、化合物13b−2、化合物Tran2e、Agouti(1−40)アミドおよびAgouti(87−132)が挙げられる。言及された化合物、それらの特性およびこれらの化合物を詳細に記載する関連の引用文献のまとめは、下の表1に示す。
【0053】
表1:本発明の方法に有用な選択された化合物のまとめの表
【0054】
【表1】

上記で列挙されたMC4Rアンタゴニストは、本発明の方法に有用な化合物の例である。多くの他の有用な化合物が当該分野内で公知である。例えば、特許/特許出願 欧州特許1468999、欧州特許1460070、PCT/EP2007/003115、PCT/EP2007/001595、PCT/EP2004/002907、PCT/EP2004/002896、PCT/EP2004/002908、PCT/EP2004/002909、PCT/US2002/032282、PCT/US2003/004455、PCT/US2003/014628、PCT/US2003/040931、PCT/US2004/035343、PCT/US2004/034951、PCT/US2002/023926、PCT/US2002/023616、および学術的な刊行物[47、44、48、49、50]を参照のこと。
【0055】
本発明の任意の方法については、MC4Rアンタゴニストの投薬量は、(1)単独であって、0.001ng/kg/日〜500μg/kg/日の投薬量範囲で、好ましくは0.05〜150または最大300ng/kg/日の投薬量範囲であっても、(2)透過性増大因子と組み合わされても、または(3)局所的にもしくは全身に同時投与される薬剤と組み合わされてもよい。例えば、1〜10ng/kg/日、10〜100ng/kg/日、20ng/kg/日〜2000ng/kg/日および100ng/kg/日〜500ng/kg/日という投薬範囲が、本発明の方法に特に有効であることが見出されている。投与は、約0.0001nM〜5000nMという薬剤の組織濃度をもたらし得る。この投与はまた、約0.001nM〜10000nM、好ましくは0.1〜1000nM、さらに好ましくは1nM〜100nM、それより好ましくは3nM〜30nM、最も好ましくは約10nMという脳脊髄液濃度をもたらし得る。
【0056】
当業者は、本開示の教示を用いて、さらなるMC4Rアンタゴニスト、インヒビター、インバースアゴニストまたは本発明の方法の他の有用な薬剤を選択できる。
【0057】
さらなるMC4Rアンタゴニストを選択する1方法は、それが同じ効果を有するか否かを確認するためにアンタゴニストの改変体を作成することである。改変体を産生する方法は公知である。例えば、ペプチドのアミノ酸配列改変体は、合成されてもよいし、またはクローニングおよび変異を通じて作製されてもよい。このような改変体としては、例えば、ペプチド内の残基の欠失、または挿入、または置換が挙げられる。欠失、挿入および置換の任意の組み合わせは、最終のペプチド/アンタゴニストが所望の特徴(実施例の節で開示される方法を用いて試験され得る)を有するという条件であれば、この最終のペプチド/アンタゴニストで達成され得る。さらに他の改変体は、アンタゴニストに糖基を導入または移動することによって作製され得る(例えば、グリコシル化部位)。
【0058】
「MC4Rの活性を低下する薬剤(an agent decreasing the activity of MC4R)」は、下に規定されるとおり、アンタゴニストであっても、インバースアゴニストであっても、インヒビターであっても、またはMC4Rの発現レベルを低下する薬剤であってもよい。MC4Rの活性を低下する任意の化合物または薬剤は、この用語に包含される。この開示の目的に関して、「化合物」および「薬剤(agent)」という用語は、同じ意味を有する。
【0059】
本発明に有用である化合物を特定することは、本明細書に提示される開示に基づいて当業者に公知である。MC4Rレセプターに対するリガンド結合を測定するためのアッセイキットは市販されている(例えば、メラノコルチンMC4125I−SPA GPCRキットカタログ:MRP0070、GE Healthcare)。このようなキットを用いて、当業者は、所定の化合物がMCR4レセプターに結合可能か否かを容易に決定できる。所定の化合物がMC4Rレセプターの活性に対して効果を有することを決定するための方法はまた、当該分野で周知である。最も一般に利用される方法は、細胞株に対して組み換えDNA技術を介してレセプターを導入する工程と、試験化合物がcAMP産生またはレセプター転位に有する影響を測定する工程とを包含する。これらおよび他の公知の技術は、公的な文献、例えば、Schioethら[51]、および国際特許出願WO2005103715およびWO2005103689に開示される。所定の化合物についてこのような測定を得ることはまた、Cerep(Paris,France,www.cerep.com)、MC4Rのアゴニストおよびアンタゴニストについてそれぞれカタログ番号758−18aおよび18b、などから業務として商業的に可能である。
【0060】
これらの公知の方法を利用して、当業者は、MC4R−レセプターに結合する所定の化合物がレポーターの活性を増大するか、または低下するかを決定し得る。公知のアゴニストの非存在下で化合物の活性をアッセイする場合、アゴニストは、活性において用量依存性の増大という結果を生じるが、インバースアゴニストは、活性の低下を生じる。公知のMC4R−アゴニスト、例えば、α−MSHの存在下での化合物の活性をアッセイする場合、アンタゴニストおよびインヒビターはレセプターの活性において用量依存性の低下を生じる。
【0061】
標的細胞中の利用可能なMC4R−レセプターの数を減らすことは、本発明の所望の効果、すなわちMC4R−活性を低下することを達成する別の方法である。この効果を達成するために当該分野で公知の薬剤としては、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイムおよび低分子干渉RNA(siRNA)が挙げられ、ここでこの薬剤は、MC4R−ポリペプチドをコードする天然に存在するポリヌクレオチド配列に対して相補的であるか、またはそれから操作された核酸配列を含む。アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはセンダイウイルスのベクターなどのベクターが、この薬剤を発現するために用いられ得る。
【0062】
リガンドの機能的なアナログとは、そのアナログが細胞と接触されるとき(そのアナログの作用機序にかかわらず)リガンドとして細胞中で同じかまたは同様の活性を誘発する化合物である。
【0063】
機能的なアナログはまた、「インバースアゴニスト(inverse agonist)」を含む。本明細書において用いる場合、化合物の「インバースアゴニスト」とは、それがレセプターに結合するとき、細胞表面レセプターの構成的な活性を低下するリガンドをいう。本発明によるインバースアゴニストは、インバースアゴニストの非存在下で、かつアゴニスト活性を有する任意の化合物の非存在下における細胞内応答に比較して、少なくとも2倍、好ましくは5倍、さらに好ましくは10倍、最も好ましくは100倍以上(すなわち、150倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、10,000倍など)まで、レセプターによって媒介される構成的な細胞内応答を低下し得る。
【0064】
本発明による「インヒビター」化合物は、レセプターに対するリガンドの結合をその化合物の存在下において、その化合物の存在下、かつインヒビターの非存在下における結合に比較して、少なくとも10%、好ましくは15〜25%、さらに好ましくは25〜50%、最も好ましくは50〜100%まで低下する、レセプターに対する、またはレセプターについての天然のリガンドに対する分子である。本発明の「インヒビター」化合物は、アゴニストによって誘発される細胞内応答を少なくとも10%、好ましくは15〜25%、さらに好ましくは25〜50%、最も好ましくは50〜100%まで低下し得る。例えば、インヒビターは、化合物に結合し得、かつこの化合物がレセプターに結合することを妨げ得る。
【0065】
本明細書において用いる場合、「天然のリガンド」とは、レセプターに結合する、天然に見出される、天然に存在するリガンドをいう。「天然のリガンド」とは、天然には見出されず、かつレセプターに結合するように操作されている、操作されたリガンドのことは言わない。
【0066】
中枢神経系組織(CNS)における新生を誘発するための方法
この開示は、CNS組織における新生を調節する(増大または減少する)ための新規な方法、化合物および組成物を提供する。「新生」という用語は、この開示における「CNS新生」と同じ意味を有し、かつCNS中の新規な細胞の増殖を指す。中枢神経系組織は、周知であって、これには少なくとも、脊髄、髄質、脳橋、中脳、小脳、間脳、大脳半球およびこれらの大分類の各々の全ての組織が挙げられる(例えば、Kandel,E.R.ら、Principles of Neural Science,第4版、McGraw Hill(New York)2000を参照のこと)。
【0067】
新生を誘導するための方法とは、少なくとも以下を含む任意の機構による出生後の哺乳動物における、さらなる神経系細胞および組織の発達をいう:(1)成長(増殖)(2)新規な神経系細胞の分化、(3)既存のまたは新しい神経系細胞の必要な領域への遊走、(4)1つの神経系細胞タイプの異なる神経系細胞タイプへの変換、(5)神経系でない細胞タイプ(例えば、非CNS組織由来の幹細胞)への神経系細胞タイプの変換(6)CNS中の非神経系細胞への神経系細胞の変換を妨げること;(7)神経系細胞の神経系または疾患誘発性の死滅を妨げること、(8)神経系細胞によって分泌または発現される因子を通じた増殖または分化の活性化、(9)処置のための末梢神経系へ遊走するための、例えば、NGP、神経系細胞およびグリア細胞など、新生の必要である領域に対する神経系細胞の移入の誘導(例えば、MSにおける)。CNS新生の1形成は、神経系細胞および神経幹細胞の増殖、分化、生存または遊走を調節する工程を包含する。
【0068】
本発明の任意の方法では、新生を調節することはまた、被験体に対してMC4Rの活性を低下する薬剤を投与する工程と、新生を間接的に調節する工程とを包含し得る。新生を調節する間接的な方法としては、例えば、神経系細胞または非神経系細胞が新生を支持するための成長因子を発現および/または分泌するようにさせる工程を包含し得る。別の例では、MC4Rの活性を低下する薬剤は、グリア細胞が成長因子を発現および/または分泌して、ニューロンの増殖を支持するように誘導してもよいし、あるいはMC4Rの活性を低下する薬剤は、ニューロンが成長因子を発現および/または分泌して、グリア細胞の増殖を支持するように誘導してもよい。さらなる例としては、MC4Rの活性を低下する薬剤は、非神経系細胞が成長因子を発現および/または分泌するようにさせて、神経系細胞の成長または増殖を支持し得る。成長因子は、1つの細胞の細胞表面上の発現によって、および細胞間の接触を通して、その機能を媒介し得、第二の細胞の新生を誘導することが理解される。このシナリオでは、成長因子は、その機能を媒介するために分泌される必要はない。細胞がそれ自体の用途のために、または同様のタイプの細胞の用途のために成長因子を分泌および/または発現すること、ならびにこのような分泌または発現も本発明の方法によって包含されることも理解される。
【0069】
CNS新生の例としては、特定の細胞タイプに関する新生のプロセスが以下の段落に考察される。幹細胞(または任意の個々の神経系細胞タイプ)に関しては、新生とは、例えば、幹細胞をより多くの幹細胞に増殖させることを包含し得る。この場合、新生は、NGP細胞の増殖活性を調節する工程を包含する。新生はまた、幹細胞の神経系細胞への分化経路を調節する工程を包含し得る。調節は、分化後に産生された子孫細胞の分化の方向および数の両方を変化させる工程を包含し得る。さらに、NGP細胞は、有益な神経系細胞タイプヘ分化してもよし、または未分化細胞として有益な効果を誘発してもよい。この例に加えて、新生はまた、CNSの必要な領域(例えば、脳)へ神経系細胞または幹細胞の遊走の誘導(NGP細胞の遊走を調節することによる)を包含し得る。別の例では、新生は、NGP細胞またはその子孫の生存を調節(例えば、促進および増大)し得る。
【0070】
新生はまた、ある系列の細胞(例えば、ニューロン、アストログリアまたはオリゴデンドログリア)の第二の異なる系列への変換によっても生じ得る。1つの細胞系列の別の系列への変換のためには多くの機構がある。これらの機構の各々は、下に考察される。最も直接的な機構では、ある系列の細胞は、第二の系列に直接変換され得る。例えば、ニューロンがアストログリア細胞に変換されてもよいし、またはアストログリア細胞がニューロンに変換されてもよい。あるいは、変換は、中間の細胞タイプ、例えば、幹細胞(単能性、少能性、または多能性)へのニューロンの変換、続いて、オリゴデンドログリアへの幹細胞の変換を含んでもよい。別の機構では、完全に分化した神経系細胞はNGP細胞に脱分化し戻り得る。NGP細胞はさらに、もとの神経系細胞タイプまたは新しい神経系細胞タイプに分化し得る。新生はまた、神経系細胞の脱分化を調節する工程を包含し得る。
【0071】
一実施形態では、新生は、このような調整の必要な患者におけるNGP細胞の機能を調整する工程を包含し得る。調整される機能としては、少なくとも以下を挙げることができる:(1)新生、または任意の神経系細胞の成長および保存を支持するあめの例えば、さらなる成長因子を分泌し得るNGP細胞の分泌活性を調整すること、(2)NGP細胞の免疫抑制活性を調整すること、(3)NGP細胞の増殖活性を調整すること、(4)NGP細胞の分化を調整すること、(5)NGP細胞の遊走を調整すること、(6)NGP細胞またはそれらの子孫の生存を調整すること、および(7)NGP細胞への神経系細胞の脱分化を調整すること。
【0072】
NGPおよび幹細胞に関する新生の例は、上記で考察されているが、新生は、任意の他の神経系細胞タイプに適用できることが理解される。従って、上の段落は、「NGP」および「幹細胞」という用語が任意の他の神経系細胞タイプで置換される場合、等しく適用可能である。
【0073】
本発明者らは本明細書において、MC4Rアンタゴニストを用いる本発明者らの実験、およびMC4Rの活性を低下させる薬剤(例えば、HS014およびHS028によって例示される)がインビトロおよびインビボにおいて成体の神経系前駆体細胞の増殖を誘導するという驚くべき知見を記載している。本発明者らはまた、MC4Rの活性を低下する薬剤が、パーキンソン病の6−OHDAラットモデルで神経回復性効果を与えることも示している。
【0074】
本発明の任意の方法について、MC4Rの活性を低下する薬剤(単数または複数)の投与は、所望の疾患の処置のために有効な投薬範囲であり得る。投与されるべきこのような薬剤の有効量の決定は、当業者に技術の範囲内であって、本明細書に開示される教示に基づいて当業者に慣用的である。投与されるべきMC4R活性低下薬剤の量は、患者の正確な大きさおよび条件に依存するが、0.1〜10ng/kg/日、1〜100ng/kg/日、5〜100ng/kg/日、20〜500ng/kg/日、100〜1000ng/kg/日、0.5〜20μg/kg/日、2〜50μg/kg/日、5〜100μg/kg/日、50〜500μg/kg/日、500〜1000μg/kg/日、1〜5mg/kg/日、5〜20mg/kg/日またはそれ以上であってもよい。投薬の別の方法では、MC4Rは、標的組織が0.0001nM〜500nM、0.001nM〜500nM、0.01nM〜500nM、0.1nM〜500nM、0.1nM〜100nM、または少なくとも1nM、少なくとも50nM、少なくとも100nM、もしくは少なくとも500nMというモジュレーター濃度を達成するように、投与され得る。好ましい投薬としては、少なくとも10mgを週2回、もしくは少なくとも25mgを週2回という全身投与;少なくとも0.04mg/kg/週、少なくとも0.08mg/kg/週、少なくとも0.24mg/kg/週、少なくとも36mg/kg/週、もしくは少なくとも48mg/kg/週という全身投与;少なくとも22μgを週2回、少なくとも44μgを週2回という全身投与;または少なくとも3〜10mg/kgを週に1回という全身投与が挙げられる。特に好ましい投薬量範囲は、0.04mg/kg〜4mg/kgおよび0.05mg/kg〜5mg/kgである。これらの投薬量は、経皮適用または局所適用において10×、100×または1000×増大されてもよい。
【0075】
MC4Rの活性を低下する薬剤の投与に応答する被験体の体重増大は、CNS新生の刺激および所望の疾患、例えば、パーキンソン病などの神経変性疾患の処置のための有効な用量の代理マーカーとして用いられ得る。有意な体重増大をもたらし得る最低用量の薬剤でさえCNS新生の刺激およびCNS障害の処置には有効な用量である。この用量から、最適な有効用量は、被験体の症状および任意の副作用の出現を観察することによって、容易に、高くまたは低く微調整してもよい。体重増加は、投与の間一定間隔で被験体を秤量することによってモニターされ得る。有意な体重増加は、プラシーボ化合物を投与された群の平均体重増加に対して、被験体の処置群における平均体重増加を比較することによって決定され得る。体重増加はまた、同じ被験体で投与前体重に対して決定され得る。体重増加は、コントロールまたは最初の体重に対する増加割合として表してもよい。有意な体重増加についての好ましい閾値は、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、または10%より多く、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、40%および50%である。体重増大はまた、スチューデントt検定のような統計学的方法によって検出してもよい。好ましい有意な体重増加閾値は、p≦0.05、またはp≦0.2、例えば、0.2、0.1、0.05、0.01および0.001というp値である。
【実施例】
【0076】
(実施例1)
LVWの調製およびニューロスフェア培養手順
5週齢のマウスの側脳室壁(LVW)の前側壁を、0.8mg/mLのヒアルロニダーゼおよび0.5mg/mLのトリプシンが含有されるDMEM(4.5mg/mLグルコースおよび80単位/mLのDNaseを含む)中において37℃で20分間、酵素的に解離させた。その細胞を5mLのDMEM/F12培地(B27補充物、125mM HEPES Ph 7.4、100単位/mLペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンを含有)中で希釈した。70ミクロンのストレーナーを通過させた後、その細胞を240×gで5分間ペレットにして、洗浄し、遠心分離した。その上清を引き続き取り出して、その細胞を20ng/mLのEGFを補充した培地中に再懸濁して、培養皿にプレートして、37℃でインキュベートした。ニューロスフェア培養物をプレート後約7日で分けるように準備した。
【0077】
ニューロスフェア培養物を分けるために、ニューロスフェアを、240×gで5分間の遠心分離によって収集した。その上清を廃棄して、ニューロスフェアを、0.5mLのトリプシン/EDTAが含有されるHBSS(1×)中に再懸濁して、37℃で2分間インキュベートした。この期間の間、そのニューロスフェアを穏やかに砕いて、解離を助けた。37℃でのさらに2分のインキュベーション、および粉砕の後、2容積のDMEM−F12+B27培地を添加した。その細胞を220×gで4分間ペレットにして、10ng/mLのEGFおよび5ng/mLのbFGFを含有するDMEM/F12+B27−培地中で再懸濁した。引き続きその培養物をプレートして、37℃でインキュベートした。
【0078】
(実施例2)
MC4Rの発現;RT−PCR分析
ニューロスフェアは、上記の実施例1に言及されるようにLVWから調製した。最初に分けた3日後、そのニューロスフェアを収集して、総RNAを、製造業者の指示に従いQIAGEN’s RNeasy Mini Kitを用いて単離した。LVWおよび脳の総RNAの残りをニューロスフェアの総RNAのと同一の方式で調製した。RT−PCRの前に、総RNAを37℃で15分間、DNase(Ambion)処理し(総RNAの各々5μgについて1単位)、続いて75℃で10分間熱不活化した。InvitrogenのOne−Step RT−PCR Kitを用いて、MC4Rに対応するmRNAの存在を検出した。要するに、12.5ngの総RNAを各々の反応に用いて、このとき58℃というアニーリング温度とした。総RNAのゲノム混入が偽陽性の結果を生じないことをさらに保証するため、Taqポリメラーゼ単独での同一の反応を実験のRT−PCRと並行して行った。その反応物を、臭化エチシウムを含む1.0%のアガロースゲルで電気泳動して、バンドをUV光の下で可視化した。所望の遺伝子のPCR産物の推定の長さに対応するバンドを、クローニングベクターpGEM−Teasy中にクローニングした。培養物を配列決定して、その同一性を確認した。Mus musculus MC4Rのプライマー配列を下に示す。
【0079】
【化4】

これらの研究によって、成体マウス脳中のMC4RのmRNA発現パターンを検討した。この結果、MC4Rは成体マウス脳の神経形成領域で発現されることが示された。RT−PCRを用いて、MC4R mRNAが、側脳室壁組織(上衣層を含む)、およびこの組織由来の培養された神経幹細胞(NSCs)由来のニューロスフェアの両方において発現されることを見出した(表2)。
【0080】
表2:神経形成組織中のRT−PCRによって見積もられた成体マウス脳のMC4R mRNAの発現(1〜3スケール)
【0081】
【表2】

(実施例3) 懸濁培地中で、または接着培養物として増殖される実施例1由来の細胞のMC4Rアンタゴニスト処理
HS014およびHS028はSigma Aldrichから購入した。
【0082】
細胞を実施例1と、培地中の増殖因子の脱落以外は同様に、分けて回収し、懸濁細胞として、1、10もしくは100nMのMC4Rアンタゴニストを補充するか、または補充しない(コントロール細胞)DMEM/F12中で、96ウェルのプレートで10,000細胞/ウェルの密度に播種した。あるいは、接着性細胞を1%のウシ胎仔血清(FCS)を補充したDMEM/F12中でポリ−D−リジン−コーティングした96ウェルプレート上で30,000細胞/ウェルの密度に播種した。細胞が接着した場合(4時間後)、培地を無血清培地に変えて、1、10、または100nMのHS014、HS028または他の試験化合物を添加した。
【0083】
(インビトロ増殖アッセイ)
細胞内のATP値は細胞数と相関することが以前に示されている[52]。以下の実験は4通りに行った。HS014またはHS028を添加して、細胞を37℃で3日間インキュベートした。細胞を連続して溶解した。製造業者の指示に従ってCell ViabilityキットSL(♯188−441,BioThema,Sweden)を用いて細胞内のATPを測定した。結果は反復可能であって、統計学的に有意であった。ATPアッセイを懸濁培養設定で行った(上記を参照のこと)。
【0084】
DNA合成を普通に用いて、細胞増殖を測定した。このような測定については、H−チミジンを伝統的に用いて分裂期活性細胞のDNAを標識する。この実験では、H−チミジンを5−ブロモ−2−デオキシウリジン(BrdU)で置き換え、10μM濃度の化合物と一緒に添加した。BrdUアッセイは、接着細胞培養設定(上記を参照)で行い、その細胞を化合物とともに3日間インキュベートした。チミジンアナログがDNAに組み込まれた後、イムノアッセイによってBrdUを検出した。ELISAキットはRoche,Germanyから購入した。
【0085】
MC4RアンタゴニストであるHS014およびHS028は、成体の神経幹細胞のインビトロ増殖を誘導することが見出された。ATPアッセイを用いて、細胞内ATP値(従って、細胞数)の増大が、MC4Rアンタゴニスト処理した懸濁培養物中でみられた(1〜100nM濃度)(図1a)。増殖を確認するため、増殖マーカーBrdUを用いる取り込み研究を行った。BrdU取り込みの増大は、MC4Rアンタゴニスト処理した接着細胞培養物中でみられた(1〜100nM濃度)図1B。ATPおよびBrdU取り込みにおける増大は、スチューデントの両側の、対応のないt検定によって統計学的に有意であることが確認された(図1aおよび図1b)。同じATPアッセイでは、内因性のMC4Rアンタゴニストペプチドアナログアグーチ(Agouti)(1−40)アミドおよびアグーチ(87−132)での処置は同様に、増殖の統計学的に有意な増大を生じた(それぞれ、100nMでコントロールの1.3−1.4倍、400nMでコントロールの1.6倍)。
【0086】
結論として、MC4Rの活性を低下する化合物は、細胞数を増大し、かつ神経幹/前駆細胞のインビトロでの増殖を誘導し得る。
【0087】
(実施例4)
インビボの増殖実験
新生のMC4Rアンタゴニスト刺激をさらに特徴付けるため、インビボ研究を行った。増殖に対するHS014の効果(BrdU取り込み)を、2週間にわたって、6.25〜625ng/24時間におよぶ用量で試験した。投与は、右側脳室へのi.c.v.注入によって行った。BrdUは、HS014i.c.v.と一緒に投与した。動物の体重を、実験全体を通じて測定した。実験の終了後、BrdU発現は、側脳室壁の上衣下層由来の脳の切片に対する、ならびに歯状回におけるサブ顆粒細胞(sub granular cell)に対する免疫組織化学によって検出した。
【0088】
これらの研究のために、HS014を、人工CSF(148mMのNaCl、3mMのKCl、1.4mMのCaCl、0.8mMのMgCl、1.5mMのNaHPO、0.2mMのNaHPO、pH7.4(使用前に滅菌濾過)また1mg/mLのBrdU、50μg/mLのゲンタマイシン、および100μg/mLのラット血清アルブミンも含む)中で3.33μMに溶解した。人工CSF中のBrdU 1mg/mL、100μg/mL、ラット血清アルブミン、50μg/mLゲンタマイシン、HS014の溶液を調製した。ポンプを配管から0.9%NaClで充填し、流量調節器(flow moderators)に接続して、37℃で一晩保管した。
【0089】
HS014およびHS028の両方の1〜100nMの用量範囲は、インビトロアッセイにおいてコントロールに比較して成体の神経幹細胞の数を増大するのに有効であることが見出された(実施例3を参照のこと)。成体ラットの側脳室中にHS014を連続注入によって投与することによってインビボで神経幹細胞数を増大するのに有効である用量を評価するため、脳脊髄液(CSF)の容積および代謝回転の速度を用いて、1〜100nMの範囲でCSF濃度を得て、これによって、6.25、62.5および625ng/日というポンプ濃度送達を得た。中枢神経系によって制御される応答を惹起するのに有効である用量を理解するためのさらなるマーカーとして、動物を秤量することによってこの実験を通じて体重増加もモニターした。MC4Rアンタゴニストは、体重増加を誘発し[53]、食物取り込みおよび代謝に影響することが公知の脳の領域、特に弓状、脳室周囲、側方および視床下部の腹側正中の核に対して作用する[53、54]。
【0090】
約290グラムと秤量される成体ラットをイソフルランで深く麻酔して、カニューレを右側脳室への注入のために定位的に移植した(座標:AP−0.8mm;L−1.7mmおよびDV−4.0mm、十字縫合に対して)(ALZET脳注入キットI)。このカニューレを固定スクリューで歯科セメントを用いて頭蓋に固定した。この注入キットは、動物の肩甲骨中線領域に置いた皮下移植したミニ浸透圧ポンプ(ALZET2002)に接続した。ラット(それぞれの処置群における5、6および6匹の動物(コントロールでは6匹))に、2週間にわたって0.5μL/時間の溶液(処置群については6.25、62.5または625ng/日のHS014)を与え、引き続いて屠殺した。
【0091】
実験の終りに、ラットをペントバルビタールナトリウム(120mg、i.p.)で麻酔して、90mlの0.9%のNaClおよび4%のPFA溶液で心臓を介して灌流させた。脳を取り出して、イソペンタン中で−40℃で凍結し、凍結切片にするまで−20℃で保管した。脳をクリオスタット(凍結切片作製器)で12μmの冠状に切片にし、これは側脳室の両方、十字縫合1.6mm(各々のガラス上の3つの隣接する切片)および歯状回、Paxinosのラット脳アトラスに従う、十字縫合−2.56〜−4.16mmにまたがる領域(各々のガラス上の2つの隣接する切片)であった。この切片をスーパーフロスト顕微鏡スライド上に解凍装填して、必要になるまで−20℃で保管した。BrdU免疫組織化学のために、スライドを2M HCl中で変性して、10%ヤギ血清とのインキュベートによって非特異的な結合を一晩ブロックした。この後、ラットモノクローナル抗BrdU(Harlan)1/100を0.1%のtween−20およびPBSとともに適用し、加湿チャンバで90分インキュベートした。PBS中での洗浄後、二次抗体抗ラットIgGビオチン化(Vector)1/200を加えて、室温で1時間インキュベートした。検出として、Vectastain Elite(Vector)1/100を用いて、最終的に、発色は、顕微鏡でモニターするSigmaファーストDABタブレットによって行い、次いで切片をHTXによって、続いて脱水および掃除によって対比染色した。
【0092】
定量は、40×の倍率でNikon eclipse E6000顕微鏡を用いて行った。処理条件に関して観察者は盲検で分析を行った。十字縫合1.6mmのSVZの向同側に由来する3つの隣接する切片を評価した。上衣下層内の全てのBrdU陽性細胞をカウントした。全てのカウントをお互いのラットについて一緒にプールして、1平方あたりの細胞の平均数として報告する。
【0093】
BrdUカウントの結果を図2Aに示す。神経幹/前駆体細胞増殖に対するHS014の効果は、62.5ng/日の用量で最大であった。しかし、体重増加(図2B)は、用量依存的な方式で増大し、62.5ng/日の用量で最初に有意であって、625ng/日では最大であった。この体重増加は、海馬における生理学的効果も示す。
【0094】
結論として、MC4Rの活性を低下する薬剤は、インビボにおいて神経幹/前駆細胞の増殖を増大し得る。顕著なことに、本発明者らは予想外に、MC4R活性の減少を生じる薬剤で被験体を処置したとき、体重増大が薬理学的なCNS効果の代理のマーカーとして用いられ得るということを見出す。適度な体重増加を起こす用量でさえ、神経幹細胞/前駆細胞の増殖を誘導するには十分である。
【0095】
(実施例5)
インビボのパーキンソン病モデル実験
この研究では、HS014(Sigma Aldrich)の神経回復作用を、パーキンソン病の6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)病変ラットモデル(動物は、ドーパミン作動性ニューロンの部分的な片側の喪失がある)において検討した。この病変は、内側前脳束における6−OHDAの単回注射によって誘発される(下を参照のこと)。アンフェタミン刺激の際、病変の動物は、ドーパミン作動性細胞の片側の喪失から生じるドーパミン放出における不均衡に起因して向同側回転性行動を示す。これによって、このモデルで試験される化合物の機能的効果を、アンフェタミン誘発性回転の回数をカウントすることによって定量することが可能になる[55]。完全な病変を有する動物は、アポモルフィン刺激後、向反側回転行動を示し、これによって、この研究からいずれの完全に病変した動物も排除することが可能になる。
【0096】
パーキンソン病の6−OHDA病変ラットの調製。
【0097】
雄性Sprague−Dawleyラット(秤量280〜320g)を食物および水に自由にアクセスさせて、12時間明/暗のサイクルのもとで温度管理した部屋で飼育する。手術の30分前、動物にパーギリン(5mg/kg)およびデシプラミン(25mg/kg)を腹腔内注射した。次いでラットを全身麻酔(ハロタン)下で定位固定フレームに入れた。小さい掘削孔を頭蓋の右側に作製した。各々の動物に4μgの6−OHDA(0.1%のアスコルビン酸を含む2μlの滅菌水中)を、PakinosおよびWatsonのアトラス[56]に従って、十字縫合から−2.8mm、正中線に対して側方2mm、および頭蓋下8.6mmの座標で、右の内側前脳束中に与えた。5μlのハミルトン注射器を用いて5分にわたって、6−OHDA注射を行った。ラットをこの損傷の後5週間回復させた。次に、この動物にカニューレに接続されたAlzetミニポンプを移植して、2週間にわたって右側脳室にHS014またはビヒクルを注入させた。Alzetミニポンプは1週後に取り除いた。
【0098】
ポンプの準備
材料:脳注入キットII(ALZET,Cupertiono,CA);ALZET(登録商標)浸透圧ミニポンプモデル2002(ポンプの容積:200μl、ポンピング速度:0.5μl/h(=12μl/d)14日間)。ビヒクル(148mMのNaCl、3mMのKCl、1.4mMのCaCl、0.8mMのMgCl、1.5mMのNaHPO、0.2mMのNaHPO、pH7.4、50μg/ml、ゲンタマイシンおよび100μg/mlのラット血清アルブミン)または化合物溶液(ビヒクルに加えて5.21μg/mlのHS014、62.5ng/日の用量を生じる)のいずれかを含有する200μlの溶液でポンプを充填し、流量調節器に配管で接続し、水浴(37℃)中でNaCl(0.9%)溶液中で2〜5時間、移植の前にインキュベートした。
【0099】
研究のデザイン
24匹のラットを2群に分けて、個々のラットは、等しく分布されるように、そのベースラインの回転(病変後5週)に基づいて処置群に無作為に割り当てた。従って、1群あたり12匹の部分的に病変のラットがいた。この群には、2週間にわたって、移植されたAlzetミニポンプを介してビヒクルまたは薬物処理を与えた。次いでこのラットを処置なしでさらに2週間おいて、その後にそれらを屠殺した。この研究の間、動物には0.05mg/kg(s.c.)アポモルフィンおよび5mg/kg(i.p.)アンフェタミンを、ポンプ移植の前に与え、次いで1週ごとに1回、回転反応を測定した。回転活動は、実験の期間(すなわち、アポモルフィンまたはアンフェタミン投与後60分)にわたって回転の総数をカウントすることによって測定した。体重も毎週記録した。
【0100】
投薬理論
コントロールの動物よりも側脳室の脳室下帯における神経幹細胞数の増大を刺激し、体重増加の増大を誘発した用量を(実施例4)、投与する用量として選択した。
【0101】
アンフェタミン誘発性の回転に対するMC4R活性低下薬剤の効果
アンフェタミン刺激後の回転行動によって決定した、いかなる完全に病変の動物も除外した。ポンプ移植の前に、アンフェタミンは、それぞれ、ビヒクル処置した群およびHS014群において、正味の向同側回転を365.75±48および300.417±44(平均±S.E.M.)誘発した。この群のベースライン値の間の相違は有意ではなかった(P>0.05;対応のないt検定)。ビヒクル群では、毎週のアンフェタミンチャレンジは、ポンプ前の応答に比較して、研究の経過にわたって正味の向同側回転の減少はなんら示さなかった(全てP<0.05;反復測定一元配置ANOVA、続いてダネット検定、図4)。
【0102】
しかし、HS014群では、毎週のアンフェタミンのチャレンジは、ポンプ前の応答に比較して1〜4週(包括的)で正味の向同側回転の有意な減少を示す(全てP<0.01;反復測定一元配置ANOVA、続いてダネット検定、図4)。4週での減少の大きさは、ポンプ前のレベルに比較して回転が約30%に低下するものであった。HS014群とのビヒクル群の比較によって、2週で向同側の回転の有意な減少が示された(P<0.05;対応のないt検定;図4)。
【0103】
この結果、MC4R活性低下薬剤(MC4RアンタゴニストHS014)の投与がパーキンソン病のモデルにおける有意な改善を誘発することが示された。顕著なことに、改善は、化合物の投与が停止された後、少なくとも2週間維持された。回転行動の長期にわたる正規化は、神経回復効果に帰せられ得る。言い換えれば、この効果は、一過性効果というよりも可塑性とみられ、MC4アンタゴニストは、症候性の効果および急性の効果を発揮するだけでなく、病状の経過を改善することによって脳の安定な変化を誘発するとみなされることが示唆された。同じ化合物がインビトロおよびインビボにおいて神経幹細胞の増殖を誘発できたという事実を、このパーキンソン病モデルで観察された持続性の効果と一緒にすれば、MC4R活性低下薬剤でのパーキンソン病の処置は、CNS新生の機構を介して作用することが示された。
【0104】
化合物投与は、動物の体重の小さいけれども注目すべき増大を生じ、これは事実上、一過性であった(図5)。この結果、体重のわずかな増大が変性CNS障害の処置に有効なMC4R活性低下薬剤の用量の代用マーカーとして用いられ得ることが示される。
【0105】
(実施例6)
インビボでのパーキンソン病モデル実験#2
この研究では、Tran12eおよびXi14gの神経回復作用を、パーキンソン病の6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)病変ラットモデル(ここで動物は、部分的な片側のドーパミン作動性ニューロンの喪失がある)で検討した。この病変は、内側前脳束中の6−OHDAの単回注射によって誘発された(下を参照)。アンフェタミン刺激の際、この病変動物は、ドーパミン作動性細胞の片側の喪失から生じるドーパミン放出の不均衡に起因して同側回転行動を示す。これによって、このモデル中で試験した化合物の機能的な効果は、アンフェタミン誘発性の回転数をカウントすることによって定量可能になる[55]。完全な病変を有する動物は、アポモルフィン刺激後に向反側回転行動を示し、これによって、この研究からいかなる完全に病変の動物も除外することが可能になる。
【0106】
パーキンソン病の6−OHDA−病変ラットモデルの準備
雄性Sprague−Dawleyラット(秤量280〜320g)を食物および水に自由にアクセスさせて、12時間明/暗のサイクルのもとで温度管理した部屋で飼育する。手術の30分前、動物にパージリン(5mg/kg)およびデシプラミン(25mg/kg)を腹腔内注射した。次いで、ラットを全身麻酔(ハロタン)下で定位固定フレームに入れる。小さい掘削孔を頭蓋の右側に作製した。各々の動物に4μgの6−OHDA(0.1%のアスコルビン酸を含む2μlの滅菌水中)を、PakinosおよびWatsonのアトラス[56]に従って、十字縫合から−2.8mm、正中線に対して側方2mm、および頭蓋下8.6mmの座標で、右の内側前脳束中に片側注射した。5μlのハミルトン注射器を用いて5分にわたって、6−OHDA注射を行った。ラットをこの損傷の後5週間回復させた。
【0107】
投与溶液の調製
試験化合物を、投与の直前に滅菌のリン酸緩衝化生理食塩水からなるビヒクルに溶解して、0.22μmのフィルターで滅菌ろ過する。
【0108】
研究のデザイン
36匹のラットを3群に分けて、個々のラットは、等しく分布されるように、そのベースラインの回転(病変後5週)に基づいて処置群に無作為に割り当てた。従って、1群あたり12匹の部分的に病変のラットがいる。この群には、2週間にわたって、全身投与を介してビヒクルまたは薬物処置を与える。次いで、このラットを処置なしでさらに2週間おいて、その後にそれらを屠殺した。この研究の間、動物には0.05mg/kg(s.c.)アポモルフィンおよび5mg/kg(i.p.)アンフェタミンを、ポンプ移植の前に、次いで1週ごとに1回与え、回転反応を測定した。回転活動は、実験の期間(すなわち、アポモルフィンまたはアンフェタミン投与後60分)にわたって回転の総数をカウントすることによって測定する。体重も毎週記録した。
【0109】
投薬理論
実施例4と同様の事前研究を行って、処置群において有意な体重増大を誘発する各々の化合物についての最低の用量を見い出す。各6匹のラットを有する10の群に、2週間の間、群間で10倍の相違のある10mg/kg/日から10pg/kg/日の化合物を全身投与する。有意な体重増大を誘発する最低用量を6−OHDAモデルについて選択する。
【0110】
アンフェタミン誘発性の回転に対するMC4R活性低下薬剤の効果
アンフェタミン刺激後の回転行動によって決定した、いかなる完全に病変の動物も除外する。処置の前に、アンフェタミンは、それぞれ、ビヒクル群および処置群において、ほぼ同様の正味の向同側回転を誘発する。この群のベースライン値の間の相違は有意ではない(P>0.05;対応のないt検定)。ビヒクル群では、毎週のアンフェタミンチャレンジは、処置前の反応に比較して研究の経過にわたって正味の向同側回転の減少はなんら示さない(全てP<0.05;反復測定一元配置ANOVA、続いてダネット検定)。
【0111】
しかし、処置群では、毎週のアンフェタミンのチャレンジは、処置前の応答に比較して1〜4週(包括的)で正味の向同側回転の有意な減少を示す(P<0.05;反復測定一元配置ANOVA、続いてダネット検定)。4週での減少の大きさは、処置前のレベルに比較して回転が約30%〜50%に低下するようなものである。処置群とのビヒクル群の比較によって、2週で向同側の回転の有意な減少が示される(P<0.05;対応のないt検定)。
【0112】
この結果、MC4R活性低下薬剤の投与がパーキンソン病のモデルにおける有意な改善を誘発することが示される。顕著なことに、改善は、化合物の投与が停止された後、少なくとも2週間維持される。回転行動の長期にわたる正規化は、神経回復効果に帰せられ得る。言い換えれば、この効果は、一過性効果というよりも可塑性とみなされ、MC4アンタゴニストは、症候性の効果および急性の効果を発揮するだけでなく、病状の経過を改善することによって脳の安定な変化を誘発するとみなされることが示唆され、このことは、CNS新生を介する効果を示している。
【0113】
化合物投与はまた、動物の体重の小さいけれども注目すべき増大を生じ、これは事実上、一過性である。この結果、体重のわずかな増大が変性CNS障害の処置に有効なMC4R活性低下薬剤の用量の代用マーカーとして用いられ得ることが示される。
【0114】
(実施例7)
さらなるインビボのパーキンソン病モデル実験
この実験は、本質的に実施例5〜6の反復として、ただしMC4Rレセプターの活性を実質的に低下する異なる化合物をその天然の設定で用いて行う。この化合物は、アンタゴニスト、インバースアゴニスト、インヒビターおよび/または本明細書で特定される他の薬剤である。用いられる化合物は、表1に例示される。血液脳関門に浸透し得る化合物については、投与は、実施例6のように全身投与される。血液脳関門を通過しない化合物については、実施例5のように脳室内投与が用いられる。
【0115】
実施例5および6で同様の結果が得られ、このことは、パーキンソン病での効果が実質的なMC4R活性低下特性を有する化合物に一般的であるということを示す。
【0116】
本開示における全ての特許、特許出願および引用文献は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0117】
参考文献
【0118】
【化5】

【0119】
【化6】

【0120】
【化7】

【0121】
【化8】

【0122】
【化9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNS細胞の新生を調節するための方法であって、該CNS細胞と、該CNS細胞の新生を調節するのに十分なMC4R活性低下薬剤を含む組成物の有効量とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記薬剤がMC4Rのアンタゴニスト、MC4Rのインバースアゴニスト、MC4Rのインヒビター、またはMC4Rの発現レベルを低下させる薬剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、培養細胞上においてインビトロで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が哺乳動物においてインビボで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接触工程が、CNS新生を調節するのに十分な量で哺乳動物に対して前記組成物を投与する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記CNS細胞が神経幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記CNS細胞が、ニューロン、前駆体細胞、幹細胞、胚性神経幹細胞、非胚性神経幹細胞およびグリア細胞からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
CNS新生を調節する工程が、神経系細胞またはその子孫の活性を調節し、該活性が、増殖、生存、分化、脱分化、遊走、タンパク質の分泌または発現、該神経系細胞またはその子孫の栄養素の分泌または発現、該神経系細胞またはその子孫の免疫調節因子の分泌または発現、該神経系細胞またはその子孫の神経保護因子の分泌または発現、該神経系細胞またはその子孫のニューロン樹枝状分岐因子の分泌または発現、該神経系細胞またはその子孫のシナプス形成促進因子の分泌または発現、および該神経系細胞またはその子孫のシナプス伝達促進因子の分泌または発現からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が、非胚性細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、成体神経幹細胞およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤が、HS014、HS028、化合物10、化合物Pontillo14c、化合物Xi14a、化合物Xi14b、化合物Xi14c、化合物Xi14d、化合物Xi14e、化合物Xi14f、化合物Xi14g、化合物Xi14h、化合物Xi14i、化合物Xi14j、SHU9119、HS024、化合物10d、化合物18v、化合物13b−2、化合物Tran2e、Agouti(1−40)アミド、Agouti(87−132)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤が低分子量化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体が成体、若年者または思春期前の人である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞がまた、1つ以上の成長因子と接触される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記成長因子が、EGF、PDGF、FGF、TGF−β、TGF−α、Epo、IGF−I、IGF−II、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、TNF−β、IFN−β、IFN−γ、VEGFおよびCSFからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
被験体におけるCNS障害の症状を緩和するための方法であって、該被験体に対してMC4R活性低下薬剤を含む組成物を、該症状を緩和するのに十分な量で投与する工程を包含する、方法。
【請求項16】
前記CNS障害が、前記被験体におけるニューロンの異常な減少によって生じる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記CNS障害が、前記被験体におけるグリア細胞の異常な減少によって生じる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記CNS障害が、パーキンソン病、パーキンソン症候群の障害、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄虚血、虚血性脳卒中、脊髄損傷、ガン関連脳損傷、ガン関連脊髄損傷、シャイ・ドレーガー症候群、進行性核上麻痺、脳卒中、脳梗塞、多発脳梗塞性認知症、老人性認知症、レヴィー小体疾患、ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病、前頭葉変性、大脳皮質基底核変性症(CBD)、多系統萎縮症(MSA)、線条体黒質変性症(SND)、フリードリッヒ運動失調症、オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)、多発性硬化症およびてんかんからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記神経系の障害が、神経変性障害、神経幹細胞障害、神経前駆体障害、虚血性障害、神経学的外傷および損傷、情動障害、精神神経性障害、網膜の変性疾患、網膜損傷および外傷、ならびに学習および記憶の障害からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記被験体が哺乳動物である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記哺乳動物が、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギおよびヒツジからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体が、成体、若年者または思春期前の哺乳動物である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記神経系の障害が、神経変性に関連する運動失調、ウマ変性脳脊髄障害、小脳性無生活力、ウマ運動ニューロン疾患;胃スピロヘータ病(ウマ自律神経障害)、麻酔後脊髄軟化症、およびウマ白質脳軟化症からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記被験体がまた、1つ以上の成長因子を投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記被験体がまた、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬、抗てんかん薬、抗アルツハイマー薬、抗パーキンソン薬、MAOインヒビター、セロトニン取り込みブロッカー、ノルアドレナリン取り込みブロッカー、ドーパミン取り込みブロッカー、ドーパミンアゴニスト、L−DOPA、トランキライザー、鎮静薬およびリチウムからなる群より選択される1つ以上の薬剤を投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が全身に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、経口、皮下、皮内、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、脳室内、実質内、髄腔内、頭蓋内、口腔内、粘膜、経鼻、肺および直腸の経路からなる群より選択される経路によって投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、経鼻スプレーまたは経鼻坐剤として処方される、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、乾燥粉末吸入器または水性ベースの吸入器によって投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記MC4R活性低下薬剤が前記被験体の中枢神経系に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
中枢神経系障害のうち少なくとも1つの症状を示す被験体において、CNS新生を誘導する方法であって、該被験体に対してMC4R活性低下薬剤を投与する工程を包含し、該薬剤が該被験体においてCNS新生を誘導する、方法。
【請求項32】
CNS新生が、神経系細胞の乏突起神経膠細胞への変換を誘導する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記変換が、
a.前記神経系細胞を幹細胞へ変換する工程、および
b.該幹細胞を乏突起神経膠細胞へ変換する工程
を包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記変換がインビトロで行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記幹細胞が単能性、少能性、または多能性の幹細胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
被験体中の変性CNS障害の症状を緩和するための方法であって、以下の工程:
a)MC4R活性低下薬剤を含む組成物の1つ以上の有効用量を一定期間、該被験体に投与する工程と;
b)非侵襲性の方法によって該被験体の新生の兆候をモニタリングして該用量が十分であるか否かを決定する工程と、
c)該新生の兆候が不十分である場合、該用量を増大する工程か、または該新生の兆候が過度である場合、該用量を減少する工程と、
を包含する方法。
【請求項37】
前記モニタリング工程が前記被験体の体重をモニタリングする工程を包含し、前記十分な用量が、前記CNS障害の同様の症状を有するが、前記組成物を投与されない第二の被験体に比較して、設定閾値を上回る該被験体の体重の増大を生じる最小用量として決定される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記閾値が、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、40%および50%からなる群より選択される体重の増大である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が、前記被験体の食事を変更することなく、かつ前記MC4R活性低下薬剤以外の任意の体重に影響を与える薬剤(weight affecting agent)の投与なしに行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記被験体が、前記工程(a)の前に健康な被験体に比較してドーパミン作動性ニューロンの数が低下している、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記ドーパミン作動性ニューロンの数の減少が:少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%、からなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記モニタリング工程が、プロトン核磁気共鳴によって前記被験体のCNSにおける神経幹細胞および前駆細胞のレベルをモニタリングする工程を包含する、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
変性CNS障害を有する被験体において変性CNS症状を軽減するための長時間作用性の処置であって:該被験体に対して、MC4Rアンタゴニストを、該被験体が変性CNS症状における所望の減少を示すまで所定の期間、投与する工程を包含し、該被験体が該MC4Rアンタゴニストの投与が停止した後に少なくとも2週間にわたって変性CNS症状の継続的な軽減を示す、処置。
【請求項44】
前記変性CNS疾患がパーキンソン病であり、かつ前記変性CNS症状がパーキンソン病の症状である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記変性CNS疾患が、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、レヴィー小体疾患、多発脳梗塞性認知症、ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病、前頭葉変性、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、線条体黒質変性症、進行性核上麻痺、フリードリッヒ運動失調症、オリーブ橋小脳萎縮症、脳卒中、脳外傷、てんかん、統合失調症、シャルコー・マリー・ツース病、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、進行性多病巣性白質脳障害、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、HIV脳炎、橋中央ミエリン溶解、副腎脳白質ジストロフィー、クラッベ球様細胞、および異染性白質萎縮症、アレクサンダー病、カナバン病、コケーン症候群およびペリツェウス・メルツバッハー病、過剰な照射、化学療法剤の副作用、および免疫抑制療法による副作用からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記投与は、前記方法が前記側脳室壁の成体の神経幹細胞の増殖を増大する、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記投与が、0.1ng/kg/日と10μg/kg/日との間、1μg/kg/日と100μg/kg/日との間、または10μg/kg/日と1000μg/kg/日との間という投薬量の投与である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記MC4R活性低下薬剤が、前記被験体の中枢神経系に投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記MC4R活性低下薬剤が、0.1nM〜500nMの組織濃度を得るように投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
脳に変性CNS障害およびドーパミン作動性ニューロンの減少を有する被験体における変性CNS症状を軽減するための長時間作用性の処置であって:該被験体が変性CNS症状の所望の減少を示すまでの期間、MC4Rアンタゴニストを該被験体に投与する工程を包含し、ここで該被験体が、前記MC4Rアンタゴニストの投与が停止される後、少なくとも2週間にわたって変性CNS症状の継続的な減少を示す、方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−513230(P2010−513230A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540662(P2009−540662)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010994
【国際公開番号】WO2008/071438
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(505077792)ニューロノバ エービー (5)
【Fターム(参考)】