説明

メータ装置のムーブメント

【課題】 ステップモータを駆動させないときの指針の下限位置からのずれを防止するにあたり、指針の表示駆動に対する影響が無く、砂埃の金属成分の吸着も生じにくく、指針の不自然な動きによる見栄えの問題も生じないようにできるメータ装置のムーブメントを提供することを目的とする。
【解決手段】 目盛盤の裏面側に設けられるケース6に、指針2に先端が接続される指針軸4と、指針軸4に減速歯車列8を介して駆動力を与えるステップモータ7と、指針2が、目盛の下限を指す下限位置に戻った状態で、それ以上の戻り方向への回動を規制するストッパ11と、が設けられたメータ装置のムーブメントであって、ケース6内に、指針軸4と一体に回動する出力歯車82に設けられ、磁性体で形成された被吸引部材9と、指針2が下限位置に配置されたときに、被吸引部材9を磁着する電磁石10と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステップモータを駆動源として指針を移動させるメータ装置に関するものであり、特に、指針を駆動させるステップモータなどを収容したメータ装置のムーブメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目盛盤の裏側に、指針が連結された指針軸と、駆動源となるステップモータと、ステップモータの駆動力を減速して指針軸に伝達させる減速歯車列と、を収容したムーブメントが設けられ、ステップモータの駆動により指針が目盛盤の表面に沿って回動し、アナログ表示するメータ装置が知られている。
【0003】
さらに、このようなメータ装置では、指針の制御位置と実際の位置とのズレ対策として、指針が目盛の下限(0など)の位置を指しているときに、ズレの解消を図ることが知られていて、この際、指針を下限位置に配置させる技術として、以下のような従来技術が知られている。
【0004】
第1の従来技術は、指針と目盛盤の下限位置付近とに、互いに引き合う永久磁石を設置し、指針が下限位置では、常に、指針を目盛盤に永久磁石の吸引力により固定する技術である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
第2の従来技術は、ステップモータの作動を再開するときに、下限位置方向へ指針を回動させ、励磁と開放とを繰り返し、指針がストッパにより回動を停止した場合に、誘起電圧が収束する性質を利用し、励磁と開放、誘起電圧の観察を繰り返し、誘起電圧がある閾値を下回った場合に、零位置であるとする技術である(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−145412号公報
【特許文献2】特開2003−125599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記第1の従来技術にあっては、指針の固定に永久磁石を用いているため、磁石設置位置付近を指針により指示する際に、永久磁石による磁力(吸引力)の影響下で指針を駆動させる必要があり、その制御が難しいという問題がある。さらに、永久磁石の磁力が、目盛盤上で砂埃などの金属成分を吸着してしまい、見栄えが悪化するおそれがあるという問題もある。
【0007】
また、上記第2の従来技術にあっては、誘起電圧は、指針がストッパ位置に到着して直ちに閾値を下回るわけではなく、収束するまでの機械的な跳ね返り動作を繰り返すので、見た目に不自然で見栄えに劣るという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、ステップモータを駆動させないときの指針を下限位置に配置させるにあたり、指針の表示駆動に対する影響が無く、砂埃の金属成分の吸着も生じにくく、指針の不自然な動きによる見栄えの問題も生じないようにできるメータ装置のムーブメントを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述事情に鑑みなされたものであって、請求項1に記載の発明は、目盛盤の裏面側に設けられるケースを備え、このケースに、回動可能に支持されて前記目盛盤の表面側に位置する指針に先端が接続される指針軸と、この指針軸に減速機構を介して駆動力を与えるステップモータと、前記指針が、目盛盤に設けられた目盛の下限を指す下限位置に戻った状態で、それ以上の戻り方向への回動を規制するストッパと、が設けられたメータ装置のムーブメントであって、前記ケース内に、前記指針軸と一体に回動する部材に設けられ、磁石により吸引される磁性体で形成された被吸引部材と、前記指針が下限位置に配置された状態で、前記被吸引部材を磁着可能に配置された電磁石と、が設けられていることを特徴とするメータ装置のムーブメントとした。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のメータ装置のムーブメントにおいて、前記ケース内に、前記指針が下限位置に戻ったときに開閉が切り換えられるスイッチが設けられ、前記電磁石は、前記指針が下限位置に戻ったときの前記スイッチの切り換えに応じた切換作動手段からの通電により励磁されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のメータ装置のムーブメントにおいて、前記ステップモータの駆動を制御する制御手段は、前記指針を下限位置から移動させる際に、前記切換作動手段による通電を停止させて前記電磁石の励磁解除を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のメータ装置のムーブメントにおいて、前記電磁石のコアは、前記指針が下限位置に戻ったときに、前記被吸引部材と当接するよう配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のメータ装置のムーブメントにおいて、前記コアが、前記ストッパとして、前記指針が下限位置に戻ったときに前記戻り方向への移動を規制するよう配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載のメータ装置のムーブメントにおいて、前記被吸引部材とコアとは、両者の磁着状態で環状となるよう形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載のメータ装置のムーブメントにおいて、前記被吸引部材は、前記コアと同一の素材で、かつ前記コアと同一の断面積に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、指針が下限位置に戻った際には、ムーブメントのケース内に設けた電磁石により被吸引部材を磁着し、被吸引部材が設けられている指針と一体に回動する部材がその位置に保持され、これにより、指針も下限位置に保持される。
【0017】
このように指針が、下限位置に戻ったときには、電磁石により磁着されるため、ストッパに衝突した反力で機械的に跳ね返る動作が発生するのを防止することができる。これにより、見栄えを向上できるとともに、跳ね返ったときの位置を下限位置として誤検出するおそれも無くなる。さらに、電磁石の磁力に基づいて指針が下限位置に保持されるため、従来のように、下限位置を特定するために指針の跳ね返り動作を繰り返すことが不要となり、見栄えを大幅に改善することができる。
【0018】
しかも、指針の保持に永久磁石を用いておらず、かつ、電磁石は指針が下限位置に戻った時点で磁力を発生させることができるため、指針が下限位置近傍に配置されているときの指針に対する磁力の影響を無くすことができ、良好な制御性を得ることができる。加えて、電磁石は、常時磁力を持たせることなく選択的に作動させることができるため、永久磁石を用いた場合と比較して、目盛盤上などで砂埃などの金属成分などを吸着しにくくなるとともに、埃の付着量が増加し続けることはない。
【0019】
また、本発明では、上述の効果を得るための被吸引部材と電磁石とをムーブメントのケース内に設けたため、組付作業性に優れる。
【0020】
請求項2に記載の発明では、指針が下限位置に戻った際には、スイッチの開閉が切り換えられ、この切換に基づく切換作動手段からの通電で電磁石が励磁される。
【0021】
したがって、本発明では、指針が下限位置に達したか否かを、ムーブメントのケース内に設けたスイッチにより電気信号として取り出すことができる。
【0022】
さらに、電磁石の励磁を、スイッチの機械的な作動により行うようにしたため、センサなどにより位置を検出して電磁石を作動させる構造と比較して、安価に製造でき実装が容易である。さらに、下限位置を誘起電力で判定するのに比べ、温度やノイズの影響を受けることなく確実に検出することができる。
【0023】
加えて、本発明では、被吸引部材および電磁石に加えて、上述の効果を得るためのスイッチをムーブメントのケース内に設けているため、組付作業性に優れる。
【0024】
請求項3に記載の発明では、制御手段は、指針を下限位置に戻す制御を行った後に、再び、指針による表示を行うべくステップモータを駆動させる際には、切換作動手段による電磁石への通電を停止させる。
【0025】
したがって、指針を下限位置から移動させる際に、ステップモータの駆動力に対して電磁石の磁着力の影響が無く、制御性に優れるとともに、電磁石への通電を必要最小限として省エネルギ化を図ることができる。
【0026】
請求項4に記載の発明では、指針が下限位置に戻るのに応じて電磁石が励磁された際には、被吸引部材がコアに当接した状態で吸着される。
【0027】
したがって、電磁石のコアが被吸引部材に当接しない場合に比べて、被吸引部材に作用する磁力を大きくして、下限位置における被吸引部材の吸着を確実なものにすることができる。しかも、このように被吸引部材に作用する電磁石の磁力を大きくできることにより、ムーブメントのケースという限られたスペースに設けられた電磁石の小型化を図り、スペース効率を高めることができるとともに、電磁石による消費電力を抑えることができる。
【0028】
請求項5に記載の発明では、指針が下限位置に戻った際に、被吸引部材が電磁石のコアに当たることで、指針軸のそれ以上の回動が規制される。
【0029】
このように、電磁石のコアがストッパを兼ねることで、ストッパを別に併設するものに比べて、指針の下限位置の設定が容易になり、かつ、ムーブメントにおける構成要素の数を少なくして、スペース効率を高めることができる。
【0030】
請求項6に記載の発明では、被吸引部材がコアに当接した際に環状となる。したがって、被吸引部材とコアが環状を形成しない構造と比較して、電磁石を励磁したときにコアと被吸引部材に生じる磁束密度の安定を図って、被吸引部材に作用する磁力を高めることができる。
【0031】
これにより、電磁石において、少ない電流で強い磁力を発生させることができ、ムーブメントのケースという限られたスペースに占める電磁石の小型化を図り、スペース効率を高めることができる。
【0032】
請求項7に記載の発明では、被吸引部材をコアと同一断面積に形成したため、電磁石を励磁したときに、被吸引部材としてコアよりも小さな断面積のものを用いるよりも強い磁力を得ることができ、かつ、被吸引部材としてコアよりも大きな断面積のものを用いるよりも、指針軸に作用する荷重を小さく抑えることができる。
【0033】
したがって、指針軸と一体に回動する部材、およびこの部材に駆動力を与えるステップモータに対し、荷重バランスの影響を最小限に抑えつつ、電磁石による磁力をできるだけ大きく確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
この実施の形態のメータ装置のムーブメントは、目盛盤(1)の裏面側に設けられるケース(6)を備え、このケース(6)に、回動可能に支持されて前記目盛盤(1)の表面側に位置する指針(2)に先端が接続される指針軸(4)と、この指針軸(4)に減速機構(8)を介して駆動力を与えるステップモータ(7)と、前記指針(2)が、目盛盤(1)に設けられた目盛の下限を指す下限位置に戻った状態で、それ以上の戻り方向への回動を規制するストッパ(11)と、が設けられたメータ装置のムーブメントであって、前記ケース(6)内に、前記指針軸(4)と一体に回動する部材に設けられ、磁石により吸引される磁性体で形成された被吸引部材(9)と、前記指針(2)が下限位置に配置された状態で、前記被吸引部材(9)を磁着する電磁石(10)と、が設けられていることを特徴とするメータ装置のムーブメントである。
【実施例1】
【0036】
以下に、図1〜図6に基づいて、この発明の最良の実施の形態の実施例1のメータ装置のムーブメントAについて説明する。
【0037】
まず、構成から説明すると、実施例1のメータ装置のムーブメントAを用いたメータ装置Mは、図2に示すように、目盛盤1と指針2とを備えている。なお、このメータ装置Mとしては、自動車の車速計を示すが、エンジン回転数計など他のメータ装置にも適用できる。
【0038】
目盛盤1は、略円弧状の目盛部1aを備えている。この目盛部1aは、車速を表示する目盛1bが下限目盛値(車速0Km/h)から上限目盛値にかけて均等に複数設けられている。
【0039】
また、指針2は、目盛盤1の各目盛1bが配置された円弧の中央部分から外径方向に延在されている。
【0040】
指針2は、図3に示すように、目盛盤1の裏面側に設けられた実施例1のメータ装置のムーブメントAから突出されて目盛盤1を貫通された指針軸4に連結されて、目盛盤1の表面に沿って回動される。なお、ムーブメントAは、目盛盤1の裏面側に設けられている回路基板5に支持されている。
【0041】
ムーブメントAは、図1に示すように、樹脂製のケース6と、指針2の駆動源となるステップモータ7と、ステップモータ7の回転を減速して指針軸4に伝達する減速機構としての減速歯車列8と、被吸引部材9と、電磁石10と、を備えている。なお、図1は、ムーブメントAを図3において矢印Y1方向から見たものである。
【0042】
ステップモータ7は、界磁巻線71,72を有したヨーク73と、このヨーク73に回転可能に支持されたマグネットロータ74と、を備えている。マグネットロータ74は、その外周に、周方向に沿ってN極とS極とが交互に着磁されている。そして、ステップモータ7は、界磁巻線71,72に互いに位相を90度にする余弦波状駆動電圧および正弦波状駆動電圧を印加すると、マグネットロータ74がヨーク73との間に磁気回路を形成して正転あるいは逆転する周知の構造のものである。ここでは、マグネットロータ74の正転で、指針2が図2において時計回り方向へ回動し、マグネットロータ74の逆転で、指針2が反時計回り方向に回動するものとする。
【0043】
減速歯車列8は、マグネットロータ74と一体に回転する入力歯車81と、指針軸4と一体に回転する出力歯車82と、これら出力歯車82と入力歯車81との間で所定の減速比が得られる中間歯車83,84と、を備えている。
【0044】
出力歯車82とケース6との間には、指針2が下限目盛である0Km/hを指す下限位置としての零位置において、この零位置よりも帰零方向、すなわち、0Km/hよりも大きな値を指す位置から零位置に戻る方向(図1において矢印R方向であって、図2において反時計回り方向)に回動するのを規制するストッパ11が設けられている。
【0045】
このストッパ11は、図1に示す出力歯車82に取り付けられたストッパ片111と、ストッパ片111に取り付けられた被吸引部材9と、後述する側壁61bと、図4に示す電磁石10のコア101の端面112,112と、を備えている。
【0046】
ストッパ片111は、出力歯車82の一側に一体に形成されたもので、略L字形状を成し、軸心である指針軸4を通る放射線上に配置されている。また、ストッパ片111において、帰零方向(矢印R方向)側の端面に、板状の被吸引部材9が固定されている。この被吸引部材9は、磁石により吸引可能な磁性体により形成され、特に、本実施例1では、図4に示す電磁石10のコア101と同じ素材(同じ誘磁率)である軟磁性体によりコア101と同じ断面積に形成されている。
【0047】
電磁石10は、ケース6に一体に形成された電磁石用ハウジング61内に収容されている。この電磁石用ハウジング61は、図示のように平面視で略V字状を成す側壁61a,61bを備えている。
【0048】
ストッパ片111に対向する側の側壁61bは、ストッパ11の一部として、指針2が帰零したときに、ストッパ片111の被吸引部材9と当接し、その帰零方向の移動を規制する位置に配置され、かつ、被吸引部材9と面で当たるように、側壁61bの表面の延長線が指針軸4を通る角度で形成されている。
【0049】
また、電磁石10は、前述した略コの字形状のコア101と、このコア101の外周に巻き付けられたコイル102と、を備えている。コア101は、コイル102に通電したときのみ磁石となり、非通電状態では磁石とならない性質の軟磁性体により形成されている。また、コア101の両端面112,112は、ストッパ11の一部として、それぞれ側壁61bの表面と同一面に配置されて露出され、指針2が零位置に帰零しときに、被吸引部材9に当接し、この被吸引部材9が、その位置よりも帰零方向(矢印R方向)に移動するのを規制するよう配置されている。
【0050】
さらに、本実施例1では、電磁石10の隣に電磁石用ハウジング61の側壁61bに帰零スイッチ12が設けられている。この帰零スイッチ12は、指針2が零位置に帰零したときに機械的に開成される常閉のスイッチであり、図4に示すように、ストッパ片111のうちで被吸引部材9が設けられていない部分と帰零方向(矢印R方向)で重なる位置に配置されている。また、帰零スイッチ12は、長方形板状の可動電極板12aを備えている。この可動電極板12aは、指針2が帰零位置以外の位置に配置されているときには、図5(a)に示すように直線状となり、図示を省略した固定接点と当接して、帰零スイッチ12が閉状態となる。また、この可動電極板12aは、指針2が帰零位置に帰零した際には、同図(b)に示すようにストッパ片111に押されて弾性変形して図外の固定接点から離れて帰零スイッチ12が開状態になるよう構成されている。
【0051】
帰零スイッチ12は、電磁石10のコイル102への通電・非通電を切り換える切換作動手段としてのスイッチ回路13に含まれている。このスイッチ回路13は、回路基板5に設けられたもので、図6に示すように、トランジスタ14を備え、帰零スイッチ12が開成されてトランジスタ14のベース14bにマイナス電位が与えられたときに、電磁石10のコイル102へ通電する構成となっている。
【0052】
また、スイッチ回路13において、コイル102の電源となる部分には、リレースイッチ15が設けられている。このリレースイッチ15は、コイル15aに通電されたときにスイッチ部15bが閉成される常開のスイッチであって、イグニッションスイッチ18がONとなっている間は、制御手段としてのコントロールユニット16からコイル15aへの通電が成され、後述するがイグニッションスイッチ18のOFFに連動してコイル15aへの通電が停止されるようになっている。
【0053】
さらに、コントロールユニット16は、トランジスタ14のベース14bへプラス電位を出力する出力回路17が接続されていて、帰零スイッチ12が開いた状態でも、出力回路17にプラス電位が出力された場合には、コイル102への通電が停止される構成となっている。
【0054】
なお、コントロールユニット16には、図外の車速センサの検出値に基づいて、その車速を指針2により表示すべくステップモータ7の駆動を制御する。このステップモータ7の制御は、イグニッションスイッチ18が投入されると開始され、一方、イグニッションスイッチ18のOFFでこの制御を終了する。この制御は、従来から周知のものであり、本願発明の要旨とするものではないので詳細な説明は省略する。
【0055】
次に、実施例の作用を説明する。
【0056】
イグニッションスイッチ18がONとされると、コントロールユニット16は、コイル15aへ通電してリレースイッチ15を閉成し、かつ、メータ装置Mにおいて車速を表示すべくステップモータ7を駆動させる制御を開始する。
【0057】
このステップモータ7の制御において、指針2が零位置に帰零したときには、この実施例1のメータ装置のムーブメントAでは、以下のような作動が行われる。
【0058】
すなわち、指針軸4と一体回転する出力歯車82に設けられたストッパ片111の被吸引部材9が、コア101の端面112,112に当接し、一体回動する出力歯車82、指針軸4、指針2の帰零方向の回動が規制され、同時に、ストッパ片111が、図5(b)に示すように帰零スイッチ12の可動電極板12aを押し、帰零スイッチ12が開成される。この帰零スイッチ12の開成により、スイッチ回路13では、電磁石10のコイル102への通電が成され、ストッパ片111の被吸引部材9がコア101の端面112,112に吸着される。
【0059】
したがって、指針2は、帰零時には、電磁石10の磁力に基づきストッパ11における衝突による反力などではねることなく、零位置に確実に保持される。
【0060】
次に、コントロールユニット16がステップモータ7の駆動制御に基づいて、指針2を零位置から帰零方向とは逆方向へ回動させる際には、コントロールユニット16は、出力回路17を介してトランジスタ14のベース14bにプラス電位を出力する。これにより、電磁石10のコイル102への通電が停止され、電磁石10の磁力が無くなる。
【0061】
したがって、電磁石10の磁力の影響を受けることなく、通常のステップモータ7の駆動力で指針2を移動させることができる。
【0062】
一方、指針2が帰零し、上述のように、電磁石10が被吸引部材9を磁着して指針2を零位置に保持している状態で、イグニッションスイッチ18をOFFとした場合には、コントロールユニット16は、タイマをカウントし、タイマ値が所定の値に達したら、リレースイッチ15への通電をカットする。
【0063】
以上説明したように、本実施例1のメータ装置のムーブメントAでは、指針2が零位置に達した時には、帰零方向の回動を規制されるのに加え、同時に、電磁石10の磁力により零位置に保持される。このため、ストッパ11における衝突反力で指針2が機械的に跳ね返るのを防止することができ、見栄えを向上できるとともに、跳ね返ったときの位置を下限位置として誤判断するおそれも無くなる。さらに、電磁石10の磁力に基づいて指針2が零位置に保持され、従来のように、零位置を特定するために指針2が振れる動作を繰り返すことも不要となり、見栄えを大幅に改善することができる。
【0064】
また、指針2が帰零すると、機械的に帰零スイッチ12が開成され、かつ、これに連動してコイル102へ通電されるため、コントロールユニット16では、帰零スイッチ12の開閉状態あるいはコイル102へ通電される電圧のいずれかを検出することにより、指針2が零位置に配置されていることを確実・容易に判断することができる。
【0065】
さらに、本実施例1では、被吸引部材9、電磁石10、帰零スイッチ12をムーブメントAのケース6内に設けているため、組付作業性に優れ、汎用性に優れる。
【0066】
しかも、指針2を零位置に磁力で保持するにあたり永久磁石を用いずに電磁石10を用い、電磁石10は指針2が零位置に帰零した時点で磁力を発生させるようにしたため、指針2が零位置近傍に配置されているときの指針2に対する磁力の影響が無く、制御性に優れている。加えて、目盛盤1を覆う図外のカバー表面などに付着した砂埃などの金属成分などが、表から見えない磁石に吸着し、さらに、このように付着した埃が増加し続けることはない。
【0067】
さらに、本実施例1では、上述のように指針2の帰零時に電磁石10を励磁させるにあたり、指針2が帰零を、帰零スイッチ12の機械的な閉から開の切り換に連動するようにしたため、センサなどにより零位置を検出して電磁石10を作動させる構造と比較して、安価に製造でき実装が容易である。さらに、零位置を誘起電力で判定するのに比べ、温度やノイズの影響を受けることなく確実に検出することができる。
【0068】
また、コントロールユニット16は、指針2を帰零した後に、再び、指針2による表示を行うべくステップモータ7を駆動させる際には、スイッチ回路13による電磁石10への通電を停止させるようにしたため、ステップモータ7を駆動させる際に電磁石10の磁力の影響が無く、制御性に優れるとともに、電磁石10へ通電する時間を必要最小限として省エネルギ化を図ることができる。
【0069】
加えて、本実施例1では、指針2が帰零した際のストッパ11の一部として、電磁石10のコア101の両端面112,112を用い、これら両端面112,112に被吸引部材9を吸着させるようにしたため、ストッパを電磁石10と別途設ける場合に比べて、ストッパによる回動規制位置と、電磁石10による吸着位置と、を一致させる設定が不要であり、組付作業性に優れ、かつ、ムーブメントAにおける構成要素の数を少なくして、スペース効率を高めることができる。
【0070】
しかも、被吸引部材9がコア101に当接した際に環状となるように形成したため、被吸引部材9とコア101が環状を形成しない構造と比較して、電磁石10を励磁したときにコア101と被吸引部材9に生じる磁束密度の安定を図って、被吸引部材9に作用する磁力を高めることができる。これにより、電磁石10において、少ない電流で強い磁力を発生させることができ、ムーブメントAのケース6という限られたスペースに占める電磁石10の小型化を図り、スペース効率を高めることができる。
【0071】
加えて、被吸引部材9は、コア101と同じ素材により同じ断面積に形成したため、被吸引部材9をコア101よりも小さな断面積に形成した場合と比較して、磁束を安定させて、強い磁力が得られるようにでき、かつ、被吸引部材9をコア101よりも大きな断面積に形成した場合と比較して、被吸引部材9の重量を小さく抑え、これにより、指針軸4と一体に回動する部材全体の重量を抑え、ステップモータ7の駆動力を抑え、かつ、出力歯車82の重量バランスがアンバランスに成るのを抑えることができる。
【0072】
また、コントロールユニット16は、イグニッションスイッチ18をOFFとしたときには、リレースイッチ15を開成し、指針2が帰零していても、電磁石10のコイル102への通電が停止され、かつ、スイッチ回路13での電力消費もなくなるようにしたため、無駄な電力消費を無くすことができる。さらに、このように電磁石10の励磁を解除するにあたり、タイマをカウントして、イグニッションスイッチ18のOFFから所定時間が経過した後に励磁解除するようにしたため、励磁解除時に万一指針2に振れが生じたとしても、乗員の降車を待って乗員の目に触れにくくすることができる。したがって、前記タイマのカウント時間は、イグニッションスイッチ18をOFFとしてから乗員が降車するまでに要する平均的な時間に設定するのが好ましい。
【0073】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0074】
すなわち、実施例1では、電磁石10への通電を、指針2の帰零に機械的に連動して開閉が切り換えられる帰零スイッチ12により行う例を示したが、これに限らず、指針2の帰零をスイッチの開閉以外の電気的な検出手段で検出するようにしてもよい。
【0075】
また、実施例1では、ストッパ11において、被吸引部材9が当たる相手として、電磁石10のコア101の端面112,112と、側壁61bと、を用いた例を示したが、このストッパは、電磁石10とは別個に形成することもできる。例えば、ストッパとしては、実施例1で示したストッパ片111と電磁石用ハウジング61の側壁61bとで構成し、被吸引部材9は、出力歯車82の端面に設け、電磁石10は、これと対向するケース面に設置する、というように、両者を離して設置することもできる。
【0076】
あるいは、コア101の端面112,112を、側壁61bから突出させて、これら端面112,112のみがストッパ11として機能するようにしてもよい。
【0077】
また、実施例1では、被吸引部材9とコア101とが当接するようにしたが、両者が当接しない構造としてもよい。例えば、電磁石10を、電磁石用ハウジング61内に収容し、電磁石10が、側壁61bを隔てて被吸引部材9を吸引するようにしてもよい。このように両者が当接しない構成であっても、電磁石10の磁力で被吸引部材9を吸引して、指針2を零位置に保持することができる。
【0078】
また、被吸引部材9とコア101とが当接する構成であっても、実施例1で示したように、当接時に両者が環状にならないようにしてもよい。この場合、例えば、電磁石10の軸方向を帰零方向(矢印R方向)に向けて、コア101の一側のみが被吸引部材9と当接するようにしてもよい。
【0079】
また、実施例1では、帰零スイッチ12が帰零時に開くものを示したが、帰零時にストッパ片111に押されて閉じるようにしたものを用いてもよい。
【0080】
また、実施例では、減速機構として、減速歯車列8を示したが、この減速歯車列8は、実施例で示した歯車の組み合わせに限定されるものではなく、しかも、減速機構としては減速歯車列8に限定されず、例えば、プーリとベルトなどの他の手段を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の最良の実施の形態の実施例1のメータ装置のムーブメントAを示す分解斜視図であって、図3の矢印Y1方向から見た状態を示している。
【図2】本発明の実施の形態の実施例1のメータ装置のムーブメントAを適用したメータ装置を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態の実施例1のメータ装置のムーブメントAを適用したメータ装置の要部を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の実施例1のメータ装置のムーブメントAの要部を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態の実施例1のメータ装置のムーブメントAの要部を示す斜視図であって、(a)は帰零スイッチの閉状態を、(b)は帰零スイッチの開状態を示している。
【図6】本発明の実施の形態の実施例1のメータ装置のムーブメントAのスイッチ回路およびコントロールユニットを示す回路図である。
【符号の説明】
【0082】
1 目盛盤
1b 目盛
2 指針
4 指針軸
6 ケース
7 ステップモータ
8 減速歯車列(減速機構)
9 被吸引部材
10 電磁石
11 ストッパ
12 帰零スイッチ
13 スイッチ回路(切換作動手段)
16 コントロールユニット(制御手段)
101 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目盛盤の裏面側に設けられるケースを備え、
このケースに、回動可能に支持されて前記目盛盤の表面側に位置する指針に先端が接続される指針軸と、この指針軸に減速機構を介して駆動力を与えるステップモータと、前記指針が、目盛盤に設けられた目盛の下限を指す下限位置に戻った状態で、それ以上の戻り方向への回動を規制するストッパと、が設けられたメータ装置のムーブメントであって、
前記ケース内に、前記指針軸と一体に回動する部材に設けられ、磁石により吸引される磁性体で形成された被吸引部材と、前記指針が下限位置に配置された状態で、前記被吸引部材を磁着可能に配置された電磁石と、が設けられていることを特徴とするメータ装置のムーブメント。
【請求項2】
前記ケース内に、前記指針が下限位置に戻ったときに開閉が切り換えられるスイッチが設けられ、
前記電磁石は、前記指針が下限位置に戻ったときの前記スイッチの切り換えに応じた切換作動手段からの通電により励磁されることを特徴とする請求項1に記載のメータ装置のムーブメント。
【請求項3】
前記ステップモータの駆動を制御する制御手段は、前記指針を下限位置から移動させる際に、前記切換作動手段による通電を停止させて前記電磁石の励磁解除を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のメータ装置のムーブメント。
【請求項4】
前記電磁石のコアは、前記指針が下限位置に戻ったときに、前記被吸引部材と当接するよう配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のメータ装置のムーブメント。
【請求項5】
前記コアが、前記ストッパとして、前記指針が下限位置に戻ったときに前記戻り方向への移動を規制するよう配置されていることを特徴とする請求項4に記載のメータ装置のムーブメント。
【請求項6】
前記被吸引部材とコアとは、両者の磁着状態で環状となるよう形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のメータ装置のムーブメント。
【請求項7】
前記被吸引部材は、前記コアと同一の素材で、かつ前記コアと同一の断面積に形成されていることを特徴とする請求項6記載のメータ装置のムーブメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−37230(P2007−37230A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214030(P2005−214030)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】