説明

モジュール式ポイントオブケアデバイスおよびその使用

ポイントオブケア法は、疾患および治療のモニタリング(例えば、糖尿病治療における血糖系、ワルファリンを用いる抗凝血療法におけるプロトロンビン時間の測定)において極めて有用であることが分かっている。多数のマーカーを測定することにより、複雑な疾患(癌など)および癌の多剤療法などの治療をより良好な形でモニタリングおよび制御し得ると考えられる。本発明は、ポイントオブケアにおいて用いられるデバイスおよびシステムを提供する。本発明の方法およびデバイスは、体液中における解析対象の自動検出を目的とする。デバイスの構成要素はモジュール式であり、種々の医療適用に開示される方法での使用の柔軟性および頑健性を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年10月2日に出願された米国仮特許出願第60/997,460号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/997,460号は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
膨大な数の疾患バイオマーカーの発見および微小医療システムの確立により、ポイントオブケア状況における疾患の予測、診断、および治療モニタリングの新たな手段が開発されている。ポイントオブケアシステムは、医療従事者、その他の医療専門家、および患者に検査結果を迅速に伝達することが可能である。疾患または疾患の進行に対する早期の診断により、医療従事者が時宜を得た形で治療を開始するかまたは改変することが可能となる。
【0003】
多重バイオマーカー測定により、患者の状態についてのさらなる知見がもたらされ得る。例えば、薬剤の効果をモニタリングする場合、3種以上のバイオマーカーを並行して測定することができる。マイクロ滴定プレートおよび他の同様の装置を用いて、多重分離ベースのアッセイを実施することが典型的となっている。マイクロ滴定プレート(例えば、384ウェルのマイクロ滴定プレート)により、多数のアッセイを並行して実施することができる。
【0004】
ポイントオブケア(POC)デバイスにおいて、並行して実施し得るアッセイ数は、デバイスのサイズおよび解析される試料の容量により制限されることが多い。多くのPOCデバイスにおいて、実施されるアッセイ数は約2〜10である。少量の試料に対して多重アッセイを実施することが可能なPOCデバイスが望ましい。
【0005】
多くの多重POCアッセイデバイスの欠点は、デバイス構成要素の高額な製造費用である。デバイスがディスポーザブルである場合、構成要素の高額な費用により、POCデバイスの製造は非実用的となり得る。さらに、必要な全ての試薬をデバイス本体に搭載する多重POCデバイスの場合、これらの試薬のいずれか1種が不安定性を示すと、他の全ての試薬がなお使用可能であっても、製造されたデバイスロットの全体を廃棄しなくてはならない場合がある。
【0006】
顧客は解析対象の特定のセットにPOCデバイスをカスタマイズすることに関心を有するが、多重POCアッセイシステムの製造者は、デバイスのアッセイと試薬とをミックスアンドマッチさせる必要にしばしば直面する。各顧客に適する多重POCアッセイは、極めて高価であり、較正が困難であり、品質管理の維持が困難である場合がある。
【0007】
POC法は、疾患および治療のモニタリング(例えば、糖尿病治療における血糖系、ワルファリンを用いる抗凝血療法におけるプロトロンビン時間の測定)において極めて有用であることが分かっている。多数のマーカーを測定することにより、複雑な疾患(癌など)および癌の多剤療法などの治療をより良好な形でモニタリングおよび制御し得ると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうして、POCデバイスの代替的な設計の必要は、依然として満たされていない。所望の設計は、モジュール式捕捉表面およびアッセイインキュベーションエレメントを提供する。さらに、モジュール式捕捉表面およびアッセイインキュベーションエレメントは、ジャストインタイム(JIT)製造法に適するPOCディスポーザブル品に組み込む必要がある。ユーザーおよび製造者にとって実用的な費用でカスタマイズ可能なPOCデバイスを供給することが望ましい。本発明はこれらの必要に対処するものであり、また、関連の利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある態様では、体液試料中における解析対象の自動検出カートリッジであって、解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルをもたらす化学反応を実行するように構成されるアドレス可能なアッセイユニットのアレイと、アッセイユニットのアレイの個々のアドレス可能なアッセイユニットに対応するように個々のアドレス可能な試薬ユニットがアドレスされ、カートリッジ上において組み立てられる前に対応する個々のアッセイユニットを基準として較正されるように個々の試薬ユニットが構成されるアドレス可能な試薬ユニットのアレイとを含むカートリッジが開示される。デバイスは、体液試料を受け入れるように構成される、試料収集ユニットをさらに含み得る。
【0010】
別の態様では、体液試料中における解析対象の自動検出カートリッジであって、体液試料を受け入れるように構成される試料収集ユニットと、試料収集ユニットから試料の一部を受け入れ、試料中における解析対象の存在を示す検出可能なシグナルをもたらす化学反応を実行するように構成されるアッセイユニットのアレイと、化学反応を実行するための試薬を収容する試薬ユニットのアレイとを含み、化学反応を実行するための試薬がアッセイユニット内の体液試料と接触するように、アッセイユニットのアレイの個々のアッセイユニットおよび試薬ユニットのアレイの個々の試薬ユニットが流体連絡へと移動可能であるように構成されるカートリッジが開示される。
【0011】
個々の試薬ユニットは、移動可能なアッセイユニットを受け入れるように構成することができる。いくつかの実施形態において、個々のアッセイユニットは、アッセイチップを含む。いくつかの実施形態において、個々のアッセイユニットは、イムノアッセイを実行するように構成される。
【0012】
体液試料は、血液試料であり得る。場合によって、試料収集ユニットは、容量約50、20、10、5、または3マイクロリットル以下の体液試料を受け入れるように構成される。ある場合において、試料収集ユニットは、1滴の血液と等量の体液試料を受け入れるように構成される。
【0013】
本明細書で説明されるデバイスは、化学反応を実行して解析対象を検出するために体液試料の一部を取り出すように構成される前処理ユニットを含むことがあり、前処理ユニットは、試料収集ユニットにおいて受け入れられた全血試料から血漿を取り出すように構成することができる。
【0014】
ある態様において、本明細書では、体液試料中における解析対象の自動検出システムであって、本明細書で説明されるデバイスと、解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルを検出するための検出アセンブリーとを含むシステムが説明される。システムは、個々のアッセイユニットを第1の位置から第2の位置へと移動させるように構成されるプログラム可能な機械デバイスをさらに含み得る。場合によって、システムは、流体移送デバイスを含む。流体移送デバイスは、ピペットでありえ、自動式であり得る。システムはまた、検出される解析対象に基づくプロトコールを送信するための通信アセンブリーも含み得る。場合によって、本明細書におけるシステムは、個々のアッセイユニットを受け入れるように構成される加熱ブロックを含み、また、例えば、試料からの赤血球の分離に用い得る磁性ブロックも含み得る。
【0015】
別の態様では、体液試料中における複数種の解析対象の自動検出システムであって、体液試料を収容するように構成される試料収集ユニット、検出される前記複数種の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルをもたらす化学反応を実行するように個々のアッセイユニットが構成されるアッセイユニットのアレイ、および個々の試薬ユニットが試薬を収容する試薬ユニットのアレイを含む流体デバイスと、個々のアッセイユニットに係合するように個々のヘッドが構成される複数のヘッドを含み、試料収集ユニットからの体液試料および個々の試薬ユニットからの試薬の、個々のアッセイユニットへの流体移送を方向づけるように構成されるプログラム可能なプロセッサーを含む流体移送デバイスとを含むシステムが開示される。いくつかの実施形態では、前記複数種の解析対象が前記システムで検出可能となるように、流体移送を方向づけるプロセッサーの構成により、アッセイユニットのアレイ内における体液試料をある程度希釈して、検出される複数種の解析対象を示すシグナルを検出可能な範囲内に収める。
【0016】
場合によって、体液試料は、少なくとも2、5、10、15、50、または100桁分異なる濃度で存在する少なくとも2種の解析対象を含む。体液試料に対するある程度の希釈により、少なくとも2種の解析対象を示すシグナルを検出可能な範囲内に収めることができる。
【0017】
本明細書におけるシステムは、検出可能な範囲のシグナル強度を検出するように構成される検出器をさらに含み得る。例示的な検出器は光電子増倍管であり、検出器の検出可能な範囲は、約20〜約1000万カウントであり得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、流体移送デバイスの個々のヘッドは、個々のアッセイユニットに接着するように構成される。個々のアッセイユニットは、イムノアッセイ反応サイトを提供し得る。場合によって、個々のアッセイユニットは、ピペットチップである。流体移送デバイスは、空気置換式ピペットなどのピペットであり得る。流体移送デバイスはまた、プログラム可能なプロセッサーと連絡しているモーターも含むことがあり、モーターは、前記プログラム可能なプロセッサーからのプロトコールに基づき、前記複数のヘッドを移動させることが可能である。
【0019】
別の態様において、本明細書では、全血試料の血漿部分中における複数種の解析対象の自動検出システムであって、全血試料を自動的に受け入れ処理して血漿部分をもたらすように構成され、目的の解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルがオンボードで血漿部分から発生するデバイスと、解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルを検出するための検出アセンブリーとを含むシステムが説明される。
【0020】
ある態様において、本明細書では、体液試料中における解析対象を検出する方法であって、本明細書で説明されるデバイスに血液試料を供給するステップと、前記試料を少なくとも1つのアッセイユニット内で反応させるステップと、前記体液試料中において収集された前記解析対象から発生する前記検出可能なシグナルを検出するステップとを含む方法が提供される。体液試料は血液でありえ、この方法は血液から血漿を取り出すステップを含み得る。
【0021】
本明細書で提供される態様において、体液試料中における解析対象の自動検出カートリッジのオンデマンドアセンブリー法であって、デバイスがハウジングを含み、前記ハウジングが、解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルをもたらす化学反応を実行するように個々のアッセイユニットが構成されるアドレス可能なアッセイユニットのアレイ、および個々のアッセイユニットに対応するように個々の試薬ユニットがアドレスされるアドレス可能な試薬ユニットのアレイを含む方法は、(i)前記エンドユーザーによりオーダーされた目的の解析対象を検出する化学反応を実行するように個々のアッセイユニットが構成されるアドレス可能なアッセイユニットのアレイを、検出される解析対象に従ってハウジング内に配置するステップと、(ii)個々の試薬ユニットが個々のアッセイユニットに対応する試薬ユニットのアレイを、検出される解析対象に従ってハウジング内に配置するステップと、(iii)(i)および(ii)のアレイをデバイスのハウジング内に固定するステップとを含む。この方法は、検出される解析対象を選択するステップを含み得る。いくつかの実施形態において、この方法は、カートリッジをシーリングするステップを含む。ある実施形態において、この方法は、検出される解析対象を示す読み取り可能なラベルにより、例えば、バーコードまたはRFIDにより、カートリッジをラベルするステップを含む。
【0022】
ある態様では、体液試料中における複数種の解析対象の自動検出法であって、体液試料を収容するように構成される試料収集ユニットと、検出される前記複数種の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルをもたらす化学反応を実行するように個々のアッセイユニットが構成されるアッセイユニットのアレイ、および個々の試薬ユニットが試薬を収容する試薬ユニットのアレイを含む流体デバイスに体液試料を供給するステップと、流体移送デバイスを用いて個々のアッセイユニットに係合するステップと、流体移送デバイスを用いて体液試料を試料収集ユニットから個々のアッセイユニットへと移送するステップと、試薬を個々の試薬ユニットから個々のアッセイユニットへと移送し、これにより、試薬を体液試料と反応させて、検出される複数種の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルをもたらす方法が提供される。
【0023】
ある実施形態において、流体移送デバイスは、個々のアッセイユニットに係合するように個々のヘッドが構成される複数のヘッドを含み、前記流体移送デバイスは、試料収集ユニットからの体液試料および個々の試薬ユニットからの試薬の、個々のアッセイユニットへの流体移送を方向づけるように構成されるプログラム可能なプロセッサーを含む。この方法は、体液試料を個々のアッセイユニットへと移送するステップを方向づけ得る命令をプログラム可能なプロセッサーに下すステップをさらに含み得る。
【0024】
ある実施形態において、体液試料を移送するステップにより、個々のアッセイユニット内における体液試料をある程度希釈して、検出される複数種の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルを検出可能な範囲内に収める。体液試料は、少なくとも2、5、10、15、50、または100桁分異なる濃度で存在する少なくとも2種の個々の解析対象を含み得る。場合によって、体液試料に対する程度の希釈により、少なくとも2種の個々の解析対象を示すシグナルが、検出可能な範囲内に収まる。ある実施形態において、検出可能な範囲は、光電子倍増管を用いると、毎秒約1000〜約100万カウントである。
【0025】
ある実施形態において、個々の試薬ユニット内における試薬はイムノアッセイ用の酵素基質であり、この方法は、検出される複数種の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルをもたらす反応が完了した後で、個々の試薬ユニットから試薬を移送するステップを反復し、これにより、個々の解析対象を示す第2のシグナルをもたらす第2の反応を創出するステップをさらに含み得る。個々の解析対象を示すシグナルの強度および第2のシグナルの第2の強度を平均して、個々の解析対象を示すシグナルの最終強度を計算することができる。
【0026】
ある態様において、本明細書では、液体試料の容量を測定する方法であって、液体試料中における公知の量の対照解析対象を試薬と反応させて、対照解析対象を示す検出可能なシグナルをもたらすステップと、前記検出可能なシグナルを、予測される検出可能なシグナルと比較するステップであって、予測されるシグナルが液体試料の予測容量を示し、前記比較が、測定される前記液体試料の前記容量の測定値を与えるステップとを含む方法が説明される。場合によって、対照解析対象は通常、前記液体試料中において、検出可能な量では存在しない。この方法は、試料の容量の測定値が、液体試料の予測容量の約50%以内である場合に、前記液体試料の容量を検証するステップを含み得る。ある実施形態において、この方法は、標的解析対象を含有する体液試料を、標的解析対象を示す検出可能なシグナルをもたらす試薬と反応させるステップと、標的解析対象を示す前記検出可能なシグナルの強度および前記液体試料の前記容量の測定値を用いて、体液試料中における標的解析対象の量を測定するステップとをさらに含む。液体試料と体液試料とは同じ試料でありえ、対照解析対象は体液試料中における標的解析対象と反応しない。場合によって、液体試料と体液試料とは異なる液体試料である。対照解析対象は、例えば、フルオレセイン標識アルブミン、フルオレセイン標識IgG、抗フルオレセイン、抗ジゴキシゲニン、ジゴキシゲニン標識アルブミン、ジゴキシゲニン標識IgG、ビオチン化タンパク質、非ヒトIgGであり得る。
【0027】
別の態様において、本明細書では、血液試料から血漿を取り出す方法であって、試料収集ユニット内における磁化可能粒子の存在下で血液試料を混合するステップであって、磁化可能粒子が、血液試料の非血漿部分に結合する抗体捕捉表面を含むステップと、血漿収集領域の上方から混合された血液試料へと磁場を適用し、血漿収集領域の上部で血液試料の非血漿部分を懸濁させるステップとを含む方法が提供される。場合によって、試料収集ユニットは毛細管である。血液試料は約20マイクロリットル未満でありえ、取り出される血漿は約10マイクロリットル未満であり得る。場合によって、血液試料は希釈されない。場合によって、混合するステップは、固体表面に結合しない抗体の存在下で行われる。混合するステップは、シリンジ動作により混合するステップを含み得る。
【0028】
さらに別の態様において、本明細書では、自動イムノアッセイを用いて全血試料の血漿部分中に存在する解析対象を検出する方法であって、全血試料をオンボードで自動的に受け入れ処理して血漿部分をもたらすように構成され、目的の解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルがオンボードで血漿部分から発生するデバイスに全血試料を供給するステップと、前記体液試料中における解析対象の存在または不在を示す前記シグナルを検出するステップと、(b)の結果をエンドユーザーに送信するステップとを含む方法が提供される。イムノアッセイはELISAであり得る。場合によって、結果は、無線で送信される。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明される方法は、本明細書で説明されるシステム内で実施される。
【0030】
参照による組込み
本明細書で言及される全ての刊行物および特許出願は、個々の各刊行物または特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されたと仮定した場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
本発明の多数の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に示されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、具体的な実施形態を示す以下の詳細な説明に言及することによって得られ、そこでは本発明の多数の原理が利用され、添付の図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】アッセイユニット、試薬ユニット、および装置の他のモジュール式構成要素を含む、本発明の例示的な装置を示す図である。
【図2】アッセイユニット、試薬ユニット、および試料チップを収容するように成形された装置のハウジングにある空洞を含む、図1の例示的な装置の2つの側断面図を示す図である。
【図3A】小チップまたは管形状を含む例示的なアッセイユニットを示す図である。
【図3B】本明細書に記載される試料チップの例を示す図である。
【図4】カップを含む試薬ユニットの2つの例を示す図である。
【図5】装置および流体移動装置を含むシステムの例を示す図である。
【図6】温度調節のための加熱ブロックおよび検出器を含む、本発明の例示的なシステムを示す図である。
【図7】患者がデバイスに血液を輸送し、次にデバイスがリーダーに挿入される例示的なシステムを示す図である。
【図8】患者の病状を評価するためのシステムを構築するプロセスフローを示す図である。
【図9】全血試料が試料チップに吸引され、磁性試薬が混合され、試料と共に懸濁され、その後、磁場が全血試料および磁性試薬混合物に適用される血漿分離方法の例を示す図である。分離された血液血漿試料は、次にデバイスのウェルに分配することができる。
【図10】公知の量の対照解析対象を含む、本明細書に記載される対照アッセイの例示的な方法を示す図である。
【図11】薄いフィルム、例えば、液体が排出され、別の液体が吸引される場合のチップ内の汚染を示す図である。
【図12】VEGFR2についてのアッセイを行うためのアッセイユニットおよび試薬ユニットを関連付ける較正曲線を示す図である。
【図13】照度計を用いて測定される、システム内のPlGFについてのアッセイを行うためのアッセイユニットおよび試薬ユニットに対する結果を関係付ける較正曲線を示す図である。
【図14】アッセイシグナル(光子カウント)に対してプロットされたCRP濃度、および較正関数を生じさせるための5多項式関数にフィッティングさせたデータを示す図である。
【図15】本明細書に記載される、モデルとパラメータSmax、C0.5およびDの間でフィッティングが達成されることを示す図である。
【図16】アッセイチップの最終濃度を達成するために使用される希釈にかかるデータを表示する図である。
【図17】基準されたアッセイ応答(B/Bmax)が、相対希釈:1:1(実線)、5:1(破線)、および25:1(点線)についてのlog基準化された濃度(C/C0.5)に対してプロットされることを示す図である。
【図18】異なる基準化された濃度で図17と類似した例を示す図である。
【図19】異なる基準化された濃度で図17と類似した例を示す図である。
【図20】分光照度計で0.5秒間読み取った、工程:検出抗体の除去、アッセイの洗浄、および基質の添加後の対照解析対象についてのアッセイ応答を示す図である。
【図21】本明細書のシステムにおける約10秒にわたって生成した光子を測定することによって評価させるアッセイの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書で説明される本発明の実施形態および態様は、体液試料中における解析対象の自動検出用のデバイス、システム、および方法に関わる。本発明は、特定の生物学的過程、生理学的状態、障害もしくは障害の病期、または生物学的作用物質もしくは治療剤の効果と関連する解析対象を検出および/または定量できる。本明細書で説明される本発明の実施形態および例は、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0034】
デバイス
本発明の態様において、体液試料中における解析対象の自動検出用デバイスは、解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルをもたらす化学反応を実行するように構成されるアドレス可能なアッセイユニットのアレイと、デバイス上において組み立てられる前に対応する(1つまたは複数の)アッセイユニットを基準として個々の試薬ユニットが較正され得るように、前記デバイス内の1つまたは複数のアドレス可能なアッセイユニットに対応するようにその各々がアドレスされるアドレス可能な試薬ユニットのアレイとを含む。
【0035】
本発明の別の態様において、体液試料中における解析対象の自動検出用デバイスは、解析対象の存在を示す検出可能なシグナルをもたらす化学反応を実行するように構成されるアッセイユニットのアレイと、化学反応を実行するための試薬を収容する試薬ユニットのアレイとを含み、化学反応を実行するための試薬がアッセイユニット内の体液試料と自動的に接触するように、アッセイユニットの少なくとも1つおよび試薬ユニットの少なくとも1つがデバイス内において互いに対して移動可能である。
【0036】
本発明のデバイスの実施形態において、アッセイユニットまたは試薬ユニットのアレイは、構成されるアッセイユニットにより実行される化学反応に従ってアドレスされ得る。別の実施形態では、化学反応を実行するための試薬がアッセイユニット内の体液試料と自動的に接触するように、アッセイユニットの少なくとも1つおよび試薬ユニットの少なくとも1つは、デバイス内において互いに対して移動可能である。
【0037】
一実施形態において、本発明のデバイスは本体内蔵型であり、複数のアッセイを並行して実施するのに必要とされる全ての試薬、液相および固相の試薬を含む。所望の場合、デバイスは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、200、500、1000以上のアッセイを実施するように構成される。所望の場合、並行して実施される1つまたは複数の対照アッセイもまた、デバイス内に搭載することができる。
【0038】
アッセイは定量的イムノアッセイでありえ、短時間で実行され得る。核酸配列の測定およびコレステロールなどの代謝物の測定を含むがこれらに限定されない他の種類のアッセイも、本発明のデバイスにより実施することができる。いくつかの実施形態において、アッセイは、1時間以内、好ましくは30、15、10、または5分間未満で完了する。他の実施形態において、アッセイは、5分間未満で実施される。アッセイの検出時間は、本発明のデバイスにより実施されるアッセイの種類に従い調整することができる。例えば、高感度が必要な場合、アッセイは、1時間を超えるかまたは1日を超えるまでインキュベートされ得る。いくつかの例において、長時間を要するアッセイは、臨床POC状況におけるよりも、家庭での使用など、他のPOC適用においてより実用的であり得る。
【0039】
目的の解析対象を含有することが疑われる任意の体液を、本発明のシステムまたはデバイスと共に用いることができる。一般に用いられる体液は、血液、血清、唾液、尿、胃液および消化液、涙液、糞便、精液、膣液、腫瘍性組織に由来する間質液、および脳脊髄液を含むがこれらに限定されない。
【0040】
体液は患者から採取し、ランシング、注射、またはピペッティングを含むがこれらに限定されない種々の形でデバイスに供給される。本明細書で用いられる対象および患者という用語は、本明細書で互換的に用いられ、脊椎動物、好ましくは、哺乳類、より好ましくはヒトを指す。哺乳類は、マウス、サル、ヒト、家畜動物、競技用動物、および愛玩動物を含むがこれらに限定されない。ある実施形態において、ランセットにより皮膚を穿刺し、例えば、重力、毛細管作用、吸引、または真空力を用いて試料を採取する。ランセットは、デバイスの一部でもありえ、システムの一部でもありえ、単独の構成要素でもあり得る。必要な場合、ランセットは、種々の機械的、電気的、電気機械的、もしくは他の任意の公知の作動機構、またはこのような方法の任意の組合せにより作動させることができる。能動的な機構を必要としない別の実施形態において、例えば、唾液試料による場合のように、患者がデバイスに体液を供給するだけの場合もある。収集された体液は、デバイス内の試料収集ユニットに入れることができる。さらに別の実施形態において、デバイスは、皮膚を穿刺する少なくとも1本の微小針を含む。
【0041】
デバイスにより用いられる体液の容量は、一般に、約500マイクロリットル未満であり、約1〜100マイクロリットルであることが典型的である。所望の場合、デバイスを用いて解析対象を検出するのに、1〜50マイクロリットル、1〜40マイクロリットル、1〜30マイクロリットル、1〜10マイクロリットル、なおまたは1〜3マイクロリットルの試料を用いることができる。
【0042】
ある実施形態において、本デバイスまたはシステムを用いて解析対象を検出するのに用いられる体液の容量は、1滴の体液である。例えば、穿刺された指に由来する1滴の血液は、本明細書で説明されるデバイス、システム、または方法により解析される体液試料を供給し得る。
【0043】
体液試料は、対象から収集し、本明細書で以下において説明される本発明のデバイスへと送達することができる。
【0044】
ある実施形態において、アッセイユニットおよび試薬ユニットのアレイは、ミックスアンドマッチ構成要素のセットであるように構成される。アッセイユニットは、体液試料に由来する解析対象と反応することが可能な少なくとも1つの捕捉表面を含み得る。アッセイユニットは、その内部に捕捉表面を有する管状チップであり得る。本発明のチップの例は、本明細書で説明される。試薬ユニットは、所与の解析対象を検出するアッセイを実施するのに必要な液体または固体の試薬を保持することが典型的である。個々の各アッセイユニットおよび試薬ユニットは、アッセイ機能に応じて個々に構成され得る。デバイスを組み立てる場合、ユニットは、統合型カートリッジにおいて用いられるジャストインタイム方式で組み立てることができる。
【0045】
液相および固相両方の構成要素を個々に作製し、次いで、これを性能について調べ、保管することができる。ある実施形態において、デバイスの組立ては、製造地においてオンデマンド方式で実行される。デバイスはモジュール式でありえ、全てのアッセイに対して包括的なハウジング、チップなどのアッセイユニット、および液体試薬を封入する、壊れやすいかまたは測定器作動的な種々の容器などの試薬ユニットなどの構成要素を含み得る。場合によって、組み立てられたデバイスは、次いで、検査して較正(公知の解析対象レベルに対するシステム応答の関係)を確認する。アッセイデバイスは、オンデマンドの予め製造されて較正されたエレメントのライブラリーから組み立てることができる。いくつかの実施形態において、デバイス内の流体経路は単純でありえ、気泡が生じる可能性を未然に除去することが可能であり、ELISAなどの試薬過剰アッセイにおける過剰標識試薬を洗浄する効果的な方法を提供する。
【0046】
本発明のデバイス用のハウジングは、ポリスチレンまたは成形可能であるかまたは機械加工可能な別のプラスチックから作製することができ、アッセイユニットおよび試薬ユニットを配置する規定の場所を有し得る。ある実施形態において、ハウジングは、吸い取り用チップまたはアッセイユニットが過剰液体を除去するための手段を有する。吸い取り用の手段は、酢酸セルロースなどの多孔質膜でもありえ、濾紙などの吸湿性材料片でもあり得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、デバイスの少なくとも1つの構成要素は、ポリマー材料から構築され得る。ポリマー材料の非限定的な例は、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、およびガラスを含む。
【0048】
デバイスまたはデバイスの部分構成要素は、スタンピング、注入成形、型押し、鋳造、ブロー成形、機械加工、溶接、超音波溶接、および熱接着を含むがこれらに限定されない種々の方法により製造することができる。ある実施形態において、デバイスは、注入成形、熱接着、および超音波溶接により製造される。デバイスの部分構成要素は、2つの構成要素間における熱接着、超音波溶接、摩擦接合(圧接)、接着剤、または特定の基板、例えば、ガラスもしくは半剛性および非剛性のポリマー基板の場合は自然の接着により互いに固定することができる。
【0049】
本明細書で説明される例示的なデバイスを、図1に示す。デバイス100はまた、本明細書ではカートリッジ100とも称することがある。デバイス100は、アッセイユニット121と、試薬ユニット103、122、124、125とを収容する場所を有するハウジング130を含む。図1の例示的な実施形態において、アッセイユニット121は、デバイス100のハウジング130の中央列を占める。アッセイユニット121は、場合によって、少なくとも1つの較正ユニット126を含み得る。本明細書のある例において、アッセイユニット121はピペットチップに類似し、これをアッセイチップ121と称し、較正ユニット126を較正チップ126と称するが、アッセイユニット121は、本明細書で説明されるデバイス100により収容される任意の広範な形状およびサイズであり得る。アッセイユニット121および較正ユニット126は、例示的なアッセイユニット121であり、本明細書でより詳細に説明される。図1におけるアッセイユニット121は、捕捉表面を含み、例えば、核酸アッセイおよびイムノアッセイなどの化学反応を実施することが可能である。アッセイユニット121は、命令または試料に対してユーザーが実施しようと望むアッセイに従い、ハウジングへと組み立てることができる。
【0050】
図1に示す通り、デバイス100のハウジングは、試料を収容するように構成される試料収集ユニット110を含み得る。血液試料などの試料は、試料収集ユニット110に入れることができる。試料チップ111(例えば、本明細書でより詳細に説明される流体移送デバイスに連結されるピペットチップ)は、ハウジング130の別の部分を占めることがある。アッセイを実行する場合、試料チップ111は、試料を、前処理試薬ユニットもしくは前処理ユニット103、104、105、106、107、またはアッセイユニット121へと分配することが可能である。例示的な前処理ユニット103、104、105、106、107は、混合ユニット107、希釈剤ユニットまたは希釈ユニット103、104、また、試料が血液試料である場合、血漿除去ユニットまたは血漿収集ユニット105、106を含むがこれらに限定されない。前処理ユニット103、104、105、106、107は、同じ種類のユニットの場合もあり、異なる種類のユニットの場合もある。本開示についての知識を有する当業者には明らかな通り、デバイス100には、化学反応を実行するのに必要な他の前処理ユニット103、104、105、106、107を組み込むことができる。ユニット103、104、105、106、107は、本カートリッジ100上でアッセイを実行するのに何が必要であれこれに応じて柔軟に、多様な量の試薬または希釈剤を収容し得る。
【0051】
アッセイユニット121は、ハウジング130とは別に製造し、次いで、ピックアンドプレイス法によりハウジング130に挿入し得ることが多い。アッセイユニット121は、ハウジング130にぴったりとはまることもあり、ハウジング130に緩くはまることもある。いくつかの実施形態において、ハウジング130は、例えば、カートリッジの出荷または操作時において、それが試薬ユニット103、122、124、125、および/またはアッセイユニット121を定位置にぴったりと保持するように製造される。コンジュゲート試薬122(例えば、イムノアッセイで用いる)、洗浄試薬125(例えば、捕捉表面から前記コンジュゲートを洗浄する)、および基質124(例えば、酵素基質)を収容する試薬ユニット103、122、124、125を図1に示す。本明細書では、デバイス100および図1の例における構成要素の他の実施形態が説明される。試薬ユニット103、122、124、125は、ハウジング130とは別個に製造し、充填し、ハウジング130内に入れる。こうして、カートリッジ100は、モジュール方式で構築することができ、したがって、種々のアッセイに用いられるカートリッジ100の柔軟性が増大する。実行されるアッセイに従って、試薬ユニット103、122、124、125内の試薬を選択することができる。本明細書では、例示的な試薬およびアッセイが説明される。
【0052】
図1に示す例のようなデバイスはまた、化学反応を実行するのに必要とされ得る他の特徴も含み得る。例えば、アッセイユニット121が、本明細書で説明されるアッセイチップ121である場合、デバイスは、例えば、本明細書で説明されるシステムによる流体移送後において、アッセイチップ121または試料チップ111から過剰試料または過剰試薬を除去する、チップタッチオフパッド112を含み得る。ハウジング130はまた、例えば、試料チップ111またはアッセイユニット121の交差汚染を回避するために、使用済みのチップまたはユニットを入れる、デバイス100内におけるユニットまたは領域101、102も含み得る。図1において、デバイス100は、デバイス100のユニット間における試料の移送のための試料チップ111を含む。図1に示されるデバイス100はまた、デバイス100のユニット内で前処理された試料をデバイス100の他のユニットへと移送して、化学反応を実施するための前処理チップ113も含む。例えば、説明される通り、試料チップ111を用いて試料収集ユニット110から血液試料を取り出し、血液試料を前処理ユニット103、104、105、106、107へと移送することができる。前処理ユニット103、104、105、106、107における血液試料から赤血球を除去し、次いで、前処理チップ113を用いて前処理ユニット103、104、105、106、107から血漿を収集し、血漿を別の前処理ユニット(例えば、希釈剤ユニット)103、104、105、106、107、および/または少なくとも1つのアッセイユニット121へと移送することができる。ある実施形態において、試料チップ111は、試料収集ユニット110である。別の実施形態において、試料収集ユニット110はウェルに類似し、ユーザーにより受け入れられる試料を収容するように構成される。
【0053】
図1に示すアッセイユニット121および試薬ユニット103、122、124、125は、カートリッジ100上におけるユニットの場所を示すようにアドレス可能であり得る。例えば、図1に示すカートリッジ100のカラムは、C反応性タンパク質を検出するように構成されるアッセイを実行するアッセイユニット121を収容することが可能であり、カラムは、同じカラム内におけるアッセイ用の対応する試薬ユニット103、122、124、125を収容することが可能であり、ユニットは、互いに対応するようにアドレスされる。例えば、アドレスは、コンピュータシステムに入力し保存することができ、カートリッジ100には、バーコードなどのラベルを与えることができる。カートリッジ100のバーコードを走査して用いる場合、コンピュータシステムは、本明細書で説明されるユニットなどのユニットのアドレスをシステムに送信し、コンピュータに入力されたアドレスに従って、流体を移送し、反応を実行することができる。アドレスは、システムを作動させるために送信されるプロトコールの一部であり得る。アドレスは、任意の構成でありえ、アッセイを実行するプロトコールを変更することが必要な場合は変更することができ、これにより、先行技術のPOCデバイスでは使用できないことが典型的であったアッセイプロトコールまたはアッセイステップの変更をカートリッジのユーザーに提供することができる。いくつかの実施形態において、ハウジング130およびユニットは、図1に示す通り、6×8ユニットのアレイで構成される。ユニットのレイアウトは、例えば、長方形アレイまたは無作為レイアウトなど、任意の形式であり得る。カートリッジ100は、例えば、1〜約500の任意の数のユニットを含み得る。いくつかの実施形態において、カートリッジ100は、5〜100ユニットを有する。図1に示す例の場合、カートリッジ100は、48ユニットを有する。
【0054】
図1の例示的なデバイス200の2つの側面破断図を、図2Aおよび2Bに示す。キャビティは、デバイスのハウジング220内において、デバイス200の上部へと向かうそれらの突起と垂直方向(ハウジングの水平方向)にあるアッセイユニット(例えば、アッセイチップ)201を収容する形状であることが可能である。図2に示す通り、キャビティはまた、試薬ユニット210、212または試料収集ユニットもしくは試料収集チップ202を収容する形状でもあり得る。ハウジング220には、ユニットを正確に捕捉し、これらを安全に保持するフィーチャが存在し得る。このようなフィーチャはまた、ピックアップおよびドロップオフなど、チップを移動させる機構により作動するようにも設計することができる。別の実施形態において、試料収集ユニットは、出荷時において小型の収集チューブを保護し、毛細管内の定位置にプランジャーデバイスを保持するのに用いられる、折り曲げ可能なエレメントを含む。また、図2Aにも、本明細書で説明される試薬ユニット210、212の2つの例示的な実施形態を示す。ハウジング220の底部は、廃液、例えば、ハウジング220の穴を介して底部へと送り返される使用後の洗浄試薬を収集するように構成される。ハウジング220は、廃棄流体を収集する吸収パッドを含み得る。アッセイユニット201および試料ユニット202は、デバイス200のハウジング220のキャビティ内にはまり、内部の支持構造を超えて伸びるように配置することができる。試薬ユニット210、212は、図2に示す通り、ハウジングにぴったりとはまり、内部の支持構造を超えて伸びることはない。ハウジング220ならびにアッセイユニット201および試薬ユニット210、212が保持されて配置され得る領域は、種々のパターンを取り得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、各チップは単一のアッセイを備え、指定されたアッセイを実行するのに必要とされる試薬などの適切な試薬と対をなすかまたはこれに対応することが可能である。チップによっては、対照アッセイユニットを備え、製造工程内またはアッセイの実施時においてそれらの捕捉表面に結合する公知の量の解析対象を有することがある。対照アッセイユニットの場合、ユニットは、比較のための対照アッセイを実行するように構成される。対照アッセイユニットは、例えば、固体状態または液体状態にある捕捉表面および解析対象を含み得る。
【0056】
多くの実施形態において、デバイスは、アッセイにより必要とされる全ての試薬および液体を保持する。例えば、免疫原性ELISAアッセイの場合、デバイス内の試薬は、試料希釈剤、検出用コンジュゲート(例えば、3種の酵素標識抗体)、洗浄液、および酵素基質を含み得る。さらなる試薬は、必要に応じて供給することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、試薬をデバイス内に搭載し、試料の前処理を行うことができる。前処理試薬の例は、白血球溶解試薬、試料中における結合因子から解析対象を解離させる試薬、酵素、および洗浄剤を含むがこれらに限定されない。前処理試薬はまた、デバイス内に収容される希釈剤に添加することもできる。
【0058】
個々の試薬ユニットは、可動式アッセイユニットを受け入れるように構成することができる。いくつかの実施形態において、個々のアッセイユニットは、捕捉表面および反応キュベットを含む、開放端で中空の円筒形エレメントを含む。本明細書において、円筒形のアッセイユニットは、アッセイチップと称することができる。いくつかの実施形態において、個々のアッセイユニットは、イムノアッセイを実行するように構成される。小型チップまたは管状形成を含むアッセイユニット301を、図3Aに示す。場合によって、チップ301は、デバイスのハウジングと係合することが可能な、内部の円筒形捕捉表面311および突起321を与えるように構成される。場合によって、突起321およびチップ301は、本明細書で説明されるシステム、または、例えば、流体移送デバイスなどのチップ301を移動させる機構と係合するように構成される。図3Aに示すアッセイチップ301は、チップの底部における開放部331を含み得る。開放部331は、アッセイユニット301へ、また同ユニットから流体または試薬を移送するのに用いることができる。ある実施形態において、説明されるアッセイユニット301は、試料中における解析対象を検出するように構成される捕捉表面311をアッセイユニット301が含む改善を有するピペットチップであるかまたはこれに類似する。
【0059】
チップ301は、注入成形工程により製造することができる。ある実施形態において、チップ301は、化学発光アッセイにより用いられる透明ポリスチレン製である。図3Aに示す通り、例示的なチップ301は、ハウジングと係合することがあり、例えば、圧力気密シールを形成するように、流体移送デバイスおよび/またはピペッティングデバイスのテーパエレメントと係合することがある。これもまた図3Aに示される例示的なチップ301は、より小型の円筒形部分を含む。多くの実施形態において、アッセイ捕捉表面は、より小型の円筒形部分内に収容される。アッセイ捕捉表面は、チップ301内の任意の領域であるか、またはチップ301の外側であり得る。チップ301の表面は、管状、球状、錐体状を含むがこれらに限定されない多くの形状であり得る。化学発光ベースまたは蛍光ベースのアッセイにおいて、チップ301は、アッセイ光学素子にアッセイ生成物を提示するのに便利な手段として用いることができる。
【0060】
図3Bは、試料チップ302を含む例示的な試料収集ユニット302を示す。図3Bに示す試料チップ302はまた、試料収集ユニット302から分離し、試料収集ユニットから、本明細書で説明されるデバイス上の他のユニットへと試料を移送するのに用いることもできる。図3Bに示す試料チップは、チップ302をデバイスのハウジングおよび流体移送デバイスと連結する、本明細書で説明される突起322を含む。試料チップ302はまた、開口部332も含み、試料チップ内への、また、ここからの流体または試料の移送を可能とする。いくつかの実施形態において、試料チップ302は、アッセイチップ301と同じ形状である。他の実施形態(図3Aおよび3Bに示す実施形態などの)において、試料チップ302は、アッセイチップ301とは異なる形状である。
【0061】
ある実施形態において、チップの一機能は、試料および液体試薬がアッセイユニットの捕捉表面と接触することを可能とすることである。移動は、毛細管作用、吸引、および制御された送出を含むがこれらに限定されない種々の手段によりなされ得る。小サイズのチップにより、化学反応に必要な温度の迅速な制御が可能となる。熱伝導および/または保熱は、チップを温度制御ブロック内に置くだけで実行することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、チップは、約1〜40マイクロリットルの流体を収容し得る。さらなる実施形態において、チップは、約5〜25マイクロリットルの流体を収容し得る。ある実施形態において、チップは、20マイクロリットルの流体を収容する。場合によって、チップは、1マイクロリットル以下の流体を収容し得る。他の場合において、チップは、最大100マイクロリットルを収容し得る。
【0063】
所望の場合、次のアッセイ成分の導入前に、チップの端部を吸収性材料(例えば、ディスポーザブル式カートリッジに搭載された)上で吸い取り、少量の試料および/または試薬による汚染を回避することができる。物理的な力のために、対象チップ内に引き込まれた任意の液体は、垂直方向に保持される場合でも、液体が漏出する危険性をほとんど伴わずに、任意の所望の位置で保持することができる。
【0064】
アッセイユニット(例えば、アッセイチップ)は、使用前に、アッセイにおける場合と同様の流体工学法(例えば、制御式毛細管または機械的吸引)を用いて、アッセイ捕捉試薬でコーティングすることができる。
【0065】
捕捉表面(本明細書では反応サイトとも称する)は、アッセイユニットに結合する抗体によるか、もしくはこれに共有結合する他の捕捉試薬によるか、またはこれへの吸着により形成することができる。次いで、表面を乾燥させ、アッセイで用いるまで乾燥状態に維持することができる。ある実施形態では、各解析対象を測定するための反応サイトが存在する。
【0066】
ある実施形態では、結合したプローブにより体液試料中における目的の解析対象が検出され得る反応サイトと試薬または試料が相互作用し得るように、アッセイユニットを試薬ユニットおよび/または試料収集ユニットとの流体連絡へと移動させることができる。次いで、反応サイトは、目的の解析対象の存在または濃度を示すシグナルを与えることが可能であり、次いで、これを、本明細書で説明される検出デバイスにより検出することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、反応サイトの位置および構成は、アッセイデバイスにおいて重要なエレメントである。全てではないにせよ、大半のディスポーザブル式イムノアッセイデバイスは、デバイスの不可欠の部分として捕捉表面を伴う形で構成されている。
【0068】
一実施形態において、成形されたプラスチック製のアッセイユニットは、市販されているか、または正確な形状およびサイズによる注入成形により作製することができる。例えば、特徴的な大きさは、0.05〜3mmの直径でもありえ、3〜30mmの長さでもあり得る。マイクロ滴定プレートをコーティングするのに用いられる方法と同様の方法を用いて、ユニットを捕捉試薬でコーティングすることができるが、大型の容器に入れ、コーティング試薬を添加し、篩、保持器などを用いて処理して片を収集し、必要に応じて洗浄することにより、ユニットをバルクで処理し得るので有利である。
【0069】
アッセイユニットは、その上に反応物質を固定化し得る、剛性の支持体を提供し得る。アッセイユニットはまた、光との相互作用に関して適切な特性を提供するようにも選択される。例えば、アッセイユニットは、機能ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO、SiN、修飾シリコン、または(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PMMA、ABS、もしくはこれらの組合せなど多種多様なゲルもしくはポリマーのいずれか1種などの材料から作製することができる。ある実施形態において、アッセイユニットはポリスチレンを含む。他の適切な材料も、本発明に従い用いることができる。透明の反応サイトが有利であり得る。加えて、光が光検出器に達することを可能とする光透過性のウインドウが存在する場合、表面は、不透明なことが有利な場合があり、かつ/または光散乱性なことが好ましい場合がある。
【0070】
捕捉表面において固定化された反応物質は、体液試料中における目的の解析対象を検出するのに有用な任意の物質であり得る。例えば、このような反応物質は、特定の解析対象と反応する核酸プローブ、抗体、細胞膜受容体、モノクローナル抗体、および抗血清を含むがこれらに限定されない。特定の解析対象用に特異的に開発されたポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の宿主など、種々の市販の反応物質を用いることができる。
【0071】
当業者は、種々の反応物質を、反応が生じ得る支持体上に固定化する多くの方法が存在することを理解するであろう。固定化は、共有結合でも非共有結合でもありえ、リンカー部分を介することも可能であり、固定化部分にそれらをテザリングすることも可能である。核酸分子または抗体などのタンパク質性分子を固体支持体に結合させるための、非限定的な例示的結合部分は、ストレプトアビジンまたはアビジン/ビオチン結合、カルバメート結合、エステル結合、アミド結合、チオールエステル結合、(N)−官能化チオ尿素結合、官能化マレイミド結合、アミノ結合、ジスルフィド結合、アミド結合、ヒドラゾン結合、その他を含む。加えて、当技術分野で公知の方法を用いて、ガラスなどの基質に直接に結合させた核酸に、シリル部分を結合させることもできる。表面固定化はまた、表面に対する電荷間結合を提供するポリ−Lリシンテザーによっても達成することができる。
【0072】
アッセイユニットは、捕捉表面を組み込む最後のステップの後で乾燥させることができる。例えば、乾燥させるステップは、乾燥大気への受動的曝露により、または真空マニホールドの使用および/もしくはマニホールドを介する清浄な乾燥空気の適用により実施することができる。
【0073】
多くの実施形態において、アッセイユニットは、ユニットが、大量で迅速な製造工程において製造されることを可能とするように設計される。例えば、チップは、チップ内またはチップ上における捕捉表面のバッチコーティングのための大型アレイに取り付けることができる。別の例において、チップは、連続加工用の移動式ベルトまたは回転式テーブルに配置することもできる。さらに別の例では、チップの大型アレイを、単純加工用の真空マニホールドおよび/または圧力マニホールドに連結することもできる。
【0074】
ある実施形態において、アッセイユニットは、流体移送デバイスと作動的に連結することができる。流体移送デバイスは、ヒトの介入がない自動制御下で作動し得る。チップを含むアッセイユニットにおいて、ディスポーザブル式液体チップの設置高度の制御は、液体分注器に対するチップのテーパ締まりばめ式固定具に依拠する。流体移送デバイスは、チップに係合し得る。場合によって、移送される液体中におけるチップの浸漬長は、制御不能であり得る、チップ外側との液体の接触を最小化しなければならないことが公知である。流体移送デバイスにチップを結合または接着させるために、分注器のノズルに係合するテーパ接続部の底部に硬質の止め具を成形することができる。テーパ部へ向かう途中にあるかまたはノズルの平坦な底部にあるo型リングにより、気密シールを作製することができる。チップのシーリング機能を、チップ高度の制御と分離することによって、両者を個々に調整することができる。モジュール式デバイスおよび流体移送デバイスにより、多くのアッセイを並行して実施することができる。
【0075】
デバイスの試薬ユニットは、所与の目的の解析対象を検出する所与の化学反応を実施するのに必要な試薬を保持し得る。液体試薬は、ポリスチレン、ポリエチレン、またはポリプロピレンなどのプラスチックを含むがこれらに限定されない種々の材料から製造し得る小型カプセル内に分散させることができる。いくつかの実施形態において、試薬ユニットは、円筒形のカップである。カップを含む試薬ユニットの2つの例401、402を、図4Aおよび4Bに示す。所望の場合、ユニット401、402は、デバイスのハウジング内のキャビティにぴったりとはまる。ユニット401、402は、開放面上においてシーリングして、本体内に試薬411、412が溢出することを回避することが可能である。いくつかの実施形態において、シールは、アルミン化プラスチックであり、熱結合によりカップをシーリングすることができる。ユニットは、試薬を収容する必要に応じた任意の形状であり得る。例えば、円筒形状の試薬ユニット401を図4Aに示すが、試薬ユニットは、液体試薬411を収容する。図4Bに示される異なる形状の試薬ユニット402もまた、液体試薬412を収容する。例示的な試薬ユニット401、402共に、ユニット401、402が、本明細書で説明されるデバイスのハウジングにぴったりとはまることを可能とする、上面近傍における任意選択の若干の改変を含む。
【0076】
本発明の多くの実施形態において、試薬ユニットはモジュール式である。試薬ユニットは、ユニットが、大量で迅速な製造工程において製造されることを可能とするように設計することができる。例えば、多くの試薬ユニットは、大規模工程において同時に充填されシーリングすることができる。試薬ユニットは、デバイスにより実行される1つまたは複数のアッセイの種類に従って充填することができる。例えば、一ユーザーが別のユーザーとは異なるアッセイを所望する場合、全デバイスを製造する必要なしに、各ユーザーの要望に従って試薬ユニットを製造することができる。別の例において、試薬ユニットは、連続処理用の移動式ベルトまたは回転式テーブルに配置することもできる。
【0077】
別の実施形態において、試薬ユニットは、デバイスのハウジング内のキャビティに直接収容することができる。この実施形態の場合、ユニットを取り囲むハウジング領域にシールを作製することができる。
【0078】
本発明に従う試薬は、洗浄緩衝液、酵素基質、希釈緩衝液、コンジュゲート、酵素標識コンジュゲート、DNA増幅剤、試料希釈剤、洗浄液、洗浄剤、ポリマー、キレート化剤、アルブミン結合試薬、酵素阻害剤、酵素、抗凝血剤、赤血球凝集化剤、抗体などの添加剤を含む試料前処理試薬、またはデバイス上におけるアッセイを実行するのに必要な他の物質を含むがこれらに限定されない。酵素標識コンジュゲートは、適切な基質との反応時において検出可能なシグナルをもたらし得る酵素により標識されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。このような酵素の非限定的な例は、アルカリホスファターゼおよび西洋ワサビペルオキシダーゼである。いくつかの実施形態において、試薬は、イムノアッセイ試薬を含む。一般に、試薬、とりわけ、液体と混合した場合に比較的不安定な試薬は、デバイス内の規定の領域(例えば、試薬ユニット)に個々に封入される。
【0079】
いくつかの実施形態において、試薬ユニットは、約5マイクロリットル〜約1ミリリットルの液体を収容する。いくつかの実施形態において、ユニットは、約20〜200マイクロリットルの液体を収容し得る。さらなる実施形態において、試薬ユニットは、100マイクロリットルの流体を収容する。ある実施形態において、試薬ユニットは、約40マイクロリットルの流体を収容する。試薬ユニットにおける液体の容量は、実行されるアッセイまたは供給される体液試料の種類に応じて変化し得る。ある実施形態では、試薬の容量を予め決定しなくてもよいが、公知の最少量より多くしなければならない。いくつかの実施形態において、試薬は、最初乾燥状態で保持し、デバイス上で実行されるアッセイの開始時に溶解させる。
【0080】
ある実施形態において、試薬ユニットは、サイフォン、漏斗、ピペット、シリンジ、注射針、またはこれらの組合せを用いて充填することができる。試薬ユニットは、充填チャネルおよび真空吸引チャネルを用いて液体で充填することができる。試薬ユニットは、個々に、またはバルク製造工程の一部として充填することができる。
【0081】
ある実施形態において、個々の試薬ユニットは、試薬を互いに隔離する手段として、異なる試薬を含む。試薬ユニットはまた、洗浄液または基質を収容するのにも用いることができる。加えて、試薬ユニットは、発光性基質を収容するのにも用いることができる。別の実施形態において、複数種の試薬を試薬ユニット内に収容することができる。
【0082】
場合によって、デバイスの設定により、対象デバイスのディスポーザブル品の組立て前における、アッセイユニットおよび試薬ユニットの事前の較正能力が可能となる。
【0083】
システム
ある態様において、本発明のシステムは、アッセイユニットと、試薬(液相試薬および固相試薬の両方)を含む試薬ユニットとを含むデバイスを含む。いくつかの実施形態では、全デバイス、アッセイユニット、試薬ユニット、またはこれらの組合せの少なくとも1つがディスポーザブルである。本発明のシステムにおいて、デバイスによる解析対象の検出は、測定器により行われる。大半の実施形態において、測定器、デバイス、および方法は、自動検出システムを提供する。自動検出システムは、規定のプロトコールまたはユーザーによりシステムに与えられるプロトコールに基づいて自動化することができる。
【0084】
ある態様において、体液試料中における解析対象の自動検出システムは、デバイスまたはカートリッジ、および解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルを検出する検出アセンブリーまたは検出器を含む。
【0085】
ある実施形態において、ユーザーは、試料(例えば、測定されたかまたは測定されない血液試料)をデバイスに適用し、デバイスを測定器に挿入する。後続の全てのステップは自動であり、測定器(有線)、ユーザー、遠隔のユーザーもしくはシステム、または識別子(例えば、デバイス上のバーコードまたはRFID)に従う測定器操作の変更によりプログラムされる。
【0086】
本発明のシステムを用いて実行し得る異なる機能の例は、試料の希釈、試料の一部(例えば、赤血球(RBC))の除去、アッセイユニット内における試料の反応、試料およびアッセイユニットへの液体試薬の添加、試料およびアッセイユニットからの試薬の洗浄、ならびにデバイスの使用時および使用後における液体の収容を含むがこれらに限定されない。試薬は、デバイス本体上の試薬ユニットまたはデバイス上で組み立てられる試薬ユニット内に入れることができる。
【0087】
自動システムは、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)による生物学的試料(例えば、血液)中における特定の解析対象を検出し得る。システムは、多重化に適し、少量の全血試料(例えば、20マイクロリットル以下)中に存在する目的の解析対象を検出するのに特に適する。システムはまた、単一の試料の異なる希釈液中における解析対象を検出することも可能であり、これにより、所望の場合、同じデバイス上において、感度の違いを調べることが可能となる。全ての試薬、供給物、および廃棄物を、システムのデバイス上に収容することができる。
【0088】
使用時には、対象に由来する試料を組み立てられたデバイスに適用し、デバイスを測定器に挿入する。ある実施形態において、測定器は、赤血球の除去(血液試料)、試料の希釈、およびアッセイユニットへの試料の移動のある組合せにより試料の処理を開始することが可能である。多重アッセイを伴う実施形態では、複数のアッセイユニットを用い、試料の一部を、直列または並列された個々のアッセイユニットに移動させる。次いで、インキュベーションおよび捕捉表面への試薬の適用の連鎖を制御することにより、アッセイを実施することができる。
【0089】
例示的な流体移送デバイスは、アッセイを実施し、かつ/またはこれを読み取ることが必要とされる任意の構成要素からなる。構成要素の例は、デバイスのウェルまたはユニットから公知の流体容量を正確に吸引および送出するポンプ、システム内における移動の精度および確度を改善する少なくとも1つの移動ステージ、アッセイユニット内における解析対象を検出する検出器、ならびにアッセイインキュベーションのための温度環境を調節する温度調節手段を含むがこれらに限定されない。本発明のある実施形態では、測定器がデバイスの温度を制御する。さらなる実施形態において、温度は、摂氏約30〜40度の範囲内にある。いくつかの実施形態において、システムによる温度制御は、能動的な冷却を含み得る。場合によって、温度範囲は、摂氏約0〜100度である。例えば、核酸アッセイの場合、摂氏100度までの温度を達成することができる。ある実施形態において、温度範囲は、摂氏約15〜50度である。システムの温度制御ユニットは、ペルチエデバイスなどの熱電デバイスを含み得る。
【0090】
本明細書で説明されるカートリッジ、デバイス、およびシステムは、既存のPOCシステムまたは統合型解析システムにおいて用いられない多くの特徴を提供し得る。例えば、多くのPOCカートリッジは、少量の液体を効率的な形で操作する閉じた流体系または流体ループに依拠する。本明細書で説明されるカートリッジおよび流体デバイスは、カートリッジのユニット間における流体の移動を開放させ得る。例えば、試薬をユニット内、試料を試料収集ユニット内、希釈剤を希釈剤ユニット内で保持することができ、捕捉表面をアッセイユニット内に入れることができ、この場合、カートリッジの1つの状態では、いずれのユニットも他のユニットと流体連絡されない。本明細書で説明される流体移送デバイスまたはシステムを用いると、ある状態において、ユニットは互いに流体連絡される必要がない。いくつかのユニットを流体連絡させるために、ユニットを互いに対して移動可能とすることができる。例えば、流体移送デバイスは、アッセイユニットに係合し、アッセイユニットを移動させて試薬ユニットと流体連絡させるヘッドを含み得る。
【0091】
本明細書のデバイスおよびシステムは、対象に由来する体液中に存在する解析対象のハイスループットでリアルタイムの検出に有効な手段を提供し得る。検出法は、特定の生物学的過程、生理学的状態、障害もしくは障害の病期と関連する解析対象の同定および定量化を含む、多種多様の状況において用いることができる。したがって、システムは、例えば、薬剤のスクリーニング、疾患の診断、系統発生分類、親族の同定および法医学的同定、疾患の発症および再発、人口比ベースの治療に対する個体の応答、ならびに治療のモニタリングにおける広範な有用性を有する。本デバイスおよびシステムはまた、治療薬の開発の前臨床段階および臨床段階の向上、患者のコンプライアンスの改善、処方薬と関連するADRのモニタリング、個々化医療の開発、中央検査室から家庭への、または処方ベースでの血液検査のアウトソーシング、および規制機関による承認後における治療剤のモニタリングにも特に有用である。デバイスおよびシステムは、オーダーメイド医療の柔軟なシステムを提供し得る。説明される通り、同システムを用いて、システムのプログラム可能なプロセッサーへのプロトコールまたは命令に沿ってデバイスを変更するか、または交換することで、多種多様のアッセイを実施することができる。本明細書のシステムおよびデバイスは、検査室環境の特徴の多くを、デスクトップであるかまたはより小さなサイズの自動測定器において提供する。
【0092】
いくつかの実施形態では、種々の解析対象を検出するのに用いられる複数種のデバイスを患者に供給することができる。対象は、例えば、週の異なる日において異なる流体デバイスを用いることができる。いくつかの実施形態において、識別子をプロトコールと関連付ける外部デバイス上におけるソフトウェアは、例えば、臨床試験に基づいて流体デバイスが用いられる日と今日現在とを比較する過程を含み得る。別の実施形態では、デバイスのハウジングに互換的にはめ込み得る異なる試薬ユニットおよびアッセイユニットを患者に供給する。さらに別の実施形態において説明される通り、患者は、検査の各日に新たなデバイスを必要とせず、むしろ、例えば、サーバーなどの外部デバイスから新たな命令をダウンロードすることにより、システムをプログラムまたは再プログラムすることができる。例えば、週の2日が同じでない場合、外部デバイスにより、本明細書で説明されるかまたは当技術分野で公知の方法のいずれかを用いる対象に、適正なデバイスおよび/またはシステムのための適正な命令を知らせる通知を無線で送信することができる。この例は説明を目的とするに過ぎず、例えば、1日の正確な時間において流体デバイスを用いないことを対象に通知する場合に容易に拡張することができる。
【0093】
例えば、図1に示すカートリッジは、種々のアッセイユニットおよび試薬ユニットを含み得る。アッセイユニットは、検出される解析対象に従う捕捉表面を含み得る。次いで、ジャストインタイム方式で、アッセイユニットをデバイスの残余と共に組み立てることができる。先行技術による多くのPOCデバイスの場合、デバイスには捕捉表面が不可欠であり、捕捉表面が不適正であるか、または適正に形成されていない場合、デバイス全体が不良品となる。本明細書で説明されるデバイスを用いる場合、捕捉表面および/またはアッセイユニットを個々に品質管理し、デバイスの試薬ユニットおよびハウジングとは個々にカスタマイズすることができる。
【0094】
同様のジャストインタイム方式で、試薬ユニットに種々の試薬を充填することができる。これにより、カスタマイズ可能なデバイスの柔軟性がもたらされる。加えて、デバイスの安定性またはデバイス内で実行される化学反応を損なうことなく、試薬ユニットに異なる容量の試薬を充填することもできる。説明される通りに流体移送デバイスを伴うシステムと連結することで、本明細書で説明されるデバイスおよびユニットは、実行されるアッセイの方法およびプロトコールに柔軟性を与える。例えば、同じ試薬を収容する同様のデバイスバッチを、臨床試験のための患者プールに供与することができる。臨床試験の途中で、ユーザーは、アッセイユニットに供給される試料の希釈率および試薬の量を変化させることにより、アッセイを最適化し得ることを確認する。本明細書に記載の通り、流体移送デバイスのプログラム可能なプロセッサーへの命令を変更するだけで、アッセイを変更または最適化することができる。例えば、患者プールにおけるカートリッジバッチでは、カートリッジ上に過剰の希釈剤が充填されていたとする。新たなプロトコールは、以前のプロトコールの4倍の希釈剤を要求する。本明細書に記載の方法およびシステムにより、患者プールに新たなデバイスを供給する必要なく、デバイスにより方法を実行するよう中央サーバーにおいてプロトコールを変更し、これを全てのシステムに送信することができる。言い換えれば、本明細書で説明されるPOCデバイスおよびシステムでは、過剰試薬および過剰試料が用いられることが多い標準的な試験室実践に多大の柔軟性を与えることができる。
【0095】
カートリッジのユニットが分離型であるいくつかの場合では、デバイスおよびシステムにより、本明細書で説明されるシステムの構築に柔軟性がもたらされる。例えば、アッセイユニットのアレイおよび試薬ユニットのアレイを用いて8つのアッセイを実行するようにカートリッジを構成することができる。本明細書で説明されるカートリッジの特徴により、同じハウジング、または同じ設計のハウジングを用いて、以前のカートリッジとは異なる最大8つの異なるアッセイを伴うカートリッジを製造することができる。閉じたシステムおよび流体チャネルのため、したがってまた、デバイスが説明される通りのモジュール式でもありえず、組立てが容易でもありえないため、多くの現行のPOCデバイスの設計でこの柔軟性を達成するのは困難である。
【0096】
今日では、例えば、1つの解析対象がpg/mlの濃度範囲にあり、別の解析対象がug/mlの濃度範囲にある、広く異なる濃度範囲に存在する複数種の解析対象の検出が必要である。本明細書で説明されるシステムは、広い濃度範囲にある同じ試料中に存在する解析対象を同時にアッセイする能力を有する。広い濃度範囲で存在する異なる解析対象の濃度を検出することが可能であることの別の利点は、これらの解析対象の濃度比を、患者に投与される複数の薬剤の安全性および有効性と関連付ける能力である。例えば、不測の薬剤間相互作用が、有害な薬剤作用の一般的な原因であり得る。異なる解析対象を測定するリアルタイムの同時的測定法は、有害な薬剤間相互作用の潜在的に有害な帰結を回避する一助となる。
【0097】
単一の対象におけるある期間にわたる解析対象の濃度および/またはPDもしくはPKのマーカー濃度の変化速度をモニタリングすることが可能であること、あるいは濃度またはPDもしくはPKのマーカー、それらが薬剤の濃度であるかまたはそれらの代謝物の濃度であるかについての傾向解析を実施することは、潜在的に危険な状況を防止する一助となる。例えば、グルコースが目的の解析対象である場合、所与の時点における試料中におけるグルコース濃度のほか、所与の期間にわたるグルコース濃度の変化速度は、例えば、低血糖性事象の予測および回避に極めて有用であり得る。このような傾向解析は、薬剤投与レジメンにおいて広く有益な示唆を与える。複数種の薬剤およびそれらの代謝物が問題となる場合、傾向を突き止め、事前の措置を講じ得ることがしばしば望ましい。
【0098】
したがって、本流体デバイスおよびシステムの使用により発生するデータを用いて、対象における解析対象の濃度に対する傾向解析を実施することができる。
【0099】
同じカートリッジ上における8つのアッセイは、異なる希釈率または前処理を要することが多い。希釈率の範囲は、アッセイ間でかなりの幅であり得る。多くの現行のPOCデバイスは、希釈率の範囲が制限され、したがって、POCデバイス上で潜在的に実施され得るアッセイ数が制限される。しかし、本明細書で説明されるシステムおよび/またはカートリッジは、試料の希釈系列を作製する能力により、広い範囲の希釈率をもたらし得る。したがって、アッセイに応じて検出器または読み取り用測定器を変更することなく、単一のカートリッジまたは複数のカートリッジ上において、多数の潜在的なアッセイを実施することができる。
【0100】
ある例において、本明細書に記載のシステムは、複数の(例えば、5つ以上の)異なる標的解析対象の検出アッセイを実行するように構成される。予測される解析対象の濃度を本明細書で説明され、POC分野で一般に用いられるイムノアッセイの検出範囲内に収めるためには、試料を、例えば、3:1、8:1、10:1、100:1、および2200:1に希釈して、5つのアッセイの各々を実行しなければならない。流体移送デバイスは、デバイス内に流体を保持および移動させることが可能であるため、本明細書で説明されるシステムにより系列希釈を実施して、これらの5つの異なる希釈率を達成し、5種の異なる標的解析対象を検出することができる。上記で説明した通り、アッセイを実施するためのプロトコールはまた、デバイスまたはシステムを変更することなく調整することも可能である。
【0101】
従来のピペッティングを伴う試験室環境では、POC環境において用いられるよりも大容量の試料を用いることが典型的である。例えば、試験室では、ミリリットル範囲の容量で患者の腕から採取された血液試料を解析することができる。POC環境では、工程が迅速、容易、かつ/または侵襲性が最小限であり、したがって、少量の(指先穿刺により得られる容量など、マイクロリットル範囲のオーダーの容量における)試料がPOCデバイスにより解析されることが典型的であることを要求するデバイスおよびユーザーが多い。試料の違いのために、現行のPOCデバイスは、試験室環境において与えられるアッセイを実行する柔軟性を失うことがある。例えば、試料に由来する複数のアッセイを実行する場合、各アッセイが解析対象の正確な検出を可能とするにはある最小容量が必要とされ、したがって、POC環境におけるデバイスにはある制約が課せられることがある。
【0102】
別の例において、本明細書で説明されるシステムおよび/または流体移送デバイスは、多大の柔軟性をもたらす。例えば、アッセイユニット、アッセイチップ、または空のピペットを、互いに流体連絡させずに、デバイスの1つのユニットからデバイスの別のユニットへと移動させるように、流体移送デバイスを自動化することができる。場合によっては、これにより、説明されるデバイスユニットの交差汚染を回避することができる。他の場合には、これにより、プロトコールまたは命令に従って、説明されるデバイス内における複数種の流体を移動させて互いに接触させる柔軟性も可能となる。例えば、プロトコールにより命令される通りに、8つの異なる試薬ユニット内に8種の異なる試薬を含むカートリッジにアドレスし、任意の順序または組合せで流体移送デバイスをこれに係合させることができる。したがって、デバイス上で実行される任意の化学反応に応じて、多くの異なるシークエンスを実行することができる。カートリッジ内における試薬の容量、またはカートリッジ内における試薬の種類を変化させず、第2のカートリッジまたは第2のシステムを必要とすることなく、異なるアッセイプロトコールが可能であり、またこれを変更することができる。
【0103】
例えば、ユーザーは、試料中における解析対象(例えば、C反応性タンパク質(CRP))を検出するアッセイを実行するための特定の種類の捕捉表面および特定の試薬を有するカートリッジを注文する。ユーザーが当初予定したプロトコールは、2回の洗浄ステップと3回の希釈ステップとを必要とし得る。デバイスおよびシステムを受領した後で、ユーザーは、プロトコールが実際には5回の洗浄ステップとただ1回の希釈ステップを有するべきであると決定した。本明細書のデバイスおよびシステムは、デバイスまたはシステムを再構成する必要なしに、プロトコールにおけるこの変更に対する柔軟性を許容し得る。この例では、システムまたは流体移送デバイスのプログラム可能なプロセッサーに送信することが必要なのは、新たなプロトコールまたは命令のセットだけである。
【0104】
別の例において、本明細書に記載のシステムは、各アッセイを異なる温度でインキュベートする必要がある、5種の異なる標的解析対象の検出アッセイを実行するように構成される。多くの先行技術によるPOCデバイスの場合、複数のアッセイがモジュール式でなく、捕捉表面を加熱デバイスに対して移動させることができないため、異なる温度における複数のアッセイのインキュベーションは困難な作業である。個々のアッセイユニットが化学反応を実行するように構成される、本明細書で説明されるシステムの場合、個々のアッセイユニットを個々の加熱ユニットに配置することができる。いくつかの実施形態において、システムは、複数の加熱ユニットを含む。場合によって、システムは、少なくとも、アッセイユニットと同数の加熱ユニットを含む。したがって、複数のアッセイを複数の温度で実行することができる。
【0105】
本明細書で説明されるシステムおよびデバイスはまた、以前、先行技術による多くのPOCデバイスでは得られなかった種々の品質管理手段も提供し得る。例えば、デバイスのモジュール性のために、アッセイユニットおよび試薬ユニットは、互いから分離して、かつ/またはハウジングから分離して、かつ/またはシステムもしくは流体移送デバイスから分離して品質管理することができる。本明細書のシステムおよびデバイスによりもたらされる品質管理の例示的な方法およびシステムが説明される。
【0106】
説明されるシステムは、体液試料から検出される解析対象に関わりなく、種々のアッセイを実行することが可能である。デバイスの識別に依存するプロトコールを、それが保存され得る外部デバイスからリーダーアセンブリーに送信することにより、リーダーアセンブリーがデバイス上で特定のプロトコールを実行することを可能とし得る。いくつかの実施形態において、デバイスは本明細書で説明される識別子検出器により検出されるかまたは読み取られる識別子(ID)を有する。識別子検出器は、外部デバイスに識別子を送信する制御装置を介して、通信アセンブリーと通信することが可能である。所望の場合、外部デバイスは、外部デバイス上に保存されたプロトコールを、識別子に基づいて通信アセンブリーへと送信する。システム上で実行されるプロトコールは、実行される特定のアッセイおよび実施される検出法を含むがこれらに限定されないプロトコールをシステムの制御装置に実施させる命令を含み得る。システムによりアッセイが実施されると、体液試料中における解析対象を示すシグナルが発生し、システムの検出アセンブリーにより検出される。次いで、検出されたシグナルは、通信アセンブリーへと送信され、そこで、試料中における解析対象の濃度の計算を含むがこれに限定されない処理のための外部デバイスに送信され得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、識別子は、一連の黒色および白色の縞によるバーコード識別子でありえ、これは、バーコードリーダーなど、周知の識別子検出器により読み取ることができる。他の識別子は、デバイス上に配置され、識別子検出器により検出されるかまたは読み取り得る英数字列、色、突起または他の任意の識別子であり得る。識別子検出器はまた、光を反射する識別子と相互作用し、識別子検出器により測定されることでデバイスの識別を決定し得る光を発するLEDでもあり得る。いくつかの実施形態において、識別子は、保存または記憶用のデバイスを含むことがあり、識別検出器に情報を送信し得る。いくつかの実施形態では、技法の組合せを用いることができる。いくつかの実施形態において、検出器は、LEDなどの抗原を用いて較正される。
【0108】
ある例では、デバイスに体液試料を供給し、デバイスをシステムに挿入することができる。いくつかの実施形態において、デバイスは部分的に手動で挿入され、次いで、リーダーアセンブリーがデバイスをシステム内に適正に自動的に配置する。システム内にディスクまたはカートリッジを挿入するための、当技術分野で公知の他の任意の機構を用いることができる。いくつかの実施形態では、手動での挿入が必要とされ得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、システム上で実行されるプロトコールを自動的に選択する方法は、識別子検出器および識別子を含むデバイスを準備するステップと、識別子を検出するステップと、前記識別子を外部デバイスに送信するステップと、前記識別子と関連する前記外部デバイス上における複数のプロトコールからシステム上で実行されるプロトコールを選択するステップとを含む。
【0110】
ある態様では、体液試料中における複数種の解析対象の自動検出システムであって、体液試料を収容するように構成される試料収集ユニットと、検出される前記複数種の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルをもたらす化学反応を実行するように個々のアッセイユニットが構成されるアッセイユニットのアレイと、個々の試薬ユニットが試薬を収容する試薬ユニットのアレイとを含む流体デバイス(本明細書で説明されるデバイスなど)を含むシステムが開示される。システムは、個々のヘッドが個々のアッセイユニットに係合するように構成される複数のヘッドを含み、試料収集ユニットからの体液試料および個々の試薬ユニットからの試薬の、個々のアッセイユニットへの流体移送を方向づけるように構成されるプログラム可能なプロセッサーを含む、流体移送デバイスをさらに含む。例えば、個々のアッセイユニットは試薬を含み、その試薬による化学反応を実行するように構成される。
【0111】
場合によって、前記複数種の解析対象が前記システムにより検出可能となるように、流体移送を方向づけるプロセッサーの構成により、アッセイユニットのアレイ内における体液試料をある程度希釈して、検出される複数種の解析対象を示すシグナルを検出可能な範囲内に収める。ある例において、体液試料は、少なくとも2、5、10、15、50、または100桁分異なる濃度で存在する少なくとも2種の解析対象を含む。ある例において、体液試料は、1滴の血液である。ある実施形態において、試料中に存在する少なくとも2種の解析対象の濃度は、最大10桁分異なる(例えば、第1の解析対象が0.1pg/mLで存在し、第2の解析対象が500ug/mLで存在する)。別の例において、いくつかのタンパク質解析対象は、100mg/mLを超える濃度で見出され、これにより、目的の範囲は約12桁に及ぶ。
【0112】
体液試料に対するある程度の希釈により、少なくとも2種の解析対象を示すシグナルを検出可能な範囲内に収めることができる。多くの場合において、システムは、光電子倍増管(PMT)などの検出器をさらに含む。例えば、光電子倍増管では、検出器の検出可能な範囲は、毎秒約10〜約1000万カウントであり得る。各カウントは、単一の光子に対応する。場合によって、PMTは100%有効ではなく、単位時間当たりに検出器に到達する実際の光子数をわずかに下回ることがあるが、なおこれに近接し得る。場合によって、カウントは、約1秒間ずつの約10間隔において測定され、結果が平均される。場合によって、PMTを検出器として用いる場合、アッセイの範囲は、毎秒1000〜1,000,000カウントである。場合によって、毎秒最低100および最高10,000,000のカウント率が測定可能である。PMTの直線的な応答範囲(例えば、カウント率が単位時間当たりの光子数に直接に比例する場合の範囲)は、毎秒約1000〜3,000,000カウントであり得る。ある例において、アッセイは、毎秒約200〜1000カウントの下限および毎秒約10,000〜2,000,000カウントの上限において検出可能なシグナルを有する。タンパク質バイオマーカーのいくつかの場合において、カウント率は、捕捉表面に結合したアルカリホスファターゼに直接に比例し、また、解析対象の濃度にも直接に比例する。他の例示的な検出器は、アバランシェフォトダイオード、アバランシェフォトダイオードアレイ、CCDアレイ、超低温CCDアレイを含む。他の多くの検出器は、デジタル出力を有し、一般に、検出器に到達する光子に比例する。例示的な検出器の検出可能な範囲は、用いられる検出器に適することが可能である。
【0113】
流体移送デバイスの個々のヘッドは、個々のアッセイユニットに接着するように構成することができる。流体移送デバイスは、空気置換式ピペットなどのピペットであり得る。流体移送デバイスは、自動式であり得る。例えば、流体移送デバイスは、プログラム可能なプロセッサーと連絡しているモーターをさらに含むことがあり、モーターは、プログラム可能なプロセッサーからのプロトコールに基づいて複数のヘッドを移動させ得る。説明した通り、個々のアッセイユニットはピペットチップ、例えば、捕捉表面または反応サイトを有するピペットチップであり得る。
【0114】
多くの場合、本明細書で説明されるシステムおよびデバイスなどのPOCデバイスでは、希釈倍率を推定しなければならず、これは妥当な程度に正確でなければならない。例えば、非専門家のユーザーがシステムを操作する環境では、試料の希釈率を確認する手段が必要である。
【0115】
本明細書で説明される通り、流体移送デバイスにより、試料に対するある程度の希釈を行うことで、正確なアッセイ結果をもたらすことができる。例えば、プログラム可能な流体移送デバイスは、試料を希釈するかまたは系列希釈するほか、試料と希釈剤との混合物も供給するよう、多重ヘッド型であり得る。流体移送デバイスはまた、POCデバイスにおける流体移動ももたらし得る。
【0116】
説明される通り、本明細書のシステムおよびデバイスは、検査室環境の柔軟性の多くの特徴を、POC環境において可能とし得る。例えば、試料は、テーブルトップサイズまたはより小型のデバイスまたはシステムにおいて自動的に収集および操作することができる。POCデバイスにおける共通の問題は、著明に異なる感度または特異性を有し得る複数のアッセイを実行する場合の異なる希釈範囲の達成である。例えば、試料中には2種の解析対象が存在し得るが、1つの解析対象は試料中において高濃度を有し、他の解析対象は極めて低濃度を有する。記載される通り、本明細書のシステムおよびデバイスは、両方の解析対象を検出するために、著明に異なるレベルまで試料を希釈することが可能である。例えば、解析対象が高濃度である場合、適切な検出範囲まで試料を系列希釈し、捕捉表面に供給してこれを検出することができる。同じシステムまたはデバイスにおいて、低濃度の解析対象を有する試料は、希釈する必要がない場合がある。したがって、本明細書に記載のPOCデバイスおよびシステムのアッセイ範囲を、多くの現行のPOCデバイスよりも拡大することができる。
【0117】
流体移送デバイスは、ベンチトップの測定器であるシステムの一部であり得る。流体移送デバイスは、複数のヘッドを含み得る。本発明の流体移送デバイスには、試料中における複数種の解析対象を検出するのに必要な任意の数のヘッドを想定することができる。ある例において、流体移送デバイスは、直線状にある距離を置いて取り付けられた約8個のヘッドを有する。ある実施形態において、ヘッドは、本明細書で説明されるアッセイユニットまたは試料収集ユニットなどの種々のチップと圧接により係合するテーパノズルを有する。チップは、使用後、それらが、説明される通りに、測定器により自動的に取り外され、デバイスのハウジング内に廃棄されることを可能とする特徴を有する。ある実施形態において、アッセイチップは無色透明であり、光電子倍増管などの光検出器により検出され得るアッセイがその中で実行されるキュベットに類似し得る。
【0118】
ある例において、システムのプログラム可能なプロセッサーは、命令またはコマンドを含む場合があり、命令に従って流体移送デバイスを操作して、閉鎖された空隙内からピストンを引き抜く(液体を引き入れる)か、または空隙内へとピストンを押し出す(液体を駆出する)ことにより液体試料を移送することが可能である。移動する空気の容量および移動の速度は共に、例えば、プログラム可能なプロセッサーにより正確に制御することができる。
【0119】
試料(または試薬)の希釈剤(または他の試薬)との混合は、混合される成分を共通のチューブ内に吸引し、次いで、混合された液体容量の大部分をチップ内で上下に繰り返し吸引することにより達成することができる。チューブ内で乾燥した試薬の溶解は、同様の形で行うことができる。捕捉試薬(例えば、抗体)がその上に結合した捕捉表面との液体試料および試薬のインキュベーションは、適切な液体をチップ内に引き入れ、それを所定の時間にわたりそこに保持することにより達成することができる。試料および試薬の除去は、液体を説明されるデバイス内のレザバーまたは吸収パッドへと駆出することにより達成することができる。次いで、プログラム可能なプロセッサーからの命令またはプロトコールに従い、別の試薬をチップ内に引き入れることができる。
【0120】
図11で示す例において、以前チップ1101にあった液体1111は、駆出時において、チップ1101内に薄膜1113を残すことがある。したがって、システムは、次の液体1112の先頭(例えば、最上)部分の作用を用いて、以前存在した液体1111をチップ1101から追い出すことができる。以前に存在した液体1113により汚染された後続液体の部分は、捕捉表面1102と相互作用し続けることがないチップ1101の上部内に保持することができる。捕捉表面1102は、以前の液体1111が捕捉表面1102と反応しないように、チップ1101の規定の領域内にあることが可能であり、例えば、図11に示す通り、捕捉表面1102は、チップの突起までさらに伸びることのない、チップ1101の円筒形部分のうちの規定部分を占める。多くの場合において、インキュベーション時間は短く(例えば、10分間)、液体の汚染帯域の分離は比較的大きい(>1mm)ので、液体1113の汚染部分または活性成分の拡散は、インキュベーション時において、捕捉表面1102と反応するのに十分迅速には生じない。多くの高感度アッセイの場合、1種の試薬を除去するかまたは捕捉表面(例えば、アッセイシグナル発生物質により標識された検出抗体)を洗浄することが要件となる。ある例において、本明細書で説明されるシステムの流体移送デバイスでは、例えば、洗浄試薬を用いる流体移送による除去サイクルおよび吸引サイクルをさらに追加することによって、洗浄を行うことができる。ある例では、4回の洗浄ステップにより、捕捉表面と接触する未結合の検出抗体が、10分の一を超える良好な倍率で減少することが示される。捕捉表面に非特異的に結合した任意の検出抗原(極めて望ましくない)もまた、この洗浄工程時に除去することができる。
【0121】
アッセイ範囲の拡大は、試料の希釈により達成することができる。POCアッセイシステムの場合、そこに希釈剤を収容するディスポーザブル式カートリッジを用いることが、希釈度に対する事実上の限界であることが多い。例えば、指先穿刺により少量の血液試料(例えば、約20マイクロリットル)を得、これを希釈するものとし、チューブ内に入れ得る希釈剤の最大容量が250マイクロリットルである場合、全試料に対する希釈の事実上の限界は、約10倍である。本明細書の例において、システムは、より少量の試料(例えば、約2マイクロリットル)を吸引することで、最高希釈倍率を約100倍とすることができる。多くのアッセイで、このような希釈倍率は許容されるが、CRP(本明細書の実施例で説明される)に対するアッセイなどのアッセイの場合、試料をより一層希釈する必要がある。分離ベースのELISAアッセイは、解析対象に結合する捕捉表面の能力において内因性の限界(例えば、典型的なタンパク質解析対象に対して、約数百ng/ml)を有し得る。いくつかの解析対象は、血中に数百マイクログラム/mlで存在する。100倍希釈された場合でも、解析対象の濃度は、較正の範囲外であり得る。本明細書のシステム、デバイス、および流体移送デバイスの例示的な実施形態では、個々のアッセイユニットまたは試料収集ユニット内への希釈剤の複数回の流体移送を実施することにより、複数の希釈率を達成することができる。例えば、上記で説明した通り、試料中における解析対象の濃度が極めて高い場合、解析対象の濃度が許容される検出範囲内に収まるまで複数回にわたり試料を希釈することができる。本明細書のシステムおよび方法は、解析対象の元の濃度を計算するため、希釈率の正確な測定値または推定値を提供し得る。
【0122】
ある実施形態では、本明細書のシステムにより、液体試料を移動させ、アッセイユニットを移動させることができる。システムは、加熱ブロックおよび検出器を含み得る。液体試料を移動させるため、システムは、吸引動作、シリンジ動作、またはピペット型動作を提供し得る。例示的な実施形態において、液体試料を移動させる流体移送デバイスは、ピペットおよびピペットヘッドシステムである。システムにより必要とされるピペットデバイスの数は、検出される解析対象の種類および実行されるアッセイの数に従って調整することができる。ピペットシステムにより実行される動作は、自動式でもありえ、ユーザーによる手動操作でもあり得る。
【0123】
図5は、本明細書で説明される流体移送デバイス520およびシステム500の例を示す。流体移送デバイスシステムは、8つの異なるヘッド522を用いて、8つの異なるかまたは同一の容量の液体を同時に移動させることができる。例えば、カートリッジ(または本明細書で説明されるデバイス)510は、8つのアッセイユニット501を含む。個々のアッセイユニット501は、ユニット501内で実行されるアッセイの種類に従って構成される。個々のアッセイユニット501は、ある容量の試料を必要とし得る。個々のヘッド522を用いて、適正量の試料を個々のアッセイユニット501へと分配することができる。この例において、個々のヘッド522は、アドレスされた個々のアッセイユニット501に対応する。
【0124】
流体移送デバイス機構520はまた、試薬ユニットから試薬を分配するのにも用いることができる。異なる種類の試薬は、コンジュゲート溶液、洗浄用液、および基質溶液を含む。自動システムでは、その上にデバイス510が置かれるステージ530を移動させることで、アッセイユニット501およびヘッド522の配置に対して、また、図5に示されるアッセイを完了するのに必要なステップに従って、デバイス510を移動させることができる。代替的に、デバイス510の位置に対して、ヘッド522およびチップ501または流体移送デバイス520を移動させることもできる。
【0125】
いくつかの実施形態において、試薬は乾燥形態で提供され、アッセイ時にこれを再水和および/または溶解させる。乾燥形態は、凍結乾燥材料および表面上においてコーティングされた膜を含む。
【0126】
システムは、アッセイユニットまたはチップを移動させる保持器または係合器を含み得る。係合器は、真空アセンブリーまたはアッセイユニットチップの突起内にぴったりとはまるように設計されたアセンブリーを含み得る。例えば、チップを移動させる手段は、流体移送デバイスのヘッドと同様の形で移動させることができる。デバイスはまた、係合器または保持器の位置に従い、ステージ上で移動させることもできる。
【0127】
ある実施形態において、チップを移動させる測定器は、本明細書で説明される流体移送デバイスなど、ある容量の試料を移動させる測定器と同じである。例えば、試料収集チップは、収集チップ上における突起に従い、ピペットヘッドにはめ込むことができる。次いで、収集チップを用いて、液体をデバイスおよびシステム全体に分配することができる。液体が分配された後で、収集チップを廃棄し、アッセイユニット上の突起に従い、ピペットヘッドをアッセイユニットにはめ込むことができる。次いで、アッセイユニットチップを試薬ユニットから試薬ユニットへと移動させ、ピペットヘッドにより提供される吸引動作またはピペット型動作に従い、試薬をアッセイユニットに分配することができる。ピペットヘッドはまた、吸引動作またはピペット型動作により、収集チップ、アッセイユニット、または試薬ユニット内での混合を実施することもできる。
【0128】
システムは、アッセイもしくはアッセイユニットの加熱、および/またはアッセイ温度の制御のための加熱ブロックを含み得る。アッセイ反応のインキュベーションステップにおいて熱を用いることで反応を促進し、インキュベーションステップに必要な持続を短縮することができる。システムは、本発明のアッセイユニットを受け入れるように構成される加熱ブロックを含み得る。加熱ブロックは、本発明のデバイスから複数のアッセイユニットを受け入れるように構成することができる。例えば、デバイス上で8つのアッセイを実行することが所望される場合、8つのアッセイユニットを受け入れるように加熱ブロックを構成することができる。いくつかの実施形態では、アッセイユニットを移動させる手段を用いて、アッセイユニットを移動させて、加熱ブロックと熱的に接触させることができる。加熱は、当技術分野で公知の加熱手段により実施することができる。
【0129】
本明細書で説明される例示的なシステム600を、図6に示す。システム600は、手動もしくは自動または両者の組合せにより、その上にデバイス610(またはこの例においてはカートリッジ)が置かれる並進移動ステージ630を含む。システム600はまた、デバイス610のアッセイユニット611と共に一列に並べ得る加熱ブロック640も含む。図6に示す通り、デバイス610は、8つのアッセイユニット611およびこれに対応する複数の試薬ユニット612の連鎖を含み、加熱ブロック640はまた、少なくとも8つのユニットを同時に加熱するための領域641も含む。加熱領域641の各々は、実行されるアッセイの種類または検出される解析対象の種類に従って、個々の各アッセイユニット611に同じであるかまたは異なる温度を与えることができる。システム600はまた、試料中における解析対象の検出を表すアッセイユニット611からのシグナルの検出のための検出器(光電子倍増管などの)650も含む。
【0130】
ある実施形態では、アッセイが検出された場合に、検出器に対するアッセイユニットの位置を特定するセンサーが提供される。
【0131】
ある実施形態において、検出器は、デバイス上における少なくとも1つのアッセイによりもたらされるシグナルを検出する検出アセンブリーを格納するリーダーアセンブリーである。検出アセンブリーは、例えば実施されるアッセイの種類および用いられる検出機構に基づき、デバイスの上方にあるか、またはデバイスに対して異なる方向にあり得る。検出アセンブリーを移動させてアッセイユニットと連結することもでき、アッセイユニットを移動させて検出アセンブリーと連結することもできる。
【0132】
多くの場合、光検出器が準備され、検出デバイスとして用いられる。非限定的な例は、発光ダイオード、光電子倍増管(PMT)、光子計数検出器、アバランシェフォトダイオード、または電荷結合デバイス(CCD)を含む。いくつかの実施形態では、ピンダイオードを用いることができる。いくつかの実施形態では、ピンダイオードを増幅器に連結して、PMTと同等の感度を有する検出デバイスを創出することができる。いくつかのアッセイは、本明細書で説明される発光を発生させることが可能である。いくつかの実施形態では、化学発光が検出される。いくつかの実施形態において、検出アセンブリーは、CCD検出器またはPMTアレイに対するバンドルとして連絡している、複数の光ファイバーケーブルを含み得る。光ファイバーバンドルは、共に融合されて堅固なバンドルを形成する個々のファイバーまたは多数の小型ファイバーから構築され得る。このような堅固なバンドルは市販されており、CCD検出器と容易につなぎ合わせられる。
【0133】
検出器はまた、バルブまたは発光ダイオード(LED)などの光源も含み得る。光源は、結果を検出するためにアッセイを照らし得る。例えば、アッセイは、核酸アッセイと共に一般に用いられる、蛍光アッセイまたは吸光度アッセイであり得る。検出器はまた、レンズまたは光ファイバーなど、アッセイに光源を送達する光学素子も含み得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、検出システムは、対象の特定のパラメータを検出するための非光検出器またはセンサーを含み得る。このようなセンサーは、酸化または還元される化合物、例えば、O、H、およびI、または酸化可能/還元可能な有機化合物の場合、温度、導電性、電位差測定シグナル、および電流測定シグナルを含み得る。
【0135】
デバイスおよびシステムは、製造後、一体または個々の形でエンドユーザーのもとへ出荷され得る。本発明のデバイスまたはシステムは、ユーザーマニュアルまたは使用説明書と共に包装され得る。ある実施形態において、本発明のシステムは、異なるデバイス上で実行されるアッセイの種類に対して包括的である。デバイスの構成要素はモジュール式であり得るので、ユーザーが必要とするのは、1つのシステムおよびポイントオブケア環境における多数のアッセイを実行するための種々のデバイスまたはアッセイユニットまたは試薬ユニットだけであり得る。この文脈において、システムは、複数のデバイスと共に繰り返し用いることができ、例えば、出荷時におけるこのような変化を検出するためのセンサーを、デバイスおよびシステムの両方において有することが必要であり得る。出荷時において、圧力または温度の変化は、本システムの多数の構成要素の性能に影響することがあり、外部デバイス上での較正時またはデータ処理時において調整を行い得るように、デバイスまたはシステム上に配置されるこのようなセンサーにより、これらの変化を、例えば、外部のデバイスへと受け渡すことができる。例えば、出荷時において流体デバイスの温度が特定のレベルへと変化する場合、ユーザーによりシステム内にデバイスが挿入されると、デバイス上に配置されるセンサーによりこの変化を検出し、この情報をシステムに送信することができる。システム内にはこれらの作業を実行するさらなる検出デバイスが存在することもあり、このようなデバイスが別のシステム構成要素内に組み込まれることもある。いくつかの実施形態において、情報は、システムまたはパーソナルコンピュータもしくはテレビ受信機などの外部デバイスに無線送信することができる。同様に、システム内のセンサーにより、同様の変化を検出することができる。いくつかの実施形態では、システム構成要素内におけるセンサーの代わりに、またはこれに加えて、出荷用の包装内にもセンサーを有することが望ましい場合がある。例えば、アッセイカートリッジまたはシステムを無効とする感知可能な有害状態は、最高耐熱温度よりも高い温度への曝露、または水分透過など、カートリッジの完全性に対する侵害を含み得る。
【0136】
ある実施形態において、システムは、外部デバイスから無線で情報を送受信することが可能な通信アセンブリーを含む。このような無線通信は、Bluetooth法またはRTM法であり得る。モデムを伴うダイアルアップ式の有線接続、T1、ISDN、またはケーブル回線などの直接的な連結など、種々の通信法を用いることができる。いくつかの実施形態において、無線接続は、セルラーネットワーク、衛星ネットワーク、ポケットベルネットワーク、GPRSなどの例示的な無線ネットワーク、または、ローカルエリアネットワークにわたるEhternetもしくはトークンリングなどのローカルデータ送信システムを用いて確立される。いくつかの実施形態において、情報は、無線ネットワーク全体に送信される前に暗号化される。いくつかの実施形態において、通信アセンブリーは、情報を送受信するための無線赤外線通信構成要素を含み得る。システムは、情報の表示を容易とする統合型グラフィックカードを含み得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、通信アセンブリーは、例えば、収集された情報が保存され得るローカルRAMなどの記憶デバイスまたは保存デバイスを有し得る。例えば、ネットワークに無線で接続することが一時的に不可能であるために、所与の時点で情報を送信できない場合に、保存デバイスが必要とされ得る。情報は、保存デバイス内におけるデバイス識別子と関連し得る。いくつかの実施形態において、通信アセンブリーは、ある長さの時間経過後に、保存された情報の送信を再試行し得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、外部デバイスは、リーダーアセンブリー内における通信アセンブリーと通信する。外部デバイスはシステムと無線でまたは物理的に通信し得るが、また、患者、医療従事者、臨床医、検査担当者、または医療業界の他の従事者を含むがこれらに限定されない第3者とも通信することができる。
【0139】
例示的な方法およびシステムを図7に示す。図7の例において、患者は、血液試料を本明細書で説明されるデバイスに送達し、次いで、デバイスを、血液試料中における解析対象を読み取ることが可能なデスクトップシステムであり得るリーダーに挿入する。リーダーは、本明細書で説明されるシステムであり得る。リーダーは、ベンチトップシステムまたはデスクトップシステムでありえ、本明細書で説明される複数の異なるデバイスを読み取ることが可能であり得る。リーダーまたはシステムは、化学反応を実行し、化学反応の結果を検出するかまたは読み取ることが可能である。図7の例において、リーダーは、外部デバイス(例えば、ユーザーインターフェースを含むサーバー)から送信されるプロトコールに従い自動化されている。リーダーはまた、化学反応の検出結果をサーバーおよびユーザーインターフェースへと送信することも可能である。例示的なシステムにおいて、ユーザー(例えば、医師または研究者などの医療従事者)は、結果を検討および解析するほか、システムを自動化するのに用いられるプロトコールを決定または作成することができる。結果はまた、ローカルで(リーダー上において)保存することもでき、サーバーシステム上で保存することもできる。サーバーはまた、患者記録、患者日誌、および患者集団データベースも記録することが可能である。
【0140】
図8は、対象の治療状態を評価するシステムを構築する工程の流れを示す。患者は、本明細書で説明されるデバイス、リーダー、および/またはシステムからの個人データおよびまたは測定値を、説明したサーバー上に存在し得るデータベース内に入力する。システムは、患者ステーションディスプレイ上に個人データを表示するように構成することができる。いくつかの実施形態において、患者ステーションディスプレイはインタラクティブであり、患者は入力されたデータを変更することができる。同じであるかまたは異なるデータベースは、類似の治療状態を有する他の対象に由来するデータを含む。他の対象に由来するデータは、公的であるかまたは民間の医療機関に由来する履歴データであり得る。他の対象に由来するデータはまた、臨床試験に由来する内部データでもあり得る。
【0141】
図8はまた、対象に由来するデータを含むリーダーによる収集データから、公的ネットワーク全体に連絡しているサーバーへのデータの流れも示す。サーバーは、データを操作することも可能であり、ユーザーステーションへとデータを単に供給することも可能である。患者データはまた、データベース内に保存される治療状態に関連するデータとは別にサーバーに入力することもできる。図8はまた、ユーザーステーションのディスプレイおよび医療従事者またはユーザーへの情報の流れも示す。例えば、図8の例示的な工程の流れを用いると、在宅の患者は、本明細書で説明される本発明のカートリッジ内に体液試料を注入し、カートリッジを本明細書で説明されるシステムまたはリーダーに設置することができる。患者は、患者ステーションディスプレイでシステムからのデータを参照することができ、かつ/または工程の流れのデータを変更するかもしくはこれに新たなデータを入力することができる。次いで、患者からのデータは、例えば、暗号化された形式で、インターネットなどの公的ネットワーク全体を介して、中央演算ハブまたは臨床試験施設に配置され、ネットワークインターフェースおよびプロセッサーを含むサーバーへと移動し得る。サーバーは、治療状態データを用いてユーザーからのデータを操作および理解し、次いで、説明される公的ネットワーク全体を介して、結果をユーザーステーションへと送信することができる。ユーザーステーションは、治療施設または検査室内にあり、アッセイおよび患者データ操作の結果を医療従事者に示すユーザーステーションディスプレイを有し得る。この例の場合、医療従事者は、患者の自宅など、代替的な場所で患者に投与する試験による患者由来の試料の解析結果を受信することができる。本明細書では、システムおよびシステムの構成要素についての他の実施形態および例が説明される。
【0142】
いくつかの実施形態において、外部デバイスは、情報を保存するかまたは情報を処理することが可能な、コンピュータシステム、サーバー、または他の電子デバイスであり得る。いくつかの実施形態において、外部デバイスは、情報を保存するかまたは情報を処理することが可能な、1つまたは複数のコンピュータシステム、サーバー、または他の電子デバイスであり得る。いくつかの実施形態において、外部デバイスは、例えば、治療記録もしくは患者履歴、臨床試験記録、または前臨床試験記録であるがこれらに限定されない患者情報のデータベースを含み得る。外部デバイスは、システム内にどのデバイスが挿入されたかを示す識別子をそれが受信したときに、システムの通信アセンブリーへと送信され得る、システム上で実行されるプロトコールを保存し得る。いくつかの実施形態において、プロトコールは、デバイス識別子に依存し得る。いくつかの実施形態において、外部デバイスは、各デバイスに対する複数のプロトコールを保存する。他の実施形態において、外部デバイス上における患者情報は、複数のプロトコールを含む。場合によって、外部サーバーは、通信アセンブリーから送信される光子カウントを処理し、いくつかの実施形態では体液試料中における解析対象の濃度を計算する、数学的アルゴリズムを保存する。
【0143】
いくつかの実施形態において、外部デバイスは、当技術分野において公知であり、市販される、1つまたは複数のサーバーを含み得る。このようなサーバーは、負荷のバランス調整、タスク管理、および1つもしくは複数のサーバーまたは外部デバイスの他の構成要素がサーバーのアベイラビリティを改善できない場合におけるバックアップ能をもたらし得る。サーバーはまた、当技術分野において公知である通り、保存ユニットおよびプロセッサーユニットの分配ネットワーク上にも実装することができ、この場合、本発明に従うデータ処理は、コンピュータなどのワークステーション上に存在し、これにより、サーバーは不要となる。
【0144】
サーバーは、データベース工程とシステム工程とを含み得る。データベースは、サーバー内に存在することもあり、サーバーにアクセス可能な別のサーバーシステム上に存在することもある。データベース内における情報は高感度の情報を含み得るので、未承認のユーザーがデータベースにアクセスすることを防止するセキュリティーシステムを実装することができる。
【0145】
本明細書で説明されるいくつかの特徴の1つの利点は、外部デバイスから情報を送信して、リーダーアセンブリーだけでなく、例えば、PDAまたはセル電話であるがこれらに限定されない他の関係者または他の外部デバイスにも送り返すことができることである。このような通信は、本明細書で開示される無線ネットワークを介して達成することができる。いくつかの実施形態において、計算された解析対象の濃度または他の患者情報を、例えば、医療従事者または患者であるがこれらに限定されない者に送信することができる。
【0146】
したがって、本デバイスおよびシステムの使用により発生するデータを用いて、対象における解析対象の濃度に対する傾向解析を実施することができる。
【0147】
本明細書で説明される別の利点は、アッセイ結果を、結果を得ることから利益を得うる任意の第3者とほぼ即時的に通信し得ることである。例えば、外部デバイスにおいて解析対象の濃度が決定されると、さらなる措置を講じる必要があり得る患者または医療従事者にそれを送信することができる。本明細書で説明される通り、第3者に対する通信ステップは無線で実行することができ、第3者の携帯型デバイスにデータを送信することにより、第3者には、事実上任意の時間および場所においてアッセイ結果を通知することができる。こうして、緊急の医療措置が必要とされ得る場合、任意の場所において即時的に、一刻を争う形で患者に連絡することができる。
【0148】
システム内にデバイスを挿入した後において流体デバイスと関連する識別子に基づいてデバイスを検出することにより、システムは、外部デバイスからダウンロードされて実行される、流体デバイス特異的なプロトコールを許容する。いくつかの実施形態において、外部デバイスは、システムと関連するかまたは特定の患者もしくは患者集団と関連する複数のプロトコールを保存し得る。例えば、識別子が外部デバイスに送信される場合、外部デバイス上のソフトウェアは、識別子を受信することが可能である。受信すると、データベースなど、外部デバイス上のソフトウェアは、識別子を用いて、識別子と関連する、データベース内に保存されるプロトコールを識別することができる。例えば、ただ1つのプロトコールが識別子と関連する場合、データベースは、外部デバイス上のプロトコールおよびソフトウェアを選択することが可能であり、次いで、プロトコールをシステムの通信アセンブリーに送信することが可能である。デバイスと特異的に関連するプロトコールを用いることができれば、本発明のデバイスの任意の構成要素を単一のシステムと共に用いることが可能となり、これにより、事実上任意の目的の解析対象を単一のシステムにより検出することができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、複数のプロトコールが単一の識別子と関連し得る。例えば、同じ患者からある解析対象を毎週1回、また、別の解析対象を毎週2回検出することが有益である場合、識別子が検出されると、外部デバイス上のソフトウェアにより、週の当日と関連する特定のプロトコールを選択し得るように、識別子と関連する外部デバイス上のプロトコールはまた、各々が週の異なる日付と関連することもある。
【0150】
いくつかの実施形態において、患者には、種々の解析対象を検出するのに用いる複数のデバイスを供給することができる。例えば、対象は、週の異なる日付において異なるデバイスを用いることができる。いくつかの実施形態において、識別子をプロトコールと関連させる外部デバイス上におけるソフトウェアは、例えば、現在の日付を臨床試験に基づいてデバイスが用いられる日付と比較する工程を含み得る。例えば、週のうちの2日が同じでない場合、外部デバイスにより、本明細書で説明されるかまたは当技術分野において公知の方法のいずれかを用いて対象に通知を無線送信し、システム内に不適正なデバイスがあること、また、その日に用いられる適正なデバイスについても対象に通知することができる。この例は、例示的であるに過ぎず、例えば、デバイスがある日付の適正な時間に用いられていないことを対象に通知することへも容易に拡張することができる。
【0151】
システムはまた、対象の医療状態を評価するネットワーク法も用いることも可能である。情報通信システムは、対象のデータを読み取るリーダーを含む場合もあり、含まない場合もある。例えば、ポイントオブケア式のマイクロ流体デバイスによりバイオマーカーデータが収集される場合、デバイス自体または別個のデバイスにより、個々の異なるバイオマーカーに割り当てられる値を読み取ることができる。リーダーの別の例は、電子式の治療記録または医師カルテ内に入力された対象データ内を走査するバーコードシステムである。リーダーのさらなる例は、通信ネットワークを介してそこから対象データを直接に得ることが可能な電子式の患者記録データベースからなる。この方法では、特定の薬剤の有効性をリアルタイムで示すことができ、これにより、治療の償還が正当化される。
【0152】
臨床試験を含む医学的治療に対するコンプライアンス違反は、治療または臨床試験の有効性を著明に低下させる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のシステムを用いて、患者のコンプライアンスをモニタリングし、患者または他の医療従事者にこのようなコンプライアンス違反を通知することができる。例えば、医学的治療計画の一部として医薬作用物質を服薬する患者は、本明細書で説明される通り、アッセイされる体液試料を採取し得るが、例えば、システムにより検出される代謝物濃度が公知のプロファイルと比較して高レベルである場合があり、これは、医薬作用物質の複数回分の用量が服用されたことを示す。患者または医療従事者には、PDAまたはセル電話などの携帯型デバイスによる通知を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の任意の方法または無線式の方法により、このようなコンプライアンス違反を通知することができる。このような公知のプロファイルは、本明細書で説明される外部デバイス上に配置または保存することができる。
【0153】
ある実施形態では、システムを用いて、治療が有益または有害である患者の部分集団を同定することができる。この方法では、この方法以外では服用を余儀なくされる多様な毒性を有する市販薬を、それが有益である患者だけに割り当てることによりその使用を抑制することができる。
【0154】
方法
本発明のデバイスおよび方法は、対象由来の体液に存在する解析対象のリアルタイム検出のための効果的な手段を提供する。この検出方法は、特定の生物学的プロセス、生理学的状態、障害、障害の段階または治療の段階と関連している解析対象の同定および定量を含む多種多様の状況で用いてもよい。または、このデバイスおよび方法は、例えば、薬物スクリーニング、疾患診断、系統発生的分類、親および法鑑定、疾患発症および再発、治療に対する個々の応答対人口基準、ならびに治療のモニタリングにおける広範囲の有用性を有する。また、このデバイスおよび方法は、治療薬の開発の前臨床段階および臨床段階の向上、患者のコンプライアンスの改善、処方薬と関連するADRのモニタリング、個々化医療、中央検査室から患者の居住地までの血液検査のアウトソーシングに特に有用である。このデバイスは、処方基準に応じて採用され、規制認可後の治療薬剤をモニタリングするために製薬会社によって利用され、または中央検査室から血液検査を外注する支払人のために利用され得る。
【0155】
したがって、ある実施形態において、本発明は、体液試料中の解析対象を検出する方法を提供し、この方法は、本発明のデバイスまたはシステムに血液試料を供給するステップと、デバイスの少なくとも1つのアッセイユニット内で試料を反応させるようにするステップと、血液試料中の解析対象から生じた検出可能なシグナルを検出するステップとを含む。
【0156】
図1は、少なくとも1つのアッセイユニットおよび少なくとも1つの試薬ユニットを含む、本発明のデバイスの例示的な実施形態を示す。アッセイユニット(例えば、図1における試料チップおよび較正チップとして設計される)は捕捉表面を含むことができ、試薬ユニットはコンジュゲート、洗浄液、および基質などのアイテムを含むことができる。また、図1に例示されるデバイスは、全血試料収集チップ、血漿試料収集チップ、血液インプットウェル、ビーズウェルまたは血漿分離ウェル、チップタッチオフまたは吸い取りパッド、希釈ウェル、希釈された血漿試料ウェルまたは血漿希釈ウェル、収集チップディスポーザル領域を含む。
【0157】
ある実施形態において、方法は、酵素免疫測定吸着法(ELISA)を実行するステップを含む。この段落に記載される例では、試料は、本明細書に記載されるデバイスの試料収集ユニットに提供される。次に、デバイスはシステム内に挿入され、ここで、システムは、挿入されるカートリッジまたはデバイスのタイプを検出する。次に、このシステムは、システムがカートリッジの所望のアッセイ(単数または複数)を実行できるようにする一連の指示またはプロトコールを受け入れるように外部デバイスと通信することが可能である。プロトコールは、システムの流体移送デバイスのプログラム可能なプロセッサーに転送され得る。例としては、流体移送デバイスは、カートリッジの試料チップに係合し、試料収集ユニットから特定量の試料を取り出し、赤血球を除去する前処理ユニットに試料を移動する。次に、試料の血漿は、プロトコールに従って、流体移送デバイスによって血漿チップまたは任意のアッセイチップに吸引され得る。次に、血漿を含むチップは、アッセイを実行させるのに必要であるため、試料を希釈する希釈剤を取り出すことができる。多くの異なる希釈は、試料の連続希釈を用いることによって行うことができる。例えば、各アッセイチップまたはアッセイユニットは、異なる希釈の試料を含むことができる。流体移送デバイスによってアッセイユニットに試料を吸引した後、次に、アッセイユニットは、試料と共にインキュベートされ、存在する任意の解析対象を捕捉表面に結合させることを可能にする。この例に記載されるインキュベーションは、システムもしくは室温で任意の時間、例えば10分間であり得て、または本明細書に記載されるシステムの加熱デバイス中であり得る。アッセイユニットは、そのアッセイのための捕捉表面を有する各個々のアッセイユニットにおいて実行されるアッセイに対応する試薬を用いてアドレスされる試薬ユニットに係合してもよい。この例では、第1試薬はELISAの検出溶液であり、例えば、捕捉表面とは異なる、標識された抗タンパク質抗体などの検出抗体を含む。次に、検出溶液をアッセイユニットから吸引除去し、その後、洗浄溶液が任意の過剰な検出溶液を除くためにアッセイユニットに吸引され得る。複数の洗浄段階を用いてもよい。添加される最終試薬は、結合した検出溶液がケミルミネッセンスを起こすようにした酵素基質である。次に、酵素基質は、アッセイユニットから除去され、アッセイの結果がシステムの検出器によって読まれる。記載される各段階で、インキュベーションは本明細書に記載さるように必要に応じて行うことができる。この例では、カートリッジをシステムに設置した後の全プロセスは自動化され、プロトコールまたはプログラム可能なシステムへの一連の指示によって行われる。
【0158】
1つの例示的な方法は、血液インプットウェルへの血液試料の輸送を開始する。次に、試料は、収集チップによって取り出され、血漿分離ウェルに挿入することができる。あるいは、血液は、血液分離装置を含むウェルに直接置くことができる。例えば、血漿分離は、本明細書に記載される種々の方法によって行うことができる。この例では、血漿分離は、血漿でない血液成分を除去するための磁化可能ビーズおよび抗体を用いて進める。次に、血漿は、全血収集チップを用いて試料を汚染しないようにする血漿収集チップによって行うことができる。この例では、血漿収集チップは、所定量の希釈剤を取り出し、血漿試料を希釈することができる。次に、希釈された血漿試料は、捕捉表面に結合するためのアッセイユニット(試料チップ)に分配される。アッセイユニットは、捕捉反応を行うことができるようにインキュベートされ得る。次に、アッセイユニットを用いてコンジュゲートを収集し、アッセイユニット中で反応物と結合させることができる。コンジュゲートは、光学検出器などの検出器によって、目的の解析対象の検出を可能にする実体を含むことができる。一度、コンジュゲートがアッセイユニットに添加されると、反応はインキュベートされ得る。図1の例示的なデバイスを用いた例示的な方法では、次に、コンジュゲート用の洗浄液を含む試薬ユニットは、任意の解析対象検出を妨げ得る任意の過剰なコンジュゲートを除去するためのアッセイユニット(試料チップ)によってアクセスされる。過剰なコンジュゲートを洗浄除去後、検出のためにアッセイユニットに基質を添加することができる。さらに、図1の例およびこの方法では、試料の収集および分配を除いて、較正チップアッセイユニットを用いて、この段落に記載される全ての方法を行うことができる。較正チップアッセイユニットを用いた検出および測定は、試料由来の解析対象の検出および測定を較正するために用いることができる。この例において使用されるものと類似した他のプロセスおよび方法は、以下に記載される。
【0159】
目的の解析対象を含むことが疑われる任意の体液は、本発明のシステムまたはデバイスと連結して用いることができる。例えば、図1の例におけるインプットウェルまたは試料収集ユニットは、限定されないが、血液、血清、唾液、尿、胃液および消化液、涙、排泄物、精液、膣液、組織試料から抽出された腫瘍組織液由来の間質液、ならびに脳脊髄液を含む、通常使用される任意のタイプの体液を収集または含むことができる。ある実施形態において、体液は血液であり、手掌での採血によって得ることができる。ある実施形態において、体液試料は血液血漿試料である。
【0160】
体液は患者から採取され、限定されないが、ランシング(lancing)、注射、またはピペッティングを含む様々な方法で装置に分配されてもよい。ある実施形態において、ランセット(lancet)は皮膚を刺し、例えば、重力、毛管現象、吸引、または真空力を用いてデバイスに試料を輸送する。ランセットは、デバイス、またはリーダー組立部の一部、または独立した構成要素を搭載してもよい。必要に応じて、ランセットは、種々の機械的、電気的、電気機械的、もしくは任意の他の公知の活性化メカニズムまたはこのような方法の任意の組合せによって作動されてもよい。活性メカニズムを必要としてない別の実施形態では、患者は、例えば、唾液試料を用いて行うことができるように、体液をデバイスに簡単に提供することができる。収集された流体は、デバイスの収集ウェルまたはユニットに設置することができる。いくつかの実施形態では、デバイス内にはユーザーによって活性化されたランセット、および試料収集キャピラリーがある。
【0161】
本明細書に記載される方法またはデバイスと共に使用される体液の容量は、一般に、約500マイクロリットル未満であり、さらには、約1〜100マイクロリットルであってもよい。所望により、1〜50マイクロリットル、1〜40マイクロリットル、1〜30マイクロリットル、1〜10マイクロリットルまたはなお1〜3マイクロリットルの試料は、対象流体デバイスを用いて解析対象を検出するために用いることができる。ある実施形態において試料は20マイクロリットルである。
【0162】
ある実施形態において、デバイス、システム、または方法を利用して解析対象を検出するために使用される体液の容量は1滴の流体である。例えば、注射された指からの1滴の血液は、本発明のデバイス、システム、または方法を用いて分析される体液の試料を提供することができる。
【0163】
いくつかの実施形態では、体液は、さらに処理せずに体液に存在する解析対象を検出するために直接使用される。しかしながら、所望により、体液は、デバイスを用いて分析を行う前に前処理されてもよい。前処理の選択は、使用される体液のタイプ、および/または調査中の解析対象の性質に依存することになる。例えば、解析対象が体液の試料中に低レベルで存在する場合、試料は、解析対象を濃縮するための任意の従来の手段を介して濃縮されてもよい。解析対象を濃縮する方法は、限定されないが、乾燥、蒸発、遠心分離、堆積、沈殿、および増幅を含む。解析対象が核酸である場合、種々の溶菌酵素もしくは化学溶液を用いて、または製造業者によって提供される添付の取扱説明書に従って核酸結合樹脂を用いて抽出可能である。解析対象が細胞上または細胞内に存在する分子である場合、抽出は、限定されないが、EDTAまたはヘパリンなどの抗凝固剤、SDSなどの変性界面活性剤またはThesit、デオキシレートナトリウム(sodium deoxylate)、トリトンX−100、およびツイーン−20などの非変性界面活性剤を含む溶解剤を用いて行うことができる。
【0164】
ある実施形態において、対象は、シリンジを用いて体液の試料を収集する。試料は、毛細管を介してシリンジに入れることができる。血液試料中の解析対象を測定するある実施形態において、対象は、手掌での採血を行うことができ、血液にガラスキャピラリーの外端を接触させ、その結果、毛管現象によって血液が引かれ、ある容量でキャピラリーを満たす。場合によって、使用容量が公知である。いくつかの実施形態では、試料容量は、約5〜20マイクロリットルの範囲、または本明細書に記載される他の容量範囲である。
【0165】
別の実施形態では、方法またはシステムは、血液試料由来の赤血球を実施的に含まない血漿試料を得るために提供される。アッセイを行う場合、解析対象は、多くの場合、血液血漿に含まれ、赤血球は反応を妨げる可能性がある。
【0166】
多くの場合、血液試料を測定する場合、目的の解析対象は血清または血漿中にある。臨床目的では、複数の血液検査の最終的に報告される濃度は、多くの場合、希釈された試料中の血液血清または血液血漿の濃度と関連があることが必要である。多くの場合、血液血清または血液血漿は、検査室において選択される試験媒体である。2つの操作は、アッセイ、希釈および赤血球除去の前に必要であり得る。血液試料は、赤血球によって占有された試料容量の比率において非常に変化する(ヘマトクリット値は約20〜60%で変化する)。さらに、専門家でない人によってアッセイシステムが操作されるポイントオブケアの環境では、得られた試料の容量は、意図されたものでない場合がある。容量変化が認められない場合、報告された解析対象濃度においてエラーを導く可能性がある。
【0167】
関連はするが、別々の実施形態では、本発明は、血液試料から血漿を取り出す方法を提供し、試料収集ユニット内における磁化可能粒子の存在下で血液試料を混合するステップであって、磁化可能粒子が血液試料の非血漿部分に結合する抗体捕捉表面を含むステップと、血漿収集領域の上方から混合された血液試料へと磁場を適用し、血漿収集領域の上部で血液試料の非血漿部分を懸濁させ、それにより血液試料から血漿を取り出すステップとを含む。
【0168】
血液試料を処理するために、本発明のデバイスまたはシステムは、赤血球に結合し、血漿から赤血球の磁性除去を可能にする磁性試薬または物体を含んでもよい。試薬は、凍結乾燥形態で提供されることができるが、液体分散剤として存在してもよい。磁化可能粒子(例えば、大きさにして約1マイクロメートル)で構成される試薬は、赤血球抗原またはあるアダプター分子に対する抗体を用いてコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、試薬はまた、標識されていないか、またはアダプター部分(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはフルオレセイン)で標識されてもよい、赤血球表面抗原に対する未結合抗体を含む。血液試料を分析するある実施形態において、希釈された試料中の赤血球は、液相抗体によって援助された磁化可能粒子と共に共同凝集する。あるいは、赤血球表面の糖質を認識するレクチンは共同凝集試薬として用いることができる。ある場合には、赤血球凝集剤の組合せが使用される。あるいは、本発明のデバイスは、試料からの赤血球の分離を援助するために、ガラスファイバーのパッドなどの血液フィルターを含むことができる。
【0169】
血液を磁性試薬と混合した場合、共同凝集が起こり得て、全部ではないが、多くの赤血球は磁化可能粒子と混合された凝集体を形成する。試薬解離および混合プロセスは、本発明のチップもしくは収集チップまたはピペット様のチップを用いた繰り返しの吸引によって行われる。磁化可能な塊が形成された後、血漿がチップから抜けることができるので、所定の位置で塊を保持するための磁石の使用により、血液血漿から塊を分離することができる。ある実施形態において、血漿は垂直方法で重力によりチップから抜け出し、磁石は所定で保持される。別の実施形態では、血漿は真空または圧力の手段によりチップから抜け出し、塊はチップ内に保持される。血漿は、本発明のウェル、別の収集チップ、またはアッセイユニットに配置され得る。
【0170】
発明の血漿分離方法の例は、図9Aから9Eに示される。図9Aでは、全血試料901は、例えば約20マイクロリットルの量で、本明細書に記載される試料チップ910に吸引された。次に、全血試料901は、例示的なデバイスの分離ウェル920(例えば、磁性ビーズまたは粒子を含むウェル)に配置される。図9Bは、分離ウェル中の全血試料902において磁性試薬(例えば、磁性ビーズ粒子および遊離結合分子)を懸濁させ、混合する方法を示す。図9Cは、チップ910からの喪失を防ぐために使用することができる10マイクロリットルの空気スラグ930を示す。混合された全血試料および磁性試薬902は、数秒(例えば、60〜180秒)間インキュベートされ、凝集反応が起こるようにする。
【0171】
図9Dは、全血細胞および磁性試薬混合物902への磁場940の適用を示す。磁場940は、当技術分野において公知のシステムまたは任意の磁性手段と共に組み込まれる磁性カラー942によって適用することができる。磁場940は、磁性試薬に付着した任意の粒子を引き寄せる。したがって、磁性試薬と付着しない血漿903は、全血試料の非血漿部分から分離することができる。
【0172】
図9Eは、本明細書に記載される磁性試薬によって分離される血液血漿試料903を、本明細書に記載されるデバイスのウェルまたはユニット950に分配する方法を示す。また、血液血漿試料903は、収集チップまたはアッセイユニット、ならびに当業者に明らかである任意の多種のアッセイデバイスに分配することができる。図9Eでは、磁場940は、血液血漿試料903を分配するチップ910を用いて移動することを示す。この例では、5〜8マイクロリットルの血漿は、20マイクロリットルの全血試料から取り出されている。1〜99%の全血試料は、本発明の方法を用いて分離された血漿であり得る。ある実施形態において、25〜60%の全血試料の容量は、分離され得る血漿である。
【0173】
記載される方法の他の例示的な段階が完了し得る。全血試料を別のウェルまたはユニットに移動させるために、キャピラリー血漿収集チップ(本発明のロボットシステムまたは任意の他のシステムによって操作可能である)は、キャピラリーおよび吸引力によって全血試料を収集する。別のステップは、希釈剤に血漿試料を分配するステップを含むことができ、次に、試料を希釈剤によって希釈することができる。次に、希釈された血液血漿試料は、所定の容量で収集チップによって収集することができる。次に、希釈された血液血漿試料を混合し、本発明のデバイスの1または複数のアッセイユニットに分配するために、デバイスのウェルまたはユニットに分配可能である。また、試料は、当業者に明らかなように、マイクロリットルプレートなどの任意の他のタイプのデバイスに分配することができる。
【0174】
図9Aから9Eに示された例示のプロセスは、本明細書に開示されているデバイスおよびシステム以外の他のデバイスおよびシステムと共に使用することができる。例えば、流体移送チップは凝集した塊を含むことができ、血漿はマイクロリットルプレートに配置され得た。当業者に明らかとなる他のデバイスおよびシステムは、本明細書に開示される例示の血液血漿分離を実行するために利用することができた。
【0175】
また、体液の試料は、様々な他の方法、例えば希釈することができる試料収集デバイスを用いて希釈することができる。試料収集デバイスのハウジングは管を含むことができる。この管では、2つの移動可能なシールは、ある量の希釈剤を含むことができる。好ましい実施形態では、希釈剤の容量は、例えば、約50マイクロリットル〜1ミリリットルの範囲、好ましくは約100マイクロリットル〜500マイクロリットルの範囲で予め決定される。
【0176】
ある態様において、体液試料中の複数の解析対象の自動検出法が提供され、体液試料を収容するように構成される試料収集ユニット、検出される前記複数の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルをもたらす化学反応を実行するように個々のアッセイユニットが構成されるアッセイユニットのアレイ、および個々の試薬ユニットが試薬を収容する試薬ユニットのアレイを含む流体デバイスに体液試料を供給するステップを含む。また、この方法は、流体移送デバイスを用いて個々のアッセイユニットを係合するステップを含むことができる。この方法を連続させることで、体液試料は、流体移送デバイスを用いて、試料収集ユニットから個々のアッセイユニットへと移送することができ、試薬個々の試薬ユニットからは個々のアッセイユニットへと移送することができ、それにより、試薬と体液試料を反応させて、検出される複数の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルをもたらす。いくつかの実施形態では、流体移送デバイスは、複数のヘッドを含み、個々のアッセイユニットに係合するように個々のヘッドが構成され、前記流体移送デバイスは、試料収集ユニットからの体液試料、および個々の試薬ユニットからの試薬の、個々のアッセイユニットへの流体移送を方向づけるように構成されるプログラム可能なプロセッサーを含む。
【0177】
場合によって、取扱説明書は、例えば、ユーザー、対象、または製造業者によって、プログラム可能なプロセッサーに提供される。取扱説明書は、パーソナル電子デバイスまたはサーバーなどの外部デバイスから提供可能である。取扱説明書は、個々のアッセイユニットに体液試料を移送するステップを方向づけることができる。例えば、体液試料を移送するステップは、個々のアッセイにおける体液試料の希釈の程度に影響を及ぼして、検出される複数の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルを検出可能な範囲内に収めることができる。いくつかの例では、体液試料の希釈の程度は、本明細書に記載される検出可能な範囲内で少なくとも2つの個々の解析対象を示すシグナルをもたらす。
【0178】
パターン認識技術を用いて、本明細書に記載される方法による解析対象または複数の解析対象の検出がある種の範囲内または範囲外であるかどうかを決定することができる。例えば、報告可能な範囲外の検出可能なシグナルを拒否することができる。ある特定の範囲は、流体デバイス、試薬およびアッセイユニットの較正中に達成され得る。例えば、範囲は、デバイスがジャストインタイム方式で組み立てられている場合に達成される。
【0179】
場合によって、低希釈因子または希釈の程度を用いて検出される解析対象の検出可能なシグナルが高希釈因子によるシグナルを超える場合に、低希釈結果は無効として拒否され得る。大部分の例では、異なる希釈の程度を有する試料からのシグナルに由来する試料における解析対象の濃度は、希釈の程度が高くなるにつれて低くなる。これが起こる場合に、アッセイ結果を検証することができる。本明細書におけるシステム、デバイス、および方法は、品質管理基準の柔軟性、例えば、多くのPOCデバイスは提供することができないと記載されている柔軟性を提供する。システム、デバイス、および方法は、実験室設定に予想されるように、多くの品質管理特性を提供する。
【0180】
ある実施形態において、試料は、高感度および低感度アッセイの両方について満足する比率で希釈される。例えば、試料と希釈剤の希釈率は、約1:10,000〜1:1の範囲であってもよい。デバイスは、別々の位置または範囲に試料を希釈することができる。また、デバイスは、試料を連続希釈に供されるようにすることができる。さらなる例では、デバイスまたはシステム内での連続希釈は、最大10,000,000,000:1にシステムを希釈することができる。
【0181】
実施形態では、検出のための解析対象を含む試料は、吸引、シリンジ、またはピペットタイプの作用により第1の位置から第2の位置に移動させることができる。試料は、毛管現象または気圧の減少によって反応チップに採取することができる。いくつかの実施形態では、試料は、多くの位置、例えば、本発明のデバイスのアッセイユニットのアレイ、および本発明のデバイスのハウジング内の異なるウェルに移動される。試料を移動させるプロセスは、本明細書に記載される本発明のシステムによって自動化することができる。
【0182】
また、試料を含むアッセイユニットおよび/または収集チップは、第1の位置から第2の位置に移動させることができる。アッセイユニットまたは収集チップを移動させるプロセスは、自動化され、ユーザー定義のプロトコールによって実行することができる。
【0183】
ある実施形態において、アッセイユニットは、本発明の試薬ユニットから試薬を収集するために移動される。多くの実施形態では、アッセイユニットの移動は自動化される。吸引、シリンジ、またはピペットタイプの作用を用いて、試薬ユニットからアッセイユニットに試薬を収集することができる。
【0184】
一度、試料が捕捉表面を含むアッセイユニットに添加されると、全ユニットは、試料とアッセイユニットの捕捉表面との反応を可能にする時間、インキュベートされ得る。反応をインキュベートするのに必要とされる時間量は、多くの場合、実行するアッセイのタイプに依存する。このプロセスは、本発明のシステムによって自動化可能である。ある実施形態において、インキュベーション時間は30秒〜60分である。別の実施形態では、インキュベーション時間は10分である。
【0185】
また、アッセイユニットは、高温でインキュベートすることができる。ある実施形態において、アッセイユニットは、約20℃〜70℃の範囲の温度でインキュベートされる。アッセイユニットは、アッセイユニットおよび/またはアッセイユニットの内容物の温度を上昇させるために加熱ブロックに挿入することができる。
【0186】
本発明の方法のある実施形態において、コンジュゲートは、試料がユニットに添加された後、アッセイユニットに添加される。コンジュゲートは、アッセイユニット中の捕捉表面によって捕捉された解析対象を標識するための分子を含むことができる。コンジュゲートおよび捕捉表面の実施例は後述される。コンジュゲートは、試薬ユニット内に含まれる試薬であってもよい。コンジュゲートは、吸引、シリンジ、またはピペットタイプの作用によってアッセイユニットに分配され得る。一度、コンジュゲートがアッセイユニットに分配されると、アッセイユニットは、コンジュゲートがアッセイユニット内の解析対象と反応できるようにインキュベートされ得る。インキュベーション時間は、アッセイのタイプまたは検出される解析対象によって決定することができる。インキュベーション温度は、反応に適した任意の温度であってもよい。
【0187】
ある態様において、体液試料中の解析対象の自動検出用のデバイスを較正する方法が提供される。デバイスは、解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルをもたらす化学反応を実行するように構成されるアドレス可能なアッセイユニットのアレイ、およびアドレス可能な試薬ユニットのアレイを含むことができ、各々は、前記デバイス内の1以上のアドレス可能なアッセイユニットに対応するようにアドレスされ、その結果、個々の試薬ユニットは、アレイがデバイスに組み込まれる前に対応するアッセイユニット(単数または複数)を基準にして較正される。アッセイユニットおよび試薬ユニットがデバイスに組み込まれる前に、それらを較正することによってデバイスは較正される。次に、デバイスは、較正された構成要素を用いて組み立てられ、デバイスを作製し、方法およびシステムはデバイス、モジュール式構成要素を利用する。
【0188】
アッセイユニットおよび試薬ユニットが本発明のデバイスに組み込まれる前に、較正は、コンジュゲートなどのアッセイ試薬の実行を測定することによって予め確認することができる。較正情報およびアルゴリズムは、アッセイシステムに無線でリンクされたサーバーに格納することができる。較正は、別々の位置での反復システムにおいて実行されたアッセイによって、またはアッセイシステムが使用された場合に得られる情報を用いることによって、前もって、または遡及的に実行することができる。
【0189】
ある態様において、対照材料をデバイスまたはシステムにおいて使用し、体液試料の希釈の程度を測定または検証することができる。例えば、ELISAなどの固相系アッセイの別の成果は、アッセイがその機能を破壊せずに品質管理することが困難である固相試薬を用いることである。本明細書のシステムおよび方法は、自動化された混合および/または希釈を含むディスポーザルデバイスを用いたPOCシステムにおいて達成されて希釈を決定する方法を提供する。
【0190】
ある実施形態において、方法は、例えば、結果を報告する前にデータを分析するためにリアルタイムでサーバーを使用することによって、遡及的解析を提供する。例えば、アッセイを実行することができ、対照アッセイをそのアッセイと並行して実行することができる。対照アッセイは、試料の予想される希釈の測定を提供する。いくつかの例では、対照アッセイは、試料の希釈を検証することができ、したがって、システム内で実行されるアッセイまたは複数のアッセイのための試料の希釈は正確であると考えることができる。
【0191】
液体試料の容量を測定する方法は、液体試料中の公知の量の対照解析対象を試薬と反応させて、対照解析対象を示す検出可能なシグナルをもたらすステップと、前記検出可能なシグナルの強度と、前記検出可能なシグナルの予想された強度を比較するステップとを含み、ここで、前記シグナルの予想された強度は、液体試料の予想された容量を示し、前記比較は、測定される前記液体試料の前記容量の測定値を与える。多くの例では、対照解析対象は、検出可能な量で前記液体試料に存在しない。
【0192】
ある実施形態において、方法は、試料の容量の測定が液体試料の予想された容量の約50%内である場合、前記液体試料の容量をさらに検証するステップを含む。
【0193】
例えば、本明細書に記載されるデバイスまたはシステムを利用した方法は、標的解析対象を含む体液試料を、標的解析対象を示す検出可能なシグナルをもたらす試薬を反応させるステップと、標的解析対象を示す前記検出可能なシグナルの強度と、前記液体試料の前記容量の測定値を用いて体液試料中の標的解析対象の量を測定するステップとをさらに含むことができる。液体試料および体液試料は同じ試料であってもよい。いくつかの実施形態では、対照解析対象は、体液試料中の標的解析対象と反応せず、したがって、標的解析対象の検出と相互しないことが提供される。
【0194】
場合によって、液体試料および体液試料は異なる液体試料である。例えば、水、および血液試料などの対照液体である。または別の例では、唾液試料および血液試料である。
【0195】
対照解析対象は、限定されずに、フルオレセイン標識されたアルブミン、フルオレセイン標識されたIgG、抗フルオレセイン、抗ジゴキシゲニン、ジゴキシゲニン標識されたアルブミン、ジゴキシゲニン標識されたIgG、ビオチン化タンパク質、非ヒトIgGであってもよい。他の例示的な対照解析対象は、当業者も明らかであり得る。ある実施形態において、対照解析対象は、ヒト体液試料には生じない。
【0196】
試料内の複数の解析対象を検出するように構成される本明細書に記載されるPOCシステムにおいて、システムは液体を希釈および混合するためのキャピラリーを有することができる。多くの例では、自動化システムまたはユーザーは、対照アッセイを用いて、実際に達成された希釈を測定し、その希釈をシステム較正に入れることができる。例えば、対照解析対象は、目的の試料に見出すことができず、試薬ユニットに乾燥させることができる。乾燥された対照解析対象の量を知ることができ、試薬ユニットにある試料と混合することができる。解析対象の濃度は、試料の容量、および試料に対して実行された任意の希釈を示すために測定可能である。
【0197】
イムノアッセイのための目的の解析対象の例には、限定されないが、フルオレセイン標識されたタンパク質、ビオチン化タンパク質、フルオレセイン標識された、Axlexa(商標)標識された、Rhodamine標識された、Texas Red標識された免疫グロブリンが含まれる。例えば、標識は、タンパク質の1分子当たり、連結された少なくとも2つのハプテンを有することによって達成され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質の1分子当たり1〜20個のハプテンが連結される。さらなる実施形態では、タンパク質の1分子当たり4〜10個のハプテンが連結される。多くのタンパク質は、ハプテンが結合され得る、多数の遊離アミノ基を有する。多くの例では、ハプテン修飾されたタンパク質は安定であり、可溶性である。また、フルオレセインおよびTexas Redなどのハプテンは、十分に大きく、堅いため、高親和性を有する抗体を作製することができる(例えば、ハプテンは抗体結合部位を満たすのに十分大きい)。いくつかの実施形態では、ハプテンは、フルオレセインイソチオシアネート、およびフルオレセインカルボン酸NHSエステルなどの試薬を用いてタンパク質に結合させ、アッセイシステムによって認識される部分がハプテンである対照解析対象を作製することができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、方法は、乾燥された対照解析対象を利用する。いくつかの例では、乾燥された対照解析対象は試料の希釈を避け、対照解析対象をより安定にさせることができる。乾燥された対照解析対象は、液体試料にさらされた場合に迅速および/または完全に溶解するように調合することができる。いくつかの実施形態では、対照解析対象は、高親和性を有する抗体に対する解析対象であってもよい。いくつかの例では、対照解析対象は、任意の内因性試料成分と交差反応しない解析対象であってもよい。さらに、例えば、解析対象は作製するには安価でありおよび/または容易であり得る。いくつかの実施形態では、対照解析対象は、本明細書に記載されるデバイスまたはシステムの寿命を超えて安定である。共有結合的に連結されたハプテンを用いて解析対象を作製するために使用される例示的な担体には、タンパク質、例えば、限定されないが、アルブミン、IgG、およびカゼインが含まれる。共有結合的に連結されたハプテンを用いて新規な解析対象を作製するために使用される例示的なポリマー担体には、限定されないが、デキストラン、ポリ−ビニルピロリドンが挙げられる。対照解析対象を調合し、安定化させるために使用される例示的な賦形剤には、限定されないが、スクロース、塩、および緩衝液(リン酸ナトリウムおよびトリス塩化物など)が挙げられる。
【0199】
本明細書に記載される対照解析対象および方法は、本明細書に記載される例を含む様々な方法で使用することができる。例えば、方法は、試料の容量を測定することができる。いくつかの実施形態では、方法は、希釈または希釈因子または試料の希釈の程度を測定する。場合によって、方法は、試料中の対照解析対象の濃度を提供する。複数の解析対象を検出するための、本明細書に記載されるシステムまたはデバイスでは、対照解析対象を用いた、本明細書の方法からの測定を用いて、標的解析対象の測定値を検証するかまたは記載することができる。例えば、複数のヘッドを有する流体移送デバイスを用いて、対照ユニットを含む複数のアッセイユニットに液体を分配してもよい。場合によって、複数のユニットに分配された液体量は個々のユニット間で同一であるかまたは類似していることが想定されてもよい。いくつかの実施形態では、対照解析対象を用いた本明細書に記載される方法を用いて、正しい容量の試料を収集するかまたはデバイスもしくはシステム内で利用することを検証することができる。別の実施形態では、方法は、正しい容量の希釈剤が試料に提供されることを検証する。また、希釈因子または希釈の程度はまた検証され得る。なお別の実施形態では、対照解析対象を用いた方法は、正しい容量の希釈された試料が複数のユニットに分配されたことを検証する。
【0200】
図10は、公知の量の対照解析対象を含む、本明細書に記載される対照アッセイの例示的な方法を示す。カートリッジに組み込まれる前のユニット1010は、公知の量の対照解析対象1002を含む、溶液1001で満たすことができる。溶液の液体が除去され、ユニット1010を乾燥させて、ユニット1010に対照解析対象1002を残すことができる。次に、ユニット1010はデバイスに挿入され、使用のために輸送することができる。ユニット1010が使用され、試料または希釈剤1003を受け入れる場合、試料1003は、予想される容量で輸送され、ユニット1010内で乾燥された対照解析対象1002と混合され、予想された濃度を有する対照溶液1004を作製することができる。対照溶液1004は場合により希釈され得る。ある実施形態において、対照解析対象1002は、デバイス中の標的解析対象として同じ方法によって検出することができる。対照溶液1004の対照解析対象濃度が測定される。濃度の測定は、対照溶液1004を作製するために添加された試料1003の容量を計算するために使用することができる。したがって、ユーザーは、試料1003の測定された容量と、試料1003の予想された容量を比較することができる。
【0201】
一例では、赤血球は血液試料から除去され得る。しかしながら、いくらかの赤血球が残り、または赤血球が血液試料から除去されない場合、対照解析対象を含む方法を用いて、血液試料中の赤血球からの影響について補正することができる。ヘマトクリット値は有意に変化し得るため(例えば、試料の全容量の20〜60%)、固定されたまたは予想される血液の容量(v)における解析対象の量は、ヘマトクリット値の関数となり得る(ここではHは小数として表す)。例えば、血漿中の濃度Cを有する解析対象の量はC(1−H)である。したがって、ヘマトクリット値が0.3である試料の量は、ヘマトクリット値が0.5である試料の量の1.4倍である。例示的な実施形態では、希釈されていない血液は、記載されるようにデバイスに分配することができ、赤血球を除去することができる。次に、血漿画分における対照解析対象濃度は、試料血漿の容量を推定し、ヘマトクリット値を決定するために測定され得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、未結合のコンジュゲートは、不正確な検出を生じることから未結合のコンジュゲートを妨げる反応部位から洗い出されることが必要であり得る。多くのイムノアッセイの律速段階は洗浄段階である。最小の繰り越しおよび高感度の妥協は、未結合のコンジュゲートの洗浄除去に依存している。洗浄段階は、(例えば、自動手段によって)ウェルからの洗浄液の除去が困難であるため、マイクロタイタープレートフォーマットにおいて非常に制限され得る。本発明のアッセイユニットデバイスおよびシステムは、液体を操作する方法において多くの利点を有する可能性がある。利点は、アッセイのシグナル対ノイズ比における改善となり得る。
【0203】
コンジュゲートの除去は、例えば、過剰の洗浄液がない場合、コンジュゲートがデバイスのアッセイユニットの端に詰まる場合には困難であり得る。
【0204】
コンジュゲートの洗浄は、上部から洗浄溶液を押し込むか、または洗浄液を引き上げ、試料の充填に類似した液体を追い出すことによって生じさせることができる。洗浄は、必要であれば何回でも繰り返すことができる。
【0205】
アッセイに洗浄緩衝液を用いる場合、デバイスは試薬ユニットに洗浄緩衝液を貯蔵することができ、アッセイユニットは、洗浄との液体連絡をもたすことができる。ある実施形態において、洗浄試薬は、洗浄によって約99,99.9、または99.999%までアッセイユニットから未結合の試薬を除去することができる。一般に、望ましくないバックグラウンドシグナルの高程度の減少をもたらす高い洗浄効率が好ましい。洗浄効率は、典型的には、所与のアッセイからのシグナルと、洗浄段階のないアッセイによって生じたシグナルの全体量の比率によって定義され、日常的な実験によって容易に決定することができる。一般に、洗浄溶液の容量とインキュベーション時間を増加させることは好ましいが、所与のアッセイからのシグナルを犠牲にすることはない。いくつかの実施形態では、洗浄は、約50μl〜約5000μlの洗浄緩衝液、好ましくは約50μl〜約500μlの洗浄緩衝液を用いて、約10〜300秒間、行われる。
【0206】
さらに、洗浄溶液が使用されない期間まで分離される少量の洗浄溶液の数サイクルを使用することは有利であり得る。この順序は拡散洗浄について可能であり、その場合、標識された抗体は、緩く結合された端または表面などのアッセイユニットの保護された部分からバルクの洗浄溶液に長時間分散し、次に、その洗浄溶液が反応部位から移動する場合に除去され得る。
【0207】
多くの実施形態では、最後の段階は、酵素基質を分配し、光学的または電気的手段によってコンジュゲートを検出することである。基質の例を以下に記載する。
【0208】
例えば、本明細書のデバイスの個々の試料ユニットにおける試薬は、イムノアッセイのための酵素基質であり得る。別の実施形態では、個々の試料ユニットから基質試薬を輸送するステップは、捕捉部位での反応後に繰り返すことができる。例えば、酵素基質は、反応部位に輸送され、インキュベートされる。生成したアッセイシグナルを測定後、使用された基質は除去され、新鮮な基質で置換し、アッセイシグナルを再測定することができる。個々の解析対象を示すシグナルは、本明細書に記載されるシステムを用いて、基質の第1適用および第2適用から検出することができる。第2基質は、通常、元の基質と同じである。ある実施形態において、第2基質は、本明細書のデバイスの第2の試薬ユニットから反応部位に輸送される。別の実施形態では、第2基質は、元の基質と同じ試薬ユニットから反応部位に輸送される。第2基質を輸送させることにより、第2の反応を引き起こし、個々の解析対象を示す第2のシグナルを生じさせる。元のシグナルの強度、および第2のシグナルの第2の強度を比較して、個々の解析対象を示すシグナルの最終強度、およびアッセイが適切に行われたかどうかを計算する。
【0209】
ある実施形態において、複数のシグナルの強度は、アッセイの品質管理のために使用することができる。例えば、シグナルが20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%以上異なる場合、アッセイの結果を無視してもよい。
【0210】
ある実施形態において、本明細書に記載される方法は、再充填する試料、およびまたは検出物−コンジュゲート(酵素標識された抗体)、およびまたは酵素基質および試料を含み、アッセイシグナルを修正もしくは確認し、または内部対照として使用する。例えば、記載されるアッセイチップまたはユニットの再使用は、機能を検証し、かつ/もしくはさらなる試料を添加するために提供され、または対照材料は第2のシグナルを得る。
【0211】
場合によって、酵素ユニットに基質を再充填する方法は、アッセイユニットに液体試料および試薬を自動的に移送する、本明細書に記載されるシステムの能力によって可能とされる。いくつかのアッセイは、即座にまたはスケジュール通りに結果を輸送するためのシステムを必要とせず、したがって、記載される対照方法は、結果の信頼性をおそらく高める機会を提供する。酵素基質の添加の反復後に観察される応答を用いて、初期応答を検証し、またはスパイク回復を計算することができる。
【0212】
実験は、アッセイユニットに第2の酵素基質を添加することによって、結果の再現性を維持することができることを示す。いくつかの実施形態では、対照方法は、予想されるよりも有意に低い応答を与えるアッセイユニットを用いた反復分析を提供する。
【0213】
本明細書に記載される任意の対照方法を用いると、対照方法の実行について説明または要求され得る多数の可能なエラーがある。例示的なアッセイエラーには、限定されないが、アッセイユニットまたはデバイスの不適切な製造、システムおよび/または1以上の試薬の不適切な吸引、検出中の光電子増倍管と比べて適切に配置されていないアッセイユニット、ならびにデバイスまたはシステムにおける欠点のあるアッセイユニットが挙げられる。
【0214】
いくつかの実施形態では、本発明は、主体の流体デバイスまたはシステムを用いる試験動物からの医薬品の有効性および/または毒性の評価に有用である薬理学的なデータを得る方法を提供する。
【0215】
医薬品の前臨床試験において実験動物を使用する場合、多くの場合、対照とする解析対象を検出するためのアッセイを実行するのに十分な血液を抽出するために、試験対照を殺生することは必要である。これは、財政的および倫理的影響の両方を有し、同様に、動物が殺生される必要がないように試験動物からのある量の血液を採取することができることは有利であり得る。さらに、これはまた、同じ試験動物が、いくつかの異なる時間点で試験されるのを可能にし、したがって、単一の動物に対する薬剤の効果をより効果的に評価することができるようになる。平均して、マウスの血液の全量は、例えば、体重100グラム当たり6〜8mLの血液である。本発明の利点は、ほんのごく少量の血液がマウスまたは他の小さい実験動物に前臨床試験を行うのに必要とされることである。いくつかの実施形態では、約1マイクロリットル〜約50マイクロリットルが採取される。ある実施形態において、約1マイクロリットル〜10マイクロリットルが採取される。好ましい実施形態では、約5マイクロリットルの血液が採取される。
【0216】
試験動物の生存を維持するというさらなる利点は、臨床前の時間経過試験において明らかである。例えば、複数のマウスを用いて、試験対象の体液における解析対象のレベルを長期間モニタリングする場合、複数の対象を用いるという付加された変数が試験に導入される。しかしながら、単一の試験動物が長期間、その自らの対象として使用され得る場合、より正確であり有益な前臨床試験を行うことができる。
【0217】
いくつかの実施形態では、対象デバイスまたはシステムを用いた医療の患者コンプライアンスを自動的にモニタリングする方法が提供される。この方法は、体液の試料をデバイスのアッセイ試薬と反応させるようにして、前記試料の解析対象の存在を示す検出可能なシグナルをもたらすステップと、前記デバイスを用いて前記シグナルを検出するステップと、前記シグナルと、前記医療と関連した公知のプロフィールを比較して、前記患者が前記医療にコンプライアンスであるかまたはコンプライアンスでないかを決定するステップと、前記コンプライアンスまたは非コンプライアンスの患者を知らせるステップとを含む。
【0218】
別の実施形態では、本発明のシステムおよび方法は、新規なバイオマーカーを発見し、かつ/または疾患および治療結果とこのようなマーカーにおける傾向を関連付けることによって有効にする手段を提供する。
【0219】
別の実施形態では、本発明のシステムおよび方法は、特定の患者に対する最適なレベル(例えば、適応用量)に薬物投薬量を調整するために用いることができる、バイオマーカーレベルの傾向、および経時的な毎日の患者の情報を特定することができる。
【0220】
いくつかの実施形態では、非コンプライアンスは、制限されてない複数回の投薬または投薬なしを含む医薬品の不適切な投薬を受けることを含んでもよく、または医薬品を不適切に混合することを含んでもよい。好ましい実施形態では、シグナルが公知のプロフィールと比較された後、患者は実質的に即座に知らされる。
【0221】
臨床試験の患者または対象は、本明細書に記載される解析用の体液試料を採取することを忘れてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるデバイスを用いて、体液の試料を試験するように患者に警告する方法は、前記デバイスで実行されるプロトコールを提供し、前記プロトコールは、前記患者と関連した外部デバイスに位置され、体液の前記試料を試験する日時を含み;前記試料が試験されなかった場合には前記日時に前記体液を試験するように患者に知らせるステップを含む。いくつかの実施形態では、患者は、本明細書に記載されるように無線で知らされ得る。治療処方のコンプライアンスは、ディスプレイ上のプロンプトの使用、および(例えば、タッチスクリーンを介して)患者からの応答を得ることによって改善可能である。
【0222】
患者は、任意の共通の方法によって、薬物の処方を入手した場合に、例えば薬局でデバイスが提供されてもよい。同様に、臨床試験対象は、臨床試験を開始した場合にこのようなデバイスが提供されてもよい。制限されない携帯電話、Eメールアドレス、テキストメッセージアドレス、または無線通信の他の手段を含む患者または対象の連絡先は、その時に、例えばデータベースで、外部デバイスに入り、本明細書に記載される患者または対象と結び付けられてもよい。外部デバイスのソフトウェアは、検出デバイスから生じたシグナルが、例えば所与の時間で外部デバイスにまだ送られていない場合に検出可能であるスクリプトまたは他のプログラムを含んでもよく、次に、外部デバイスは、体液試料を採取するように患者に知らせる警告を送ることができる。
【0223】
ある実施形態において、システムは、カスタマーに直接提供され、ライフスタイルおよび/または運動管理において使用される。関連するライフスタイルおよび運動データを入力することができ、筋損傷、嫌気的代謝(例えば、乳酸)を示すパラメータの測定を行うことができる。いくつかの実施形態では、システムはポータブルであるように十分に小さくてもよい。
【0224】
別の実施形態では、システムは、臨床前作業に通常使用されるラットおよびマウスなどの小動物の血液中のマーカーの測定に特に適している。このような動物だけが少量の血液を有し、そのため、非常に少ない容量の試料を必要とするアッセイシステムは、特に、単一の動物からのいくつかの試料が早急に連続して必要とされる経時的な研究において、特に有用である。これらの考察は、いくつかの解析対象が並行した測定を必要とする場合に特に重要であり得る。
【0225】
ある実施形態において、システムは、出荷のために安全な形態で、複数の複雑なアッセイに必要とされるいくつかの要素を包装するための従来の方法を含む。例えば、アッセイ要素はハウジングにきっちりとはまる。
【0226】
アッセイ
様々なアッセイは、試料中の目的の解析対象を検出するための本発明にかかる流体デバイスで行うことができる。対象アッセイを行うために使用され得る幅広い多様な標識は、当技術分野において利用可能である。いくつかの実施形態では、標識は、分光的、光化学的、生化学的、電気化学的、免疫化学的、または他の化学的な手段によって検出可能である。例えば、有用な核酸標識には、ラジオアイソトープ32P、35S、蛍光色素、電子密度試薬、酵素が含まれる。生物学的構成要素の標識に適切な多種多様な標識は公知であり、科学文献および特許文献のいずれにおいても幅広く報告され、一般に、生物学的構成要素を標識するために本発明に適用可能である。適した標識には、放射性核種、酵素、基質、共同因子、阻害剤、蛍光部分、化学発光部分、生物発光標識、または比色分析標識が挙げられる。アッセイを特徴付ける試薬には、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、タンパク質、核酸プローブもしくは他の重合体、例えばアフィニティマトリックス、糖質または脂質が任意選択で含まれる。検出は、放射性、蛍光、もしくはルミネッセントマーカーの分光光度的もしくは光学的追跡、またはサイズ、電荷もしくはアフィニティに基づいて分子を追跡する他の方法を含む様々な公知の方法のいずれかによって開始することができる。検出可能な部分は、検出可能な物理的または化学的特性を有する任意の材料であり得る。このような検出可能な標識は、ゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィー、固体基質、分光技術などの分野において十分に開発され、一般に、このような方法に有用な標識は本発明に適用することができる。したがって、標識には、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、核酸プローブベースの、電気的、光熱的、または他の化学的な手段によって検出可能な、制限されない任意の組成を含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、標識は、当技術分野において周知である方法に従って、生成物、基質、または酵素などの、検出される分子に直接的または間接的に結合される。上記で示されるように、必要とされる感度に依存した標識の選択、化合物のコンジュゲーションの容易性、安定性要件、利用可能な器具、およびディスポーザル提供を有する多種多様な標識が使用される。非放射性標識は、多くの場合、間接手段によって付着される。一般に、解析対象に特異的なレセプターは、シグナル発生部分に連結される。ある場合には、解析対象レセプターは、アダプター分子(例えば、ビオチンまたはアビジン)に連結され、アッセイ試薬セットは、アダプターおよび解析対象に結合する結合部分(例えば、ビオチン化試薬またはアビジン)を含む。解析対象は、反応サイトで特定のレセプターに結合する。標識された試薬は、解析対象が中心にあるサンドイッチ複合体を形成することができる。また、試薬は、反応サイトのレセプターに対する解析対象と競合するか、または解析対象によって占有されない反応サイトの空きのレセプターに結合することができる。標識は、本質的に検出可能であるか、または検出可能な酵素、蛍光化合物、ケミルミネッセント化合物、もしくは化学発光性実体、例えば発光性基質を有する酵素などのシグナルシステムに結合される。多くのリガンドおよび抗リガンドを使用することができる。リガンドが、天然の抗リガンド、例えば、ビオチン、チロキシン、ジゴキシゲニン、およびコルチゾールを有する場合、標識された抗リガンドと共に使用することができる。あるいは、任意のハプテンまたは抗原性化合物は抗体との組合せで使用することができる。
【0228】
いくつかの実施形態では、標識はまた、例えば、酵素または蛍光色素分子とコンジュゲートさせることによって、シグナルを発生する化合物に直接コンジュゲートすることができる。標識として対象とする酵素は、主として、ヒドロラーゼ、特にホスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼ、またはオキシドレダクターゼ、特にペルオキシダーゼである。蛍光化合物には、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル基、およびウンベリフェロンが含まれる。化学発光化合物には、ジオキセタン、アクリジニウムエステル、ルシフェリン、および2,3−ジヒドロフタラジンジオン、例えばルミノールが含まれる。
【0229】
標識を検出する方法は、当業者には周知である。したがって、例えば、標識が放射性である場合、検出手段には、シンチレーションカウントまたはオートラジオグラフィーにおけるような写真用フィルムが挙げられる。標識が蛍光性である場合、適切な波長の光で蛍光色素を励起し、例えば、顕微鏡、目視検査によって、写真用フィルムを介した、電子検出器、例えばデジタルカメラ、電荷結合素子(CCD)もしくは光電子増倍管および光電管、または他の検出デバイスの使用によって得られた蛍光を検出することによって検出されてもよい。同様に、酵素標識は、酵素に対する適切な基質を提供し、得られる反応生成物を検出することによって検出される。最後に、単一の比色標識は、多くの場合、単に標識と関連した色を観察することによって検出される。例えば、コンジュゲートされた金は、多くの場合、ピンク色に見え、種々のコンジュゲートされたビーズはビーズの色に見える。
【0230】
いくつかの実施形態では、検出可能なシグナルは、発光供給源によって提供されてもよい。発光は、温度上昇以外の任意の理由により基質からの光の発光を意味するものとして、通常使用される用語である。一般に、原子または分子は、次に励起状態から低エネルギー状態(通常、基底状態)に移動するとき、電磁エネルギーの光子(例えば、光)を発光する。励起の原因が光子である場合、発光プロセスはフォトルミネッセンスと呼ばれる。励起の原因が電子である場合、発光プロセスはエレクトロルミネッセンスと呼ばれ得る。より具体的には、エレクトロルミネッセンスは、電子正孔対を形成するための電子の直接的な注入および除去、および光子を発光するための電子正孔対のその後の再結合に起因する。化学反応に起因するルミネッセンスは、通常、ケミルミネッセンスと呼ばれる。生物によって生成されるルミネッセンスは、通常、バイオルミネッセンスと呼ばれる。フォトルミネッセンスがスピン許容遷移(例えば、単一の一重項遷移、三重項−三重項遷移)の結果である場合、フォトルミネッセンスプロセスは、通常、蛍光と呼ばれる。典型的には、励起原因が、このようなスピン許容遷移を通じて急速に緩和する場合がある短命の励起状態の結果として除去された後、蛍光発光は持続しない。フォトルミネッセンスがスピン禁制遷移(例えば、三重項−一重項遷移)の結果である場合、フォトルミネッセンスプロセスは、通常、リン光と呼ばれる。典型的には、励起の原因が、そのようなスピン禁制遷移を介してのみ緩和してもよい長期の励起状態の結果として除去された後、リン光発光は持続する。ルミネッセンス標識は上記の特性のいずれか1つを有する場合がある。
【0231】
適切なケミルミネッセンス供給源は、化学反応によって電子的に励起されるようになる化合物を含み、次に、検出可能なシグナルとして機能するか、または蛍光アクセプターにエネルギーを提供する光を放出してもよい。化合物の多種多様なファミリーは、種々の条件下でケミルミネッセンスを提供することが見出されている。化合物の1つのファミリーは、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンである。頻繁に使用される化合物は、5−アミノ化合物であるルミノールである。ファミリーの他のメンバーは、5−アミノ−6,7,8−トリメトキシ−およびジメチルアミノ[ca]ベンズ類似体を含む。これらの化合物は、アルカリ性過酸化水素または次亜塩素酸カルシウムおよび塩基を用いて冷光を発するように作ることができる。化合物の別のファミリーは、2,4,5−トリフェニルイミダゾールであり、親化合物についての共通名としてはロフィンである。ケミルミネッセント類似体には、パラ−ジメチルアミノおよび−メトキシ置換基が含まれる。また、ケミルミネッセンスは、シュウ酸塩、通常はオキサリル活性エステル、例えばp−ニトロフェニルおよびペルオキシド、例えば過酸化水素を用いて、塩基性条件下で得ることができる。同様に公知の他の有用なケミルミネッセント化合物には、−N−アルキルアクリジニウムエステルおよびジオキセタンが含まれる。あるいは、ルシフェリンは、バイオルミネッセンスを提供するために、ルシフェラーゼまたはルシゲニンと共に用いてもよい。
【0232】
解析対象なる用語は、本明細書中で使用するとき、限定されないが、薬物、プロドラッグ、医薬品、薬物代謝産物、バイオマーカー、例えば発現タンパク質および細胞マーカー、抗体、血清タンパク質、コレステロールおよび他の代謝産物、多糖、核酸、生物学的解析対象、バイオマーカー、遺伝子、タンパク質、もしくはホルモン、またはそれらの任意の組合せを含む。解析対象は、ポリペプチド、糖タンパク質、多糖、脂質、および核酸の組合せであり得る。
【0233】
特に対象とするのは、特定の疾患または特別な疾患段階と関連したバイオマーカーである。このような解析対象には、限定されないが、自己免疫疾患、肥満、高血圧症、糖尿病、神経および/または筋変性疾患、心臓病、内分泌障害、代謝異常、炎症、心臓血管疾患、敗血症、血管形成、癌、アルツハイマー病、運動合併症、ならびにそれらの任意の組合せと関連した解析対象が含まれる。
【0234】
また対象とするのは、1以上の体組織、例えば、心臓、肝臓、前立腺、肺、腎臓、骨髄、血液、皮膚、膀胱、脳、筋肉、神経、および種々の疾患例えば様々な種類の癌(悪性もしくは非悪性)、自己免疫疾患、炎症または変性疾患によって影響される選択された組織において各種量で存在するバイオマーカーである。
【0235】
また対象とするのは、微生物、ウイルス、またはChlamydiaceaeを示す解析対象である。例示的な微生物には、限定されないが、細菌、ウイルス、真菌および原生動物が含まれる。また、本方法によって検出可能な解析対象には、Staphylococcus epidermidis、Escherichia coli、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MSRA)、Staphylococcus aureus、Staphylococcus hominis、Enterococcus faecalis、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus capitis、Staphylococcus warneri、Klebsiella pneumoniae、Haemophilus influenzae、Staphylococcus simulans、Streptococcus pneumoniaeおよびCandida albicansからなる非制限的な群から選択される血液感染病原菌が含まれる。
【0236】
また、本方法によって検出可能な解析対象は、以下から選択される様々な性感染症:淋病(Neisseria gorrhoeae)、梅毒(Treponena pallidum)、クラミジア(Clamyda tracomitis)、非淋菌性尿道炎(Ureaplasm urealyticum)、イースト菌感染症(Candida albicans)、軟性下疳(Haemophilus ducreyi)、トリコモナス症(Trichomonas vaginalis)、陰部ヘルペス(I型およびII型HSV)、HIV I、HIV II、およびA、B、C、G型肝炎、ならびにTTVによって引き起こされる肝炎を包含する。
【0237】
本方法によって検出可能なさらなる解析対象は、限定されないが、Pseudomonas aeruginosa、メチシリン耐性Staphlococcus aureus(MSRA)、Klebsiella pneumoniae、Haemophilis influenzae、Staphlococcus aureus、Stenotrophomonas maltophilia、Haemophilis parainfluenzae、Escherichia coli、Enterococcus faecalis、Serratia marcescens、Haemophilis parahaemolyticus、Enterococcus cloacae、Candida albicans、Moraxiella catarrhalis、Streptococcus pneumoniae、Citrobacter freundii、Enterococcus faecium、Klebsella oxytoca、Pseudomonas fluorscens、Neiseria meningitidis、Streptococcus pyogenes、Pneumocystis carinii、Klebsella pneumoniae Legionella pneumophila、Mycoplasma pneumoniae、およびMycobacterium tuberculosisを含む多様な呼吸器病原体を包含する。
【0238】
以下に列挙されるのは、本発明にかかるさらなる例示的なマーカーである:テオフィリン、CRP、CKMB、PSA、ミオグロビン、CA125、プロゲステロン、TxB2、6−ケト−PGF−1−アルファ、およびテオフィリン、エストラジオール、黄体形成ホルモン、トリグリセリド、トリプターゼ、低比重リポタンパクコレステロール、高比重リポタンパクコレステロール、コレステロール、IGFR。
【0239】
例示的な肝臓マーカーには、限定されないが、LDH、(LD5)、(ALT)、アルギナーゼ1(肝臓型)、アルファ−フェトプロテイン(AFP)、アルカリホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、乳酸脱水素酵素、およびビリルビンが含まれる。
【0240】
例示的な腎臓マーカーには、限定されないが、TNFa受容体、システインC、リポカリン型尿中プロスタグランジンD、シンターゼ(LPGDS)、肝細胞増殖因子受容体、ポリシスチン2、ポリシスチン1、フィブロシスチン、ウロモジュリン、アラニン、アミノペプチダーゼ、N−アセチル−B−D−グルコサミニダーゼ、アルブミン、およびレチノール結合タンパク質(RBP)が含まれる。
【0241】
例示的な心臓マーカーには、限定されないが、トロポニンI(TnI)、トロポニンT(TnT)、CK、CKMB、ミオグロビン、脂肪酸結合タンパク質(FABP)、CRP、D−二量体、S−100タンパク質、BNP、NT−proBNP、PAPP−A、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、グリコーゲンホスホリラーゼイソ酵素BB(GPBB)、トロンビン活性化線維素溶解阻害剤(TAFI)、フィブリノーゲン、虚血変性アルブミン(IMA)、カルジオトロフィン−1、およびMLC−I(ミオシン軽鎖−I)が含まれる。
【0242】
例示的な膵臓マーカーには、限定されないが、アミラーゼ、膵炎関連タンパク質(PAP−1)、および再生タンパク質(REG)が含まれる。
【0243】
例示的な筋組織マーカーには、限定されないが、ミオスタチンが含まれる。
【0244】
例示的な血液マーカーには、限定されないが、エリスロポエチン(EPO)が含まれる。
【0245】
例示的な骨マーカーには、限定されないが、I型骨コラーゲンの架橋されたN−テロペプチド(NTx)、骨コラーゲンのカルボキシ末端架橋テロペプチド、リシル−ピリジノリン(デオキシピリジノリン)、ピリジノリン、酒石酸塩耐性ホスファターゼ、I型プロコラーゲンCプロペプチド、I型プロコラーゲンNプロペプチド、オステオカルシン(骨gla−タンパク質)、アルカリホスファターゼ、カテプシンK、COMP(軟骨オリゴメリックマトリックスプロテイン)、オステオクリンオステオプロテゲリン(OPG)、RANKL、sRANK、TRAP5(TRACP5)、骨芽細胞特異的因子1(OSF−1、プレイオトロフィン)、可溶性細胞接着分子、sTfR、sCD4、sCD8、sCD44、および骨芽細胞特異的因子2(OSF−2、ペリオスチン)が含まれる。
【0246】
いくつかの実施形態では、本発明にかかるマーカーは疾患特異的である。例示的な癌マーカーには、限定されないが、PSA(全前立腺特異的抗原)、クレアチニン、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA複合体、前立腺特異的遺伝子−1、CA12−5、癌胎児性抗原(CEA)、アルファフェトプロテイン(AFP)、hCG(ヒト慢性ゴナドトロピン)、インヒビン、CAA卵巣C1824、CA27.29、CA15−3、CAA乳房C1924、Her−2、膵臓、CA19−9、癌胎児性抗原、CAA膵臓、ニューロン特異的エノラーゼ、アンギオスタチンDcR3(可溶性おとり受容体3)、エンドスタチン、Ep−CAM(MK−I)、遊離免疫グロブリン軽鎖カッパ、遊離免疫グロブリン軽鎖ラムダ、ハースタチン、クロモグランジンA、アドレノメジュリン、インテグリン、上皮細胞増殖因子受容体、上皮細胞増殖因子受容体−チロシンキナーゼ、プロ−アドレノメジュリンN末端20ペプチド、血管内皮細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子受容体、幹細胞因子受容体、c− kit/KDR、KDR、およびミッドカインが含まれる。
【0247】
例示的な感染症状態には、限定されないが、ウイルス血症、菌血症、敗血症、およびマーカー:PMNエラスターゼ、PMNエラスターゼ/アルファ1−PI複合体、サーファクタントプロテインD(SP−D)、HBVc抗原、HBVs抗原、抗HBVc、抗HIV、T−サプレッサー細胞抗原、T−細胞抗原比、T−ヘルパー細胞抗原、抗HCV、パイロジェン、p24抗原、ムラミールジペプチドが含まれる。
【0248】
例示的な糖尿病マーカーには、限定されないが、Cペプチド、ヘモグロビンAlc、糖化アルブミン、高度糖化最終産物(AGEs)、1,5−アンヒドログルシトール、胃抑制ポリペプチド、グルコース、ヘモグロビン、ANGPTL3および4が含まれる。
【0249】
例示的な炎症マーカーには、限定されないが、リウマトイド因子(RF)、抗核抗体(ANA)、C反応性タンパク質(CRP)、クララ細胞タンパク質(ウテログロビン)が含まれる。
【0250】
例示的なアレルギーマーカーには、限定されないが、全IgEおよび特異的IgEが含まれる。
【0251】
例示的な自閉症マーカーには、限定されないが、セルロプラスミン、メタロチオネイン、亜鉛、銅、B6、B12、グルタチオン、アルカリホスファターゼ、およびアポアルカリホスファターゼの活性化が含まれる。
【0252】
例示的な凝固障害マーカーには、限定されないが、b−トロンボグロブリン、血小板因子4、フォンヴィレブランド因子が含まれる。
【0253】
いくつかの実施形態では、マーカーは治療特異的であってもよい。COX阻害剤には、限定されないが、TxB2(Cox−1)、6−ケト−PGF−1−アルファ(Cox2)、11−デヒドロ−TxB−la(Cox−1)が含まれる。
【0254】
本発明の他のマーカーには、限定されないが、レプチン、レプチン受容体、およびプロカルシトニン、脳S100タンパク質、サブスタンスP、8−イソ−PGF−2aが含まれる。
【0255】
例示的な加齢マーカーには、限定されないが、ニューロン特異的エノラーゼ、GFAP、およびS100Bが含まれる。
【0256】
例示的な栄養状態のマーカーには、限定されないが、プレアルブミン、アルブミン、レチノール結合タンパク質(RBP)、トランスフェリン、アシル化刺激タンパク質(ASP)、アジポネクチン、アグチ関連タンパク質(AgRP)、アンギオタンパク質様プロテイン4(ANGPTL4、FIAF)、Cペプチド、AFABP(脂肪細胞脂肪酸結合タンパク質、FABP4)、アシル化刺激タンパク質(ASP)、EFABP(上皮脂肪酸結合タンパク質、FABP5)、グリセンチン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−2、グレリン、インスリン、レプチン、レプチン受容体、PYY、RELMs、レシスチン、およびsTfR(可溶性トランスフェリン受容体)が含まれる。
【0257】
例示的な脂質代謝のマーカーには、限定されないが、アポリポタンパク質(いくつか)、アポ−A1、アポ−B、アポ−C−CII、アポ−D、アポ−Eが含まれる。
【0258】
例示的な凝固状態マーカーには、限定されないが、第I因子:フィブリノーゲン、第II因子:プロトロンビン、第III因子:組織因子、第IV因子:カルシウム、第V因子:プロアクセレリン、第VI因子、第VII因子:プロコンバーチン、第VIII因子:抗溶血因子、第IX因子:クリスマス因子、第X因子:スチュアートプラウアー因子、第XI因子:血漿トロンボプラスチン前駆物質、第XII因子:ハーゲマン因子、第XIII因子:フィブリン安定化因子、プレカリクレイン、高分子量キニノゲン、プロテインC、プロテインS、D−二量体、組織プラスミノーゲン活性化因子、プラスミノーゲン、a2−抗プラスミン、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAIl)が含まれる。
【0259】
例示的なモノクローナル抗体には、EGFR、ErbB2、およびIGF1Rの抗体が含まれる。
【0260】
例示的なチロシンキナーゼ阻害剤には、限定されないが、Ab1、Kit、PDGFR、Src、ErbB2、ErbB4、EGFR、EphB、VEGFR1−4、PDGFRb、FLt3、FGFR、PKC、Met、Tie2、RAF、およびTrkAが含まれる。
【0261】
例示的なセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤には、限定されないが、AKT、Aurora A/B/B、CDK、CDK(pan)、CDK1−2、VEGFR2、PDGFRb、CDK4/6、MEK1−2、mTOR、およびPKC−ベータが含まれる。
【0262】
GPCR標的には、限定されないが、ヒスタミン受容体、セロトニン受容体、アンギオテンシン受容体、アドレノ受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体、GnRH受容体、ドーパミン受容体、プロスタグランジン受容体、およびADP受容体が含まれる。
【0263】
別々の実施形態では、治療薬の有効性および/または毒性の評価に有用な1を超える薬理学的パラメータをモニタリングする方法が提供される。例えば、治療薬には、治療的有用性および/または可能性を有する任意の物質が含まれる。このような物質には、限定されないが、生物学的または化学的化合物、例えば単純もしくは複雑な有機または無機分子、ペプチド、タンパク質(例えば、抗体)あるいはポリヌクレオチド(例えば、アンチセンス)が含まれる。非常に多数の化合物を合成することができ、例えば、ポリマー、例えばポリペプチドおよびポリヌクレオチド、および種々のコア構造に基づく合成有機化合物が含まれ、これらはまた、治療薬として含めることができる。さらに、種々の天然供給源は、スクリーニングのための化合物、例えば植物または動物の抽出物などを提供することができる。必ずしも明確に言及できるとは限らないが、この薬物は、単独で、または本発明のスクリーニングによって特定される薬物と同じであるかもしくは異なる生物学的活性を有する別の薬物との組合せで使用されることが理解されるべきである。また、薬物および方法は、他の治療と組み合わせることが意図される。例えば、低分子薬物は、多くの場合、不正確である場合がある質量分析によって測定される。ELISA(抗体ベース)アッセイは、非常により精密かつ正確であり得る。
【0264】
本発明にかかる生理学的パラメータには、限定されないが、温度、心拍数/心パルス、血圧、および呼吸数などのパラメータが含まれる。薬力学的パラメータには、タンパク質、核酸、細胞、および細胞マーカーなどのバイオマーカーの濃度が含まれる。バイオマーカーは、疾患を示し、または薬物の作用の結果となり得る。本発明にかかる薬物動態(PK)パラメータには、限定されないが、薬物および薬物代謝産物濃度が含まれる。試料容量からリアルタイムでPKパラメータを同定および定量することは、薬物の適切な安全性および有効性に対して非常に望ましい。薬物および代謝産物濃度が所望の範囲外であり、および/または望ましくない代謝産物が薬物の望ましくない反応により生じた場合、患者の安全性を確保するために迅速な行動が必要である場合がある。同様に、薬力学(PD)パラメータが治療計画中に所望の範囲に入らない場合、即時行動が同様に取られなければならない場合がある。
【0265】
単一の対象における期間で、解析対象濃度もしくはPDもしくはPKパラメータの変化速度をモニタリングすることができること、またはその濃度、PD、もしくはPKパラメータに対して動向解析を行うことは、それらが薬物またはそれらの代謝物の濃度であるかに関わらず、潜在的な危険な状況を防ぐ手助けとなり得る。例えば、グルコースが目的の解析対象である場合、所与の時間での試料中のグルコース濃度、ならびに所与の期間におけるグルコース濃度の変化速度は、例えば、低血糖事象の予測および回避に非常に有用となり得る。このような動向解析は、薬物の投薬処方計画において広範囲の有益な意味を有する。複数の薬物およびそれらの代謝産物が関わる場合、動向を見出し、未然防止策を取る能力は多くの場合に望まれる。
【0266】
いくつかの実施形態では、本発明は、個人に合わせた医療の提供において臨床医を支援するビジネス方法を提供する。ビジネス方法は、経時的にバイオマーカーの動向をモニタリングすることによって薬物治療の処方後のモニタリングを含むことができる。ビジネス方法は、薬剤を受けている個体から少なくとも1つの薬理学的パラメータの収集であって、前記収集段階は、体液の試料を流体デバイスに含まれる反応物に供することによってもたらされ、このデバイスは、前記個体に提供され、前記少なくとも1つの薬理学的パラメータを示す検出可能なシグナルを生じる前記収集;ならびに、前記個体の少なくとも1つの薬理学的パラメータを用いて、前記個体のコンピュータ医療記録の支援により相互参照し、それにより、個体に合わせた医療の提供における前記臨床医の支援を含むことができる。
【0267】
本明細書に記載のデバイス、システム、および方法は、患者の薬理学的パラメータの自動的な定量、ならびにそのパラメータと、例えば、モニタリングされたパラメータの履歴を含んでもよい患者の医療記録、または対象の別の群の医療記録の自動的な比較を可能にする。例えば、リアルタイムの解析対象のモニタリングと、データを格納し、ならびにいずれかのタイプのデータプロセッシングまたはアルゴリズムを行うことができる外部デバイスとのカップリングは、例えば、現在の患者のデータと過去の患者のデータとを比較するステップを含むことができる典型的な患者治療を手助けすることができるデバイスを提供する。したがって、医療関係者によって現在行われている患者のモニタリングの少なくとも一部を効果的に行うビジネス方法もまた本明細書に提供される。
【実施例】
【0268】
(実施例1)
本実施例では、本発明のデバイス、方法、およびシステムを用いてヒトVEGFR2についてのアッセイを行う。本実施例は、ポイントオブケアで実行され得るアッセイのタイプを示す。アッセイユニットの捕捉表面は、本実施例ではVEGFR2アッセイであるが、アッセイに従ってアッセイユニット上にコーディングすることができる。アッセイユニットの内面(図3Aの例に類似した射出成形ポリスチレンで作られている)は、吸引および空気放出によって連続したコーティング試薬にさらされた。20マイクロリットルの各コーティング試薬はアッセイユニットに引き出され、室温で10分間インキュベートされた。本実施例で使用されるコーティング試薬は、連続して使用され、炭酸塩−重炭酸塩緩衝液(pH9)中のニュートラアビジン(20μg/mL)、トリス緩衝生理食塩水(pH8)中のビオチン化された「捕捉抗体」(VEGFR2に対するモノクローナル抗体、20μg/mL)、およびトリス緩衝生理食塩水中の3%ウシ血清アルブミンを含む「固定化」試薬である。連続コーティング後、アッセイユニットは、乾燥空気への曝露によって乾燥し、および乾燥状態で保存した。
【0269】
次に、分析用の試料は、ウシ血清アルブミンおよび等張ショ糖を含む50mMトリス緩衝生理食塩水(pH8)中で20分間希釈したアッセイユニットに分配される。コンジュゲートを含む試薬ユニットにおいて、Biostabの安定化試薬中の250ng/mLであるVEGFR2(捕捉表面の抗体の異なるエピトープに結合する)に対するアルカリホスファターゼ(ウシ腸)標識モノクローナル抗体の溶液がアッセイユニットに10分間供給される。コンジュゲートが、捕捉表面に結合された解析対象の複合体と結合するようになった後、アッセイユニットを試薬ユニットに含まれる溶液(市販のAssay Designsの洗浄緩衝液)を用いて洗浄した。アッセイユニットを5回洗浄した。次に、アッセイユニットを移動し、収集し、異なる試薬、アルカリホスファターゼに対する市販の発光性(luminogenic)基質の溶液(KPL Phosphaglo)に含まれる別の試薬と混合し、10分間インキュベートした。次に、アッセイユニットにおけるアッセイの反応を、本発明の検出アセンブリーによって検出した。
【0270】
図12は、本実施例の方法を用いたVEGFR2アッセイ応答を示す。x軸スケールはVEGFR2濃度(pg/mL)を示す;y軸スケールは相対的ルミネッセンス(カウント)を示す。曲線は、モジュール式アッセイユニットおよび試薬ユニットを較正するために使用された。
【0271】
(実施例2)
ヒトPlGFについてのアッセイを、本発明のアッセイユニットおよび試薬ユニットを用いて行い、市販の装置で読み取った。並行して、同じ試薬を用いたアッセイを、プロトタイプリーダーのプロトタイプのディスポーザルカートリッジ(以下に記載される)において行った。解析対象濃度は、それぞれ0、4、80および400pg/mLであった。図13に例証された測定は、ヒトPlGFについてのアッセイを行うために必要なアッセイユニットおよび試薬ユニットを較正するために使用された。
【0272】
(実施例3)
磁化可能ビーズは、Bands Laboratoriesの直径1.3μmのBioMag磁性粒子である。ビーズは、抗ウサギIgGでコーティング(製造業者による)される。ビーズは、CedarLaneの、3%ウシ血清アルブミンおよびウサギ抗ヒト赤血球IgGを≧1.15mg/mLで含むトリス緩衝ショ糖液(またはトリス緩衝生理食塩水)中に14mg/mLで分散される。アリコート(この分散液の10μL)を円錐管に分配し、カートリッジハウジングのスロットに挿入前に凍結乾燥する(液体N2で凍結し、およそ24時間、−70℃で凍結乾燥する)。ウサギ抗体は、赤血球および抗ウサギIgGコーティングされたビーズの両方に結合し、ビーズと赤血球の共同凝集体を形成する。
【0273】
凍結乾燥された磁化可能ビーズペレットを、20μLの全血を添加し、次に吸引し、円錐管に少なくとも8回(およそ1.5分)分散することによって再懸濁した。
【0274】
血液を、強力な水平配向された磁場にチップを(垂直配向で)置くことによって分離した。典型的には、溶血が観察できない8μLの赤血球不含血漿を、20μlの血液試料から収集した(70%収率)。解析対象の収集(磁性分離にさらされていない血漿と比較して)は、プロテインC、VEGF、PlGF、インスリン、GlPおよびGlP−1に対して100%に近かった。
【0275】
(実施例4)
解析対象を分析するための試料の連続希釈は、本明細書に記載されるシステムにおいて行うことができる。C反応性タンパク質(CRP)は急性期マーカーである。正常レベルは、高ng/mL〜低μg/mlの範囲にある。いずれかの急性疾患プロセスにおいて、ヒト肝臓はCRPを生成し、血中レベルは数百μg/mlに増加することができる。CRPは、測定される解析対象のダイナミックレンジが広い(>10倍)ため、従来のPOC解析システムの問題を示している。
【0276】
流体移送デバイスおよびアッセイユニットと試薬ユニットのアレイを含むカートリッジまたはデバイスを含む、本明細書に記載されるシステムを開発した。アッセイチップの内面に結合したモノクローナル抗CRPを有するアッセイチップを、検出抗体溶液(アルカリホスファターゼ標識されたモノクローナル抗CRP(チップ上とは異なるエピトープ特異性を有する))、洗浄溶液、およびKPLの化学発光性アルカリホスファターゼ(PhosphaGLOTM)基質と共に、カートリッジに積層した。
【0277】
CRPをアッセイするために、カートリッジを、さらに希釈せずに使用されるCRPの予め希釈された溶液と共に装填した。カートリッジをシステムによって加工した。続いて、CRP溶液(10μL)、検出抗体(12μL)をチップに取り出し、10分間、34℃でインキュベートし、次に廃棄した。チップを20μLの洗浄溶液の4回の吸引によって洗浄し、その後、15μLの基質をチップに吸引した。37℃で10分後、光発光を5秒間、装置で測定した。CRP濃度をアッセイシグナル(光子カウント)に対してプロットし、以下に示される5多項式関数にデータをフィッティングし、図14に示される較正関数を生じさせた。
【0278】
(実施例5)
次に、実験を、高濃度の解析対象を含む試料の連続希釈を用いて行い、本明細書に記載されるシステムおよびデバイスにおける明確なアッセイ応答を得た。CRPの溶液(20μL)をカートリッジに装填し、装置によって(それぞれ1:50、250、750および1500倍に)連続希釈した。次に、希釈された溶液を、実施例4に示されるように処理した。希釈されたCRP濃度がアッセイの較正範囲(300ng/mL)を超えたとき、下方応答が見られた(以下に示される;2つの装置からのデータ)。
【0279】
図15に示される応答は、スキャッチャード結合等温線(S/Smax=C/(C+C0.5))の改変を用いてモデル化することができる。この改変は、本実施例における場合であるため、アッセイの応答は検出抗体の濃度に正比例することを推定する(データ示さず)。次の試薬(検出抗体)への希釈された試料のCRPの任意の繰り越しは、固相抗体に結合された抗原に結合することができないようにする試薬と迅速に反応させる。有効濃度の減少は、CRP繰り越しに比例して減少し、因子(D−Cf)/Dを用いて説明することができる。
【0280】
したがって、S=Smax(C/(C+C0.5))(D−Cf)/D、式中、Sはアッセイシグナルであり、Smaxは最大シグナル(ゼロ繰り越しに対応する)であり、Cは解析対象の濃度であり、C0.5は最大半分のシグナルに対する濃度(繰り越しなし)であり、Dは検出抗体濃度であり、およびfは分画繰り越しである。
【0281】
データをフィットさせるために使用される値を、データとモデルフィットの最小二乗差の最小化の技術を用いて、以下の4つのパラメータの各々を最適化することによって導いた。図15に示すことができるように、優れたフィットが達成され、パラメータSmax、C0.5およびDの値(表2を参照)は、到達した最大シグナル、観察されたC0.5および公知の検出抗体濃度から推測され得る値に近い。このモデルは、繰り越しの程度が0.034%(小数3.84E−04)であると推定した。
【0282】
【表1】

次に、各アッセイチップにおける最終濃度を達成するために使用される希釈に従ってデータを見ることができ、各希釈レベルについては、応答は、図16に示されるように希釈が正確かつ的確であることを示す同じ応答についてフィッティングする。
【0283】
本明細書に記載されるモデルは、いずれかの所与の希釈に対する応答をコンピュータ計算し、いずれかのチップにおける解析対象濃度が較正範囲内であることを確認するためのアルゴリズムを設定するために用いることができる。データを表すグラフ手段は図17に示され、ここで、基準化されたアッセイ応答(B/Bmax)は、相対希釈:1:1(実線)、5:1(破線)、および25:1(点線)について、ログ基準化された濃度(C/C0.5)に対してプロットされる。図18および19は、異なる基準化された濃度で、図17と同様の実施例を示す。簡単なパターン認識アルゴリズムを用いて、高濃度試料について有効なデータを特定することができる。例えば、大部分の用量反応について、シグナルは希釈と共に減少する。任意の希釈についてのシグナルが次のより高い希釈のシグナルと等しいかまたはそれを超える場合、より低い希釈結果は拒絶される。別の実施例では、図4に示される較正関数の使用によって誘導された濃度は、公知の希釈を用いたいくらかのシステム不正確と対応すべきである。低希釈について計算された濃度が、高希釈の濃度と対応しているものよりも低い場合、低希薄の結果が拒絶され得る。
【0284】
アッセイの投薬量−応答アプローチが最大に近づくと、濃度の傾き(ΔC/ΔS)対シグナルは増加する。シグナルにおける相対的変動(ΔS/S)が本質的には一定であるアッセイ(例えば、記載されるシステムのいくつかの例)については、これは、高濃度の計算された濃度結果におけるより大きな変動に変わる。本明細書に提供されるように、希釈または連続希釈は、ブランク(ゼロ解析対象)シグナルよりも有意に大きい(例えば、>10倍)が、最大シグナル(例えば、<0.3Max.シグナル)には近くない、シグナルレベルでのイムノアッセイによって達成される濃度精度を提供することができる。連続希釈は、アッセイシグナルをこの範囲内にすることができる。
【0285】
異なる希釈からの解析対象濃度のいくつかの概算によって、平均値を得ることができる。また、平均値は、単一の希釈レベルでの繰り返しの測定を行うことによって達成することができる。場合によって、本明細書に記載される方法、システム、およびデバイスによって提供される連続希釈アプローチは、多くの場合、(例えば)試料からのマトリックス効果により、希釈の非直線性のため誤差を排除することができる。
【0286】
(実施例6)
フルオレセインは周知の化学であり、その分子に特異的である高親和性抗体は公知である。いくつかのフルオレセイン部分をアルブミンなどのタンパク質に付着させることによって、ELISAによって測定され得る人工的な解析対象が作られる。本明細書の実施例は、このようなアッセイの実施可能性を示すためにマイクロタイタープレート上で設定し、本明細書に記載される本発明のデバイスまたはシステムに容易に変えることができる。
【0287】
抗フルオレセインモノクローナル抗体を、捕捉表面を作るために384ウェルのマイクロタイタープレートのウェルに付着した。アッセイを、一連の溶液をウェルに添加し、必要な場合には各段階で室温で10分間インキュベートすることによって行う。1分子当たり約5個のフルオレセインの比率でフルオレセイン標識されたウシアルブミン(試料)の市販の公知の濃度の調製物の30μlをウェルに添加した。試料を機械的に除去後、30μlのアルカリホスファターゼ標識した抗フルオレセイン(検出抗体)を100ng/mlの濃度で添加した。検出抗体を除去後、ウェルを40μlの洗浄溶液(「洗浄緩衝液」カタログ#80−1351[Assay Dwsigns,Ann Arbor,Michigan]使用前に1:20に希釈する)で3回洗浄した。次に、PhospahGLO(商標)(40μL)基質を添加し、その後、アッセイ応答を、M5分光照度計で0.5秒間読んだ。アッセイ応答を図20に示す。
【0288】
3mg/mLでウシアルブミンを含むトリス緩衝生理食塩水(緩衝液)に溶解させたフルオレセイン標識されたアルブミン(5μL、最大80ng/mLの種々の濃度)をポリプロピレンチューブに入れ、低湿度で一晩さらすことによって乾燥させた。乾燥の前後に多くのチューブを計量することによって、完全な乾燥を検証し、適切な重量喪失および一定に近い最終重量の検証が達成された。5μLの水、20μLのヒト血清および180μLの緩衝液を添加し、混合することによって解析対象を収集した。対照実験は、解析対象溶液の5μLのアリコートと20μLの血清および180μLの緩衝液を混合することによって行われた。
【0289】
解析対象の収集を、本明細書に記載されるアッセイを用いて測定した。以下に示すように、アッセイシグナル(および解析対象)の収集は、全ての濃度で本質的に定量的である。正確である(収集では<2%CV)良好な収集(>90%)を有することが望まれ得る。場合によって、アッセイ投薬量−応答は、低濃度の解析対象および過剰な試薬を有することによって、目的の範囲全体で直線的である。例えば、直線的なアッセイ投薬量−応答は、捕捉表面上に結合している抗原に対して十分な能力を有することによって達成可能であり、その結果、最大レベルの解析対象でさえ、サイトの適度な比率(例えば、<30%)だけが結合反応の終わりに占有される。本明細書に記載されるように、ng/mLの範囲のアッセイ、および短いインキュベーション時間(<約30分)のアッセイについては、この条件は、前述されるようにコーティングされた捕捉表面を用いて達成される。別の実施例では、濃度が検出抗体のインキュベーション中に有意に枯渇しないような検出抗体の十分な濃度(例えば、試薬の<30%が最大抗原レベルで表面に結合する)、およびこの濃度は、約65〜100ng/mLで検出抗体濃度の使用によって満足することができる。なお別の実施例では、直線のアッセイ投薬量−応答は、検出器(例えば、毎秒最大約400万個の光子を有するPMT)の直線応答よりも小さいシグナルの発生を有することによって達成可能である。本明細書に記載されるように、システムおよび方法はこの範囲内に入ることができる。なお別の実施例では、直線のアッセイ投薬量−応答は、正確に測定されるように十分に高いシグナルの発生によって達成され得る(例えば、光子カウント速度は約1,000/秒よりも高い)。
【0290】
アッセイチップを(本明細書に記載されるように)以下の一連の試薬の吸引によってコーティングした:炭酸塩緩衝液(pH9)中の20μLの5μg/mLウサギ抗フルオレセイン(Molecular Probes #A6413)、トリス緩衝生理食塩水(pH8)中の20μlの3%ウシアルブミン、およびフルオレセインで標識された20μLの2.5μg/mLウシアルブミン(Sigma−Aldrich A9771)、各々、10分間インキュベーションし、液体を排出した。次に、チップをトリス緩衝生理食塩水(pH8)中のウシアルブミンの吸引によって3回洗浄し、トリス緩衝生理食塩水(pH8)中の3%ウシアルブミンをインキュベーションした。次に、本明細書に記載されるようにチップを乾燥させた。これらのチップを用いて、ヤギ抗フルオレセインを含む試料を、以下の溶液:3%BSAを含むトリス緩衝生理食塩水(pH8)中のヤギ抗フルオレセイン(試料)、Stabilizyme(商標)(市販の溶媒)中のアルカリホスファターゼ標識されたウサギ抗ヤギフルオレセイン(100ng/mL)の20μlのアリコートを順にインキュベートし、洗浄緩衝液で4回洗浄し、PhospahGLO(商標)アルカリホスファターゼ化学発光発生基質を添加し、各々、室温で10分間インキュベートすることによってアッセイした。このアッセイを、機器のマイクロタイタープレートステージをフィットするカスタム変更フレームに各チップを設置することによって、Molecular Devices M5照度計における光電子増倍管チューブを用いて、機器内で約10秒にわたって生成された光子を測定することによって評価し、結果を図21に示す。本実施例では、図21は、図20に類似した直線応答を示す。
【0291】
【表2】

(実施例7)
本実施例は、試薬の初期添加、反応生成物の除去、チップの洗浄、その後のいくつかのまたは全ての成分の再導入後の、本明細書に記載されるアッセイチップを用いたCRPについてのイムノアッセイからの応答の予測可能性を示す。このアッセイの順番は以下の通りである:チップを、プロトタイプ機器中で34℃、10分間、次の順番で(1)機器によって500倍、次に2000倍に希釈された試料(CRP0.3、3、30、150および300μg/mL)、(2)アルカリホスファターゼ標識されたウサギ抗ヤギIgG[「Dab」](5ng/mL)、その後、3回洗浄、ならびに(3)PhospahGLO(商標)アルカリホスファターゼ化学発光発生基質[「基質」]と共にインキュベートした。実験を、ステップ3の後、10秒にわたって光子生成も読むいくつかの機器で行った。最終(チップ中)CRP濃度は、0.15、0.6、1.5、6、15、60、75、300および600ng/mLであり、グローレベルは2,000〜6,000カウント/0.5秒の範囲であった。いくつかの実験では、このアッセイのステップ(3)の後、反応生成物を捨て、様々にステップ3(菱形および実線)、ステップ2+3(四角および破線)、またはステップ1+2+3(三角および点線)を繰り返し、その結果は、図22に示されるように、再処理されたアッセイシグナル対元のアッセイシグナルとして示される。
【0292】
再処理されたアッセイシグナルは、元のアッセイシグナルに直線的に関連(比例)していた。第2の基質の添加は、元のシグナルと比べて高いシグナルを与え、Dabおよび基質の両方を導入した再処理されたアッセイ、または試料、Dabおよび基質が全て再導入されたアッセイは、元のシグナルよりも低いシグナルを与えた。この方法を用いる実施例では、アッセイの順番における全てのステップは、それらが、第1のアッセイステップとその後の繰り返しのアッセイステップ間の予想される関係に従って予想通りに行われるかどうかを理解するために品質管理について調べることができる。
【0293】
例えば、本明細書に記載されるように、アッセイステップが適切に行われなかった場合、アッセイの結果は、間違っているものとして拒絶されるか、またはアッセイの結果の後の繰り返しが適切なアッセイ応答として使用され得る。
【0294】
C反応性タンパク質についてのイムノアッセイを、本明細書に記載されるシステムで行った。6個の同等なアッセイチップを、順に試料(200ng/mL CRP)、アルカリホスファターゼ標識されたウサギ抗ヤギIgGと共にインキュベートし、次に洗浄し、PhospahGLO(商標)アルカリホスファターゼ化学発光発生基質と共にインキュベートした。インキュベートは10分間、34℃であった。実験を10秒にわたって光子生成速度も読む3つの機器で行った。平均して約40,000カウント(光子)/0.5秒の読み取り時間が検出された。この実験では、機器3のチップ1および2のグローレベルは、表3に示されるように明確に異なる結果を与えた。次に、この機器を用いて、チップを洗浄し、新しいPhospahGLO(商標)基質を導入した(吸引2)。結果は、各チップについてのグロー率と各々、それぞれの機器で6個のチップについての平均との比として表される。第2の吸引後、チップ1および2は、機器3の他の4つの一致した結果を与え、これは、問題がチップ1および2の低いシグナルに原因があったのかどうかが修正されたことを示した。
【0295】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液試料中における解析対象の自動検出カートリッジであって、
前記解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルをもたらす化学反応を実行するように構成されるアドレス可能なアッセイユニットのアレイと、
前記アッセイユニットのアレイの個々のアドレス可能なアッセイユニットに対応するように個々のアドレス可能な試薬ユニットがアドレスされ、前記カートリッジ上において組み立てられる前に前記対応する個々のアッセイユニットを基準として較正されるように前記個々の試薬ユニットが構成されるアドレス可能な試薬ユニットのアレイと
を含むカートリッジ。
【請求項2】
体液試料中における解析対象の自動検出カートリッジであって、
前記体液試料を受け入れるように構成される試料収集ユニットと、
前記試料収集ユニットから試料の一部を受け入れ、前記試料中における前記解析対象の存在を示す検出可能なシグナルをもたらす化学反応を実行するように構成されるアッセイユニットのアレイと、
前記化学反応を実行するための試薬を収容する試薬ユニットのアレイと、
を含み、前記化学反応を実行するための試薬が前記アッセイユニット内の前記試料の一部と接触するように、前記アッセイユニットのアレイの個々のアッセイユニットおよび前記試薬ユニットのアレイの個々の試薬ユニットが流体連絡へと移動可能であるように構成されるカートリッジ。
【請求項3】
前記体液試料を受け入れるように構成される試料収集ユニットをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記個々の試薬ユニットが、移動可能なアッセイユニットを受け入れるように構成される、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記個々のアッセイユニットがアッセイチップを含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記個々のアッセイユニットが、イムノアッセイを実行するように構成される、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項7】
前記体液試料が血液試料である、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記試料収集ユニットが、容量約20マイクロリットル以下の前記体液試料を受け入れるように構成される、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項9】
前記試料収集ユニットが、1滴の血液である容量の前記体液試料を受け入れるように構成される、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項10】
化学反応を実行して前記解析対象を検出するために前記体液試料の一部を取り出すように構成される前処理ユニットをさらに含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項11】
前記体液試料が全血試料であり、前記一部が血漿である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
体液試料中における解析対象の自動検出システムであって、
a.請求項1または2に記載のデバイスと、
b.前記解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルを検出するための検出アセンブリーと
を含むシステム。
【請求項13】
前記個々のアッセイユニットを第1の位置から第2の位置へと移動させるように構成されるプログラム可能な機械デバイスをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
流体移送デバイスをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記流体移送デバイスがピペットである、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記流体移送デバイスが自動式である、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
検出される前記解析対象に基づくプロトコールを送信するための通信アセンブリーをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
個々のアッセイユニットを受け入れるように構成される加熱ブロックをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
磁性ブロックをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
体液試料中における複数種の解析対象の自動検出システムであって、
前記体液試料を収容するように構成される試料収集ユニット、
検出される前記複数種の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルをもたらす化学反応を実行するように個々のアッセイユニットが構成されるアッセイユニットのアレイ、および
個々の試薬ユニットが試薬を収容する試薬ユニットのアレイ
を含む流体デバイスと、
前記個々のアッセイユニットに係合するように個々のヘッドが構成される複数のヘッドを含み、前記試料収集ユニットからの前記体液試料および前記個々の試薬ユニットからの前記試薬の、前記個々のアッセイユニットへの流体移送を方向づけるように構成されるプログラム可能なプロセッサーを含む流体移送デバイスと
を含むシステム。
【請求項21】
前記複数種の解析対象が前記システムで検出可能となるように、流体移送を方向づけるプロセッサーの構成により、前記アッセイユニットのアレイ内における前記体液試料のある希釈度を達成し、検出される前記複数種の解析対象を示すシグナルを検出可能な範囲内に収める、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記体液試料が、少なくとも2桁分異なる濃度で存在する少なくとも2種の解析対象を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記体液試料が、少なくとも5桁分異なる濃度で存在する少なくとも2種の解析対象を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記体液試料の前記希釈度により、前記少なくとも2種の解析対象を示すシグナルを前記検出可能な範囲内に収める、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記検出可能な範囲のシグナル強度を検出するように構成される検出器をさらに含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
前記検出器が光電子増倍管である、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記検出可能な範囲が毎秒約1000〜約100万カウントである、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記体液試料が約20ul未満である、請求項20に記載のシステム。
【請求項29】
前記体液試料が1滴の血液である、請求項20に記載のシステム。
【請求項30】
前記個々のヘッドが前記個々のアッセイユニットに接着するように構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項31】
前記個々のアッセイユニットがイムノアッセイ反応サイトを提供する、請求項20に記載のシステム。
【請求項32】
前記個々のアッセイユニットがピペットチップである、請求項20に記載のシステム。
【請求項33】
前記流体移送デバイスがピペットである、請求項20に記載のシステム。
【請求項34】
前記ピペットが空気置換式ピペットである、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記流体移送デバイスが、プログラム可能なプロセッサーと連絡しているモーターをさらに含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項36】
前記モーターが、前記プログラム可能なプロセッサーからのプロトコールに基づき、前記複数のヘッドを移動させ、場合によって、前記プログラム可能なプロセッサーが外部デバイスから送信されたプロトコールに応答する、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
全血試料の血漿部分中における解析対象の自動検出システムであって、
a.前記全血試料を自動的に受け入れ処理して前記血漿部分をもたらすように構成され、前記目的の解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルがオンボードで前記血漿部分から発生するデバイスと、
b.前記解析対象の存在または不在を示す前記検出可能なシグナルを検出するための検出アセンブリーと
を含むシステム。
【請求項38】
体液試料中における解析対象を検出する方法であって、
a.請求項1または2に記載のデバイスに血液試料を供給するステップと、
b.前記試料を少なくとも1つのアッセイユニット内で反応させるステップと、
c.前記体液試料中において収集された前記解析対象から発生する前記検出可能なシグナルを検出するステップと
を含む方法。
【請求項39】
前記体液試料が血液であり、前記方法が前記血液から血漿を取り出すステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
体液試料中における解析対象の自動検出カートリッジのオンデマンドアセンブリー法であって、デバイスがハウジングを含み、前記ハウジングが、前記解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルをもたらす化学反応を実行するように個々のアッセイユニットが構成されるアドレス可能なアッセイユニットのアレイ、および前記個々のアッセイユニットに対応するように個々の試薬ユニットがアドレスされるアドレス可能な試薬ユニットのアレイを含み、
(i)エンドユーザーによりオーダーされた目的の解析対象を検出する化学反応を実行するように個々のアッセイユニットが構成されるアドレス可能なアッセイユニットのアレイを、検出される前記解析対象に従って前記ハウジング内に配置するステップと、
(ii)個々の試薬ユニットが前記個々のアッセイユニットに対応する試薬ユニットのアレイを、検出される前記解析対象に従って前記ハウジング内に配置するステップと、
(iii)(i)および(ii)のアレイを前記デバイスの前記ハウジング内に固定するステップと
を含む方法。
【請求項41】
検出される解析対象を選択するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記カートリッジをシーリングするステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
検出される前記解析対象を示す読み取り可能なラベルにより前記カートリッジをラベルするステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記読み取り可能なラベルがバーコードまたはRFIDである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
体液試料中における複数種の解析対象の自動検出法であって、
a.前記体液試料を収容するように構成される試料収集ユニット、検出される前記複数種の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルをもたらす化学反応を実行するように個々のアッセイユニットが構成されるアッセイユニットのアレイ、および個々の試薬ユニットが試薬を収容する試薬ユニットのアレイを含む流体デバイスに前記体液試料を供給するステップと、
b.流体移送デバイスを用いて前記個々のアッセイユニットを係合するステップと、
c.前記流体移送デバイスを用いて前記体液試料を前記試料収集ユニットから前記個々のアッセイユニットへと移送するステップと、
d.前記試薬を前記個々の試薬ユニットから前記個々のアッセイユニットへと移送し、これにより、前記試薬を前記体液試料と反応させて、検出される前記複数種の解析対象の前記個々の解析対象を示す前記シグナルをもたらすステップと
を含む方法。
【請求項46】
前記流体移送デバイスが、前記個々のアッセイユニットを係合するように個々のヘッドが構成される複数のヘッドを含み、前記流体移送デバイスが、前記試料収集ユニットからの前記体液試料および前記個々の試薬ユニットからの前記試薬の、前記個々のアッセイユニットへの流体移送を方向づけるように構成されるプログラム可能なプロセッサーを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
命令を前記プログラム可能なプロセッサーに下すステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記命令が、前記体液試料を前記個々のアッセイユニットへと移送する前記ステップを方向づける、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記体液試料を移送する前記ステップにより、前記個々のアッセイユニット内における前記体液試料のある希釈度を達成し、検出される前記複数種の解析対象の前記個々の解析対象を示す前記シグナルを検出可能な範囲内に収める、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記体液試料が、少なくとも2桁分異なる濃度で存在する少なくとも2種の個々の解析対象を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記体液試料が、少なくとも5桁分異なる濃度で存在する少なくとも2種の個々の解析対象を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記体液試料の前記希釈度により、前記少なくとも2種の個々の解析対象を示すシグナルを前記検出可能な範囲内に収める、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記検出可能な範囲が、光電子倍増管で検出され、毎秒約1000〜約100万カウントである、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記体液試料が、約20ul未満である、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記体液試料が1滴の血液である、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
前記個々の試薬ユニット内における前記試薬がイムノアッセイ用の酵素基質である、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
検出される複数種の解析対象の個々の解析対象を示すシグナルをもたらす反応が完了した後で、前記個々の試薬ユニットから前記試薬を移送するステップを反復し、これにより、前記個々の解析対象を示す第2のシグナルをもたらす第2の反応を創出するステップをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記個々の解析対象を示す前記シグナルの強度および前記第2のシグナルの第2の強度を平均して、前記個々の解析対象を示す前記シグナルの最終強度を計算する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
生物学的流体試料の容量を測定する方法であって、
a.前記試料中における公知の量の対照解析対象を試薬と反応させて、前記対照解析対象の量を示す検出可能なシグナルをもたらすステップと、
b.前記検出可能なシグナルを、予測される検出可能なシグナルと比較するステップであって、前記予測されるシグナルが前記試料の予測容量を示し、前記比較が、測定される前記試料の前記容量の測定値を与えるステップと
を含む方法。
【請求項60】
前記対照解析対象が通常、前記試料中において、検出可能な量では存在しない、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記試料の前記容量の前記測定値が、前記試料の前記予測容量の約50%以内である場合に、前記試料の前記容量を検証するステップをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
a.標的解析対象を含有する体液試料を、前記標的解析対象を示す検出可能なシグナルをもたらす試薬と反応させるステップと、
b.前記標的解析対象を示す前記検出可能なシグナルおよび前記液体試料の前記容量の前記測定値に基づき、前記体液試料中における標的解析対象の量を測定するステップと
をさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
液体試料と体液試料とが同じ試料である、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記対照解析対象が前記体液試料中における前記標的解析対象と反応しない、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記液体試料と前記体液試料とが異なる液体試料である、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
前記対照解析対象が、アルブミン、フルオレセイン、IgG、プロテインC、フルオレセイン標識アルブミン、フルオレセイン標識IgG、抗フルオレセイン、抗ジゴキシゲニン、ジゴキシゲニン標識アルブミン、ジゴキシゲニン標識IgG、ビオチン化タンパク質、および非ヒトIgGからなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
請求項12または19に記載のシステムにおいて実施される、請求項59に記載の方法。
【請求項68】
血液試料から血漿を取り出す方法であって、
a.試料収集ユニット内における磁化可能粒子の存在下で血液試料を混合するステップであって、前記磁化可能粒子が、前記血液試料の非血漿部分に結合する抗体捕捉表面を含むステップと、
b.血漿収集領域の上方から前記混合された血液試料へと磁場を適用し、前記血漿収集領域の上部で前記血液試料の前記非血漿部分を懸濁させるステップと
を含む方法。
【請求項69】
前記試料収集ユニットが毛細管である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記血液試料が約20マイクロリットル未満である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記取り出される血漿が約10マイクロリットル未満である、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記血液試料が希釈されない、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記混合するステップが、固体表面に結合しない抗体の存在下で行われる、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記混合するステップが、シリンジ動作により混合するステップを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項75】
請求項12または19に記載のシステムにおいて実施される、請求項68に記載の方法。
【請求項76】
自動イムノアッセイを用いて全血試料の血漿部分中に存在する解析対象を検出する方法であって、
a.全血試料をオンボードで自動的に受け入れ処理して前記血漿部分をもたらすように構成され、目的の解析対象の存在または不在を示す検出可能なシグナルがオンボードで前記血漿部分から発生するデバイスに前記全血試料を供給するステップと、
b.前記体液試料中における前記解析対象の存在または不在を示す前記シグナルを検出するステップと、
c.(b)の結果をエンドユーザーに送信するステップと
を含む方法。
【請求項77】
前記イムノアッセイがELISAである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記結果が無線で送信される、請求項76に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−540971(P2010−540971A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528139(P2010−528139)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/078636
【国際公開番号】WO2009/046227
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(510089007)セラノス, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】