説明

モノアミン神経伝達の機能障害と関連する症状の処置のためのアネトールジチオールチオンおよび他のジチオールチオン

本発明はモノアミノオキシダーゼ阻害薬、特にMAO−B阻害薬としてのジチオールチオン誘導体に、これらの化合物の製造方法に、そして該ジチオールチオン誘導体の合成に有用な新規中間体に関する。本発明はまた、有益な効果を与える薬剤の製造のための本明細書に開示される化合物の使用にも関する。本発明の態様において、本明細書に開示される特定の化合物は、モノアミン神経伝達の機能障害と関連する症状の処置、改善もしくは防止において有用な薬剤の製造のために使用される。これらの化合物は、一般式(1)
【化1】


[式中、記号は本明細書において示した意味を有する]
を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモノアミノオキシダーゼ阻害薬、特にMAO−B阻害薬としてのジチオールチオン誘導体に、これらの化合物の製造方法に、該ジチオールチオン誘導体の合成に有用な新規中間体に関する。本発明はまた、有益な効果を与える薬剤の製造のための本明細書に開示される化合物の使用にも関する。有益な効果は本明細書に開示されるか、もしくは本明細書および当該技術分野における一般知識から当業者に明らかである。本発明はまた、疾患もしくは症状を処置するかもしくは防ぐための薬剤の製造のための本発明の化合物の使用にも関する。さらに特に、本発明は、本明細書に開示されるかもしくは本明細書および当該技術分野における一般知識から当業者に明らかである疾患もしくは症状の処置のための新規使用に関する。本発明の態様において、本明細書に開示される特定の化合物は、モノアミン神経伝達の機能障害と関連する症状の処置、改善もしくは防止において有用な薬剤の製造のために使用される。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアのフラボ酵素モノアミノオキシダーゼ(MAO;EC1.4.3.4)の阻害薬は、脳および他の組織におけるノルエピネフリン、エピネフリン、ドーパミン、トリプタミンおよびセロトニンのレベルの増加を引き起こすことができ、従って、これらの神経伝達物質へのそれらの効果により媒介される多種多様な薬理学的効果をもたらすことができる。
【0003】
L−デプレニール、モフェギリン、ラサギリン、ラザベミドのような現在利用可能なMAO阻害薬は、精神医学的(せん妄、幻覚、興奮)、心臓血管(起立性低血圧症、高血圧症)および神経学的(鎮静作用、異常運動)を包含する幅広い規模(scala)の副作用を有する。
【0004】
【化1】

【0005】
本発明の目的は、現在利用可能なものと構造的に関係のない、そしてより少ない副作用を有する新規MAO阻害薬を開発することである。
【0006】
特許文献1は、酸素含有基により引き起こされる疾患の処置もしくは細胞損傷の防止のための1,2−ジチオール−3−チオンの使用を開示する。特許文献2は、神経学的障害
の処置のためのそして記憶増強のためのジチオールチオン化合物を開示する。これらの化合物は、D−アミノ酸を立体選択的に脱アミノ化し、それにより活性酸素種、過酸化水素を生成する酵素、D−アミノ酸オキシダーゼ(DAAO、E.C.1.4.3.3)を阻害すると言われた。ジチオールチオンが完全に異なる酵素、モノアミンオキシダーゼを阻害することはこれまで示されていない。
【特許文献1】WO98/27970明細書
【特許文献2】WO01/09118明細書
【発明の開示】
【0007】
驚くべきことに、今回、ジチオールチオンは、培養したラット線条体星状膠細胞由来の細胞抽出物におけるMAO−B活性を強く阻害し、一方、MAO−A活性に対して有意な効果は認められないことが見出された。本発明は、モノアミン神経伝達の機能障害と関連する症状の処置、改善もしくは防止用の製薬学的組成物の製造のための一般式(1)
【0008】
【化2】

【0009】
[式中:
−RおよびRは同じであるかもしくは異なり、そして水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ニトロ、アシル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミドを表すか、または
−RおよびRはそれらが結合している炭素原子と一緒になって、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジンもしくはピラジン環のような、窒素、酸素もしくは硫黄から選択される0、1もしくは2個のヘテロ原子を含有する5もしくは6員の芳香環もしくは非芳香環を形成することができ、
−RおよびRはそれら自体が水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノアルキルオキシ、モルホリン−4−イル−アルコキシ、ピペリジン−1−イル−アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、オキソ、ニトロ、アシル、アミド、アルキルアミドもしくはジアルキルアミドから選択される追加の置換基を保有することができる]
の化合物ならびにその互変異性体、立体異性体およびN−オキシド、ならびに式(1)の該化合物ならびにその互変異性体、立体異性体およびN−オキシドの薬理学的に許容しうる塩、水和物および溶媒和物の使用に関する。
【0010】
本発明は特に、RおよびRが同じものであるかもしくは異なり、そして場合により水素、アルキル、アリール、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオ、オキソもしくはニトロから選択される1つもしくはそれ以上の原子もしくは基で置換されていてもよい、水素、アルキルもしくはアリールを表す一般式(1)の化合物の使用に関する。
【0011】
さらに特に、本発明は5−(p−メトキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン(アネトールジチオールチオン、ADT)、3H−1,2−ジチオール−3−チオン(D3T)および4−メチル−5−(2−ピラジニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン(オルチプラズ)の使用に関する:
【0012】
【化3】

【0013】
最も好ましいのは、認められる任意の主な副作用なしに胆汁分泌促進薬および唾液分泌促進薬として数十年間臨床使用されている(Christen,M−O.,Methods Enzymol.,252,316−323,1995)、3H−1,2−ジチオール−3−チオン(D3T)の脂肪親和性の置換されたアナログ、5−(p−メトキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン、アネトールジチオールチオン(ADT)の使用である。
【0014】
別の態様において、本発明は式(1):
【0015】
【化4】

【0016】
[式中:
−Rは場合により置換されていてもよいフェニルであり、そしてRはS−CH−(4−メチル−フェニル)もしくはサブグループ:
【0017】
【化5】

【0018】
(ここで、nは値2、3、4もしくは5を有し、そしてRは水素もしくはアルキル(C1−3)である)
の一つを表すか、または
−Rは4−ヘキシルオキシフェニルであり、そしてRは水素であるか、または
−Rは置換されたフェニルであり、そしてRはSHもしくはサブグループ:
【0019】
【化6】

【0020】
を表すか、
−Rは水素であり、そしてRは−CH=CH−4−(ジエチルアミノフェニル)、−CH=CH−(2−キノリル)もしくはサブグループ:
【0021】
【化7】

【0022】
(ここで、nは上記に示したと同じ意味を有し、そしてRおよびRは独立してアルキル(C1−3)を表すか、またはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、場合によりN、OもしくはSから選択されるもう一つのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和した5もしくは6員環を形成する)
を表すか、または
−Rはアルキル(C1−3)であり、そしてRは1−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−イル)ピペラジン−4−イルであるか、または
−Rはシアノであり、そしてRはサブグループ−NH−C(O)−NH−フェニル(このサブグループにおいてフェニル基は場合により置換されていてもよい)であるか、または
−Rは−SOCHであり、そしてRはアミノを表す]
の化合物ならびにその互変異性体、立体異性体およびN−オキシド、ならびに式(1)の該化合物ならびにその互変異性体、立体異性体およびN−オキシドの薬理学的に許容しうる塩、水和物および溶媒和物に関する。
【0023】
本発明は、式(1)を有する化合物のラセミ化合物、ジアステレオマーの混合物ならびに個々の立体異性体に関する。置換基の記述において、「アルキル」という略語はC1−3−アルキルを意味し、「アルケニル」はC1−3−アルケニルを意味し、「アルキニル」はC1−3−アルキニルを意味し、「アシル」はアルキル(C1−3)カルボニル、アリールカルボニルもしくはアリールアルキル(C1−3)カルボニルを意味し、そして「アリール」はフリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、フェニル、インダゾリル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾ[b]チオフェニル、(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−イル)、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリル(isochinolyl)、キノリル(chinolyl)、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、1,8−ナフチリジニル、プテリジニル、ナフチルもしくはアズレニル、好ましくはフェニルもしくは(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−イル)を意味する。「アルキル(C1−3)」は、「メチル、エチル、n−プロピルもしくはイソプロピル」を意味し、「アルキル(C1−4)」は、「メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、イソブチルもしくは2−メチル−n−プロピル」を意味する。「場合により置換されていてもよい」は、基がアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、オキソ、ニトロ、アシル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、カルボキシルから選択される1つもしくはそれ以上の基でさらに置換されることができるかもしくはできず、または2つの任意の置換基がそれらが結合している炭素原子と一緒になって、窒素、酸素もしくは硫黄から選択される0、1もしくは2個のヘテロ原子を含有する5もしくは6員の芳香環もしくは非芳香環を形成できることを意味する。任意の置換基は、それら自体が追加の任意の置換基を保有することができる。好ましい任意の置換基には、例えばメチル、エチルおよびトリフルオロメチルのようなC1−3アルキル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、例えばメトキシ、エトキシおよびトリフルオロメトキシのようなC1−3アルキルオキシならびにアミノが包含される。
【0024】
上記の化合物のプロドラッグは、本発明の範囲内である。プロドラッグは、それ自体は不活性であるが1つもしくはそれ以上の活性代謝物に転化される治療薬である。プロドラッグは、親薬剤分子の実用性へのいくつかの障害を克服するために用いられる薬剤分子の生可逆的(bioreversible)誘導体である。これらの障害には、溶解性、透過性、安定性、プレシステミック(presystemic)代謝およびターゲッティングの限界が包含されるがこれらに限定されるものではない(Medicinal Chemistry:Principles and Practice,1994,ISBN 0−85186−494−5,Ed.:F.D.King,p.215;J.Stella,“Prodrugs as therapeutics”,Expert Opin.Ther.Patents14(3),277−280,2004;P.Ettmayer et al.,“Lessons learned from marketed and investigational prodrugs”,J.Med.Chem.,47,2393−2404,2004)。プロドラッグ、すなわち、任意の既知の経路によりヒトに投与した場合に式(1)を有する化合物に代謝される化合物は、本発明に属する。特に、これは第一級もしくは第二級アミノもしくはヒドロキシ基を有する化合物に関する。そのような化合物は、有機酸と反応させて例えばアミジン、エナミン、マンニッヒ塩基、ヒドロキシル−メチレン誘導体、O−(アシルオキシメチレンカルバメート)誘導体、カルバメート、エステル、アミドもしくはエナミノン、しかしこれらに限定されるものではない、投与後に容易に除去される追加の基が存在する式(1)を有する化合物を生成せしめることができる。
【0025】
上記の化合物のN−オキシドは、本発明の範囲内である。第三級アミンは、N−オキシド代謝物を生じさせることができるかもしくはできない。どの程度までN−酸化が起こるかは、微量からほぼ定量的転化まで様々である。N−オキシドは、それらの対応する第三級アミンより活性であるかもしくは活性が低い可能性がある。N−オキシドは化学的手段によりそれらの対応する第三級アミンに容易に還元されるが、人体内でこれは様々な程度に起こる。あるN−オキシドは、対応する第三級アミンへのほぼ定量的な還元的転化を受け、別の場合には、転化はほんの微量の反応であるかもしくは完全にないことさえある(M.H.Bickel:“The pharmacology and Biochemistry of N−oxides”,Pharmaco−logical Reviews21(4),325−355,1969)。
【0026】
合成の一般的態様
特定の合成方法の選択は、使用する試薬と官能基との適合性、保護基、触媒、活性化およびカップリング試薬を使用する可能性、ならびに製造している最終化合物に存在する最終的な構造的特徴のような当業者に既知である因子により決まる。
【0027】
製薬学的に許容しうる塩
製薬学的に許容しうる塩は、当該技術分野において周知である標準的な方法を用いて、例えば本発明の化合物を適当な酸、例えば塩酸のような無機酸と、もしくは有機酸と混合することにより得ることができる。
【0028】
製薬学的製剤
本発明の化合物は、液体もしくは固体担体物質のような補助剤を用いて通常の方法によって投与に適当な形態にすることができる。本発明の製薬学的組成物は、経腸的に、経口的に、非経口的に(筋肉内にもしくは静脈内に)、経直腸的にもしくは限局的に(局所的に)投与することができる。それらは、液剤、散剤、錠剤、カプセル剤(マイクロカプセルを包含する)、軟膏(クリームもしくはゲル)もしくは座薬の形態で投与することができる。そのような製剤のための適当な賦形剤は、製薬学的に慣例の液体もしくは固体充てん剤および増量剤、溶媒、乳化剤、潤滑剤、香料、着色剤および/もしくはバッファー物質である。挙げることができるよく使用される補助剤は、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖もしくは糖アルコール、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、澱粉、セルロースおよびその誘導体、魚肝油、ヒマワリ油、ラッカセイ油もしくはゴマ油のような動物油および植物油、ポリエチレングリコールならびに例えば滅菌水および一価もしくは多価アルコール、例えばグリセロールのような溶媒である。
【0029】
本発明の化合物は、一般に、これらの化合物、さらに特に本明細書に開示される特定の化合物の存在のために本発明の重要なそして新規の態様である製薬学的組成物として投与される。使用することができる製薬学的組成物のタイプには、錠剤、チュアブル錠、カプセル剤、液剤、非経口液剤、座薬、懸濁剤、ならびに本明細書に開示されるかもしくは本明細書および当該技術分野における一般知識から当業者に明らかである他のタイプが包含されるがこれらに限定されるものではない。本発明の態様において、本発明の製薬学的組成物の成分の1つもしくはそれ以上を詰めた1つもしくはそれ以上の容器を含んでなる製薬学的パックもしくはキットが提供される。そのような容器(1つもしくは複数)に付随するのは、使用説明書、または製薬学的製品の製造、使用もしくは販売を規制する政府機関により指示される形態の通知のような様々な文書であることができ、この通知はヒトもしくは動物投与のための製造、使用もしくは販売の機関による承認を示す。
【0030】
薬理学的方法
MAO活性の決定
新生児ラット線条体星状膠細胞をMAO−AおよびMAO−B活性の両方の供給源として使用した(Carlo et al.,Brain Res 711,175−183,1996)。星状膠細胞を記載のとおり培養した(Langeveld et al.,Neurosci.Lett.192,13−16,1995)。5%CO/95%空気におけるそして37℃での培養下で1週後に、細胞をトリプシン処理し、そして1mMのEDTAを含有するよく冷えた25mMのTris−HClバッファー(pH=7.4)において超音波処理した。その後に、得られる溶解物を10,000gおよび4℃で5分間遠心分離し、そしてZhouおよびPanchuk−Voloshina(Anal.Biochem.253,169−174,1997)により記述された方法に基づく、Amplex Red MAOアッセイキット(Molecular Probes,Leiden,The Netherlands)を用いるMAO活性の測定のために上清画分のアリコートを採取した。測定は、製造業者の説明書に従って行った。簡潔には、基質の添加の前に、サンプルを薬剤もしくは溶媒と96ウェルプレートにおいて30分間インキュベーションした(50μlの総容量)。その後に、2U/mlの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、p−チラミンHCl(2mM、MAO AおよびMAO Bの両方の基質(Youdim and Finberg,Biochem.Pharmacol.,41,155−162,1991)およびAmplex red(10mM)を含有する50μlのAmplex Red試薬を加えた。これらの状況下で、Amplex redは、HRP共役反応におけるチラミンのMAO触媒による酸化によって、蛍光性のレゾルフィンに転化される。MAO活性を測定するために、544nmでの励起および595nmでの発光を用いて、レゾルフィン形成の時間依存的増加を蛍光マイクロプレートリーダー(BMG Labtechnologies GmbH,Germany)において室温で2分の時間間隔で30分間決定した。この時間制限内で、蛍光の増加は直線的であることが見いだされた。結果の計算のために、バックグラウンドの読み取り用にデータを集め(すなわち、MAO基質チラミンの不在下で)、そして任意の蛍光単位/分の増加として表した。タンパク質含有量は、基準としてBSAを用いて、Bradford et al.,(Anal.Biochem.72,248−254,1976)の方法に従って決定した。グループ間の統計学的比較は、一元配置分散分析(ANOVA)、続いてニューマン−クールズ事後検定を用いて行った。P値<0.01は、有意であると見なされた。
【0031】
化合物A1〜D6のMAO−B阻害活性は、J.L.Salach,Arch.Biochem.Biophys.192,128,1979により記述されているプロトコルに従って、CEREP(Paris,France)で測定された。
【0032】
アネトールジチオールチオンおよび関連ジチオールチオンは、経口投与後に0.1〜100mg/kgの範囲の用量で有効であり、そしてモノアミンオキシダーゼ−Bのそれらの選択的阻害は、主要なモノアミン作動性の系の障害により引き起こされるかもしくはこれらの系の操作によって処置することができる精神医学的および/もしくは神経学的障害の処置においてそれらを特に有用にし、該障害は:気分障害、例えば双極性I型障害、双極性II型障害ならびに小鬱病、季節性情動障害、産後鬱病、気分変調および大鬱病のような単極性鬱病性障害(unipolar depressive disorders);パニック障害(広場恐怖症を伴うもしくは伴わない)、社会恐怖症、強迫性障害(併存する慢性チックもしくは統合失調症性障害を伴うもしくは伴わない)、外傷後ストレス障害および全般性不安障害を包含する不安障害;物質使用障害(依存症および乱用のような)および物質誘発性障害(薬物離脱のような)を包含する物質関連障害;注意欠陥多動性障害およびナルコレプシーのような注意欠陥および破壊的行動障害;病的賭博のような衝動調節障害;神経性食欲不振および神経性大食症のような摂食障害;トゥレット障害のようなチック障害;不穏下肢症候群;アルツハイマー病、パーキンソン病およびエイズ認知症ならびに/または併存する精神障害および神経リハビリテーション(外傷後脳障害)のような認知および/もしくは記憶の障害を特徴とする疾患、癲癇、ダウン症候群、ハンチントン病のような他のCNS疾患、頭痛、非定型顔面痛、疼痛性障害および慢性疼痛症候群を包含するいくつかの形態の疼痛;筋萎縮性側索硬化症および性機能障害;本態性、腎血管性、肺高血圧および高眼圧症、血栓症、心筋梗塞ならびに脳血管発作を包含する脳もしくは末梢血管系の障害;気道閉塞、喘息もしくは別の呼吸器疾患および胃腸運動性障害、痔、胃腸管における括約筋および平滑筋痙攣、ならびに膀胱機能障害を包含する非血管性平滑筋の障害よりなる群から選択される。さらに、MAO阻害薬は早産を防止し、そして分娩中に産道を弛緩させることができ、腎臓結石の通過のために尿路を弛緩させることにおいて有用であり、そして平滑筋収縮および痙攣を軽減するために使用することができる。
【0033】
好ましくは、本発明の化合物は気分障害、双極性I型障害、双極性II型障害、単極性鬱病性障害、小鬱病、季節性情動障害、産後鬱病、気分変調、大鬱病、不安障害、パニック障害、社会恐怖症、強迫性障害、外傷後ストレス障害、全般性不安障害、物質関連障害、物質使用障害、物質誘発性障害、薬物離脱、注意欠陥および破壊的行動障害、注意欠陥多動性障害、ナルコレプシー;衝動調節障害、病的賭博、摂食障害、神経性食欲不振、神経性大食症、チック障害、トゥレット障害、不穏下肢症候群、疼痛、頭痛、非定型顔面痛、疼痛性障害および慢性疼痛症候群、性機能障害、気道閉塞、喘息、胃腸運動性障害、痔、胃腸管における括約筋および平滑筋痙攣ならびに膀胱機能障害の処置に用いられる。
【0034】
用量
MAO−Bの阻害薬としての本発明の化合物の効能を上記のように決定した。式(1)の既定化合物について測定される効能から、理論的最低有効用量を概算することができる。測定される阻害定数の2倍に等しい化合物の濃度で、酵素の100%が化合物により阻害されると思われる。その濃度を患者のkg当たりの化合物のmgに転化することにより、理想的な生物学的利用能を仮定して、理論的最低有効用量がもたらされる。薬物動態学的、薬力学的および他の考慮事項により、実際に投与する用量がより高いもしくはより低い値に改変され得る。便宜的に投与する投薬量は0.001〜1000mg/kg、好ましくは0.1〜100mg/kg患者体重である。
【0035】
処置
「処置」という用語は、本明細書において用いる場合、哺乳類、好ましくはヒト症状もしくは疾患の任意の処置をさし、そして:(1)疾患にかかりやすい可能性があるがそれにかかっているとまだ診断されていない患者において疾患もしくは症状が起こるのを防ぐこと、(2)疾患もしくは症状を抑制すること、すなわち、その進行を止めること、(3)疾患もしくは症状を軽減すること、すなわち、症状の退縮をもたらすこと、または(4)疾患により引き起こされる症状を軽減すること、すなわち、疾患の症候を止めることが包含される。
【0036】
[実施例]
【実施例1】
【0037】
材料および方法
湿気に敏感な化合物を伴う全ての反応は、乾燥窒素雰囲気下で実施した。反応は、示した溶離剤でシリカ被覆プラスチックシート(Merckシリカゲル60 F254)上で薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いることによりモニターした。化合物は、UV光(254nm)もしくはIにより視覚化した。フラッシュクロマトグラフィーは、示した溶離剤およびAcrosシリカゲル(0.030〜0.075mm)を用いる精製をさす。核磁気共鳴スペクトル(H NMRおよび13C NMR、APT)は、示した溶媒において決定した。カップリング定数Jは、Hz単位で示される。NMRスペクトルにおけるピーク形状は、記号「q」(カルテット)、「dq」(ダブルカルテット)、「t」(トリプレット)、「dt」(ダブルトリプレット)、「d」(ダブレット)、「dd」(ダブルダブレット)、「s」(シングレット)、‘bs’(ブロードなシングレット)および「m」(マルチプレット)で示される。
【実施例2】
【0038】
特定の化合物の合成
以下にその合成を記述する特定の化合物は、より詳細に本発明をさらに説明するものとし、そしてそれ故に決して本発明の範囲を限定すると見なされない。
【0039】
【表1】

【0040】
本発明の他の態様は、本明細書の考慮事項および本明細書に開示される本発明の実施から当業者に明らかである。従って、本明細書および実施例は例としてのみ考えられるものとし、本発明の真の範囲および精神は請求項により示される。
【0041】
【化8】

【0042】
段階i スキームA.1.
32g(1mol)の硫黄を150mlのDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)に加え、そして得られる混合物を硫黄がほぼ溶解されるまで加熱還流した。43.6g(200mmol)の2−(4−n−ヘキシルオキシフェニル)−プロペンを滴下して加えた。添加が完了した後に、TLC(薄層クロマトグラフィー、溶離剤:トルエン)により追跡する反応の間攪拌および加熱を続け、4時間後に反応を室温に到達させた。反応混合物の濾過および真空中での蒸発により残留物を生成せしめ、それをカラムクロマトグラフィー(SiO、溶離剤:トルエン)に供した。合わせた生成物含有画分を真空中で濃縮し、残留物をシクロヘキサンから再結晶化させ、5g(8.1%)の所望の化合物A1を生成せしめた。融点:121℃。
【0043】
【化9】

【0044】
段階i スキームA.2
2当量のナトリウムエトキシド(NaOEt)を含有する無水エタノール溶液に1当量のN−(2−クロロエチル)モルホリンと一緒に1当量の4−ヒドロキシアセトフェノンを加えた。添加が完了した後に、反応混合物を5h還流させ、次に加熱を止め、そして攪拌を室温で12h続けた。溶媒を真空中で除き、そして残留物を水性塩化水素(約2N)に溶解し、後者の溶液をジエチルエーテルで洗浄した。水層を水酸化ナトリウム溶液(約2N)で中和し、その後にジエチルエーテルでの抽出を行った。合わせた有機画分を乾燥させた(NaSO)。濾過による乾燥剤の除去および真空中での溶媒の除去によりフェノール性エーテルを橙色−黄色の油として91%の収率で生成せしめた。
【0045】
段階ii スキームA.2(Thuillier et al.,Bull.Chim.Soc.,(1959)1398に従って)
2当量のナトリウムtert.−アミレート(NaOC(CHCHCH)を含有する冷えた絶対量のトルエンに1当量の段階iのフェノール性エーテルおよび1当量の溶解した二硫化炭素を加えた。添加が完了すると、反応混合物を6h攪拌した。続いて、1当量の1,2−ジブロモエタンを加え、その後に攪拌を12h続けた。反応混合物を水酸化ナトリウム水溶液(約2N)でそして水でpHが7に到達するまで洗浄した。有機画分をNaSO上で乾燥させた。濾過による乾燥剤の除去および真空中での溶媒の除去により純粋な1,3−ジ−チオラン誘導体を橙色の結晶として70%の収率で生成せしめた。
【0046】
段階iii スキームA.2
段階iiのジチオラン誘導体を還流するキシレンにおいて十硫化四リン(P10)で15分間処理した。冷却した後に懸濁液を1Nの水酸化ナトリウム(水性)溶液で洗浄し、その後にクロロホルムを加え、得られる有機画分をNaSO上で乾燥させた。濾
過による乾燥剤の除去および真空中での溶媒の除去により残留物を生成せしめ、それをカラムクロマトグラフィー(SiO、溶離剤:ジエチルエーテル/トルエン 1/1)により精製し、所望の化合物A2を橙色の結晶として4%の収率で生成せしめた。融点:102℃。H−NMR(CDCl、δppm):2.59(t、4H)、2.83(t、2H)、3.73(t、4H)、4.17(t、2H)、6.98(d、2H)、7.60(d、2H)、7.36(s、1H)。
【0047】
化合物A3(赤色の油、H−NMR(CDCl、δppm):1.49(q、2H)、1.67(t、4H)、2.63(t、4H)、2.97(t、2H)、4.24(t、2H)、7.00(d、2H)、7.38(s、1H)、7.60(d、2H))は、化合物A2について記述した方法と同様にして製造した。
【0048】
【化10】

【0049】
段階i スキームB.1.
2当量のピペラジンおよび1当量の5−メチルスルファニル−4−フェニル−[1,2]−ジチオール−3−チオン(Grandin,A.et al.,Bull.Soc.Chim.Fr.,11(1968)4555)を無水エタノールに溶解し、その後に反応混合物を還流温度にした。7日後に溶媒を真空中で除き、そして残留物をクロマトグラフィー(SiO、溶離剤:トルエン中2%のエタノール v/v)により精製した。集めた生成物含有画分を真空中で濃縮し、残留物をアセトンから再結晶化させ、橙色の結晶を12%の収率で生成せしめた:化合物B1.融点:174℃。H−NMR(CDCl、δppm):2.97(t、4H)、3.44(t、4H)、4.23(m、4H)、6.42−6.76(m、3H)、7.34−7.49(m、5H)。
【0050】
化合物B2(黄色の結晶、融点108℃、H−NMR(CDCl、δppm):2.37(s、3H)、2.98(t、4H)、3.45(t、4H)、4.23(m、4H)、6.43−6.76(m、3H)、7.22−7.28(m、4H))は、化合物B1について記述した方法と同様にして製造した。
【0051】
化合物B3(赤色の結晶、融点 分解して148〜150℃)は、化合物B1について記述した方法と同様にして製造した。
【0052】
【化11】

【0053】
段階i スキームC.1.
1グラム(6.8mmol)の5−メチル−[1,2]−ジチオール−3−チオンを50mlの無水エタノールに溶解した。次に、2.5グラム(14.1mmol)の4−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドおよび1mlのピペリジンを加え、その後に反応混合物を水浴上で2h加熱した。反応混合物を真空中で濃縮し、そして残留物をフリーザに入れ、そこで結晶が生じた。結晶を単離し、そしてイソプロピルアルコールから再結晶化させ、1.5グラム(4.9mmol、35%)の所望の化合物C1を生成せしめた、融点:130℃。特許JP1319477もまた参照。
【0054】
化合物C2(TLC(SiO、溶離剤:トルエン)、Rf=0.36、出発物質の存在下で)は、化合物C1について記述した方法と同様にして製造した。
【0055】
【化12】

【0056】
段階i スキームD.1.
17.5g(87.9mmol)の1−ブロモ−2−フェニルプロパンを300mlのDMFに溶解し、その後に14.1g(441mmol)の硫黄を加えた。反応混合物を一晩還流させ、その後に攪拌を室温でもう一晩続けた。反応混合物を真空中で濃縮し、その後に約100mlのトルエンを加え、結晶が生じ、後者を集め、そして真空中で乾燥させた。収量:4−フェニル−5−メルカプト−[1,2]−ジチオール−3−チオンのジメチルアンモニウム塩を含有する13g(45.3mmol、52%)の黄色の固体。
【0057】
段階ii スキームD.1.
3.5g(10.4mmol)のヨウ化物(ヨウ化物の合成については、以下を参照)を40mlのメタノールに溶解し、その後に3g(10.4mmol)のジメチルアンモニウム塩(段階iの)を加えた。反応混合物を一晩攪拌し、その後にそれを真空中で濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、溶離剤:ヘプタン/酢酸エチル 6/1)に供した。生成物含有画分の濃縮により700mg(1.6mmol、15%)の赤色の油を生成せしめた。
【0058】
段階iii スキームD.1.
700mg(1.6mmol)の段階iiの生成物を少量のジクロロメタンに溶解し、その後に多量の(a quantity of)7N HCl(イソプロパノール中)を加え、その結果、最終濃度は約3Nであった。反応混合物を一晩攪拌し、その後にそれを真空中で濃縮し、D1.HClを含有する265mgの橙色の固体を生成せしめた、融点:243℃。
【0059】
化合物D2(融点:分解して、96〜101℃)は、化合物D1について記述した方法と同様にして製造した。使用したヨウ化物は、D1の製造に使用したヨウ化物の合成に従って製造することができる(以下を参照)。
【0060】
化合物D3(融点:82〜87℃)は、化合物D1について記述した方法と同様にして製造した。使用したヨウ化物は、D1の製造に使用したヨウ化物の合成に従って製造することができる。
【0061】
化合物D4(融点:分解して、65〜70℃)は、化合物D1について記述した方法と同様にして製造した。使用したヨウ化物は、D1の製造に使用したヨウ化物の合成に従って製造することができる。
【0062】
化合物D5(融点:65〜72℃)は、化合物D1について記述した方法と同様にして製造した。使用したヨウ化物は、D1の製造に使用したヨウ化物の合成に従って製造することができる。
【0063】
化合物D6(融点:134〜135℃)は、アルキル化剤としてパラブロモメチルトルエンから出発して、化合物D1について記述した方法と同様にして製造した。
【0064】
【化13】

【0065】
段階i スキームD.2.
6.4g(72.6mmol)の4−ヒドロキシ−2−ブタノンを250mlの1,2−ジクロロエタンに溶解し、その後に5.5ml(80mmol)のプロパルギルアミンを加えた。反応混合物を10分間攪拌し、その後にそれを0℃に冷却した。20g(94mmol)のNaBH(OAc)を反応混合物に少しずつ加え、攪拌を48h続け、その後に混合物を飽和NaHCO(水性)溶液に注ぎ込んだ。DCMでの後者の水溶液の抽出により真空中での濃縮後に3gの所望の生成物を生成せしめた。水層をNaOH溶液(33%、水性)で塩基性化し、そしてNaCl(固体)で飽和させ(satutared)、EtOAcでの第二の抽出を行った。合わせた有機画分を乾燥させ(NaSO)、そして濾過による乾燥剤の除去および真空中での濃縮による溶媒の除去の後に、7.6g(82%)の所望の生成物(橙色の油として)が得られた。これをさらに精製せずに段階iiにおいて使用した。
【0066】
段階ii スキームD.2.
7.6g(59.8mmol)のアミノプロパノール誘導体(段階iの)を200mlのDCMに溶解し、その後に9.2ml(〜65mmol)のトリエチルアミンおよび14g(65mmol)の(Boc)O(Boc=tert.−ブチルオキシカルボニル)を加えた。得られる混合物を一晩攪拌し、その後にそれを真空中で濃縮し、そして残留物をEtOAcに再び溶解した。有機画分を飽和NaHCO(水性)溶液、水およびブラインで洗浄し、その後にそれをNaSO上で乾燥させた。濾過による乾燥剤の除去および真空中での濃縮による溶媒の除去の後に、N−Bocで保護されたアミノプロパノールを含有する13.7g(100%)の褐色の油が単離された。
【0067】
段階iii スキームD.2.
33g(126mmol)のトリフェニルホスフィンを600mlのDCMに溶解し、その後に19g(280mmol)のイミダゾールを加え、得られる混合物を0℃にした。300mlのDCM(ジクロロメタン)中の35.5g(140mmol)のヨウ素の溶液を反応混合物に滴下して加え、その後に攪拌を10分間続けた。次に、50mlのDCMに溶解した8g(35mmol)のN−Bocで保護されたアミノプロパノール(段階iiから)を加え、攪拌を0℃で20分間続けた。次に、反応混合物を室温に到達させ、そして16h攪拌した。反応混合物を濾過し、濾液をブラインで洗浄し、そして真空中で濃縮した。残留物をSiOのショートカラム上で「濾過し」(溶離剤:ヘプタン/EtOAc 6/1)、そして溶出液を真空中で濃縮し、5.1g(%)の対応するヨウ化物を薄黄色の油として生成せしめた。このヨウ化物を化合物D1の製造において使用した(スキームD.1を参照)。
【0068】
化合物D2、D3、D4およびD5の製造に必要な対応するヨウ化物は、D1の製造に使用するヨウ化物の合成において記述した条件に従って製造することができる(スキームD.2)。化合物D4およびD5では、窒素原子上に存在するメチル基のために保護および脱保護段階(N−Boc)は必要ない。
【実施例3】
【0069】
化合物A1の製剤
経口(p.o.)投与用:ガラス管中の所望の量(0.5〜5mg)の固体化合物A1に、いくらかのガラスビーズを加え、そして2分間ボルテックスすることにより固体を粉砕した。水中1%のメチルセルロースおよび2%(v/v)のポロキサマー188(Lutrol F68)の溶液1mlの添加後に、10分間ボルテックスすることにより化合物を懸濁した。数滴の水性NaOH(0.1N)でpHを7に調整した。超音波浴を用いることにより懸濁液中の残留粒子をさらに懸濁した。
【0070】
腹腔内(i.p.)投与用:ガラス管中の所望の量(0.5〜15mg)の固体化合物A1に、いくらかのガラスビーズを加え、そして2分間ボルテックスすることにより固体を粉砕した。水中1%のメチルセルロースおよび5%のマンニトールの溶液1mlの添加後に、10分間ボルテックスすることにより化合物を懸濁した。最後にpHを7に調整した。
【実施例4】
【0071】
薬理学的試験結果
【0072】
【表2】

【0073】
新生児ラット線条体星状膠細胞の培養物から得られる細胞抽出物における総モノアミンオキシダーゼ(ΣMAO)活性へのデプレニール(L−dep)およびアネトールジチオールチオン(ADT)の(縦列2および3);モノアミンオキシダーゼ−B(MAO−B)活性へのL−dep、ADTおよび3H−1,2−ジチオール−3−チオン(D3T)の(縦列4、5および6);モノアミンオキシダーゼ−A(MAO−A)活性へのクロルジリン(Clor)およびADTの(縦列7および8)効果。MAO活性およびそれへの薬剤の効果は、上記に詳述したとおり決定した。
【0074】
データはそれぞれのコントロールのパーセンテージとして表され、そして三重反復で行った2〜5回の独立した実験の平均である。総MAO活性は溶媒(0.03%のDMSO)のみの存在下で、MAO−B活性は0.1μMの選択的MAO−A阻害薬クロルジリンの存在下で、そしてMAO−A活性は1μMの選択的MAO−B阻害薬デプレニールの存在下で決定した。
【0075】
星状膠細胞は、主にMAO−Bを発現することが既知である(Thorpe et a
l.,J.Histochem.Cytochem.,35,23−32,1987)。非選択的基質チラミンおよび選択的MAO−B阻害薬デプレニールを用いて(Youdim and Finberg,Biochem.Pharmacol.,41,155−162,1991)、総星状膠細胞MAO活性の80%までがMAO−Bからなることが見出された。最大有効濃度のデプレニールの存在下での残りのMAO活性(約20%)は、選択的MAO−A阻害薬クロルジリンの添加により完全に阻害された。デプレニールは、約0.04μMの見掛けのIC50で濃度依存的に総星状膠細胞MAO活性を阻害した。同様に、ADTは約0.5μMの見掛けのIC50で濃度依存的に総MAO活性を阻害し、30μMの濃度で最大効果(約80%の阻害)に達した。クロルジリンによるMAO−A活性の選択的なそして完全な阻害の後に、総MAO活性の阻害について認められるものと比較した場合に、デプレニールおよびADTの両方について同一の濃度−効果関係が認められた。これらの条件下で、すなわち、クロルジリンの存在下で、約20μMの見掛けのIC50および300μMの最大有効濃度で、MAO−B活性の同様の濃度依存的阻害がD3Tについて認められた。デプレニールでのMAO−B活性の選択的なそして完全な阻害の際に、MAO−A活性へのADTの統計学的に有意な効果は検出されなかった。
【0076】
J.L.Salach,Arch.Biochem.Biophys.192,128,1979により記述されているプロトコルに従って、CEREP(Paris、France)で測定した場合の化合物A1〜D6のMAO−B阻害活性
【0077】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気分障害、双極性I型障害、双極性II型障害、単極性鬱病性障害(unipolar
depressive disorders)、小鬱病、季節性情動障害、産後鬱病、気分変調、大鬱病、不安障害、パニック障害、社会恐怖症、強迫性障害、外傷後ストレス障害、全般性不安障害、物質関連障害、物質使用障害、物質誘発性障害、薬物離脱、注意欠陥および破壊的行動障害、注意欠陥多動性障害、ナルコレプシー;衝動調節障害、病的賭博、摂食障害、神経性食欲不振、神経性大食症、チック障害、トゥレット障害、不穏下肢症候群、疼痛、頭痛、非定型顔面痛、疼痛性障害および慢性疼痛症候群、性機能障害、気道閉塞、喘息、胃腸運動性障害、痔(hemorroids)、胃腸管における括約筋および平滑筋痙攣ならびに膀胱機能障害の処置、改善もしくは防止用の製薬学的組成物の製造のための一般式(1)
【化1】

[式中:
−RおよびRは同じであるかもしくは異なり、そして水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ニトロ、アシル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミドを表すか、または
−RおよびRはそれらが結合している炭素原子と一緒になって、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジンもしくはピラジン環のような、窒素、酸素もしくは硫黄から選択される0、1もしくは2個のヘテロ原子を含有する5もしくは6員の芳香環もしくは非芳香環を形成することができ、
−RおよびRはそれら自体が水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノアルキルオキシ、モルホリン−4−イル−アルコキシ、ピペリジン−1−イル−アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、オキソ、ニトロ、アシル、アミド、アルキルアミドもしくはジアルキルアミドから選択される追加の置換基を保有することができる]
を有する化合物ならびにその互変異性体、立体異性体およびN−オキシド、ならびに式(1)の該化合物ならびにその互変異性体、立体異性体およびN−オキシドの薬理学的に許容しうる塩、水和物および溶媒和物の使用。
【請求項2】
一般式(1)を有する該化合物が5−(p−メトキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン、3H−1,2−ジチオール−3−チオンもしくは4−メチル−5−(2−ピラジニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオンであることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
一般式(1)を有する該化合物が5−(p−メトキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオンであることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
一般式(1):
【化2】

[式中:
−Rは場合により置換されていてもよいフェニルであり、そしてRはS−CH−(4−メチル−フェニル)もしくはサブグループ(subgroups):
【化3】

(ここで、nは値2、3、4もしくは5を有し、そしてRは水素もしくはアルキル(C1−3)である)
の一つを表すか、または
−Rは4−ヘキシルオキシフェニルであり、そしてRは水素であるか、または
−Rは置換されたフェニルであり、そしてRはSHもしくはサブグループ:
【化4】

を表すか、
−Rは水素であり、そしてRは−CH=CH−4−(ジエチルアミノフェニル)、−CH=CH−(2−キノリル)もしくはサブグループ:
【化5】

(ここで、nは上記に示したと同じ意味を有し、そしてRおよびRは独立してアルキル(C1−3)を表すか、またはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、場合によりN、OもしくはSから選択されるもう一つのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和した5もしくは6員環を形成する)
を表すか、または
−Rはアルキル(C1−3)であり、そしてRは1−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−イル)ピペラジン−4−イルであるか、または
−Rはシアノであり、そしてRはサブグループ−NH−C(O)−NH−フェニル(このサブグループにおいてフェニル基は場合により置換されていてもよい)であるか、または
−Rは-SOCHであり、そしてRはアミノを表す]
の化合物ならびにその互変異性体、立体異性体およびN−オキシド、ならびに式(1)の該化合物ならびにその互変異性体、立体異性体およびN−オキシドの薬理学的に許容しうる塩、水和物および溶媒和物。
【請求項5】
一般式(1):
【化6】

[式中:
−Rは4−ヘキシルオキシフェニルを表し、そしてRは水素を表すか、
−Rは水素を表し、そしてR
【化7】

を表すか、
−Rは水素を表し、そしてR
【化8】

を表すか、
−Rはフェニルを表し、そしてR
【化9】

を表すか、
−Rは4−メチルフェニルを表し、そしてR
【化10】

を表すか、
−Rは4−メチルフェニルを表し、そしてRは4−フェニルピペラジニルを表すか、−Rは水素を表し、そしてRは−CH=CH−(4−ジエチルアミノ−フェニル)を表すか、
−Rは水素を表し、そしてRは−CH=CH−(2−キノリニル)を表すか、
−Rはフェニルを表し、そしてRは−S(CHCH(CH)NH−2−プロピニルを表すか、
−Rはフェニルを表し、そしてRは−S(CHCH(CH)NH−2−プロピニルを表すか、
−Rはフェニルを表し、そしてRは−S(CHCH(CH)NH−2−プロ
ピニルを表すか、
−Rはフェニルを表し、そしてRは−S(CHCH(CH)N(CH)−2−プロピニルを表すか、
−Rはフェニルを表し、そしてRは−S(CHCH(CH)N(CH)−2−プロピニルを表すか、
−Rはフェニルを表し、そしてRは−S−CH−(4−メチルフェニル)を表す]を有する請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
製薬学的に許容しうる担体および/もしくは少なくとも一つの製薬学的に許容しうる補助剤に加えて、有効成分として、請求項4の少なくとも一種の化合物もしくはその塩の薬理学的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項7】
請求項4の化合物を投与に適当な形態にすることを特徴とする請求項6に記載の製薬学的組成物を製造する方法。
【請求項8】
薬剤として使用するための請求項4に記載の化合物もしくはその塩。

【公表番号】特表2008−531519(P2008−531519A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556592(P2007−556592)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060060
【国際公開番号】WO2006/089861
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(501439149)ソルベイ・フアーマシユーチカルズ・ベー・ブイ (71)
【Fターム(参考)】